相対価値の情勢:バンクローンがハイイールド債より優位

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2020年2月

ハイイールド債とバンクローンの見通し 相対価値の情勢:バンクローンが ハイイールド債より優位


ハイイールド債とバンクローンの見通し 相対価値の情勢:バンクローンが ハイイールド債より優位 Investment Professionals Scott Minerd Chairman of Investments and Global Chief Investment Officer

要旨 過去のレポートでは、格付けの低いCCC格債よりも格付けの高いBB格債を選好してクレジ ットの質を引き上げることについて考察した。実際、BB格債は2019年にCCC格債を600ベ ーシスポイント(bps)超アウトパフォームした。弊社は依然として低格付け債より高格付け債

Kevin H. Gundersen, CFA

を選好するが、本レポートでは、格付けが同等ならば無担保シニア債より担保付きシニアロ

Senior Managing Director,

ーンを選好することによって、企業の資本構成の中で質のレベルアップを図ることが出来る

Portfolio Manager

投資機会について焦点を当てる。ローンは、利回りと損失調整後スプレッドのいずれにおい

Thomas J. Hauser

ても、債券より優れた価値を提供する。

Senior Managing Director,

担保付きシニア・バンクローンへの投資機会にリスクがないわけではない。弱い収益の伸

Portfolio Manager

び、武漢のコロナウイルスの最悪の影響をめぐる不確実性、コーポレートクレジットの格下

Brian Smedley

げペースの加速を踏まえると、潜在的な落とし穴を避けながら投資機会から利益をあげる秘

Senior Managing Director,

訣は、積極的な管理・運用にあると弊社は考えている。安易なクレジット・アベイラビリティ

Head of Macroeconomic and

(信用の入手可能性)が最も脆弱な債務者を延命させているようだが、次の景気下降局面を

Investment Research

生き残る質の高い借り手はたくさん存在する。ディフェンシブな姿勢を維持することが賢明で

Maria M. Giraldo, CFA

あるものの、一部のバンクローン市場ではそうした質の高い借り手への投資機会を提供され

Managing Director, Investment Research

ている。

本レポートのハイライト 

経済指標は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げと大量の流動性投入により景気 後退の回避に成功したことを示唆している。クレジットスプレッドは2019年末の大幅縮 小を経て、次の四半期には横ばいで推移すると見込まれるが、コロナウイルスの発生 で拡大する可能性もある。

2019年に高格付けが低格付けをアウトパフォームしたことは、クレジットセクターにおけ る現実、すなわち、この景気サイクルの末期においてファンダメンタルズが急速に悪化 していることを浮き彫りにしている。今まで以上に銘柄選定が重要な時期である。

レバレッジドクレジットの質を高める方法を模索している投資家にとって、ローンは無担 保コーポレートクレジットよりも良いスプレッドと利回りを獲得し続けながら、資本構成上 のレベルアップを図る好機を提供する。とはいえ、投資家はBB格ローンのリファイナン スリスクとシングルB格ローンの格下げリスクに留意すべきである。

弊社の推計によると、損失調整後スプレッドはバンクローンが274bpsであるのに対し て、ハイイールド社債市場はわずか62bpsにすぎない。

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マクロ経済概況 緊張緩和の見通し 「リスクは常にいくらかの不確

最近の米国の経済指標は、FRBの金融政策の緩和が景気拡大を支えていること

実性を伴うものであり、知って

を実証している。2019年第4四半期の新築住宅販売件数は、モーゲージ金利の低

の通り、現在のクレジットスプ

下が後押ししたほか、ベース効果もあって、前年同期比22.4%増加した。1月の非

レッド水準では過度なリスクを

農業部門雇用者数の伸びは22万5,000人と力強く、賃金の伸び率は前年同月比

取る見返りが得られていな

で3.1%に上昇した。失業率は労働参加率が一段と高まる中で3.6%に小幅上昇し

い。クレジットの悪化が水面下

たが、失業率は50年ぶりの低さであり、さらに多くの労働者が労働市場に吸引され

で続いているため、慎重なス

ている。こうした傾向と歩調を合わせ、コンファレンスボードの1月の消費者信頼感

タンスを取る必要がある」

指数は3か月連続の上昇となった。

– スコット・マイナード

直近のデータは、FRBの金融緩和の取り組みにより、サイクルを持続させるのに

グッゲンハイム インベストメンツ

必要な追加の「ガソリン」が米国経済に補給されたことを示唆している。さらに、新

チェアマン兼グローバル CIO

年の幕開けとともに、米中貿易政策がいくらか明確になってきた。土壇場でまとま った第1段階の米中貿易合意は、どちらの側も当面は関税を現行水準に維持する との見込みを与え、恐らく米国企業に多少の安心感を与えているだろう。これは米 国製造業の回復の兆しを支える一助になると見込まれ、こうした回復の兆しは1月 の米供給管理協会(ISM)製造業購買担当者景気指数(PMI)が3.1ポイント上昇し て50.9となり、2019年7月以来初めて景気拡大水準に戻ったことなどに見られる。 向こう数か月間、FRBは金融政策を据え置くと予想される。発表される指標データ を注視して現行フェデラルファンド(FF)水準が引き続き適切であることを確認する ためである。金融政策は遅れて経済に作用するので、2019年10月の最後の利下 げ効果は2020年半ばにならないと判明しないかもしれない。低金利が消費者やク レジット市場に浸透するにつれて、恐らくさらに多くの経済指標が改善すると思わ れる。 しかし、武漢のコロナウイルスが中国とグローバル経済全体にとって重大な脅威と して最近浮上してきた。確認された感染者数と関連死亡者数はここ数週間に激増 し、中国の湖北省が依然として発生の中心地だが、感染者は現在28か国で確認さ れている。この疫病のまん延を封じ込めるための休業や旅行制限などの対策によ り、第1四半期の中国本土の実質生産が急減すると見込まれ、さらに中国とその他 の諸国/地域との年間貿易フローが4兆5,000億ドルにのぼることから、深刻な余 波をもたらすだろう。中国と他の感染国の経済活動がどのくらいの期間低迷するか は依然として全く不明だが、世界の国内総生産(GDP)に占める中国の割合が 2003年以来ほぼ4倍の16.3%になったことを踏まえると、コロナウイルスの発生は 重症急性呼吸器症候群(SARS)をはじめとする近年の感染症よりはるかに大きな 混乱をもたらす可能性がある。したがって、FRBは金融政策を据え置いているが、 コロナウイルスなどの不確実性を踏まえると、リスクの観点から、利上げより利下 げが望ましいと思われる。 前向きな内容のデータに力づけられ、市場参加者は新たな10年の幕開けとなる 2020年を慎重な楽観論をもって迎えた。クレジットスプレッドは過去最低水準に近

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いが、ハイイールド社債とバンクローンのCCC格とBB格のスプレッド差は依然とし て5年平均を上回っている。10年物米国債の利回りは2019年の最低水準から脱し て2%越えを試す展開が数回あったが、いずれも失敗した。こうした状況から想起 されるのは、FRBが景気後退を回避することに成功したものの、2020年は注視す べき数々のリスク(米国大統領選挙、米国と欧州の貿易交渉、米国とイランの軍事 衝突の可能性、中国における企業と地方政府のデフォルト増加など)を抱えながら 始まったことだ。 世界の中央銀行が効果のない流動性供給を行った結果、クレジットの過剰感が高 まるのではと引き続き懸念される。現在の景気サイクルにおける世界の成長の多く は債務の積み増しによるものであり、限界収益が低下している。バブルを多少しぼ ませる景気下降期が訪れず、投資家は低金利ゆえに格下げやデフォルト寸前の 借り手に資金を提供せざるをえないことから、現在のところ、安易に資金調達が可 能となっていることが最も脆弱な企業を延命させることになっている。この環境にお いて、CCC格とBB格のスプレッド差が再び過去最低水準に縮小したとしても、それ は追うべきクレジットラリーではない。スプレッドがタイトで、価格が高い状況では、 信用力が盤石と評価され、かつ、スプレッドがリスクに十分見合う水準にある投資 対象に投資することが引き続き賢明である。

ファンダメンタルズの現実 レバレッジドクレジット市場は2019年に目覚ましいパフォーマンスを示し、ハイイー ルド債は14.4%、バンクローンは8.1%のトータルリターンを創出した。弊社は2019 年年初に金融政策の引き締め休止を受けてクレジットスプレッドがタイト化すると予 想したが、リターンはこの予想を確認するものとなった。同年1月1日に明らかでな かったのは、FRBが後に75bps緩和し、クレジットスプレッドを予想以上に一段とタ イト化させ、さらに長期にわたってタイト化が続くことであった。 2019年のインデックスレベルのリターンは、クレジットのファンダメンタルズの真の 状況を覆い隠している。社債とローンの両セクターで、CCC格がBB格を6.0%ポイ ント、アンダーパフォームした。通常は2019年に見られたような市場ラリーでは、 CCC格の債券がクレジットの中ではベストパフォーマーとなるはずだった。それに も関わらず、(CCC格がアンダーパフォームした)2019年の市場リターン特性はむ しろ、2019年は収益の伸びが弱くクレジットの質が悪化した年であったことを示唆 している。 第3四半期(直近で入手可能なデータ)においては、企業の税引前利益の伸びが ハイイールド債で前年同期比-0.5%、バンクローンで同3.0%となり、いずれも前 年同期の二桁の伸びから鈍化した。収益が伸び悩んだ結果、企業が「債務削減 (debt diet)」を続けた1年間であったのに、インタレストカバレッジが低下し、レバレ ッジが上昇したため、投資家は資金をハイイールド社債市場は縮小した。2019年 第3四半期現在のハイイールド債の負債比率(debt/earnings)は5.0倍となった が、1年前は3.8倍であった。インタレストカバレッジは前年同期が4.2倍だったのに

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対して、第3四半期には3.6倍に低下した。重要なのは、企業が予想収益成長また はデレバレッジ目標を達成できなかったという理由で、格付け機関が格下げペース を加速させたことだ。 S&Pレーティングスは2019年11月までの12か月間にLSTAローンインデックスの 360件近いローンを格下げしたのに対して、格上げしたのは111件にすぎず、格下 げ/格上げ比率は3.2倍となった。これほどひどくはないが同様に、ICEバンクオブ アメリカ・ハイイールド・コーポレート・インデックスの格下げ/格上げ比率は約1.3 倍となり、2018年からのトレンドを覆した。2018年は、格上げされた債券が361件 であったのに対して、格下げされた債券は276件であり、格下げ/格上げ比率は 0.76倍であった。

ローンの格下げ/格上げ比率が急上昇 S&P レーティングスは 2019 年 11 月までの 12 か月間に LSTA ローンインデックスの 360 件近いローンを格下げし たが、これに対して格上げし たのは 111 件にすぎず、格下 げ/格上げ比率は 3.2 倍とな った。これほどひどくはないが 同様に、ICE バンクオブアメリ カ・ハイイールド・コーポレー ト・インデックスの格下げ/格 上げ比率は約 1.3 倍となっ た。

Source: Guggenheim Investments, S&P LCD, ICE Data Services. Data as of 12.31.2019.

レバレッジド・クレジット・セクターのプラス材料は、デフォルト率が依然として過去平 均を下回っていることである。ICEバンクオブアメリカ・ハイイールド・インデックスの 額面加重ベースのハイイールド債デフォルト率は、2018年が2.0%だったのに対し て2019年は3.5%に上昇したが、エネルギーセクターを除けば、わずか1.6%だっ た。ローンでは、LSTAレバレッジド・ローン・インデックスの過去12か月額面加重デ フォルト率は2018年の1.6%から1.4%に小幅低下した。弊社のハイイールド債デ フォルト率モデルによると、2020年のデフォルト率は2019年のデフォルト率付近に とどまる見込みだが、最近のコモディティ価格の下落を鑑みると、小幅上昇するリ スクがあると思われる。 年間リターンが高い年の翌年は通常リターンが低くなるので、ハイイールド債やレ バレッジドローンの2020年のリターンが二桁台になるとは思えない。現に、トータル リターン結果の予想範囲は引き続き非対称のように見え、リスクは下振れ方向に 傾いている。スプレッドが過去最低水準に戻るとみる2020年の強気市場シナリオ では、5年物米国債に対する超過リターンはハイイールド社債が8~9%、バンクロ

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ーンが6~7%になると推測される。しかし、クレジットスプレッドがハイイールド社債 で210bps、バンクローンで190bps拡大することによって、クーポンリターン分が相 殺することになり、同年のトータルリターンはマイナスとなるだろう。 スプレッドが過去最高水準に拡大するような更に深刻な景気下降シナリオでは、弊 社の分析によると、ハイイールド社債市場は米国債を36%アンダーパフォームす る可能性がある。バンクローンでは、クーポンがより低く、信用プロファイルがやや 弱く、流動性が限定的であるが、年間損失(下振れ)は41%程度にとどまると思わ れる。 低調な収益成長、高いレバレッジ倍率、労働市場の逼迫による利益率圧迫を鑑 み、このサイクル末期においては、弊社はよりディフェンシブなクレジット投資機会 を引き続き模索している。ローンは年間トータルリターンの下振れがより大きくなる 可能性があるが、格付けが高めのBB格やBB+格のローンの方が同等の格付け の社債より優れた価値を提供すると弊社はみており、本レポートの以下のセクショ ンではその理由を概説する。

リターンが高い年の翌年は通常、リターンが低くなる 年間リターンが高い年の翌年は 通常リターンが低くなるため、ハ イイールド債やレバレッジドロー ンの 2020 年のリターンが二桁台 になるとは思えない。

Source: Guggenheim Investments, ICE Data Services, Bloomberg, Credit Suisse. Data as of 12.31.2019.

バンクローンへの投資機会に注目 質を引き上げることによって、より高い利回りを獲得する機会を市場で得ることは、 それほど多くない。バンクローンとハイイールド社債の両方に投資するクレジット投 資家にとっては、2020年の幕開けとともに、BB格とシングルB+格のバンクローン でそのような機会が現れた。

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バンクローン市場は現在、同等の格付けを持つ社債より高い利回りを提供してい る。BB格ローンはBB格社債より0.4%ポイント高い利回りとなっており、これは5年 間の平均値である-0.1%ポイントを上回る。

バンクローンはハイイールド社債より優れた価値を提供している バンクローン市場は現在、同等 の格付けを持つハイイールド社 債より高い利回りを提供してい る。同じことがスプレッドについて も言える。

Source: Guggenheim Investments, ICE Data Services, Bloomberg, Credit Suisse. Data as of 1.31.2020.

シングル B 格ローンはシングル B 格社債より 1.3%ポイント高い利回りとなってい るが、これに対して 5 年間の平均値は 0.3%ポイントである。同じことがスプレッド についても言える。BB 格バンクローンのディスカウントマージンは現在 BB 格社債 のスプレッドより 83bps ワイドであり、シングル B 格バンクローンのディスカウントマ ージンはシングル B 格社債のスプレッドより 155bps ワイドとなっており、いずれも 5 年間の平均値を上回っている。弊社が見るところ、このレラティブバリューは BB 格ローンではテクニカル要因によるものだが、シングル B 格ローンではファンダメン タルズ要因によるものである。

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ローンの利回りは債券を上回り、過去 10 年で最高水準にある BB 格ローンは BB 格社債より 0.4%ポイント高い利回りとなって おり、これは 5 年間の平均値で ある-0.1%ポイントを上回る。シ ングル B 格ローンはシングル B 格社債より 1.3%ポイント高い利 回りとなっているが、これに対し て 5 年間の平均値は 0.3%ポイ ントである。

Source: Guggenheim Investments, Bloomberg, Credit Suisse. Data as of 2.7.2020.

リファイナンスリスクは、BB 格ローンの投資機会にとってのテクニカル要因といえ る。新発 BB 格ローンはロンドン銀行間取引金利(Libor)+200~225bps 前後の 価格となっており、既発 BB 格ローンの平均ディスカウントマージンである 261bps を下回る。リファイナンスリスクがなければ、BB 格ローンは発行時のスプレッドによ り近い水準で取引され、価格は額面の約 102.5%に押し上げられるだろう。しかし、 リファイナンスリスクがあるため、平均的な BB 格ローンは現在、額面をわずかに下 回る水準で取引されている。一方、現在、繰上償還できる BB 格社債の割合は小さ くなっている。BB 格社債は額面を優に上回る 104.8%前後で取引されており、スプ レッドは既発 BB 格ローンよりタイトになっている。 ローンはリファイナンスされることがより多いため、プライスリターンが限定的され、 クーポン収入が低下する。リファイナンスがなければ、4.5%のクーポンと、スプレッ ドが 60bps 縮小することで、BB 格ローンのトータルリターンは 6.0%前後となる可 能性がある。リファイナンスは、クーポンが低下することにより、このリターン推定値 を 0.5%ポイント押し下げる。ローンの需要が高い時期には、クーポンが低くても、 価格がリプライスされたローンは再び額面を上回る水準で取引されるので、その価 格での売却が出来ることで、リファイナンス増加傾向時の初期段階における繰上 償還リスクをいくらかオフセットすることになる。

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発行市場のスプレッドがタイトなため、BB 格ローンのリファイナンスリスクが高い リファイナンスリスクは、BB 格ロー ンの投資機会にとってのテクニカ ル要因といえる。新発 BB 格ロー ンはロンドン銀行間取引金利 (Libor)+200~225bps 前後の価 格となっており、既発 BB 格ローン の平均ディスカウントマージンであ る 261bps を下回る。

Source: Guggenheim Investments, S&P LCD, Bloomberg, Credit Suisse. Data as of 12.31.2019.

シングル B 格ローンでは、その格下げ加速を受けて、スプレッドがシングル B 格社 債よりワイドな水準にあるが、これはむしろファンダメンタルズ要因によるものであ る。堅調な発行と格下げを背景に、シングル B-格ローンがローンインデックスに 占める割合は 2018 年末の 9.6%から上昇し、過去最高の 14.0%となっている。シ ングル B-格ローンは CCC 格に近いため、ローン投資家にとって大きなリスクとな る。ローン需要の最大の源泉であるローン担保証券(CLO)は通常、CCC 格ローン の組み入れ上限を 5.0~7.5%としている。CCC 格ローンの供給が急増すれば、需 要が限定的となり、価格が下落するだろう。CLO のほかには、CCC 格ローンを進 んで購入する大きな買い手プールはない。

2019 年、堅調な発行と格下げにより、B-格ローンの割合が過去最高となった 堅調な発行と格下げを背景に、シ ングル B-格ローンがローンイン デックスに占める割合は 2018 年 末の 9.6%から上昇し、過去最高 の 14.0%となった。

Source: Guggenheim Investments, S&P LCD. Data as of 1.31.2020. Shaded areas represent recession.

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弊社もローン市場における格下げ懸念を共有している。それがいつか同セクター にもたらす混乱を軽視することなく言えば、既存格付けにしがみついている感のあ る高格付けローンにまで、懸念が否応なしに広がる場合があり得るだろう。過去 5 年間、シングル B 格ローンは平均 515bps のディスカウントマージンで取引されて きたが、シングル B+格ローンの 28%とシングル B 格ローンの 34%はこの平均よ りワイドなスプレッドで現在取引されている。格下げを回避すれば、シングル B 格ロ ーンのトータルリターンは 8~9%上振れする可能性があり、そうなれば、ベータが より高く、同じような格下げリスクを抱え、過去のスプレッド平均に比べて割高感が あるシングル B 格社債に引けを取らない。 BB 格ローンにしても、シングル B 格ローンにしても、投資機会にリスクがないわけ ではない。弊社のリサーチは、こうしたリスクを進んで積極的に管理すれば、レバレ ッジドクレジットの投資家が債券よりローンでより大きな見返りを得ることを示唆し ている。例えば、一つの管理法は、ローンが同じ発行体の債券より割安な水準で 取引されている機会を探すことである。こうした機会を発掘して生かせるのは、アク ティブマネジャーだけである。

サイクル全体を踏まえた戦略的思考 短期的には、経済指標のさらなる改善を背景に、金利市場が向こう 1 年間に織り 込んでいた FRB による 30bps の利下げを織り込まなくなれば、ローンはトータルリ ターン・ベースでハイイールド社債をアウトパフォームする可能性がある。金利デュ レーションがなければ、 ローンは力強い成長シナリオにおける米国債の利回り上 昇の悪影響を免れるだろう。また、ローンのスプレッドもさらにタイト化する余地が ある。確かに、スプレッドのタイト化はリファイナンスによって生じることがあり、その 場合はトータルリターンの上昇可能性が限定的になる。ローンは強気市場のシナ リオではアップサイドが限定されるが、高デフォルト率のシナリオでのダウンサイド プロテクションを考えれば、前述のリターンの抑制は正当化できると考えている。

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ローンはデフォルト時の回収率はハイイールド債より高い 過去 12 か月間のデフォルト全体 では、第 1 順位ローンの平均回収 率は 60%であったが、無担保ハイ イールド債の平均回収率は 35% であった。

Source: Guggenheim Investments, Moody’s. Data as of 12.31.2019.

最近のデフォルト動向によると、ローンの回収率は過去平均を下回っているが、平 均回収率はハイイールド社債のデフォルト時の回収率より依然として高い。過去12 か月間のデフォルト全体では、第1順位ローンの平均回収率は60%であったが、 無担保ハイイールド債の平均回収率は35%であった。現在がそうであるように、ロ ーンのリスクプレミアムは同等の格付けを有する債券に比べてそれほど高くはなら ないが、その理由はこうした回収率の違いにより説明される。 前述したように、ローン市場の信用プロファイルはあまり良くなく(特にシングルB格 に集中的に)、流動性も限定的であるため、両セクターのスプレッドが再び過去最 高水準になれば、1年間のトータルリターン結果はローンの方がより悪化するだろ う。ローン市場は41%の損失を生じる可能性があるのに対して、ハイイールド社債 は36%の損失になるとみられる。しかし、デフォルトや回収案件が多い時期を含む サイクル全体で見れば、ローンの回収率が比較的良いことから、ローンの損失調 整後スプレッドはより高くなる。両セクターの長期デフォルト率を4.5%、そして債券 とローンの回収率を最近の実績値である35%と60%と想定すると、損失調整後ス プレッドはハイイールド社債市場が約62bps、バンクローンが274bpsとなる。 シングル B 格のレラティブバリューの投資機会に対しては、慎重な姿勢で臨むべき である。CCC+格への格下げのテクニカルな影響が潜在的なリターン上昇余地よ り重要性が高いと思われるため、弊社は現在のところ B-格ローンに対する監視 を強める考えである。弊社は格付けと企業の資本構成を通じた質の引き上げに力 を入れていることから、B+格ローンはこの格付けコホート(集団)の中ではより良 い投資先といえる。

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重要な通知及び表明事項 指数及びその他の定義 ここに表示された指数は、運用されているものでなく、直接投資の対象とすることはできません。指数のパフォーマンスは取引コスト、報酬 または費用を含みません。 Credit Suisse Leveraged Loan Index は、投資可能な米ドル建レバレッジ・ローン市場をトラックします。これは、「5B」またはそれ以下 のローンから構成され、この指数に含まれる最も高いローンは、ムーディーズ/SP の格付において Baa1/BB+または Ba1/BBB+です。す べてのローンは、先進国に所在する借手による最低 1 年満期の借入れ済みタームローンです。 Intercontinental Exchange (ICE) Bank of America Merrill Lynch High-Yield Index はハイイールド社債の一般的に使用されるベ ンチマーク指数です。 S&P 500 Indexは、米国において活発に取引されている500銘柄の株式を時価加重平均したものであり、経済全般の動向の尺度となる べく構築され、すべての主要産業を含みます。 ベーシス・ポイント(bps)は、ある商品の価値または利回りの変化を表すために用いられる計測単位です。1ベーシス・ポイントは、0.01%と 同一です。 Three-year Discount margin to maturity (dmm)、またはディスカウント・マージンは、ローンの利回り(yield-to-refunding)から現在の 3ヶ月LIBORを差し引いたものです。平均満期は3年と想定しています。 London Interbank Offered Rate (Libor)は、無担保の短期融資の短期融資の際の銀行間の金利をいいます。 Spreadとは、同様の満期の米国債の利回りとの差を言います。 EBITDAとは、利払い・税引き前・償却前利益のことを指しており、事業の収益力の指標として標準的に使用されています。 リスクに対する考察 債券投資は、信用リスク、流動性リスク、金利リスクおよび商品によってはカウンターパーティーリスクを負っています。これらリスクは、投 資が、一つの発行体、産業、地域または国に集中している限りにおいて、増大する可能性があります。一般に、債券投資の市場価値は、 とりわけ、元となる債務の対象債務者または合成証券の場合は参照対象債務の債務者もしくは発行者の財務状況、経済全般の状況、特 定の金融市場、政治的イベント、ある特定の産業の発展またはトレンドの状況及び適用金利水準の変動状況に応じて変動します。 バンクローンは、通常投資適格未満であり、様々な理由により非収益化、または不良化することがあります。非収益化した、または不良化 したローンは、実態的に新しい条件のための交渉又はリストラクチャリングを必要とすることがあり、それが、とりわけ、利率の相当な減免、 ローン元本の相当な償却等の結果となることがあります。加えて、特定のバンクローンは、高度にカスタマイズ化されているので、公に取 引される証券に比べ容易に売買できないことがあります。セカンダリー取引市場においては、制約が課せられる場合があり、適切なレベル の流動性が確約されるわけではありません。ある種の銀行ローンにおいては、譲渡に当たって制約が課せられる場合があります。バンク ローンに関連するリスクは、一般的に、プレミアムまたはペナルティーの受け払いなくいつにても繰り上げ償還が発生する可能性を含みま す。 ハイ・イールド・デット証券は、一般に無担保であり、当該発行体の一部の他の債務よりも劣後することがあります。ハイ・イールド・デット証 券が低格付けであり、投資適格未満のローンであることは、発行体の財務状況、経済全般の情勢又はこれら双方が不利に変化した場合 に、元本又は金利の支払い能力を毀損する可能性がより大きいことを反映しています。投資適格未満の格付の証券は、一般に「ジャンク・ ボンド」と呼ばれています。ハイ・イールド・デット証券のリスクは、とりわけ下記を含みます。 (i) 流動性及びセカンダリー市場のサポートが 限られていること、 (ii) 適用金利水準の変化により市場において相当程度のボラティティが生ずること、(iii)ハイ・イールド・デット証券の発 行者の収入が、 債務の返済にあたり不十分となる可能性があること、並びに (iv) 金利上場局面、経済の下降局面又はこれら双方により、 このようなハイ・イールド・デット証券の発行体の信用力低下及び潜在的な倒産の可能性。経済情勢の悪化又は金利上昇により、ハイ・イ ールド・デット証券の市場が著しく毀損されることがあり、発行済のハイ・イールド・デット証券の価値及び当該発行体の元利金の返済能力 に悪影響を及ぼす可能性があります。ハイ・イールド・デット証券の発行体は、レバレッジ比率が高いことがあり、従来からある資金調達が できない可能性があります。 この資料は専ら情報の提供を目的としたものであり、いかなる有価証券、投資戦略または投資商品に関して、投資助言または推奨をする ものではありません。この資料はフィデューシャリー義務の立場から提供されたものではなく、投資決定を行うための十分な根拠となること を意図したものとみなすべきではありません。また、特定の有価証券の売買に関する勧誘とみなしてはなりません。 本資料は、会計、法務 または税務上のアドバイスを供与するという考えから頒布するものではありません。これらの問題については、貴社の法律または税務上 のアドバイザーに助言を求めてください。 本資料は、著者の意見を含みますが、グッゲンハイム・パートナーズまたはその子会社の意見を含むものとは限りません。著者の意見は、 予告なく変更することがあります。本資料に含まれる将来にむかっての表明、予測および一定の情報は、自社または他社の調査および他 の情報源に基づくものです。本資料に含まれる情報は、信頼に足ると信ずる情報源より取得していますが、その正確性を保証するもので はありません。本資料の如何なる部分も、グッゲンハイム パートナーズLLCの書面による明示的同意なしには、如何なる方法であれ、複 製し、または引用することはできません。過去のパフォーマンスは、将来の結果を暗示するものではなく、そのような情報に基づく判断につ き、現時点における正確性、責任を表明または保証するものではありません。

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1 グッゲンハイム・インベストメンツの預り資産総額は、2019年12月31日現在のものです。ここには、運用資産に対するレバレッジを含む 118億米ドルを含みます。グッゲンハイム・インベストメンツは、下記の関係会社による投資運用業務を総称します。Guggenheim Partners Investment Management, LLC, Security Investors, LLC, Guggenheim Funds Distributors, LLC, Guggenheim Funds Investment Advisors, LLC, Guggenheim Corporate Funding, LLC, Guggenheim Partners Europe Limited, GS GAMMA Advisors, LLC, and Guggenheim Partners India Management. 2

グッゲンハイム・パートナーズの運用資産は、2019年12月31日現在のものであり、時価約670億米ドルの顧客へのコンサルティング・サ ービスの対象資産を含みます。 © 2020年 グッゲンハイム・パートナーズLLC。グッゲンハイム・パートナーズ LLC による明示的な書面による許可なく、本文書のいかなる 部分についても、いかなる形式における再作成および他の出版物における引用を禁じます。

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グッゲンハイムの投資プロセス グッゲンハイムでは、行動バイアスを軽減し、より優れた意思決定のつながるように設計された体系的で規律をもった 投資プロセスに基づいて債券ポートフォリオの運用を行なっています。弊社の投資プロセスでは、最良のリサーチとア イデアをマクロリサーチ、セクターチーム、ポートフォリオ構築およびポートフォリオマネジメントの 4 つの機能を、専門 性に応じて分離しています。このプロセスにより、特定の個人やグループに依存することなく、認知バイアス、衝動的 な判断、その他行動ファイナンスに基づく意思決定の落とし穴を避けることを目的としています。魅力的なリスク調整 後リターンを提供する投資機会を追求するため、弊社のアセットアロケーションは広く採用されているベンチマークとは 大きく異なっております。

グッゲンハイム インベストメンツについて グッゲンハイム インベストメンツは、グッゲンハイム パートナーズのグローバル資産運用および投資助言部門です。 債券、株式およびオルタナティブ戦略の資産合計は 2,150 億ドル 1 に上ります。グッゲンハイムでは保険会社、企業、 公的年金基金、ソブリン・ウェルス・ファンド、基金・財団、コンサルティング会社、資産運用会社、富裕層投資家のお 客様のリターンとリスクのニーズに重点をおいています。弊社の 290 名以上の投資専門家は、市場トレンドを理解し、 しばしば複雑で十分な調査が行われていない分野で見過ごされている投資機会を見つけ出すため、厳密な調査を行 っています。この投資運用アプローチによって、グッゲンハイムは投資の分散と魅力的な長期的成果を実現する革新 的な戦略を実行しております。

グッゲンハイム パートナーズについて グッゲンハイム パートナーズは 2,750 億ドル 2 以上の資産を運用している世界的な投資助言会社です。投資運用業 務、投資銀行業務、保険サービスの弊社の 3 つの主要ビジネス全てにわたり、革新的なソリューションによって大きな 成果を生み出してきました。世界中の拠点に 2,400 人の専門家を擁する弊社は、お客様の戦略的利益を前進させ、 卓越かつ一貫した長期的な結果を生み出すことに力を尽くしています。弊社のウェブサイト (GuggenheimPartners.com)やツイッター(twitter.com/guggenheimptnrs)にて、当社の高度な専門性と価値につい てさらに詳しくご覧ください。

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Guggenheim Investments

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