はじめに
本書は大学入学の2019年から2022年の学部3年前期修了までの私の作品をまとめた作品 集である。専攻である建築設計の作品に加え、映像作品やグラフィック作品などジャンル を横断して、まとめたものになっている。
本書をまとめるにあたって、改めて過去の作品を見直してみると多様なジャンルの作品の 一つ一つに自分が当時考えていたことや常に感じていた疑問のようなものが作品に込めら れていた。
大学の課題であれば課題文を載せているし、映像グラフィック作品であれば添付したQR コードを読み取れば、「デザインとして何が求められ、それに対してどのような解を出した か」というのがわかると思う。しかし、それに加えて私自身がどのようなことに興味があり、 どのようなことを考え、その上で今の私があるということを作品を通じて追うことができ るポートフォリオとなっている。
現在の文化財保存コースに進むきっかけにもなった昨年暮らした土岐の家に関連する作品 に始まり、文化財保存関連、過去の設計課題、映像・グラフィック作品の順に載せている。
来年度の卒業制作を前にして、私のこれまでの作品を通じて考えてきたこと、感じてきた ことをアーカイブとしてここに記録する。
1999 愛知県 春日井市 生れ
2015 私立春日丘高等学校 普通科 入学
2015 同校 中退
2016 愛知県立愛知総合工科高等学校 建設科 入学
2019 同校 卒業
2019 長岡造形大学 建築・環境デザイン学科 入学
2021 同校 休学。岐阜県土岐市に住む。
2022 現在 同校第三学年 文化財保存コース 在籍中
○受賞歴・資格等
2018 測量士補 取得
2020 JIA関東甲信越支部 学生設計課題コンクール JIA山梨クラブ賞 受賞
土岐での暮らしの中で感じたこと
学部2年生を修了したのち、私は新潟の大学を一年間休学し、岐阜県の土岐市のある建物に一人で暮らしました。もともと私の母親の生家であり、 鉄骨造の工場の二階に住居はあります。
この建物は1966 年に私の祖父である宮川英明によって建設されました。
土岐市を含む東濃地方は美濃焼の産地で、私の祖父母はこの場所で「丸宮製陶」という陶器の上絵加工業を営みました。
この建築は家族構成の変化や用途の変更などによって増改築が繰り返されています。
増築されたハコ(木造の住居部分)の乱暴な天井下地の取り合いや、作業室に残された機能を失った外窓など、建築に残された生活の痕跡は私にとっ て生々しいものであり、その時間の重みは私の建築に対する考え方をもう一度考えさせるものでした。
人間が「生活する」ということ自体、尊く美しいものだと私は考えます。
それは社会的に立派な功績を残しただとか、テレビに出たことがあるだとか、そういうことではなく、言ってしまうなら「普通の人」でもそれは 平等にそうだと思います。
どこかの土地で仕事をし、生活をするということ自体に価値があります。
建築、特に住宅はその”生活のログ”のようなものを記録する器であるとも言えると思います。
将来、私がどのような仕事をするかはよくわかりませんが、もし建築を造る立場、もしくはそれに近い立場にいるのならば新築であろうと改築で あろうと生活の荒さやその不完全さを強く制圧するような器は造るべきではないとここでの暮らしを通じて強く感じました。
現存する鉄骨造の建物の構造模型や近作である2022年木の家設計グランプリに出展した木造新築計画案の二作品からポートフォリオは始まります。
求めるものではない。部分模型も可。
木の家設計グランプリ2022「母屋と離れ」 出展
岐阜県土岐市肥田町。
古くから美濃焼の産地として栄えた町で、この場所にも商業陶器の絵付加工業を営 む昭和41年創業の「丸宮陶器」という
製陶所の工場兼住宅がある。それは鉄骨二階建て(一階が工房と窯場、二階に住居)
の建物であり、今回はその建て替えの計画である。
2代目の主人の一人息子である6歳の虎太郎は二人の”おてつだいさん”に大変か わいがられており、
三時の休憩時間には忙しい両親に代わって遊び相手にもなっている。
本来であれば、雇用主と従業員は仕事の契約関係であり、お互いのプライベートに
踏み込むことや、その人の家族について踏み込むようなことは少ない。虎太郎と”
おてつだいさん”の交流や主人との仕事中の何気ない会話はまさに仕事の関係を超
えた瞬間であるし、
美濃焼はそのような人間関係の中で生産されている。
現在使われている建物に変わる、主人家族の生活とおてつだいさんも交えた仕事の 場がつながるオモヤ。
また、それに加えて、”仕事の以外の場”として機能するハナレを計画した。
そのため同業者同士は密に連絡を取り合うような関係であり、とても深い関係性だと言え る。多くの人が陶器商も含め陶器に関わる仕事についており、また、地域のお祭りなども 仕事の関わりの中で行われるように
仕事のコミュニティ=地域のコミュニティと言っても過言ではない。
しかし、当然町には陶器に関わる仕事だけではなく別の商売をしている人や 名古屋の街に出てサラリーマンをする家庭も多くある。
そのような家は”おてつだいさん” という形で製陶のコミュニティに関わることがある。
製陶にはさまざまな工程があるが、いまだに手作業で行う作業が多く、 絵付けに関して言うと、転写シートで貼り付けられる絵柄以外の模様などは いまだに筆で描かれており、多くの人員を必要とし、 現在も多くの”おてつだいさん” が活躍している。
瀬戸物と並ぶ美濃焼の産地である土岐市であるが、中でも、小皿の肥田、どんぶり の駄知、タイルの笠原など地域によって作られる陶磁器が異なる。 肥田町は土岐川(庄内川)に注ぐ、一級河川:肥田川沿いに広がる町であり、 肥田川の河岸段丘によって形成されている町となっている。 当敷地の隣には八剣神社という神社があり、周りよりも少し高い場所に当敷地はある。 八剣神社の副参道に隣接するように工場は建てられ、 また、先代が駐車場用地として取得した向かい側の敷地を利用してハナレを計画した。 陶器を運ぶトラックが通ったり、神社に散歩に来る人々など一日を通して賑やかでハ ナレやオモヤからも豊かな時間が楽しめるようになっている。
製陶業というのは気候や環境によって仕上がりが変わってしまういわば生モノを扱 うので、住居と仕事場は同一敷地や近隣に建てられることが多い。のどかな場所で はあるが窯元は周辺に密集しており、 工場と住宅を建てるには土地が狭く、鉄骨造の建物の一階に作業場と窯場、二階に 住居というパターンが非常に多く見られる。現在の建物も絵付場と窯場の動線が交 錯し、またフロアによって生活の空間と仕事の空間が完全に分断していた。現在の 機能を絵付場・窯場・住宅の3つに整理し、また仕事以外の空間としてのハナレを 追加した。それらをずらしたり角度を振ったりしながら、3つの機能の関係性を少 しずつ作りながらそれらを繋いでオモヤとし、もう一つの敷地にハナレを配置し、 主人の家族や”おてつだいさん”との”仕事以外の交流” の場とした。
旧中島浄水場は1994年に廃止となった長岡市の浄水場跡である。 2004年に敷地の一部が長岡水道局から長岡市に譲渡され水道公園として活用されている。敷地には実施に使われて いた建物が残っており、1998年に配水塔、2013年に監視室棟、ポンプ室、予備発電機室が国の登録文化財に登録 された。しかし、水道の供給という用途を失ってからはうまく活用できていないのが現状であり、これらの建造物を 活用していくことはできないか考えた。
本課題はグループワークにて行い、都市・まちづくりコース1名+文化財保存コース2名の3名で課題を行った。
我々の提案は公園内周辺の空き地を利用してコミュニティ畑を作り公園内の文化財建造物を休憩所や図書館などにコ ンバージョンして活用するという提案である。
今回、我々の提案の中で改修を行い文化財活用を行ったのは監視室棟、予備発電機室、ポンプ室棟の 3つの建造物である。
監視室棟を市民図書館。予備発電機室棟をシェアキッチン、ポンプ室棟を ミーティング室、休憩所にコンバージョンした。
旧中島浄水場ポンプ室は床面のレベル差が多く、最も活用の難しい建物であった。外観からは一見一層分の建物に見えるが、地下に埋まる水道管に合わせた ポンプを置く場所が地下にあり、二層分の高さがある。昭和初期に建設された、梁のない大空間であるため、耐震性能が極めて低いと判断できる。また、合 計8台の水道ポンプが当時のまま残されており、これらも産業的な遺産であり、価値は高い。活用方針としてはまず構造補強としてGLのレベルに合わせて H鋼(350×200×8×12)を3本増築した。この構造補強が非常に障壁になり、GLに合わせて入れるので、北側の既存の点検のための回廊がそれにどうし ても構造梁が干渉してしまう。今回は北側の回廊部分を撤去してレベルを合わせて新たな回廊を増築し野菜コミュニティのためのミーティングスペースを設 けた。また、既存の回廊には手すりがついており、それが水道管を加工して作られたものであった。とてもチャーミングで価値が高いのでどうにか残すこと はできないか考えた。しかし、その高さは700mmであり、安全基準を下回っている。
アイデアとして床から400mm立ち上がりを設け、その上に手すりを移築することで H=1100mmの安全な手すりを造ることができた。
即興。アドリブとも呼ばれる。Charlie Parker Jrが一般化した、「ビバップ」以降のジャズで はコード進行やテーマのみを規定し、その中で即興で音楽を作っていくというのはよく知られて いる。また、近年流行しているHipHop文脈のフリースタイルラップバトルやレゲエ文脈の DeeJayクラッシュもビートの上で即興でリリックを作り、相手を攻撃しあうというものもある 型の中の即興性という面では同じである。 このように音楽における即興性はとてもわかりやすいが、音楽以外の芸術にもそのプロセスには少 なからず即興性は含まれていると感じる。
2018年公開作品「万引き家族」を監督したことで知られる是枝裕和監督は子役には台本を渡さ ずに演技させることで有名である。初期の歌舞伎もこのような大筋の展開だけを規定し、細かい 場所は稽古などでの即興性にゆだねるといった手法を用いた「口立て」 を用いることが多かった。演 者の語る「自然な演技」というものは時に不自然に感じることが多いが、万引き家族は本物の自然 の演技をうまく捉えられているのではないかと感じる。 また、日本のお笑いの世界ではアドリブという手法は非常にポピュラーであり、芸人を評価する 指標の中に アドリブ力 というのは大きな比重を占めているのではないかと思う。
大阪を拠点に公演を続けている吉本新喜劇もストーリー全体の構成自体が演者のアドリブによって 変化していくことを拒絶しない構造 となっており、台本という枠組みを与え即興によって全体が作 り上げられていく過程はビバップ以降のジャズと非常に似ている。
このように、完全即興ではなく「型」というのがアートにおける即興性を促す大きなカギとなっている。
それらのもつ不確定性というのは全体の魅力につながる。現代美術家の村上隆は自身の著書で 「今、来ようとしている”これ”は以前あった”あれ”の引用なのではないかとかをコンテクスト として、理解する。それが知性とされるのが現代アートのシーン」と述べているが、アートの即 興性を扱うことは現代アートの「コンテクストに対する応答」という概念と親和性が高い気がす るのだ。自分の中から湧き出ている表現ではなく、環境や空間によって影響されていくというプロセス はアートの本質に近づく気がするのだ。 今回のアートセンターでは演劇における従来型の舞台ではなく、敷地全体をめぐるように演劇の 舞台が展開され空間や観客に影 響されながら進んでいける「型」となる舞台を持ち、パフォーミ ングアーツの拠点となるようなアートセンターを構想した。
長岡に藩が置かれる前、長岡城(現在の長岡駅周辺)から北に3kmほど離れた場所に 蔵王堂城 という城が置かれた。そこを中心とする蔵王地区が今回の敷地だ。 現在は金峯神社として多くの市民が集まる場所となっている。長岡移転後も古くから この土地は「蔵王様」と崇められ、街の人々にとって特別な場所であったことがよく わかる。広大な越後平野の中に長岡はあるが、信濃川やその支流の自然堤防 や、現在も 残る蔵王の城郭などの微妙なラウンド もまたこの街の人々にとって特別なものであ る。今回のアートセンターでは信濃川の堤防を造成によって敷地内に取り込み敷地内 にラウンドを作った。
新潟には大地の芸術祭という大規模な芸術祭がある。長岡に近い十日町を中心に様々 な場所で現代アートが展示、上映される。これらの多くは自然のなかや廃校となった 学校の中など分散して配置されている。しかし、これらの分散しているアートをアー カイブし、研究公開する「現代アートの拠点」のような場所が不足している と感じている。 十日町市に原広司設計の「キナーレ」があるが、情報公開や研究が盛んに行われてい る施設になっているとは言い難い。特にパフォーミングアーツなどのような形を持た ないアートは拠点のような場所がないと上映も難しく、大地の芸術祭は他の芸術祭と 比べると、「形をもたないアート」が少ない 印象がある。
このような芸術作品は一回きりや一定期間の上映の場合が多く、アーカイブの必要は 軽視されがちだが、消えてなくなってしまうものほど、映像や道具や手法などをアー カイブし、それを一般の人にも広く公開し、触れてもらうことが重要であると考える。 今回のアートセンターではパフォーミングアーツの拠点 を蔵王に作る。また、それらを 公開し教育する場としての芸術図書館を設け、コンテポラリーダンスやパフォーミン グアーツに持たれる高尚なイメージを解く。また演劇やダンスのワークショップに よって多くの市民に触れてもらうことを目的とした。
第二学年
「アートセンター」
アートとは? 鑑賞するもの? 何を? 体験するもの? 何を、誰が? 表現するもの?
何を、どうやって?
■設計条件
住 所: 長岡市西蔵王3 丁目5-1を含む街区 面積:約 27,700 m 構造:自由 ※街区内には160台程度の駐車スペースが確保されるものとする
敷地は新潟県長岡市中島4丁目。長岡の街中を流れる柿川に面している。 長岡城の外堀 として機能した柿川。 かつては外川(信濃川)に対して内川 と呼ばれ、 かつては貿易で栄えた。柿川には河戸という船着き場が設けられ信濃川を往来する船の すべての荷物を河戸で取り扱う定法を作った。 今回の敷地は柿川の外、すなわち藩の統治(法)の外側(法外) にある場所だ。 同じ柿川の外で敷地より南に1km程離れた場所に遊郭があり、戦後はGHQによって赤線 が引かれ実質的に法外なものが許されていた 。このようにゆるくおおらかさのある土地だと いうことが言える。
また、敷地周辺の住宅街には後付けでつけられたような建築物 が多く、雁木を始め、長岡の 人々は単管パイプや木材のようなRCに比べて脆い材料を使って後付けで構造物を作り、 厳しい気候に対応してきた。現在もRCや木造で建設された”本体” よりも早いペースで 壊され作られ続けている。それらの多くは建築申請が出されておらず、ある種「法外な建築」 とも言える。冬の積雪に対応するため一階部分がRCで造られている住宅が多く、外部に 対して閉じた外観を持つ”本体” だが、これらの建築物があることにより、 この街のゆるさ が保たれている気がした。
1,000 2,000 1,000 900 1,100 1,000 2,000 1,000 1,000 2,000 1,000 1,000 3,000 2,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 2,000 1,000 1,000 2,000 1,000 3,000 1,000 2,000 1,000 999 1,001 1,000 1,000 1,000 2,000 1,000 1,000 2,000 1,000 3,100 600 1,800 600600 1,800 600 2,000 4,000 1,000 4,900 1,000 2,000 1,000 1,000 2,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 2,000 1,000 2,000 1,000 1,000 2,000 1,000 2,999 3,000 1,000 2,000 1,000 2,000 1,000 2,000 1,626 1,000 1,000 1,000 1,000 2,000 2,000 1,000 1,356 2,000 1,000 1,000 2,000 1,000 1,000 1,000 2,000 1,806 1,000 1,000 5,000 2,000 1,000 2,452 2,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 4,000 2,000 2,000 2,000
3種類の住戸タイプを一つの敷地内に配置することで強い 境界が引かれる。「しろ」 と「きっかけ」 に導かれ、住民は 付属建築を自分のためや他人のために増やしていく 。たとえば 自分がタバコを吸うために屋外に喫煙室を作るのもいい し、家族のためにテラスに屋根をかけるのもいい。 また、居住環境としては採光が難しい北側一階部分には共 用部分を設け、敷地北側の中島集会場の機能を移転させる。 地域のために集会場についたてを作ったりすることなども この集合住宅は許容する。
A棟:低所得者住宅(賃貸契約)
4人×6戸 24人居住可能 市営中島団地3号館の入居者を移転(一部)。市営中島団地3 号棟は長岡市が母子家庭向けに貸し出している住宅。(3階 建て2K 12戸)
B棟:建売住宅 4人×3戸 二階建て 12人居住可能 集合住宅内に建てられた建売住宅
C棟:マンスリーマンション 2人×5戸 4人×1戸 14人居住可能 賃貸住宅より短期の契約を想定した住戸。短期出張などオ フィスが増えている長岡駅前で働くオフィスワーカーなども 利用する。トイレとシャワーが完備されており、入浴や洗濯 は一階の共同利用の施設を利用する。
2020建築・環境デザイン演習 第1課題 「集合住宅+」
〇敷地
面積:1,018.95
用途地域:近隣商業地域(建蔽率80%、容積率300%)、準防火地域
事業者は土地取得に関して継続的な働きかけをしつつも、この計画地に第1期の建築プロジ ェクトとして都市居住モデルを実現し、それによって残りの土地の地権者ヘアピールし、第2 期以降に街区全体を完成させるという決断をした。 あなたはこのプロジェクトの建築提案を行う建築家である。と同時に開発事業者から、あら たな都市居住モデルを実現する上で必要な事業提案も求められている。プレゼン資料提出期限 は2020.11.04JST9:00。第2期の計画ビジョンも示唆することができればプレゼンの成功率は高くなるだろう。
1,575 2,994
隣地境界線
2,300 2,300 2,300 2,500 2,300 2,000 1,390
6,440
道路境界線隣地境界線
2,300
2,200 2,200 2,300 2,350 2,350
719 6,440 1,511
課題文
第一学年 後期演習課題 第四課題 「キャンパス並木沿いの住宅」
■主旨 第1課題では自分と友人の共同生活の空間を設計し、第2課題では土蔵に座敷をデザインする ことで和風のインテリアを学び、第3課題ではランドスケープ・デザインの初歩を学びます。 本課題ではいよいよ住宅の設計に挑戦します。住空間は第一に、日常的な生活行為の場であり、 基本的な空間寸法や寝・食・衣・洗・納などの生活単位空間を理解し修得していきましょう。第ニに個人住宅は、個人的また家 族的空間であり密接なつながりを持った人々との共生の場です。ゆえに機能的要求例えばシェルターとしての住宅、採光や通風 などの快適な室内環境などを満たすと同時に「住み手」固有のニーズを満足させねばなりません。大学キャンパスに面する外壁 は南面なので、ふたり部屋で学んだことを生かしてください。そのファサードデザインも重要です。そして隣人や周辺環境、街 並み等との関係性といった社会的側面も重要となってきます。今回はみなさんの10数年後かもしれません。そんな「30代夫 婦子供2人+小型犬」のための住宅をテーマに取り組んでみましょう。とは言え、個人的な思い込みによらず、住み手 にとっ て豊かな生活空間を計画することを通し、環境デザインの幅広い思考とプロセスについて学ぶことが期待されています。 ■課題
〇敷地 敷地は長岡造形大学キャンパス北側の、宮関2丁目(別紙A,Btc,D+Fより選択する)の一角です。
〇建築主 今回の住宅の建築主がこの敷地でどのような生活をするのか、この家族のためにどのような空間が可能か、多面的に考えながら エスキースを進めていって下さい。
30代夫婦、子供2人(小学生、性別は自由)。小型犬1匹。
・要求条件
「家族、ぺットが快適に暮らせるようにしたい」
「キッチンや水回りの家事動線をスムースにしたい」
「仕事や子育てに忙しいが、デザインも重視して欲しい」
「両親や友達が来ても対応できるゲストルームが欲しい」など。
以上の要望は、当初、建築主が思いついたものに過ぎません。設計を進めていくためには建築主に様々な質問を投げかけていく
ことが必要です。趣味はなにか、食事は誰が作るか。建築主 の生活を理解する上で重要です。本課題では自問自答したり、友人や家族に聞いてみても良いでしょう。
1/60 A-Aʼ断面図
1/60 B-Bʼ断面図
建築・環境デザイン演習Ⅰ第一課題「ふたり部屋」
■課題主旨 1.長岡造形大学の学生駐車場のどこかに建設されるドミトリーの一室を想定してみてください。そこに、建築・環境デザイン 学科の同居することを考えてみましょう。初めて親元を離れて独立した生活をしなければならない状況を想像してください。
同じデザインの道に進む友人とはいえ、今まで知らなかった他人との共同生活です。さまざまな事柄を話し合い、強力に助け合 う相手になるかもしれません。同ーの体験を経ることによって、一生の良きともになるにちがいありません。
2.世界中どこの都市(NY、パリ、ロンドン、ミラノ、ウィーンなど)でも、多くの人達が、知り合いと部屋をシェアして暮ら しています。ひとつの玄関のなかに、男女5人が共同生活している場合すら、めずらしくありません、 ただし、そこにはひとつの明確なルールがあります。それは、各人がプライベートスペース(個別空間)を持ち、一方で、みん なで使うパプリックスペース(共有空間)があるということです。
この課題では、個人のプライバシーを確保しながら、ふたりで一緒に使う空間をどのように楽しく設計するのかが重要になりま す。
■設計の条件
〇一般事項
1.大学の学生駐車場に、鉄筋コンクリート造のドミトリー(学生寮)が建設されることを想定する。皆さんは、その最上階の一 室を、自分と友人のふたりが住む部屋として設計する。
2.その学生寮は、すべての住戸ユニット(一戸)が、内法寸法5.4mx5.4mx5.4mの立方体である。
3.床面積の合計(延床面積)は、45m2ぴったりとする(足りなくてもダメ、オーバーでもダメ)
4.スケルトン&インフィルの形式で、そのインテリアを自由に設える、という設計を学習する。
5.住戸ユニットには、要求された床面積に従って、ロフト階を設ける(ただし木造で)。ロフト階のレベルは、FL+2.7mにし なければならないが、その他の位置に追加してもよい。
6.外部にはバルコニー(鉄筋コンクリート造)を設ける。そのレベルは、FL士0m またはFL士2.7 mあるいはその両方でもよい。
7.階段の面積は、建築基準法で算入する場合があるが、、この課題では含めなくてもよい。同じく、バルコニーの面積も含めな くてよい。
8.居室に差し込む太陽の光は、非常に重要である。マドを大きくして、陽の当たらない陰湿な空間やバルコニーをつくらない こと。
9.窓からは、信濃川の対岸まで見ることができ、長岡の花火が見えるものとする。
■プライベートスベース/個別空間
9.同居するふたりは、ベッド(シングルサイズ)1台ずつとA1サイズのテスクを所有している。
テレビ、オーディオ、ビテオは、個別でも共有でもかまわない。
10.それぞれには、1ケ所ずつのワードローブ(収納)がある。1週間分の衣料が収納でき、さらにテニスやスキーなどの運動靴も、 ここに収納することにする
11.本棚も、それぞれ1ケ所ずつ持っている。
12.個室には、外に開放する窓が、絶対になければならない(非常に重要)。
13.個室相互は、一部カーテンなどで簡易的に間仕切りされていてもよい。
■パブリックスペース/共有空間
14. 玄闘、下駄箱を設けること。玄関は、ロフト階(FL+27m)にあってもよい。
15.トイレ・洗面・シャワー・バスルームは、ルームメイト同志で共有する。
16.奥行き600、幅2400以上のシステムキッチンも、共有する。
冷蔵庫・キャビネット(食器収納)も共有する。
17.ダイニングテープルと椅子も共有する。好みでソファタイプとしてもょい。
18.バルコニーには植物を配すること。好みで椅子やテーブルを配置してもよい。
■学生寮 19.その学生寮は、大学の学生駐車場エリアのどこかに建設されるものとする.
20.その学生寮は、一般ビルで言えば、5階建てほどの大きな規模とする 21.その学生寮の階高(各階の高さ)は、一律2.7mとする(つまり5.4mの半分)。
22.設計するユニットは、学生寮の最上階に位置するが、両側に隣室があってもよいし、角部屋でもよいし、3方が開放されて いるユニットでもよい。隣室と自分達のユニットが、どのように並んでいるのかを考えること。 23.玄関は、共有廊下あるいは共有階段に面するものとする。共有廊下のレベルは、学生寮の階高にあわせ、FL+0mあるいは、 FL+27mのどちらかとする。
■その他 24.窓(ガラス)の向きに注意。陽が入るべき部屋と、陽が入らなくてもいい部屋をよく考えること。 25.空間のデザインを勉強している美大学生の部屋らしい、個性ある快適な部屋の設計とすること。 26.新聞のチラシにのっているような、ちまたのマンションの間取りを求めているわけではない。各人が 建築家やインテリア デザイナーになったつもりで、デザインに取り組むこと。
Rhino/ jwcad/ Photoshop / Illustrator
concept
このよう に自然に形成された地形を我々は感覚的に捉えることができる。「重力」
という自然との共通の言語を持っているからだ。
そこに人工的な操作が加わるとそれは「違和感」となって、我々はうまく地形を捉 えることができなくなる。
しかし、我々はそれがきっかけとなり一定に流れていくはずの空間や時間の全体の 構造に気がつくのではないかと感じる。
一定に流れていく時間に点が打たれる感覚だ。
浚渫の方法を再考し、天幕をかけて空間を形作る。
それはいずれ流れ込む砂によって埋まり、また来年に、もしくは再来年に(砂防堰 堤が埋まるペースは不規則である。)浚渫される。
光が差し込む。
リリース日:2022/8/20 型番:TNR-167/TNRCD03