Japan Q4 2020 HYBL - Opportunities in Credit Amid Challenging Conditions

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2020 年 11 月

ハイイールド債とバンクローンの見通し

困難な状況下でのクレジット投資機会


Investment Professionals Scott Minerd Chairman of Investments and Global Chief Investment Officer Kevin H. Gundersen, CFA Senior Managing Director, Portfolio Manager Thomas J. Hauser Senior Managing Director, Portfolio Manager Brian Smedley

目次 要旨 .......................................................................................................................... 1 本リポートのハイライト ............................................................................................... 1 レバレッジクレジット・スコアーボード........................................................................... 2 マクロ経済概況 .......................................................................................................... 3 低金利が長く続く ................................................................................................... 3 市場の見通し............................................................................................................. 4

Senior Managing Director,

クレジット市場の状況は依然として厳しい ................................................................ 4

Head of Macroeconomic and

フォールンエンジェルの増加 ................................................................................... 8

Investment Research Maria M. Giraldo, CFA

投資への示唆 ............................................................................................................ 9

Managing Director, Investment Research

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要旨 経済が徐々に回復しつつある上に、金融政策の効果により米国債利回りが低く抑えられ ているため、投資適格未満の社債およびローンの見通しについては引き続き楽観的であ る。債券市場全体でイールドが枯渇する中でもクレジットスプレッドは過去に照らして依然 として魅力的な水準にあり、縮小の余地は十分にある。しかし、デフォルト率、格付推移、 企業のファンダメンタルズなどから見たクレジット市場の状況は依然として厳しいものがあ るため、アクティブな銘柄選定が必要である。 中央銀行による資金供給により市場のクレジット・アベイラビリティ(信用供与)が大幅に改 善され、数多くの企業が資本市場にアクセスして社債を発行した。その結果、予想デフォ ルト率は低下したが、それでもなお、エネルギーや小売などのセクターではデフォルトが続 くと考える。デフォルトが起きた場合の平均回収率はハイイールド債で額面の33%、ロー ンで55%にとどまる。さらに、今年に入ってこれまでの回収率は上記の平均を大きく下回 っている。このため、デフォルトを避ける銘柄選定が極めて重要である。 リセッション後の景気回復期には、2002年や2011年のように一時的なクレジットスプレッド の拡大が見られることがある。両時期とも回復へ向かう過程での一時的な調整であり、絶 好の買い場であった。調整があるとしても一時的であり、ポジションを追加する機会と捉え るべきである。 現在の環境においては、業界分析と銘柄選定が極めて重要である。新型コロナウイルス の影響を受けるセクターについては、強力な担保で保護された投資対象を優先することに した。さらに、ディフェンシブセクターおよび投資適格からハイイールドに格下げされたフォ ールンエンジェルに投資機会があると考える。今年新たにフォールンエンジェルとなった社 債の総額は既に2,400億ドルに上っている。

本レポートのハイライト 

クレジットスプレッドは1998年以降で、これまでの歴史の中で60パーセンタイル近辺 にあり、今後タイト化の余地は十分にある。

ハイイールド発行体のレバレッジは直近12カ月ベースで4.5倍となっており、2008年 から2009年のデフォルトサイクルのピーク時における3.9倍を既に上回っている。今 後も、2019年の数字が計算対象から外れるにつれて悪化する可能性が高い。

弊社では、今年に入ってハイイールド長期債のエクスポージャー(フォールンエンジェ ルを含む)を銘柄を限定して積み増した。

弊社のリサーチによれば、フォールンエンジェルの価格はハイイールドインデックスに 採用された後に反発する傾向がある。この様な構造的なアノマリーにより、インデック ス移行期間前後に売られすぎることになる。

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マクロ経済概況 「FRB が有する最も

低金利が長く続く

強力な武器は、今で

今後の財政政策の見通しは、2020年大統領選挙の結果に左右される。しかし

もなお古き良き印刷

金融政策の見通しが大統領選の結果に左右されることはほとんどない。米連

機である」

邦準備制度理事会(FRB)は、今後数年にわたり超緩和策を継続するであろ

– スコット・マイナード グッゲンハイム インベストメンツ チェアマン兼グローバル CIO

う。これはFRBが最近政策の枠組みを変更し、金融政策をハト派寄りにシフトし たことによるところが大きい。 FRBは2020年8月に声明文を発表して、長期的目標および金融政策戦略を改 定した。労働市場に関する目標については、今後は雇用の最大化を達成する ために必要な不足分の是正に焦点を当てるとした。これまでは、雇用の最大水 準からの偏差を判断基準としていたため、労働市場が逼迫していると判断すれ ば利上げに踏み切った。しかし今後は、失業率が完全雇用と判断される水準を 下回ったとしても、インフレが急速に進行しなければその状況を容認することが 可能となる。インフレ目標については平均コアインフレ率2%を目標に据えた が、期間については明示しなかった。これにより、インフレ率が短期的に2%を やや上回る時期があったとしても、2%を下回った時期を埋め合わせると考え て、容認することが可能となる。 改定された戦略は実際にどのような効果を有するのか。この戦略を2015年か ら2018年に当てはめてみると、その期間利上げが全く行われなかったことにな ってしまう。インフレ率が長期にわたり2%を超えることはなかった上、失業率の 低下はもはや利上げの理由とはなり得ないからである。しかし、FRBが新たな 枠組みを発表した声明文およびそれと時期を同じくしたジャクソンホールにおけ るパウエルFRB議長の講演内容を見ると、これまで何年もゼロ金利政策を継 続し何兆ドルもの量的緩和を実施してきたにもかかわらず達成できなかったイ ンフレ目標をFRBがいかにして達成するかに関する説明が欠けている。インフ レ率上昇に関する具体的なガイダンスがなく数値目標も期間の明示もないとす れば、政策効果は弱まり、現状FRBが望む水準を下回っているインフレ期待が 強まることもないであろう。 FRBが今後数年間のうちにインフレ目標を達成すること(ましてやそれを上回る こと)は大変困難と思われる。コアインフレ率は実質GDPに対して約18カ月の 遅行性があるため、経済活動が直近のボトムから回復したとしても、インフレ率 は一時的に上昇した後は数四半期にわたり低下傾向をたどるであろう。さら に、高い失業率と膨らんだ債務負担が景気回復のスピードを鈍らせるであろ う。潜在GDPと足元の経済成長率を考え合わせると、失業率が新型コロナ以 前の水準に回復するのは2024年以降になると思われる。直近の景気拡大期 を見ても分かるように、経済が成長し失業率が低いからといってインフレ率が 2%を超えるとは限らない。なぜなら、インフレを引き起こす要因の中には金利 や景気に反応しないものも数多くあるからである。

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インフレ率が目標を下回っていることから、米国債の利回りも低く抑えられるで あろう。短期的には、インフルエンザ流行期に入る中での新型コロナウイルス 感染再拡大への懸念、労働市場の回復ペース鈍化、追加的財政刺激策の欠 如、大統領選挙がもたらす不確実性などの要因も重なり、米10年国債の利回 りは10ベーシスポイント(bps)まで低下する可能性がある。さらに2021年に は、FRBがゼロ金利を無期限に継続せざるを得なくなるという見方を市場が 徐々に織り込む中で、相対的に高い米金利が海外からの資本流入を促すこと から、10年国債の利回りがマイナスになると予想する。

市場の見通し クレジット市場の状況は依然として厳しい 経済が徐々に回復しつつある一方で金融政策の効果により国債利回りが低く抑え られているため、投資適格未満の社債およびローンの見通しについては引き続き 楽観的である。クレジットスプレッド縮小の余地は十分にあり、イールドに対する需 要は強い。10 月 30 日現在、ハイイールド社債のスプレッドおよびレバレッジドロー ンのディスカウントマージンは、1998 年以降これまでの歴史の中で月次ベースで 60 パーセンタイル近辺にある。しかし、デフォルト率、格付推移、企業のファンダメ ンタルズなどから見たクレジット市場の状況は依然として厳しいものがある。

クレジットスプレッドは、過去の実績の 60 パーセンタイル近辺にある 10 月 30 日現在、ハイイールド社 債のスプレッドとレバレッジドロー ンのディスカウントマージンは、 1998 年以降これまでの歴史の中 で月次ベースで 60 パーセンタイ ル近辺にある。しかし、信用市場 の状況は依然としてかなり厳し い。

Source: Guggenheim Investments, Credit Suisse, ICE Index Services. Data as of 10.30.2020. Percentile history based on monthly spreads from January 1998 to September 2020. Numerical values on the chart represent spread levels at the indicated percentile.

ハイイールド発行体のレバレッジは直近 12 カ月ベースで 4.5 倍となっており、 2008 年から 2009 年のデフォルトサイクルのピーク時における 3.9 倍を既に 上回っている。今後も、2019 年の数字が計算対象から外れるにつれて悪化す る可能性が高い。

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現在のデフォルトサイクルでは企業のファンダメンタルズが著しく悪化している ハイイールド発行体のレバレッジ は直近 12 カ月ベースで 4.5 倍と なっており、2008 年から 2009 年 のデフォルトサイクルのピーク時 における 3.9 倍を既に上回ってい る。今後も、2019 年の数字が計 算対象から外れるにつれて悪化 する可能性が高い。

Source: Guggenheim Investments, BofA Merrill Lynch Research. Data as of 6.30.2020. Shaded areas represent recession periods.

格下げへの動きも依然として警戒すべき水準にあるが、年初からは改善した。 ICE バンクオブアメリカ・ハイイールド・インデックス構成銘柄のうち過去 12 カ 月間に格下げされた銘柄数は格上げされた銘柄数の 5 倍に上ったが、直近 3 カ月ベースでは第 2 四半期の 27 倍から第 3 四半期には 6 倍まで低下した。 比率で見ると、格上げされた銘柄の比率と格下げされた銘柄の比率の差は23%であった。ローンについて見ると、S&P/LSTA レバレッジドローンインデッ クス構成銘柄のうち過去 12 カ月間に格下げされた銘柄数は格上げされた銘 柄数の 8 倍に上ったが、直近 3 カ月ベースでは 5 月の 43 倍から 9 月にはわ ずか 3 倍まで低下した。格上げされた銘柄の比率と格下げされた銘柄の比率 の差は-45%であった。 直近 12 カ月ベースでは格下げが格上げを上回っているが足元では改善の兆しが見 られる S&P/LSTA レバレッジドローンインデ ックス構成銘柄のうち、格上げされた 銘柄の比率と格下げされた銘柄の 比率の差は-45%であった。これは 格下げされたローンの方がはるかに 多かったことを示しており、2008 年 のリセッション時の水準に近い。ハイ イールド社債では、格上げされた銘 柄の比率と格下げされた銘柄の比 率の差は-23%であった。この数字 は 2015 年から 2016 年のデフォルト サイクル時より悪いが、2008 年のリ セッション時よりは良くなっている。 Source: Guggenheim Investments, ICE Index Services, S&P LCD. Data as of 9.30.2020.

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FRB の資金供給によりクレジット・アベイラビリティが大幅に改善され、それがデフ ォルト確率、そして格下げに影響を及ぼしている。2020 年のハイイールド社債のグ ロス発行額は第 3 四半期までで 3,730 億ドルに上り、これまでの年間記録であっ た 2012 年の 3,410 億ドルを既に上回っている。しかも今年はまだ終わっていな い。一方ローンは、クレジット・アベイラビリティ改善の恩恵を直接的には受けてい ない。年始からこれまでの新規企業ローンの総額は 2,400 億ドルにとどまってお り、前年同期を 14%下回っている。その主な原因は、レバレッジドローンの主要な 買い手であるローン担保証券(CLO)の発行低迷であり、今年の発行額は 2016 年以降最低となると見込まれる。一方、債券を発行しその手取金でローンを返済す る動きが加速している。ローン返済を資金使途とする債券の今年に入ってからの 発行額は 730 億ドルに上り、2013 年以降最も多くなっている。 直近 12 カ月ベースのデフォルト率は上昇を続けているが、四半期ごとのデフォル ト額は大きく減少した。2020 年第 3 四半期のデフォルト額は 193 億ドルであった が、これは第 2 四半期の 820 億ドルを大きく下回り、第 1 四半期の 240 億ドルを も下回っている。しかしデフォルトの今後については、第 3 四半期の個人消費が新 型コロナウイルス支援・救済・経済保障法(CARES 法)により下支えされていたこ とを考慮すると、見通し難い。今後数カ月のうちに追加的財政策を議会が承認する 可能性は低いと見ているが、大統領選の勝者がどちらであろうと、追加的財政政 策の議会通過が次期政権の最優先課題となるであろう。

デフォルト率は金融環境との相関が高い 直近 12 カ月ベースのデフォルト 率は上昇を続けているが、四半期 ごとのデフォルト額は大きく減少し た。2020 年第 3 四半期のデフォ ルト額は 193 億ドルであったが、 これは第 2 四半期の 820 億ドル を大きく下回り、第 1 四半期の 240 億ドルをも下回っている。

Source: Guggenheim Investments, Goldman Sachs, S&P LCD, Moody’s. Data as of 9.30.2020.

前四半期の弊社レポートで詳しく取り上げた FRB による企業金融環境緩和の取り 組みは、弊社のデフォルト見通しにも顕著に表れている。過去において、金融引き 締めの後にはデフォルトが増加し、逆に金融緩和時には減少している。ニューヨー ク連邦準備銀行のエコノミストが最近公表した FRB のコーポレート・クレジット・ファ シリティの効果に関する詳細な分析は、コーポレート・クレジット・ファシリティがさま ざまなチャネルを通じて企業のクレジットリスクを低減させたことを示す様々なエビ

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デンスを示した。弊社はこの見解に同意するが、悪化した企業のバランスシートを 改善するには金融環境の改善だけでは限界があり、やはり追加的財政政策が欠 かせないと考える。 価格にデフォルトが織り込まれた社債やローンのシェアは大きく減少したものの、 今後 12 カ月はまだデフォルトが続くであろう。デフォルトした場合の平均回収率は ハイイールド社債で額面の 30%、ローンで 55%にとどまるため、保有銘柄のデフ ォルトを避けることは非常に重要である。自動車、ゲーム、レジャー、メディア、小売 などの景気敏感セクターはまだ下げ余地があると考える。これらのセクターに対す るローンセクターの累積エクスポージャーは 17%しかないが、ハイイールド社債市 場のエクスポージャーは 26%に上る。またエネルギーセクターについても、原油価 格は足元で反発しているものの下げ圧力は依然として強く、しかも多くのシェール 企業が不採算に陥っているため、破綻する企業が今後増える可能性がある。エネ ルギーセクターは負債が多いため、ハイイールド社債市場の同セクターに対するエ クスポージャーは 15%に上っている。 一方で、薬品、食品・飲料、テクノロジー、さらには新型コロナウイルスの影響を巧 みに回避したレストランセクターに投資機会があると考える。新発債の発行が順調 に続いていることから取捨選択の機会は十分にあり、かつ最近発行された社債の 方がデフォルトに陥る可能性は低いと考える。また長期債についてはそのほとんど が最近投資適格からハイイールドに格下げされたフォールンエンジェルにより発行 されているが、スプレッドのタイト化および米国債利回りの低下から恩恵を受けると 考えている。

リセッション後には、クレジットスプレッドの一時的な拡大が見られた リセッション後の景気回復期に は、2002 年や 2011 年のように一 時的なクレジットスプレッドの拡大 が見られることがある。両時期とも 回復へ向かう過程での一時的な 調整であり、絶好の買い場であっ た。

Source: Guggenheim Investments, ICE Index Services. Data as of 11.4.2020. Shaded areas represent recession periods.

リセッション後の景気回復期には、2002 年や 2011 年のように一時的なクレジ ットスプレッドの拡大が見られることがある。両時期とも回復へ向かう過程での 一時的な調整であり、絶好の買い場であった。

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フォールンエンジェルの増加 弊社は 2018 年以降、投資適格からハイイールドへの格下げが大きく増加するリ スクについて警告してきた。投資適格企業のレバレッジ比率は 2011 年を底として 大きく上昇し、2020 年第 2 四半期にはグロスレバレッジ比率が 2.9 倍、ネットレバ レッジ比率が 2.2 倍と、それぞれ過去最高に達した。この数年にわたる企業のファ ンダメンタルズの悪化および新型コロナウイルスが引き起こしたリセッションによ り、2020 年初めから第 3 四半期までで過去最高となる 2,400 億ドルの社債がフォ ールンエンジェルとなり、2021 年末までにはさらに 2,000 億ドルから 3,000 億ドル がフォールンエンジェルとなる可能性があると考える。 2,400 億ドルに上る今年のフォールンエンジェルの増加が、既存のハイイールド社 債の価格に悪影響を及ぼしたかどうかはまだ分からない。以前は、ハイイールド投 資家が新たなフォールンエンジェルへの投資資金を捻出するために既存のハイイ ールド債を売りに出すなどの影響があると考えていたが、第 1 四半期末のボラティ リティがあまりに大きかったために、その影響のみを抽出して分析することは不可 能である。しかし最近の弊社のリサーチから、フォールンエンジェル債がハイイー ルドインデックスに採用された後に値を上げる傾向があることが明らかになった。こ れは構造的なアノマリーによるものと考えられる。 弊社では、投資適格からハイイールドに格下げされた社債の格下げ前後 30 週間 のパフォーマンスを、ICE BofA フォールンエンジェルインデックスを用いて分析し た。具体的には 2020 年 9 月現在のインデックス構成銘柄のうち、2017 年 1 月か ら 2020 年 9 月までにフォールンエンジェルとなった社債のパフォーマンスを週次 で集計した。集計期間内に格下げ前後で 30 週を取ることができなかったフォール ンエンジェルも存在するため、サンプル数は集計期間内でわずかに変動している。

フォールンエンジェルのスプレッドは格下げ前に拡大する傾向がある 弊社のリサーチの結果からは、フ ォールンエンジェルが格下げの数 週間前から売られ始めることが明 らかになった。格下げ前 5 週間か ら格下げ後 1 週間の期間で、フォ ールンエンジェルの価格は平均で 約 13%下落し、その下落のほと んどが格下げ前に起きていた。

Source: Guggenheim Investments, Bloomberg, ICE Index Services. Data as of 9.30.2020. Based on a study of over 300 bonds in the ICE BofA Fallen Angel High Yield Index and their S&P rating history since January 2017. The median and average calculations are only of bonds downgraded from investment-grade to high-yield status by S&P Ratings between January 2017 and October 2020 (between 150-200 bonds depending on weekly pricing data availability).

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弊社のリサーチの結果からは、フォールンエンジェルが格下げの数週間前から 売られ始めることが明らかになった。格下げ前 5 週間から格下げ後 1 週間の 期間で、フォールンエンジェルの価格は平均で約 13%下落し、その下落のほと んどが格下げ前に起きていた。またスプレッドは、同期間中に平均で 392bps 拡大した。一方その期間以降は価格が戻りスプレッドはタイト化したが、弊社が 設定した格下げ後 30 週の期間内に価格あるいはスプレッドが格下げ前の水 準に回復することはなかった。 格下げ前に価格が動いていることから、何らかの早期警告サインがあるものと 思われる。その例としては、バランスシートの緩やかな悪化、他の格付会社に よる格下げ、同業他社の格下げ、格付会社によるその他の動き(例えばネガテ ィブウォッチへの指定)、重要なコーポレートイベントの公表などが考えられ、弊 社はそれら全てをトラッキングするツールを開発済みである。 市場が概ね効率的であり、発行体のファンダメンタルズが数週間のうちに大き く変化することはないとすれば、なぜ社債価格は格下げ後にそれほど大きく戻 るのであろうか?その理由は主に構造的なものと考えられる。すなわち、パッ シブ運用であろうとアクティブ運用であろうと投資対象が投資適格債に限定さ れるファンドはフォールンエンジェルを売却せざるを得ず、その結果としてスプ レッドが発行体のファンダメンタルズから見た適正水準以上に一時的に拡大す るのではないかと思われる。

投資への示唆 ハイイールド債のアクティブ運用を行う弊社は、幾つかの数銘柄のフォールンエン ジェルを個別に購入した(全てのフォールンエンジェルを購入したわけではない)。 フォールンエンジェルの価格は格下げ後数週間のうちに戻る傾向があるため、格 付アクションを予測し、発表時には迅速に行動する必要がある。しかし弊社のクレ ジットリサーチチームは、現在の著しく不透明な環境では全てのフォールンエンジェ ルの信用力が購入に値するわけではないとしている。弊社のクレジットリサーチチ ームでは、クレジットアナリストが同一業界の投資適格銘柄とハイイールド銘柄の 双方をカバーしているため、投資適格銘柄がハイイールドに格下げされてもクレジ ット分析の継続性が保たれるという利点がある。また、マクロ経済投資リサーチグ ループも、フォールンエンジェル候補の予測とモニタリングに深く関与している。 新型コロナウイルスがクレジット市場に影響を及ぼし続ける中で、格下げ銘柄 は今後さらに投資機会を提供する可能性が高い。弊社はその厳格な投資プロ セスを用いて長期的ファンダメンタルズに引き続き着目し、そうした投資機会を 捉えていく。 現在はあらゆるサインが、投資適格未満の社債のパフォーマンスが引き続き 改善することを示唆している。調整があるとしても一時的であり、ポジションを 追加する機会と捉えられるであろう。

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重要な通知及び表明事項 指数及びその他の定義 ここに表示された指数は、運用されているものでなく、直接投資の対象とすることはできません。指数のパフォーマンスは取引コスト、報酬 または費用を含みません。 Credit Suisse Leveraged Loan Index は、投資可能な米ドル建レバレッジ・ローン市場をトラックします。これは、「5B」またはそれ以下 のローンから構成され、この指数に含まれる最も高いローンは、ムーディーズ/SP の格付において Baa1/BB+または Ba1/BBB+です。す べてのローンは、先進国に所在する借手による最低 1 年満期の借入れ済みタームローンです。 Intercontinental Exchange (ICE) Bank of America Merrill Lynch High-Yield Index はハイイールド社債の一般的に使用されるベ ンチマーク指数です。 S&P 500 Indexは、米国において活発に取引されている500銘柄の株式を時価加重平均したものであり、経済全般の動向の尺度となる べく構築され、すべての主要産業を含みます。 ベーシス・ポイント(bps)は、ある商品の価値または利回りの変化を表すために用いられる計測単位です。1ベーシス・ポイントは、0.01%と 同一です。 Spreadとは、同様の満期の米国債の利回りとの差を言います。 EBITDAとは、利払い・税引き前・償却前利益のことを指しており、事業の収益力の指標として標準的に使用されています。 リスクに対する考察 新型コロナウィルスが発生したことによる潜在的な影響は、ますます不確実性が増してきており、評価が困難で予測が不可能となってお り、重大な損失をもたらす可能性があります。債券投資は、信用リスク、流動性リスク、金利リスクおよび商品によってはカウンターパーテ ィーリスクを負っています。これらリスクは、投資が、一つの発行体、産業、地域または国に集中している限りにおいて、増大する可能性が あります。一般に、債券投資の市場価値は、とりわけ、元となる債務の対象債務者または合成証券の場合は参照対象債務の債務者もしく は発行者の財務状況、経済全般の状況、特定の金融市場、政治的イベント、ある特定の産業の発展またはトレンドの状況及び適用金利 水準の変動状況に応じて変動します。 バンクローンは、通常投資適格未満であり、様々な理由により非収益化、または不良化することがあります。非収益化した、または不良化 したローンは、実態的に新しい条件のための交渉又はリストラクチャリングを必要とすることがあり、それが、とりわけ、利率の相当な減 免、ローン元本の相当な償却等の結果となることがあります。加えて、特定のバンクローンは、高度にカスタマイズ化されているので、公に 取引される証券に比べ容易に売買できないことがあります。セカンダリー取引市場においては、制約が課せられる場合があり、適切なレベ ルの流動性が確約されるわけではありません。ある種の銀行ローンにおいては、譲渡に当たって制約が課せられる場合があります。バン クローンに関連するリスクは、一般的に、プレミアムまたはペナルティーの受け払いなくいつにても繰り上げ償還が発生する可能性を含み ます。 ハイ・イールド・デット証券は、一般に無担保であり、当該発行体の一部の他の債務よりも劣後することがあります。ハイ・イールド・デット証 券が低格付けであり、投資適格未満のローンであることは、発行体の財務状況、経済全般の情勢又はこれら双方が不利に変化した場合 に、元本又は金利の支払い能力を毀損する可能性がより大きいことを反映しています。投資適格未満の格付の証券は、一般に「ジャンク・ ボンド」と呼ばれています。ハイ・イールド・デット証券のリスクは、とりわけ下記を含みます。 (i) 流動性及びセカンダリー市場のサポートが 限られていること、 (ii) 適用金利水準の変化により市場において相当程度のボラティティが生ずること、(iii)ハイ・イールド・デット証券の発 行者の収入が、 債務の返済にあたり不十分となる可能性があること、並びに (iv) 金利上場局面、経済の下降局面又はこれら双方によ り、このようなハイ・イールド・デット証券の発行体の信用力低下及び潜在的な倒産の可能性。経済情勢の悪化又は金利上昇により、ハ イ・イールド・デット証券の市場が著しく毀損されることがあり、発行済のハイ・イールド・デット証券の価値及び当該発行体の元利金の返済 能力に悪影響を及ぼす可能性があります。ハイ・イールド・デット証券の発行体は、レバレッジ比率が高いことがあり、従来からある資金調 達ができない可能性があります。 この資料は専ら情報の提供を目的としたものであり、いかなる有価証券、投資戦略または投資商品に関して、投資助言または推奨をする ものではありません。この資料はフィデューシャリー義務の立場から提供されたものではなく、投資決定を行うための十分な根拠となること を意図したものとみなすべきではありません。また、特定の有価証券の売買に関する勧誘とみなしてはなりません。 本資料は、会計、法務 または税務上のアドバイスを供与するという考えから頒布するものではありません。これらの問題については、貴社の法律または税務上 のアドバイザーに助言を求めてください。 本資料は、著者の意見を含みますが、グッゲンハイム・パートナーズまたはその子会社の意見を含むものとは限りません。著者の意見 は、予告なく変更することがあります。本資料に含まれる将来にむかっての表明、予測および一定の情報は、自社または他社の調査およ び他の情報源に基づくものです。本資料に含まれる情報は、信頼に足ると信ずる情報源より取得していますが、その正確性を保証するも のではありません。本資料の如何なる部分も、グッゲンハイム パートナーズLLCの書面による明示的同意なしには、如何なる方法であ れ、複製し、または引用することはできません。過去のパフォーマンスは、将来の結果を暗示するものではなく、そのような情報に基づく判 断につき、現時点における正確性、責任を表明または保証するものではありません。 1 グッゲンハイム・インベストメンツの預り資産総額は、2020年9月30日現在のものです。ここには、運用資産に対するレバレッジを含む 140億米ドルを含みます。グッゲンハイム・インベストメンツは、下記の関係会社による投資運用業務を総称します。Guggenheim Partners Investment Management, LLC, Security Investors, LLC, Guggenheim Funds Distributors, LLC, Guggenheim Funds Investment Advisors, LLC, Guggenheim Corporate Funding, LLC, Guggenheim Partners Europe Limited, GS GAMMA Advisors, LLC, and Guggenheim Partners India Management. 2 グッゲンハイム・パートナーズの運用資産は、2020年9月30日現在のものであり、時価約690億米ドルの顧客へのコンサルティング・サー ビスの対象資産を含みます。 © 2020年 グッゲンハイム・パートナーズLLC。グッゲンハイム・パートナーズ LLC による明示的な書面による許可なく、本文書のいかなる 部分についても、いかなる形式における再作成および他の出版物における引用を禁じます。Guggenheim Funds Distributors, LLC,はグッゲン ハイム・パートナーズ LLCの関連会社です。お問い合わせについては800.345.7999または800.820.0888にお掛け下さい。 Member FINRA/SIPC

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グッゲンハイムの投資プロセス グッゲンハイムでは、行動バイアスを軽減し、より優れた意思決定のつながるように設計された体系的で規律をもった 投資プロセスに基づいて債券ポートフォリオの運用を行なっています。弊社の投資プロセスでは、最良のリサーチとア イデアをマクロリサーチ、セクターチーム、ポートフォリオ構築およびポートフォリオマネジメントの 4 つの機能を、専門 性に応じて分離しています。このプロセスにより、特定の個人やグループに依存することなく、認知バイアス、衝動的 な判断、その他行動ファイナンスに基づく意思決定の落とし穴を避けることを目的としています。魅力的なリスク調整 後リターンを提供する投資機会を追求するため、弊社のアセットアロケーションは広く採用されているベンチマークとは 大きく異なっております。

グッゲンハイム インベストメンツについて グッゲンハイム インベストメンツは、グッゲンハイム パートナーズのグローバル資産運用および投資助言部門です。 債券、株式およびオルタナティブ戦略の資産合計は 2,330 億ドル 1 に上ります。グッゲンハイムでは保険会社、企業、 公的年金基金、ソブリン・ウェルス・ファンド、基金・財団、コンサルティング会社、資産運用会社、富裕層投資家のお 客様のリターンとリスクのニーズに重点をおいています。弊社の 300 名以上の投資専門家は、市場トレンドを理解し、 しばしば複雑で十分な調査が行われていない分野で見過ごされている投資機会を見つけ出すため、厳密な調査を行 っています。この投資運用アプローチによって、グッゲンハイムは投資の分散と魅力的な長期的成果を実現する革新 的な戦略を実行しております。

グッゲンハイム パートナーズについて グッゲンハイム パートナーズは 2,950 億ドル 2 以上の資産を運用している世界的な投資助言会社です。投資運用業 務、投資銀行業務、保険サービスの弊社の 3 つの主要ビジネス全てにわたり、革新的なソリューションによって大きな 成果を生み出してきました。世界中の拠点に 2,400 人の専門家を擁する弊社は、お客様の戦略的利益を前進させ、 卓越かつ一貫した長期的な結果を生み出すことに力を尽くしています。弊社のウェブサイト (GuggenheimPartners.com)やツイッター(twitter.com/guggenheimptnrs)にて、当社の高度な専門性と価値につい てさらに詳しくご覧ください。

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High-Yield and Bank Loan Outlook | Fourth Quarter 2020

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