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言葉通りに歩む
from 880:言葉通りに歩む
言葉通りに歩む
The Walk
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スティーブ・ハーツ
人生において、「言うは易く行うは難し」ということがたくさんあるのは、間違いありません。多くの場合、言葉にするのは、実際に行動するよりもはるかに簡単です。けれども、行動によって支えられていない言葉は、むなしく無益なものになりがちです。
イエスはこの点について多くを語っておられ、たとえばこんな言葉があります。「これらの最も小さいいましめの一つでも破り、またそうするように人に教えたりする者は、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。」*1
私は子どもの頃、家族や友だちの誤りを指摘し、説教をすることに喜びを感じていましたが、ほとんどの場合、最後に笑うのは彼らでした。なぜなら、彼らにそう言っておきながら、私自身がよく真逆のことをしたからです。私は何度も、「人に言うばかりでなく、自分も実行するようにしなさい」と言われました。
9歳の頃、クリスマスのプログラムで披露する歌を、クラスメートと一緒に練習していた時のことです。特別なサプライズにする予定だったので、内緒にしておかなければならず、私は何度もクラスメートに、誰にも言わないよう注意していました。ところがある日、歌を披露する相手の人たちがいるところで、私はその歌のことを誰かに話し始めてしまったのです。すかさず、クラスメートの一人がこう言いました。「自分は黙っていることができないのに、どうして僕たちには、あんなに何度も黙っていろと言ったんだい。」 その場にいた人は、みんな大笑いです。
それはかなり気恥ずかしい経験でしたが、おかげで、「言葉通りに歩む(言葉と行動を一致させる)」ことについて、とてもいい教訓を学べました。
自慢気に話すことも、同じく人に敬遠されます。特に、その内容を裏付ける行動が伴っていないなら、なおさらです。私は十代の初めに作曲をするようになった頃、ことあるごとに、その新しい「才能」を自慢していました。けれども曲を演奏してほしいと頼まれると、おじけづいて断ってしまうのです。その件については、母からとても良いアドバイスをもらいました。「人に聞かせるつもりがないなら、歌のことを自慢するのはやめなさい。」
自らの言葉に行動を伴わせることの大切さについて、イエスは二人の息子のたとえ話でこう説明されています。
「ある人に息子が二人いたが、彼は兄のところへ行き、『子よ、今日、ぶどう園へ行って働きなさい』と言った。兄は『いやです』と答えたが、後で考え直して出かけた。弟のところへも行って、同じことを言うと、弟は『お父さん、承知しました』と答えたが、出かけなかった。」*2
兄は最初、口では従わなかったけれど、後で気が変わり、父の言う通りにしました。弟は父の言う通りにすると約束したものの、実際はそうしなかったので、そんな約束は無意味です。
ヨハネは第一の手紙でこう告げています。「子たちよ、言葉や口先だけではなく、行いをもって誠実に愛し合おう。」*3
私が14歳の時、ガンの闘病中で余命わずかなクリスチャンの女性と知り合いました。父に連れられて、彼女が入院している病院に立ち寄ったのですが、重い病気にかかっている人と出会うのは初めてだったので、何を言うべきか、何をすべきかがわかりませんでした。そこで、少し挨拶を交わした後は、ベッドの横に座って、何も言わずにただ手を握っていました。後になってから、もっと会話をしようと努めなかったことを、かなり後悔しました。
この女性は奇跡的に病気を乗り越え、今も生きています。この前、あの面会のことを彼女と話した時、私はずっと無言のままだったことを謝りました。すると彼女はこう言ってくれたのです。「心配しなくていいわ。あれで良かったんだから。他の人たちはみんな、面会に来たかと思えば、これを食べるべきだとか、あれは食べないほうがいいとか、口々にアドバイスをしてきたものよ。善意でそうしてくれるのはわかるんだけど、いつもそう言われてばかりなので、うんざりしていたの。あなたが面会に来てくれた時、何も言わずじっと座って手を握ってくれたので、私はホッとして気持ちが楽になったわ。」
口の言葉と行動とを一致させ、周りの人に神の光を輝かせる方法とは、単純なことなのかもしれません。つまり、「自分の言葉通りに歩む」ことです。確かな確信や信念を持っているなら、それを日々実行に移せますように。
スティーブン・カーティス・チャップマンのあの歌のように:
「大きな犬と共に走り回り
ワシと共に舞い上がることができても
フープをすべてくぐり抜け
ハシゴを登りきることができても
大切なものは何かと言えば
自分の言葉通りに歩むこと」*4
私たちも自分の言葉通りに歩みましょう。
(スティーブ・ハーツは、生まれた時から目が見えません。北アメリカ在住のファミリー・インターナショナルのメンバーで、執筆や音楽活動を行っています。)
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1. マタイ5:19 口語訳
2. マタイ21:28-30 新共同訳
3. 1ヨハネ3:18 新共同訳
4. 『The Walk』(作詞:スティーブン・カーティス・チャップマン)