藝大 Architecture portfolio 2019-2022

Page 1

建 築 と 場 所

t a k e b e

h i r o m u



建築と場所 Takebe Hiromu

武部大夢


Introduction

口に咥えて

線と風景

先に真っ直ぐな線を描いた。しかしそれは、右手でいつも通り に書いたり、手を浮かせて書いたり、はたまた口で咥えたりして、 いろんな方法で真っ直ぐな線を描いた。 そして、線の硬さや強弱、震えのような、複雑な表情を読み解き、

左手を浮かして

一つ一つに意味を与えながら線を書き足していく。モグラを描 いてみたらそこは土になった。その上に石をつめてみたら、地 上に出るのが大変なモグラになった。草をゆらゆらさせたら、 なんだかそこは浅瀬のようになったりして・・・。こんな風に 線の一つ一つに素材やストーリーを当てはめていった。すると 無機的に浮上する五つの線は一つの風景と変わり、風景によっ て五つの線の表情の豊かさを知ることができる。 すごく抽象的だけれども、建築が立つときにもこの瞬間を感じ る時がある。イエメンの高層集落は巨大な山脈の頂上に建つの だが、場所によって建築の豊かな想像力を作り、建築によって 場所の潜在的な力を可視化する。場所の条件によって建築が際 立ち、建築によって場所の存在が再定義されている。

左手で

このように建築と、歴史や地形・文明を内包したコンテクスト(場 所)が互いに影響を及ぼし合う関係性が、新しい建築の道標と なるのではと考えている。本書ではその関係性をもがき探究し 続けた、記録のようなものである。作品は時系列順で掲載され ている。私自身の思考の変遷とともに、「建築と場所」の葛藤を 感じていただきたい。

右手を浮かして 右手でいつも通り



Profile 自己紹介

武部

大夢 / Hiromu Takebe 1999

埼玉県浦和市生まれ

2020

国立小山高等専門学校建築学科卒業

2020-

宇都宮大学地域デザイン科学部

《 Award 》

建築都市デザイン学科

2019.12

第 16 回全国高専デザコン佳作

2020.02

卒業設計学内講評優秀賞

.03

仙台デザインリーグ奨励賞(100 選)

.06

JIA 栃木クラブ賞最優秀賞

.09

建築新人戦奨励賞(100 選)

.09

木の家設計グランプリ奨励賞(20 選)


01

02

03

04

05

06

07



‫ ݐ‬ங ͱ ‫ ݸ‬ੑ



無形式の市井 ( 2 0 1 9 .1 2 ~ 2 0 2 0 .0 3 )

住宅 /House ニュータウン /New Town

本設計は日常の疑問から始まった。戦後から約 80 年、商品化さ れた住宅が常態化してしまった町の風景を再考する。

非場所性⇔場所性 無個性⇔個性 プリファブリケーション化された商品化住宅をバラバラに解体 し、もう一度接合し直すことで建築を作った。 現在販売されてる商品化住宅のカタログを片っ端から集め、複数 のメーカー住宅を複合しながら住宅を組み立てていった。 メーカーごとの売り文句は相似しないのに、町に集まるとどこと なく似ている暮らしや風景は、解体→掻き混ぜ→再結合によって メーカ同士の異質性が明らかになり、個性と化する。 形式的なエレメントを無形式的に作る接合法から私はこの住宅群 を「無形式の市井」と読んだ。



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Site

ニュータウンの一角

敷地は、栃木県の南に位置するニュータウンの一角にある。小 山市は、現在でも核家族の移住者が増加し、宅地開発によって ハウスメーカーの淡々とした町並みが次々と拡大している。

小山駅

分譲地

分譲地

SITE

森林

間々田駅

A

Aʼ ゴルフ場

2019 栃木県小山市

ゴルフ場

2020 間々田地区

N


Low context

Plogram

平坦な郊外

1500

(世帯) 30000

核家族のための住宅

25000

小山市は海も山もない平坦な盆地で、都内から電車で乗り換え無し

プログラムは住宅である。小学校を機に戸建て住宅を望んだ者、

の一時間半程度の立地にある。そのため、持ち家政策以降、ハウス

地方に飛ばされてこの町に地を着いた者。家族のあり方が多様化

メーカーによる宅地開発が加速していった。

している一方で、一向に減らない核家族のための住宅を考えた。

20000

H19

R2

小山市における核家族の世帯数

1000

500

SITE

間々田駅

農地

小学校

A-Aʼ 断面図

0(m)


The bouring Jigsaw puzzle ありきたりなジグソーパズル

農地や森林が切り崩され、結局のところできあがるのは、ハウスメーカーによる住宅群であった。 どこにでもある景色に更新するその行為は、ありきたりなパズルを組み立てているようだ。


How to make

パズルを崩して組み立てる

解体

掻き混ぜ

再結合

そのため私は、決められたパズルのピースをバラバラに崩すことを考えた。つまり、あらゆるメー カーの商品化住宅を、解体・掻き混ぜ・再結合することで住宅を作った。ピース一つ一つの絵柄 や形状を分析し、決められた組み合わせとは違う結合によって一枚の絵を完成させようとした。


セキスイハイム ⑥

「グランツーユー」

Panasonic Homes

YAMADA HOUSE

「HS 構法」

「エルバイエス」

積水ハウス 「ユニバーサルフレーム

システム」 ミサワホーム 「フリーサイズ」

「ツーバイフォー」

大成建設 「パルコン」

⑥ ②

トヨタ T&S 建設 ②

「ラビオス」

①Entrance ②Piano Room ③Living Room

④Kitchen ⑤Bath Room ③Bed Room

Panasonic Homes × ミサワホーム × トヨタ T&S 建設

内外や空間同士を緩くつないでいく。

「ミゼットハウス」

「HS 構法」

スケールの違いによってズレが生じ、

DAIWA HOUSE

Panasonic Homes

積木型

「ツーバイフォー」

①Living ②Bath Room ③Kitchen

④Bed Room ⑤Bed Room ③Bed Room

Panasonic Homes × セキスイハイム ユニット積層

剥き出しになった「HS 構法」の

鉄骨は私有性の高い庭のようなリビングを作る。

①Garden ②Garden ③Study Room

④Kitchen ⑤Living ③Bed Room

大成建設 × YAMADA HOUSE × 積水ハウス × ツーバイフォー ×DAIWA HOUSE 螺旋型

構法の違いによって生み出される空間

の異質性が途切れることなく連続する。


床 : フローリング t=10mm 構造用合板 t=20mm 根太 50mm 50mm 土台 100mm 100mm 換気用パッキン

アンカーボルト


YAMADA HOUSE 「エルバイエス」

Panasonic Homes 「HS 構法」

ミサワホーム

Panasonic Homes 「HS 構法」

「フリーサイズ」

YAMADA HOUSE 「エルバイエス」

⑤ 大成建設

「パルコン」 ③

④ ①

④ ④

「ツーバイフォー」

トヨタ T&S 建設 ②

「ラビオス」

② ①

大成建設

「パルコン」 ①

①Living ②Kitchen Bath ③Bed Room

④Bed Room ⑤Child Room ③Study Room

Panasonic Homes × ミサワホーム × セキスイハイム 架け橋型

架け橋状につないだユニットは特定の機能を持たな

い。廊下になったり書斎になったり、解体してテラスになったり。

①Bath Living ②Bed Room ③Kitchen

④Bed Room ⑤Living ③Bed Room

①Kitchen Room ②Living Room ③Bath Room

Panasonic Homes × 大成建設

セキスイハイム × トヨタ T&S 建設

× ツーバイフォー × YAMADA HOUSE 分棟型

都市型住宅を分散配置し、個室を無駄

なく最適化した。住宅の背面が解体される。

④Bed Room ⑤Bed Room ③Bed Room

断層型

RC パネルと大型の床パネルを互い違い

に積み、不安定なプランと安定した構造を作る。



1F Plan S=1:200 合理性と非合理性

6370 9500

25

60 54

46

5200

7280

7500

10000

3790

6200

5000

1

2

3

4095

4550

3000

4500

9100

4550

4000

3000

10000

3000

3300

3640

4

5

6

1 積木型 2 分散型 3 螺旋型 4 ユニット積層型 5 架け橋型 6 断層型

0

1

Section

5 (m)

Scale 1:200


2F Plan S=1:200 6370 9500

25

54

46

60

5200

7280

7500

10000

3790

6200

5000

4095

4550

3000

4500

3000

10000

3000

4000

9100

4550

3640

3300

環境条件に合わせて部品を選定しているため、部品同士が互いに補完し合い合理的な空間を作る。 水回りをパルコンにし、大空間のリビングは鉄骨、寝室は木造にしたりなど。



メーカー同士の物質的な異質性の衝突によって、暮らしと風景を色付ける。モジュールの差異 によって窓の形がいつもと変わって見える。



敷地境界を隔てる塀は住居の形によって後付けで構成される。塀は廃棄さ れるコンクリートパネル(ウォールペイントできるかも)や屋根ユニット など、様々な道具と併用される。


1

螺旋型

[図面タイトル] 縮尺: 1:50

分散型

積木型


2

ユニット積層型

[図面タイトル] 縮尺: 1:50

架け橋型

断層型

子供部屋の下を潜る。1000mm の段差をよじ登る。 接合によって生じる非合理は、今まで見えなかった豊かさを作る。



町 の ロ ー コ ン テ ク ス ト を 認 め

そ こ に あ る モ ノ の 組 み 合 わ せ で で 、 新 し い 場 所 を 創 造 す る



‫ ݐ‬ங ͱ ౎ ࢢ



曖昧さの調整と並置 ( 2 0 2 0 .0 7 ~ 2 0 2 0 .0 9 )

地域図書館 /Library 中心市街地 /Central city

〈課題文〉 地域図書館の機能とともに、自宅や職場・学校でもない第三の居 場所としての役割を担い、オンラインでは満たすことのできない 性質を持った都市建築のあり方を提示せよ。

建築と都市

ヴェンチューリは「建築の多様性と対立性」の重要性を論じた。 建築要素の固定的でない関係「多様性と対立性」は今間の近代建 築が犠牲にしてきた、人々の経験的事象を統合し、複雑な関係を 許容する建築を創造する、と。 本設計では「機能=形態」の一元的な関係を解放し、都市に内在 する「曖昧さ」によって再構成することで、本に関わる経験的事 象の多様性を内包した図書館を考えた。


Problem

近代建築と図書館

形 態

「閲覧室」

「書架」

知識 語り合う

共感する 「ルイス・サリヴァン」 (左)ウェンライトビル

感動する 近代建築

(右)ギャランティビル

近代建築家は、雑多 な も の 、 色 々 な も の が 入 り 混 じっ た も の を 犠 牲 に

一 つ の 本 か ら 、 一人一人違う豊かさを獲得する。環境・好みなど複雑な関係の中で本

して、機能と形態が 「 初 源 的 で 一 元 的 」 な 関 係 と し て 捉 え 、建 築 し た 。

は 存 在 し て い る 。しかし、近代の図書館は、機能と形態が一元的な関係であり、本の あ り 方 と 図 書 館 のあり方に大きなギャップを感じる


concept コンセプト

アーケード

飲食店 中間領域

「 閲 覧 場 所」 そ れ と も?

「集会所」 それとも?

「 侵 入 禁 止」 そ れ と も?

「自習スペース」 それとも?

「くつろぎ」 それとも?

ロバートヴェンチ ュ ー リ

都市(商店街)

図書館?

都市を見ると、機能 と 機 能 ・ 建 築 と 建 築 が 互 い に領 域 を 及 ぼ し あ っ て 、 曖 昧

こ の よ う な 都 市 に内在する曖昧な領域に、図書館の機能を適用させることを考えた。

な領域が生まれてい る 。 本 と の 対 話 の よ う な 複 雑な 関 係 を 内 包 し て い る 。

そ う す る こ と で 、接続詞に「それとも?」がついた、曖昧な図書館を作ることがで きるのではないか



都市そのものに可能性を見出す。都市の図書館の「機能」を適用したときに「機能」を超えた曖昧で豊かな経験を作り出すことができるのではないか。


Site

宇都宮の中心市街地

機能 配 置図に用途地域(一 部 変 更 ・ 追 加 ) 毎 に ハ ッ チ ン グ し 、 人 の 動 線 を 整 理 し た。右図から対象 敷 地 は 多 様 な 動 線 が 混 じ り 合 う 結 節 点 で あ る と わ か る 。 神社

オフィ

スケール ま た、スケールに着 目 し た 。 既 存 の 建 物 ( パ ル コ ) は 異 様 な ま で に 巨 大 で 、

ス街

北 側には光が入らず、 周 囲 と の 関 係 を 閉 ざ し た 建 築 で あ る 。

JR 宇 都

宮駅

東武宇都宮駅

S IT E

居住 東武宇都

JR 宇都宮駅

宮駅

配置図兼屋根伏せ図 神社 看板建築

アーケード 低層商業施設

高層住宅

低層住宅 高層商業施設

事務所 倉庫・駐車

医療施設


How to make

「全体構想」都市のようにつくる

異物化された巨大な建築ではなくて、都市の一部となるように、動線を引き込む、ボリュームを分節するスタディを繰り返した 最終的には人の動線の近道になるような「近道案」に決定した。

建築

動線を考える

ゾーニングの検討

ボーリュームの検討

建築ができる

都市

既存道路に近道を与える

区画整理を行う

最高高さが決定する

都市ができる


Research

「部分の収集」都市の曖昧さをスケッチを通してリサーチする

敷 地 周 辺 を歩 き な が ら 、「 曖 昧 さ 」 を 持 つ 場 所 を ス ケ ッ チ す る 。 都 市 の 間 に あ る鳥居はどこかで境界を感じるし、庇の下に置かれた商 品 の 陳 列 棚 は 、 商 店 の 領 域 を 曖 昧 に し て いる。都市に散りばめられた「曖昧さ」のヒントを探る。


Transform

「部分の抽象化」曖昧さを抽象化し、図書館機能に「調整」と「並置」操作を行う

1.

隙間・動線

・ 1-1

・ 1- 2

D

D 1m

⇨暗がりの閲覧場所

ディープな本が並ぶ

3.

・3-1

外部空間

屋 根の 上 に 設 け ら れ た 屋上 ⇨ 緑の あ る 独 り 占 め 空 間

・ 1 -3

⇨近道動線。職員と来訪 者の動線が入り混じる

・ 3- 2

D 4m(最低限の道路幅)

D 1 .5 m (マンション階 段 )

⇨大きな主要動線

⇨踊り場は閲覧場所

6.

スケールの変化

駐 車場 化 さ れ た 空 地

⇨ パッ と 視 界 が 開 け 、 都市 の大 き さ を 認 識 す る

入口

・2-2

赤色の鳥居はどこかで境界を

商店街の入口

⇨自然に受け止める入口

マーク的な入口

定める

⇨通過動線でもあり、ランド

都市の流れを受け止める

4. 領域

・ 4-1

・ 4-2

・5-1

5.

サイン

・5-2

外に迫り出したベランダ

⇨ 都 市 を 緩 や か に 感 じ る一 人の空間

アーケードまで飛び出した客席

⇨語り合う場所。読んだ本を共有 したり、会議したり

・ 6-1

・2-1

D

D

D 4 m( 最 低 限 の 道 路 幅)

2.

・ 1 -4

・ 6- 2

奥は居住空間となる商店形式

⇨ 土 間 に は 書 架 が 並 び 奥 は くつ ろげる閲覧場所

7. 並置操作

・ 7 -1

庇下に並んだ陳列棚

⇨本のアピール。奥へ と 誘 導 す る仕掛け

動線方向都直行した方向で見え

の管理場所の位置を記す

⇨本の種別を記す。大きな絵で

⇨「 受 付 」「 閉 架 書 庫 」「 W. C」 な ど

るサイン

わかりやすく

・ 7 -2

3 - 2 を複数並置させる

4 - 1 と 6 - 2 を並置させる

視覚的に緩やかにつつながる

続する

⇨向かい合った一人だけの閲覧場所は

動線方向から見えるサイン

様々な質を持った閲覧場所 が 連

収 集 し た 「 曖 昧 さ 」 を 設 計 に 落 と し 込 む た め に 抽 象化して要素を取り出した。そして図書館の機能に調整・並置を行う。 そ し て 「 隙 間 ・ 動 線 」「 入 り 口 」「 外 部 空 間 」「領域」「サイン」「スケールの変化」「並置操作」の要素を取り出した。


How to make 部分の接合

リ ュ ー ム の 外 形 線 に 合 わ ボ 部 分 を 即 物 的 に 当 て は め る

柱 (wood )□1 0 5 1 0 5

アンカーボルト 床梁(RC ) 壁柱 (RC )t=3 0 0 m m

05 ボリ ュ ー ム ス タ デ ィ で 大 ま か に 定 め た 外 形 線 似 合 わ せ

即 物 的 な 接 合 を 可能にする構造を考えた

るよう に 、 0 7 抽 出 し た 部 分 を 即 物 的 に 構 築 す る 。

下 層 は R C 造 の ユ ニット同士を床梁によって一体化し、打設の際はアンカーボル

そうす る こ と で 、「 曖 昧 さ 」 を 持 っ た 部 分 が 、 様 々 な 関 係

ト を 事 前 に 打 ち 込む。二層目はアンカーボルトから、木造のユニットを施工する。

を保ち な が ら 、 都 市 的 に 立 ち 現 れ る と 思っ た 。


How to make 部分の接合


Study スタディ

都市のように建築を作り、部分を当てはめて行く一連のスタディ。 曖昧さがどのように現れるか、部分と全体を横断して考える。




1/100 スケールの模型。バラバラな都市と密かに纏う全体性を模型で表現しようとした。


Plan S=1:500 建築と都市

ゆったりと本が見れる場所。 自然が抜け、視覚的につながる

都 市 の 裏 側 が 都 市 の 表と 隣 接 す る

参道帰りの人の流れを受け入れる

私有性の含み込んだ公共性が都市に表出し、新しい風景となる

商店を行き交う観光客を 受け止めるために書店を配置

連続する軒の出。 周囲の都市 と体験が連動する

9000

A

11500

事務所

駐輪場

8700

14500 ファサードボリューム

書店

書架

の呼応

書店

全体が見渡せる 受付配置

レファレンス

本の情報が歩いている人にア ピールする

00

65 ④

事務所

様々なところから動線を引き込む 都市の新しい回遊性を作る

閉架書架

建築が生み出す隙間のような場所

28000

スケールが落ちて一番集中できる場所

カフェの設えの連続

神社 看板建築

アーケード 低層商業施設

高層住宅

低層住宅 高層商業施設

事務所 倉庫・駐車

医療施設

1F

0

5

25(m)


都市を一望できる空地

書架 ⑦

即物的な統合 に よ っ て 生 ま れ た 立体動線

3F

書架

2 人程度しか許容しない大きさのテラスが向かい合 いながら積層する

事務室

2F

ビ ル の 隙 間 のような空間


都市を無理やりつなげようとしてできたバグ、鋭角なファサードを持つ。


(上)向き合うベランダ。一人の時間でありながらも、本との時間が共有される。 (左)浮遊する廊下。図書館での経験が立体的につながる



①本の情報が外に飛び出す。毎日違う形で本と出会う ②向かい合うベランダ。静かにひっそりと読む、くつろぎながら読む人が立体的につながる ③奥が見え隠れする商店形式。チラッと見える書架に興味が湧き奥へと引き込まれる ④D=1m の隙間。好きな人は好きだし、嫌いな人は近づけない。読む人にムラができる。 ⑤都市スケールと身体スケールが共存する。本を読む、探す、いろいろな行為が一定の距離 を保ちながら混ざり合う。 ⑥都市を一望できる屋上。自分の好きな場所を辿れる場所。 ⑦動線が立体的に交差する ⑥


1-3 大きな 主要動線 都市の流れを受 D

け入れる主要動 線。いろいろな 行為が混ざり合 う。 1-1 暗がりの 閲覧場所 ディープな本が

D

並ぶ閲覧場所。 好きな人は好 き、嫌いな人は 嫌い。

4-2 軒下に並んだ 陳列棚 赤色の鉄骨は鳥 居のようであ り、アーケード のようである。

5-1 動線方向から 見えるサイン 歩いたことを一 望する場所。

構造:プレキャストコンクリート 基礎:ベタ基礎 一部鉄骨梁・RC ラーメン

A-Aʼ Section S=1/200

曖昧さを持った部分が立体的につながる断面構成


3-1 屋根の上に ある屋上 屋上で豊かな緑 を育てる。町を 俯瞰しながら気 持ちよく本が読 める場所

6-1 駐車場化された 空地 本の情報を大き く掲示する。探 すを都市的に。

7-1 並置された ベランダ 商店には奥に暮 らしが宿る。覗 いてみたら奥に 過ごしやすそう な場所がある 7-2 様々な質の 閲覧場所 椅子を置けば自 分だけの居場 所。町から家、 家から町に移る

この図書館では廊下より肥大した、道路のような動線が通るため、視線を限定し ながらもよく抜ける。そのため、曖昧さを持った部分が立体的につながり、流動 的な図書館となる



都 市 か ら 「 形 態 と 機 能 の 関 係 の 曖 昧 さ 」 を 学 び 調 整 と 並 置 の 操 作 に よ っ て 図 書 館 を 再 構 築 す る 。

そ う す る こ と で 、 使 い 手 が 思 い 思 い に 場 所 を 解 釈 し 意 味 を 与 え て い く 他 律 的 な 建 築 と な り 、 豊 か な 本 と の 対 話 を 許 容 す る 図 書 館 に な る 。

図 書 館 と い う 自 立 性 と 、 意 味 が 与 え ら れ て い く 他 律 性 が 共 存 す る 。 こ れ が 、 現 代 の 「 建 築 の 多 様 性 と 対 立 性 」



‫ ݐ‬ங ͱ ‫ ه‬Ա



清住の記憶を解いてつくる、小さな共同体 ( 2 0 2 0 .1 0 ~ 2 0 2 1 .0 1 )

商店兼住居 /House and Store 都市計画道路 /City planning road

〈課題文〉 宇都宮の街なかで今後変化する 3 つの地区を対象として、 宇都宮の未来を担う地区と建築を提案する。リサーチ、コンセプ ト作り、建築設計の 3 段階を踏まえて設計する。

建築と記憶

かつて宿場町として賑わった宇都宮市の清住町通りに面する、4 つの建築の改修提案。 この通りは、戦火から逃れた町屋や蔵の他にレンガ模様の洋風建 築や看板建築など、様々な年代の建築が並び、ゆったりとした時 間の流れを感じ取れる場所だ。しかし、25m の大型都市計画道 路が開通する予定で、敷地5m 程度の後退を余儀なくされた。 本設計では、一人の建築家として、住人一人一人が持っている「町 の記憶」と「家の記憶」を頼りに建築を更新する。 必然の近代化を能動的に受け入れ、住人の思いに寄り添う新しい 町像を探った。


Site

清住町通りと計画道路の狭間

清住町通りは様々な年代の建築が、増築、改修によって少しづ つ形を変えながら町を更新している。 一方計画道路は、時間をかけて更新してきた「町の記憶」や「家 の記憶」を一掃してしまう。 そこで、多様な年代の建築が並ぶ清住町通りと、その時間を断 絶する計画道路の狭間にある、四つの建物と空地を対象とする。

⑥ ⑤

SITE ⑧ ①

清住町通り

④ 都市計画道路計画地

敷地:栃木県宇都宮市清住町通り


Survey

建築の時間の流れ

江戸

町屋・見世蔵

大正

看板建築

昭和

増築

改修

明治 看板増築

平成

宅地化


problem

住人が持つ「町の記憶」と「家の記憶」の違い

住人が持 つ 「 町 の 記 憶 」 と 「 家 の 記 憶 」 は 必 ず し も 関 係 し 合 っ て い る と は 限 ら な い 。 そのため 都 市 計 画 の よ う に 町 を 俯 瞰 し た 視 点 か ら 町 を 作 り 変 え る だ け で は 、 住 民 一 人 一人の記 憶 に 寄 り 添 っ た 建 築 は 作 れ な い と 感 じ た 。

町の記憶

「家」の記憶


proposal

大小のスケールで清住を更新する

提案は大きく分けて3つである。 街区・生業・建築と町を多角的に捉えることで、加速度的に発展する都市化を受け入れ、 住人一人一人の記憶に寄り添いながら、清住固有の町の記憶を未来へつなげる。

①街区の更新

②土着的な生業の 小さな共同体

③個々の建築の更新

歴史的な街区を読み解き、奥行きのあ

既存の産業のネットワークを再定義す

個々の建築の記憶を捉え、町との接点

る道を通す。町と人、人と人、人と建

ることで、新規産業の圧力を受け入れ

を考える。住人一人一人の記憶が町の

築の関係性を再定義する。

るような未来の町を構想する。

経験へと転換する。


街区の更新 1.

Survey

街区の更新とその行方

00. 宿場町の名残が残る街区

01. 高齢化による住まい手の減少

02. 空き家は取り壊され空地化

03. 細長く停めづらい駐車場

10. 新規住宅の参入

清住町通り沿いは宿場町として栄えていたため、歴史的な街区の名残が残っており、細長い駐車場がいくつもあった。 時間潰しのための駐車場は、計画道路が開通後、住宅やオフィス・産業が新規で参入すると予想される。

20. 新規産業の参入


Survey

途切れてしまった地域動線

豊かな植栽 アプローチが対面する

裏側には住人が使う地域動線が微かに跡を残す。スケッチを通して、住人が使い慣れた道の特徴を明らかにする。 住人の密なコミュニケーションは裏側の地域動線で魅力的に残っている。

雑多な所有物


空地を活用してタテとヨコにつなげる

余った駐車場は公園化

未利用の細長い空地

ヨコ タテ

街区の更新 1.

proposal

タテの関係

ヨコの関係

地域 動線 豊かな植生

エッジを抜いて 軒を挿入

計画 道路

設え

地域動線と計画道路をつなぐタテ動線を挿入する。そして既存の地域動線の 特色を生かし隣接関係(ヨコ)を再編する。

別の細長い駐車場でも展開する


駐車場の共有化

駐車場の共有化 徹底的な歩車分離

4m の道路を確保 小学生の通学路としても使われる

植栽の密度で奥行きのある道を作る

都市の流れに沿った設え

0 1 Scale 1:300

5

10 (m)


生業の更新 2.

Survey

土着的な産業とその行方

① ④

⑤ ⑥

⑧ ⑨

①小さいパン屋

②精肉店

③うどん屋

⑤畳屋

⑥タバコ屋

⑦時計屋

⑨ミシン屋

飲食店

④⑧オフィス

勢いのある産業 (タピオカ)

都市化が進み外部者の流入が激しくなると、新規の産業によって既存の産業が追いやられてしまう。 土着的な産業が均質化してしまうことを危惧した。


proposal

既存の生業を、住民と外部者のための生業を分解し「町の小さな共同体」

地域動線

住居

住居

住居

住居

地域動線 住民 の た め

空室

時計屋

空地

畳屋

タバコ屋

休憩所(中庭)

改修後

清住町通り(都市計画道路開通前)

住居兼事務所

外部 者 の た め

畳体験

タバコ屋

時計屋

趣味部屋

住居

住居

住居

中庭

中庭

時計屋

個展

タテ動線

厨房 タバコカフェ

キッチン

清住 町 通 り ( 都 市 計 画 道 路 開 通 後 )

そ こ で 、既 存 の 生 業 を「 住 民 の た め の 生 業 」 と 「 外 部 者 の た め の 生 業 」 に 分 解 し 、ヨ コのつながりを作りネットワーク化する。 今 ま で 存 在 し て い な か っ た 「 町 の 小 さ な 共 同 体 」 を 作 る こ と で 、 町 の 生 業 や暮らしを後世につなげる。


生業の更新 2.

Proposal

町の小さな共同体を作り、未来につなげる

歩行者専用 道路

打ち合わせ 住居

住宅街

住居

時計修理

趣味

地域の子供達

井草シート

中庭 提供

お茶

タバコ

町の井戸端

展示

透明度の高い キッチン

キッチン

ストリート ファニチャー

時計好

きの会

井草体験

タバコカフェ (喫煙カフェ)

時計販売

個展

展示

外部者 展示

出荷

タバコ

空地

時計

趣味


Proposal

町の小さな共同体を作り、未来につなげる

タテの関係

タバコ

空地

時計

趣味

地域 動線

計画 道路


建築の更新 3.

Survey

住人一人一人が持つ「家の記憶」を捉える

住 民 と の 対 話 を 通 し て 「 家 の 記 憶 」 を 聞 き 取 り

家の記 憶

住人の聞 き 取 り 調 査 に よ っ て 、 自 身 の 家 の 記 憶 を 探 っ た 。 「子供の頃に中庭 で 元 気 に 遊 ん だ 」、「 赤 い チ ャ ー ミ ン グ な 屋 根 が お 気 に 入り」など、暮 ら し と 密 接 に 関 係 し た 記 憶 を 聞 き 出 す こ と が で き た 。

記 憶 を 「 町 的 な 要 素 」「 身 体 的 な 要 素 」 に 分 類 整 理

町的

身体的

配置

空間の構成

素材

そ し て 、住人が持つ「家の記憶」を町的な要素と身体的な要素に分解して整 理 する。住人一人一人の記憶が町とどう接続するか整理して考える


proposal

小さな視点と大きな視点を横断したスタディ

・配置

減築

つじつま合わせ

・素材

転用 街区・生業の更新によるタテと 個別の更新

ヨコの関係

リ サ ー チ し て 分 か っ た 課 題 や 実 現 し た い 空 間 を 整 理 し た 。 そ し て 建 築 単 体 の「個別の更新」と「町全体の 街 区 ・ 生 業 の 更 新 」 の つ じ つ ま 合 わ せ の た め に ス タ デ ィ を 行 い 、全体を統合する。


建築の更新 3.

町の小さ な部位や質感まで捉えるために既存建物をトレースした。そして住 民一人一 人に建物の記憶を聞き取り表現した。


畳 改修後

改修前

時計 改修後

改修前

趣味 改修後

改修前

改修後

配置

個別の更新

改修前

タバコ

南庭を広く残すために 子供の時によく遊んだ中庭 増築によって狭くて暗い

減築と間引き

半外部空間とする

透明性の高いキッチンを作ることで 中庭に広がりを持たせる

ゆとりを作る

町の流動的な流れを受け止めるために 周囲を半外部空間で囲う

空間の構成

釣りワイヤー φ10m m 特徴的な屋根のリズムを 反復させるように増築

20 年前は 平入りの町屋形式

現在は外と断絶した 構えになっている

既存の躯体から 垂木を吊って ボリュームを下げる

ヨーロッパ基調のファサードが削ら れるため内部空間に転写する。

屋根勾配を無理やり繫いだ立面は 町の流れに寄り添う

既存のスライドシャッターを 増築部分にも転写することで 横とのつながりが生まれる

素材 使い手が大谷石の質感を 感じれるように床レベル を下げる

住人が大切にしている自動販売機は今でも外観を彩る

ファサードに現れていた出窓を内部空間に 再編することで職住を緩くつなげる

様々な屋根素材が同時に存在する 時間の流れを感じる

減築で出た産業廃棄物 を外用の家具に転用

街区・生業の更新

ヨコとタテのつながり 0 1 Scale 1:300

5

10 (m)


Study

つじつま合わせのスタディ

既存建物のトレース風景と、スタディのスケッチ集。 「家の記憶」と「町の記憶」によって浮かび上がる造形とディ ティールの検討。過去をなぞることではなく、新しい空間性を 模索した。



1F Plan S=1:150

住人が持つ「家の記憶」が、町の更新に呼応する 徐々に細くなって 大谷石の土間が家の中を通り

外部者は進みづらくなる

中庭から直接アクセスできる

抜ける。事務所スペースと住

町に少し開かれた土間キッチン 暮らしが町に滲み出る

視線を遮る植栽

居スペースを緩くつなげる

時計工房

タバコ屋

趣味部屋

事務所

住居

住居 住居 住居

エッジが抜かれて

奥の中庭まで透き

軒が架る

通るように見える、 開かれた畳工場

個展

畳工作体験 時計屋

タバコカフェ

住民のための生業 住居 外部者のための生業 畳製造

タバコ

時計

趣味 町の人が個展を開く

喫 煙 し な が ら ゆっくりする 半 外 部 空間

床レベルが二段階にし た カフェでゆっくりす る場所と、時計好きが 集う場 所が混ざり合う広場の ような

奥に行くにつれて私的 空間となる

縁側が室内にまで伸び、 町とシームレスな関係に


2F Plan S=1:150

住人が持つ「家の記憶」が、町の更新に呼応する

コ ー ヒ ー の 香 り が 吹 き 抜 け を 通して 書斎に立ち込める

南側の塀によって一階には光が入らな

町から少し逃げるように配置されたテラス

いので、吹き抜けによって採光をとる

本棚に囲われた螺旋階段

地域 動線

計画 道路

宙に浮くように架る階 段

展示と工場空間

畳の製造過程を間近で見る 町の内部を知る

畳 町を一望できる テ ラ ス

タバコ

時計

趣味

計画 道 路 に 開 い た 吹き 抜け 空 間 。 移 り 変 わる 町と 呼 応 す る

0

1

Scale 1:150

5 (m)


カフェ

事務所兼住居 畳製造兼展示室

畳製造

受付

タバコカフェ

喫煙


住居

住居

地域動線 計画道路 時計販売

個展


畳 Section S=1:100

減築と間引きによって明るい中庭

スケールを落として町に馴染ませる

町の休憩スペースに

町を一望できる二階テラス

既存の架構から垂木を吊る事によって柱の落ちな

職住が緩やかにつながる吹き抜け空間

道路境界線

最高高さ+7,200

道路境界線

い、伸びやかな体験スペースとした

畳製造兼展示室

最高高さ+7,500

軒高+6,400

住居

2FL+3,500

2FL+3,400

畳製造

畳工作体験 打ち合わせスペース

事務所 1FL+600

1FL+50

都市計画道路

地域動線 8,500

5,460


タバコ Section S=1:100

シャッターの形式をポリカーボネートでも デザインすることで、隣地境界線を超えた 南庭を確保するために、日断熱のポリ

内部・半外部・外部の関係性を作る

カーボネート板で半外部化し、喫煙可 能な食事スペースとした

愛着のあるチャーミングなタバコ屋の ファサードは曳家をして残す 植栽によってプライバシーを守る

斜材で接合し断面線は見せる

道路境界線

道路境界線

最高高さ+7,800

タバコ販売

軒高+7,200

2FL+3,200

喫煙カフェ 住居

1FL+350 1SL+50

都市計画道路

地域動線 3,185

400

4,550

4,550

4,550

1,820


畳 Section S=1:100

切り取られたファサードはそのまま残し、出窓やレン ガ模様は内部へと転写した。 外

中の関係から、外

中の関係に変わる

エッジを抜いて、回遊性を生む

道路境界線

最高高さ+7,000

道路境界線

透明度の高い土間キッチン。 最高高さ+7,000

軒高+6,000

軒高+6,000

サブリビング 井戸端会議

住居

時計販売 2FL+3,200

2FL+3,100

キッチン 住居

1FL+500 1SL+50

1FL+300

都市計画道路

地域動線 7,000

8,190


趣味 Section S=1:100

都市計画道路の流動的な流れを 受け入れる下屋のような空間

南側の太陽光を取り入れるための吹き抜け 昔ながらの塀を残しながら採光する工夫

道路境界線

エッジを抜いて奥へと誘導する

軒高+5,700

道路境界線

最高高さ+7,200

最高高さ+7,000

軒高+6,000

2FL+3,100

2FL+3,000

1FL+300

1FL+300

都市計画道路

地域動線 5,005

7,280

2,730



身 景

長 の

の 更

履 新

︑ 井

た 風

れ の

ま 町

刻 な

に き

柱 好

︑ お

斎 ︒

大 き か っ た り ︑ 小 さ か っ た り ︑ 捉 え 所 の な い ふ わ ふ わ と し た 記 憶 を 住





大 小 の ス ケ ー ル で 町 全 体 を 改 修 す る こ と で 住 人 に と っ て 大 切 な 記 憶 を 、 町 の 変 化 に 呼 応 し て 再 編 成 す る 。 素 材 ・ 特 徴 的 な 屋 根 の 形 ・ 前 面 道 路 に 面 す る ミ セ 。 住 人 一 人 一 人 が 持 つ 記 憶 を 編 み 直 す こ と で 清 住 固 有 の ふ る ま い が 町 全 体 に 連 鎖 す る



‫ ݐ‬ங ͱ ஍ Ҭ ࢈ ‫ۀ‬



益子の窯元再編計画 ( 2 0 2 1 .0 4 ~ 2 0 2 1 .0 7 )

窯元 /Pottery studio 益子 /Masiko

本卒業設計は、去年の春益子に遊びに行ったのがきっかけである。 陶器がずらっと並んだ風景、上空に舞い上がる黒い煙、土が露出 した道。今まで感じたことのないような豊かな経験をした。 モノづくりを内包した「暮らし」、自然と渾然一体となったよう な集落のような工房・住宅群。人の温かさ。私はこの卒業設計を 通して、益子のなんとも言えない気持ち良さや豊かさの正体を知 ることで、建築家の人生として重要な何かを得られるのではない かと思った。 益子の陶芸職人の方たちと話し合いながら、新しい益子の未来像 とは何か模索した。陶芸体験をしたり、遊びに行ったりして、実 際に益子での経験を繰り返し、なんとかして建築として表現する ことで、私の中で感じた豊かな経験を文字起こししている感覚。 小山高専から建築を学んで 6 年間。その集大成としてこの作品を 記録する。


Background

場所と融和した建築の佇まい

地面と地続きになった内部空間。外の空気を柔らかく受け取る軒下空間。職住が一体となった 地域の核のような工房。実際に目で見て、泥を触って、そこに住う住人と何気ない会話を通して、 この益子の魅力を探った。

モ ノ づ く り を 介 し て 「 場 所 」 と 建 築 が 一 体 と な っ た姿


Site

陶器の町「益子」

敷地は、栃木県東部に位置する益子町。地域観光地として都心部から鉄道や路線バスが通り、 辺鄙な場所でありながら比較的アクセスしやすい場所である。 対象は陶器販売店・工房「窯元」が密集する城内坂通りの中央で、道路の拡幅工事により擁壁 が立ち上がり中が見えずらい場所となっている。

宇都宮市

益子町

幹線道路

SITE 路線バス

栃木県

栃木県益子町

栃木県益子町

城内坂地区


Problem

益子産業の複雑な課題

01. かつての益子の産業ネットワークとその衰退 従来のローカルな産業ネットワーク

02.「窯元」のコミュニティ 現在の独立した産業ネットワーク

風景

観光 陶芸

農業

衰退

林業

陶芸

衰退

組合

過去のローカルな益子の生業は密接に関わり合い、

現在では陶芸の観光地化に伴い産業ネットワークは途

相互扶助な産業のネットワークを確立していた

絶え、農業と林業は衰退の一途を辿っている

益子産業の一端を担ってい窯元(陶器の工房)は地域 コミュニティの中心的な存在だった。現在でも益子の 暮らしや風景を彩る重要な町の要素である。


Proposal

益子産業のネットワークを再編する

03. 提案 - 益子の新しい産業ネットワークを構築する「町の窯元」 益子産業の実態

産業資源の連関図

陶芸 担い手不足

農業

陶芸

林業

×

× 高齢化による 畑管理の難化

木材利用減少 による間伐不足

観光

発信

農業

×

直売

陶芸知識の 希薄化

×

化し、益子産業の問題は複雑に浮かび上がっ

町の窯元 陶芸の 知識

産業ネットワークが途絶え、暮らしがは多様

薪 最適な

ている。

林業

そこで、孤立してしまった益子産業を繋ぎ新 しい産業ネットワークを構築する「町の窯元」

生育環境

を提案する。足りない所を補い合う関係を作

販売

り、益子にとって必要不可欠な建築となる

観光 登場人物

小売人

陶芸家

弟子

民芸店主

農家

林業

体験

観光客


proposal

自然

産業ネットワークの再編

居住

生産

消費者

生産

居住

自然

大量出品 孤立

一括管理

益子陶芸美術館 陶器市

04. 分析 - 消費者に依存した構図

窯の煙 突

泥搬入 (益子焼組合)

濱田庄司の展示

城内坂を中心に起伏に沿って益子産業が分布している。しかし、

観光地化 風景を作る

濱田庄司

ろくろ体 験

見学(登り窯) 有名作家取引

一体型

林業

衰退

煙突

後継者不足

地 域のサロン (絵画教室)

ギャラリー

05. 設計 - 益子産業のネットワークを再編成し

職住一体

付加価値を生み出す媒介的な「町の窯元」

循環を作る「町の窯元」を建築する

戸 建て住 居

民芸店

別邸 戸 建て住 居

を建て替えし、周辺のネットワークを組みなおし、新しい産業の

陶器工房

風景を作る

産業同士の連関は見られず、消費者に依存した構図になっている

城内坂通りに平行して並ぶ益子産業を横断してたつ「既存の窯元」

新規入居者

展示場所減少

登山客

里山ならではの 気持ちの良い登山道

陶器小売店 屋根が 段々に見える風景

屋 根が段々に見える風 景

陶器工房

田園風景とともに 山が一望できる

城内坂通りと断絶 風景を作る

飲食店

階段

産業としての付加価値を作るだけでなく、新規住民や観光客、地 域住民の出会いの場としても機能し、地域コミュニティとしての 付加価値を作る。

山 山

跡 地・公 園

城内坂 通り( 陶 器 通り)

居場所作り

陶芸文化の発信

SITE

新規住民

観光客

陶芸家

山からの景 色

弟子 地域サロン・集会所

働き手(地域住民)

農家 ( 地域住民)

既存

アイソメ配置図 1/4000


戸 建て住 居 益子陶芸美術館 濱田庄司

陶器市

別邸

会場貸し出し

窯の煙突

ろくろ体験 戸 建て住 居

陶器工房

泥搬入 (益子焼組合)

見学(登り窯)

モノづくりの過程から 作品の魅力を発信する。

泥の知識を共有

民藝店 トイレ

煙突 地域のサロン

ギャラリー 会場貸し出し 新人作家の売り出し

成形後の体験 削り・釉薬・絵付け

地産地消 手伝い 管理

町の窯元

町の記憶を作る

段々に見える屋 根 陶器小売店 窯元 宿泊・休憩

陶器製作の知識共有

建材

コミュニティ作り

飲食店

赤松の薪 益子木材の力強さ

山頂の景色を引き込む 窯元を発信する

段々に見える屋 根 山

陶器通りと工房を関係づける 様々な文化を取り込み発信する

坂 階段

改修後

山頂

城内坂 通り( 陶 器 通り) 跡地・公 園

地域サロン

城内坂(陶器通り)

濱田庄司邸

益子陶芸美術館

ロクロ体験

既存ネットワーク 新規ネットワーク

町の窯元

窯元


How to make

益子の風景を生かしながら、様々な人が面的な関係を作る窯元を考える。自然と文化を内包したモノづくり空間を、人と人とが関係を作るネットワーク

全体プロセス

ネットワーク因子

町の窯元を建築する設計プロセス

因子へと、操作解釈したものを窯元に落とし込む。そうすることで、豊かなモノづくり空間や、外部空間を生かして、窯元に面的に広がる公共性を作る

城内坂

①町との関係によって、ゾーニング・動線計画 観光

観光

現地調査を通して窯元のモノづくり空間を収集した。そして収集したモノづくり空間を、他

陶芸家 農林業 ・ 地 域

収集・解釈

のアクターが関わる空間として再解釈し、それを「ネットワーク因子」とする。

窯業 農林業・地域

タイトル

00.

城内坂

②既存の窯元で発見した棟の分散配置による外部空間

01 . 陶器の乾燥棚

02 . 成形する上がり口

03. ガス窯煙突

分析模型写真

の豊かさを踏襲し、主要なモノづくり空間を配置 ①モノづくり空間の概要 ②ネットワーク因子のダイアグラム

①「01. 陶器板」をひっかけて、乾燥させる。 通気性を確保するために最低限の材で構成。 ②空間を分割する・陶器越しに視線が抜ける

①テラスのような形式にロクロが入るため の穴が空いている。 ②集まる

①階層を突き破るように伸びる煙突。熱の 移動によって二階は乾燥室になる ②熱を上階に伝達す 暖かい休息の場 乾燥室

0 4. コ ン ク リ ー ト ブ ロ ックと漆喰

0 5 . 薪置き場

0 6 . 移動する陶器棚

0 7 . 吊り下げられた乾燥棚

城内坂

③ネットワーク因子を落とし込む 「 モノづくり空間」

「ネットワーク因子」 ①窯高までコンクリートブロック、その上 は漆喰仕上げ。防火と調湿を兼ね備える。 ②仕上げ素材の特徴を生かした機能選択

操作・再解釈 畑

①薪を乾燥して保存する専用の家屋。壁は 一切いれず、通気性を担保。 ②通気性のいい構造に薪を積んでいく

08. モノのための軒下

①「01. 陶器の乾燥棚」が吊り下げられて いる形式。室内で最初に乾燥される。 ②空間を緩やかに分節する・風通し

陶器 納品箱

乾燥(野菜・陶器)

(例)テラスのようなロクロ場

に使われる。 ②細長いモノを運ぶ 細長い野菜

キッチン 成形

(例)ロクロ場

①それぞれの工程で陶器を移動するため

10 . 陶器板

0 9 . 梯子

11 . 移動する陶器棚

城内坂

④部分的に存在するネットワークを軒によってつなげ、 町との関係を再度検討する ・カーブによって視線を流す ・形式を徐々に落とす ・奥に屋根が垣間見える ①外部に陶器や備品を保存するために意図 的に出された軒下空間

・動線に沿って屋根を切り取る

・母屋によって方向付ける

②ファサードを個性的に・風通し

①陶芸家が唯一二階に登れる手段。めん どくさくなって、昇降機を使うことも。 ②頑張って上階に向かう

①陶器を乾燥・運ぶときに用いられるベニ ヤ板。250 800mm の規格材 ②安定して自立するモノを運ぶ

上階に行くのが億劫な人 大きな荷物を持つ人 高齢者

ネットワーク因子

①最も簡易的な昇降機。陶器を上階に移動 させるために使われている。 ②モノだけを上下に移動させる


再解釈を行った「ネットワーク因子」を「空間的側面」と「環境的側面」に分けて整理する

扱い方を整理

モノづくり空間でありながら。様々な条件下で人と人とを関係付ける因子として設計に落とし込んでいく。

空間を分節する

静的

01 . 陶 器 の 乾 燥 棚

①「01. 陶器板」をひっかけて、乾燥させる。 通気性を確保するために最低限の材で構成。 ②空間を分割する・陶器越しに視線が抜ける

04 . コ ン ク リ ー ト ブ ロ ッ ク と 漆 喰

①窯高までコンクリートブロック、その上 は漆喰仕上げ。防火と調湿を兼ね備える。 ②仕上げ素材の特徴を生かした機能選択

①薪を乾燥して保存する専用の家屋。壁は 一切いれず、通気性を担保。 ②通気性のいい構造に薪を積んでいく

06. 移動する陶器棚

①それぞれの工程で陶器を移動するため に使われる。 ②細長いモノを運ぶ

07 . 吊り下げられた乾燥棚

①「01. 陶器の乾燥棚」が吊り下げられて いる形式。室内で最初に乾燥される。 ②空間を緩やかに分節する・風通し

細長い野菜

キッチン

は漆喰仕上げ。防火と調湿を兼ね備える。 ②仕上げ素材の特徴を生かした機能選択 キッチン 成形

①「01. 陶器板」をひっかけて、乾燥させる。 通気性を確保するために最低限の材で構成。 ②空間を分割する・陶器越しに視線が抜ける

①階層を突き破るように伸びる煙突。熱の

①窯高までコンクリートブロック、その上

移動によって二階は乾燥室になる

は漆喰仕上げ。防火と調湿を兼ね備える。

②熱を上階に伝達す

②仕上げ素材の特徴を生かした機能選択

暖かい休息の場 乾燥室

直 射 日 光 を 避 け る

①陶芸家が唯一二階に登れる手段。めん どくさくなって、昇降機を使うことも。 ②頑張って上階に向かう 上階に行くのが億劫な人 大きな荷物を持つ人 高齢者

0 1. 陶器の乾燥棚

①階層を突き破るように伸びる煙突。熱の

①「01. 陶器板」をひっかけて、乾燥させる。

移動によって二階は乾燥室になる

通気性を確保するために最低限の材で構成。

②熱を上階に伝達す

②空間を分割する・陶器越しに視線が抜ける

0 7 . 吊り下げられた乾燥棚

①「01. 陶器の乾燥棚」が吊り下げられて いる形式。室内で最初に乾燥される。 ②空間を緩やかに分節する・風通し

暖かい休息の場 乾燥室

受け渡 し 01 . 陶 器 の 乾 燥 棚

的に出された軒下空間 ②ファサードを個性的に・風通し

乾燥(野菜・陶器)

03 . ガス窯煙突

09 . 梯 子

乾燥(野菜・陶器)

①外部に陶器や備品を保存するために意図

0 3. ガス窯煙突

04. コンクリートブロックと漆喰

成形 納品箱

機能を限定する

①窯高までコンクリートブロック、その上

08 . モノのための軒下

キッチン

陶器

成形 乾燥(野菜・陶器)

0 4. コ ン ク リ ー ト ブ ロ ック と 漆 喰

熱 を 発 生 さ せ る

調 湿 効 果 05. 薪置き場

風 の 通 路 を 確 保 06 . 移 動 す る 陶 器 棚

①それぞれの工程で陶器を移動するため に使われる。 ②細長いモノを運ぶ

0 1. 陶器の乾燥棚

07 . 吊 り下げられた乾燥棚

①「01. 陶器板」をひっかけて、乾燥させる。

①「01. 陶器の乾燥棚」が吊り下げられて

通気性を確保するために最低限の材で構成。

いる形式。室内で最初に乾燥される。

②空間を分割する・陶器越しに視線が抜ける

②空間を緩やかに分節する・風通し

0 3. ガス窯煙突

①階層を突き破るように伸びる煙突。熱の 移動によって二階は乾燥室になる ②熱を上階に伝達す

05 . 薪 置 き 場

①薪を乾燥して保存する専用の家屋。壁は 一切いれず、通気性を担保。 ②通気性のいい構造に薪を積んでいく

暖かい休息の場

細長い野菜 陶器

乾燥室 納品箱

動 線 が 可 変 す る

人が集まる 02 . 成 形 す る 上 が り 口

①テラスのような形式にロクロが入るため の穴が空いている。 ②集まる

03 . ガ ス窯煙突

05. 薪置き場

①階層を突き破るように伸びる煙突。熱の

①薪を乾燥して保存する専用の家屋。壁は

移動によって二階は乾燥室になる

一切いれず、通気性を担保。

②熱を上階に伝達す

②通気性のいい構造に薪を積んでいく

暖かい休息の場

06. 移動する陶器棚

0 8 . モノのための軒下

①外部に陶器や備品を保存するために意図 ①それぞれの工程で陶器を移動するため に使われる。 ②細長いモノを運ぶ

的に出された軒下空間 ②ファサードを個性的に・風通し

細長い野菜 陶器

乾燥室

納品箱

自 然 光 を 調 節 す る

移動する 03 . ガ ス 窯 煙 突

動的

①階層を突き破るように伸びる煙突。熱の 移動によって二階は乾燥室になる ②熱を上階に伝達す 暖かい休息の場

06 . 移 動 す る 陶 器 棚

①それぞれの工程で陶器を移動するため に使われる。 ②細長いモノを運ぶ 細長い野菜 陶器

乾燥室 納品箱

1 0 . 陶器板

09 . 梯 子

①陶芸家が唯一二階に登れる手段。めん どくさくなって、昇降機を使うことも。 ②頑張って上階に向かう

①陶器を乾燥・運ぶときに用いられるベニ ヤ板。250 800mm の規格材 ②安定して自立するモノを運ぶ

1 1 . 移動する陶器棚

①最も簡易的な昇降機。陶器を上階に移動 させるために使われている。 ②モノだけを上下に移動させる

0 2. 成形する上がり口

①テラスのような形式にロクロが入るため の穴が空いている。 ②集まる

上階に行くのが億劫な人 大きな荷物を持つ人 高齢者

空 間的側面

環境的側面

0 7 . 吊り下げられた乾燥棚

①「01. 陶器の乾燥棚」が吊り下げられて いる形式。室内で最初に乾燥される。 ②空間を緩やかに分節する・風通し


Isometric

居住・宿泊

動線の交点に存在するネットワーク ガス窯焼き 陶器市:ギャラリー

住居

コモンキッチン

ダイニング 井戸端会議 地域サロン

乾燥

⑥ ロクロ体験

薪割り 成形

アプローチ 陶器市:イベント広場

薪置き場

陶器・野菜乾燥 陶器・野菜乾燥

2F 通路

ガス窯焼き ガス窯焼き

釉薬

③ 食堂

屋外作業

登り窯

通常:水樋 陶器市:テント

乾燥

陶器販売

繁忙期:貯蔵庫 閑散期:焚き火料理

薪置き場 薪置き場

直売

畑 畑

荷上げ

森 森

農作物繁忙期:直売 陶器市場:陶器販売

ゾーニング 陶芸

城内坂通り

観光

農林業 地元


Isometric

動線の交点に存在するネットワーク

⑥ ② ①

町との動線を引き込み、各領域に人と人とを関係付けるネットワーク因子を設ける。そうする ことで、昨日の二面性を持たせ、使い手によって建築の意味が刻一刻と移り変わり、偶発的な

④ ③

出会いや交流が絶えず生まれる場所となる。

①乾燥の様子を見にくる窯焼きの職人と観光客が混じり合う 風がピューっと抜けて、屋根によって奥へと導かれる

②陶器の乾燥場でもあり、歩き疲れた観光客のベンチでもある 職人さんとの小さなコミュニケーションが生まれる

③釉薬を塗った陶器の乾燥場はテラスを緩く分節する 風が抜けて、適切な乾燥場でもあり、釉薬の香りが漂う農家 の休憩場所となる。

03.

01.

01.

10.

④薪置き場は視線を遮り、職人の集中を仰ぐ

⑤野菜と陶器の乾燥場が共存している。軒下の機能が揺らぐ

忙しさによって巻きの量が増減し、毎日が違う風景となる

お互いが譲り合いながら、乾燥場所を共有する

01

⑥ロクロ体験場を延長して、薪割りの休憩所にした 屋根の下で様々な機能が同居し混ざり合う

06.

02.

05.

01.

02.

05.

06.

01.

02.


モノづくり空間を拡張し、互いの場が干渉し合うように計画した。そうすることで、近所付き合い のような小さなネットワークが時間をかけて堆積し、より強固な協力関係を作る ボタングサ

モミジ

モミジ

マツ

ワイヤープランツ

モミジ モミジ

ワイヤープランツ

1820

3640

3640

ボタングサ

木材と陶器が同じ場所で乾燥 している風景

ボタングサ ツバキ

3640

3640

3640

3640

貯水槽

4300

大浴場

寝室

+3,750

ガス窯

455

1820

1820

開けた広場のような動線 陶芸家・観光客・農林業のス タッフが混在する

ヒートポンプ

1820

乾燥

薪割り

1820

成形

+3,250

イチョウ

が休んでるかも

5460

モミジ

4550

時には親水空間として観光客

5460

3640

4300

3640

地域の陶芸家と泥の知識共有 が自然に行われる

5460

5460

3640

モミジ

樹木をくぐり抜けた朝日が寝室に入り込む

3640

4095

4300

人の流れや自然がすり抜ける ロクロ体験場

4230

裏道から来るお隣の陶芸家 薪を回収するついでにロクロ 体験の様子を見に来た

眺めのいい大浴場 疲れ果てた陶芸家や登山家 がゆっくり休む

18

20

1820

+4,000

20

普段はカーテンで緩やかに視 線を遮る イベント時は広場とシームレ スにつながる土間空間となる

1820

910

1820

20 18

4550 4000

4000

4095

4095

5000

1820 1820

1820

成形

1820

2730

ガ ス 窯+ 3 , 7 5 0

釉薬

5000

1820

+5,750

1820

1820

ゆらゆらと引きずり込まれ るようなアプローチ

1365 730

2275

2275

乾燥棚がテラスを緩やかに 分節し複数の意味を持つ

+4,500

泥置き場

寝室

サブリビング

リビング

エレナ 3640

1820

モミジ

浴室

子供部屋

シデ

アオキ

アオヤマレンゲ

モミジ

3640

4550

1820

00

+4,250

コモンダイニング

910

60

5460

5460

登り窯

5460 3640 5460

4550

販売・乾燥

+4,250

薪置き場

4075

1820

+1,000

2141

乾燥している陶器と商品の 陶器が入り混じる風景

2730

18

20

18

カツラ

コモンキッチン

薪で視線を緩やかに遮る 陶芸家は集中できるかも

イチョウ アオキ

モミジ

455

こっそりしつらえてある縁側 地域の人が散歩の途中で休んでいる

アオキ

アオキ

4550

+4,500

ちょっとだけ奥まった場 所にある共有ダイニング

910

農具庫 1820

ウメ

1820

陶器販売 +500

作業場に用意した食堂につ ながる小窓 採れたて野菜の速報が入る

加工

1820

1820

0

厨房

食堂

+2,000

加工

直売所

ウメ

少し大きな乾燥する軒下 空間は、農具や人の滞在 場所になるかも

イチョウ モミジ

作業場

+2,250

益子の窯元再編計画

+1,250

所在地 / 栃木県宇都宮市益子町 主要用途 / 陶芸窯元・農作業場・販売・ショートステイ・住宅

467

400910 910

1820

1820

2730

400

2330

3640

2958

3867

4000

登場人物 / 陶芸家・林業・農家・小売人・地域住人・観光客

4000 5200

設計 設計担当 / 武部大夢

構造体でもある棚はいろい ろな意味を持つ 野菜の直売所・陶器販売・ 加工場などプログラムの入 れ替わりを受け入れる

ゾーニング

構造・構法 基礎 / ベタ基礎

陶芸

規模

観光

マツ

マツ

農林業 地元

金物工法

一部鉄骨造

RC 造

直接基礎

モミジ

敷地面積

マツ

イチョウ

主体構造・構法 / 木造

5,435 ㎡

(建蔽率 46.66% 延べ床面積

建築面積

2,536 ㎡

許容 60%)

2,996 ㎡

(容積率 55.124%)

֊ ฏ ໘ ਤ 4


ൟ ๩ ‫ ظ‬ε έ δ ϡ ʔ ϧ 4月

5月

陶 芸 家

8月

9月

10 月

11 月

12 月

土祭 陶器市

1月

2月

3月

観 光

3640

1820

3640

7月

陶器市

農 林 業 窯の熱が二階に上が流ことを利用 して、陶器の乾燥室にする

6月

3640

3640 5460

5460

3640

3640

5460

5460

3640

3640

3640

1820

4300 18

20

1820

455

1820

1820

4230

宿泊 ガス窯

4095

ロクロ体験

乾燥

1820

3640

1820

3640

1820

1820

1820

4550

大きなテラスは誰のものでもない みんなの場所 益子の風景を一望できる

4300

農繁期 (6 月〜8 月 12 月〜2 月)

4300

1820

3640

+7,750

乾燥室を横切る二階テラス。 冬はあったかいから、テラスで のんびりしている人がいる

加工 5460

5000

作業場

成形

+7,250

1820

2275

1820

野菜乾燥

野菜乾燥

4550

910 1820

3640

加工

1820

1820

3640

食堂

1820

七輪焼き 直売

2900

+4,750

1820

2730

400

2330

3640

2958

3867

4000

4000

֊ฏ໘ਤɹ4ʹ ɿ

5000 3640

4300

1820

3640

陶器市(5 月・11 月)

3640

3640

3640 5460

5460

3640

3640

5460

5460

3640

3640

3640

4550

切り株レクチャー

4230

宿泊 ガス窯

1820

455

1820

+5,250

4095

4300

5000

休憩所

1820

食堂

1820

+5,000

1820

農家のテリトリーが陶芸家のテリトリーまで拡大する。陶器の乾燥棚は野菜の乾燥場所に。

1820

2550

5200

2550

400910 910

作業場

加工

4300

5000

コモンダイニング 集中している陶芸家さんを邪魔 しないように、こっそりわたる 二階動線。

467

陶器販売イベント

新人作家のギャラリー

休憩所

陶器販売

1820

2730

1820

見学

5000

1820 1365 730

2275

2275

3640

4550

1820

3640

1820

1820

住居

910

00

3640 5460 5460

4550

60

4095

5000

1820

2141 1820

登り窯

4095

4075

5460

陶器販売

5460 4550 4000

1820

4000

910

1820

18

20

1820

2730

18

20

18

20

18

20

レベル差によって緩やかに分節された食 堂では、農家さんや観光客、陶芸の方が 採れたて野菜を使った料理を頬張る

1820

455

1820

1820

910

4550

1820

販売

467

400910 910

1820

1820

作業場 加工

直売 2730

400

2330

3640

2958

3867

4000

4000 5200

֊ ฏ ໘ ਤ 4

加工

民藝

1820

3860

2275

455

+6,750

新商品開発を地域の人で行う。 下では農家さんが一生懸命作業 している様子が見える 2960

1365 730

3640

4550

1820

3640

1820

友達の陶芸家を呼んでパーティー をする。

乾燥

住居

5000

1820

5000

1820

2730

1820

1820

登り窯

910

00

5460

4550

陶器販売

60

3640

4075

1820

2141

4000

4095

5460

4000

5460

4000

4095

1820

4000

4550

910

1820

18

20

1820

2730

18

20

18

20

+9,000

陶器市の時は陶器販売だけでなく、歩いて益子を回る観光客の休息場所としての機能を果たす

֊ฏ໘ਤɹ4ʹ ɿ70



城内坂からみるエントランス。屋根の下で、陶器や野菜の直売、加工、乾燥が 混ざり合う。益子独特の様相が滲み出る。


A-Aʼ Section S=1:60

屋根の下、屋根と屋根の間でつながるネットワーク因子

軒高 GL+2 2 5 0 成形工房 (体験)

450

1800

1150

最高高さ GL+3 4 0 0

1FL GL+4 5 0 GL 0

2275

2275


視線の流れ 2000

3700 5

1

0(m)

A-Aʼ 断面パース S=1:60


B-Bʼ Section S=1:60

屋根の下、屋根と屋根の間でつながるネットワーク因子

軒高 GL+2 5 5 0 宿泊・研修棟

45 0

2100

1834

最高高さ GL+4 3 8 4

1FL GL+4 5 0 GL 0

1500

3640

2275

1 820


1650

最高高さ GL +4500

28 00

軒高 GL +2850

サブリビング

GL 0

1820

2730

視線の流れ

4550

5

GL +50

1

0(m)

B-Bʼ 断面パース S=1:60


生かす計画とした

現代技術を活用しながら益子らしさを

剛性を確保する木質ラーメンとした。

から見える構造体を小さくし、金物で

そこで、梁を柱に挟み込むことで軒下

加 す る 余 白 で もあ る 。

し さ だ 。 現 し の構 造 体 は 棚 や 設 備 を 追

し 、 窯 元 を 構 築し て い る 風 景 が 益 子 ら

陶 芸 家 自 身 が 金具 で 半 ば 強 制 的 に 接 合

窯元のライトな構造接合

6,000

4,550

455

が一つ屋根の下で混ざり合う場となる。

そうすることで、スケールが許容する行為

ショナルにつなぎ、軒下の一体空間とした。

6000~455mm までの柱割りをグラデー

そこで、町の窯元の玄関口では

空間体験が魅力的だった。

梁 2:スギ 100mm

20 20 273

0

300mm

柱脚金物

梁受金物

挟み込み 梁受金物

梁 1:スギ 80mm

00

60

柱:スギ 200mm

300mm

18 梁 1:スギ 75mm

18 200mm

180mm

200mm

150mm

120mm

1820

2275

22

1820

1365 730

455

金物検討アイソメ図

4550

屋根伏せ図(柱・梁・母屋)S=1:80

柱:スギ 150mm

200mm

柱:スギ 200mm

150mm

100mm

75mm

梁 1:スギ 50mm

柱:スギ 75mm

柱:スギ 100mm

240mm

柱:スギ 120mm

柱:スギ 150mm

梁 1:スギ 60mm

240mm

梁 1:スギ 60mm

200mm

120mm

150mm 柱:スギ 120mm

柱:スギ 150mm

180mm

120mm@455

柱:スギ 180mm

母屋:スギ 60mm

柱:スギ 180mm

柱:スギ 200mm

240mm

200mm

20

のスケールの横断から生まれる様々な

18

棚スケールの小さな架構まであり、そ

梁 1:スギ 60mm

18

窯元には登り窯を覆う大きな架構から

20

窯元の寸法体系を一つの建築に組み込む

1 214 182 0

1820 1820

1820 1820 1820 1820 1820


1 FL GL+50 GL 0

2 FL GL+3372

3640

土間コンクリート金ゴテ仕上げ

ヒートポンプ

ガス窯室

大梁:スギ 120mm 250mm@455

5

根太=スギ 45mm 60mm@455

構造用合板 t=9mm

小梁 : スギ 60mm 250mm@455

乾燥室

構造用合板 t=9mm

構造用合板 t=9mm スタイロフォーム

GL 0

1FL GL+450

最高高さ GL+4384

1820 1

間柱:スギ 60mm 250mm

構造用合板 t=12mmm 漆喰

スタイロフォーム t=100mm

通気横胴縁 15mm 30mm@303 透湿防水シート 構造用合板 t=9mm

漆喰 耐水 PBt=12

スタイロフォーム t=100mm 構造用合板 t=12mmmk 蜜蝋ワックス塗

0(m)

C-Cʼ 矩計図 S=1:25

1820

スギフローリング t=12mm 温水式床暖房 スタイロフォーム 構造用合板 t=12mm 根太:スギ 45mm 60mm@455

天井受け:スギ 45mm 60mm

登り梁:スギ 120mm 250mm

スギ

構造用合板 t=9mm スタイロフォーム

陶芸 用水

温水 利用

温水式 床暖

ガルバリウム剛板 t=0.4mm 平葺き アスファルトルーフィング

排気熱 ヒートポンプ 貯水槽

窯の熱を利用した排気熱回収 ヒートポンプ

通気横胴縁 15mm 30mm@303 透湿防水シート 構造用合板 t=9mm

冬 冬

漆喰 耐水 PBt=12

ガルバリウム剛板 t=0.4mm 縦ハゼ葺き アスファルトルーフィング

半外部空間 自然通風 直射抑制

登り梁:スギ 120mm 250mm

小梁 : スギ 70mm 250mm@455 軒高 GL+7060

構造用合板 t=9mm 蜜蝋ワックス塗り

最 高高 さ GL+8660

蒸散効果 朝の木漏れ日

402 3532

夏 夏

益子の豊かな風・緑・光を活用した アクティブデザイン

60 60 30 200


Photo 模型写真

益子独特の様相が建築を彩る

城内坂通り(観光通り)からみるエントランス部分。 傾斜のある斜面に沿うように屋根がかかり、ずるずると奥へと引きずり込む。 柱の構造と乾燥棚や販売所でみられる益子の営みや暮らしが重なり合う


モノづくり空間で行われる暮らしが外部空間へ溶け出し、モノの運搬や人の移動によって複雑な関係をつくる


Photo 模型写真

屋根・地面・モノづくり空間

半外部から内部空間にかけてグラデーショナルにつながり、陶器の乾燥・野菜の加工や直売が 一つつながりの空間でつながる


野菜の加工場・直売所を見たもの。 左側のエントランス部分の天井高さは 2200mm まで落とし、身体にまとわりつくような玄関口。 それが斜面をあがるにつれて、徐々に窯元に馴染みのある切り妻屋根にトランスフォームする



窯 業 に お け る モ ノ の ネ ッ ト ワ ー ク と 農 業 ・ 林 業 ・ 観 光 業 の 営 み や 生 業 が 輻 輳 的 に 編 み 込 ま れ た 新 た な 風 号 形 態 を 模 索 し た 町 の 事 物 連 関 を 空 間 の 手 が か り と し た こ と で 、 新 た な 産 業 の 関 係 を 内 包 し た モ ノ づ く り 空 間 で あ り 公 共 空 間 を 考 え た 。


伝統産業 空間構成

工房 連関

1907 1931

佐久間窯 濱田窯

⑥ 島岡製陶所 1953 60

10

191

64

40

32

11

22

14 モノの関係

24

45

7

単+連続 0 なし

7

103

10

加工

11

7

7

パタン ア イ ウ

該当数

単+連

観察

なし

パタン

0191 0252 0422 0533 1184 1255 他 3

建物間 の関係 職住の関係

0392 1366

境界面間の関係あり

モノの関係

職住+モノ なし

○ ○

0

0

2

9

他 1

011 EFGh 0523 EG 1816 EFG 1

1886 s 0955 EGh

○ 1646 ○ ○6 ○9 ○ ○

11

2

1

1

2

4

2

0232 BCFc C D ◒ 2 0051 0453 BCFc C AD ◒ 0654 2 0674 1684 1764 1145 1466 他 6

0

工房 でみられた境界面 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2

0

4

0171 h

w

1

0312 h 0433 Cc

◒ 3 003 BCc BC AD ◒ 021 Cc ● 0564 BCFcACw AD ◒ 4 0342 h ● 4 0875 BCFcACD E ◒ 4 0604 EG 1286 BCc AC AD ◒ 0614 EG

● ●

0

0

21

0

19 21

3

● ●

● ● ● ●

2

4

13

例外

● ● ●7 ● ● 13 ◒ ◒

0

19

h2 h2 h1 h2 h2 h2 h2 h2

0181 h 1496 h 他 1

150 C 0443 1556 6

他 3

0071 0151 0352 1175 1215 1626 1696 1736

1406 1516 0041 EG 0101 B

D

4

● ●

● ● ●

3

3

11

● ● ● ● 8 ● 11 ● ● ●

○ ○ ● ●

34

他2

他 3

026 0584 0985 1786 2

他3

1

014 0473

他 3

0281 0332 0483 0634 1265

EFGw EGw

EGw EFGw EFGw EFGw

0

9

◒ ◒ ◒7 ◒7

14

◒ 2 ◒ 14

● ● 9 ● ● 14 ●

w w w w w

0

登り窯 , 薪小屋 でみられた境界面

22

エ オ カ キ

Seen From Building Boundary Surface in Mashiko Potteries

The Interrelation Between Workshops, Climbing Kilns and Dwellings

観察

あり (169)

蒸発

C. 乾燥1

蒸発 光熱

単+連 0

3

0

0

6

58 22

● ● ●

茶室などの 趣味空間

陶器の 販売 , 展示

3

3

他 8

1416 1526 1536 1546 1636 1656 1666

0694 0704 0724 0734 0744 1195 1235 1356 1326 1596 1606 1616 0784

h1 h1 h1 h1 h1 h1 h1 h1 h2 h2 h2 h2 h2

34

○ ○ ○ 7 ○ ○ 34 ○ ○

● ● ● ● ● ● 13 ● ● 34 ● ● ● ● ●

1166 h1 1206 h2 1226 h2

h h w w w

陶器の保管

他 1

◒ 2 0164 h1 ◒ 3 0364 h2

3

・水簸場・乾燥棚・ガス窯 ・薪小屋・倉庫 ・店舗

6

0322 0382 0402 0412 0644 0664 0714 0754 0905 0925 1055 1065 1075 1085 1135 1155 1185 1245 1316 1346 1376 1386 1676 1686

6 他 29

h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h2 h1 h1 h2 h2 h1 h1 h2 h2

58

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 29 ● ● 58 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

58

・ロクロ場+休憩場+寝床 ・登り窯+休憩場+寝床

TAKEBE Hiromu , ENDO Koichi

2

○ : 暮らし(住機能のみ) ● : 工程(職機能のみ) ◒ : 暮らし+工程 (職住機能混合)

w.薪

s.原土

職+住(◒) 24

保湿

水分

保管

c.粘土

● 0061 ● 5 0081 0091 ● ● 6 0292 0302 ●

資料 窯元 工程 暮らし ・ 番号 番号 内部 半外部 外部 と工程

凡例

● 1486 BCc 1576 BCc ● ● 6 ● 34 0915 h ● ●

34

-

h1. 販売,展示 h2. 保管

h.販売/保管

職:生業(●) 137

熱調整

熱調整

・住居・趣味部屋・茶室 ・倉庫

0493 EG 0503 EG 0513 EG 1826 EG 0965 EGh 0975 EGh

ケ コ サ

窯からの出た 熱の排出

1276 C C 1296 B C 0624 EG

加工

加工

G. 焼成

住:生活(○) 30

F. 釉掛け

表 7 職住の場面

なし

熱調整

熱調整

観察

なし

観察

E. 素焼き

光熱

蒸発

D. 乾燥2

なし(104)

生産

あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし

窓 庇

あり(65)

加工

B. 成形

表 8 境界面 パタ ン と境 界面 間の 関係 と自 然要 素の 関わ り 方 の 関 係 性

職住+モノの関係

職住の関係

( 移動 ) あり :83 なし :108

55 連続

加工

水 加工

A. 水簸

自然

工程

○ 武部大夢 * 遠藤康一 **

2. 境界面が受け持つ関係 2.1 建物内外の関係 各工程において建物内外を関係 付ける自然要素を整理した(表 3)。A. 水簸は水で泥を撹 拌して粘土を生成し、B,F. 成形 , 釉掛けは境界面から入る 光を利用して粘土を加工する工程である。C は境界面から 抜ける風、D は太陽熱で陶器の水分を蒸発させ、E,G. 素 焼き , 焼成は、ガス窯や登り窯で陶器を焼き上げる工程で、 窯から発生した熱は境界面から外部へ排出される。 2.2 境界面間の関係 境界面間の関係について、仕事 場である建物間及び住居との往来に着目し、仕事場と住居 の往来(職住の関係 ) と土や陶器の運搬(モノの関係) 、両 者の複合(職住+モノの関係)に整理した(表 4)。 3. 境界面の構成 窓の種類(表 5)、壁、戸、庇の有 無の組合せから、ア〜サの境界面パタンを得た(表 6)。壁、 戸、窓、庇といった多くの要素によって構成されるア、ウ や(18/191)、要素を持たないコもみられた(18/191)。

正会員 正会員

表 3 工程における自然要素の関わり方(建物内外の関係)

表 6 境 界面 パタ ン

益子の立地状の特徴を参照し、歴史が 深く登り窯を有する窯元を本研究の対 象とした。

+ 佐久間窯 根古屋地区 + + 萩原窯 根古屋窯

城内坂通り 益子駅 (観光通り) 本通り + 大誠窯

表 4 境界 面間 の 関係 表 5 窓 の 種 類

5

9

19

1902

11

1861

萩原窯

道祖土地区

大誠窯

20

島岡製陶所 + + 濱田窯

6

1852

根古屋窯

開業年 建物数 境界面数 益子町(根古屋・道祖土・城内)

no. 事業所名

表 1 分析 対象

1. 序 益子町に古くからある窯元の多くは、敷地内に 住宅と複数の仕事場が分棟で配されている。このような外 部空間を前提とした職住一体の環境においては、作業空間 では障子窓から入る自然光を利用して成形を施し、風が抜 ける庇下で陶器を乾燥するといったように自然要素と工 程との密接な関係が成立している。そして仕事場と住居の 往来や陶器の運搬を通して、外部空間を介した仕事場と住 居間の関係が成立し、これらの多様な関係が統合されるこ とで、窯元全体の空間的な秩序が形成されていると考えら れる。本研究は建物内外を関係付け、職人の往来やモノの 運搬をといった建物間のネットワークを引き受ける建築 要素である建物内外の境界に位置する面(境界面)に着目 し、まずは建物内外の関係と境界面の構成を捉え、次に外 部空間を介した境界面間の関係を検討することで、輻輳的 な関係を内包する境界面の構成及び、窯元全体の空間的特 徴と職住の関係性を明らかにすることを目的とする(表 1)。

益子焼 境界面

益子焼窯元における建物境界面からみる工房 - 登り窯 - 住居の連関

城内地区

関係なし


登窯

工房

(連関図)

︵工房から登り窯へのモノの運搬と出退勤経路が重なる︶ 登り窯がⅧの境界面をもつ 登窯と住居との関係

工房

2F 倉庫

登窯

登窯

Ⅰ 住

︵重ならない︶ 登り窯がⅤの境界面をもつ

住居

円環状の連関

工房

登窯

住居

登窯

集約的な連関

工房

(連関図)

W.C

住居

長屋門

登窯

薪場

倉庫

W.C

W.C

倉庫

窯場

住居

店舗

薪場

住居

薪場

2F 住居

工房

登窯

工房

(連関図)

窯場

住居

登窯

店舗

登窯

登り窯

薪場

工房

工房

樹木

外部空間

その他

職住の関係 :

分散した連関 (窯元の構成要素) 建物

モノの関係 :

工房

円環状の連関

(連関図)

(境界面間の関係の種類)

凡例

登窯

工房がⅡ の境界面をもつ(重ならない)

*Graduate School of Institute of Urban Innovation, Yokohama National Univ. **Lecturer, School of Regional Design, Utsunomiya Univ., Dr.Eng.

②大誠窯

③萩原窯

倉庫

窯場

2F 倉庫

工房

* 横浜国立大学大学院都市イノベーション学府 博士前期課程 ** 宇都宮大学地域デザイン科学部 講師・博士(工学)

①根古屋窯

塩窯

窯場

2F 倉庫

工房と住居との関係

注)本研究は、一般社団法人住総研の助成を受けて行っている研究成果の一部 を報告するものである。

5. 工房 - 登り窯 - 住居の連関 前章では、工房と登り 窯において、モノの関係をもつⅡ , Ⅴと、職住の関係を併 せもつⅦ , Ⅷといった、異なる境界面の性格を得た。本章 では、Ⅱ , Ⅶの有無から工房と住居の関係、Ⅴ , Ⅷの有無 から登り窯と住居の関係を整理し、両者の組合せを、外部 空間の介在という観点から検討することで、窯元全体の空 間的特徴と職住の関係性を捉える。Ⅶ ( 工房), Ⅷ(登り窯) 及びⅠ(住居 ) が一つの外部空間に面する④ , ⑤ , ⑥は工程、 モノの運搬、出退勤が重なり、職住が集約的に連関する。 一方で、Ⅱ(工房), Ⅴ(登り窯), Ⅰ(住居)が別の外部 空間に面する②は、工程、モノの運搬、出退勤が重ならず、 職住が分散して連関する。工房と登り窯のうちどちらかが Ⅶ , Ⅷを有する① , ③は外部空間と工房、登り窯、住居が 数珠つなぎに配され、工程、モノの運搬、出退勤が部分的 に重なり、職住が円環状に連関する。 6. 結 以上、6つの窯元を対象に、窯元全体の空間的 特徴と職住の関係性を検討した。その結果、一つの外部空 間を中心として職住が集約的に連関する窯元、仕事場と住 居が個別の外部空間に面し、職住が分散して連関する窯元 といった対照的なあり方を見出した。また、工房 , 登り窯 , 住居 , 外部空間が数珠つなぎに配され、職住が円環状に連 関する両者の中間的なあり方も見出した。

薪場

他 .④,⑤

⑥ 濱田窯

工 房 がⅦの 境 界面を も つ(工 程 と出退 勤 経路が 重 なる)

表 9 境界面からみた工房 - 登り窯 - 住居の連関

4. 境界面が受け持つ関係と境界面パタンの組合せ 複層的な関係を内包した境界面の構成を捉えるために、 境界面パタンと境界面間の関係の組合せを、自然要素の 関わり方と職住の場面(表 7)と併せて検討した(表 8)。 職と住の関係、戸、窓、庇を有するⅠは住居に多くみら れた。モノの関係を持つⅡ〜Ⅷのうち、戸、連続窓、庇 を有するⅡ , Ⅶはすべて工房でみられたもので、内部空間 で成形 (B)、釉掛け (F)、乾燥 (C)、庇下で乾燥 (C)、外部 空間で天日干し (D) の工程が多くみられた。これは、境界 面の構成要素の集合によって光、風、熱を集約的に調整し、 内部から外部にかけて連続して行われる複数の工程を統 合する境界面のあり方である。壁のないⅤ , Ⅷは登り窯や 薪小屋でみられたもので、風が抜けることで薪を乾燥と熱 の排出に対応する。さらにⅦ , Ⅷは職住の関係を併せもつ もので、ロクロ台や庇下で休憩する場面がみられ、仕事場 と住居を繋ぐ基点となる境界面である。境界面間の関係が ないⅨ〜Ⅻのうち、単体窓のみを有するⅨでは、熱の排出 (E,G)、自然光によって陶器を照らす店舗(h)、窓を介し て外部の風景と接続する茶室(○)がみられ、工程や生活 に適した自然要素の関わり方を窓によって調整している。 壁のみを有するⅫでは陶器の保菅が多くみられ、外部空間 との関係を断つことで、安定した保管環境を形成している。



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学生団 体 /Student g r o up

木の家設計グランプリ /c omp etition

高専デ ザ コ ン /c o mp etitio n


課外活動 1

TINT(ティーインティー) 空き家を拠点に活動している、建築学科の 4 人グループ。空き家が ある泉ヶ丘を住み続けられる町にするために、空き家を作り替える 過程から町に開き、地域を巻き込んだ空き家改修の場作りを目指す。 ----------Member---------○武部 徳竹 五十畑 中澤

大夢

(中左)

智可良 (左) 直人 (中右) 佑希

(右)


リノベーションを町に開く ( 2 0 2 0 .1 2 ~ )

泉ヶ丘 /IZUMIGAOKA 空き家 /Empty House

地域の人から「空き家をなんとかして欲しい」と依頼を受けて、 現 TINT の 4 人が手を挙げた。 空き家のオーナーである O さんは、空っぽな家に税金を払い続 けていることの不満、セメント瓦の劣化によって雨漏りや近隣の 迷惑になることの不安、また、自治会の機能不全によって、住人 の意見が循環しないという町の問題を打ち明けた。 しかし O さんは、別に所有している空き家改修にお金を回して いるため、泉ヶ丘の改修資金を作る余裕はないようだった。 そのため、私たちは資金調達と空き家の周知を目的に、改修段階 から町に開き、町の交流ハブとなるような居場所作りを始めた。 本プロジェクトは進行中であるため、プロジェクト開始から現在 に至るまでの活動内容(ワークショップ)を紹介する。 町のビジョンと住人が持つ認識のギャップを少しづつ埋めるよう な、改修マネジメント、ワークショップデザインをした。


課外活動 模型ワークショップ

2020.12.23

模型のツクリカタ TINT が動き出す第一歩として、コロナウイルスの影響で模型 製作の学習の場を奪われた一年生を対象に、住吉の長屋の 1/50 模型製作のワークショップを開催した。 用具の選び方から、切り方、面取り、製作手順など、未経験者 が一から建築模型を作るまでの一通りを教えた。 ワークショップを通して、私たちと参加者が相互扶助となる関 係性をデザインした。私たちは、空き家で起こりうる行為を実 験的に観察することができ、一年生は模型製作の学ぶ機会を得 ることができた。

空き家外観

二人一組で一つの模型を作る

階段を作る参加者

模型見本「住吉の長屋」

ポスター製作(武部)

質問→個別 or 全体に答えるとい

三時間半程度で和やかに終了した。課題の達成度が低く、

う流れが自然にできた

課題選定の難易度調整に反省点が残った。


課外活動 まち歩きワークショップ

2020.02.20

き家の未来像を議論するワークショップ。泉ヶ丘には何が足りないのか、

⍤ ᵎᵐᆰ⎀ܼ␙␢⏙⏡␑⏭␁

町を歩きながら、視認できる町の雰囲気や環境の問題をあげ、みんなで空

ඡ⍿ɯ⎱⎔⎘⎂⎽

町を知り、町の行方を考える

事前リサーチ

どんな場所があったらいいか、また、空き家できることを話し合いながら、 最後発表までつなげた。建築学科に限らず、まちづくりや土木の学科が合 同で参加し、学科を横断した多様な視点で考えることができた。

2021. 集合場所

2.20

10:00

14:40

(土)

〒321-0952 宇都宮市泉が丘7丁目 2−1 (陽東キャンパスから自転車で 10 分)

予定表

10:00 10:35 12:00 13:00 13:40

対象者 連絡先

ワークショップ説明 まち歩き 昼食 まとめボード作成 議論・提案 解散

【次世代の泉が丘を考えよう】

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宇都宮大学地域デザイン科学生

TINT

徳竹智可良(連絡担当)

※歩きやすい靴でお越しください。

14:40

r189255@cc.utsunomiya-u.ac.jp

テ ィ ー イ ン テ ィ ー

泉が丘の空き家を拠点に活動する、空き家の改修 に興味をもった学生が集まった4人グループです。 地域を巻き込んだ活動を通して、空き家のあり方 について考えます。

※参加者の皆さんの昼食は各自でご用意ください。

ポスター製作(徳竹) 事例紹介

デザイン:ワークショップによって参加者と私たちが何を得ることができるのか。

まち歩き

空き家改修の事例紹介。参加者の手がかりに。

2 グループに分かれて、空き家周辺の町を歩く。地元の住人たちと話しながら、町の実情を明らかにしていく。

議論

発表

4 つの項目を色で分けて、模造紙に貼り付けながら整理をしていく。

課題の共有と提案の 2 回に分けて発表。「駄菓子屋」の案が指示された。


課外活動 2

家屋の思考 ( 2 0 2 0 .0 8 ~ 2 0 2 0 .0 9 )

木の家設計グランプリ 2020 テーマ:自然を身方にする家

自然を身方にし、生活を豊かにしてきた日本家屋での暮らしは、 宅地開発によって上書きされようとしている。本設計では日本家 屋における自然と建築、人と建築、人と人の関係性を洗い出し、 進化した住宅技術によって更新を試みたものである。 敷地は千葉県市川市の都心部から少し離れた農地と住宅地が入り 混じる場所にある。宅地化はかつて日本家屋の暮らしにあった「自 然を味方にする」ライフスタイルの文脈を消し去り、「モノ」と しての住宅へと更新する。 私が提案したのは「思考の循環」である。つまり、日本家屋での 暮らしを「自然を味方にしすぎる」家と捉え、日本家屋がどうし て現代から消えてしまったのか分析を行い、そこで得られた情報 を現代的な視点(技術・ニーズ・規格化)によって翻訳する。分 析→翻訳を繰り返しながらスタディを進め、循環するように思考 することで、現代のライフスタイルに寄り添った、自然と建築・ 建築と人、人と人の関係性を明らかにした。


分析→翻訳 ① 田の字型プラン

② 土間

③庭

④ 換気塔

⑤ 縁側

⑥ 格子戸

重層する ① 田の字型

多様な行為を ② 許容する土間

③ 表面積の増加

大屋根の ④ 切り取り

縁側の ⑤ 延長

建具の ⑥ 透過性


課外活動 Planning

site and 1F Plan

方位による植栽計画 家の周りを取り巻くように縁側が配置されているので、どこにいても庭木を眺めることができる。そこで、家の中で一年中 庭木を楽しむことができるように、方位によって植栽の計画をした。例えば、北西の庭では秋に咲くキンモクセイを配置し たことで、北西からの季節風によって家全体にキンモクセイの香りが充満する。

ワイヤープランツ

アオキ

アオダモ

キンモクセイ

5m

趣味部屋 リビング (+450)

10m

土間 キッチン (+0)

クチナシ

エレナ

土間 リビング (+0)

エントランス

4m

ツバキ

6m

2m アオヤマレンゲ

2m

客間 (+450)

棟木: スギ 180 250mm 登り梁: スギ 90 250mm @500mm ツバキ

3m

1365

床: スギ t=15mm 構造用合板 t=30mm 天井: 構造用合板現し

4m

5m ギョリウバイ

3185

屋根: ガルバリウム鋼板 t=0.4mm 耐水合板 t=12mm 高性能グラスウール t=100mm ポリカーボネート板

応接間 (+450)

ウィストリギア アオダモ

3m

洗面

W.C

アトリエ (-800)

ボタンクサギ

1820

10m

3m

910

アオダモ

4m

2730

10m

5460

シデ

3640

2730

3m

通し柱: スギ 180 180mm 柱: スギ 120 120mm

4550

土間コンクリート 0

1

5(m) Scale 1:120 低気密 パブリック

高気密 プライベート


課外活動 Planning

section

自然と建築の関係性 田の字型を重層させることで、中央に向かって高気密になり内部 と外部、パブリックとプライベートを緩やかにつながる。包み込

寝室 2

寝室1

まれるように家全体に登り梁を感じ、どこにいても庭木を見るこ とができる。

多目的室

日本家屋の暮らしを丁寧に読み解き、進歩した住宅技術の使い方、

屋上テラス

構成方法を再解読することで、現代のライフスタイルに寄り添い、 自然と建築、さらに人と人の関係性を豊かにする。

西日を遮る 家全体に空気が流れる

木漏れ日が降り注ぐ

寝室 2

寝室 1

多目的室

アトリエ

土間リビング

客間

土間キッチン

応接間

小さな木花から大きな 庭木まで一望できる。 自然環境を緩やかに透過する。 ダブルスキン効果

0

1

5(m) Scale 1:120


課外活動 3


家族が町を染めるとき ( 2 0 1 9 .0 9 ~ 2 0 1 9 .1 2 )

全国高専デザコン テーマ:多文化共生

グローバル化によって国外の労働力の移動が加速していく時代。 アパートや寮など、壁を一枚隔ただけの共生的な共同生活は、 本当にこのままでいいのか。 国内外問わず、家族や他人に対するい心地のいい距離感は違う。 それは日本への移住者と日本人の日常生活での問題に大きな影響 を及ぼしているように思える。 これは、蔵や空き家を使い各住戸の機能を分散させて、縁側でつ なげていく計画。一度離すことで、それぞれのプライベートは守 られ、縁側という、日本伝統の機能を拡張しながらつなぐことで、 住人たちが、近づいたり遠ざかったり、時には背を向けたりして、 気の赴くままに、距離感を操作することができる。 話てみることでお互いの距離がみえ、少しづつ干渉され合うこと で、異文化に触れる快楽を見出す。


課外活動 Planning

site and 1F Plan

工業地帯と住宅地の狭間「雨ケ谷」

住宅街

道に溶け込む縁側

工場 編みイエ

雨ケ谷は元々農地として広がりを見せていたが、30 年ほど前から工場が進出し、 今では東側全域に工場が立ち並んでいる。そこで、外国人労働者を含む住まいの 集合のあり方を探る

広い縁側 普通の縁側

散りばめられた「町ヘヤ」 従来の工場寮

レベル差の縁側

食べイエ

風呂イエ

寝室

炊きイエ

寝室

居間イエ

寝室

寝室

使われなくなった蔵や空き家を改修し、居住空間を機能ごとに分散する。 町ヘヤ同士を抜け道や道路で繋ぎ、移動時は御近所さんとの付き合いが生まれる。

風呂イエ

居間イエ

「町カゾク」のサイクル 地域住民

蔵は物置き化。

農地の管理が大変

フロア差の縁側

伝統の知識が途絶えてしまう

広い縁側

のは寂しい。

日本の農業が知りたい 私たちの居場所がない

大きな庭が欲しい 子供の面倒が大変

町カゾク

食べイエ 日本人夫婦

外国人家族

ハーフ

日本人老夫婦

日本人夫婦

炊きイエ


課外活動 Planning

site and 1F Plan

縁側の距離感ダイアグラム

従来

フロア差

道に溶け込む

広く

レベル差

離す

縁側には、外からのコミュニティを迎える場所であっ たり、外と内を緩くつなげたりする場所であり、多 文化共生を生むきっかけになるのではと考えた。 従来の縁側を話したりレベル差を設けたりな ど、機能を拡張し、これらの縁側を日本人と 外国人にとって様々な距離感を生む。 ほんの少しの干渉が他者への興味を引き 出し、性格や愛嬌、国を超えた生活の 助け合いができる環境になる。

屋根の下

つなげる


(上)炊きイエを見る。壁を内側に引っ込ませ、 軒の出た透明度の高いキッチンダイニングの家へと改修。 (左)食べイエを見る。ダンダンの縁側が様々な居場所を与え、 適度な距離感を持ちながらみんなで食事をする


(上)居間イエ(左)と風呂イエ(右)を見る (右)食べイエの背後にある地域動線から見る。道路を行き来するだけでなく、 住人が安全に使える歩車分離の道。イエ全体が見えるように計画した。


After word あとがき

私は生まれてから 22 年間ずっと、郊外のど真ん中に住んでいる。 窓から外を覗けば、ありきたりなハウスメーカーの住宅群が見 える。通学時も近所のスーパーに行く時もいつも同じような住 宅を見てきた。私にとって私の町とは「住宅の住処だった。」 凸凹の道や雑木林、田畑は平らにならされて、たくさんの住宅 が建つ準備をする。そして機械のように次々と住宅が建ち並び、 人間が入る。もはや「暮らし」という私たちの根源的な行為は 捨象され、人間の器をどう効率的に作り配置するかに焦点が充 てられている。 それでも、この町での暮らしは楽しかったし好きだ。幼い頃は 公園でよく遊んだ。友人と草木の隙間を見つけて、枝を駆使し て秘密基地を作った。汚い用水路に入ってはザリガニを大量に 獲っていた。近代化から取り残された「場所性」を幼少期の鋭 い嗅覚で探り当て、原始的とも言える「暮らし」に快楽を見出 していた。 そんな経験があったから、私は「場所と建築」に興味がある。 幼少期に体験したように、なんの変哲もない場所であっても、 建築を作ることによって豊かな場所性を見つけ出すことができ るし、そこに潜む場所性から人間の根源的な「暮らし」を内包 した建築を作ることができる。 場所と建築の関係性によって指し示される座標。新しい空間性 や暮らしを設計していきたい。


Portfolio by Hiromu Takebe 2021 年 9 月 2 日 著者

武部 大夢

デザイン

武部 大夢

印刷

宇都宮大学

製本

糸綴じ

期間

6 ヶ月




口に咥えて

左手を浮かして

左手で

右手を浮かして 右手でいつも通り


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