history of my work

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配属当初(2006 年4 月終わり)~半年間 正直に言って活動先に行くことで精一杯であった。具体的に言うと、活動先の動向把握が充分で なく今日や明日に何をすべきか分からなかった。活動先に行くと「今から学校にエイズ予防講習 会に行くから付いて来て」などとったように、とにかく言われたことに付いていく毎日であった。 ただ、その中でも空いた時間にはドミニカのエイズ国内状況を把握し、各種資料からこの疾病に 対する知識を貪欲に吸収することに励んだ。また、パワー・ポイントやワード、エクセルなどの コンピューター技術の習得にも励んだ。これは配属先の所長にプレゼンテーションを行ったり、 エイズ予防教材を作る際に非常に有効となった。とにかく配属先や関係者、そして任地に名前を 覚えてもらおうと思い「Kenji」と大きく書いた名札をつけて活動先に行き、ロゾーの町を歩い た。また、英語日記をつけて配属先職員に読んでもらった。JOCVのことや私自身のこと、毎 日の出来事や体調などを書いた。

生活面では自宅に入居したすぐそばから泥棒に入られ、デジタルカメラや眼鏡が入ったバックパ ック、衣類などが盗難に遭う。配属先職員が警察まで付いてきてくれ、盗難届けをサポートして くれた。しかし、それからも盗難や未遂は続いた。時には居室にて他隊員と歓談している最中に、 窓の外から棒を使って室内の衣類を引っ張り出そうという輩を発見、撃退したこともあった。 睡眠不足となり、朝の出勤が辛いものとなった。 余談ではあるが、盗難にあった眼鏡がしばらくして自宅の窓の縁に返却してあった。人が良い泥 棒に呆れ返ってしまった。

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2006 年9 月 近日中に行われる「エイズのカウンセラー養成講座」に使用する教材の作成を手伝った。具体的 には各種使用教材などの作成補助である。また、この講座には見学者として出席し、勉強させて いただきながらもプロジェクターなどコンピューター機器の設置や会場の設営などを手伝った。 配属先事務所においてはカウンセリングルームを備えながらも快適でない部分もあったことか らその整備を申し入れ、作業にあたった。改善した点は古い建物からくる各部の汚れ、本棚の整 理、そして数年前のポスターの張替え、そしてインターネット環境の整備である。

1.

床の清掃・・・古いガムテープの後や汚れの染み、トイレの電球切れなどが目立った のでカッターの刃を使ったりしながら清掃・整備した。

2.

本棚の整理・・・本棚は全く整理されておらず、市民に配布すべきチラシ類や事務所 が管理すべき資料などは乱雑に積み重なっており、各職員が自分のロッカー代わりに 使っているふしもあった。そこで本棚の整理をした。ここはカウンセリングのために 来所するクライアントも良く見る部分であった。

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ポスターの張替え・・・数年前のポスターが乱雑に貼ってあった。外国からの来賓な ども良く事務所に見えられるので、古びて色褪せたポスター類を新しいものに取り替 えた。見た目も良くなり、活気がある職場に見えるようになった。

4.

インターネットの整備・・・活動当初、配属先所長しか使用できなかったインターネ ット回線をスイッチング=ハブを使い当時使用していた3台のコンピューターを同時 にインターネット回線に接続出来るようにした。ただし、これは配属先所長に許可を 取らずに良かれと思って独断的に行ったことである(彼女は休暇中であった)。ここ ドミニカでは上司の権限は絶対的なものであり何事を行うにも彼女の許可がいるのだ、 ということを私に気付かせてくれた苦い経験でもある。

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2006 年10 月 国内の大規模野外音楽コンサートである「クレオール=ワールド・ミュージック=フェスティバル」 に配属先スタッフとしてエイズ啓発活動に参加。3日間に渡り夜の8時~夜明けまでコンサート、 というカリブ海ならではのイベントである。夜店にはアルコールが並び、警備は充分ではあるも のの、麻薬(マリファナ)等の使用者も目立った。この期間は近隣諸国よりの観光客も多く、ア ルコールや麻薬の使用などによりこの疾病に感染する可能性が一気に高まることから無料のコ ンドームの配布、そしてアンケートを利用したエイズ啓発に、職員や他部署の応援も得て直接に 来客各人に呼びかけた。このアンケートで私はあることに気付いた。それは「多くの男性は女性 の前では本当のことを言わないのでは?」ということである。 具体的には、私が「あなたは複数のパートナーを持っていますか?」と尋ねたところ多くの男性 が「YES」と回答したのに対し、女性担当者が行った同じ問いには「NO」と答えたのである。こ のことから私は「男性のエイズ・エデュケイターの育成」が急務だ、と考えたのである。

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2006 年11 月 活動先から新しいコンピューターの導入を要請された。以前より考えていたが、コンピューター の不足によりせっかくの有能なスタッフの能力や意欲が有効に活かされていないばかりか、それ によるエイズ対策の遅れが目立っていた。そこで活動支援費の有効な利用を先方に打診したので ある。 その他、特にこれといった活動は無いがドミニカ派遣中の日本人国連ボランティア(UNV)と 協力し「折り紙ワークショップ」を現地の美術教師などに向けて行った。これはこのUNV が企 画し、有志のJOCV と共にその内容を設定して行ったものである。半日のワークショップであ ったが概ね好評であり、活動先においても折り紙を機会をみては現地の人々に紹介している。 後半は毎年恒例、12 月1 日の「ワールド=エイズ=デー」に向けて準備を進めた。

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2006 年12 月 配属先は今年のワールド=エイズ=デーにおいて「大規模カウンセリング・テスティング・デー」 を提唱した。配属先には急遽、簡易カウンセリング=ルーム(カーテン等で間仕切りした)が設 置され隣の訪問看護師事務所も開放された。この2箇所においてカウンセリングと採血によるテ ストを行ったのである。目の前の通りではステレオを設置し音楽を流して市民の目を引くと同時 に“本日はエイズ検査無料!”と書かれたチラシを配った(一部の開業医を除き常に無料ではあ るが)。当日は250 名を越すクライアントが来所し、事務所内は大変に混雑した。私は当日、そ こで任地で活動するアメリカン=ピースコーの女性と共に受付と各種物品の販売にあたった。彼 らの多くが終結し、チームワーク良く活動していた。 さて、私はこのエイズ・デーにおいて多くの外国人労働者の来所を期待した。それは今までの配 属先に欠けていたものであった。私は配属先の活動を最大限に評価している。有能で情熱溢れる 所長、そして若く才能の有るスタッフが定時を過ぎても、ときには土曜・日曜日でさえもエイズ の講習会に出掛けて行く。途上国だから、というルーズな感覚はあまり見当らないし、彼女たち もそう呼ばれるのを嫌っている。 しかし、今まで活動先は外国人労働者に対し全く目を向けていなかった。ドミニカ共和国から来 た移民は英語が話せないことから通常の職には就けず、バーや風俗店に勤めている。ハイチから の労働者は教育レベルの低さから過酷な建築現場や低賃金の職を得、中国からの労働者は飲食店 や雑貨店を経営するが英語が理解出来ないために医者にもかかれない。 そこで私はこのような方々に目を向けるよう活動先に提案し、その初めとしてドミニカ共和国か らの女性移民、すなわち風俗店に勤める女性、に対し啓発活動を行う許可を得た。私は活動先に 勤めるスペイン語に堪能な職員と協力してエイズ・デーの宣伝チラシを作った。そしてそれに向 け、そのようなバー(風俗店)を一軒々々尋ねて歩き、彼女たちと直接に話し(お互いつたない 英語ではある)「12月1日に待っているからね。」と伝えた。多くのこの女性は「エイズかあ。 聞いたことがある。」と興味があるように見えた。 当日は多くの人が出入りし、忙しい事務所であったが、その中に彼女たちの姿を見つけた。ドミ ニカ人がほとんどの中で派手な服装や髪型をし、スペイン語で話す彼女たちは目立った。そして、 隅のほうに恥ずかしそうに腰掛けていた。前もって彼女たちが来るかも知れないことは活動先に 知らせておいたのでスペイン語が堪能なカウンセラーが待機しており、スムーズにカウンセリン グと採血を済ませることが出来た。 私は彼女たちが来てくれたことが本当に嬉しかった。そして、彼女たちの一人が帰りに私を見つ け、小さく微笑み手を振ってくれたときに涙がこぼれそうになった。彼女たちの不安や仕事の辛 さを私は思い、そしてなにか安心したような彼女たちの笑顔が嬉しかったのだ。 カウンセラーは私に「KJが来てくれたから今日は来たのよ」と彼女たちが話していたことを私に 教えてくれた。後片付けの際、この話は事務所で話題に上り、「今日のMVP はケンジよ!よく やったね!」と皆で拍手して頂いた。いつもは事務所内でツンとしている所長が、机を片付ける

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私を「待ちなさい。」と手伝ってくれた。この日、何か自分に自信のようなものが生まれた。 なお、このバーを廻る際に各店舗で1本ずつビールを注文した(出来るだけ和んだ雰囲気で話す ため)ので、帰りにはすっかり酔っ払ってしまったのは良い思い出である。

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2007 年1月 時間はかかったが、新しいコンピューターの導入が決定した。活動先には能力と意欲を兼ねそろ えたスタッフが揃っているが、コンピューターの不足からその業務は滞りがちであった。そこで 活動支援費を有効に使用させていただき、この“順番待ち”の状況を変えた。新しいコンピュー ターは活動先でフル稼働し、エイズ啓発教材の作成から活動の評価、そして国内外で行われる会 議、ワークショップまで幅広く使われている。

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2007 年2月 配属先のスタッフとして国内の祭典「ドミニカ・カーニバル」にてエイズ啓発活動を行った。内 容は“ABC 作戦”、つまり”Abstain”、”Be Faithful”、”Condom”と書かれたお揃いのT シャツを 着て、踊りながら街中を練り歩き無料のコンドームを配布するというものである。共に汗をかい て踊り、疲れ果てることで活動先と私との絆は一層強くなったばかりではなく、顔見知りの中国 からの労働者や町の人などから「見たよ!楽しそうだったね!」と声を掛けられた。アジア人が 少ないこの国においては、現地の人達と共に汗をかくことで私たちへの偏見除去にほんの少しは 役にたったのでは、と考えている。

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2007 年3 月 エイズ=カウンセラー養成講座(VCT Counselor Training)に参加、修了。これはかねてより私が 興味を持っていたもので、配属先所長に直訴して参加が可能となった。むろんドミニカでカウン セラーとしてその業務を担当することは無いか、と思われるが(カウンセリングにおいては言葉 が持つ意味は大きい)、1週間の間を共に過ごした同期の受講生には名前も覚えていただき、ま たさまざまな場面で共に行動する機会がある。講師は国内のエイズ対策に影響力を持つ各地のベ テラン看護師たちであり、私の将来のプランなどについて意見を請う良き相談相手を増やすこと が出来た。

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2007 年 4 月 仮設の野外劇場にて、現地劇団員によるエイズをテーマにした演劇が行われた。ステージの周 りには女学生から主婦まで多くの女性が集まっていた。これを男性陣が遠巻きにして見ている、 という状況であった。私の配属された町ロゾーでは、あまりカップルで街中を歩いている姿を見 かけない。男性、女性でそれぞれ連れ立って歩いている。以前「どうしてドミニカの若者はデー トをしないのか」を配属先職員に尋ねたところ、 「That is Uncomfortable(はしたない行為である からだ)」という返答であった。女性の家に男性が通うか、もしくは人気の無い場所で逢うこと が善しとされるという事であった。 青少年育成課のスタッフと協働し、観客に向けて無料コンドームの配布を行った。

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2007 年 5 月 いままでの活動形態は、何かしらの関連イベントがあるときに参加する、もしくは文字通り「付 いていく」というものであった。通常は配属先事務所にて雑用や自己啓発のためのエイズ分野の 勉強をしていた。時には小さな充実感を得られることもあったが、その多くは時間を持て余すも のであった。そのため、私はこれからの活動を少しでも充実できるように、積極的に配属先や市 民に働きかけようなテーマを自ら絞り込んだ。 テーマは二つ。一つはドミニカに暮らす外国人に対するエイズ対策である。個人で企画した活 動は先のワールド・エイズ・デーにおけるスペイン語系住民に対する VCT 促進が唯一であった が、その際に在ドミニカの外国人に対するエイズ啓発はニーズがあると考えた。また、配属先に おいては役割分担が鮮明に区別されており、カウンセラー、計画の評価と運営、母子保健専門家、 看護師などスペシャリスト集団であるが故に穴も多く、この分野は彼らがコミットしていない部 分であった。そこで HIV/AIDS におけるこの一つの Vulnerable な集団(=外国語系住民)をター ゲットにした活動を始めることにした。プロフェッショナルな成果は残せないであろうが、その 第一歩としてこの分野にて動き始めることにしたのである。そのために様々な地域の多くの資料 を読み込んで、私に出来ることを研究・模索した。 第二には、以前より気になっていた成人男性に対してのエイズ対策である。私自身の経験も踏ま え、社会人として暮らす一般の男性層にエイズ啓発を行う必要がある、と考えた。私自身も JOCV に応募するまで HIV/AIDS には関心が無かったし、それまで地域から情報をもらったことも無か った。知識がほとんど無い中で保健所に検査を受けにいったのであるが、その時の恐怖にも似た 感覚は忘れようがない。 それは、日本に限ったことではないであろう。当時、私は偶然にもエイズに興味を持ったので自 発的に検査を受けに行ったのであるが、何の情報を得ることなくリスキーな行動を取り続けてい る多くの社会人男性にこそエイズを啓発する必要があると考えたのである。 この期間は、インターネットや配属先においてある文献を片っ端から読みこなしていった。

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2007 年 6 月 広域研修の申請を JOCV 事務所に提出。 「社会人男性に向けてのエイズ啓発をどう行ってくのか」 を近隣諸国の青年海外協力隊員とその同僚をドミニカに招き、開発していく場を持とうと考えた。 私は「社会人は日常的に仕事に追われているために、自身の健康に関して関心が低い人が多い」 と考えている。また、女性と違って妊娠の機会が無いために改めて自分の健康と向かい合う機会 が少ない。もちろん会社の健康診断などの機会もあるが、いわゆるセクシャル・ヘルスに関して はどうであろうか。 規模はそこまで大きくないものの、いわゆる国際会議である。この会議の企画内容を配属先と協 議、正式な書類を作り各機関に提出した。

HIV/AIDS における新規感染者数の減少のための開催型広域研修 「一般成人男性層における HIV/AIDS 予防啓発活動」について

青年海外協力隊

平成 17 年度 3 次隊

ドミニカ国

エイズ対策

KJ

2005 年度末の統計によると、世界では約 4,000 万人の方々が HIV と共に生きており1年間 のうちに 400 万の新規感染者が、そして 280 万人がエイズにより命を失っている。 (確かに 1990 年代に比べ新規感染者数は減少しているものの、いくつかの国では依然とし て感染者・患者はふえつづけている) 現在カリブ海地域では 25 万人が、そして日本では1万人を超える人々が HIV/AIDS と共に 暮らしており、その多くを男性が占めている。ここカリブ海沿岸地域ではこの疾病への主 な感染経路として異性間での無防備な性交渉があげられる。この背景には深刻な貧困、失 業、そしてジェンダーが絡んでいるとみられている。また、この地域では男性同性間にお ける無防備な性交も主な HIV 感染経路として上げられ HIV 感染者総数の約 12%がこの経路 にて感染したと見られている。しかしながら、いわゆる”ホモフォビア”やソドミー法と 呼ばれる法律が残っている国もあり異性間以外での恋愛を極端に嫌悪、または刑罰の対象 とする風潮がこの地域にはある。これによる HIV 感染者に対する偏見・差別は依然として 根強いものがある。

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ジャマイカでは現在 11,000 人を超える方々が HIV/AIDS と生きておりその感染経路のうち 60%は無防備な性行為によって感染したとみられる。また、その中の男性については 12% がホモ=セクシャル、またはバイ=セクシャルであり 40%の者は“不明”とされているが、 その 40%近くの者がいわゆる MSM(男性と性行為をする男性)であろうことは推察され る。(以上ジャマイカ保健省公式ウェブサイトより)ドミニカにおいても HIV 感染者数は 300 人弱と少ないものの男性の感染者が多くジャマイカと同様な結果が得られ、私の活動 先である National AIDS Response Programme や NGO などの積極的な活動、そしてここが佐 渡島ほどの小さな島国であるにも関わらず新たに HIV に感染する者は減る様子が無い(後 述)。 日本においても HIV 感染者の多くを男性が占める。その要因として同様に知識不足からく る無防備な性交があげられる。いうまでも無く多くの成人男性は日中には労働の場に従事 していると共に、妊産婦検診や学校などリプロダクティブ=ヘルスや性について専門知識を 養う場も限られている。また日本を含めカリブ沿岸では 10~20 代前半の若い女性層の HIV 感染率も高くなってきており、これら青少年層と共に一般の成人男性層への HIV/AIDS に対 する予防啓発をなくしてはエイズの脅威は衰えないと考えられる。いわゆる援助交際や個 人が複数のパートナーを持つという風潮は主として男性が主導するものだからであり、ま た、この地域の特徴である性産業の隆興やクラック/コカインなどの麻薬、タトゥーといっ た要因がエイズの広まりに非常に大きく関わっていることを広く成人の男性に理解しても らう必要がある。 そして今回、その効果の大きさから特にこの一般成人男性層に対してエイズ啓発活動を行 う重要性を痛烈に感じ、今回の研修をここに企画、申請するものである。 狙いとしては、 1、現状において社会的に脆弱といわれる女性や子ども、青少年に限られているエイズ予 防啓発活動を一般成人男性層にまで広げることでこれらから発生する新規 HIV 感染者の減 少を狙う。いわゆるマルチ=パートナーや援助交際、そして麻薬使用が活発な地域において、 これに関わる成人男性の行動変容を狙うものである。 2、上記の理由から同性間の恋愛や性交渉について地下で活動している、もしくはその予 備軍といった方たちが他の要因に干渉されること無くそして快適にこの疾病に関して学ぶ 場を提供するものである。言い換えれば、成人男性層に“隠れているであろう”同性愛者 や MSM(男性と性交渉を持つ男性)、またその予備軍に向け HIV/AIDS 予防啓発について彼 らが加わり易い場を設けるものである。 近年のエイズに対しての関心の高まりによってカリブ海沿岸諸国では政府や民間組織、そ の他国家単位での予防啓発活動が精力的に行われている。そして ARV など医療の進歩はエ

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イズ感染者・患者の QOL や寿命、また母子感染まで大きな影響を与えた。 しかしながら依然として新規感染者数はここドミニカや日本を含め多くの国で増え続けて おり、これは今までの啓発活動のさらなる改善の必要性を示している。すなわち、このま ま女性や子ども達、青少年、同性愛者、MSM、IDU(静脈注射を使う麻薬使用者)などの キー=パーソンだけに焦点を絞っていては現状の打破が難しいことを示しているのである。 我々は今までの経験を活かしこれらのグループにこのまま着実に訴えかけていくと共に、 “一般成人男性”が HIV/AIDS に関して非常に脆弱なグループであること、そして近い将来 それが青少年に大きな影響を与えるということをもっと真摯に考えねばならない。 私はこの研修が参加各国のエイズ啓発に大きな影響を与えるばかりではなく、参加者が近 い将来この経験を活かし日本はもとより世界各国でこの疾病の対策やそれぞれの専門分野 に有効に役立ててくださるものであると確信している。

1, Need to Enlighten To The Adult Male about HIV/AIDS. 一般成人男性層へのエイズ啓発の必要性について

In the Commonwealth of Dominica, there are over 300 and in Japan about 11,000 people living with HIV/AIDS. And the number of PLWHA keeps increasing rapidly in each country. (Table 1, Table 2). In these countries, the largest numbers of people who are living with HIV are the men. In Dominica the ratio of the infected men is 71.1 %( 1987-2003). And in Japan it is 66.0% (1987-2005) -Table3, Table4-. That ratio is very high and we should inquire further into this point. 現在ドミニカ国では 300 人を超える人々が、そして日本では 11,000 人を超える人々が HIV/AIDS と共に生きており、両国 共に感染者数は増え続けている。 (Table1、Table2)。これらの国ではその多くを男性が占める。ドミニカでは HIV 感染 者・AIDS 患者の 71.1%を、そして日本人では HIV 感染者の 66.0%を男性が占める。この数値は非常に高いものである。 (Table3、Table4)

Table 1

500 400 300 200 100 0

20 10

MALE

FEMALE

UNKNOWN

14

20 05

20 03

20 01

9 19 9

7 19 9

5 19 9

3 19 9

1 19 9

9 19 8

7

0 19 8

(Total)

30

Cum

(Cum)

People living with HIV /AIDS in DOMINICA


Table 2

6000 5000 4000 3000 2000 1000 0

800 (Total)

600 400 200

Male

Female

20 05

20 03

20 01

19 99

19 97

19 95

19 93

19 91

19 89

19 87

0

(Cum)

HIV Positives in Japan

Culmulate

Fortunately we can get ARVs for free and that makes PLWHAs’ life expand and strengthen their quality of life. However, in year 2005, 16 Dominicans and 832 people in Japan diagnosed were infected with HIV, in spite of the tremendous work done to enlighten people for the prevention of HIV/AIDS by the government and the other institution such the NGOs. 幸運にも我々はこの両国において ARV を無料にて入手することが出来、そしてそれは PLWHA (エイズと共に生きる人々) の寿命を延ばし、その QOL を飛躍的に向上させた。しかし 2005 年度にはドミニカでは 16 名の方々が、そして日本では 832 名の人々が政府や民間のエイズ啓発における尽力にも関わらず HIV に感染したと診断された Total HIV Positives By Sex In Japan 1987-2005

Total HIV Positives By Sex In Dominica 1987-2003

Japanese Male

1.4% 27.4%

16.2%

Male Female 71.1%

Japanese Female

10.6% 7.2%

Unknown

Table 3

Table 4

66.0%

Foreigners Male Foreigners Female

In terms of exposure categories, many HIV positives got HIV from the same genders. The numbers of homo-sexual or bi-sexual cases are above the hetero-sexual cases in each country. There are some differences in the way of statistics in the two countries, however, we imagine so easily that many people infected with HIV by the unprotected sexual intercourse between the same sex (Table 4, Table5). ドミニカと日本では共通点がある。感染経路別に見てみると同性間での感染が比較的多く、ホモ=セクシャルまたはバイ =セクシャルの方々の感染者の占める割合はヘテロ=セクシャルのそれを上回っている。統計手法に若干の違いこそあれ、 同性間での無防備な性交渉がその大きな要因になっていることは容易に想像できる。(Table5、Table6)

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AIDS cases by exposure category Dominica(1987-1999)

6.0%

HIV/AIDS cases by exposere category Japanese(1987-2005)

No risk

0.7% 13.4%

Hetero Sexual 0.4% 2.2% 0.4%

Homo sexual Hetero sexual

39.6% 40.3%

13.6%

Homo Sexual 36.9%

IDU Complex

Bi sexual

Children

46.6%

Unknown

Children

Table 4

Table 5

Moreover in terms of the age, the 25 to 44 age group holds a majority in each country. In Dominica 70.3% and in Japan 65.0% of this male age group holds the main place in the HIV Positives. (Table6, Table7) さらに年齢別に見てみると、男性では25-44歳の年齢層が占める割合が高く、ドミニカでは 69.7%、日本では 66.0% をこのグループが占める。 (Table7、Table8)

HIV Positives By Age In Japan -Male- 1987-2005

HIV Positives By Age In Dominica -Male- 1987-2003 7.3%

1.0% 4.2% 10.4%

Table 6

29.7%

6.8%

40.6%

Under 15 15-24 25-34 35-44 45-54 55Unknown

24.8% 13.4%

41.2%

Table 7

10.4%

9.6% 0.4% 0.2%

Under15 15-24 25-34 35-44 45-54 55 unknown

Accordingly, I have been thought it is very significant that we will approach the adult generations’ men more closely. したがって、この年齢層の男性に対し同性間の性交渉を含めて HIV 感染の予防を積極的に啓発していくことは今、まさ に欠かすことの出来ないものであることがわかる。

2, Benefit of the Workshop. 研修の目的

As stated above, the larger part of HIV positives are men adult generations’ in these countries. And many of them got HIV from unprotected sexual intercourse because of their lack of knowledge on how people get infected with HIV/AIDS. Nevertheless the lack of knowledge about this critical disease has an effect on the vulnerable groups who are the children, youth, female, non-hetero-sexual, IDUs and sex-workers. Indeed in Dominica the number of female HIV positives is above the males between 15 and 24years old age group. And in terms of hetero sexual intercourse exposure, the number of female HIV

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Positives is above the males in the same age group in Japan. If this situation continues, so many young women would be exposed more possibly of HIV/AIDS infection. Needless to say, almost all cases of sexual intercourse are lead by men such as the multiple partners and compensated dating (Table 8). 上に述べたように、両国の HIV 感染者・AIDS 患者において 25-44 歳の成人男性の占める割合は大きい。そして彼らはそ の知識の不足から無防備な性交渉を経て HIV に感染している。 言うまでも無く彼らの知識の不足は女性や子ども、青少年、そして麻薬使用者や売春婦・夫の HIV 感染に大きな影響を 与える。実際にドミニカの HIV 感染者において 15-24 歳の女性の間では男性よりも女性の占める割合が大きく、日本でも 異性間の性交渉による感染という視点でみればこの年齢層においては女性の占める割合が大きい。

Dominica (The number of HIV Positives)

Male

15-24years old (1987-2003) Total (1987-2003) Japan (HIV Positives by hetero-sexual intercourse) 15-24years old (1987-2005) Total (1987-2005 Japanese and Foreigners)

Female 13

17

197

75

Male

Female 90

111

2153

1175 (Table 8)

And it seems many MSMs and their prospective are in underground in each country. Because they would be discriminated against by the general citizens if they disclosed their sexualities. And even if there is some recognized places such as gay-town, no matter how we tell only these communities, we won’t reduce the number of newly infected people in the country. Consequently we should better enlighten the men who are hidden and individually MSMs (who are not participating in the gay community so actively) and their prospective at the common place for the sake of their convenience. And also this study will be done for the adult men who have sexual intercourse with many partners and solicit someone as a commercial sex worker and engage in sexual intercourse. 現在の状況が続くようであれば近い将来、多くの若い女性が HIV に感染することは十分に考えられる。言うまでもなく 男女関係の場において主導権を握っているのはたいてい男性であり、援助交際やマルチ=パートナーといった風潮が蔓延 している日本やカリブ地域においてはこれに関わるような男性へのエイズ啓発は欠かすことの出来ないものである。 またこれらの地域では同性愛また同性間の性行為において差別感情が強いため、多くのそのような男性が社会に公にす ることなく“隠れて”社会生活を営んでいると見られる。そして同様に数人のパートナーを持つ男性や援助交際を行う 男性、性産業を利用したり麻薬を使用する者とはこれを公にはせずに社会に溶け込んでいるものである。

Generally we suppose it is kind of difficult to practice health promotion for the adult generation particularly for the employed businessmen. Especially in the city which is made up mainly with

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privately-owned shops. These are some reasons. At first, there is not enough time to focus their attention on the HIV/AIDS, STIs and so on for engaged businessperson. It is quite how women are participating in community affairs these days, though the larger number of adult men participates in their business than women in general still, for the engaged business men, it is an unworkable idea to spend their occupied business hours for no matter of concern. 通常、我々は成人の男性(特に労働に従事している男性)に健康啓発を行うことは難しいと考える。 第一に日頃それぞれの仕事に従事し忙しい者にとってエイズや性感染症について考える時間はあまりないであろうし、 いくら女性の社会進出が進んだといっても男性の就業率は依然として女性を上回り彼らにとって大切な就業時間を“身 に覚えのない”これらの疾病の対策に割くことは考えにくい。

Secondly, there is no particular chance to let them know how to protect themselves from these diseases for engaged businessmen. In these countries owing to emphasizing health promotions for the pregnant women and free ARVs make the number of mother to child transmitted cases decrease so rapidly. And they are putting a great deal of effort into the behavior change control for the younger generation in the school, youth groups and so on. 第二に、一般の成人男性にとってこれらの疾病について学ぶ機会がないからである。これらの地域では積極的なヘルス= プロモーションを妊産婦に行い、また ARV が無料で入手できることにより母子感染のケースは激減した。また学校や ユース=グループなどの場で若い世代にエイズの予防教育を行うことでこれらの行動変容を狙う活動が根気強くおこな われている。しかし、職場に限って言えばそのような機会はあるだろうか。

I have considered and asked about the subject-matter-expertise such as the international NGOs and so on. However I could not find a good way of enlighten them. That is why I am going to hold a conference and discuss it with the JOCVs in the other Caribbean countries and their co-workers. 上記の理由から、成人男性に健康教育を行うことは非常に困難である。そして私はこれまで多くの活動家に意見を請う てきた。また、ジャマイカのエイズ対策隊員や各国同期の他職種の隊員とも連絡を密に取ってこの問題にどう取り組む かを考えてきた。

Finally, I think this problem includes not only HIV/AIDS and STIs, but also Diabetes, Hypertension, and the other lifestyle related disease. It is not so easy to make a person wake up and change their behavior, especially the adult generation who have a lot of experience in their life. I expect that you will give some good ideas for the participants and there will be granted one of the solutions by discussion about how to enlighten and reduce the new incidents of the adult men. This study might be useful for human wellness and curving down the people who get HIV in the future.

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結果として成人男性に的を絞った活動は非常に困難であることが分かった。しかしながらタイ国では農村にて農閑期に 成人男性を主としたエイズ啓発活動が行われているといった数少ない事例があると同時に、成人男性に関して健康啓発 を行う必要があるのは何も HIV/AIDS に限ったものでは無いことに気が付いた。それは例えば糖尿病や高血圧などの生 活習慣病における栄養士、マラリアなどの感染症対策、そしてリプロダクティブ=ヘルスなどの助産師や看護師である。 今回、カリブ/ラテン・アメリカ地域のエイズ対策隊員と共にこれら保健医療・衛生・社会福祉に関連した活動を行う隊 員とその同僚を招き、一般成人男性層に対しどうやってより良い健康を啓発していくか、活発な議論を行うものである。 それにより各国で行われている女性や子ども、青少年や売春婦・夫、麻薬使用者、同性愛者といった対象だけに偏りが ちな現在のエイズ対策に一石を投じると共に、メインターゲットとなるべきこの成人男性層に改めてこの疾病を啓発す ることで大幅な新規感染者の減少を狙うものである。

19


2007 年 7 月 在ドミニカ外国人に対してエイズ啓発を始めることとなった。以前、中国系労働者と話をしてい る際に、彼らがその言葉の壁から病院に行くことすら叶わない、ということを聞いたことがきっ かけとなった。この国にはハイチやドミニカ共和国、そして中国からの労働者をはじめアメリカ /カナダ系大学のサテライト・キャンパスも 2 箇所ある。この学校には国籍を問わない中東など からの学生も多く在籍している。特に前者に至っては片言の英語が理解出来れば良い方である、 といったような言語のコミュニケーション・レベルである。 そのため、HIV/AIDS を理解してもらうためには英語ではなく、彼らの言語で伝える必要があっ た。また、文字ではなく図を豊富に使ったマテリアルによるエイズ啓発は有効と思われた。作成 したエイズ教材は HIV/AIDS の基礎知識を英語・中国語・スペイン語・後にハイチ語も加え、ま た、図を豊富に取り入れて作成/配布することとなった。

20


2007 年 8 月 この時期より私は外国人におけるエイズ対策に集中的に取り組んでいるスタッフとして扱われ るようになった。地域における小さなエイズ予防講習会などには声を掛けられなくなったのであ る。少し寂しくも感じたが、役割分担がかなり明確なこの配属先においては当然なのであろう。 任期も残り半年あまりとなり、中だるみを感じた時期である。 そのような時期にアメリカ/アリゾナ大学大学院の学生がジェンダー研究のために配属先にイン ターンとして配属された。配属機関は 6 ヶ月である。近隣の米領ヴァージン諸島出身の黒人女 性であったが、それでもドミニカの生活には馴染めずに苦しんでいたようである。近隣住民から のバッシングや様々な問題から、生活面での不満をもらすことが多かった。しかしながら、自分 をフェミニストだと呼ぶ彼女はとても強く、引越しなどを即座に実行して環境を整え、自分の学 業については妥協しなかった。近い将来は一般企業に入り第一線のビジネス・ウーマンとして活 躍すると語っていたその姿から、アメリカの誇りや強さ、セルフ・エスティームなど多くのこと を学んだ。 自身の活動としては広域研修の企画を詰め、そして外国人におけるエイズ対策について引き続き 模索した。

21


2007 年 9 月 ユース世代においての大きなエイズ啓発討論会が行われたので出席した。会場では映像の保存や 会場設営などのサポートを担当した。去年も同様の討論会があり、今年は青少年育成課や婦人局 の協力を得、拘置所所長や以前に収監されていた方なども出席して麻薬や暴力、犯罪について青 少年に語っていた。HIV/AIDS に関してはワークショップ形式で参加型のエイズ予防講習会を行 い、ゲーム等のアクティビティーに高校生達と共に参加した。

企画した広域研修は参加人数が足りず、開催を断念した。近隣諸国から保健・医療・社会福祉・ 青少年育成分野などで活動する隊員を幅広く募ったのであるが、たった 5 名の募集にも関わらず 定員に満たなかった。アフリカ諸国では HIV/AIDS の分野において活発な広域研修が開催され、 各隊員の知識/技術の向上や地域への技術移転に大きな効果があると聞いている。配属先所長か らは、今回は非常に残念に思うこと、また期間を空けての再募集を打診されたが JOCV 規定によ り私の任期中に開催する可能性は無いことを告げた。もう少し早く企画を練っておけばよかった、 と後悔するものの、得られたものは大きかった。 私のテーマの一つである「社会人男性に向けてのエイズ予防啓発」については、暗礁に乗り上げ た。これについては前例もあまり無く、個人や一つの事務所の努力で解決するものではない。そ こで「外国人住民に対するエイズ啓発活動」に的を絞り、活動を続けていくことになった。

22


2007 年 10 月 任地に暮らす外国人に対して、HIV/AIDS 領域における調査を行った。彼らの間にある共通した ・

・ ・

脆弱なポイントを見つけ、啓発していくきっかけを作ることが狙いである。配属先はこの「外国 人対策」の必要性を感じながらも進めてはいなかった。方法は各言語によるアンケート調査を実 施し、また作成したエイズ予防パンフレットと無料コンドームを配布するという形式をとった。 アンケート採取に至っては回答者の方々からいくつかの質問も上がった。また、回答が済んだ 方々が HIV/AIDS について大いに話し合う姿も散見された。 アンケートについては平成8年度あたりに行われた国立国際医療センターのチームが行った「来 日外国人のHIV/STD感染状況、行動及び予防・支援対策に関する研究(木原正博/岩城エリ ーザ氏ら)」を参考とした。アンケートはこの研究内容を基とし、英文の質問表を作り、それを 英文→中国語/スペイン語/ハイチ語に翻訳していただいた。翻訳は中国人整骨医院院長、配属先 スタッフ、そしてハイチ人セキュリティ・スタッフに依頼した。いずれも英語と該当現地語が堪 能な者である。

以下は配属先提出用の書類に日本語の注釈を加えたものである。

中国人労働者間における HIV/AIDS の調査

HIV/AIDS and STIs pilot survey on the people from China in Roseau

In the Commonwealth of Dominica, there are many foreigners living. They are from the other Caribbean countries as well as the United States of America, Latin America, Asia, Middle East and Africa. It is important for them to learn how to prevent themselves from HIV/AIDS and the other Sexual Transmitted Infections. However, unlike the general population that speaks English fluently, many foreigners face a major problem language. As a result, they have been excluded from beneficial information such as HIV/AIDS prevention education, sessions, materials and so on. 任地であるドミニカ国首都ロゾーには数多くの外国人が暮らしている。彼らは近隣のカリブ諸国だけでなくアメリカ合 衆国やラテン・アメリカ、アジアや中近東、アフリカなど世界各地の出身である。彼らが性感染症(STI)や HIV の予防 知識を得ることは重要なことであるが、言葉の違いからこれら重要な情報から STI や HIV の予防教育や講習会、そして チラシやパンフレットなどの教材から遠ざかっている。

23


Conclusion 結論 This survey reveals that many Chinese in Dominica don’t know much about HIV/AIDS and STIs, and they would like to get this information more. Also, there is some fear against HIV/AIDS among them. In the Commonwealth of Dominica, the Chinese community is small. However, we should better take the serious HIV and AIDS spread in their home country into our consideration. We should make them get involve share the information against HIV/AIDS, Sexual Transmitted Infections and eliminate all of the Stigma&Discrimination. この調査でドミニカに暮らす中国人の間では HIV/AIDS に関する知識は十分とは言えないことが分かった。また、エイズ に関していささかの恐怖心があることも分かった。ドミニカでは、中国人コミュニティーの規模は決して大きくはない。 しかしながら彼らの出身国においては HIV/AIDS は爆発的な広がりを見せており、これを考えれば、彼らに対して STI も 含めた HIV/AIDS や差別/偏見の除去に力を入れるべきであろう。

Facts 結果 UNAIDS は 2006 年に以下の分析をしている。

UNAIDS indicated on the “Global HIV/AIDS Update 2006” MIGRATION AND HIV RISK IN CHINA

中国での移民とHIV感染の関係

中国経済の発展は大規模な人口移動を生み出した。多くの場合、男性移民は買春行為を行うようになり、彼ら だけでなく彼らのパートナーでさえも HIV や STI の感染リスクに曝されるようになった。中国でのこれら感染症の 広がりは、1 億 2 千から 1 億 5 千万とも見積もられる労働移民によってもたらされている。たとえば Sichuan 省の Suining と Luzhou では売春婦・夫(CSW)のほとんどの顧客は移動労働者であった。最近 6 ヶ月の間で平均 11 回

の接触回数があり、その多くでコンドームは使用されなかった。36%のみが最近の性交時にコンドームを使用し たと答えている(2006 年度調査)。北京・南京・上海で 2002 年に行われた調査では 10 人に一人の移動労働者が CSW と関係を持ったと答えている。しかし無論、断定は避けるべきである。多くの移動労働者はパートナーと共

に移動を行っており、Zhejiang 省の首都である Hangzhou で行われた調査において中国人陽性者は発見さなかった。 CSW と接触するとは考えにくい。 これには様々な理由が考えられる. 中国人移動労働者の半数近くは女性であり、

また、1/3 のこれら労働者はパートナーと共に移動を行っているという調査結果もある。そして、多くの移動労 働者はカジュアルなセックスに関しては保守的であり、これを良しとしない生活態度を持っていると見られる。

There is considerable speculation about the possible impact of large-scale migration and population movements on the evolution of China’s epidemic. It is widely assumed that male migrants are more likely to visit sex workers, thus putting themselves and their other sexual partners at risk of HIV and sexually transmitted infections. Assumptions that migrants will feature strongly in China’s epidemic are based on the large number of migrants (an estimated 120–150 million), evidence of the

24


association between migration and HIV from studies of migrants elsewhere (especially in southern Africa) (Lurie et al., 1997; Lurie et al., 2003) and HIV surveillance among migrants in some cities (Hesketh et al., 2006). In China, some evidence seems to support such expectations. In Suining and Luzhou (Sichuan province), for example, the majority of clients of sex workers are migrant workers, who buy sex often (on average 11 times in the previous six months) and tend not to use condoms regularly (only 36% used one the last time they paid for sex) (Wan and Zhang, 2006). In an earlier (2002)

study in

Beijing, Nanjing and Shanghai, one in ten migrant men said they had paid for sex at some stage (Wang et al., 2006). But generalizations should be avoided. The situation differs across the country, especially in those parts of China where significant numbers of migrants are moving with their partners. Thus, the first population-based study amon workers and migrants in Zhejiang province’s capital, Hangzhou, found no HIV infections g Chinese. There are several possible reasons for such findings. Up to half of the migrant workers in China are female and are unlikely to engage in paid sex. In parts of the country, a large proportion of migrants move with their partners —as one third of the migrant workers in the Hangzhou study had done. Many migrants also seem to maintain relatively conservative, traditional attitudes toward casual sex (Hesketh et al., 2006).

China has an estimated 840,000 HIV cases, of which 80,000 are AIDS patients. Since 1985, more than 150,000 people have died. China's HIV prevalence rate remains low, at 0.1 per cent. However, new infections are increasing at a striking annual rate of 30 per cent. The male to female ratio of HIV infections has fallen from 9:1 in 1991 to 4:1 in 2001. Authorities believe the total number of HIV/AIDS cases could swell to between 10 and 15 million in six years if comprehensive and proactive prevention measures are not taken (2004). 中国の HIV 感染者は 84 万人で、そのうち 8 万人は AIDS 患者とみられる。1985 年以来、15 万人が亡くなっている。感染 率は 0,1%程度と高くはない。しかし、一年毎の感染者数伸び率は前年度対比 30%を超えている。男女別でみると、1991 年には 9 対 1 であったこの比率が 2001 年には 4:1 となり、女性の割合が多くなってきている。研究者は必要で有効な予 防対策がとられなければ、この 6 年間で HIV 感染者/AIDS 患者を合計すると 1 千~1 千 5 百万人に膨れ上がるとしている (2004 年)。

Basically, when the Chinese people migrate to Dominica for work, they are required to take a mandatory test to ensure that they don’t have any communicable disease such as tuberculosis. Sometimes they say “I have never heard of AIDS” or “I don’t need to get health information more because I took the medical exam when I came into this island”.

25


Only 13 of the 19 people responded these questionnaires. 13 people between 20 to 45 years old, 7 male and 6 female checked the investigate sheets. 6 people, who look older, rejected it. The panelists are chosen at random from the town and on anonymity. Questionnaires are translated by a Chinese medical worker (bonesetter who knows English well) in English to Chinese Simple. 基本的には中国人労働者がドミニカに入国する場合には、結核などの感染症の保持がないことの証明が必要である。今 回の調査においては、「エイズなんて聞いたことが無い」「入国するときに全部調べたから健康だよ」という声をしばし ば聞いた。そして、19 人のうち 13 人から回答が得られた。回答者は 10-45 歳であり、7 名の女性と 6 名の男性であっ た。他の 6 名は概ね 50 歳以上の熟年/高齢者であったが、回答は得られなかった。これら回答者は無作為に町の中の商 店から選ばれた。そして質問用紙は中国人接骨医院の院長(英語が堪能)に英語→中国語による添削をお願いした。

correctry racio(%)

100 100 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

76.9

76.9

92.3

92.3

92.3

100

76.9 76.9 69.2

69.2

61.5 53.8

53.8

46.1 38.4 30.7

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

Questionair No.

.

質問表: 1.爱滋病是 HIV 病毒造成的. ( 是

Q1-11

不是 )

AIDS は HIV 感染の結果である 2. 现在没有药物能延长乙感染病毒的病人的生命. ( 是

不是 )

感染した人の寿命を延ばす薬は無い 3. 没有感染 HIV 病毒的病人看上去很健康. ( 是

不是 )

健康そうに見える人は HIV 感染者ではない 4. 当病人情况好转时, HIV 和 AIDS 会痊愈. ( 是

不是 )

HIV/AIDS は健康状態が良くなれば治る 5. 当病人感染初期, 我们能检查到 HIV 病毒. ( 是

不是 )

HIV 感染したら直ぐに血液検査で判明する 6. 感染爱滋病病毒的孕妇会传染给她宝宝. ( 是

不是 )

HIV は妊娠時にも胎児に感染しない 7. 当吸毒时共用针头会传播爱滋病病毒.( 是

不是 )

注射針の共有は HIV 感染を広げる 8. 当与己经感染爱滋病病毒的人进行性交时, 也会感染艾滋病病毒.( 是

26

不是 )


HIV 感染者の血液が体内に入ると新たに感染する可能性がある。

9. 当人们有其其他的性传播疾病时, 会更容易感染爱滋病病毒.( 是

不是 )

STI に感染していると HIV に感染する可能性が高まる 10. 淋病是性传播疾病的一种.( 是

不是 )

淋病は STI の一種である 11. 某种的疱疹是性传播疾病的一种.( 是

不是 )

ヘルペスは STI の一種である 12.沙眼衣原体是性传播疾病的一种.( 是

不是 )

クラミジアは STI の一種である 13. 梅毒是性传播疾病的一种.( 是

不是 )

梅毒は STI の一種である 14. 人们因为被蚊子咬而得艾滋病.( 是

不是 )

HIV は蚊が媒介する 15. 人们因为共用食物而得艾滋病.( 是

不是 )

料理を分け合うことで HIV に感染する 16. 人们因为共用毛巾而得艾滋病.( 是

不是 )

タオルを共有することで HIV に感染する 17. 人们因为咳嗽,打喷嚏而得艾滋病.( 是

不是 )

咳や鼻水で HIV に感染する 18. 人们因为握手而得艾滋病.( 是

不是 )

握手で HIV に感染する

19

19-A

19-B

19-C

20

21

22

Yes

5

3

2

6

3

11

No

5

3

7

4

5

1

3

3

Not Sure

2

No Check

3

3

Total

13

13

13

2

1

13

13

質問表 Q19-22 19. 你己经有过性交或者付费性交吗? ( 是

● 是否经常?

(

● 你是否一直使用避孕套? .( 是

不是 ) 売買春を行った経験がありますか?

) 頻度を教えてください

不是 ) その時、コンドームを使用しますか?

● 你是否每次与你的性伴侣进行性交的时,都使用避孕套? ( 是 あなたのパートナーとも毎回使用していますか?

27

不是 )


20. 你是否知道 HIV 测试是在国立医院测试的, 而且是免费和保蜜的?( 是

不是 )

HIV テストが公立病院で無料/秘密保持で行われていることを知っていますか? 21. 如果发现你的 HIV 测试是阳性, 你会被驱逐.( 是

不是 )

外国人 HIV 感染者は国外に強制退去させられる 22. 你想知道更多关于 HIV/AIDS 和性传播疾病的信息吗? ( 是

不是)

HIV/AIDS や STI についてもっと知りたいですか?

1.

KNOWLEDGE…To tell the above, 6 out of 19 people have never heard about HIV/AIDS and 5 out of the 13 people didn’t distinguish HIV from AIDS. They consider that the AIDS is human killing sickness (Q: No.1-4). They believe that HIV is easy to detect and they are also not aware that there is treatment to prolong a person’ life once someone is infected with the disease. It means that they fear “AIDS” but don’t know so much about HIV and AIDS. In terms of infection (14-18), there are some misunderstandings. Only 5 people checked “NO” in all these questions below. 2 out of the 6 female consider that a pregnant woman who has HIV don’t pass the virus to her baby. The most alarming finding is that 6 out of the 13 people believe “people get HIV by mosquito bite” such as malaria.

中国人労働者の HIV/AIDS に関する知識について・・・上述のように、19 人のうち6人は HIV/AIDS について何も知らなかっ 。また 6 名は AIDS た。または、回答を拒んだ。回答者 13 人のうち 5 人は HIV と AIDS の区別がつかなかった(Q1-4) になると必ず死亡する、つまり HIV/AIDS と診断されればそれに対処できる薬は無いと考えている。この事実は彼らが HIV と AIDS を区別できず、これに脅威を感じているということである。感染(Q14-18)については、間違った知識がそ

こに見られた。5 人のみがこれらの質問に正答した。女性 6 名のうち、2 名は HIV が垂直感染する事実を知らなかった。 注目すべきは 13 名のうち 6 名までが HIV はマラリアのように蚊がこれを媒介していると考えていることである。

YES

NO

UNKOWN

1. AIDS is caused by HIV.

8

2

3

2. There are no medicines to prolong the life of a person who is infected.

6

7

0

3. People who look healthy are not HIV infected.

7

4

2

4. HIV and AIDS is cured when the person’s condition gets better.

1

10

2

2.PROSTITUTE SEX…5 out of the 13 people marked “they have had prostitute sex” on the questionnaire sheet (19). A woman was included. In this category, only 5 people have never engaged with prostitute sex, and 3 people didn’t respond. 3 out of the 5 people didn’t use condom at that opportunities. We should better to make them aware that it is risky behavior for protect their health. セックスを通じての金品のやり取りについて・・・13 名の回答者のうち、6 名が「セックスの対価に何かを支払った、また は受領した」と答えている。そこには一人の女性も含む。3 名は無回答であった。ここで注目すべき点は、ただ 5 名の

28


みがこれらの行為を行ったことが無い、としていることである。そして 3 名はコンドームの使用を当時、行っていなか った。

3.STIs… This survey suggested many Chinese migrants don’t have enough knowledge about sexual transmitted infections (9-13). Especially, more than half of them don’t know about chlamydia. To say nothing of these infections are large cause of HIV spreads. And more than half of them don’t know HIV testing is in charge of free on the public health sights (20). 性感染症(STI)について・・・この調査で、中国人労働者の多くが STI に関して十分な知識を持ち合わせていないことが分 かった(Q9-13)。特にクラミジア感染症に関しては半数以上が知識を持っていなかった。言うまでもなく、これら STI は HIV 感染を広める要因となりうるものである。また、半数以上が公営の病院や診療所でのエイズ無料検査を知らな

かった。

Are these disease Sexual Transmitted Infections? Gonorrhea

Chlamydia

Helpes

Syphilis

YES

10

5

9

12

NO

1

6

2

0

Not Sure

2

2

2

1

4.DEPORT… Only 5 of them believe that if they got HIV, they will be able to keep stay in The Commonwealth of Dominica (21). 3 people marked “YES”, also 3 people consider “Not Sure” and 2 people didn’t answer it. It is strong fact that the fear against HIV/AIDS. 強制帰国に関して・・・5 人のみが、 「たとえ HIV に感染してもドミニカに合法滞在を続けることができる」と回答した。3 名は「国外退去となる」、そして 3 名は「分からない」と回答した。つまり多くの方々が HIV/AIDS に関して、これに感 染すれば国外退去となるような恐れがあると回答をしている。

If you were found to be HIV Positive, you would be deported.

29

YES

NO

Not Sure

No Marked

3

5

3

2


2007 年 11 月 在ドミニカのハイチ人に対して HIV/AIDS 領域における動向/意識調査を行った。ハイチはドミニ カ共和国と並び、カリブ海地域で最も HIV‐Epidemic が進んでいる地域だと言われる。 国内の混乱から外国へと仕事を求める住民も多く、ここドミニカにも多くのハイチ人が暮らして いる。ハイチ語はドミニカの現地語“クレオール”と近似しており、ハイチ系住民と任地の住民 が話しているのを良く見かける。ただしハイチでの教育レベルは非常に低く、また、どちらかと 言えばフランス圏であることから英語が不得意な者もいる。このことから HIV/AIDS についての 情報から遠ざかっていることが十分に考えられる。

ハイチ人住民に対する HIV/AIDS、STI の動向/意識調査

HIV/AIDS and STIs pilot survey on the people from Haiti in Roseau

correctry racio(%)

Q1-18 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

100

100 96.2 100 100 92.5 92.5 88.8 88.8

88.8

92.5

100 85.1 84.6

59.2 40.7

7.4

3.7 1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

Questionair No.

1.

Maladi SIDA pwovoke pa VIH.

( Wi

: Non)

AIDS の原因は HIV である 2.

Pa gen medikman ki kapab pwolonje vi yon moun ki enfekte. ( Wi HIV 感染者の寿命を延ばす治療薬は無い

3.

Moun ki sanble yo an sante pa enfekte pa VIH. ( Wi

: Non)

外見が健康であれば HIV 感染者ではない

4.

VIH ak SIDA geri lē kondisyon moun nan byen. ( Wi 身体的症状が無くなれば HIV/AIDS は治ったと考えてよい

30

: Non)

: Non)

16

17

18


5.

Ou ka detekte VIH yon pakēt Jou aprē ou finn si. ( Wi

: Non)

HIV に感染後は 2,3 日すれば検査を受けることで判明する 6.

Yon fi ansent ki VIH kapab pase viris la bay Tibebe-ya. ( Wi

: Non)

HIV では垂直感染の可能性がある 7.

Pataje menm sering ki sēvi pou Drōg kapab bay VIH. ( Wi

: Non)

注射針の共有は HIV 感染の原因である

8.

Genyen yon posiblite pou gen VIH lē yonn vini an kontak ak san, ejakilasyon ak likid bouboun yon moun ki gen VIH. ( Wi

: Non)

STI に感染している間は HIV 感染の可能性が高まる 9.

Moun gen VIH fasilman lē yo gen lōt enfeks yon ke yo ka transmēt nan fe bagays.( Wi Non) HIV は母から子へと妊娠中に感染する

10.

Diare se yonn nan MST. ( Wi

: Non)

梅毒は STI の一種である

11.

SHank se yonn nan MST. ( Wi

: Non)

クラミジアは STI の一種である

12. Ēpēs se yonn nan MST. ( Wi

: Non)

ヘルペスは STI の一種である

13. Sifilis se yonn nan MST. ( Wi

: Non)

淋病は STI の一種である

14. Moun gen VIH lē marengwen mōde-w. ( Wi

: Non)

蚊に刺されると HIV に感染する可能性がある

15. Moun gen VIH nan pataje manje. ( Wi

: Non)

同じ皿から食事を分けると HIV に感染する可能性がある 16.

Moun gen VIH nan sēvi ak menm sēviēt. ( Wi

: Non)

同じタオルを使用すると HIV に感染する可能性がある

17. Moun gen VIH pa tous ak estēne. ( Wi

: Non)

咳や鼻水で HIV は感染する 18.

Moun gen VIH le y ap bay lamen. ( Wi

: Non)

握手で HIV は他人に感染する

31

:


Q19-22 19

Yes No Not Sure No Check Total 19.

19-B

19-C

20

21

22

3

19-A

3

0

3

3 27

25 2 0 0 27

27

20 0 4 27

24 0

27 0 0 0 27

0

0 0 27

Eske ou pa janm ale nankafe oubyen peye yo pou-w fe bagay. ( Wi

: Non)

セックスに対して対価を払ったり、受領した経験はありますか?

A: Konbyen Fwa?

(

)

B: Eske-w itilize kapōt tou tan?

( Wi

頻度を教えてください

: Non)

その時、コンドームを常に使用しますか?

C: Eske-w sēvi ak kapōt SHak Fwa w-ap Fē bagay ak patnēw ( Wi

: Non)

パートナーとはコンドームを使用していますか?

20. Eske w konnen yon tes VIH ki gratis e ki Sekrē Nan lopital piblik?

( Wi

: Non)

公共の医療機関では HIV テストが無料/秘密保持にて行われているのを知っていますか?

21. Si-w te chēshe pou w vinn zewo pozitif, ou t ap depōte. ( Wi

: Non)

もしも外国人が HIV 感染となれば、国外退去となる 22.

Eske w vle konnen konsēnan VIH/SIDA e maladi ke w ka pwan nan fē bagay ? ( Wi

: Non)

もっと HIV/AIDS や STI について詳しく知りたいですか?

CONCLUSION 結論 In this survey, we find that many Haitian immigrants in Roseau have strong misunderstands and fear about HIV and AIDS. They think that “HIV can spread easily” and “AIDS lead us to the ruin”. Though they have good information about STIs, many of them think that a mosquito’s bite is major cause of getting HIV. We should better keep inform them the basic facts about HIV/AIDS, especially treatment (ARV), care and support, eliminate stigma and discrimination. この調査で任地に暮らすハイチ系住民は HIV/AIDS に対していくつかの間違った情報を持っていると共に、いくばくかの 脅威も感じていることが判明した。彼らは HIV が比較的簡単に他人に感染する、またはその後は破滅的な人生を歩まね ばならないと思っている。STI に関しては十分な情報を持っているようにみえるが、一方で「HIV は蚊によって媒介され る」とも思っている。私たちは彼らに継続して HIV/AIDS の情報、特に治療(ARV)/PLWHA のサポートや医療情報/差別 や偏見を除去するような活動が行われていることを伝えていくことが求められる。

32


FACTS 結果 27 Haitians marked on this survey between 18 to 45 years old, 15 men and 12 women. 3 people rejected it. Their occupations are hairdresser, security stuff, tailor, and so on. They were chosen at random and on anonymity. Some of them cannot speak English easily. A security staff who understand English well translated in English to Haitian Creole (native language) on this questionnaire sheet. 18~45 歳までの 27 名のハイチ系住民がアンケートに記入してくれた。内訳は 15 名の男性と 12 名の女性であり、3 人は

アンケートの記入を断った。彼らの職業は美容師、セキュリティ・スタッフ、裁縫技術者などでありハイチ系市民の中 から無作為に選んだ。彼らの一部は英語が不得意だった。英語が堪能なセキュリティ・スタッフに英語質問表→ハイチ 語への翻訳をお願いした。

1.

KOWLEDGE(HIV/AIDS における領域についての知識)… In Roseau, Haitian immigrants’ knowledge about STIs is much (Q10-13). Only a few of them don’t recognize these Infections. Basically, they understand that HIV cannot spread by human’s casual contact such as cough, shaking hands, sharing a towel and so on. On the other hand, 11 out of the 27 people believe that human get HIV by mosquito bite and 8 people are not sure about it. 1 YES 27 NO 0 Not Sure 0 corrctly rate 100

2 26 1 0 3.7

3 4 11 3 16 24 0 0 59.2 88.8

5 25 2 0 7.4

6 27 0 0 100

7 26 0 1 96.2

8 27 0 0 100

9 10 11 12 25 25 24 24 2 2 1 2 0 0 2 1 92.5 92.5 88.8 88.8

13 27 0 0 100

14 15 11 1 8 25 8 1 40.7 92.5

16 17 2 2 23 22 2 2 85.1 84.6

18 0 27 0 100

Moreover, almost of them think “AIDS is human killing illness (Q2)” and also many of them think, “People who get HIV is in suffering (Q3)”. And they marked “AIDS would be never cured, if we got HIV (4)”. It define that they are afraid of HIV/AIDS strongly. Q10‐13 を見れば分かるように STI の知識は豊富だと思われる。この中の 2,3 名のみに若干ではあるが知識に

ばらつきがあった。HIV/AIDS の感染経路としては咳やタオルの共有の項目などで高い正答率が得られたが、27 名の回答者のうち 11 名までもが「HIV は蚊によっても媒介される」と信じ、他の 8 名は「その可能性がある」 「Q3 AIDS には苦痛が伴う」 「Q4 HIV/AIDS は不治の病」 と思っている。さらに「Q2 AIDS は死に至る病気である」 といったように、強い脅威を感じていることが分かる。

2.

PROSTITUTE SEX(セックスによる金品の授受)…3 out of the 27 people, each is men, experienced prostitution or paid them for sex. 2 men and 2 women did not answer it.

33


Q: Have you ever done sexwork or paid them for sex?

YES

NO

NO MARKED

3

20

4

They have had protected sex at all that time, however, it is important to be informed that make them avoid such the risky behavior. 27 名の回答者のうち男性 3 名が経験していた。その他男女 2 名は無回答であった。カリブ海地域のエイズ対策で

良く言われるように“Prostitute Sex”に関しては正確なデータを得るのは難しい。なぜなら多くの人々が「付き 合っているならば金品によってお互いの生活を充実させるのは当然のこと」と思っているからであり、それが必 ずしもセックスの対価としては考えられないからと見られる。いずれにせよ、全ての場においてコンドームの使 用は行われていた。しかし、パートナー以外の不特定多数と金品を対価としたセックスを行うのはリスキーであ るから、引き続き啓発していくことは必要である。

3.

DEPORTED(強制退去)… All of the panelists think that they will be deported if they got HIV (Q21). WE should better let them know that no one be deported because of who is HIV positive. Also it is significant that let them inform about ART and they will be able to get ARVs by free, if they got HIV in The Commonwealth of Dominica. Q21 を見れば、回答者 27 名全員がもし外国人が HIV に感染すると国外退去になると信じている。私たちが外国人

であるかどうかに関わらず、全ての住民が HIV 感染によって国外退去になるような事はないことを伝えていく必要 がある。HIV/AIDS に対して死や苦痛、不治の病といったようなネガティブなイメージが彼らの中に継続してあり 続けるとすれば、それは直ぐに要らぬ差別や偏見へと繋がっていく。 したがって彼らに ARV の働きと、それが無料にてドミニカにおいては全ての住民がアクセス出来ることを伝える のは重要である。

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2007 年 12 月 本年度のワールド・エイズ・デーは土曜日であった。ラジオ出演や HIV/AIDS パネル展示会など が行われる、と配属先ミーティングで聞いた。ところが意に反して、11 月最終週にアメリカ・ピ ースコーとフランス領事館とが協力したこの展示会のオープニングに職員すべてが招かれて出 席し、配属先所長の開会宣言があっただけで、他にこれといった盛り上がりもイベントも無かっ た。配属先職員に尋ねてみると「今年の 12 月 1 日は土曜日であり休日なので、所長がラジオ出 演する以外に活動は無い」とのこと。個人的には去年のワールド・エイズ・デーで行ったスペイ ン語系住民に対するフォローアップも考えたのだが、大規模なイベントがあるものだと思いそれ に備えていたのである。自分の行動力の無さにがっかりしてしまった。

(展示されていた米国ピースコー使用のエイズ啓発の教材)

また、12 月 1 日には住居から徒歩 10 分ほどに位置する HIV/AIDS 関連 NGO である「Life Goes On」 に花束を贈ろうと考えていた。以前よりこの NGO に対しては興味を抱いており、また、JOCV として何か協働できるようなことがあればと思っていた。情報によると NGO には療養所として の機能も持つようであり、衣料品/衣類などの生活物資の募集も出ていた。そこで数ヶ月前に「空 いた時間にボランティア活動をしたい」と配属先に申し出たのだが、許可はされなかった。理由 は「国家エイズ対策委員会に所属するものとして、特定の機関より支援されている NGO だけに 協力することは出来ない」というものであった。そこで、せめて出来ることでもと思いワールド・ エイズ・デーにPLWHAに花束を贈ることとしたのである。しかし、願いは叶わなかった。上 記の理由により、配属先所長からは「その必要は無い」という返答であった。 根本には、配属先とNGOとの間に相当の意見の食い違いも見られることがその後に判明した。 特定の支援組織からサポートを受けて独自の活動を展開する NGO と国家エイズ対策委員会にお いては協調している部分も少なく、決して良い関係とは呼べない。具体的な事例として、以前あ るエイズ患者を対象にしたARVの効用を示すポスターがNGOによって配布された。そこには 国内のエイズ患者Aが病床で横になっている写真と、ARV処方後の笑顔が写っていた。国内に おいてのエイズ理解は調査結果において医療関係者の間においてもほど遠いと考えられ、また自

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分がPLWHAであることを一般に向けてカミングアウトした方は居ない。Aを町で良く見かけ 会話をする間柄であるが、彼が要らぬ被害を受けてはいないであろうか。やや保守的な配属先の 職員の話からは「NGOは独善的すぎる」 「NGOはPLWHAを市民に曝すことでドナーから の支援費を引き上げようと画策している」とのネガティブな発言もあった。一方、いうまでも無 くARVの効用を市民に伝えることは差別や偏見の除去に必須であり、どちらの考えも正しく思 えてマクロ的なソーシャルワークについて深く考えさせられた。

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2008 年 1 月 月のはじめに配属先にてミーティングが行われた。会議には任地で活動するアメリカン・ピース コーや他の関係者が出席していたが、私には出席の声が掛からなかった。非常に複雑に思ったの は事実である。 配属先所長とはコミュニケーションの機会も少ない。それは彼女が多忙であることから、私と対 話する時間も惜しいという態度であり、故にこちらからは話しかけ辛いからである。未だに英語 を考えながら話す私は言葉を発する際に時間が掛かることがあり、それを分刻みで動く彼女は快 くは思っていない。実際には私が彼女と会話するときには他の職員が私を気遣ってくれて、彼女 に「通訳」してくれている。先に提出した私の活動報告書も「分かりました。そこに書類を置い ておいて。」で済まされ、封さえ開けてくれなかった。他の同僚は私の英語を理解し、ゆっくり とした会話も心掛けてくれるので活動に困難は感じないのであるが、外国人であることに困難を 感じる瞬間は彼女との活動の上で多数あった。 私の良き理解者であったアメリカ人大学院生もインターンを終了、また同じく勤務していた仲が 良い同僚も突然の転職となり、配属先での会話も減って活動の勢いが急速に低下した。 この時期はエイズに関する情報全般を、日本を含めた学会誌などを片っ端から読みこなしていた。 活動における成果は少なかった。

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2008 年 2 月 懸念であったカウンセリング・ルームの整理を行った。以前よりこの部屋は職員の休憩室にも使 われ、個人の所有物も置かれていた。また、フードバンクのための支援食糧などの各種倉庫と化 しており、重大な告知を得る可能性があるカウンセリング・ルームとしては不適切であった。そ こでこの部屋を大掃除し、快適な対話が行える空間を整えた。食糧や各種備品と机・椅子の間を しっかりとカーテンで仕切り、無造作に置かれていたコンドームや装着法を教えるためのペニス の造形物、各種資料を箱に入れたりするなど整理してクライエントが緊張しないように配慮した 造りにした。

(改装前とその後。コンドームなどは箱に入れ、冊子類も栄養関連のものなどを選択。直接に HIV/AIDS を連想させるもの

は避けてクライエントの負担を除去することを心がけた。出来れば壁に多く貼ってあるエイズ関連のポスター類も、花 や風景画などに落ち着きがあるものに換えたかった)

なお、私自身の日本における経験としてはエイズ検査で行った保健所に「エイズ・性感染症の検 査はこちら」と書いた看板があったことを思い出す。エイズ検査申し込み時に、電話で「匿名で 受けられますので、○日の○時に保健所1階に来てください」とのこと。当日に保健所に向かっ たのであるが、通路に置かれたこの看板を見て周囲の目が非常に気になった。クライエントとは 非常にナーバスになっているものである。退出時も伏せ目がちに、足早に玄関に急いだものだ。 これらの体験を活かしたいものであるが建物の構造上、隣の裁縫工場を含めた他人の目にクライ エントが触れることは避けられない。 今回の環境整備については活動先の評価はとても良かった。ただし私がこれを行えば行うほど配 属先の用務員について、これが「通常よりあまり掃除をしていない」とネガティブな評価を受け るのは事実であり、彼がたびたび所長他から注意を受けていることにも留意せねばならない。

また、ある日配属先にて雑談中に「そうそう。あなたの行っている調査って最近どう?」と所長 から尋ねられた。「いまだ進行中です」と答え、今回は男性職員を連れて大学に行き調査を行う 許可を得た。配属以来、始めて活動内容について対話した。いままで様々なプレゼンテーション を配属先に行ってきたが、そのいずれもが「そこに置いておいて」 「分かった」の一言で済まさ れていた。評価については何を言われたこともない。ときには感情が高まり「もっと業務に関わ りたい」とも「何をして良いか分からない」とも彼女に告げに行った。また、他機関のアメリカ ン・ピースコーやインターンの大学院生が彼女の部屋で活動について話し合っているのを見て、

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涙が滲むほど悔しい思いも経験した。いままで何度も同僚に「彼女は私のことを全く認めてくれ ない」「本当に役に立てなくて申し訳なく思っている」と相談に乗ってもらった。そして私がキ リスト教徒では無いから、もしくはアジア人であるから、それにたいして良い感情を持っていな いのではないかと彼女を恨んだこともある。23 ヶ月のあいだ地道に活動を続けてきて、やっと 少しは認められた気がした。

後半は来月に向けての「大学生への HIV/AIDS 知識/行動の実態調査」に向けて行動。大学に同僚 と許可を取りに向かい、学長と歓談するなどした。これについて私は男性のエイズ・エデュケイ ター確保のために配属先の男性職員をコーワーカーとして指名した。この男性は通常は配属先の 用務員であるが、カナダを始めとする国際会議にも出席し、また新しいピア・グループの設立に 動くなど配属先所長がその育成に力を入れていた人物である。この度、CRN+(The Caribbean Regional Network of People Living with HIV/AIDS /CRNプラス)の議長(Chairperson)となった。 このような有能な人物と共に仕事が出来るのも派遣先がドミニカという小国だからであり、また、 青年海外協力隊冥利につきる瞬間である。 しかし、彼がCRN+議長という要職にありながら小国のエイズ対策課に勤務し薄給で働かねば ならないという事実は、いかにカリブ地域のエイズ理解が進んでいないかを示すひとつの指標と なりはしまいか。さらにドミニカ社会のありかたも問う。努力して社会で有意義な存在となりな がらも、正当な評価を受けることなく、彼は貧しい彼のままである。私が述べているのは出世や 賃金の問題ではない。 先進国で活動されるエイズに関わる方々に、CRN+議長が役場のエイズ対策課の床を毎朝課長 に小言を言われながらモップで磨いているという姿を想像できようか。

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2008 年 3 月

任期最終月

外国人大学生に対する HIV/AIDS 領域における意識・動向調査を行った。ドミニカにはアメリカ の大学のサテライト・キャンパスが2校あり、その学生はアメリカやカナダをはじめインドやパ キスタンなど国籍を問わない中東などから留学している。両校は医療/薬学系大学であり、これ らの知識は当然に豊富だと思われる。ただし、医療関係者においては HIV/AIDS に対する差別・ 偏見が根絶されたとは言いがたく、また将来は祖国をはじめ国際医療に深く携わっていくであろ う彼らが国家規模のエイズ対策の現場に触れることは良い経験となるであろう。 また、ここでは男性職員をコー・ワーカーとして指名してその育成をサポートすることとした。 国内エイズに携わる男性の数は非常に限られており、ジェンダーのアンバランスからともすれば 女性や子ども達にエイズの啓発を行うことで満足感を得てしまう、ということになりかねない。 いうまでもなく、エイズに性別は無い。あらゆる性別からそれぞれの視点を取り込んでいかねば、 そのエイズ対策は片手落ちと言っても過言ではない。私の任期終了後には配属先には男性が一人 しか居ない状況となる。この男性が将来のドミニカ・エイズ対策の重要な役割を担うことを期待 し、この人物と共に活動することで配属先に良い影響を与えることが目的であった。

残念ながら、男性はこの活動途中に近隣諸国へと会議出席のために出張となり目的は達成されな かった。しかし、「あなたの力が必要なのだ」という私の思いは伝わったことと思うし、配属先 にも彼の力の必要性を説き、理解してもらった段階には進むことが出来た。時間が有れば彼と共 に一つのプログラムを完成させることが出来、彼の大きな成長へと繋がったはずである。 彼と共に大学に調査を行う挨拶に行ったときの、真剣な表情はいつもの用務員のそれと全く違い、 自信に満ち溢れていた。

外国人大学生に対する HIV/AIDS、STI の動向/意識調査

HIV/AIDS and STIs survey on the foreign college students in Dominican satellite campus. In the Commonwealth of Dominica, there are two-satellite campuses of foreign college. The United States of America’s organization founded these colleges. And the students are from not only this country but also India, Pakistan and the other Middle East countries. All of them are well-English speaker and their major is medical-related, therefore it seems that they have enough of knowledge about HIV/AIDS and STIs. Some of the students have done the volunteer work on the local people; for example, they have been into the rural area to distribute free condoms to educate them that prevent from sexual related infections.

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Nevertheless to say, for all of medical stuff, they must be necessary of appropriate attitude toward PLWHA. And in term of eliminate stigma and discrimination against HIV/AIDS, we should better get involve each other and keep in progress to the future. Moreover this is the good opportunity for them to touch the front line of national HIV/AIDS prevention program as student who will to be a significant international M.D. ドミニカには2校のアメリカ系大学のサテライト・キャンパスがある。アメリカやカナダをはじめ、中東やアジアなど 国籍を問わない学生が学んでいる。全ての講義は英語にて行われており、したがって彼らの英会話スキルは非常に高い。 また、両校共に医学/薬学系の大学であるから彼らの HIV/AIDS や STI における知識は豊富であろう。中でも、ある学生達 はエイズや性感染症の予防啓発活動を地域住民に対して行っている。言うまでも無く、全ての医療関係者において PLWHA に対する全ての差別や偏見を待たない適切な態度を示すことは欠かせないことであり、私たちはお互いに協力し

て将来に進んでいくことが求められる。また、将来は国際的な医療関係者、または医師として活躍するであろうこの学 生達にとって国家レベルのエイズ対策に触れることは良い経験となるであろう。

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