DIPLOMA PROJECT|TOMONIWA TOSHI|KEISUKE SHINOHARA

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共 庭 都 市

共 庭 都 市



ー公と私の都市空間に対する共的空間形成の手法と実践ー



1. はじめに 私は生まれながらにして祖父の設計した田舎の大きな 4 つの庭がある戸建て住宅で育った。維持に は人の手がかかるものの、日々成長し時間が積み重ねられていく場所性を持つ庭の豊かさはコロナウ イルスが未だ席巻する今、その価値は、効率が重視され、時間の使い方が一様化する現在において、 再び見直されるべきではないか。庭にある場所性を共有していくことで、これを共庭 ( ともにわ ) と 名付け、建築を近隣、地域、都市へと繋ぎ、新たな共同性を都市に埋め込んでいく。人口減少と未曽 有の環境悪化が叫ばれる今、未来に向けての日常の場を狭める縮小のデザインを打ち出し、身近な都 市である神戸三宮にて「共庭都市」を実践する。


2. 問題 / 背景

道路と敷地内。公と私に隔てられた都市空間

近代都市は都心郊外モデルにより、都心におけ る生活基盤が弱く、用途地域制による細分化で 敷地と道という公と私に隔てられた場所であ る 。均 質 で 繋 が り が 希 薄 で 無 味 乾 燥 と し て お り 、 これから都心に住んでいく上で、身体的なつな がりが必要だ。

人の流れを遮る用途地域境界に存在する街区

現在の三ノ宮駅から南に歩いていく中で、選定 敷地周辺で南側に行く人の流れが激減してい る。現在敷地には高層のオフィスビルが建って お り 、異 様 な 圧 迫 感 を 放 ち 、街 を 断 絶 し て い る 。


徒歩 10 分圏内


系レイアウト最終1.pdf 7 2021/02/02 8:47:23


3. 提案 ―共庭をもつ未来の都市を支える複合施設―

人 々 が 改 め て 集 ま っ て 暮 ら し て い く た め に も 、「 共 庭 」 に よ っ て 公 と 私 の 間 に 新 た な 「 共 」 の 場 を 形成する。庭にあった関係性をメタファーに居住支援施設と周辺地域の機能を併せ持った複合施設 を提案する。都市に寄生するように共に変化しながらも人々の記憶に残り続ける建築となる。

系レイアウト最終2.pdf 3 2021/02/02 10:10:51


00. 序論

01.問題

私は生まれながらにして祖父の設計した田舎の大きな 4 つ庭がある戸建て住宅で育った。維持には人の手がかかるもの

現在地球では未曽有の環境悪化が叫ばれており、また先

の、日々成長し時間が積み重ねられていく場所性を持つ庭の豊かさはコロナウイルスが未だ席巻する今、その価値は、 効率が重視され、時間の使い方が一様化する現在において、再び見直されるべきではないでしょうか。庭にある場所性 を共有していくことで、建築を地域、町、都市に繋ぎ、愛を持ってこれから変化成長していくものとして設計する。

02.提案 地球気温の上昇

現在人口減少が始まる地方都

日本の人口動態

市三宮で、これからの都市生

進国である日本では人口減少という深刻な問題を抱えて

[℃]

いる。この二つの問題を解決するためにも未来に向けて

0.6

縮小のデザインが必要だ。持続的日常の場を狭め、古く

140

0.4

120

する。日本の都市に存在する

から生活の場の中心であった現在の都市に新しい住環境

0.2

100

各建物周りに存在する余白空

を整える。しかし近代の都市は都心郊外モデルにより、

0.0

都心における生活基盤が弱く、用途地域制による細分化

[ 百万人 ]

80

の間に新たな「共」の場が必要である。

-0.8

間に注目し、敷地と道の関係

60

-0.2

性を再考しこれらをつなぎ、

40

がおこり、敷地と道という公と私に隔てられた場所となっ -0.4 ている。人々が集まって暮らしていくためにも、公と私

活を支えるための建築を提案

建築内で立体的に再編成し、

20 0 1850

1900

1950

2000 [ 年 ] 1950 2000

2050

2100

2150

2200

2250

2300

[年]

3000

新たな共的場となる「立体的 公開空地」をもつ小さな街の ような建築を出現させる。こ の立体的公開空地をただの公

現在の都市空間に本当の意味での公共空間はあるのだろうか。つなが りがない都市居住の人々たちは、どのようにして新しい愛着あるコ ミュニティをこれから育むことができるのだろうか。

園としてではなく、住宅にあっ た庭のように所有感覚のある 場所を共有するように管理し、 コミュニティ形成やレクリ エーションの基盤となる共庭 として設計する。

日本の都市に存在する所有があいまいな敷地内の領域

03.敷地 敷地は現在の三宮。神戸市役所前の一街区。フラワーロードと京町筋に接続する敷地。また 現在の用途地域制の境界部にあたる。現在は近代的な高層オフィスが建っているおり、どこ か人々が南へと歩くのを阻害する雰囲気を持つ。三宮は港湾都市として発達した地方都市で 近年の人口動態は減少傾向にある。元々海と山が近い商工業都市であったが、今の街中では それが感じられない。居住者含め徒歩 10 分圏内の同心円状 800 メートル居住者、また周囲 の用途地域の利用者を想定する。用途地域制、敷地と道の関係を再考し、周辺の用途地域に 真北

みられる機能を建築内へ持ち込み複合させる。また周囲の道に対して 30 度回転したグリッ ドにより敷地内外の関係性を再構築する。

C

M

Y

CM

MY

CY

CMY

0

1000m

0

1000m

真北

フラワーロードと京町筋の連携の希薄さ

歩行の障害となる敷地

真北

地下道の流動人数

K


04. 共庭・コンセプト

07.ゾーニング 庭は植物を介して空間

共庭ルール

や体験を自分で獲得で

管理する庭と必ず隣接 ( 内包 ) させ、

きる他者性を持つ存在

他の管轄の庭を一つ以上見れるよう に

( 場 ) である。本設計で

平面的、断面的に配置する ただし、

は人と人の共のほかに

*それぞれの庭は2つ以上のふるま

さらに広義の共を目指

いに管理される必要がある *庭は線状につながっている方が好

し、庭にある関係性を

ましい

*ふるまい同士は並列または一部融

メタファーとして構成

合する

ふるまいの主体

する。

動線

05.全体構成と構造 テナント

ビストロ

ギャラリー

図書館

子育て支援施設

シェアオフィス

デイケアセンター

ホテル

住居

人々の共的生活を支え る庭の構造。くの字型 平面を基本として立体 的に構成。

庭の構造を骨格として 機能を配していく。ス ラブは増改築可能でそ の時代の街のニーズに 合ったプランが埋め込 まれていく。

機能同士、庭と機能を つなぐ動線を巻き付け るように配置すること で、一体感のある街の ような建築が出来上が る。

04.管理と時間経過 共庭都市での一生

居住者

利用者

共庭と定義する居住者が共同で育て、外からの施設利用者

みんなでそれぞれの

居住者

共庭を管理してい

もそこへアクセスし、関わることができる庭を中心として

シングルマザー

庭好きな人

居住棟 共庭利用者

共庭

・老人、近居棟    24 人 ×3 スロープ、ゆったり

クリエイティブな人

近居老人

DINKs シングルマザー

者も庭にかかわって

クリエイティブな人

庭師

利用者

く、ここを使う利用

核家族

んとうの意味でみん なが庭の成長ととも に過ごすことがで

・混合棟       24 人 ノーマル SOHO ・単身者       24 人 ×2 タイト、SOHO、シェア

いけるためのシステ ムとすることで、ほ

働いている人

・子育て世代     24 人 ×2 遊び多め、スキマ ・大規模ガーデニング 24 人 ×2 庭多め、テラス

35 歳

図書館利用者 庭好きな人

共庭利用者

き、愛着が生まれて

料理人

従業員 単身者

いく。

39 歳

45 歳

57 歳

時間軸 に 住 み 始 め る

仕 事 を 始 め る と と も に 共 庭 小 都 市

庭が育つ

子 供 が 生 ま れ る 。

を 植 え る

子 供 が 小 学 生 に な る の で 、 記 念 樹

い た 住 人 に 庭 は 任 せ る

市 を 離 れ る 。 庭 を 一 緒 に 管 理 し て

仕 事 の 都 合 で や む を 得 ず 共 庭 小 都

暮 ら し て い た 時 の 庭 の 姿 が 。 。

庭 小 都 市 を 再 訪 す る と 、 そ こ に は

仕 事 の 都 合 で た ま た ま 三 宮 に 。 共

の で 再 び 共 庭 小 都 市 に 住 む 。

子 供 が 成 人 し 夫 婦 2

図書館利用者

庭師

・農家棟       24 人  土間

29 歳

く。居住者だけでな

建築を構成。

核家族

22 歳

80 歳

間 と 妻 と 育 て た 庭 が 。

共 庭 小 都 市 に は た く さ ん の 仲

85 歳

妻 死 が 去 老 衰 。 ひ と り 身 に な る が 、



10m 5m

20m

A-Aʼ 断面図 1:300


ペントハウス

オフィス

オフィス

オフィス

オフィス 家族世帯住居

オフィス

家族世帯住居 子育て

カフェ

子育て

カフェ

子育て

家族世帯住居

子育て

家族世帯住居

カフェ

カフェ

カフェ カフェ カフェ カフェ

10m 5m

10m 20m

5m

20m

B-Bʼ 断面図 1:600

C-Cʼ 断面図 1:600

鉛直方向に大きく抜けるヴォイ

建築内の空間的なつながりが

ドは光を建築内まで届け、植物

明解な断面。異なる機能を立

の生育環境向上に寄与する。ま

体的につなぐように共庭が配

た光と風が抜ける心地よいいい

置されている。また地下通路

場所ともなる。断面上で周囲の

との関係性も見て取れ、通路

建物との物理的なつながりを見

上空に大きなヴォイドをとる

ることができ、周囲の建物はこ

ことで、地下にいることを感

の建築から新たな GL を与えら

じさせない明るい空間となっ

れる。

ている。


10m 5m

20m

南側立面図 1:600

高耐久のコンクリート構造による共庭の構造体と それを骨格に構成する機能の入る床が四角的に分 離して感じられ、レンガの重さと鉄骨の床部分の 軽さが対比的に表されている。 床の部分は基本的にガラス壁となっていること で建築内のアクティビティが街へとあふれ出す。 また共庭の部分は利用者と居住者によって育 ち、各々が当事者意識を持ち、街の風景を作って いく。


A

C

B 10m 5m

20m

配置図兼一階平面図 GL+1500 1:500


A

C

B 10m 5m

20m

上階配置図兼平面図 GL+24000 1:500



南東側ファサード。手前に見える神戸市役所の並木、共庭都市の庭、遠方に見え る六甲山が呼応するよ うに風景を作る。少しずつ時間をかけて育つ共庭都市は次第と街の新しいランド マークになる。


北西外観パース。敷地北側に 位置する三宮センター街の細 い通路を南方へ進むと突如現 る共庭都市。ショッピングに 疲れた人達が、カフェを利用 したり、ギャラリーの展示を 見て一休み。もちろん庭を眺 めながらおしゃべりするのも よい。


敷地中心部を 南 北 に 走 る 大 通 り 。 三 ノ 宮 駅 か ら の メ イ ン ス トリートであ る フ ラ ワ ー ロ ー ド と 将 来 的 な 観 光 動 線 と し て 注目される京 町 筋 を 直 接 つ な ぐ こ と で 動 線 を ス ム ー ズ に す るとともに、 記 号 的 に 道 と 敷 地 の 関 係 性 を 壊 す 役 割 を 果 た している。道 を 進 む と そ こ に は 上 空 に 様 々 立 体 交 錯 す る 庭 に包まれるよ う な 体 験 が で き る 。


住居から密 接 し た 上 空 の 庭 。 都 市 に お い て 上 空 で も 地上部にい る よ う な 体 験 と な り 、 居 住 者 た ち は 周 り のにわを共 同 で 管 理 し 育 て て い く こ と で 、 木 漏 れ 日 や新たな風 景 を 獲 得 す る 。 ま た 斜 め に な る 庭 の 部 分 は雨を地上 部 ま で 流 す 役 割 と 、 人 の 視 線 を 遠 方 の 六 甲山へと誘 導 し 、 借 景 と す る こ と が で き る 。

南側市役所からの入り口部分の風景。昼休憩でランチに来るサラリー マンや仕事終わりに立ち寄れるようなジムや図書館などが入る。


庭の初期構造体は初めにで き、立体公園として国営で利 用されるところから始まり、 少しずつ街に必要な機能の床 が出来上がっていく。さらに 庭の後期構造体が共庭都市と 周囲の建物をつなぎ、街に寄 生し、街を支えるようにして 生きていく。 また共庭によって本当の公 共空間が都市に埋め込まれ、 庭を育てた人たちが建築から 出て、各々庭を育て始めるこ とで、共庭の効果はさらに広 範囲にまで波及し、共庭によ る「共」が都市のシステムを トップダウンから住民主体の ボトムアップの構造へと変化 していくことを期待する。


















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