Bunkagaku nyumon

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An Introduction to Studying Culture

さっし 文 化 å­Š 入 門 2010 幎前期


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担圓者⻘✊ 晎男

孊校で今教えられおいる思匁的哲孊ではなく、実甚的哲孊ずいうものがあるこずを知っ お私は嬉しい。実甚的哲孊によれば、劎働者の異なった技術を理解するだけでなく、 火、氎、星、諞倩、我々の呚りのあらゆる倩䜓の性質ず掻動を知るこずで、私達はこれら の存圚をそれらに盞応しい目的のために利甚し、我々自身を自然の䞻人か぀所有者ず するこずができるのだ。René Descartes, Discourse on Method (1637) →人間䞭心䞻矩からの機械的自然芳

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地䞊での人間及び人間以倖の生物の幞犏ず繁栄は、それ自䜓の䟡倀固有䟡倀・生埗 的䟡倀を有しおいる。これらの䟡倀は、人間の䜿甚目的にずっお人間以倖のもの自 然、動怍物が有甚であるか吊かには関係なく独立しおいる。 ―Arne Naess “The Shallow and the Deep, Long-Range Ecology Movement” (1973) →人間も自然の䞀郚ずする自然䞭心䞻矩からの有機的自然芳


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________✉____✇ 担圓者五癟藏 ⟌浩  蚀語の䟛與者ず受容者ずを、それぞれ話し手・聞き手ず呌ぶのは、話されそしお

聞かれる語が蚀語ずしおの第䞀矩的な姿であっお、曞い印刷したり讀んだりす るに甚いられる第二矩的な姿よりも遙かに重芁であるずいうこずを考慮した䞊での こずなのである。このこずは、人類がただ曞寫の術を癌明するに至らず、あるいは 癌明したずしおもほんの僅かしか䜿っおいなかった長い長い時代に぀いおは芋やす い道理であるが、新聞の跳梁する珟代瀟會においおさえ、われわれの倧倚数は曞く こずより話すこずの方がはるかに倚いのである。ずにかく、䜕よりもたず第䞀に、 話し聞く掻動をたえず考慮に入れないならば、そしおたた、曞くこずは話すこずの 代甚品にすぎないのだずいうこずをしばしでも忘れるならば、蚀語ずは䜕か、たた、 いかにしお癌達するものであるか、を理解するこずができないであろう。曞いた語 ずいうものは、誰かが心的にそれを話す語に換えお生の息吹きを與えないうちは、 ミ ã‚€ ラ に さ れ お い る の も 同 然 で あ る 。 Otto Jespersen (1924) The Philosophy of Grammar. 半田䞀郎蚳『文法の原理』(1958)岩波曞店、p. 1. B.C.

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Otto Jespersen (1860 – 1943)

 蚀語の産出者ず受け手ずを、ここでそれぞれ、話し手・聞き手ず呌ぶのは、それは、話さ れ、聞かれる語が蚀語の第䞀矩的な圢匏であっお、曞かれたり印刷されたり 、読んだりす るのに甚いられる第二矩的な圢匏よりも、はるかに重芁であるずいうこずを考慮したからだ。 このこずは、人類がただ文字を曞く技術を発明しおいなかったか、あるいは、曞くこずをわ ずかしか利甚しおいなかった、限りなく叀い時代に぀いおは、明らかに真である。しかし、 新聞に支配された珟代瀟䌚においおさえ、わたしたちの倧倚数は、曞くよりも話すほうが断 然倚いのである。少なくずも、たず第䞀に、話し、聞く掻動をたえず考慮に入れおいないな ら、たた、曞くこずは話すこずの代甚にすぎないのだ、ずいうこずを片時でも忘れようもの なら、わたしたちは、蚀語ずは䜕か、たた、どのように発達するものであるかを、絶察に理 解するこずができないであろう。曞かれた語は、だれかが心のなかでそれを、察応する話さ れた語に眮きかえお生呜を䞎えるたでは、ミむラ化されおいるのだ。O. Jespersen 同曞 安藀 貞雄蚳『文法の原理』(2006)岩波文庫、p. 28.


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担圓者芋✣

裕信

あなたはどんな芁求によっお䜕のために小説を曞いおいるのですか、ずいう線集者の 問いに察し、芥川韍之介18921927は次のように答えおいたす。 略唯私にわか぀おゐる範囲で答ぞれば、私の頭の䞭に䜕か混沌たるものがあ぀お、 それがは぀きりした圢をずりたがるのです。さうしおそれは又、は぀きりした圢をずる事それ 自身の䞭に目的を持぀おゐるのです。略あなたがもう䞀歩進めお、その混沌たるものず は䜕だず質問するなら、又私は窮さなければなりたせん。思想ずも情緒ずも぀かない。―― や぀ぱりたあ混沌たるものだからです。唯その特色は、それがは぀きりした圢をずる迄は、 それ自身になり切らないず云ふ点でせう。でせうではない。正にさうです。略たづ倧䜓こ んな事が、私に小説を曞かせる盎接な芁求です。略 「は぀きりした圢をずる為に」1917・倧正 6 幎 B.C. 0 A.D. 500 1000 1500 2000 2010 --------------|---------------------|---------------------|---------------------|---------------------|--|

その芥川の発蚀から 90 幎経っお、珟代䜜家の䞀人・小川掋子1962 は次のように 蚀っおいたす。 略人間が悲しいず思ったずきに心の䞭がどうなっおいるのかずいうこずは、ほんずうは 蚀葉では衚珟できないものです。けれども、それを物語ずいう噚を䜿っお蚀葉で衚珟しよう ずしお挑戊し続けおいるのが小説なのです。「䞻題は䜕でしょう、二十字以内で答えなさ い」ずいうようなテストがあったずしお、その二十字がたず浮かんでくるのであれば、それは 小説ずしお曞かれる必然性を持っおいないず思いたす。ですから、「テヌマさえしっかりしお いれば、いい小説が曞ける」ずいうのは幻想です。テヌマは埌から読んだ人が勝手にそれ ぞれ感じたり、文芞評論家の方が論じおくださるものであっお、自ら曞いた本人がプラカヌ ドに掲げ持぀ものではないず考えおおりたす。 『物語の圹割』2007、ちくたプリマヌ新曞 二人の発蚀を䞊べおみるず、ほが同じこずを蚀っおいるこずが分りたす。小説ずは䜕か、文 孊ずは䜕かの問いを考えるヒントがこの蟺にありそうです。


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担圓者岩倉

秀暹

真理の最䞊のテストは、その思想が垂堎の競争の䞭で自らを受け入れさせる 力を持っおいるかどうかである。 (The best test of truth is the power of the thought to get itself accepted in the competition of the market.) 1919 幎のアブラムズ察合衆囜(Abrams v. United States)事件連邊最高裁刀所 刀決におけるホヌムズ(Oliver Holms)裁刀官の反察意芋

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担圓者北川

明

自然の秩序のもずでは、人間はみな平等であっお、その共通の倩職は人間であるこず だ。 私の生埒を、将来、軍人にしようず、僧䟶にしようず、それはわたしにはどうでもいい こずだ。䞡芪の身分にふさわしいこずをするたえに、人間ずしお生掻するように自然は呜じ おいる。生きるこず、それがわたしの生埒に教えたいず思っおいる職業だ。わたしのなか で、人生のよいこず悪いこずにもっずもよく耐えられる者こそ、もっずもよく教育された者だず 私は考える。 ゞャン・ゞャック・ル゜ヌ著・今野䞀雄蚳 『゚ミヌル』 岩波文庫䞊pp. 31-32 Jean-Jacques Rousseau (1712-1778) Emile (1762) B.C.

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ル゜ヌは、「自然状態」ずいう抂念装眮によっお、人間の良心ならびに埳、そしおその倉 質の過皋を考察し『人間䞍平等起源論』(1775)、教育孊の䞍朜の叀兞ず呌ばれる『゚ ミヌル、たたは教育論』(1762)では、その自然状態ず自然人の抂念を、粟巧に展開しおい るず蚀われる。そしお、『瀟䌚契玄論』(1762)では、『゚ミヌル』で描かれた理想的な人間 である゚ミヌルが生掻する囜家像を描写したず蚀っおよい。『瀟䌚契玄論』では、自然状 態で享受できた自由ず平等これらは瀟䌚状態で喪倱されるを政治䜓レノェルで再構 築しようずした。そこでのキヌワヌドが䞀般意志であり、具䜓的にはそれは人民の意志で あり、倚数決によっお圢成される。 圓時のフランス瀟䌚は、封建的な絶察䞻矩王暩の瀟䌚であり、人口の 2に過ぎない 貎族ず僧䟶ず、その支配・隷属を䜙儀なくされた民衆ずからなる瀟䌚であった。


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担圓者⟊柀

俊吟

“Linguistic structure is a direct reflex of cognition in the sense that of a particular linguistic expression is associated with a particular way of conceptualising a given situation.” David Lee (2001) Cognitive Linguistics: An Introduction, pg.1.

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巊䞊の図を芋おみたしょう。䞀぀の図圢でありながら、癜い郚分に焊点を圓おるず盃 に、黒い郚分に焊点を圓おるず、二人の暪顔が向かい合っおいるように、それぞれみえた す。私たちは、呚囲の状況を「あるがたたに」知芚しおいるのではなく、䞻芳的に知芚し、 その知芚したものを、蚀語を䜿っお衚しおいたす。これたで、私たちは「第四文型」(e.g. John gave Mary the book.)ず、「第䞉文型」(e.g. John gave the book to Mary)は、互い に曞き換えられ、同じ意味であるず習っおきたした。しかし、䜕に焊点が圓おられるかによ っおパタンの䜿い分けがあり、それに䌎い、衚す意味も異なりたす。 アメリカの認知蚀語孊者である、ラネカヌやレむコフ、ゎヌルドバヌグ、䞊述のリヌらは、 蚀語は、私たち人間の認知胜力を反映するものであるずしお捉え、様々な分野ず接点を 持ちながら研究を進めおいたす。


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担圓者枅原 泰治

真面目は遊びを締め出そうず努めるが、遊びは喜んで真面目を自己の䞭に抱き蟌むこ ずができる。 ペハン・ホむゞンガ (『ホモ・ルヌデンス』)

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「ヒト」の孊名は「ホモ・サピ゚ンス」ですが、オランダの高名な歎史孊者・ホむ ゞンガは、ヒトを「ホモ・ルヌデンス」(遊ぶ人)ず衚珟したした。 䞊蚘の䞀節は、私の孊生時代に友人たちず『身䜓ず心の教育』(束田岩男・成田十 次郎線、講談瀟、1981 幎)を茪読しおいるずきに匷く印象づけられたした。 「スポヌツ 科孊」ず聞くず、オリンピックで金メダルを取る方法やスポヌツの生理的な効果など に研究の関心が集たっおいるように思えたすが、他にも「スポヌツずは䜕か」「スポ ヌツはなぜ発展しおきたのか」 「スポヌツの瀟䌚的な機胜は䜕か」 「どうすればみんな がもっず楜しくスポヌツをできるか」などに぀いお研究しおいる研究者たちもいた す。そういう人文系のスポヌツ研究者たちはたぶん、この䞀節を聞いたこずがあるは ずです。 高知県の各地でフィヌルド実習をしおいたすが、スポヌツに限らず、確かにたくさ んの「遊び心」に出合いたす。そういうずきに、ホむゞンガの考え方を実感できたす。


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担圓者䜐藀 恵⟥

䞖間の広き事、囜々を芋めぐりお、はなしの皮をもずめぬ。熊野の奥には、湯の䞭 にひれふる魚あり。筑前の囜には、ひず぀をさし荷ひの倧蕪あり。豊埌の倧竹は手 桶ずなり、若狭の囜に二癟䜙歳の癜比䞘尌の䜏めり。近江の囜堅田に䞃尺五寞の倧 女房もあり。䞹波に䞀䞈二尺の也鮭の宮あり。束前に癟間぀づきの荒和垃あり。阿 波の鳎門に竜女の掛硯あり、加賀の癜山に、えんた王の巟着もあり。信濃の寝芚の 床に、浊島が火打筥あり。鎌倉に頌朝の小遣垳あり。郜の嵯峚に、四十䞀たで倧振 袖の女あり。これをおもふに、人はばけもの、䞖にない物はなし。 井原西鶎『西鶎諞囜はなし』1685貞享 2幎刊 序

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井原西鶎1642-93の時代の「はなし」は珍談奇聞ず笑話を意味したす。北は束前北海道から 南は豊埌九州・倧分たで諞囜を旅しお「はなしの皮」を求めた。 「湯の䞭にひれふる魚」、 「二 癟䜙歳の癜比䞘尌」、はおは「閻魔王の巟着」等々、䞀芋あり埗ないものを列挙しおいっお、最 埌は珟実にいた「四十䞀たで倧振袖の女」をもっお「人は化け物、䞖にない物はなし」。人 間にはなんでもありだ、ずいうのです。日本では 17 䞖玀の末になっお、西鶎を先頭に束 尟芭蕉や近束門巊衛門たちが「浮䞖」に泚目し、この俗䞖間ないし珟実瀟䌚に生きる人間 の実盞を文孊や挔劇で描いおいきたした。無名の庶民それも「はずれ者」が䞻人公になっ たのは、圌らが生きた元犄文化の時代からです。ずくに西鶎の小説の基調は人間喜劇ずい っおいいのではないか。圌らが残しおくれた䜜品から、私たちは圓時の瀟䌚ず人々の息吹 を感じるこずができたすが、なぜ、庶民が登堎しえたのか、このこずはその埌の文孊や挔 劇でどのように継承され倉質するか―こういうこずを問いかけ質しおいくのも、文化研究 の愉しさだず思いたす。


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担圓者鈎✊哲也

蚀葉の誀りは危険だが、考えの誀りのほうがはるかに危険である。そこで、孊問研究を 怠らないばかりでなく、䞀局容易に正しく神の曞の秘矩を掞察できるように、しっかりず孊 ぶこずを奚励する。 カヌル倧垝『孊問振興に関する曞簡』より

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担圓者⟌⻄

成介

昔者蒌頡䜜曞、而倩雚粟、鬌倜哭。『淮南子』本経蚓 むかしむかし蒌頡が文字を䜜ったずころ、倩は粟を雚のように降らせ、幜鬌は倜に涙を流した。 高誘泚蒌頡始芖鳥迹之文、造曞契、則詐停萌生。詐停萌生、則去本趚末、棄耕䜜之業而務錐 刀之利。倩知其将逓、故為雚粟。鬌恐為曞文所功、故倜哭也。 前挢・劉安・『淮南子』本経蚓

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『䞉才図䌚』より蒌頡

日本人は文字を生み出したせんでした。それは、隣囜に文明の先端を走っおいた䞭囜 が存圚したからです。私たちは、その䞭囜から文字を茞入し、その文字を改良しお「片仮 名、平仮名」を線み出したした。きわめお早い時期に、改良によっおずはいえ独自の文字 を手にしたこずは、日本文化にずっお倧きな意味がありたした。文化にずっお、「文字」の持 ぀意味は重芁です。 では、「挢字」を生み出した䞭囜人は、文字の発明をどのように考えおいたのでしょう か。挢字を発明し、挢字のみで蚀葉を玡いできた䞭囜人は、文字ず真剣に向かい合い文 字ず栌闘し続けた人びずでした。前挢の劉安による思想曞『淮南子』には、文字をめぐっ お面癜い逞事が蚘されおいたす。人間が文字を手に入れたこずで「倩が粟を降らし、鬌が 倜哭いた」ずいうのです。 このこずは、いったい䜕を意味しおいるのでしょう。私たちは、文字を手に入れるこずに よっお、䜕を手に入れ、そしお䜕を倱ったのでしょうか。


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_____✉_____✇ 担圓者橋尟 盎和

Human beings do not live in the objective world alone, nor alone in the world of social activity as ordinarily understood, but are very much at the mercy of the particular language which has become the medium of expression for their society. 人間は客芳的な䞖界にのみ生きおいるのではなく、通垞理解される意味での瀟䌚的掻 動の䞖界だけに生きおいるのでもない。人間は瀟䌚の媒䜓ずなっおいる特定の蚀語に 巊右されおいるのである。 Edward Sapir (1921) Language: An Introduction to the Study of Speech. New York: Harcourt Brace. B.C.

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Edward SapirJanuary 26,1884- February 4,1939 サピア・りォヌフの仮説Sapir-Whorf Hypothesis 蚀語が私たちの知芚や䞖界芳に䞎える圱響に぀いお論じたのが、アメリカの蚀語孊者 であるサピアSapir 1884-1939ずその匟子であったりォヌフWhorf 1897-1941であ る。蚀語がそれぞれ独自の語圙構造・文法構造を持ち、その蚀語を䜿甚する人間は、 その蚀語に特有の語圙・抂念に基づいた芖点で䞖界を分類しお理解するため、蚀語が 話者の思考や認知に圱響を及がすず考えた。この仮説は、「サピア・りォヌフの仮説」も しくは、「蚀語決定論linguistic determinism」「蚀語盞察論linguistic relativity」ず しお知られおいる。蚀語決定論は、話者が䜿甚する蚀語が人間の思考や䞖界芳を芏 定するずいう匷い関係説strong versionであり、蚀語盞察論は、蚀語によっお、語圙 や文法が異なり、蚀語が異なれば、話者が認識する䞖界芳も異なるずいう匱い関係説 weak versionずいわれる。私たちの蚀語ず思考の関係に぀いお、䞀垭を投じた仮説 である。


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_____✉_____✇ 担圓者蟻䞊

奈矎江

「珟圚、たた歎史を通じおも、䞡性間にある状況は[
]支配ず埓属の関係であるず指摘 せざるをえない。われわれの瀟䌚秩序の䞭で、ほずんど怜蚎されるこずなく、いや気づか れるこずさえなくにもかかわらず制床化されおたかりずおっおいるのが、生埗暩による優 䜍であり、これによっお男が女を支配しおいるのだ」 Millett, Kate. 1970 Sexual Politics (New York: Doubleday & Company Inc) 邊蚳『性の政治孊』藀枝柪子ほか蚳『性の政治孊』ドメス出版, pp. 71-72.

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小説における性亀の描写ずその分析を通じお、ケむト・ミレットは、これたでもっずも私的な堎ず考え られおきた䞡性間の性亀の堎にも、政治的・暩力的関係が組み蟌たれおいるこずをこの䜜品の䞭で 指摘しおいたす。ミレットのこの䜜品は、1960 幎代から 1970 幎代前半にかけお米囜を䞭心に高揚し た女性解攟りヌマン・リブ運動の「バむブル」ずしお熱狂的に迎えられたした。ミレットが圓時のフェ ミニスト運動に匷い圱響䞎えたのは、圌女が「政治」を議䌚や政党ずいったこれたでの排他的な䞖界 をこえお、より幅広い暩力の構造的関係ずしお捉え、性もたた政治的暩力関係に絡め取られおいる こずを明らかにしたからでしょう。 珟代のゞェンダヌ論研究は、こういったフェミニズム運動や理論を経ながら、セクシュアリティ、婚 姻、母性、子育お、性暎力などの倚様なテヌマに぀いお耇数の孊問領域からアプロヌチされ、発展 を遂げおきたした。けれども、それらはわれわれの瀟䌚の䞭で十分に理解されたり、実践されたりし おいるでしょうか。䞡性間の支配ず埓属の関係に぀いお、「ほずんど怜蚎されるこずなく、いや気づか れるこずさえなくたかりずおっおいる」ずするミレットの芋解は、珟代にも通ずる理論を提瀺しおいるず 蚀えるでしょう。 ゞェンダヌ論の講矩・挔習では、われわれが日頃気づかないような性の暩力関係に぀いお怜蚎 したす。皆さんの身の回りにどんな䟋があるか、考えおみたせんか


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_____✉_____✇ 担圓者東原

䌞明

、 、 男もすなる日蚘ずいふものを、〈女もしおみむ〉、ずお、するなり。 玀貫之『土䜐日蚘』冒頭文。 をずこをも すなる日蚘ずいふものを をんなもしおみむずおするなり 男文字なる日蚘ずいふものを女文字しおみむずおするなり 小束英雄『叀兞再入門『土巊日蚘』を入りくちにしお』笠間曞院 2006 幎(108 頁)。 B.C.

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『土䜐日蚘』の冒頭は、明らかに「䞍自然な日本語」で曞かれおいる。もし仮に、「自 然な日本語」で曞くこずを想定するならば、䞋蚘のようになるのではないだろうか。 、 、 ・ 男がすなる日蚘ずいふものを、〈女もしおみむ〉ずおするなり。 、 、 ・ 男のすなる日蚘ずいふものを、〈女もしおみむ〉ずおするなり。 しかし、玀貫之が曞いたのだず掚定される珟行の『土䜐日蚘』は、そのようには なっおいない。なぜだろうか そうした問題意識を端緒ずしお、『土䜐日蚘』に぀いお皆で考えおみよう


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担圓者束本

茂章

「芞術が共同䜓党䜓に普遍的な䟿益を提䟛しおいるのだずしたら、芞術は倚かれ少な かれ公共財であり、その䟿益はチケット売り堎においお回収が期埅できる売䞊げを明ら かに䞊回っおいる」499 ペヌゞ。 「フィラン゜ロピヌの助けなしには、倚数の小さな宀内楜団や珟代舞螊団はやっおゆけ るはずがない」523 ペヌゞ。 りィリアム・ボりモルりィリアム・ボり゚ン著 『舞台芞術 芞術ず経枈のゞレンマ』芞団協出版郚1994 幎 監蚳池䞊惇枡蟺守章原著は 1966 幎刊行

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同曞は、芞術に深い関心を寄せる米囜の経枈孊者 2 人執筆圓時はプリンストン倧孊 教授が、1966 幎に米囜で著したもので、文化経枈孊の「叀兞䞭の叀兞」ずしお知られお いる。2 幎以䞊にわたる分析を通じお、挔劇、音楜、バレ゚、ダンス、オペラなど党米の舞 台芞術団䜓の財政を䞁寧に調べた劎䜜である。それによれば、舞台芞術は経枈的に自 立䞍可胜ずされ、経枈䞀般の発展に察しお、芞術の赀字は幎々増倧せざるを埗ない― ―こずを初めお科孊的に立蚌した。すなわち芞術ぞの公的支揎の必芁性を明らかにし た。 監蚳者の池䞊惇氏は「本曞は芞術ぞの欲求が人間の他の欲求ず違った特性を持぀こず に泚目し舞台芞術ぞの欲求が私的欲求でもあるが、同時に公的欲求ぞの通路ずもなりう るこずを瀺唆し、私的財ず公共財の双方の性質をも぀混合財であるこずを明らかにしおい る」536 ペヌゞず指摘しおいる。 同曞の発刊ず前埌しお、米囜連邊政府は 1965 幎、党米芞術基金NEAを創蚭し、政 府による芞術支揎を始めた。日本においおも 1990 幎に芞術文化振興基金が蚭立され、 同幎に䌁業メセナ協議䌚が発足しお、芞術に察する公的助成や䌁業支揎が本栌化し た。


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担圓者向井 真暹⌊

“Recursion is a fundamental property of the Faculty of Narrow Syntax/FLN/Syntax”. Hauser, M. D, Chomsky, N, and Fitch, W. T. (2002). The Faculty of Language: What Is It, Who Has It, and How Did It Evolve? Science 22, November 2002: Vol. 298. No. 5598. pp. 1569-1579 B.C.

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私たち、人間ずそのほかの動物たちの違いで、䞀番倧きな違いは䜕でしょうか。自分の ペット、動物園にいる動物をよく芳察しおみおください。 人間ず動物の倧きな違いは、蚀葉です。人間の蚀葉で動物にない特城ずしお倧きく挙 げられるのが、今たで存圚しなかった単語や文を限りなく創るずいうこずです。私たち人 間ず動物の脳みそを比べおみおも、蚀葉の「蚀語野」が芋られたす。 アメリカの蚀語孊者、チョムスキヌが幎代に人間のコトバの胜力に぀いお述べたし た。そのこずを基に、幎、䞊に曞かれおいるこずを述べたのがチョムスキヌずハりザ ヌ、フィッチずいうやはりアメリカの蚀語孊者です。


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_____✉_____✇ 担圓者⌭⌝ 善成

In poetry, where every word is free, every word is necessary. 詩においお、すべおのこずばは自由であり、なおか぀必然である。

Ralph Waldo Emerson, The Philosophy of History (1836-37)

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Ralph Waldo Emerson (1803-82)

゚マ゜ンを原曞で読む ・Ralph Waldo Emerson, Essays & Lectures (New York: Library of America, 1983) ・Emerson, The Early Lectures of Ralph Waldo Emerson, vol. II (Cambridge: The Belknap Press of Harvard UP, 1964) ゚マ゜ンを翻蚳で読む ・゚マ゜ン『゚マ゜ン論文集』䞊䞋巻岩波文庫、1972-73 幎 ゚マ゜ン思想の実践 ・H. D. ゜ロヌ『森の生掻——りォヌルデン』䞊䞋巻岩波文庫 1995 幎


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_____✉_____✇ 担圓者Joël Joos ペヌス・ゞョ゚ル

「日本にお暩力の偏重なるは、掜ねく其人間亀際の䞭に浞最しお至らざる所なし。 其趣を圢容しお云ぞば、日本囜䞭に千癟の倩秀を掛け[
]悉く皆䞀方に偏しお平 均を倱ふが劂く[
]譬ぞば地方の䞋圹等が村の名䞻共を呌出しお事を談ずるずき は其傲慢厭ふ可きが劂くなれども、歀䞋圹が長官に接する有様を芋れば亊愍笑に 堪ぞたり。名䞻が䞋圹に逢ふお無理に叱らるゝ暡様は気の毒なれども村に垰お小 前の者を無理に叱る有様を芋れば亊悪む可し。甲は乙に圧せられ乙は䞙に制せら れ、匷圧抑制の埪環、窮極あるこずなし。亊奇芳ず云ふ可し 」 『文明論之抂略』犏沢諭吉 1875 幎明治 8 幎 B.C.

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これは、䞀芋しお蚀葉も䞭身もずおも叀い文章にみえたすが、どうでしょか。明治 10 幎代の文章 にしおはむしろ読みやすいずも蚀えるし、日本瀟䌚の芳察ずしおも、珟代に十分通じる内容ではな いでしょうか。東倧至尊䞻矩、偏差倀、進孊校、先茩埌茩教育事情を䟋に取っおみおも、今日 でも「䞊䞋」の芁玠が匷いです。同時に、日本瀟䌚では自信家や業瞟䞻矩などが毛嫌いされ、倚く の人は窮屈なほど平等䞻矩に拘るのです。 長いものに巻かれろ。出でる釘は打たれる。瀟䌚や文化の䞊では、本質的なのはどちらでしょう か。 文化ず瀟䌚ず政治の぀ながり。犏沢が解明しようずしたのは、たさにそれです。日本の文化ず思想 に぀いお、我々が孊がうずすれば、いったん同じ点に立っおものを芳察しおみなければなりたせん。 倚くのものが耇雑に絡み合う人間瀟䌚の䞭で今日の我々の考え方の由来ず特城を抑え、その限界 ず可胜性を探るのが日本思想史ず日本文化論の共通課題でありたしょう。


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____✉____✇ 担圓者吉川 孝

単玔な性的掻動は、゚ロティシズムずは異なる。前者は動物の生掻の䞭にあるもの であっお、おそらく、ただ人間の生掻だけが、゚ロティシズムずいう名にふさわし い《悪魔的》な盞を芏定する掻動を珟すのである。 バタむナ『゚ロスの涙』 死の認識からこそ、゚ロティシズムが珟れる  。

バタむナ『゚ロスの涙』

゚ロティシズムずは、死におけるたで生を称えるこずである  。 バタむナ『゚ロティシズム』 B.C.

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「 人間 っお 䜕 だろう  」ず考える のが、哲孊 のずおもたいせ぀な仕事です。 フランスの 哲孊者 ・䜜家 バタむナ Georges Bataille,1897-1962は、性行為に目をむけながら人間の人間らしさを蚀い圓おようずしたす。人間は動

物ずちがっお、じぶんたちの死をこわがりたす。぀たり、生きお行くうえで䜙蚈なこずを気にせざるをえたせん。性行為にお いおも、子孫をのこすためだけではない「ムダなこず」にたくさんの゚ネルギヌを費やしたす。自然から逞脱しおしたった 生き物ずしお、われわれはみんな、かなり䞍自然な欲望をかかえこんでいたす。そうした人間の人間らしさが「゚ロティシ ズム」ずいう蚀葉で衚珟されたす。お腹がいっぱいなのに、矎味しいものをもっず食べたい、これはたさに゚ロティ

ックな欲望です。こうしたバタむナの人間論に぀いお、みなさんはどう思いたすか 挿絵はベルメヌルHans Bellmer,1902-75の写真䜜品のひず぀で、自䜜の球䜓関節人圢が題材になっおいた す。こうした䜜品は、オリンピック遞手の「健党な身䜓」を賞賛するナチスの「優生孊」を挑発しおいたす。圌はバタむナ の小説『県球譚目玉の話』や『マダム・゚ドワルダ』の挿画版画を担圓しおいお、悪魔的な゚ロティシズムずいう 二人のモチヌフが響きあっおいたす。


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担圓者・りォヌラヌ おし

叀の歌もお、叀の心詞をしり、それを掚お、叀ぞの䞖の有様を知べし。叀の有様を しりおより、おしさかのがらしめお、神代のこずをもおもふべし。 Through ancient poetry we come to know the ancient meanings and words, and through these we can then know the state of the world in ancient times. From knowing the conditions of ancient times, we can go back further and consider matters of the age of the gods. 賀茂真淵『囜意考』、明和幎

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江戞時代の囜孊者であった賀茂真淵は、䞭囜より導入された儒教等の文化を批刀 し、「盎き囜」ずいう叀いにしえず神代じんだいずいう想像の瀟䌚を理想 ずした。真淵は䞻に『䞇葉集』成立幎を読んで、挢字によっお色耪せら れる前の叀蚀の意矩を理解するこずによっお、叀に垰り叀の心が自然に身に着くず 考えた。『囜意考』で真淵は、叀に぀いお具䜓的に述べるよりも䞭囜に察する批刀 を蚘述しおいる。それはたさに「他者」の意識によっお、真淵が「自己」を芋぀め おいるのである。


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折口信倫「日本文孊系図」党集第巻、巻末


第䞀孊習瀟「最新䞖界史図衚」


文化孊郚教員䞀芧 氏 名

専門分野

キヌワヌド

青朚 晎男

むギリス近代文孊

自然、共生、性、階玚、グロヌバリズム

五癟蔵 高浩

英語孊、英語教育孊

音韻論、第2蚀語習埗、コヌパス研究

芋生 裕信

近代日本の文孊

日本近代・珟代文孊、詩、短歌、小説、文䜓

岩倉 秀暹

憲法孊

北川 明

教育哲孊

倚文化教育、囜際理解教育、共生瀟䌚

金柀 俊吟

英語孊

圢容詞、意味、構文、語法研究

枅原 æ³°æ²»

土䜐地域文化研究

スポヌツ スポヌツ史、地域スポヌツ、地域文化、総合 型地域スポヌツクラブ

䜐藀 恵里

近䞖日本の芞胜ず文孊

芝田 䞍比人

孊習方法論

鈎朚 哲也

䞭英語文孊

日本の近䞖、歌舞䌎、人圢浄瑠璃、小説、庶民文化

䞭䞖ペヌロッパ、䞭䞖英文孊、カンタベリヌ物語、アヌサ ヌ王䌝説、キャリア教育

高岡 匘幞

文化人類孊

郜垂、劖怪、排陀、ベトナム、環境認識

高西 成介

䞭囜叀兞文孊

䞭囜叀兞文孊、志怪小説、䌝奇小説、比范文孊

æ©‹å°Ÿ 盎和

日本語孊・方蚀孊・蚀語

土䜐こずば、文化環境蚀語孊、東アゞア、琉球語・アむヌ

å­Š

語・日本語諞方蚀

ゞェンダヌ論

生物孊的性差、瀟䌚、文化的性差、性差別、劎働、教

蟻䞊 奈矎江

育、家族、セクシュアリティ 東原 䌞明

䞊代・䞭叀物語文孊

源氏物語、語り、匕甚、蚀説、テクスト

束本 茂章

文化政策孊

自治䜓文化政策、地域ガバナンス共治、官民協働、た ちづくり政策論、関西文化論

向井 真暹子

蚀語孊

察照蚀語孊、理論蚀語孊、日英、北欧諞蚀語

山口 善成

アメリカ文孊

19䞖玀散文、歎史蚘述、囜家史自然誌、産業化、粟神 科医療

ゞョ゚ル・ペヌス

日本文化論

思想史、粟神史、比范、「自」ず「他」、耇雑性ず単玔化

吉川 孝

哲孊

珟象孊、志向性、意識、認識、実践、理性、感情、行為、 意志、䞖界、身䜓、他者

ロヌレン・りォラヌ

日本文孊

䞇葉集、䞊代文孊、囜孊、和歌、「自」ず「他」、日本像


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