0038 郊外集落における生業集約型賃貸住宅
「 こ の 町 に 良 い と こ ろ な ん か な い よ 。」 瀬 戸 の 町 に 暮 ら す 人 が そ う 言 っ た 。 この町には 1000 年以上も続く窯業文化があり、長い間人々の生活の中心として暮らしを支えてきたが、 郊外化によって出来た新興住宅に住む人の中にはその事を知らない人も存在する。 地域性が失われていく現代において「瀬戸に暮らす=やきもの文化と共生する」この言葉の意味を再び考えて欲しい。 これは、やきもの文化の衰退した瀬戸市において、地域に暮らす人々が「ツクリテのための賃貸住宅」を通して やきもの文化を支え、そして、やきもの文化に支えられる瀬戸での暮らし方について今一度考えるきっかけを作る提案である。
01a
01b 提案 / 集落単位の集合による地域形成
社会背景 / 生業縮小社会
生業を中心とした地域社会 産業の斜陽化 / 郊外都市化 生業を媒介とした地域集約 ∼20c 前半
20c 後半∼21c( 現在 )
経済成長に伴う産業化
提案
集落単位の集合が持続的な地域社会基盤を形成する 繋がりの面的拡大
相互扶助の必要性 生業の存続
集落単位での小規模な 持続的生活圏社会の創出
各集落内の特性の活用
一つの生業を軸に成り立ってきた地域では、生業を中心に関係性が築かれ、相互扶助を育んだ。しかし、近代化にお
やきもの文化を中心に成り立ってきた愛知県瀬戸市において、やきものを中心に循環していた社会への
ける生業の規模縮小、地域経済の分散化は、地域内での地縁的コミュニティの消失を招いた。縮減社会の流れの中で、
現代的な回帰を提案する。暮らし方が多様化している現代社会において、かつてのように町全体がやき
孤独死等の諸問題が顕在化する今こそ、再び生業を軸とした地縁的コミュニティを再考すべきではないだろうか。
ものを生活の中心とする関わり方ではなく、集落単位で「一人一人が生活の中でやきもの文化に少しず つ関わる。」そんな関わり方を提案する。
Apartment コウボウ
01
02
広域敷地背景 / 愛知県瀬戸市
a 敷地概要
a やきもの文化の衰退
b 衰退する瀬戸市 多治見市
(人) 150000
土岐市
春日井市
年齢層別人口予測
名古屋の郊外都市とし
13145
て 機 能 し て い る が、他
125000
24493
他市より高い高齢者の割合
75000
瀬戸市 50000
尾張旭市
名古屋まで 電車で 40 分
25000
豊田市
0
( か所 ) 1800
市と比較して少子高齢
100000
名古屋市
窯業関連事業所数と従事者数の推移
子供の減少 76580 2010
2030
2040
1666
窯業関連の事業所数は約1割 従事者数も 3 割以下に減少
14693
左記の人口問題に加えて、安
16000
い海外製品の流通によるニー
14000
ズの減少が起こったために、
1200
12000
やきもの文化は縮退した。そ
1000
10000
働きに出ることが多い
800
8000
た め、昼 夜 間 人 口 比 も
600
6000
400
2654 4000
200
189 2000
化 の 進 行 が 著 し い。生 産年齢人口も名古屋に
大きく変動する。
38261 2020
1600
(人)
18000
1400
0
2050
2060 (年) 出典:瀬戸市人口ビジョン ( 瀬戸市 )
S53
S58
S63
H5
H10
H15
H20
H25
れに伴い、瀬戸に暮らす人々 の生活も個の暮らしへと変容 している。
0
出典:瀬戸焼振興ビジョン ( 瀬戸市 )
d 時代ごとに変容するやきもの文化
現在 大量生産の凋落 窯業従事者の減少 猿投窯から周辺地域へ
中国陶磁器の普及
美濃への瀬戸山離散
有田焼の台頭
第一次大戦
戦後 / 高度経済成長
小子高齢化
の窯場の拡散
→茶陶が主流となる
→
→磁器生産開始
→瀬戸ノベルティ生産
→大量生産技術導入
後継問題
13c
17c
19c
20c
→灰釉陶器の生産
11c
屋呼び戻し
21c
Apartment コウボウ
02
ツクリテについて a 瀬戸市で注目される人々「ツクリテ」 瀬戸焼の技術・風土を生かし、ものづくりを行
ツクリテ
空き店舗対策
う人々。瀬戸市では行政・NPO を中心にツク
事業費補助金
リテを支援する様々な政策を打ち出している。 その結果、2017 年のせとまちツクリテセンター 開設以降も順調に増加しているが、まだまだ地 2017 年 ツクリテセンター開設
域住民からの認知度は低く、地域内への活動の
空き家 抑制 事業
空き家バンク
せとで住もまい プロジェクト
老朽空き家 解体補助金
登録者数 200 人超
計画 / やきもの文化を生活の中へ
次の世代へ
ツクリテを支援する政策は多く
広がりは小さく止まっている。
2019 年夏
03a
c ツクリテを介したやきもの文化の存続
b ツクリテ支援の様々な政策
わりを持つことは、「後継者不足
れているものが多いとは言い難
で技術を継承せずに店を畳む窯
い。これら政策を最大限活かす
業従事者」に、技術の継承先を
ことが、若手ツクリテを瀬戸に 定着させ、地域に広げることに える。
03b
文化の消失 画一的な町 へと変化
ツクリテ の介入
持たせることと同様なのであり、 その連続がやきもの文化を残す ことに繋がるのではないだろう
やきもの文化の 継承・存続へ
か。
提案 / Apartment コウボウ
他地域の活動への参画
近隣小中一貫校の 生業学習の場として
技術の継承 他と接点の創出
新たな関係性
ツクリテが地域内に定着し、関
提案
存在しているが、現在利活用さ
繋がっていくのではないかと考 空き工房制度
現状
ツクリテ間の 繋がりの創出
現在の瀬戸に暮らす人々が、「ツクリテ」を中心に、生活の中にやきもの文化を少しずつ 取り込むことを提案する。そこで生じる様々な関係性は、瀬戸の町に土着的に根付いた 窯業中心の相互扶助関係を部分的に町へと回帰させることに繋がっていく。
ツクリテの賃貸住宅を中心に 様々な活動が展開される。
薪炭林の間伐
ツクリテ / 訓練校生の 居住空間
近隣小中一貫校の 生業学習の場として
窯業従事者からの レクチャーの場として
定期市の開催
制度の活用 / 地域内居住
地域への広がり
技術の継承 / 後継問題
対外への発信
居住者専有の工房空間
周辺住民の作業場として
訓練校との提携 研修 / 作業の場として
せともの祭の会場として
集合知による創作促進
貴重なものづくりの空間
技術の向上 / 地域との接点 地域内活動への参画
瀬戸市の生業であるやきもの文化を介し、集落単位における集約を行う拠点施設「コウボウ」を提案する。 「コウボウ」では、若手のツクリテ、近隣の窯業訓練校に通う学生の賃貸住宅を中心に、様々な活動が展 開される。それらの活動は地域へと還元される事で、今までの閉鎖的な個々での暮らしを対外に開き、様々 な関係性を育む。それは結果として、周辺地域の人々の暮らしを少しずつ支えていく。
Apartment コウボウ
03
03c
提案 / コウボウ運営スキーム
コウボウが地域で生み出す相関性
メリット
実際に瀬戸で窯業を営
コウボウ
工房家賃補助制度
んでいる。宅地化を検 討していたがコウボウ
管理
オーナー 収益を受けられる。
居住
レクチャー料 施設利用費
作品紹介 自らの作品を売り込み、 バイヤー 広めるきっかけを作る
若手ツクリテ 作品紹介 訓練校生 ×6 人
周辺高齢者 元窯業従事者
レクチャー料 施設利用費
他ツクリテ
ものに対し、1か月あたりの家賃のうち半分を補助 (5万円を上限 )
提案
房家賃のみが補助対象となる。 空間」が補助の対象となる。 ¥ : 全体の 25% 減額 ¥ : 全体の 50% 減額
住空間
訪客
場の提供
工房
住空間
工房
コウボウを通した繋がりによる世代の循環
イベント利用
イベント誘致
子育て世帯
業から5年以内までの方が対象。工房部分が面積の過半を占める
住空間と工房が分離しているため、工 一体型とすることで、 「住空間+工房
定期市
レクチャー / 労働 に応じた家賃の減額
市内にある特定の訓練校に通っている研修生・学生又は修了・卒
現状
仲介
支払 還元
パトロン 地元企業
する制度。
施設利用費
施設利用費での 運営・管理
・無料開放 / ものづくり空間 ・生業体験 / 生業学習 ・工房機材の貸し出し ・専有の工房空間 …etc
援助
家賃
化したことで継続的な
施設利用費
窯住一致 / 既存制度活用に伴う家賃の減額
行政・NPO
※共有工房空間は基本無料 ガス窯等の機材利用 専用工房のレンタルは有料
地域の子供
ツクリテ
元窯業従事者
地域に暮らす人々が、コウボウを通してものづくりの関わりを持ち 続ける事で、次の世代への技術の継承を誘発し、地域社会における 持続的な循環を育む。
Apartment コウボウ
04
SITE
04a
2004
計画敷地 / 陶磁器貯蔵庫跡
役目を終えた陶磁器貯蔵庫
周辺との密接な関係性
5年前までは敷地に隣接し て住宅が建ち、余剰空間を
現状:工業住宅地化
間借りして活動する陶作家 もいたため、職住近接の関 係性が成り立っていた。
2019
未利用地化 / 解体 貯蔵庫に隣接していた住宅
提案 既存の活用
十数年後
梁上の活用
持続する生活風景
使われなくなり、間借りし
長期的な視点での衰退
ていた陶作家も3年前にい
子供の地元回帰
なくなった。
技術の継承
他機能の挿入 内部で培われた工夫の再活用
はなくなり、貯蔵庫自体も
十数年後
やきもの文化を介した循環
2020∼
子供の成長に伴う 高齢化の急進
窯業の衰退に伴い貯蔵量は減少し、多くの貯蔵庫は解体された。住宅地の中に点在し、広い敷地と簡易な構造の建 築により構成されるこの土地は、解体後、新興住宅地へと姿を変える。しかし、そこで培われた窯業文化を地域に 還元することは、住宅地の建設以上に有益な価値へと繋がるのではないだろうか。
04b
建築提案 / 貯蔵庫のコンバージョン
工業住宅地化 貯蔵庫が解体され、新興住 宅地として生まれ変わる未 来。本提案では、貯蔵庫跡 の宅地化以外の選択肢を提 示する。
瀬戸の町の中に数多く点在す
町全体を連関させる建築
る貯蔵庫という建築を「コウ
地域 へ の 還 元 ・ 地 域 価 値 の 向 上
ボ ウ」と し て 町 に 還 元 す る、
敷地から周辺集落へ
そのプロトタイプとしての提 案を行う。商店街近郊、住宅 地等それぞれの貯蔵庫周辺の 環境を取り込み形質を変容す る。そ れ ぞ れ の「コ ウ ボ ウ」
SITE
の繋がりは瀬戸独自のネット ワークを構築し、街全体へと 広がっていく。
陶磁器貯蔵庫を「コウボウ」へとコンバージョンすることを提案する。住 宅地と近接しているこの土地が高密な住宅地とならずに、地域の行動が集 積される「コウボウ」として活用されることは、周辺地域に暮らす人々の 生活にやきもの文化という共通点を与え、相互扶助を育むことで、結果と して地域価値を向上させることにも繋がる。
文化性
新興住宅地 商店街
提案範囲集落 陶生町・前田町
Apartment コウボウ
07
集落に住む人々の暮らしを支えるコウボウ 「ママ、今日はコウボウでお皿を作ったよ!」 「そう、今度お兄ちゃんにお礼しないとね。 」
「こないだは織部釉について教えたよね?」
「はい!今日は瑠璃釉のこと聞きたいです!」
「久しぶりに若者と陶芸について語ったよ。 」
「瀬戸の技術を受け継いでいけるのは嬉しいねぇ。 」
「君のガラス工芸の要素が陶芸に活かせそう!」
「私もいつも陶芸からたくさん刺激を受けてるわ。 」
「茶碗を試作したので使ってみてください!」
「あら、ありがとう!また今度感想言うわね。 」
「自由研究で陶器作ることにしたから教えてください!」 「よーし、一緒に作って先生を驚かせてやろう!」
「いつも差し入れありがとうございます。 」
「いいのよ、私達だけじゃ食べ切れないからねぇ。 」
「前回も良かったし、次の定期市も楽しみにしてるよ。 」 「次もそう言ってもらえるよう頑張ります!」
「〇〇くん、今日は何して遊ぶー?」
「コウボウいって、粘土をこねて、それから、 、 、!」
コウボウで生ま れ た 関 係 性は 、 段 階 的 に 集 落 内 へ と 広 がる。それらの関係性
「今日も仕事帰りにコウボウに寄っていくんです。 」 「熱心だねぇ、さっき行ったら上手に焼けてたよ。 」
がやきものとい う 共 通 点 をも ち 、 他 世 代 間 に も 伝 播 す ることで、繋がりが生
コウボウ
まれ、集落は小 さ く も 持 続し 、 相 互 扶 助 社 会 を 構 築 す る。
窯業従事者
新興住宅
Apartment コウボウ
08
Architectural Proposal
05 建築提案 / 「陶磁器貯蔵庫からコウボウへ」プロトタイプ形成のプロセス 01 全体構成の検討
○周辺環境からの空間構成 Local
a. 新興住宅地住民 周辺住民
Public Private
新興住宅地
正面性
窯業工程の分析から抽出される空間の連関
b. 窯業関係者 外部来訪者
窯業工程
資材置き場 外を引き込む
屋外雑用
土練り
作業台
作釉
電動作業台 成型
土作り
絵付け・施釉
施釉
成型
乾燥
Walk Car
絵付け
素焼き
Ceramic Flow
作釉
商店街からの流入 尾張瀬戸駅から
周辺の住民動線の分析 / 窯業工程の分析から、窯業空間の配置、全体構成の決定を行う。
02 住空間・工房空間の挿入
椅子に座って 作業を行う
箱を置ける 余白部分
バケツに み 替えて利用
土練り
ろくろ
広めの天板
成形
抜けの確保
Outsider
水場
土作り
絵付け・施釉
車:資材の搬出入
高齢者の散歩動線
本焼き
屋外乾燥
素焼き前の 乾燥
天日干し
屋内乾燥 一次乾燥
素焼き
ガス窯
物置としても 活用
還元焼成が 多いため 別途ガスボン ベが必要
本焼き
○土着性:連坦的な区画形成
Atelier 瀬戸の歴史の中で形成さ れた「利益重視の高密な 建築群」が生み出す窯住
Residence 残りの空間を埋めるようにボリュームを配置し機能を与えることで 「即物的な土着性を帯びた建ち方」を再解釈した空間構成とする。
03 機能間 / 建築内外の相互関係による調整 新規住民 窯業従事者 コウボウ居住者 外部来訪者
Flow line
の独特な距離感は地域の 土着性を内包した関係性
住と窯業の混在
であると考える。
○建築内外に生じる関係性 積層形式
分棟形式
隣棟形式
過去・今・そし て未来の 瀬戸を構成する要素を分析し、
住空間 隣棟形式
工房空間
それぞれの空間が絡み合うことで生じる関係性を検討し、 絡まりの強い部分をコアに建築内外との関係性を調整する。
積層形式
周辺住宅 分棟形式
建築内外に生じる関係性を瀬戸の中で見られた 3 つの形式として 再解釈し、それぞれの形式ごとに建築の形態を変化させていく。
リ サ ー チ か ら 提 案 へ 「 瀬 戸 の 要 素 が コ ウ ボ ウ を 形 作 る 」
それらの再解 釈により 建築を構築してい きます。
Apartment コウボウ
10
増築部:大庇
1800
1800
3600
吹き抜け U
1800
ろくろ場
GL+900
住空間
1800
GL+3500 平面図 S=1/100
駅からの動線
U
3600
共有工房
1800
ギャラリー
GL-1350 屋内乾燥場
地下空間に乾燥場を設ける
車動線を考慮した上での貯蔵空間
1800
コナラ:瀬戸の薪炭林としての歴史性
GL+500 平面図 S=1/100
3600
GL+2200 ギャラリー
住空間
21600
U
3600
専有工房
吹き抜け
U
3600
GL+900
共有工房
住空間
居住者専有工房
3600
サニタリー
U
3600
専有工房
5400
GL-1350 屋内乾燥場
共有工房空間
庇の形状で連続性を持たせる
倉庫
1800
21600 1800
共有工房
屋外乾燥場
1800
視線の抜け
水洗
砂保管場
屋外乾燥場
骨材・棚板置場
周辺への環境配慮
U
倉庫
吹き抜け
U
屋外乾燥場
U
住空間
3600
共有工房空間
共有厨房
U
1350
増築部分 既存部分
住宅地からの動線
連続的な形態でありつつ、 レベル差を変えることで機能を分ける
居住者洗濯場
住空間
住空間
2250
居住者工房空間
7200
2700
サニタリー
小規模工房
GL-320
小規模工房
GL-320
屋外貯蔵庫
WC
900 7200
釉薬材料保管庫
3600
06 建築提案 / 分析詳細 04 建築細部の構成要素
プロトタイプの提案における建築の普遍性を得るために、市内に現存する建築から構成要素を抽出・活用し細部を構成していく。
貯蔵庫内における偶発的工夫の分析
南面増築部分断面
南
柱・梁・屋根の簡易な構成の貯蔵庫建築。この空間性を最大限活かすための工夫が多くみられた。
敷地内南側に砂 / 棚板置き場を増築する。本棟 - 別棟からの連続的な屋
これらを分析・再解釈することで貯蔵庫建築を最大限使いこなせるのではないか。
根形状を持ちつつ、周辺の住宅とも屋根勾配による連続性を持った建築 とする。また、小屋組部分には外壁を設けず、あえて開放的に設えるこ とで、小上がりになった周辺住宅に暮らす人からの視線の抜け、通風環 境を保ちつつ、建築内にも効果的に採光を取り入れていく。
減築:屋根材の変更
壁で仕切る
本棟からの小屋組形状の連続 空地を活用した採光
基礎部へのストック
別棟 梁の活用
屋根勾配の連続
棚による仕切り
通気性
視線の抜け
隣家
砂・棚板置き場
柱・横材による支え
上げ棚
廃棄皿の循環によるレンガ躯体 焼成レンガ 200 100 80mm
南面増築部分断面詳細図 S=1/50 梁からの吊るし
スキップフロア
貯蔵庫・町の中の建築分析から、建築細部を構成する。
基礎部の活用
空間の延長
簡易的な空間分節
内向きの屋根勾配
Apartment コウボウ
12
06 建築提案 / 分析詳細
積層形式
窯業空間と住空間、或いは周辺との関係性分析
隣棟形式
分棟形式
瀬戸の窯業は住空間と近接的な関係性の中で行われてきた。そのため、いかに住空間と馴染めるか、町と関係性をもてるのかを考え込まれた建築的工夫が見られた。 それらの要素を分析し、建築に落とし込むことで「コウボウ」は地域に馴染み、ある種の瀬戸らしさを内包した関係性を構築することができるのではないだろうか。 a. 隣棟形式 01
屋根の連続性
02
03
04
奥まった玄関
空間を連続する庇
05
屋根勾配の連続 生活の混在 内部での連続
大きめの開口
06
仕上げの違い
植栽 住民の通り抜け
接道 大きめの開口
工場に家 屋根の連続性
大きめの開口
壁の共有
仮設バリケード
裏の作業空間
屋根の延長
屋根勾配による区別
工場の増築
仮設の展示 道ギリギリまで拡張
大きめの開口
仮設テント 半屋外空間
古民家の改修 裏からのアプローチ
開けたアプローチ
接道
b. 分棟形式 07
コの字型の建物配置
08
09
防水布の仮設屋根
庇による空間の拡張
内向きの屋根勾配
半屋外空間
内向きの屋根勾配
10
コの字型の建築配置 仮設テント
ベニヤの仮設開口
11
内向きの屋根勾配
直接的接続
生活の拡張
仮設の展示 開いた半屋外空間 大きめの開口 開けたアプローチ
半屋外空間 開けたアプローチ
中間領域でのアクティビティ 芝生
貯蔵
単管組みの仮設屋根
14
開けたアプローチ
梁上の利用
中間の水事場
東からの採光
開けたアプローチ
17
屋根勾配による区別 増築的接面
上下の分節
バルコニーの張り出し 庇下の工房空間
中庭による分節
開けたアプローチ 18
上下の分節
庇の拡張
住民の通り抜け
中心の植栽 開けたアプローチ
空間の連続
大きな開口 中間領域 コンクリートによる分節
生活領域の混在
開けたアプローチ 仕上げへの利用 16 大きめの窓
15
クリア波板
貯蔵
内部での連続 大きめの開口
c. 積層形式 13
クリア波板による採光
半屋外空間
貯蔵 物干し棚 大きめの開口
屋根の連続性 12 勾配の連続
コの字型の建築配置
仕上げの連続 工を介してのアプローチ
仕上げの違い
中間領域 接道
大きめの開口
接道
大きめの開口
抽出された 12 の建築的工夫 07 09 10 11 14
01 02 04 05
17
04 06 10 15 18
07 14
02 05 09 16
08 12 14 16
内向きの屋根勾配
大きな開口
屋根の延長
開放的な空間
バルコニーの張り出し
庇 / 空間の拡張
素材の転換
中間の水事場
半屋外空間
屋根をかける
意匠的連続
簡易的な空間分節
07
建築提案 /「コウボウ」部分詳細
「 コ ウ ボ ウ 」= 今 ま で の 瀬 戸 の 要 素 + こ れ か ら の 瀬 戸 を 構 成 す る 要 素 既存屋根材 コロニアル t=5.2mm
屋根材変更 ポリカーボネート小波板 t=20mm
小屋組の連続性
屋根 大空間を覆うようにかかる既存の大屋根は貯蔵には適し ているが、住空間等採光が必要な機能にはあまり適してい
外部からの流れを引き込む
ないと考えた。 そこで、住空間・工房空間の配置を踏まえた 上で、部分的に屋根材の変更、屋根の減築を行うことで、
内向きの屋根勾配
採光・通風を獲得する。 また、増築部分の屋根形状は、、既
減築 屋外乾燥場 増築部分
存建築・周辺の住宅から連続的に計画していくことで、景 周辺からの屋根勾配の連続
蔀戸部分 ポリカーボネート小波板 t=20mm
ポリカーボネート小波板 t=20mm 形態の連続
観的な配慮を行う。
屋外乾燥場
乾燥棚 視線の抜けを保った空間分節
土作り・素焼き前・絵付け後というように、 マメな乾燥が必
コウボウ居住者専有工房空間 ギャラリー
要となる作業が多いため、空間内において乾燥棚が相当
レベル差を活用した段階的乾燥
空間配置により建築内 棚により領域性を生み出す
量必要となる。 また、屋内外それぞれで段階的に乾燥する
外に人の動きをつくる
場合もあるため、それら乾燥を有効的に活用し、空間内に 流動的な人の動きを生み出す。また、乾燥棚を仕切りとし
ろくろ作業場
て用いることで、視線の抜けを確保しつつ空間を分けるこ 地下空間を活用した屋内乾燥場
とも可能にする。
本棟と別棟を連続的に計画する
増築部分 素材:これからの瀬戸では、やきもの文化は大量生産から 工房空間と隣接した住空間
工房空間
住空間
作家物へとシフトしていくことが予想されるため、廃棄され 住空間
住空間
る皿の量は必然的に増加する。それら廃棄皿を粉砕し、焼 成レンガとして再利用することで、窯垣に見られるように資
住空間 工房空間
住空間
る。
庇形状による連続性
空間性:建築規模・周辺状況から、本敷地内における住空 居住者:計 6 人
建築内外の回遊性
源を循環利用していた瀬戸の文化性を踏襲した建築とす
廃棄皿の活用による焼成レンガ
間は6戸に設定する。それら住空間を、工房空間と隣接し て配置することで、それぞれの空間が影響を与え合い、居 住者であるツクリテにとって活動しやすい空間とする。 既存躯体 本棟は、独立基礎、50 50 5mmのL型鋼の組み合わせ により成り立っており、別棟は柱・横材・小屋組により成立 した木造建築である。それぞれの建築が特徴を持ち合わ せているため、それらを生かしつつ、部分的に減築を行う。
抜けを残しつつ計画
本棟基礎部は、大半を減築し、新たにレンガ躯体を配置す
基本的に躯体は活用
ることで補強を行う。
L 型鋼材 t=5mm 部分的な減築
独立基礎を残す
基礎部の減築 / 素材の変更
基本的に躯体は活用
Apartment コウボウ
14
全体俯瞰
住宅地からの動線
既存躯体に新しい機能を挿入し、そこから外部への建築の 波及を検討する。それにより、既存建築を重んじた計画と する。分析を建築に落とし込む際、ただそのまま引用する
連続的に計画
のではなく、例えば廃棄皿を再利用した焼成レンガのように、
部分的な屋根材の変更
瀬戸の現状から、これからの建築形態について考えてい
ポリカーボネート小波板 t=20mm
く。
コの字型配置により 多方位に開いた建築 周辺からのボリュームの調整 連続的な増築
建築内外に人の動きを生み出す
人の動線から ファサードを決定
駅からの動線
廃棄皿の活用による焼成レンガ 105 80 60mm
車動線
a. 別棟東面断面
東
c. 本棟西側断面
東
隣家と密接な状態の別棟。隣家側に半屋外の廊下を配置することで、
現状は切り妻の屋根形状により、外部と縁を切った建築となってい
コウボウ内居住者だけでなく、隣家住民から見た際の圧迫感軽減に
る北西部分。最寄駅に最も近く、商店街側にも位置するため、外部
も繋がる。また、 北東面の増築部分に関しても、 既存の建築にボリュー
からの流れを引き込むための大庇を設える。それによって、生まれ
ム感を合わせ、連続的に増築を行うことで周辺環境への影響を最小
る半屋外空間は、ギャラリーの延長でもあり、内外を緩やかに分節
限に抑える。
することにも活用される。 高密な住宅密集地の中で
既存の構造体を残す
既存小屋組の活用
抜けをつくり出す
隣家の住環境を阻害しない増築 半屋外空間
流れを引き込む大庇
工房空間
住空間
窯住近接の関係性 視線の抜け
住空間
共用廊下 通気性
町並みに即したボリュームでの増築を施していくことで、
屋根形状の連続
隣家
窯住近接の関係性
柱による連続性
内と外を緩やかに繋ぐ ギャラリー
共用部
瀬戸の分析から建築を構成し、
既存の独立基礎
工房空間
土着性を帯びた素材の利用
瀬戸の集落になじんだ建築形態となり、
工事用仮設階段 / アルミ
地域に消費される建築となります。 上げ棚の構造体を活用 柱□ 105 105mm
上げ棚
半屋外空間
上げ棚の構造体を活用
廃棄皿の循環によるレンガ躯体
柱□ 105 105mm
焼成レンガ 200 100 80mm
本棟西側断面詳細図 S=1/75
別棟東面断面図 S=1/75 上げ棚
屋根の延長
空間の延長
素材の転換
Apartment コウボウ
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コウボウは地域を支え、地域に消費される建築として瀬戸に根付いていきます。 ▽最大高さ
部分的な屋根材の減築 張り出した屋外乾燥
▽軒高
住空間
▽2FL
工房空間
▽GL±0 ▽GL-320
地下空間を生かした乾燥
庇下の中間領域
3600
900 7200
2700
南面断面図 S=1/100
A 北東外観
北東側は周辺地域に最も近いため、空地・抜けを活用して周辺住民を迎え入れる。
元々は手入れが行き届いておらず、姿が見えないほどの雑草に覆われていた 北東の外観。雑草を撤去し、別棟と本棟を繋げるように、構造体・屋根形状・ 床を連続させていくことで、棟間での人の動きを棟間での活発化させると同 時に、周辺地域に対しての新しいファサードを構築する。既存部分の屋根材 には既存のスレートから、一部を透過性のあるポリカに変更することで、大 屋根に囲われ、光を遮断していた内部空間への採光を獲得する。
B 本棟内観
共有工房空間では、集落に暮らす様々な人達がやきもの文化を通して接点を持つ。
簡易的な鉄骨の柱、梁、屋根のみで構成された貯蔵庫内部では、空間の間借り・ 梁を活用した貯蔵などの様々な工夫が施されてきた。本提案では、それら工 夫を生かしつつも、瀬戸市のやきもの再利用による新たな可能性としてのレ ンガ壁等を取り込み設計を行なっていく。基本躯体構造には、工夫の中の一 つである上げ棚の構造を用い、階段には、工事用の簡易的な部材を用いるこ とで、やきもの文化の中で培われた土着的な懐かしさを感じる建築形態を目 指している。
C 南西外観
南面の空地は普段は屋外作業場として使われ、ハレの日には露店が並び、周辺集落の拠点として機能する。
商店街側であり、市街地側であり、車の導入部分であるために、外部から の人の流れが最も多くなることが予想される南西部分。切り妻形状により、 外部と縁を切られたように感じる西面には、既存屋根からの連続した庇を 取り付けることで、外部からの流れを引き込み、内と外を緩やかに連続さ せていく。さらに南面の空地を囲うように建築を増築していくことで、敷 地全体を最大限に活用しつつ、周辺との関係性を構築しやすい環境を整え ていく。
Apartment コウボウ
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模型写真
S=1/30
使い古され、解体されるはずだった陶磁器貯蔵庫は 地域を変えるきっかけとして再び地域の中心へと回帰を果たします。
瀬戸本業窯にて。
0730
Apartment コウボウ
Fin.