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集落空間における水循環システムを応用した集落センターの設計 - 滋賀県高島市針江集落を事例として 修士設計 東京建築コレクション Finalist (11/116) 第 7 回 大東建託 賃貸住宅コンペ 学生特別賞 審査員 赤松佳珠子賞 都市まちづくりコンクール Finalist (10/115) 福岡デザインレビュー 20 選 (20/212)
個人の台所であるカバタを共同利用ができるカバタとして開放し、カバタを共同利用する。 またカバタの共同利用が行われる生活体験型長期宿泊施設において宿泊者はカバタによる新しい生活体験をし、 宿泊者と住民の交流によってカバタの新しい使われ方と文化継承が行われる。
カバタについて 湧き水が豊富な針江集落では水を大切に扱う文化が継承され、湧き水や流水を生活水として利用し てきた。滋賀県湖西地域では引き溝によって水を家のまえに持って来、そこに洗い場や
み場をつ
くる。このような場を「カバタ」と呼ぶ。カバタは水路の水を各家の敷地内に引き込んではいるが、 生活水として使っているのは主に湧水である。 一般的に、カバタでは、湧水が「元池」→「壺池」→「端池」の順に 3 つの槽を流れていき、水路 へと流れる仕組みとなっている。各槽はそれぞれに性格が異なっており、端池ではコイやマスが洗 い物などで出てきた残飯を食べて水を浄化している。
カバタシステム 元池 - 上水として利用 - 鉄管から湧き水が出る場所 - 飲用水として利用 壺池 - 上水→下水へ変わる - 元池を
み上げた場所
- 洗い物の場所として利用 - 冷蔵庫、洗面所として利用 端池 - 下水→中水へ変わり水路へ - 壺池から
端池
壺池
元池
下水→中水
上水→下水
上水
水路
れ出た水貯める場所
- コイの生簀として利用
不圧地下水
- コイにより水が浄化され中水となる
被圧地下水
難透水層
カバタの水循環システムと領域性
空間
水質状態
元池
建築
現状
public
外 - public
common 壺池
端池
水路
private
カバタ 上水
下水
中水
池の利用
壺池 - public
飲用水
台所 洗面所
汚さない
単独利用
様々な利用
共同管理
private
public
common
建築 - private
提案
コイによる浄化
端池 - common 冷蔵庫
カバタ - common
コイとの関係性
元池 - private
カバタ - common 外 - public 建築 - private
人と池の関係性
カバタにおける端池は水を汚さないという共通認識があり、それは
建築における空間性とカバタのもつ領域性を照らし合わせた時、端
コイのためでもあるが、集落全体の水景観を保つためでもある。水
池領域と建築における common 空間の位置関係が異なる。この現象
を汚さない利用である端池は共同管理がされる池であり、common
に基づき、提案する建築において common 領域を外と反転させた設
としての領域性を持つ。
計を行う。
スケッチによる集落調査
住宅の間取りと水辺空間の調査
カバタの形態における調査
景観構成要素の分析
住宅の間取りと水辺空間の分析
カバタの形態と空間性の分析
空間構成要素の抽出
抽出要素の適用
1. 現状の建築とカバタの関係性を配置する
外 カバタ 建築
2. 端池領域に基づく関係性よりカバタと外を反転させる
カバタ 外 建築
3. 内カバタを取り入れ、カバタと建築を連続させる
4. カバタを内部に介入させ、多様な空間を構成する
1F plan S : 1/200
平面構成 水路における高低差 カバタの位置とカバタからの高低差における排水経路を計画し、集落全体の水の流れの循環に適合するように排水計画を行う。
平面空間における領域
外カバタ・内カバタ・建築空間における平面構成
common と外の反転に基づく平面構成より、カバタ空間による common 領域を敷地外側に
外カバタ・内カバタ・建築の3つの空間における平面構成を行う。外カバタは外部から直接
配置させる。またカバタ空間内は土間空間とし、外部空間も土間とすることで水路とともに
できる半屋外空間とし、内カバタは屋内にカバタを持ち、水路と繋がる空間とする。建築は
内外の領域を緩やかに繋ぐように構成する。
カバタ空間につなげるように配置し、内外の領域を水路で緩やかに繋ぐように構成する。
水路 水路 外カバタ カバタ空間 内カバタ 土間
床
建築
外
kabata roof
roof
wall
kabata wall
俯瞰パース 3F 4F slab
2F slab
1F slab
waterway
ground
道からカバタ利用が見える
カバタ構造
構造
カバタにおける構造を建築図面からモデル化し、本計画におけるカバタ空間の基本構造とする。
本計画においての構造は木造による SE 工法を採用したラーメン構造とする。 SE 工法では柱と梁が強固に接合されているため、 耐震性が高く木造による自由度の高い空間設計と大空間が可能となる。 木造は二層であるが、一部鉄骨造による展望台を計画し、4 層とする。
構造モデル
図面から構造化
素材 カバタにおける外壁・屋根材においてポリカ板を抽出し、建築における外壁は焼板を抽出する。
外壁 - カバタ
ポリカ板
外壁 - 建築
焼板
奥に続く水路と路地
展望台からは琵琶湖が見える
展望台から集落を眺める
elevation perspective
雨カバタ カバタにおける水の立体的移動システムを応用し、
雨カバタによる立体的雨水移動のイメージ
雨水におけるカバタを通した雨池による親水空間を提案する。 現在、雨水は雨
に入り下水や一部水路に排出され水の移動は見え
ないが、雨カバタによって雨水による水の流れを見える化し、立体 的な水の循環システムを応用したカバタ空間を計画する。 雨カバタから端池への雨水移動
雨カバタから端池への雨水移動
2F plan
カバタ空間の吹き抜け
皆が集う中庭が見える
カバタ空間と中庭がつながる場所
中に入ると展望台と中庭が見える
中庭とカバタ空間がみえる
カバタの共同利用による文化継承
生活体験型長期宿泊施設ではカバタの共同利用が行われる。 個人のカバタは共同利用によって機能が変化し、冷蔵庫は自販機に、台所はレストランのような場所へと移り変わる。 これらの共同利用によって集落のカバタ文化の新たな継承と集落の人々と外部からの移住者によって今までとは異なる利用用途が生まれる場所となる。
宿泊施設でのカバタを利用した共同キッチン
語り場となる足湯
カバタで冷やされた飲料水・野菜・果物の直売所
カバタ会議が開かれる集落の風景
移住者は宿泊施設で利用した開かれたカバタ空間を新しい住まいに取り入れ、カバタを public な場 として利用する。そのためカバタを利用した様々な商売が行われたり、カバタの周 りで隣人同士の 交流会が行われたりする風景が見られ、街中に様々なカバタ会議が開かれる。
現在の集落の風景
カバタ会議が開かれる集落の風景
カバタ空間の室温環境
カバタから湧き出た水は年間を通して 12 13 度の定温であり、水路と混 ざり合い 16 度に保たれることで、カバタ空間において鯉が生存できる 水温に保たれている。この一定の水温によってカバタ空間は夏に涼しい 空間となり、冬には温かい空間となる。
夏 - 水温 16 度による室温環境
冬 - 水温 16 度による室温環境
住民交流室 宿泊施設 雨カバタ
大きなカバタ空間
雨カバタ
展望台
観光センター 中庭カバタ
足湯カバタ
カバタの共同利用コミュニティ