Design Works 2012 - 2019

Page 1

Object

and

Theory.

2012 – 2019

D e s i g n Wo r k s

Between

Takuma Hashimoto


Contents & TimeLine

『再祀』

Design

『美術と建築における断片の交錯』

『古都 千年の責任』

『境界にて揺らぐ象徴または現象』 Kyoto Institute of Technology

『京都における「造る」と「泊まる」』 Vienna University of Technology

『空間における Rhythm の調律』

『帰る場所を失ったものたちに捧げる記憶としての痕跡』

『戦没者祭祀における碑に関する研究』 Kyoto Institute of Technology

『イスタンブールにおけるコンバージョン建築の調査研究』 University of Hyogo

Theory 『E・G・アスプルドの設計手法に関する研究』


Chart

"Architype" の模索

"Design" の背景化

建築と「象徴」

建築の「時間」概念

「空間」の保存と解体

理論と創作


古都 千年の責任 - 京都における「時間」と「場所」の再考 -

日本の現存する最古都である京都。 伝統的建築を保存するためにいくつもの建築法規が存在する。 しかし、現行の法規は景観条例に特化しており、 「京都らしさ」の表層のみを取り繕うばかりである。 本質的な「京都」を照らし出すために 新・京都建築法を制定する。




過去

現在

場所の位相

未来

京都は歴史と生活が表裏一体になっており、混沌とした都市である。 「時間」と「場所」の領域が縺れ合い、渾然一体となっている。 何千年と続く「時間 Scale」に対してその時々の「場所 Scale」が変容し、 「場所」が再び「時間」の概念に影響を与える。 多次元に亘って、まるで生物のように成長を続ける都市。


時間 Size

場所 Size

S

M

L

1990

1. 建仁寺 (1202)

2. 八坂の塔 (1240)

3. 清水寺 (847)

4. 妙見堂 (1689)

5. 本壽寺 (1456)

6. 多寶山實報寺 (1345)

7. 大谷本廟 (1272)

8. 六波羅蜜寺 (951)

9. 寿延寺 (1616)

10. 鴨川

解体

記念碑的建造物(寺・神社)

新築大規模建造物

S

M

L

1 2

9

2017

10

8

3 6

新築

5

4

7

20XX 現在の六原の地図を元に、場所性に影響する寺、神社などの古建築と新築大規模建 築物に対して、木造密集住宅がどのような位置関係にあるのかを明確にするために「場 セットバック

新旧の建築物が混在し都市的成長が顕著な京都市 東山区 六原を対象とする。木造 密集住宅が建ち並んでいた 30 年前、現在、道路拡張によるセットバック後の 20XX 年の地図を元に建築物の都市における「時間 Size」を S/M L にて分類する。

所 Size」を S/M L にて分類する。


時間 Size × 場所 Size

時間 Scale × 場所 Scale

清水寺 (847)

六波羅蜜寺 (951) 建仁寺 (1202)

大谷本廟 (1272)

木造密集住宅 八坂の塔 (1240)

多寶山實報寺 (1345)

大規模建造物

本壽寺 (1456)

寿延寺 (1616)

建仁寺

10 - 50yeaers ago

0 - 10yeaers ago

妙見堂 (1689)

815yeaers ago

六波羅蜜寺

時間 : M → S 場所 : L

1990 時間 : L → S 場所 : M

1066yeaers ago

時間 : S 場所 : S

2017 「時間」と「場所」の Size の振り幅が大きい建仁寺及び六波羅蜜寺周辺をより詳細

時間 : M 場所 : M

な Scale に分解する。

20XX 時間 : S → M 場所 : L

古建築と新築集合住宅の「時間 Scale」、古建築と木密住宅の「場所 Scale」の違い、 それぞれが異なる「時間」と「場所」の Scale が共存している。

時間 : L 場所 : L

街区のファサードに時間 Scale の小さい大規模建築が林立し、古建築が生き埋めに なっている。街区の表層と深層は異なる時間 Scale によって断絶しており、新築大規 それぞれの地図をレイヤー状に配置する。「時間」を縦軸に、「場所」を水平な広が

模建築により木密住宅の場所 Scale が限定されている。

りとすると、それぞれの立体的な枠組みが浮かび上がる。

更に次々とスクラップ&ビルドされるため、その度場所 Scale が影響を受けている。


建築における「時間」

古建築

木造密集住宅

保存・修復

新築大規模建造物

保存 用途変更

新築

改築

破壊

新築

建築類型によって「時間」の使い方が異なる。

破壊

ガラス

傷による割れ

コンクリート

アルカリ化による強度減退

木材

湿気・害虫による腐敗

鋼材

湿気による錆

紙材

風雨による損傷

石材

水分・傷による割れ

建築の時間軸と循環

「時間」と建築材料

新・京都建築法 大規模建築物施工条例 京都市街地において大規模建築を計画するときは、建築材料の耐久年数によって分節しなければならない。

第一項: 本条例の対象は建築基準法六条一項に定められた一定の大規模な建築物とする。 第二項: 敷地に隣接する建築物の築年数に相当するように、計画する建築物の建築材料の耐久年数を設定する。 また、接道する道の幅に対しても耐久年数を設定することができる。 設定された耐久年数に応じて、建築物を分節する。混構造となる場合は、Exp.J にて構造的に分割する。 第三項: 建築材料が耐久年数に達したときは、材料を交換あるいは変更しなければならない。 耐久年数に達するまで建築物は解体してはならないが、建築材料による補強は可とする。


隣接する建築物の時間 Scale と場所 Scale に応じてマテリアルを変化させ、大規模を分節する。

幅の広い道・古建築

幅の狭い道・新築建造物

建築材料の寿命 (100 年 ) 建築材料の寿命 (50 年 ) 建築材料の寿命 (30 年 )

木造柱・貫

鉄骨 架構

1つの建築の中で更新速度が変わる。 マテリアルの耐久年数のみを変え、マテリアルは規定しないことで 1つの建築の中で様々なマテリアルの密度がうまれる。

木造 架構

木造 垂木 ガラス 壁面 RC 壁式

大きな建築のスクラップ&ビルドではなく、建築の中での循環 によって周囲との関係性が変わっていき、修復する度に周囲の 建築と時間の使い方が一致していく。

残すべき風景との対峙。

木密住宅と更新速度が一致していく。


第I期 GL + 2000 scale = 1:500

第 II 期 GL + 2000 scale = 1:500

Site

scale = 1:5000

材料による建築の分節は周辺環 境との関係性も変化させていく。 耐久年数が長いセグメントは主 構造は変えず、空間の使い方を変 容させていく。一方で短いセグメ

第 III 期 GL + 2000 scale = 1:500

ントは主構造を変容させ、ユニッ ト化、更には減築することで建築 の隙間に路地が生まれていく。

0

5000

10000 (mm)


2017

Scale = 1:500

20XX

Scale = 1:500

2XXX

Scale = 1:500


美術と建築における断片の交錯 - 抽象絵画の美学原則から発想する建築意匠の可能性 -

美術と建築。 両者は長い歴史の流れで接近と離反を繰り返してきた。 その中で幾何学が最もその距離を縮め、 二次元と三次元の境界を解放した。 抽象絵画の原則を分析し、幾何学の断片を抽出することで 建築の断片への接近の可能性を図る。



"Composition"

"Consegna delle chiavi"

by Piet Mondrian

by Perugino

Art 美術が建築の構成や色彩に影響を与えたり、建築が美術作品の構図を決定してきた。 両者を密接に結びつけたのは幾何学による抽象表現である。 幾何学形態を媒介として美術と建築の接近を鑑みることができる。

Architecture

"Schroder House"

"Consegna delle chiavi"

by Gerrit Thomas Rietveld

in Sistine Chapel


Aesthetical 美術学 "Jewish Cemetery" by Jacob van Ruisdael by Lucio Fontana

形而上学

"St.Matthew and Angel" by Caravaggio

Apse in "Basilica of Sant' Apollinare in Classe"

"The Harlenquin's Carnival " by Joan Miró

美術 × キリスト教

by Georg Baselitz

Cave in Lascaux

美術 × 生活

Sculpture in "Strasbourg Cathedral"

古代

幾何学 抽象

"Pigeon with Peas" by Pablo Picasso

抽象形態

by Tony Cragg "The Melancholy and Mystery of a Street" by Giorgio de Chirico

by Jackson Pollock

透視図法

美術 × 宗教

Geometric Abstraction

"Consegna delle chiavi" by Perugino

抽象表現 × 有機的

近世

中世

近代

現代

象徴

"Micromegas" by Daniel Libeskind Perspective by Leon Battista Alberti

Greece Geometry Geometry of Gothic Church

幾何学

"Proun" by El Lissitzky

描画手法

断片 "The monument to the Third International" by Wladimir Tatlin

Abstract Drawing by Zaha Hadid

幾何学による ファサード Abstract Plan by Aldo Rossi

Geometry of "Parthenon" "Schroder House" by Gerrit Thomas Rietveld

建築学

Architectural

Plan of "San Lorenzo Basilica"

"Sonsbeek Pavilion" by Aldo Van Eyck

幾何学的抽象表現を媒介として、宗教・生活・描画・形而上学・象徴・断片など様々な観点から美術と建築の関係性を捉えることができる。


16 枚の幾何学による抽象絵画内をオブジェクト化することで、 二次元的概念が三次元としてのオブジェクトまたは建築に跳躍する際の思考と形成のプロセス、美術と建築における幾何学の普遍性の相違を分析する。


更に、絵画・オブジェクトそれぞれにおいて、幾何学の形態・量を類型化し、二次元と三次元の連関を照らし合わせることで、最も相関関係の強い絵画を選択する。 Automatism の手法にて自動生成され、選択されたオブジェクトは、その形態の各断片から 16 枚の絵画を類推することができる。


長方形 三角形

Geometrical Approach

正円 三角形 正円 軸

三角形

結合線

長方形

Roof

選択した抽象絵画を更に図式的・言語的に翻訳する。 Geometrical Approach において、絵画内の幾何学の運動 とベクトルからそれぞれを結合する一本の線を抽出する。

Exhibition Space

建築的欲求を満たす美術表現が両者の媒介となり、

Literal Approach において、絵画内の幾何学に抽象的な言

その欲求が幾何学を二次元から解放する。

葉のイメージを割り当て、それらを建築的言語に変換する。 言語は抽象的な形態とベクトルを持ち始め、図式と結合す

Ticket office Cloakroom Storage Backyard Cafeteria Administration room

ることで抽象的二次元から具象的三次元に飛躍する。 Lobby Shop Entrance Hall

静止

交差軸・ 全形態の支持 吹抜

変容空間

動線交錯

主要空間

中心 観察

誘導

衝突

象徴 沈黙

媒介空間 接近

運動

空隙

介入

断片

曖昧

Literal Approach


A

1

B'

5

8 6 7

2

1. Exhibition Space 9 11

4

2. Lobby 10

3. Shop 4. Entrance Hall

12

5. Ticket office

13

3

6. Cloakroom 7. Storage 8. Backyard 9. WC (Staff Men)

B

10. WC (Staff Wowen)

A'

11. WC (Men) 12. WC (Wowen)

GL + 1000

scale = 1:500

0

5000

10000 (mm)

13. WC (Disabled)


A

A'

0

5000

10000 (mm)

A-A' Section

scale = 1:500

B'

B

0

5000

10000 (mm)

B-B' Section

scale = 1:500



空間における Rhythm の調律 - 音楽における空間性と建築における時間性 -

音楽と建築。 音楽と建築はかつて同分野の学問とされていた。 しかし、これらに対する人間の態度はまるで異なる。 音楽が鑑賞する誰にとっても同じ速さで流れるのに対し、 建築は見る人間の動きが影響する。 空間の時間性によって両者の接近を試みる。



Axis 音楽

時間

軸線

空間律動 "San Lorenzo Basilica"

建築

空間

音楽空間

Circle

円環

"Epidaurus"

時間芸術と空間芸術 音楽は「時間」を構成し、建築は「空間」を構成する。 音楽における「空間」を考えるためには建築における「時間 = 律動」を考える必要がある。

建築物は地表に単に硬直しているようで常に律動している。 建築の律動は視覚を支配し、空間の体験をもって五感に作用する。

Ratio

比例

"Parthenon"

古代から形式を引き継ぎながら変容させてきた 3 つのタイポロジーを用いて空間の律動を設計する。


バシリカ式教会にはアプシスへ向かう絶対的な軸線が存在する。 宗教による空間のヒエラルキーが律動を決定する。

円形劇場には中央への視覚的かつ聴覚的運動が働く。 演出による空間の歪みが律動を形成する。

求心的なヴォリューム

空間グリッド それぞれの空間の律動を形成していく。 寸法体系の移行による空間の歪みは 一定方向へのベクトルを生む。 空間の律動を調律しながら一致させることで、 絶対的な時間の流れを創出する。

古代神殿の立面には厳格な静止と運動が共存している。 黄金比分節による寸法の移行が静的な律動を導く。

可視化ブレース


A WC( 男 ) 倉庫

厨房

舞台裏

楽屋

リハーサル室

搬入口

WC( 女 )

中庭

事務所

楽屋

B

B 舞台

楽屋

WC( 女 )

237 席

レストラン

WC( 男 )

WC ( 障害者 )

73 席 チケット売場

ロビー

エントランス

水盤

A

GL − 1000

scale = 1:250

Site / GL + 2000

scale = 1:250

0

2500

5000 (mm)


West Elevation

South Elevation

scale = 1:250

scale = 1:250


TFL GL+10900

トップライト: 合わせガラス t=20+20mm

外壁: 御影石仕上 t=50mm コンクリート下地 t=50mm

改質アスファルトシート防水トーチ工法 アクリルエマルション系高反射塗料 硬質ウレタンフォーム t=25+25mm コンクリート下地 t=50mm

RFL GL+6600

投光室 投影室 内壁:LGS 硬質 PB t=125+125mm グラスウールマット t=50mm

GRC 版

オーケストラピット

ロビー

吊下吸音体

床: タイルカーペット仕上 t=10mm モルタル t=20mm コンクリート下地

2FL GL+2170

リハーサル室 天井: 岩綿吸音板 t=8mm LGS 下地

倉庫

舞台裏

1FL GL−1100

舞台床: ナラ木仕上 t=10mm 捨て合板 t=10+10mm 鋼製下地

Section Detail

GL±0

エントランス

scale = 1:125

床: タイルカーペット仕上 t=10mm 捨て合板 t=10+10mm 鋼製下地

床: 磁器質タイル張り(400mm 角) モルタル t=20mm コンクリート下地

0

1000

2500

5000 (mm)



京都における「造る」と「泊まる」 - 京都伝統産業の空間構成を用いた宿泊施設の提案 -

京都ではホテルが観光から切り離され、単なる宿泊の場となっ ている。そこで京都ならではのホテルを提案するために 地域に根付く伝統産業とホテルを組み合わせる。 京都の伝統産業には製造工程に沿った特有の空間構成があり、 それは京都を空間体験できる貴重な財産である。 京都でしか得られない宿泊体験を提案する。

共同制作者: 筒井 航 / 藤田 拓(共に京都工芸繊維大学大学院 所属)



この建物は京都北区にある丸太産業の小屋である。 ここで製造される丸太は日本の代表的な様式である数寄屋建築に用いられる。 丸太の製造では林から杉が伐採され、その皮を剥き、 水で磨くという工程を経て、乾燥させることで完成する。 これらの工程は一連の小屋で行われ、 木々は裏の林から伐採され、川に沿って移動するという空間構成をもつ。 倉庫 丸太プール

乾燥室

製造工程


ホテル

製造工程

プールの軸によってホテルにシークエンスが生まれ、丸太の寸法が変わることでホテルの階高も常に変化する。 伝統産業による様々な風景が切り取られ、断面的な変化の隙間から丸太製造の様子が垣間見える。

A-A' Section

scale = 1:500

B-B' Section

scale = 1:500

B

1. 丸太倉庫

7 1

6

4

3. 丸太プール

9

3 A 2

2. ホテル入口

8

3

5

10

4. 倉庫

A'

5. 製造入口 6. 倉庫 7. WC ( 男 ) 8. WC ( 女 )

B'

GL + 1000

scale = 1:500

0

5000

10000 (mm)

9. 乾燥室 10. 搬入口


この建物は京都伏見区にある酒造産業の酒蔵である。 京都の酒は日本の和食を始め様々な料理に必要不可欠である。 酒の製造工程では米から麹を作り、それを発酵させ、 そして酒と酒粕に分離し保存する。 これらの工程は大きな工場のような蔵で行われ、 上層階から下層へと下り、1 階から出荷するという空間構成をもつ。 麹室 発酵室 上槽室 倉庫

製造工程


ホテル 製造工程

螺旋状に積層した産業のプロセスにホテルの構成を二重螺旋になるように挿し込む。 酒造とホテルが二重螺旋に噛み合うことでホテル内から酒造の様子と周辺の風景が展開されていく。

B

3

1

A-A' Section

scale = 1:500

B-B' Section

scale = 1:500

2

4

A

A'

1. 煙突

4

2. 倉庫 3. 上槽室

B' 0

5000

10000 (mm)

GL + 1000

scale = 1:500

4. ホテル入口 5. 搬入口


この場所は京都中京区にある染物産業の干場である。 京都の染物は日本の重要な伝統の一つである。 染物の製造工程では布を釜場にて漂白し、 洗い場にて染色し、水で洗い流し、乾燥させる。 これらの工程は小さな小屋で行われる。通りに面した入り口から工程が始まり、 奥へそして上へと上がる空間構成をもつ。

干し場

釜場

洗い場

製造工程


街路から奥に伸びるプロセスにホテル動線を交叉させることで多様な空間が生まれる。

ホテル

客室側では染物の干場の大きさによって客室の形が変化し、奥に染物の干場を設けることで奥への意識を生む。

製造工程 B

2 1

3

A

4

A'

A-A' Section

scale = 1:500

B-B' Section

scale = 1:500

5

1. 事務室 2. ホテル入口

B'

3. 受付 0

5000

10000 (mm)

GL + 1000

scale = 1:500

4. 洗い場 5. 釜場


帰る場所を失ったものたちに捧げる記憶としての痕跡 - 時間的再構築による事前復興の在り方 -

被災地に生きるとは。 住むために必要なすべてのことを満たしていたはずの場所が 一瞬にして白紙に戻る。復旧から復興へと長い過程を経て、 もう一度自分たちの「場所」をつくり直さなければならない。 人間の根源的な要素である記憶や感情の問いに対して 建築ができることを考えた。



SITE

埋立地

掘削跡地 敷地は淡路島にある埋立地造成掘削跡地。 島の内陸部の土壌が掘削され、沿岸部に埋立地が造成されている。 そのため、内陸部での過疎化、沿岸部での過密化が進行し、両者は分断している。

経済・産業の中心地

埋立地

工業化

人口集中

商業化

1995

2XXX

阪神淡路大震災

南海トラフ大震災

観光化

復興の中枢地

再構築した地の再破壊

復興住宅 仮設住宅

経済・産業の安定

仮設住宅の建設 掘削跡地

掘削開始

掘削終了

1970

埋立地と掘削跡地の時間軸は対極にある。 埋立地が生活の拠点であった一方、掘削跡地は半世紀以上の間人々の記憶から消えている。 そんな地に将来の生活の拠点が置かれようとしている。

半世紀、未踏の地で突如生活が始まる


この地は将来の被災者の心の拠り所となるのか。

ここにあるのは道路と水路のみが整備された広大な空地。 生活に必要な施設はもちろん、ここには「懐かしさ」がない。 将来ここに住む人々の「記憶」のための事前復興を計画する。

ビッグデータと人間、記憶。 復興の過程において最も重要なのは経済・産業・制度の再構築である。 社会基盤をゼロからつくる過程は、ビッグデータの膨大なデータの中から必要なものを収集し、新しい価値を生み出す過程に近似している。 現在、ビッグデータは人間とどのように関わることができるかが課題である。 ビッグデータを元に人々の記憶を形成するプロセスを構築することで、データと人間が近い存在になるとともに、被災者の心の事前復興になる。 ビッグデータに必要とされる人との関わり合いのプロセスが人間の記憶として表象する。


倉:可視化

ビッグデータを元に都市と内陸に

可視化することにより、それぞれに価値を持たせる

新たな連帯を創り出す拠点

クラスター:経験 可視化されたデータを元に 人の経験という付加価値が生まれる

データの可視化

+ +

集積された無数のデータ

データステーション:集積

仮説住宅群

データの集積 ホール:伝達

協議会堂:言語化 経験という価値を得たデータは伝達

可視化・経験・伝達・言語化というプロセスを経てこの地

されることで人々の記憶に纏始める

発信

における帰属性を得たデータは人々の記憶として再び蓄積さ れるとともに都市へと発信される。

更に言語化・論理化されることで

データ + 帰属性

記憶としての核を持ち始める

再帰性 それぞれの建築間の間隙を縫うように水路をオマー ジュとした軌跡を挿入する。 掘削跡地を包括する大きな時間の流れはそれぞれの建 築、また建築間を流れる断片的な時間の統合による。

水路 建築間の軌跡

記憶 時間の循環をつくることで、この 地において突如始まる復興への時間 軸へと緩やかに繋ぐ。


3600 × 6000

3600 × 3600

6000 × 8500

6000 × 6000

8500 × 7000

8500 × 8500

7000 × 5000

7000 × 7000

それぞれの建築の時間的結合はグリッドの操作による。 構成されているグリッドを緩やかに移行していくことで、連続的に建築を知覚することができる。 建築自体のモノとしての存在が失われた時、建築とデータは人間性の背景に移行し、「日常」が浮上する。

5000 × 5000


個体

データの群体であったものが、可視化されることによってそれぞれに意味のある個体となる。

B

6

2 A

7

9 3

4 8

1

A'

1. 情報センター

10. メディアセンター

2. エントランス

11. ホワイエ

3. 展示室

12. 研修室

4. 特別展示室

13. 応接室

5. ラウンジ

14. 館長室

6. 資料庫

15. 写真室

7. 中庭

11

8. 荷解室

12 10 13 14 15

9.WC

5

B'

GL + 1000

A-A' Section

古代から重宝物を補完するために寺社仏閣に用いられてきた「校倉造」をオマージュとする。

校倉造

保存する「個体」としての象徴

scale = 1:2000

scale = 1:2000

GL + 5000

scale = 1:2000

B-B' Setion

scale = 1:2000


解体

個体は経験のために人間によって解体され、それぞれに時間と場所を形成していく。

B'

クラスター

21 1

3 2

9

19

4 5

6 A

19

11

1. ゲストルーム 12. ギャラリー

20

12 18

7 8

10

13 14 15

16

17

A'

2. レジデンス

13. セミナー室

3. 研修室

14. 準備室

4. 創作室

15. ワークショップ室

5. 備品庫

16. 受付・案内所

6. 屋外試験場

17. 総合管理棟

7. 作業室

18. コワーキング室

8. 大研修室

19. レンタルオフィス

B

9. カフェテリア 20. サテライトオフィス

GL + 1000

A-A' Section

時間を「解体」して場をつくっていく

scale = 1:2000

scale = 1:2000

10. 自由工房

21. レジデンス

11. レストラン

B-B' Setion

scale = 1:2000


表層体

ホール

解体された経験は伝達されることによって、人々の新たな記憶の表層を纏始める。

1. プロムナード

A

14. 電気室

2. エントランスホール 15. 機械室

1 2

7

3 24 23 26 25

4

5

B

6

9 10

8 11 12 13 18 14 17 19 1516

20 21 22

A'

GL + 1000

A-A' Section

地形と人の動線を表層していく

B'

3. レストラン

16. 搬入口

4. 厨房

17. 大道具倉庫

5. 搬入口

18. 舞台

6. 小アリーナ

19. 舞台裏

7. ロビー

20.WC

8. 中庭

21. 控室

9. 事務室

22. 備品庫

10.WC

23. ホールアネックス

11. 制作室

24. 倉庫

12. リハーサル室

25.WC

13. 楽屋

26. 搬入口

scale = 1:2000

scale = 1:2000

B-B' Setion

scale = 1:2000


結晶体

協議会堂

言語化されることで、表層は核を持ち始め、結晶を形成していく。

A

1. ピロティ

11. ロビー

2. 管理室 3. エントランス

13. レストラン

4. ホール

1

7

B

2

3

A'

GL + 1000

A-A' Section

8

5. 大議場

14. 公衆控室

12

14

7. 事務室

5

8. 議員控室

B'

9. 委員会室

scale = 1:2000

19

16

16. 傍聴席 17. 議長室 19. 応接室

20

10.WC

15. 貸会議室

18. 副議長室

15

9 10

scale = 1:2000

17 18

11

6. 準備室・資料室

6 4

動線と形態が人の結晶をつくる

12. コミュニティ議場

13

22 21

GL + 5000

scale = 1:2000

B-B' Setion

scale = 1:2000

20. ロビー 21. 湯沸室 22.WC


データステーション

群体

A

再び蓄積されることで、群体の一部となる。それは人々の記憶を内包した「集積」である。

B

1. インフォメーション 2. 一般用エントランス

21 可視化軸

1

2

3. カフェテリア

3 4 5 6 7 8

4. 従業員用エントランス 5. 事務室 6. オープンラボ 7. 研究室

9

9. 研修室

10

10. 情報処理基盤 11. 資料室

20

12. ビッグデータ管制室

18

17

22

12

11

13

再帰軸

14

13. 広場 14. ロビー 15. 管理人室 16. 太陽光発電管理施設 17. データゾーン 18. オーディトリアム

A'

19. 印刷・写真室

16

GL + 1000

scale = 1:2000

8. 会議室

19

群体の媒介となるように建築群を呼応させる

A-A' Section

scale = 1:2000

B'

15

20. レストラン 21. レジデンス 22. データ総合管理棟

B-B' Setion

scale = 1:2000


A'

B'

データステーション B

クラスター

仮説住宅群

協議会堂

ホール

Master Plan

scale = 1:3000

A

0

50,000

100,000 (mm)


0

A-A' Section

scale = 1:3000

100,000 (mm)

scale = 1:3000

0

B-B' Section

50,000

50,000

100,000 (mm)


)

)

人間は「日常」が失われた時に初めてその大切さを認識する。 帰属と再帰の循環が人間を人間たらしめる。


境界にて揺らぐ象徴または現象 - Brexit に贈る commemoration の再考 -

"Brexit (Britain + exit)" は英国の欧州連合から離脱を表す言葉。 Brexit を形象するモニュメントは 今までの「記念碑」とは全く異なる意味を示す。 それは政治的イデオロギーに大きな影響を受け、 その都度モニュメントの意義さえも変動する。 もはや本来の "Monumentality" では表象できない。



B

N

0

10000 5000

Ax

is

to

50000mm 30000

UK

A

A’

Eurotunnel

敷地は Euro Tunnel 仏国側の空地。

B’

英国と仏国の境界を結ぶ Euro Tunnel は本来、欧州の協調の証であったが、

N

今日では圧倒的な距離の遠さを感じる。

Site

scale = 1:2500

Plan

scale = 1:100

0

1000

2500 (mm)


「個」を示す断片

ナショナリズム

グローバリズム

「集」を示す断片

英国の離脱はナショナリズム対グローバリズムという現代の全世界で共通する現象を象徴している。 本来同じ姿をしていた両国家がそれぞれの性質の元、形式を変えた。 それらは同心円上に寄り添うように立ち、Euro Tunnel を象徴する構造体によって共に支えられる。 Euro Tunnel が両者の「協働」の象徴として可視化される。

Steel Structure & Polycarbonate Sheets

それぞれの断片は鉄骨梁によって支えられ、 被覆であるポリカーボネートによる透明性は天候や見る角度によって変容する。 時に重なり合い、曖昧な影を落とすことで両者の間に揺らぎを与える。 そして、それは世界の不安定を暗示しようとする。


A

Steel beam (I-250×100×6×6mm)

A’

+1925 +1890

B’

Steel column (75×6mm) 4mm polycarbonate sheets

Steel beam (I-86×15×3×6mm) Steel joint

+1034 +1000

B

B’

Steel beam (I-86×15×3×10mm) Holding down bolt (M4×140mm) Base plate +40 ±0

Concrete base 0

Mud slab 0

1000

scale = 1:100

2500

Section Detail

10000 (mm)

(mm)

Section

5000

scale = 1:20


英国と仏国の境界にて揺らぎ、不安定な影を落とす。 それはもはや「モニュメント」というより「現象」に近い。


再祀 - 軸の解体 と 象徴の発現 -

負の要素が国家・都市・地域・共同体の形成概念になっており、 死者を神格化する行為である「祭祀」によって人々は 「 あらゆる人間社会は、結局のところ、死に直面して互いに結束した人々に他ならない 」 Berger, Peter L, The Sacred Canopy: Elements of a Sociological Theory of Religion, 1967

その土地の思想・文化を受容し、都市・風景を記憶していく。 日本では古来から山や川などの自然物に神が宿ると考えられ、 象徴性を担わせてきた。それが近代思想の介入や 戦争のプロパガンダにより、象徴の対象が都市へと移行した。 政教分離によって宗教の在り方が制限されている 現代において、都市における祀り方を再編成する。



各国の祭祀形式の相違

Pyramid of Tuileries Palace

Neue Wache

Hiroshima Peace Memorial

負の要素が国家・都市・地域・共同体の形成概念になっている。 死者を神格化する行為である「祭祀」によって人々はその土地の思想・文化を受容し、都市・風景を記憶していく。


戦没者祭祀空間における碑に関する研究

自然 太陽・山河・海・など自然をもとに神域を形成

・近代思想の介入 ・戦争のプロパガンダ

都市 人工的に象徴を形成し、人々の生活に組み込む

World War II

日本は古来から山や河などの自然物に神が宿ると考えられ、象徴性を担わせてきた。 それが近代思想の介入と戦争のプロパガンダにより、象徴依存の対象が都市へと移行した。


引き継がれる軸線

軸線

概念

大東亜建設記念営造計画

広島平和記念公園

千鳥ヶ淵戦没者墓苑

1942

1952

1959

戦争賛美

戦争反省

戦争反省

戦前から戦後にかけて象徴する観念は、戦争賛美から戦争反省に変化したのに対して、日本は同一の空間形式を引き継いでいる。


東京祭祀図

靖国神社

建築構成:社殿 祭祀形式:軸線・廻廊

本殿

拝殿

鳥居

戦後

東京都戦没者霊苑

建築構成:雁行・斜軸 祭祀形式:求心

戦前

上野凱旋門

鳥居 公園 樹木

上野凱旋門

東京都戦没者霊苑

水域

建築構成:左右対称 祭祀形式:軸線交差

浅草凱旋門

軸線:皇居

上野公園

東京都慰霊堂

建築構成:伽藍・対称 祭祀形式:求心 記念館

浅草凱旋門

東京都慰霊堂

建築構成:左右対称 祭祀形式:軸線交差

浅草寺

靖国神社 軸線:靖国神社

神田凱旋門 橋

建築構成:左右対称 祭祀形式:分岐

日本武道館

日本武道館

靖国神社

神田凱旋門

建築構成:求心・対称 祭祀形式:分岐

千鳥ヶ淵戦没者墓苑 堀

日本橋凱旋門 川

建築構成:左右対称 祭祀形式:斜軸線 皇居

日本橋凱旋門

千鳥ヶ淵戦没者墓苑 軸線:靖国神社

日比谷凱旋門 皇居

建築構成:左右対称

建築構成:左右対称 祭祀形式:求心

祭祀形式:軸線交差 日比谷公園

皇居

日比谷凱旋門

皇居を中心として、意義の異なる戦前と戦後の祭祀空間の形式・軸線が混在している。


対象敷地: 東京都 千代田区 北の丸公園

明治初期:江戸城 北の丸

1947:兵営地

2018:国民公園

皇居の北西に隣接するこの地は、嘗ての江戸城の北の丸が配され、維新後は明治政府によって兵営地とされた。戦後、皇居外苑の緑地として整備され、国民公園に指定されている。 靖国神社、千鳥ヶ淵戦没者墓苑、日本武道館が周辺に存在し、この地一帯が戦没者祭祀のメッカとなっている。


日本国憲法 第二十条: 政教分離原則 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。 いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

政教分離に反した建築の構成

靖国神社への「軸線」の存在

墓苑の形式が暗示する宗教性

拝殿(前屋)・ 本殿(納骨堂)という神社形式 靖国神社

本殿への軸線

千鳥ヶ淵戦没者墓苑

正面性・対称性・一方向性


祭祀形式の再編・自然崇拝への回帰

水淵

靖国神社

森 苔

軸線の解体

桟橋

石垣 並木

滝 池

北の丸公園

水路 舟場

水平線

水淵

階段

千鳥ヶ淵戦没者墓苑

都市 – 建築 – 自然へ

自然要素の抽出

建築による自然の顕在化

政教分離政策に則り、靖国への軸線を解体し、対岸の公園へ象徴性を求める。 敷地に潜在する自然要素を呼び起こすことで、古来の自然崇拝によって祭祀空間を形成する。 空間 ・ 形態 ・ 情景 の観点から日本古来の自然と象徴の関係性を体系化した。そこから岸・並木・丘・谷・崖という自然地形に対して、それぞれ橋・廊・水平線・水路・階段という象徴の在り方を抽出した。


空間

形態

情景

装置

始源

− 境界的空間 −

Shore 此岸と彼岸の境界

堀 Moat 半島 Peninsula

彼岸

門型 Gate

境界

此岸

Shore

Bridge

並木

石張

伊勢神宮

− 接続的空間 −

Tree

島(内陸) Island

ピロティ Piloti

島(沿岸) Island

Road

屹立する生命と接続

塔型 Tower 接続

協調

集束

円弧

Arc

屋根

Wall

対立

破風 Gable

Tree

− 展延的空間 −

Hill 展延的な魂の解放

堀・川 Moat / River 三角錐 Pyramid

川 River

砲弾型 Shell

Fire

水平線 山・川 Mountain / River

諏訪大社

量塊 Mass

海 Sea 破風墳墓

洞窟・谷

水平

Gable Tomb

展延

中心

山・池 Mountain / Pond

Horizon

Hill

熊野本宮神社

− 中心的空間 −

Valley

水を循環させる中心的構造

水路 横断

墳墓 Tomb

谷 Valley

Valley

水路 奇形 Malform

山・海 Mountain / Sea

錐型 Drill

Waterway

天岩戸神社

− 消失的空間 −

Cliff

消失 海

屏風型 Folding

水淵での魂の消失

富士山

階段

丘 Hill

山麓

領域

崖 Cliff

山 Mountain

水平型 Horizontal

Cliff

階段 Mountain

Stair

元乃隅稲成神社


石垣

岸 並木

抽出した概念を敷地の自然に合わせるように挿入することで、自然が生む象徴を顕在化させる。


既存の墓苑がもつ祭祀経路の骨格を延長し、既存の舟場から桟橋へ、 そして並木に沿った廊へと接続し、滝の下に降り、水路に沿って地下から墓苑へと抜ける。 N

A'

C'

靖国神社への軸線

墓苑の外構の骨格を延長

桟橋

舟場

B'

C

水平線 前屋

水路

階段

千鳥ヶ淵戦没者墓苑 納骨堂

墓苑と水源の接続 B

既存の祭祀経路

正面性・対称性・一方向性 の 解体

軸線

A

Plan scale=1:1500

戦火の中で水を欲して亡くなっていった戦没者のために、滝の水源と納骨室を接続することで戦没者に水を手向ける。 この構成に従って墓苑の外構を改変し、視線を通すことで、軸線を構成している正面性・対称性・一方向性を解体する。 このように堀を介して動線と視線を循環させることで、墓苑と公園に一体的な領域を形成する。


A-A' Section scale=1:1500

B-B' Section scale=1:1500

C-C' Section scale=1:1500


桟橋 Bridge

Section scale=1:200


廊 Wall

Section scale=1:200


水平線 Horizon

Section scale=1:200


水路 Waterway

Section scale=1:200


階段 Stair

Section scale=1:200



舟という速度、樹木の振る舞い、水平な風景の切り取り、滝による空気感の変化、水源から漏れる水の速度。 自然による曖昧で定義されない現象との呼応によって、靖国への軸線を身体的かつ時間的に解体していく。


戦没者祭祀における碑に関する研究 − 近現代日本国家の戦争記念碑の変遷とその構成 −

世界大戦は未曾有の惨劇をもたらし、 「死」の観念を変容させた。そのことが碑やモニュメントの概 念に影響を与えた。しかし世界大戦から半世紀以上が経過し、 実感をもって想起できる人が少なくなっている。日本の戦没者 祭祀は本来の慰霊という役割を蔑ろにしていまい、靖国問題を 始めとする政治闘争のみが浮き彫りになっている。 テロリズムや大規模自然災害が身近な存在となりつつある 現代において、祭祀空間を再考する必要があると考える。


研究対象は初めて戦没者祭祀が国家規模で行われた戊辰戦争から第二次世界大戦までに関連する碑とする。死者儀礼には多様な信仰・思想の流れがある。国家と軍部の結びつきにて発展してきたのが日本の戦没者祭祀である。大日 本帝国による全体主義から戦後に民主主義国家へ変遷するにおいて、日本は戦没者祭祀空間を碑としてどのように表現したのか戦前・戦時中・戦後に分類して考察する。日本国家が大きな被害を被った第二次世界大戦を境に戦前の碑 20 基、戦時中の碑 19 基、戦後の碑 21 基の計 60 基を調査対象とする。 都市・空間論的分析・形態論的分析・象徴論的分析 祭祀空間を都市・空間的視点から捉えると、戦前から戦時中の忠霊塔設計競技まで、単体で建立されるか街区形式を内包させながら成立していた。周辺環境とそれほど大きく関連することはなかった。大東亜建設記念営造計画にて その構成は都市スケールへと拡張し、都市空間を形成するようになった。戦後になると、碑が国土的なスケールを帯び始める。そして碑が形成する軸線の先には日本本土が存在し、日本が祭祀空間の焦点となっている。これらの慰霊 碑のほとんどは海洋を超えて日本列島への軸線構成が見られる。また列島への軸線が見られない場合もその先には日本人墓地がある。建立される時に日本を意識して計画されたことが明らかである。建立された地には日本庭園が同時 に造園され、日本をどこかに感じることのできる空間となっている。 祭祀空間を形態的視点から捉えると、明治期の日本は招魂碑・忠魂碑・忠霊塔にて日本の型を模索した。それが忠霊塔設計競技にて巨大な墳墓型と形式が統一された。しかしその結果に近代の建築家たちは満足せず、大東亜建設記 念営造計画にて日本のモニュメンタリィを再考する。この検討が戦後日本の慰霊碑の造形に大きく影響する。戦後の碑の形態は建築家が独自の造形を用い、建立される地域に根ざしたデザインを志向している。 祭祀空間を象徴的視点から捉えると、戦前・戦時中を通して天皇への忠義や国家宣揚、戦没者の顕彰など様々な目的の象徴物として碑が建立された。しかし終戦を迎えると、その概念が一変する。碑の対象は戦没者になり、慰霊の 象徴として碑が建立される。 戦前の碑の形成概念が戦時中にまで継承され、国家総動員による国家統率の思想によってその役割が社会的影響をも帯び始める。国体の誇示を国民が一丸となって高揚させるために、没個性的なデザインが生まれた。戦争が勃発す ると、大東亜共栄圏の思想によって祭祀空間が拡張し、同時に日本主義と同調し日本祭祀形式を求めるようになる。戦後、「死」の観念が変容し、戦争への自責の念か建立背景となる。国家主義と碑の連関は解体され、個人・地域主 義的な碑の造形が志向される。このように戦没者祭祀空間における碑の造形は時代を越えて流通していくが、戦時中は国家権力・イデオロギーの介入、戦後は靖国問題などの政治性を纏うことで戦没者をめぐる様相が複雑化している。

明治紀念標

日比谷凱旋門

第一軍戦死者紀念碑

多宝塔

昭忠碑

戦勝紀念塔計画図

上野凱旋門

名古屋凱旋門

日本橋忠魂碑

旅順白玉表忠塔

安東忠霊塔

可睡斎護国塔

爾霊山表忠塔

大連忠霊塔

奉天忠霊塔

新京忠霊塔

哈爾濱忠霊塔

斉斉哈爾忠霊塔

承徳忠霊塔

遼陽忠霊塔

忠霊塔第一種一等

忠霊塔第一種二等一席

忠霊塔第一種二等二席

忠霊塔第二種一等

忠霊塔第二種二等一席

忠霊塔第二種二等二席

忠霊塔第三種一等

忠霊塔第三種二等一席

忠霊塔第三種二等二席

国民広場の建設案

八紘之基柱

大東亜建設忠霊神域計画

大上海都心改造計画

大東亜聖地の計画

靖國神社神域拡張並整備計画 七洋の首都

或る町の忠霊堂

東京市忠霊塔設計競技

東京市忠霊塔設計競技

原爆死没者慰霊碑

太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔

千鳥ケ淵戦没者墓苑

硫黄島戦没者の碑

戦没船員の碑

比島戦没者の碑

中部太平洋戦没者の碑

国立沖縄戦没者墓苑

南太平洋戦没者の碑

ビルマ平和記念碑

ニューギニア戦没者の碑

鎮魂の丘

東太平洋戦没者の碑

西太平洋戦没者の碑

北太平洋戦没者の碑

第二次世界大戦慰霊碑

インド平和記念碑

日本人死亡者慰霊碑

樺太・千島戦没者慰霊碑

日本人死亡者慰霊碑

ボルネオ戦没者の碑

都市・空間論的分析の図式化

形態論的分析の図式化


E・G・アスプルドの設計手法に関する研究 − ストックホルム市立図書館の設計過程の分析 −

Erik Gunnar Asplund (1885-1940)はスウェーデンの近 代建築に大きな影響を与えた建築家である。本研究はストッ クホルム市立図書館を主題として、実地調査の成果と Digitalt Museum に保管されている建築図面 88 点を用いて設計過程を 追いながら、設計手法の一端を明らかにしたものである。 1919 年から 1928 年までに描かれた図面を全 4 期に区分した。


第Ⅰ期において、アスプルンドは背後の丘に圧倒されない簡素な建築の形を早い段階から決めていたが、いくつか異なった形態を模索した。アスプルンドは背後にある見晴らしの丘を明らかに意識しており、パースはすべて交差点 から見た構図で、背後にある丘も欠かさずに描かれている。建物と丘の関係を重要視していたことが明確である。またアスプルンドは丘の上にある建物との関係も意識しており、交差点から見るとこれら 2 つの建築が対比されている。 建築は比例に基づいて設計されており、立面にはオーダーを取り入れるなど古典主義建築の要素が見られる。 第Ⅱ期において、アスプルンドはアメリカに公共図書館の調査を行った後、ロの字型ヴォリュームの中に円形のロトンダを内包させることを提案したが、委員会によってロトンダは八角形になる。しかし、案は再び円形のロトンダ に戻りドーム型の屋根が置かれたに描かれた平面図は黄金比と正方形によって綿密に構成されている。立面は黄金比と正円によって構成されており、オーダーや装飾が加えられている。断面は内壁に沿った円状の通路が徐々に後退し ており、ロトンダ内を球形に近づけている。 第Ⅲ期に配置が大きく変更される。これまでメインエントランスはオーデンガータン通りに面していたが、全体が時計回りに 90 度回転する。こうした配置変更は多くの人から称賛を浴びた。さらに翌年に全体がわずかに時計回り に回転するように変更がされて、手前にあった広場がなくなった。これらの大きな配置計画の変更は、すべて委員会の要望に基づいたもので、アスプルンドはそれに従った。しかし平面および立面の構成は、自らの案に変更を加える ことはなかった。平面はより綿密に構成されて、立面は構造上の理由から陸屋根に変更された。黄金比の用い方も変わり、オーダーが排除されて、コーニスが用いられるなど古典主義建築の要素にも変更が見られる。 第Ⅳ期の着工後も検討が続けられた。平面の構成に大きな変化はないが、立面のオーダー、コーニスなどの装飾がなくなるなど、古典主義建築の要素が徐々に排除されて、建築がより簡素になった。外観は初期に考えていた丘を考 慮した単純な形そのものになる。その一方、内部にはエジプト紋様のレリーフなどの装飾は残された。 アスプルンドによるストックホルム市立図書館の設計過程を追うことによって次の点を明らかにした。第 1 に、平面では初期に黄金比を建築全体の形を決定するために用いていたが、正方形に変更された。第 2 に、立面では黄金 比をディテールに用いていたが、建築全体に用いるようになる。第 3 に、古典主義建築の要素であるオーダー、コーニスの変更が頻繁に繰り返されて、最終案において完全に排除された。 アスプルンドは地形や周辺環境を読み込みながら、立面の装飾を排除しつつも、古典主義建築の設計手法を用いて北欧近代建築を模索していたことが明らかになった。

第Ⅰ期

第 II 期

第 III 期

第Ⅳ期


イスタンブールにおけるコンバージョン建築の調査研究 - 近年の動向およびデザイン手法の分析 -

本研究は、トルコ第一の都市 イスタンブールにおけるコンバージョン建築の動向、 およびそのデザイン手法を明らかにしたものである。 研究対象は建築ガイドほかから収集したもので、本稿はこうし た文献調査に基づく実地調査の成果をまとめたものである。 文献調査によると建設当初の用途とは異なる用途の建物として 一部でも利用されている建築は多量であった。本稿は、 実地調査を行った全 35 作品について論じたものである。


産業施設からの転用事例: 図 1 は近代の倉庫を転用したものである。展示室は柱心の上に計画的に配置された展示パネルによって内部空間が区切られている。図 2 のサントラルイスタンブール博物館は新棟をともないながら転用 された。この大型施設の転用が起点となり、この産業地域が文化・教育地区に生まれ変わった。図 3 は保存・改造のバランスがとれた例で、かつての塩倉庫がオフィスに転用された。内壁はそのまま再利用されて、既存建築の価値が 活かされている。図 4 は内外ともに補修されて、工場のドーム型の大空間が展示空間を含む文化施設に転用された。一方、図 5 は外観は補修されて、内部は全く作り変えらえた。図 6 はタバコ倉庫を宿泊施設に転用したものである。 海辺からの景観を考慮して地階に大空間の吹き抜けが設けられた。産業施設からの転用例は、大空間を活かした内部の改造が有意義であることを示唆している。 居住施設からの転用事例: 図 7、8 は水辺の居住施設を宿泊施設にコンバージョンしたもので、海峡沿いの宮殿や邸宅は、近年、同様に次々と転用されている。図 9 は宿泊施設を転用したもので、上階に 2 層が増築された。図 10 は集合住宅が宿泊施設に転用されたものであるが、増築の方法が図 9 と異なる。新棟が既存棟の背面に増築されて、ホールが客室に連結された。図 11 も同じ手法による。一方、図 12 は住宅群を商業施設にコンバージョンした建物 が並んでいる通りで、新築の商業施設の中に店舗、レストランなどの商業施設が一階に入った居住施設が通りに沿って点在している。居住施設からの転用例は既存建築の周辺に新棟を増築して新棟と既存棟をつなぐという手法が多く 見られる。 事務所からの転用事例: 図 13 は銀行本店を図書館、レストランを含むカルチャーセンターに転用したものである。道路の反対側に新棟が増築され、ガラスの棟が既存棟と新棟を結ぶ。図 14 は大使館から商業施設に転用されたもので、 一階に商業施設、二階にオフィスなどが入っている。 その他の用途の建築からの転用事例: 図 15 は展望台に転用したもので、この記念碑的建造物は 14 世紀から用途が点々と変わり、今日に至った。図 16 は最上階の製図室や高い天井高を活かして増築された研究室などの一部を除き、 内外ともに大きく変更されることはなかった。図 17 は図 16 と同様に、用途が点々と変わり、今日ではイスタンブールを代表するレストランとして生まれ変わった。 イスタンブールのコンバージョン建築の特徴は、第 1 に産業施設は展示施設や文化施設に、居住施設は展示施設や宿泊施設に転用される傾向が挙げられる。第 2 は要所を締める刑務所、監視塔、武器庫、灯台などの特殊な建築がコンバー ジョンされて、観光業に寄与している点である。第 3 は現代建築の要素が積極的に導入された例が多く、その場合、内部がこうした要素によって大きく改造されており、道路に面する立面は保全された例が大半を占めている点である。

図 1 Istanbul Modern

図 2 Santralistanbul Müzesi

図 3 Medina Turgul DDB

図 4 Tophane-I Amire

図 5 Haliç Congress Center

図 6 Shangri-La Bosphorus

図 7 Four Seasons Hotel Bosphorus

図 8 Çırağan Palace

図 9 Pera Muzesi

図 10 Harikzedegan Apartments

図 11 Maçka Palace

図 12 Bağdat Street

図 13 SALT

図 14 Narmanlı Han

図 15 Galata Kulesi

図 16 İtü Taşkışla Kampüsü

図 17 Kiz Kulesi

全事例リスト


性別

2012 - 2016

2016 年 8 月−9 月 2016 年 9 月−10 月 2017 年 1 月−2 月

永森建築事務所 MATSUYA ART WORKS 坂倉建築研究所 川添善行都市建築設計研究所 設計組織 AMORPHE

兵庫県立大学 環境人間学部 環境人間学科 『イスタンブールにおけるコンバージョン建築の調査研究』

2016 卒業論文

『E・G・アスプルドの設計手法に関する研究』

2017 修士論文

橋本 卓磨

2014 年 10 月−12 月

2015 論文

2016 - 2019

Takuma

2014 年 1 月−5 月

京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 建築学専攻 博士前期課程 『戦没者祭祀における碑に関する研究』

2017 - 2018

ウィーン工科大学 交換留学

2019 -

東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 博士後期課程

Hashimoto

Language

国籍

Internship

出生地

1993 年 11 月 26 日 兵庫県 淡路市 日本 男

Education

Personal

誕生日

日本語 英語 独語

母国語 TOEIC 675 A1 German Course 受講


Award Skill

Field of Study

建築意匠設計 建築理論 建築史・美術史 Vector Works Rhinoceros Archi CAD Sketch Up Jw cad Auto CAD 3D modeling Photoshop Illustrator InDesign Lightroom Microsoft Office Mac OSX Windows

●●●●○ ●●●●○ ●●●○○ ●●●○○ ●●●○○ ●●○○○ ●●●●● ●●●●○ ●●●●● ●●●●● ●●●○○ ●●●●○ ●●●●● ●●●●○

3 位 / 兵庫県立大学卒業設計講評会(2016 年 2 月) 100 選 / せんだいデザインリーグ(2016 年 3 月) 70 選 / 福岡デザインレビュー(2016 年 3 月) 一次通過 / シェルターインターナショナルコンペティション(2016 年 10 月) 4 位 / KIT × 清水建設 産学協同デザインコンペ(2016 年 11 月) 銀賞・銅賞 / キルコスインターナショナルコンペティション(2016 年 12 月)


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