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韩国诗人协会编 詩で味付けした 幸せな韓国食 Ja p a nes e
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詩で味付けした 幸せな韓国食 (시로 맛을 낸 행복한 우리 한식) The literary world history Publishing corp. / 2013 / 19 p. For further information, please visit: http://library.klti.or.kr/node/772
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詩で味付けした 幸せな韓国食 作者 韩国诗人协会编(76名代表诗人)
チョンビョン1
メミル煎餅
1
チョン・ユンホ
カ ン ウ ォ ン ド チョンソン
オイルチャン
江原道旌善の五日場2に行けば ハムべク
咸白山のこぶしのように痩せたおばあちゃんたちが プチムゲ3を売っている路地がある こっけいな歳月があぶらぎる鉄板に ジョン
幸運のように薄いメミル 煎 4を焼いて 悲しみが発酵しきったムグンジ5を まな板の上できざみ チョンビョン
煎 餅 をつくる
1
メミルは韓国語で蕎麦のこと。煎餅(チョンビョン)とは、もち米の粉や小麦粉などを練ったも
のを、鉄板などで焼いた餅類のことをいう。 2
5日ごとに立つ市。
3
フライパンなどに油をひいて焼く食べ物の総称。
4
煎(ジョン)は、材料を薄く切り、小麦粉をまぶして焼いたものの総称。
5
白菜のキムチを長い間おいて熟成させたもの。
本当にぶさいくで ぶっきらぼうな旦那が 布団をぐるぐる巻いて眠っている姿 一口噛むと 人生のピリ辛い味を感じる トタン屋根を打つにわか雨を聞きながら トウモロコシマッコリを飲んでいた友は 一人二人消え去り 後姿だけ見せながら逃げていた少女たちも 跡形もないが テ ベ ク
この地の空を支える太白山脈のふもと さらり流れる川の間に チョンビョン
メミル 煎 餅 を焼くおばあちゃんたちは 香ばしい油のにおい漂わせつつ まだそこにいる
2
ミヨック(わかめスープ)
イ・ギュリ
3 母の味
母が私を産んで、ミヨックを食べる時 熱いスープを飲んで、涙のような汗をかく時 長く暗かった出産の苦痛が初めてあらい流されたと
十月抱いていた生命を吐き出し この地、母の母、祖母の祖母が食べたミヨック 空っぽの子宮を満たし、傷口を癒してくれる ミヨックから母が出てきた
孤独な産婦たちを癒した涙のようなスープだったので 変でしょう ミヨックを食べると、怒りも痛みも消えて おだやかな静けさが、からだいっぱいに打ち寄せる からだが心であることを信じさせてくれるスープ
心虚ろな日は、ミヨックを煮る 口の中でやさしく巻きつく青い海
ミヨックを食べて母になった 母を知った
4
トック(韓国式雑煮)
イ・クンベ
5 正月になると、僕のふるさとの村の キム村長宅の庭の発動機が めまぐるしく働きつづけた 家ごとにせいろうで蒸した餅米を持って来て 発動機で餅の棒6をひいて行くために混雑していた うちの旦那が運んできた 餅の棒を包丁で切るのは私の役割だった 本家の長男の嫁の母は夜遅くまで 五代奉祀の祭壇に捧げる 祭物の準備をしておいては 一人息子のソルビム7用の綿のパジチョゴリにチョッキまで 手縫いで揃えるために、一睡もせずに夜を明かした 祭祀を終え、お年寄りにご挨拶し 家族全員がテーブルを囲んで食べる一杯のトックは 我々の最大の名節である正月の朝にだけ味わえる 祝祭儀式のとてもおいしい特別食だった 「トックをたくさん食べると死んじゃうんだよ」
6
トックに使われる餅は、ふつう、機械から押し出された棒状の餅を切って、その材料とされる。
7
旧正月である‘ソル’を迎えるために、新しく準備する服。
祖母の笑い話のように、一杯のトックは年ひとつ トック食べて年をとり、トック食べて背が高くなる 床につきながら、指折り数えて待っていた 正月はトックを食べる日 とった年全部下ろして戻りたい 母の手作りの新しい韓服を着て ご先祖様に敬礼したその朝に
6
ソルロンタン
チョン・ジンギュ
7 ソンノンタン
先農湯という言葉が語源だそうだが、王様が春が来て、初の鋤入れ をご披露なさる日、雲のように群がってきた民たちに煮てくれた肉の ソンノンタン
スープ、それが先農湯だというが、その言葉には長い時間がついてい て、その言葉の音のとおりに呼ばれたソルロンタンという言葉により 情が行く、もっとおいしい、身のある言葉だ
私たちの食べ物の名前
イ ム ン
には身がある、約百年伝統の里門ソルロンタン8で焼酎一杯添え、塩を 入れて、ざく切りの葱入れて、カクトゥギ入れて、カクトゥギの汁も入 れて、今日も真鍮のさじをさした、100年ソルロンタンの店には、今日 も老果の味覚でいっぱいだ、肝、チレ、牛たんなどの混ざったスユク9 一皿をぺろりと平らげた、焼酎一杯一気に空けた、雨もしきりに降り続 け、近くの仁寺洞の古本屋、通文館でやっとのことで手に入れた趙芝薫 の処女詩集『草葉
断章』初刊本を横に置き、ソルロンタンを食べる、
趙芝薫先生を思う、この店に先生が生まれて初めて一緒に来た、本当に おいしそうに食べられた、特にずずっと汁を底まで飲み干した先生の姿 を忘れることができない、運の良い日の憑虛、 玄鎭健の人力車の引き手 のようだった、この店に来ると、誰それなく庶民になる、一人の民だ、 我が国の食べ物には空腹と豊かさの両方がともにある、庶民と貴族がと
8
ソウル市鐘路区にあるソルロンタン専門店で、1902年創業の韓国で一番古い店。
9
牛や豚のゆで肉を薄切りにした料理。
もにある、王様も、その春の畑を耕してから、ソルロンタン一杯をおい しそうに食べつくされた
8
神仙炉 シ ン ソ ル ロ
チェ・ムンジャ
9 10
戊午士禍 、その恐ろしい死の陰から チョン・ヒリャン
政丞11 鄭 希 良 は、森に入って隠居しながら 真鍮の火鉢に炭をくべた 柴の戸開け出で、野菜を採り あの家この家から得た残り物を集めて煮ると 口の楽しい食べ物 神仙のように、無欲で食べる味 蕩平策12のその味だった
士禍が終わり 宮廷に戻った鄭希良は、あの時のあの味が忘れられず 宴に神仙炉を求めた コギジョン13、ナマコ、アワビ、銀杏、センマイ、二枚貝、鮒― 炭火で煮ても、あの味ではない
10
ム オ サ ファ
戊午士禍 (ぼごしか)とは、1498年、朝鮮王朝中期(15世紀末から16世紀半ば)に、前後4回にわたっ
て起こった「士林派」に対する政治的迫害事件のうち、燕山君の時代に最初に起こった事件。 11
大臣のこと。
12
各派閥から人材を登用するという朝鮮時代の政策。
13
肉類の 煎
ジョン
へこんだ真鍮の器で沸立てたその味ではない 神仙のように食べたその味でもない
10
九折坂 ク ジ ョ ル パ ン
キム·ユソン
11 あなたがいらっしゃるという便りに 心がまっさきに五色の花畑です 陰陽を合わせ五味を備え 最も貴く綺麗なものだけ選んで 十は満ちるので避け、過不朽なので 幸運の九数であなたをおもてなしします くだらない話ならば、牡丹模様の螺鈿で覆いますので チョンビョン
素肌のような小麦 煎 餅 の上に、五方色の雲だけのせてください まちまちに切実な花心を、満月で巻いてさしあげます
クジョルパン
『大地』の小説家、パール·バック女史が九折坂の螺鈿漆器の蓋に驚いて、開け てみて、また呆然としてしまったといいます そうです
壊れてしまうと箸もとれないでいた
昌慶宮の隣に住んでいた叔母は、体つきも春の日差しのようでしたが、
料理の腕前にもやはり長けていて、捨てるところのない女性だといわれていました が、体の弱い叔父が、血色の良い国学院の先生の友達を呼ぶ日には、ふたつの頬を 赤くしては、夜どおし物差しで測ったように、千切りにして炒めるごま油の香りで、 月光の縁を夜ふけまで埋め尽しました
笛の先生は箸ももたずに笛だけ吹きました
見えるようで見えないような花心に、叔母が花の蓋をする夜でした。
白菜キムチ
キム・フラン
12 冬を迎える町角で 純潔な肌 色合いの良い白菜は、いい香りがした
塩でしんなりとなった柔らかい肌に 千切り大根、葱、ニンニク、カラシナ、セリ 食べごろの塩辛、舌を刺す唐辛子 私の故郷のなまりをぴりっと和えて 重ね着させて甕に入れる
ペク
キムジャンキムチ、ポギキムチ14、ポッサムキムチ15、白キムチ さくさくおいしく漬かれば 幼い頃、母のスカートの裾をつかんで歩くように 故国を離れて暮らしていても、その手をはなすことができない
お母さん、私の母の愛に満ちた手作りの味 ご馳走の中にも堂々と入っている
14
株ごと漬けた白菜キムチ。
15
カキやエビ、イカなどを白菜キムチで包んだもの。
さわやかな歯ごたえの見栄えのいい白菜キムチ 正真正銘、わが民族の代表食
13
カクトゥギ
イ・スイク
14 クッパとソルロンタンには 当然ついているべきものがある そう、カクトゥギ スプーンひと口いっぱいに押し込んで 次の瞬間を待つ熱い期待の中に赤く染まった カクトゥギ、その魅惑的な口当たりを思い出す カリッと、 かめばはずむような喜びが口の中いっぱいに広がり 私は言葉を失って失敗を重ねる、すでに絶頂に達した その味のせいで― それでか、1960年代、アメリカに渡って歌ったキム·シスターズも <朝夕の食事の時はランチにビーフステーキがおいしいと自慢しても 韓国の白菜キムチ、カクトゥギにはかなわない>16*と言いながら カクトゥギについての賛歌をあまねく この世に広めた カクトゥギ、 誰でも簡単に作れるが、 しかし、誰にも簡単に作れない、土俗的な気質の
16
*キムシスターズの歌「キムチ、カクトゥギ」の歌詞の一部。
その味のために 私は恋文を書くように甘くささやく、最高に美味しい 冷たい特別食について!
15
カレイの刺身
キム・クァンギュ
16 早くから私たちは信じている 私たちが神と似ているか 神が私たちに似ているだろうと
言いたい口と隠したい性器の 左と右、または右と左に 目と耳と腕と脚を一つずつ分けもつ 我々は常に左と右を比較し 秤と車輪を作り、壁を築いた
分けずにはいられなくて 自由におかれた山と海を 右と左に分け
私たちの体と全く同じ形に 人形と勲章と武器を作り 私たちの頭に真似て 教会と官庁と学校を立てた ついには、音や光や星までも 左と右に分けて
いまや、私たちの頭と体を分けるしかなくて 刺身をつまみに酒を飲む 私たちの姿があまりにも目新しくて 全身をぶるぶる震わせている カレイのからだを生きたままでちぎって食べつつ 奇妙なことに、両目が右側に寄ってついていると笑うが
まだ私たちは知らずにいる 右と左、または左と右に 決して分けることができない カレイが一体何に似ているのかを
17
プルコギ
イ・ガリム
18 韓国人に 一番好きな食べ物を挙げてみろというならば いつも五本の指にプルコギが入る。 世界のどの国の人でも 一度食べて見たなら 断然プルコギが最高だという。 外国人が時々プルコギのことをコリアンバーベキューだと そう呼ぶが あくまでも「プルコギ」だと 固有名詞で呼ばせるべきだ。 猫が障子の桟をひっかくような音で 窓際に粉雪降る冬の日 冗談好きの仲間を三四人呼び出して あったかいオンドル部屋で円座して 鉄板にダシ汁を入れながら食べる そのプルコギの味ったら! 私のフランスの友人パトリックに 肉をだた焼いて食べるのではなく いろいろな薬味醤油に一晩寝かせてから食べるのが その味をひきだすのだと教えると、
どのように肉をベッドに寝かせるのかと聞いてくるので プハハハ、プハハハ、プハハハ…… 腹を抱えて笑ったことを思い出す。 プルコギのおいしい食べ方 分かりやすく説明できる人はいないだろうか。 19