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841:すべてのことを感謝

すべてのことを感謝

Thanks for Everything

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スティーブ・ハーツ

パウロは、ローマ書8章28節でこう言っています。「神は、神を愛する者たち、すなわち、ご計画に従って召された者たちと共に働いて、万事を益となるようにして下さることを、わたしたちは知っている。」 また、箴言にはこんな言葉があります。「人の歩みは主によって定められる。」*1 しかし、私は人生が複雑で混乱してくると、過去の状況がもう少し違っていたなら、どうなっていただろうと考え、もう一度最初からやり直すことができたらいいのにと思うことがあります。

ちょうどそう思っていたある時、お気に入りの映画の一つ『MR.デスティニー』を聴きました。この映画は、ラリー・バロウズが35歳になった日の出来事です。その20年前、ラリーは高校野球の決勝戦の最終打席で三振し、以来ずっとそのことを悔やんでいました。そして、この35歳の誕生日は、一人の親友以外誰も覚えていてくれなかったようだし、さらに悪いことに、会社を解雇されてしまったのです。気づけば彼は、例の試合のことを思い出し、あの時勝てていたら良かったのにと考えていました。

家に帰る途中で車が動かなくなったので、ラリーは近くのバーでレッカー車を呼び、そこで待つことにしました。バーテンダーのマイクは、気さくで思いやりのある人物ですが、それだけではありません。ラリーのことなら何でも分かっているのです。20年前の試合のことで、後悔を引きずっていることも含めて。マイクはラリーのために、「スピルト・ミルク(こぼしたミルク)」*2 と呼ぶカクテルを作りました。それを飲んだラリーは過去へと引き戻され、もしあの試合に勝っていたなら送っていたであろう人生を体験することになります。そして彼は、自分の人生があらゆる点ですっかり変わってしまっていることに気づきます。中でも一番面食らったのは、自分自身も妻だったエレンも、それぞれ別の人と結婚していることでした。なんとか状況を元に戻そうとしますが、結局はそのせいで、自分の仕事も人生も危険にさらしてしまいます。

ありがたいことに、最悪の事態が起こる前に、ラリーはマイクのいる例のバーに引き戻されていました。人生は通常に戻り、彼は自分の数多くの祝福を、改めて感謝するようになります。帰宅すると、妻のエレンが準備したサプライズの誕生パーティーが彼を待っていました。そして、上司が思いがけず立ち寄り、クビの取り消しと昇格を知らせてくれたのです。でも、何より大切なのは、ラリーが悔恨の念から解放され、「あの時ああなっていたら」という考えに囚われるのをやめて、今ある人生を精一杯生きようと決意したことです。

この映画によって、バラ色の人生を送っている人など誰もいないのだと、改めて思いました。誰もが何らかの問題を抱えているし、もう一度やり直すか、なかったことにしたいようなことがあるものです。誰もが苦悩や失望を、そして失敗すらも、経験しています。だからといって、祝福を数え、自分の持っているものを感謝し、今日という日を前向きに生きるのをやめてはいけません。マイクがラリーにこう言ったように。「これは君の人生だよ、ラリー。今あるものを楽しむようにするんだ。」

(スティーブ・ハーツは、生まれた時から目が見えません。北アメリカ在住のファミリー・インターナショナルのメンバーで、執筆や音楽活動を行っています。)

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1. 箴言20:24

2. 「こぼしたミルクを嘆いても始まらない」(覆水盆に返らず)ということわざより。

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