architecture portfolio 建築 ポートフォリオ 野口颯汰 作品集

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高校時代は、課外活動としてデザインに関する取り組みを行い、授業内で主に施工や木造住宅の工法・構造について学んだ。

出身校:栃木県立宇都宮工業高等学校 「文部科学省 -スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール事業」

Professor :清水郁郎教授

Lab motto :「見る前に跳べ」

Method : フィールドサーヴェイ

実際の建築・街並み・集落などを対象として

フィールドサーヴェイ による 調査や実測 を行い、建築・ 都市の新たなデザイン方法を 帰納的 に導き出す。

調査内容:島民インタビュー・観光客インタビュー・実測調査・フロッタージュ分析・ドローン撮影・GPS調査(etc...)

調査 ① :三重県鳥羽市答志町 -離島漁村集落-             「共同体の変容に関する研究」

Main site:兵庫県豊岡市

Purpose :地域活性化

Method :リノベーション

改修ボランティア として 地域活性化 の一端を担って いく学生団体を結成。建物の施工・構築方法につい

て学び、豊岡市の関係人口を増やすことでまちおこ しに携わるという長期的なプロジェクトである。

調査 ② :宮城県石巻市田代島

-猫島-           「愛玩動物と人間の共存関係に関する研究」

Plojects:兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」庭園改修計画(=プロジェクトリーダーを担当 )& etc...

庭園改修では クラウドファンディング を行い、目標金額75万円の115%となる 86万8400円を達成 することに成功。 将来の住環境に関する研究やデザインの仕事への憧れ。また、調査・分析をもとに設計を行いたいと考え所属。

Laboratory
Club

Contents

Housing Business proposal Project Diploma works

修士課程1年前期  大学院設計課題「週末住宅の設計」

実在する建築作品と同じ条件で設計、構築と構成 の考え を元に「水・光・風」などの自然的要素 を軸に設計。

修士課程1年前期

第10 回 ヒューリック 学生アイデアコンペ

銀座が抱える潜在的な問題を調査・分析 し、 銀ブラ促進 を図るための拠点を設計する事業の提案。

学部3年後期 - 4年前期 学生団体トリノス実施プロジェクト

学部4年後期 卒業設計

兵庫県豊岡市にある歴史的建造物の庭園改修 の案件、 学生主体で「企画・設計・資金調達・施工」を行った。

近代都市・機能主義の問題や弱点を系譜的に分析、 「空間・時間・エレメント」 に関連する建築理論の追求。

水庭のVILLA|rethink between   2022:Housing   課題:「週末住宅の設計」 制作時期:修士課程1 年次前期 建築用途:住宅 構造形式:在来木造 対象敷地: 神奈川県真鶴半島 構想期間:1週間 制作期間:2022.8 - 2022.9
水庭のVILLA|rethink between element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink between 水庭のVILLA|rethink between

真鶴半島の付け根近く、南へ向かって下ってい

く丘陸地が、一旦勾配を緩める肩のような地形 上に敷地はある。周囲を取り囲む広葉樹を中心 とした雑木林の向こうには、太平洋が大きく静 かに広がっている。ここに「家族とその友人た ちが過ごす週末住宅を」というのが施主の希望 である。想定される多様な過ごし方に対し、「豊 かな自然とゲストハウスとしての空間性」をど のように活かし両立させるかが設計の軸となる。

そこで、必要諸室により生まれた二つのボ リュームに対し、切妻屋根を跨るように架け、 前面には水庭を設けた。水というエレメントが、 広大な景色を借景として映し出しながら、建築 内に「行けない場所」という空間を与える。さ らに水庭は、深く迫り出した軒先や建具などの 建築的エレメントとともに光や風などを操作 し、機能ではなく、自然的な環境要素に基づく 空間のゾーニングを可能にさせる。

多様なエレメントが重なり合うことで、生活を 送るほどにあらゆる様相が浮かび上がるような 建築。「休むために身を潜め」「遠くを望むため に丘を登り」「縄張りを張ってそこに過ごす」な

ど、私たち人間が根源的に愛着を持ち、豊かさ を覚えるような棲家を目指した。

element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink between N Site plan 1/400
敷地西側から東側を見る 敷地東側から西側を見る 敷地から海を見る
site Site : 神奈川県真鶴半島
高台から敷地と海を見る
水庭が建築における「行けない場所」として機能し “繋がり”と“隔たり”の両面性を与える
17 12 11 22 3 1 10 7 6 8 15 16 9 5 20 4 21 2 2 1 3 19 18 14 13 1820 1820 910 910 910 910 910 910 910 910 910 910 910 1820 1365 1820 1820 1820 1718 1718 1013 1013 2730 2730 4550 4550 3640 3640 5460 29120 910 3640 4550 2731 4093 2275 2275 2958 1139 1139 1592 N 1:内庭 2:外庭 3:通路 4:リビング 5:収納 6:洗面室 7:トイレ 8:脱衣室 9:浴室 10:キッチンダイニング 21:テラス 22:水庭 23:吹抜け(リビング上部) 24:主寝室 25:吹抜け(広間上部) 26:吹抜け(玄関土間上部) 27:アトリエ 28:サンルーム
11:広間 12:玄関土間 13:客用トイレ 14:客用浴室
1:inner court 2:outer court 3:corridor 4:living room 5:storage 6:washroom 7:toilet 8:bathhouse 9:bathroom 10:kitchen dining 21:terrace 22:water garden 23:atrium( living room ) 24:bedroom 25:atrium( hall ) 26:atrium( entrance dirt floor ) 27:atelier 28:sunroom 29:roof balcony 30:veranda 11:hall 12:entrance dirt floor 13:guest toilet 14:guest bathroom 15:guest washroom 16:guest bathhouse 17:garage 18:alcove 19:closet 20:japanese-style room   ( guest room ) 1F plan 1/100  ③ ① ②  ④  ⑤  ⑥  ⑦  ⑧  ⑨ element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink between 水庭のVILLA|rethink between
29:ルーフバルコニー 30:ベランダ通路
15:洗面所 16:脱衣室 17:物置部屋 18:床の間 19:押入 20:和室(客室)
28 29 27 26 25 23 24 30 1820 1820 910 910 910 910 2730 1820 1820 1718 1718 1013 1013 6370 6370 8190 8190 3640 5460 29120 3640 4550 2275 2275 N 2F plan 1/100  ③ ① ②  ④  ⑤  ⑥  ⑦  ⑧  ⑨ element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink between 水庭のVILLA|rethink between 1:内庭 2:外庭 3:通路 4:リビング 5:収納 6:洗面室 7:トイレ 8:脱衣室 9:浴室 10:キッチンダイニング 21:テラス 22:水庭 23:吹抜け(リビング上部) 24:主寝室 25:吹抜け(広間上部)
27:アトリエ
30:ベランダ通路 11:広間 12:玄関土間 13:客用トイレ 14:客用浴室 15:洗面所 16:脱衣室 17:物置部屋 18:床の間 19:押入 20:和室(客室) 1:inner court 2:outer court 3:corridor 4:living room 5:storage 6:washroom 7:toilet 8:bathhouse 9:bathroom 10:kitchen dining 21:terrace 22:water garden 23:atrium( living room ) 24:bedroom 25:atrium( hall ) 26:atrium( entrance dirt floor ) 27:atelier 28:sunroom 29:roof balcony 30:veranda 11:hall 12:entrance dirt floor 13:guest toilet 14:guest bathroom 15:guest washroom 16:guest bathhouse 17:garage 18:alcove 19:closet 20:japanese-style room   ( guest room )
26:吹抜け(玄関土間上部)
28:サンルーム 29:ルーフバルコニー

4:storage

5:bathroom

6:kitchen

7:hall

8:entrance dirt floor 9:atelier

10:garage

11:sunroom

|P_引違い戸:鴨居 t=30mm|格子戸(ガラス)|敷居 t=30mm|Q_階段(段板):ベイマツ集成材 36mm 松煙+柿渋塗布)|R_浴室床:タイル |シンダーコンクリート|防水層FRP防水 2mm|S_フローリング床 : スギ t=15mm 松煙+柿渋塗布|構造用合板 t=12mm|T_土間床 : モルタ ル金ごて仕上げの上表面強化塗装|土間コンクリート t=200mm|捨てコンクリート t=30mm|防湿フィルム|割栗石 t=9 0mm|U_土台: 120 × 120|基礎パッキン|水切:ガルバリウム鋼板|際根太|V_畳床 : 薄畳 t=15mm|構造用合板 t=12mm|鋼製床束

2 8 1 7 3 11 12 9  D Q  A  B   N  H  O  E C  J   G  F M   K  P 270 1775 6565 270 400 1750 ② ‒ ② section line 8:玄関土間 9:アトリエ 10:物置部屋
room
1:corridor 2:living
3:bedroom
dining
room   ( guest room )
12:roof balcony 13:japanese-style
14:terrace
③  ④  ⑤  ⑥  ⑦  ⑧  ⑨ Section plan 1/100 element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink between 水庭のVILLA|rethink between  ③  ⑦  ⑧  ⑨  ⑥  ⑤  ④

1F:広間

軒先は外壁の基準線から1450mmせり出し、入射角の大きい夏の日射を遮りながら、水庭から反射光として室内に自然光を取り入れる。冬になると太陽光の入射 角は小さくなるため、軒先に遮られることなく、室内に直接取り込まれる。低い位置から差し込む夕方頃の日射は、平面的に斜め方向に差し 込むため、可動式の縦 格子のルーバー戸により遮る。広間は玄関土間からキッチンダイニングにかけて、吊り戸による空間の増減や、ルーバー戸による光の調節を しながら、諸室として の質を変化させていくことで、暮らしの中心として住人の活動に応答していく。

- 微調設を可能にする「水庭・屋根・建具」の設え建具を閉じる

⑥ 31.6° 54.9° 78.5° 270 1775 6565 270 400 1750 ⑥ ‒ ⑥ section line   : solar angle   : view of the Pacific Ocean   : forest side 4 5 6 7 3 2 1 1:approach 2:water garden 3:veranda 4:hall 5:corridor 6:inner court 7:outer court 1:アプローチ 2:水庭 3:ベランダ通路 4:広間 5:通路 6:内庭 7:外庭  ①  ②  ①  ②
element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink
Section plan 1/100
between 水庭のVILLA|rethink between

吊り戸により、アトリエ・サンルー ム・ルーフバルコニーのつながりを 操作する。丘のような空間から南東 側の太平洋の景色を望む。

壁は外部を内在化させ、ガラス張りの部屋の境界は内庭の先へと消える。 壁の開口は太平洋の景色を絵画のように切り抜く。

登り梁の天井と木造トラス梁による大開口で構成される空間。身を潜めながら 太平洋の景色を見渡す。開口高さの中心は、座った際に視線の重心が重なる。

2F:主寝室
-
2F:主寝室
③  ③  ④  ⑤  ⑥  ⑦  ⑦  ⑧  ⑨  ⑨  ③  ⑦  ⑧  ⑨  ⑥  ⑤  ④ Section perspective 1/100 element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink between 水庭のVILLA|rethink between ② ‒ ② section line
- 吊り戸による空間の増減 -
登り梁とトラス梁による両義性の獲得 -
1F:リビング - 壁とガラスによる外部の内在化 -

玄関土間は広間と繋がり、建築内の余白として人々の活動に対してフレキシ ブルに応えていく。土間床の高さと広間の床の高さは差が400mmであり、

格子天井がテラス側に延長し、上階のスラブを支える柱は外部に連続して並 ぶ。空間を構成する建築的エレメントが、内部を外在化させていく。

土間側に身体を向け腰をかける。  - 水が空間を融解させていく - 1F:浴室  - 暮らしの中の余白としての空間 - 1F:玄関土間  - 梁と柱による空間の外在化 - 1F:和室  ③  ④  ⑤  ⑤  ④  ⑥  ⑦  ⑧  ⑧  ⑨  ③  ⑦  ⑧  ⑨  ⑥  ⑤  ④ Elevation perspective 1/100 水庭のVILLA|rethink between 水庭のVILLA|rethink between element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation ① ‒ ① section line

屋根:遮熱ガルバリウム鋼板 t=0.4mm 立ハゼ葺き

下地:構造用合板 t=12mm 下地ゴムアスファルトルーフィング 断熱材:A挿押出法ポリスチレンフォーム3種 t=30mm(垂木間)

垂木:105×105 @455mm(通気層)

軒天:針葉樹合板 t=12mm

松煙+柿渋塗布

梁桁:120×270mm

登梁:120×210 @455mm

外壁 : 焼スギ板 t=15mm オスモ塗

横胴縁 20×40(通気層)

透湿防水シート

水庭のVILLA 所在地/神奈川県 主要用途/週末住宅

家族構成/夫婦+子供二人

区域区分のされていない区域

●用途地域

指定なし

●第4種風致地区

→建築物の高さ制限:15m以下

/道路からの後退距離:1.5m以上

/建物が周囲の地面と接する位置

の高低差:原則6m以下

/隣地からの後退距離:1.0m以上

/木竹等の伐採制限

●法22条区域

→屋根及び外壁等に不燃材料を使用

●建ぺい率

40% 第4種風致地区による

(<都市計画法 50%)

●容積率

100%(<道路幅員×0.6×100%)

●接道の長さ

4.6m(実測による)

●道路斜線制限

1.25L

●隣地斜線制限

20m+1.25L

●北側斜線制限

●日影

1種 4時間・2.5時間 H=4m

(対象建築物 高さ10m以上)

●開発行為

→湯河原町開発指導要綱

(敷地面積 1,000m2

中高層建築物:建築物の高さ

12m、階数 4)

●景観法

有(外壁等の色彩制限)

●造成宅地内防災区域外

/土砂災害警戒区域外

●水道

前面道路配管40A

●ガス

プロパン

●汚水・雑排水

浄化槽

●雨水

床 : モルタル金ごて仕上げの上表面強化塗装

土間コンクリート t=200mm

捨てコンクリート t=30mm

防湿フィルム

割栗石 t=90mm

敷地周辺図

element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation 水庭のVILLA|rethink between 水庭のVILLA|rethink between

水庭のVILLA|rethink

木造トラス梁 : 120×450 (下端材120×120mm) 棟木:120×210mm 柱:120×120mm
○構造ダイアグラム
●都市計画区域
between  7:35 AM 12:30 PM 16:45 PM 2022/10/20 07:35 2022/10/20 12:30 2022/10/20 16:45
側溝処理

Ginza Under Construction  - 銀座仮面空地防止計画 -

2022:Competition

第10回 ヒューリック 学生アイデアコンペ

テーマ:「誰も知らない銀座」

制作時期:修士課程1年次前期

制作期間:2022.5 ‒ 2022.7

建築用途:複合施設(商業施設・工場・オフィス)

対象敷地:中央区銀座

共同制作:

小川裕二(西沢大良研究室)/ Yuji Ogawa(Nishizawa lab)

高野成晨(清水郁郎研究室)/ Shigeaki Takano(Shimizu lab)

平塚翔 (西沢大良研究室)/ Sho Hiratsuka(Nishizawa lab)

Requirement

2021年、東京メトログループが発表した「東京の街のイメージ調査」 では、銀座については、「高級感のある」、「大人向けの」、「都会的な」、 「商業施設が充実」の4つの項目が上位となり、新宿、渋谷等他の街と 比べても最も高いスコアでした。この傾向は年代が上がるにつれてよ り強くなり、同調査では銀座は「洗練された大人が集う場所」のイメー ジを持たれていると分析しています。

確かに銀座には、老舗百貨店や歌舞伎座を中心に品のいい年配の人々 が行きかう―いわゆる「銀ブラ」する―街といったイメージがあります。 しかし一方では、若い人々を中心に、有楽町から銀座1丁目あたりの 各県のアンテナショップやマロニエゲートといった「銀ブラ」も存在

します。こういった感度のいい人々は、そこから近年開発が進む、日 比谷、京橋、日本橋へも足を延ばしています。このように、銀座とい う街は様々な顔を持っていますが、その魅力は、実際に自分の足で歩 く「銀ブラ」によって体験する街並み、歩行者体験の魅力に代表され

るのではないでしょうか。

今回のヒューリック学生アイデアコンペの敷地は、銀座1丁目の中央 通り沿いに位置し、東京メトロにも直結しています。この場所に実際 に降り立ち、歩いて、あなたの体験から考えた、これからの銀座に必 要な建築を提案してください。あなたが自分自身の「銀ブラ」から考 える未来の銀座―誰も知らない銀座―が今回のコンペのテーマです。

課題文より

銀座 東京都中央区銀座一丁目 容積率1100% 建物の最高高さ66m

Site 敷地形状は32m角の正方形である。敷 地に高低差はなく、駐車場は隔地で確保 しているため、敷地内での駐車場確保は 不要である。建物は、1FL-9m(地下2階) で東京メトロ地下道と接続している。

element isometric axome entry statement purpose site background analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -
Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 - Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -

Design statement

銀座の街づくりは、地域の人々が中心となり魅力を醸成して きたが、そこには常に「銀ブラを楽しめる街並みづくり」と いう考え方があった。現在銀座では、東京都から「東京都高 速道路(KK線)再生方針」が、また中央区からは「銀座・築 地周辺緑のプロムナード構想」が発表されている。いずれの 計画も、広域的な歩行者中心のネットワークを形成すること で、銀座の回遊性(銀ブラ)を促進し、街の魅力を増強しよう とするものである。

しかし、実際の銀座の街では、高度な土地利用により発生す る「仮面空地」の存在と、銀ブラ促進のために本来必要であ るはずの「休憩場所」の不在という、大きく二つの問題があ ると考えられる。本提案では、銀座周辺縁を取り巻くこれら の問題を相互に解決させることで、街の魅力をより強固なも のとし、その拠点となることで、これからの銀座にとって必 要な存在となる建築を目指した。

Ginza Under Construction -
-
銀座仮面空地防止計画
element isometric axome proposal concept diagram plan section elevation entry statement purpose site background analysis scene model others

01.日本一地価の高い銀座の土地利用

近代都市において、月極やコイン

パーキング( 未利用地 ) などの、

人間の活動に排他的な土地利用と

しての「空地( vacant lot )」が 現れる中、銀座には圧倒的に空地 が少ない。それは日本一の固定資 産税ゆえに、床を積層させて最大

床面積を獲得するという、銀座特 有の高度な土地利用によって空地 が消費されているように思える。

04.事業提案:「仮面空地防止計画」

仮面空地防止計画を実現するために、事業スキームはビジター、 運営者、敷地A から敷B,C,D... に移る新規テナント企業を中 心とする運営形態を採用する。銀座デザイン協議会が作成した 中央区の2つのルールである地区計画、駐車場に加えて「仮面 空地」という新たなルールを加えることで、一定規模以上の開 発計画について、開発業者、銀座デザイン協議会、本計画の運 営者と協議し、空地性期間を設けるという提案である。

02.「仮面空地」の存在とその定義

しかし、銀座の雑居ビルの上階は、収益が見込めずにテナントの入れ替 わりを繰り返している。実質空きの状態であり、使用すらされていない

フロアまで存在している。つまり、銀座的・商業的な建築ファサードを 表層に纏った、仮面性を持った「空地」である。私たちはこれを「仮面 空地」と定義し、現在の銀座の街における問題点として捉えた。

03.銀ブラのための「休憩場所」の不在

一方で、銀座の街では休憩場所( open space )が不足していることも 問題である。「銀ブラ」という言葉が意味するように、歩くことを楽しむ のが街の特色の一つとされていが、無料で休憩できる場所がほとんどな

く、せっかく買い物に来たとしてもそのまま帰ってしまう人が多く存在 する。このような場所の不在が、銀ブラにとって不足している点である。

○ 提案  空地性付与期間 → 新規企業の認知

05.休憩場所としての空地性の付与 この空地性期間は、①商品の試用期間

②休憩所 ③広告を兼ね 添えており 、仮面空地の防止と利用客の銀ブラ促進の効果をも たらす。仮面空地防止計画を実現するために事業スキームはビ ジター、運営者、敷地A から敷地B,C,D... に移る新規テナン

Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 - Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 - Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 - 03.銀ブラのための「休憩場所」の不在
GINZA 638907㎡ 392276㎡ 12977㎡ 202744㎡ 34923㎡ 11058㎡ IKEBUKURO SHIBUYA
proposal ?
× 従来  知られない仮面空地の企業テナント 空地マップ 案内所 カフェ K car 工場 レストラン ショッピング アプリケーション 部材調達 ¥ 付加機能 開発協議 管理 ¥ 商品の試用期間 仮テナント 支援・管理 ¥ 利用料 ¥ 購買意欲 ¥ 空地を知る 空地を知る 移動 銀ブラ ¥ 解体 仮面空地 建設 銀座デザイン協議会 利用客 運営者 新規企業 中央区のルール ・地区計画 ・駐車場 + 仮面空地 +休憩所 +広告 ¥ element isometric axome proposal concept diagram plan section elevation entry statement purpose site background analysis scene model others

敷地A 敷地B.C.D.…

運営者 06.対象敷地を拠点とする周縁土地での建設システム

OFFICE STOCK STOCK FACTORY FACTORY

FACTORY SHOP SHOP AD

FACTORY STOCK STOCK

OFFICE SHOP SHOP

従来の銀座のテナントビルで は、ブランドのイメージが先 行してしまうがために、ビル の上層部への集客・収益が見 込めずに仮面空地化を繰り返 す。本提案では、周縁建物の 工期の間に「空地性期間」を 設けることによって、銀ブラ に不足している休憩場を人々 に提供しつつ、仮面空地化の 防止を図る。 空地性期間中は、出店予定の 新規企業の商品・サービスを 試用期間としてその場所で展 開する機会を設け、ブランド としてのイメージではなく、 商品としての価値(モノとし てのイメージ)がその場所に 定着されていく。竣工後には、 銀ブラをする人々に新規店舗 として認知されたまま出店す ることが可能となり、新たな 仮面空地の発生を防ぐ。出店 予定の店舗・企業は一時的に 敷地Aに仮テナント・オフィ ス拠点を構え、敷地B.C.D… にて出店の準備を行う。

仮面空地が起きている既存テナント
仮面空地が起きている既存テナント 新規テナント企業 仮面空地が起きている既存テナント
仮面空地 施工・受け渡し 解体・建設Ⅰ 空地期間
新規テナント企業
新規テナント企業 利用客
仮面空地 銀ブラ促進・モノのイメージの定着 仮面空地化の防止  解体 企画・開発 仮テナント にて準備  建設 対象敷地 へ移動 建設  建材の調達 商品の展示 建設Ⅱ 回収 工場 部材発注 工場 部材発注 Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 - Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画
element isometric axome proposal concept diagram plan section elevation entry statement purpose site background analysis scene model others
-

key element ① :巨大エレベーター

Metro Water storage tank 地下鉄の風を利用した柱内換気システム

key element ② :ストックヤード

key element ③ :周遊エスカレーター

key element ④ :作業場 & 仮テナント

(図上…)搬入導線出入口。解体材及び新規の建築部材を、巨大EVからストックヤードへと運ぶ。 (図下…)中層部の仮テナントエリア。客導線は建築周囲に巻きつき、人々の活動が通りに対するファサードとして現れる。

Wind  Wind Cool tube  Max +66000 (mm) Observation area Office floor Restaurant floor Stock yard A Factory & Tenant Stock yard B Factory & Tenant Entrance Basement floor ( Tokyo Metro ) 16.17 (FL) 13.14.15 (FL) 11.12 (FL) 10 (FL) 5 (FL) 2.3.4 (FL) 1 (FL) -1.-2.-3 (FL) 6.7.8.9 (FL)
07.全体構成 Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 - Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -
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本敷地の新規企業の仮テナントとなるフロアでは、期間中、インテリア・内装工事が同時に進められていく。

Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -
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Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -

東京メトロ地下通路出入口のエントランスにて、モニター化された空地期間中の建物の情報を得て銀ブラへと出かける。

Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -
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Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -

周縁敷地の建物は、工期中メッシュシートによって内部の様子が伺え、歩き疲れた人々の銀ブラにおける休憩スポットになる。

Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -
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Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -

出店予定の企業により試用としてサービスが展開され、工務店の内装デザインのミーティングなども並行して行われる。

Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -
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Ginza Under Construction - 銀座仮面空地防止計画 -

2021:Project

豊岡周辺市街地まちおこし学生団体トリノス 実施計画

(当時プロジェクトリーダーを担当)

制作時期:学部四年次前期

建築用途:外構計画

対象敷地:兵庫県豊岡市

設計施工:豊岡周辺市街地まちおこし学生団体トリノス

代表・鈴木雄大 (山代悟研究室)/ Yuta Suzuki(Yamashiro lab)

協力:

小山俊和さん(施主兼アドバイザー)

・とゞ兵オーナー

・豊岡周辺市街地活性化団体「to do」

村尾隆之さん(アドバイザー)

・有限会社集落園代表取締役

兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画

兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画

Requirement

兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画

2020年夏、「歴史的建造物保全」の活動を呼び

かけに、兵庫県豊岡市にある元老舗料亭の改修 作業に携わった。それを機に学生団体を結成し、 まちづくりやリノベーション等同じ興味をもっ た学生を募り、改修ボランティアとして地域活 性化の一端を担っていくことを目的としている。 地域の賑わい拠点を作るとともに豊岡市の関係 人口を増やすことで豊岡市のまちおこしに携わ るという長期的なプロジェクトである。

その活動の一環として、兵庫県景観形成重要建 造物指定の元老舗料亭「とゞ兵」の庭園改修の 依頼を受けた。関東から関西の6つの大学の学 生が有志で集まり、豊岡市の職人とともに学生 主導で、設計・施工・資金計画を行なった。

兵庫県豊岡市に位置する「とゞ兵」は、廃業して いた老舗料亭を複合施設に変え、新しい業態で再 利活用している。施設内には、イベントスペース・ レンタルスペース・レンタルキッチン・屋外多目 的スペース・カフェやギャラリー、ポップアップ ショップ・バー&レストラン・カバン服飾雑貨オ フィス・コワーキングスペースなどがあり、音楽 やアート、野外イベントやマルシェなど、新しい 豊岡の文化の発信拠点として、地域活性化の中心 の役割を担っている。

「とゞ兵」では、築90年を超える木造部はオリジナルのまま保全し、商業区画には 若手起業家が活動でき、アートやイベントなどで利用できるように改修。人の流れ ができることにより、建物が保全されていく取り組みをしている。本計画の改修を 行う庭側の建物外観は「兵庫県景観形成重要建造物として指定されている。

施主からの要望としては、歴史的 景観を有する建物外観を活かすこ と、さらに、沿道側の桜並木を借 景として室内に取り込めることが 求められた。また、豊岡市は冬に 積雪があるため、竣工後の営繕性、 施設自体が地域活性化の拠点とし ての役割を担っているため、庭園 内での人々の活動についても意識 することも必要となった。

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Purpose Site
団体 HP とゞ兵 HP 豊岡
entry statement purpose

兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画 兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画

Process

Before

元老舗料亭である「とゞ兵」の庭 は、元々は一階室内側からの鑑賞 用に使用されていたが、廃業後の 庭は手付かずのままであったため、 雑草が生い茂り、また、周囲はコ ンクリートブロックの塀で囲われ ていた。

↑除草作業、コンクリートブロック塀の撤去作業を行い、改修計画を可能にするための事前準備を行った。

↑除草作業・撤去作業後の様子。既存の植栽は剪定が必要であり、また、敷き詰められた砂利は汚れているため、 洗浄作業が必要なことが分かる。

庭園及び塀の設計は、高さ設定が重要となる。借景と建物外観の互いの見え方を考えるために現地での実測を 行った。また模型制作のためにも、建物や庭園の内側だけでなく、沿道側の細かな寸法に至るまで計測をした。

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団体 HP とゞ兵 HP
entry statement purpose

兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画 兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画

Construction site

デザインの検討・材料の発注・施 工に至るまで、地元の庭師の方に 助言を頂きながらプロジェクトを 進行した。また、東京に戻ってか らもオンライン上で繰り返しエス キスなどをして頂いた。

「CAMPFIRE」QRコード↑

クラウドファンディング上で費用を募った。リターン品、PR動画の作成、 SNS上での宣伝など、一貫して学生主体で進められた。多くの支援者の 獲得により、目標金額750000円の115%となる、支援総額868400円 を達成することに成功した。

模型の制作も行い、完成品は対象 敷地の「とゞ兵」の建物内に展示 させて頂いている。訪れた人々に 団体の活動を広める機会となる。

団体 HP とゞ兵 HP element isometric axome background site analysis proposal concept diagram scene model others plan section elevation
entry statement purpose

天然竹には黒竹と火晒竹の2種類を用いる。建物の外観に合わせた2色 の自然素材によるコントラスが、歴史的建造物の景観を担保しながらも、 塀の特徴的なデザイン性を生み出す。またVE案(Value Engineering) として、内側のプライバシー性が損なわれない程度に、竹材の間隔をス リッド状に設定した 。使用する竹材の本数を減らすだけでなく、外側か ら見たときには人影が映り、庭での活動を微かに感じさせる効果も生み 出した。

element isometric axome background site analysis proposal concept diagram scene image model plan section elevation 25 60 25 21 60
黒竹 7分(=Φ21mm) 真鍮釘 #14×38 (2.1×38mm) 胴縁 25×60mm + 防腐・防水剤塗料 受材 25×60mm + 防腐・防水剤塗料 火晒竹 7分(=Φ21mm) アルミ支柱 Φ70mm 焼木目 ステンレスナベビス 4×45mm 基礎壁端部(既存) 断面詳細図 1 :2
団体 HP とゞ兵 HP entry statement purpose
兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画 兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画

「天然竹の使用・学生でも施工が可 能・歴史的重要建造物の景観に合 わせる」。これらの主な条件に沿わ

せたデザインは、本来、単調にな りがちである。デザイン性を高め るために、竹材の色や高さの組み 合わせ方を工夫し、倉庫側から庭

園へ、山並みがなだらかに降りて いくイメージを持たせた。材料の 施工性と学生の技術力を考慮し、 竹垣は“清水垣”の組み方をベー スとする。

真鍮釘 #14×38 (2.1×38mm)

アルミチャンネル 22丸柱用 焼木目

庭は和室と面し、座った状態から でも借景を望むことができる塀の 高さにしている →

ステンレスナベビス 4×16mm

ステンレスナベビス 4×16m

アルミ支柱 Φ70mm 焼木目

火晒竹 7分(=Φ21mm)

黒竹 7分(=Φ21mm)

胴縁 25×60mm + 防腐・防水剤塗料

受材 25×60mm + 防腐・防水剤塗料

最高高さ部分は、高さのある倉庫側の印象を和らげる。同時に、既存倉庫のコンクリート壁や金属部などの、歴史的建造物の外観にはそぐわ ない箇 所への視線を遮る。基本的な塀の高さは、プライバシー性だけでなく、周辺環境の特性を活かせるように設定している。道路から建物を見た 時には、 内部への視線を遮りながらも、歴史的建造物の外観が最大限望めるように。室内から外の景色を見た時には、歩行者からの視線を遮りながら も、遠 くの広大な山並みと、春に咲き誇る敷地前の桜並木を借景として取り込むことができる。

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30 21 21 21 21 4.5 4.5 4.5 4.5 21 30 30 70
平面詳細図 1 :2
団体 HP とゞ兵 HP entry statement purpose
兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画 兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画

After that

竣工後、春に桜並木が開花した際

には、イベントを行う予定と言わ れていた。施主からはデザイン検

討時の段階から、建物のライトアッ プも行いたいという要望があった。

↑建物のライトアップ時に沿道側から見た様子。竹  垣の 間から光が漏れ、塀は存在感を薄める。照  らされた建物と植栽への印象が強まる。

↑建物上部の大宴会場の一端に設けられた席。  広縁に連続する窓から桜並木を見下ろす。

Schedule

2020.8-9 団体発足(東京)

団体の活動を開始(兵庫)

初の活動として「とゞ兵」の改修作業を行う(兵庫)

作業の一貫として、庭の除草・既存の塀の撤去作業(兵庫)

2021.2-3 団体2月の活動にて庭部門を発足(兵庫)

Other projects media

地元の庭師の方と面会、造園の基礎について教わる(兵庫)

案出し・オンライン上で庭師の方とエスキス(東京)

2021.3-4 団体3月の活動にて現地での実測作業(兵庫)

←活動終了後には、東京建築コレクション プロジェ  クト展に出展をした。団体全体のことを広く周知  する機会となった。

2021.4-5 実測データを元に模型作業開始(兵庫・東京)

デザイン案のブラッシュアップ(東京)

2021.5-6 施主・景観形成委員会との話し合い(東京)

デザイン案確定(東京)

施工方法の検討・費用算出(東京)

VE案の検討(東京)

クラウドファンディング部門との共有・話し合い(東京)

2021.6-7 クラウドファンディング・PR・夏の活動への準備期間(東京)

団体全体への共有(東京)

2021.8-9 団体夏の活動にて着工(兵庫)

同時にクラウドファンディング募集開始(目標金額750000円)

クラウドファンディング達成 (達成金額868400円 )

竣工(兵庫)

2022.1-2 東京建築コレクション2022プロジェクト展に出展(東京)

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兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画 兵庫県景観形成重要建造物 「とゞ兵」 庭園改修計画 団体 HP とゞ兵 HP ↓活動中、いくつかの新聞社からの取材を受けた。 entry statement purpose
Diploma Works  - 建築の虚2021:Diploma Works   課題:卒業制作 制作時期:学部四年後期 構想期間:2021.9 ‒ 2021.12 制作期間:2021.12 ‒ 2022.1 対象敷地:千代田区神田 担当教員:清水郁郎

建築は、終わりを迎えたとしても「形態」がそこに残り続ける。

一方、「空間」が時限を迎えるということは、その建築の終わりを意味する。

“形態としての永続性” “空間としての時限性”

「建築」が有するこの両面性について考える。

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Works - 建築の虚 - Diploma Works - 建築の虚Diploma Works - 建築の虚 -

“都市において建築が存在し続けることは可能か”

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建築の機能を担保する土木的構築物を建ちあげ、建築の「虚(うろ)」となる存在をつくる。

Background:「〇〇としての建築」

3.建築が需要に応える 2.機能に合わせて建築の形態を考える

需要 機能 形態

1.社会・都市・街の状況に 合わせて機能を考える

私たちが通常行う設計では、最初にその土地に 必要な建築の機能(プログラム)を算出し、そ れらに合わせてコンセプトを考え、最後に建築 の形態を生み出す。そして、建てられた建築が 周囲の需要に応えていくことで建築としての役 割を全うする。これらは一元的な機能主義その ものであり、これまで当たり前に用いられてき た設計のプロセスである。

Theme:「存在する建築」

需要 機能 形態

3.建築が需要に応える 6.建築が不要になる ↓ 都市の新陳代謝 ↓ その中でも存在できるか? 2.機能に合わせて建築の形態を考える

5.その機能が不要になる

Concept:「建築の虚(うろ)」

1.社会・都市・街の状況に 合わせて機能を考える  4.状況が変化し需要が変わる

しかし、実はこのプロセス自体が、機能主義・ 資本主義下においては適していなかったように も思える。都市において社会状況は目まぐるし く変化し、同時にその土地に求められる建築の 機能も変化する。周囲の需要に応えられない建 築物は不要となり、新しいものが求められるの が常である。本提案では、その仕組みの中でも 「存在する建築」をテーマに掲げる。

形態 需要 機能

3.建築に機能を与える 5.機能を再度与える ↓ そこに存在する ↑ 2.社会・都市・街の状況に合わせて機能を考える

4.状況が変化し需要が変わる

1.建築の形態を考える ↓ 虚の生成

そこで、建築の機能を担保する「うろ」となる 構築物を提案する。つまり、建築の機能の入れ 物のようなものをつくることが目的である。建 築の形態の後に、空間としてのコンセプトやプ ログラムを付随させることができるのであれ ば、建築がその土地に存在し続けることも可能 であると考えた。このように、形態が先行した 状態で設計を行うことは、今後の都市において 重要な視点である。

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Diploma Works - 建築の虚 -

Consideration Site

対象敷地として、神田地区周辺を選定する。資本主義・機能主義の特徴が顕著に見られることが主な理由である。神田地区では、高度経済成 の際にオフィス床需要が高騰し、中小規模ビルが乱立した。その後、経済不況やパンデミック、設備・構造の更新期であることも重なり、空 きテ ナント率が急激に上昇した。それらの対策として、超高層ビルへの建替え、人口増加を目指したオフィス以外の建築機能の導入が行われるな ど、 建築機能の需要の変化が顕著に見られる。再開発が進む一方で、敷地周辺では歴史的建造物の保存も行われており、開発と保存が剥離しなが らも 同時に行われているとも捉えられる。また、都市機能を支えるための土木構造物が、街の景観を形成していることも敷地周辺の特徴である。

・ドミノシステムや近代建築の五原則 …… 新たな建築形態の提案、形態を原則として提示することで建築自体の質を担保する。

・オランダ構造主義(チームX)…… 機能主義によりすぎた近代都市・建築に対してヒューマニズムの視点から批判的態度をと る。メタボリズムの前衛的存在。

・メタボリズム …… 日本の高度経済成長期において、社会の変化や人口の成長に合わせて有機的に成長する都 市や建築を提案した。

・廃墟論 …… これまで廃墟について言及した人物は多々存在し、日本では磯崎新が挙げられる。「時間 の進行を停止させることが設計である」と述べ、つくばセンタービルはいずれ廃墟となる ことを前提としている。

・コアの集約 …… 設備コアの集約や最低限の素材で建築を構成することで、自由空間(ユニヴァーサルスペー ス)の提供を実現した。

・ポンピドゥセンター …… 設備を意匠として外周部に設け、内部に大 空間を提供。

・紀尾井清堂 ……  建築の機能は後から考えるという施主の要 望により、内藤廣氏が無機能の建築を実現。 機能主義・資本主義の波に強く逆らう。

・アーキグラム…… 足のついた巨大な移動都市「ウォーキング・シティ」や、着脱可能な空間ユニットで組み立てられた「プラグイン・シティ」など、テク ノロジーを利用するであろう近未来への憧憬と不信感をアイロニカルに表現。

・レム・コールハース(OMA. AMO)…… 過激化する資本主義を、あくまでアイロニ カルに肯定してみせる。

これまで、都市・建築に対して様々な考察がなされ提案されてきた。例えば、近代都市・建築への提案として、オランダ構造主義やメタボリ ズム などが挙げられる。しかし、その建築のほとんどが、実際には設計者の思うようには変化しなかった。また、都市の変化に着目したアーキグ ラム で言うと、仮にこれらが実現可能だとしても、規模が大きすぎるのかもしれない。ここで、都市において重要なことは、「空間の形態」自体の変 化だけでなく、「空間の質(機能)」の変化であると捉えた。つまり近代都市において、建築がそこに存在し続けるために必要なことの一つは、 都市が求める需要に対して建築物の機能(空間の質)を変化させていくことである。

Diploma Works - 建築の虚 -

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element isometric axome proposal concept diagram plan section elevation entry statement purpose site background analysis scene model others Diploma Works - 建築の虚 - Diploma Works - 建築の虚usually proposal
Conceptual section drawing 1/600

自立した要素が部分となり全体が構築されることで、建築としても自立していく。 “構築物”が何をもって“建築”として機能するのか、その根本的な潜在意識がこの構築物の全体性を覆う。

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Spatial composition

建築形態の基本的な構成として、

①同心円状の主な空間構成 ②同心円状外の二つの余白 ③集約し独立させた機械設備

を掲げる。これらは建築の外部と内部の関係から、導線・通風・ 採光などを配慮した上で本提案の最適解として出した形態特徴 である。これらを実際の敷地条件に合わせ、建築のスケールや 具体的な形を調節していき設計を進める。

最初に建築の形態を考える。

次に周囲の状況に合わせて機能を考え、 その機能を建築の形態に当てはめる。

建築の機能に対する需要が変化した際に は、再度、別の機能を形態に当てはめる。

これらが繰り返されることを目指す、そ れが本提案のプロセスである。

メインストラクチャー(…①)、内部のサブストラク

本提案では、建築物の機能に対して生じる需要の流動性に着目 しつつ、建築物が存在し続けることを目的としている。まず直 径約3.5m の巨大な柱と厚さ約2.5m のスラブにより巨大な 建築空間を建ちあげ、メインストラクチャー(土木的スケール) として基本的な建築物の形態を構成する。巨大な柱の内部空間 には階段室とエレベーター室の機能を内蔵し、各層をつなぐ縦 導線を確保する。次に、同心円状の建築形態に沿って内寸 200mm角が連続する格子壁を設ける。外部空間と内部空間を 緩やかに規定し、建築物の主なファサードを形成する。同時に 通風や採光などが一部操作され、季節によって変化する環境的 な需要の変化に応答する。

(例) ・①は恒久的な存在として扱う。

・求められる機能はそのままに、  新しい機械設備が求められる。…… ③の変更 ・その土地に求められている建築の機能が変わったが、  元の②のままで担保することが可能。…… ③の変更

・建築への需要の変化に②の形態で対応することが難  しい、または更新期。…… ②の変更

構成された基本的な建築形態に沿って、内部空間にサブストラ クチャーとしての建設を許容し、空間を身体スケールに落とし 込むことを想定する。同心円上外には巨大なコア空間を設け、 そこを機能を担保する機械設備を内蔵する空間として扱う。こ

れらは建築物の外部から入れ替えることを可能とし、周囲の需 要の変化に応じて機能を付け替えていくことを目的とする。

メインストラクチャーが主な構造を担保しつつ、大まかに空間 を分割することで、建築の機能に対する細かな需要の変化にも 応えられる。内部の機能はフラグメンタルでありながら、全体 としては統一された形態を保つ。開発と保存が同時に行われる ことで、建築が取り繕われながらそこに存在し続ける。

Section Plan 1/600

▼最高高サ 97000 ▼屋上 94500 ▼スラブ8 81500 ▼5FL 73500 ▼4FL 52500 ▼3FL 32500 ▼2FL 14500 ▼スラブ1 12000 ▼GL ±0 ▼地下スラブ1 -2500 ▼地下スラブ2 -14000 ▼地下スラブ3 -25500 ▼B1FL -11500 ▼B2FL -23000 ▼スラブ7 71500 ▼屋外3 67000 ▼スラブ6 64500 ▼スラブ5 50000 ▼屋外2 47000 ▼スラブ4 44500 ▼スラブ3 30000 ▼スラブ2 24000 ▼屋外1 26500 1.内部空間 2.機械設備内臓部 3.機械室・倉庫 4.屋外空間 5.ピロティ 6.地下空間 7.自動車EV吹抜
土木的スケールの構造体 ■ 格子壁と巨大な内部空間 ■ 同心円状外の集約したコア空間 ■ 各エレメントの異なる時間軸による開発 チャーとしての建築(…②)、コア内部の機械設備(… ③)には異なる時間軸を持たせることができる。
1 1 2 2 1 1 5 6 6 1 1 2 2 2 3 3 3 3 2 7 3 3 4 4 4 4 4 element isometric axome proposal concept diagram plan section elevation entry statement purpose site background analysis scene model others Diploma Works - 建築の虚 - Diploma Works - 建築の虚 -

About summer

格子壁が夏の日射を遮る。最上階において言えば、上部から構築的な光が降り注ぎ、屋根梁組が存在感を強める。

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About winter

冬は日射を遮らずに内部に間接的で柔らかい光が入る。柱が空間に影を落とし存在感を強める。

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External space

虚は土木的に街に建ち上がる。既存のインフラが都市 機能を支えているように、「建築に成る」ことを目的 に機能し都市を支える。

外部空間により形態を文節し、自然環境をより近いも のとする。また、吹抜けにより物理的制限を弱め、空 間の流動性を高める。より環境的に作用していく。

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虚は形態を置き去りにし、都市の様相と共に空間を変容し続ける。

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