Architecture portfolio

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都 市 の 断 片 を 切 り 取 る 十 八 の 物 語


十 年 前 、 私 は 大 阪 ・ 梅 田 と い う 場 所 を 知 っ た 。

当 時 は 、 ま だ 建 物 も 今 よ り 多 く 無 く

赤 い 観 覧 車 が 一 際 目 立 っ て い た こ と を 覚 え て い る 。

や が て 月 日 が 経 ち 、 卒 業 設 計 を 機 に

今 の 大 阪 ・ 梅 田 を 見 直 す と 、 風 景 が 一 変 し て い た 。

あ の 頃 の 梅 田 の 風 景 は 度 重 な る 都 市 開 発 で

跡 形 も 無 く 消 え 去 り 上 書 き さ れ た 風 景 を 目 の 前 に

私 は な ぜ か 虚 し さ を 感 じ た 。

更 新 さ れ る 都 市 の 履 歴 を 見 な が ら

考 え 、 都 市 で の 暮 ら し

そ し て 、

大 き な 転 換 期 に あ る 大 阪 ・ 梅 田 で

都 市 そ の も の を 考 え る 必 要 が あ る と 考 え た 。



00. 都市風景の断片にファインダーを向ける 都市の風景に向けて「ファインダー」を設置し、移りゆく時代の断片を写し続けるアーカイブスペース 幾度も書き換えられ、都市の記憶が何も残らない現代の都市開発。西日本経済の中心都市「大阪・梅田」は、様々な人が往来するインフラを中心とした過密高層化された日本の 典型的な都市構造のひとつである。一方で、過度な都市開発によるスクラップ&ビルドが後を絶たない。つまり、都市の歴史や文化などが残らず取り壊される現状がある。 写真集などの出版で大阪の歴史をアーカイブしているものは存在するが、かき集めて写真には撮影場所が固定されておらず「いつ、どこがどう変わった」といった、ある特定の 場所の変遷を追うことはかなり困難である。 このように目まぐるしく上書きされる都市の断片は忘れ去られ、更新されていることに疑問を持った。更新され続ける都市の履歴を見ながら、考え、都市での暮らし、そして、 都市そのものを考える必要があると考え、本計画では、設計者である私自身がライフワークとして行ってきた「写真」という表現手法を元に、都市風景の断片に「ファインダー =フレーム」を設置し、異なる時代で開発された都市の断片を定点観測的に捉えるフレームと梅田の変遷を

ることができるアーカイブスペース を提案する。

01. 対象敷地 グランフロント大阪

大阪市北区曽根崎 2 丁目 ( 現梅田吸気塔エリア )

阪急電車

JR 大阪駅 阪急百貨店

この敷地は、1963 年村野藤吾設計の「梅田吸気塔」が現存する敷地である。

阪神百貨店

右図は、昭和 17 年に計画された都市計画図である。当時、行われた都市計画が現在の梅 site.

田の原型に当たるものと推測される。この計画で行われたことは、御堂筋の整備と大阪 駅前の街区の再編成であった。次に、右図では平成 31 年度現在の航空写真と当時の都市 計画図を重ねたものである。街区と御堂筋が大きく書き換えられた際、計画の残余地と なった場所が現在の対象敷地であったことがわかる。つまり、都市開発によって生まれ てしまった場所であった。 そこから半世紀にも渡って吸気塔をはじめ、敷地も大きく変化することなく今もなお現 存し続けている。 なお、既存の吸気塔は保存したまま提案を行う。 (fig.1)

▲昭和17年に計画された

▲平成 31 年度現在の航空写真と

大阪の都市計画図

当時の都市計画図を重ねた図

環境カルテ・時代変遷

超高層建物 (61m ) 高層建物 (16m 60m) 中層建物 (10m 15m)

低層建物 ( 9m)

横断歩道

人動線

街区

1890年 (明治23年)

1930年 (昭和5年)

1961年 (昭和36年)

1975年 (昭和50年)

2001年 (平成13年)

2007年 (平成19年)

2018年

阪急梅田駅

御堂 筋線 梅田 駅

JR大阪駅

谷町

線東 梅田 駅

四つ橋 線 西 梅田駅

JR北新地駅

敷地

車動線

公園 (GL)

車両主要動線

電車

2F 外部通路

地下通路 ( 建物内除く )

開発予定地

1997年 (平成9年)

(平成30年)

1989年 (昭和64年/平成元年)


field survey 対象敷地またはその周辺の都市風景をファインダーで捉えたものの一部


02. 異なる時代の開発で生まれた十八の都市風景

対象敷地またはその周辺から見える都市風景の断片を「借景」として取り込む。どの風景も日々何気なく見かけるただの風景である。しかし、日々見つづけているとその風景としての認識が弱くなる。「梅田」という 移り変わりの激しい風景において様々な風景に意識が弱まり、風景が盲目化してしまう。私自身、慣れ親しんだ数年前の梅田の風景の認識が弱くなっていたため、現代の梅田の風景にかき変えられ、つい数年前の風景 を思い出すことができない。都市が更新されることは悪いこととは思わない。ただ、現在の都市開発は過去の記憶や場所の痕跡が残らず、綺麗なもの・新しいものばかりを追い求め、過去を記憶を塗り消しているよう に感じる。 そこで、都市開発で発生したこの敷地に、異なる時代で開発された都市の断片を切り取る「ファインダー」を18設置する。 これらのフレームが大阪・梅田の風景を写し続ける。

1【地面 ( 道路 ) に焦点を絞るⅰ】

2【地面 ( 道路 ) に焦点を絞るⅱ】

3【地下鉄に焦点を絞る】

御堂筋:御堂筋完成時期 (1937 年 )

御堂筋:御堂筋完成時期 (1937 年 )

4【地上から地下に焦点を絞る】

5【大地と空・呼吸に焦点を絞る】

6【高層化に焦点を絞る】

地下鉄:御堂筋線開通 (1933 年 )

地下街:ホワイティ梅田開業

吸気塔竣工時期 (1963 年 )

高層化:周辺ビル群の建設

谷町線開通 (1967 年

(1963 年 )

)

(2000 年代 )

7【流動する車に焦点を絞るⅰ】

8【流動する車に焦点を絞るⅱ】

9【横断する人に焦点を絞る】

10【立ち並ぶ看板に焦点を絞る】

11【ファサードに焦点を絞るⅰ】

12【ファサードに焦点を絞るⅱ】

車:大大阪時代 (1923 年

車:大大阪時代 (1923 年

横断歩道:HEP NAVIO 竣工時期

看板:曽根崎新地 (1965 年 )

建 築:阪 急 百 貨 店 竣 工 時 期 ( 2 0 0 9 年 )

建 築:曽 根 崎 警 察 竣 工 時 期 ( 1 9 7 3 年 )

)

)

(1998 年 )

13【ファサードに焦点を絞る3】

14【ファサードに焦点を絞る4】

15【アイコンに焦点を絞る1】

16【アイコンに焦点を絞る2】

17【アイコンに焦点を絞る3】

18【スリッド状に焦点を絞る】

建 築:近 代 的 ビ ル 竣 工 時 期 ( 2 0 1 5 年 )

建 築:阪 神 百 貨 店 竣 工 時 期 ( 2 0 1 8 年 )

アイコン1:大阪マルビル竣工時期

アイコン2:観覧車竣工時期

アイコン3:大阪駅竣工時期 (2011

構想密集化:西梅田の開発

(1976 年 )

(1998 年 )

年 ) スカイビル竣工時期(1993 年)

(1990 年代 )


03. 構図の解体 写真は構図と複数の被写体に関係し合うことで構成されている。さらに、本計画の「都市の日常を映し出す十八の情景」は、言い換えれば都市写真であると言える。 都市写真は風景写真より、より多くの情報が混在し何層にも渡るレイヤーの組み合わせで構成されている。日常の風景を顕在化させるために「構図を解体する」ことで、絡まりあった情報を乖離させる。 敷地調査時に撮影した500枚以上の梅田の写真と異なる時代の開発で生まれた風景からの分析により、共通する分解要素があることを発見。 以下の図は、構図の解体の一例であ理、この操作を十八の風景全てで行う。

つくられたスカイライン

例)5【大地と空・呼吸に焦点を絞る】

道として都市風景を体験する

既存物体の圧迫感

周辺建築の圧迫

道路を渡る 横断歩道

ビルの密集

ビルの密集

地面を奪った車道

周辺建築 の圧迫 周辺建築 の圧迫

道路を渡る横断歩道

地面を奪った車道

例)9【横断する人に焦点を絞る】

信号待ちを する人の群れ

信号待ちを する人の群れ

地面を奪った歩道

信号待ちを する人の群れ


04. 都市における身体的体験の類型 日常的に都市で生活していると、様々な身体的体験を感じることができる。それは、写真を撮るときに非常に重要なことである。写真を撮る空間に出会うまでに、それまで歩いてきた視覚や聴覚・距離・などの身体的 体験の連続を経験したことで、その空間に出会ったことで「ここでファインダーを覗く」という行動に移る。一方で、異なる日にその空間にもう一度来ても「この空間」にならないことがある。それは、違う体験の後 だから風景の見え方も変わるのだと推測できる。したがって写真を撮る空間とは、それまでの体験がかなり影響していると言える。 つまり、本計画では都市の中で様々な体験をすることでその場所を見つけることができる。 そこで、敷地調査時に撮影した写真と構図の解体を行った十八の風景を分析し、次のような都市における身体的体験へと変換する。

異なる体験をすると見える景色が変わる 一連の都市体験

一連の都市体験 !

写真を撮る

写真を撮る

空間の風景

空間の風景


拡大 ヒューマンスケールからアーバン

道路を渡るために

スケールに拡大。

誘導

境界

何も考えずに従う、都市に誘導さ

囲われた場所に入る。都市のプライ

れる。

ベートとパブリックの境界。

緊張

交差

分岐

浸食

左右の高い壁に挟

多様動線による通路の立体交差。

建物が乱立し、道が分岐。

道路に物体が浸食。

潜伏

昇降

整列

インフラ等の交通経路に潜伏。

高層化による昇降。

繰り返し配置される整列。

近接

切断

接続

幾重にも重なる建物

風景の切断、または動線の切断。

建築と建築を接続。

まれた緊張。

群衆 人が群になる広場的空間。意図せ ず発生する群衆。

空虚 つくられたスカイライン。都市の

群の近接。


05. 十八の物語

対象敷地周辺から見ることができる十八の異なる時代で開発された都市の断片。そのひとつひとつに歴史があり、記憶が存在する。断片の構図を解体して構成された道に、フレームから見ることができる都市の変遷を 写真でアーカイブする。そこを歩く人たちは変遷を

りながら梅田という変化し続ける都市を巡る。十八の固有の歴史の深さが存在し、体験要素も異なる。これは、道とフレーム・そして開発された風景との物語であ

る。右図の道は「都市の日常を映し出す18の情景」の構図を解体し、道に再構成したものである。焦点と関係性が薄いものから道を進み最後に借景となる風景で出会うとき、ただの日常の風景が顕在化され、その瞬間 のみ「特別な風景」となる。これは、私という個から発するものであり、本計画の基盤になる道筋である。

フレームが挿入された空間

1【地面 ( 道路 ) に焦点を絞る1】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 整列

切断

接続

昇降

ファインダーを向ける都市風景

身体的体験の順路

フレームの名前

フレームを設置する配置図

道とフレームの物語

1【地面に焦点を絞る 1】  どこまでも続くとても高いビル群と道路を埋め 尽くす道路。それらを繋ぐように歩道橋が設置さ れており、そこを歩いて道路を渡る歩行者たち。 やがていくつもの車線を越えた人たちは歩道橋を 降り、それぞれの向かう先へ足を運ぶ。

フレームが挿入された空間

身体的体験の順路

道の概念図


10【立ち並ぶ看板に焦点を絞る】

1【地面 ( 道路 ) に焦点を絞る1】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 整列

切断

接続

昇降

・・・・・・・・・ 空虚

2【地面 ( 道路 ) に焦点を絞る2】

群衆

空虚

切断

昇降

接続

11【ファサードに焦点を絞る1】 ・・・・・・・・・

整列

整列

接続

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 整列

浸食

3【地下から地上に焦点を絞る】

12【ファサードに焦点を絞る2】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・ 整列 誘導

潜伏

拡張

緊張

空虚

4【地上から地下に焦点を絞る】

13【ファサードに焦点を絞る 3】 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 誘導

潜伏

整列

群衆

5【文化に焦点を絞る】

14【ファサード焦点を絞る4】

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 空虚

整列

緊張

6【高層化に焦点を絞る】

15【アイコンモニュメントに焦点を絞る 1】 ・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・ 群衆

接続

切断

昇降

整列

緊張

切断

昇降

連続

緊張

16【アイコンモニュメントに焦点を絞る2】

7【流動する車に焦点を絞る】

・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 誘導

浸食

整列

切断

切断

昇降

連続

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 浸食

切断

・・・・・・・・・・・・・・・・

連続

拡張

連続

拡張

18【スリッド状に焦点を絞る】

9【横断する人に焦点を絞る】

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・ 近接

緊張

接続

17【アイコンモニュメントに焦点を絞る3】

8【流動する車に焦点を絞る】

誘導

緊張

群衆

浸食

接続

昇降

整列

近接

空虚


1【地面に焦点を絞る 1】

3【地下から地上に焦点を絞る】

2【地面 ( 道路 ) に焦点を絞る2】  どこまでも続くとても高いビル群と道路を埋め

建物のファサードが道に沿って立ち並び、空の

サインに沿て地下へ潜伏し、前の人について行

尽くす道路。それらを繋ぐように歩道橋が設置さ

かたちを形成する。少し視野を下げると、横断歩

くかのように歩くと少し開けた場所があったり、

れており、そこを歩いて道路を渡る歩行者たち。

道を渡ろうと信号待ちをする群衆がいた。やがて

工事で狭くなっている場所がある。建物の接続時

やがていくつもの車線を越えた人たちは歩道橋を

信号が青になり、さっきまで静止していた人たち

に一瞬見える自然光に何故だか特別感を感じる。

降り、それぞれの向かう先へ足を運ぶ。

が勢いよく道路を横断する。その手前には、群衆 を狙うタクシーや路上駐車が列をなし道路を浸食 していた。

7【流動する車に焦点を絞る】

9【横断する人に焦点を絞る】

8【流動する車に焦点を絞る】  道路の上にはいろんな行き先を記した道標が列

道路の上にはいろんな行き先を記した道標が列

をなし、それぞれ向かう方向に車線を変える車。

をなし、それぞれ向かう方向に車線を変える車。

ふと目線をそらすと、道標の付け根にたくさんの

ふと目線をそらすと、道標の付け根にたくさんの

信号待ちをする群衆。道にまで繰り出される店の

車が道路を占領している。歩行者は車が優先され

車が道路を占領している。歩行者は車が優先され

商品や看板。やがて信号が変わり長い横断歩道を

た地面の上で止むを得ず遠回りをしている。

た地面の上で止むを得ず遠回りをしている。

渡って建物の中に入っていく。

13【ファサードに焦点を絞る 3】

14【ファサード焦点を絞る4】

ゆるやかに曲がっていく狭い一方通行の道に

15【アイコンモニュメントに焦点を絞る 1】

どこにでもある建物の姿。同じパーツの反復は

メタリックな外壁から透かされて、中の様子が

丸い外壁に埋め込まれた四角い窓。しかし、そ

隣のビルに合わせたのだろうか。なぜか似てい

伺える新参者のビル。つい、数年前にあった同じ

の前にある建物の生で全景を見るをことができな

る。古いビルのデザインをオマージュされて作ら

建物のファサードを一体、どれだけの人が覚えて

い。もう少し高いところからな全景を見ることが

れたビルだった。

いるだろうか。

できるかもしれない。近ずいたり離れたりする部 分を横目に道を進むと向こう側が開けた場所が あった。その先にはあの【マルビル】が縁取られ ていた。


4【地上から地下に焦点を絞る】

5【文化に焦点を絞る】

6【高層化に焦点を絞る】

方向がわからずサインに誘導され、縦横無尽に

晴 れた ある日 、綺 麗な青 空は周 りの高 層ビ ルに

梅田のビル群はとにかく高い。信号待ちをして

歩く人たち。地上を歩くことより便利さを覚えた

切り 取ら れ、狭 くな ってい た。外 からふ と小 さな

いる車と一方で横断している車が米粒ほどの大き

人は、歩くごとに地下へ地下へと潜伏を繰り返

入口 が見 え、そ こを 通ると 梅田の 文化で ある 【吸

さで見える。分離しているたくさんの道路が歩行

し、自然と人の群衆がいたるところで発生してい

気塔 】が 今もな お、 呼吸し ていた 。今ま で道 路越

者を回り道させ、編み込まれた歩道橋を渡る。

た。

しに 見る しかな かっ た吸気 塔は、 こんな にも 高く そび え建 ってい たの か。

11【ファサードに焦点を絞る1】

10【立ち並ぶ看板に焦点を絞る】

12【ファサードに焦点を絞る2】

どこまでも続く空と建物。しかし、建物の連続

幾 何学 図形を繰 り返されて 作られてい るファ

正方形の窓と構造体の線が整列した建物。どう

は高架により切断される。高架に上がる車と下を

サー ドデ ザイン。 となりのお 年寄りによ ると、半

やらこのデザインは昔からほぼ変わりないらし

行き交う車が接続する地点には多くの看板が建物

世紀 前の デザイン に回帰して いるようだ 。

い。変わらない風景の前でこれからの梅田につい

から生えてきたかのようにファサードを覆った。

16【アイコンモニュメントに焦点を絞る2】

て話し合っていた。

18【スリッド状に焦点を絞る】

17【アイコンモニュメントに焦点を絞る3】

反復する均質な線の集合体。1 街区分離れてい

見えていた風景が一部しか見えなくなり、そこ

縦に伸びていくビルの中で複数の動線が生まれ

るという距離感が合間って風景が切断されて見え

には大きな広場が生まれ、人々の動きが変わっ

移動する光のハコ。そのような建物の連続と、縦

る。直接見えたり、あるところでは実質が影とし

た。積層されたその場所によって姿をけしかけて

に切り取られた空が都市の風景。

て写る場所もある。都市空間に見慣れない【観覧

いるガラス建築の象徴。

車】は象徴化され、その建物へ吸い込まれる人々 がいた。


06. 道の設計図

右の図は、構図の解体によって構成された道順とフレームの高さ関係を表した相関図である。「十八の都市風景」すなわち、十八の都市風景と道が存在する。 しかし、この十八の道が全くの別物で互いに干渉せず、積み重なっていたらのならばこの敷地で計画する必要がない。 右の図は、十八のフレームとそれぞれの道を概念的かつ実際に敷地に落とし込んだダイアグラムである。 十八の風景地点に設置したフレームから逆算的に構図の解体から構築した十八の道を組み上げていく。同じ身体的体験の類型を用いて道を構成しているため、共通項が存在する。 そこで、近接する共通項(空間)を共有することで十八の道同士が関係を持ち、回遊性のある連続した空間が構成できる。

01.十八の道順

02.共通項の発見

03.共通項を共有することで十八の道同士が関係を持つ


高さ

・・・共有項

・・・共通項

敷地幅

敷地幅


07. 盲目化した日常風景 道の設計図で組み上げた都市の身体的体験は、個の空間がはっきりと別れて構成されている。 しかし、都市空間は空間がはっきりと別れてはいない。都市空間は流動的な空間体験、すなわち空間の認識が弱まり領域が曖昧な体験が続く。同様に十八の道でも身体的体験の類型の空間同士が曖昧な領域でなけれ ば、切り取った風景を顕在化させる道にはならない。 本計画の道となる空間を組み上げたとき、空間の総数が約60存在した。これらの空間をヒエラルキーなく、空間の領域が曖昧になるよう設計するために、仏像などの製造方法で使用されている鋳造などの方法を用い た。柱梁という従来の過程で空間を構成させていくのではなく、鋳造のように空間同士が合成し、境界のないひとつの曖昧な空間が生成される過程を本建築の構成方法として採用した。

模型製作過程 ⅰ: 骨 格 を 形 成

ⅱ:骨格を肉付け

空間部分を発泡スチロールで制作した様子

骨格に肉付けする様子:分離している道とフレームの空間部分を覆うように外皮を絡めて道とフレームに肉付けする。この肉付けしたものが構造体となる。

ⅲ: 骨 格 と 肉 と 溶 か し て 合 成

空間部分を発泡スチロールで制作した様子

空間を溶かしている様子:道とフレームを可燃性・骨格となる構造体と非可燃性で制作したことにより、この 2 者を合成するために模型を実際に燃やし溶かすことで合成させ、 ひとつの構造物を生成。

ⅳ: 合 成 し た 生 成 物

空間を連鎖するように 積み重ねる

積み上がったものに外皮をかぶ せるように構造体を巻きつかせ る

空間の枠が溶解すると、個の組 み合わせであった空間が境界の ないひとつの曖昧な領域として 生成される


08.Plan

N


▽GL+60,000

Flame18 誘導 昇降 群衆

▽GL+40,000

Flame16 Flame6

接続

昇降 拡大

接続

空虚

Flame11

拡大

群衆

▽GL+15,000

拡大

分岐

昇降

frame14

分岐

群衆

整列

Flame5

接続

Flame8 空虚 ▽GL±0

Flame1

接続 潜伏

Flame2

▽GL-12,000

West elevation S=1:1000


Flame18 近接

Flame16

境界

接続

昇降

拡大

分岐

拡大

誘導 Flame11

空虚 昇降 接続

接続

群衆 Flame7

境界

浸食

Flame5 浸食 群衆

Flame2

空虚 接続

切断

Flame4 昇降

Section S=1:1000


frame 16

frame 16

昇降

近接 拡大 整列 群衆

整列

整列

frame 14

frame 10

分岐 拡大

接続

誘導 frame 12

切断

境界 昇降

誘導

近接

空虚 接続 接続

群衆

群衆

近接

frame 9

接続

群衆

分岐

昇降 誘導 浸食 frame 7

切断

空虚

境界

切断 潜伏

群衆

群衆

群衆

昇降

境界


frame 18

境界

frame 12

整列

拡大

誘導

切断

空虚

接続

frame 6

昇降

拡大

拡大

近接

境界

frame 11

吸気塔

浸食

近接

群衆

境界

接続

接続

緊張

昇降

空虚

近接

切断

浸食

昇降

接続

frame 14

群衆

群衆 誘導

分岐

昇降

frame 14

frame 5

frame 14

拡大

空虚

昇降

接続

拡大

誘導

拡大

frame 4

接続

frame 1

空虚

拡大

昇降

群衆

frame 1

frame 17

空虚

境界

誘導

昇降

近接

整列

frame 17

群衆

空虚

群衆

接続

空虚

接続

frame 14

接続

整列

拡大

昇降

昇降 誘導

frame 17

空虚

緊張

frame 18

frame 18

誘導

空虚

群衆 frame 9

frame 11

近接

接続 接続

境界 境界

接続

frame 14

接続

昇降

群衆

群衆

切断

群衆

空虚

昇降

昇降

群衆

交差

誘導 昇降

誘導

誘導 近接

境界

frame 14 昇降

誘導

浸食

群衆 frame 4

昇降

拡大

frame 14 frame 18

拡大 frame 13

誘導

接続

昇降

浸食

境界

群衆

群衆

拡大

拡大

接続

拡大 拡大

frame 4

浸食

frame 12

昇降

frame 14

近接

誘導 frame 4

境界

拡大 境界

境界

昇降

frame 17

浸食

誘導

拡大

接続

浸食

frame 13

群衆

frame 14 群衆

拡大

誘導

整列

昇降

接続

境界

接続 群衆

frame 13

昇降

frame 9

境界

frame 14

昇降

群衆

拡大

誘導

境界 群衆 浸食

接続 群衆 境界

frame 11 接続

誘導

昇降

frame 4

接続

接続

拡大

拡大

誘導 接続

境界 群衆

浸食

浸食

交差

frame 4

吸気塔

拡大

拡大

拡大 昇降

接続

群衆 frame 5

切断

昇降

誘導 分岐

接続


frame 16

frame 16

昇降

近接

風景にたどり着くまでの道のり

拡大 5【大地と空・呼吸に焦点を絞る】

7【流動する車に焦点を絞る 1】

整列

群衆

緊張 空虚

浸食

誘導

frame 5

整列

整列

frame 14 分 0岐 1.空虚

02.緊張

切断

03.焦点となる風景

01.誘導

拡大

昇降

02.浸食

03.切断

接続

誘導

切断

境界

frame 12

frame 7

誘導

近接

空虚

04.焦点となる風景

群衆

接続 9【道を横断する人に焦点を絞る】

14【周辺建築のファサードに焦点を絞る 4】

接続

群衆

群衆

01.近接

群衆

04.浸食

潜伏

分岐 03.群衆

誘導 群衆 05.接続

frame 14

接続

01.整列

frame 9

浸食

frame 9 整列

02.緊張

浸食

切断

近接

群衆

接続

frame 7

切断

緊張

近接虚 空

境界

昇降

frame 10

06.焦点となる風景

昇降

境界

群衆

02.焦点となる風景


09. 未来への手紙

フレームにズレが生じる廃墟的空間 フレームとして都市の断片を切り取る風景は 2019 年現在に存在する「過去」と「現在」である。しかし、都市は常に更新され、姿を変えていく。 数十年後・数百年後、または人類が現存するか保証もない数千年後に、もしこの建築が残り続けたとするならば「未来」の梅田に何を残すのだろうか。切り取られた風景は変化し、フレームに 「ズレ」が発生する。その瞬間、構図の解体は破綻し意味を持たなくなる。 だが、これまでの風景は写真として、構図の解体によって構成された道にアーカイブされていくため都市は写真というメディアで記憶される。写真とはその瞬間のあらゆる情報を閉じ込め、あ とでもう一度引き出せるタイムマシーンのようなメディアである。しかし、写真で記憶することができないものがある。 それは、焦点の「スケール」である。写真に取り込んだ瞬間、その空間個体のスケールは喪失し、相対的なスケールでしか写真内空間を理解することができない。そこに、過去の個体のスケー ルを所有する「フレーム」が残っていたとき、そこを訪れた人は、過去のスケールという写真では体感できないものに遭遇する。 その体験に遭遇したとき、移り変わったという歴史を目の当たりにするであろう。 現在設置する「フレーム」は今を切り取る装置であり、どれだけの変化があったかということを示す「未来への手紙」なのである。

道や文化など変わらぬあり続けるフレーム

ビルがなくなり視線が抜ける

アイコンとフレームの間に新たなビルが

絶景を切り取っていると異なる認識をしてしまう

建設されアイコンが半分に欠ける


﹃ 都 市 の ア ー カ イ ブ ス ペ ー ス ﹄

そ れ は 、 開 発 に よ っ て

変 わ り ゆ く 時 代 ご と に つ く ら れ た

都 市 風 景 を 借 景 と し て 内 包 し

そ れ ぞ れ の 立 場 で 都 市 に つ い て 記 憶 し

そ れ ぞ れ の 立 場 で 都 市 に つ い て 考 え る 為 の

﹃ 建 築 ﹄



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