11月/ 12月版『アクセレレート・ジャパン』へようこそ!

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Food Retail

P12

Food Lion

P30

環境省

P38

ATMOsphere

P50

食品小売業パネルディスカッション 新たな段階への挑戦

省エネ型自然冷媒機器で世界を変える 7年の歴史が積み上げた 世界のATMOsphere

SAVE ON

P22

R290 & CO2 first all−natural store in Japan

業界先駆者となる R 2 9 0プラグ インショー ケ ース 導 入 で パ イ オ ニ アと な る か



アクセレレート・ジャパン 創刊者兼出版者 マーク・シャセロット

「それは始まりにすぎない」 This is only the beginning

環境省が持つ役割により、自然冷媒使用機器の『市場シェア』のアクセレレート(加速)を止めることは、 もはや不可能となっています。あまりに早い展開に、最新の動向について行くのも容易ではありません。 そこで我々は環境省の鮎川氏を訪ね、来年の計画についてお話を伺いました。これにより確かに言えるこ と は 、日 本 に お い て 自 然 冷 媒 機 器 を 使 用 し た 店 舗 が ま す ま す 増 加 す る と い う こ と で す 。環 境 省 の 補 助 金 に は 、 新技術への移行コストを低減させる確かな力があります。 しかし今誰もが注目しているのは、次に一体何が起こるかということでしょう。この補助金はいつまで続 くのか。その期間は市場に競争を生み、コストを下げ、さらに効率性を上げるのに十分であろうか。海外 企 業 の 新 規 参 入 は あ る の か 。日 本 の サ プ ラ イ ヤ ー は 市 場 の 成 長 を 利 用 し て 、海 外 で の 売 り 上 げ を 伸 ば す の か 。 こ れ ら の 疑 問 に 答 え る べ く 、我 々 は あ ら ゆ る 市 場 関 係 者 と 話 し ま し た 。そ の 中 で も 誰 も が 認 め て い る こ と は 、 業務用冷凍冷蔵分野においては、今が最もエキサイティングな時期だということです。 この現象は、市場にとって新たなアイデアや アプローチ方法を生むきっかけとなります。だからこそ我々は、今回 セーブオンといった、R290( 炭化水素冷媒 ) 使用機器をコンビニエンスストアへもたらすといったパイオニア的存 在を特集できたことは、大変喜ばしいことです。この炭化水素冷媒のトレンドは世界的なもので、セーブオンはそ れを日本でも適用しようとしています。このことは、ハイドロフルオロカーボンと自然冷媒の間だけでなく、炭化 水素と CO 2 の間にも競争を生むでしょう。結果、技術革命は加速し、コストはさらに低減されます。アクセレレー ト・ジャパン(以下 AJ)は、その道を示してくれたセーブオンとローソン(第1刊に掲載)に心より感謝します。 脚光を浴びるということは決して容易なことではありませんが、彼らの偉業はそれが可能であることを示していま す。我々は日本のエンドユーザーに多数取材をしましたが、2016 年は長期的かつ持続可能なソリューションへと向 かうこのトレンドの ” 始まりにすぎない ” ということを、他のエンドユーザーによっても立証される年になるでしょう。 今刊では北米での動向にも焦点を当て、ニューヨーク支局からの記事を 2 本掲載しました。フードライオンは、 同社初の CO 2 トランスクリティカルブースターシステムを温暖な地域にて稼働させます。アホールド、デルヘ イズ、ホールフーズ、ロウズといった海外のエンドユーザーたちは、CO 2 と炭化水素市場を拡大するための課 題とそれが持つ機会について語ります 。加えて我々は、shecco の北米における自然冷媒市場の最新動向に関 する報告書を要約してお届けしております。また競争力のある CO 2 技術創造の話としては、我々は上海でサン デンを訪問し、CO 2 コンプレッサー製造施設を初めて見学することができました。彼らは CO 2 トランスクリティ カルコンプレッサーの製造を大幅に拡大することで、コカ・コーラだけでなく、より多くの顧客に製品を届け る能力を擁しています。これは、持続可能な冷媒という新たな世界への移行において、大変重要な要素である と言えます。現在コンプレッサーは価格競争となりつつあり、これは市場全体に様々な機会を生み出します。 少し実務的な話になりますが、日本での新創刊となった第1刊で AJ をよく知ってくださった読者の方々から多 くのフィードバックがありました。第2刊ではこの経験をさらに生かすべく、フォーマットや文字サイズなど いくつかのデザイン変更を加えてあります。AJ チームは現在、来年1月末発行予定の第3刊の準備に勤しんでおり ます。ATMOsphere Asia 2016、スーパーマーケット・トレードショー、国際ホテル・レストラン・ショー、ヒーバッ ク & アール・ジャパン 2016 といったビッグイベントを控えた 2 月の 繁 忙 期 に 合わせて、第 3 刊は発 行される予定 です。第 2 刊もお楽しみ頂ければ幸甚です。ご意見・ご感想はこちらまで。marc.chasserot@shecco.com

MG

Nov / Dec 2015 Accelerate Japan

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#2, NOVEMBER / DECEMBER 2015

ADVANCING HVAC&R NATURALLY アクセレレート・ジャパンについて 自然冷媒に関する情報発信の世界的エキスパートsheccoが お 届 けするアクセレレ ート・ジャパンは、あ らゆるHVA C&R分野で自然冷媒ソリューションを取り扱う、最も革新的 なビジネスリーダーの 皆 様を対 象とした日本初隔月刊誌で す。

http://acceleratejapan.com

@AccelerateJP

p.3 p.22 それは始まりにすぎない アクセレレート・ジャパン 創刊者兼出版者 マーク・シャセロット

見城 嘉晃 / SAVE ON

日本初オール・ナチュラル・コンビニエンス ストアの挑戦

p.12

群 馬 県を拠 点とするコンビニエンスストア・チェーンのセーブオンが日本 初と なる、店 内 すべてのショーケース に自然 冷 媒システムを採 用した 新 規 店 舗 を オ ープ ン さ せ た 。R 2 9 0 の 冷 凍 冷 蔵 ショー ケ ース の 採 用という、業 界 に 変 革 をもたらすべきパイオニアとしての 同 社 の 挑 戦 はまだ 始まった ば かりである。

p.30

p.42

Food Lion

新 た な 段 階 へ の挑戦

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Accelerate Japan Nov / Dec 2015

食 品 小 売 業 各 社 に よ る パ ネ ル デ ィス カッション

p.46

サンデン

米国環境保護庁がHFC類の リスト除外に関する最終規 定を発表

CO2コンプレッサー市場を 拡大へ


ISSUE# p.38 出版元 / 発行元

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shecco Japan 株式会社 acceleratejapan.com

省エネ型自然冷媒機器で世界を変える

創刊者兼出版者

マーク・シャセロット

インターナショナル 編集者

ヤン・ドゥシェック

編集者

岡部 玲奈

自然 冷 媒を選 択し、新しく取り組 んで いく企 業 や 団 体 にとって大 きな 支えとなっているの が 環 境 省 の 補 助 金で ある。現 状とさらなる普 及 の た め の 補 助 金 の あり方 に つ いて環 境 省 地 球 環 境 局フロン対 策 室 長 の 鮎 川 智 一 氏 に 話 を 聞 い た 。

marc.chasserot@shecco.com @marcchasserot

jan.dusek@shecco.com

佐橋 縁 佐橋 縁

執筆者

マイケル・ギャリー ジェームス・ランソン

p.50

ロバート・デイビッドソン 藤本 敬

翻訳者

笠原 志保

7年の歴史が積み上げた世界のATMOsphere SPECIAL EDITION SEPTEMBER 2015

A D VA N C I N G H VA C & R N A T U R A L LY

広報マネージャー

ヤン・ドゥシェック

デザイン

工藤 正勝 メディ・ボージャー シャルロッテ・ゲオリス パトリシア・オフオノ

写真

ベン・ビーチ

M A G A Z I N E

トラビス・ドーヴ スコット・シャセロット

p.54

2015 GU IDE TO N ATU RAL

REFRIGERANTS GUIDE North Americaから読み解く冷媒市場の流動性 IN N ORTH AMERIC A — S TATE OF THE INDU S TRY

アフリカ初のCO2トランスク リティカルサプライヤーの 製品ラインナップにヒート ポンプが登場

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p.60 Food Retail

P12

Food Lion

P30

環境省

P38

食品小売業パネルディスカッション 新たな段階への挑戦

省エネ型自然冷媒機器で世界を変える

ATMOsphere

P50

7年の歴史が積み上げた 世界のATMOsphere

p.61

オーストラリアのワイナ リーが先導する持続可能 性のための取り組み

フィリピンの冷蔵倉庫に バイオマス発電による吸 収冷却装置

SAVE ON

P22

R290 & CO2 first all−natural store in Japan

業界先駆者となる R 2 9 0プラグ インショー ケ ース 導 入 で パ イ オ ニ アと な る か

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acceleratejapan.com

p.61 アクセレレート誌は、 アメリカ・ニューヨークからベルギー・ブリュッセ ル、そして東京まで、幅広いオフィスネットワークを持っています。本誌 上で寄稿者により示される見解は、必ずしも本誌発行元の見解を表す

p.62

日本の環境省、コカ・コー ラ と パ ナ ソ ニ ッ ク の C O 2移 行を賞賛

ものではありません。本誌に掲載する内容の正確性については万全を 期していますが、掲載内容の誤り・脱漏により発生するいかなる影響 についても、発行元は一切の責任を負いません。 アクセレレート誌はshecco Japan株式会社が発行しています。無断複 写・転載を禁じます。著作権者からの書面による事前の許可なしに、本 誌の全部または一部を複写・複製することを禁じます。

Nov / Dec 2015 Accelerate Japan

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私たちは “みんなと暮らすマチ” を幸せにします。 省エネ機器の普及拡大を推進し、 中期目標の達成を目指します。 「2020年度 1店舗当たり電気使用量 2010年度比 20%削減」

明るく快適なのに地球に優しい、 シンプルな姿に変わってマチを応援しつづけます。 ・自然エネルギーで環境配慮 太陽や雨といった自然エネルギーの活用に加え、 自然冷媒(CO2 冷媒)を活用した冷凍・冷蔵器導入で CO2 排出量を削減します。

・マチのライフライン 地震や台風などの災害といった非常時にも “安心” を。 水と電気を自ら賄える店舗です。

・リユース/リデュース/リサイクル 建材や構造物などの種類や使用量を極力削減すると共に、 調達から再利用までトータルで考え、資源削減していきます。

環境配慮型店舗 京田辺山手西店

東京都品川区大崎一丁目 11 番 2 号 ゲートシティ大崎イーストタワー

http://www.lawson.co.jp


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EVENT PLANNING F OR ASIA DECEMBER 2015 - JANUARY 2016 - FEBRUARY 2016 Event

Date

Location

#

Link

Twitter handle

Hashtag

DECEMBER コールドチェーン勧告 50周年記念講演会

12月2日(水)

東京

4

http://www.jsrae.or.jp/info/cc50.html

2nd World Cold Chain Summit

2-3 December

Singapore, SGP

2

http://naturalleader.com/programs/futureof-food

Building Simulation 2015

7-9 December

Hyderabad, IND

3

http://www.bs2015.in

エコプロダクツ 2015

12月10日(木) 〜12日(土)

東京

4

http://eco-pro.com/2015

2015 The 22nd Guangzhou International Hotel Equipments and Supplies Exhibition

14-16 December

Guangzhou, CHN

5

http://chinaexhibition.com/trade_ events/7309-2015_The_22nd_Guangzhou_ International_Hotel_Equipments_and_ Supplies_Exhibition.html

India Cold Chain Show 2015 (ICCS)

16-18 December

Mumbai, IND

6

http://indiacoldchainshow.com

JANUARY HVACR Expo Saudi

11-13 January

Jeddah, SAU

7

http://www.hvacrexposaudi.com

食品冷凍講習会(関東)

1月19日(火) 20日(水)

東京

4

http://www.jsrae.or.jp/info/h27fk.html

食品冷凍講習会 (関西)

1月28日(木) 29日(金)

大阪

1

http://www.jsrae.or.jp/info/h27fk.html

1月27日(水) 〜29日(金)

東京

4

http://www.low-cf.jp/index.html

enex / Smart Energy Japan 2016 第40回地球環境とエネルギーの調和展

FEBRUARY 2月9日(火) 〜10日(水)

東京

4

http://www.atmo.org/events.details. php?eventid=36

2月10日(水) 〜12日(金)

東京

4

http://www.smts.jp/en/index.html

2016

2月16日(火) 〜19日(金)

東京

4

http://www.jma.or.jp/hcj/eng/exhibit/index. html

Adana IHS 2016

18-21 February

Adana, TUR

8

http://10times.com/ihs-adana

ヒーバック&アール ジャパン 2016 冷凍・空調・暖房展

2月23日(火) 〜26日(金)

東京

4

http://www.hvacr.jp/en/greeting.html

ACREX India 2016

25-27 February

Mumbai, IND

6

http://www.acrex.in

ATMOsphere Asia 2016 スーパーマーケット・トレードショー

2016 国際・ホテル・レストラン・ショー

Nov / Dec 2015 Accelerate Japan

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自然冷媒による常に正確な 低温ストアー温度の実現

圧縮機は全ての産業用冷凍システムにおいての心臓部です。この心臓部は自然冷媒によって鼓動します。

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製品ポートフォリオを取り揃えております。信頼性、効率、そして高いドイツ品質が標準です。より詳細の 製品情報は弊社ウェブへ www.bitzer.jp 株式会社ビッツァー・ジャパン

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千里ライフサイエンスセンタービル14F

品川インターシティーA棟28F

〒560‑0082 // 大阪府豊中市新千里東町1‑4‑2 Tel 06‑6873‑8555 // Fax 06‑6873‑8556

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Accelerate Japan Nov / Dec 2015

〒108‑6028 // 東京都港区港南2‑15‑1 Tel +81 3 6717 4366


EVENT PLANNING FOR EUROPE DECEMBER 2015 JANUARY 2016 FEBRUARY 2016

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Event

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Link

Twitter handle

Hashtag

DECEMBER 46th International HVAC&R Congress and Exhibition

2-4 December

Belgrade, SRB

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http://kongres.kgh-kongres.rs/index. php?lang=en

IOR Webinar: Innovation in carbon-ammonia adsorption heat pump technology

3 December, 18:45 CET

Online

-

https://attendee.gotowebinar.com/ register/2737197182568286721

@thecoolinghub

JANUARY DEUBAUKOM

13-16 January

Essen, DEU

2

http://www.deubaukom.de/constructiontrade-fair

Aquatherm Vienna

26-29 January

Vienna, AUT

3

http://www.aquatherm.at/en

@messe_at

#aquatherm

Klimahouse 2016

28-31 January

Bolzano, ITA

4

http://www.fierabolzano.it/klimahouse

@Klimahouse

#Klimahouse

BAUEN & ENERGIE WIEN 2016

28-31 January

Vienna, AUT

3

http://www.bauen-energie.at

@messe_at

#bauenenergie

Haus und Energie

21-24 January

Stuttgart, DEU

5

http://10times.com/haus-und-energie

@10_times

FOR PASIV

21-23 January

Prague, CZE

6

http://forpasiv.cz/en/

FEBRUARY Aqua-Therm Moscow

2-5 February

Moscow, RUS

7

http://www.aquatherm-moscow.ru/en

@AquaThermMoscow

#aquatherm

VSK 2016

2-5 February

Utrecht, NLD

8

http://www.vsk.nl/nl-NL/Bezoeker.aspx

@VSKbeurs

#VSK2016

@FRUIT_LOGISTICA

Fruit Logistica 2016

3-5 February

Berlin, DEU

9

http://www.fruitlogistica.de/en

Modern Heating 2016

4-7 February

Prague, CZE

6

http://www.modernivytapeni.cz/en.html

EnergyTech 2016

12-15 February

Thessaloniki, GRE

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http://shows.newmaker.com/fairs/ EnergyTech-Greece.html

#EnergyTech

Aquatherm Nitra

9-12 February

Nitra, SVK

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http://www.aquatherm-nitra.com/en

#aquatherm

The ACR Show 2016

16-18 February

Birmingham, GBE 12

http://www.acrshow.com

@theacrshow

IOR Annual Conference 2016

18 February

Birmingham, GBE 12

http://www.ior.org.uk/conference2016

@thecoolinghub

HÄUSLBAUERMESSE KLAGENFURT

19-21 February

Klagenfurt, AUT

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http://www.kaerntnermessen.at/en/fairs/ der-hauslbauer.html

@ktnmessen

#Häuslbauermesse

Industrial Cold

23-25 February

Kiev, UKR

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http://promholod.euroindex.ua/index_e.php

World Sustainable Energy Days

24-26 February

Wels, AUT

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http://www.wsed.at/en/world-sustainableenergy-days

HOTELYMPIA 2016

29 February - 3 March

London, GBR

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http://www.hotelympia.com

@Hotelympia

#hotelympia16

#TheACRShow

Nov / Dec 2015 Accelerate Japan

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ASIA

solutions for asia

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Accelerate Japan Nov / Dec 2015

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EVENT PLANNING FOR AMERICA DECEMBER 2015 JANUARY 2016 FEBRUARY 2016

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Event

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Location

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Link

Twitter handle

Hashtag

DECEMBER GreenChill Webinar: Using Refrigerant Management Tools to Ensure Compliance with Regulations and Save Costs: Case Study – Stater Bros. Management

1 December, 2pm EST

Online

-

http://epawebconferencing.acms.com/ r7i3yfxukta

Clean Air Through Energy Efficiency Conference (CATEE)

1-3 December

Galveston, TX

1

http://catee.tamu.edu/home

HARDI Annual Conference

5-8 December

Orlando, FL

2

http://www.forward15.com/registration-2/

@EPAgreenchill

@HARDInews

JANUARY Building Innovation 2016

11-15 January

Washington, D.C.

3

http://www.nibs.org/?page=conference2016

SAE 2016 Government/ Industry Meeting

20-22 January

Washington, D.C.

3

http://www.sae.org/events/gim

2016 ASHRAE Winter Conference

23-27 January

Orlando, FL

2

https://www.ashrae.org/membership-conferences/conferences/2016-ashraewinter-conference

@ashraenews

IAQA 19th Annual Meeting

24-27 January

Orlando, FL

2

http://www.iaqa.org/iaqa2016

@IAQAssociation

2016 AHR Expo Orlando

25-27 January

Orlando, FL

2

http://www.ahrexpo.com

CTI Annual Conference

7-11 February

Houston, TX

4

http://www.cti.org/meetings.shtml

Campus Energy 2016

8-12 February

Austin, TX

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http://www.ideacampus2016.org

@districtenergy

Convenience Distribution Marketplace 2016

16-18 February

Las Vegas, NV

6

http://www.cdamarketplace.net

@CDA_01

Annual Convention National Turkey Federation

17-20 February

Tucson, AZ

7

http://www.eatturkey.com/meetings

@TurkeyGal

AFFI-CON 2016

20-24 February

San Diego, CA

8

http://www.affi.org/events/affi-con-2016

@FriendsofFrozen

2016 Annual Meat Conference

21-23 February

Nashville, TN

9

http://www.meatconference.com

@MeatInstitute

Supply Chain Conference

22-24 February

New Orleans, LA

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http://www.gmaonline.org/forms/meeting/ Microsite/SupplyChain16

The NGA Show

28 Feb - 2 March

Las Vegas, NV

6

http://www.thengashow.com

#NGAShow16

@NationalGrocers

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http://www.rila.org/events/conferences/ supplychain/Pages/default.aspx

#RILAsupplychain

@RILAtweets

#SAEComVEC

#HVAC #HVACR

@SAEIntl

@ahrexpo

FEBRUARY

Retail Supply Chain Conference 2016

28 Feb - 2 March

Dallas, TX

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食品小売業各社による パネルディスカッション 各社の経験から 得られたこととは?

食品小売業界の大手であるハナフォード・スーパー マーケット、ホールフーズ・マーケット、アホール ド USA、ロウズ・マーケットのトップが一堂に会し、 CO2 やプロパン、アンモニアなどの自然冷媒を使用し たシステムについて、各社の進捗状況が報告された。 文 : マイケル・ギャリー

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Accelerate Japan Nov / Dec 2015


p.14 へ 続 く

Nov / Dec 2015 Accelerate Japan

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「アメリカ北部の気候を考えれば、トランスクリティカル 冷凍冷蔵システムが、新店舗での標準になるだろう」 ハ ナ フ ォ ー ド 社:標準化に向けて 2013 年 7 月、メイン州ターナーにある 35,000 平方フィート(約 3,250㎡)の広さを持つハナフォード・ スーパーマーケット (Hannaford Supermarkets) の店舗が、CO 2 のみを冷媒とするトランスクリティカ ル冷凍冷蔵システムを装備した、アメリカ初のスーパーマーケットとして注目を浴びた。 ハリソン・ホーニング氏は、ハナフォード・スーパーマーケット部門にてエネルギー・施設サービスディ レクターを務めている。トランスクリティカルシステムを取り扱い始めて 2 年足らずという同氏は、ター ナー店への CO2 トランスクリティカルシステムの導入という彼の経験を基に、ATMOsphere America 2015(自然冷媒国際会議)の食品小売業各社によるパネルディスカッションに参加した。 その経験から得た結論としてホーニング氏は、「アメリカ北部の気候を考えると、トランスクリティカ ル冷凍冷蔵システムが新店舗での標準システムになり得ると感じています」と語った。 総所有コスト(TCO)の観点から見て、新店舗におけるトランスクリティカルシステムが、従来ハナフォー ドが標準としてきた「寒冷気候に最適化したプレミアム(HFC)システム」と同等であることに、ホーニン グ氏は満足している。しかし、同氏はハイドロフルオロカーボン冷媒の価格は上がると予想している。 ハナフォードでは、自然冷媒プロジェクトによる投資利益の回収期間を 4 年半としている。ホーニング 氏はこれまでの投資利益について、「少なくとも、試験的な導入でデータを得られたことに満足し、ひ と安心するのに十分なほど」と語る。同社は、2015 年から 2017 年を自然冷媒システムの追加実証実験 を行う期間と定め、2020 年を終了年とする 5 年計画に取り組んでいる。 また、ディスカッション時にはメイン州に 20,000 平方フィート(約 1,860㎡)の新店舗を 2015 年 8 月にオープンする計画であり、同店はトランスクリティカルシステムの実証を行う二つ目の店舗とな る。現時点ではこれ以外の新店舗を開く予定はないが、もし開店の計画が持ち上がれば、ホーニング 氏はトランスクリティカルシステムの導入を提案するつもりだ。「この提案は受け入れられるだろう し、これによって CO 2 システムは実証段階から標準化に進むことになるだろうと考えています」 ホ ー ニ ン グ 氏 は、 タ ー ナ ー 店 に 導 入 し た シ ス テ ム の 稼 働 実 績 を ベ ー ス に、 ト ラ ン ス ク リ テ ィ カ ル 技 術 の 投 資 対 効 果 を 検 証 し て い る。 同 氏 は パ ネ ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ン に て、 タ ー ナ ー 店 の C O 2 ト ラ ン ス ク リ テ ィ カ ル シ ス テ ム お よ び、 バ ー モ ン ト 州 ブ ラ ッ ド フ ォ ー ド に あ る 同 規 模 店 舗 の H FC D X シ ス テ ム そ れ ぞ れ の、11 カ 月( 201 3 年 10 月 か ら 2014 年 8 月 ) に わ た る エ ネ ル ギ ー 消 費 デ ー タ を 示 し た。 両 シ ス テ ム の エ ネ ル ギ ー 性 能 は 同 等 で あ っ た が、 冬 期 に は ト ラ ン ス ク リ テ ィ カ ル シ ス テムの効率が高く、効率性が低い夏期分を相殺することになった。 ハナフォードが行った別の研究では、両店舗における電気および加熱用プロパンを含むエネルギー利用指 標(EUI)の比較がある。これは 12 カ月にわたる研究で、2015 年 4 月に終了している。この研究でも両店 舗の数値はおおむね同じであり、ターナー店(CO2 システム)は年間 1 平方フィート(約 0.09㎡)あたり 194kBTU、ブラッドフォード店(HFC システム)は年間 1 平方フィートあたり 190kBTU となった。 「嬉しいことに、トランスクリティカルシステムを導入した店舗が従来店舗と同水準にあることがわかりま した」とホーニング氏は言う。さらに、 「我々が行う全ての実証プロジェクトにおいて、CO2 トランスクリティ カルシステムは満足のいくエネルギー性能を発揮するだろうと考えています」と付け加えた。 ホーニング氏はトランスクリティカルシステムが新店舗の標準になり得ると考えているが、その判断は既存 店舗を改造し新システムを組み込むことができるかどうかによる。「様々なシステムで実証を行い、既存店 舗に導入する上で最もコスト効率に優れたものを見極めたいと思います」

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ホーニング氏は、HFC に比べ CO 2 の地球温暖化係数がはるかに低いことから(HFC が最大 4,000 に対 し CO 2 は 1)は、トランスクリティカルシステムにおいて冷媒の漏えいがあった場合でも、温室効果 ガス排出という点において CO 2 は影響が少ないと指摘する。これにより、ターナー店の二酸化炭素排 出総量はブラッドフォード店を 18% 下回ったことがわかった。「これは現時点ではあまり経済的価値 を伴わない付加的なメリットですが、将来的にはおそらくその価値が現れてくるでしょう」 ハナフォードは、 ベルギー・ブリュッセルを拠点とする企業、 デレーズ・グループ (Delhaize Group) が展開するスー パーマーケットである。同グループは消費財フォーラム (The Consumer Goods Forum) の一員として、HFC の 段階的廃止を 2015 年に開始すると表明している (2015年 6 月、 デレーズ・グループとアメリカで事業を展開す るヨーロッパ企業アホールドの二社が合併案を発表した。アホールドもまた、 同フォーラムのメンバーである) 。 ハナフォードは 8 月、ニューヨーク州ウォータータウンの店舗にて、同社にとって 2 つ目の自然冷媒となる プロパンの実証を始める。使用するのは上開きタイプの内蔵型冷凍ケース 8 台(各 6 フィート = 約 1.8m、 Novum Commercial Refrigeration Technology 社製)だ。「このタイプの冷凍ケースからの水漏れが床一面 に広がった店舗がありました」とホーニング氏は言う。「そこで、R290 用空冷式の冷凍ケースで実証実験し ていく、ということが社内でも盛り上がりを見せました」。アメリカでは、H.E. バット・グローサリー(H.E. Butt Grocery,)、ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)、ロウズ・マーケット(Lowe’s Markets) など、ほかにもプロパンを使った冷凍冷蔵ケースを検討する食品小売業者が増えている。 プロパンを使ったショーケースはエネルギーコストを抑えることが期待できるとホーニング氏は言う。また、 「プラグ & プレイ」冷凍冷蔵モジュール(通称「カセット」)を採用しているため、メンテナンスコストが 低いとされる。「何か問題が起こればそのモジュールを取り出し、新しいモジュールを入れ替えるだけです」 これらのケースには、スラブ下の配管が少なく済むことや、商品の入れ替えや店舗の改装を行う際に移 動の柔軟性があることなど、他の利点もある。 ハナフォードは配送センターにおいても、HFC からアンモニア冷媒システムへの移行を始めており、CO2 ま たはアンモニア /CO2 ハイブリッド・システムの導入も検討している。 ターナー店に導入されたトランスクリティカル冷凍冷蔵システムの性能については、米エネルギー省による 事例研究結果に詳しい記載を参照。 http://energy.gov/eere/buildings/downloads/case-study-transcritical-carbon-dioxide-supermarketrefrigeration-systems

ホールフーズ : 試すことからすべてが始まる オーガ ニックや ベジタリアンフード、 輸 入 食 品 なども取り扱うホ ー ルフーズ・ マ ーケットは、アメリカ のどの 食 品 小 売 業 者よりも幅 広く様々な自然 冷 媒システムを試してきた。 その 範 囲 は、 二 次 冷 却 やカ スケード、トランスクリティカルやアンモニア /CO 2 、そして内蔵型プロパンケースに及ぶ。 自然 食 品 大 手である同 社 は、まだ 結 論 に は 至ってい な い。「自然 冷 媒システムに 関しては 特 効 薬 的 な 方 法 はありません。 私 たちがしているの は 手 当 たり次 第 のアプローチといえるもので、 様々な 形 のシ ステムを 異 なる気 候 帯 や 建 築 様 式 に お いて検 討しています 」と語るの は、 ホ ー ルフーズ ・ マ ー ケッ トで 持 続 可 能 性 施 設 コ ー ディネ ーター を 務 めるトリスタム・ コフィン 氏 だ。 同 氏 は、 ATMOsphere Am e rica 2015 の 食 品 小 売 パ ネ ルディスカッションと業 務 用 冷 凍 冷 蔵 に 関 する事 例 研 究 セッションに 参加し、セッションにおいては DC エンジニアリング社社長のトム・ウォルガモット氏と共同発表を行っ た ( ホ ー ルフーズ・ マ ー ケットの 自 然 冷 媒 の 取り組 み に つ いては、 アクセレレ ート・アメリカ 2 0 1 4 年 1 2 月 / 2 0 1 5 年 1 月号 の 記 事、 “ W h o l e F o o d s ’ J o u r n e y t o N a t u r a l R e f r i g e r a n t s ” を参 照) とはいえ、ホールフーズ・マーケットがこれまで得たデータは、トランスクリティカル技術がいかに優れて いるかを示している。「総所有コスト、エネルギー消費、メンテナンス性を考慮すると、トランスクリティ カルシステムが非常に有益な技術であると私たちは考えています」とコフィン氏 は 言う。 HFC システムと 比 べてもコストも同 等 に 近 いという。同 氏 はその 理 由として、システム p.16 へ 続 く

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ホールフーズ・マーケット

メーカー がヨーロッパ からアメリカに 流 入していること、また “自然 冷 媒 の『船 』に 乗りこむ”アメリカ の OEM が増えていることを挙げる。 コフィン 氏 によると、 ホ ー ルフ ーズ は 今 後 1 年 ほどで 、 総 所 有 コストに 基 づ い てトランスクリティ カ ル シス テム に 関 する 決 断 を する の に 十 分 な デ ータを 集 めることが で きる だろうと考 えて いる。 新 技 術 へ の 投 資 利 益 に つ い て は 、 ホ ー ル フ ー ズ は 5 年 か ら 8 年 以 内 で の 回 収 を 目 指 して い る。 し かし、 実 体 は な い が 環 境 イ ニ シア ティブとも な る 様 々な 要 素 を 考 えると、「( 回 収 期 間 が ) 5 年 から 8 年 を 超 えるとしてもトランスクリティカ ル システム について検 討 する だろう」という。 ウォルガモット氏とコフィン氏は、自然冷媒を導入したホールフーズ・マーケットの 5 店舗および、 ハ イブリッドコンデンサーを装 備した R407A 冷 媒スクロール 装 置を使 用した ベースライン店 舗 につ いて、 詳しい 発 表を行った。自然 冷 媒を導 入した 5 店 舗 のうち、 1 店 舗で はグリコールを使った 二 次 冷 却シ ステム が、 別 の 1 店 舗で は 中 温 および 低 温 ケース の 両 方 に CO 2 カスケードシステムを 採 用。 また 別 の 2 店舗(カリフォルニア州バークレーとサンノゼ)ではトランスクリティカルシステムを導入しており、 カリフォル ニア州ダブリンに今 年 開 店した 店 舗で はアンモニア / C O 2 システムを利 用している。 全 店 舗 が 開 店 から 2 年 未 満であり、 3 店 舗 がグリーンチル パ ートナーシップ・プラチナ賞 の 認 定を米 環 境 保 護 庁 から受 けている。また、 同社初のトランスクリティカル店舗は、2013 年にニューヨーク州ブルック リンにオープンしている。これは合成冷媒を使わないアメリカ初のスーパ ーマ ーケットで もある。 ホールフーズは、 既存店舗の改装を行ったアメリカでも数少ない食品小売業者の 1 つであり、カリフォ ルニアにある店舗の改装では、CO 2 を使った低温カスケードシステムを HFC システムに代えて導入した。 その理由のひとつとして、「低温ケース全ての耐用年数が近づ いてきているという状況にありました」と コフィン氏は言う。「既存店舗の改装プロジェクトがどのようなものになるのかを確かめたいと思いまし た。プロジェクトはかなりの成功を収めており、 将来的なプロジェクトとしても検討しています」(同店 舗はエネルギー関連の補助金の対象となった。これについては、アクセレレート・アメリカ 2015 年 6 月号の記事 “Getting an Energy Rebate, the Whole Foods Way” を参照)コフィン氏は、ホールフー ズの各店舗はそれぞれに異なるため、一つひとつに応じた冷凍冷蔵方法が必要だと語った。 システムおよび施工コストについては、自然冷媒店舗がベースライン店舗より割高であった。店舗別にベー スライン店舗と比較すると、CO 2 カスケードシステムを導入した店舗(サンフランシスコ・カストロ地区) は 10%、グリコール店舗は 39%、トランスクリティカルシステム 2 店舗のうちの 1 店(バークレー) は 61%、アンモニア /CO 2 店舗では 101% 増加した。 16

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「システムコストは下がっていますが、施工とサービスを請け負う業者のトレーニングが不十分であること から、施工コストはつり上げられています」とコフィン氏は言うが、今後、業者がシステムの扱いに慣れ るにつれて施工コストも下がるだろうことを彼は期待している。 トレ ー ニング に 関しては、 冷 凍 冷 蔵 分 野 の 技 術 者となる若 者 が 不 足していることを 示 唆した 。「 業 界 として、 私 たち は 若 者 を 冷 凍 冷 蔵 の 世 界 に 引 き戻 さなくては なりませ ん 」とコフィン 氏 は 語る。「そ の た め に は、 冷 凍 冷 蔵 を再 び 魅 力ある分 野 にしなくては い けな い ので す」 自然 冷 媒システム のメンテナンス に か かるコストは、 HFC DX システムと同 等で は あるが、 漏えい 率 で は自然 冷 媒 の 方 が 高くなる。しかし、 自然 冷 媒 はより低 価 格で 環 境を損 な わ な いガスであり、 漏え いした場合の影響は HFC に比べ遥かに少ない。 自 然 冷 媒 を 導 入し た 店 舗 は 、 様 々な 状 況 下 で 効 率 よく稼 働し たことが わ かっ た 。 ある エ ネ ル ギ ー 比 較 によると、 C O 2 カス ケ ード シス テム 店 舗 は ベ ースライン 店 舗 より効 率 に 優 れ て い た が 、 一 方 、 グリコ ー ル 店 舗 で は 下 回る 結 果となった 。グリコ ー ル システム はここ数ヶ月で 改 善 を 見 せ ては いる が 、 ポ ン ピング の メカ ニ ズ ム を 目 で 見 て 確 認 で き な いことから、 改 善 す べ き 点 を 特 定 する の は 難 しい 。「 全 ての 部 品 の 動 きが 可 視 化 され た 完 全 な 一 体 化 システム が 、 今 後 極 め て 重 要 に なりま す 」 とコフィン 氏 は 言う。 また 別 の エネ ル ギ ー比 較 に お いては、トランスクリティカルシステムの エネ ル ギ ー 消 費 が ベ ースライ ン店 舗 にお けるエネ ルギー消 費を下 回ったことがわ かった。 店 舗 全 体 のエネ ルギー消 費を比 較 すると、 バークレー地区のトランスクリティカル店舗ではサンノゼ地区のトランスクリティカル店舗に比べ、 やや 効率低下が見られた。 サンノゼ地区の店舗では、トランスクリティカルシステムのサブクールを目的に 熱電併給システム (CHP) を用いており、それによりさらにエネルギー効率が高められたためだ。 現在試運転を行っているアンモニア /CO 2 システムに関しては、同社ではまだ十分なデータを得ておらず、 他システムとの有効な比較ができていないため、引き続き調査していくことになるだろう。

「これまでの経験を総合すると、自然冷媒に 極めて前向きな手ごたえを感じています」 コフィン氏 は、 ホールフーズ が自然 冷 媒 研 究 から学んだ 多くのことを ATMOshere America 2015 の パ ネ ルディスカッションで 報 告した。 その 一 つ は、 オペレ ーション業 者、 担 当 エンジ ニア、 施 工 業 者、 ラックの OEM 業 者 が 連 携し、 開 始 時 から全員でプロジェクトに携わることの 必 要 性である。 何 が 必 要 で あるか を 全 員で 共 有で きるからだ。 もう一 つ は、グレ ード の 高 い C O 2 冷 媒 が すぐ に 入 手 可 能で は な いことから、 常 に 管 理をしっかりと行うことが 重 要 だと述 べている。 特 に 高 圧で 稼 働 するトランスク リティカルシステムに関しては、 安全性が常に優先されなくてはならない。 自 然 冷 媒 システム に 関 する大 きな 懸 念として依 然 あるの が、 メンテナンス 業 者 の 専 門 性 に 関 するも の だ 。 サンノゼ 地 区 のトランスクリティカ ル 店 舗 で は、トラブ ル 解 決 が 必 要となった 際 に 業 者 の 専 門 性 が 十 分 で は な いことが わ かった 。「 業 者 が システム を 理 解して い な いとな れ ば、 そ れ は 大 き な 課 題 で す 」とコフィン 氏 は 言う。「 サ ー ビス 業 者 がしっかりしな け れ ば、 私 たち は O E M 業 者 に 対し、 完 全 一 括 のソリューションを提 供 すべきだというプレッシャーをさらにかけるつもりです」 ホールフーズは、自然冷媒技術の研究をこれからも続けていく。その中心はトランスクリティカルシステ ムであるが、コフィン氏によると、 同社はカスケードシステム、 中でもアンモニア /CO 2 カスケ ードシス テム の 研 究 も継 続していくという。 また 、 炭 化 水 素 を 使った 内 蔵 型 ケース の 試 験 も行っている。 「これまで の 経 験 を 総 合し、自 然 冷 媒 に は 前 向 きな 手ご たえを 感じています 」とコフィン 氏 は 語った 。

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アホールド USA: 初のトランスクリティカルシステム店舗における実証実験 ストップ & ショップ やジャイアントフードなどの 親 会 社であるアホールド USA(Ahold USA)は、バージ ニア州にあるジャイアントフードの店舗にて、 同社初となる CO 2 トランスクリティカルシステムの実証を 始めた。バルティック・トレイル・エンジニアリング社(アホールド USA の冷凍冷蔵サービス提供会社) で、中部大西洋地域の冷凍冷蔵・設計の担当マネージャーであるケン・ウェルター氏は、ATMOsphere America2015 の参加者に、この実証実験に至るまでの経緯を紹介した。 アホールド USA は近年、3,000 ポンド(約 1,360kg )のHFC を含むラック 3 台からなる DX システムを、同社の 冷凍冷蔵における標準としていた。しかし、バルティック社に移るまでの 25 年にわたりアホールド USA に 勤めたウェルター氏によると、「アホールドが排出する二酸化炭素総量に含まれる冷媒漏れ」を減らそうと、 DX の代替となるシステムの検証実行を決めたという。 これがきっかけとなり、二次冷媒としてグリコールを、1,200 ポンド(約 544kg)の HFC を一次冷媒として使う CO2 カスケードシステムの試験が始まった。続いて二度目の実証実験では、HFC(1,200 ポンド = 約 544kg)を使 う CO2 カスケードシステムを中温負荷に用いた。冷媒充填量はいずれも同じ結果となったが、グリコール システムではエネルギー損失が見られたことから、カスケード CO 2 /DX システムがより実用的な選択肢と なった。しかしこの段階ではまだ、「目指すところにはたどり着けなかった」とウェルター氏は言う。 そこでアホールドは現在の試作品開発に至る。それは 3 つの吸引群および 1 つの液体ループを含む単一 ラックの HFC DX システムであり、ウェルター氏によると「1,500 ポンド(約 680kg)という HFC 冷媒 の 充填量をカスケードシステムと同等、またはそれ以下に抑えることができる」という。しかし、冷媒 の 漏 えいについて「それ以上を目指したかった」と同氏は言う。 ここから同社は、 現在実証を行っているトランスクリティカルシステム(カルノー・レフリジレーション 社製) にたどり着くこととなる。システムを導入した店舗があるバージニア州スプリングフィールドとい う場所は、アホールドにとって第一の選択肢ではなく、 候補地としては二番目に挙げられていた。しか し、 スプリングフィー ルド 地 区 は アホールドが店舗展開するエリア の 中で 最も南 に位 置していること から、 同 地 に お ける エ ネ ル ギ ー 効率はその他の店舗と比べ、ウェ ルター 氏 い わく「よくなる 一 方 」 だと考えたのだった。 アホールドはこのトランスクリティ カルシステムに対し、ループ配管で はなくサーキット配管を選択した。 同社はさらに、 電気を使った従来 型のデフロスト(除霜)ではなく、 ホットガス・デフロストを採用した。 ホットガスの信頼性がより高いと考 えたからだ。 設 計 に関 するもう 1 つ の 大きな 選 択 は、 蒸 発 作 用を利 用した 予 備 冷 却 機 能を備えた 断 熱ユ ニットで は なく、 乾性ガス冷却を選んだことだ。 バージニア州のような南部の気候帯には前者が適しているだろう ことはウェルター氏も認 める。しかし、これ に必 要となる追 加コストを考え、アホールドは 最 終 的 に乾 性ガス冷却を選択した。「それが正しいアプローチだったかどうかは、 夏が近づくにつれてわかってくる でしょう」と同氏は言う。「従来の DX 設計と同等の稼働をするとは思っていません。とはいえ、 がっか りすることもないのではないかと考えています。結果を待ちましょう」 トランスクリティカルシステムと単一ラックの DX HFC 試作品との原価比較では、ステンレススチール配管お よびガス冷却器は、トランスクリティカルシステムが 80% コスト高、ケースとユニット冷却器および制御装 置に関してもトランスクリティカルシステムが 30% のコスト高となった。しかし、冷凍冷蔵設備と電気関連

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の施工コストは DX HFC システムよりそれぞれ 7% と 6% 低下した。結果、 トランスクリティカルシステム導入にかかる割り増し分は 25 万ドル(約 3 千万円)となり、ウェルター氏は「予算の範囲内だった」と言う。 他のパネルディスカッション参加者同様、アホールド USA は環境に関 する取り組みについては、その他の取り組みと比べ「より柔軟な投資 回収期間(5 年から 6 年)」を認めているとウェルター氏は言う。加えて、 同社はカスケードシステムおよびトランスクリティカルシステムの実証 実験を学びの機会と捉えており、そこに利益を求めていない。 スプリングフィー ルド 地 区 に お いてシステムを 導 入 するという経 験 は、アホールドから業 務を請 け負う業 者 にとってトランスクリティカ ルシステムの施工においては初めてであった。 「過去に CO 2 カスケー ドシステムの施工をお願いし たことは ありまし た 」とウェルター 氏 は 話 す。 業 者 は カ ルノー 社 からシステム に つ いて学 ん だ が 、メー カ ー の サ ポ ートを 受 け な がら行った 7日~ 8 日 間 に わ たる 立ち 上 げ 現 場 が 、 実 際 のトレ ー ニング の 大 半 を占 めることとなった 。 施工に関して、ウェルター氏には一つだけ不満があった。 「ケースメー カーがケースコントローラーや電気膨張弁の設置を適切にできるとは 思えませんでした。まだまだ改善すべき余地の多い状況だと思っていま す」。しかし一方で、同氏はコンプレッサーラック(低温コンプレッサー 3 台、中温コンプレッサーが 6 台を収納する)およびガス冷却器については、 従来の HFC 機器に比べ質が高く、産業品質といってもよいほどと感じた。 全 体として、 立ち上 げ はうまくいったとウェルター 氏 は 感じている。 しかしな がら、 新しい 技 術 の 導 入という点 や、 高 圧 の 冷 媒を用 いる ことから、どの店舗についても不安は「やや増した」のだという。 多くの 食 品 小 売 業 者 がそうであるように、 自然 冷 媒システムを検 証 することにより、アホールド社は将来にわたり有効な技術を見出し、 F ガス 冷 媒 を HFO のような 新 た な 冷 媒と入 れ 替え続 ける必 要 性 を なくそうとしている。「これまでを振り返ると、 HFO などの 冷 媒 が 撤 廃リストに 載るまで に そ れ ほど時 間 は か からな いでしょう。 そうな れ ば、 私 たちが 冷 媒 による環 境 へ の 影 響を減らさなくては い けなく なるのは目に見えています」とウェルター氏は話した。

ロウズ・マーケット : プロパンでの成功例 テキ サス州 に は 有 名 なもの が 多 いが、そのリストに新たな「名物」 を加えよう。それは、 炭化水素冷媒を使った初めての冷凍冷蔵シス テムを取り入れたスーパーマーケットがこの州にあることだ。 2013 年、サンアントニオ地区を拠点とする H.E. バット・グローサリー (HEB)が、プロパンを冷媒とするコンデンシングユニットで店舗全体 の冷凍冷蔵機器を冷却するアメリカ初の食料品店となった。ロウズ・ マーケット(Lowe's Market)は今年、プロパンを使ったコンデンシン グユニット 35 台(エンブラコ社製)をテキサス州ラボックの店舗に導 入し、88 ドア式の冷凍ユニット(ハスマン社製)を冷却している(こ れ につ いては、アクセレレ ート・アメリカ 2015 年 3 月号 の 記 事 、“ Is Propane a Good Refrigerant for Supermarkets ? ” を参照)。 ロウズ・ マ ーケットの 冷 凍 冷 蔵 ディレクターで あるゲイリー・クー パ ー 氏 は、ATMOsphere America p.21へ 続 く

炭 化 水 素 プ ラ グ イ ン、 アメリカで成長の構え 文 : ロバート・デイビッドソン

炭化水素冷媒を使用したプラグイ ン シ ョ ー ケ ー ス は、 ア メ リ カ の スーパーマーケットにとって比較 的新しい技術である。しかし、コ ストと効率性という強みを考える と、このケースの導入は増加する かもしれない。 ドイツのコンプレッサメーカー で あ る セ コ ッ プ(SECOP) の アメリカ支社で営業を担当す る ド リ ュ ー・ マ ー テ ィ ン 氏 は、 ATMOsphere America 2015 でプ レゼンテーションを行い、その利 点を詳しく説明した。 セコップが炭化水素冷媒プラグイ ンケースに関わり始めたのは、同 社がキャビネットメーカーの AHT お よ び ア ル デ ィ・ ス ー パ ー マ ー ケットと提携を結んだ約 10 年前 のことだ。以来、同社が世界で販 売したプラグインケースは 60 万 台を超え、3 万店以上の店舗で導 入されている。 マーティン氏によると、炭化水素 を使ったユニットは今や一年もか からずに投資利益を回収すること が可能で、冷媒にかかるコストも 80% 削減することができるとい う。可変速制御コンプレッサーに よって、スーパーマーケットで使 われる炭化水素プラグインユニッ トが最大限にその効率を向上させ て お り、 そ の 結 果、R404A 冷 媒 を使ったオン・オフ・コンプレッ サーとの比較でエネルギー消費を 39% 削減できたことが示された。 し か し な が ら、 い ま だ に 炭 化 水 素プラグインユニットが北米の スーパーマーケットで広く採用 されていない最大の原因は、熟練 したメンテナンス要員の不足に あるとマーティン氏は指摘する。 同 氏 は、 業 界 が ヨ ー ロ ッ パ や ア ジ ア の 成 功 事 例 か ら 学 び、 炭 化 水素技術のリスクおよび利点を 十分に評価できるようになるこ とを期待している。

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THE INNER ENGINEER

ケン・ウェルター氏 (バルティック・トレイル・エンジニアリング、 設計担当マネージャー)

ゲイリー・クーパー氏 (ロウズ・マーケット、 冷凍冷蔵ディレクター)

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ハリソン・ホーニング氏 (ハナフォード・スーパーマーケット部門、 エネルギー・施設サービスディレクター)

トリスタム・コフィン氏 (ホールフーズ・マーケット、 持続可能性施設コーディネーター)


食 品小売業各社によるパネルディス カッションでは、4 人の討論者それぞ れが気候負担の少ない自然冷媒を研 究することとなった動機を語った。 その内容を一部紹介する。 ハリソン・ホーニング氏 (ハナフォード・ スーパーマーケット部門、 エネルギー・ 施設サービスディレクター) 私はこれまで常に環境に強い関心を寄 せてきました。冬はスキーを楽しみま す。それには雪の降る寒い冬が必要で す。夏はサーフィンをするので、ホオ ジロザメには南方のあたたかい海に留 まってほしいと願っています。そのた め仕事においては、 コスト効率のよい方 法で調達を行い、 環境にとって正しい選 択ができることを誇りに感じています。

2015 の食品小売業各社によるパネルディスカッションに参加し、HEB で エンジ ニアリング・ディレクター を 務 めるチャーリー・ワー ネッ ト 氏 に つ い て、 この ように 語って い る。「 ロ ウズ が プ ロ パ ン を 入 れ る 前 に 、 H E B で の 導 入 を 親 切 に も 見 せ てくれ た の で す。 非 常 に 貴 重 な 体 験 で 、 多くを 学 ぶことの で きる機 会となりました 」 ロウズの店舗に導入した各コンデンシングユニットに含まれるプロパ ンは、 連邦規則に従ってわずか 5 オンス(約 142g)、 合わせて 170 オンス( 約 4.8kg) で ある( そ の 他 の 店 舗 は 全 て 700 ポンド = 約 318kg の R407F を 冷 媒として使 用 )。30 ポンド( 約 14kg) のプ ロ パン(価格は 1 ポンドあたり 17 ドル) があれば、「理論的には店舗 の寿命が来るまで十分な量となるでしょう」とクーパー氏は語る。プ ロパンは可燃性だが、少量であれば危険性はないという。「問題とい うよりは、その『危険性』をどう捉えるかということなのです」プロ パンの充填に対する規制は、冷却量を制限してしまうとクーパー氏は指 摘する。そのため、同氏は充填上限の拡大を期待している。 機械室のコンプレッサーと店舗の冷凍ユニットの上に設置されたコン デンシングユニットを接続するのは、グリコールが流れる銅製のルー プのみであり、これはコンデンシングユニットの除熱用に設けられてい る。このユニットは非常に静音で、250,000 BTU を支えている。

トリスタム・コフィン氏 (ホールフーズ・ マーケット、持続可能性施設コーディ ネーター) 持続可能性を意識する環境で育った 私にとって、自然冷媒を選ぶことは気 候の観点から見て重要な転換です。 私たちはエネルギー使用に対し細心 の注意を払っています。使用するエ ネ ル ギ ー が 増 え れ ば 、気 候 変 動 に 対 する様々な方策は意味がないものと なってしまうからです。自然冷媒を 取り巻く状況は全体として前向きな ものですから、私は自然冷媒への移行 が進むことを期待しています。

これらの 設 備と施 工 の 総コストは 従 来 型 の ケースを上 回った 。しか し、より広くこの 技 術 が 採 用 され れ ばコストは 下 がるだろうとクー パ ー 氏 は 考える。銅 を 採 用したことで施工コストは上がったが、 「銅製 ループを入れてからよく眠れるようになりましたよ」と同氏は言う。

ケン・ウェルター氏 (バルティック・ト レイル・エンジニアリング、 設計担当マ ネージャー) 私たちの親会社は環境問題に精通した ヨーロッパの企業です。その取り組み 全てが利益を生むわけではありませ ん。しかしそれを続けるのは、顧客が その取り組みに価値を見出してくれる からです。私自身はより伝統主義者で あるといえるでしょう。つまり私は経 済的利益を求めます。私たちは環境に とって正しい行いをしたいと願いま す。しかし何よりもまず、それはビジ ネスにとって正しいことでなくてはな らないと考えています。

このコンデンシングユニットのエネルギー消費は、R407F を冷媒とす るコンデンシングユニットに比べ 25% 少ない。「私たちの期待を上回 る働きをしてくれています」とクーパー氏は言う。同氏は総エネルギー 消費を計測するにあたり、ケースやグリコールポンプ室、除熱を行う 吸引群などの各部分におけるエネルギー消費量を計測したという。

ゲイリー・クーパー氏 (ロウズ・マーケッ ト、 冷凍冷蔵ディレクター) 私たちは皆、 孫やひ孫のために環境を守 ること、 そして彼らの世代が対処するこ とになるだろう問題に強い関心を持っ ています。これまで私たちはCFCやHFC を使ってきましたが、 その終局に向かわ なくてはなりません。しかしスーパー マーケットで働くものとして、 毎月もれ なくやってくる光熱費を忘れるわけに もいきません。会社にとって正しいこ と、そして同時に、環境にとって正しい ことをすべきです。この2つのバランス を取っていくということだと思います。

クーパー氏は、ケースの施工を「単純だった」と振り返り、メンテナ ンスも非常にシンプルだと語る。アンペア数と吐出管の温度を除けば、 モニタリングが必要なものは多くない。「より多くのデータを集めるこ とができるように、 ハスマン社と共に(ケースコントローラーの) 性 能アップに取り組んでいます」

このシステムにはもうひとつの利点がある。吐出温度が低く済むことか ら、コンプレッサーの寿命が長くなるということだ。 全 体として、 使 用 する冷 媒 が 炭 化 水 素 で あ れ そ の 他 で あ れ 、クー パー氏は内蔵型ケースのさらなる導入を進めるのに“ 十分な理由” を見 出した。 特 に 評 価できるの は、 冷 媒 充 填 量を大 幅 に 削 減でき る点で、「 私 たちは 全 員、 同じところを目 指しています。 冷 媒 の 漏 えい を 減らすことで す」と同 氏 は 言う。「 漏えい の 可 能 性 が ある箇 所が少ない。それが、このシステムが持つ真の利点だと考えます」 クーパー氏にとって幸いなことに、ロウズは様々な冷媒を試す上で投資利 益に関する厳格な基準を設けていない。「我が社は進歩的であろうとし ています」と同氏は言う。「うまくいくかどうかを確かめ、業界が前進 する一助となるための様々な挑戦を認めてもらえる。素晴らしい会社 で働いていると感じています」 MG

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日本初

オール・ナチュラル・ コンビニエンスストア の 挑戦 R290 プラグインショーケースを 採用し、業界の先駆者となるべく スタートしたセーブオンの挑戦 文 : 佐橋 縁

群 馬 を 拠 点 と す る コ ン ビ ニ ・ チェ ー ン の セ ー ブ オ ン が 店 内 の 全 ショ ー ケ ー ス で 自 然 冷 媒 を 使 用 し た 新 店 舗 を オ ー プ ン 。 R 2 9 0 の 冷 凍 冷 蔵 ショ ー ケ ー ス の 採 用 が 市 場 に も たらす 変 革とは ?

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見城 嘉晃氏(セーブオン 店舗建設部長)

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エ ネ ・ 省 コ ストと い う 現 実 的 な 面 だ け で は な く、ま ず は オ ー ル ・ ナ チュラ ル( 店 舗 内 の 冷 凍 冷 蔵 シス テム を す べ て 自 然 冷 媒 シス テム の も

の に す る こと )の 店 舗 を オ ー プ ン さ せ る こと 。 そ の 経 験 と 実 績 こそ が 大 切 と 考 えて い る 同 社 は 、自 然 冷 媒 R 2 9 0 ( 炭 化 水 素 )の ショ ー ケ ー ス を 採 用 。 い ま だ 、可 燃 性 が 懸 念 材 料 と も 思 わ れ て い る 機 器 に つ い て も 、群 馬 か ら そ の 安 全 性 と 実 用 性 の メ リット を 発 信 し て い く。 地 域 密 着 型 で あるセ ーブ オン の 新 た な 取り組 み に は 地 元 メ ディア も 注 目 し 、次 の 展 開 に 期 待 が 集 まっ て い る 。

現 在 、日 本 に あ る 5 万 3 0 0 0 店 を 超 え る コ ン ビ ニ エ ン ス スト ア に お い て 、冷 蔵 冷 凍 の 技 術 は 言 う ま で も な く非 常 に 重 要 な ポ ジ ション を 占 め る シ ス テ ム で あ る 。 自 然 冷 媒 を 取 り 入 れ つ つ あ る 大 手 チ ェ ー ン も あ る 中 、2 0 1 5 年 2 月 、セ ー ブ オ ン で は ど こ よ り も 先 駆 け て 店 内 す べ て の 冷 蔵 冷 凍 ショ ー ケ ー ス に 自 然 冷 媒 を 採 用 し た 新 店 舗 を 群 馬 県 伊 勢 崎 市 に 、伊 勢 崎 香 林 南 店 とし て 誕 生 さ せ た 。 こ の 店 舗 で の 画 期 的 な 点 と し て 、冷 凍 ショ ー ケ ー ス に R 2 9 0 を 使 用 し て い る ところ に 、業 界 や 地 元 メ ディア か ら も 熱 い 視 線 が 寄 せ ら れ て い る 。 こ の 取 り 組 み を 始 め た の は 、群 馬 県 ・ 新 潟 県 を 中 心 に 関 東 ・ 東 北 地 方 で 約 6 0 0 店 舗 を 展 開 する コ ン ビ エ ン ス チェー ン ・ セ ー ブ オ ン( 本 社 : 群 馬 県 前 橋 市 、ベ イ シ アグ ル ー プ に 所 属 ) である。 セーブオンの 店 舗 建 設 部 長を務 める見 城 嘉 晃 氏 は 、レ イ テ ッ ク( A H T ク ー リ ン グ シ ス テ ム 社 の 冷 凍 冷 蔵 プ ラ グ イ ン シ ョ ー ケ ー ス を 輸 入 代 理 店 と し て 販 売 )か ら シ ョ ー ケ ー ス「 マ ン ハ ッ タ ン 」を 採 用 し た こと で 、R 2 9 0 シ ス テ ム の メ リ ット を 社 内 だ け で は な く業 界 全 体 に 広 め て い く手 が か り を 得 た 。 店 舗 内 す べ て を 自 然 冷 媒 化 へ 、と い う こ れ か ら 日 本 国 内 で も 盛 り 上 が り を 見 せ る べ き 動 き の 先 駆 者 とし て 同 社 が ま ず 舵 を 切っ た 形となっ た 。

企業間での情報交換がチャンスに コ ン ビ ニ エ ン ス 業 界 で は 、も と も と ロ ー ソ ン が C O 2 ト ラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム の 冷 凍 冷 蔵 シ ス テ ム の 導 入 に 大 々 的 に 着 手して い る 。 自 然 冷 媒 技 術 の 採 用 に 関して 見 城 氏 自 身 も 、当 時 の 上 司 も 強 い 興 味 を 持 っ て い た こと も あ り 、競 合 他 社 で ありな が らも 情 報 共 有 や 意 見 交 換 を する 機 会 を 持 つ こ と が で き た と い う 。 こ れ は 、競 争 の 激 し い コ ン ビ ニ エ ン ス ス ト ア 業 界 に お い て は 、非 常 に 稀 な こと だ と 言 え る だ ろ う 。 そ れ だ け 業 界 全 体 と し て 、自 然 冷 媒 に 向 け て の 取 り 組 み は 前 向 き で あ る と と も に 、ま だ ま だ ス タ ー トし た ば か り で あ り 各 社 が 手 探 りで 進 め 始 め て い る プ ロ ジェクト で あ る 。

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セ ー ブ オ ン で は 当 初 、レ イ テ ッ ク か ら R 4 0 4 の ショ ー ケ ー ス を 紹 介 さ れ て い た も の の 、自 然 冷 媒 に よ る さ ら な る 省 エ ネ ・ 省 コ ス ト と い う メ リ ット に 非 常 に 魅 力 を 感 じ た 。 そ こ で 、 R 2 9 0 シ ス テ ム を 新 店 舗 に 設 置 す る こと に 関 し て 社 内 で も プ ロ ジ ェ クト とし て 盛 り 上 が り を 見 せ る こ と と な っ た 。 そ の 背 景 に は 、2 0 1 3 年 頃 か ら の 改 正 省 エ ネ 法 の 施 行 ・ 政 府 か ら の C O 2 削 減 目 標 の 設 定 な ど が あ る 。 ま た 、2 0 1 1 年 に 起 き た 震 災 の 経 験 、そ の 後 の 節 電 の 流 れ か ら も 省 エ ネ に 対 し て 強 い 関 心 が あ っ た と 言 う 。 同 社 で は 代 替 フ ロ ン とし て H F O へ の 切 り 替 え の 予 定 は な く、こ の 先 も 自 然 冷 媒 の 採 用 を メ イ ン に し て い く方 針 で あ る 。

R290 の可燃性という課題への前向きな姿勢 し かし な がらプ ロ パ ン を 使 用し た シス テム の 採 用というの は 、市 場 に お い て は ま だ 第 一 選 択 肢 と は な っ て い な い の が 実 情 で あ る 。 特 に 国 内 メ ー カ ー で は 、可 燃 性 に 対 す る 懸 念 が 根 強 い と 言 わ れ て お り 、万 が 一 の 事 故 、ま た そ れ が 起 こっ た 際 の 責 任 の 所 在 は どう す る の か と い う 点 が 、大 き な 課 題 と な っ て い る よ う だ 。 こ の こと か ら も 、今 回 セ ー ブ オ ン が 踏 み 出 し た 1 歩 は 市 場 に お い て 非 常 に 価 値 が あ ると 言 える 。 こ の 点 に 関 し て 、見 城 氏 の 見 解 は 、「 ヨ ー ロ ッ パ で 普 及 し て い る と い う の も 判 断 材 料 の ひ と つ で あ り 、プ ロ パ ン の 使 用 量 は 1 5 0 g で あ り 、基 準 は クリ ア し て い る 。 逆 に 、( 使 用 量 の )規 制 範 囲 内 で あ れ ば 安 全 で あ ると 我 々 は 捉 える よう に し て い る 」と 話 し 、自 分 た ち が 使 用 を 続 け る こと 、さ ら に そ の 店 舗 数 を 増 や し て い くと い う 実 績 で 、市 場 に そ の 安 全 性 を 証 明 し て い き た い と 考 えて い る 。

「 我々が 使 い 続 け 、 広 め て いくこと で安全性を証 明して いくしか な いと 思っています 。」 ど の よ う に 自 然 冷 媒 を 採 用 し た 店 舗 を 増 や し て い くの か 、に つ い て は 次 の よう に 語 る 。「 ま ず は 、新 規 店 で は 標 準 で R 2 9 0 ショ ー ケ ー ス の 設 置 を 考 えて い ま す の で 、毎 年 2 0 ~ 3 0 店 舗 へ の 導 入 に な り 、既 存 店 で の 入 れ 替 え も 考 え て は い ま す 」「 将 来 的 に は R 2 9 0 の 冷 凍 冷 蔵 ショ ー ケ ー ス 設 置 は 1 0 0 % を 目 指 し た い で す が 、C O 2 シ ス テ ム も 採 用 し 、5 年 後 ま で に 新 規 店 舗 の 1 0 % で オ ー ル ・ ナ チュラ ル を 達 成 し た い と い う 目 標 で す 」 実 際 に 、日 本 初 の オ ー ル ・ ナ チュラ ル の 店 舗 、と い う の を オ ー プ ン し た と い う 事 実 そ の も の が 見 城 氏 に とっ て は 最 も 意 義 の あ る こ と だ っ た 。「 お 客 様 に

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CO2漏えい警報の解除ボタン

飲料などはウォークインタイプの 冷蔵庫に並ぶ

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新たに導入したR290を使用した 冷凍ショーケース

CO2の漏えいを感知する装置


とっ て も 、自 分 た ち に とっ て も 非 常 に メリット の あ る 目 的 が 達 成 さ れ た と 感 じ て い ま す 」R 2 9 0 の ショー ケ ー ス 設 置 以 前 は 2 つ の ショー ケ ー ス が あっ た ス ペ ー ス に 、R 2 9 0 の 場 合 は 1 機 で よ い と い うこと も あり、確 実 に 省 エ ネ に な っ た と 数 字 に も 表 れ て い ると い う 。 ま た 実 際 に 設 置 す る ま で は 、扉 付 き と い う 造 り に も 多 少 の 不 安 が あ っ た 。「 業 界 の 常 識 とし て 冷 凍 ショ ー ケ ー ス に 扉 は な い も の だ と 思 っ て い た の で 、扉 を 開 け ると い う 行 動 が プ ラ ス さ れ る こと で 、購 買 意 欲 に 影 響 が な い か を 念 入 り に 調 査 し まし た 」結 果 的 に は 、扉 に よっ て 省 エ ネ に も な り、売 り 上 げ の 落 ち 込 み も な い だ ろうと い う 判 断 の もと「 デ ザ イン 的 に も 悪 くな い と 思って い ま す 」

レジャーサービス事業

■ベイシアフードサービス

■ミュー・エンターテイメント

■カインズフードサービス

■カインズトラベル

外食産業

■ベイシアスポーツクラブ

■ワークマン

■オートアールズ ■ベイシア電器 ■清閑堂

専門店

ベイシア グループ 流通小売チェーン6 社を中心に 29 社からなる企業グループ (本社:群馬県前橋市)

コンビニエン スストア ■セーブオン

■アイシーカーゴ

物流事業

■ベイシア興産

■ベイシア土地建物

■ベイシアリアルエステート ■カインズリアルエステート ■いせやコーポレーション

■ベイシア

デベロッパー事業

ショッピング センター 流通サービス事業 ■ベイシア総合保険サービス

■家迎知商貿有限公司

■ベイシアポップデポ

■カインズ・ビジネスサポート

■ベイシアリース・キャピタル

■カインズベストケア

■ベイシアビジネスサポート

■カインズ総合保険サービス

■ベイシアケア

■カインズポップデポ ■カインズ

ホームセンター

■カインズ

コンビニエンスストア「セーブオン」    ・・・・・・・・・・・・・・・・・605 店舗 ショッピングセンター「ベイシア」    ・・・・・・・・・・・・・・・・・129 店舗 ホームセンター国内最大手「カインズ」    ・・・・・・・・・・・・・・・・・200 店舗 作業関連用品専門店「ワークマン」    ・・・・・・・・・・・・・・・・・750 店舗 カー用品専門店「オートアールズ」    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 店舗 家電量販店「ベイシア電器」    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 店舗 (2015 年 5 月末現在)

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今後、課題となるのはコスト面 新 た な 店 舗 、新 た な 設 備と言う点 に お い て、コ スト面 で はど の ような 計 算 が な さ れ て い る の だろう か ? 現 在 は 、省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 の 導 入 に 対して、環 境 省 からの 補 助 金 が 設 定 さ れ て いる が 、そ の 補 助 金 の 存 在 は や はり大 き い も の な の だろうか ? 「 や はり、コストアップ は 否 め な い で すし、正 直 なところ補 助 金 が な け れ ば 難しいと言えるでしょう」と見 城 氏 は 語る。 現 実 的 に 、補 助 金 の 果 た す 役 割 は 非 常 に 大 きく、補 助 金 なしで 新 た な 設 備 投 資 を 続 けて いくほどの 体 力 の ある 企 業 は 見 つ からな い で あろう。し かし な がら、セ ーブ オン が 日 本 初 の 全 ショー ケ ース に 自 然 冷 媒 を 採 用し た 店 舗 を オ ープ ン さ せることが で き た の は 、見 城 氏 の「 たとえ補 助 金 が な かっ た としても 、経 験として 一 度 は やって み た いと思って い た 」というチャレ ン ジ 精 神 によるところ が 大 き い 。 ま た 、会 社としても 群 馬 で の 地 域 密 着 型 で あり、地 元 の お 客 さん を 大 切 に するという姿 勢 の 中 に は 、消 費 者 の た め に も環 境 に 配 慮した 企 業 で ありた いという熱 意 が 込 められて いると言える。 コ ストを 考 えることは 、何 よりも 大 切 なことの 一 つ で は ある が 、「 そ れ よりも 、気 持 ち の 問 題 も 大 切 な んで すよ」と見 城 氏 は 振り返る。C S R の 一 環として、C O 2 の 削 減 、環 境 配 慮というの は 取り組ま な け れ ば ならな い 課 題 で あると捉えて おり、そ れ が 会 社 の 評 価 にもつ な がって いくの だと。 現 在 、新 た に 自 然 冷 媒 の 冷 凍 冷 蔵 ショー ケ ース を 取り入 れることは 、補 助 金 を 考 慮しても 約 5 0 % の イニ シャル コストの アップ に つ な がるという。 省 エ ネ ・ 省 コストを 見 込 んで の 自 然 冷 媒 採 用 で は あ るも の の 、初 期 投 資 は 決して 安 いとは 言 えな い の が 現 状 だ 。 消 費 電 力 の 削 減 などにより、ラン ニ ン グ コストを 下 げることに 成 功しても、今 のところセ ーブ オンで は 投 資 回 収 まで に 約 7 年という期 間 を 設 定している。 p.28 へ 続 く

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見 城 氏 に よ れ ば 、今 後 、投 資 回 収 を い か に 早 くで き る か 、そ し て イ ニ シ ャ ル コ スト が ど れ くら い 下 が る か が 、市 場 へ の 普 及 の 課 題 に な っ て くる と 言 う が 、コ スト 削 減 に 関 し て は メ ー カ ー 側 へ 大 き な 期 待 を 寄 せ ざ る を 得 な い 。 イ ニ シ ャ ル コ スト が 従 来 の 機 器 に 比 べ 2 0 % 増 し くら い で あ れ ば 、投 資 回 収 の 期 間 も 7 年 の 半 分 に 設 定 で き る だ ろう 。 ま た 、内 蔵 型 の ショ ー ケ ー ス に お い て は 、メ ン テ ナ ン ス の ス ム ー ズ さ も 市 場 普 及 へ の 大 き な キ ー ポ イ ン ト に な る だ ろ う 。 安 全 ・ 安 心 と 言 う 点 で も 、技 術 者 へ のトレ ー ニ ン グ は さ ら に 重 要 に な っ てくる 。 「 補 助 金 が あ る 間 に 、メ ー カ ー に も 頑 張 っ て い た だ き 、イ ニ シ ャ ル コ ス ト が 下 が っ て くる と 我 々 エ ン ド ユ ー ザ ー も 、もっ と 採 用 し や す い で す よ ね 。 そ れ に よっ て 競 合 他 社 も 多 く取 り 入 れ て 、市 場 で の 競 争 が 生 ま れ る と い う の は 大 歓 迎 で す 」と 見 城 氏 は 語 っ た 。 自 然 冷 媒 を 未 知 の も の と 捉 え る 企 業 に お い て は 、コ スト が 高 い 、危 険 で あ る 、省 エ ネ に な ら な い の で は な い か ? と い う い くつ も の 消 極 的 な 意 見 が 出 て くる こと も あ る 。そ れ ら の 意 見 に 対 し 、セ ー ブ オ ン の 選 択 が 与 え る イ ン パ クト は こ れ か ら もっ と 大 き くな る で あ ろ う 。R 2 9 0 プ ラ グ イ ン ショ ー ケ ー ス の 安 全 性 を 示 し 、長 期 ス パ ン で 考 え れ ば 省 コ スト で あ り 省 エ ネ か つ 、 環 境 配 慮 と い う 社 会 的 な 評 価 も 同 時 に 得 て い くこと が で き る の だ 。 セ ー ブ オ ン に とっ て も オ ー ル ・ ナ チ ュ ラ ル の 店 舗 展 開 は 、ま だ 海 原 に 出 た ば か り の 船 で は あ る が 、決 し て 小 さ な ボ ート で は な い 。 今 後 そ の 数 が 増 える こと で 、ど ん な 波 に も の み 込 ま れ る こと な く、針 路 が 明 解 に な り 、後 に 続 く船 が 多 くな る は ず だ 。

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新たな段階への挑戦

スーザン・ソレンバーガー氏

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10年に及ぶ二次冷媒やCO2 カスケード設備のテスト期間を経て、 フードライオン(Food Lion)は同社初となるトラ ンスクリティカル冷凍冷蔵システムの実証準備を整えた。システムを置く環境は、すばり、温暖な気候地域である。 文:マイケル・ギャリー p.32 へ 続 く

ウェイン・ローサ氏

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トランスクリティカルブースターシステムの 実証実験が行われる フードライオンのサウスポートに 開店予定の新店舗

持続可能性に優れた 冷凍冷蔵機器を自社 店 舗 に 導 入 し ようと 、 フ ードライオン はこれ ま で 1 0 年 に わ た って 、 二 酸 化 炭 素 を ベ ー スと

そ し て 今 、同 社 は こ れ ま で で 最 も 大 き な 一 歩 を 踏 み 出 そ うと し て い る 。C O 2 の み を 冷 媒 と す るト ラ ン ス クリ ティカ ル ブ ー ス タ ー シ ス テ ム の 実 証 を 行 お うと い う の だ 。 こ の 食 品 冷 凍 冷 蔵 シ ス テ ム が 導 入 さ れ る の は 、ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 サ ウ ス ポ ート に 開 店 す る 新 店 舗 で あ る 。 サ ウ ス ポ ート は 州 南 東 の 端 に 位 置 す る 海 沿 い の 地 域 で 、人 気 観 光 地 の マ ート ル ビ ー チ に も 近 い 。 開 店 は 2 0 1 5 年 第 4 四 半 期 を 予 定 して い る 。

し た 冷 凍 冷 蔵 シス テム

フ ード ラ イ オ ン で エ ネ ル ギ ー ・ メ ン テ ナ ン ス マ ネ ー ジャ ー を

の 検 証 を 注 意 深 く積 み

務 め る ウェ イ ン ・ ロ ー サ 氏 は 、同 社 が 次 な る 段 階 に 進 む 準 備

重 ね てき た 。

が 整 っ た と 手 ご た え を 感 じ て い る 。 同 氏 は 、「 こ れ ま で も 二 次 冷 媒 や カ ス ケ ード シス テ ム に C O 2 を 冷 媒 として 使 用 して き まし た 」と 話 し 、続 け て「 今 後 、こ の 新 し い 冷 媒 を 活 用 し 、将 来 的 に より多 くの 店 舗 に 導 入 す る 機 会 を 見 極 め た い と 思 っ て い ま す 」 と 語 っ た 。 サ ウ ス ポ ート の 店 舗 規 模 は 、フ ード ラ イ オ ン の 標 準 型 店 舗 と 同 様 の 3 5 , 0 0 0 平 方 フィート( 約 3 , 2 5 0 ㎡ )で あり、こ れ と 同 規 模 の 店 舗 は 約 1 5 0 あ る 。R 4 0 7 A を 冷 媒 と す る 従 来 型 の D X 冷 凍 冷 蔵 シス テ ム を 使 う 同 規 模 店 舗 を 近 隣 か ら 選 び 、サ ウス ポ ート 地 域 に 導 入 す る シス テ ムと の 比 較 を 行 う。 ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 ソ ー ル ズ ベ リ ー に 拠 点 を 置 くフ ー ド ラ イ オ ン は 、アメリカ 南 東 部 で 1 , 1 0 0 以 上 の 店 舗 を 運 営 し 、デ レ ー ズ ・ ア メ リ カ( D e l h a i z e A m e r i c a )傘 下 で は 、ト ラ ン ス クリ

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ティカ ル シス テ ム の 実 証 を 行 う 2 つ 目 の 部 門 で あ る 。 同 傘 下 で 最 初 に 実 証 を 行っ た ハ ナ フォー ド ・ ス ー パ ー マ ー ケット は メ イン 州 ス カ ボ ロ ー を 拠 点 とし 、2 0 1 3 年 7 月 、アメリカ 初 のトラン ス クリティカ ル シス テ ム 店 舗 を 開 店し た 。2 0 1 5 年 に は 、2 店 目 のトラン ス クリティカ ル 店 舗 を メ イ ン 州 バ ー ウィック で お 披 露 目 し て い る 。 ア メリ カ の 食 品 ス ー パ ー マ ー ケ ット 業 界 で は 、ク ロ ー ガ ー( K r o g e r )、ア ホ ー ルド U S A( A h o l d U S A )、ホ ー ル フ ー ズ ・ マ ー ケット( W h o l e F o o d s M a r k e t )、ラ ウ ン ディー ズ( R o u n d y ’ s )、ア ル ディ( A l d i )、ウェグ マ ン ズ( W e g m a n s )、ス プ ラ ウ ツ( S p r o u t s )な ど 、C O 2 トラ ン ス クリティカ ル シス テ ム の 実 験 を 行 う 企 業 が 増 えて おり、フ ー ド ラ イ オ ンと ハ ナ フォ ード もこ れ ら の チェ ー ン に 続 く形 と な っ た 。 ア ン ジェ ロ ・ カ プ ートズ ・ フ レ ッシュ マ ー ケッツ( A n g e l o C a p u t o ’ s F r e s h M a r k e t s )な ど の 独 立 系 ス ー パ ー も 、トラ ン ス クリティカ ル の 流 れ に 乗り始 め て い る 。 フ ード ラ イ オ ン が 二 酸 化 炭 素 を 冷 媒 と す る 冷 凍 冷 蔵 技 術 に 最 初 に 進 出し た の は 2 0 0 6 年 の こと で 、同 社 は こ の 年 、C O 2 を 二 次 冷 媒 と す る 低 温 二 次 ル ー プ シス テ ム を 導 入 し た 店 舗 を バ ー ジ ニ ア 州 モ ント ピ リア に オ ー プ ン さ せ た 。 同 年 の 初 め に は 、グ リコ ー ル を 二 次 冷 媒 に 用 い た 中 温 二 次 ル ー プ シス テ ム を 、バ ー ジ ニ ア 州 ディン ウィディの 店 舗 に 導 入 して い る 。 そ れ か ら 2 年 後 、 フ ード ラ イ オ ン は 次 な る ス テップ へ と 進 む こと にし た 。先 の 2 つ の 二 次 シス テ ム を 統 合し 、バ ー ジ ニ ア 州 ポ ー ツ マ ス の 店 舗 に 導 入 し た の だ 。 そして 2 0 0 9 年 、サ ウ ス カ ロ ラ イ ナ 州 コ ロ ン ビ ア の 環 境 配 慮 型 店 舗 に て 、同 社 初 の C O 2 カ ス ケ ード シス テ ム の 導 入 に 至 る 。 フ ード ラ イ オ ン は こ の 時 点 で 新 規 店 舗 の 立 ち 上 げ を 一 時 休 止 して おり、そ れ と 共 に 、先 進 の 冷 凍 冷 蔵 シス テ ム の 導 入 も そ れ 以 上 は 行 わ ず 、導 入 済 み の 二 次 お よ び カ ス ケ ード シ ス テ ム か ら デ ー タ を 集 め た 。 そ の 結 果 、同 社 が 従 来 か ら 使 っ て き た R 4 0 7 A 冷 媒 の D X シス テ ム と 比 べ 、こ れ ら の 新 シス テ ム は イ ニ シャ ル コ スト で は か なり割 高 で は あ る が 、エ ネ ル ギ ー 消 費 お よ び メ ン テ ナ ン ス の 両 面 に お い て、従 来 型 シス テ ムと 同 等 で あ ること が わ かっ た 。 2 0 1 5 年 、フ ード ラ イ オ ン は 新 店 舗 の 立 ち 上 げ を 小 規 模 で 再 開 し 、同 年 は 2 店 舗 、2 0 1 6 年 に は さら に 2 店 舗 の 開 店 を 予 定 して い る 。 そ の うち の サ ウ ス ポ ート 店 舗 に て 、トラ ン ス クリティカ ル シス テ ム の 実 証 が 行 わ れ る 。 今 の ところ 同 社 は 今 後 、二 次 シス テ ム お よ び カ ス ケ ード シス テ ム の 新 た な 導 入 は 行 わ な いという計 画 だ 。

経験から得たこととは ? C O 2 シス テ ム の 店 舗 導 入 を 通 して フ ード ラ イ オ ン が 得 た 学 び の 中 で 最 も 重 要 な こと は 、こ の 新 し い 技 術 に は しっ かりとし たトレ ー ニ ング が 必 要 で あ ると い う 点 だ 。 同 社 は サ ウ ス ポ ート の 店 舗 で の 導 入 に 向 け て 、シ ス テ ム を 提 供 す る ヒ ル フェ ニ ックス( H i l l p h o e n i x )の 本 社( ジョ ー ジ ア 州 コ ン ヤ ー ズ )で 、トレ ー ニ ング の 機 会 を 既 に 一 度 設 け て い る 。 出 席 し た の は 施 工 を 請 け 負 う 業 者 、シス テ ム 管 理 を 担 う 社 内 サ ー ビ ス 技 術 者 、バ ックアップ サ ー ビ ス の 業 者 で あり、「 施 工 だ け で は な く、メ ン テ ナ ン ス に 関 して もトレ ー ニ ング を 実 施 して い くと い う 姿 勢 を 明 確 にし まし た 」とロ ー サ 氏 は 言 う。 フ ード ラ イ オ ン は 、姉 妹 会 社 で あ る ハ ナ フォード ・ ス ー パ ー マ ー ケット が 持 つトラン ス クリティカ ル シス テ ム の 経 験 や 、ハ ナ フォード の エ ネ ル ギ ー・施 設 サ ー ビ ス ディ レ クタ ー で あ る ハ リソ ン ・ ホ ー ニ ン グ 氏 か ら も 学 ぶ 機 会 を 得 た 。 フ ード ラ イ オ ン を 含 め 、トラ ン ス クリティカ ル シス テ ム の 導 入 に 踏 み 切 ろうと す る 食 品 小 売 業 者 に とって 幸 運 な こと に 、アメ リカ で は C O 2 シス テ ム に 必 要 な あ ら ゆ る 部 品 の レ ー ティング( 評 価 )が 行 わ れ る よう に な っ た 。 こ れ は 、2 年 前 に ハ ナ フォード が 同 シス テ ム を 初 め て 導 入し た 当 時 に は な かっ た こと だ 。 フ ー ド ラ イ オ ン の エ ネ ル ギ ー ・ メ ン テ ナ ン ス ・ 設 備 購 入 ディレ クタ ー で あ る ス ー ザ ン ・ ソ レ ン バ ー ガ ー 氏 に よ れ ば 、 ト ラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム は 現 在 、 ハ イド ロ フ ル オ ロ カ ー ボ ン ( H F C )を 使っ た D X シス テ ム に 比 べ 初 期 コ スト が 高 い 。 同 氏 は こ の 割り増 しと い う の は 、フ ー ド ラ イ オ ン が “あえての 選 択をした ”と い う 事 実 を 指 し 示 して い るとも 語 っ た 。 こ の 種 類 の 投 資 に 関 し て、 フ ード ラ イ オ ン は 明 確 な 投 資 利 益 を 求 め る こと p.34 へ 続 く を 標 準として い る が 、 初 め て 導 入 するトランスクリティカ ル シ Nov / Dec 2015 Accelerate Japan

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ス テム の 実 証 に つ い て は そ の 対 象 外とし た 。「 今 回 の 実 証 は 、 フ ー ド ラ イ オ ン の エ ネ ル ギ ー 計 画 とし て 行 う も の で は あ り ま せ ん 」 と ソ レ ン バ ー ガ ー 氏 は 言 う 。「 C O 2 技 術 で 私 た ち は 何 が で きる の か 、 そ れ を 発 見 する た め の チャン ス だ と 捉 えて い ま す 」 ロ ー サ 氏 は これ に 頷 く。 そ し て 、 フ ー ド ラ イ オ ン が こ れ ま で 行 っ て き た C O 2 二 次 シ ス テ ム や カ ス ケ ー ド シ ス テ ム の 実 証 実 験 は 全 て、 従 来 型 の シ ス テ ム と 比 べ て コ スト 高 と な っ た が 、 そ の 割 り 増 し 分 は 代 替 冷 凍 冷 蔵 シ ス テ ム を 理 解 す る と い う“ 利 益 ”に よ っ て 吸 収 さ れ て い る と 指 摘 し た 。 ト ラ ン ス ク リ テ ィ カ ル シ ス テ ム の 実 証 は 、「 1 0 年 に 及 ぶ 代 替 技 術 の 研 究 に お い て 、 次 な る 1 ス テ ップ に 過 ぎ ま せ ん 」 ロ ー サ 氏 は 、 新 シス テ ム に か か る 施 工 コ スト に つ い て、 銅 線 を 細 くして 原 材 料 費 を 幾 分 節 約 で き た こと に より、 従 来 型 シス テ ム に 比 べ 多 少 下 がって い ると 見 て い る 。トラン ス クリティカ ル 技 術 は 施 工 業 者 にとって も 新し い 技 術 で あり、 そ の 立 ち 上 げ 段 階 に お い て 業 者 もま だ 不 安 を 抱 え て い ること か ら 、 見 落 とし が な い よう施 工 に は 通 常 より多 くの 時 間 を 注ぐ 傾 向 に あ ると いう。 と は い え、 施 工 業 者 や 技 術 者 が 自 然 冷 媒 シス テ ム の 経 験 を 積 み 重 ね る に つ れ て、 施 工 コ スト は 下 がり、「 食 品 小 売 側 の 初 期 投 資 も 下 が る だ ろう」 とロ ー サ 氏 は 楽 観 的 な 予 測 を た て て い る 。 フ ー ド ラ イ オ ン は 、 ト ラ ン ス クリ ティ カ ル シ ス テ ム が 持 つ 魅 力 の 1 つ とし て 、 こ の シ ス テ ム が 比 較 的 シンプ ル で ある点 を 挙 げる。 冷 媒 に C O 2 を 使 用 するた め 注 意 が 必 要 な 点 もある が ( 作 動 圧 力 が 高 い 、 冷 媒 ガ ス バ イ パ ス 弁 を 使 用 す る 、 ポ ン プ ダ ウ ン の 際 に ド ラ イ アイ ス が た ま る の を 防 が な くて は な ら な い 等 )、「 と は い え 、 冷 凍 冷 蔵 と い う 技 術 で あ る こと に 変 わ り あ りま せ ん 」 と ロ ー サ 氏 は 言 う 。「ト ラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム を D X シ ス テ ム の よ う に 捉 え れ ば い い の で す 」。 こ れ に 対 し カ ス ケ ー ド シ ス テ ム や 二 次 シ ス テ ム に は 、 C O 2 ポ ン

プ な ど 、 業 務 用 冷 凍 冷 蔵 の “ 当 たり前 ” を 超 え た 部 品 が 必 要 に な っ て くる 。

作 業 圧 力 が 高 い 点 が 、トラ ン ス クリティカ ル シス テ ム の 難 点 とさ れ ること が あ る 。 ケ ー ス 側 の 圧 力 は 、 D X シス テ ム に 比 べ 大 幅 に 高 い と い うこと は な い 、 と ロ ー サ 氏 は 言 う。 一 方 で コ ン デ ン サ ー 側 の 圧 力 は 、8 8 ℉( 3 1 ℃ )未 満 で 8 0 0 ~ 9 0 0 p s i g に 、こ れ 以 上 の 温 度 で は 最 大 1 , 4 0 0 p s i g ま で 上 が り、 こ れ に よっ て C O 2 が 亜 臨 界 状 態 ( 気 体 と 液 体 の 共 存 状 態 ) と な る 。 い ず れ にしろ 、ロ ー サ 氏 は こ の 圧 力 を 管 理 可 能 と 考 えて い る 。「 恐 れ るよう な も の で は ありま せ ん 」

エネルギー性能はいかに ? トランスクリティカルシステムを初めて導入するにあたり、フードライオンにとって最も大きな挑戦は、導 入店舗がサウスポートというエリアにあることだ。この場所についてローサ氏は、「海岸からの距離は数 百メートルで、私たちが店舗展開するエリアの中でほぼ最も温暖な地域」だと言う。サウスポート地域で 実証実験を行うことは、カナダやアメリカ北部など一般的に涼しい気候帯で使われてきたトランスクリティ カルシステムが、温暖な気候帯においても効率的に稼働するかどうかが試されることを意味している。「サ

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ウスポート地域の実証が成功すれば、フードライオンのどのエリアの店舗でも、トランスクリティカルシス テムを使うことができるようになるでしょう」とローサ氏は言う。 次 な る 実 証 技 術 をトラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム に 決 め る に あ たり、 ロ ー サ 氏 は サ ウ ス ポ ート 地 域 に お ける シス テム の エ ネ ル ギ ー 性 能 を シミュレ ー ションし た 。 「 私 た ち が 心 配して い る の は 、 トラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム が うまく稼 働 し な い こと で は な く、 エ ネ ル ギ ー 性 能 が 従 来 型 の D X シス テ ム と 同 等 に な ら な い ことで す 」 と ロ ー サ 氏 は 話 す。「し か し 、 シミュレ ー ション 結 果 を 見 る 限り、 D X シス テ ムと 変 わ ら な い エ ネ ル ギ ー 性 能 を 見 せ て い ま す。」 今 年 中 に シス テ ム の 稼 働 を 始 め 、 そ の 後 の 1 2 ~ 1 8 ヶ 月 間 で 、 近 隣 の 店 舗 の D X シス テ ムと エ ネ ル ギ ー 消 費 比 較 を 行 う。 ロ ー サ 氏 の 予 測 で は 、トラ ン ス クリティカ ル シス テ ム が 消 費 す る エ ネ ル ギ ー 量 の ピ ー ク と ボト ム は 、 そ れ ぞ れ 夏 と 冬 に やってくる 。「し かし 、 年 間 の エ ネ ル ギ ー デ ー タ を 見 れ ば 、 D X シス テムと同 等 に な る だ ろうと見 込 んで い ま す 」と同 氏 は 言 い 、 「 願 わくは 、D X より断 然 効 率 的 、 と 言 えることで す ね 」 と笑 み を 見 せ た 。 フ ード ラ イ オ ン は エ ネ ル ギ ー の 観 点 か ら 投 資 の 回 収 は 求 め て い な い 。 そ れ で も ロ ー サ 氏 と ソレ ン バ ー ガ ー 氏 は 、 「 フ ー ド ラ イ オ ン は 自 然 冷 媒 を し か る べ き 理 由 で 使 っ て い る 。そ し て 、 従 来 型 冷 媒 の 使 用 に よ る 割 高 コ スト を 避 け る こと 以 外 で 、 費 用 対 効 果 を 証 明 で き る 省 エ ネ が あ る の だ 」 と 1 8 ヶ 月 後 に 言 える こと を 願 っ て い る 。 ト ラ ン ス クリ ティカ ル 店 舗 お よ び 比 較 対 象 店 舗 で 、 ロ ー サ 氏 は サ ブ メ ー タ ー と 流 量 メ ー タ ー の 両 方 を 使 う 。 こ れ に より 単 位 時 間 当 た り に 使 用 す る 冷 媒 量 の 計 測 が で き る こと か ら 、 エ ネ ル ギ ー 性 能 の 比 較 を より 正 確 な も の とし 、 より 精 密 な デ ー タ を 導 き 出 す こと が 可 能 に な る 。 天 候 や 顧 客 の 買 い 物 パ タ ー ン の 違 い から、 異 な る 店 舗 の エ ネ ル ギ ー 消 費 を 比 べ る の は 難し い 。 そ の た め 、流 量 メ ー タ ー は 各 店 舗 の デ ー タ に 現 れ る 運 転 差 異 を 正 規 化 す る の に 役 立 つ 。 ま た 、 ロ ー サ 氏 の 励 み に な っ て い る 実 証 結 果 も あ る 。 そ れ は 、 ス プ ラ ウ ツ ・ ファ ー マ ー ズ マ ー ケ ット が ジ ョ ー ジ ア 州 ダ ン ウ ッ デ ィ に あ る 2 9 , 0 0 0 平 方 フィ ー ト ( 約 2 , 7 0 0 ㎡ ) の 店 舗 に 導 入 し たト ラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム か ら 得 ら れ た デ ー タ で あ る 。 導 入 か ら 1 年 を 経 た シ ス テ ム が 、 エ ネ ル ギ ー 性 能 に 関 し て 良 い 結 果 を 出 し て い る の だ 。 ダ ン ウッ ディの 店 舗 で は 、 C O 2 の 温 度 を 下 げる た め に 断 熱 ガ ス 冷 却 器 が 採 用 され 、 そ れ が 高 い 気 温との 釣 り合 い を 取 る の に 役 立っ た 。 そ の た め エ ネ ル ギ ー 性 能 に 関して 良 い 結 果 が 得ら れ た の で あ る 。一 方 フ ー ド ラ イ オ ン のト ラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム に は 、断 熱 ガ ス 冷 却 器 で は な く、 一 般 的 に 使 わ れ て い る タ イ プ の ガ ス 冷 却 器 が 選 ば れ た 。「 断 熱 シ ス テ ム を 使 え ば あ る 程 度 の 省 エ ネ は 可 能 で す 。 し か し 、 そ の 追 加 コ スト を 経 費 とし て 正 当 化 し な くて は な りま せ ん 」 と ロ ー サ 氏 は 言 う 。「 断 熱 シ ス テ ム を 使 っ た 省 エ ネ で 得 ら れ る コ スト 回 収 は 、 フ ー ド ラ イ オ ン の 基 準 を 満 た す も の で は あ りま せ ん 」

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システムスペック フードライオンがノースカロライナ州サウスポートの 店舗に導入するトランスクリティカルシステム »» ラックサプライヤー:ヒルフェニックス社 »» ケースサプライヤー:ヒルフェニックス社 »» コンプレッサーサプライヤー:ビッツァー社(Bitzer) »» 制御機器サプライヤー:CPC社 »» ラック台数:1 »» 低温および中温コンプレッサー台数:中温5台、低温3台 »» 低温容量:188,700 BTUs/時 »» 中温容量:771,900 BTUs/時 »» CO2 充填量 :600ポンド (約 272キロ)冷凍機、肉用ケース、乳 製品ケース、野菜果物ケース各温度:-18° C, 22° C, 32° C, 28° C »» 熱回収:空気および水 フードライオン・サウスポート店の トランスクリティカルシステムのラック

»» デフロストタイプ:電気

レトロフィットという選択肢 前 進 を 続 け る フ ード ラ イ オ ン は 、既 存 店 舗 の 改 装 を 増 や し て お り、ど の 店 舗 に お い て C O 2 トラ ン ス クリティカ ル シス テ ム へ の 入 れ 替 え が 可 能 な の か を 探って い る 。 先 月 、同 社 は メ イ ン 州 で シ ス テ ム サ プ ラ イ ヤ ー と の 会 合 を 開 き 、ど う い っ た レ ト ロ フィット が 可 能 な の か を 話 し 合 っ た 。 そ の 結 果 、「 現 在 の と ころ 、レ ト ロ フィット は あ ま りよ い 選 択 と は 言 え ま せ ん 」と ソ レ ン バ ー ガ ー 氏 は 語 り 、こ れ に つ い て ロ ー サ 氏 は 、サ プ ラ イ ヤ ー 側 が 自 然 冷 媒 導 入 の タ ー ゲ ット とし て い る の が 新 規 の 店 舗 で あ り 、既 存 店 舗 へ の 導 入 に は 非 常 に 限 ら れ た 選 択 肢 し か な い と 指 摘 し た 。 ロ ー サ 氏 に よ る と 、こ の 問 題 を ま す ま す 難 し くす る の は 、レ ト ロ フィット を 行 う 店 舗 そ れ ぞ れ の 特 異 性 で あ り 、そ れ に よっ て 標 準 的 な 方 法 の 開 発 が 進 ま な い と い う 。 ソ レ ン バ ー ガ ー 氏 は フ ード ラ イ オ ン の 店 舗 改 装 に つ い て 、通 常 は 既 存 の 冷 凍 冷 蔵 ケ ー ス を そ の ま ま 残 すと 説 明 し た 。 し か し 、既 存 ケ ー ス を 使 っ てト ラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム に 入 れ 替 える こと は 不 可 能 で あ り 、こ の こと か らト ラ ン ス クリ ティカ ル シ ス テ ム は 店 舗 改 装 に は 向 い て い な い こと が わ か る 。 ケ ー ス を 全 て 新 し い も の に 入 れ 替 える と す れ ば 、「 改 装 費 用 が 1 0 0 万 ド ル か ら 2 0 0 万 ド ル に 倍 増 す る こと に な る 」と 同 氏 は 言 う 。 そ の 一 方 で 、将 来 的 に は レ ト ロ フィット に 向 け た 自 然 冷 媒 技 術 の 利 用 が 可 能 に な る こと も 願 っ て い る 。 そ れ が 可 能 に な る ま で は 、自 然 冷 媒 の 新 店 舗 へ の 導 入 とレト ロ フィットと の 間 に「 巨 大 な 隔 た り 」が 残 る と ロ ー サ 氏 は 指 摘し た 。 し か し 、米 環 境 保 護 庁( E P A )が R 2 2 冷 媒 の 段 階 的 撤 廃 を 決 め た こと で 、自 然 冷 媒 へ の レ ト ロ フィット は 増 え る か も し れ な い 。 食 品 小 売 業 者 が R 2 2 を 使 う シ ス テ ム の 利 用 を や め る と き 、代 替 ガ ス とし て 使 わ れ る の は 一 般 的 に H F C 類 だ 。 ロ ー サ 氏 は 、企 業 が こ の ア プ ロ ー チ か ら 抜 け 出 す べ き だ と 考 え て い る 。H F C の 使 用 を 制 限 す る た め 、E P A が さ ら な る 規 制 を 設 け る こと を 見 込 ん で い る か ら だ 。 そ う な れ ば 、こ の こと は 、レ ト ロ フィット を 一 層 後 押 し す る も の と な る だ ろう 。 自 然 冷 媒 の 利 用 に 踏 み 切 れ ば 、新 た な 規 制 に 対 応 す る た め に 繰 り 返 し 冷 媒 を 入 れ 替 える 必 要 が な くな る 。「 あ ら ゆ る 企 業 が 自 然 冷 媒 の 実 証 を 行 お うとし て い ま す 。 店 舗 寿 命 を 考 え た と き 、現 在 の E P A の 規 制 に 合 わ せ て そ の 場 し の ぎ で 小 さ な 措 置 を 講 じ る よりも 、自 然 冷 媒 を 利 用 し た 方 が 結 果 的 に は お そ ら く費 用 が 少 な く済 む の で す か ら 」と ロ ー サ 氏 は 語 っ た 。

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切り換えませんか スーパーマーケットの冷却用途に自然冷媒を選択

低い地球温暖化係数 (GWP) と高温での熱回収能力のある CO²自然冷媒は、スーパーマーケットにエコな冷凍システムを提供します。さらに、超臨界の CO²冷凍サイクルによって回収される熱は、給湯と暖房用として使用することができます。 Alfa Laval が提供する画期的な製品によって、効率よい信頼できる安全なCO²の超臨界やカス ケードシステムを作ることができます。 アルファ・ラバルはCO²への転換の準備ができています。皆様は、準備できていますか? 更に詳しくお知りになりたい方は、下記までお問合せください。

CO²用空気熱交換器

高耐圧ブレージングプレート式熱交換器

アルファ・ラバル株式会社 東京都港区港南2-12-23 大阪市北区堂島浜2-2-28 www.alfalaval.jp

明産高浜ビル Tel: 03-5462-2445 堂島アクシスビル Tel: 06-4796-1550 www.alfalaval.com/make-the-switch Nov / Dec 2015 Accelerate Japan

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省エネ型

自然冷媒機器で

世界

を変える

環境省が見据える 「市場で省エネ型自然冷媒機器を 自立させる」ための軌跡 文:佐橋 縁

省エネ型自然 冷 媒 機 器を選 択する企 業や団 体にとって大きな支えとなっているのが、 環 境 省 の 補 助 事 業 で ある。 補 助 事 業 自 体 は 2 0 0 5 年 度 か ら 行 わ れ て い た が 、 フロン 排 出 抑 制 法 の 改 正 や 国 際 社 会 で の H F C 対 策 の 状 況 を 鑑 み 、 2 0 1 4 年 度 からは 予 算 額 を 大 幅 に 増 やし、 さらなる 普 及 の た め 取 組 を 進 めている。 補 助 事 業 の 現 状と市 場 の 活 性 化 を 目 指し た 補 助 事 業 の あり方 に つ い て 環 境 省 地 球 環 境 局 フロン 対 策 室 長 鮎 川 智 一 氏 に 話 を 聞 い た 。 鮎川智一氏 環境省 地球環境局 フロン対策室長

市場への高い貢献度 環境省「先進技術を利用した省エネ型自然冷媒機器普及促進事業」においては、2016 年度も補助金に よる企業などへの支援が予定されており、概算要求の段階では、2015 年度に比べ増額要求されている。 2005 年度に「省エネ型低温用自然冷媒冷凍装置の普及モデル事業」として食品工場や冷凍冷蔵倉庫の 事業を対象にスタートした制度は、この 10 年で内容や対象事業の変遷を遂げてきたことから、市場を育 てながら、かつ一緒に成長してきた補助事業であると言えるだろう。 2005 年度の補助事業開始以降、省エネ型自然冷媒機器の普及率が高まっていることがうかがえる。2016 年度についても約 85 億円という巨額の投資をする価値のある事業であると考えられていることは、自然 冷媒市場にとっては明るいニュースだと言ってよいだろう。実際に、予算額は年々約 15 ~ 20 億円以上ず つ増額されており(2016 年度に関しては概算要求額)、2014 年度では4次公募まで行ったが、2015 年 度では第2次公募で支給予算額いっぱいとなるほどに申請企業も増え、 交付先決定数も 600 を超えた。 省エネ型自然冷媒機器に対する需要と供給は増加し、そして意識改革は着実に強くなっており、市場が年々 勢いを増しているのは明らかである。

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自然冷媒普及のために必要な「改革」とは ? 環 境 省 で は 、 常 に 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 に つ い て、 エ ンド ユ ー ザ ー に 「 意 識 」 と「 財 政 」 の 二 方 向 から の 促 進 を 図ろうとしてき た 。 広 報 活 動 で 意 識 が 変 わっ たとしても 、 や はり直 接 的 な 支 援 とな る 財 政 面 で の 補 助 金 の 役 割 が な け れ ば 普 及 に は 大 き な 障 害 となってしまっ た だ ろう。 補 助 対 象となる 事 業 は 、当 然 のことな がら企 業 規 模 の 大 小 、事 業 の ジャン ル や 自 然 冷 媒 の 種 類 によっ て 優 先 順 位 など は な い 。 交 付 額 の 幅 は 、 事 業 規 模 に よって 1 0 0 万 円 台 か ら 1 億 円 を 超 えること もある。 審 査 に あ たって は 、「 落とす た め の 審 査 」 で は なく、 自 然 冷 媒 の 導 入 を 支 援 する た め の 審 査 で あ る、 と いう印 象 が 非 常 に 強 い 。 政 府 へ の 申 請 とな ると、 煩 雑 さ や 融 通 の 利 か な さ が 懸 念 さ れ る 点 で は ある が 、 例 えば 交 付 が 決 定し た 後 に 店 舗 の 仕 様 に 変 更 が 出 た 場 合 で も 、 同 年 度 内 で あ れ ば 計 画 変 更 を 提 出し、 承 認 を 得ることで 、 事 業 の 履 行 継 続 が 可 能 だという。 環 境 省 の 取り組 み によって、市 場 に はどのような 効 果 が 生 ま れ た の で あろうか ? 例 えば 、C O 2 冷 凍 冷 蔵 ショー ケ ース の 設 置 数 で 世 界 一 を 目 指 す、 と宣 言 する 大 手 コン ビ ニ チェー ン の ロ ー ソン の よ うな 積 極 的 な 企 業 が 出 てくることの 後 押し や 、 初 期 投 資 額 の 大 き さ に 躊 躇し が ち な 中 小 企 業 に とっても 、省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 の 採 用 に 踏 み 切る 大 き な 足 掛 かりとなって いる の は 確 か で ある。 し かし 、 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 の 価 格 は 著しく下 がって き て い るとま で は 言 え な い の が 現 状 で あ る 。 イ ニ シャ ル コ スト の 高 さ は 常 に 指 摘 さ れ る 点 で あり、 そ の 解 消 こそ が 採 用 の ハ ード ル を 下 げ ること に 繋 が る の は 明 確 で あ る 。 鮎 川 氏 自 身 も 、 エ ンド ユ ー ザ ー や メ ー カ ー の 関 係 者 と 話 す 中 で 、 従 来 の 機 器 に 比 べ 導 入 時 の コ スト が 2 0 % 増 しくら い ま で に 下 が ると い う の が 、 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 が 市 場 に 普 及し や すくな る た め の 価 格 の 目 安 ラ イン で は な い か 、 と いう声 を 多く聞くという。 省 エ ネ に より数 年 で イ ニ シャ ル コ スト の 差 額 を 回 収 で きる 見 込 み で も 、手 を 出 し に くい の が 多 くの 国 内 企 業 の 実 情 の よう だ 。 日 本 に お い て は 、 先 駆 者 と な るより、 他 に 追 随 しようと い う 考 え 方 を す る 人 が 多 い と い う の も 影 響 して い る の か もし れ な い 。 補 助 金 の 交 付 先 を 公 表 することは 、 他 社 の 動 向 を 見 つ つ 動く企 業 へ の 後 押し に も つ な がって い る の だ ろう。

さらなる発展のためにできること 2 0 1 6 年 度 に は、 対 象となる 業 種 を 拡 大 する 予 定 で もある。 食 品 製 造 関 係 に 加 え、 日 本 の 産 業 分 野 に お い て 大 き な 位 置 を 占 める 化 学 製 品 の 製 造 工 場 もそ の 対 象 に 含 めることで 、日本 全 体とし て 地 球 温 暖 化 対 策 を 進 め て い き た いという意 図 が ある。これ は 、 数 もさることな がら、 使 用 する 機 器 の 規 模 が 大 きく、 得 ら れ る 効 果 の 高 さ を 見 込 ん だという面 もある。 さらに 、 アイスス ケ ート 場 もそ の 対 象とに 加 わっ た 。 アイスス ケ ートリン ク に お い て は 、 小 売り店 舗 な どと 違 い 、 新 規 建 設 よりも 老 朽 化し た 機 器 の 入 れ 替 え を 想 定して い るという。 身 近 なレ ジャース ポットとして 足 を 運 べるアイスス ケ ート場 を 対 象とすることで 、 一 般市民の省エネ型自然冷媒機器の認知度向上の 一 助とな れ ば 、という広 報 的 な 側 面 もある。 補 助 事 業 の ほ か に も、 大 手 コ ン ビ ニ と 組 ん で、 扉 付 き の 冷 蔵

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環境省における省エネ型自然冷媒機器 導入補助事業の推移 億円

2016

︵要求額︶

85

環境省 補助金額

63

億円

50

2015

億円

2014

2005年以降の交付確定数推移 2005∼2011

2012

産業

産業

累計

業務

118

42件

2013 産業

業務

82件

2014

2015

産業

業務 88%

産業 12%

458件 633件 業務

累計

1333件

環境省「省エネ型自然冷媒機器補助事業」 において 1プロジェクトあたりに補助金として交付された金額

最小

110

40

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万円

TO

最大

18

約 億

千万円


ショーケースを 普 及させるた め の 社 会 実 験 を 行 うなど、 民 間 企 業との 協 力 体 制 も怠らな い。 ま た 、 国 内 に 留 まらず、 海 外 で の 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 の 普 及 にも貢 献で きるよう、 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 の 事 例 集 の 英 訳 化 や、 フ ロン 類 使 用 機 器 から省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 へ の 転 換 に 伴う廃 フ ロ ン 等 の 回 収 ・ 処 理 体 制 の 構 築 に つ い て の 実 現 可 能 性 調 査 も 行って いる(2 0 1 5 年 度 は、 タイ・ インド ネ シアなど 4 カ 国 で の 事 業 が 採 択されている)。 鮎 川 氏 の 考える最 終 目 標 は 、極 端 に いえば「 補 助 事 業 が なくて も、 市 場 で 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 が 一 本 立 ち で きること」 で あ る。 例 え ば 途 上 国 支 援 な ど を 行う団 体 や 組 織 に も 同じよ うな 考 え 方 が あり、 最 終 的 に は 支 援 組 織 が な くなる、 す な わ ち 支 援 を 必 要とし なくてもよ い 世 の 中 に な る の だ と い うゴ ー ル を 目 指して い る。 1 0 年 前 か らスタ ートし た 補 助 事 業 で あ る が、 この 10 年 を 見 て 鮎 川 氏 は、 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 は 、 随 分 と 増 えて き て い る が 、 ま だ ま だ 一 般 的 で は な い と いう印 象 を 持って い るという。 自 然 冷 媒 の 種 類 は もちろ ん の こと、 フ ロ ン 系 の 機 器と省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 の 競 争 もま だ ス タ ートして い な い と い える ほ ど だ 。 研 究 開 発 を 支 援 する 経 済 産 業 省 とも 連 携して おり、 政 府として 途 切 れることの な い 一 連 の 支 援 を メ ー カ ー 、 エ ンド ユ ー ザ ー とも に 多 い に 活 用してほしいところで ある。 目 標 で ある 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 の 自 立 に 至 る に は 、 市 場 で の 競 争 原 理 が 働 か なくて は な ら な い 。 そ の た め に は 、 供 給 するメ ー カ ー 側 だ け で なく、 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 を 優 先 的 に 選 択 する エ ンド ユ ー ザ ー 側 、 双 方 の 努 力 が 必 要となってくると鮎 川 氏 は 期 待している。 補 助 制 度 は 、この 先 永 遠 に 続くわ けで は な い 。 し かし な が らすぐ に 打 ち 切ってしまうことは お そ らく得 策 で は な い だ ろう。 活 性 化 の 兆 し を 見 せ てきて いる 今 、 支 援 が なくなっ たとしても 省 エ ネ 型 自 然 冷 媒 機 器 を 選 択 することが 当 た り前 に な るよう に 市 場 全 体 が さら な る 発 展 を 遂 げるた め 、政 府 もメーカ ーもエンド ユ ー ザ ー も一 体となった 前 進 が 必 要 で ある。

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米国環境保護庁がHFC類のリスト 除外に関する最終規定を発表 EPAが地球温暖化係数の低い冷媒への移行までの期限を延長し、許容可能な代替品の項目を拡大した。 この決定に対し、さまざまな反応が見られている。 文:ロバート・デイビッドソン、マイケル・ギャリー

国環境保護庁(EPA) は 2015 年 7 月 20 日、 高 GWP(地球温暖化係数) 冷媒のリスト除外に関 する最終規定を連邦官報に掲載し、 空調・冷凍冷蔵業界に対し、 除外となる冷媒からの移行に当 初の提案よりも長い猶予期間を与えた。この動きは、自然冷媒の普及にも影響を与える可能性がある。 EPA の重要新代替物ポリシー(SNAP)計画に基づいて発行されたこの最終規定は、冷凍冷蔵、空調、エ アロゾル、発泡剤など様々な用途における特定のハイドロフルオロカーボン類およびハイドロフルオロカー ボン混合物のリストを、使用可能から使用不可へと変更する。全てのケースにおいて、健康や環境へのリス クが全体的に低い自然冷媒などの代替冷媒が、利用可能あるいは将来的に利用可能と認められている。 最終規定は、2015 年 8 月 19 日より有効となる。 また E P A は、 使 用 可 能 物 質 の 決 定 を 2 0 15 年 7 月 16 日の 連 邦 広 報 に 掲 載し、 即 時 発 効とした。こ れ により、 SNA P 計 画 に お ける様々な 用 途で の 使 用 可 能 物 質リストが 拡 大され た。スー パ ーマ ーケッ ト向 けの 新 規 およびレトロフィット(既 存 品 の 改 修) システム、リモートコンデンシング ユ ニット、 内 蔵 型 低 温 機 器 には R448A、 R449A、 R513A 冷 媒 が 承 認され 、 新 規 の自動 販 売 機で は R450A および R513A、 低温貯蔵倉庫では R513A 冷媒が承認された。これらの冷媒の GWP は 600~1400 である。

延長された期限 当 初 2 0 1 4 年 8 月 に 高 G W P ( 地 球 温 暖 化 係 数 ) 冷 媒 のリスト除 外 を 発 表し た 際 、 E P A は 指 定 冷 媒 を 早 け れ ば 2 0 1 6 年 1 月まで に 段 階 的 に 廃 止 すると提 案し、 空 調・冷 凍 冷 蔵 業 界 を 動 揺 させ た 。 し かし 最 終 規 定 で は 、 これらの 期 限 が 新 規 投 入 機 器 に つ い て は 少 なくとも 1 年 、 レトロフィット機 器 に 関しては ほ ぼ 7 ヶ月、 先 延 ばしに なった 。 例えば食品小売用冷凍冷蔵機器に使用される HFC( ハイドロフルオロカーボン )R404A、R507A(GWP はそれぞ れ 3,922 と 3,985)、 および 新 規スー パ ーマ ーケット用システムに 使 用されるその 他 の HFC 類は、2017 年 1 月 1 日より使用不可となる。スーパーマーケット向け新規リモートコンデンシングユニッ トに関しては、2018 年 1 月 1 日より R404A、R507A、その他の HFC 類が除外される。スーパーマーケッ ト用システム やリモ ートコンデンシング ユ ニットのレトロフィットに は、 ほ ぼ 同 様 の 冷 媒 が 2016 年 7 月 20 日より使用できなくなる。 同 規 定 は ま た 、 ス ー パ ー マ ー ケット向 け 新 規 内 蔵 型 中 温 ・ 低 温 ユ ニットに 使 用 される 様々な 冷 媒、 R 1 3 4 a(G W P 1 , 3 0 0 )、R 4 0 4 A 、R 4 0 7 A (G W P 2 , 1 0 7)、R 5 0 7 A などに つ いても、期 限を変 更した 。 これらの 冷 媒 は、 低 温 ユ ニット、 コンプレッサ ー 容 量 が 2 , 2 0 0 B T U / h 以 上 の 中 温 ユ ニット、 および 満 液 式 蒸 発 器を備えた 中 温 ユ ニットに お いて、 2 0 2 0 年 1 月 1 日より使 用 不 可となる。 コンプレッサ ー 容 量 2 , 2 0 0 B T U / h 未 満 の 中 温 ユ ニットおよび 満 液 式 蒸 発 器 の 無 い 中 温 ユ ニットに お い て は、 同 冷 媒 は 2 0 1 9 年 1 月 1 日よりリスト除 外となる。 レトロフィットの 内 蔵 型 ユ ニットで は、 R 4 0 4 A と R 5 0 7 A が 2 0 1 6 年 7 月 2 0 日より使 用 不 可となる。

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EPA は R134a、R404A、R507A、その他数種の冷媒が新 規 自 動 販 売 機で使用不可となる期日を、2019 年 1 月 1 日としている。レトロフィット自動販売機では、R404A と R507A が 2016 年 7 月 20 日で使用できなくなる。 車 両 用 空 調で は、R13 4 a がモデル 年である 2021年 に使 用 不 可となるが、 例 外としてモデル 年 の 2025 年までは限定的な用途において使用が許可される。

業界各社からの異なる声 このリスト除 外 の 最 終 規 定 に 対 する業 界 の 反 応 は 様々だ 。 「業界が、中央システムにおける R404A および R507A のリスト除外に適応する時間は十分にあると思い ます」と、デレーズ(Delhaize)アメリカのハナフォード・スーパーマーケット部門でエネルギー・施設サー ビスディレクターを務めるハリソン・ホーニング氏は言う。 しかしホーニング氏は、 内蔵型ユニットの HFC 禁止には懸念を示している。「内臓型システムは充填可 能量が非常に小さく、システムも非常に密であることは、世界的にも実績があります。つまり特定の HFC (R134a、R410A) の温室効果ガスの排出量も非常に低く抑えられるということです。 一部の新たなハイ ドロフルオロオレフィン(HFO) の混合も考慮に値すると考えます。 充填量が 150g に制限された場合、 幅広い内蔵型ユニットにおいてプロパンのコスト効率が良いのかどうかは、まだわからないのです」 テキサスを拠点とするロウズ・マーケット (Lowe’s Market)の冷凍冷蔵ディレクターであるゲーリー・クー パー氏は、新規定は「OEM にとっては未だ厳しいスケジュールではあるが、改善はされた」と見ている。 ハスマン(Hussmann) の製品マネージャー、クウェンティン・クロウ氏は、 期限の延長によって、より 効率的な移行を見込めると考えている。「決定よりも早く冷媒移行を行うことは、誰の利益にもなりません。 研修や、新たな低 GWP 冷媒のために機器を最適化する設計変更などが、まだ必要だからです。」と彼は 言う。「新冷媒は 10 度の温度変化が新たなノルマであり、設定基準や委託機器などの改善が必要です」 リスト除外により、自然冷媒という代替への関心は高まるだろうか ? CO 2 トランスクリティカルシステムに 関しては、 「実質的に(需要を)変えることは無いと思います」と部品メーカーの重役は、匿名で語った。 「R404A や R507 には、何年間も他の選択肢(R407A、C、F)がありました。R448A、R449A、R513A を承認している EPA の規定は、業界に多くの選択肢を与えています。CO 2 店舗の採用は、トランスクリティ カルも含め全体的に増加し続けるとは思いますが、技術力と経済性こそがより強い推進力となるでしょう」 しかしクロウ氏は、EPA の規定によりトランスクリティカルは直接的な恩恵を受けると考えている。 「この規定は、 米国北部のトランスクリティカルが財政的な面からも実施に支障がないと判断され、R404A を使用中の大手 小売業者がトランスクリティカルを検討することを後押しすると思います。」と同氏は言う。「そして数の増加が、 より費用効率の良いソリューションを推進し、トランスクリティカルが今後 2~3 年のうちに南部の気候におい ても魅力的なシステムとしてうつる一助となるでしょう」 RD+MG リスト除外に関する最終規定の全文はこちら : 
http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2015-07-20/pdf/2015-17066.pdf

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英国の環境調査機関がHFC報告書を発行 H F C の 段 階 的 廃 止 に 関し米 国 の 食 品 小 売 業 者 に 成 績をつ けた 報 告 書 が 存 在 する。また 別 に、H F C フ リーの機器へと連邦局員を誘導する報告書もある。 文:ジェームス・ランソン 英 国 に 拠 点 を 置 く環 境 調 査 機 関( Environmental Impact Assessment 以下「E I A 」)は 、米 国 の 食 品 小 売 業 界 が H F C 冷 媒 へ の 対 応 に 適 切 に 取り組 んで い な いと批 判し た 2 0 1 3 年 報 告 書 の 追 跡 調 査 で 、米 国 の 大 手 ス ー パ ー マ ー ケット チェ ー ン 1 2 社 が 、引 き 続 き H F C の 漏 洩 削 減 や 温 室 効 果 ガ ス 全 般 の 段 階 的 廃 止 に 十 分 に 取 り 組 ん で い な い と 指 摘 し た 。6 月 に 発 表 さ れ た こ の 調 査 『 B e y o n d t h e D i r t y D o z e n 』で は 基 本 的 に 、ア ル バ ートソ ン ズ( A l b e r t s o n s )、ア ホ ー ルド ( A h o l d )、コ ストコ( C o s t c o )、デ リ ー ズ( D e l h a i z e )、H E B 、ク ロ ー ガ ー( K r o g e r )、マ イ ヤ ー ( M e i j e r )、パ ブ リックス( P u b l i x )、セ ー フ ウェ イ( S a f e w a y )、タ ー ゲ ット( T a r g e t )、ウォ ル マ ート( W a l m a r t )、ホ ー ル フ ー ズ( W h o l e F o o d s )と いっ た 計 1 2 社 の H F C 削 減 の 取り組 み に つ い て、成 績 表 を 作 成して い る 。 例えばウォルマートに関していえば、E I A は、この 世 界 大 手 の 小 売 業 者 は、グリーコールまた は C O 2 を含 む ハイブリッド・システムを利 用 する店 舗 を 168 以上とサ ムズ ・クラブ 2 店 舗(2 0 1 4 年 現 在)を運 営し ているもの の 、H F C フリー の 冷 凍 冷 蔵システム は 一 台も導 入してい な い、と述 べ た 。ウォル マ ートは 、 消費財フォーラム( The Consumer Goods Forum) において2015 年に HFC の段階的廃止を開始する と誓約した小売業者数社の一員である、と報告書は指摘している。 EIA は米国の小売業者の取り組みと、自然冷媒をベースとした店舗を展開したり旧式のフロンガスをベースとし たシステムの保守管理を強化するなどをしているヨーロッパ、日本、カナダの小売業者との比較もしている。 EIA の報告書には、米国の全小売業者に対し、新規店舗における HFC の使用廃止、既存店をレトロフィット する計画の作成を正式に約束することを求めた『行動要請』が含まれた。 E I A はまた 、E P A に 対しては G W P の 最 も高 い H F C 類 を 禁 止 する規 定 の 策 定 を 続 けることを 推 奨し、 実 際 に E P A はこれ を 開 始した 。 報告書の無償提供版はこちら: http://eia-global.org/news-media/beyond-the-dirty-dozen.

H F C フリー の 供 給 源 は どこ か ? また、EIA は 6 月に、HFC フリー機器を連邦設備に取り入れるという任務を負った米国政府当局および調 達担当者のための情報源とすることを目的に、報告書を発行した。 この報告書『米国政府のための HFC フリー調達および冷媒管理のための最初のガイド』は、オバマ大統 領の気候行動計画に含まれた高GWPのHFCへの政府の改善指令を実行するために作成された。 この 報 告 書 は 、調 達 担 当 者 が H F C を ベ ースとした 技 術で は なく持 続 可 能 な 代 替 を 調 達 出 来るよう、供 給 源リストを提 供している。これ は 、H F C フリー の 機 器 および 製 品 が すで に 購 入 可 能である主 要 部 門 を含 む、包 括 的 なリストである。 報告書ではまた、HFC に関する各種国際政策、および国内政策や HFC フリー調達を許可する政府当局による取り組みも要約されている。 H F C フリー 機 器 の 購 入 に お いて政 府 がリーダ ーシップ をとることは 、「 必 要 な インフラの 構 築 を 奨 励 し、それ により米 国 市 場 全 般 に お ける H F C フリー 機 器 および 製 品 の 採 用を促 進 することとなり、ひ いて は米国のHFC排出量を大幅に削減することにつながる」と報告書は述べている。 JR この報告書の無償提供版はこちら: 
 http://eia-global.org/news-media/hfc-free-procurement-and-refrigerant-management

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サンデン Sanden Set to Expand CO Compressor Market CO2コンプレッサー市場を拡大へ 2

コカ・コーラがグローバルに CO2 冷媒を使用した自動販売機や飲料用クーラーへの 入れ替えを進めている。その背景には日本のコンプレッサーメーカー、サンデンの 存在があり、同社は、コカ・コーラ以外にも自然冷媒を取り入れるエンドユーザー を支援すべく、中国での生産体制を強化していく。 文 : ジェームズ・ランソン

二酸

化 炭 素 を 冷 媒として 用 いる か、 そ れ とも プ ロ パ ン や イ ソ ブ タ ン などの 炭 化 水 素 を 使うの か。

ディス プ レ イク ー ラ ー や 自 動 販 売 機 に 自 然 冷 媒 を 導 入しようという飲 料メーカー や 食 品 サ ー ビ ス 業 者 が 必 ず さし か か る 分 岐 点 で あ る。 選 択を迫られ た 各 社 はどのような 決 断を くだすのであろうか ? レ ッド ブ ル、 ペ プ シ コ、 マ クド ナ ルド な ど、 大 手 企 業 の ほとんどが 炭 化 水 素 冷 媒 を 選 択 する 中、 コ カ・ コ ーラ はこの 流 れ に 乗らず、 群 馬 を 拠 点とするサンデン 社 製 のコンプレッ サーを採 用し、 CO 2 冷 媒 の 導 入 に名 乗りを上

上海三電 矢嶋 守氏

上海三電 リン ・ ジピン氏

げ た ( アクセ レ レ ート・ アメリカ 2015 年 3 月号の記事、 ”Coke’s Quest to Reinvent Refrigeration” を参照)。 サンデンホ ー ルディングス株 式 会 社 (以下、 サンデン) は、 子 会 社となる上 海 三 電 環 保 冷 熱 系 統 有 限 公 司 (以下、 上 海 三 電)で の C O 2 コンプレッサーの 生 産を強 化し、コカ・コー ラ以外 にも自動 販 売 機 や 飲 料 用クーラー の 冷 媒 に CO 2 を選 択 する企 業を取り込 むことで 市 場 拡 大を狙っている。 同 社 は CO 2 レシプロコンプレッサーの 生 産 台 数を年 間 100 万 台 超 に 拡 大し、 自動 販 売 機 や 商 品 ディスプレ イ機 器 に 用 いられる CO 2 レシプ ロコンプレッサ ー 製 造において、 世界のトップメーカーになることを目指す。 サンデンはコカ・コーラ以外にも国内外に取引先を抱えている。「現在、 当社のビジネスの 多くはコカ・コーラが 対 象で す が、 日本 の 販 売 戦 略 チ ームを 中 心として、 他 社 にも戦 略 的 に 売り込 み を 行っています」と、 上 海 三 電 ゼ ネラル・ マ ネ ージャー の 矢 嶋 守 氏 は 言う。 同 氏 によると、 サンデンに は 既 に 数 多くの エンドユ ーザ ー から問 い 合 わ せ が 寄 せられており、 同社は生産体制を増強し新たな需要に応えることができるという。上海三電は 2010 年にコ ンプレッサ ー の 生 産を開 始し、 その 翌 年 に は 年 間 数 万 台というペ ースで 販 売を始 め た。 同 社はこの販売台数を 2017 年までに 100 万台以上に拡大する計画だ。

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現 在、 上 海 三 電 が 上 海 市 嘉 定 区 に持 つ 4000 ㎡ の 生 産 施 設で は、 一日に 2,500 台 の CO 2 コンプレッサーを量 産し ており(月換 算で 約 6 万 台 )、 追 加 の 需 要 が あ れ ば そ れ に 応えるた め の 増 産も可 能 だという。 製 造され たコンプ レッサ ー は、 インド、 アメリカ、 中 国、ヨー ロッパ など 世 界 各 地 に納 入されている。 上 海 三 電 の CO 2 コンプレッ サーが 用 いられるの は、 主 に vis i クーラー (扉を開 けず に 中 の 商 品 が 見えるオープンクーラー)、 オープンショー ケース、 自動 販 売 機 の 3 つで あり、 コンプレッサ ー の 容 量 は 0.2kW から 1.8kW と幅 広 い。 サ イズと容 量 の 違う

サンデン CO 2 コンプレッサー 生産量推移

2013

モデルを 5 種 類 製 造し、 それらを各 国 の 電 圧 に合わ せて 調整しているという。

■ラ イ ン の 効 率 化 に 注 力

220,000 台

3.6倍

上 海 国 際 空 港 の や や 北 東 に 位 置 する上 海 三 電 の 広 大 な 生 産 施 設を歩 けば、 その 規 模 に たちまち圧 倒される。 施 設 は 2 つ の 生 産ライン からなり、 2 次ライン が 出 来 た の は 2013 年 だ。 ライン の 増 設 は 上 海 三 電 にとって大 きな

2015

転 機 だったと言ってよい だろう。これ によって生 産 能 力 は 300% 近く増 加し、 年 間 22 万 台 だった 生 産 量 は 80 万 台 規模の量産へと拡大した。 生 産 拡 大 の 熱 意 は 強 い が、 矢 嶋 氏 によると、 今 すぐに 3 次ラインを導入する計画はないという。「今ある 2 つのラ インを 効 率 化 することで 生 産 性 を 上 げ、 生 産 目 標 を 達 成

800,000 台

1.5倍

することを 考えています が、 い ず れ 現 行ライン に 多 少 の 改造が必要だとは思っています」 p.48 へ 続 く

2017

100万 台 上海生産施設の年間生産量

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2 つ の 生 産 ライン で 膨 大 な 台 数 の コ ン プ レ ッ サ ー を 生 産 で きること か ら、 2010 年 に最 初 に製 造した 製 品と比 べ、 1 台 あ たりの 製 造 コストを 約 半 分 に 抑 えられるようになるだろうと同 氏 は 考え ている。 上 海 三 電 は、 日本 の サンデンと中 国 の パ ートナ ー 企 業 との 合 弁 会 社 として、 2010 年 8 月に 設 立 され た。 当 初 の 事 業 構 造 は、 サ ン デ ン が 51%、 中 国 側 が 49% の 出 資比 率 だった が、 2013 年 に サンデン が 増 資 を 行って 2 次 生 産ラ インを 導 入し、 現 在 の 比 率 は サンデン が 約 80%、 中 国 側 が 約 20% となって いる。日本のサンデンが販売・顧客サー ビス・ 技 術 部 門を担 当し、 中 国 側 は 生 産 資 源、 購 買 力、 労 働 力を役 割として担っており、日本 の サン デンからの出向者、中国側パートナーの出向者、現地社員を含め、約 260 名の従業員が働いている。 サンデンが 合 弁を組んだ 中 国 側 パートナーは、 サンデンの自動 車 用コンプレッサーの 合 弁 先と同じ会 社であり、「古くから信頼関係を築いてきたパートナーです」と矢嶋氏は言う。 同氏は、 上海の生産施設を “ サンデングループの中で最も重要な拠点の一つ ” と捉えている。 なぜな ら、レシプロコンプレッサーは 100% その上海工場で製造されているのだ。 矢 嶋 氏 は、 サンデンが 世 界をリードする CO 2 コンプレッサ ーメーカーであることを非 常 に 誇りに 感じ ている。「 私 たちが 誇りを 持 た な け れ ば 従 業 員もつ いてきませ ん。 そういったしっかりとした 気 持ち、 プライドを持って仕事をしています」と同 氏は語る。

■コ カ ・ コ ー ラ と の 歩 み サンデンは CO 2 が 商 品 販 売 機 器 や 店 舗 設 備 に 最 適 な 冷 媒であると考え、 そ の信念に揺るぎはない。そして同社のビジネスモデルを最も後押ししたのが、 2015 年末までに “HFC フリー化 ” を目指すコカ・コーラであった。 6 月 に ジョー ジ ア 州 アトランタで 開 催 さ れ た ATMOsphere America 2015 に お いて、 コカ・コーラのグ ロー バ ル・プ ログラム・ ディレクターで あるア ントワーヌ・アザール 氏 は、 HF C を使わ な いシステムの 採 用 につ いてコカ・ コーラはある “ 転 換 点 ” に 至ったと話し、 CO 2 がコカ・コーラで の 機 器 の 運 用方針に最適の冷媒であると明言している。 2015 年 度 第 1 四 半 期 現 在、コカ・コーラが 導 入した 非 HFC ユ ニットは 148 万 台 に上るが、 その 大 部 分 は、 サンデンのコンプレッサーなしには 達 成し得 なかったといえるだろう。これだけの製造台数を実現するため、サンデンは初 期のサプライチェーンと生産性という課題を乗り越えなくてはならなかった。

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「コカ・コーラとは元々、 上海三電を立ち上げた際にコン プレッサ ー 供 給 の 契 約 をしていました が、 そ の 予 定 に 遅 れ が 生じました」と矢 嶋 氏 は 言う。「理 由 は 様々ありまし た が、 部 品 の 調 達 の 問 題 に加え、 生 産 性 が 予 定してい た ほど上がらないというのもありました」 この 二 つ の 問 題 は 切り離 せ な いもの だったと矢 嶋 氏 は 振 り返る。 「私たちにとっては上海での初めての生産であり、 手 探り状 態 でした。 まさに ゼ ロ からのスタートで、 ま ず は 当 然、 きちんとした 部 品 を 揃えることから始 め な け れ ば生産もうまくいきませんから」。 このように、 立ち上げ当初に直面した部品調達の問題は、 矢嶋氏にとって今や遠い記憶である。 サプライチェーンが 向上したことで、 上海の生産施設では現在、ショーケース や自動 販 売 機 向 け の CO 2 コンプレッサ ーを 1.5 ヶ月の 納 期で 納 める体 制を整えている。「製 品をすぐに必 要という お客様もいらっしゃいますので、 迅速に対応し納入するよ う努 めています」と矢 嶋 氏 は 言う。「私 たちが 品 質を語る とき、 製 品 の 品 質そのものを保 つことはもちろんで す が、 お 客 様 が 必 要 なときにしっかりきちんと製 品を届 けるとい うことや、納期の短縮への努力も含まれています」 サンデンで は自動 品 質 管 理システムを 新 た に 導 入したこ とによって、 同 社 の 品 質 管 理プ ロセス に 生じてい た 苦 労 も大きく軽 減され た。「自動センサーがあり、 例えば 部 品 を取ると、 そのセンサーが 感 知して動くようになっていま す」と矢 嶋 氏 は 説 明 する。「たとえ人 がミスをしても、 セ ン サ ーで チェック・ 発 見し、 ライン の 次 の 工 程 に 不 良 が いかないようになっています」 矢 嶋 氏 は、 CO 2 技 術 の 商 品 化 に お い て サ ン デ ン がこれ だ け大きな 規 模で 担っている役 割 の 重 要 性を認 識してい る。 また、 他 社 にとって学 ぶ べ き手 本 を 示 す 存 在となっ ている、ということもだ。「その 認 識 に 基 づ いて日々の 生 産 活 動 を 行 い、 私 たち が 持 つ CO 2 技 術 で 業 界 を さらに 牽引すべく努力しています」 JR

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7年の歴史が積み上げた 世界のATMOsphere ATMOsphere Asia 2016 が 東京にて 3 度目の開催 2016 年 2 月 は、 HVAC&R 業 界 に と っ て も 刺 激 的 な 月 と な る に 違 い な い。 shecco が主催する国際会議 ATMOsphere Asia 2016 が 2 月 9 日 ・ 10 日に 日本を皮切りに始まり、 さらに 2 月 10~12 日には第 50 回を記念するスーパー マーケット ・ トレードショーが開催されるからである。 この数日間は、 日本を 超えた範囲でアジアの冷凍冷蔵 ・ 空調業界が議論を交わし、 自然冷媒技術の将 来に影響を与える中枢として、 開催地の東京が盛り上がりをみせるであろう。 文 : ヤン ・ ドゥシェック

ATMOsphere とは ? AT M O s p h e r e は、 技 術、 市 場、 研 究 開 発、 各 種 規 制 の 動 向 など、 世 界 中 の 自 然 冷 媒 業 界 の 状 況 に 焦 点 を 当 てた 国 際 イベントで ある。 会 議 の 主 な 目 的 は、 様々な 用 途 に 合 わ せ た 最 新 の 自 然 冷 媒 技 術 の 存 在 を 浮 き彫りにし、これらの 技 術 が 冷 凍 冷 蔵 ・ 空 調 業 界 にとって環 境 面と採 算 面 の どちらに お い ても実 行 可 能 で あることを 示 すことで、 アジ ア、 北 米、ヨー ロッパとそ の 他 の 地 域 といった 市 場 で の 自 然 冷 媒 技 術 の 普 及 を 促 進 ・ 加 速 することに ある。 2 0 0 9 年 以 来、 s h e c c o は 計 2 6 回もの AT M O s p h e r e イベントを 運 営し、 の べ 4 0 0 名 以 上 のスピーカーと 5 0 0 本 以 上 のプ レ ゼンテーションによる発 表で、 その 市 場 の エキスパ ートとしての 地 位を確 立してきた 。

世界の ATMOsphere 2016 2 0 1 6 年 度 は 、 す で に 4 つ の 場 所 で の 開 催 が 決 定して い る。 A T M O s p h e r e A s i a こそ が 、 一 連 の イ ベ ント の 最 初 の 開 催 地 で あり、 続 い て A T M O s p h e r e E u r o p e ( バ ル セ ロ ナ )、 記 念 す べ き初 開 催 が 決 定した A T M O s p h e r e A u s t r a l i a (メ ル ボ ルン)、 そして最 後 に A T M O s p h e r e A m e r i c a (シカゴ ) が そ れ ぞ れ の 地 で 開 催 される 予 定 で ある。

AT M Os p h e re 2016 日程・開催地

• ATMOsphere Asia 2016 東京 2 月 9 日・10 日 • ATMOsphere Europe 2016 バルセロナ 4 月 19 日・20 日 • ATMOsphere Australia 2016 ( 初開催 ) メルボルン 5 月 16 日 • ATMOsphere America 2016 シカゴ 6 月 16 日・17 日

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ATMOsphere Asia 2016 について ATMOsphere の 中でもアジアを中 心 に開 か れる第 3 回 ATMOsphere Asia 2016『自然 冷 媒 - アジア のためのソリューション』 は、 東京の新丸ビルコンファレンススクエアで開催され、 世界中から業界の エキスパートが参加する。これまでの ATMOsphere Asia は、ローソン、イオン、セーブオン、神戸屋、 ホールフーズ、メトロ、スターバックス、マクドナルド、コカ・コーラ、レッドブル、カルフール、テスコ、 ソビーズなどの小売業者および食品飲料メーカーの協賛のもとに開催された。 各社の代表は最新技術 の 動 向を把 握し情 報 交 換をするた め、また 同 時 に CO 2、アンモニア、 炭 化 水 素、 水、 空 気といった自 然冷媒の利用を通じて企業間関係を生み出し強化するために、この会議に参加してきた。 特に今年は、 当イベントに続けて 2 月 10~12 日に開催されるスーパーマーケット・トレードショーがあることを忘れ てはならない。トレードショーの開催地は東京ビッグサイトであるため、新丸ビルからさほど遠くはない。 史上最多の参加が見込まれている第 50 回目の記念開催を迎えるこのトレードショーでは、 流通業界の 最新動向や革新技術についての発表がメインとなっており、 来場者は 4 つの異なる食品業界見本市に 参加することが出来る。 海外から訪れる ATMOsphere Asia への参加者にとっても、 同時期に 2 つの イベントに参加しそれぞれの業界の最新事情を知ることは、またとないチャンスとなるであろう。

ATMOsphere Asia 2016 に期待できること MEET/ 出会い : アジア各地や世界中から集まった、 冷凍冷蔵・空調業界の主要な専門家、 エンドユーザー、 政策決定 者とのつながりを持つ場となる。参加者は現段階で、環境省、経済産業省、国連工業開発機関 (UNIDO)、 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)、日本冷凍空調工業会、カルフール、メトロ、ウールワー ス ( Woolworths)、テスコ、ソビーズ、ローソン、イオン、コカ・コーラ、 パナソニック、 前川製作所、 サンデン、ビッツァー (Bitzer)、ヤマト、ダンフォス (Danfoss)、エマソン (Emerson)、キャレル (Carel)、 アルファ・ラヴァル (Alfa Laval)、テンプライト ( Temprite)、ドリン (Dorin)、スウェップ (Swep)、 など 国内外から多数を予定されている。

INNOVATE/ 革新 : 市 場を形 成 する影 響 力 のある対 話 に参 加 することで、 急 速 に発 展している自然 冷 媒 部 門 にお ける最 新 情報を更新。

GROW/ 成長 : 企業のビジネス、サービス、製品、技術を現地で直接プロモーションすることで、ビジネス機会を増やす。

DISCOVER/ 発見 : 政策、R&D、熱帯・温暖地域における最新の技術動向などといった、グローバルにおいても今話題となっ ている議論を進めるためのセッションに参加し、知見を広げる。

IMPACT/ 影響 : 環境にとってもプラスのインパクトを与えるといった、持続可能性を追求した世界的な動きへの貢献。

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ATMOsphere Asia 2016 プログラムの見どころ 2016 年度の当会議は日英同時通訳を介して進められ、 政策、 エ ンドユーザーによる情報共有、 及び技術革新に焦点を当てること となる。 政策動向セッションでは、 政府代表と業界の専門家達に より自然冷媒を使った空調システムや、 経済産業省が導入した新 ラベリング政策を含む、日本および世界における最新の規制問題 や 基 準 に つ いて発 表される。 環 境 省 からの 今 後 の 補 助 金 に 関 す る情報も見逃せない。 エンドユ ー ザ ー からのプレ ゼ ンテーション 数も、2016 年 は 過 去 最多となる見通しだ。業務用分野では国内からコカ ・ コーラ、ロー ソン、イオン、丸久、海外からはカルフール、ウールワース、ソビー ズ、 デレ ーズ(Delhaize) が 発 表。 産 業 用 分 野で は 国 内 から横 浜冷凍、 パティネレジャー、ケミカルグラウト、 海外からは Adib Global Food Supplies などといったリーディングカンパニーが集 い、 異なるタイプの自然冷媒技術を使用する上での経験を、その 利益性、乗り越えた障壁、今後の展開などを踏まえて共有する。 当プログラムで最も注目を浴びているセッションは、ハフナー博士 (Dr. Hafner) による 熱 帯・ 温 暖 地 域 で の 環 境 技 術 動 向 に 関 す るプレゼンテーションであろう。 今 話 題となっているこのトピック に、 新 た な 光をもたらす内 容となることが 予 想される。 ハフナー 博 士 は、 業 務 用・ 産 業 用 の 冷 凍 冷 蔵、 空 調、 輸 送を取り上 げ な がら、 熱 帯・ 温 暖 気 候 地 域 に お ける自然 冷 媒 に 関 する最 新 の 技 術 開 発 の 概 要 に つ いて発 表 する。また、『ハイテク 101』コース で は、アジア、ヨーロッパ、アメリカ各 地 の 温 暖 な 気 候 にお ける 自然冷媒発展を比較。動向の分析に続き、ハフナー博士はステー ジ上 に日本 の HVAC&R 業 界を牽 引 する専 門 家を迎え、 発 表され た新技術が日本およびアジア市場にて適応可能かを議論する。

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ATMO

WORLDWIDE EVENTS IN NUMBERS

sphere

FROM 2009 UNTIL 2016

Europe

I N T E R N A T I O N A L

America

Asia

ATMOs

Oceania ON

4

CONTINENTS

発表者数

エンドユーザー

システム提供者

政府関係者

技術者/研修者

部品提供者

ATMO WORKS WITH

企業+団体数

参加者数

プレゼンテーション数

プレゼンテーション一覧はこちら http://ATMO.org/presentations

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SPECIAL EDITION SEPTEMBER 2015

A D VA N C I N G H VA C & R N A T U R A L LY

M A G A Z I N E

20 15 GU IDE TO NATURAL R E F RIGE RANTS IN NORTH AMERICA — STAT E OF THE IND U STRY

GUIDE North America から 読 み解く冷媒市場 の流動性 2 0 1 5 年 9 月、 s he cco は 市 場 調 査レ ポ ート G UI D E シリーズ の 最 新 版 『 北 米 に お ける自 然 冷 媒 GU ID E― 業 界 事 情 2 0 1 5』 を 出 版した。 2 0 1 3 年 に 刊 行 さ れた前版に続く包 括 的 か つ 刺 激 的 な 内 容 になっている。この G UI D E は、空調・ 冷 凍 冷 蔵 市 場、とりわ け小 型 業 務 用 および 業 務 用 冷 凍 冷 蔵 部 門 へ の 持 続 的 普 及に向けた、 北 米自然 冷 媒 市 場 の 成 長 力 につ いて解 説している。 文 : ロバート・デイビッドソン

G

U I D E は 北 米 の 自 然 冷 媒 市 場 が 流 動 的 な 状 態 に あり、 有 害 な フッ素 化 ガ ス を 柱 とする 従 来 の 基 盤 を 一 新しつ つ あ ることを 明 確 に 示して い る。 この 変 化 を 促して い る の は 、 例 え ば 大 幅 な 政 策 転 換 や 技 術 的 進 歩 による 省 エ ネ 化 などといっ た 無 数 の 要 因 で あり、 自 然 冷

媒 の ビ ジ ネ ス ケ ース を さらに 強 固 な も のとして いるという。 自 然 冷 媒 が 空 調 ・ 冷 凍 冷 蔵 業 界 で 市 場 シェア を 拡 大して き た この 2 年 間 で 、 発 展 の 鍵 となっ た 重 要 な 分 野 が あっ た 。 小 型 業 務 用と業 務 用 冷 凍 冷 蔵 部 門 で あ る。 これ ら 2 部 門 は 、 す で に 成 熟 し 世 界 をリードして い る 産 業 用 冷 凍 冷 蔵 市 場と並 び 、 自 然 冷 媒 採 用 の 先 陣 を 切って い る。 過 去 2 年 間 で 発 展し た 業 務 用 冷 凍 冷 蔵 部 門と比 べ 、 小 型 業 務 用 冷 凍 冷 蔵 部 門 で の 自 然 冷 媒 (この 場 合 ほ ぼ C O 2 と炭 化 水 素 に 限 定 さ れる) の 使 用 は 、 より緩 や か に 成 長してき た 。 54

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小型業務用冷凍冷蔵では自然冷媒が圧倒的に有利 G U I D E N o r t h A m e r i c a で は 、 一 般 に 認 知 度 が 高く、 普 段 の 生 活 で 人 々が 親 近 感 を 持 つ ような 大 手 消 費 者 ブ ランド の C O 2 排 出 削 減 に 向 け た 意 欲 が 、 北 米 の 小 型 業 務 用 冷 凍 冷 蔵 業 界 に お け る 自 然 冷 媒 の 増 加 に 繋 がっ た 経 緯 を 詳 述して い る 。 レ ッド ブ ル ( R e d B u l l ) は 、 最 も 早 くか ら 店 頭 機 器 に 自 然 冷 媒 を 採 用し た 企 業 の ひとつ で あ る が 、 自 然 冷 媒 は 環 境 に 対して の 責 任 を 持 て る だ け で な く、 ビ ジ ネ スとして も 採 算 が 合うも の として い る。「この 技 術 を 早 い 段 階 で 採 用し た 我 々 は 、 エ ネ ル ギ ー 消 費 量 の 大 幅 な 削 減 を 目 の 当 たりにし まし た 。 地 球 へ の 悪 影 響 を 軽 減し、 我 々 の 利 益 は 増 加 する。 ま さ に ウィン ・ ウィン の ビ ジ ネ ス 形 態 で す 」 と、 レッド ブ ル の C S R ・ 持 続 可 能 性 責 任 者 で ある ペ イジ ・ ダ ン 氏 は 述 べ て いる。 これら の コ スト削 減 効 果 は 、 明 確 に 表 れ て い るといってよ い だろう。 自 然 冷 媒 を 使 用 することで 、 従 来 シス テム に 比 べ て 最 大 4 5 % の エ ネ ル ギ ー 削 減 が 可 能 な の で あ る。 各 種 消 費 者 ブ ランド は 、 店 頭 機 器 を 自 然 冷 媒 に 置 き か えて C O 2 排 出 対 策 に 取り組 む ことで 、 節 電 もで き、 最 大 3 分 の 1 の C O 2 排 出 量 削 減 を 達 成 で きる の だ 。 上 記 の よう な 理 由 に より、 自 然 冷 媒 を 利 用し た 小 型 業 務 用 機 器 市 場 は 過 去 2 年 間 で 急 成 長し、 北 米 に お ける 設 置 台 数 は 2 9 1 , 0 0 0 台 を 超 えた 。 G U I D E N o r t h A m e r i c a からは 、これらの シス テム 設 置 が 、 9 4 , 0 0 0 台 を 保 有 する 米 国と 8 , 0 0 0 台 を わ ず か に 上 回 る カ ナ ダ に 分 か れ て い る 様 子 が わ か る。 し かし、 s h e c c o の 独 自 デ ー タ に よ れ ば 、 シス テ ム 設 置 台 数 が 最 も 多 い の は メ キ シ コ で あ る。 際 立っ た 成 功 を 収 め る メ キ シ コ は 、 1 8 8 , 0 0 0 台 相 当 を 超 える 設 置 台 数 を 誇って いる。

政策に後押しされて他の冷媒を引き離す CO2 と炭化水素 ま た 調 査 から は 、 C O 2 よりも 炭 化 水 素 を 使 用 するという別 の 傾 向 も 知 ることが で きる 。 北 米 に お け る 炭 化 水 素 を 冷 媒 とする 小 型 業 務 用 機 器 は 1 8 1 , 0 0 0 台 で あ る の に 対し、 C O 2 は 1 0 9 , 0 0 0 台 で あっ た 。 G U I D E は 各 企 業 の 冷 媒 の 選 択 に つ い て 特 集し、 コ カ ・ コ ー ラ ・ カン パ ニ ー 、 レッド ブ ル 、 ユ ニリー バ など、 特 定 の 冷 媒 を 望 まし いとして 使 用して いる 多くの 企 業 を 取り上 げ て いる。 2 0 1 5 年 1 0 月 1 5 日 に 、 H F C の 排 出 に 関して の オ バ マ 大 統 領 と 民 間 企 業 に よるトップ 会 談 が ホ ワ イト ハ ウ ス に て 行 わ れ た 。 外 食 ビ ジ ネ ス に お い て は 、 大 手 消 費 者 ブ ラ ンド の 成 功 を 再 現 し、 自 社 の 排 出 量 を 削 減しようと いう動 き が この 会 談 に よってより強 い も の となり、 業 界 で の 勢 い を 増して いる。 スター バ ックスとマクド ナ ルド で も 、 事 業 に 自 然 冷 媒 を 導 入 する 予 定 で ある。 一 連 の 政 策 転 換 で 自 然 冷 媒 志 向 は さら に 高 まって いくだろう。 そ れ によって、 北 米 の 小 型 業 務 用 冷 蔵 部 門 向 け の 自 然 冷 媒 に は 明る い 未 来 が 開 け て いる は ず だ 。

政策転換で自然冷媒の立場はさらに強固に 北 米 の 規 制 当 局 は 過 去 2 年 間、 精 力 的 に 活 動 を 続 けてきた。 G U I D E N o r t h A m e r i c a の 政 策 専 門 セ クション は こ れ ら の 変 化 す べ て を 概 説 して い る 。 最 も 決 定 的 だ っ た の は 、 2 0 1 5 年 2 月 に 、米 国 環 境 保 護 局( E P A )の 重 要 新 規 代 替 品 政 策( S N A P )に よって 業 務 用 内 蔵 型 冷 蔵 庫 、 冷 凍 庫 、 自 動 販 売 機 に お ける R 6 0 0 a 、 R 4 4 1 A 、 ならび に 自 動 販 売 機 に お ける R 2 9 0 の 使 用 も 認 可 さ れ た こと だ と 言ってよ い だ ろう。 今 回 の 決 定 は 、 米 国 で の 炭 化 水 素 へ の 認 識 が 大 きく変 化 し た こと を 示 し て い る 。 2 0 1 1 年 に E P A が 、 小 売 り お よ び 家 庭 向 け 冷 凍 冷 蔵 向 け の R 2 9 0 、 R 6 0 0 a 、R 4 4 1 A を 最 初 に 認 可 するまで に 2 年 以 上 か かっ た の に 対し 、今 回 の 認 可 は わ ず か 8 ヶ 月で 成 立し た か らで あ る 。

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E P A の S N A P プ ログラム に は 使 用 冷 媒 を 認 可 する権 利と同 時 に 、有 害 な 冷 媒 を 使 用 可 能 な 冷 媒 の リストから 除 外 するという側 面 もある。 E P A の S N A P プ ログ ラム のこの 権 利 は 、 新 規 自 動 販 売 機 お よ び 内 蔵 型 機 器 に お ける R 1 3 4 a 、 R 4 0 4 A 、 そ の 他 の 地 球 温 暖 化 係 数 ( G W P ) の 高 い H F C の 使 用 を 2 0 1 9 年 1 月 1 日 ( 内 蔵 型 機 器 の コンプレッサ ー 容 量 によって は 2 0 2 0 年 1 月 1 日 ) 以 降 禁 止したことで も、 強 化 され た 。 トゥル ー・マ ニュファクチャリング( T r u e M a n u f a c t u r i n g )の 技 術 マ ネ ージャーで あるチャーリー・ ホン 氏 は 、業 界 に 対 するリスト除 外 の 積 極 性と影 響 力 は 明 白で あると断 言している。 「 我々(トゥル ー 社 ) は 、 このリスト 除 外 に よって 内 蔵 型 冷 凍 冷 蔵 が 最 も 影 響 を 受 けると考 えて い ま す。 この 分 野 で は 利 用 可 能 な 冷 媒 の 選 択 肢 は 少 なく、 そ の た め 自 然 冷 媒 は 他 の 冷 媒よりも 選 ば れ や すくなるで しょう。 そ の 期 限 まで に 、 より多くの H F O 製 品 が 利 用 で きる 可 能 性 もま だ ありま す。 よってそちら を 選 択 する 企 業 もあるでしょう。どちらに せよ懸 念 す べ き は 、 そ の システム 効 率 が 2 0 1 7 年 の エ ネ ル ギ ー 省 の 基 準 を 満 た すことが で きる かどうか で す 」 エ ネ ル ギ ー 省 によって 今 後 適 用 される 2 0 1 7 年 度と 2 0 1 8 年 度 に お ける エ ネ ル ギ ー 効 率 基 準 は 、 製 氷 機と内 蔵 型 機 器 を 対 象とする。 製 氷 機 は 2 0 1 8 年 1 月より、 エ ネ ル ギ ー 消 費レ ベ ル を 5 - 1 5 % k W h / 1 0 0 l b s 削 減 することが 求 められる。 ま た 、クロ ーズド 式リー チイン 内 蔵 型 機 器 および ディスプレ イケース は 2 0 1 7 年 3 月より、エ ネ ル ギ ー 消 費 を 3 0 ~ 5 0 % k W h / 日 削 減 せ ね ば ならな い 。 エ ネ ル ギ ー 省 の 基 準 は E P A の 規 制とは 形 式 は 異 なる が 、 同じく市 場 を自 然 冷 媒 へと向 か わ せ て い る。 そ の 流 れ の 根 底 に ある の は 、 自 然 冷 媒 の 持 つ 環 境 へ の 優しさよりも、 エ ネ ル ギ ー 効 率 の 良 さ という特 性 な の で ある。 この 2 本 の 柱 から 成 る 対 策 は 、 小 型 業 務 用 冷 凍 冷 蔵 部 門 に お い て自 然 冷 媒 に 明らか な 優 位 性 を 持 た せ て いる。 規 制 の 動 向 を 考 慮 する エンド ユ ー ザ ー にとって は 利 用 で きる選 択 肢 は 減り続 けて おり、 二 酸 化 炭 素と C O 2 は 注 目 の 代 替 品となっているの だ 。

業務用冷凍冷蔵の明るい展望 小 型 業 務 用 冷 凍 冷 蔵と共 に 、 北 米 で の 別 の サクセ ス ストーリーとも いうべ き 動 き は 業 務 用 冷 凍 冷 蔵 で の 自 然 冷 媒 採 用 で あ る。 北 米 に お ける C O 2 ベ ース の 設 置 数 は 、 2 0 1 3 年 に は 1 9 8 件 で あっ た の に 対し、 現 在 は 4 0 9 件 で ある。 全 体 数 が 1 0 0 % 以 上 増 加した 中 で 、 最 も発 展 を 見 せ た の は 、 カナダと米 国 で 急 速 に 発 展した C O 2 トランスクリティカ ル システム の 使 用 で ある。 2 0 1 3 年 に は 、 カ ナダ に 6 8 店 、 米 国 に 2 店 のトランスクリティカ ル 使 用 店 舗 が 存 在し た 。 2 国 間 の 差 は 、 2 0 1 3 年 に 5 8 件 の 設 置 を 行っ た カ ナダ の 小 売 業 者 ソ ビ ーズ ( S o b e y s ) の 取り組 み によ るも の だ 。 そ の 後 も 取り組 み を 強 化し た ソ ビ ーズ は 、 さらに 2 0 店 の C O 2 トランスクリティカ ル 店 舗 を 設 置し、今 後 も毎 年 新 た に 1 5 ~ 2 0 店 舗 の オープンを 想 定している。この 努 力 は 市 場 を 刺 激し、 ラウン ディー ズ ( R o u n d y s )、 デ ル ヘ イズ ( D e l h a i z e )、 ホ ー ル フ ー ズ ( W h o l e F o o d s )、 ス プ ラウツ ( S p r o u t s )、 ロブ ロウズ ( L o b l a w s )、 ウォルグリーンズ ( W a l g r e e n s ) など、 北 米 中 の 大 手 小 売 業 者 が C O 2 トランスクリティカ ル 冷 凍 冷 蔵 システム の 試 験 や 導 入 を 行った 。 今 や C O 2 トラン スクリティカ ル の 使 用 は 、 過 去 に は 有 効 性 に 限 界 が あ ると 言 わ れ た 米 国 南 部 に まで 広 がって い る。 現 在 で は 、 世 界 の 至 るところと同 様 に 、 この ような 限 界 に 関 する 考 え 方 に も 変 化 が 生じてきて い る の だ 。 コン ポ ー ネ ントを 供 給 するス ポ ー ラン チ ー ム ( S p o r l a n T e a m ) は 次 の ように 述 べ た 。「 新 技 術 が 開 発 さ れ る に 従 い 、 南 部 の 気 候 に お ける 有 効 性 の 限 界 は 無くなっ て いくと思 い ま す。 北 米 で C O 2 が 注 目 さ れ て から、 ま だ たっ た 2 ~ 3 年し か 経って い な いというこ とに 留 意 することが 重 要 で す 」 並 列 圧 縮 シス テム 、 断 熱 空 冷 カ ー テン、 エ ジェクタ ー 、 高 圧 サ ブクー ラ ー の 利 用 は 、 ど れ も 効 率 化 に つ な がって おり、 従 来 の C O 2 ブ ースタ ー シス テムと比 較し た 年 間 削 減 率 は 、 シス テムタイプ に よっ て 異 な る が 5 ~ 1 5 % に 相 当 す る 。 新 た な シス テ ム や 技 術 56

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CO2 トランスクリティカル店舗数

2015年

NEWFOUNDLAND AND LABRADOR

139

11 BRITISH COLUMBIA 15 ALBERTA 2 SASKATCHEWAN CANADA 2 MANITOBA 1 WASHINGTON 1 WISCONSIN 1 INDIANA 2 ILLINOIS 20 CALIFORNIA U.S. 1 OKLAHOMA

2

94 ONTARIO 12 QUÉBEC

NEW BRUNSWICK

2 1 NEW YORK 8 VIRGINIA 1 NORTH CAROLINA 1 GEORGIA 1 LOUISIANA 1 MAINE

MASSACHUSETTS

52

1

1 CONNECTICUT 1 MICHIGAN

4 2 ALABAMA 1 FLORIDA 2 OHIO

TENNESSEE

93

68

CANADA

CANADA

2

14

U.S.

U.S.

2013年

2014 年

引用元 GUIDE to Natural Refrigerants in North America - State of the Industry 2015 http://publication.shecco.com/publications/view/guide-north-america-2015

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の 進 歩 が C O 2 トランスクリティカ ル の 効 率 の よさ や 排 出 量 の 少 な さ を 見 事 に 立 証して い る。 が 、 そ の 一 方 で C O 2 トランスクリティカ ル 技 術 の 持 つ 良 い 面 さえも 低 減 さ せる ほど に コ スト高 へ の 不 満 も 未 だ に 存 在して い る 。 とは い え、 一 部 の エ ンド ユ ー ザ ー は この ような コ スト に 関 する 懸 念 に つ い て は 別 の 意 見 を 持って い るようだ 。 例 えば ラウン ディーズ の メン テ ナンス 購 買 ディレクトリの ケ ビ ン ・ クリストファソン 氏 は 、 次 の ように 明 かし た 。「 あ る 新 聞 で はトラン スクリティカ ル シス テ ム の 機 器 と 設 置 に か か る コ スト は 、 合 計 で 1 8 0 万ド ル ( 約 2 . 1 億 円 ) に 達 すると 予 測 さ れ て い まし た 。し かし、 実 際 の コ ストは そ れ より低く、 結 果 的 に プ ロトタイプ ( R 5 0 7 ) シス テム の コ ストを 約 1 % 下 回りまし た 。」 し かし な がら、 政 策 の 積 極 性 が C O 2 トランスクリティカ ル 使 用 の 推 進 を 後 押し する の は 明ら か で あ る。 米 国 内 で は 最 も 政 策 が 活 発 で あ るとさ れ る カリフォル ニ ア 州とカ ナダ の ケ ベック州 は 、 同 時 に C O 2 トランスクリティカ ル シス テム の 使 用 が 最 も 盛 ん な 地 域 で もある。 カリフォル ニ ア 州 で は 、米 国 で 最 も 厳し い H F C 排 出 抑 制 政 策 を 導 入 することによって、エンド ユ ー ザ ー に シス テム の タイプ を 検 討 さ せ ようとして い る。 ま た この 政 策 は 、 南 カ ル フォル ニ ア ・ エ ジ ソン ( S o u t h e r n C a l i f o r n i a E d i s o n ) と いっ た 州 内 の 電 力 会 社 が 行う、 省 エ ネ 技 術 を 使 用 す る 利 用 者 に 奨 励 金 を 与 えるというエ ネ ル ギ ー 奨 励 制 度 によって、 さらなる 恩 恵 を 受 け て いる。 一 方 ケ ベックで は 、 州 政 府 が 提 供 する O P T E R プ ログ ラ ムという補 助 金 が あ ることで 、 導 入 時 の コ スト 高 の 軽 減 に つ な がり、 ス ー パ ー マ ー ケット の 電 気 料 金 の 削 減 と 共 に 、 将 来 的 な 段 階 的 削 減 に もう影 響 さ れ な いという安 心 感 も 得ら れ る。 まさ に 該 当 する の は ソ ビ ーズ などで 、 同 社 で は 「 モントリオ ー ル 議 定 書 3 . 0 で 、 次 の 段 階 的 廃 止 に 再 度 対 処 する」 ことは 避 け た かっ たという。 これ ら の こと か ら 言 える の は 、 補 助 金 や 厳 格 な 規 制 こそ が 、 企 業 の 冷 媒 転 換 に 最 も 直 接 的 に 影 響 を 与 えて い るということだ 。 一 方 、 他 の 地 域 で はここまで 厳 格 な 、 ある い は 寛 容 な 政 策 は 施 行 も 審 議 もさ れ て い な い 。し かし S N A P の 発 表 によ れ ば 、2 0 1 7 年 1 月 1 日 以 降 、新 設 するス ー パ ー マ ー ケ ット で R 4 0 4 A 、 R 5 0 7 A 、 そ の 他 の H F C 冷 媒 を 使 用 す る こと が 禁 止 さ れ る。 ま た 2 0 1 8 年 1 月 1 日 以 降 は 、 ス ー パ ー マ ー ケ ット の リ モ ート コ ン デ ン シ ン グ ユ ニ ット に お け る R 4 0 4 A 、 R 5 0 7 A 、 そ の 他 の H F C の 使 用 を 禁 止 するという、 強 力 な 政 策 シグ ナ ル が 出 さ れ て いる。

小型業務用機器台数

MEXICO

U.S.

188,371 94,493 29,064

159,307

17,493

77,000

CANADA

8,172 4,375

3,797

引用元 GUIDE to Natural Refrigerants in North America - State of the Industry 2015 http://publication.shecco.com/publications/view/guide-north-america-2015

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アフリカ初の CO2 トランスクリティカルサプライヤーの 製品ラインナップにヒートポンプが登場 2010 年にアフリカではパイオニアとして、 初の現地生産 CO 2 トランスクリティカルシステムを発売した CRS 社が、2015 年 6 月に CO 2 冷却装置、 ヒートポンプ、コンデンシングユニットという新たな製品の 発売を開始した。 同社は 2015 年になって CO 2 ヒートポンプの開発に着手したばかりであるが、アフリ カ市場へのこの種の技術の普及そのものが初めてである。しかし、CRS 社のエンジニアリング責任者で あるウィナンド・グローンワルド氏によれば、 すでに 8 台のヒートポンプを提供し、 初の冷却装置設置 も受注したということだ。 同氏の見解によれば、「ヒートポンプは実に急速に売れています。来年には 30~50 台が稼働することと予 測しています」「今のところ、業界での CO 2 推進に対して非常に有益で、期待できる状況だと考えています」 CRS 社は南アフリカで今年 6 月に開かれた Frigair conference において、冷却装置 (20kW-1000kW ) およびコンデンシングユニット (15-50kW ) と共に、 初めてヒートポンプ (20kW-1000kW ) を発売した。 この CO 2 ヒートポンプ は 従 来 のヒートポンプ に比 べ、65%~75% の 割 合でエネ ルギーを節 約し、 最 高 80°C(従来品は 60℃)まで水を加熱することができる。 先 行 試 験と欧 州 のメーカ ー から寄 せ られ た 外 部 の 意 見 によって、グ ロ ー ンワ ルド 氏 は 同 社 の ヒートポンプ に は 優 位 性 が あり、 場 合 によっては 世 界 的 な 大 手メーカー の 製 品 をも凌ぐ だろうと結 論 づ けている。「この 製 品 の 発 売 やその 評 価 は、 新 技 術 は 必 ず しも輸 入 に 頼る の で は なく、 現 地 で 生 産 することも可 能 だということを示 しています」 CRS 社はオーストラリアおよびニュー ジ ーランド へ の 拡 大 拠 点 を 持って お り、 近 い 将 来、 アフリカ 初 の CO 2 研 修教育施設の開設を予定している。

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フィリピンの冷蔵倉庫に バイオマス発電による吸収冷却装置 フィリピンのラグーナ州マンプラサンにある冷蔵倉庫が、もみ殻を燃やしてアンモニア吸収冷凍冷蔵機器 に熱を供給することで、 生鮮食品を保存するという革新的なプロジェクトを実行。この冷蔵倉庫は、 従 来の DX HCFC システムを、アンモニアと水を組み合わせた独自のシステムを提案する米国の Energy Concepts Company のカスタムメイド機器と置き換えた。この機器では、フル稼働した場合で 1 時間 当たり 300 kg のもみ殻を燃焼し、その蒸気でサーモチラーに電力を供給し、それによって 280 kW (80 tons)、-30⁰C の冷却を生み出すという。その結果、電力需要とアンモニア充填量を 85% 削減した。 当初、この冷蔵倉庫は非常に特殊なニーズを持っていた。小型の極小充填アンモニアパッケージの中で、 バイオマスの熱エネルギーで氷点下まで冷却する技術を提供できるプロバイダーを探していたのである。 「フィリピンで は、コンプレッサ ー ベ ースの 冷 凍 冷 蔵システムに お いてアンモ ニアを利 用 すること自体 は、 決して特 別 なことで は ありませ ん。しかし、 バ イオ マス の 熱 エ ネ ル ギ ー を 使 用 するシステム に、 アン モ ニ ア 吸 収 冷 却 装 置 を 使う例 は、 今 回 が 初 め てでしょう。」と、 エ ナジ ーコン セプ ツ (Energy Concepts) の事業開発部の部長エレン・マーカー氏は語った。

オーストラリアのワイナリーが先導する 持続可能性のための取り組み オーストラリアのワイナリー、デ・ボルトリ・ワイン(De Bortoli Wines) は、 十年に及ぶ持続可能性への取 り組みにより、オーストラリアン・ビジネス・アワー ド (ABA) を受 賞した。とりわ け、 環 境 に配 慮したア ンモニア冷蔵システムと、完成時にはオーストラリア のワイナリーでは最大となるソーラーパネルの配置 が最も高く評価された。 環 境 に 配 慮した 冷 蔵と先 駆 的 なソーラー 技 術 に 加 え、デ・ボルトリは現在、電力会社が提供するグリッ ドパワーをより効率的に利用し、ワイン造り、 梱包、 倉庫、および現地サービスにおいて抜本的な改革を 実施している。

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廃 棄 物 ゼロのワイナリーを目指した 計 画『炭 素 経 済プロジェクトに 向 けた 将 来 の 再 設 計』 の 一 環とし て、8 つの主要な持続可能性のための取り組みを完遂したデ・ボルトリは、8 月に持続可能性における ABA100 の受賞者となった。 受賞の決め手となったのは、 ニューサウスウェールズ州グリフィス近くのビ ルブル本社にある、アンモニアを利用した中央方式冷凍冷蔵機器ユニットであった。デ・ボルトリのエン ジニアリングマネージャーのタレク・ヘイランド氏によれば、それぞれ “ 北 ” と “ 南 ” と呼ばれる 2 つの冷 蔵プラントは、ビルブル本社のエネルギー消費の少なくとも 70% を占めている。置換する前のフロン系シス テムと比較すると、12 か月間で 17.3% の削減を達成したという。 デ・ボルトリは、オーストラリア政府によるクリーンテクノロジー・プログラムより、2012 年には 500 万ドル弱 という大きな支援を受け、これは同社が行った 1100 万オーストラリアドルの投資を補完する形となった。

日本の環境省コカ ・ コーラと パナソニックの CO2 移行を賞賛 コカ・コーラとパナソニックが、CO 2 を利用した空調・冷凍冷蔵技術の実施において業界をけん引したこ とが評価され、 「第 18 回 オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」でそれぞれ環境大臣賞・優秀賞を受賞した。 商工業新聞である日刊工業新聞が主催する 2015 年の大賞贈賞式は、経済産業省と環境省の後援、そし て日本冷媒・環境保全機構 ( JRECO) の協力により実施された。 自社が所有する自動販売機のほとんどがサンデン社製の CO 2 コンプレッサーに対応しているコカ・コーラ は、自動販売機や店頭機器の冷媒を HFC から自然冷媒へと切り替える、というコミットメントに対し環境 大臣賞を授与された。同社はまた、CO 2 が適応しない一部のボトルクーラー(飲料用小型ショーケース) においては、自然冷媒である炭化水素を利用している。コカ・コーラ・ジャパンの広報・パブリックアフェアー ズ本部 渉外グループ政策渉外部長である高杉 洪太氏は、同社の研究開発部門の勤勉な取り組みに感謝 の意を示した。「機器サプライヤーとの緊密な連携を経て、CO 2 冷媒をベースとした日本市場向けの省エ ネ型自動販売機、冷却装置、ディスペンサーが開発されたことを非常にうれしく思っています」 一方パナソニックは、ロータリー 2 段圧縮コンプレッサー、スプリット熱交換器、ディスプレイケース、制御シ ステムを含む、スーパーマーケット向け CO2 冷凍冷蔵機器の統合システムの開発により、優秀賞を受賞した。 この統合システムにより、HFC の R404A と比較して店舗の電力消費を 16.2% 削減することができるのだ。

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Accelerate Japan Nov / Dec 2015


自然冷媒をより早く市場へ 過 去 1 5 年 間 に わ たり、市 場 開 発 の ス ペ シャリストで あ る s h e c c o は 、環 境 負 荷 の 低 い ソリュー ション の より早 い 市 場 導 入 実 現 の た め に 日々 活 動して きまし た 。我 々 は 、自 然 冷 媒 を 使っ た 持 続 可 能 な 冷 凍 空 調 技 術 に 焦 点 を 当 て た H V A C & R 業 界 で 、1 0 0 以 上 も の パ ート ナ ー を 世 界 中 で 支 援して い ま す。 弊 社 で は 、大 きく3 つ の 領 域 で 多 種 多 様 な サ ー ビス を 提 供してい ま す。 ① オンラインで の 業 界プラットフォー ム や 全 市 場 調 査レ ポ ートといった メディア や 出 版 物 ② 市 場 分 析 やコン サ ル ティング、広 報 サ ー ビス、特 有 の 国 際プ ロジェクトを 通して 行う事 業 開 発 ③ 国 際 会 議 や 国 内ワークショップ などの イベント開 催

企業のソリューション促進 メディアや出版物だけではなく、CO2 、炭化水素、 アンモニア、水といった、 自然冷媒のための世界で有数なオンラインでの業界プラットフォームや、徹底した 市場リサーチ報告書「GUIDEs」を通して、企業のプロモーション活動を促進します。

業界のエクスパートと出会う 自然冷媒をより早く市場へ 導入する方法を見つけるための、政策決定者やエンドユーザー、業界関係者すべてを集わせた我々の国際的なイベント ATMOsphereを通じ、業界の先駆者やエクスパートとの出会いの場を提供します。

事業拡大への支援 問題追跡、SWOT分析、業界・市場動向分析を含めた、我々の適切な市場分析と広報サービスを行います。

100社以上のパートナー Panasonic, GEA, Carrier, SANDEN,Parker, Mayekawa, Danfoss, Hillphoenix,Johnson Controls, Linde Group, Alfa Laval, Emerson, Dorin, Embraco, Bitzer, Grundfos, SWEP, Temprite, Star, Hansen, HB Products,Green & Cool, Carnot, CIMCO, Cubigel, Embraco, Tecumseh, Systemes LMP, Secop, MHI, Carly

連絡先 shecco Japan

shecco Europe

phone: (+81) 3 3287 7330 fax: (+81) 3 3287 7340 email: japan@shecco.com website: www.shecco.com twitter: @shecco

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shecco SPRL Rue Royale 15 1000, Brussels Belgium


#2, NOVEMBER / DECEMBER 2015

A D VA N C I N G H VA C & R N A T U R A L LY

J A P A N

SPECIAL THANKS

ご支援ありがとうございます

自 然 冷 媒 に 関 する 情 報 発 信 の 世 界 的 エ キ ス パ ート s h e c c o が お 届 け す る アク セ レ レ ー ト・ジ ャ パ ン は 、あ ら ゆ る H V A C & R 分 野 で 自 然 冷 媒 ソ リ ュ ー シ ョ ン を 取 り 扱 う 、 最 も 革 新 的 な ビ ジ ネ ス リ ー ダ ー の 皆 様 を 対 象 とし た 日 本 初 の 隔 月 刊 誌 で す 。

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