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792:嵐に強められた木

嵐に強められた木

The Tempest Tree

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カーティス・ピーター・バン・ゴーダー

人生が激しく揺さぶられているように感じ、どうやって今日一日を乗り切れるかさえ分からないという経験はあるでしょうか。もしそうなら、1798年、ロンドン南西部のキュー王立植物園に植えられ、今も立派な姿を見せている、高さ16メートルのターナーズオークというカシの木に勇気づけられることでしょう。

1980年代、この木は弱々しく、いずれ枯れそうな状態でした。そして、1987年10月16日、グレートストームと呼ばれる大嵐がイギリスやフランス、チャンネル諸島を襲いました。それは1703年の大嵐以来、イギリスを襲った最悪の嵐と言われ、たった1時間の間にイギリス南部で1500万本もの木がなぎ倒されたのです。そのうちの一本が、このターナーズオークでした。強風で、浅く張っていた根もろとも地面から持ち上げられ、激しく揺さぶられて、また地面に落とされました。まるで、巨人の手がワイングラスを持ち上げたかと思うと、それをテーブルに勢いよく戻したかのように。

樹木園の責任者トニー・カークハムは、家族の一員を失ったかのように感じたそうです。「私は途方に暮れました。ずっと世話をし続け、慣れ親しんできた木がいくつも地面に横たわっているのですから。」 回復の望みはあまりないものの、トニーは仲間の樹木医たちと共に、この大きなカシの木を埋め戻し、支柱を施しました。

それから3年後、驚いたことに、木がこれまでになく健康な状態になった時、彼らは気づきました。以前は沢山の人に踏まれ続けてきたことで、根元の土が固くなってしまい、十分な空気や水を得られなくなっていたのだと。嵐によって根元の土が緩んで隙間ができたため、また元気を取り戻したのです。

大嵐から30数年が経ち、ターナーズオークは3分の1ほど樹高が伸びたばかりか、世界の樹木管理のやり方に影響を与えてきました。たとえば、土を砕いて、酸素、窒素、栄養素が根に届きやすくする機器の開発などです。

トニーは、この巨木のそばを通りかかるたびに笑みが漏れ、いかに奇跡的な回復を遂げたかを思い出して、やや感傷的になるそうです。「木は人間と似ていて、ストレスを抱えることもあるけれど、ハッピーな時には本当に美しくなります。」

大嵐のさなかにある時には、そこから何の良いことが生まれるのか分からないかも知れませんが、嵐が止んだ時、新たな命が始まります。困難のさなかにある時には、その理由が分からないし、「木を見て森を見ず」の状態になることがよくあります。でも、神が良き目的を持って私たちの人生に働きかけておられると信じるなら、心に安息と平安が訪れるのです。*1

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1. 参照:ヨハネ15:1-2

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