洪
瑀
蓁
コウ ユイシン
集落の老人の記憶にある技 「わぁ!あなたも草鞋を作れるんだね!」私が 草鞋を下げて花宅集落を訪れると、とあるおじ いさんが私に話しかけてきました。当時彼の目 は輝きに満ち、草鞋がおじいさんにとって、深 く生活の記憶が刻み込まれているものであるこ とが見て取れました。
地元が育んだ生活の知恵 花宅(ファアザイ)集落は台湾から見る と、離島の中の離島であると言えます。は 流通が不便で物資の取得が難しかったた め、地元の人々は巧みな技術を用いて、ま た生活の経験を積み重ねることで、道具を 多く作り出した、人が自然界で生き抜く術 や食物を得るための不便さを解決していき
岩牡蠣を割って牡蠣を取り出す
ました。例えば、海辺で巻貝を拾うための 「螺鉤仔(lei-gao-a)」、岩牡蠣をむくた めの「蚵挖仔(ou-wii-a)」、硬くなった ピーナツの殻を開けて実を取り出す「夾仔
ピーナツの殻を挟んで開ける
(nei-a)」など、これらのどれもが地元の 人々が育んできた智慧の結晶なのです。
螺貝の螺鈎仔
何でもできる、何でもする - 集落の奇人 馬蓋先 (マーガイセン) 花宅集落には82歳になるおじいさん-葉成仁(ヨウセイジン) さんがいます、町の人々は、彼のことをマーガイセンと呼んで います。葉さんは毎日海に出て生計を立てています。大海原は 彼の自然の遊び場なのです。早朝から付近の海辺で網をかけて 魚を捕え、ついでに岸辺に利用できるもの、珍しい漂流物がな いかどうかを探しに行きます。このため葉さんの家では、たく さんの「宝物」が門の外に並べられているのを見ることができ ます。拾って持ち帰ってきた漂流物を利用して、自分の生活に 必要な傑作を造り出しているのです。そんな中、長椅子のよう な工具が隅に置かれています。
私の名前は馬蓋先
馬蓋先おじいさんはあれは「草鞋床(わ らじどこ)」という、草鞋を編む工具で す。プラスチック製品が出現する前、商 船を通しじて取引して、台湾から草縄を 島に運び入れ、草鞋を編み上げる工芸を 行っていました(ポンフでは稲栽培がな かった)。昔の人々はみな草鞋を履いて 引き潮の時、で巻貝を拾い、海菜(海藻 の一種)を穫りその際、に滑らないよう に草鞋を履いていました。」と話してい ました。 近代の石油化学産業の発展により、住民 には次々とゴム靴、雨靴などの便利で耐 久性のある靴を得られるようになり、 「草鞋を作る」伝統工芸は次第に忘れら れていき、私たちの生活から遠いものと なっていきました。年配者の方々と草鞋 は、かつて非常に密接な関係にあったの です。現在、伝統的な漁村である花宅集 落では、馬蓋先おじいさんが今なおこの 貴重な草鞋床工芸技術を守っています。 馬蓋先おじいさんをの師と仰ぎ」、生活 工芸の知恵を学習することができます。
(馬蓋先おじいさん自家製の草鞋床)
老人の記憶から蘇る生活の技 馬蓋先おじいさんの伝統的な草鞋の工具と草縄、綿縄など関 連する工具や材料をすべて揃えて、草鞋を編み始めます。
草鞋床の部分: 草鞋耙(作業台)
ステップ 1
まず綿縄を作業台の4つの歯 に回し掛けて2つの輪を作り ます。この輪は、草鞋を編 み上げる際の「縦縄(経縄)」 1 となり、枠組みを意味して
います。余った縄は後でほ どけるよう結んでから、輪 軸に巻き付けてしっかりと 繋ぎ、編み上げていきいま す。
注1: 縦縄(経縄)とは、南北方向( 真上に向かう)の縄を指します。
ステップ 2
草縄をほどいた後、整えてから、 綿縄と撚り合わせて1束にします (綿縄を加えるのは、草鞋の強度 と柔軟性をあげるためです)、縦 縄の中間から突き通して、草縄を 外側に向かってまわす方法でしっ かりと巻き付けます。草縄の編み 始めは、合計4本の縦縄を2本(二 股2 ) を1本として、横縄を織物の ように上下にくぐらせて織り上げ ることを2回繰り返します。次に 同じように、縦縄4本(四股)それ ぞれに、横縄を上下上下の順でく ぐらせながら通していきます。 編み上げると同時に、二股の「草 鞋橇(2つ刃の櫛のような道具)」 を草縄の縦縄から草鞋の裏面の底 部分に差し込み、草鞋橇を動かし て横縄をしっかりと締め、草鞋を さらにしっかりとさせます。 注2: 「股」は助数詞です、縦縄 と線の間の空間を指します。
ステップ 3 足を草鞋に固定させる「緒(鼻 緒)」を作ります。この時、別の 綿縄を撚って、綿縄をねじれさせ ます。地元の人々はこの部分を 工法: 耳仔(耳)
「耳」と呼び、草縄と緒(鼻緒) を固定しやすいようにしていま す。 毎回横縄(緯縄)3を通すごとに、 必ず両側の縦縄 (経縄)で緒(鼻 緒)をつくり、合計3回行いま す。 注3:横縄(緯縄)とは、東西方向(横 方向)の縄を指します。
ステップ 4
第3ステップの縄を結び終えた 後、続いて作業台の上に散らばっ た状態の縦縄を、平行な状態に切 り替えます。続いて横縄を「四つ 股」式の編み方で、自分の足に 合った大きさにまで編み上げま す。 (編み上げる過程で、何度も草履 橇で草縄の面を引っ張ります)
工具:草鞋橇
ステップ 5 作業台の上の縦縄を下ろし、縦縄 を結んで草鞋の締めとして、しっ かりと引っ張って固定します。草 鞋の完成後、木づちで草鞋の横側 をたたいて草鞋を柔らかくして、 履いた後にしなやかさがあり、足 の裏に沿って曲がるようになりま す。
ステップ 6 続いて第3ステップの草鞋を固定 する“緒(鼻緒)”の輪に、別に綿 縄を結び付けてつなげれば、完成 です。
実際に履いてみて、 草鞋の技芸と意義を振り返る
作り上げるのには2時間もかかり、一足の草鞋の完成時間 は言うまでもありません。大変手間と時間がかかる作業を 体験してから、その草鞋で波間を步いてみた。そうすると 確かに馬蓋先のおじいさんが言うように、プラスチック製 の長靴、スパイクはとても便利であっても、草鞋の耐水性 、耐用性に取って代わることはできないのです。それに足 が草鞋に触れる感覚は思ったより足を刺激しません。かえ って自然に近づいて「大地からの気」を受け取るような感 触を体験できます。さらに重要なのは、靴の裏で石や藻類 を踏んだ時、足にダメージを与えないことです。
昔の生活における草鞋について考えると、かつ ては農村や漁村にあった日常的な産物であり、 見た目もよくなく、美しさと洗練されていると は言えなかったしかし活と自然と繋がりを持ち 「人と自然の共生」の関係にあります。自然か ら与えられ、自然を用いて、さらには自然へと 回帰することで、私たちの海と土地に優しく向 き合い、自然環境と永続的に共生して、一人ひ とりの心の豊かさと豊富な生態を実践できるの です!