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与える余裕がなさそうな時に
from 759:与える余裕がなさそうな時に
与える余裕がなさそうな時に
When at the Bottom of the Barrel
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アイリス・リチャード
先日の朝、使徒行伝から、パウロがエペソの教会に別れの挨拶をした箇所を読んでいたのですが、そこでパウロは、受けるよりは与える方が幸いなのだから、物惜しみすることなく、熱心に働いて、貧しい人をいつも助けられるようにすべきだと話しています。*1 まさか、その数時間後に、この点について自分がテストされることになろうとは、思いも寄りませんでした。
それは、友人と一緒に冷たいフルーツジュースを飲みながら、バルコニーで暖かい春の午後を楽しんでいた時のことです。その週に成し遂げたことや、向こう1ヶ月の予定を話し合っていたのですが、貧困地区でソーシャルワーカーをしているその友人は、立ち去る前に、彼女が最近遭遇したある急を要する状況について話してきました。
「マーシーは人生の大半を孤児として生きてきて、最近、悲しいことに25歳という若さで癌と診断されたの。人の代わりに洗濯をする仕事でなんとかやりくりしてきたけれど、たいていの月は最低賃金にも達しないし、医療保険に入るお金もないから、途方に暮れているのよ。緊急の治療の分は自費でなんとかしないといけないので、周りの人の善意に訴えてきたけれど、それでも医療費をまかない切れない状態なの。」
期待の眼差しを向ける友人に、私はすぐに言葉を返すことができませんでした。私も助けるべきだとは思ったものの、月末で請求書の支払いがあるのです。ちょうどその時に友人の携帯が鳴って電話に出たので、私はほっとしました。おかげで心の中に湧き上がる葛藤を整理する時間が少しできました。
〈よりにもよってこんな時に・・。〉
そう考えている内に、こんな理性的な考えが浮かびました。〈今月はもう最大限に与えたわ。それに、請求書の支払いが終わったら、私たち大家族が必要なもののために、やっと貯金をし始められるという計画だったわよね。〉
すると、私の良心の声が聞こえてきました。〈これまでも、困っている人がいれば、無理をしてでも助けてきたけど、そのたびに神は必要なものを与え返してくださったじゃない。〉
それに理性が答えます。〈そうなんだけど・・貯金の計画が・・。〉
ふたたび良心。〈イエスが教えてくださった原則について考えてみたらどうかしら。「求める者には与え」、「人々にしてほしいと、あなたがたの望むことを、人々にもそのとおりにせよ」というやつよ。〉*2
そして理性。〈それは分かるけど、与えることと貯金することとのバランスが必要よ。〉
私の良心はあきらめません。〈「ただで受けたのだから、ただで与えるがよい」という言葉もあるわ。〉*3
理性が反論します。〈ここで話してるのは、コップ一杯の水じゃなくて、現金のことよ。私は今、現金があまり残っていないの。〉
またも良心。〈イエスが教えられたもう一つの原則を考えてみて。「わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである。」〉*4
深いため息をついて顔を上げると、またもや期待の眼差しで私の方を見ている友人と目が合ったので、こう言いました。
「私も助けるわ。」
私の良心が勝ったのです。意外と穏やかな気持ちで、残っていたお金からいくらかあげることができました。こうして生み出された経済的な「空白」を、神がきっと満たしてくださると信頼して。
それから2~3日して、この出来事について忘れかけた頃、買い物をしていると以前からの知り合いにばったり出会いました。その人が別れ際に、カバンの中から封をした封筒を取り出し、こう言ってそれを手渡したのです。「いろいろとお世話になったので、これをあなたに渡すよう神様が心に語られたんです。あなたは物惜しみしない人だから、このお金も有効に使ってくれますよね。」
家に戻って封筒を開けてみると、かなりの額のお金が入っていました。こうして、「与えて受け取る」というサイクルが完結したのです。
誰かに与えることによって空白を生み出すなら、そこに経済的な祝福が引き寄せられるだけではなく、幸福感や達成感が得られるし、友情や仲間意識も育まれます。また、「物惜しみ病」から守られ、「与えて受け取る」というサイクルについて学べるのです。豊かに受けたものを、惜しみなく与えましょう。*5
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1. 参照:使徒行伝20:32-35 2. マタイ5:42; ルカ6:30-31 3. マタイ10:8 4. マタイ25:40 5. 参照:マタイ10:8
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神は私たちに二本の手を下さいました。一本は受け取るため、もう一本は与えるためです。私たちは水をため込むための貯水池ではありません。分け合うための水路なのです。 ― ビリー・グラハム