Japan Q1 2021 HYBL Outlook - A Ripe Environment for Strong Credit Performance

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2021 年 2 月

ハイイールド債とバンクローンの見通し

クレジット市場が力強いパフォーマンスを 回復するための環境が整った


Investment Professionals Scott Minerd Chairman of Investments and Global Chief Investment Officer Kevin H. Gundersen, CFA Senior Managing Director, Portfolio Manager Thomas J. Hauser Senior Managing Director, Portfolio Manager Brian Smedley

目次 要旨 .......................................................................................................................... 1 本レポートのハイライト ............................................................................................... 1 レバレッジクレジット・スコアーボード........................................................................... 2 マクロ経済概況 .......................................................................................................... 3 矢継ぎ早に繰り出される新型コロナ救済策 ............................................................. 3 市場の見通し............................................................................................................. 4

Senior Managing Director,

2020年の市場動向................................................................................................ 4

Head of Macroeconomic and

レバレッジドクレジット企業のファンダメンタルズ ....................................................... 6

Investment Research Maria M. Giraldo, CFA Managing Director, Investment Research

アクティブ運用の重要性 ......................................................................................... 9 投資への示唆 .......................................................................................................... 10


要旨 弊社の2021年経済見通しは引き続き強気である。金融政策が著しく緩和的である中で、 新型コロナウイルス対策の第2弾が可決され、バイデン政権はさらなる追加支援を計画し ている。また、ワクチンの配布も順調だ。クレジットセクターでは、デフォルトおよび格下げ の減少が進むとともに、企業収益が回復してレバレッジレシオの低下をもたらすであろう。 クレジット投資家には好ましい環境であるが、2021年にはそれ以上の課題もある。社債価 格は既に景気回復をかなり織り込んでおり、上値を追う余地は限られている。そしてその 景気回復は、ワクチン接種率、消費者行動、バイデン政権の政策に左右されることになろう。 本稿では、レバレッジドクレジット発行体のファンダメンタルズの状況および非投資適格企 業の2021年の見通しについて考察する。あらゆる点から見て、2020年第3四半期までの 個々の企業のパフォーマンスは予想を超えるものであった。ファンダメンタルズおよび今後 の見通しを考慮すると、スプレッドはタイトな水準にあるもののクレジット市場が力強いパフ ォーマンスを回復するための環境が整った。スプレッドは長期にわたり現在の水準を維持 するであろう。

本レポートのハイライト 

持続する米景気回復、議会による大型の支援、緩和的な金融政策が、弊社がクレジ ット市場について強気な見通しを維持するベースとなっている。今年は新型コロナウ イルスのワクチン供給が順調に進む中で個人消費が正常化し、企業のファンダメンタ ルズも回復するであろう。

2020年にはレバレッジドクレジット発行体のレバレッジレシオが急上昇しインタレスト カバレッジは低下したが、他のデータはそれほどネガティブなものではなかった。 2020年第3四半期現在、企業の売り上げは中央値ベースで前年比わずか2.8%の減 少にとどまり、ネット債務の増加はわずか1.8%であった。

重要な点は、レバレジッドクレジット発行体の現金および現金等価物の保有額が 60%増加したことだ。過剰流動性資金の維持は企業にとっては必要性が乏しくなり 投資家にとっては好ましいものではないことから、2021年にはこの余剰資金が活用さ れることとなろう。

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マクロ経済概況 「FRB による社債購入 プログラム後の新たな

矢継ぎ早に繰り出される新型コロナ救済策 弊社の2021年経済見通しは引き続き強気である。金融政策が著しく緩和的で

パラダイムにおいては、

ある中で、新型コロナウイルス対策の第2弾が可決され、バイデン政権はさらな

クレジットスプレッドが縮

る追加支援を計画している。また、ワクチンの配布も順調だ。コロナウイルス対

小を続け、過去最低水準

策・救済補助法(the Coronavirus Response and Relief Supplemental

まで縮まる可能性がある」

Appropriations Act)と呼ばれる新対策の規模は9000億ドルで、これにより 2020年の対策を含めた新型コロナ関連救済策の総額は3兆5000億ドルを超え

– スコット・マイナード

る。これは2020年から2021年の国内総生産(GDP)の約8.5%に相当し、金融

グッゲンハイム インベストメンツ

危機後の5年間に行われた景気刺激策の3.5倍に上る。

チェアマン兼グローバル CIO

今回の財政刺激策により2021年第1四半期の個人所得が急伸すると予想され る。また、2021年半ばまでには人口のかなりの割合に対するワクチン接種が 完了するであろう。高齢者がワクチン接種を受ければ入院患者数の減少が予 想され、各州政府は集団免疫が達成される以前に外出制限を緩和することが 可能となるであろう。年後半になれば、個人貯蓄の増加と家計の純資産の大 幅な増加に支えられて個人消費の回復が見込まれる。住宅市場は引き続き供 給の逼迫と低金利の恩恵を受け、設備投資も記録的な水準まで積み上がった 手元資金を有効に活用しようとする企業の判断から増加に転じるであろう。こう した結果、2021年の実質GDP成長率は潜在成長率を大きく上回るであろう。

新型コロナウイルスに対して金融危機以上の規模とスピードで対処 金融危機と新型コロナウイルスに対する財政対策 コロナウイルス対策・救済補助法 の規模は 9000 億ドルで、これに より 2020 年の対策を含めた新型 コロナ関連救済策の総額は 3 兆 5000 億ドルを超える。これは 2020 年から 2021 年の GDP の 約 8.5%に相当し、金融危機後の 5 年間に行われた景気刺激策の 3.5 倍に上る。

Source: Guggenheim Investments, Committee for a Responsible Federal Budget, CBO. Figures show five-year cost estimates.

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経済成長率が潜在成長率を上回った場合、米連邦準備制度理事会(FRB)は 通常であれば景気の過熱を抑えるために何らかの対策を取る。失業率が現在 のペースで低下を続け、インフレ率が通常通り経済活動の回復から 6 四半期 後れで上昇し始めるとすれば、FRB は早ければ 2022 年後半には利上げを開 始することになる。しかし FRB は 2%のインフレ率目標について、それを達成 するために必要な雇用の不足分を埋めあわせるという方針に転換したため、 今後数年間は利上げを行わないであろう。現在の債券市場は 2023 年後半の 利上げ開始を織り込んでいるが、弊社はそれを超えた数年間、ゼロ金利が維 持されると予想する。同様に、FRB が債券購入について 2021 年中にテーパリ ング(購入額の縮小)を開始する可能性も低いと考える。 新型コロナウイルスに対する政府の対策は必要かつ適切なものであったが、 その対応コストについては議論の余地がある。FRB が積極的な量的緩和 (QE)を再開したため、債券投資家は低利回りにあえぐこととなった。追加財政 支援が検討され、金融市場安定のために FRB によるクレジット市場のサポー トが続くと債券投資家が信じる限り、債券投資家はリスクを取り続ける新たな構 図を避けることが出来ない。幸いにもこれはレバレッジドクレジット発行体にとっ てはプラスである。スプレッドがタイトであるためにクレジット投資家が誤った選 択をカバーする余地があまり残されていない。このため、保有銘柄のデフォルト を最小限にとどめて運用額を維持しつつ実質リターンをプラスにできるかどうか は、クレジット投資家の運用手腕にかかってくる。

市場の見通し 2020 年の市場動向 後に歴史書は 2020 年には相矛盾するトレンドが見られたと記すであろう。確かに それは実際に経験した者でなければ理解できないかもしれない。経済は急激かつ 前例がないほどの生産高の減少を経験し、企業のレバレッジは跳ね上がり、デフォ ルトおよび格下げの数は過去 10 年で最悪を記録した。その一方で、株価指数は 史上最高値を更新し、社債利回りは過去最低、社債発行額は過去最高を記録し た。ICE バンクオブアメリカ・ハイイールド・インデックスのトータルリターンは 6.2%を 付け、クレディスイス・レバレッジドローン・インデックスのリターンは 2.8%を付けた。 各国政府による支援策のおかげで、どれほどの量のデフォルト、事業再編、個人破 産を回避出来たかは想像もできない。それでもなお米国では、エネルギーをはじめ としてケーブル・衛星テレビ、小売り、サービスなどのセクターで 1500 億ドルもの社 債がデフォルトした。ピークからボトムまでの米国経済活動の落ち込みが金融危機 時の 3.8 倍であったことを考えると、ショックからの V 字回復を可能とした政府によ る大量の流動性供給がなければ、デフォルト額は優に 2 倍を超えていたであろう。 ムーディーズが算出する非投資適格 12 カ月デフォルト率は 2020 年末において社 債が 8.0%、ローンが 7.1%であった。ハイイールドインデックスでは、S&P LSTA レ バレッジドローンインデックスの額面加重ベースのデフォルト率が 4.4%、ICE バン クオブアメリカ・ハイイールド・インデックスのデフォルト率が 7.0%であった。

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デフォルト額は過去 10 年で最高を記録 各国政府による支援策のおかげ で、どれほどの量のデフォルト、事 業再編、個人破産が回避出来た かは想像もできない。それでもな お米国では、エネルギーをはじめ としてケーブル・衛星テレビ 、小売 り、サービスなどのセクターで 1500 億ドルもの社債がデフォルト した。

Source: Guggenheim Investments, J.P. Morgan. Data as of 12.31.2020.

また格下げを免れることは困難であった。格下げ件数は、バンクローン市場で 格上げの 5.7 倍、ハイイールド債市場では格上げの 5.5 倍に上った。しかし同 時に 2020 年は、アクティブ運用を行うクレジット投資家にとってはポートフォリ オの質を上げる好機でもあった。新発債市場における格付別のシェアは、BB 格が最も多く 40%、B 格が 33%を占め、CCC 格以下はわずか 4%であった。 また、ハイイールド新発社債のおよそ 31%が担保付であったが、これは投資 家がより保守的な姿勢を示す年の典型である。さらに担保付社債の発行体の 中には通常はローンで調達を行う企業の名前も見られ、投資家にとっては同 一の発行体のローンから債券へシームレスに乗り換える機会ともなった。

ハイイールド債の発行額は過去最高、しかし投資家の姿勢は保守的 新発債市場における格付別の シェアは、BB 格が最も多く 40%、 B 格が 33%を占め、CCC 格以下 はわずか 4%であった。また、ハイ イールド新発社債のおよそ 31% が担保付であったが、これは投資 家がより保守的な姿勢を示す年の 典型である。

Source: Guggenheim Investments, S&P LCD. Data as of 12.31.2020.

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グッゲンハイムのアナリストは企業クレジットの種類や格付ではなく業界ごとの担 当制となっているため、投資適格からハイイールドに格下げされたフォールンエン ジェルは投資機会でもありポートフォリオリスクでもあると気付くことが出来る。米ド ル建のフォールンエンジェルの総額は 2500 億ドルに上り、その内 1220 億ドルが ハイイールドインデックスに採用された。ICE バンクオブアメリカ・フォールンエンジ ェル・インデックスは、15%という並外れたトータルリターンを記録した。 コロナウイルス感染拡大を別の角度から眺めると、リスクをやや積み増す好機であ ると考えている。弊社のハイイールドポートフォリオは、過去数四半期にわたって消 費者向けセクターの主に担保付社債に徐々にシフトしてきた。今年は景気循環セ クターが引き続き改善するとともに、新型コロナの影響を直接受けたサービスセク ターの力強い回復が期待される。しかし一方で、消費者が超過貯蓄をどの程度支 出に回すか、ワクチンの配布と接種の進捗度、変異種の発生状況、バイデン政権 の動向など未確定の要素も数多くある。 基調的には強気であるものの、社債価格が力強い景気回復を既に織り込んで しまっていることがクレジット投資家にとっては課題となる。ハイイールド債のス プレッドは 2021 年 1 月 31 日現在で 384 ベーシスポイント(bps)と既にかなり タイトになっているため、今年のハイイールドポートフォリオの損失調整後リター ンをプラスに保つためには銘柄選別が重要となる。ハイイールド発行体のファン ダメンタルズに関する弊社の見通しはマクロ経済見通しと同様に強気である が、ファンダメンタルズに関するデータを見てみるとこの点がより明らかになる。 レバレッジドクレジット企業のファンダメンタルズ あらゆる点を考慮しても、非投資適格債は非常に困難な年に期待以上のパフ ォーマンスを示した。ハイイールド債とレバレッジドローンの発行体(金融機関 を除く)を合わせて個別銘柄ベースで集計してみると、売り上げの減少率は中 央値ベースでわずか 2.8%、全体の平均でも 6.5%にとどまった。しかし利益率 はより大きな影響を受け、利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)の 減少率は中央値ベースで 9.0%、全体の平均では 18%を記録した。また、レ バレッジレシオの急激な上昇に対して多くの投資家が懸念を抱いた。同レシオ はグロスベースで 2019 年末の 4.7 倍から 2020 年第 3 四半期には 5.5 倍に 跳ね上がり、ネットベースでも同期間に 4.0 倍から 4.6 倍に上昇した。

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レバレッジレシオの急激な上昇とカバレッジレシオの急激な低下 企業債務全体の増加は中央値ベ ースで前年比わずか 1.3%であり、 これはレバレッジレシオ上昇の要 因が主に収益の低下であったこと を示している。従って、景気が回復 し個人消費が改善すれば、レバレ ッジレシオは低下に転ずるであろ う。同様のことがインタレストカバレ ッジにも当てはまる。インタレストカ バレッジの低下は同じく収益の低 下によるものであり、支払利息の増 加によるものではないからだ。 Source: Guggenheim Investments, S&P Capital IQ. Data as of 9.30.2020. Shaded areas represent periods of recession.

レバレッジレシオは 2021 年に改善する可能性が高い。企業債務全体の増加は中 央値ベースで前年比わずか 1.3%であり、これはレバレッジレシオ上昇の要因が 主に収益の低下であったことを示している。従って、景気が回復し個人消費が改善 すれば、レバレッジレシオは低下に転ずるであろう。同様のことがインタレストカバ レッジにも当てはまる。インタレストカバレッジの低下は同じく収益の低下によるも のであり、支払利息の増加によるものではないからだ。デフォルトリスクに関して言 えば、企業による現金および現金同等物の保有額がバランスシートの流動性確保 を目的として中央値ベースで 60%、全体の平均では 72%増加したことが大きな緩 和要素となるだろう。

ハイイールド発行体(2020 年)の現金および現金同等物保有額推移 デフォルトリスクに関して言えば、 企業による現金および現金同等 物の保有額がバランスシートの流 動性確保を目的として中央値ベー スで 60%、全体の平均では 72% 増加したことが大きな緩和要素と なるだろう。

Source: Guggenheim Investments, S&P Capital IQ. Data as of 9.30.2020 based on issuers rated high-yield by S&P as of 1.1.2020.

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2020 年にはほぼ全産業が現金保有を増加させた 多くの企業がさらなる格下げを防 ぐために保有する現金を債務返済 に充ててレバレッジレシオを低下 させようとするであろう。

Source: Guggenheim Investments, S&P Capital IQ. Data as of Q3 2020.

市場が企業収益の改善を予想していることから、過剰な流動性の維持は企業にと っても投資家にとっても好ましくないものとなりつつある。現在の市場環境では現金 はリターンを生まないため、過剰な現金の保有は業績の足を引っ張る可能性が高 い。このため、多くの企業がさらなる格下げを防ぐために保有する現金を債務返済 に充ててレバレッジレシオを低下させようとするであろう。

ハイイールド企業には設備投資の強いニーズがある 2019 年の設備投資伸び率は中 央値ベースで前年比わずか 6% にとどまり、2018 年の 14%から 大きく低下した。2021 年の余剰資 金の使い道は設備投資と債務返 済がメインとなるであろう。

Source: Guggenheim Investments, S&P Capital IQ. Data as of Q3 2020.

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また、ハイイールド債発行体は今年については、設備投資(capex)を増加させ る可能性が高い。弊社がデータを有する全発行体の設備投資合計額は 2020 年第 3 四半期現在でエネルギーおよび不動産セクターを中心に減少し、その 減少幅は中央値ベースで前年比 14%、全体では 26%であった。2019 年の設 備投資伸び率も中央値ベースで前年比わずか 6%にとどまり、2018 年の 14%から大きく低下した。このため、特に資本集約的な産業を中心に設備投資 ニーズが高まっている可能性が高い。2021 年の余剰資金の使い道は設備投 資と債務返済がメインとなるであろう。 個別業界に目を向けると、新型コロナによる打撃を最も被ったのは自動車、エ ネルギー、運輸セクターで、前年比の売上減少率はそれぞれ-15%、-22%、32%を記録したが、2020 年の状況を考えれば驚くにはあたらない。この 3 つ のセクターの中で債務増加率が最も高かったのは航空業をはじめとする運輸 セクターで、中央値ベースで 22%を記録した。また、レバレッジ(債務総額/ EBITDA)が最も高かったセクターは運輸、消費者サービス、小売りであった。 一方、ハイイールドセクターの中で 2020 年の業績が良かったのは食料品・生 活必需品、家庭用品・パーソナル用品、半導体セクターで、売り上げの伸び率 はそれぞれ 9.9%、4.3%、7.8%であった。これらのセクターはインデックスと比 べて格付の平均が高くタイトなスプレッド(消費財が 285bps、テクノロジーが 319bps)で取引されているため、上値余地はあまりない。しかし、昨年のような 年でも業績が安定しレバレッジレシオも低いことからデフォルトリスクが低く、利 息収入を狙うには適したセクターである。 アクティブ運用の重要性 現在の債券市場の環境では利回りを追求する投資家も出てくると思われるが、この 戦略には常にリスクが伴う。例えば、2019 年末に最も利回りが高かったセクターは エネルギーでその利回りは 8.5%であった。しかしエネルギーセクターの 2020 年の トータルリターンは-6.6%と最も低く、格下げやデフォルトの状況も最悪であった。同 じく 2018 年に最も利回りが高かったセクターは運輸で 10.2%を記録し、その後 12 カ月のトータルリターンも 13%と好調であったものの、他の 16 のセクターおよびイン デックスのパフォーマンスを下回った。 2020 年末の時点では、その利回りの高さから運輸セクターに再び注目が集まって いる。スプレッドは 642bps とハイイールド債インデックスの中では最も厚く、利回り も 6.7%で最も高い。2021 年は多くの点で 2020 年とは状況が異なると考えては いるものの、この利回りを取りに行く前に考慮すべきリスクが幾つかある。運輸セク ターはインデックスのわずか 1.5%を占めるに過ぎず、インデックス適格の社債残 高は 220 億ドルしかない。インデックスに占める割合が最も小さいセクターの一つ であり、投資可能な銘柄も数えるほどしかない。利回りが最も高い理由は、このセ クターに属するほとんどの上場企業の過去 12 カ月の EBITDA が中央値ベースで マイナスであったためであり、各社のレバレッジレシオを見ても 8 四半期平均の中 央値が 11 倍で、弊社が集計している 21 セクターの中で最も高くなっている。

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他のセクターと同様に、運輸セクターの現金および現金等価物も中央値ベースで 前年比 141%増加した。この流動性の向上は、目先のデフォルトリスク軽減に役 立っている。また、予想を上回るペースでワクチンが供給されていることも、運輸セ クターが新型コロナウイルス感染拡大の影響を直接的に受けたことを考えればプ ラス要因である。しかし、国際航空運送協会の最新の予測によれば、世界の旅客 輸送がコロナ以前の水準に戻るのは 2024 年以降であり、運輸セクターの大半を 占める航空会社の旅客数と収益が完全に回復するまでにはまだ何年もかかるで あろう。 ほかにも考慮すべき要素は数多くある。他のあらゆる産業と同じように、航空業界 についても現在の環境においては個別企業ごとに流動性や成長機会などについ て分析する必要がある。弊社は、特定のセクター(運輸および航空セクターを含 む)に対する投資を完全にやめてしまうつもりはない。しかし、大きくリスクを取らな くともファンダメンタルズやバリュエーションが魅力的な投資機会を提供するセクタ ーはほかに多く存在する。例としては景気連動型消費者向け商品、ビジネスサー ビス、金属・鉱業、金融、メディア、医薬品、製造業などが挙げられる。これらはい ずれも景気回復の波に乗ることができるセクターであり、運輸セクターのように極 端に追い詰められた状況にはない。ただし、どのセクターにも「問題児」は存在する ので、クレジット分析とトレーディングチームのクロスセクターバリュエーションを併 用して、最適な投資先を見つける必要がある。

投資への示唆 本格的な景気回復はまだ先であるにもかかわらず、社債価格は既にコロナ以前の 水準を回復した。しかしこのバリュエーションは、低い米国債利回りに支えられてい る。米国債に対するスプレッドは、1998 年以降の推移の中では 20 パーセンタイル から 30 パーセンタイルの間の水準にあり、まだ縮小の余地があることを示している。

スプレッドが現在の水準付近で長く推移した時期は過去にも見られた 過去の例を見ると、景気後退期を 脱し FRB が金融引き締めを開始 したあとも、何年にもわたりスプレ ッドが低水準で推移した時期があ った。

Source: Guggenheim Investments, Credit Suisse, ICE Index Services. Data as of 12.31.2020. Shaded areas represent periods of recession.

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過去の例を見ると、景気後退期を脱し FRB が金融引き締めを開始したあとも、 何年にもわたりスプレッドが低水準で推移した時期があった。個人消費の正常 化と企業による設備投資の増加が期待される中で、今、歴史が繰り返される下 地は整ったと考える。今年も短期的な下落調整は何回か見られるかもしれない が現在のサイクルはしばらく続くと考えられることから、そうした調整局面は押し 目買いの好機であろう。

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重要な通知及び表明事項 指数及びその他の定義 ここに表示された指数は、運用されているものでなく、直接投資の対象とすることはできません。指数のパフォーマンスは取引コスト、報酬または費 用を含みません。 Credit Suisse Leveraged Loan Index は、投資可能な米ドル建レバレッジ・ローン市場をトラックします。これは、「5B」またはそれ以下のローン から構成され、この指数に含まれる最も高いローンは、ムーディーズ/SP の格付において Baa1/BB+または Ba1/BBB+です。すべてのローンは、 先進国に所在する借手による最低 1 年満期の借入れ済みタームローンです。 Intercontinental Exchange (ICE) Bank of America Merrill Lynch High-Yield Index はハイイールド債の一般的に使用されるベンチマーク指 数です。 S&P 500 Indexは、米国において活発に取引されている500銘柄の株式を時価加重平均したものであり、経済全般の動向の尺度となるべく構築さ れ、すべての主要産業を含みます。 ベーシス・ポイント(bps)は、ある商品の価値または利回りの変化を表すために用いられる計測単位です。1ベーシス・ポイントは、0.01%と同一で す。 Spreadとは、同様の満期の米国債の利回りとの差を言います。 EBITDAとは、利払い・税引き前・償却前利益のことを指しており、事業の収益力の指標として標準的に使用されています。 リスクに対する考察 新型コロナウィルスが発生したことによる潜在的な影響は、ますます不確実性が増してきており、評価が困難で予測が不可能となっており、重大な 損失をもたらす可能性があります。債券投資は、信用リスク、流動性リスク、金利リスクおよび商品によってはカウンターパーティーリスクを負って います。これらリスクは、投資が、一つの発行体、産業、地域または国に集中している限りにおいて、増大する可能性があります。一般に、債券投 資の市場価値は、とりわけ、元となる債務の対象債務者または合成証券の場合は参照対象債務の債務者もしくは発行者の財務状況、経済全般 の状況、特定の金融市場、政治的イベント、ある特定の産業の発展またはトレンドの状況及び適用金利水準の変動状況に応じて変動します。債券 投資には金利上昇に伴い価値が下落する恐れがあります。 バンクローンは、通常投資適格未満であり、様々な理由により非収益化、または不良化することがあります。非収益化した、または不良化したロー ンは、実態的に新しい条件のための交渉又はリストラクチャリングを必要とすることがあり、それが、とりわけ、利率の相当な減免、ローン元本の相 当な償却等の結果となることがあります。加えて、特定のバンクローンは、高度にカスタマイズ化されているので、公に取引される証券に比べ容易 に売買できないことがあります。セカンダリー取引市場においては、制約が課せられる場合があり、適切なレベルの流動性が確約されるわけでは ありません。ある種の銀行ローンにおいては、譲渡に当たって制約が課せられる場合があります。バンクローンに関連するリスクは、一般的に、プ レミアムまたはペナルティーの受け払いなくいつにても繰り上げ償還が発生する可能性を含みます。ハイ・イールド・デット証券は投資適格証券と比 較してより大きいクレジットリスクと流動性リスクを負っています。 ハイ・イールド・デット証券は、一般に無担保であり、当該発行体の一部の他の債務よりも劣後することがあります。ハイ・イールド・デット証券が低 格付けであり、投資適格未満のローンであることは、発行体の財務状況、経済全般の情勢又はこれら双方が不利に変化した場合に、元本又は金 利の支払い能力を毀損する可能性がより大きいことを反映しています。投資適格未満の格付の証券は、一般に「ジャンク・ボンド」と呼ばれていま す。ハイ・イールド・デット証券のリスクは、とりわけ下記を含みます。 (i) 流動性及びセカンダリー市場のサポートが限られていること、 (ii) 適用金利 水準の変化により市場において相当程度のボラティティが生ずること、(iii)ハイ・イールド・デット証券の発行者の収入が、 債務の返済にあたり不十 分となる可能性があること、並びに (iv) 金利上場局面、経済の下降局面又はこれら双方により、このようなハイ・イールド・デット証券の発行体の信 用力低下及び潜在的な倒産の可能性。経済情勢の悪化又は金利上昇により、ハイ・イールド・デット証券の市場が著しく毀損されることがあり、発 行済のハイ・イールド・デット証券の価値及び当該発行体の元利金の返済能力に悪影響を及ぼす可能性があります。ハイ・イールド・デット証券の 発行体は、レバレッジ比率が高いことがあり、従来からある資金調達ができない可能性があります。 この資料は専ら情報の提供を目的としたものであり、いかなる有価証券、投資戦略または投資商品に関して、投資助言または推奨をするものでは ありません。この資料はフィデューシャリー義務の立場から提供されたものではなく、投資決定を行うための十分な根拠となることを意図したものと みなすべきではありません。また、特定の有価証券の売買に関する勧誘とみなしてはなりません。 本資料は、会計、法務または税務上のアドバイ スを供与するという考えから頒布するものではありません。これらの問題については、貴社の法律または税務上のアドバイザーに助言を求めてくだ さい。 本資料は、著者の意見を含みますが、グッゲンハイム・パートナーズまたはその子会社の意見を含むものとは限りません。著者の意見は、予告なく 変更することがあります。本資料に含まれる将来にむかっての表明、予測および一定の情報は、自社または他社の調査および他の情報源に基づ くものです。本資料に含まれる情報は、信頼に足ると信ずる情報源より取得していますが、その正確性を保証するものではありません。本資料の 如何なる部分も、グッゲンハイム パートナーズLLCの書面による明示的同意なしには、如何なる方法であれ、複製し、または引用することはできま せん。過去のパフォーマンスは、将来の結果を暗示するものではなく、そのような情報に基づく判断につき、現時点における正確性、責任を表明ま たは保証するものではありません。 1

グッゲンハイム・インベストメンツの預り資産総額は、2020年12月31日現在のものです。ここには、運用資産に対するレバレッジを含む137億米ド ルを含みます。グッゲンハイム・インベストメンツは、下記の関係会社による投資運用業務を総称します。Guggenheim Partners Investment Management, LLC, Security Investors, LLC, Guggenheim Funds Distributors, LLC, Guggenheim Funds Investment Advisors, LLC, Guggenheim Corporate Funding, LLC, Guggenheim Partners Europe Limited, GS GAMMA Advisors, LLC, and Guggenheim Partners India Management. 2 グッゲンハイム・パートナーズの運用資産は、2020年12月31日現在のものであり、時価約700億米ドルの顧客へのコンサルティング・サービスの 対象資産を含みます。 © 2021年 グッゲンハイム・パートナーズLLC。グッゲンハイム・パートナーズ LLC による明示的な書面による許可なく、本文書のいかなる部分につ いても、いかなる形式における再作成および他の出版物における引用を禁じます。Guggenheim Funds Distributors, LLC,はグッゲンハイム・パートナー ズ LLCの関連会社です。お問い合わせについては800.345.7999または800.820.0888にお掛け下さい。 Member FINRA/SIPC


グッゲンハイムの投資プロセス グッゲンハイムでは、行動バイアスを軽減し、より優れた意思決定のつながるように設計された体系的で規律をもった 投資プロセスに基づいて債券ポートフォリオの運用を行なっています。弊社の投資プロセスでは、最良のリサーチとア イデアをマクロリサーチ、セクターチーム、ポートフォリオ構築およびポートフォリオマネジメントの 4 つの機能を、専門 性に応じて分離しています。このプロセスにより、特定の個人やグループに依存することなく、認知バイアス、衝動的 な判断、その他行動ファイナンスに基づく意思決定の落とし穴を避けることを目的としています。魅力的なリスク調整 後リターンを提供する投資機会を追求するため、弊社のアセットアロケーションは広く採用されているベンチマークとは 大きく異なっております。

グッゲンハイム インベストメンツについて グッゲンハイム インベストメンツは、グッゲンハイム パートナーズのグローバル資産運用および投資助言部門です。 債券、株式およびオルタナティブ戦略の資産合計は 2,460 億ドル 1 に上ります。グッゲンハイムでは保険会社、企業、 公的年金基金、ソブリン・ウェルス・ファンド、基金・財団、コンサルティング会社、資産運用会社、富裕層投資家のお 客様のリターンとリスクのニーズに重点をおいています。弊社の 300 名以上の投資専門家は、市場トレンドを理解し、 しばしば複雑で十分な調査が行われていない分野で見過ごされている投資機会を見つけ出すため、厳密な調査を行 っています。この投資運用アプローチによって、グッゲンハイムは投資の分散と魅力的な長期的成果を実現する革新 的な戦略を実行しております。

グッゲンハイム パートナーズについて グッゲンハイム パートナーズは 3,100 億ドル 2 以上の資産を運用している世界的な投資助言会社です。投資運用業 務、投資銀行業務、保険サービスの弊社の 3 つの主要ビジネス全てにわたり、革新的なソリューションによって大きな 成果を生み出してきました。世界中の拠点に 2,400 人の専門家を擁する弊社は、お客様の戦略的利益を前進させ、 卓越かつ一貫した長期的な結果を生み出すことに力を尽くしています。弊社のウェブサイト (GuggenheimPartners.com)やツイッター(twitter.com/guggenheimptnrs)にて、当社の高度な専門性と価値につい てさらに詳しくご覧ください。

For more information, visit GuggenheimInvestments.com.



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