Portfolio 2018~2022
Architecture & Space Design Inagaki Hodaka
My Theme
心と空間
稲垣穂高 Inagaki Hodaka Age23
名古屋工業大学大学院 加茂紀和子研究室所属 1999. 6.16 愛知県瀬戸市出身 2015.4
豊田工業専門学校 入学
2020.3 豊田工業専門学校専攻科 入学
2022.4 名古屋工業大学大学院 入学
心は人のアイデンテティであり、想像力は将来に繋がる可能性です。
これからは心に関する要素や問題がより直接的に社会空間の創造に 繋がっていくのではないかと思います。
Record & Award
2018:学内課題「こども園の設計」 学年最優秀評価
2018:全国高専デザインコンペティション2018空間部門 学内最優秀賞
2018:全国高専デザインコンペティション2018空間部門 本選入賞 2020:全国高専デザインコンペティション2020空間部門 学内最優秀賞
2020:全国高専デザインコンペティション2020空間部門 本選入賞 2021:学内課題「新しい共生のための住宅」 学年最優秀評価 2022:第20回主張する「みせ」学生デザインコンペ 優秀賞
01 廃墟≒洞窟=遊び×学び
人の想像力によってデザインする子供達の遊び場・アート施設
02 Metime Slowtime
対立する時間の流れに触れることで自身の時間を見つけるみせ
03 まちを廻る保育園
04 仮想:凪の街に繋がる
半廃墟化する街は電子化社会の凪、仮想でのみ繋がることができる 地域と環境に寄り添うことで子供達を包み込む0~2歳の保育園
05 ひとまちポトリエ
06 周遊する庭園住宅
愛知県瀬戸市で新しい粘土・陶芸文化の象徴となる文化施設 庭園を周遊するような感覚で風景を共有する集合住宅 発足より約10年コワーキングスペースの変化を探る
07 東海地方のコワーキングスペースについて
想像と創造のアトリエ・遊び場
Type 遊び場・アトリエ/娯楽/学習/交流 Award・Record
学内最優秀賞 全国高専デザインコンペティション本選入賞
Concept 人の想像力によってデザインする子供達の遊び場・アート施設
昔なら野山で遊ぶことが当たり前であった。しかし、現在では住環境と自然は遠ざかっている。代わりに人口減少で使われなくなった建 築が当たり前に見られるようになった。今の子供たちにとっての街における自然環境は山ではなく廃墟なのではないだろうか。山で培う ような創造性を得られる遊び場として廃墟ビルを改修してみようと思う。
好奇心や想像力と共に生きる建築「遊びと学びの洞窟」を設計 する。
廃墟を見る子供は、好奇心、恐怖、不思議・・・色々なことを感じているのではないだろうか
Fanction 子供が遊ぶ秘密基地 造ることを教えるアトリエ 子供たちが造る社会
秘密基地のような遊び場
造る場と造ることを教える場
名古屋市瑞穂区雁道町雁道商店街・栄ビル
子供たちが運営するカフェ
●1960年ごろに建設された ●一階部分の飲食店を主体とするテナントの半数程は現在も営業を継続している
名古屋高速3号大高線
雁道商店街
栄ビル
開発中の分譲住宅地
●1960年ごろに建設された ●一階部分の飲食店を主体とするテナントの半数程は現在も営業を継続している
伊勢湾台風の翌年あたりに出来ていた気がする。ビルのようになっているが実際は縦割りのメゾネット的な 形である。
各部分へ入る入口はどこにあるのか分からない。各メゾネット部分で所有権がバラバラ。 利用者が居ない箇所が多い。
屋上には違法建築されたバラックに居住している人がいた。水も通っておりシャワーなども使用出来た。
Research2 廃墟の芸術史的側面とイメージ
廃墟は昔から様々な芸術に接続され、時には娯楽文化になることもあった。そこにあったのは想像力ではないだろうか。
画家クロード・ロランの描く廃墟は古代への指向性があり、見るものに過去から続く時間を想像することを喚起する。時間の経過による変化(様式化的変容)も 大きな特徴である。18世紀中頃に起こった旅行ブームにも影響した。一方で画家モンス・デジデリオの描く廃墟は幻想的、奇想的、悪夢的、終末的要素を持つ。 これは建築の内にある崩壊への意志を捉えている。そして新古典主義の建築家ジョン・ソーンは、廃墟の中に時間や文化の錯綜・混合を見出している。
建物と周辺の構成要素、過去~現在の資料・研究の言説*による廃墟的要素からデザインに使用するコードを抽出する。
廃墟的要素と想像力によりデザインを考える。
*『廃墟の美学』谷川渥著 『廃墟的要素によるパタン・ランゲージを用いた建築空間構成手法の研究』一色暁生氏著(一色暁夫設計事務所代表)『東京幻想』より引用する
実際の空間構成
テナント等のビルに残された イメージをさらに表出させる (引き出す)
ファサードを残すことで食い違 いによる想像喚起性と形骸化の イメージを与える
視覚イメージと空間の食い違いを強調するような計画を行う。ファサードを残しながら、全体に共有されるアーケード、屋上 等の空間から接続と内部の面白さを想像させる計画を行う
建物を地形的に捉え空間の用途を変更する 飲食店空間を表出させ、内空間の一部を見える化する
アーケード下に客席を出す/アーケード上を通過可能にする テナントの背後を通過動線にする
動線を建物の背後まで引き込みアーケード下の代わりとする 動線により建物を多角的に視認できるようにする 建物の内部構成を基本とし、使用されていないテナント部分と2階以上のフロアを 改装する
建物を地形的に捉え空間の用途を変更する 庭園化することで時間と生命を取り込み様式化的変容を試みる
屋上空間の解放・庭園化
吹き抜けを軸に様々な空間を造る Diagram2 内空間のデザイン
メゾネット上の内部 一部を吹き抜けとし外空間を取り込む
機能室空間
Perspective1 アーケード下と上:Diagram1の内容と対応
Perspective2 庭園化した屋上(上空から):Diagram1の内容と対応
フレームはコンクリートの躯体を支えると同時に内部に子供たちにとっての地形となる空間を生む
連続・集合する鉄骨のフレームを挿入する フレームは内部空間を細分化・多様化する フレームは屋上庭園にも伸びて空間を造る フレームは連続する空間を生み、セルフビルドによる空間や群れて現れる空間が発生する
鉄骨は自己成長するイメージを持ちながら空間を構成する
Detail フレームのデザイン
各シーンの番号は下のPerspective3に対応する
Perspective5
内部の全体像と外部の接続(ファサードのみを外した状態のパースペクティブ)
③ 空中廊下 ④ 屋上庭園と子供カフェ
ジャングルジムのように上下左右様々な移動経路がある空間。建築全体に光が行きわたるようにアクリル 板や頑丈な布素材を床や仕切りに使用している。子供達が廃墟の内部を浮遊するような感覚を与える。光、 蔭、空気、人がなじむ空間。
入り組んだ空間を抜けた先にある緑化屋上。公園であり、様々な人々の憩いの場となる。子供が運営の体 験をできるカフェもこのスペースにある。体感的な遊びができる場所を目指しデザインされたこの施設に おいて社会とも関われる場所。
断面パースの断面線 階段室兼展示室・フリースペース
ファサード取り外しパース1の断面線
屋外作業広場
計画した動線 全体は子供の秘密基地であり、洞窟的な 遊び場としてデザインする。
アクリル床板
フロア床面の無い部分
フリールーム 展示・フリーマーケット
庭園・外空間化されたスペース アトリエルーム
テナント(飲食店)
Metime Slowtime
街に繋がれた時の積層と滞留
Type 商業空間/内装/ロゴ Award・Record 主張する「みせ」学生デザインコンペ第20回 優秀賞
Concept 時間の流れに触れることで自身の時間を見つけるみせの提案
現代のはやすぎる社会は便利な一方で、時に功利的になりすぎたり心や体に悪影響を及ぼすという課題を持つ。その反動として、スロー フード運動やスロージャーナリズム等、遅さや質に価値を見出す活動が取り組まれている。私も今一度、空間を通して人々が時間を自分 なりに捉え直し、自身のペースでゆっくりと生きていけないだろうかと考えてみる。時間の積層と滞留を可視化し、自分の時間を見つけ てのんびり過ごせるようなみせの提案を行う。
Background 時間の比較から私の時間を見つける
都市やインターネットが構築するシステム的な時間世界から離れて実世界の多様な時間を見てみると、時間本来の速度・遅さと向き合え るのではないだろうか。
私の時間ってなんだろう・・・?
記録媒体の時間
自然の時間 身を取り巻く時間は様々・・・
暮らす世界の時間
Design Coad 時間の比較を促す要素
していく、時間がゆっくり流れ人やモノが滞留する空間を目指す。また、都市的時間と自然的時間を対立・対比・接続させる ことで自身の時間を見つめ直せるような場所を目指す。
Time Fanction 解放された空間 本と中古雑貨が集まるみせ
純粋に時間を表現するため店を解放された空間に近づける。そのためレジという装置を持たない店とする。速度が遅く、かつ歴史ある情 報媒体である本や街の情報を内包する中古雑貨を販売する。本はみせの中で自由に読むことができる。
レジは無し スマートフォンで自動決済
Time Image 街に自然=谷が現れる
商品
本 中古品雑貨
谷はあらゆる自然的時間を内包する。人が生きている都市的な時間を、デザインコードで示した多様な時間軸(遅い、記録=過去、内在・ 滞留=悠々・停滞、自然=自立・様々)と接続し相互作用する場所として街に谷が現れるイメージを持つ。
谷のイメージをメタファーとして空間に落とし込む。
動的・自然
堆積
大地
堆積
動的・自然
堆積
動的・自然
堆積
谷・渓谷対立・相互作用 対立・相互作用有機的形態 機能に合わせる
Cross Section 断面から見た空間のイメージ
本や雑貨が積層される 人の居場所になる
光が降り注ぐ 雨が入り込む 季節により木々は変化する
Cross Section2 居場所となる地形的空間
行動をアフォードするような地形的居場所をつくる
地面は所々でこぼこしている
座る・没頭 座る・休憩
座る・包む
Site 指定なし:街の 間を見つける 仮設定:名古屋市西区名駅西銀座商店街の一角
都市や街の 間を敷地として設定する。提案では、名駅に近いながら衰退する部分を持つ名駅西銀座商店街を選定した。商店街沿いには いくつかの空き地や空き家が見られる。
街の 間と道路以外に着色した名駅西の地図 建物のみに着色した名駅西の地図
https://www.google.co.jp/maps/@35.1700312,136.8821041,157a,35y,263.02h,60.2t/data
名駅西商店街 仮敷地 1 2
街を埋める建物の分布から街の 間を可視化して、利用可 能な敷地を探す。
名駅西銀座商店街の風景
居住者動線
名古屋駅
実際に歩いてみることで、街の 間と動線の関係を捉えな がら適切な敷地設定を行う。
街の 間
Diagram2
街に現れた谷が分たれた動線を繋ぐ
みせのヴォリュームに谷=動線を落とし込むことで分断された商店街の動線と居住者の動線を接続し、街と人の時間を双方向的に取り込 むような提案とする。
分かれている商店街と生活動線
居住者動線
商店街
空間化された街の谷が道となり繋ぐ
公園
居住者動線
公園
公園 商店街
街の 間
商店街
時流の谷であり街の道となる空間
時流の谷であり街の道となる空間
公園
商店街
居住者動線
居住者動線
谷のスペース(屋外)
FIRST FLOOR
屋内スペース
SCENE1・2
SCENE3
建物のファサード・外殻は白いコンクリートとし意味性を消す。ロゴによるみせからのメッセージを強調し、スリットから覗く谷の空間 に想像を膨らませる。
Logo design 時間の流れと積層を象徴するかたち
遅さと積層、谷のイメージから店舗のロゴをデザインする。また素材には経年変化が表れる燻し真鍮を用いる。
素材:燻し真鍮 経年変化が表れる素材
都市部では駅に近接していても空き家や空き地となる箇所が増えているように感じる。本提案の仮敷地となる名駅西 側は木造の空き家が多く存在するため、その解体によって出た材をリクレイム材として中心的に扱い棚を作成する。
空き家を解体
名駅西商店街
名古屋駅
Dateil2 積層する棚の地層的なデザイン
リクレイム材を使用し、FirstFloorの棚は下のものほど古い材で構成し、また人に馴染む木材を使用する。上にいくほ ど新しく街に近いイメージを持つ材とする。
まちを廻る保育園
0~2歳児のための地域に根差した保育園
Type 保育園/教育/地域 Award・Record とよはし公共建築学生チャレンジコンペティション
Concept まちを「廻り」ながら大らかに育ち風景となる保育園の提案
本計画地は閑静な住宅街に位置し、柔らかな曲線の歩行車専 用道路がまちとの距離を近くしていた。本来こどもの成長過 程は保育園の内外を問わないはず。私たちは、こどもたちが まちを「廻り」ながら大らかな曲がり屋根の下でのびのびと 成長することが、風土と共に育つことであると考えた。 小学校
Study 4型のスタディを経て導いた平屋の「廻り道」形態
①水平
②傾斜(以下※で示す)
a.コの字型
b.ロの字型
d. L字型
周辺環境に沿う曲線状のボリュームと西側に配置した駐車場によって、保育室をまちに近づける。長く伸び た曲線は多様な居場所をつくりまちと馴染んで風景となる。
c.大屋根型
Site 豊橋の循環に寄り添う保育園
「まちを廻る保育園」は豊橋市の住宅地の中心に位置し、気候や人の循環の中心地でもある。また周囲には小学校や地域福祉センターが 存在し地域の教育・福祉施設が集積している場でもある。豊橋の台地に屋根をかけることで海と山に挟まれた外的環境を最大限に取り込 み、感性豊かな子どもを育む。
石巻山
教育・福祉
耕作地 三河湾
住宅地
つつじヶ丘小学校
児童福祉センター
佐藤公園
地域福祉センター
住宅地 耕作地
Diagram 形態のデザイン:歩道と環境に馴染む保育園
SITE
2.道に沿ったボリューム配置3.軒下空間をぐるっと廻す4.柔らかく曲げた連続屋根 1.マチと距離が近い敷地 様々な世代の人や自然環境に 囲まれており遊歩道を有する 計画敷地
周囲の建築高さと園児に配慮 した平屋は閑静な住宅街に馴 染む
Arrangement 柔らかな空間配置と繋がり
L字の外部環境を取り込む保 育スペースが健康的な成長を 促す
緩やかに蛇行する傾斜と連 続的に接続しまちの様々な 場を形成する
つつじが丘小学校
調理室
病児保育室
こもれび庭
沐浴室・トイレ 地域福祉センター 事務室
0歳保育室
一時保育室
調乳室
1歳保育室
おさんぽ庭
とんねるタープ ごしごし手洗い 床下ひみつきち
ぷち畑
ひだまり庭
Diagram2 日照による空間の検証
移転前の新吉保育園の1日のスケジュールを参考に登園から降園の8:00- 16:00で検討した。1年を通して「ひだまり庭」や「すくすく 庭」といった場は十分な光環境となっていることが確認できる。同時に周囲に対してほとんど影を落とさない側面も見られた。
①保育士さんの視線 夏
光環境シミュレーション 夏・冬の8:00-16:00
Detail 可変的な家具の多様な利用が生み出す様々なシーン
②絵本の収納
③くぐる
⑤座る ④おもちゃを入れる
⑥場を緩やかに作る
Structure
からだの成長と共に広がる
こどものからだ・あそびの成長と呼応するように、0歳児保育室から2歳児保育室にかけて架構の幅が広がる。
東三河産木材の利用
温暖な気候・土質・水に恵まれた東三河は、良質な木材 が取れる全国有数の木材(スギ・ヒノキ)の産地である。
動線
しごと場/ あそび場
部材スケール
棟木/軒桁 …105mm×200mm
架構 柱 …105mm×105mm
梁 …105mm×200mm
垂木 … 45mm×105mm
場をつくる
あそび場/ まなび場
豊橋の台地にかけた大屋根を支える架構が空間を区切り、動線 /あそび場/ しごと場/まなび場をつくる。
駐車場(16台)
0歳保育室 71㎡
1歳保育室 130㎡
▪公園を含めた遊び場の展開
半屋外
遊歩道
先生、今日は公園であそぼ!
A-Aʼ断面
…園児の行動可能範囲
▪まちとの距離を近づける遊歩道に沿った軒下
半屋外 遊歩道
わんちゃんかわいい!
名前はポチだよ~
登園動線
駐車場
▪みどりを取り込むレベル差
遊歩道
あそこに鳥がいるよ~
▪深い軒下空間と園庭の一体利用
半屋外
遊べる場所が広くてうれしい!
登園動線
▪変化を感じる視界の「抜け」
半屋外
遊歩道
駐車場・登園動線・屋内・半屋外・園庭・遊歩道・車道・住宅・公園の関係性が変化することでリズミカルな空間を創出 住宅 住宅
晴れてきたからお外であそぼ!
遊歩道
E-Eʼ断面
▪風の通り道となる土間から庭への「抜け」
半屋外
風が気持ちいいね~
B-Bʼ断面
F-Fʼ断面
D-Dʼ断面
C-Cʼ断面
Scean 屋内空間の様子
ひとつづきの大空間でのびのびと育つ子供達。視界が広がる大きな空間では階段やちょっ とした 間だって子供達の遊び場として活用できる。
広い縁側では子供達が座ったり、走ったり、寝転んだり。L字の歩道に寄り添う縁側は、 地域と繋がり賑わいをもたらす。
Scean3 園庭
水たまりや小さなお山、お砂場お、小さな子供たちでも目一杯からだを使って遊び、学 ぶことができる。
雨の日の室内。雨の音、雨水が屋根から滴り落ちる音が聞こえる。外と内が近い子供た ちの居場所。
Scean4 室内風景
04
仮想:凪の街に繋がる
廃墟的な空想都市
Concept 仮想によって街と繋がる 街は私たちを知る
名古屋駅の西側に広がる街を訪れた。戦後はスラムとして有名だった場所。当時のバラック街の面影を感じる。駅の東側に比べ全体的に 建物が低く昔ながらの商店街が残る。植物店の装いをしたマッサージ店、伽藍堂のビル、散在する小さなパーキングエリア、所有者不明 の空き家。ファミリー用スーパーの目の前にソープ店が並んでいる。この街は私たち自身のように混濁し、地維と化していく。街は私た ちを映す。
仮想的大地によって住空間に地維としての街を繋ぐ
情報の嵐の中に生きる=情報という母胎に閉ざされる 街は私たちを映す
フィルターバブルが母胎となる 街並みは心と重なる
混濁した街/地維としての街
混濁した街にはあらゆるコミュニティや人を包こむ