NAOKI OHYA
『
建
築
』
ら
市
へ
換
DIPLOMA DESIGN
か
『
都
』
の
乗
駅
P R O J E T
「投企」
20 1 3 -20 1 7
_Prologue
『建築』と『都市』は二項対立関係である ここで言う『建築』とは建築家集団のイデオロギーを指し、 『都市』とは狭義には都市計画家集 団のイデオロギー、広義には都市に関わる人々全般のそれを指す。 現在、人口減少社会の突入や情報技術の急激な進化、市場原理の発展などの要因が相まって 『建築』が多様化を見せている。 その影響から『建築』と『都市』の関係がさらに複雑化しているように感じる。 この複雑化の是非を一概に決定することはできないが、私はこの動向が『都市』側に混乱を招 いてしまうという態度を表明したい。 そこで、本制作は『建築』と『都市』を繋げるための新たなデザイン手法を考案し、それを用い て都市を描こうと試みることで今後の両者の関係に一石を投じることを目的とする。
グランドデザイン
国土利用計画
総合計画 クルドサック
PFI
選択と集中
コミュニティデザイン
海上都市
構成主義
都庁
異化
プラトン立体
東京計画 1960
カンプス・マルティウス ニュートン記念堂
手法が
ビックネス
山岳都市
コンティニュアスモニュメント
ニヒリズムを超えて
S,M,L,XL
神の似姿
輝く都市 空中都市
批判的工学主義
お祭り広場
脱構築
作家性
負ける建築
ブロードエーカーシティ ポイエーシス
偶有性操縦法 ロシアアヴァンギャルド 黒と白の物語
雲の鎧
イメージゲーム
巨大建築論争 メタボリズム
空家特措
多様性
アーバンビレッジ
装飾と犯罪
異化 日本の都市空間
伝統論争
阪神大震災
盛り場論
BRT 地区計画 オスマン改造
東日本大震災 PPP
土地利用
ガバナンス
TMO
ラドバーン
地方分権
郊外住宅
国土形成計画
NPO
復興計画
経済的合理性
コラージュシティ
機能から様相へ
均質空間
神の似姿
P3 会議
アルゴリズム建築
Anyone
Any where
建築ファンタジー ユニット派
表象
イコノクラスト
スポンジシティ
市民合意
空間へ
ヒロシマ
ウォーキングシティ アパラタス
廃墟論
国立競技場
建築の修辞
Formalism
分離派
プロウン
アナーキー 振る舞い
人体の影
流言都市
マニエラ
アバンギャルド
フクシマ
メタファー
建築をめざして
プロセスプランニング
住宅論
記号
八田利也論
海市
リノベーション派
孵化過程
建築的ロボトミー
デステイル
トランジットモール
スマートグロース
F-plan
PDCA
都市美運動
エリアマネジメント
スマートグロース 海市
建築の解体
Anything
現代建築愚作論
ポストモダン
アイロニー
見えない都市
ブロードウェイ・ブギ・ウギ
小住宅ばんざい
Anytime
列島改造論
参加の階梯
市街地再開発事業
コンポジション
建築の多様性と対立性
使用と分離
コミュニケーティブ・プランニング
マスタープラン
都市デザインの方法
ソーシャルアーキテクト
中心市街地活性化
ソーシャルジレンマ
多元的漸進主義
瓜生島
景観 大文字の建築
都市破壊業KK
非作家性の時代に
ボンエルフ
サスティナビリティ
スーパーブロック
環境アセスメント
LRT
市場原理
戦略的空間計画
B-plan
立地適正化計画
近隣住区論
開発許可
Urbanism
コンパクトシティ
縮小都市
IBA
土地区画整理事業
関東大震災
合理的総合的計画理論
人口減少社会
安全問題
田園都市
D I D
プロジェクト型都市計画理論
展望的漸進主義
まちづくり条例
対話型合理性
コーポラティブ・プランニング
ニューアーバニズム
都市計画 伝統保存地区 コンセッション
_Prologue
「ステーション」
『建築』から『都市』への乗換駅とは、ロシア構成主義リシツキーの作品「プロウン」をオマージュした概念である。 リシツキーは「プロウン」によって、絵画を建築と結びつけようとした。 そして、絵画から建築への変化を「ステーション」と定義している。 本制作は、リシツキーの思想を拝借して『建築』を『都市』と結びつける「ステーション」と位置づけた。
_Definition 建築における「詩的言語」/「実用言語」 『建築』の基本構造 『建築』の基本構造はフォルマリズムである。それは作家性によって『建築』のための建築を行う人々をさす。 彼らのデザインプロセスの中には「詩的言語」が用いられている。
「詩的言語」/「実用言語」 「詩的言語」とはロシアフォルマリズムが好んで用いた概念である。「実用言語」とは詩的言語と対となる言葉である。 それらの言葉には確固たる定義は存在しない。そのため本制作における定義を定めておく。
「詩的言語」
1. 意味が一義に決定しないが、何らかの効果を期待して発せられる言葉。 2. それ自身の物理的側面(音声や身体性)も重要な要素となる。 3. 主観的な経験に基づく自己価値的なものであり、メタな解釈が存在する。
「実用言語」
1. 現実世界の中で、あるルールに基づいて真偽を検証することができ、意味が決定できる言葉。 2. ある一定の効果を得られることが保証されているもの。
_Proposal デザイン手法の考案
『建築』が『都市』と対立する都市デザイン 『建築』と『都市』が対立関係にある原因は、『建築』側のデザインプロセスが曖昧であるからだと考える。 曖昧となるプロセスには2つのパターンがある。
パターン1 「詩的言語」を用いているのにも関わらず、形体や色彩などを指す「造形要素」と「実用言語」のみ によって都市を描いていると思い込んでいる。
「造形要素」 +
「実用言語」
=
「都市」
=
「都市」
パターン2 「実用言語」と「詩的言語」をあえて混同させており、デザインの根拠を不明確にしている。
「造形要素」 + 「 言語」
『建築』が『都市』と繋がる都市デザイン 両者を繋げるためには『建築』で『都市』を満たそうとするのではなく、『建築』を『都市』に限りなく近づけ ようとするアプローチが必要である。 それは「造形要素」と「詩的言語」によってあらかじめ生成された「フォルム」に「実用言語」を徐々に取り 入れることで都市へと変容していくデザイン手法である。
「造形要素」
+ 「詩的言語」
「フォルム」
「実用言語」
「都市」
_Prior Works 先代の建築家による事例
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(17201778)
「古代ローマのカンプスマルティウス」の「イコノグラフィア」はピラネージが描いた復元地図である。 対象地において確認された遺構がほとんど無かったため、大部分がピラネージの想像によって描かれた。 マニエリスムに影響を受けた作家性を駆使して個々の建築をつくりだし、それらをパッチワーク的に組み合わせ ることで都市を描こうとしている。
古代ローマのカンプスマルティウス , イコノグラフィア
_Prior Works 先代の建築家による事例
ヤコフ・チェルニホフ(1889-1951)
ロシア・アヴァンギャルドの建築家であるチェルニホフは「建築ファンタジー」「現代建築学の基礎」等の著作を出 版し、独創的でシュプレマティズム風な多数のドローイングを残した。彼のドローイングは機能や用途といった都 市の要素を与えることで作品として完成されている。したがって、それぞれの作品はある種の都市のモデルである。
ドローイング「現代建築学の基礎」
_Principle 制作方針
概念 「造形要素」
制作 <形体> フォルム
用語
「詩的言語」
<エクスペリエンス>
「実用言語」
<エレメント>
本制作では「造形要素」は<形体>、「実用言語」は都市の要素<エレメント>、詩的言語は視覚的空間体験<エクスペリエンス>としてスタディを進める。
制作スキーム
1. フォルムの生成
2. フォルムの展開
チェルニホフ
ピラネージ
フォルムの生成
3. エレメントの挿入
フォルムの生成
フォルムの展開
エレメントの挿入
ハイブリッド
本制作 フォルムの生成
フォルムの展開
エレメントの挿入
この制作手順はデザインプロセスを明確化させるためにピラネージのアプローチとチェルニホフのアプローチをハイブリッドしたものである。
_Contents
phase.1 フォルムの生成
形体とエクスペリエンスを用いてフォルムを生成していく。フォルムは自ら作る恣意的なものである。 エクスペリエンスは以下の8つとする。
1 シームレス (Seamless) 2. シークエンス (Sequence)3. サーキュレーション (Circulation) 4. アーティキュレーション (Articulation)5. サブシディアリティ(Subsidiarity) 6. ダイナミズム (Dynamism) 7. インフィニティ(Infinity) 8 アシンク(Async)
シームレス Seamless
シークエンス Sequence
サーキュレーション Circulation
アーティキュレーション Articulation
サブシディアリティ Subsidiarity
インフィニティ Infinity
アシンク Async
ダイナミズム Dynamism
_Contents
phase.2 フォルムの展開
生成したフォルムを並べる、組み合わせるなどの操作を加えて展開を行う。 対象となるフィールドはタブラ・ラサであり、コンテキストは一切存在しない。
Process
面となるフォルムを配置
垂直性を強める
アイストップとなるフォルムを配置
バランス感を意識しながらフォルムを追加
_Contents
phase.3 エレメントの挿入 展開したフォルムに都市の要素<エレメント>を挿入する。 必要がある場合はエレメントに合わせてフォルムを適応させていく。 エレメントは機能やスケール、アクティビティといったものであり、人や交通、用途等を取り入れることを指す。 必要がある場合は、エレメントに合わせてフォルムを適応させる。
交通網
駅ビル
屋上広場
放送局・情報通信施設
スタジアム
美術館
摩天楼
物流施設
コンビナート
コンビニ併用住居
老人ホーム
病院
学校
集会所
保育所
研究所
コンビニ併用住居 2
コンビニ併用住居 3
コンビニ併用住居 4
中層住居・デパート
ショッピングセンター
レンタルオフィス
高層住居
交番
進化型コンビニ
庁舎
ホテル&フォリー
高齢者住居
文化ホール
飲屋街
歴史資料館
オフィス
図書館
発電施設
_Conceptual drawing
「建築の自律性」と「都市の複雑性」
フォルム単体にエレメントを挿入したとき, すなわち、機能やスケール、アクティビティを与えたとき、 それは『建築』として成立しうる。 しかし、フォルム同士を組み合わせるとき、 すなわち、 『都市』へと変容させようとするとき、 パラメーターが一気に複雑化し、制御不能となる。 つまり、 『建築』はフォルムとエレメントをそれぞれ独立した集合体として 単一方向的に進めるデザインプロセスによって体現できるが 『都市』は集合体同士の重な合いを容認とした 反復的なプロセスによってのみでしか成立できないということである。
_Conceptual drawing
この結果、時代の流れに対抗するための本提案は破綻し自滅することになる。
しかし、都市と建築をめぐる諸問題を、時代に即して基礎から問い直すためにはこうした還元的な構えが必要である。
_Conceptual drawing
あなたはこの投企を笑っていい。 あなたはこの都市になじみ、親しい微笑に酔い、美しい作品を矢つぎばやに賞賛する。
それでも筆者は投壜しつづけるだろう。 誰かが、必ず拾ってくれると信じて。
_Conceptual drawing
後書き 自滅した者は行先を失う。
それゆえ、新しい目的地を探さなければならない。
私は『建築』からの撤退を宣言する。
そして、『都市』としての道を歩むことを決意した。
鹿島立ちの前に、僭越ながら 2 つの遺言を残させて頂きたい。
_Will
『建築』は作家性を駆使して他者の心を揺るがすことが求められる。 したがって、デザインの根拠は「実用言語」ではなく徹底して「詩的言語」であるべきである。 現在、非作家的なデザイン手法が市民権を得ており、『建築』の職域が広がりつつあると思われがちであるが、 それらは『建築』ではない。彼らは彼らなりの芯を持って投企する必要がある。
一方、『都市』は「詩的言語」の有用性をより理解する必要がある。 近年、社会全体が実用言語に重きを置く傾向にあり、詩的言語が軽視されているように感じる。 ヤコブソンなどのロシア言語学者やレヴィストロースは、言語は「詩」から生まれたと考えた。 彼らがそう言うように、我々の人生を豊かにするものは「詩」に他ならない。
宮城大学 事業構想学部 デザイン情報学科 空間デザインコース 平岡研究室 大谷直輝 参考文献 (1)磯崎新「建築の解体―一九六八年の建築情況」1997.3.1.鹿島出版会 (2)磯崎新「空間へ」.2017.10.5.河出書房新社 (3)八田利也「現代建築愚作論」2011.9.1.彰国社; 復刻版 (4)磯崎 新 (著), 松田 達 (編集)「記号の海に浮かぶ〈しま〉――見えない都市 (磯崎新建築論集 第2巻)」/2013.3.27. 岩波書店 (5)磯崎新、五十嵐太郎 南泰裕、 「 10+1 磯崎新インタヴュー 破壊と救済のメトロポリス」2000.1.19 <http://tenplusone-db.inax.co.jp/backnumber/article/articleid/1/> (6)貝澤哉(2011) 「 詩的言語における身体的問題-ロシアフォルマリズムの詩学をめぐって-」、スラブ研究 (7) 樋野廣臣, 堂囿俊彦(2010)「詩の本質-ヤコブソン詩学の批判的検討を通して-」2010 年度 静岡大学人文学部社会学科 卒論要旨集 (8)「詩的言語という分類」.2013.1.18<http://d.hatena.ne.jp/kawara-de-cabbage/20130118/1358518915> (9)エル・リシツキー(著),阿部公正(翻訳)「革命と建築」.1983/3. 彰国社 (10)プロセスアーキテクチャー「ヤコフチェルニホフと建築ファンタジー」.1981.PROCESS26号 (11)玉村春夫訳『現代建築学の基礎 ソヴィエ トロシア新興建築学のイデオロ ギー的原理』,1932 (12)舩山俊克(2013)「造形言語と形態言語によるデザイン造形の数理的解釈論の考察」 (13)町田市立国際版画美術館/編「空想の建築 −ピラネージから野又穫へ」.2013/3.エクスナレッジ (14)監修/鵜沢隆 編/東京都現代美術館他「未来都市の考古学 展図録」.1996.東京新聞 (15)山本 理顕 ,中村 拓志, 藤村 龍至, 長谷川 豪, 原 広司, 金子 勝,大西 正紀,田中 元子,mosaki 長島 明夫「地域社会圏モデル ――国家と個人のあいだを構想せよ (建築のちから)」 2010.3.30. LIXIL出版 (16)山本 理顕「地域社会圏主義」.2013/9.LIXIL出版 (17)都市デザイン共同体「日本の都市空間」.1968.3.彰国社 (18)日笠 端,日端 康雄「都市計画 第3版増補 」.2015.1.23.共立出版 (19)クロード・レヴィ=ストロース(著),大橋保夫(翻訳)「野生思考」1976.3/30. みすず書房 (20) 蓑原敬,藤村龍至,饗庭伸,姥浦道生,中島直人,野澤千絵,日埜直彦,村上暁信「白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか」2014.5.26.学芸出版社 (21)「形態はアイコンに従う(Form follows icon)-情報化時代に適合する新しい建築をめざして-.2014.06.28< HYPERLINK "http://d.hatena.ne.jp/baby_theory/20140628/p1" http://d.hatena.ne.jp/baby_theory/20140628/p1> (21)前田紀貞アトリエ 「essay #20:流行建築 ----プログラム論・非作家性・ミニマリズム・軽い建築・皮膜建築・透明性---」 2006/09/04<http://maeda-atelier.com/forarchitects/ESSEY/essay20.html> (22)J-P・サルトル (著), 伊吹 武彦 (翻訳) 「実存主義とは何か」 1996.2.1.人文書院; 増補新装版