Kousei Yamashita / Space in dialogue with history

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Po r t f olio_2020

掲載作品

01 早稲田大学卒業設計

受賞歴

Wo r k s

Awards

「開かれた地平と生きる」 - 堤防の狭間から -

2019

POLUS 建築デザインコンペ 佳作 日本建築学会設計競技 タジマ奨励賞 早稲田大学建築学科卒業設計 金賞

02 YAC competition - Hill of the Arts

「THE NODE」

都市街づくりコンクール 準グランプリ JIA 卒業設計東京コンクール 銀賞 BEAVER オンライン卒計展 光嶋賞

03 ポラス - 学生 ・ 建築デザインコンペティション

「フーリエの棲家」

せんだいデザインリーグ 100 選 JIA 卒業設計全国大会 金箱賞

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卒 業 設 計 _20 1 9

Por t f o lio _2020

早稲田大学 金賞

都 市 街 コンクール 銀賞

JIA 東京都 銀賞

BEAVER 光嶋賞

せんだい 100 選

JIA 全国 金箱賞

- 作品名 開かれた地平と生きる - 堤防の狭間から -

- 背景

( 敷地選定理由 )

対象敷地は、 宮城県石巻市十三浜 - 大室 - 地区 。 ここは、 私が中学三年から現在まで、 現地でのボランティア活動を通してお世話になってきた場所である。 ワカメやホタテの養殖が盛んな地域であり、 そうした生産品の加工をお手伝いする中で、 漁師さん、 自治会長さん、 旅館の方々、 地元の建築家など、 多くの人に出会った。 十三浜の方々は、 自然に対して畏敬と感謝を抱きながら、 年に二度の祭りを大切に守ってきた。 3.11 以降に失われた 「本来の暮らしの在り方」、 「地域の潜在的な豊かさ」 に焦点をあて、 集落を再編した。

- 設計概要 十三浜は長い歴史の中で幾度となく津波に襲われながら、 そうした自然災害と共に歩み、 文化、 生業を継承してきた。 当 敷 地 は 、 3 . 1 1 以 降 に 「 津 波 も潮の満ち 引き で あ る」 と 捉 え 、 堤 防 を 建 て ず に 「 海 と 生 き る 」 決 断 を し た 数 少 な い 地 域 だ 。 しかし、 最大の財産である浜辺は居住が許されなくなった事で空地化し、 大室を含む 13 の集落は合併、 解散を経て 10 の限られた高台住宅地に再編された。 本計画 * では、 この空地を 「陸の海」 として見立て、 かつて住宅に備わっていた 「冠婚葬祭、 漁業作業場」、 震災を機に衰退した土着舞踊である神楽、 獅子舞を再興する場として 「山手の斎庭」 「浜床の舞台」 という 2 つの建築を設計した。 生活を補う 「機能」 と、 各建築 ・ 周辺集落を繋ぐ 「舞踊」 とを共存させる事で、 古来から脈々と紡がれてきたこの地の文化的土壌を掘り起こし、 後世へと伝承してゆく。 大室を拠点として、 本来あるべき海との関係を問い、 物理的復興だけでは縮退していく村が新しく息吹くマイルストーンとして、 ランドスケープを含む一連の計画を提案した。 * 私は ( 意匠 ・ 歴史 ) を担当、 他二人は ( 構造 )( 都市計画 ) の 3 人で卒業設計を行った。

- 現地調査の様子

大室港に停泊する漁船

3.11 直後を写した写真

地元建築家と

漁師の佐藤さんの作業場にて

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Por t f o lio _2020

卒 業 設 計 _20 1 9

- 配 置 計 画 、 「二つの祭り」 と 「水際の畔道」 高台移転によって消失した空間を取り戻し、 「海と共にある暮らし」 を再編しようと試みた。 現在の 集 落は高台移転され、 漁師の日課であ った 「 海 を見 る」 こと が出 来 ず 、 祭 事 の中 心 で あ る氏 神 神 社 と も距 離 が 生 まれて し まった 。 祭りの道具が保管される場、 練習の場、 住宅に並置された作業場や納屋などはすべてが流され、 年間を通した 「暮らし」 に必要な空間が欠如している現状がある。 そうした状況を踏まえ、 「祭り空間の更新」 と 「生活空間の補完」 を目的とした 2 つの建築と、 それを繋ぐ 「あぜ道」 を計画する。 十三浜には、 生活と関わり深い 「二つの祭り」 がある。 海を 背景に 舞 う祭事であった 「南 部 神 楽 」 は 、 現 在 で は 公 民 館 など 室 内 空 間 で 踊られており、 大 室では佐 藤 省 吾 さん ( 自治会長 ) が中 心 と な り 、 海からほど近くに立つ仮設の倉庫を背に踊られているものの、 練習の場や正式な舞台が無いという課題がある。 二つ目の、 氏神神社から獅子舞が下り、 集落の民家を練り歩くことで悪霊を払う 「春と秋の祈祷」 は、 現在の住宅地と神社は距離が生まれてしまった為、 獅子舞はトラックで運ばれている 「距離のある」 現状がある。

「水際の畔道」 と名付けたあぜ道を、 3.11 の浸水域に沿って敷くことで、 神社、 二つの建築、 高台の住宅地をぐるっと結ぶ。 この畔道は、 日常導線であり、 祭りの導線であり、 津波が到来した位置を語る 「目印」 の役割も担っている。 この道が示す境界が 「生き死にの分かれ道」 であり、 口伝がなくとも避難時の指針になればと考えた。

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- 山手の斎庭 十三浜 の 古来か らの風習には、「二つの祭り」 を通 し た 自 然 と 氏 神への信 仰 と 、集 落 を練 り歩 いた 後 に 「 家 の中 で 行 う 挙 式 」 がある。

同 時 に 、 丘 から迫 り 出 す架 構 を 含 む 全 て は 「 気 仙 大 工 」 の 技 術 を 用 い て 構 成 し 、 地 元 の 木 材 を 利 用 し た いと考えた。

高台住宅地から徒歩 3 分ほどの場所に位置する 「山手の斎庭」 では、 漁師が毎朝 「海を眺め」 に訪れる。

架 構 の 下 を 通 る 畦 道 より 低 い 場 所 は 「 陸 の 海 」 に 見 立 て 、 建 築 は 「 海 に浮 かぶ サッパ 船 」 ( 地 元 の 小 さな漁船 ) を モ チ ーフとし た。

更に、 十三浜の中でこの 「大室集落」 のみ集会所が無いという状況を踏まえ、 この空間は神楽や獅子舞の練習の場、

「山手の斎庭」 は、集落に住む人々が大事に守ってきた自然に寄り掛かり、祈り、集うという 「 行 為 と思い 」 を継 承 していく為の空 間 となる。

挙式の際、 住民の会合、 宴が開かれる場として利用され、 3.11 後に失われた 「集落の暮らしを支える場」 として立ち現れる。 ①. 高台の住宅 で挨 拶 周 りを済 ませ た 新 郎 新 婦 一行 が 畔 道 を 降 り 「 山 手 の 斎 庭」 に 到 着 ② . 朝 、漁 師 が 海 を 眺 め る ③. 神楽の 練習 ④. 「春祈 祷」 の 際、神社から降り た獅子舞は畔道を 伝い 、高台の 住宅地へ と練り 歩く 。

* 祭りの導線 -

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- 浜床の舞台 この建築は、 海に沿って走る国道から程近くの傾斜地に建ち、 「山手の斎庭」 に比べると、 より公共的な役割を担う。

「 南 部 神 楽 」 の 際 に は、 「 海 を 背 に 踊 る こ と の 出 来 る 」 こ の 舞 台 を 求 め 、 気 仙 沼 や 南 三 陸 と い っ た 遠 方 の 地 域 か ら も 踊 り 手 が 集 い 、

日々の協働の作業場として 生業が展開される舞台であり、 「南部神楽」 を通して十三浜が 開かれる舞台でもある。

「踊り合い」 が行われる。 この場所で、 踊り手はその身体に神を宿し、 舞を披露する。

建築の殆どの空間は、 漁に関連する協働作業場、 貯蓄庫、 契約講の会合の場、 台所などが占め、

こうしてこの空間は、 地域と 「南部神楽」 という文化が結ばれ、 開かれゆく舞台となってゆく。

南部神楽の舞台は、 3.11 の浸水ラインの上に迫り出して配置した。 万が 一 、 浸水した際を考慮し、 舞台以外の諸室は浸 水ラインからセットバックした高 床 式 にし、スキップフロアで 空 間 を 繋 げ た 。

①. 日常的な協業の様子、 外ではフノリを干している ②. 室内の作業場では、 ワカメやフノリの加工が行われる ③. 契約講=十三浜の漁業組合の会合の様子 ④. 海を背に南部神楽が踊られ、 笛や太鼓が鳴り響く

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YA C C o m p e t i t i o n_20 20

Por t f o lio _2020

- YAC Competiton “ Hill of the arts ”

- 背景

( コンペティション概要 )

- 提出作品 A 1 × 1 枚

毎 年 ヨ ー ロ ッ パ で 開 催 さ れ る 国 際 コンペの 応 募 作 品 で あ る 。 対 象 と な る 敷 地 は イ タ リ ア - ト リ ノ 郊 外 の 丘 に 佇 む 中 世 貴 族 の 元 邸 宅 。 現在は使われていないこの敷地を、 新たに芸術の丘 [Hill of the Arts] へとコンバージョンさせることが求められた。 ギャラリー、レストラン、スイートルーム( 15 r oom ) 、 芸術家のアトリエ等を 既 存 を 改修しながら統合させ、 井 戸 を 中 心 に 、 各 棟 を 繋 ぐ ホ ワ イ エ 兼 バ ー の 役 割 を 持 つ [ N O D E ] を 挿 入 し 、 周 囲 の 自 然 の中 に キ ャ ビ ン を 配 置 し た 。

- T H E NODE Here is the hill of the art where people gather and connected through the art. There are beautiful foliage around the site and the architecture is planned to harmonise with the trees and plants. We studied the way stepping in yet live in harmony with this mesmerising landscape without ruining it. First of all, we separated and converted the architecture cluster built in the area into four groups : Hotel, Gallery, Open Space for Artists, and Restaurant. At the centre of the park, a 290-year-old well which functions as a landmark has been enshrined. We designed the “NODE” in the basement just beneath the well, as a people’ s line of flow which connects the four groups of buildings. Which would be a common space for diverse visitors who come across the hill of the art. Along with the NODE, we located three cabins that aim to be the places for panorama, meditation, and facing up to nature. Inside the cabins, people become able to free themselves from their socially constructed connections and dedicate themselves to nature and arts. This planning leads common space to the centre, and likewise individual space to the periphery. The NODE as a centre = the well works as a base of meet-and-mingle, and it becomes the origin of idea and art.

A g g r e g a t e s a n d Va p o r i s e We arranged a mirrored and curved shield roof that is made of aluminium to surrounds the well, which functions exceptionally well with this site. First, visitors enter through the basement approach and will hit the foyer-cum-bar ( NODE ). They could feel the excitement of the audience and reflected performers on the mirrored shield roof through a skylight at the foyer, as well as the existing buildings and trees outside. If they see the roof from the top of the hill, they will notice that the mirror shows the beautiful scenery like a blurred landscape painting, absorbing brilliant sunshine, nature and architecture around the site. This obstructive roof effectively alters the world it reflects, depending on ceaselessly changing weather, scene and standing positions of people. The roof “aggregates” space into the centre, and it “vaporise” the scene and flow lines of people to the periphery.

- 既存写真

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YA C C o m p e t i t i o n_20 20

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Overall Axometric

View from the NODE

Section

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Por t f o lio _2020

At the Foyer, see well and roof throuh the skylight

ArtCabin Axometric

View from cabin[Healing]

Cabin [ Facing up to nature]

Cabin [Healing]

THE NODE

Cabin [panorama]

Overall Planning

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05 - 背景

ベトナ ム国 際 コン ペテ ィショ ン _ 2 0 2 0

- ベトナム国際コンペティション (Street city Market)

( 課題概要 )

本コンペの Brief には、 フランスや日本の植民地支配からの脱却、 さらには第二次世界大戦やベトナム南北分立にまで 話が及んでおり、 歴史との対話が必要とされていたように感じる。 また、 経済発展によって加速した環境汚染や漁業 / 漁法の衰退 =Floating Maeket の減少など、 様々な問題を発見。 現状として、 ホーチミンの FM は、 サイゴン水系の環境汚染、 河岸工事によって衰退の一途を辿っており、 現存するホーチミンの FM は地上の市場よりも少なく、 存在価値が危ぶまれている。 ホーチミンの FM には、 メコンデルタ地域などからも大型の船が野菜、 果物などを売りに来るが、 その受け皿となる 「港」 がないことも現状である。

- 対象敷地

( 自身の通っていた小学校 )

対象敷地はベトナムホーチミン市の、 サイゴン川を挟んで東側の [Thu Tiem] である。 18 世紀などにはマーケットが立ち並び、 サイゴン側沿いには FM が展開された。 20 世紀の経済発展によってサイゴン側西側は発展を遂げたが、 当敷地は政府からも見放された野原に帰している。

- コンセプト [Gentle Membrane] " ここは、 漁業、 市場、 食、 文化、 経済の拠点であり、 「港」 である。 また、 ホーチミンの経済発展の陰で逞しく生き残ってきた、 闊達でプリミティブな商いや食文化、 そして人と川との関係を見守り、 育んでゆく 「大きな傘」 である。 サイゴン川から水路を引き込むと同時に、 川によって隔てられたホーチミン主要部と Thu Tiem の文化的、 観光、 経済の [ ハブ ] となる。 地元住民や観光客、 遠方からも生産者などが集うことで、 生鮮食品、 衣類、 ワインなどの流通拠点でもあり、 文化や観光の主要な拠点と成り得ると考えている。 "

[Market Uniqueness] ア ジ ア的な豊 か さ は、 人々の闊達さ 、 個人間の 繋 がりや 賑 わ い、 個 人が 地 域と相互影響す る事によって形成さ れ て き た と 考 え る。 また私たち は、 地域の人こそが 「商店」 の顔で あ り、 経 済 の最 小 & 最 重 要 な単 位 だと 捉 え た 。 「 大 きな傘」 の下ではゾーニ ングによって商店が 展 開 され る訳 で は なく 、 時 季 や イベン ト によって 様 相 が移 り変 わ る 。 ゾーンニングをせず、 場所を 「限定しない」 事が経済性とは直接結びつかない、 ホーチミンの闊達な市場のあり方を促進する。 こうして、経済性とアジア特有の商い/文化交流が保存されながらも、新しいホーチミンの都市計画にフィットする未来像を提案する。

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ベトナ ム国 際 コン ペテ ィショ ン _ 2 0 2 0

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ベトナ ム国 際 コン ペテ ィショ ン _ 2 0 2 0

Panoramic view of the architecture . [ from the channel from the Saigon River]

L o o k i n g u p a t t h e Vo i d o n t h e r o o f . [ t h e s u n b e a t i n g d o w n ]

Cross-sectional perspective. [ diverse activities continuously connected]

C r o s s - s e c t i o n v i ew.

Looking up at the roof from the outside yard. [ the dwelling hangs upstairs]

[ the waterway and the plaza are seamlessly connected]

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ベトナ ム国 際 コン ペテ ィショ ン _ 2 0 2 0

- ベトナムにおけるマーケットの将来像 ホーチミンでは、 経済発展の陰で環境汚染が進み、 川の生態系が崩れ、 土着漁業が衰退した。

これからますます、 船による移動や観光が盛んになると、 私たちは考える。

私たちは Floating Market を手掛かりに、 土着漁業の復興とサイゴン川インフラの活発化の構想を提案した。

サイゴン川によって隔てられた地域が、 相互間の 「小さな単位」 として交流、 交易が盛んになっていくことで、 資本主義的な 「巨大でインフラ」 な方法とは違った賑やかさをもたらす。

また、 私たちの提案する市場では、 一階部分に壁を設けず、 演奏会やワークショップスペース、 広場など、 時季や目的の変化に対して柔軟に空間が変化していく。

サイゴン川と水路によって繋げたことで、 ホーチミン主要部から水上タクシーで Thu thiem へ訪れる導線が生まれる。

現状の市場としての機能が、 何十年後かの未来に、 他の機能空間に更新される未来を踏まえての計画とした。

また、 遠方からの商人や、 漁師や野菜の生産者なども、 市場に直接訪れて売買を行う。

Isometric view

Roof

(Gentle Memblane)

[ t ; 3 5 ~ 2 0 0 m m ]

Roof beam

Interior view of the market. [ lined with stalls]

[Continuous Arch]

Housing [ 4 0 ㎡ × 6 ] [ 6 0 ㎡ × 4 ]

View to the outside. [ surrounded by lush vegetation]

M a r ke t / P i l ot i s [ Market/Theatre/Workshop.... .etc.]

[ 4765㎡

4 6 8 5 ㎡ ]

Channel [ A channel drawn from the river. ]

[ 6 8 0 ㎡

7 6 0 ㎡ ]

View from the interior staircase. [ orchestra playing]

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ポラス コン ペテ ィショ ン _20 1 9

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- ポラス建築デザインコンペティション 第六回コンぺ

佳作

- 作品名

- コンセプト、 ダイアグラム、 平面図

フーリエの棲家 Apartment

- 背景

‘Fourier’

( 課題概要 )

本課題で要求されたのは、 これからの時代や生き方に相応しい 「村」 のような 6〜8 世帯の集合住宅を考えるということ。 村といっても、 敷地は、 約 1,600 ㎡程度の大きさで、 そこに 8 世帯の家族が暮らす、 という計画であり、 集 ま っ て 住 む 豊 か さ が あ る 村 で あ る こ と 、 お 互 い 無 関 係 に 住 む の で は な く 、 よ り よ い 関 係 を も っ た コ ミ ュ ニ テ ィ に な って い る こ と 。 「血縁関係にしばられない共同体、 または農村のような大家族、 親戚一族など、 どんなものでもよいです。 新しい時代を感じさせる魅力的な暮らしと家、 住んでみたくなる村を、 自由に考えてください」 という内容であった。

- コンセプト 今回求められた、 現代における 「村」 を再解釈することから計画を始めた。
古来の 「村」 には時を報せる鐘があり、 畑で採れた野菜を共有し、 土間や井戸端での話に花を咲かせ、 年に一度の祭りや祝いの場では遠方から親戚や知人が集う。 彼らは村という共同体の中で一日、 一月、 一年という節目を共有していた事で繋がりが育まれた。 都市には、 人種も年齢も、 生活時間、 職種も様々な人の坩堝としての都市生活に、 「村」 が保持してきた 「節目 (= 周期 )」 を再導入する事は出来ないかと考えた。 先ず、 太陽時間に縛られずに多様な時間を生きる 6 世帯の住人の職種を仮定した。 同時に、 古来の村の住民たちが野菜や土間空間、 庭先をシェアしたように、 住宅の一部を都市と共有することを考えた。 集合住宅の中央の道寄りにカフェの母屋を設置し、 各住居を 「食卓」 と 「他の住居空間」 に分けた。 使われていない時間の食卓をカフェの一部へと置換し、 日中は部分的に住居がパブリックスペースへと移ろう。 更に、 「正餐」 と呼ぶ、 19 時に住民たちが同タイミングに食卓を囲む一日の節目を提案した。 ある人にとっては朝食、 ある家族にとっては夕食の 「正餐」 によって、 住民たちのコミュニケーションの萌芽となる事を期待した。 ( カフェの詳細等、 次頁で説明 )

- 提出作品 A1

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ポラス コン ペテ ィショ ン _20 1 9

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- メインパース

現代都市の生活空間は、 それぞれの生活リズムや住まい方が 「閉じた箱」 によって隔たれている。 その現状を受け、 「生活の隙間」 を活用したいと考えた。 集合住宅の中に正餐という一つの周期をインストールし、 食卓が使われない時間をカフェとして街に開く。 収益はこの共同体の軍資金として活用される。 こうして、 集合住宅としての関係性と街とのある種の連続性を育む事が出来たのではないか。

一見、 列車の様に並ぶ住居の平面であるが、 時間毎の使われ方を見てゆくと、 その規則性が崩されて横断的に空間が展開している事がわかる。 日常生活の隙間を縫う様に、 カフェによるパブリックな使われ方が起こり、 新しい集合住宅の在り方を提示出来たのではないかと考える。

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ハイパー ス クー ル ( 学 内 課 題 ) _20 1 8

Por t f o lio _2020

- ハイパースクール ( 学部 3 年課題 )

- 背景

( 課題概要 )

- コンセプト

学部 3 年次の 「ハイパースクール」 という小学校の設計課題である。

本敷地の東には住宅地があり、 川越街道と接続している。 北西には理化学研究所、 西には米軍の通信基地、

実際に各々が通っていた小学校の 30 年後、 つまり 2050 年を見据えた教育施設としての提案が求められた。

南には国立病院と団地が建っており、 米軍基地時代の性質に大きく影響されていると言える。

小学校の詳細なプログラムは自由であり、 地域に根ざした 「未来の小学校像」 を描いた。

- 対象敷地

( 自身の通っていた小学校 )

小学校の 50 年後を考えるとき、 この場所が周辺地域にポジティブな影響を与える拠点となって欲しいと考えた。 古来から人の往来が途絶えない川越街道と、 地域の小さなパスを再発見し、 この敷地に 「辻」 の中心地を設定した。

対象敷地は埼玉県和光市の、 戦時中米軍基地 [ キャンプドレイク ] であった場所の東端に位置している。

小学校は一般的にある程度閉じる事が求められるが、 勉強の実践の場として、 知識が結集される場として、

現在は研究機関、 大学、 公営団地、 小中学校などが、 当時のグリッドや町並みを踏襲しながら配置されている。

地域の多様な職種の人々が集い、 その知識や実践を小学生たちが吸収できる様な複合的な小学校の在り方を提案した。 辻の広場を中心とした各方角の場所性を踏まえながら、 広場の北西を教室棟、 南西を美術室や保健室、 カフェを備えた公共棟、 南西には地域の図書館と校庭、 北西には研究所職員等も利用できる実験棟とジム施設を配置した。 多様なパスが小学校に貫入し、 その場に即した多様な空間は、 地域が発展していく為の布石として機能、 波及してゆく。

- 模型写真

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ハイパー ス クー ル ( 学 内 課 題 ) _20 1 8

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領域性の強いコミュニティの形成

現状の地域コミュニティ

今後求められるコミュニティの在り方

「閾」 の意識が強く、 それぞれを繋ぐ 場所やきっかけが不在。

領域を越え、 小学校に内包した 「共空間」 に関わってゆくことで地域をつなぎ 合わせてゆく空間を考えた。 地域の人はカフェや運動施設、 作業スペース、

今後のビジョン 小学校

学校の中庭

周辺施設や住民が、 學校内部の

図書館などを求めて小学校に関与してゆく。 理化学研究所や地域住民、 国立 病院などに務める人々がそれぞれの施設内だけで行われてきた営みや技術等が

用途を求めて訪れる。 諸室をつなぎ合わせる 「中庭」 で

小学校内に持ち込まれて来ることにより、 境界線の概念は消失してゆき文化が

地域のコミュニティ基盤が構成される

此処で溶け合ってゆく。

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ハイパー ス クー ル ( 学 内 課 題 ) _20 1 8

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平 面 図 - 諸室名一覧

ゾーニング計画

1グラウンド 2 図書館 ( 主に公的利用 )

- 生徒と教師

3 図書館 ( 主に小学生利用 ) 4 オーディトリウム 5 控え室、楽器庫 6 薬局 7 カフェ 8 ファブラボ、美術室 9 職員室 10 畑 11 農業資料室

- 街の訪問者

12 農具置き場 13 給食室、調理室、保管庫 14 保健室 15 中庭 16 教室 17 広場 18 体育館 19 プール 20 理化学研究所展示室 21 理化学研究所分棟

- 近隣住民 - 周辺企業 ( 理研 , 薬局 )

22PC ルーム 23 待合室 24 アトリウム 25 機材室、控え室 26 ロッカールーム 27 倉庫

教室

自由学習室

12000

1300

9000

教室パース

3500

畑1

8000

部分詳細図

3000

教室 中庭 タイル 300×300[mm]

6000

7400

5500

1300

2000

4000

住宅

農具置 き 場

8500

歩道 タイル 600×600[mm] 9000

6300

保健室

6000

洗い場

更衣室 住宅 2000

体育館

畑2

農業資料室

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