Japan Q4 2021 High-Yield and Bank Loan Outlook

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2021 年 11 月

ハイイールド債とバンクローンの見通し

ハイイールド債市場は エバーグランデのリスクを見誤っているか


Investment Professionals Scott Minerd Chairman of Investments and Global Chief Investment Officer Kevin H. Gundersen, CFA Senior Managing Director, Portfolio Manager Thomas J. Hauser Senior Managing Director, Portfolio Manager Brian Smedley Chief Economist, Head of Macroeconomic and Investment Research Maria M. Giraldo, CFA Managing Director, Investment Research

目次 要旨 .......................................................................................................................... 1 本レポートのハイライト ............................................................................................... 1 レバレッジクレジット・スコアボード .............................................................................. 2 マクロ経済概況 .......................................................................................................... 3 市場見通し ................................................................................................................ 4 投資への示唆 ........................................................................................................... 8


要旨 金利上昇懸念や非常に根強いインフレ懸念にもかかわらず、グローバル・クレジットのファ ンダメンタルズは引き続き総じて堅調である。経済は今や飛躍的ではないものの着実にパ ンデミックのショックから立ち直りつつあり、こうした中で発行体の信用力は引き続き向上し ている。デフォルトは過去最低水準で推移し、社債の流動性は十二分にあり、レバレッジ レシオの低下やインタレストカバレッジの改善が見られ、レバレッジドクレジットのキャッシ ュフロー総額は新型コロナウイルス禍前の水準に回復した。 しかし、実力以上に事業を拡大したエバーグランデ(恒大集団)など、中国の不動産会社 が債務返済問題に直面していることが次々に明らかとなり、警告を促している。弊社が問 題含みと考えるのは、強い先行き不安に直面しているにもかかわらず、クレジット市場全 般、特にハイイールド債市場がこれまでになく無反応なことである。市場が潜在的なリスク を表面上見て見ぬふりをしている理由は2つあると考えられ、それは潤沢な市場流動性と 中国政府に対する投資家の確信である。つまり、投資家は中国政府がエバーグランデの 債務やその他の中国不動産会社の問題を難なく解消することを演出できると信じている のだ。本レポートでは、ハイイールド債とアジアとの関連性をテクニカル面とファンダメンタ ル面からいくつか示し、投資家が今後投資決定をする際にそれらに留意するよう促す。

本レポートのハイライト 

アジアのハイイールド債セクターはエバーグランデをめぐる懸念を織り込んでいるが、 その他のクレジット市場は、通常は正の相関関係を示すにもかかわらず、懸念の兆 候を見せていない。弊社が見るところ、こうした異常な状況は中国がエバーグランデ の債務清算を首尾よくやってのけると市場が確信していることを表すが、債務過多の 業種に対する中国政府の取り締まりが長期的影響をもたらすことを市場は無視して いると思われる。

米国のハイイールド債市場はもはや多くの市場参加者が考えているような国内の孤 島(周囲から隔絶された安全地帯)ではない。弊社のリサーチによると、典型的なハイ イールド債発行体は米国以外の収益源へのエクスポージャーが27%あり、あるセク ターではエクスポージャーが44%にものぼる。このような相互関連性は、中国の成長 が減速した場合に、その影響が二次効果や三次効果を通じて米国のハイイールド債 インデックスの発行体に及びやすいことを意味する。

中央銀行による潤沢な流動性供給も、米国のハイイールド債投資家がリスクに無頓 着になっている一因であろう。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)によるテーパリ ング(資産購入の縮小)をはじめ、中央銀行各行は供給した資金を今後12カ月間に 一部回収すると予想される。

企業のファンダメンタルズが非常に強く、経済が改善しつつあることから、弊社は米 国のハイイールド債市場に対して強気な見方を維持しているが、サイクルの各段階を 進んでいくに際してリスクに注意する方針である。

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マクロ経済概況 火消し:エバーグランデ崩壊への対応予想 「世界第 2 位の経済大国

中国第2位の不動産開発会社であるエバーグランデが抱える約3,000億ドルの

がこのような危機に見舞

債務について利払い遅延の可能性が9月に報じられ、アジアのクレジット市場

われると、当然のことだ

にパニックを引き起こした。エバーグランデの破綻についてはリーマン・ブラザ ーズの時のようにうわさがあり、破綻すれば、借金に依存した中国経済を崩壊

が、その影響は世界中に

させかねない大惨事を招くとともに、世界中に広がって再び世界金融危機をも

広がることになり得る」

たらす恐れがあるとささやかれていた。また、こうした危機にロングターム・キャ ピタル・マネジメントの破綻を思い出す者もいた。同社はレバレッジ依存度が高

– Scott Minerd, Chairman of Investments and Global Chief Investment Officer

いヘッジファンドで、1998年に破綻し、世界的な金融メルトダウン(相場暴落)の 懸念を抑えるためにFRBの管理下での救済と債務清算を余儀なくされた。 中国の政策当局は、「3つのレッドライン」政策を通じて不動産セクターを抑制し ようとして、エバーグランデの今回の流動性危機を引き起こした。同政策は中 国の開発業者に対して現金短期負債比率を1倍超に維持すること、負債を資 産の70%未満に維持すること、そして資産を超える負債を抱えないことを義務 付けるものである。開発業者がこれらのレッドラインを越えれば、規制当局は開 発業者が負債をさらに増やせないように制限を課す。エバーグランデは昨年に 3つのレッドラインすべてを越え、今なおそのうち2つのラインを越えていること から、債務を履行するための資金繰りに奔走する羽目となった。 月末が近づく中、中国政府が介入して流動性を供給し、国営企業と政府系企 業にエバーグランデの資産を購入するよう水面下で圧力をかけると、緊張は和 らいだが、エバーグランデが最終的にどうなるかについてはまだ分からない。 最も可能性が高いのは「火消し」アプローチであり、エバーグランデの債務の再 編・整理が行われ、同社のプロジェクトを他社によって完成させ、同社の物件が 売却されるまで同社を下支えすることにより、同社の問題が広がらないように 抑え込むというものである。 エバーグランデ問題は世界の注目を集める中、9月の米連邦公開市場委員会 (FOMC)の会合では、FRBは過度に懸念しておらず、少なくとも予定する利上 げを先延ばしするほどのことではないと表明した。その後11月に、FOMCは資 産購入の縮小を開始すると発表したが、2022年の購入縮小額を変更する可能 性を残した。 コアインフレ指標は一貫してFRBの2%目標を上回る水準で推移しており、労 働市場の逼迫を示す兆候も複数見られることから、FOMCは心中穏やかでな いはずだ。最新の『経済見通し(Summary of Economic Projections)』では、 FOMC参加者の予測中央値として2024年までに計6.5回の利上げを予測して いるが、これはユーロドル先物市場で織り込んでいる利上げ回数とほぼ同じで ある。足元のデータを踏まえれば、FRBは2022年に政策の正常化を開始する と考えられる。しかし、中国の状況が予期せぬ結果をもたらし、中国政府がそ の波及を食い止めることが難しくなり、国境を越えて飛び火するようなことにな れば、今後FRBの利上げサイクルにとってリスクとなる。

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市場見通し 調整を促すきっかけに注意 クレジット市場はエバーグランデをめぐる先行き不安に対し、通常とは異なる動 きを示した。ハイイールド債とバンクローンの両セクターは2021年第3四半期に6 四半期連続でプラスのリターンをあげ、ハイイールド債のリターンが0.9%、ロー ンのリターンが1.1%となった。スプレッドはレンジ内で推移し、ICEバンクオブア メリカ・ハイイールド・インデックスのスプレッドは331ベーシスポイント(bps)で当 四半期を終え、クレディスイス・レバレッジドローン・インデックスの3年ディスカウ ントマージンはわずか438bpsであった。 一方海外では、エバーグランデの米ドル建て債券は額面1ドル当たり30セント を割り込んで取引され、実質的に同社のデフォルトを織り込んだ価格となって いる。また、アジアの米ドル建てハイイールド債インデックスの36%は額面1ド ル当たり80セントを割り込んで取引されており、ディストレスト債の水準にあると 考えられる。米国のハイイールド債市場における引き続きタイトなスプレッドと 低ボラティリティは明らかに、投資家が中国の不動産問題のいずれかが飛び 火するとは考えていないことを示している。なぜハイイールド債の投資家はさら に注意すべきなのか、その理由はテクニカルとファンダメンタルの両面におい て複数存在する。 テクニカル面 一つの気掛かりなテクニカルサインは、アジアのハイイールド債市場とアジア の高格付け債市場の分断である。通常、後者は前者の変化を反映する。しか し、アジアのハイイールド社債のスプレッドが拡大したにもかかわらず、アジア のAAA格~BB格社債(以下「高格付け債」と称する代表的なインデックス)には 変化がない。現在、アジアのハイイールド債のスプレッドは高格付け債スプレッ ドの14倍であり、世界金融危機時をはるかに上回っている。

珍しいことにアジアのクレジット市場内での波及がない アジアの高格付け債市場のスプレ ッドはハイイールド債市場におけ る懸念を反映せず、ほとんど変化 していない。このため、2つの市場 の乖離が大きくなっている。

Source: Guggenheim Investments, Bloomberg, ICE Index Services. Data as of 11.15.2021.

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本レポートでは通常、新興国市場について深堀りしないが、ハイイールド債セ クターを悩ませている問題にアジアの高格付け債市場が動じないでいられるの はどうしてか、これは調べる価値がある。最も明らかな理由は業種構成であ る。アジアのハイイールド社債インデックスの構成銘柄の 68%が不動産セクタ ーの発行体によるものだが、高格付け債インデックスでは不動産セクターは 11%にすぎない。その代り、高格付け債インデックスでは 25%が銀行と金融 サービスであり、これらのセクターは一般に何らかの政府支援を受けていると 考えられる。しかし、アジアの銀行システムがこのように動じないのは後述のセ クションで考察するファンダメンタル要因によるものとは思われない。

クレジットストレスはアジアのハイイールド債のみに限定 アジアのハイイールド債市場の価 格は他のクレジット市場から乖離 しており、その乖離幅はまれに見 る大きさである。正の相関が見ら れないのは、エバーグランデ問題 の波及効果がごく小さいと市場が みていることを示唆している。

Source: Guggenheim Investments, Bloomberg, ICE Index Services. Data as of 11.15.2021.

新興国市場と米国のセクターパフォーマンスに異常な乖離 前年比リターン(%)

Source: Guggenheim Investments, ICE Index Services. Data as of 11.15.2021.

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テクニカル面のもう 1 つのアノマリー(特異点)は、より幅広い新興国市場のク レジットリスク・プレミアムに影響が及んでいないことである。実際、市場価格は 投げ売りがもっぱらアジアのハイイールド債に限定されることを示唆している。 このように隔絶された状態は 1997~1998 年のアジア金融危機の前後に限っ て見られたが、当時はその後ストレスがより幅広い市場に広がっていった。ア ジアのハイイールド債のスプレッドは現在 2009 年以降で最もワイドな水準に あるが、その一方でより幅広い新興国市場の社債スプレッドは 2019 年の平均 内で取引されている。 こうした価格の乖離をもたらしている大きな要因は中国政府の関与ではないか と思われる。中国政府は関与を厭わないことに加え、エバーグランデ問題の処 理を巧みに演出する能力があると市場は確信している。政府がその役割につ いてどう語るかにかかわらず、中国当局者はエバーグランデ問題が制御不能 となって次々と連鎖的に波及することを容認しないだろう。そうした確信を持つ のは一つには中国政府が当問題に流動性を投入しているためである。 ファンダメンタル面 市場は中国の政策変更が示唆する幅広い影響を見逃している可能性がある。 その政策変更の主たるものが、不動産セクターの成長を減速させる動きであ る。2021 年現在、中国の不動産開発投資は中国の国内総生産(GDP)の 14%に相当し、他の主要国をかなり上回っている。この水準は 2000 年代半ば の住宅バブル期の米国やスペインの不動産シェアさえも上回る。不動産部門 全般に対するその他の間接出資を加えると、同セクターは中国の GDP の 29%を占めると推計される。

不動産は中国経済の中で大きなシェアを占める GDP に占める不動産投資の割合(%) 米国経済の不動産シェアは世界 金融危機が深刻化する中でピーク (約 7%)に達したが、それでさえ 中国が近年経験した水準には到 底届かない。不動産および付随的 活動は現在、中国の GDP の約 29%を占める。

Source: Guggenheim Investments, China National Bureau of Statistics, Haver Analytics. Data as of 9.30.2021.

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1 つのセクターにそれほど多くの投資を行えば、そのセクター以外で恩恵を受ける 者が必然的に現れる。恩恵を受けてきたセクターの 1 つは、セメント、鉄鋼、アルミ ニウム、銅などの建設資材サプライヤーである。例えば、中国におけるセメント総 需要の約 35~40%が不動産セクターによるものである。このため、政府が画策し た不動産と建設の減速は経済全体に波及し、中国の建設資材の需要にも影響す るだろう。 こうしたことはすでに起きつつある。建設需要が最近減少し始めると、セメントの週 間出荷量が 2015 年以来の低水準に落ち込んだ。バンクオブアメリカ・メリルリンチ のリサーチでは、セメント、鉄鋼およびガラスの需要は 2021 年第 4 四半期に前年 同期比で 10~20%減少し、2022 年にはさらに 5~6%減少すると推計している。 これは米国のハイイールド債投資家に具体的にどのような影響を及ぼすのだ ろうか。ICE バンクオブアメリカ・ハイイールド・インデックスの代表的なハイイー ルド債発行企業は、米国以外の収益源へのエクスポージャーが 27%ある。素 材セクターでは、建設業サプライヤーを含め、発行体の海外収益エクスポージ ャーは平均 47%であり、そのうち 14%がアジアである。要するに、米国のハイ イールド債投資家は彼らが考える以上に海外リスクにさらされる可能性がある と言える。

米国のハイイールド債発行企業はかなりの収益を海外であげている 米国のハイイールド債発行企業の年間売上高に占める海外エクスポージャー平均 世界産業分類基準(GICS)セクター別 投資家の予想に反して、ハイイール ド社債発行体の収益の多くが米国 外から得たものであり、ハイイール ド債発行体の国際化が正しく評価さ れていない可能性を示している。

Source: Guggenheim Investments, Factset, ICE Index Services. Revenue exposure data based on 2020 annual sales. Based on the ICE BofA High-Yield Index constituents as of 9.30.2021.

本レポートで前述したように、不動産投資の縮小は二次効果をもたらす。エバーグ ランデだけで金融危機を引き起こすことはないだろうが、土地売買の減少と不動産 投資の縮小によって住宅価格が全国的に下がればその可能性が出てくる。中国 の銀行は貸出先を介したエクスポージャーを有している。中国の一部の最大手行 では、開発業者向けの貸し出しは平均して貸出残高の1%に満たないが、不動産 関連の貸し出しは平均 27%を占める。

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地方財政も開発業者への土地販売の減少を通じて影響を被り、中国の家計のバ ランスシートは純資産の伸び悩みや雇用、完成したアパートの引き渡し延期を通 じて影響を被る可能性がある。これらセクターへの悪影響はさらに大きな景気減 速を招き、中国の消費の伸びから直接または間接的に恩恵を受けてきた国や産 業を揺るがしかねない。影響が新興国市場全体にひとたび波及すれば、海外リス クのプレミアムが上昇して米国ハイイールド債のバリュエーションの重しになると 予想される。

投資への示唆 アジアのハイイールド債価格の暴落ぶりやハイイールド債セクターと新興国市場の 従来の関係を考えると、米国のハイイールド債市場はエバーグランデ関連の懸念 に直面しながらも、表面上なぜそれほど無頓着でいられるのだろうか。これには複 数の理由が考えられる。 本レポートで何度か触れたが、第 1 の理由は中国政府が影響を拡散させまいと努 めていることだ。政府の関与がなければ、市場はエバーグランデのサプライヤー、 その未完成建設物件、そして中国の消費者や他の開発業者への影響についても っと懸念するはずである。しかし、中国で起きつつある危機の影響がすべて明らか になるのは 2022 年後半以降になると思われる。 1997 年のアジア通貨危機と比較すると、類似点がある。通貨危機が連鎖する中 で、1997 年 7 月のタイバーツ切り下げがアジア中に波及するには 1 年以上を要し た。この通貨危機により、結局のところ、ロシアで国内債務のデフォルトが発生し、 米国株式市場が急落し、ロング・ターム・キャピタル・マネジメントが破綻して FRB がまとめた救済措置の受け入れを余儀なくされた。これらに関連性があることはタ イバーツが切り下げられた当初は明らかではなかった。なぜなら影響が金融シス テムに浸透するのに時間がかかり、過剰な債務を抱える参加者は規制が届かな い市場の影に潜んでいることが多いからだ。今から 1 年後には次から次へと類似 の事態に直面しているかもしれないが、後になって考えてみて初めてそれらが中 国の不動産セクター取り締まりのドミノ効果だったことが分かるだろう。それらは本 格的な危機であるとは限らないが、投資家に大きな損失を負わせ、金融環境の引 き締めをもたらすほど深刻なものとなる可能性がある。 中国の成長減速ストーリーは鈍行列車のようになかなか進まないため、投資家は より目先のクレジットリターン要因に注目している。例えば、近年ハイイールド債セ クターの重しとなってきたコモディティ価格は現在ここ数年来の高値圏にあり、バリ ュエーションが上昇している。原油と天然ガスの価格は、需要が増える冬季にちょ うど差し掛かっていることもあり、2014 年以来の高い水準にあり、銅や鉄鋼など の複数のコモディティ価格はここ数年来の高値に近い水準にある。これもまた新 興国市場のクレジット(収益がコモディティと密接に関係する傾向があるセクター) がディストレス価格になっていないことの一因である。ICE バンクオブアメリカ新興 国市場分散型社債インデックスでは、インデックスの 49%がエネルギーおよび基 幹産業である。 投資家の注目を集めるもう一つの要因は、ファンダメンタルズの改善が米国企業 に関する強気なクレジット見通しを支えていることである。前回のハイイールド債レ ポートで指摘したように、企業のバランスシートには数四半期分の流動性に相当す

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る現金および現金同等物があり、流動性が潤沢である。レバレッジレシオは低下 し、インタレストカバレッジは改善し、レバレッジッドクレジットのキャッシュフロー総 額と収益は新型コロナウイルス前の水準に回復した。ボトムアップアナリストの予 測では、ハイイールド債セクターのレバレッジレシオは 2022 年中にさらに低下する とみている。

レバレッジドクレジットのファンダメンタルズはさらに改善すると見込まれる デルタ株が第 3 四半期の企業業 績にある程度の悪影響を与えたに もかかわらず、ハイイールド債セク ターのレバレッジレシオはさらに低 下すると見込まれる。

Source: Guggenheim Investments, S&P Capital IQ. Data as of 9.30.2021. Based on 430 companies rated BB+ or below with analyst expectations available through Q2 2022. “Exp.” represents consensus analyst expectations.

米国の金融環境指標を見ると、金融環境は第 3 四半期の最後の数週間に引き締 まったものの、新型コロナパンデミック前のいずれの時点よりも依然として緩和的 であることが分かる。金融環境が緩和的な時期は、社債のデフォルト件数が少な いという特徴を示す傾向がある。確かに、ファンダメンタルズの改善と緩和的な金 融環境を背景に、ムーディーズの今後 12 カ月間のデフォルト率予想はパンデミッ ク前の予想を下回っている。 中央銀行が潤沢な流動性を供給する中で、投資家はリターン目標を達成するため の選択肢がほとんどないため、一部の警告フラグについては、それらが差し迫った 懸念になると強く確信するまで無視している。しかし、FRB が資産購入の縮小計画 を進め、他の中央銀行がパンデミック時の資金融通を縮小する措置を取ることか ら、市場の流動性は今後 12 カ月間に減少すると見込まれる。新興国市場では、 複数の中央銀行が高いインフレ率に対処するためにすでに利上げを実施した。

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ムーディーズはハイイールド債のデフォルト率がパンデミック前の水準を下回ると 予想 ファンダメンタルズの改善と緩和 的な金融環境を背景に、ムーディ ーズの今後 12 カ月間のデフォル ト率予想はパンデミック前の予想 を下回っている。

Source: Guggenheim Investments, Moody’s. Data as of 10.31.2021.

現クレジットサイクルにおいて次のデフォルトの波が来るまでにはまだ少なくとも 数年あると予想されるが、重要な変化はもうそこまでやって来ている。その変化と は、サイクルの後期に入るのに伴い、流動性よりもむしろファンダメンタルズによっ てクレジットパフォーマンスに差が生じるようになるというものである。スプレッドが すでに非常にタイトであることを踏まえると、これは世界の成長ドライバーを調べ、 海外エクスポージャーを再評価し、リスクバランスを評価し、低格付けクレジットを 一部売却して利益を確定するのに良い機会になると思われる。弊社は主に B- 格以上のクレジットに注目してきたが、いくつかの業種でここ数カ月ほど投資機会 が出現しており、そのうちファンダメンタルズが盤石なものはヘルスケア、メディア・ 娯楽、テクノロジー、一部の資本財・サービス(資本財製造業、法人向けサービス 業、運輸業)、食品・飲料、そして主に米国の建設業向けの建築資材を扱うサプラ イヤーである。

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重要な通知及び表明事項 指数及びその他の定義 ここに表示された指数は、運用されているものでなく、直接投資の対象とすることはできません。指数のパフォーマンスは取引コスト、報酬 または費用を含みません。 Credit Suisse Leveraged Loan Index は、投資可能な米ドル建レバレッジ・ローン市場をトラックします。これは、「5B」またはそれ以下 のローンから構成され、この指数に含まれる最も高いローンは、ムーディーズ/SP の格付において Baa1/BB+または Ba1/BBB+です。す べてのローンは、先進国に所在する借手による最低 1 年満期の借入れ済みタームローンです。 Intercontinental Exchange (ICE) Bank of America Merrill Lynch High-Yield Index はハイイールド債の一般的に使用されるベンチ マーク指数です。 S&P 500 Indexは、米国において活発に取引されている500銘柄の株式を時価加重平均したものであり、経済全般の動向の尺度となるべく構築さ れ、すべての主要産業を含みます。

ベーシス・ポイント(bps)は、ある商品の価値または利回りの変化を表すために用いられる計測単位です。1ベーシス・ポイントは、0.01%と 同一です。 3年満期割引マージン(dmm)は、割引マージンとも呼ばれ、ローンの平均残存期間を3年と仮定した場合の、ローンのリファイナンス利回 りから現在の3ヶ月間のLiborレートを差し引いたものです。 London Interbank Offered Rate (Libor) とは選ばれた銀行グループが無担保の短期資金調達のために互いに請求するベンチマークレートの ことを言います。 Spreadとは、同様の満期の米国債の利回りとの差を言います。 EBITDAとは、利払い・税引き前・償却前利益のことを指しており、事業の収益力の指標として標準的に使用されています。 リスクに対する考察 債券投資は、信用リスク、流動性リスク、金利リスクおよび商品によってはカウンターパーティーリスクを負っています。これらリスクは、投 資が、一つの発行体、産業、地域または国に集中している限りにおいて、増大する可能性があります。一般に、債券投資の市場価値は、 とりわけ、元となる債務の対象債務者または合成証券の場合は参照対象債務の債務者もしくは発行者の財務状況、経済全般の状況、特 定の金融市場、政治的イベント、ある特定の産業の発展またはトレンドの状況及び適用金利水準の変動状況に応じて変動します。債券投 資には金利上昇に伴い価値が下落する恐れがあります。 バンクローンは、通常投資適格未満であり、様々な理由により非収益化、または不良化することがあります。非収益化した、または不良化 したローンは、実態的に新しい条件のための交渉又はリストラクチャリングを必要とすることがあり、それが、とりわけ、利率の相当な減 免、ローン元本の相当な償却等の結果となることがあります。加えて、特定のバンクローンは、高度にカスタマイズ化されているので、公に 取引される証券に比べ容易に売買できないことがあります。セカンダリー取引市場においては、制約が課せられる場合があり、適切なレベ ルの流動性が確約されるわけではありません。ある種の銀行ローンにおいては、譲渡に当たって制約が課せられる場合があります。バン クローンに関連するリスクは、一般的に、プレミアムまたはペナルティーの受け払いなくいつにても繰り上げ償還が発生する可能性を含み ます。ハイ・イールド・デット証券は投資適格証券と比較してより大きいクレジットリスクと流動性リスクを負っています。 ハイ・イールド・デット証券は、一般に無担保であり、当該発行体の一部の他の債務よりも劣後することがあります。ハイ・イールド・デット証 券が低格付けであり、投資適格未満のローンであることは、発行体の財務状況、経済全般の情勢又はこれら双方が不利に変化した場合 に、元本又は金利の支払い能力を毀損する可能性がより大きいことを反映しています。投資適格未満の格付の証券は、一般に「ジャンク・ ボンド」と呼ばれています。ハイ・イールド・デット証券のリスクは、とりわけ下記を含みます。 (i) 流動性及びセカンダリー市場のサポートが 限られていること、 (ii) 適用金利水準の変化により市場において相当程度のボラティティが生ずること、(iii)ハイ・イールド・デット証券の発 行者の収入が、 債務の返済にあたり不十分となる可能性があること、並びに (iv) 金利上場局面、経済の下降局面又はこれら双方によ り、このようなハイ・イールド・デット証券の発行体の信用力低下及び潜在的な倒産の可能性。経済情勢の悪化又は金利上昇により、ハ イ・イールド・デット証券の市場が著しく毀損されることがあり、発行済のハイ・イールド・デット証券の価値及び当該発行体の元利金の返済 能力に悪影響を及ぼす可能性があります。ハイ・イールド・デット証券の発行体は、レバレッジ比率が高いことがあり、従来からある資金調 達ができない可能性があります。 本資料は専ら情報提供もしくは教育目的のためにのみ配布されており、いかなる有価証券、投資戦略または投資商品に関して、投資助言 または推奨をするものではありません。この資料はフィデューシャリー義務の立場から提供されたものではなく、投資決定を行うための十 分な根拠となることを意図したものとみなすべきではありません。また、特定の有価証券の売買に関する勧誘とみなしてはなりません。 本 資料は、会計、法務または税務上のアドバイスを供与するという考えから頒布するものではありません。これらの問題については、貴社の 法律または税務上のアドバイザーに助言を求めてください。 本資料は、著者の意見を含みますが、グッゲンハイム・パートナーズまたはその子会社の意見を含むものとは限りません。著者の意見 は、予告なく変更することがあります。本資料に含まれる将来にむかっての表明、予測および一定の情報は、自社または他社の調査およ び他の情報源に基づくものです。本資料に含まれる情報は、信頼に足ると信ずる情報源より取得していますが、その正確性を保証するも のではありません。本資料の如何なる部分も、グッゲンハイム パートナーズLLCの書面による明示的同意なしには、如何なる方法であ れ、複製し、または引用することはできません。過去のパフォーマンスは、将来の結果を暗示するものではなく、そのような情報に基づく判 断につき、現時点における正確性、責任を表明または保証するものではありません。 1 グッゲンハイム・インベストメンツの預り資産総額は、2021年9月30日現在のものです。ここには、運用資産に対するレバレッジを含む 179億米ドルを含みます。グッゲンハイム・インベストメンツは、下記の関係会社による投資運用業務を総称します。Guggenheim Partners Investment Management, LLC, Security Investors, LLC, Guggenheim Funds Distributors, LLC, Guggenheim Funds Investment Advisors, LLC, Guggenheim


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グッゲンハイム インベストメンツについて グッゲンハイム インベストメンツは、グッゲンハイム パートナーズのグローバル資産運用および投資助言部門です。 債券、株式およびオルタナティブ戦略の資産合計は 2,590 億ドル 1 に上ります。グッゲンハイムでは保険会社、企業、 公的年金基金、ソブリン・ウェルス・ファンド、基金・財団、コンサルティング会社、資産運用会社、富裕層投資家のお 客様のリターンとリスクのニーズに重点をおいています。弊社の 260 名以上の投資専門家は、市場トレンドを理解し、 しばしば複雑で十分な調査が行われていない分野で見過ごされている投資機会を見つけ出すため、厳密な調査を行 っています。この投資運用アプローチによって、グッゲンハイムは投資の分散と魅力的な長期的成果を実現する革新 的な戦略を実行しております。

グッゲンハイム パートナーズについて グッゲンハイム パートナーズは 3,300 億ドル 2 以上の資産を運用している世界的な投資助言会社です。投資運用業 務、投資銀行業務、保険サービスの弊社の 3 つの主要ビジネス全てにわたり、革新的なソリューションによって大きな 成果を生み出してきました。世界中の拠点に 2,300 人以上の専門家を擁する弊社は、お客様の戦略的利益を前進さ せ、卓越かつ一貫した長期的な結果を生み出すことに力を尽くしています。弊社のウェブサイト (GuggenheimPartners.com)やツイッター(twitter.com/guggenheimptnrs)にて、当社の高度な専門性と価値につい てさらに詳しくご覧ください。

For more information, visit GuggenheimInvestments.com.


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