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755:バイオリンの成熟

バイオリンの成熟

The Making Of A Violin

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エイミー・ミズラニー

ある日の朝、バイオリンのレッスンを受けるため、先生の教室に入ってみると、机の上に2挺のバイオリンが置いてありました。私の目はすぐに、新しく見える方に引きつけられました。新品のバイオリンの美しさと言ったらありません。華麗な曲線、つやつやで傷ひとつなく、光を受けて輝く表板、魅惑的ならせんを描く渦巻き、そしてその側に取り付けられた糸巻き。

熟練したバイオリン製作者の手でできたばかりのこの美しいバイオリンの横に、別のバイオリンがありました。曲線は同じく華麗ですが、ボディのところどころに欠けあとや傷があって見栄えが悪く、表板は光沢がない上に塗装が傷んでいます。渦巻きはちゃんとしていますが、糸巻きは傷だらけだし、ネックは何年も握られてきたことで擦れています。

「なにこれ! 壊れる寸前の最悪の状態のバイオリンだ」と思う人もいるでしょう。でも先生が言うには、新品のバイオリンは見かけは完璧だけれど、古いバイオリンの方が美しい音色を奏でるというのです。あちこちぶつけられ、落とされ、ないがしろにされ・・それなのにさらに優しい響きを生み出すのだと。

バイオリンは時と共に音質が安定し、音量が出てくるそうです。最高の能力を引き出すには、何時間も演奏し続け、調弦に調弦を重ねる必要があります。弦は切れ、駒は位置がずれ、糸巻きは緩んでいきますが、それもすべて大切な過程の一部です。

私自身も、何度もぶつかられ、落とされ、ないがしろにされたと感じることや、傷つけられ、心にひびが入りそうに感じることがあります。バイオリンの弦が切れるように心の糸が切れてしまい、最悪の気分の日もあります。けれども、いつ終わるとも分からないそんな日々を過ごし、へまをしたり、どこかにぶつかったりしながら、私は学んでいるのです。傷もない美しさとは比べようもないけれど、それでも私は成長し、成熟する過程にあります。100年も経ったバイオリンが奏者から美しいと思われるように、私もイエスにとっては美しい存在です。

だから、調子の悪い日があり、へまや失敗をしたとしても、気に病まないようにしましょう。欠けあとや傷だらけのように感じたとしても、それは成熟と向上の過程につきものです。私たちはぶつかり、へこみができるたびに、より賢くなるし、より優しい人生のメロディを奏でられるようになるのです。

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