木村寧生 作品集 -2018
木村 寧生 / Kimura Yasuki 略歴 1993.11 2013.4-2017.3 2017.4- 現在
水戸生まれ 早稲田大学創造理工学部建築学科 早稲田大学理工学術院創造理工学研究科建築学専攻 古谷誠章・藤井由理研究室
受賞歴 2015.3
設計演習 BC 年間成績 第 2 位
2015.3
設計製図Ⅰ集合住宅課題 第 2 位
2015.6
設計製図Ⅱ第一課題 第 1 位
2015.8
設計製図Ⅱ第二課題 第 5 位
2015.11
設計製図ⅢA 第一課題 第 3 位
2016.2
設計製図ⅢA 第二課題 第 5 位
2016.2
設計製図総合成績 第 1 位
2016.7
設計演習 G 第 1 位
2017.2
卒業設計 優秀作品
2017.12 2018.3
鹿島建設 × 早稲田大学 産学協同コンペティション 第 2 位 キルコス国際建築設計コンペティション 2017 石川翔一賞 金賞 / 国広ジョージ賞 金賞 / 光嶋裕介賞 金賞 / 西田司賞 金賞 / 平野勝雅賞 金賞 / 北川啓介賞 銀賞 / 近藤哲雄賞 銀賞 / 佐々木勝敏賞 銀賞 / 藤尾篤賞 銀賞 / 諸江一紀賞 銀賞 / 吉村昭範賞 銅賞 / 坂牛卓賞 佳作 / 栗原健太郎賞 佳作 / 米澤隆賞 佳作
スキル Illustrator ◎/Photoshop ◎/Indesign ○/ Vectorworks ◎/Autocad ○/Rhinoceros ◎/SketchUp ◎/ V-ray ◎/Kerkythea ○
目次
01 02 03 04 05 06
現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー −宮沢賢治の『農民芸術概論要綱』を下敷きとして−
生い立ちの
行
−「西川」を用いた石灰石の移動と変容のデザイン−
交差する軸
物質を扱う行為の総合としての建築学 −物質を介した建築教育プログラムと石の神殿計画−
はなやかな闇
宿毛まちのえき 林邸 ( 研究室実施プロジェクト )
01
現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー −宮沢賢治の『農民芸術概論要綱』を下敷きとして−
機能:工場等 敷地:東京都目黒区 制作年 ( 学年 / 期間 ):2015 年 ( 学部 3 年 /3 ヶ月 ) 賞:設計製図ⅢA 第一課題 第 3 位
01 現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー
現代人が百姓性を獲得する場所の計画
1. 宮沢賢治の『農民芸術概論綱要』 宮沢賢治は、イーハトーブと名付けられた理想郷を掲げつつ、当時疲弊していた郷土の 農村を対象として、増産のための肥料設計を指導しながら、農民芸術を提唱することで、 農村の向上をはかろうとした。 羅須地人協会での講義用として書かれたと言われる『農民芸術概論綱要』の中で、生活 と芸術の一致の必要性を語り、農民の本質を見いだそうとしている。
2. インフラとしての「百姓」 農民はかつて百姓と呼ばれていた。百姓という名称からも分かる通り、近代以前の百姓は多様な生業に従事していた。 大工、鍛冶、木
、屋根屋、左官、髪結い、畳屋、神主、医者、商人、漁民などである。
近代以降、あらゆる職種は専門化したが、百姓は、近代以前の、総合的な存在であり、インフラそのものであったと いえる。 大工、鍛冶、木
、屋根屋、左官、髪結い、
畳屋、神主、医者、商人、漁民など
近代による 専門化
百 姓 = インフラ
農民
大工
鍛冶
医者
農民
大工
鍛冶
医者
・・・
多様な 生業
3. 現代人が百姓性を獲得する場所の計画 以上の考察を以て、農具の設計、施行、その農具による農の設計、施行を行うことによって、現代人が百姓性を獲得 する場所の計画を行う。想定される人は、東京中にいる UIJ ターンを計画する者、日曜大工、家庭菜園を行う者などである。 宮沢賢治の『農民芸術概論綱要』を下敷きとしたこの場で生産された、農具、農作物は全て芸術である。
01 現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー
4.10 のインフラストラクチャー 農に関する行為を 10 に分け、その行為を行うための道具と、 その道具を用いる農地を介して百姓性を獲得する。農地に効率 的に光があたるように、敷地を南北の線で 10 の農地に分ける。 1. 土を耕す道具 2. 土を均す道具 3. 肥料をまく道具 4. 水をまく道具 5. 種をまく道具 6. 作物管理する道具 7. 高所へあがる道具 8. 収穫をする道具 9. 持ち上げる道具 10. 運搬する道具
収穫する道具
土を耕す道具
高所へあがる道具
土を均す道具
重いものを持ち上げる道具
稲
苔
苔
竹
菊
芝 場
藍
種
菜
子
茄
場
工
具
道
す
耕 を 土
場 工 具 道 す 均 を 土
場 工 具 道 く ま を 料 肥
工 具 道 く ま を 水
場
茶 場
工 具 道
工 具 道 く ま を 種
る す 理 管
桃
場
工
具
道
る
が
上
を 物 作
25(m)
10
5
0
平面図 S:1/1000
稲
場 場
工
具
道
る へ
所
高
個室 1
す
個室 3
穫
個室 6
収
個室 8
工
具
道
る
げ
あ
ち
持
個室 9
場
工
具
道
る
す
搬
運
個室 10
駐車場
竹
事務所 材料保管倉庫
N
01 現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー
個室 4 個室 2
土を耕す 道具工場
個
個室 3
個室 1
土を均す 道具工場
個室 6 個室 5 肥料をまく 道具工場
水をまく 道具工場
個室 7 種をまく 道具工場
作物を管理す 道具工場
個室 8
する 場
01 現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー
TOP GL+12000
GL±0
GL-11500
立面図 S:1/500
0
5
10
25(m)
TOP GL+12000
個室 9 高所へ上がる 道具工場
個室 10 収穫する 道具工場
GL+4800 持ちあげる 道具工場
運搬する 道具工場
GL+4200
GL+2200 GL±0 GL-2100 GL-3500
GL-400
GL-700
GL-3800
GL-6500 GL-8700 GL-11100 BOTTOM GL-12300
断面図 S:1/500
0
5
10
25(m)
01 現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー
南北線に沿って構造体が立ち上がり、農具の設計施工が行われる
敷地の高低差が建築内部に引き込まれる
2 階、構造体と屋根の間から空が見える
01 現代の 100 姓のための 10 のインフラストラクチャー
ROOF
WALL
HOUSE
STRUCTURE
02
生い立ちの
行
−「西川」を用いた石灰石の移動と変容のデザイン−
機能:工場等 敷地:埼玉県飯能市、東京都中央区 制作年 ( 学年 / 期間 ):2016 年 ( 学部 4 年 /3 ヶ月 ) 共作:坂口志歩、野元彬久 賞:卒業設計 優秀作品
1. モノの「生い立ち」を
る視座を獲得するための計画
人間が作るあらゆるモノは、地球を構成している物質を移動、変容させたものである。ここでは、あらゆるモノに固 有の移動、変容の歴史をモノの「生い立ち」と呼ぶ。 本計画は、資源の採掘場を物質の移動と変容における自然と人間の接点として捉え、採掘場から都市の生活空間に至 るまでの移動と変容の在り方を提案することで、現代において隠されてしまったモノの「生い立ち」を
る視座を獲得
するための計画である。(図 1)
2.「生い立ち」を
行する、かつての西川林業
江戸時代以降、現在の埼玉県秩父地方周辺の村々では、山から切り出した木材を筏に組み江戸に盛んに流送していた。 消費地である江戸から見ると「西の川筋から流されてくる木材」のため、「西川林業」と呼ばれるようになったと言われ ている。現在、埼玉県秩父地方は石灰石の産地として有名であり、多くを東京に搬送している。(図 2)
3. 西川石灰ブランドの創出 かつての「西川林業」は限定的ではあるがモノの「生い立ち」を示唆するものであった。そこで、 「西川林業」を現 代的に更新し「西川石灰」ブランドの創出を計画する。 本計画ではまず、名郷鉱山において採掘された石灰石の「西川」を用いた新たな物流計画を行う。採掘した石灰石を 細かく砕き、砕石あるいは粉末状にする。次にその砕いた石灰石をゴム製の袋に詰め込み、採掘場付近の入間川に流し て搬送する。また入間川・荒川の合流地点からは、バルーンを船舶に載せて搬送する。 また、佃を出発し「西川」を 移動の様子を
りながら名郷鉱山を目指す「川登りツアー」を計画する。西川を石灰石が流れてくる
ることができ、名郷鉱山では採掘する様子を実際に見ることができる。「西川石灰」ブランド製品の「生
い立ち」の認識することができるツアーである。(図 3)
02 生い立ちの 自然
行
人間
採掘・採集場 工場 倉庫 店頭 生活空間 隠されたモノの「生い立ち」 モノの「生い立ち」を
る視座を獲得するための計画
図1
図 2 西川で流送する様子
計画A 穴の計画 敷地:名郷鉱山 機能:展示販売所
穴
入間川
石灰石の物流
川登りツアー 荒川 隅田川
計画B 山の計画 敷地:佃 機能:生産還元施設 +情報堆積施設
山
図 3 「西川石灰」ブランドのマスタープラン
計画 A 穴の計画 敷地:名郷鉱山 機能:展示販売所
穴
展示販売所 名郷鉱山
ツアー動線
石灰石の動線
西川 ( 入間川 ) 出荷 西川
既存の砕石、粉末工場を移築
川登りツアーと石灰石の動線を整理することで、石灰石を採掘している様子や、砕石、粉末状に加工する様子を見る ことができる。
02 生い立ちの
鉱山の先端に、「西川石灰」ブランド製品の展示販売所を計画する。川登りツアーの最終目的 地であるこの地で採掘場とモノに同時に触れることで、移動と変容を経て製品が生成されている ことを認識することができる。
行
採掘という人間の手による行為と、石灰石の二酸化炭素に溶けるという自然の性質の相克が建築のテクスチャとして 現れる。
施工方法 名郷鉱山では掘削方法としてベンチカット工法が採用されている。建築施工方法として、その立杭より高濃度の二 酸化炭素水を流し込み、石灰石が二酸化炭素水に溶けるという性質を用いる。
1.
3.
2.
切り出し
4.
削孔
5.
高濃度の二酸化炭素水を流し 地面と並行に切り出し 石灰石を溶かす
6.
石灰石を取り除く
02 生い立ちの
行
GL+1000 GL+2200 GL+4000 GL+2800
GL+4600 GL+1600 GL+2500
GL+400
GL+1500
GL±0
3
ベンチカット工法 1→1 →1 →1 →1
7.
8.
山側
→…→3 →3
9.
2 3
0
2
4
10(m)
N
平面図 S:1/400
1 2
1
3
2 3
10.
採掘側
1 2
1
3
2
1
11.
12. ・・・・・
採光、設備用に パイプを通す
切り出し
削孔
切り出し
削孔
繰り返し
計画B 山の計画
敷地:佃 機能:生産還元施設+情報堆積施設
佃島
西川 ( 隅田川 )
山
02 生い立ちの
行
埋め立て地の先端に、流れてきた石灰石が堆積したような形態
アプローチより見る
02 生い立ちの
行
生産還元施設は、石灰石を利用した製品の中で代表的な、セメント、漆
、ガラス、ストーンペーパー、陶磁器の生産と、
それぞれの還元を行い、 「西川石灰」のサイクルを作り出す。情報堆積施設は、 「西川石灰」ブランド製品全体の「生い立ち」 のアーカイブを行う。
A
製品倉庫 GL+200
回収所 GL±0
製品倉庫 GL+200
還元施設 GL+200
搬入口 生産施設 GL+200
還元施設 GL+200 回収所 GL±0
ツアー 案内所 事務室
製品倉庫 GL+200
エントランス
製品倉庫 GL+200
製品販売所 GL+200
還元施設 GL+200
生産施設 GL+200
A B
B
ギャラリー
雑誌編集所
製品倉庫 GL+200
従業員入り口
回収所 GL±0
A
1F 平面図 S:1/1000
N 0
5
10
25(m)
02 生い立ちの
石灰石 還元
生産
セメント 漆
ガラス ストーンペーパー 陶磁器 断面概念図
回収所 GL+4000
還元施設 GL+4500
回収所 GL+6000
還元施設 GL+6200
従業員連絡通路 GL+4200 還元施設 GL+6200
生産施設 GL+9200
生産施設 GL+5000
還元施設 GL+4200 還元施設 GL+5000
GL+9000
還元施設 GL+4200
還元施設 生産施設 GL+5200 GL+6000
還元施設 GL+9500 生産施設 GL+10000
還元施設 GL+9500
回収所 GL+6000
GL+10000
生産施設 GL+10200 還元施設 GL+11000
還元施設 GL+6200
アーカイブ室 GL+9200
還元施設 生産施設 GL+9500 GL+12000
還元施設 GL+13500 生産施設 GL+12200
回収所 GL+5000
GL+12000
2F 平面図
生産施設 GL+14500
GL+15000
GL+13000
生産施設 GL+16500 GL+16000
3F 平面図
アーカイブ室 GL+13000
生産施設 GL+14000 GL+18000
GL+20000
生産施設 GL+15200
GL+20000
GL+19000
GL+23000
生産施設 GL+19500
石灰石倉庫 GL+25200
GL+24000
4F 平面図
5F 平面図 S:1/2000
GL+25000
N
0 5 10
25(m)
行
石灰石倉庫
アーカイブ室 アーカイブ室
還元施設
アーカイブ室
還元施設 製品倉庫
従業員連絡通路
製品販売所
搬入口 河川水熱源処理施設
A-A 断面図 S:1/1000
0
5
10
25(m)
石灰石倉庫
アーカイブ室 アーカイブ室
還元施設
アーカイブ室
還元施設 製品倉庫
事務室
従業員連絡通路
還元施設 還元施設 ツアー案内所
製品倉庫
河川水熱源処理施設
B-B 断面図 S:1/1000
0
5
10
25(m)
02 生い立ちの
回収した製品を還元施設へ運ぶ様子は鉱山の採掘を想起させる
行
アーカイブされた西川石灰製品の「生い立ち」を見ることができる
02 生い立ちの
行
訪れた人は西川石灰製品が上昇しながら還元され、下降しながら生産される様子が見える
03
交差する軸
機能:美術館 敷地:東京都中野区 制作年 ( 学年 / 期間 ):2015 年 ( 学部 3 年 /3 ヶ月 ) 賞:設計製図Ⅱ第一課題 第 1 位
03 交差する軸
「参道の軸」と「生活の軸」が立体的に交差した美術館の計画
1. 敷地 敷地は、中野駅から徒歩 5 分程の線路沿いに 存在し、跨線橋が掛かっている。
中野駅
敷地
また敷地の両端には、一本檜稲荷神社が存在 するが、住宅や雑居ビルによって分断されてし まっている。
2. 軸の発見
中野駅
参道の軸
敷地内で交わる 2 本の軸を発見した。 一つは中野駅から一本稲荷神社を繋ぐ東西の 「参道の軸」であり、もう一つは跨線橋を渡って 住宅街へと繋がる南北の「生活の軸」である。
生活の軸 住宅街
一本檜稲荷神社
3. 軸を立体化し可視化する 「参道の軸」と「生活の軸」を立体的に交差させ可視化する。また敷地東側に寄せたマッシブな建築に対し、残りはボ イドとすることで「参道の軸」を浮かび上がらせる。
ボイド 参道の軸
生活の軸
配置図 S:1/1500
N 0
5
10
25(m)
03 交差する軸
「生活の軸」を引き込む曲面
跨線橋に鉄板が張り付いて展示空間となる
ボイドは「参道の軸」を浮き彫りにさせる
展示室 5
受付
展示室 2
エントランス
展示室 1
カフェ テラス
2F 平面図
3F 平面図
B
展示室 4
展示室 3
ショップ カフェ
読書室
カフェテラス
A
A
物見台
B
1F 平面図
4F 平面図 S:1/300
N 0
2
4
10(m)
エントランス 展示室 1 展示室 3
03 交差する軸
A-A 断面図 S:1/300
0
2
4
10(m)
物見台
展示室 2
展示室 1
展示室 4
展示室 3
ショップ
カフェ
事務室
B-B 断面図 S:1/300
収蔵庫
0
機械室
2
4
10(m)
03 交差する軸
北側からのアプローチ スロープを下って次の展示室へ向かう
南側からのアプローチ 跨線橋そのものが美術館となる
03 交差する軸
RC と鉄を使いながら跨線橋を延長させ、美術館がそれを飲み込むような形態
04
物質を扱う行為の総合としての建築学 −物質を介した建築教育プログラムと石の神殿計画−
機能:神殿 敷地:伊豆大島 制作年 ( 学年 / 期間 ):2016 年 ( 学部 4 年 /4 ヶ月 ) 賞:設計演習 G 第 1 位
物質を扱う行為の総合としての建築学 現代の建築における素材の多くは、規格化やイミテーション等により、本来の自然の姿・性質と比較すると非常に矮 小化されたものとなってしまった。 アドルフ・ロースは、建築家は真に建築素材を理解し、活用するべきだと主張した。また、バウハウスの建築教育に おいても素材が重視され、まず素材の性質を理解するところから始められた。 物質を扱う行為の総合としての建築学を提唱する。あらゆる物質を扱う行為、学問、職業は建築の名の下に統合される。 そこで、二つの計画を行った。ひとつは、素材を介した建築教育プログラムであり(計画 A)、もうひとつは、この教育 プログラムを履修した人の想定される建築計画である(計画 B)。
04 物質を扱う行為の総合としての建築学
アドルフ・ロース
ヨハネス・イッテン
バウハウスの教育図
計画 A: 建築教育プログラムの設計 バウハウスの教育理念を現代的に更新することで、建築教育について考察する。現在の構造、環境、生産、意匠、歴史、 都市計画の教育は、植物、土、石、金属、繊維、ガラス、高分子化合物という物質を介した教育に再編集される。各物質の性質、 構成、歴史、技術の教育が行われ、その成果として造形デザイン演習授業が行われる。
教養科目 物理学的性質
材料
植物
ガラス
繊
石
維
構成
建築学
土
加工技術
子 高分
金属 歴史 素材を介した建築教育図
植物
構造 工学分野
生産
建築学
意匠 芸術分野
土
環境
歴史 都市計画
石 建築学
金属 繊維 ガラス
性質 構成 歴史 技術
高分子化合物 建築学内の分野
04 物質を扱う行為の総合としての建築学
卒業設計
4年
自身の専門の材料に関 卒業論文
する、高度な性質、構 成、歴史、技術の授業
自身の専門の材料に関 する、高度な造形デザ
3年
イン演習授業 植物、土、石、金属、繊維、ガラス、高分子化合物 から自身の専門を選択する
植物、土、石、金属、繊維、
2年
ガラス、高分子化合物 それぞれに対する造形 デザイン演習授業
植物、土、石、金属、 繊維、ガラス、高分子 化合物それぞれに対す る、性質、構成、歴史、 技術の授業
1年 教養科目
教育カリキュラム
造形デザイン授業の一例
計画 B: 石の神殿計画 計画 A で設計した建築教育における、専門を石とした人の建築計画として、「石の神殿」計画を行う。岩石は、 火成岩、堆積岩、変成岩に分類されるが、火成岩は、マグマから生成されたものである。この普遍的な事実を捉 まえた建築計画である。
04 物質を扱う行為の総合としての建築学
施工方法 1. 耐熱性の球型型枠に玄武岩質マグマを流し込む。あらゆるマグマはまた、地球深部に存在するマントルの部分融解に よって形成される。球型は、このあらゆる火成岩の源であるマントルを表現している。また、球は同体積の立体の中で 表面積が最も小さいため、熱が逃げにくい。 地球断面概念図
敷地
マグマ溜まり
上部マントル 下部マントル 外核 内核
敷地は、マグマ溜まりに玄武岩質マグマが存在すると 想定される、伊豆大島の三原山、火口付近とする。
2. 流し込まれたマグマは、結晶分化作用により、下部から、玄武岩質マグマ、安山岩質マグマ、デイサイト質マグマ、 流紋岩質マグマに分化する。また、型枠下部に磁石を設置し、熱残留磁化した玄武岩、安山岩を下部に効率的に集め、 結晶分化作用を促進させる。
結晶分化作用 玄武岩質マグマ
安山岩質マグマ デイサイト質マグマ 流紋岩質マグマ
熱残留磁気
カンラン石が結晶し カンラン石は溶け始 輝石は溶け始め、角 角閃石は溶け始め(楕
熱残留磁気をもった岩石
マグマの下部に集ま め(楕円形)輝石(黒 閃 石(ひ し 形)が 結 円形)、黒雲母(六角 る。
長方形 ) が結晶し始 晶し始める。
形)が結晶し始める。
める。
3. マグマが冷却固結する際、体積変化により、冷却面に対し垂直に割れ目が発生する。これを節理という。球型の場合、 放射状に節理ができる。安定した状態で冷却してゆくため、断面は規則的な六角形となる。
節理
柱状節理 東尋坊(福井)
節理の六角形断面の形成
04 物質を扱う行為の総合としての建築学 4. 球の表面付近は、比較的速く冷却し、深部は時間をかけて冷却することで、表面付近は火山岩、深部付近は、深成岩 となる。下部から順にそれぞれ、流紋岩花崗岩、花崗閃緑岩デイサイト、閃緑岩安山岩、斑れい岩玄武岩となる。 珪長質
SiO 2 ( 質量 %)
63
中間質
52
苦鉄質
45
超苦鉄質
深成岩
花崗岩
花崗閃緑岩
閃緑岩
斑れい岩 かんらん岩
火山岩
流紋岩
デイサイト
安山岩
玄武岩 コマチアイト 灰長石
見た目の色 密度 (g/cc)
曹長石
黒雲母
白色 約 2.5-2.8
斜長石
輝 石 類
長 リ カ
構成鉱物
石
石英
類
角閃石
灰色 約 2.7-3.0
かんらん石
黒色 約 2.8-3.1
緑色 約 3.4-3.5
5. 完全に冷却固結されたら型枠を外し、円を描くように球を転がす。放射状に形成された節理に沿って、六角錐の形を した岩石が割れ、並び、右図のような形状となる。
流紋岩、花崗岩 デイサイト、花崗閃緑岩 安山岩、閃緑岩 玄武岩、斑れい岩
6. 平面的にみると、内側から外側へ、玄武岩、安山岩、 デイサイト、流紋岩と並ぶ。また、それぞれの六角 錐の上部は深成岩となっている。
N
平面図 1/300
0
2
4
10(m)
04 物質を扱う行為の総合としての建築学
内観。球の断面(六角錐の側面)から様々な岩石の様子がうかがえる。内に向かうに従って岩 石は黒くなり、来訪者を奥へと誘い込む。見上げると深成岩が見え、地球スケールの時間を感じる。
西側立面図 1/300
断面図 1/300
0
2
4
10(m)
0
2
4
10(m)
04 物質を扱う行為の総合としての建築学
球の外側では流紋岩、内側では花崗岩が生成され、前者は六角錐の下部に、後者は上部に位置 し、シームレスに繋がっている。
05
はなやかな闇
機能:花屋 制作年 ( 学年 / 期間 ):2017 年 ( 修士 1 年 /1 週間 ) 共作:稲畑環 賞:キルコス国際建築設計コンペティション 石川翔一賞 金賞 / 国広ジョージ賞 金賞 / 光嶋裕介賞 金賞 / 西田司賞 金賞 / 平野勝雅賞 金賞 / 北川啓介賞 銀賞 / 近藤哲雄賞 銀賞 / 佐々木 勝敏賞 銀賞 / 藤尾篤賞 銀賞 / 諸江一紀賞 銀賞 / 吉村昭範賞 銅賞 / 坂牛卓賞 佳作 / 栗原健太郎賞 佳作 / 米澤隆賞 佳作
「明るい」はポジティブに、「暗い」はネガティブに捉えられてきました。その関係を逆転させてポジティブな「暗い」 を考えてみたいと思います。
*1
*2
05 はなやかな闇
これはあるところにある、一軒の花屋です。しかしこの花屋のなかは真っ暗で、何も見ることはできません。目が見 えないのを少し我慢すると、肌、鼻、耳、舌がいつもより研ぎ澄まされてきます。その研ぎ澄まされた感覚で、花びらを触っ て、匂いを嗅いで、葉の擦れる音を聞いて、蜜をなめて、お気に入りの花を選び、花束を作るのです。
*3
*4
*2
*1
生花用給水スポンジ
ガラス
ステンテスパンチングメタル
*1 どこからか、 甘い香りがした。その香りを
*2 って足を運ぶ。
花びらで身体を洗っているようだ。唇に花びらが当た
すると、突然、足のたもとの方から生えている細い花瓶に
りほろ苦さを感じる。人の肌に近い柔らかさがあること
出会う。その繊細な花びらに手を差し出す。花びら同士が
に気がつく。
擦れ、きしきしという音がした。
キキョウの花だ。
シャクヤクの花だ。
05 はなやかな闇 *4
*3
ヒノキ
土
*3
*4
足元からざらざらした感触を覚えた。しゃがんでみる
暗闇は続く。しかし、 遠くの方で確かな花の気配がする。
と、花たちが、根を張って大地を踏みしめて真っ直ぐ伸
やわらかく落ち着いた甘い香りとほろ苦いツンとした手
びていることが分かった。土のツンとした香りと花の蜜
触りに、少女は胸がいっぱいになった。
の香りが入り混じっている。 ガーベラの花だ。
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宿毛まちのえき 林邸 ( 研究室実施プロジェクト )
機能:コミュニティスペース、カフェ等 敷地:高知県宿毛市 竣工:2018 年 3 月 設計:古谷誠章+NASCA、早稲田大学古谷研究室
宿 毛まちのえき 林邸
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宿 毛 市は幕 末 維 新に活 躍した多くの政 治 家や 偉 人の故 郷である。その中でも、林 家は近 代日本 初となる、有 造 、譲 治 、迶と3 代 続けて 大 臣を輩 出し近 代日本 の発 展を支えた一 家である。林 邸は林 有 造が 明 治 2 2 年に建 設した。政 治 家 の集まる場 所でもあったため、当 時 の自由民 権 運 動を思わ せる邸宅として宿毛市民から親しまれている。 しかし築100年以上が 経過し老朽化が 激しい状態であった。 この貴 重な歴 史 的 建 築 、林 邸が 有する地 域の記 憶を未 来 へと継 承するために、単 純な復 元では無く地 域の人たちが 気 軽に使える場 所として更 新 することを考えた。また宿 毛 市の中で観 光やまちづくりの中 心として機 能 することで地 域 外の人々も訪れることができる施 設となる。建 築を大きく2つのエリアに分け、それ ぞれ「 文 化 的 改 修 」と 「 現 代 的 改 修 」を行った。また東 大 稲 山 教 授と協 働しそれ ぞれ に 適した「ガラス耐 震 壁 」と 「 組子耐震壁」を採用した。 (竣工写真は筆者撮影)
現代的改修
文化的改修
改修前の状態
南庭
トイレ
キッチン スペース 飲食物販 スペース
受付
座敷
玄関 展示 スペース
北庭 1階
座敷 月見の間 監視部屋
2階 改修後の平面図
06 宿毛まちのえき 林邸
林邸の新しい顔となる飲食、物販スペース。
北側正面。
南庭 キッチンスペースと一緒に使える
北庭 座敷、展示スペースが取り囲む
06 宿毛まちのえき 林邸
座敷 地域の人々のお茶会、サークル活動などに使われる
展示スペース 宿毛歴史館と連携して林邸に関する展示が行われる
月見の間 組子耐震壁が見える
監視部屋
06 宿毛まちのえき 林邸
飲食、物販スペース
キッチンスペース 地域の方が使えるキッチン
連絡先 早稲田大学理工学術院創造理工学研究科建築学専攻 古谷誠章・藤井由理研究室
木村 寧生 / Kimura Yasuki 住所 電話 メール
〒169-0073 新宿区百人町 2-12-16 080-6510-2115 kmrysk1120@gmail.com