Q2 HYBL ハイイールド債とバンクローンの見通し 「滑走路」の終わりに近づいている

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2020 年 5 月

ハイイールド債とバンクローンの見通し

「滑走路」の終わりに近づいている


Investment Professionals Scott Minerd Chairman of Investments and Global Chief Investment Officer Kevin H. Gundersen, CFA Senior Managing Director, Portfolio Manager

目次 要旨 .............................................................................................................. 1 本リポートのハイライト ................................................................................... 1 レバレッジクレジット・スコアボード ................................................................... 2 マクロ経済概況 .............................................................................................. 3

Thomas J. Hauser Senior Managing Director,

マーケットレビュー .......................................................................................... 5

Portfolio Manager Brian Smedley Senior Managing Director, Head of Macroeconomic and Investment Research Maria M. Giraldo, CFA Managing Director, Investment Research

過去との比較................................................................................................. 6 相対価値があるアセットを取りに行く ............................................................... 9


要旨 ハイイールド債およびバンクローン市場は、足元で進むリセッション(景気後退)の悪 影響を織り込みつつある。スプレッドは 3 月に 2009 年以来の水準に拡大したが、 2008 年のピークまで拡大すれば、両セクターで損失がさらに膨らむ可能性がある。 大幅なダウンサイドが織り込まれる中、2020 年前半の生産活動は世界大恐慌の最 初の 2 年に観測された落ち込み以上に落ち込む可能性が高く、弊社は失業率が 20%超に上昇すると予想する。市場は速やかに回復すると見込んでいるが、最近の データから読み取る限り、経済の収縮は深刻であり、そこから回復するには何年もか かり、状況は市場が織り込んでいる以上に悪化するだろう。 本レポートでは過去の経験を参考にするとともに、クレジットファンダメンタルズの現 状も考慮しながら、投機的格付セクターのデフォルト見通しについて考察する。弊社 の経済見通しとトップダウン方式によるクレジットの見通しを総合して考えると、本サ イクルにおける米国の投機的格付セクターのデフォルト率は 15%に達し、1990 年、 2002 年および 2009 年のリセッション時のピークを上回ると予想される。弊社は、こ の見通しを踏まえ、矢継ぎ早の経済対策プログラムによって市場が一息ついたこの 機会を利用して、脆弱なクレジットを売り、生き残りそうなクレジットを買う方針である。 数々のリスクが依然として前途に待ち受けているが、足元の市場は質の高い投資先 を探す機会を提供しており、ここ数年よりも良いエントリーポイントが存在するため、 弊社はそうした相対価値があるアセットを取りに行くところである。

本レポートのハイライト ▪

投機的格付の発行体は、業況が悪化に向かっており、現在のレバレッジレシオ は2008年より高い。

ハイイールド債の平均レバレッジレシオは、2008年第3四半期と第4四半期に3.5 倍であったが、2019年第4四半期時点では4.7倍である。

バンクローンの平均レバレッジレシオは、2008年第4四半期に5.0倍であったが、 2019年第4四半期時点では5.4倍である。

支払利息・税金・減価償却・償却控除前利益(EBITDA)でみると、ここ数四半期 の利益の伸びは弱い。2019年のEBITDAの前年比伸び率は、ハイイールド債で 平均1.3%、バンクローンで平均2.0%にすぎない。

生き残る企業を探すに際しては、流動性が何より重要である(liquidity is king)。 弊社はテクノロジー、景気に左右されない消費財、ヘルスケア、食品・飲料、一 部の飲食業に投資機会を見出している。しかし、ハイイールド債とバンクローン の両セクターについては、慎重な投資姿勢を維持する方針である。

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Leveraged Credit Scorecard As of 3.31.2020

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マクロ経済概況 インパクトに備える 「世界は 1930 年代以来最悪の

今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的まん延がすべての中心にあ

景気悪化に直面している。企業

る。本レポートの発行時点で、新型コロナウイルスは213カ国に広がり、感染者は480

のレバレッジ水準が高いため、

万人を超え、死亡者は30万人を上回った。これまでのところ、米国が世界の感染者数

キャッシュフローが滞れば、多く

の3分の1近く、死亡者数の29%を占めている。米国は、なるべく在宅勤務をするよう労

の企業が債務を返済できなくな

働者に命じ、国民にはソーシャルディスタンシングの実践を、そしてノン・エッセンシャ

るだろう。現在、われわれは大

ル・ビジネス(生活に必要不可欠でない業種・企業)には休業するよう命じてきた。経済

規模な債務のスーパー・サイク

予測の世界では、こうした一連のイベントが「底辺への競争」(race to the bottom)を引

ルの終盤にいる」 –スコット・マイナード グッゲンハイム インベストメンツチ ェアマン兼グローバル CIO

き起こし、米国の成長率予測がほぼ毎日下方修正されるようになった。 世界的なパンデミックの最中、石油輸出国機構(OPEC)プラスの協調崩壊が原油価格 のさらなる下落を招いた。3月5日、OPEC加盟国は日量150万バレルの減産に合意 し、提案された減産量の3分の2を加盟国に、残りをロシアなどのOPEC非加盟国に割 り当てた。しかし、この合意はロシアの同意を条件としており、ロシアは翌日に同提案を 拒絶した。さらに悪いことに、OPECの現行減産が4月1日に期限切れとなり、更新され なかった。その結果、値下げ合戦が始まり、サウジアラビアはロシアに報復するために 公式販売価格を引き下げ、増産した。ロシアも、米国のシェールオイル等の生産会社 から市場シェアを取り戻そうとして、増産した。 原油市場では、数カ月前には思いも寄らなかったシナリオが展開している。需要ショッ クがあまりに大きいため、OPECプラスが少なくとも日量1,000万バレルの減産を新た に確約し、他の産油国が相当量の生産を一時停止したにもかかわらず、原油市場では 2020年の第3四半期末か第4四半期まで深刻な供給過剰が続くだろう。原油価格は急 落し、一時的にマイナス圏に陥ったため、石油・ガスセクターのクレジットリスクの見直し が急いで行われた。

米国の原油在庫は、需給動向の改善にもかかわらず、記録的水準に達するだろう Millions of Barrels 原油在庫は 2020 年を通じて引き 続き増加し、記録的水準に達する と予測。米国と世界の余剰貯蔵能 力は第 2 四半期に使い尽くされる 可能性が高い。よって、原油価格 に下押し圧力がかかり、生産の一 時停止を余儀なくされるだろう。

Source: Guggenheim Investments, Bloomberg, IHS, EIA. Data as of 5.13.2020. *Base Case: U-shaped demand recovery, strong OPEC+ compliance and moderate RoW production cuts. **Optimistic Case: V-shaped demand recovery, strong OPEC+ compliance and sharp RoW production cuts.

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これらのイベントが次々と起き、市場は大きな打撃を受けた。2020 年 3 月には、投資 適格社債、ハイイールド債、バンクローンが過去 2 番目に悪いリターンを記録した。流 動性は極めて限定的で、投機的格付債の発行は激減した。多くの企業が慌てふためい てリボルバー(回転信用枠)や与信枠の未使用分を引き出した。 米連邦準備制度理事会(FRB)はすばやく介入した。米連邦公開市場委員会(FOMC) は第 1 四半期に 125 ベーシスポイント(bps)の利下げを実施し、一連の経済対策プロ グラムを可決した。その中でも、プライマリー・アンド・セカンダリー・マーケット・コーポレ ートクレジット・ファシリティは投資適格社債の発行体を主に対象とする融資プログラム であり、米財務省との協力により実施された。このプログラムが発表されてようやく、コ ーポレートクレジットのセルオフ(投げ売りによる急落)がいくらか収まった。

FRB の介入により、ハイイールド債のセルオフの勢いが止まった FOMC がプライマリー・アンド・セ カンダリー・マーケット・コーポレー トクレジット・ファシリティ・プログラ ムを発表してようやく、コーポレー トクレジットのセルオフがいくらか 収まった。

Source: Guggenheim Investments, Bloomberg. Data as of 5.15.2020.

アルファベットスープのような(アルファベットの略語ばかりの)金融プログラムで 新型コロナウイルスの影響軽減を図る一方で、財政政策も鋭意審議されたが、財 政政策で実施されたのは最終的に必要な金額のほんの一部にすぎない。3 月 26 日、消費者、州、中小企業、特定の業種を支援する目的で、2 兆ドル超の財 政出動法案が署名・成立した。これらのプログラムがウイルス封じ込め策による 経済への副次的影響を緩和するのに役立つことに疑いの余地はないが、現在直 面している経済的ショックの規模を考えると、2 兆ドルでも少なすぎる。加えて、目 下の問題――個人消費のほとんどを物理的・心理的に妨げている要因――を財 政政策で十分に解決できるとは到底思えない。財政・金融政策はそれぞれ役割 を果たし得るだろうが、経済見通しの最大の決定要因となるのは、結局のところ、 公衆衛生政策である。 米国経済は明らかに、1930 年代以来で最も深刻なリセッションにすでに入っている。 当初、新型コロナウイルスの感染者がアジアのみで確認されていた頃は、経済的打撃 は電子機器、自動車、機械、金属、アパレルなどの業種のサプライチェーンに限定され ると思われた。今や、国内外の需要が激減したことから、これら業種への影響は倍増 するだろう。封鎖、検疫、ソーシャルディスタンシングへの取り組みは旅行業、ホテル、 飲食店、小売業に打撃を与え、米国では活動が 100%減となった地域もある。生産活

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動の縮小にさらに拍車をかけるのは設備投資の急減だが、設備投資は利益の減少、 貿易戦争、政情不安を背景にすでに失速していた。新型コロナウイルスショックと原油 価格の崩壊は、設備投資をさらに落ち込ませることだろう。 市場は最悪のシナリオを織り込んでいない。S&P500 種株価指数銘柄の 2020 年の 1 株当たり利益(EPS)コンセンサスは依然として 125~130 ドルのレンジにあるが、弊社 のリサーチでは、S&P500 の EPS が 100 ドルを下回る可能性があるとしている。同様 に、一般的に、経済指標がどの程度悪化し得るかについて、歴史に照らして調整 (calibrate)を行うことはしない。非農業部門雇用者数の月次変動の予想値は何百万と いう単位の差異が生じるが、失業率の予想レンジは数%ポイント程度である。弊社の 現在の予想では、第 2 四半期の米国実質国内総生産(GDP)の前四半期比成長率は 年率換算で 40%低下する可能性があり、失業率は 20%を超える可能性が高い。その ほか、危機の深刻度はウイルスの封じ込めと治療および財政・金融政策対応の効果に よって決まるが、速やかに V 字回復するという予想はあまりに楽観的に思える。 デフォルト、倒産、リストラクチャリングによる恒久的なクレジット棄損がこの先待ち受け ている。どの企業が現状を乗り切れそうかという点については、決算シーズンにかなり 明確になるだろう。現在のところ、弊社は今後予想されるフルインパクト(本格的な影 響)に備えるために、深刻なストレスシナリオの分析を重点的に行っている。

マーケットレビュー 2020 年第 1 四半期に、ICE バンクオブアメリカ・メリルリンチ・ハイイールド・インデック スとクレディスイス・レバレッジドローン・インデックスはそれぞれ 14.4%と 15.7%下落 し、四半期のリターンとしては 2008 年第 4 四半期以来の悪い結果となった。ハイイー ルド債のスプレッドは 3 月末に一時、過去 6 週の最低水準から 3 倍に広がり、記録史 上最大の拡大となった。FRB のプライマリー・アンド・セカンダリー・コーポレート・クレジ ット・ファシリティの発表以降、クレジット市場は持ち直したが、スプレッドは 2019 年の 水準よりかなりワイドな水準にとどまっている。 最近のレポートでは、マクロ経済環境の悪化に際して、クレジットスプレッド水準がなぜ 持続しないのかについて何度か論じてきた。製造業データとクレジットリスクプレミアム との相関関係など、一部の基本的関係はすでに崩壊していた。弊社の公正価値評価 は、スプレッドが昨年少なくとも 315bps 拡大していてもおかしくなかったと示唆してい る。弊社は持続不能なラリーを追うのを控え、引き続き質の向上を図っていたが、現在 はより魅力的になった価格水準で買いを入れ始めている。 スプレッドで見ると、社債には現在割安感がある。ハイイールド債のスプレッドが現在 よりもワイドになっている時期は、1990 年代半ば以降の期間全体の 10%のみであ る。過去の経験上、これはスプレッドが現在の水準から縮小する可能性が高まってい ることを意味する。しかし、足元の環境においては、新型コロナウイルスによる経済封 鎖が企業利益に与える全体的な影響を見通せない中で、1 ドル当たり 80 セントで割 安感のある債券を買い、その債券がいずれデフォルトし、回収価値が低下するリスク が高いことも認識している。足元の市場混乱の中で価値を見出すにあたっては、クレ ジットの選択プロセスにおいて生き残れそうにないものを「除外すること」が極めて重 要である。

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スプレッドは 2020 年第 1 四半期に著しく拡大 ハイイールド債のスプレッドは、少 なくとも 1990 年代半ば以降、 10%拡大しているにすぎない。過 去の経験上、これはスプレッドが 現在の水準から縮小する可能性 が高まっていることを意味する。

Source: Guggenheim Investments, ICE Index Services, Credit Suisse, Bloomberg. Data as of 5.15.2020. Shaded areas represent periods of recession.

原油市場の動向や資本市場へのアクセスが限定的という状況から見て、弊社はエネ ルギーセクターで今後再びデフォルトの波が押し寄せると確信している。自動車、ゲー ミング(カジノ等)、レジャー、メディア、小売りなどの景気敏感セクターも今後デフォルト が増える可能性が高い。弊社の見るところ、「増えるか増えないか」ではなく、もっぱら 「いつ増えるか」が問題である。

過去との比較 歴史は概して、今後 12 カ月間にどのような展開になるのかについて、何らかの手掛か りを与えてくれる。ハイイールド債市場の過去の記録を調べてみると、(現在のパンデミ ックの特異性はさておき、)1999 年 5 月と 2008 年 12 月が現在に最も類似した比較対 象期間であることが分かる。これらの月においては、米国ハイイールド債の 12 カ月間 デフォルト率は 4%前後であり、上昇しつつあった。 ハイイールド債市場のデフォルト率が 1999 年 5 月に 4%に達するまでに、経済は 1998 年以来の成長が再び加速し始めていた。1998 年の FRB による利下げとテクノ ロジーおよびテレコムセクターにおけるバブルの出現は、米国経済がリセッションに陥 りやすい時期に消費者の純資産を膨らませることにつながった。ハイイールド債の発行 体の利益も 1999 年に伸びが再加速し、それが一部企業のデフォルトをさらに 1~2 年 先延ばしする一因となった。こうしたことから、1999 年 5 月~2000 年 5 月のハイイー ルド債のデフォルト率はわずか 6%であった。

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1990 年代末か金融危機時のようなデフォルトサイクルにこれから入るのか 過去 12 カ月間のハイイールド債のデフォルト率 ハイイールド債市場の過去の記録 を調べてみると、1999 年 5 月と 2008 年 12 月が現在に最も類似 した比較対象期間であることが分 かる。これらの月においては、米 国ハイイールド債の 12 カ月間デ フォルト率は 4%前後であり、上昇 しつつあった。

Source: Guggenheim Investments, S&P Global Ratings. Data as of 4.30.2020. Comparable periods of 5.31.1999 and 12.31.2008 were selected based on recent U.S. speculative-grade default rate and our outlook for defaults to increase in the next 12-24 months.

政府支援により、今回もまた、「滑走路」を多少引き延ばせる場合があるだろう。FRB と 財務省が借り手企業に対する支援を拡大したことで、資金が必要な時に市場から閉め 出されるといったデフォルトにつながる危険因子が一部取り除かれた。ハイイールド債 の発行は 3 月にわずか 42 億ドルに急減したが、4 月には 390 億ドルに回復して正常 化した。しかし、BB-格以上での発行が増えており、これは最も資金に窮している借り手 が「滑走路」の引き延ばしを受けられそうにないことを示している。

現在のハイイールド債のファンダメンタルズは、類似期間よりも脆弱に見える ハイイールド債発行体の EBITDA の前年比伸び率 新型コロナウイルス発生前後のク レジットファンダメンタルズの状況 もまた、デフォルト見通しの重要な 決定要因となる。2020 年に至るま でに、ハイイールド債とバンクロー ン発行体の利益の伸びはすでに 非常に弱いものとなっていた。 2019 年の EBITDA の前年比伸 び率の平均は、ハイイールド債が1.7%、バンクローンが 2.0%であ った。

Source: Guggenheim Investments, Bank of America Merrill Lynch Research. Data as of 12.31.2019. Comparable periods of 5.31.1999 and 12.31.2008 were selected based on recent U.S. speculative-grade default rate and our outlook for defaults to increase in the next 12-24 months.

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もう一つの比較対象期間である 2008 年 12 月を見ると、それに続く 12 カ月間に は、量的緩和やターム物 ABS 貸出制度(TALF)プログラムなど現在とよく似た形 で、金融市場に対する前例のない政策支援が実施された。その時までに、経済、 企業、消費者はすでに大きなダメージを負っていたため、リスク資産が 2020 年 3 月よりも低い水準から反騰したにもかかわらず、2009 年のハイイールド債市場の デフォルト率は 12%となった。弊社が見るところ、今回はこちらの結果になる可能 性が高い。FRB のプログラムはリスク資産相場をある程度押し上げるのに役立つ が、結局のところ、根本的なダメージを元通りに修復することはできないだろう。 新型コロナウイルス発生前後のクレジットファンダメンタルズ(信用の基本的状況) もまた、デフォルト見通しの重要な決定要因となる。2020 年に至るまでに、ハイイ ールド債とバンクローン発行体の利益の伸びはすでに非常に弱いものとなってい た。2019 年の EBITDA の前年度比伸び率の平均は、ハイイールド債が-1.7%、バ ンクローンが 2.0%であった。今後 12 カ月間の収入と利益の減少は 2009 年より 大きくなる可能性が高いと弊社はみている。このため、レバレッジレシオが描くクレ ジット状況の見通しはさらに暗いものとなるだろう。なぜなら、レバレッジレシオは 2008 年よりすでに高い水準にあるからだ。 ▪

BB 格社債のレバレッジレシオは 2008 年に平均 2.3 倍であった。これが 2019 年 第 4 四半期には 3.9 倍となり、過去 4 四半期の平均は 4.1 倍となっている。

B 格社債のレバレッジレシオは 2008 年に平均 4.4 倍であった。これが 2019 年第 4 四半期には 5.2 倍となり、過去 4 四半期の平均は 5.3 倍となっている。

バンクローンのレバレッジレシオは 2008 年に平均 4.7 倍であった。現在は 5.4 倍 であり、過去 4 四半期の平均は 5.1 倍となっている。

収入の急減により、これまで健全だったカバレッジレシオが悪化するだろう 類似期間におけるハイイールド債発行体の収入の前年度比伸び率 今後 12 カ月間の収入と利益の減 少は 2009 年より大きくなる可能 性が高いと弊社はみている。この ため、レバレッジレシオが描くクレ ジットの見通しはさらに暗いものと なるだろう。なぜなら、レバレッジレ シオは 2008 年よりすでに高い水 準にあるからだ。

Source: Guggenheim Investments, Bank of America Merrill Lynch Research. Data as of 12.31.2019. Comparable periods of 5.31.1999 and 12.31.2008 were selected based on recent U.S. speculative-grade default rate and our outlook for defaults to increase in the next 12-24 months.

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これまでのところ、弊社は発行体は比較的高いレバレッジレシオに耐えられるとみてい る。というのも、ハイイールド債発行体のインタレスト・カバレッジ・レシオは、過去平均 が 3.2 倍であるのに対して現在は 3.8 倍と健全な水準にあり、ローンのインタレスト・カ バレッジ・レシオはさらに健全な 4.6 倍だからである。しかし、こうした見方は、休業や消 費者の移動制限でキャッシュフローが回らなくなると、説得力を失うだろう。今後 2 四半 期の利益データを見れば、多くの発行体の利払い継続能力に深刻な悪影響が急速に 及ぶことを確認できるはずである。 また、議会が可決した巨額の経済対策を、弊社の見通しに織り込まないわけにはいか ないだろう。コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法は、個人への直接 給付と失業給付、州への資金提供、企業向け融資を定めている。これには、航空産業 への支援金 500 億ドルをはじめ、企業、州、地方自治体への融資や支援を後押しする ための 5,000 億ドルが含まれている。さらに、CARES 法は給与保護プログラム (Paycheck Protection Program)についても定めている。これは中小企業に融資を行 うもので、売上高が主に給与に使われる場合には返済が免除される。 CARES 法の目的は、企業存続のために 2~3 カ月分の諸経費が必要となる場合に流 動性不足を補うことにある。こうしたことは資金調達が難しいときに極めて重要であっ た。この支援は企業が今後数カ月に生き残るか消え去るかを決定する要因となり得る が、現在または将来に得られたであろう収益を補うことはできない。追加経済対策プロ グラムが必要となるだろう。 成長、労働市場および企業収益の伸びに関する見通しに加え、現在と 2008 年の企業 ファンダメンタルズの比較検討結果を踏まえると、今後のデフォルト見通しは 2008~ 2009 年に最も類似したものになるのではないかと予想される。これに基づけば、今後 12 カ月間のデフォルト率は最低でも 12%となる。また、より詳細な業種レベルのストレ ステストを弊社で実行したところ、米国の投機的格付債のデフォルト率が今回のサイク ルで 15%に達する可能性が高いという結論に至った。これは 1990 年、2002 年、 2009 年のピークより高い。

相対価値があるアセットを取りに行く 長期にわたる景気悪化を生き残れそうな企業を探すために、弊社ではストレステストを 行う際に次の質問をしている――借り手は営業を継続するための十分なキャッシュフロ ーまたはバランスシート上のキャッシュを有しているか、借り手は未使用のリボルビン グ融資を利用できるか、借り手は利益への深刻な影響を乗り切れるか、そして借り手 は多額の設備投資を必要としているか。弊社のストレステストでは、結局いつも、「流動 性が何より重要(liquidity is king)」という同じ結果になる。 デフォルトする企業を避けるため、十分なキャッシュバッファー、直近数四半期のフリー キャッシュフローが潤沢であること、キャッシュの生成を持続できる業界での確固たる地 位、景気に左右されにくいこと、債務水準が妥当であることといった点に着目して、弊社 は投資先を探している。最近、投資機会があるとみた業種はいくつかあり、テクノロジ ー、景気に左右されない消費財、ヘルスケア、食品・飲料、飲食業(消費者が巣ごもり 生活を余儀なくされる中で需要を維持するために、デリバリーに対応して市場プレゼン スを確立した飲食店)などである。

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ハイイールド債でもバンクローンでも、デフォルトに加え、格下げが多発すると予想さ れる。ハイイールドクラス内での格下げが発生しているうえに、フォールンエンジェル (投資適格からハイイールドに格下げされた発行体)もなだれ込み、市場の流動性懸 念が高まっている。2020 年第 1 四半期には、特に大手の発行体 3 社――クラフト・ハ インツ、オクシデンタル・ペトロリウム、フォード――の格下げにより、合算で 750 億ド ル超のデットがハイイールド・インデックスに加わった。投資家が新規参入組(フォール ンエンジェル)を購入したため、これらの格下げはハイイールド債のセルオフをエスカ レートさせたかもしれないが、場合によっては、魅力的な買いの機会となったことも確 かである。 大幅なダウンサイドが足元の価格やスプレッド水準に織り込まれているものの、新型 コロナウイルスが経済に与えた損害の程度が経済指標や企業利益で明らかになるに つれ、さらに大きな痛みを感じることがあるだろう。クレジット投資家は最悪のシナリオ に備えるとともに、矢継ぎ早の経済対策プログラムによって最近一息ついたこの機会 を利用して、脆弱なクレジットを売り、生き残れそうなクレジットを買うべきである。足元 の市場は質の高い投資先を探す機会を提供しており、ここ数年よりも良いエントリーポ イントが存在する。数々のリスクが依然として前途に待ち受けていようとも、弊社は相 対価値があるアセットを取りに行くことに着手し始めている。

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重要な通知及び表明事項 指数及びその他の定義 ここに表示された指数は、運用されているものでなく、直接投資の対象とすることはできません。指数のパフォーマンスは取引コスト、報酬 または費用を含みません。 Credit Suisse Leveraged Loan Index は、投資可能な米ドル建レバレッジ・ローン市場をトラックします。これは、「5B」またはそれ以下 のローンから構成され、この指数に含まれる最も高いローンは、ムーディーズ/SP の格付において Baa1/BB+または Ba1/BBB+です。す べてのローンは、先進国に所在する借手による最低 1 年満期の借入れ済みタームローンです。 Intercontinental Exchange (ICE) Bank of America Merrill Lynch High-Yield Index はハイイールド社債の一般的に使用されるベ ンチマーク指数です。 S&P 500 Indexは、米国において活発に取引されている500銘柄の株式を時価加重平均したものであり、経済全般の動向の尺度となる べく構築され、すべての主要産業を含みます。 ベーシス・ポイント(bps)は、ある商品の価値または利回りの変化を表すために用いられる計測単位です。1ベーシス・ポイントは、0.01%と 同一です。 Spreadとは、同様の満期の米国債の利回りとの差を言います。 EBITDAとは、利払い・税引き前・償却前利益のことを指しており、事業の収益力の指標として標準的に使用されています。 リスクに対する考察 債券投資は、信用リスク、流動性リスク、金利リスクおよび商品によってはカウンターパーティーリスクを負っています。これらリスクは、投 資が、一つの発行体、産業、地域または国に集中している限りにおいて、増大する可能性があります。一般に、債券投資の市場価値は、 とりわけ、元となる債務の対象債務者または合成証券の場合は参照対象債務の債務者もしくは発行者の財務状況、経済全般の状況、特 定の金融市場、政治的イベント、ある特定の産業の発展またはトレンドの状況及び適用金利水準の変動状況に応じて変動します。 バンクローンは、通常投資適格未満であり、様々な理由により非収益化、または不良化することがあります。非収益化した、または不良化 したローンは、実態的に新しい条件のための交渉又はリストラクチャリングを必要とすることがあり、それが、とりわけ、利率の相当な減 免、ローン元本の相当な償却等の結果となることがあります。加えて、特定のバンクローンは、高度にカスタマイズ化されているので、公に 取引される証券に比べ容易に売買できないことがあります。セカンダリー取引市場においては、制約が課せられる場合があり、適切なレベ ルの流動性が確約されるわけではありません。ある種の銀行ローンにおいては、譲渡に当たって制約が課せられる場合があります。バン クローンに関連するリスクは、一般的に、プレミアムまたはペナルティーの受け払いなくいつにても繰り上げ償還が発生する可能性を含み ます。 ハイ・イールド・デット証券は、一般に無担保であり、当該発行体の一部の他の債務よりも劣後することがあります。ハイ・イールド・デット証 券が低格付けであり、投資適格未満のローンであることは、発行体の財務状況、経済全般の情勢又はこれら双方が不利に変化した場合 に、元本又は金利の支払い能力を毀損する可能性がより大きいことを反映しています。投資適格未満の格付の証券は、一般に「ジャンク・ ボンド」と呼ばれています。ハイ・イールド・デット証券のリスクは、とりわけ下記を含みます。 (i) 流動性及びセカンダリー市場のサポートが 限られていること、 (ii) 適用金利水準の変化により市場において相当程度のボラティティが生ずること、(iii)ハイ・イールド・デット証券の発 行者の収入が、 債務の返済にあたり不十分となる可能性があること、並びに (iv) 金利上場局面、経済の下降局面又はこれら双方によ り、このようなハイ・イールド・デット証券の発行体の信用力低下及び潜在的な倒産の可能性。経済情勢の悪化又は金利上昇により、ハ イ・イールド・デット証券の市場が著しく毀損されることがあり、発行済のハイ・イールド・デット証券の価値及び当該発行体の元利金の返済 能力に悪影響を及ぼす可能性があります。ハイ・イールド・デット証券の発行体は、レバレッジ比率が高いことがあり、従来からある資金調 達ができない可能性があります。 この資料は専ら情報の提供を目的としたものであり、いかなる有価証券、投資戦略または投資商品に関して、投資助言または推奨をする ものではありません。この資料はフィデューシャリー義務の立場から提供されたものではなく、投資決定を行うための十分な根拠となること を意図したものとみなすべきではありません。また、特定の有価証券の売買に関する勧誘とみなしてはなりません。 本資料は、会計、法務 または税務上のアドバイスを供与するという考えから頒布するものではありません。これらの問題については、貴社の法律または税務上 のアドバイザーに助言を求めてください。 本資料は、著者の意見を含みますが、グッゲンハイム・パートナーズまたはその子会社の意見を含むものとは限りません。著者の意見 は、予告なく変更することがあります。本資料に含まれる将来にむかっての表明、予測および一定の情報は、自社または他社の調査およ び他の情報源に基づくものです。本資料に含まれる情報は、信頼に足ると信ずる情報源より取得していますが、その正確性を保証するも のではありません。本資料の如何なる部分も、グッゲンハイム パートナーズLLCの書面による明示的同意なしには、如何なる方法であ れ、複製し、または引用することはできません。過去のパフォーマンスは、将来の結果を暗示するものではなく、そのような情報に基づく判 断につき、現時点における正確性、責任を表明または保証するものではありません。 1 グッゲンハイム・インベストメンツの預り資産総額は、2020年3月31日現在のものです。ここには、運用資産に対するレバレッジを含む 129億米ドルを含みます。グッゲンハイム・インベストメンツは、下記の関係会社による投資運用業務を総称します。Guggenheim Partners Investment Management, LLC, Security Investors, LLC, Guggenheim Funds Distributors, LLC, Guggenheim Funds Investment Advisors, LLC, Guggenheim Corporate Funding, LLC, Guggenheim Partners Europe Limited, GS GAMMA Advisors, LLC, and Guggenheim Partners India Management. 2 グッゲンハイム・パートナーズの運用資産は、2019年12月31日現在のものであり、時価約690億米ドルの顧客へのコンサルティング・サ ービスの対象資産を含みます。 © 2020年 グッゲンハイム・パートナーズLLC。グッゲンハイム・パートナーズ LLC による明示的な書面による許可なく、本文書のいかなる 部分についても、いかなる形式における再作成および他の出版物における引用を禁じます。

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グッゲンハイムの投資プロセス グッゲンハイムでは、行動バイアスを軽減し、より優れた意思決定のつながるように設計された体系的で規律をもった投資 プロセスに基づいて債券ポートフォリオの運用を行なっています。弊社の投資プロセスでは、最良のリサーチとアイデアをマ クロリサーチ、セクターチーム、ポートフォリオ構築およびポートフォリオマネジメントの 4 つの機能を、専門性に応じて分離し ています。このプロセスにより、特定の個人やグループに依存することなく、認知バイアス、衝動的な判断、その他行動ファ イナンスに基づく意思決定の落とし穴を避けることを目的としています。魅力的なリスク調整後リターンを提供する投資機会 を追求するため、弊社のアセットアロケーションは広く採用されているベンチマークとは大きく異なっております。

グッゲンハイム インベストメンツについて グッゲンハイム インベストメンツは、グッゲンハイム パートナーズのグローバル資産運用および投資助言部門です。債券、 株式およびオルタナティブ戦略の資産合計は 2,050 億ドル 1 に上ります。グッゲンハイムでは保険会社、企業、公的年金基 金、ソブリン・ウェルス・ファンド、基金・財団、コンサルティング会社、資産運用会社、富裕層投資家のお客様のリターンとリ スクのニーズに重点をおいています。弊社の 300 名以上の投資専門家は、市場トレンドを理解し、しばしば複雑で十分な調 査が行われていない分野で見過ごされている投資機会を見つけ出すため、厳密な調査を行っています。この投資運用アプ ローチによって、グッゲンハイムは投資の分散と魅力的な長期的成果を実現する革新的な戦略を実行しております。

グッゲンハイム パートナーズについて グッゲンハイム パートナーズは 2,700 億ドル 2 以上の資産を運用している世界的な投資助言会社です。投資運用業務、投 資銀行業務、保険サービスの弊社の 3 つの主要ビジネス全てにわたり、革新的なソリューションによって大きな成果を生み 出してきました。世界中の拠点に 2,400 人の専門家を擁する弊社は、お客様の戦略的利益を前進させ、卓越かつ一貫した 長期的な結果を生み出すことに力を尽くしています。弊社のウェブサイト(GuggenheimPartners.com)やツイッター (twitter.com/guggenheimptnrs)にて、当社の高度な専門性と価値についてさらに詳しくご覧ください。

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