ドイツワイン セミナー・ハンドブック
ドイツワイン セミナー・ハンドブック
WWW.DEUTSCHEWEINE.DE
ドイツ・ワインインスティトゥート発行
ISBN 9-783980-893039
ドイツ・ワインインスティトゥート発行
発行者
Deutsches Weininstitut GmbH Gutenbergplatz 3-5 55116 Mainz www.deutscheweine.de 編集
Deutsches Weininstitut 翻訳 岩本順子
©
Deutsches Weininstitut, Mainz
本書に関する全ての権利はドイツ・ ワインインスティトゥートに帰属し ます。本書を無断で複製し、複製し たものを配布することは、禁じられ ています。
ISBN 9-783980-893039 2015年 日本語版初版発行
デザイン
Concept Frankfurt, Werbeagentur GmbH, Frankfurt am Main 印刷
Kunze & Partner, Mainz
ドイツ・ワインインスティトゥート は「責任を持ったワインの取扱い」 を推奨しています。詳しい情報は 以下のサイトでご覧いただけます。
日本語版制作
japantext.de
www.deutscheweinakademie.de
目次
繊細な違いを知る
ドイツワインが 生まれるところ
ぶどうから ボトルワインまで
5 土壌 6 気候と天候 8 ぶどう品種
52 生産地域
85 ぶどう畑での仕事 90 セラーでの仕事
52
4 推薦図書
84 品質の 見極めかた 98 103 104 105 108 110 114
154 用語集
ワインの 取扱い
142
125 126 129 131 133 137 138 141
品質等級 ワインの種類 様々な味わい ワインのエティケット 公認品質検査 賞、品質プロフィール、格付け ビオワインと その造り手
96
ドイチャーゼクト 活き活きとした味わい
売れ行き重視の商品構成 外食業界 販売業界 ワインを正確に表現する ワインに合わせる料理 水とワイン 正しい管理 適したグラス
124
17 ゼクト市場 1 117 生産工程 120 ゼクトの品質
116 1
はじめに ドイツワインは品質とイメージにおいては、世界の トップクラスの座を維持しています。年間平均生産 量は 9 百万〜 1 千万ヘクトリットルに達し、ワイン 生産国中、第 9 位にランキングされています。 ドイツワインの世界市場に占める割合は約 4%に相当 します。ドイツで生産されているワインのうち、約 15%が輸出されていますが、大部分は国内で消費さ れています。ドイツ国内で販売されている全てのワ インの約半分がドイツで生産されており、自国内で は他国産ワインを大きく引き離し、マーケットリーダーとなっています。大 量の輸入ワインにより、熾烈な価格競争に晒されているドイツで、ワインの 最も重要な販売ルートとなっているのがディスカウンターを含む食品小売業 者で、その割合は約 75%を占めています。ドイツの消費者は食料品店でワイ ンを購入する際、価格に非常に敏感です。また、ドイツワインにとって生産 者の直売による売上は特に重要で、国内生産量の約 30%がこの経路で流通し ており、ドイツワインの売上高の約 40%を占めています。 最も重要な輸出市場は米国で、売上高は約 9000 万ユーロに達し、輸出高の 30%を占めています。 英国、オランダがそれに続いています。このほか、ス カンジナビア諸国でドイツワインの人気が徐々に高まっています。加えてア ジア諸国、とりわけ中国とインドがドイツワインにとって、将来性のある成 長市場として期待されています。
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はじめに
顧客に対しワインについて適切なアドヴァイスを行うスタッフや、店舗や外 食産業における商品構成およびプレゼンテーションを担当するスタッフは、 常に時代の息吹を感じ、需要と供給についての最新事情に通じている必要が あります。ドイツ・ワインインスティトゥートは様々なかたちで、ドイツの ワイン産地のクヴァリテーツワイン ( 高品質ワイン ) の最新動向、トレンド、 個性などについて情報提供しています。 このハンドブックは、ドイツワインの基本知識を網羅しています。ドイツ・ ワインインスティトゥートが開催する数多くのセミナーのいずれかに参加す ることで、知識を更に深めることができます。当社のセミナー情報は、無料 配布のパンフレット「Schlau(シュラウ/賢い、の意)」に掲載されているほか、 当社サイト www.deutscheweine.de からダウンロードすることもできます。 同サイトでは、ワイン市場に関する最新データを提供しているほか、ドイツ のワイン界の最新動向を定期的に更新しています。また、当社のウェブショ ップでは、ワインのプレゼンテーションやマーケティング用の各種宣伝ツー ルを提供しています。このハンドブックを通して、面白いアイディアや楽し みを見つけていただければ嬉しく思います。また、皆さんのワインに関する あらゆるお問い合わせには、喜んで対応させていただきます。
モニカ・ロイレ ドイツ・ワインインスティトゥート社長
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DER FEINE 繊細な違いを知る UNTERSCHIED
異なる土壌と異なる気候条件をもった 13 の生 産地域、約 160 の集合畑(グロースラーゲ)と 2650 の単一畑(アインツェルラーゲ)、個々の ワインに独自の輪郭を与え、様々な品質等級、 様々な味わいのワインを提供する何千人ものワ インの造り手 — これらがドイツワインなら ではの多様性、典型、伝統的ならびに革新的な ワインスタイルの土台を形作っています。この 章では 3 つの大きなテーマ、すなわち畑とその 土壌、気候、そしてぶどう品種を取り上げます。
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DER FEINE UNTERSCHIED DER FEINE繊細な違いを知る KLIMA UNTERSCHIED UND WITTERUNG BODEN 土壌
土壌
ドイツのワイン生産地では、主に以下のような 土壌が見られます。
ワイン用ぶどうの栽培は、充分な深さを持ち、 適量の細かな土を保持している土壌に限って、 満足の行く結果を得ることができます。ぶどう は土壌で根を張り、水分と養分を吸収すること ができなければなりません。土壌はぶどうの木 の成長ぐあいを左右するだけでなく、実るぶど うの味わい、さらにそのぶどうから造られるワイ ンの味わい、つまり個性の決め手となります。
雑色砂岩 片麻岩、花崗岩 グレーワッケ(硬砂岩) コイパー(泥土岩)、ギプスコイパー(石膏 質泥土岩) ローム(レーム)、粘土、砂、岩石を含有 マール(メルゲル、泥灰) レス(黄土) ムッシェルカルク(貝殻石灰岩) 物理的な観点から言うと、ぶどう畑は通気性と スレート(シーファー、粘板岩)、 水はけが良く、しかも適量の水分が供給されな 風化粘板岩 ければなりません。通常、水分を多く含む土壌 小石 は冷たく、しっとりとした乾いた土壌は暖かく 原成岩 感じられます。濃い色の土壌は照射熱を吸収し、 凝灰岩 明るい色の土壌はその大部分を反射します。そ のため、濃い色の土壌は熱の蓄積が早く、明る い色の土壌よりもより熱を多く保持しています。 もちろん、全てのぶどう畑の土壌が、これらの 主な土壌グループに分類されるわけではありま 現実には、ぶどうの栽培はあらゆる土壌で実 せん。上記の様々な土壌のほかにも、無数の混 践されています。唯一の例外は純粋な腐植土土 合土壌があるからです。ここで重要な役割を果 壌です。腐植土は極端な酸性土壌であり、ぶど たすのが、個々の土壌にふさわしい台木選びで うには理想的な生育条件を提供することができ す。土壌の影響は、その他の要因との関連性に ません。また、土壌にはカルシウム、カリウム、 おいて見る必要があります。 窒素、リン酸、マグネシウムといった、主要栄 養素がバランス良く確保されていなければなり ません。ある土壌が、全てのぶどう品種に適し ているわけではありません。土壌にふさわしい 品種を選び、ぶどうが必要とする栄養を土壌に 補給し、モノカルチャーである畑に、侵食を防 ぎ、窒素を供給する植物の種子を蒔くことによ って、持続可能な土壌利用が可能になります。
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繊細な違いを知る
気候と天候
気候と天候
気候要因(日照時間、降水量、気温)はぶどう のあらゆる生物学的、生化学的プロセスを支配 するほか、成熟期に果実を構成する物質の生成 と分解に影響を及ぼし、収穫されるぶどうと得 られるワインの品質を左右します。土壌には水、 養分、熱が備蓄され、品種ごとのワインの個性 を形作ります。
ぶどう栽培の際の 気候的必要条件
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年間日照時間1300時間
年間平均気温が最低9度、生育期の平均
気温が最低18度
開花期の気温が最低15度
ぶどうの成熟期の平均気温が15〜20度
年間降水量が最低400〜500ミリ
ドイツは世界最北のぶどう栽培地のひとつであり、 「クール・クライメイト(冷涼気候)」地域に属しま す。暖流であるメキシコ湾流が西ヨーロッパの気 候に影響を与えているため、ドイツにおいてもぶ どう栽培が可能なのです。とはいえ、ドイツの ワイン生産地の気候や天候は、地中海地域のそ れとは比較にならない生育条件をぶどうに課し ています。具体的には、以下のような根本的な 違いがあります。
ドイツの生産地のぶどうの生育期の日照 時間は、ヨーロッパの南部にあるワイン 生産国よりもはるかに少ない。 平均気温がより低い。 ドイツの生産地では、果実が成熟する 夏期の降水量が、年間降水量の大部分を 占める。 南方にあるワイン生産国では、ぶどうの 成熟期に水分が不足する。 ドイツの生産地では、ぶどうの成熟ととも に雨量が減少する。 南の近隣国では、収穫期の雨量の増加が 顕著である。
繊細な違いを知る
気候と天候
これらの気候条件が、ドイツワインに特別な価 値、様々な影響を与えています。気候が穏やか で降雨量が多いと、ぶどうはゆっくりと時間を かけて成熟し、土壌の栄養素をうまく活用する ことができます。特に白ワイン品種はその恩恵 を得て、フルーティさと安定した酸味のストラ クチャーを獲得し、長期熟成が可能なワインと なります。 ぶどう栽培にとって、特に優れた気候条件を提 供しているのが、天候から守られた谷あいの南 向き斜面と南西向き斜面です。山の斜面や急斜 面(シュタイルラーゲ)は、平地よりも集中的 に太陽光に晒されます。加えて南向き斜面は、 日照時間がより長くなります。さらに、ぶどう 畑のミクロクリマ(微小気候)は、土壌の蓄熱 力、植物相、畑の使用法(植樹率)ならびにぶ どうの栽培方法や畑仕事の方法によっても変わ って来ます。強風はミクロクリマを壊し、畑に 悪影響を及ぼします。 ぶどう栽培は気候条件に強く依存しているため、 個々のヴィンテージの品質は天候次第で変動し ます。一般的には、南の生産地のほうがヴィン テージごとの差が小さいと言われます。
テロワール テロワールは、客観的な基準で定義することが できず、一様に理解される明確な概念でもあり ません。著名な専門書の著者も、ワインジャー ナリストや醸造家も、この概念をそれぞれに 解釈しています。テロワールとは、一方では 唯一無二のアイデンティティを成す自然条件 と、人為的なパラメーターである剪定、栽培方 法、耕作方法などを総合したもの、と見なさ れています。それには、ぶどう畑の特殊な環 境条件だけでなく、ぶどう畑とセラーでの仕 事、世代を超えて受け継がれている知恵、造り 手が受け継いでいる文化的遺産なども含まれて いるのです。他方、テロワールを決定づける要 素は、主に自然条件であり、人間が影響を与え たり、様々なワイン造りの技術によって変えら れるものではないと主張する人もいます。つま り、テロワールには畑や地域の個性に「限定さ れる」以上のものがある、という学問的裏付け はないのです。テロワールの思想は、現実的 なバックグラウンドを欠いた、極端な哲学的ア プローチと見なされている部分もあるのです。
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
収めた新交配品種のほとんどは市場価値を失い、 伝統品種が復活しています。 市場のグローバル化はワインづくりにも影響を 及ぼしています。例えば、国際的に重要な品種 であるシャルドネは、カベルネソーヴィニヨン やメルロなどの南国の有望な赤品種と同様、ド イツでも栽培されています。また、ドイツにお ける赤ワイン需要の高まりとともに、多くの造 り手が需要の少ない白品種を赤品種に植え替え ました。1980年代半ばには赤ワインブームが起 こりました。現在はやや下火になっていますが、 「Aはアコロン(Acolon)」から「Zはツヴァイ 以来赤ワイン品種の栽培面積は2倍以上増加 ゲルトレーベ(Zweigeltrebe)」まで、ドイツ し、今日では総面積の36%を占めるまでになり で栽培されているぶどう品種は実に多様です。 ました。内訳は、シュペートブルグンダー(約 ドイツ連邦統計局のぶどう畑に関する統計によ 11.800ヘクタール)がトップの座を占め、ドル ると、約140品種が栽培されており、そのうちの ンフェルダー(約8.100ヘクタール)が2位、続 いくつかはクヴァリテーツワインの生産認可が いてポルトギーザー(約3.700ヘクタール)、ト 保留になっています。内訳は、約35品種が白ワ ロリンガー(約2.300ヘクタール)、シュヴァル イン品種、100品種以上を赤ワイン品種が占めて ツリースリング(ミュラーレーベ、約2.100ヘク います。しかし、市場において重要な品種は約 タール)の順となっています。これらに続くの 20品種ほどで、最も重要なのが白ワイン品種で が、近年栽培面積が増加しているレゲント(約 あるリースリングと別名リヴァーナーと呼ばれ 2.000ヘクタール)とレンベルガー(約1.800ヘ るミュラー・トゥルガウです。この2品種で総栽 クタール)です。魅力的な赤ワインビジネスは、 培面積の3分の1を占めています。リースリング 若い世代の造り手たちに、伝統的な栽培・醸造 (約23.300ヘクタール)とミュラー・トゥルガウ 方法への回帰を促したり、国際的なワインスタ (約12.900ヘクタール)は13のワイン生産地全て イルを試みるきっかけになるなど、良い刺激と において栽培されています。 なっています。 第3位は赤ワイン品種のシュペートブルグンダー (約11.800ヘクタール)で、以上3品種でドイツ のぶどう畑のおよそ半分を占めています。個々 のぶどう品種の占める割合は、流行や経済的重 要性、市場における成功の度合いを示していま す。造り手の多くは、需要の低い品種は、人気 の高い品種に植え替える意義があると認識して います。
ぶどう品種
白ワイン品種のうち、3番目に多く栽培されて いるのがグラウブルグンター(約5.300ヘクター ル)です。ジルヴァーナー(約5.100ヘクター ル)、ヴァイスブルグンダー(約4.600ヘクター ル)、ケルナー(約3.000ヘクタール)がこれに 続いています。1960年代、1970年代に成功を
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繊細な違いを知る
今日のドイツワイン業界では、量的には国際的 競争には勝てないものの、秀逸な赤ワインがい くつも誕生しています。しかし、業界の決定的 な強さは、白ワインの分野にあります。ドイツ のリースリングは、繊細なカビネットもフルー ティさがアクセントになったシュペートレーゼ も長期熟成が可能な貴腐ワインも世界的名声を 博しています。ジューシーなミュラー・トゥル ガウ(リヴァーナー)は入手しやすく、低価 格で、日常的に楽しめるシンプルなワインです。 ジルヴァーナーは土壌の特徴がよく表現される ワインで、白ワイン品種のうちで第4位の栽培面 積を誇り、白のブルグンダー系品種であるヴァ イスブルグンダーやグラウブルグンダーへの架 け橋となる品種とみなされています。いずれの 品種も目下栽培面積が増加中で、そのワインは 合わせることのできる料理の幅が広く、理想的 な食中酒として好まれています。
ぶどう品種
ドイツの主要ぶどう品種(トップ15)
栽培面積 ぶどう品種
2013年*
2013年**
リースリング
23.293
22,7
ミュラー・トゥルガウ
12.871
12,6
シュペートブルグンダー
11.775
11,5
ドルンフェルダー
8.129
7,9
グラウブルグンダー
5.316
5,2
ジルヴァーナー
5.074
5,0
ヴァイスブルグンダー
4.639
4,5
ポルトギーザー
3.653
3,6
ケルナー
2.978
2,9
トロリンガー
2.317
2,3
シュヴァルツ リースリング
2.122
2,1
レゲント
2.026
2,0
レンベルガー
1.802
1,8
バッフス
1.795
1,8
ショイレーベ
1.455
1,4
102.341
100,0
白ワイン品種栽培面積
66.056
64,5
赤ワイン品種栽培面積
36.285
35,5
総栽培面積
* 単位ヘクタール ** 単位パーセント
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
リースリング
白ワイン品種
リースリング
リースリング
色
アロマ グリーンがかった 黄色から明るい
ゴールドイエローまで
味わい
10
りんご、桃、 アプリコット
ボディ
繊細なフルーティさ、
軽快なものから
酸味がアクセント
中くらいのものまで
リースリングはドイツワインを代表する品種で あり、ドイツのワイン産業を支える主力品種で す。栽培面積は23.300ヘクタールに及んでいま す。ドイツは世界最大のリースリング栽培面積 を誇り、2位の米国、3位のオーストラリアを大 きく引き離しています。品種の由来は、今日に 至るまで明らかになっていませんが、おそらく ヴァイサー・ホイニッシュとヴィーティス・ジ ルヴェストリスの自然交雑、あるいはヴィーテ ィス・ジルヴェストリスとトラミーナの交配品 種とヴァイサー・ホイニッシュの自然交雑では ないかと推測されています。リースリングの名称 の由来も今なお不明です。花ぶるい(Verrieseln/ フェアリーゼルン)、鋭い酸味(reißender Säure/ ライセンダー・ゾイレ)、穂木(edles Reis/エード レス・ライス)あるいは濃い色の木(Rusling/ルス リング)などと関連性があるかもしれません。 リースリングに言及している文献で世界最古の ものは、1435年のリュッセルスハイム市のある 会計明細書です。国際的には「ライン・リース リング」の名で知られていますが、バーデン地 方ではリースリングから造られたワインを「ク リンゲルベルガー(Klingelberger)」と言いま す。オーストリア、イタリア、スロヴェニアな どで栽培されているヴェルシュリースリングと、 ドイツの「ヴァイサー・リースリング」の間に は関連性はありません。
繊細な違いを知る
重要性 リースリングはドイツの全てのワイン産地で栽 培されている最も重要なぶどう品種で、全栽培 面積の23%を占めています。各産地における栽 培規模は様々です。ラインガウ地方では栽培 面積が約2.500ヘクタールに及び、全栽培面積 の約80%以上を占めています。このほか、リー スリングが重要品種となっている産地には、フ ァルツ地方(5.700ヘクタール)、モーゼル地 方(5.400ヘクタール)、ラインヘッセン地 方(4.300ヘクタール)、ヴュルテンベルク地方 (2.100ヘクタール)があります。 ぶどう栽培 リースリングは果実がゆっくりと成熟し、フルー ティな酸が特徴となっています。そのため、ワ イン産地の中でも主に北方で栽培され、晩秋の 太陽を浴びて、完熟を迎えます。場所を選ぶ品 種ですが、さほど土壌は選びません。栽培環境 (土壌の種類とミクロクリマ)により非常に異な るニュアンスのワインができあがります。理想 的な環境は熱を蓄積する石が多い、川の流れる 峡谷の急斜面です。 醸造と味わい リースリングからは、あらゆる品質レベル、あ らゆる味わいのワインが生産されています。醸 造には伝統的な木樽を使うこともあります。シ ンプルな日常ワインもあれば、様々なランクのプ レディカーツワイン(肩書付ワイン)も造られ ています。トップカテゴリーにおいては、残糖が あるワインや気品ある甘口ワインが多く造られ ています。クヴァリテーツワイン、カビネットワ インの多くは(特に北限の生産地のもの)、酸の 量が多いため、ほのかな甘みで絶妙のバランス をとっています。「典型的」なリースリングは、 明るい黄色、グリーンがかった黄色い色調で、 桃とりんごの香りを持ち、口に含むと力強い酸 味が感じられます。スレート土壌由来のリース リングはミネラリッシュな香りがすると言われま す。多くのワインが火打石の香りを持ち、熟成 したワインにはペトロール香が感じられることも 多いです。ナチュラルな酸味を持つリースリン
ぶどう品種
リースリング
グはゼクトの製造にも向いています。多くの醸 造所がリースリングのヴィンツアー・ゼクトを 生産しています。甘口のベーレンアウスレーゼ やアイスワインは国際市場において最高価格で 取引されています。リースリングは収穫の1年後 くらいから楽しめ、その多くは数年を経て飲み 頃を迎えます。トップクラスのワインは、ほぼ 無期限に保存可能だと言って良いでしょう。 楽しみかた 若く軽快なリースリングは、辛口からフルーティ な甘口に至るまで、夏にぴったりのワインです。 料理に合わせる場合は、熟成したリースリング がふさわしく、時を経たリースリングのシュペー トレーゼは食中酒として味わうと、若々しさを感 じます。辛口から中辛口のリースリングは、軽い 料理と特に相性が良く、蒸した海魚や川魚、茹 で肉のホワイトソースがけ、家禽類の肉に良く合 います。中辛口や甘口のシュペートレーゼはフレ ッシュチーズとうまく調和します。フルーティな 甘口のシュペートレーゼや気品ある甘口のアウ スレーゼはフルーティなデザートのお供に最適 です。長期熟成した気品ある甘口のアウスレーゼ やベーレンアウスレーゼは祝祭の日のメニューの 理想的なアペリティフとなります。
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
ミュラー・トゥルガウ
ミュラー・トゥルガウ (リヴァーナー)
ミュラー・トゥルガウ(リヴァーナー) ミュラー・トゥルガウはシンプルで飲みやすい ワインです。若々しく、軽やかでフレッシュな 味わいは、日々のワインにぴったりです。この 品種はスイス、トゥルガウ州出身のヘルマン・ ミュラー教授(1850〜1928年)が交配したもの で、彼の名がつけられています。ミュラー教授は、 ドイツのガイゼンハイム研究所でこの品種を育てて いました。かつてはリースリングとジルヴァーナー の交配と言われていましたが、最新の遺伝子解 析により、リースリングとマドレーヌ・ロワイ ヤルの交配であることがわかりました。 重要性 ミュラー・トゥルガウは、1990年代まではドイ ツワイン業界において、リースリングを凌ぐリー ダー的存在でした。現在も栽培面積の約12%を 占め、ぶどう栽培において、重要な役割を担っ ています。この品種は様々なタイプのワインに 利用でき、ワイン通ではない人々にも広く飲ま れているため、現在も約12.800ヘクタールもの 畑を維持しているのです。しかも、場所を選ば ず収量が安定しています。「リヴァーナー」の ネーミングでリリースされる、若々しい、ライ トでフレッシュな辛口タイプのミュラー・トゥ ルガウは、市場で成果をあげており、意欲的な 外食産業において人気商品となっています。
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
ミュラー・トゥルガウ
ぶどう栽培 ミュラー・トゥルガウはドイツの全ワイン産地 で栽培されています。最も多く栽培されている のがラインヘッセン地方で4.200ヘクタール、続 くバーデン地方では2.600ヘクタール、ファルツ 地方では2.100ヘクタール、さらに、フランケン 地方1.700ヘクタール、モーゼル地方1.100ヘク タール、ナーエ地方約530ヘクタールとなってい ます。1980年代に導入されたぶどう畑1ヘクター ル当りの収量制限は、収量が多いミュラー・ト ゥルガウにとってプラスの効果がありました。 醸造と味わい ミュラー・トゥルガウは成熟が早く、シンプル で、時に華やかで繊細かつフルーティなマスカッ トのアロマをもつワインができあがります。酸 味は柔らかですが、北方の産地のものは、やや 強めとなっています。フレッシュさと品種固有 の香りを保つため、主にステンレススティール タンクで醸造され、ほとんどが、辛口か残糖の あるクヴァリテーツワインとなります。例外も ありますが、ミュラー・トゥルガウは長期熟成 するワインではなく、収穫後の数年間が一番美 味しくいただけます。ボトリング直前まで酵母 と接触させておく「シュール・リー」製法のワイ ンもあちこちで見られます。 楽しみかた ミュラー・トゥルガウは入手しやすく、バラン スのとれたスタイルゆえに、広く飲まれている ワインです。色は明るい黄色、中くらいのボディ です。エティケットにリヴァーナーと表示され ている場合は、辛口で若々しく、ライトでフレッ シュなスタイルのワインです。ミュラー・トゥ ルガウは気軽に味わえる日常ワインであり、繊 細な風味の料理にぴったりです。
色
アロマ
明るい黄色
味わい
マイルドな酸味
繊細なハーブ類、 りんご、洋梨
ボディ
中くらいの力強さ
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
ジルヴァーナー
ジルヴァーナー
ジルヴァーナー ジルヴァーナーは香りが控えめで、酸味が柔ら かな品種です。厚みのあるジルヴァーナーは重 厚な地方料理にふさわしく、繊細なジルヴァー ナーはコース料理などのお供に最適です。ジル ヴァーナーはおそらくトラミーナとエスターラ イヒッシュ・ヴァイス(オーストリアの白の土 着品種)の自然交配ではないかと言われていま す。 重要性 19世紀初頭、ジルヴァーナーの栽培地域が各地 に広がり始めました。ジルヴァーナーは、例え ばファルツ地方においては、以前から栽培され ていた価値が低い品種だけでなく、グートエー デルやエルプリングまで淘汰してしまいました。 その結果、19世紀半ばにドイツで最も重要な品 種となりました。当時はドイツで栽培されるぶ どうの半分以上がジルヴァーナーだったのです。 過去数十年においては、ミュラー・トゥルガウ の台頭により、栽培面積が減少し、現在では総 栽培面積の5%に落ち込んでいます。とはいえ、 現在の総面積5.100ヘクタールのレベルは維持 できそうです。ジルヴァーナーは特にラインヘ ッセン地方とフランケン地方で重要な品種です。
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
ジルヴァーナー
「ラインヘッセン・ジルヴァーナー」は約2.400 ヘクタールとなっています。ちなみに、フラン ケン地方での栽培面積は1.400ヘクタール、ファ ルツ地方は約750ヘクタールとなっています。 ぶどう栽培 ジルヴァーナーはリースリング以上に土壌を選 びます。乾燥した土壌、石の多い土壌だけでは 充分ではないのです。フランケン地方の造り手 が何度も被害に遭遇してきたように、ジルヴァー ナーは冬場の霜に敏感です。収量が多いため、シ ンプルな日常ワインが造られていますが、収量を 減らした高品質のプレディカーツワインも生産 されています。 醸造と味わい ジルヴァーナーは霜の被害が及ばない畑では、 確実に収量が得られ、成熟期間も中くらいの長 さです。どちらかと言えばニュートラルなワイ ンで、リースリングよりも酸味がまろやかです。 ジルヴァーナーは明るい黄色から、濃い黄色の 色調で、控えめで、土壌を感じさせる香りを持 ち、中くらいのボディのワインに仕上ります。 重い土壌で栽培されているものは「ジューシー」 で「厚み」があり「力強い」味わいのワインと なります。醸造は通常ステンレススティールタ ンクで行われますが、シュペートレーゼやアウ スレーゼには木樽が使用されることもあります。 楽しみかた ジルヴァーナーは食事のお供にふさわしいワイ ンで、産地や醸造方法により、川魚、貝類、じ ゃがいもなどの野菜のグラタン、アスパラガス やマイルドなチーズによく合います。
色
アロマ 非常に明るい黄色から
りんご、洋梨、
濃い黄色まで
刈ったばかりの牧草
味わい
ボディ
酸味は柔らかなもの
ライトなものから
から中くらいの
中くらいのものまで
ものまで
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
グラウブルグンダー
グラウブルグンダー
グラウブルグンダー グラウブルグンダーはドイツにおける優良品種 のひとつです。ブラウアー・シュペートブルグ ンダー(シュペートブルグンダー)の突然変異 種で、かつてルーレンダーと呼ばれていました。 重要性 ドイツではグラウブルグンダーが再び重要性を 増しています。世界的に見ると、ドイツでの栽 培面積はイタリア、米国に次いで第3位となって います。現在の栽培面積は約5.300ヘクタール で、ドイツのぶどう畑の総面積の約5%を占め ています。特にバーデン地方の造り手が、この 品種に力を入れており、同地方での栽培面積は 1.900ヘクタールを越え、栽培面積の11%を占 めるまでとなっています。ラインヘッセン地方 での栽培面積は1.400ヘクタール、ファルツ地方 では約1.300ヘクタール栽培されています。 ぶどう栽培 グラウブルグンダーは収量が多めで安定してお り、糖度も高めの品種です。粒の間隔が狭く、 房がコンパクトであるため、ボトリティス菌が つきやすく、気品ある甘口ワインや貴腐ワイン の生産にも向いています。収量制限や効果的な 間引きは積極的に実践されています。
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
グラウブルグンダー
醸造と味わい グラウブルグンダーはステンレススティール タンク、あるいは大型の木樽で醸造されますが、 バリックも導入されており、その場合はマロラ クティック醗酵も行われています。 グラウブル グンダーは辛口仕立てが多く、中くらいのボデ ィで、酸味がアクセントとなっています。一方、 ルーレンダーの名称でリリースされるワインは、 厚みがあり、甘口仕立てとなっています。醸造 方法や品質等級により、色調は明るい黄色から ゴールドイエロー、琥珀色とヴァリエーション があります。 グラウブルグンダーは、アーモン ドなどのナッツ類、フレッシュバターの風味に 加え、フルーティなアロマも持ち合わせ、洋梨、 レーズンなどのドライフルーツ、パイナップル、 柑橘類系の風味が感じられます。 楽しみかた 若く軽快な辛口から中辛口のグラウブルグンダー は夏のワインにぴったりです。辛口のカビネッ トやシュペートレーゼはシーフード、特に海魚、 パスタ料理、ラム肉、ジビエ(野生肉)、熟成 したチーズに良く合います。バリック仕立ての ワインは濃厚な味わいのラム肉料理や軽めの野 生肉料理、例えば野鳥肉や鹿肉と合います。フ ルーティな甘口のシュペートレーゼや気品のあ る甘口のアウスレーゼは、脂肪分の多い青カビ チーズ、蜂蜜、アーモンド、マジパンなどを使 ったデザートにふさわしいワインです。
色
アロマ 濃いめの色調、
マンゴー、ナッツ類、
明るい黄色から
アーモンド、
ゴールドイエローまで
かりん
味わい
ボディ 酸味が
柔らかなものから
力強くフルボディ
強調されたものまで
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
ヴァイスブルグンダー
ヴァイスブルグンダー 辛口仕立てで、フレッシュな酸味と繊細なフルー ティさを併せ持つヴァイスブルグンダーは理想 的な食中酒でもあり、夏向きの軽快なワインで す。グラウブルグンダーはブラウアー・シュペー トブルグンダーの突然変異ですが、ヴァイスブル グンダーは、この突然変異がさらに進行したも のと考えられています。
ヴァイスブルグンダー
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重要性 ヴァイスブルグンダーはグラウブルグンダー同 様、近年栽培面積が急増している白ワイン品種 のひとつです。現在の栽培面積は4.600ヘクター ルを越え、全栽培面積の4,5%を占めています。 いずれの地方においても、リースリングにとっ て暑すぎる畑はヴァイスブルグンダーに向いて います。ヴァイスブルグンダーは数世紀にわた って着々と増加しており、過去10年で栽培面積 が倍増しました。ドイツにおける栽培面積はイ タリアに次いで世界第2位です。 ヴァイスブルグ ンダーが最も多く栽培されているのはバーデン 地方で、約1.400ヘクタールあります。次いでフ ァルツ地方とラインヘッセン地方がそれぞれ約 1.100ヘクタールの畑を擁しています。ナーエ地 方、モーゼル地方でもヴァイスブルグンダーは 重要な品種です。
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ぶどう品種
ヴァイスブルグンダー
ぶどう栽培 ヴァイスブルグンダーの栽培にふさわしい土壌 や気候などは、シュペートブルグンダーと類似 しています。その要求は高く、温暖で、できる だけ深く力強い土壌、開放的で乾燥した暖かい 畑を好みます。栽培においては扱いやすく、果 実がゆっくり成熟すれば、高い糖度を得ること ができます。 醸造と味わい ヴァイスブルグンダーの色調は明るい黄色から 藁色、香りは繊細で控えめです。典型的なのが ナッツ系のアロマです。辛口仕立ては中くらい、 あるいは力強いボディを持ち、繊細で活き活き した酸味があり、あらゆる食事に合います。ハ イレベルのクヴァリテーツワインには、バリック 仕立てのものもあります。少量ながら、気品あ る甘口ワインや爽やかなヴァイスブルグンダー・ ゼクトも生産されています。 楽しみかた 辛口で、フレッシュな酸味と繊細なフルーティ さを持つヴァイスブルグンダーは、理想的な食 中酒です。軽快な夏向きのワインの他に、力強 いものもあり、辛口のシュペートレーゼも造ら れています。アルコール度数はそれほど高くな く、控えめなアロマは、ナッツ、りんご、洋梨、 かりん、アプリコット、柑橘類、新鮮なパイナ ップルを連想させます。ボディは中くらいで、 飲み心地が良く、フレッシュな酸味をもち、あ らゆる食事に合わせることができます。シーフー ド全般をはじめ、子牛、豚肉、鶏肉に合うほか、 しっかり冷やして「テラスワイン」(テラスで 気軽に楽しむワイン)として飲むのがぴったり です。充分に抽出を行ったエキス分の多いワイン やバリックワインには、ラム肉や、繊細な調理 法の若い野生肉もよく合います。
色
アロマ 明るい黄色から 藁色まで
味わい
やや強調された酸味
りんご、洋梨、 マンゴー、ナッツ、 かりん
ボディ
中くらいのボディ
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ぶどう品種
ケルナー
ケルナー
ケルナー ケルナーはトロリンガーとリースリングの交配 品種です。ヴァインスベルクの詩人で医官だっ たユリウス・ケルナー(1786〜1862年)にちな んで命名されました。 重要性 1970年代初頭のドイツでは、造り手の間でも消 費者の間でも、新交配品種がもてはやされてい ました。ケルナーはまずファルツ地方で栽培さ れ、ドイツ全土でも栽培されるようになりまし た。ケルナーの栽培面積は1992年に7.826ヘク タールに達し、その人気は過去最高となりまし たが、それ以降は減少傾向にあります。現在の 栽培面積は約3.000ヘクタール、ラインヘッセン 地方とファルツ地方が約950ヘクタールずつ、ヴ ュルテンベルク地方は約300ヘクタールとなって います。 ぶどう栽培 ケルナーは湿気の多い土壌や極端に乾燥した土 壌を嫌います。晩秋まで長期にわたりゆっくり 成熟するとリースリングなみの糖度が得られま す。収量も安定しており、通常プレディカーツ ワイン用の糖度で収穫することが可能です。
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ぶどう品種
ケルナー
醸造と味わい 「リースリングのちいさな親戚」と呼ばれるケ ルナーからは、シュペートレーゼを上限として、 あらゆる品質等級のワインが造られています。 日常的に楽しめるシンプルなクヴァリテーツワ イン、シュペートレーゼ、そしてゼクトも生産 されています。ケルナーの色調は明るい黄色で、 香りはリースリングよりもアロマティックです。 酸味のアクセントがあり、アロマは繊細かつフ ルーティで、洋梨、りんご、カラント、アプリ コット、アイスボンボン(キャンディ)などを 連想させ、時にはマスカット香もたち現れます。 楽しみかた 辛口、中辛口のケルナーは魚や野菜のテリーヌ など、ライトで控えめな味わいの前菜にふさわ しいワインです。このほか、夏向きのサラダ、 魚介、鶏肉、子牛、アスパラガス料理、マイル ドなチーズやフレッシュチーズにも良く合いま す。フルーティーな甘口のケルナーはりんごを 使ったデザートにぴったりです。
色
アロマ 明るい黄色
味わい
りんご、桃、 アイスボンボン
ボディ
酸味がアクセントに
ライトなものから
なっている
中くらいのものまで
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ぶどう品種
シャルドネ
シャルドネ
シャルドネ 他の多くの品種同様、シャルドネのルーツも西 アジアです。ワイン文化の伝播とともに、フラ ンスへもたらされ、ブルゴーニュ(ブルグンド) 地方に根づき、そこが新しい故郷となりました。 トゥールニュ近郊に「シャルドネ」と呼ばれる村 があり、名前の由来になったと言われます。ドイ ツで栽培が認可されたのは1991年のことでした。 重要性 シャルドネは世界で最もポピュラーなぶどう品 種の1つです。事実、全てのワイン生産国で栽培 されており、世界全体の栽培面積は約180.000 ヘクタールに及びます。ドイツでも栽培面積が ゆっくり、確実に増加しています。国内栽培面 積は1.600ヘクタールを越え、ドイツのぶどう栽 培面積の1%強を占めています。伝統的にブルグ ンダー系品種(ブルゴーニュ系品種)を多く生産 している地域(バーデン地方のカイザーシュトゥー ル、ファルツ地方のズードリッヒェ・ヴァインシュト ラーセなど)で、シャルドネは優れた成果をあげて います。 ぶどう栽培 シャルドネはヴァイスブルグンダーやリースリン グ同様場所を選びます。ぶどう栽培の限界地域 の畑には向かないのです。
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ぶどう品種
シャルドネ
醸造と味わい ほとんどのワインが辛口仕立てです。ステンレ ススティールタンクのほか、バリックも広く使 用されています。しかしバリック仕立てに向く のは高品質のワインに限られます。フレッシュ でフルーティなワインからはゼクトも生産されて います。メロン、グレープフルーツ、良く熟し たグーズベリーなどがシャルドネの典型的な香 りです。高品質のものはアルコール度数も高く、 エキス分も充分で、ボディがしっかりとしてお り、味覚の余韻が長く続きます。バリック仕立て のものには、フルーティな第1アロマにオーク香 が重なります。 楽しみかた シャルドネにはフレッシュなクヴァリテーツワイン から力強い辛口のシュペートレーゼに至るまで、様 々なスタイルがあり、あらゆるシチュエーションに 合わせて楽しむことができます。軽快で若いワイ ンは魚介類にふさわしく、力強い、オーク香がア クセントとなったワインは、グリル料理や濃厚 なチーズによく合います。
色
アロマ グーズベリー、 明るい黄色から
グレープフルーツ、
濃い黄色まで
トロピカルフルーツ
味わい
ボディ
中くらいの酸味、
中くらいの
滑らかで、バターの
ボディから
ような味わい
力強いものまで
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ぶどう品種
ショイレーベ
ショイレーベ
ショイレーベ ショイレーベは無名の野生ぶどうとリースリングの 掛け合せから誕生したのではないかと言われてい ます。力強い香りはブラックカラント(カシス)、桃、 熟した洋梨を連想させます。ショイレーベは、前 菜からデザートに至るまで、アロマティックでスパ イシーな料理のお供に最適です。 重要性 ショイレーベはベーレンアウスレーゼやトロッ ケンベーレンアウスレーゼが造られるようにな った1950年代に広く認識されるようになりまし た。ラインヘッセン地方のアルツァイで生まれ た交配品種で、ぶどう栽培面積第1位の同地方で 主に栽培されています。 1970年代にショイレーベのブームがあり、栽培 面積が倍増しました。現在の栽培面積は1.450ヘ クタールです。うち約800ヘクタールがラインヘ ッセン地方に、約400ヘクタールがファルツ地方 に、約140ヘクタールがフランケン地方に、約 110ヘクタールがナーエ地方にあります。バーデ ン地方の造り手もショイレーベから卓越したワイ ンを生み出しています。ドイツのぶどう栽培面 積に占める割合は2%以下で、近年重要性が失わ れつつあります。
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ぶどう品種
ショイレーベ
ぶどう栽培 ショイレーベはリースリング同様、場所を選ぶ 品種です。品種にふさわしい土壌は乾燥した痩 せた土壌です。このほかレスとの相性が良く、 石灰質の基底土を持つ土壌でも良く育ちます。 ぶどうはリースリングよりも早く熟し、粒は中く らいのサイズ。酸分解は比較的遅く始まります。 醸造と味わい ショイレーベはそのほとんどがプレディカーツ ワインとしてリリースされており、「リープリッ ヒ」「ズース」といった甘口のものが重視され ています。ここ数年、世界各地で栽培されている ソーヴィニヨン・ブランと良く似たタイプの、辛 口仕立てのショイレーベが増加傾向にあります。 ワインの色は品質により、明るい黄色から藁色、 濃いゴールドイエローまでさまざまです。繊細 なカビネットや中くらいのボディのシュペート レーゼには、ショイレーベ独特の香りがよく表 現され、心地よい酸味と繊細でフルーティな甘 みが見事に調和しています。特有の香りは、ブ ラックカラント(カシス)を思わせ、時折マン ゴー、みかん、ライム、桃、まれに熟した洋梨 の香りが感じられます。気品ある甘口ワインは 長熟タイプで、年月を経ても桃やバラの花など の印象的な香りがあらわれます。 楽しみかた あらゆる醸造スタイルや品質のワインがあるた め、ショイレーベは多彩なシチュエーションで 活躍します。軽快なカビネットは気軽な集まり に、辛口や中辛口のシュペートレーゼはアロマ ティクでスパイシーな魚介料理、鶏肉のラグー (煮込み)、アジアン料理のお供に最適です。気 品ある甘口のシュペートレーゼやアウスレーゼ はフルーティなデザートによく合います。
色
アロマ ブラックカラント、
明るい黄色から藁色まで
味わい
フルーティさが
トロピカルフルーツ
ボディ
中くらい
強調された酸味
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ぶどう品種
バッフス
バッフス
バッフス バッフスは1930年代にペーター・モリオとジー ベルディンゲンの連邦ぶどう栽培研究所のフス フェルト博士が共同で、ジルヴァーナーとリー スリングの交配品種をさらにミュラー・トゥル ガウと交配し、生み出した品種です。バッフス はフローラルな香りとマスカットに似た香りを 持ち、ショイレーベを思い起こさせます。 重要性 バッフスはショイレーベ同様、1970年代に人気 を博した品種でした。最も人気が高かったのが 1990年代初頭で、それ以後、栽培面積は減少傾 向にあります。2013年時点での栽培面積は約 1.800ヘクタールで、畑の大部分がラインヘッセ ン地方とフランケン地方にあります。造り手た ちの間でバッフスがもてはやされたのは、リー スリングと正反対の早熟品種であり、糖度があ がりやすく、リースリングに適さない畑での栽 培が可能だったからです。 ぶどう栽培 バッフスはさほど畑を選ばない品種で、深さが 充分あり、比較的新しい、養分のたっぷりある 土壌を好みます。繁殖力が旺盛で、ミュラー・ トゥルガウなみの収量が得られます。バッフス は早熟ですが、あまり早く収穫すると、充分な 品質に達しません。
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ぶどう品種
バッフス
醸造と味わい バッフスは残糖のあるプレディカーツワインと して出回ることもあります。ワインはエキス分 が多く、フルーティで、時折ショイレーベを思 わせる独特の香りがします。糖度が高い果汁か ら造られ、充分な酸味があるタイプはリースリン グと似ており、花の香り、ほのかなマスカット の香りがします。色は明るい黄色、アルコール 度数はライトなものから中くらいのものまで様 々です。 楽しみかた バッフスには、ほのかなスパイス香があるため、 アジアン料理やフルーティなデザートに良く合い ます。
色
アロマ グリーンがかった
黄色から明るい黄色まで
味わい
ブラックカラント、 オレンジ、 キャラウェイ
ボディ
フルーティ、
ライトなものから
繊細で活き活きと
中くらいの
した味わい
ものまで
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ぶどう品種
グートエーデル
グートエーデル
グートエーデル グートエーデルは5000年の歴史を持つ、世界で 最も古い栽培用ぶどうの1つです。ルーツはパ レスチナ地方ではないかと言われ、5000年前に ナイル川中流地域で栽培されていたと推測され ています。その後は、海洋民族であるフェニキア 人によってあちこちにもたらされたと言われて います。16世紀初頭には、フランスのワイン産 地でも栽培されるようになりました。マコンの 南西にシャスラという村があり、グートエーデ ルのフランス名がシャスラであるため、この村 の周囲で栽培されていたのではないかと言われ ています。確実にわかっているのは、17世紀初 頭からドイツで栽培されていたことです。ヴュ ルテンベルク地方とフランケン地方で栽培が始 まり、100年後にはザクセン地方とフライブルク の南に位置するマルクグレーフラーラントでも 栽培されるようになりました。1780年にフリー ドリヒ・フォン・バーデン辺境伯がレマン湖の ほとりの有名なワイン産地ヴェヴェイからグー トエーデルの苗を持ち込んでからは、広域で栽 培されるようになりました。 重要性 グートエーデルには白、赤の両品種があり、い ずれも美味な食用ぶどうとして世界中で栽培 されています。ドイツでは、フライブルクとス イス国境の中間に位置するマルクグレーフラー ラントで集中的に栽培されており、その面積は 1.100ヘクタールにおよびます。ドイツ全体で の栽培面積は1.150ヘクタールです。グートエー デルは南バーデン地方ならではの名産品として 何十年にもわたり、栽培量が維持されています。 次いで、ザーレ・ウンストルート地方に24ヘク タールの畑があります。 ぶどう栽培 グートエーデルは平均的な良い畑であれば、満 足した結果が得られますが、冷たい風から守っ てやる必要があります。好ましいのは、深さの ある、あまり乾燥しすぎていない土壌ですが、 浅い風化岩石や石灰質土壌でも、うまく成熟し
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ぶどう品種
グートエーデル
ます。成熟は少し早めで、糖度は平均並み、肥 沃な土壌で栽培すると、1ヘクタールあたり100 ヘクトリットルもの収量が得られます。ぶどう は腐敗しにくく、秋には高品質のぶどうを収穫 することが可能です。 醸造と味わい グートエーデルの魅力は、ニュートラルな味わ いにあり、それぞれのテロワール、土壌、微気 候、地形が、できあがるワインにはっきりと表 現されます。ほとんどがライトで飲み口が良い ワインとしてリリースされていますが、プレディ カーツワインレベルの個性的な商品も増えてい ます。辛口仕立てで、マロラクティック醗酵を 行ったものは、とてもまろやかな味わいとなり ます。グートエーデルは一般に飲みやすいワイ ンとして知られています。 楽しみかた ワインがまだ若いうちが一番美味しくいただけ ます。ブランチやヴェスパー(間食)にふさわ しいワインです。エレガントなグートエーデル は、魚料理や上品なチーズなど、軽い食事にぴ ったりです。
色
アロマ
明るい黄色
味わい
柔らかな酸味
ナッツ、バター、 土壌の個性を反映
ボディ ライトなものから 中くらいのものまで
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ぶどう品種
ローター・トラミーナ
ローター・トラミーナ
ローター・トラミーナ ローター・トラミーナは今日栽培されているワ イン用ぶどうのうち、最も古い品種のひとつで す。研究者たちは、そのルーツがギリシャでは ないかと推測しています。南チロル地方のトラ ミンと言う村が品種名の由来ではないかという 議論もあります。同地方では、15世紀にトラ ミーナ種のワインがミサ用として修道院に届け られていました。ドイツでは16世紀から栽培さ れていたことが歴史的文献からわかっています。 当時この品種の栽培を奨励する動きがあったの です。また、18世紀のローター・トラミーナの 育種に関する報告書によると、当時すでにぶど う樹の選別が行われていたようです。リースリン グと収量の多い他品種とローター・トラミーナ とは、伝統的に「ゲミッシュター・ザッツ(混 植)」と言って、同じ畑で一緒に栽培されてい ました。収量が不安定であることから、過去に おいても広域で栽培されることはありませんで した。欧州経済共同体の規定によりローター・ トラミーナの名称で分類された品種だけが、ドイ ツでゲヴュルツトラミーナの名称を使用できま す。バーデン地方ではクレーヴナー(Clevner) という名称も認められています。 重要性 ドイツにおけるローター・ドラミーナの栽培面 積は約900ヘクタールで、全体の1%以下にすぎ ません。しかしここ数年、栽培面積がわずかに 上昇しています。ファルツ地方に約380ヘクター ル、ラインヘッセン地方に160ヘクタール、バー デン地方(主にカイザーシュトゥール地区)に 150ヘクタールの畑があります。ザクセン地方で はローター・トラミーナが名産となっています。 ぶどう栽培 トラミーナは非常に厚い、赤みがかった果皮を 持ち、充分に熟したぶどうからは、アウスレー ゼクラスのワインを生産することができます。 花ぶるいが起こりやすく、収量が低くなりがち で、毎年一定していません。長期的な平均値を みると、トラミーナの収量が、認可されている
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ぶどう品種
ローター・トラミーナ
1ヘクタールあたりの収量を越えることはまれで す。収量が低いことからも、トラミーナがドイツ のぶどう品種の中で、最高品質のものに含まれ ることがわかります。 醸造と味わい アロマティックでスパイシーな風味を持ち、非 常に繊細なワインが造られます。ワインはエキ ス分が多く、フルボディ、酸味は非常にマイル ドです。典型的なトラミーナの色は、品質により 藁色からゴールドイエローまで。咲き終わりの バラの花のような香りは、控えめなこともあれ ば、華やかに感じられることもあります。アカ シアの花、すみれの花、蜂蜜、マジパン、かりん のゼリー、ビターオレンジ、パッションフルーツ などの風味もあります。気品ある甘口のアウス レーゼは、長期保存が可能です。 楽しみかた アロマティックな香り、ビターでスパイシーな 果実味が印象的なトラミーナは、アロマティッ ク系の品種を好む人にぴったりのワインです。フ ォアグラのテリーヌ、鴨やガチョウのグリル、 脂肪分の多い青カビチーズなどに向いています。 長期熟成した気品ある甘口タイプは、アペリティ フに向きます。甘口のシュペートレーゼや気品あ る甘口のアウスレーゼは香り豊かで、マジパン、 チョコレート、ブランディなどを使用したデザー トにふさわしいワインです。
色
アロマ ゴールド
バラ、レーズン、
イエロー
かりん
味わい 非常に柔らかな酸味
ボディ 力強く、フルボディ
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ぶどう品種
エルプリング
エルプリング
エルプリング エルプリングはヨーロッパの栽培ぶどうのうち、 もっとも古い白品種のひとつです。ローマ人はこ のぶどうを「ヴィティス・アルバ(Vitis alba)」 すなわち「白いぶどう」と名付けました。言語 学者は「アルバ」という語が「アルベン」から 「エルベン」、さらに「エルプリング」と変化し たと指摘しています。歴史家たちの見解によれ ば、ローマ人が2000年前、エルプリングをガリ ア経由でドイツにもたらしたとのことです。中世 から19世紀に至るまでの数百年間、エルプリン グはドイツと近隣諸国、東欧に至る広域で栽培 されていました。十分の一税の廃止が、収量の多 いエルプリングの衰退の一因ではないかと考えら れています。エルプリングは今日のドイツのワイ ンシーンにおいて、希少価値を持つ品種で、モー ゼル地方でだけ栽培が認可されています。オー バーモーゼルでは、2000年の栽培史を誇ります。 重要性 統計によると、エルプリングの栽培面積は約 560ヘクタールで、ドイツの総栽培面積の1%に 達していません。モーゼル地方における栽培面 積の割合は約6%で、同地方では3番目に多く栽 培されている品種です。主にモーゼル川の南部 流域、トリアーの南西に位置するオーバーモー ゼル、ザウアー川流域の斜面で栽培されていま す。ただ栽培面積は減少傾向にあります。
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ぶどう品種
エルプリング
ぶどう栽培 オーバーモーゼルはムッシェルカルク(貝殻石 灰岩)土壌が支配的で、エルプリングが好む土 壌でもあります。エルプリングは早熟で、場所 をあまり選びません。ムッシェルカルク土壌の ものは、典型的なフレッシュなワインに仕上り ます。収量は安定しており、クヴァリテーツワ インのレベルで多くの収量が見込めます。カビ ネット、シュペートレーゼクラスのワインも生 産されています。 醸造と味わい 酸味はリースリングなみか、やや柔らかめで、 ゼクトのベースワインにふさわしい品種です。 エルプリングからはフレッシュで飲みやすいニ ュートラルな日常ワインやゼクトが生産されて います。80%のぶどうがケラーライ(ワイン生 産工場)でワインやゼクトにフレッシュさを加 味するブレンド用ワインとして使用されるため、 エルプリング1品種だけで醸造されるワインや、 伝統製法のゼクトは非常に稀です。「ローター・ エルプリング」という白ワイン品種に属する突 然変異種もあります。 楽しみかた エルプリングから醸造されるワインやゼクトは、 軽快で、活き活きとしていて、爽やかです。夏 の日のテラスワインにふさわしいシンプルなワ インは、パンとコールドミートの組み合わせに も、魚介類にもよく合います。
色
アロマ 非常に明るい黄色から
ほのかな香り、
ややグリーンがかった
りんご
黄色まで
味わい
酸味がアクセント
ボディ
非常に軽やか
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ぶどう品種
ソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブラン ソーヴィニヨン・ブランは主に南西フランスで 栽培されている品種です。ここ数十年にわた り、世界中で栽培されるようになり、アルゼン チン、チリ、ニュージーランド、イタリアに広 まったほか、カリフォルニアと南アフリカでも 成功をおさめています。全世界における総栽培 面積は約80.000ヘクタールに達しており、世界 で最も多く栽培されている白品種のひとつとな っています。古い記録によると、ソーヴィニヨ ン・ブランは紀元280年頃からロワール峡谷で 栽培されていたことがわかっており、そこから 各地に広まったと言われています。ソーヴィニ ヨン・ブランはバーデン地方のドゥルバッハで も、伝統的に栽培されてきました。ツォルン・フ ォン・ブーラッハ伯爵が所有していたヴォルフ・ メッテルニヒ伯爵家醸造所では、1830年以降シ ュロス・グロールと呼ばれる畑に、シャトー・ ディケム由来のぶどうを植えていました。でき あがったワインは1980年代に至るまで「ヴァイ サー・ボルドー」(白いボルドー)という名称 で販売することが、特別に認可されていました。 同醸造所は2006年に初めてトロッケンベーレン アウスレーゼの収穫に成功しました。
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ぶどう品種
ソーヴィニヨン・ブラン
重要性 ドイツにおけるソーヴィニヨン・ブランの栽培 面積は現在800ヘクタールを越え、主にファルツ 地方、ラインヘッセン地方、バーデン地方で栽 培されています。ドイツのソーヴィニヨン・ブ ランは、近年、国際規模のワインテイスティング において、非常に高く評価されています。 ぶどう栽培 ソーヴィニヨン・ブランは難しい品種で、暖かい 畑でしか完熟しないため、条件が良く、さほど 高地でない、南向きの畑が栽培に向いています。 重い土壌よりも、痩せた土壌を好みます。一番 良いのは、深さのある土壌です。収量は中くら いで、ジルヴァーナーとほぼ同時期に熟します。 醸造と味わい ソーヴィニヨン・ブランは実に多彩なアロマが 立ちあらわれるワインに仕上がります。主に、ア ロマティックでフレッシュな辛口が造られてい ます。スパイシーなアロマは、グリーンピーマ ン、ブラックカラント、柑橘類、グーズベリー などを連想させます。酸味のアクセントがあり、 ソーヴィニヨン・ブランにフレッシュさを加味し ています。 楽しみかた ソーヴィニヨン・ブランは魚や野菜との相性が 非常に良く、魚介類全般、クリームソースのパ スタによく合います。とっておきの組み合わせ が、山羊のチーズとの組み合わせ。アペリティフ にも向くワインです。
色
アロマ ピーマン、 明るい黄色
ブラックカラント、 柑橘類、グーズベリー
味わい
やや強調された酸味
ボディ 中くらい、 エキス分が多い
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ぶどう品種
シュペートブルグンダー
赤ワイン品種
シュペートブルグンダー 白ワインにおいて、最高品質を誇る品種がリー スリングなら、赤ワインにおいて、同じ地位 を占めるのは、シュペートブルグンダー、つま りピノノワールでしょう。シュペートブルグン ダーの故郷はブルゴーニュ(ブルグンド)地方 で、4世紀から栽培されていたとの記録がありま す。遺伝子解析によると、シュペートブルグン ダーはトラミーナとシュヴァルツリースリング の自然交雑だということです。
シュペートブルグンダー
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重要性 シュペートブルグンダーのドイツにおける栽培 面積は約11.800ヘクタールです。ぶどう畑の総 面積の約11%に相当し、フランス、米国に次い で世界で第3番目に多く栽培されています。造り 手も消費者も、この品種をますます好むように なっています。1990年代初頭以来、シュペート ブルグンダーの栽培面積は5.000ヘクタールも増 加しました。畑のほとんどがバーデン地方にあ り(約5.700ヘクタール)、カイザーシュトゥー ル地区が栽培中心地となっています。次いでフ ァルツ地方に約1.600ヘクタール、ラインヘッセ ン地方に約1.400ヘクタール、ヴュルテンベルク 地方に約1.300ヘクタールの畑があり、いずれも シュペートブルグンダーの重要な産地となって います。ドイツの赤ワインのうち、シュペートブ ルグンダーは最高価格で取引されています。専 門店や外食産業において、最高価格のシュペー トブルグンダー(一部はバリック仕立て)はコン スタントに売れています。
繊細な違いを知る
ぶどう品種
シュペートブルグンダー
ぶどう栽培 シュペートブルグンダーは非常に古い品種で、 気候条件や土壌を選び、細やかな畑仕事が要求 されます。栽培にふさわしい畑は、リースリン グにも向く畑、すなわち、最も条件のよい畑で す。生育条件が満たされれば好調に育ち、努力 次第で世界最高級の赤ワインを生産することが できます。 醸造と味わい シュペートブルグンダーは主に辛口の赤ワイン としてリリースされ、残糖のあるタイプはごく一 部です。ロゼワインやゼクトが造られることも あります。最高品質のグローセス・ゲヴェック スやエアステス・ゲヴェクスクラスのワインに は、バリック仕立てのものが増えています。シ ュペートブルグンダーは後味の余韻が長く、あ る程度タンニンが感じられ、ブラックベリーや チェリーを思わせるフルーティなアロマが特徴 です。最高級のシュペートブルグンダーは伝統 的に完熟状態で収穫して醸造します。ワインは ルビーレッド、ざくろ色で、タンニンの量は中く らい、酸味はまろやかです。 楽しみかた シュペートブルグンダーは寒い季節に味わう のに理想的なワインです。室温が18度から20 度くらいの頃に、その室温で味わうのがおす すめです。肉のグリル、野生肉料理、熟成し たハードチーズに良く合います。シュペート ブルグンダー・ヴァイスヘルプストは、前菜 や明るい色の肉を使った料理にぴったりです。
色
アロマ ブラックベリー、 ルビーレッドから
チェリー、いちご、
ざくろ色まで
にわとこ、胡椒
味わい
ボディ
ややタンニンが
ややボリュームのあるもの
強調された味わい
からフルボディまで
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ぶどう品種
ドルンフェルダー
ドルンフェルダー
ドルンフェルダー ドルンフェルダーは1955年に新しく交配され、 誕生したばかりの品種ですが、すでにドイツの 伝統品種なみの存在感があり、近年急激に需要 が高まりました。ドルンフェルダーはヘルフェ ンシュタイナーとヘロルドレーベの交配で、も ともと「色づけ用のワイン(デックロートヴァイ ン)」として交配されたものでした。 重要性 1970年代半ば頃までは、100ヘクタールほどが 栽培されているだけでしたが、その後、栽培面 積が急増しました。今日、栽培面積は8.100ヘク タールに達し、総面積の約8%を占めています。 とはいえ、赤ワイン品種の中では、シュペートブ ルグンダーのほうがより多く栽培されています。 ドルンフェルダーはファルツ地方、ラインヘッ セン地方の造り手に広く受け入れられています が、他の産地でも栽培されています。 ぶどう栽培 ドルンフェルダーは強靭で、病気にかかりにく い品種です。生育するがままにさせておくと、 収量が非常に高くなります。土壌を選ぶ品種で、 砂の多い土壌や岩石の多い土壌を嫌います。
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ぶどう品種
ドルンフェルダー
醸造と味わい ドルンフェルダーは主に辛口の赤ワインとしてリ リースされますが、中辛口、甘口のものも生産 されています。醸造スタイルには2通りあり、1 つはサワーチェリー、ブラックベリー、にわと こなどのフルーティなアロマを引き立てたもの で、早くから市場に登場するタイプ、もう1つは 大型の木樽や小型の木樽(バリック)を使って、 タンニンやストラクチャーを強調し、フルーティ なアロマを控えめに表現したタイプのものです。 ドルンフェルダーはふくよか、滑らかで、バラン スのよいワインに仕上ります。色が非常に濃い ため、一目でわかるワインでもあります。 楽しみかた ドルンフェルダーは、他の力強い赤ワインと同 様、寒い季節に熟成したものを楽しむのが理想 的です。肉のグリル、野生肉、チーズによく合 うワインです。
色
アロマ バイオレットから
にわとこ、
黒っぽい赤色まで
ブラックベリー
味わい
ボディ
タンニンが
ボリューム豊かで
強調された味わい
力強い
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繊細な違いを知る
ぶどう品種
ポルトギーザー
ポルトギーザー
ポルトギーザー ポルトギーザーはシンプルでフルーティ、フレ ッシュで飲みやすい日常的に楽しめるワインで す。タンニンが少なく、収穫後の翌春から楽し むことができます。ポルトギーザーの由来は、 はっきりとはわかっていません。18世紀にオー ストリアを経由し、19世紀になってからドイツ で栽培されるようになったことだけがわかってい ます。 重要性 ポルトギーザーは、ドイツで栽培されている赤 ワイン品種のうち、シュペートブルグンダー、ド ルンフェルダーに次いで3番目に重要な品種です。 栽培面積は約3.700ヘクタールで総面積の3,6% を占めています。ポルトギーザーの栽培は地域 的に偏りがあり、最も多いのがファルツ地方で 約1.800ヘクタール、次いでラインヘッセン地方 が1.450ヘクタールとなっています。ポルトギー ザーの栽培面積は、近年減少傾向にあります。 ぶどう栽培 ポルトギーザーは土壌や畑をさほど選びません が、湿気のない、あまり重くない土壌が向いて います。養分の少ない砂の多い土壌でもうまく 育ちます。冬場の霜に強く、樹勢が強めで収量 は安定しています。ぶどうは早熟で、クヴァリ テーツワインレベルでも9月前半に収穫が可能で す。
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ぶどう品種
ポルトギーザー
醸造と味わい ポルトギーザーからは、収穫後ただちに圧搾す るか、短時間のスキンコンタクトの後に圧搾を 行い、主にヴァイスヘルプストを造ります。明 るい赤色のぶどうなのでヴァイスヘルプストに 向いています。赤ワインの場合は、他の赤ワイ ン品種より低アルコールに仕上がります。収量を 極端に減らすことで、濃厚な赤色の力強い赤ワイ ンを生産することも可能です。 楽しみかた ポルトギーザーはシンプルですが、飲み心地が 良く、充実した味わいが楽しめます。フレッシ ュさを持ちあわせた素朴なワインで、タンニン が少ないため、熟成が早く、早いうちからバラ ンスが良い、飲み頃のワインとなります。香り は控えめですが、レッドカラント、ラズベリー、 いちごなどのベリー類のほか、サワーチェリー、 胡椒の風味が楽しめます。ポルトギーザーはあ らゆる料理にうまく調和します。ヴァイスヘルプ ストは夏にふさわしいワインです。
色
アロマ
明るい赤から
レッドカラント、
ルビーレッドまで
いちご
味わい
タンニンが柔らか
ボディ ライトなものから 中くらいのものまで
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ぶどう品種
トロリンガー
トロリンガー
トロリンガー トロリンガーはヴュルテンベルク地方で最も多く 栽培されている赤ワイン品種です。飲み心地の よいワインは、別名「シュヴァーベン地方の郷 土飲料」として広く知られています。南チロル 地方か、その隣のトレンティーノ地方の土着品 種ではないかと言われ、同地ではヴェルナッチ と呼ばれています。ロンバルディア地方の品種 ではないかという説もあります。 重要性 1960年から1990年にかけて、トロリンガーの 栽培面積は1.000ヘクタールほど増え、約2.500 ヘクタールに達しました。その後の数十年にお いては、栽培面積に大きな変動はなく、現状で は約2.300ヘクタールとなっています。ヴュルテ ンベルク地方で最も多く栽培されている赤ワイン 品種であり、シュヴァルツリースリングとレン ベルガーがそれに続いています。トロリンガー はヴュルテンベルグ地方以外ではほとんど栽培 されておらず、ファルツ地方とバーデン地方の ごく限られた醸造所が生産しています。ヴュル テンベルク地方以外での栽培面積は30ヘクター ルにすぎません。 ぶどう栽培 トロリンガーは暖かい土壌を好みます。特にコイ パー、ムッシェルカルクなどの土壌が適してい ます。晩熟で、リースリングよりゆっくり成熟 するため、霜害の及ばない、良い条件の畑で栽 培する必要があります。
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ぶどう品種
トロリンガー
トロリンガーは収量の多い品種で、1ヘクタール あたり100ヘクトリットルの収量が可能です。養 分の少ない土壌でも育ち、広域にわたる畑でも うまく育てることができます。糖度は通常クヴァ リテーツワインレベルに達し、平均値は70エク スレとなっています。酸の量は1リットルあたり 7〜10ミリグラムで赤ワイン品種としては例外的 に多めです。 醸造と味わい トロリンガーからは通常、フレッシュでシンプ ルな日常用の赤ワインが造られます。やや残糖 がある方がバランスも口当たりも良い、飲みや すいワインとなります。軽快でフルーティなワ インであるため、長期熟成の必要はなく、収穫 の翌年には飲み頃になっています。香りは繊細 で、いちごやチェリーを思わせます。通常は明 るいれんが色、良いヴィンテージのものはルビー レッド色です。ヴァイスヘルプストも生産されて おり、レンベルガーとブレンドされることも多く なっています。ジューシーな果実は食用にもな っています。 楽しみかた トロリンガーは、多くの消費者が毎日のように 楽しんでいる、非常に飲みやすいワインです。 パンとバターのためのワインと言われ、パンと コールドミートの組み合わせにふさわしく、明 るい色の肉料理やトマトソースのパスタにも良 く合います。暑い季節には、少し冷やして味わう ことをおすすめします。
色
アロマ れんが色から明るい ルビーレッドまで
味わい
タンニンが柔らか
いちご、 レッドカランド、 チェリー
ボディ ライトなものから 中くらいのものまで
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ぶどう品種
シュヴァルツリースリング
シュヴァルツリースリング(ミュラーレーベ)
シュヴァルツリースリング (ミュラーレーベ) シュヴァルツリースリングは特にヴュルテンベ ルク地方で多く栽培されていますが、他地方で も広く愛されている品種です。公式には「ミュ ラーレーベ」の名称でリストアップされていま す。ルーツはブルゴーニュ地方で、同地では 400年以上前から栽培されていました。遺伝子 解析により、ミュラーレーベはシュペートブル グンダーの片方の親であることがわかっていま す。フランスでは「ピノ・ムニエ」と呼ばれ、 シャンパンに使用する3品種のうちの1つです。 重要性 シュヴァルツリースリングのほとんどがヴュル テンベルク地方で栽培されており、ドイツの総 栽培面積の約2%を占めています。1980年代 に1.000ヘクタールだった栽培面積は2.000ヘク タールに倍増、以来少しずつ増え続けています。 現在の総栽培面積は約2.150ヘクタールに達し、 うち約1.550ヘクタールがヴュルテンベルク地 方に分布しています。次いでバーデン地方北部、 ラインヘッセン地方、ファルツ地方、フランケ ン地方の順に多く栽培されています。
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ぶどう品種
シュヴァルツリースリング
ぶどう栽培 シュヴァルツリースリングはシュペートブルグ ンダーほど畑や土壌を選ばない、栽培しやすい 品種です。最もふさわしいのがレスやロームの ような力強い土壌です。収量は比較的少なめで、 シュペートブルグンダー並みですが、糖度はシ ュペートブルグンダーには及びません。とはい え平年で70〜80エクスレには達します。酸の量 はかなり低くなることがあります。 醸造と味わい シュヴァルツリースリングはルビーレッド色で、 シュペートブルグンダーに似たフルーティなア ロマと繊細なストラクチャーを持つ体躯が特徴 です。辛口仕立てがほとんどですが、フルーテ ィな甘口も醸造されています。クヴァリテーツ ワインとして生産されることが多いですが、カ ビネットやシュペートレーゼもあります。 楽しみかた ヴュルテンベルク地方では、シュヴァルツリー スリングが1リットル瓶で出回っており、シン プルな日常ワインとして親しまれています。や やパワフルな造りのものは、豚肉やラム肉料理、 マイルドなチーズに良く合います。シュヴァル ツリースリングはシュペートブルグンダーの代 わりとしておすすめのワインです。
色
アロマ レッドカラント、 ルビーレッド
チェリー、 ラズベリー、 ブラックベリー
味わい 中くらいのタンニン
ボディ 中くらいのものから フルボディまで
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN WEISSWEINREBSORTEN 繊細な違いを知る ぶどう品種 レンベルガー
レンベルガー
レンベルガー レンベルガーは着々と栽培面積を増やしていま す。ヴュルテンベルク地方の名産ワインとして 知られ、優れた畑のぶどうで造られたものはト ップクラスの品質を誇ります。分類上の品種名 はブラウアー・リンブルガーといい、ドイツで はレンベルガー、またはブラウフレンキッシュ という別名を使用することが認められています。 レンベルガー種は晩熟で、そのルーツはドナウ 川下流域のぶどう畑であると言われています。 重要性 レンベルガーは過去数十年の間に着々と人気を 獲得しています。1980年代の栽培面積は400 〜500ヘクタールだけでしたが、1990年代半 ばには1.000ヘクタールに増加、2013年には 1.800ヘクタールを越えています。レンベルガー は、ほとんどがヴュルテンベルク地方で栽培さ れています。同地方における栽培面積の割合は 約14,5%に達しています。 ぶどう栽培 レンベルガーは、発芽が早く晩熟であるため、 暖かく、風当たりがさほど強くない、守られた 畑を好みます。このように場所を選ぶ品種です が土壌に関しての要求は高くありません。深い 肥沃なレス・ロームが栽培にふさわしく、中程 度の収量が得られます。レンベルガーはヴュル テンベルク地方の名産であり、良い畑からは最 高品質のワインが造られます。 醸造と味わい ワイン愛好家たちは、あらゆるタイプのレンベ ルガーを好んでいます。ライトでフルーティな タイプを好む人もいれば、シュペートレーゼや アウスレーゼレベルの、エキス分やタンニンが 多いタイプが好みだという人もいます。色が濃 く、黒っぽい赤色で、香りが控えめなものも、 力強いものもあり、ブラックベリー、チェリー、 サワーチェリー、プラム、レッドカラント、に わとこ、バナナなどの香り、ピーマンなどベジ タブル系の香りが感じられます。
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ぶどう品種
レンベルガー
醸造方法により、フルーティなものもあれば、 タンニンが強調され、余韻が長いものもありま す。酸のストラクチャーがしっかりしており、タ ンニンも充分にあるため、長期熟成タイプです。 バリック仕立てのものは、南国的なチャーミン グで温かみのあるワインとなります。個人醸造 所、協同組合を問わず、意欲的な造り手たちが トロリンガーとブレンドし、その比率により「 レンベルガー&トロリンガー(レンベルガーベー ス)」または「トロリンガー&レンベルガー( トロリンガーベース)」としてリリースしてい ます。レンベルガーのゼクトは非常に稀な商品 です。 楽しみかた ライトでフルーティなレンベルガーはヴェス パー(間食)や夏のバーベキューパーティにふ さわしいワインです。ヴュルテンベルガー・フ ィアテレ、即ちヴュルテンベルク地方の4分の1 (=0,25リットル)という言い回しがあり、同地 方ではたっぷりの量のワインを楽しみます。 タンニンが強調されたレンベルガーは、田舎風 のパテ、グリル料理、シュヴァーベン地方のツ ヴィーベルロストブラーテン(スライスした玉 ねぎを焼いたものを添えたローストビーフ)、 家禽類のグリル、野鳥や野生肉料理、シュモア ブラーテン(肉の蒸し煮)やラム料理にふさわし いワインです。
色
アロマ 濃いルビーレッドから 黒っぽい赤色まで
味わい
カシス、 ブラックベリー、 チェリー
ボディ
タンニンが
中くらいのボディから
強調された味わい
フルボディ
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN 繊細な違いを知る ぶどう品種 レゲント WEISSWEINREBSORTEN
レゲント
レゲント レゲントは1996年に栽培が認可された新交配品 種で、2005年までの間に急増しました。ファル ツ地方ジーベルディンゲンの連邦ぶどう交配研 究所で、ジルヴァーナーとミュラー・トゥルガ ウの交配種をさらにシャンボーソンとかけ合わ せたもので、特定のカビ菌に耐性があり、ビオ ワインの生産に向く品種です。 重要性 レゲントは当初、各地方の多くの試験用の畑で 栽培されはじめたため、自ずと全ての生産地で 栽培されるようになりました。品種統計から推 測すると、醸造家たちが非常に強い関心を示し た品種であり、現在もなお、強い関心が寄せら れていることがわかります。1997年から2005 年にかけて、栽培面積は70ヘクタールから約 2.000ヘクタールへと着実に増加し、以後は安 定しています。ドイツのぶどう畑の総面積の約 2%を占めており、主にラインヘッセン地方、フ ァルツ地方、バーデン地方で多く栽培されてい ます。
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ぶどう品種
レゲント
ぶどう栽培 レゲントは、早熟で平均以上の糖度に達し、冬 の霜害に強い品種であるため、赤ワイン品種の 限界地域でも栽培が可能です。ウドンコ病とベ ト病に対し、かなりの耐性があります。 醸造と味わい レゲントはシュペートブルグンダーを越える程 度の糖度に達します。収量はシュペートブルグ ンダーなみです。チェリーやブラックベリーの アロマが感じられ、タンニンが強調された、繊 細な酸味を持つふくよかなワインに仕上がりま す。レゲントはざくろ色や黒っぽい赤色など、 非常に濃い色のワインになります。高品質のぶ どうはバリックで醸造されます。 味わい ワインは比較的早く飲み頃に達し、ラムのもも 肉やオックステイルなどに凝縮した味のソース を添えた濃厚な肉料理、野生肉料理によく合い ます。
色
アロマ ざくろ色から 黒っぽい赤色まで
味わい
ブラックチェリー、 ブラックベリー、 レッドカラント
ボディ
タンニンが
ボリューム豊かで
強調された味わい
フルボディ
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ぶどう品種
サン・ローラン
サン・ローラン
サン・ローラン サン・ローラン、あるいはザンクト・ラウレン トは、遺伝子解析により、あるブルゴーニュ品 種と素性が不明の品種の自然交配であるという ことがわかっています。約150年前にアルザス 地方からドイツにもたらされ、1990年までは ほんの少量しか栽培されていませんでした。サ ン・ローランという名称は、聖人歴に名を連ね る聖ラウレンティウス(8月10日が祝日)に由 来するものではないかと言われ、シュペートブ ルグンダーよりも10日から12日早く熟すことを 考慮して命名されたのではないかと考えられて います。 重要性 サン・ローランは、1997年より急増している栽 培品種です。2013年時点での栽培面積は660ヘ クタールで、ほとんどがファルツ地方とライン ヘッセン地方で栽培されています。 ぶどう栽培 サン・ローランは発芽が早いため、5月霜の被害 を受ける可能性があります。成熟の早い品種で 平均的な畑であればうまく育ちます。寒冷な畑 で栽培すると、酸の量がハイレベルに達します。 深い土壌、石灰質土壌が理想的です。収量は1ヘ クタールあたり、平均70〜80ヘクトリットル程 度です。平均糖度は80エクスレに達します。
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ぶどう品種
サン・ローラン
醸造と味わい エキス分が多く、充分な酸の量を持つ高品質の モストからは、力強さとフレッシュなフルーテ ィさを併せ持つ赤ワインが造られます。ハイレ ベルのワインには、バリック仕立てのものもあ ります。色は濃い赤色で、フルーティなワイン にはサワーチェリーやワイルドチェリーの香り が感じられます。 楽しみかた フルーティさの度合い、凝縮度により、軽い食 事にも、重厚な食事にも合わせることができま す。野生肉料理にも熟成したチーズにも合いま す。
色
アロマ
ルビーレッド
味わい
タンニンは柔らか
ワイルドチェリー
ボディ 中くらいのボディから フルボディまで
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ドイツワインが 生まれるところ
ドイツの白ワインは他国のそれとは 大きく異なり、活き活きとして、フ ルーティで、ミネラリティ豊かな味 わいを持っています。これらの個性 は、特別な気候と土壌から生み出さ れるものです。
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ドイツワインが生まれるところ
ドイツのワイン生産地は、ザクセン地方とザー レ・ウンストルート地方を除いて、国土の南部 と南西部に集中しています。世界的には、最北 の生産地に属し、西の温暖湿潤なメキシコ湾海 流気候と、東の乾燥した大陸性気候との境界に 位置します。生育期間が長く、11月になって初
めて収穫が行われる畑もあります。夏はさほど 暑くないため、ワインは繊細で、アルコール度 数は南の生産国のワインほど高くありません。 また、土壌や品種にバラエティがあり、ドイツ ワインは決して画一的ではありません。
世界のぶどう栽培地
赤道
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ
生産地域
生産地域の規模 生産地
単位 ヘクタール
白品種と 赤品種の割合 単位 %
ラインヘッセン 地方
26.582
68,8 : 31,2
ファルツ地方
23.567
62,3 : 37,7
バーデン地方
15.822
57,8 : 42,2
ヴュルテン ベルク地方
11.373
29,8 : 70,2
モーゼル地方
8.776
90,5 : 9,5
フランケン地方
6.125
81,0 : 19,0
ナーエ地方
4.187
74,8 : 25,2
ラインガウ地方
3.166
85,2 : 14,8
ザーレ・ウンスト ルート地方
765
74,2 : 25,8
アール地方
563
15,3 : 84,5
ザクセン地方
498
80,9 : 19,1
ミッテルライン 地方
469
85,3 : 14,7
ヘッシッシェ・ ベルクシュトラー セ地方
450
78,9 : 21,1
単位 ヘクタール
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ぶどう畑面積
クヴァリテーツワインが生産されている13の生 産地域のほとんどが、ドイツの南西部にありま す。多様な土壌や、地域ごとの明確な気候の違 い、地域特有のそれぞれのぶどう品種により、 ドイツワインは多彩なものとなっています。ド イツにおけるぶどう栽培の地理的事情を詳しく 調べると、その多様性は、南西部だけに集中し ているのではないことがわかります。クヴァリ テーツワインが生産されている最北の畑は、ポ ツダム近郊のヴェルデラーナー・ヴァハテルベ ルクであり、ザーレ・ウンストルート地方の飛 び地に当たります。数年前から、気候の変動に より、ぶどう栽培の限界地域はどんどん北へと 移動しています。現在では、北海のズュルト島 にもぶどう畑が開墾されており、クヴァリテー ツワインの生産は困難なものの、ラントワイン が生産されています。ドイツ国内で、最東に位 置する単一畑はザクセン地方のケーニヒリッヒ ャー・ヴァインベルクで、ドレスデンの東の郊 外にあります。
ドイツワインが生まれるところ
ドイツワイン生産地域マップ
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ 生産地方
アール地方
アール地方 アール地方はドイツ西部における最北のぶどう 栽培地。ドイツで最も小さな生産地のひとつで、 赤ワインの産地として知られています。アイフ ェル山地に守られ、熱をためる狭い谷間とノイ ヴィード盆地からの暖かい空気が、この小さな 産地に、優れたシュペートブルグンダーなど、 傑出した赤ワインを生み出すのに理想的な気候 をもたらしています。アールワインは専門店や 外食産業において、特別なワインとして高価格 で提供されています。観光ルートが整っており、 ライン・ルール地方からは至近距離であるため、 ワインのほとんどが直販されています。
アルテンアールのぶどう畑
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Bonn •
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56
r
• Mayschoß
ロケーション ボンの南、約40キロの地点でアール川はライン 川に合流しています。全長89キロのアール川 流域では、源流のブランケンハイムから、下流 のジンツィッヒ近郊まで、野趣にあふれ、ロマ ンティックで原初的な自然の風景が見られます。 アール川は西南西から東北東に流れているため、 谷間には南向き斜面が形成されています。アー ル川流域には河口に至るまで、アルテンアール、 マイショス、レッヒ、デルナウ、ヴァルポルツ ハイム、ハイマースハイムといったワイン村が 連なっています。 気候 アール地方はアイフェル山地に守られています。 そのため年間降水量の平均値が低く、長期平均 値は650ミリです。年間平均気温は摂氏9,8度で、 ワイン産地としてはかなり低めです。冬は比較 的穏やかですが、春先の数ヶ月間は晩霜のリス クがあります。ケルン低地に近いゆえ、メキシ コ湾流の影響による温暖気候の恩恵を受けてい ます。アールの谷は非常に狭く、急斜面の岩場 には優れたミクロクリマのスポットが点在し、 ぶどう栽培に良い影響をもたらしています。
ドイツワインが生まれるところ
土壌 アールの谷はライン・スレート山地の一部を成 しています。スレートはぶどう栽培にとって、 絶好の条件でもあり、日中は熱を蓄積し、夜に はぶどうに放熱します。この他、グレーワッケ、 レス・ローム、小石、火山岩などの土壌が見ら れます。アールヴァイラーからライン川に至る 地域では、谷間も広がっています。このあたり では、痩せた土壌はあまりなく、流域のテラス 状の畑には、肥沃なレス土が堆積しています。 ぶどう品種 アール地方のぶどう栽培面積は約560ヘクター ル、ドイツで最も小さい生産地のひとつです。 畑の84%で赤ワイン品種が栽培されており、他 の生産地で、これほど赤ワイン品種の栽培比率 が高いところはあまり例がありません。赤ワイ ン品種の中では、シュペートブルグンダーの割 合が一番多く、総栽培面積の62%以上を占めて います。続いて、ポルトギーザー、フリューブ ルグンダーが多く栽培されています。これら2品 種はシュペートブルグンダーよりも2週間早く熟 します(シュペートは遅い、フリューは早いとい う意味)。フリューブルグンダーはドイツでは稀 な品種です。白ワイン品種では主にリースリン グが栽培されています。
生産地方
アール地方
アール地方早わかり ロケーション
アール山地の北西に位置し、 アイフェル山地に守られている
気候
温暖で理想的(ケルン低地)、 部分的に温室効果のある急斜面
土壌
アール川下流域は、深さがあり、 レスの多い土壌。アール川中流域は、 部分的にスレートや火山岩土壌が ある
ぶどう畑
約560ヘクタール、ベライヒ1、 総合畑1、単一畑43
ぶどう品種
シュペートブルグンダー、リース リング、ポルトギーザー、フリュー ブルグンダー
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ 生産地方
バーデン地方
バーデン地方
オルテナウのぶどう畑
バーデン地方はドイツ最南に位置するワイン生産 地です。ぶどう畑の総面積は約15.800ヘクタール におよび、3番目に広い産地です。同地方は、北は タウバー川、南はボーデン湖に達しています。生産 地を分割する9つのベライヒは、景観的にも気 候的にもかなりの差があるため、さまざまなタ イプのワインが生産されています。ドイツで最 も温暖な地域で、栽培されているぶどう品種か らもそれがわかります。バーデン地方で生産さ れるワインの約75%が大小の協同組合で生産販 売されています。
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ロケーション バーデン地方のワイン産地は、北のタウバーフ ランケンから、南のボーデン湖に至るドイツ南 西部に、南北400キロにわたって広がっており、 タウバーフランケン、バーディッシェ・ベルク シュトラーセ、クライヒガウ、オルテナウ、ブ ライスガウ、カイザーシュトゥール、トゥニベ ルク、マルクグレーフラーラント、そしてボー デンゼーの9つのベライヒに分かれています。 気候 バーデン地方は年間日照時間が1.700時間以上、 年間平均気温が11度あり、ドイツで最も太陽に 恵まれた、最も暖かい地域です。そのためバー デン地方は、欧州連合によるワイン生産地区分 において、ドイツで唯一Bゾーン、つまり平均 的に暖かい栽培地に分類されています。気候に 特色があるのは、ファルツの森とオーデンの森 の高台に挟まれたエリアとヴォージュ山脈と黒 い森に挟まれたエリアです。これらの地域は冷 たい風や強い雨から守られています。南ヴォー ジュ山地とジュラ山地の間には、いわゆる「ブ ルゴーニュの門」と呼ばれる一帯があり、地中 海性の暖かい空気が、ここを通ってライン川の 平地に入り込んで来ます。
ドイツワインが生まれるところ
土壌 多彩な表情を持つワイン産地、バーデン地方は、 土壌も多様です。クライヒガウにはムッシェル カルクやコイパーが、タウバー川流域には石灰 質土壌、陶土、マールの堆積土壌や肥沃なレス、 ロームが、 カイザーシュトゥール、トゥニベル ク、マルクグレーフラーラントには火山岩の破 砕土壌が見られます。ボーデン湖湖畔では、熱 をしっかりと蓄積するモレーン(堆石)の砕石土 壌が支配的です。 ぶどう品種 「バーデン地方はブルグンダーの国」と言われま す。気候が温暖なカイザーシュトゥールやトゥ ニベルクは、力強い味わいに仕上るブルグンダー 種(シュペートブルグンダー、ヴァイスブルグ ンダー、グラウブルグンダー)にとって、理想 的な生育条件が備わっています。バーデン地方 らしいワインが、酸の量が少なめのオルテナウ のリースリングや、マイルドな酸味のマルクグ レーフラーラントのグートエーデルです。同地 方の北部のタウバーフランケン、バーディッシ ェ・ベルクシュトラーセ、クライヒガウといっ たベライヒでは、リヴァーナー、リースリング、 シュヴァルツリースリングが多く栽培されてい ます。ボーデン湖湖畔では、主にシュペートブ ルグンダーとミュラー・トゥルガウが栽培され ています。バーディッシェ・ロートゴルトはロ ゼ色の地方色豊かなワインで、シュペートブルグ ンダーとグラウブルグンダーから造られます。
生産地方
バーデン地方
バーデン地方早わかり ロケーション
ボーデン湖湖畔から、上ライン峡谷 に沿って、バーディッシェ・ベルク シュトラーセ、クライヒガウを経由 し、タウバーフランケンに至るまで
気候
日照に恵まれ温暖。カイザーシュト ゥールの辺りはドイツで最も暖かい 地域
土壌
ボーデン湖湖畔はモレーン(堆石) の砕石土壌、第三紀の石灰、マー ル、大規模なレスの堆積土壌、カイ ザーシュトゥール近辺は火山性土 壌、マルクグレーフラーラントはム ッシェルカルク、クライヒガウ、タ ウバーグルントはコイパー
ぶどう畑
約15.800ヘクタール、ベライヒ9、 総合畑16、単一畑306
ぶどう品種
シュペートブルグンダー、ミュラー・ トゥルガウ、グラウブルグンダー、 ヴァイスブルグンダー、リースリング、 グートエーデル
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ 生産地方
フランケン地方
フランケン地方
エッシェルンドルフのぶどう畑
• Aschaffenburg
Schweinfurt • • Würzburg
60
Main
フランケン地方は、ころんと丸い特有の形をした ワインボトル、ボックスボイテルで良く知られ ています。代表的なワインは力強く、土壌を感 じさせる香りのジルヴァーナーやミュラー・トゥ ルガウで、ほとんどが辛口仕立てです。ワイン 通には、フランケン地方とジルヴァーナーは切 っても切れない関係であることが知られていま す。ジルヴァーナーはマイン川沿いのムッシェ ルカルクで順調に生育し、凝縮した土壌を感じ させるアロマを得ることができます。赤ワイン 品種は主に、ビュルグシュタットとクリンゲン ベルクに近いベライヒ、マインフィアエックで 栽培されています。フランケン地方はコンパク トなサイズであることと、ボックスボイテルで広 く知られていることから、イメージ的に有利な 地方でもあります。 ロケーション フランケン地方はバイエルン州の北端に位置し、 ぶどう畑の総面積は6.100ヘクタールに及びます。 フランケンのワイン産地は、北はローン山脈、東 はシュタイガーヴァルト山地、南はタウバー峡 谷、西はシュペッサート山地が境界となってい ます。ぶどう畑の大部分はアシャッフェンブルク とシュヴァインフルトの間にあり、そこをマイン 川が大きなW字型を描いて流れています。すべ てのぶどう畑がマイン川かその支流流域の南向き の斜面に開墾されています。
ドイツワインが生まれるところ
気候 フランケン地方の気候は大陸性気候が支配的で、 夏は乾燥し、冬は非常に寒くなります。このような 気象条件ゆえに、霜の下りない生育期間は、毎年 160〜190日程度、年間日照時間は1.600〜1.750 時間、年間平均気温は8,5〜9,0度、年間降水量は 500〜600ミリとなっています。 土壌 フランケン地方を代表する土壌は雑色砂岩、ムッ シェルカルク、そしてコイパーです。この特殊 な地層が、古代の三畳紀の海から堆積してでき あがるまでに、約6千万年の年月がかかっていま す。マインフィアエックでは雑色砂岩土壌が多 く、シュタイガーヴァルトではコイパーが、マイ ンドライエックではムッシェルカルクとレスが 中心となっています。マイン川が湾曲している フォアカッハ一帯は、レッテンコイパー(下層 コイパー)や砂が主体の土壌です。
生産地方
フランケン地方
フランケン地方早わかり ロケーション
アシャッフェンブルクとシュヴァイ ンフルトの間に位置する、マイン川 とその支流域の南向き斜面
気候
主に大陸性気候、乾燥した、温暖な 夏、寒い冬
土壌
ベライヒ別に、マインフィアエック は、原成岩の風化土壌と雑色砂岩、 マインドライエックはローム・レス とムッシェルカルク、シュタイガー ヴァルトはコイパー
ぶどう畑
約6.100ヘクタール、ベライヒ3、 総合畑23、単一畑216
ぶどう品種
ミュラー・トゥルガウ、ジルヴァー ナー、バッフス、リースリング、 ドミナ、シュペートブルグンダー
ぶどう品種 フランケン地方で栽培されているぶどうは、白ワ イン品種が80%以上を占めています。ジルヴァー ナーはフランケン地方の伝統的品種です。最も多 く栽培されているのは、繊細なアロマを持つミュ ラー・トゥルガウで、若手の造り手たちが現代人 の好みに合わせたスタイルで醸造しており、新 たなブームがやってきています。ジルヴァーナー とミュラー・トゥルガウの他には、白品種のバ ッフスが、この地方独特のワインとして重要な 役割を果たしています。マインフィアエックと 呼ばれるベライヒでは、雑色砂岩土壌の畑でシ ュペートブルグンダーなどの赤品種が栽培されて います。
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ 生産地方
ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方
ツヴィンゲンベルクのぶどう畑
ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方 ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方のぶど う畑は450ヘクタールで、アール地方、ミッテル ライン地方、ザクセン地方と並んで、ドイツで 最も小さなワイン産地に数えられます。ワイン 法により「ベルクシュトラーセ」がヘッセン州 に属する部分とバーデン・ヴュルテンベルク州 に属する部分に分かれたため、ヘッセン州側に 属する部分が、1971年より独立したワイン生産 地となったのです。栽培品種はリースリングが 多く、約半分を占めています。ワインの多くは 辛口仕立てで、ほとんどが地元の消費者に直接 販売されています。
Main
• Darmstadt Groß-Umstadt • • Zwingenberg
Rhein
Bensheim • • Heppenheim
• Mannheim
ロケーション ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方はネッカー 川、ライン川、マイン川の間に挟まれ、オーデンヴ ァルト山地に守られた一帯で、2つのベライヒに分 かれています。シュタルケンブルクというベライヒ はダルムシュタットの南に位置し、畑は分散してい ますが、南のツヴィンゲンベルクからは畑はコンパ クトにまとまっていきます。主なワインの生産地は、 アウエルバッハ、ベンスハイム、ヘッペンハイムです。 ヘッペンハイムの南側のヘッセン州の州境がこの ベライヒの境界となっています。もう1つのベライヒ は、より小さく「オーデンヴァルダー・ヴァインイン ゼル(オーデンヴァルトのワイン島)」と呼ばれて います。ただし正式名は「ウムシュタット」です。中 心地はグロース・ウムシュタットという街です。
• Heidelberg
気候 「ドイツはここからイタリアになる」と言ったのは、 ヨーゼフ2世皇帝でした。彼が1766年にフランクフ ルトからベルクシュトラーセを越えて旅をした時 の言葉です。ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地 方の温暖な気候を決定づけているのは、オーデン ヴァルト山地であり、冷たい北風や東風から同地方 を守っています。また、ライン川、 マイン川、ネッカー 川は蓄熱槽の役割を果たしています。年間平均 気温は10度、日照時間は1.600時間、年間降水 量は720ミリを記録し、生育期間が長く、ぶどう の栽培には非常に適した気候です。
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ドイツワインが生まれるところ
土壌 ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方で特徴 的なのは、乾燥した、養分の少ない、熱を少し 持った砂の土壌と、粒子が細かく、深さがあり、 水分を充分に保つことのできるレスです。これ らの基底土壌は非常に古い、密度の高い風化土 壌を形成しています。レスはミネラル分の豊か な、肥沃な基底土壌であり、ワインにアロマの 豊かさと力強さをもたらしてくれます。ヘッペ ンハイム近郊の急斜面ではライン川の砂礫層由 来の雑色砂岩土壌が見られます。
生産地方
ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方
ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方早わかり ロケーション
ネッカー川、ライン川、マイン川に 囲まれ、オーデンヴァルト山地に守 られた地域
気候
理想的な日照条件と充分な降水量
土壌
軽い土壌は、異なる割合でレスが 混在
ぶどう畑
約 450 ヘクタール、ベライヒ 2、 総合畑 3、単一畑 23
ぶどう品種
リースリング、シュペートブルグン ダー、グラウブルグンダー、 ミュラー・トゥルガウ
ぶどう品種 ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ地方では主 に辛口、中辛口のワインが生産されています。こ の小さな生産地の典型的品種はリースリングで、 栽培面積の約半分を占めています。次いで多く栽 培されているのが、ミュラー・トゥルガウ、グラウブ ルグンダー、シュペートブルグンダーです。
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ 生産地方
ミッテルライン地方
ミッテルライン地方
バッハラハのぶどう畑
Rh
ミッテルライン地方はビンゲンとボンの間のラ イン川流域に位置する産地で、ぶどう畑は無数 の険しい岩場で構成される幅の狭いライン渓谷 にあります。同地方はドラマティックな風景で 良く知られていますが、ほとんどの畑が急斜面 にあるため、栽培は困難を極めます。この風光 明媚な地域の南側一帯は、文化的にも価値の高 い風景に彩られており、ライン渓谷中流上部と 呼ばれ、2002年にユネスコ世界遺産に登録さ れました。晴れの日が多く、気候は温暖で、ラ イン川は巨大な蓄熱槽の役割を果たしています。 リースリングにとって理想的な条件の畑が多く、 同品種が主に栽培されています。ワインには、 主にスレートの風化土壌の個性が表現されます。 アール地方同様、観光地として整備されている こともあり、中小規模の生産者は消費者にダイ レクトに販売しています。
e in
• Königswinter
• Neuwied Koblenz •
Boppard • Bacharach •
Bingen•
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ロケーション ミッテルライン地方は、ビンゲンとボンの南の ジーベンゲビルゲ山地の間に位置し、ライン川 沿いに110キロにわたって続いています。ビンゲ ンとコブレンツの間に位置する上ミッテルライン 地域では主に左岸で、コブレンツからジーベン ゲビルゲ山地に至る下ミッテルライン地域では 右岸でぶどうが栽培されています。 気候 南からの温暖な空気はライン渓谷を通ってミッ テルライン地方に流れ込んできます。冬は温暖 で、ライン川は蓄熱槽として機能するため、霜 害がほとんどありません。春の訪れは早く、夏 も気温が安定しており、雨量も充分にあります。 同地方の急斜面も、気候にプラスに働き、冷た い空気は、すぐに谷の下の方に下りて行きます。 年間平均気温は9,3度あり、生育期間が長く、晩
ドイツワインが生まれるところ
秋まで生育が可能で、リースリングの栽培に理 想的な条件を提供しています。 土壌 ビンゲンからコブレンツへ至る地域に特徴的な 土壌はスレート土壌です。フンスリュック・ス レート、暗色スレート、ローム、レス・ローム とスレート砂礫の混在土壌が固有のミネラリテ ィや酸味をもたらしてくれます。砂岩の一種で あるグレーワッケ(硬砂岩)土壌も見られます。 コブレンツの北側には火山性土壌もあります。 軽石、凝灰岩、レスもワインに力強さをもたら します。
生産地方
ミッテルライン地方
ミッテルライン地方早わかり ロケーション
ナーエ川との合流点からジーベンゲ ビルゲ山地まで、ライン川流域 100 キロにわたる両岸
気候
晴れた日が多く、畑は風から守られ ている。ライン川は蓄熱槽として 機能
土壌
スレート、グレーワッケ風化土壌、 レスが点在、北部には火山性土壌
ぶどう畑
約 470 ヘクタール、ベライヒ 2、 総合畑 10、単一畑 111
ぶどう品種
リースリング、シュペートブルグン ダー、ミュラー・トゥルガウ
ぶどう品種 ミッテルライン地方の造り手は、伝統的な品種 を好んで栽培しています。特にリースリングに とっての理想的な生育条件が整っています。同 地のリースリングは、ミネラリッシュで、繊細 な香りと、活き活きとした酸味で知られていま す。リースリングの栽培面積はほぼ70%に及び、 白ワイン品種のトップです。次いでミュラー・ トゥルガウ、ケルナー、そしてブルグンダー種 が栽培されています。赤ワイン品種で重要なの はシュペートブルグンダーです。
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DERDEUTSCHER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN WO WEIN WÄCHST ドイツワインが生まれるところ 生産地方
モーゼル地方
モーゼル地方
クレフのぶどう畑
モーゼル川、ザール川、ルーヴァー川流域のワイ ン生産地は、ドイツで最も古い産地として知ら れています。ローマ人がぶどう栽培の技術を大々 的なかたちでモーゼル地方にもたらしたのです。 モーゼル地方は伝統的なリースリング栽培地と して高い名声を誇ります。特に高品質のリース リングは、国際的に評価が高く、同地方の名声を 支えて来ました。モーゼル地方は、例えば、ヨー ロッパで最も急な65度の勾配をもつ、ブレマー・ カルモントのような、急斜面のぶどう畑で知ら れています。モーゼル地方はドイツで5番目に大 きなワイン生産地で、世界的にも急斜面のぶど う畑が最も多く分布している地域です。 Koblenz •
M os e Cochem •
• Zell • Bernkastel-Kues
• Trier
• Perl
l
ロケーション モーゼル地方は、ペルルからコブレンツに至る、モー ゼル川のドイツ国内部分である243キロにわたる流 域のほか、その支流であるザール川、ルーヴァー川 流域に及ぶ一帯です。同地方は6つのベライヒに 分かれています。下モーゼル流域のブルク・コ ッヘムというベライヒは、現在ではテラッセン モーゼルと呼ばれ、ぶどう栽培は主にテラス式 の畑で行われています。ベルンカステルと呼ば れるベライヒは中部モーゼルと言われる、同地 域の中心をなす一帯で、有名なワイン村や、ベ ルンカステラー・ドクター、ユルツィガー・ヴ ュルツガルテン、トリッテンハイマー・アポテー ケといった名高いぶどう畑が集中しています。ト リアの南からは、オーバーモーゼルと呼ばれる一 帯になります。モーゼルトーアというベライヒ はオーバーモーゼルの一部で、ザールラント州 に属します。ザール流域でもワインは造られて おり、ルーヴァー渓谷はモーゼル地方の産地で 最も小さい部分にあたります。 気候 モーゼルの谷は天候に守られた地域で、ドイツ で最も温暖なゾーンのひとつに数えられます。 川沿いのスレート土壌の急斜面のぶどう畑は、 日中に太陽の熱を備蓄し、夜間に放熱します。 気温は安定しており、冬は適度に寒く、夏は心 地よい暑さで、充分な降水量があります。年間
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ドイツワインが生まれるところ
平均気温は約10度あり、北緯50度辺りの温暖な 気候ゆえに、モーゼル地方の生育期間は4月から 10月まで、非常に長期間にわたります。ぶどう の成熟を11月まで待つことが可能な年もありま す。 土壌 オーバーモーゼルの、ドイツ、フランス、ルク センブルク3国の接する地点から、ザール川上流 のコンツの辺りまでは、ムッシェルカルク、コ イパーが主体で、ブルグンダー系品種や土着品 種のエルプリングにふさわしい底土となってい ます。シュヴァイヒからコブレンツまで、そし てザール川、ルーヴァー川流域はスレート土壌 です。石灰質の混在しない土壌は、リースリング に類のないミネラリティをもたらします。
生産地方
モーゼル地方
モーゼル地方早わかり ロケーション
フンスリュック山地とアイフェル山 地にはさまれたライン・スレート山 地、モーゼル川とその支流である ザール川、ルーヴァー川流域
気候
急斜面と渓谷では適度に温暖で、 適度の降水量
土壌
オーバーモーゼル一帯はムッシェル カルク、コイパー、ザール川、ルー ヴァー川渓谷はデボン紀スレート、 ツェルの南は柔らかいスレートと 珪酸の多いグレーワッケ
ぶどう畑
約 8.800 ヘクタール、ベライヒ 6、 総合畑 19、単一畑 524
ぶどう品種
リースリング、ミュラー・トゥルガ ウ、エルプリング、ケルナー
ぶどう品種 中部モーゼル、テラッセンモーゼル一帯、ならび にザール川、ルーヴァー川流域では、主にリース リングが栽培されています。リースリングは、地 中深くまで根を張り、痩せた土壌から充分なミ ネラリティとフィネスを引きだします。リース リング以外の品種も栽培され、リヴァーナーは次 に重要な品種です。オーバーモーゼルで見られ る土着品種、エルプリングは2000年前から、す でにこの地で栽培されていたと推測されていま す。エルプリングからはフレッシュでフルーテ ィ、シンプルな辛口ワインやヴィンツァーゼクト がつくられています。栽培面積が増えているの がヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、 オクセロワ、シャルドネで、石灰質土壌の畑で 素晴しいワインを生み出しています。赤ワイン においては、80年代後半からシュペートブルグ ンダーとドルンフェルダーがモーゼル川、ザー ル川、ルーヴァー川流域で栽培されるようにな っています。
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ 生産地方
ナーエ地方
ナーエ地方
ローテンフェルスのぶどう畑
モーゼル川とライン川の間に位置するナーエ地 方は中規模のワイン産地です。ローマ人が入植 し、ワインを栽培し始めた地域ですが、独自の ワイン生産地に指定されたのは1971年のことで した。土壌の構造が多岐にわたるため、できあ がるワインの味のニュアンスも実に様々です。 最も重要な品種はリースリングで、急斜面のス レート土壌の畑で栽培されているものは、ドイ ツワインの最高峰のひとつに数えられます。
Rh e in • Bingen Langenlonsheim •
Bad Sobernheim •
he
Glan
Na
68
• Bad Kreuznach • Bad MünsterEbernburg
ロケーション ナーエ地方は気候の温暖なドイツ南西部にあり ます。北部はソーンヴァルト=ナーエ自然公園 に、南部はノルトフェルツァー・ベルクラント に隣接しています。また、西部はキルン、イー ダー・オーバーシュタイン、上ナーエ・ベルク ラントに、東部はラインヘッシッシェス・ター フェル・ウント・ヒューゲルラント(ラインヘッ セン楯状・丘陵地域)に接しています。ナーエ 地方は3つの地域にわかれています。下ナーエは ナーエ川河口からバート・クロイツナッハまで、 中部ナーエはそこからシュロス・ボッケンハイ ムまで、上ナーエは源流に向ってシュロスボッ ケンハイムからマルティンシュタインへと続い ています。 気候 フンスリュック山地は冷たい風からナーエ地方 を守っています。気温は温暖、日照時間が長く、
ドイツワインが生まれるところ
雨が少なく、太陽の恵みにあふれた渓谷はワイ ン栽培にふさわしい気候です。上ナーエと、そ の支流の渓谷は、ミッテルゲビルゲ(ゾーンヴ ァルト/フンスリュックとノルトフェルツァー・ ベルクラント)からの冷たい空気の影響を受け ます。そのためぶどうの成熟が遅れます。この 気候は特にリースリングのアロマと酸のストラ クチャーに有利で、活き活きしたフルーティで、 軽快なワインができあがります。 土壌 ナーエ地方は地殻活動により非常に多様な土壌 を持つことになりました。地質学的多様性によ ってナーエ地方は特別なステータスを得ている のです。ナーエ地方の中部では、石英(クオー ツ)や斑岩(ポーフィリー)、メラフィリー、 雑色砂岩などの土壌が見られます。バート・ク ロイツナッハの周辺には風化土壌や砂岩由来の 粘土層や、レス、ロームが見られます。土壌の 多様性ゆえに、多様な品種の栽培、多彩なスタ イルのワイン造りが可能になります。ナーエ地 方はドイツ国内で最も土壌が多様な地域で、狭 い範囲内に異質な土壌が非常に多く分布してい ます。180種類以上の異なるタイプの土壌がある と推定されています。
生産地方
ナーエ地方
ナーエ地方早わかり ロケーション
ナーエ川河口から、川の上流に向っ てキルンの手前まで。主にナーエ川 の支流流域が栽培地
気候
バランスが良い、温暖で霜害が少 ない
土壌
下ナーエ地域は珪岩、スレート土 壌、中部ナーエ地域は斑岩(ポー フィリー)、メラフィリー、雑色砂 岩、バート・クロイツナッハ近郊は 風化土壌、砂岩由来の陶土層、 レス、ローム
ぶどう畑
約4.200ヘクタール、ベライヒ1、 総合畑6、単一畑284
ぶどう品種
リースリング、 ミュラー・トゥルガウ、 ドルンフェルダー、ジルヴァーナー、 シュペートブルグンダー
ぶどう品種 ナーエ地方で栽培されているぶどう品種は多様で す。約75%が白ワイン品種です。リースリング、 ミュラー・トゥルガウ、ジルヴァーナーが多く 栽培され、ヴァイスブルグンダーとグラウブルグ ンダーが近年増加しています。赤ワイン品種では ドルンフェルダーがトップで、シュペートブルグ ンダー、ポルトギーザー、レゲントが続きます。 ビンゲンからバート・クロイツナッハに至るナー エ川下流域はブルグンダー系品種と気候的条件を 選ぶ赤ワイン品種の栽培に適しており、糖度が 上がりやすく、適度な酸のストラクチャーが得ら れます。
69
ドイツワインが生まれるところ
生産地方
ファルツ地方
ノイシュタット近郊のぶどう畑
ファルツ地方
Ludwigshafen • Bad Dürkheim •
Neustadt •
Speyer •
Rh
ei
n
Landau •
ファルツ地方は23.600ヘクタールのぶどう畑を 擁し、ラインヘッセン地方に次いで、国内で2番 目に大きなワイン生産地です。生産構造はライ ンヘッセン地方と類似しています。ドイツで購 入されている国産ワインのうち3本に1本はファ ルツ産です。ラインヘッセン地方同様、多くの 小規模生産者、著名な大規模醸造所、協同組合 があり、専門店や外食産業などを通じてワイン の販売に成功しています。アルザス地方に至近 距離であること、観光産業の充実、有能なケラー マイスターたちの意気込みなどが、あらゆるスタ イルのワイン造りを可能にしました。赤ワイン 品種は約9.000ヘクタール栽培されており、うち 3.000ヘクタール以上をドルンフェルダーが占 めています。ファルツ地方はドイツ国内におい て規模の上では最大の赤ワイン生産地でもあり ます。 ロケーション ファルツ地方全体は、西はザールラント州、北 はラインヘッセン地方、ライン川の対岸はバー デン地方、そして南はアルザス地方に隣接して います。ぶどう栽培地域としてのファルツ地方 は、ファルツ地方全体の南東に位置し、フェル ツァーヴァルト山地の斜面に沿って広がってお り、2つの大きなベライヒに分かれています。北 部のミッテルハルトはノイシュタットから北向 きに、ダイデスハイム、バート・デュルクハイ ム、ライニンガー・ラントを経てツェラーター ルまで続いています。ドイツワイン街道のほぼ 中央に位置するマイカマーから、フランス国境 に面するシュヴァイゲンにかけては、ドイツ最 大のベライヒであるズードリッヒェ・ヴァイン シュトラーセが広がっています。 気候 ファルツ地方はドイツで最も温暖な地域に属し、 年間日照時間は1800時間、年間平均気温は11度 です。温暖な気候を享受できるのはフェルツァーヴ ァルト山地の斜面の畑で、冷たい空気や強い雨か
70
ドイツワインが生まれるところ
ら守られています。地中海性気候であり、アー モンド、いちじく、レモン、オリーブなどの栽 培も可能です。 土壌 ファルツ地方の2つのベライヒは、全く異なる土 壌構造を持っています。北のベライヒ、ミッテ ルハルト=ドイチェ・ヴァインシュトラーセは 軽い粘土、砂、ローム、マールなどが異なる割 合で混在しています。南のベライヒ、ズードリ ッヒェ・ヴァインシュトラーセの土壌は、ローム の割合が多く、より重く、豊かな土壌です。い ずれのベライヒにも見られるのがムッシェルカル ク、グラファイト、 斑岩、 スレートの飛び地で す。 ぶどう品種 造り手は伝統品種にフォーカスを当てており、 リースリングが重要品種となっています。白ワ イン品種の王者であるリースリングの栽培面積 は5.700ヘクタールを越え、現在最も多く栽培さ れている品種です。2008年以後、ファルツ地方 は世界最大のリースリング栽培地域であり、ヴァ イスブルグンダー、グラウブルグンダーの栽培面 積も急増しています。加えてミュラー・トゥル ガウ、ケルナー、ジルヴァーナー、ショイレーベ も栽培されており、多彩な白ワインのコレクショ ンを誇ります。赤ワイン品種の栽培面積は約40% で、ドルンフェルダーが重要な役割を果たしていま す。次いでシュペートブルグンダー、ポルトギーザー が重要品種です。
生産地方
ファルツ地方
ファルツ地方早わかり ロケーション
ヴォルムスの南からフランス国境に 至るまでの、フェルツァーヴァルト 山地の斜面からライン川沿いに至る 一帯
気候
晴れの日の割合が多く、温暖で豊 かな気候
土壌
雑色砂岩、石灰質を含むローム、 粘土土壌、マール、コイパー、ムッ シェルカルク、花崗岩、斑岩、 スレートが点在
ぶどう畑
約23.600ヘクタール、ベライヒ2、 総合畑25、単一畑323
ぶどう品種
リースリング、ドルンフェルダー、 ミュラー・トゥルガウ、ポルトギー ザー、シュペートブルグンダー、 グラウブルグンダー、ケルナー、 ヴァイスブルグンダー
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ドイツワインが生まれるところ
生産地方
ラインガウ地方
ラインガウ地方 ラインガウ地方は、全生産地のうちでリースリン グの栽培比率が最も高い地域で、ほぼ90%を占 めるほか、輸出率が高い地域でもあります。酸 味が豊かな辛口あるいは中辛口のリースリング、 ふくよかなシュペートブルグンダーの産地として 知られています。土壌の地質学的条件やライン 川流域の理想的な気候条件はぶどうの生育に最 適で、夏場にも充分な湿度が保たれています。 ロケーション ラインガウ地方はヴィースバーデンの東のウンター マインから、リューデスハイムの北にあるロルヒ ハウゼンに至る一帯です。ここでは南から北へ 流れるライン川が、ルートをすっかり変更し、 東から西へと流れています。ぶどう畑は南向き に開墾され、太陽の熱と光を充分に受けること ができます。ライン川の川面からの反射光と蓄 熱槽としての働き、そして土壌の性質は、ぶど う栽培に最適な環境を提供しています。
エルトヴィラー・ゾンネンベルク
Rh e in • Lorch Rüdesheim •
Eltville •
• Wiesbaden • Hochheim • Mainz
Rhein
72
Main
気候 ラインガウ地方ではタウヌス山地が自然のバリ アとなって冷たい風や強い雨から同地域を守って います。年間平均気温は10,6度を記録し、気候 は非常に穏やかです。ラインガウ地方の庭園で は、地中海地域でよく見られる、いちじく、オ リーブ、アプリコットなどの植物が繁茂している ことからも、温暖な気候であることがわかりま す。年間平均降水量は500ミリ、年間日照時間は 1600時間を数え、ラインガウ地方の穏やかな気 候の基盤となっています。
ドイツワインが生まれるところ
土壌 ラインガウ地方の土壌は、3つの異なるタイプに 分けられます。リュ−デスハイマーベルク、ロ ルヒ、アスマンスハウゼンでは、熱を蓄積する スレート、千枚岩土壌が支配的です。東部と中 部地域の低位置にあるぶどう畑は、砂の多いロー ム、レスが多く、いずれも水分をしっかりと保っ ています。ロルヒと近郊の標高の高い地域ではタ ウヌス珪岩が見られます。 ぶどう品種 ラインガウ地方の栽培品種はごくわずかで多様 性はありません。特に重要なのがリースリング で、栽培面積のほぼ90%を占めています。リー スリングは栽培条件が限定されており、晩熟で あるものの、ラインガウ地方ではうまく生育し、 ワインには個性豊かなミネラリッシュな風味とし っかりとした酸味のストラクチャーがあります。 ラインガウ地方の醸造家にとって、2つ目に重要 な品種はシュペートブルグンダーで、主にアス マンスハウゼンで栽培されています。次に重要な 品種はミュラー・トゥルガウで、栽培農家や醸 造家の日常ワインとして生産されています。
生産地方
ラインガウ地方
ラインガウ地方早わかり ロケーション
ヴィースバーデンの南のウンター マインから、リューデスハイムの北 のロルヒハウゼンに至るまでのラ イン右岸
気候
タウヌス山地に守られ、 冬は穏やか、夏は暖かい
土壌
スレート、石英、小石、砂岩。深さ のある、通常石灰質を含む砂混じり のレス、レス。赤ワイン品種に適し た千枚岩スレート土壌。
ぶどう畑
約3.200ヘクタール、ベライヒ1、 総合畑12、単一畑118
ぶどう品種
リースリング、シュペートブルグン ダー
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ドイツワインが生まれるところ
生産地方
ラインヘッセン地方
ニアシュタインのローター・ハング(赤い斜面)
ラインヘッセン地方
Rh e in • Mainz • Bingen
Main
Rh e in
Nahe Alzey •
Worms •
ラインヘッセン地方は総栽培面積26.600ヘクター ルにおよぶドイツ最大のワイン生産地で、マイ ンツに近い「ライン川の膝」と呼ばれる蛇行地 帯に接し、栽培品種の多様さで知られています。 なだらかな地形は「千の丘陵地」の名で知られ ています。ラインヘッセン地方のワインは、小 売店や外食産業におけるコア製品群のひとつに 数えられます。同地方は輸出に力を入れている 地域でもあります。世界的に知られているのが、 ナッケンハイムからニアシュタインを経てオッ ペンハイムに至る、ラインテラッセ(ラインテラ ス)と呼ばれる一帯です。ミネラル豊かな斜面 の畑(ローター・ハング)、ライン川の至近距 離といった、リースリングとその他の晩熟品種 の栽培にふさわしい条件が整っています。ライ ンテラッセには、自社でマーケティングを行い、 輸出にも力をいれている大手の醸造所が集中し ており、ラインヘッセン地方内部の丘陵地帯で は、中規模の家族経営の醸造所と樽ワイン生産 者が主体となっています。 ロケーション ラインラント・ファルツ連邦州の同名の地域で あるラインヘッセン地方が、このドイツ最大の ワイン生産地の名称になっています。ヘッセン 連邦州との地理的関連性はなく、1816年から 1919年までこの地に存在したヘッセン大公国が 所有していたラインヘッセンという領地名に由 来します。ラインヘッセン地方の丘陵地帯はマ インツ、ヴォルムス、アルツァイ、ビンゲンに 囲まれています。東の境界はライン川であり、 流域にはオッペンハイム、ニアシュタインなど のワイン村があります。 気候 ラインヘッセン地方にはぶどう栽培に理想的な 気候条件が整っています。オーデンヴァルト、タ ウヌス、フンスリュック、ノルトフェルツァー・ ベルクラントといった山地に守られ、年間平均 気温は11度あり温暖です。降水量は少なめで、 夏は暖かく冬も穏やか、年間日照時間は1700時
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ドイツワインが生まれるところ
間に達し、ドイツで最も温暖な地域のひとつで す。ラインヘッセン地方は、中部ヨーロッパで 最も乾燥した地域のひとつでもあります。 土壌 ラインヘッセン地方では、多様な土壌が見られ ます。最も多いのがレスと砂の土壌であり、珪 岩、斑岩、スレート、火山性土壌なども分布し ています。粘土、砂や小石が多い土壌もありま す。これらの多彩な土壌のほか、ニアシュタイン の東からラインヘッセン地方西部にかけて見ら れる ロートリーゲント(赤底統)と呼ばれる岩 層があります。
生産地方
ラインヘッセン地方
ラインヘッセン地方早わかり ロケーション
ビンゲン、マインツ、アルツァイ、 ヴォルムスに囲まれた四角い地域
気候
年間平均気温が高く、日照時間も 多く、充分な降水量がある
土壌
レス、堆積土壌と風化土壌、 きめの細かいマール、珪岩、 斑岩の風化土壌
ぶどう畑
約 26.600 ヘクタール、ベライヒ 3、 総合畑 24、単一畑 432
ぶどう品種
ミュラー・トゥルガウ、リースリン グ、ドルンフェルダー、ジルヴァー ナー、ポルトギーザー、シュペート ブルグンダー
ぶどう品種 ラインヘッセン地方で栽培されているぶどう品 種は、多様な土壌とミクロクリマの恩恵を受け、 多彩です。白ワイン品種と赤ワイン品種の比率 は70%:30%となっています。過去10年の間に、 赤ワイン品種の栽培面積は2倍以上に増えました。 しかし、現在では白ワイン品種が再び優勢になっ ています。ラインヘッセン地方は世界最大のジル ヴァーナー種の産地で、栽培面積は約2.400ヘク タールに及びます。最も重要な品種はミュラー・ トゥルガウで、リースリングとドルンフェルダー がそれに続きます。ドルンフェルダーの栽培面 積はドイツ国内最大です。ファルツ地方、ヴュ ルテンベルク地方、バーデン地方に次いで、赤 ワイン品種が多く栽培されており、インゲルハイ ムは「赤ワインの街」として知られています。
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ドイツワインが生まれるところ
生産地方
ザーレ・ウンストルート地方
ザーレ・ウンストルート地方
フライブルク近郊のぶどう畑
ザーレ・ウンストルート地方は、2つの川の名 称からつけられた名前です。ほとんどのぶどう 畑がテラス式で、ザーレ川とウンストルート川 の狭い渓谷に分布しています。同地域は北緯51 度に位置し、ドイツのクヴァリテーツワインの 生産地の北限に当たります。大陸性気候であり、 北部に位置することから、フィネスのある酸味 が強調されたワインが生まれます。栽培面積は 765ヘクタールでドイツで最も小さいワイン産 地のひとつに数えられ、伝統的に辛口ワインを 生産しています。 ロケーション ザクセン・アンハルト州南部のフライブルクと ナウムブルク近郊、チューリンゲン州北部のバー ト・コーゼン近郊、ブランデンブルク州のポツダ ム近郊に計765ヘクタールの産地が分散していま す。うち600ヘクタール以上がザクセン・アンハ ルト州にあります。 • Halle
Sa al e Freyburg •
rut • Naumburg • Weimar
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Saale
Uns t
気候 ザーレ・ウンストルート地方はハルツ山地とチ ューリンガーヴァルト山地に守られ,年間平均 降水量が500ミリの乾燥した地域です。大陸性 気候で、条件は必ずしも良くはありません。冬 と春には、霜のリスクも高く、気温差も激しい ため、収量は自然に落ちます。ぶどう栽培のた めには、気候的に守られた地域が必須であり、 川沿いの谷間の、暖かいミクロクリマを形成す る小さなスポットが理想的な畑になります。
ドイツワインが生まれるところ
土壌 ザーレ川とウンストルート川の流域で良く見ら れる雑色砂岩は、水分の保持に優れた土壌です。 ぶどう栽培に有利な土壌は、他にムッシェルカ ルクがあり、蓄熱にも優れています。また、マ ンスフェルダー・ゼーエンというベライヒの珍 しい粘土質土壌である、含銅粘板岩土壌でもぶ どうが栽培されています。 ぶどう品種 ザーレ・ウンストルート地方では約30品種が栽 培されているため、比較試飲が楽しめます。重 要な品種はミュラー・トゥルガウで、収量が少 ないため、驚くほど繊細なワインに仕上ります。 ザーレ・ウンストルート地方の造り手の誇りはヴァ イスブルグンダーであり、ジルヴァーナーやリースリ ングも伝統的に栽培されています。ぶどう畑の4分 の1を占めているのが赤ワイン品種のドルンフェル ダー、ポルトギーザー、シュペートブルグンダー、ツ ヴァイゲルトです。赤ワインは珍しく、早々に売り切 れてしまいます。
生産地方
ザーレ・ウンストルート地方
ザーレ・ウンストルート地方早わかり ロケーション
ザーレ川とウンストルート川の渓 谷地域
気候
降水量が少ない年は年間平均 気温9度以上
土壌
ムッシェルカルク、雑色砂岩
ぶどう畑
約765ヘクタール、ベライヒ3、 総合畑4、単一畑39
ぶどう品種
ミュラー・トゥルガウ、ヴァイスブ ルグンダー、リースリング、ジルヴ ァーナー、ドルンフェルダー、ポル トギーザー
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ドイツワインが生まれるところ
生産地方
ザクセン地方
ザクセン地方
ラーデボイルのテラス式ぶどう畑
北緯51度には、ボンの南に当たるライン川沿岸 の最後のぶどう畑がありますが、まさに同じ緯 度に、エルベ川沿岸の最初のぶどう畑がありま す。ザクセン地方はドイツ国内で最北東に位置 するワイン産地で、特に白ワインにおいて最高 品質のものが生産されています。大陸性気候が 支配的な地域における、特に恵まれた気候がワ インに表現されています。充分な降水量に恵ま れ、大陸性気候ではあっても、年間日照時間平 均が高く、ぶどうの成長と成熟に理想的な条件 が揃っています。同地方のぶどう畑は主にエル ベ川の北東岸にあります。ワインはザーレ・ウ ンストルート地方のものより酸味がまろやかで、 ニュートラルな味わいです。
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ロケーション ドレスデンの西側と東側のエルベ川流域、マイ センとピルナの間にぶどう栽培地が広がってい る。ザクセン地方にはこのほかエルスターター ルというベライヒに、シュリーベン(ブランデ ンブルク州)とイエッセン(ザクセン・アンハ ルト州)の2地域があります。
e • Meißen
• Radebeul
Dresden • • Pirna
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気候 ザクセン地方は大陸性気候が支配的で、夏は暑 く冬は寒い地域です。冬場の霜のリスクは非常 に大きく、「自然に収量が低下」します。生育 期間は長期にわたり、充分な降水量があります。 同地方は周囲のエルツ山地、ゼクシッシャー・ シュヴァイツ(ザクセン・スイス)、ラウジッ ツアー・ベルクラントといったミッテルゲビル ゲ(山岳地帯)に守られています。温暖な日中 の気温と夜間の低気温による温度差、1600時間 もの年間日照時間に恵まれ、良質のぶどうが収
ドイツワインが生まれるところ
穫できます。年間平均気温は約9度に達します。 エルベ川沿いの高台にあるテラス式の畑は、川 が熱と水分を蓄えるため、優れたミクロクリマ となっています。 土壌 ザクセン地方のワインの独特の個性を決定づけて いるのが、ぶどう畑ごとに大きく異なる土壌で す。エルベ川渓谷には、様々な地層があります。 石炭紀のエルツ山地の褶曲(しゅうきょく)段 階において、マイセンの花崗岩・閃長岩の塊状 岩が表面地層に入り込みました。砂岩やプレー ナー層は白亜紀のもので、閃長岩の層を部分的 に覆っています。これらの土壌に、レスや川が 運んだ土砂など、氷河期と最終氷期の堆積物が、 部分的に重なっています。
生産地方
ザクセン地方
ザクセン地方早わかり ロケーション
エルプタール(エルベ峡谷)とその 支流の峡谷、ピルナ、ディースバー =ゾイスリッツ間の55キロに及ぶ。 他にエルスタータールというベライ ヒがある
気候
穏やかな年間平均気温、平均的な 降水量
土壌
多様な土壌。花崗岩、花崗・斑岩風 化土壌からローム、レス、砂岩まで
ぶどう畑
約 500 ヘクタール、ベライヒ 2、 総合畑 4、単一畑 17
ぶどう品種
ミュラー・トゥルガウ、リースリン グ、ヴァイスブルグンダー
ぶどう品種 ザクセン地方では主に白ワイン品種が栽培されて います。白ワイン品種と赤ワイン品種の栽培比率 は80%:20%です。白ワイン品種では、ミュラー・ トゥルガウ、リースリング、ヴァイスブルグンダーが 主に栽培されています。ザクセン地方ならではの名 産にゴールドリースリング(ゴルトリースリング)が あります。リースリングとクルティリエの交配で、ザ クセン地方だけで栽培が認可されています。ザク セン地方以外では、モーゼル地方でのみ栽培され ているエルプリングも珍しい品種です。ザクセン地 方のワインはドイツ全体のワイン生産量の1%に満 たないため、店舗での購入はほとんど不可能です。
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ドイツワインが生まれるところ
生産地方
ヴュルテンベルク地方
ムンデルスハイム近郊のネッカー川の蛇行
ヴュルテンベルク地方 ヴュルテンベルク地方は、バーデン地方とならんで、 ドイツ最南のワイン産地です。同地方は、トロリン ガー、レンベルガー、シュヴァルツリースリングなど、 赤ワインのバラエティの豊富さで知られています。 ワインの約80%が協同組合で醸造されており、今 日では、ヴュルテンベルク地方以外の小売店や外 食産業でも扱われています。ヴュルテンベルク地 方のワイン消費量はドイツの他の地域よりも非常に 高く、同地域では、1人当りのワイン消費量が、ドイ ツの他地域の倍となっています。トロリンガーがそ のうち大きな割合を占めています。
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• Bad Mergentheim
Heilbronn • • Stuttgart
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• Esslingen • Reutlingen • Tübingen
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Meersburg • Lindau •
ロケーション ヴュルテンベルク地方は、ネッカー川に近いロ イトリンゲンとバート・メルゲントハイム、ネ ッカー川の支流であるレムス川、エンツ川、タ ウバー川、コッハー川そしてヤクスト川の間に はさまれたワイン産地です。ヴュルテンベルク 地方の飛び地となっている産地は、ラーヴェン スブルクとクレスブロンの間に位置する、リン ダウ、ヴァッサーブルク、ノンネンホルン、ハ ットナウなどの、バイエルン州に属するボーデ ン湖湖畔地域のぶどう畑です。 気候 シュヴァルツヴァルト山地とシュヴェービッシェ・ア ルプ山地が、ヴュルテンベルク地方のぶどう畑を 強 風や多雨から守っています。ネッカー川流 域 とその支 流 域、ボーデン湖湖畔は、日照に恵ま れ、夏は非常に暑く、乾燥することもあります。冬 は、時には非常に寒く、収量が減る傾向もありま す。川沿いのミクロクリマは、土壌次第で、温暖な スポットを形成し、特に赤ワイン品種の栽培にふさ わしい環境となります。 土壌 ヴュルテンベルク地方のうち、ネッカー川とそ の支流流域に典型的な土壌がムッシェルカルク が混在する岩の多い傾斜地です。上ネッカー流
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ドイツワインが生まれるところ
域はコイパーが重要な役割を果たしています。 この堆積土壌は、砂、 粘土 、マールなどから形 成されている場合もあります。レムスタールと シュトゥットガルト近郊には火山岩土壌が広範 囲に分布しています。ボーデン湖湖畔では、造 山運動でできたモラッセの堆積土壌が見られま す。 ぶどう品種 ヴュルテンベルク地方の主要品種はトロリンガー です。フレッシュでジューシーな赤ワインは、ヴュ ルテンベルク地方の川沿いの斜面ですくすくと育 ち、同地方の郷土飲料となっています。白ワイン品 種のうち、最も多く栽培されているのがリースリン グで、同地方の栽培品種において第2位を占めてい ます。主流は赤品種で、シュヴァルツリースリング、 レンベルガー、シュペートブルグンダーなどが栽 培されています。レンベルガーはトロリンガー同様、 同地方の名産であり、ほとんどが「レンドレ」と呼 ばれる同地域で栽培されています。
生産地方
ヴュルテンベルク地方
ヴュルテンベルク地方早わかり ロケーション
ロイトリンゲンとバード・メルゲン トハイムの間に位置する。中心地は シュトゥットガルトとハイルブロン
気候
穏やかな気温、シュヴァルツヴァル ト山地とシュヴェービッシェ・アル プ山地に守られたネッカー渓谷
土壌
様々なコイパー層と ムッシェルカルク
ぶどう畑
約11.400ヘクタール、ベライヒ9、 総合畑17、単一畑210
ぶどう品種
トロリンガー、リースリング、 シュヴァルツリースリング、レンベ ルガー、シュペートブルグンダー
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイツワインが生まれるところ 一覧
ドイツワインの全生産地域(ベライヒ、ラントワイン生産地域を含む)
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指定生産地域 13
ベライヒ 41
ラントワイン生産地域 26
アール地方
ヴァルポルツハイム/アールタール
アールターラー・ラントワイン、 ラントワイン・ライン
バーデン地方
ボーデン湖、マルクグレーフラーラント、カ イザーシュトゥール、トゥニベルク、ブライ スガウ、オルテナウ、バーディッシェ・ベル クシュトラーセ、クライヒガウ、タウバー フランケン
タウバーテーラー・ラントワイ ン、バーディッシャー・ライント ワイン、ラントワイン・オーバー ライン、ラントワイン・ライン= ネッカー
フランケン地方
マインフィアエック、マインドライエック、 シュタイガーヴァルト
ラントワイン・マイン、レーゲン スブルガー・ラントワイン
ヘッシッシェ・ ベルクシュトラーセ地方
シュタルケンブルク、ウムシュタット
シュタルケンブルガー・ラントワ イン、ラントワイン・ライン
ミッテルライン地方
ローレライ、ジーベンゲビルゲ
ラインブルゲン・ラントワイン、 ラントワイン・ライン
モーゼル地方
ブルク・コッヘム、ベルンカステル、 ラントワイン・デア・モーゼル、 オーバーモーゼル、モーゼルトア、ザール、 ザールレンディッシャー・ラント ルーヴァータール ワイン、ラントワイン・デア・ ルーヴァー、ラントワイン・デア・ ザール、ラントワイン・ライン
ナーエ地方
ナーエタール
ナーエガウアー・ラントワイン、 ラントワイン・ライン
ファルツ地方
ズードリッヒェ・ヴァインシュトラーセ(南 ワイン街道)、ミッテルハルト/ドイチェ・ ヴァインシュトラーセ(ドイツワイン街道)
フェルツァー・ラントワイン、 ラントワイン・ライン
ラインガウ地方
ヨハニスベルク
ラインガウアー・ラントワイン、 ラントワイン・ライン
ラインヘッセン地方
ビンゲン、ニアシュタイン、ヴォネガウ
ライニッシャー・ラントワイン、 ラントワイン・ライン
ザーレ・ウンストルート地方
チューリンゲン、シュロス・ノイエンブル グ、マンスフェルダー・ゼーエン
ミッテルドイチャー・ラント ワイン
ザクセン地方
マイセン、エルスタータール
ゼクシッシャー・ラントワイン
ヴュルテンベルク地方
レムスタール=シュトゥットガルト、オーベ ラー・ネッカー、ヴュルテンベルギッシュ・ ウンターラント、ヴュルテンベルギッシャ ー・ボーデンゼー、バイエリッシャー・ボー デンゼー、コッハー=ヤーグスト=タウバー
シュヴェービッシャー・ラントワ イン、バイエリッシャー・ボーデ ンゼー・ラントワイン*、ラント ワイン・ネッカー、ラントワイ ン・ライン=ネッカー
分類なし
メクレンブルガー・ラントワイン
分類なし
ブランデンブルガー・ラント ワイン
分類なし
シュレースヴィッヒ・ホルシュタ イナー・ラントワイン
* ワイン生産地、ヴュルテンベルク地方のバイエルン州に属する地域
ドイツワインが生まれるところ
ドイツ・ワインアトラス ドイツ・ワインアトラスは、ドイツのワイン生 産地のクヴァリテーツワイン、プレディカー ツワインの厳密な栽培地に関心がある人にとっ ての理想的な参考書です。全267ページにわた り、細部がはっきりとわかる、縮尺比1:70.000 の航空写真を初採用し、ドイツの13生産地域 の、2660の単一畑、160の総合畑、41のベライ ヒを一覧することができます。 ワインアトラスはわかりやすい構成が魅力とな っています。全地域がアルファベット順に表示 され、畑は北から南へ、色分けして表示されて います。地図上の特定の畑を探す際に非常に便 利な索引も巻末についており、Aはアーベンハ イマー・クラウゼンベルクから、Zはツヴィンゲ ンベルガー・シュタインゲレルまで、地域別に アルファベット順にまとめられています。この ほか、もうひとつの索引があり、全ての単一畑 が生産地、ベライヒ、総合畑別にリストアップ されています。 アトラスは書店、あるいはDWIオンラインショ ップ www.deutscheweine.de で購入可能。 定価29,80 €
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ぶどうから ボトルワインまで
1本のワインが飲み手に届けられるまでには、いく つものプロセスが必要です。過去数十年における、 ぶどう栽培とワイン醸造における新しい技術の発展 は、ドイツのワイン産業が生き残るために不可欠の ものでした。集中的に行われている研究開発の成果 もあり、ワインの品質は確実に向上しています。今 日のように秀逸で品質の良いドイツワインが大量に 出回ることは、かつてなかったとも言われます。世 界各地のリーダー的ポジションを占めるワイン企業 で、ドイツの醸造家やぶどう栽培のスペシャリスト が活躍しているのは、決して偶然ではありません。 彼らのぶどう栽培、ワイン醸造の全ての分野におけ るノウハウは、至るところで重要視されています。
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ぶどうからボトルワインまで
ぶどう畑での仕事
ぶどう畑での仕事 ワインの造り手たちは、年間を通じ、ぶどうの 生育状態に応じて、さまざまな仕事を行います。 それは、ぶどうの木の剪定と仕立てにはじまり、 土壌の手入れ、保護剤の散布と害虫の防除、そ して収穫へと続きます。 1〜2月にはぶどうの木の剪定を行い、古い枝を 取り除きます。この作業は、収量とできあがる ワインの品質に影響を及ぼします。「結果枝」 の芽数と長さは重要な意味を持ちます。品質向 上を目指す造り手は通常、短めの結果枝を2本、 または長めの結果枝を1本残します。できるだけ 多くの収量を得ようとするような剪定は、法的 収量規制の導入いかんにかかわらず、ほとんど 行われていません。多くの農家は、世界的にワ インが生産過剰である時代には、畑の段階で品 質向上を目指さなければ、生き残りのチャンス がないということに気づいています。剪定され た枝は、通常機械で破砕し、畑に鋤き込み、腐 植土となるよう土に返します。剪定は、現在で は部分的に機械化も可能となりつつあるものの、 今日もなお、大部分が非常に手間と集中力のか かる手仕事です。大手ワイナリーでは、剪定に 2〜3ヶ月を要します。
ぶどうの木の剪定
春(3〜4月)のぶどう畑はハイシーズンを迎え ています。萌芽の前には、新梢が栄養を均等に 取り込んで成長できるように、剪定して残した ぶどうの枝を曲げ(ビーゲン)、垣根に結わえ て固定します(ビンデン)。振り子仕立て(ペ ンデルボーゲン)、円形長梢仕立て(ハルプボー
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ぶどうからボトルワインまで
ぶどう畑での仕事
垣根仕立て
新梢の手入れ
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ゲン)などの一般的な仕立て方では、新梢が伸 びるとフェンスの針金で挟み込みます(ヘフテ ン)。その後、ぶどうの成長条件を理想的な状 態にするため、土壌を改良します。農耕機具で 畑を耕し(深耕)、土壌の自然の生態系の活性 化を促し、草生栽培用の種子を蒔くこともあり ますが、畑に自然に生えて来る植物も、土壌の 生態系の活動を支えます。施肥による養分の供 給もこの時期に行われ、オーガニック肥料(牛 糞、藁、コンポストなど)、あるいは鉱物肥料 (マグネシウム、石灰、リン酸)を畑に与えます。 施肥はコスト要因と環境保護に配慮して行いま す。土壌の栄養分の欠乏は、最新の分析方法で 容易に知ることができます。畝間に目的と必要 に応じた量の施肥や草生栽培を行うことで地下 水への負担を減らすことができます。 今日、造り手たちは「できるだけ少なく、必要 なだけを」をモットーに、害虫やカビ菌からぶ どうを保護する農薬の投入量をコントロールし ています。接ぎ木(栽培品種を適した台木に接 ぎ木)の段階で、素材が健康であるかどうかに 注意をはらい、病気や損傷を事前に予防してい るのです。ぶどうを健康に保つため、生育期間 中の5〜8月にかけて、天候により、4〜7回の農 薬投与が必要です。6月の開花後になると、畑で は再び、多くの集中的な仕事が必要となります。 開花と自家受粉による結実は、花ぶるい(受粉 阻害により結実しないこと)が起こらないよう、 できるだけ短期間にスムースに進行するのが理 想的です。受粉がうまくいかなかったぶどうは、 涸びて強風や雨で落下するため、収量が大幅に 低下します。副梢の除去も、ぶどうの生育を促 します。造り手たちは、秋に最高品質のぶどう を収穫するため、結実したぶどうを部分的に取 り除き、意図的に収量を減らすこともあります。
ぶどうからボトルワインまで
6〜8月には、ぶどうの葉が生い茂るため、新梢 を垣根に挟み込み、フェンスを整えます。健康 で青々としたキャノピー(樹冠)は光合成に必 須です。ぶどうに当たる日光の量の調節と通気 性改善のため、部分的に除葉も行われます。 7〜8月には摘心を行い、成長するぶどうの高さ を制限します。今日では通常機械化されていま す。
ぶどう畑での仕事
8月上旬までは、ぶどうの収量や品質に影響を与 える仕事を行います。摘果すなわち、粒がエン ドウ豆くらいのサイズに成長しているぶどうを、 いくつか取り除くことにより、ぶどうの木のエ ネルギーが全て、残されたぶどうに行き渡るよ うにします。品質向上のため、この方法を採用 する造り手は増加しています。8月中旬ごろから は、ぶどうが明らかに熟し始めます。粒におけ る糖分の生成が急速に早まると同時に、酸の量
ぶどう畑における年間作業 摘果 (グリーン ハーベスト)
新梢の挟み込み 摘心
副梢の 除去
剪定
枝の固定
剪定した枝を 砕き、畑に戻す
深耕
1月
2月
収穫
保護剤散布
草生栽培 施肥
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
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ぶどうからボトルワインまで
ぶどう畑での仕事
レフラクトメーターで糖度を計測
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が減って行きます(主にリンゴ酸が減少。酒石 酸は保持される)。夏場の気象条件により、9月 中旬から下旬に収穫が始まります。収穫期の降 雨は、ぶどうが水分を吸収し、腐敗を招くため、 好ましいものではありません。造り手は、光学 機器であるレフラクトメーターを使用して、ぶ どうの成熟度を計測し、収穫にふさわしい日取 りを決定します。収穫の開始は、個々の品種と 畑において、「生理学的成熟」と言われる、ぶ どうの理想的な成熟状態を確認した上で決定し ます。生理学的成熟においては、果皮の色づき 具合、果肉の弾性、種子の成熟度、果実の味わ いなどが考慮されます。これらの基準の多くが、 できるだけ理想的な状態となった上で収穫期を 決定します。生理学的成熟はワインの「内なる 品質」の大事な要素です。
VOM REBSTOCK IN DIE FLASCHE DIE ARBEIT IM WEINBERG ぶどうからボトルワインまで ぶどう畑での仕事
かつて、収穫の開始は秋季規定(ヘルプストオ ルドヌング)によって決められており、本収穫 の開始とシュペートレーゼの収穫の開始が、所 管官庁によって定められていました。1993年の 秋から、この規定は廃止になりました。 現在では、造り手自らの判断で、収穫の開始を 決定します。しかし収穫期には、収穫の記録、 つまり収量、収穫した畑、収穫方法、糖度など を記入する秋季台帳(ヘルプストブーフ)をつけ ることが、今も義務付けられています。それぞ れのブレディカート(肩書き)はカビネットを 除き、肩書名が収穫方法を示唆しており、規定 の最低モスト量と合わせ、等級付けの前提となっ ています。 (次章「品質の見極めかた」をご参照くだ さい)
ハーベスター(収穫機)
平坦な畑や、傾斜のゆるやかな畑では、機械収 穫(ハーベスターを導入)が行われています。 ベーレンアウスレーゼやトロッケンベーレンア ウスレーゼの収穫には、手作業が義務付けられ ています。法的には毎年1月15日までに、全収穫 報告書を届け出なければなりません。全ドイツ のワイン生産地では、この報告書を通して、認 可された生産量が守られているかどうかを確認す ることができるのです。ある醸造所の生産量が、 所在する生産地で認可されている1ヘクタールあ たりの最大収量を超過している場合、超過分を 流通させることはできません。 ワインの品質を維持し、過剰収穫を避けるため に、EU法では、1ヘクタールあたりの最大収量 規定を要求しています。1ヘクタールあたりの最 大収量は、個々の州法によって定められていま す。
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ぶどうからボトルワインまで
セラーでの仕事
セラーでの仕事
白ワインの醸造
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ドイツのワイン法は「ワインとは生ぶどうや破 砕したぶどう、あるいはぶどう果汁を、完全ア ルコール醗酵、あるいは部分醗酵させることに よって得られる飲料である」と規定しています。 ワインがボトリングされ、消費者の手に渡るま でのプロセスにおけるケラーマイスターの仕事 は、非常に多岐にわたります。
ぶどうからボトルワインまで
セラーでの仕事
白ワインの醸造 白ワインの生産工程は 原理的にはシンプルです。 白ワイン品種のぶどうを圧搾し、果汁を醗酵さ せます。実践においては、さまざまなバリエーシ ョンがあります。以下に、一般的な醸造過程の 概略を解説します。 破砕と圧搾 収穫したばかりのぶどうを除梗・破砕機に入れ、 梗を取り除いてから破砕し、果皮、果肉、種子、果 汁からなるペースト状にします。このペースト状の ものをマイシェと言います。その後マイシェを放置し、 アロマ成分、色素、タンニンなどを抽出することも あります。この工程をマセラシオン(マイシェシュタ ンドツァイト/スキンコンタクト)と言い、その長短は 造り手により様々です。その後マイシェを圧搾機に 入れ、低圧で搾ります。圧搾後に得られる果汁をモ ストと言います。
圧搾機
近年では、除梗をせずに全房圧搾を行っている 醸造所もありますが、その場合は、マイシェ状 に潰し、マセラシオンを行う過程が省略されま す。ぶどうの圧搾方法としては、非常に軽く、 モストには濁りやタンニンがほとんどありませ ん。 モストの取り扱い、補糖、醗酵 圧搾後の圧搾機内の果実の残留物のことをトレ スター(搾りかす)といいます。圧搾後の果汁 には濁りがあり、澱と呼ばれる果実成分が含ま れています。澱は、後にできあがるワインの味 わいに悪影響を及ぼす可能性があるため、醗酵 前に清澄して取り除きます。澱を取り除く方法 は様々です。伝統的には、モストを一定時間放 置して何も手を加えずに清澄させます。澱には 重さがあるため、容器の底に沈殿します。
次に清澄したモストを醗酵させます。醗酵の際 には、一般的に、選別した純粋培養酵母を加え ます。これは一定の特性を持つ酵母で、雑味の ないワインに醗酵します。モストはぶどうに部
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ぶどうからボトルワインまで
セラーでの仕事
分的についている自然のワイン酵母、野生酵母 によっても醗酵します。自然(天然)酵母、野 生酵母による醗酵のことを「自然醗酵(シュポ ンターンゲールング)」と言います。酵母で濁 った醗酵中のワインを製品化したのがフェーダー ヴァイサーで、地方により、ブリッツァー、ラ ウシャー、ザウザーなどと呼ばれています。醗 酵が終了し、澱引きされる前のワインを製品化 したものはユングワイン(新酒)と言います。
醗酵期間には長短があり、醗酵時の温度やモス トの糖度の高低によって左右されます。ベーシッ クな品質のワインの場合、醗酵温度は18度から 20度程度、アルコール醗酵は7〜10日で終了し ます。低温醗酵とは醗酵が12〜15度で行われる ものです。低温醗酵は数週間から数ヶ月かかる 場合もあり、繊細でフルーティなワインができ あがります。糖度の高い、高品質のモストの醗 酵も数ヶ月かかることがあります。(トロッケ ンベーレンアウスレーゼなど)
ラントワインとクヴァリテーツワインは、 醗酵 醗酵終了後、樽やタンクの底に沈殿した酵母の 前、ないしは醗酵中のモストへの補糖が認可さ 澱を濾過して取り除きます。この作業を澱引き れています。フランスや他の主要ワイン生産国 においても「シャプタリザシオン」(補糖)す (ラッキング)と言います。 なわち糖分を加えることで、ワインのアルコー 残糖のあるワインを生産する場合、ケラーマイ ル度数を上げることが認められており、実践さ スターは完全醗酵の前段階で、冷却、加熱、あ れています。通常はサッカロース(蔗糖)か熱 るいは濾過によって醗酵を止めます。ベーレンア 分離法で得たぶどうの濃縮モスト(RTK)が加 ウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼ、 えられます。 アイスワインなど非常に高品質のワインの場合 は、醗酵によって糖分が全て分解されず、自然 補糖範囲は、以下のアルコール値内と規定され に残糖があるワインができるケースもあります。 ています。 ボトリングの前に未醗酵のぶどう果汁(ズース レゼルヴ)を加えることで、残糖のあるワイン ぶどう栽培ゾーンA 3,0 % Vol. を造る方法もあります。 ぶどう栽培ゾーンB 2,0 % Vol. クヴァリテーツワインでは、補糖の上限は 総アルコール度数15%までと定められていま す。2002年ヴィンテージからは、真空蒸発法や 逆浸透法によるモストの濃縮も認可されていま す。モストの濃縮は、補糖と見なされているの です。その際には、分析上の限界値を考慮する必 要があります。アルコール度数増加のための醸造 技術には厳格な規定があります。ドイツワイン法 では、他のワイン生産国と異なり、EU法の認可範 囲を制約して認可しています。 プレディカーツワインにおいては、補糖は 例外なく禁じられています。
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濃縮モストの添加や冷却による凝縮法は、 ドイチャーワインにおいてのみ許可されて います。
ぶどうからボトルワインまで
熟成とボトリング 澱引きの後、ワインは木樽、あるいはステンレ ススティールタンク内で保存、熟成されます。こ の段階で、ワインの品質と味わいに決定的影響 を与えることが可能です。今日、消費者の多く は若くフレッシュな味わいを好むため、白ワイ ンは短期間の熟成後、ボトリングし、出荷します。 一方、高品質のトップクラスのワインは、ある程 度熟成させた後にボトリングします。近年、赤 ワインとブルグンダー系品種の白ワインは、小 型のオーク樽(バリック)で熟成させることが ポピュラーになっています。ボトリングに関し ては、醸造所の規模に応じ、様々なキャパシティ の半自動、あるいは全自動の設備が整っています。 ボトルは、不純物を完全除去するために殺菌消 毒し、ボトリング後は、ただちにナチュラルコルク、 プラスティックコルク、スクリューキャップ、ガ ラスキャップなどで密封します。ボトリング後 は数週間落ち着かせる必要があるため、温度管 理された倉庫などで出荷前まで保管します。エ ティケットやカプセルは、醸造所により、ボトリ ング直後、あるいは後日、必要に応じて取り付け ます。
セラーでの仕事
バリック樽
バリック フランスで長年にわたって使用されてきたバリック 樽は、1990〜2000年代からドイツでも使用される ようになりました。バリック樽はオーク材で作られ、 通常の木樽と異なりサイズが小さめです。この小型 オーク樽は本来、容量が225リットルで、ワイン法で は350リットル容量までを認可しています。大型の 木樽は蒸気で樽板にカーブをつけますが、バリック 樽の場合は、樽板を直火かガスの火の上で曲げるた め、樽が「トースト」されます。このトーストにより、 樽板に木が焦げたアロマがつきます。トーストの時 間や強さにより、バニラ(軽くトーストした場合)や タバコ(強くトーストした場合)に似た香りがあらわ れます。このような樽でワインを熟成させると、トー ストした樽由来の焦がした香りが感じられるワイン ができあがります。バリック樽は、主にシュペート ブルグンダー、カベルネソーヴィニヨンなどの赤 ワイン、グラウブルグンダーやシャルドネなどの ボディのある白ワインに使用されます。ワインの アロマにはトーストの程度だけでなく、樽熟成の 期間や樽の産地も影響があります。
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ぶどうからボトルワインまで
セラーでの仕事
赤ワインの醸造 赤ワインの醸造では、白ワインの場合と異な る工程が優先されます。ぶどうの色素は、ほと んどの赤ワイン品種において果皮にのみ含まれ ており、この色素を果汁に溶出させるため、白 ワインと異なる醸造方法をとります。その1つ は、除梗し、破砕したぶどうをそのまま醗酵さ せる方法で、マイシェ醗酵(マイシェゲールン
赤ワインの醸造
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グ)と言います。マイシェ醗酵の際には、醗酵 時に生じるアルコールが果皮の色素を溶出しま す。この時、色素だけではなく果皮内のタンニ ンも抽出されます。赤ワイン品種のぶどうのマイ シェを直ちに圧搾すると、ヴァイスヘルプスト、 ロゼワイン、または「ブラン・デ・ノワール」 になります。
ぶどうからボトルワインまで
もう1つの方法はマイシェの熱処理法です。(マ イシェを45〜85度に加熱します)加熱により果 皮の色素がマイシェ醗酵時と同様に溶出します。 この方法をとると、マイシェ醗酵の場合と異な り、フルーティでタンニンの少ないワインに仕 上がります。今日、造り手たちは、2つの方法を 組み合わせて赤ワインを生産することもありま す。
セラーでの仕事
マイシェ醗酵
醗酵したマイシェ、または加熱したマイシェは、 続いて圧搾します。できあがった新酒は樽に貯 蔵されます。 ほとんどの赤ワインにおいて、アルコール醗酵 後、あるいは醗酵中に、マロラクティック醗酵 (ビオロギッシャー・ゾイレアップバウ/BSA) が起こります。その際、ワインに含まれるリン ゴ酸が、乳酸菌の作用により、柔らかな乳酸に 変わり、赤ワインの味わいが柔らかくまろやか になります。
95
品質の見極めかた
品質評価には、法的、客観的評価に加 え、個人的、主観的評価があります。主 観的な品質評価には、一般的な基準があ りません。品質評価は、ワインの産地、 品種、醸造方法を考慮した上での個人的 嗜好に左右されます。また、試飲時の個 人的な心構えや環境も影響します。
96
品質の見極めかた
グラスに注がれたワインの品質 ラテン系諸国では品質は主に原産地(生産環境 による品質)によって定義づけられています。 原産地(原産地表示)ごとに、極度に異なる品質 基準が適用されています。品質の判定は、通常各 地域のワイン業界団体が実施しています。ドイツ では公認検査済みの品質(いわゆるグラスに注が れたワインの品質)が有効です。品質基準は広範 にわたり均等に定められています。品質の判定は 絶対的なものです(公認品質検査)。ドイツのワ イン法の基軸は、品質等級、品質レベル(肩書き)、 公認品質検査によってワインを分類するところに あります。
主観的な品質とは簡潔に言えば、官能による印 象、個々の主観的評価、個々のワインに対する 価値観の総合評価です。法的(客観的)次元で の品質とは、一般的な基準や標準に基づいたも ので、測定や検証が可能です。法的品質概念は ワイン法において関連規定が定義されています。 欧州連合(EU)のワイン法は共通の法的環境を 定めていますが、特定のケースにおいては、EU 内のワイン生産国の権能を踏襲しているため、 共通規定もあれば、国別に異なる規定もありま す。EU圏のぶどう畑の栽培ゾーンの区分は、気 候による生産条件の違いが考慮されており、平 等性が保たれています。品質等級のグループ分 けは、品質表示の法的な対等性を可能にしてい ます。本質的な違いは品質の判定と品質の定義 にあります。
ドイツの公認品質検査は、長年にわたってワイ ンの品質を評価してきました。1971年からは、 ドイツのクヴァリテーツワインは全て、公認の 化学的分析検査と検査委員会による官能検査を 受けています。公認検査番号(A.P.Nr/アー・ ペー・ヌマー)はエティケット上に表示する義 務があります。また、ワイン法の原則には表記 の明瞭性という項目があります。紛らわしい表 記や誤解を招く表記は、基本的に禁じられてい ます。
97
品質の見極めかた
品質等級
品質等級 エティケット上の法定表示内容のうち、最も重 要なものが品質等級です。品質等級の表示によ り、客観的品質が明確化されるとともに、法的 最低基準が保証されます。これらは主にワインの 原産地、糖度、成分の分析限界値を表わすもので す。従来のターフェルワイン(ラントワインを含む) と クヴァリテーツワイン(QbAとプレディカーツワイン) という品質等級の分類は、2009年8月1日付けの EU規定によって改正されました。
品質のピラミッド 原産地呼称 保護ワイン (g.U.)
地理的 表示保護 ワイン(g.g.A.)
クヴァリテーツ ワインと プレディカーツ ワイン
ラントワイン
ドイチャーワイン
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ドイチャーワイン(品種名、ヴィンテージは 任意表示)
ドイチャーワインは、以前のターフェルワインに相 当し、ドイツ国内の認可された畑の、認可された 品種のぶどうの使用だけが認められています。他 のワイン生産国と比べると、ドイツではこのカテ ゴリーのワインが少量しか生産されていません。ド イツの全ワイン生産地における1ヘクタール当りの 最大収量は法律で規定されていますが、それはド イチャーワインの生産においても効力があります。 この収量規定はドイチャーワインのいくつかの産 地において、クヴァリテーツワインより多めの収 量を認めています。ドイチャーワインの最低天然 アルコール度数(モストの比重/糖度)は、Aゾー ン(バーデン地方以外の全域)では5% Vol.(44エ クスレ)、Bゾーン(バーデン地方)では6% Vol. となっています。総アルコール度数は8,5% Vol.以 上、15% Vol.以下と定められています。また総酸 量は最低3,5g/lと規定されています。さらに計22 品種の品種名表示が禁じられています。
品質の見極めかた
地理的表示保護ワイン (ラントワイン) ラントワインは指定地域のぶどうを最低85%使 用しなければなりません。エティケットには その地域名が表示されます。 ラントワインは辛口か中辛口に限定されていま すが、ラントワイン地域のうち、ライン、オー バーライン、ライン=ネッカー、ネッカー地域 は例外となっています。最低天然アルコール度 数は、個々のラントワインの産地において、ド イチャーワインよりも、最低 0,5% Vol.(4エク スレ)高くなければなりません。 原産地呼称保護ワイン (クヴァリテーツワインと プレディカーツワイン) クヴァリテーツワインとプレディカーツワイン は長年にわたりドイツワインの大部分を占める カテゴリーです。いずれのワインも13指定生産 地のうち、1生産地のぶどうを100%使用しな ければなりません。異なる産地の多様な品種か ら作られる個々のクヴァリテーツワインとプレ ディカーツワインには、最低天然アルコール度 数が定められています。最低糖度は産地、品種、 品質レベルにより、55〜154エクスレとなって います。クヴァリテーツワインはドイチャーワ インやラントワイン同様、補糖が認められてい ます。醗酵前の蔗糖の添加、つまりフランス語 でいう「シャプタリザシオン」、あるいはモス トの濃縮は法的規制内での実施が可能です。補 糖の際は、Aゾーン(バーデン地方以外の全域) ではアルコール度数の増量は 3,0% Vol.まで、B ゾーンでは 2,0% Vol.までが認められています。 クヴァリテーツワインの場合は、補糖を行う場 合の総アルコール度数の上限は 15% Vol.までと 定められています。モストの濃縮は、逆浸透法、 または真空蒸発法だけが認められています。そ の際、アルコール度数の増量は 2,0% Vol.まで 認められていますが、同時に、濃縮による減量 は20%以下に制限されています。
品質等級
品質概念対照表
フランス
ドイツ
イタリア
ラントワインの表示 ゲシュッツテ・ イン ディカツィオー インディカシオン・ ゲオグラフィッ ネ・ジェオグラフィカ・ ジェオグラフィック・ シェ・アンガーベ プロテッタ IGP プロテジェ IGP g.g.A. クヴァリテーツワイン、プレディカーツワインの表示 アペラシオン・ ドリジーヌ・ プロテジェ AOP
ゲシュッツテ・ウ デノミナツィオーネ・ アシュプルングス ディ・オリジーネ・ ベツァイヒヌング プロテッタ DOP g.U.
共通マーク
99
品質の見極めかた
品質等級
プレディカーツワインには、さらに別の要求事 項があります。補糖が禁じられているほか、ワ インにオークの木片(チップ)を投入すること も禁じられています。脱アルコール処理も禁じ られています。
プレディカート(肩書き)には 以下の等級があります
カビネット:
比較的軽快なワイン。熟したぶどうを
使用。低アルコール
シュペートレーゼ:
アウスレーゼ:
完熟ぶどうを使用。その際、未熟果、
不良果を取り除く
ベーレンアウスレーゼ: 過熟ぶどう、貴腐ぶどうから作られる、 豊潤でフルーティなワイン
アイスワイン: マイナス7度以下で氷結したぶどうを 収穫し、氷結状態で圧搾した、天然濃縮
された果汁から造るワイン
トロッケンベーレンアウスレーゼ:
100
重厚なワイン。完熟ぶどうを使用。 通常の収穫期より遅くに収穫
ドライレーズン状に萎んだ貴腐ぶどう から造る凝縮度の高いワイン
どのドイツワインも個々の品質レベルを表示し なければなりません。そのためには決められた 前提(基準、標準)を全て満たす必要があります。 つまり全ての利用者のために、法的品質をエティ ケット、価格表、ワインリストにおいて明確に 表示しなければなりません。基本前提は以下の 通りです。
指定原産地の厳守(ブレンド規定) 適用可能なぶどう品種のみを使用 収穫期 収穫方法 1 ヘクタールあたりの収量上限 規定の最低糖度 認可された醸造方法だけを実施 分析限界値を考慮
2012 年 1 月 1 日付けで、ラントワインに対して は「地理的表示保護」 、クヴァリテーツワインと プレディカーツワインに対しては「原産地呼称 保護」という表記が適用されます。 伝統的な概 念の使用は引き続き義務付けられています。略 称である「g.U.」と「g.g.A.」の使用は認可され ていません。 共通マークの使用は認められてい ます。(99 ページ参照)
品質の見極めかた
品質等級
品質等級対照表
ドイチャー ワイン
ラントワイン
クヴァリテー プレディカー ツワイン ツワイン
下記の産地の 下記の産地の ぶどうを100% ぶどうを85% 使用 使用 ドイツ国内の 産地
下記の産地のぶどうを 100%使用
表示された 産地
1つの指定産地
天然最低糖度
44° - 50°
47° - 55°
55° - 72°
70° - 154°
補糖可能
補糖禁止
食品法検査
公認品質検査
実質最低アルコール度数
5,5% vol. 8,5% vol.
7,0% vol.
(ベーレンアウ スレーゼ以上の 等級に適用)
総アルコール度数 最大 15% vol. 味わい 全て
辛口、 中辛口*
全て
* ラントワイン産地であるネッカー、ライン=ネッカー、 オーバーライン、ライン地方ではリープリッヒ、ズース(ともに 甘口)も認められている。
101
品質の見極めかた
品質等級
最低糖度
天然の糖度 天然の糖度(モストの比重)は、水分と揮発性 成分の量に対するエキス分の量(総エキス量) よって決まります。糖度は、第一に糖分の含有 量で決まります。糖度からは、理論的に可能な アルコール度数を推定できます。糖度は果実の 成熟度次第で決まるため、それから利用可能な 尺度を導き出すことが可能です。気候と土壌構成
102
がぶどうの自然な生育条件を左右するほか、糖 分の生成能力や成熟の違いといった、ぶどう品 種自体の異なる個性もあるため、個々の品質等 級ごとに、地域や品種によって異なる最低糖度 が設定されています。この規定は、利用者に対 して最低限の品質(スタンダード)を保証して います。造り手はその標準値よりもはるかに高 い品質を目標としています。
品質の見極めかた
ワインの種類 ワイン法はワインを4種類に分類しています。ここ に認められているぶどう品種や醸造法は厳密に定 義されています。
白ワイン: 白ワイン用品種からのみ生産されます。
赤ワイン: 赤ワイン用品種から得られる赤色の果汁から のみ生産されます。 赤い色素は、マイシェ醗酵、または マイシェの熱処理によって得られます。
白ワインと赤ワインのブレンドは原則として禁じ られています。例外的に原産地表示のないワイン では認められていますが、そのワインをロゼとし て販売することは禁じられています。
ロゼワイン: 赤ワイン用ぶどうを色素をあまり抽出しない ように圧搾して醸造します。必ずしも色素が 出ないように圧搾する必要はありません。 (色素の少ない赤ワインも「ロゼ」と表示 することができます)、ワインは淡い赤色 から明るい赤色でなければなりません。
ワインの種類
ブラン・デ・ノワールは、これまでワイン法 では定義されていなかった呼称ですが、ワイン 管理局においては容認されています。ヴァイ スヘルプストが「ブラン・デ・ノワール」と 表示されることが多くなっています。 ロートリング: 赤ワイン用ぶどうと白ワイン用ぶどう、ある いはマイシェを一緒に圧搾して醸造します。 ワインは淡い赤色ないし、明るい赤色でな ければなりません。 シラーワインはロートリングの1種です。 この名称は、ヴュルテンベルク地方産のク ヴァリテーツワイン、プレディカーツワイ ン、パールワインb.A.、ゼクトb.A.のみに使 用が可能です。 バーディッシュ・ロートゴルトはロートリン グの1種です。この名称は、バーデン地方産の クヴァリテーツワインとプレディカーツワイ ン、パールワインb.A.、ゼクトb.A.のみに使用 が可能で、グラウブルグンダーとシュペート ブルグンダーから醸造しなければなりません。 ぶどう品種はエティケットにブレンド比率の 多い順に表示します。その際グラウブルグン ダーの比率のほうが高くなければなりません。 シーラーはロートリングの1種です。この名 称はザクセン地方産のクヴァリテーツワイン とプレディカーツワイン、パールワインb.A.、 ゼクトb.A.のみに使用が可能です。
ヴァイスヘルプストはロゼワインの1種で、原 則的に赤ワイン用ぶどうを色素をあまり抽出 せずに圧搾したものから醸造します。色調に は規定はありません。 その他の条件は以下の通りです。 - 最低限クヴァリテーツワインである - 1品種から醸造する - 品種名をエティケットに表示しなければ ならない
103
品質の見極めかた
様々な味わい
様々な味わい 名称の表示権は徐々にリベラルになっています。 明確に定義された味わいの表記のほかに「その 他の、特に官能的な特徴(外見、香り、味わい) で、その製品に特有のもの」は認可されます。 ただしある種の法的不確実性はあります。 甘さの段階を明確に定義した4つの味わいの表示 は以下の通りです。
トロッケン(辛口)は残糖値が最高4g/l、 または最高9g/lであるワイン。後者の場合、 残糖値が総酸量より最高で2g/l多ければ良い とされています。 (残糖値公式: 酸の量+2≤9)
ハルプトロッケン(中辛口)は残糖値が 最高12g/l、または最高18g/lであるワイン。 後者の場合、残糖値が総酸量より最高で 10g/l多ければ良いとされています。 (残糖値公式:酸の量+10≤18)
リープリッヒ(やや甘口)は残糖値が最大 45g/lで、ハルプトロッケンに認められてい る残糖値を越えているものを言います。
ズーズ(甘口)は残糖値が最低45g/lある ものを言います。
2009年8月1日付で、EU法は上記のワインの味わ いの表示に関し、1g/lの許容値を認可しました。 ワイン 法 で 定めら れてい ない 味 わい の用 語 に 「ファインヘルプ」があります。この用語は一般にハ ルプトロッケン(中辛口)からリープリッヒ(甘口) に至るワインの味わいですが、トロッケン(辛口) にこの語を使用することもあります。
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品質の見極めかた
ワインのエティケット
ワインのエティケット ワインのエティケットは、いわばワインの「ビ ジネスカード」です。デザインの良いエティケ ットは記憶に残り、提供された必要な情報は、 購入時の判断を容易にします。2003年8月1日付 で、表記法が大幅に自由化されました。 変更になったのは以下の点です
義務的表示 厳密に定義されている任意的表示 記載可能な、その他の任意的表示
ドイツ産クヴァリテーツワインの 義務的表示:
„Deutscher Qualitätswein" または „Qualitätswein aus Deutschland" ワインの由来である指定生産地 品質レベル(場合によってはプレディ カート/肩書き) 生産者、またはボトリング業者 実質アルコール度数、% vol.単位 正味量(ボトリング容量) 公認検査番号 „Enthält Sulfite(亜硫酸塩が含まれます) " ないしは、„Enthält Schwefeldioxid(二酸化 硫黄が含まれます) "の表示 2012年7月1日付からは処理剤のカゼイン、 卵アルブミン、リゾチームを表示 ワインの種類は、白ワインでも赤ワインでも ない場合にのみ表示
義務的表示 任意表示
ヴィンテージ
生産地名 村名と畑名
品質レベル 生産国
ぶどう品種名 味わい 公認検査番号 正味量(l) 生産者、またはボトリング業者 アルコール度数(% vol.) „Enthält Sulfite (亜硫酸塩が含まれます)" の表示
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品質の見極めかた
ワインのエティケット
厳密に定義されている任意的表示には,例えば 以下のものがある: ぶどう品種名 ヴィンテージ 味わいの表示 「原産地呼称保護」の表示、 共通マーク(両方、あるいは一方) 生産地として、より狭い範囲での原産地 表示(ベライヒ/市町村名/市町村名と畑名) 賞の表示 消費者にとって役立ちうる、その他の任意的 表示には、例えば次のものがある: サービス温度、マッチする料理、保存方法 「ファインヘルプ」のような、定義されて いない味わいの表示 酸の量、残糖量などの分析値 ワインに特有の性質の表示: 例えば「フルー ティ」「フレッシュ」「上品な酸味」など ワインの香りや味わいについての表示 造り手の沿革についての表示: 例えば「・・・年 以来、家族経営でワイン造りにとりくみ・・・」 など 気候に関する情報など、自然の、あるいは 技術的なワイン造りの条件についての表示
重要なこと エティケット上の様々な表示はワインに詳しい 利用者には有益です。そうでない利用者には情 報の満載が負担になることもあります。 公認検査番号 公認検査番号は、ワインのアイデンティティを 明確に証明するもので、番号が同一であれば、 全て同一のワインです。検査番号はエティケッ ト上の表示が全て正確で、ワインが申し分のな い品質であることを示しています。 ワインの種類 ワインの種類から、生産工程やごく一般的な味 わいの個性を知ることができます。 ヴィンテージ ヴィンテージはワインの誕生年を示し、その他 の表示されている情報とあわせ、保存可能期間 を推測する助けとなります。 ワインは、表示さ れているヴィンテージのぶどうを85%使用しな ければなりません。 ぶどう品種名 ぶどう品種名の表示は、官能的特徴と多様な味 わいの個性を示唆します。一般的には品種名の 表示は1品種だけで、その品種が85%使用されて いなければなりません。2種類、あるいは3種類 の品種が表示される場合は、表示された品種だ けが使用されており、最初に書かれている品種 の占める割合が最も多いことを示しています。 生産地 生産地の表示は自然の生産条件を示すものであ り、その他の表示の情報とあわせ、様々な味わ いの個性を推定する助けとなります。個々のク ヴァリテーツワインは、表示された生産地のぶ どうだけを使用します。
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品質の見極めかた
生産地の詳細の表示 単一畑やベライヒなど、生産地の詳細の表示は、 ワインの識別の助けとなります。通常それは、一 生産者の複数のワインの違いを知る時に役立つ 情報です。クヴァリテーツワインの場合は、詳 細が表記されている産地のぶどうを85%使用し、 残りの15%も指定生産地のものを使用します。
ワインのエティケット
賞の表示 受賞歴などの賞に関する表示は、ワイン生産者 の高品質への追求を表すものであり、好んで使 用されるマーケティングツールです。
少ないほど多くを得られる 近年、ドイツの全てのワイン生産地において、 ワインのエティケットにあまり多くの情報を 品質レベルの表示 「詰め込み」すぎないようにする取り組みが見ら 品質レベルの表示はワインの種類、品種、生産 れます。多くの生産者が、見やすさ、わかりや 地とのかかわり合いにおいて読まれます。特に、 すさを重視しているのです。生産者名、味わい、 ワインの力強さ、ボディ、明らかに特徴的な味 品種だけの「スリム」な表示にし、畑名を省略 わいの個性が読み取れます。 している場合もあれば、エティケットを2枚に分 けて表示している場合もあります。アイ・キャッ 味わいの表示 チャー的なエティケットの方は、良く目立つデ 味わいの表示からは、知覚しうる残糖を知るこ ザインとなっています。エチケットは容易に再 とができ、機会に応じてのワインの選択、味の 認識でき、製品の特徴の本質を伝達するもので 好みに応じての選択を容易にしてくれます。 なければなりません。反対側の目立たないエティ ケットには、義務的表示事項がまとめられ、他 実質アルコール度数 に表示が認められている情報が追加記載される 実質アルコール度数の表示からは、味わいの個 こともあります。 性を読み取ることができ、節度ある消費の目安 が得られます。 ここ数年来エティケットはクリエイティヴになっ 利用時のアドバイス ワインに詳しくない消費者にとっての、ワイン 選びの助けとなります。 確認可能な事実に関する情報 「バリック樽で熟成」あるいは「木樽熟成」とい った、ワインの醸造方法に関する情報がそれに あたります。
てきています。アーティストを起用したエティケ ットや、斬新なデザインのエティケットを見る と、ドイツの造り手たちが時代のテイストをキャ ッチしていることがわかります。ドイツの現行 のエティケット表記法には、デザイン性に関し て充分な許容性があります。
生産者とボトリング業者の表示 生産者名とボトリング業者名は、その評判によ りワインの品質を保証します。個々の醸造家、ワ イナリー、協同組合に納得した消費者は忠実な 顧客となります。
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品質の見極めかた
公認品質検査
公認品質検査 1971年に制定されたワイン法により、あらゆる 品質向上の取り組みにとって重要な公的品質検 査が導入されました。品質検査は3段階となってお り、個々の品質等級における最低限の品質を保証 し、ワイン法が規定する検査方法(秋季台帳、醸 造記録台帳)と、ボトリングされた製品の検査が 行われます。公認品質検査は連邦政府が州政府に 委任する権利です。 収穫検査と成熟検査 収穫については秋季台帳と総収量報告書に記録し なければなりません。 - 収穫日 - 原産地 - 品種 - 収穫方法 - 糖度 - 収量 秋季台帳を醸造記録台帳が補足します。醸造記録 台帳には以下の内容が記録されます。 - 購入などによる所有するぶどうの量の変更記録 - 所有ぶどうの副産物への使用記録 (ぶどうジュース、蒸留酒など) - 補糖の方法と詳細の記録
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分析検査 生産者側は、生産したワインが品質や等級の要求 事項をすべて満たしていると判断した後で、検査 資格を持つワインラボに分析検査を依頼します。 分析検査は主要成分を中心に、規定の限界値を 考慮の上で行われます。分析値は生産者、ある いはボトリング業者が設定した項目に従い、化 学的、物理的にそのワインが欠陥のない品質で あることを証明します。 官能検査 分析検査により欠陥がないことが証明されると、 生産者、あるいはボトリング業者は、所轄の検 査所で、そのワインの検査番号取得の申請を行 います。 申請書には以下の項目を記入します - - - - -
エティケットに表示される全ての表記 製品の成分表記 ボトリング分量の表記 ボトリングした日付の表記 分析検査の結果
申請書とともに、サンプルワインを官能検査用 として3本提出します。官能検査は訓練を受けた 専門家が、一般的に信頼性のある方法(5点法) で採点します。検査所は、ワイン産業界、ワイン 研究所や教育機関、販売業界、消費者からワイ ン検査員に至る、異なる分野で働く経験豊かなワ インの専門家で構成される、中立的な委員会を 招集します。官能検査の際には、まず前提条件 を満たしているか否かをチェックします。
品質の見極めかた
- - - - -
公認品質検査
生産地 プレディカート(肩書き) 品種 色 明度
前提条件が満たされているか否かを確認した上で、 官能検査項目の - - -
香り 味わい ハーモニー
を厳密に評価します。各々の特徴は単独で、同 等に評価し、0〜5点の間で採点します。3つの得 点の合計を3で割ったものが、本体の品質を示す 点数、価値の尺度であり、最低0点、最高5点と なります。検査番号の取得には、全項目において 最低1,5点を獲得しなければなりません。官能検 査は、主観的な判定を客観化することで官能的 品質基準を確定し、視覚的、嗅覚的、味覚的欠 陥がないことを保証します。検査が終了すると、 検査番号が付与され、ワインの流通が可能にな ります。
品質検査
公認品質検査 (ラインラント・ファルツ州の場合)
(Beispiel Rheinland-Pfalz)
A.P.NR.: 5 348 228 10 12 事業者番号 検査地 生産者所在地 生産者 検査ロット 検査年
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品質の見極めかた
賞、品質プロフィール、格付け
賞、 品質プロフィール、 格付け ド イ ツ ワ イ ン は 毎 年 、 個 々 の生 産 地 の 所 轄 の 委員会によって表彰されています。商業会議 所・地域レベルでの品質検査において得点の高 いワインは(最低スコアは3,5点)、その後、ド イツ農業協会(DLG)の連邦ワインアワード (Bundesweinprämierung)に応募できます。 例年行われているこのコンクールの基準は同一 ですが、品質への要求はより高く、以下の賞が 授与されます。 DLGブロンズ賞 品質得点3,50点以上 DLG銀賞 品質得点4,00点以上 DLG金賞 品質得点4,50から5,00点 DLG金賞特別賞 品質得点5,00点のワインには特別審査を実施
ドイツ品質保証マーク(ドイチェス・ ギューテジーゲル) 全国レベルでのドイツワインの品質保証マーク は近年利用が減っていますが、これは法的に最 低限要求されているものより、はるかに高い品 質を保証するものです。品質保証マークの審査 には、公認検査番号の担当局を通じて自主的に 応募でき、ドイツ農業協会(DLG)が授与しま す。品質保証マークを得るためには2,5〜5点を 獲得しなければなりません(通常1,5点でクヴァ リテーツワインと認められます)。 フランケン地方のワイン生産者協会は、フランケン 地方のワインを対象にフランケン品質保証マークを、 バーデン地方のワイン生産者協会は、バーデン地 方のワインを対象にバーデン品質保証マークを同 様の評価基準で授与しています。
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品質の見極めかた
賞、品質プロフィール、格付け
クラシック クラシックは各産地の、中くらいの価格帯のワ インに対して付けられる名称で、各地方の典型 的な伝統品種から造られた調和のとれた辛口ワイ ンを対象としています。 リースリング・ホッホゲヴェクス この名称は全生産地において使用が認められて います。条件は以下の通りです。 - - -
リースリング1品種から造られている 糖度(モストの比重)は、各地方のリース リング・クヴァリテーツワインの最低糖度 より、少なくとも10エクスレ高い 公認品質検査で、品質検査の得点が少なく とも3,0点である
セレクション・ラインヘッセン 1992年以来、ラインヘッセン地方のワイン 生産者協会が認定している品質保証マーク - ラインヘッセン地方の伝統品種だけが認可 されている - 辛口である - 樹齢が最低15年である - 最大収量は1ヘクタール当り 55ヘクトリットル - 最低糖度は90エクスレ - 手摘みのぶどうだけを使用する -
ラインヘッセン・ジルヴァーナーRS - - - -
1980年代半ばより、ラインヘッセン地方の ワイン生産者協会が認定している ジルヴァーナー種単一で生産するクヴァリ テーツワインだけが対象となる 辛口である 総酸量が最低5g/lある
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品質の見極めかた
賞、品質プロフィール、格付け
ラインヘッセン原産地ワイン — 個性豊かなルーツ - - -
ラインヘッセン地方の伝統品種だけが 認可されている 辛口であるか、クラシックの名称を得た ワインである 品質検査の際に典型性が審査される
モーゼル原産地ワイン — ワイン文化の故郷 - モーゼル地方の伝統品種だけが認可されて いる - 公認品質検査で、品質検査の得点が少なくと も2,5点ある - ワインの様々な個性が規定されている: ミネラリッシュ(辛口)、軽快(ファイン ヘルブ)、高貴(フルーティ) DCファルツ(ディストリクトゥス・コントロラ トゥス・ファルツ) - ファルツ地方のワイン生産者協会が認定する - リースリング、グラウブルグンダー、 ヴァイスブルグンダー、シュペートブルグ ンダー、ドルンフェルダーのみが対象となる - 辛口である - 規定の最低糖度をクリアしている - 総アルコール度数が最低12,0% vol.である - 追加の官能検査が行われる エアステス・ゲヴェックス - ラインガウ地方のワイン生産者協会が 認定する - リースリング、シュペートブルグンダー のみが対象となる - 辛口である - 最大収量は1ヘクタール当り50ヘクトリットル - 最低限シュペートレーゼの糖度である - 手摘みである - 格付けされた畑のぶどうである
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品質の見極めかた
賞、品質プロフィール、格付け
エアステ・ラーゲ - -
- - - - -
ドイツ・プレディカーツワイン生産者 協会(VDP)が認定する エアステ・ラーゲの辛口ワインをグローセ ス・ゲヴェックスと称する。 気品ある甘口ワインはシュペートレーゼから トロッケンベーレンアウスレーゼに至る プレディカート(肩書き)を名乗る 格付けされた畑のぶどうのみを使用する 生産地別に厳密に規定された伝統品種のみを 使用する 最大収量は1ヘクタール当り50ヘクトリッ トル 手摘みである 最低限シュペートレーゼの糖度である
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品質の見極めかた
ビオワインとその造り手
な専門知識を必要とします。投入の必要が確認 された場合にのみ、除草剤と殺虫剤の散布が認 められます。この農法は「管理型低環境負荷ぶ どう栽培」協会の会員が自主的に厳格な環境基 準に従って実践しており、自己責任のもと、ぶ どう栽培アドバイスセンターと共同で立案、管 理を行っています。 ビオ(エコ)ぶどう栽培 ドイツにおけるぶどう栽培において、環境負荷が少 ない農法、あるいはビオ農法は重要なテーマです。 ドイツの醸造家は1980年代半ばからビオぶどう栽 培の基準を設けており、1991年からはヨーロッパ 全土で規定され、公的に管理されるようになりまし た。ドイツでは、約600醸造所、トータル約5.400 ヘクタールのぶどう畑(2010年現在)がビオ基準 を全うしています。ビオぶどう栽培の目的は、環境 や人間に負担をもたらしうる手段をとらずに、高品 ドイツのワイン造りにおいては 環境負荷の少な 質のぶどうを生産することです。多様で豊かな草 い農法が何十年にもわたって実践され、今や伝 生栽培を行い、除草剤を完全廃止した上で、バラン 統となっています。環境問題において、ドイツ スのとれたビオ肥料のみを施し、地力をつけること は全ヨーロッパにおける先駆者的な役割を果た が、ビオぶどう栽培の根本です。メールタウ(ウド しています。今日に至るまで、ドイツワインの ンコ病/ベト病)に対する抵抗力を支えるためには、 造り手たちは最高レベルの基準でこれを実践し 岩粉や植物性のエキスを使用し、必要な場合には、 ています。 硫黄剤や厳密に制限された分量の銅剤でサポート します。害虫に対しては、生物学的・生物工学的処 統合型ぶどう栽培 方だけが認められています。ビオの醸造家は ECO 統合型ぶどう栽培は、ドイツの全ての醸造所に VIN(エコヴィン)、Naturland(ナトゥアラン おいて義務付けられている専門的実践事項を土 ト)、Bioland(ビオラント)、Demeter(デメ 台とします。被害状況を確認しながら、タイミ ター)、Gäa(ゲア)などの団体に所属してい ングと実質目的にかなった植物保護剤の投入、 ます。 環境を考慮した必要に応じた施肥を行います。 事前に土壌検査を実施することが、この栽培シ ビオディナミぶどう栽培 ステムの重要ポイントです。 ビオぶどう栽培の特別な形態で、そのルーツは オーストリアの人智学者ルドルフ・シュタイナー 管理型低環境負荷ぶどう栽培 の学問にあります。彼の哲学の核心は、ある植 管理された環境負荷の少ないぶどう栽培には、 物の病気は自然のバランスが乱されたことのあ ぶどう栽培をより自然に近いものにするという らわれであり、それが例えば施肥の際の化学物質 目標があります。カビ菌に対しては、益虫を守 の投入などに由来するという考えです。そのた る植物保護剤のみを使用し、目的に応じ、ぶど め、天然の資源を守り、地上と宇宙の相互作用 うが現在必要とする施肥を行います。ぶどう畑 における生命のプロセスを、厳密な規則によって の生態系の多様性を重視した草生栽培が基本で 効果的に促進します。主眼はぶどう畑の仕事に あり、造り手はぶどう栽培と環境について高度 おかれ、剪定、施肥、そして収穫も、種蒔きカレ
ビオワインと その造り手
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品質の見極めかた
ビオワインとその造り手
ンダーに従って実施します。土壌は少なくとも 年に1度耕し、可能であれば、トラクターではな く、馬を使って耕します。土壌はコンポストで 再度活性化させ、鉱物を処方し、多様な微生物 が生息でき、自然のバランスが整うようにしま す。ビオのぶどう栽培法に加え、ぶどう樹の自 然の力を強め、土壌の生命力を活性化させるた めの特別な処方もあります。肥料において中心 的な役割をになっているのが牛の角で、牛糞や 珪石の粉末との組み合わせで使用し、ごく僅か なホメオパシー的分量(1ヘクタールあたり数 グラム)を投入します。有害生物に対する耐性 を促進する、いわゆる植物強化剤も使われます。 例えば、薬草や乾燥させた薬草のインフュージ ョンは、ぶどうにとって大きな効果があります。 イラクサはぶどう畑にバランスと調和をもたら します。月齢やその他の天体が構成する星座な どの宇宙の力は、常に考慮にいれます。ビオディ ナミの理論において、地上の植物の生育に決定 的であるのが月の影響です。世界的規模のビオ ディナミ協会がDEMETER(デメター)です。
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ドイチャーゼクト 活き活きとした味わい
ゼクトはドイツ国民の間で絶大な人気のある 飲料のひとつです。ドイツでは年間 4 億本を 越えるスパークリングワインが消費されます。 全世界で生産されている 20 億本のスパー クリングワインの 4 分の 1 ちかくを消費し ているドイツは、世界最大のスパークリン グワイン市場なのです。1 人当りの年間消 費量は約 4 リットル、ドイツ人はスパーク リングワインの楽しみ方においては、世界 チャンピオンです。
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ドイチャーゼクト
ゼクト市場/生産工程
ゼクト市場 ゼクトを味わう楽しみは、 ドイツのゼクト業界 における大手企業の広告戦略によって大々的に 後押しされています。 ゼクトの売上は、数十年 以上にわたって販売されているビッグブランド のおかげで勢いがあります。 ゼクトの大部分が 数多い食品小売店(リテール)で販売されてい ます。展開されているブランドの種類、価格 は多様です。2 ユーロ程度から、高価なもので は 40 ユーロを越えるものもあり、予算に応じ てあらゆる商品が選択可能です。 販売価格には、 1 本あたり 1,02 ユーロのゼクト税が含まれてい ます。 ドイツのゼクト市場においては熾烈な競争が繰 り広げられています。特に食品小売店では、複 数の大企業がそれぞれのブランドゼクトで顧客 を獲得しようと躍起になっています。 小売においては、一般的に 3 つの価格帯に分類 されます。
生産工程 ゼクトの生産工程にはワインの二次醗酵というプ ロセスがあります。その際に発生するナチュラル な二酸化炭素はワイン内に保たれ、スパークリン グワインという製品の特徴となります。
4ユーロ以下の安価なゼクト。全生産量 の半分以上がこの価格帯です。 7ユーロ以下のスタンダードなゼクト。 プレミアムゼクトには、一部非常に高価 な商品があります。このカテゴリーは 近年増加傾向にあります。
ゼクトに特徴的なのは、第1にベースワインを使用 して生産する商品であるということ、第2に独特の 生産工程で造られることです。高品質のゼクト用 ベースワインは、例えばアルコール量(80〜85g/l) や総酸量(7〜10g/l)などが、一定の条件を満た していなければなりません。白ワインの場合、タ ンニンの量は低くなければならず、pH値も同様で 高品質で個性豊かなゼクトの流行に乗って、小 す。大企業はブレンドによって造る固定スタイル 規模の醸造所が成功を収めるケースが増えてい ます。現在ではほとんどの醸造所や協同組合が、 の製品を好み、均質なベースワインのキュヴェを 様々な品質のオリジナルゼクトを生産していま 造ります。一方、醸造所では個性的な製品の小規 す。 模生産を好み、1品種から造られるゼクトも珍しく ありません。ゼクトは酵母の澱と接触させている 限りにおいて、比較的安定しています。デゴルジ ュマン(酵母の澱を取り除くこと)を経ると、熟 成に拍車がかかります。そのためゼクトは、タイ プにより、デゴルジュマン後1年から3年以内に消 費すべき商品です。
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DER FEINE UNTERSCHIED ドイチャーゼクト 生産工程REBSORTEN
WEISSWEINREBSORTEN
醗酵のプロセス キュヴェとティラージュ
キュヴェとティラージュ
大型容器醗酵法
キュヴェとティラージュ
トランスヴァジア法
伝統的瓶内 醗 酵 法 ボトリング
ボトリング
タンク醗酵 瓶内醗酵 瓶内醗酵
手作業、または 機械での ルミアージュ
圧力容器への 移し替え
ドサージュ
圧力容器への 移し替え
ピュピトル上の ルミアージュ ドサージュ
濾過
終了後のボトル はほぼ垂直 ボトルの口を 凍結液に浸漬
濾過
ボトリング
デゴルジュマン 、 氷結した酵母の 澱を取り除く
ボトリング コルク栓を打つ
スパークリングワインの生産には3つの生産工程 があります。 大型容器醗酵法、または タンク醗酵法(シャルマ製法) この醗酵法では、大型の圧力容器内で、大量の
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ドサージュ
均一のロットが生産できます。醗酵プロセスの 後に酵母の澱を取り除き、できたゼクトをボ トリングします。この方法はコストが安くすみ、 主に大規模醸造所(ケラーライ)での、ゼクト やスパークリングワインの工業的生産方法とし て実践されています。
ドイチャーゼクト
生産工程
瓶内醗酵法、または トランスヴァジア法 瓶内二次醗酵後、圧力容器内にボトルのゼクト をあけ、フィルターで酵母の澱を濾過した後に ボトリングを行います。この方法は手間とコスト がかかるデゴルジュマンに至る手作業を簡便にし ます。エティケットには「瓶内醗酵」の表記が認め られています。 伝統的瓶内醗酵法 瓶内二次醗酵後、個々のボトルを機械か手作業 で「動瓶(ルミアージュ)」し、徐々に垂直に なるよう角度をつけていきます。こうして酵母 の澱を瓶の口に集め、ゼクトが失われないよう 取り除きます(デゴルジュマン)。最も手間と コストがかかる工程で、ボトルにはその旨表記 することが認められています。 これら3つの通常の製法以外に「メトード・リュ ラル」(リュラルは田舎の意)と呼ばれる方法 があります。メトード・リュラルは南フランス、 リムー地区で行われている、最古と言われるス パークリングワイン製法です。瓶内二次醗酵は 行われず、完全醗酵していないモストをボトリ ングし、そのまま瓶の中で更に醗酵させ、二酸 化炭素を得ます。通常酵母の澱は除去せず、瓶 内に沈殿します。ドイツでも、僅かながら、この 方法でゼクトを生産している造り手がいます。
ゼクトに泡を込めるには? 蔗糖(サッカローズ)を添加することで、必要と なる炭酸ガスの圧力を得ることができます。アル コール量は約10〜12g/l 増量します。蔗糖の他にゼ クト用の酵母を添加します。この溶液をティラー ジュといい、ゼクト用ボトルにボトリングをした 後には王冠で栓をし、12〜15度で瓶内醗酵させま す。続いて、品質を向上させ、ゼクトを安定させ るために、酵母の澱に接触させたまま寝かせます。 ゼクトb.A.(指定生産地ゼクト)は最低9ヶ月寝か せることが必要です。
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイチャーゼクト ゼクトの品質
WEISSWEINREBSORTEN
酵母の澱の取り除きかた 酵母の澱を取り除くには、ルミアージュの後、ボ トルの口に集められた澱を氷結させます。デゴル ジュマンの際、氷結した澱は炭酸ガスの圧力で押 し出されます。その後、ワインに砂糖を溶かした リキュールをゼクトに加え、一定の味にします。
ヴィンツァーゼクトとは? 「ヴィンツァーゼクト」の概念はEUのスパークリ ングワイン規定において厳密に定義され、高度な 要求事項が定められています。ゼクトを製造する 醸造所が、自ら生産したぶどうから造ったベース ワインの使用だけが認められているほか、伝統的 な瓶内二次醗酵法による生産だけに限定されてい ます。つまり二次醗酵はボトル内で行われ、ゼク トはデゴルジュマンまで最低9ヶ月、酵母の澱と一 緒に熟成させなければなりません。ヴィンツァー ゼクトの多くは、最高品質のゼクトを生産するた め、より長期間にわたって熟成されます。生産者 団体、ボトリング業者を通じての委託生産は、ぶ どう、モスト、あるいは完全に醗酵を終えていな いベースワインから生産する限りにおいて認めら れています。 エティケットには、醸造所、品種、 ヴィンテージの表記が義務付けられています。
ゼクトの品質 ゼクトには様々なタイプがあることを知ってお く必要があります。1986年にEUの全加盟国を対 象に、スパークリングワインの呼称や表示に関 し、統一の拘束力を持つ規定が整いました。そ れによると、100%ドイツ産のベースワインから 生産された製品にのみ「ドイチャーゼクト」の 表示が認められています。ブレンドに関する規 定はワインと同一のものが有効で、異なる生産 地のワインのブレンドが認められています。ド イチャーゼクトは、生産地の表示がない場合、 国内の複数の生産地のワインがブレンドされて います。 ゼクトb.A.、あるいはクヴァリテーツシャウムワ インb.A.という表示は、エティケット上に、使 用したぶどうの生産地を表記しなければなりま せん。畑名が表示される場合もあり、クヴァリ テーツシャウムワインの表示には、生産地に加 え限定された地域の地理的単位の表示を補足す ることが認められています。前提条件としては、 使用されている全てのぶどうが、その地理的単 位(ベライヒ、畑)のものでなければなりません。 これらの前提条件の監査、官能的品質は品質検 査時にチェックされます。 「ヴィンツァーゼクト」の名称は、ここ数年頻繁 に使われ、ポピュラーになりました。高品質の、 ぶどう品種を表示したゼクトで、醸造所、協同 組合、あるいは生産者団体が、自らのぶどうか ら生産したゼクトをさします。品種を表示した ドイツ産ゼクトは、今日、全生産量の10%に達 していると推定されています。ドイツの大手生 産者もこのトレンドに追従しています。高品質 のリースリング・ゼクトは、品揃えの良い小売 店において選択肢のひとつとして展開されてい ます。
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ドイチャーゼクト
ゼクトの品質
ゼクトの味わい
しかし、キュヴェに「ヴィンツァーゼクト」の 表示が使われることは稀にしか認められていま せん。この概念は、生産本数の限定されている 最高級品のためのものです。ゼクトに高品質の ベースワインを使用する傾向は、一般の品質へ
の意識が高くなっていることのあらわれです。 多くの消費者が、ワインにおいても、良い原料 を使うことが、高品質の基本条件であると認識 しています。ワインに通じた消費者は、使用さ れている品種を意識して味わう楽しみを知って
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DER FEINE UNTERSCHIED REBSORTEN ドイチャーゼクト ゼクトの品質
WEISSWEINREBSORTEN
おり、キュヴェにおいても、その個性を見つけ 出します。それは農業会議所やドイツ農業協会 (DLG)のゼクト賞の受賞を通じて、実を結んで います。公的コンクールでは、厳格な品質基準 が適用されています。
生じた炭酸である場合もあり、全部あるいは一 部が工業的に生産され、技術的に注入された炭 酸(外部由来)である場合もあります。
パールワインは多くの場合、ゼクトよりも甘め の味わいです。トロッケン(辛口)と表示してい るパールワインは、残糖が35g /lまで認められて います。ハルプトロッケン(中辛口)は33〜50g/l、 ゼクトの品質に関しては、ワインよりも基準設 定が困難です。糖分を取り除いたエキス(残存 「マイルド(ミルト)」と表示されたものは50g/l以 エキス)という品質指標は、限定的に適用され 上です。パールワイン、あるいはセッコはアペ ています。値が大きすぎると、ゼクトに「ボリ リティフにも最適ですが、暑い日のシンプルで ューム」や「厚み」が加わってしまうからです。 軽快な飲み物としても理想的です。 有名ブランドを指標にせず、「職人的」に造ら れた個性的なキュヴェを発掘しようとすれば、 醸造所、協同組合、専門店、レストランなど、 至るところで見つけることができます。ワイン の購入時と同様、品質基準を知る際に決定的な 意味を持つのが、ベースワインの生産地、ぶど う品種、製造方法、公認検査番号で、エティケ ットに表記されています。高品質のブランドゼク トも、ゼクトケラーライで委託製造し、販売業 者の「自社ブランド」のエティケットでリリー スするゼクトも、これらの前提を満たして生産 することが可能です。製品の品質において決定 的要因となるのはベースワインの品質です。 現在大人気を博している、炭酸入りワイン、パー ルワインにおいても同様で、今では多くの醸造所の 定番商品となっています。90年代初頭から、相当 量が生産されており、その多くが「セッコ(Secco) 」 という名称で販売されています。ドイツのパー ルワインの売上は、数千万ユーロと推定されて います。 パールワインにはゼクト税がかからないため、 通常ゼクトよりも安価です。ボトルの内圧は 1〜2,5バールで、ゼクト(3,5バール以上)より 低くなっています。パールワインはドイチャー ワイン、あるいはクヴァリテーツワインから生 産することができます。パールワインの場合は、 ゼクトと異なり、炭酸を注入することが可能で す。その場合、醗酵による炭酸(内部由来)、 すなわち、モストが醗酵しワインになる過程で
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ドイチャーゼクト
ゼクトの品質
ゼクト早わかり
ゼクトは一次醗酵、あるいは二次醗酵を経て 生産され、実質アルコール度数が10% Vol. 以上あり、炭酸ガス圧が3,5バール以上ある 製品です。 ドイチャーゼクトはドイツ国内で、ドイツ 産のベースワインから生産されます。 ゼクトb.A.(指定生産地ゼクト)は、ブレン ドと原産地表示に関しては、クヴァリテーツ ワインb.A.と同等の厳格な規定に従って造ら れ、品質に関しては公的検査を受けます。 ヴィンツァーゼクトは、個々の醸造所の個 性ある製品で、伝統的な醗酵法を経て生産 されます。ヴィンテージ、ぶどう品種、生 産者名は常にエティケットに表示します。 ヴィンツァーゼクトは生産者元詰製品です。
クレマンは「ゼクトb.A.」のカテゴリーに 属する製品で、以下の諸条件を満たしてい る場合は、指定産地名と合わせて表示する ことが認められます。(例えば「クレマン・ バーデン(Crémant Baden)」「バーデン・ クレマン(Baden Crémant)」などと表示 されます) 最低9ヶ月酵母の澱と接触して寝かせた ものである 伝統的な醗酵法で生産されたものである 白ワインのゼクトの場合は、全房圧搾で モスト(150kgのぶどうから最大100 リットルのモスト)を得ている 亜硫酸塩添加の上限が150mg/lである 残糖の上限が50g/lである 場合によってはその他の国内規約に従う
ゼクトのサービス法 ゼクトはきりっと冷やしてサービスすると最も 美味しくいただけます。しかし、冷やし過ぎる とアロマが失われるため、冷凍庫でのショック 冷却は避けましょう。ゼクトをサービスする際 の正しい温度は、冷蔵庫で3〜4時間冷やす程度 の温度(6〜10度)です。コルクを抜いたボト ルは、水と氷を入れたクーラーに入れて低温を 保ちます。栓を開ける際には、大きな音をたて ないよう、ボトルを斜めに支えて回し、コルク をゆっくりと外します。
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ワインの取扱い
ワインの正しい取扱い方とは、単なるスキルで はなく、イメージを喚起させ、必要な売上や収 益に配慮することでもあります。外食産業でも、 専門店や食品小売店でも、それは変わりません。 ワインに関する専門知識を伝達するには、多彩 なワインを提供するだけでは充分ではありませ ん。正しい方向への「ハンドリング」ができて いなければならないのです。当り前のことを行 うだけでは、例えば専門知識を持つ人材の不足 といった外的「制約」によって、実践において 失敗することがあります。諸々の問題は、簡単 な方法で解決したり、それが起こる前に回避す ることができます。
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ワインの取扱い
売れ行き重視の商品構成
売れ行き重視の商品構成 特別な味わいの特殊なぶどう品種のワイン いずれの業態にも共通して言えますが、顧客の 特別な醸造法によって造られたワイン 立場を考えた商品構成とは、代表的な商品が揃 (例えばバリック樽の使用など) い、魅力的で、変化に富み、在庫管理がしっか 古いヴィンテージのワイン りと行われているものでなければなりません。 レアもの これらの目的を達成するための最善の方法は、 コア商品、特別商品、そしてキャンペーン商品 極めて高品質であるワイン(例えばアイス をうまくミックスすることです。 ワインなど) コア商品とは、常に一定の需要があるワインで あり、顧客の要望を満たすためにどうしても扱 わなければならないワインの全てを含みます。 特別商品とは、特別な要望を満たすことができ る商品です。それは、競合する他社への対抗手 段となり、企業のイメージアップを可能にしま す。ただし注意が必要です。イメージアップと はいえ、後々、高価格のワインの在庫を大量に 抱えることにならないよう配慮しなければなり ません。保管スペースを無駄にし、不必要な資 本を抱えることにもなるからです。今日では、 高価格帯のワインは、在庫が尽きそうになった 段階で発注しても補充が可能です。仕入先にで きる限り保管を任せられれば、スペースやコス トを削減できます。特別商品の構成は、コア商 品の規模、商品自体や取扱う外食業者と小売店 の知名度、従業員の意識によっても異なって来 ます。特別商品には以下のようなものが挙げら れます。
キャンペーン商品とは、特別な機会に、あるい は企業方針によって販売されるもので、売上の 活性化をもたらします。主に以下のような商品 をさします。
特別なキャンペーン目的で仕入れたもの(こ れには、あらゆるケースが考えられます) コア商品、特別商品の売れ残りで、在庫一掃、 あるいは商品構成の調整のために(場合によっ ては特別価格で) 迅速に販売されるべき商品。
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ワインの取扱い
外食業界
外食業界 取り扱うワインのラインナップを構成していく 上で意識すべきことは、どのようなサービススタ イルをとるかということです。ワインには以下 の2タイプのサービススタイルがあります。
レストランでのワインのサービス
ボトルワインとしてサービス (0,25、0,375、0,5、0,75、1,0リットル、 または1,5 リットル・マグナム) グラスワインとしてサービス (0,1、0,2、0,25リットル、あるいは様々 なサイズのカラフェ、ボトルからグラスに 直接注いだり、樽からグラスに満たす場合 もあります)
基本的に、クヴァリテーツワインは全てグラス ワインとしてサービスするのにふさわしい商品 です。
高価なワインはグラス単位(0,1リットル)でサー ビスすることで、より受け入れられやすくなります。 特にアペリティフとしてのワインやゼクトにお いて この方法がとられています。顧客にとって 非常に魅力的で、価格的にも受け入れられやす いのが、食事にあわせてワインをグラス単位で 提供するサービス方法です。この方法は顧客に ワインを楽しむモチベーションを与え、食事に 様々なワインを選択するチャンスを提供します。 グラスワインの需要がどんどん高まっているの は当然の帰結です。それには以下の理由もあり ます。
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グラスワインはテイスティング感覚で 頼める 個々の顧客に取ってボトルワインは量が 多すぎる グループであっても、それぞれ好みのワイン を選ぶことができる グラスワインは安価に感じられる
ワインの取扱い
グラスで提供できるワインの種類を増やすこと によってワインに関心を持つ顧客を新たに獲得 することができます。顧客の購入選択が容易に なるため、売上増、利益アップに繋がります。 ワインの提供の仕方に関しては、視覚的要素の ほかに、商品構成自体がそれぞれの顧客の要望 や期待を満たすことができるかどうかという問 題があります。それは、個々の店舗形態、客層 や立地条件にも関わって来ます。大都市の中心 からはずれた、労働者層が多く住んでいる地区 の小さな立食店(インビス)では、街中の学生対 象の居酒屋や、保養地のファーストクラスのホテル、 ワイン産地の中心に位置するワインバーとは異な るワインの仕入れが必要です。まずは、こういった 大きな影響を及ぼす要因を分析することで、その 店舗にふさわしい、成算が見込める商品構成づく りの基礎固めができます。
外食業界
ります。そこで、伝達力のあるワインリストが 「アドバイザーの代理機能」を果たします。 ワインリスト、ドリンクメニューの構成に 関するすすめ ドイツの外食産業において活用されているワイ ンリストやドリンクメニューは、店舗形態と同 様、様々なものがあり、デザインも、シンプル なものから、アーティスティックなものまで多 彩ですが、その多くには共通点があります。い ずれも内容の構成においてあいまいさが見られ るのです。このあいまいさは、ワインリスト、 ドリンクメニューが果たすべき機能の重要性を 軽視したことのあらわれです。 ワインリスト、ドリンクメニューの機能 独立したワインリストを使用している店舗は限 定されています。そのため、本書ではドリンク メニューについてお話しします。ワインリスト は通常、ドリンクメニュー内の独立したパート となっています。優れたコンセプトのドリンク メニューは3つの根本的機能を満たしています。
コレクションの規模 それぞれの店舗の環境や条件は非常に異なるた め、本書では、理想的な商品構成をお勧めする ことができません。個々の商品構成は、それぞ れの店舗規模、経営をめぐる様々な現実問題に 情報提供のツールとして、顧客のワイン よって異なってきます。客層、入店理由、滞在 選択をサポートする 時間なども、ワインの仕入れルート、保管方法、 企業や店舗の宣伝媒体となっている 人材配置と同様に、考慮に入れる必要がありま す。また、企業の目標達成のために、1つの重点 仕事のツールであり、トレーニングツール 的コレクションを展開するか、多様なコレクシ としても機能する(主にサービススタッフ ョンを展開するか、いずれが良いかを考慮する 対象) 必要があります。ここでも「少ないほど多くを 得られる」つまり限定された品揃えのほうが大 ドリンクメニューをデザインする場合は、これら きな効果をもたらす、という原則が有効な場合 全ての機能を充分に考慮しなければなりません。 があります。肝要なのは、顧客に物足りなさを 感じさせないことです。 本書がおすすめするのは、経験値に基づいて顧 客の最低限の要求を満たすように考慮した、一 定レベルの魅力がある商品構成です。 理想的な商品構成であっても、効果的なプレゼ ンテーションは必要です。専門教育を受けたス タッフの雇用は、莫大なコスト要因となるため、 ハイレベルの必要人員を動員できない場合もあ
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ワインの取扱い
外食業界
顧客が手にするワインリストは、以下の要件を 満たしていなければなりません。 ... わかりやすいものであること 構成がロジカルで、プレゼンテーションが見や すいものでなければなりません。 ワインリストの構成は、商品構成の幅の広さに 左右されます。以下の項目において、該当する ワインが何種類提供されるかによって変わって きます。
サービススタイル ワインの種類 生産地 ぶどう品種 味わい 等級 ヴィンテージ(若いものを古いものより 先に表示)
商品構成においては、どのような視点を中心と するかにより、品揃えが決まってきます。その 際、常に1つの視点を中心に据えつつ、それ以 外のものを配置します。例えば生産地を基準に した構成では、提供数の最も少ない産地のもの を、それぞれ最初と最後に配置し、残りは提供 数に従い、その間に配置することをお勧めしま す。提供する商品が非常に多い場合は、目次を つくると良いでしょう。 ... 情報が得られ、消費を促すものであること ワインの情報が得られるリストは顧客のみなら ず、サービススタッフにとっても有用です。そ のため、少なくとも生産地、品種、ヴィンテー ジ、等級、アルコール度数、味わい、生産者な どの、エティケットに記載されている内容はリ ストにも記載すべきです。加えて、現実的でポ ジティヴな解説があれば、顧客の役に立ち、消費 を促します。例えば、醸造法(「木樽熟成」 「バリッ ク内熟成」)などの追加情報も、顧客に対し提供す べき情報です。ちょっとしたストーリー、エピソード、 写真もワイン消費を促し、待ち時間のイライラを解 決します。ワインリストはワインを飲みたくなる
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ような内容でなければならず、リストの装丁や デザインも重要な役割を果たします。ワインリ ストは見た目が良く、開きやすく、丈夫である 必要があります。 ... 最新のものであること 顧客のためのワインリストは、常に最新のもの を用意し、内容も定期的に更新します。 ... 店舗にふさわしいものであること ワインリストの素材、デザイン、内容、分量は 店舗のスタイルやイメージにふさわしいものに します。
法的な規定も遵守しなければなりません。ドリ ンクメニューの記載事項には、ほぼ例外なく、 エティケットと同じ規定が適用されます。同時 に、価格表示規定についても注意が必要です。 一般的な情報に加え、ワインについての詳しい 呼称や描写があれば、顧客の信頼を得ることが できます。
ワインの取扱い
販売業界
販売業界 今日、ドイツで販売されているワインの約4分の3 が食品小売店で扱われています。この流通経路の 重要性を象徴する割合です。ただ、食品小売業界 におけるワインの正しい取り扱い方を大雑把に助 言することは好ましくありません。業態(ディスカ ウンター、スーパーマーケット、デパート)が様々で あるため、ひとくくりに話をすることはできな いのです。結局のところ、それぞれの業態は独 自の戦略に従っており、それは商品構成の規模 と構成によって異なります。しかし、全ての食 品小売業者には共通点があります。どの企業も ますます熾烈になる競争の中で、何らかの形で 競合相手にない特徴を出して行きたい(出さな ければならない)と考えているのです。もちろ ん、相違点もあります。ある企業は挑戦的な価 格を提示し、別の企業はプレスティージのある 商品に特別なサービスを提供したりしています。 前者の場合、ワインはそれだけで売れるはずで すが、後者のケースが機能するには、スタッフ のアドバイスが必要になります。
ワイン専門店でのテイスティング
ワイン専門店や飲料品店においても、優れた販 売コンセプトは(代表的な商品構成を別として) 顧客アドヴァイスの質や、提供されるサービス に関わってきます。最低限必要とされるのは、 以下の点です。
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ワインの取扱い
販売業界
担当者がいること。顧客がワインの棚の前 で1人置き去りにされる状態があってはなり ません。 長い待ち時間を避けること フレンドリーな接客であること 個々の顧客の要望を根気よく受け止め、 特別な要望にも応じようとすること ワインについて要を得た、簡潔でわかりやす い表現で説明できること ワインを表現する際、意味をなさない言葉 (「すばらしいワイン」「はっきりいって すごい」「どんな好みにもマッチする」 など)を使用せず、的確な表現(「酸味が 利いた」「タンニンが多い」「フレッシュ」 「フルーティ」など)を使用すること 顧客の予算を考慮に入れること テイスティング、テイスティングイヴェン ト、ワインセミナーのオファーすること クレームに快く対応すること 追加で他の商品の購入を勧めてみること まとまった数の購入に対し割引を行うこと 宅配サービスを顧客の要望に添った商品 構成で安価に提供すること。顧客が要望する ワインがない場合は、同僚に確認すること。 短期的には難しくとも、顧客に対しこのよう に対応することには効果があり、長期的 には、忠実な顧客を得ることになる。
ドイツ・ワインインスティトゥートは、食品小売 業者および専門店を対象に、ドイツのワイン産 地のクヴァリテーツワインの品揃えに優れ、優 秀で専門的なアドヴァイスを提供している店舗 に「DWI優秀ワイン販売部門賞」ないし「DWI 専門店賞」を授与しています。これらの賞は、 商品構成が秀でており、良いサービスが期待で きる店舗であることを顧客に示しています。
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ワインの取扱い
ワインを正確に表現する
ワインを正確に表現する ワインの消費における世界的トレンドは「より 少なく、より良いものを味わう(drinking less but better)」方向に向っています。アンチ・ア ルコール・キャンペーンのような法的環境、ド ライバーのアルコール限度量に関する議論、フ ィットネスブームや健康ブームなどに押されて、 ワインの消費量は減少傾向にあります。そのた め、人々は、良いもの、あるいは高価なものを 求めるようになっています。つまり「楽しむこ と」と「何かを体験すること」が最も重要にな っているのです。ワインを味わうということは、 単なる消費ではなく、体験なのです。ここでい う体験とは、ワイン、産地、あるいは特定の醸 造家についての専門的な知識を得ることも含み ます。消費者のワインの知識は、過去数年、著 しく増えています。そして、販売スタッフやサー ビススタッフに対する要求は高くなっています。 「このワインはどんな味ですか?」という質問に 対し「素晴しいです」「すごいです」「きっと お気に召しますよ」などのコメント以上のこと が言えなければならないのです。一方で、あま りにも詳細にわたりワインの特徴を解説するこ とは、顧客に歓迎されません。ワインについて 意味をなす優れた表現は、以下に挙げる特徴が 伝達できれば充分です。それは、色、香り、ア ロマ、味わい、ボディ、ヴィンテージ、熟成に 関するものです。アロマと味わいについての表 現が、人にとってなじみのある感覚に基づくも のであれば有利となります。
シュペートブルグンダーのフルーツ系のアロマ
熟した桃のような香り みずみずしい梨のような味わい クリーミーな舌触り 熟したニワトコの実のようなアロマ
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ワインの取扱い
ワインを正確に表現する
ワインをポジティヴに表現する 色 白ワイン グリーン系イエロー、明るい黄色、藁色、 ゴールドイエロー、蜂蜜色、琥珀色 ロゼとヴァイスヘルプスト
香り ひかえめな香り、 上品な香り、 微細なブーケ、 エレガントなブーケ、 香り高い、
味わい 甘み 極辛口、辛口、中辛口、甘口、 心地よい甘み、強調された甘み 酸味
イエロー系レッド、レッドゴールド、
花のような香り、
マイルド、繊細な酸味、強調された酸味、
サーモンレッド、非常に明るい赤色
豊かなブーケ、
弾ける酸味、活き活きした酸味
繊細なスパイス香、 赤ワイン
スパイシー、
タンニン
煉瓦色、ルビーレッド、ざくろ色、
フルーティ、
タンニンが柔らか、ソフト、まるい、
黒っぽい赤色、ブラウン系レッド、 バイオレット系レッド
アロマティック、 アロマ豊か
ビロードのようなタンニン、 タンニンが強調された、渋い ボディ ライト、スマート、ボリューム豊か、 フルボディ、エキス分が多い ヴィンテージと熟成 若い、若々しい、フレッシュ、熟成した、 頂点に達した、充分に熟成した、 熟成した、熟成香がある
完璧に運営されているレストランであっても、 ボトルの中味がエチケットの表示に反していた り、開栓後のワインが飲み頃を過ぎていたり、 「コルク臭」が感じられる場合もあります。顧客 のテーブルに、こういったワインをサービスし てはなりません。
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ワインの取扱い
ワインに合わせる料理
ワインに合わせる料理
多彩な味覚体験
ワインは単独で味わっても楽しいものですが、 食事と合わせることで、その美味しさがより引 き立ちます。もちろんその逆のケースもありま す。どのワインにどんな食事が調和するかを発 見するためには、そのテーマを少し追求してみ ることが必要です。ワインと食事には無限の組 み合わせが存在するため、長年にわたり経験を 積みながら、本格的に学習することが可能です。 昔から「濃い色の肉には赤ワインを、明るい色 の肉には白ワインを」と言われてきましたが、 これは時代遅れのルールです。現代的でクリエ イティブな調理法、軽快で、イマジネーション に溢れ、ナチュラルな調味料が使われる料理は、 全く新しい組み合わせを可能にし、特に白ワイ ンに新しい活躍の場が生まれています。ハーモ ニーは、ワインと食事に特別な共通点がある場 合に生まれます。つまり、原料や素材、調理法 がワインのふくよかさや重厚さ、香りや味わい と強さのレベルにおいて似ている場合にハーモ ニーが生まれます。その際、以下の3つのポイン トを考慮することが必要です。
ワインと食事が食卓の上で、同格のパート ナーとなっていること ワインは食事の味を強調するものである こと。ほんの少しであれば食事を圧倒して もかまいませんが、ワインが食事よりも 強烈であってはなりません。 ワインのサービスの順序は(食事同様)、 アロマ、味わい、充実度、ボディにおいて、 徐々により強調されたものを出すよう配慮 すること
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ワインの取扱い
ワインに合わせる料理
ワインと食事のハーモニー アルコールは甘さの印象をより力強くし、スパイ スの風味を強め、消化を助ける働きをします。ア ルコール度数の低いワインは、酸味が強く感じ られます。アルコール度数の高い辛口ワインは、 アルコール度数の低い辛口ワインより、マイル ドな味わいがします。ワイン自体や、ロースト、 グリル、煮込み料理に感じられる苦み成分は、 甘みや程よい酸味とうまく調和します。苦み成 分はゆっくりと知覚され、その味わいは長時間 維持されるので、タンニンが多く、アルコール 度数の高いワインと相性が良いのです。脂肪分 が多い料理は、酸味、タンニン、アルコール分 がいずれも充分にあるワインと合います。この 3つのワインの成分は、食欲を増進させ、消化を 助けてくれます。 スパイスの利いた食事(例えば胡椒、唐辛子、 カレー、タバスコなどを利かせたもの)は、ア ルコール度数の高いワインと合わせると、より スパイスが強調されます。アルコール度数の高 いワインで、酸味も強いものには、充分注意し なければなりません。 ワイン中の炭酸は(特にゼクトにおいて)甘さの感 覚を部分的に覆い隠します。このようなワイン(ス パークリングワイン)を食事に合わせると、実際よ り甘く感じられます。そのため、スパークリングワイ ンは、トロッケンやマイルドよりも、エクストラ・ト ロッケン、エクストラ・ブリュットのほうが食事に合 います。 (デザートは例外です) 塩は、ワインと食事のアロマ成分と苦み成分を より強く感じさせます。 酸味は甘みを引き立てます。(例えば苺にレモ ン汁をかけたものなど)また、酸味は苦みを覆 い隠してくれます。酸味の強いワインは、酸味 の多い食事との調和が難しく、胸焼けの原因に なります。一方、脂肪分の多い食事は、酸味の 豊かなワインと合わせることで、消化が助けら れます。
134
甘みはワインのアロマ成分をより強く感じさせ、 苦み、酸味の印象を弱めます。そのため、辛 口に仕立てたワインは食事(塩分と糖分が含ま れている)と合わせることで、よりマイルドで、 調和が感じられるようになります。 食事に理想的なワインを選択するには、上記に 加え、時間帯、季節、気温、ワインを飲む理 由(パーティか普段の食事か)、集まる人(年 齢、ワインへの関心度)、予算、メニューの構 成などを考慮します。ワインと食事はできるだ け、次の図に示した順序でサービスします。 ワインと食事は分析的考察により、ベーシック なカテゴリーに分類することが可能です。以下 は、アロマ、味わい、スパイシーさによって分 類したものです。 A = ニュートラルで、上品な味わいのワインと食事 B = アロマティックで、 香ばしくスパイシーな ワインと食事 I = 軽快なワインと食事 II = 力強く、ふくよかなワインと食事 それぞれのワインが、どのカテゴリーに分類さ れるかは、例えば以下のような製品特徴によっ て決まります。
品種 産地 品質レベル 味わい ヴィンテージ 食事がどのグループに分類されるかは、調理法 によって決まります。どの食材も、蒸す、焼く、 煮るなど、異なる調理法にすると、異なる味わ いの印象が生まれます。料理に添えるソースも、 生クリームベースのソース、肉汁ベースの焦げ た風味のグレイビーソース、スパイスやハーブ の利いたソースなど多様で、副菜を変えること でも、メインの魚や肉に様々なバリエーションが 生まれます。コースのそれぞれの料理に、異な
ワインの取扱い
ワインと食事のハーモニーは 感知できる味覚の要素に よって決まります。
アルコール
炭酸
苦み成分
塩分
脂肪分
酸味
スパイス
甘み
ワインのサービス順序
食事のサービス順序
上品なものからスパイシーなものへ
軽快なものから重厚なものへ 軽い塩味のものからマイルドで 甘めのものへ
ワインに合わせる料理
上品なものからスパイシーなものへ
軽快なものから重厚なものへ
辛口から甘口へ
白ワインから赤ワインへ 低温でサービスするワインからそれより 高い温度でサービスするワインへ
図式 I 軽快
A 上品
B スパイシー
II 重厚
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ワインの取扱い
ワインに合わせる料理
るワインを探すことは、非常に魅力的な課題で す。軽い食事には、主体となる味わいの印象に 合わせてワインを選びます。 ワインと料理の基本的なキャラクター(軽快な ものから重厚なものまで、上品なものからスパ イシーなものまで)が似ているほど、両者の調
和をとることはたやすくなります。ハーモニー とは協調と補完です。図式化してみることも役 に立ちます。ワインと食事が、図式内のどの位 置を占めるかを確認できるからです。位置がほ ぼ一致していれば、理想的な組み合わせである と言えます。
ワインの分類例 重さ/アロマ
I 軽快
II 重厚
A 上品
B スパイシー
クヴァリテーツワイン / カビネットワイン リースリング ジルヴァーナー ヴァイスブルグンダー
クヴァリテーツワイン / カビネットワイン ミュラー・トゥルガウ バッフス ショイレーベ ゲヴュルツトラミーナ
シュペートレーゼ リースリング ジルヴァーナー ヴァイスブルグンダー
シュペートレーゼ グラウブルグンダー シュペートブルグンダー ドルンフェルダー レンベルガー
料理の分類例
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I 軽快
ポーチド・フィッシュ 家禽類 葉野菜と ヴィネグレットソース
アジアン料理 野鳥肉 煮野菜 パスタと アロマティックな ソース
II 重厚
脂肪分の多い淡水魚 貝類、ロブスター アスパラガスの オランデーズソース
鵞鳥、鴨、野生肉 牛肉、ラム肉のグリル 濃厚なチーズ (青カビチーズ)
ワインの取扱い
水とワイン
水とワイン 水は独自の味わいがほとんどないため、常にワ インのお供として好まれて来ました。とはいえ、 どの水も同じ味ではありません。わずかながら もニュアンスの違いがあるため、誰もが購入時 に、特定のブランドの水を選択します。ミネラ ルウオーターはワインの味わいに影響を及ぼし ます。「間違った」水は、それまで楽しんでい たワインの味わいに影響を及ぼします。大切な のはミネラル分と微量元素がワインに理想的な 形で調和していることです。ワインは単にワイ ンでなく、水も単に水ではないのです。 炭酸水は、グートエーデル、ジルヴァーナー、 グラウブルグンダーのほか、残糖のあるワイン など、酸味の柔らかなワインに理想的です。炭 酸水は舌をリフレッシュし、ワインの甘みをひ きたてます。 弱炭酸水は、辛口ワインや酸味が強調された白 ワインにふさわしい水です。炭酸が多すぎると、 ワインの酸味がますます強調されてしまうから です。 力強い、タンニンの強い赤ワインには、タンニン を中和してくれる炭酸なしのミネラルウオーター が一番です。重厚なバリック仕立ての白ワインも、 ガスなしの水のほうが適しています。
ワインの脇役
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ワインの取扱い
正しい管理
正しい管理 ワインビジネスにおける売上増の要因には、ワイ ンの正しい管理法も含まれています。正しい管 理ができてこそ、固定客を満足させることがで き、彼らの口コミが、最高の広告手段となるの です。 ボトルワインの保存 ボトルワインを長期保存する際には、充分な亜 硫酸塩が添加されていること、無菌状態でボト リングされていること、そして適切なワインク ロージャーが使われていることが必要です。 長期保存が可能かどうかは、これらの「技術的」 項目のほか、醸造法、生産地、ヴィンテージ、 ぶどう品種、収穫方法ならびに品質にも左右さ れます。 ワインの成分、特にアルコール、酸、残糖、タ ンニンもワインの保存能力に影響があります。
ワインボトルを寝かせて保存
一般的なルールは以下の通り 軽めのボディのシンプルなワイン(ラント ワイン、クヴァリテーツワイン、一部の カビネット)は比較的熟成が早く、あまり 長期保存できない 高品質のワイン(シュペートレーゼ以上の プレディカーツワイン、エアステス・ ゲヴェックス、グローセス・ゲヴェックス) は熟成もゆっくりで、長期保存ができる 理想的な保存条件 長期保存する場合はボトルを寝かせる (短期保存の場合はボトルを立てておくと、 ワインがコルクと接触しないため、 コルク臭のリスクを減らせる) 温度差が激しくない部屋で保管する(でき れば温度が一定の場所が良い。8〜12度が 理想的で、15度を越えないほうが良い)
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ワインの取扱い
湿度は約70%(コルクの乾燥とカビの発生 を避けるため) 光の影響(特に太陽光と蛍光灯)、振動を 避けること 清潔さを保つこと 換気を良くすること 玉ねぎ、塗料、ガソリン、燃料油など「匂 いがたまる場所」の近くに保管しないこと
最適な保存条件を備えた空間としてのワインセ ラーは、今日では珍しくなってしまいました。 そのため保存には、様々なメーカーが発売して いるワインセラーやワイン用冷蔵庫が向いてい ます。業務用冷蔵庫は短期用で、一時的な保存 に向いています。 サービス時の温度 ワインを理想的な状態で楽しむには、適切なサー ビス温度が決定的な意味を持ちます。
正しい管理
理想的なサービス温度 ワインの種類 ゼクト/スパークリングワイン 白ワイン 若く、軽快なもの 熟成した、重厚なもの ロゼ、ヴァイスヘルプスト 赤ワイン 若く、軽快なもの 重厚なもの 重厚でタンニンが非常に 強調されたもの
温度 8 – 10° C
9 – 11° C 11 – 13° C 9 – 13° C
14 – 16° C 16 – 18° C 18 – 20° C
あまり温度が高すぎると、フルーティさ、酸味、 タンニンへの感覚があいまいになり、官能的感 覚に悪影響が出ます。白ワインを高めの温度で サービスすると、平らで締まりのない味わいに なります。スパークリングワインの場合は、炭 酸がアグレッシブに感じられます。しかし、低 めの温度でサービスすると、フルーティさ、酸 味、タンニンが鋭敏に感じられます。一方、タ ンニンの多い赤ワインを低温でサービスすると、 タンニンの印象から得られる魅力ある味わいが 失われてしまいます。 シャンブリーレン(室温にする): あるワイン を比較的長時間室温(シャンブル=部屋)で放 置することをこう言います。しかし、この表現 は、20度以上ある、今日の通常の室温を意味し ているのではなく、18〜20度を意味しています。
フラッピーレン: フランス語のフラッペ(氷結直前 程度に冷却)から派生した表現で、スパークリング ワインやワインを急速冷却することを言います。ゼ クトクーラーを小さめのアイスキューブで満たし、水 を注ぎ、1つかみの塩を振り入れます。こうする
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ワインの取扱い
正しい管理
と氷が溶け、気化熱冷却されます。ここでボト ルをすばやく手で回すと急冷します。この方法 は効果的なのですが、アロマが氷結してしまう ため、ワインに優しい方法ではありません。 空気との接触、デカンティーレン(デカンター ジュ)、カラフィーレン(カラファージュ) 軽快でフレッシュな白ワイン、骨格がほっそり して軽い赤ワインは、開栓後、特有の個性を引 き出すために、空気と接触させる必要はありま せん。若く力強い赤ワイン、あるいは熟成した 力強い赤ワインで、酸が多く、高アルコールで、 タンニンの強いものは、長時間にわたる空気接 触が必要です。この場合、サービスのしばらく 前に開栓し、必要な場合はカラフェに移します。 (カラフィーレン)白ワインの場合は、空気と接 触させた途端、アロマが開いてきます。古いヴ ィンテージの、明らかに熟成香のあるワインは なるべく空気と接触しないようサービスします。 ゼクトとスパークリングワインも、空気接触さ せる必要はありません。しかし、開栓後、泡が 落ち着くまで、ボトルをしばらく置いておくこ とをお勧めします。ボトルの底にタンニンや色 素(デポー)が沈殿している、古いヴィンテー ジの熟成した赤ワインや、酒石酸が沈殿してい る白ワインはサービスする前に、デカンタージュ (カラフェかデカンタに移し替えること)します。
デカンタ用のカラフェ
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ワインの取扱い
適したグラス ワインを正しくサービスするには、ワインにふ さわしいグラスを選ぶ必要があります。適した グラスの選択には、多くの重要な基準がありま す。何より注意すべきことは、ワインの色、ア
適したグラス
ロマ、味覚がそのグラス内で、充分に真価を発 揮できるかどうかという点です。どのグラスをど のワインに合わせるかは、ここ数年ホットなテーマ になっており、現在、業界では、多くの特別な製 品群が登場しています。ガラス用品メーカーも 競って、優れた機能性とデザイン性を兼ね備え た様々なモデルを製品化しています。
適したグラスを選ぶために
最も良いのは、無色透明のグラスです。 ワインの色、明るさ、粘性を評価できる のは、このようなグラスだけです。
肉厚のグラスはワインを味わう楽しみを 損ないます。
グラスに注ぐワインの量は、グラスの半分 以下になるようにします。
ステムは手が器の部分に触れないくらいの 長さが必要です。手が器に触れてワインが 温まらないようにするためです。
白ワインのグラスは比較的小振りのグラス にし、ワインがすぐに温まったり、香りが ただちに逃げてしまわないようにします。
若い赤ワインは、タンニンの量によって、 熟成した赤ワインよりも大振りのグラスを 必要とします。より大きなグラスに注ぐと、 ワインが酸素と接触しやすくなり、ワイン をなめらかにします。
高品質の年代物のワインは、小振りのグラ スでサービスすることで、急速な酸化を防 ぐことができます。
アロマ成分がサイドに逃げず、凝縮された ままで味わえるよう、器の部分が口の部分 に向って閉じるように伸びて行く形のグラ スをお勧めします。
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用語集
アイスワイン(アイス プレディカーツワインの品質レベルの1つ。氷結したぶどうから造られる。 ヴァイン): アウスレーゼ :
プレディカーツワインの品質レベルの1つ。完熟した健康なぶどうから造ら れるワイン。
アグラフェ :
スパークリングワインのコルクを巻いてボトルネックに固定する、小さな カゴ状に編まれた針金(フランス語:ミュセレ)。ボトル内の比較的大きな 圧力でコルクがボトルネックから飛び出るのを防ぐ。
アセトアルデヒド (エタナール):
醗酵の際に得られる副産物で、アルコール(エタノール)の前段階物質。
圧搾(ケルテルン/
マイシェに圧力を加え、ぶどう果汁を得ること。
プレッセン):
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亜硫酸塩 (ズルフィーテ):
亜硫酸塩。「亜硫酸塩を含む(Enthält Sulfite)」あるいは「二酸化硫黄を 含む(Enthält Schwefeldioxid)」と表示される。エティケットに表示義務 がある。
アルコール醗酵 :
モスト内で、糖分が自然のワイン酵母と野生酵母、あるいは純粋培養酵母の 働きによってエタノールと二酸化炭素に分解されるプロセス。
アロマ :
ワインの検出可能な成分で、揮発性があり、香りや味を持つもの。アロマの 由来によって第1アロマ(ぶどうにあるアロマ)、第2アロマ(ワインの醸造 過程と醗酵によってあらわれてくるアロマ)、第3アロマ(熟成アロマとも 言う。樽や瓶で保管する際にあらわれてくるアロマ)がある。
アンペログラフィー :
ぶどう品種学、つまりぶどう品種を分類区別し、記述する学問。
ヴァイスヘルプスト :
ドイツだけで認可されているロゼワインのカテゴリー。クヴァリテーツ ワインのランクで、1品種のぶどうから生産する。
DER FEINE UNTERSCHIED DER FEINE KLIMA UNTERSCHIED UND WITTERUNG BODEN 用語集
ヴィノ・ロック :
ワインボトルの栓のひとつ。ガラスに合成樹脂のシール材がついたもので、 さらにアルミニウムキャップを被せる。
エキス :
›› 総エキス
エクスレ :
›› モストの比重
大型容器醗酵法、
ゼクトの製法で、二次醗酵を大型の圧力タンク内で行う方法。
タンク醗酵法 : 澱引き(アップ シュティッヒ):
醗酵終了後、ワインから酵母の澱を取り除く作業。(清澄後、ワインから澱 を取り去ることも澱引きと言う)
カビネット :
プレディカーツワインの最下位ランク。熟したぶどうから造られるアルコー ル度数の低いワイン。
カラフィーレン :
ワインをより多くの空気に接触させるため、カラフェに移し替えること。
貴腐(エーデル フォイレ):
ボトリティス・シネレア菌が熟したぶどうにつくことで生じるぶどうの腐 敗。これにより、果実が凝縮され、部分的に成分が変化する。
キュヴェ :
ぶどう、モスト、あるいはでき上がったワインのブレンドのこと。一定の味 わいを得るための複数のゼクト用ベースワインのブレンドもさす。
クヴァリテーツワイン (原産地呼称保護ワイン、g.U.)原産地、最低限必要なモストの比重など、 特定の条件を満たすワインの品質等級のカテゴリー。13生産地中の1生産地 (クヴァリテーツ ヴァイン): において、認可されているぶどう品種だけを使用し、定められた最低限必要 なモストの比重をクリアしなければならない。
クラシック :
クヴァリテーツワインの一名称。産地特有の品種から造られた、高品質の 辛口ワイン。
グリセリン :
アルコール醗酵時の副産物として、特に野生酵母によって生産される、三価 アルコール。
143
用語集
クローン :
種子や交配ではなく、1本のぶどうの木から派生する後継世代。
ゲアプシュトッフ :
タンニンに代表される、ワインに苦み、渋みをもたらす成分グループ。
結果枝(結果母枝):
剪定の際に残される、1年を経た枝。この枝からぶどうの実を結ぶ新梢が伸び る。その他の1年を経た枝は全て除去される。
公認検査番号(アムト ワイン検査所で検査に合格したワインに与えられる、クヴァリテーツワイン リッヒェ・プリューフ に必要な番号。エティケットに表示義務がある。 ヌマー):
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交配 :
植物育種の概念のひとつ。事前に定義づけた性格を持つ新品種を得る目的で、2 つの品種をかけあわせること。
酵母 :
自然のワイン酵母、野生酵母としてぶどうの果皮などに存在している。醗酵 前のモスト、あるいはマイシェに純粋培養酵母を加えることもある。酵母の 介在で醗酵が起こり、糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する。
5点法 :
ドイツにおける、ワインに関する全ての公認検査で取り入れられている、公 認検査の採点法。考案したのは ›› DLG
コルク臭 :
不良コルク、あるいはカビによって起こるワインの異臭で、カビ臭い匂いが する。原因となる物質はトリクロロアニソール。
酸:
›› フルーツ酸
酸化 :
酸素の働きで引き起こされる、モストあるいはワインの化学変化。
残存エキス :
糖分と酸を除去した総エキス量。
残糖(レスト ツッカー):
自然に醗酵が終了した場合、あるいは意図的に醗酵を中断した後、アルコー ルに分解されずに残ったぶどう、あるいはモストの糖分。
仕立て :
›› ぶどうの仕立て
DER FEINE UNTERSCHIED DER FEINE KLIMA UNTERSCHIED UND WITTERUNG BODEN 用語集
実質アルコール度数 :
ワインに実際に含まれるアルコール度数。エティケットに表示義務がある。
シャトー元詰(シュ ロス・アップフュル ング):
「醸造所元詰(グーツ・アップフュルング)」の表示に要求される条件に加 え、重要文化財に指定されている城が醸造所の本拠地になっており、そこで 醸造とボトリングが行われ、使用されるぶどうが、その醸造所の所有畑のも のである場合に、この表記が認められる。
シャプタリザシオン :
›› 補糖
シャンブリーレン :
ワインを時間をかけて室温にすること。
秋季台帳(ヘルプスト ブーフ):
全ての醸造家が収穫期間中、1日に収穫したぶどうの量とその品質について 記入義務がある管理用ノート。
集合畑(総合畑):
グロースラーゲとも言う。複数の単一畑の集合体としての原産地単位。
熟成香(フィルネ):
長期にわたって瓶内熟成したワインにあらわれる熟成した香りのこと。
酒石酸 :
モスト、またはワイン中の最も本質的な酸。
酒石酸結晶 :
酒石酸のカリウム塩。醗酵中、醗酵後、またはボトル内で、低温時に析出さ れる。
シュタイルラーゲ :
勾配30%以上の急斜面のぶどう畑。
シュペートレーゼ :
プレディカーツワインの品質レベルのひとつ。本収穫の後に収穫される完熟 ぶどうから造られる。
純粋培養酵母 :
選別によって得られた乾燥酵母で、モストに接種するもの。自然に存在する 酵母をサポートし、スムースな醗酵を可能にする。
醸造(ヴィニフィ カツィオン):
ワインを醸造すること。
145
用語集
醸造学 :
ワインとワイン醸造に関する学問。
醸造所元詰(グーツ 生産者元詰の表示のひとつ。自社でぶどう栽培を行うほか、専門教育を受け アップフュルング): た醸造家が醸造責任者に就任しており、自社で税務会計報告を行わなければ ならない。
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除梗(アップベーレ ン/エントラッペン):
ぶどうの房から梗を取り除くこと。
除酸(エントゾイエル ング):
醸造過程において様々な方法で、モスト、あるいは新酒の酸の量を減らすこ と。一例として炭酸カルシウムの添加がある。
シラーワイン :
ヴュルテンベルク地方のロートリング。
ズースレゼルヴェ :
未醗酵のぶどうのモストで、圧搾直後に減菌保存される。後に完全醗酵後の ワインに甘みを加えるために使用される。
ステンレスキャップ (王冠):
ステンレススティールとポリエチレンのシール材で作られたワインボトル用 の栓。
生産者元詰 :
自社畑のぶどうからワインを醸造し、ボトリングしたことを示す。
清澄(シェーヌン グ):
モストとワインに清澄剤を投入して清澄、安定させる作業。濁り成分や苦み 成分を沈殿させるベントナイトの投入などがある。
赤道効果 :
地球上で太陽光が垂直に当たるのは赤道だけである。太陽の入射角は、赤道 の北、あるいは南では斜めになる。急斜面ではその角度が補整され、太陽光 は斜面に垂直に当たる。南向き急斜面は、強烈な太陽光が当たるため、気候 的条件は特に恵まれている。
ゼクト :
一次醗酵、あるいは二次醗酵により得られるワイン製品で、瓶内圧が最低 3,5バールあり、実質アルコール度数が10% vol.以上あるもの。
施肥 :
鉱物系の栄養分(リン酸、硝酸塩、カリウム、マグネシウム)あるいは腐植 土(牛糞、藁、樹皮)をぶどう畑の土壌に投入すること。
DER FEINE UNTERSCHIED DER FEINE KLIMA UNTERSCHIED UND WITTERUNG BODEN 用語集
ゼラチン :
ワイン中の主にタンニンの分別沈殿用の清澄剤として使われる。
潜在的アルコール :
ワインに含まれる未醗酵の残糖量。
全房圧搾 :
白ワインの醸造において、損傷のない全房を、除梗、破砕することなく圧搾 すること。
総アルコール度数 :
実際に含まれるアルコールとワイン中のアルコール・ポテンシャルの総計。
総エキス :
ワイン中の揮発性でない全ての成分。主に糖分、タンニン、不揮発酸、グリ セリン、ミネラルから成る。›› 糖分フリー・エキス ›› 残存エキス
草生栽培(ベグリュー ヌング):
緑肥、カバークロップとも言われる。ぶどう畑の畝と畝の間に種蒔きして育 てる草、あるいは自然に生える雑草。土壌の浸食を防ぐほか、土中の生命活 動を活発にし、腐植土を形成する。
大陸性気候 :
ドイツ東部の気候で、生育期間が短く、暑い夏、寒い冬が特徴。
単一畑 :
アインツェルラーゲとも言う。クヴァリテーツワインとプレディカーツ ワインだけに適用される最も小さな原産地の単位。
タンク醗酵法 :
›› 大型容器醗酵法
タンニン :
›› ゲアプシュトッフ
接ぎ木ぶどう :
通常、アメリカ品種の台木にヨーロッパ品種を接ぎ木して作る、フィロキセ ラに耐性のあるぶどう。
デカンタ(デカン ティーレン):
ボトル内のワインをカラフェかデカンタに移し、赤ワインの沈殿物や白ワイ ンの酒石酸を取り除くこと。
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用語集
摘心(ラウプシュ ニット):
7〜8月にかけて行われるぶどう畑での作業。緑の新梢をある一定の長さに カットすること。
デギュスタシオン ワインを試飲すること。 (デグスタツィオン): デゴルジュマン :
伝統的瓶内醗酵法で二次醗酵を終えたスパークリングワインの酵母を取り 除くこと。
デポー :
瓶熟成中に形成され、ボトルに溜まったタンニンや色素、酒石酸。
テロワール :
味わいから感じられるワインの起源やオリジナリティで、気候、土壌、造り 手といった要素を含む。
伝統的瓶内醗酵 :
ゼクトの製造方法。ベースワインをボトリングし、二次醗酵させる。
ドイツ・プレディカー ツワイン生産者協会 (VDP):
ドイツのワイン生産者団体の1つ。会員はドイツのワイン法よりも厳格な規 定に従ってワインを生産している。会員醸造所は定期的にチェックを受けて いる。
ドイツ農業協会 :
DLG。連邦ワインアワードを実施している。
動瓶(ルミアージュ/リ 伝統的瓶内醗酵によるゼクト製造の工程における技術。デゴルシュマンの前 ュッテルン): に、ゼクトボトルをピュピトルの穴に差し込み、2〜3週間かけて、平行ポジ ションから、ほぼ垂直のポジションまで、角度をつけながら左右に回転させ る。回転の度にボトルが揺すられ、ゼクト内の酵母の澱が、瓶口に落ちて行 く。澱はデゴルジュマンを行い取り除く。
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糖分フリー・エキス :
ワインの不揮発性の成分で、糖分以外のもの。
突然変異 :
ある生物、植物の遺伝物質の遺伝的変異。例えば、グラウブルグンダーは シュペートブルグンダーの突然変異であると推測されている。
用語集
トランスヴァジア法 :
ゼクトの製造工程における方法のひとつ。瓶内二次醗酵の後、ゼクトをタン クに一旦移す。
トレスター :
圧搾後の果皮や種子。トレスターとして蒸留したり、ぶどう畑の肥料に使う。
トロッケンベーレン アウスレーゼ :
干しぶどうのように乾燥した貴腐ぶどうから作られる、最高級ランクのプレ ディカーツワイン。
濁り成分(トリュープ シュトッフ):
ボトリング前のワイン中に残るモスト由来の固体成分。具体的には酵母、 果皮の残存物、種子、蛋白質、微生物など。
二酸化硫黄 :
酸化防止、微生物の繁殖防止、醗酵時の望ましくない副産物の凝結用の処理 剤。使用量は法規制によって上限が決められている。
濃縮モスト :
(RTK=Rektifiziertes Traubenmostkonzentrat) ぶどうのモストの濃縮で、蒸留、沈殿により、非糖物質を除去したもの。補 糖の際の添加が認められている。
バーディッシュ・ ロートゴルト:
バーデン地方のロートリングで、グラウブルグンダーとシュペートブルグン ダーのブレンドで造る。
パールワイン(ペルル ヴァイン):
(セッコとも言われる)通常、炭酸ガスを充填したスパークリングワイン。
畑(ラーゲ):
›› 単一畑(アインツェルラーゲ); ›› 集合畑(グロースラーゲ)
バリック:
フランスの伝統的な木樽で、容量は225リットル。今日ではオークの新樽も 使われるようになった。
ピーヴィー :
カビ菌耐性品種の略名。
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用語集
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非典型的熟成香 (UTA):
床ワックス、湿ったウール、防虫剤を思わせるワインの欠陥臭。
品質検査 :
公認検査番号を受理するための検査。独立した委員会が個々のクヴァリテー ツワインの官能検査を行う。(グラス内での品質検査)
品質等級 :
ワインの品質レベル。
ブーケ(ブケ):
ワイン中に存在する香り成分とアロマ成分で、嗅覚で感じられるものの 総体。
フェーダー ヴァイサー :
醗酵中のモストで、含有アルコール度数が1%vol.以上で、総アルコール度数 の5分の3以下のもの。
ぶどう栽培ゾーン :
EU法で定められたぶどう栽培ゾーン。同一ゾーン内では、同一の、あるいは 類似するワイン生産規定が有効である。
ぶどうの仕立て :
ぶどうの木の生育を誘導し、ぶどう畑の外観を設計する方法。
ぶどうの剪定 :
結果枝を1〜2本だけ残す、冬場の作業。
ぶどうの接ぎ木 :
接ぎ木の際には、フィロキセラに耐性のないヨーロッパ品種を、アメリカ品 種の台木に接ぐ。
フラッハラーゲ :
平坦であるか、ゆるやかな斜面のぶどう畑。
ブラン・デ・ ノワール :
赤ワイン品種のぶどうから生産する、白ワインのような色調をしているワイ ンの名称。
フルーツ酸 :
ワイン中の様々な酸を総合したもの(主に酒石酸とリンゴ酸)
用語集
プレディカーツワイン (プレディカーツ ヴァイン):
(原産地呼称保護ワイン、g.U.) 最低限必要なモストの比重をクリアし、補 糖を行わない、といった、特定の条件を満たすクヴァリテーツワインのカテ ゴリー。個々のプレディカート(肩書)にはカビネット、シュペートレーゼ、ア ウスレーゼ、ベーレンアウスレーゼ、アイスワイン、トロッケンベーレンア ウスレーゼがある。
ベースワイン(グリュ ントヴァイン):
ゼクトの原料となるワイン。
ベクサー:
ワインの品質不良の1つ。不快な匂いを放つ硫黄を含む化合物に起因する。
ヘクタール:
平面積の単位。1ヘクタール=100アール=10.000平方メートル
ヘクタール当りの最大 収量規制:
1989年以来、ワイン生産地で規定されている収量制限。1ヘクタール当りの最 大収量の限度が決められている。
ベライヒ:
指定生産地の一部を成す原産地単位で、複数の畑の集合体。この呼称はクヴ ァリテーツワインとプレディカーツワインだけに使用が認められている。
ベントナイト:
モストやワインから蛋白質を除去し、濁りを防ぐための清澄剤として使われ る膨潤性粘土状ミネラル。
ボックスボイテル:
フランケン地方の典型的な丸い形のボトル。バーデン・バーデンの4つの自治 体(ノイヴァイアー、シュタインバッハ、ウムヴェーグ、ファルンハルト) とバーデン地方のタウバーフランケンというベライヒでも使用されている。
ボディ:
ワインの成分の総合体。主にアルコール、残糖、ミネラル分で構成される。
補糖(フランス語 : シ ャプタリザシオン):
醗酵終了前に糖分を加え、自然のアルコール量(›› モストの比重)を増やす こと。補糖はドイチャーワイン、ラントワイン、クヴァリテーツワインに認 められているが、プレディカーツワインには認められていない。
151
用語集
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ボトリティス・シネ レア:
カビの一種。灰色カビ病と貴腐を引き起こす菌。 ›› 貴腐
ボトリング(アップ フュルング):
でき上がったワインを保存のため、ボトル、その他の容器に詰めること。
ボトリング業者、ボ トラー(アップフュ ラー):
エティケットに表示される。ワインをボトルに詰めた業者のこと。(自社ワ イン、買い取りぶどうと買い取りモストから造られたワイン、買い取りワイ ンのケースがある)
マイシェ:
破砕したり、潰したりしたぶどう。
マイシェの加熱:
赤ワインの醸造技術。 マイシェを加熱することで、果皮に含まれる赤い色 素が抽出される。
マイシェ醗酵:
伝統的な赤ワイン醸造法。除梗の後、マイシェの状態で醗酵させるため、生 じたアルコールが果皮の色素を溶出する。
間引き(アウスデュ ネン):
果実が多く実りすぎた場合に、ぶどうの品質を上げるため、6月の開花後か ら8月にかけて、一部の果実を除去すること。
マロラクティック 醗酵(BSA/ビオロ ギッシャー・ゾイレ アップバウ):
乳酸菌の働きで、リンゴ酸が乳酸と二酸化炭素に分解される現象。
メキシコ湾流気候:
ドイツ南西部に支配的な、温暖湿潤な気候。夏は多雨で湿度が高く、 冬は温暖。
モスト:
果実を圧搾して得る果汁。
用語集
モストコンセントレー ション :
脱水によりアルコール度数を上げる工程。
モストの比重 :
ぶどう果汁の比重。モストの重量をその体積に応じてエクスレという単位で 表示する。モストの比重から、得られるアルコール度数が推定できる。
リースリング・ホッホ
リースリングから造られたクヴァリテーツワインの追加表示。ホッホゲヴェ ックスはリースリングだけを原料とし、より厳しい品質条件を満たさなけれ ばならない。
ゲヴェックス :
リキュール :
ワインに蔗糖を溶かした溶液。ゼクトに甘さを加えるために添加する。 フェアザントドサージュ(ドサージュ)と言う。
リンゴ酸 :
ぶどうに含まれる2つの重要なフルーツ酸のうちの1つ。マロラクティック醗 酵により、分解されうる。
レフラクトメーター :
モストの糖度を光の屈折で示す光学機器。単位はエクスレ。
ロートリング :
4種類のワインのうちの1つ。 赤ワイン用ぶどうと白ワイン用ぶどう、 あるいはマイシェをブレンドしてから圧搾する。シラーワイン、バーディッ シュ・ロートゴルトなどがある。
濾過 :
モストをフィルターを使用して清澄すること。
ロゼ :
4種類のワインのうちの1つ。赤ワイン用ぶどうから醸造される。淡い赤から 明るい赤に至る色調のモストを醗酵させる。ロゼの1種にヴァイスヘルプス トがある。
訳者註 ドイツ語のWein(ヴァイン)は、本書ではワインと表記し、地名の場合のみヴァインとしました。ドイツ語のWinzer(ヴィンツァー)は 造り手と訳しています。また、Bereich(ベライヒ)は、41のベライヒをさす場合にのみ、そのように表記しました。
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推薦図書
DER BROCKHAUS WEIN ブロックハウス・ ワイン編
DEUTSCHER WEINATLAS ドイツ・ワイン アトラス
WEINRECHT IN DEUTSCHLAND
ワインの知識が専門用語や国際的用語も 含め、500ページにわたり解りやすく解説されて います。 F.A. Brockhaus AG, Mannheim, ISBN 978-3765302824
ドイツワインの生産地方、ベライヒ、畑の全てを網羅。 ワイン造り、品種、品質等級、ワインの種類の解 説のほか、統計やワイン関連サイトのリンク情報 も掲載されています。 Deutsches Weininstitut GmbH, Mainz ISBN 9-783980-893022
EU 法とドイツ連邦法の双方から、重要な最新の 法規定のまとめたもの。(2009 年 8 月現在) イナ・フォーグト
ドイツのワイン法
WEINRECHTKOMMENTAR AUF CD-ROM
Ina Vogt, Saxonia-Verlag, Dresden, ISBN 978-3940904645
「法廷で役立つ」徹底解説。法律文書全文検索と 充実したレファレンスシステム。 ハンス=ヨルク・コッホ博士
ワイン法解説・CD-ROM バージョン
TASCHENBUCH DER REBSORTEN
Prof. Dr. Hans-Jörg Koch, dfv, Frankfurt a. Main
良く知られたぶどう品種のほとんどを網羅した 包括的な解説書。 ヴァルター・ヒレブラント、
品種ポケットブック
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ハインツ・ロット、フランツ・ファフ
Walter Hillebrand/ Heinz Lott/ Franz Pfaff Fachverlag Dr. Fraund GmbH, Mainz ISBN 978-3921156803
DER FEINE UNTERSCHIED DER FEINE KLIMA UNTERSCHIED UND WITTERUNG BODEN 推薦図書
300品種のぶどうとそのワインを解説。 アンブロージ、ヒル、マウル、リュール、 シュミット、シューマン
Ambrosi/Hill/Maul/Rühl/Schmid/Schumann Ulmer Verlag, Stuttgart ISBN 978-3800159574
ぶどう栽培入門用の教科書兼ワークブック。知識 を深めるための参考書を兼ねる。ぶどう畑をめぐ ってのデータと実態が網羅されている。 エドガー・ミュラー、ハンス=ペーター・リップス、 オズワルト・ヴァルグ
Edgar Müller/ Hans-Peter Lipps/ Oswald Walg, Ulmer Verlag, Stuttgart, ISBN 978-3800112418
醸造入門のための教科書兼ワークブック。
FARBATLAS DER REBSORTEN ぶどう品種 カラーアトラス
DER WINZER BAND 1. WEINBAU 醸造家 第1巻 ぶどう栽培
ケンホルン、エドガー・フング
DER WINZER BAND 2. KELLERWIRTSCHAFT
Friedrich Meidinger/Dieter Blankenhorn/ Edgar Fung, Ulmer Verlag, Stuttgart ISBN 978-3800164110
醸造家 第2巻 醸造
フリードリヒ・マイディンガー、ディーター・ブラン
ワイン醸造、ワインに施す処置、ワインの検査 (「醸造家 第2巻 醸造」を補完) ルードヴィヒ・ヤコプ、ヨッヘン・ハマチェク、
DER WEIN ワイン
ゲアト・ショルテン
Ludwig Jakob/Jochen Hamatschek/Gerd Scholten Ulmer Verlag, Stuttgart, ISBN 978-3800157174
学術的専門書。 ヘルムート=ハンス・ディットリヒ、
MIKROBIOLOGIE DES WEINES
マンフレット・グロスマン
Helmut Hans Dittrich/ Manfred Grossmann Ulmer Verlag, Stuttgart ISBN 978-3800169894
ワインの微生物学
155
推薦図書
TERROIR: WETTER, KLIMA UND BODEN IM WEINBAU テロワール: ぶどう栽培における 天候、気候、土壌
WEINSENSORIK ワイン・ゼンゾーリック
WEIN IN DER GASTRONOMIE ガストロノミにおける ワイン
DAS WEINKOCHBUCH ワイン・クッキング ブック
KULINARISCHE WEINREISE ワインと美食の旅
156
テロワールの構成要素の原因と影響を 包括的に解説。 ディーター・ホップマン
Dieter Hoppmann Ulmer Verlag, Stuttgart ISBN 978-3800153176
学問的内容から実践まで。 エファ・デルンドルファー博士
Dr. Eva Derndorfer AV Buch ISBN 978-3704023483
ガストロノミ向けの実用参考書 ザビーネ・エルネスト=ハーン
Sabine Ernest-Hahn Matthes-Verlag, Stuttgart ISBN 978-3875150056
40のレシピとお勧めワイン Deutsches Weininstitut GmbH, Mainz ISBN 9-783980-893015
ドイツの13のワイン生産地域からお届けする、 レシピとおすすめワイン。 Deutsches Weininstitut GmbH, Mainz ISBN 978-3-9808-9304-6