2015 年度芝浦工業大学大学院 修士設計
親水都市 : Hydrophili-City
東京ベイエリアにおける 9 つの特性と親水空間の設計 理工学研究科 建設工学専攻 修士課程 建築・都市計画 西沢大良研究室
me14090 若林拓哉
0.0.0 序章
p.3
0.1.0 研究背景
3.0.0 本設計
p.166
3.1.0 全体構想
0.2.0 研究目的
3.1.1 2020 年以後の将来像
0.3.0 用語の定義
3.1.2 超群島構想:Hyper Archipelago 3.1.3 新交通システム
1.0.0 港湾都市の定量的分析
p.9
3.1.4 親水都市:Hydorophili-City
1.1.0 対象港湾都市の選定
3.2.0 対象敷地
1.2.0 各港湾都市における形態的特性
3.2.1 芝浦埠頭の歴史的背景
1.2.1 親水空間の定義
3.2.2 対象敷地
1.2.2 港湾領域の規定方法
3.3.0 用途
1.2.3 形態的特性分析における指標
3.4.0 設計手法
1.2.4 各港湾都市の形態比較
3.4.1 三次元化する親水空間:島 / 襞 / 桟橋
1.3.0 東京港の形態的特性
3.4.2 モデュール
1.3.1 群島を形成する東京港
3.4.3 構造および素材
1.3.2 ケーススタディ
3.5.0 デザイン
1.4.0 各港湾都市における親水空間分析 1.4.1 対象再開発地区の選定
4.0.0 総括
1.4.2 親水空間の分析手法
4.1.0 親水都市とは
1.4.3 各港湾都市の親水空間比較
2.0.0 東京ベイエリアにおける島別特性分析 2.1.0 日本における港湾都市の位置づけ
p.260
p.78 謝辞
2.1.1 対象港湾都市の選定 2.1.2 再開発および都市博覧会の歴史 2.1.3 1995 年以後のベイエリア 2.2.0 東京ベイエリアにおける時系列的島分析 2.2.1 埋立の変遷 2.2.2 用途転換性について 2.3.0 島別特性分析 2.3.1 島別データシート 2.3.2 用途分布 2.3.3 親水空間 2.3.4 不可侵領域 2.3.5 高層建築物 2.3.6 交通インフラ 2.3.7 歴史的変遷 2.3.8 東京ベイエリアの固有性
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0.0.0 序章 0.1.0 研究背景 0.2.0 研究目的
0.3.0 用語の定義
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0.1.0 研究背景 芝浦工業大学西沢大良研究室 ( 建築・都市計画研究室 ) では、 世界に類を見ない 3700 万人の人口を抱える巨大な都市圏である東 京圏を対象として、その形成過程とその過程に生じた諸問題や現 象、あるいは東京圏の将来的な展望について研究を行っている。 その中で、今年度は東京圏を対象とした調査・分析を行う「物流」 「郊外」「敷地」「アクティヴィティ」「境界」の各班と、グローバ ルな視点から越境的に事象を捉え、相対的に東京圏を把握、分析 する「港湾」 「中南米」の2班の計7班によって活動を行ってきた。 筆者の所属する「港湾班」では、昨年度に修士を修了した高原 [1]
の論文を元に、港湾都市における親水空間の分析をより論理的且 つ明確に出来るよう更新し、今後の都市あるいは建築の提案を行 う上で有用な視座を与えることを目的として研究を進めてきた。 東京ベイエリアは、昭和初期までは江戸時代から引き継がれた 漁業や舟運の盛んな地域であった。しかしながら、近代的発展を 続ける東京圏を支える物流の要衝として重要な役割を担うべく埋 立造成を繰り返し、結果的に人びとを水辺から遠退かせることと なった。その後、高度経済成長期以後のモータリゼーションや産 業転換により、物流の主役が船舶から自動車へシフトすると、遊 休化する施設が相次ぎ、次第に集合住宅やオフィス、商業施設が 集積する現在の様相を呈し始めることとなる。それによって、こ れまで東京港の物流量は上がり続ける一方であるにも関わらず、 人びとの意識から港の存在は消え去り、内陸部と同然の再開発し か行われない現状となってしまった。 また、昨今のウォーターフロント開発は極めて商業的目的に偏 重しており、水辺が消費活動を促進する付加価値的な位置づけと なってしまっている。 歴史的背景を忘却し、あの手この手で現在を焼き増しし続ける ための用地と化してしまったベイエリア、あるいはウォーターフ ロントに対して、我々はどのような未来を提示できるのだろうか。
[1] 『港湾都市・東京における水際空間の構造と空間特性 −東京港湾岸部における設計−』高原駿介、芝浦工 業大学大学院修士論文、2014 年
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0.2.0 研究目的 東京のベイエリアは、世界的にみても、初期では宅地造成や物 流用地として、後期では再開発用地や廃棄物処分場としてといっ たように、年代毎の開発目的に応じて埋立造成を繰り返しながら 群島を形成していくという、極めて特殊な手法によって成立して いる。それにも関わらず、現在に至るまで形態的・空間的分析が 殆ど為されておらず、極めて近代的な都市計画 ( 歴史的文脈を省みな い一様な、機能的ゾーニングによる都市計画 )
によって蹂躙されてしまっ
ているのが現状である。 そこで本研究では、東京且つベイエリア固有の形態的・空間的 特性を分析・把握することで、そこにおいてのみ創出可能であり 且つ将来的に都市環境を改善し得る空間・アクティヴィティを包 含する都市 / 建築の提案を目的とする。 それを解明するために必要な分析事項を順に挙げていく。第一 に、「海外諸港湾都市の形態的分析」を行うことで、東京港と海外 諸港湾都市との相対化を図るとともに、その特殊性を導き出す。 第二に、「海外諸港湾都市における再開発地区の親水空間分析」を 行い、形態的特性が実際の再開発のスケールでどのように反映さ れているのか、あるいは親水空間を形成するにあたって如何なる 手法を用いているのかを把握する。第三に、「日本における港湾都 市の再開発」がどのように行われてきたか、あるいは日本におい て港湾都市が社会的に如何なる位置づけをされてきたかを明確に することで、今後の港湾都市開発におけるビジョンを明らかにす る。最後に「東京ベイエリアにおける島別特性分析」を行うことで、 これまで東京港がどのように埋立造成され、現在に至ったかを解 明するとともに、その過程でどのような事象 / 開発が行われてき たかを把握し、東京ベイエリアの固有性についてより具体的な考 察を行う。 そして、以上によって把握される東京ベイエリアの固有性をも とに、設計 / 提案を行う。
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0.3.0 用語の定義 本研究において頻出するキーワードあるいは意味内容を押さえ ておくべき用語について定義を明らかにしておく。 【都市:とし】 「都市」とは、外部と生存物資 ( 食糧、水、エネルギーなど ) を交換 することによって成立する物流拠点である。 【港湾都市:こうわん - とし】 現在、「みなと」という言葉は、「港」や「湊」と記述される。 古くから、「みなと」は河海などの出入口につくられたため、「水 の門」と呼ばれたり、時には「水戸」や「瀬戸」と称した。その後、 時代の経過とともに、大型船の航行が盛んになると、湾や河口に 防波堤を築き、安全に碇泊できるようにした場所を、 「港」や「港湾」 と呼ぶようになった。 具体的に「港」という字を使うようになったのは、江戸時代初 期と言われている。さらに、一般化するのは、幕末の開港に際し て頻繁に使用されるようになってからのことである。つまり、近 代黎明期にようやく「港」という言葉が常用されるようになった。 一方、海外港湾都市を分析するにあたり、港湾の英訳として適 切なものは「ポート : port」であると言える。これは、「ポート」 の第一義的な意味が「港・港湾・商港・貿易港・開港場」である ためだ。つまり、船舶の出入に伴う物流や人的交流、さらには入 港管理や関税等の経済的・社会的行為を含む出入口として規定さ れる。また、英国では「ドック : dock」が用いられるが、これは「船 を入れる人工の入江、掘割、船溜まり」を指す。だが、機能的な 面から言えば、ポートに含んで差し支えないと考えられる。 それ以外にも用途や港湾法、地勢、建設方法など様々な分類に よって「港」を定義する手段があるが、本研究では河川・海問わ ず水都を扱うため、より包括的なポートの定義に従い、その日本 語訳としての「港湾」を採用する。従って、 「港湾都市」とは、 「船 舶及びそれに準ずる水上輸送手段の出入に伴う物流、人的交流お よび経済的、社会的行為が行われる都市」とする。港湾機能は物 流拠点として成立するために歴史的に極めて重要であり、都市と 密接に連関する要素であると言える。
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【ベイエリア:べい - えりあ】 港湾施設を有する地区とその後背地を含めた領域のことを指す が、本論では湾岸の都市においてのみ、この用語を使用している。 【ウォーターフロント:うぉーたー - ふろんと】 様々な水域 ( 河川や海、湾等 ) に面した水際の地区を指す。ベ イエリアではない地域を総じて指す場合に使用する。 【防潮堤:ぼうちょう - てい】 台風などによる大波や高潮、津波の被害を防ぐ堤防。あるいは、 高潮による災害を防止するために設置された堤体、壁体、水門等 の構造物及び護岸などを指す。 原則として、干潮面から 4.6m ~ 8.0m の位置に設ける。 【防波堤:ぼうは - てい】 外洋から打ち寄せる波を防ぐために海中に設置された構造物。 波浪から港湾の内部を安静に保つことや、津波や高潮から陸域 を守ること、海岸の浸食を防ぐこと等が目的である。 【護岸:ご - がん】 流水による浸食作用等から堤防及び河岸を安全に保護するため に設けるもの。 【岸壁:がん - ぺき】 係留施設の一種。水域に対して壁状の構造を為しており、船舶 が係留して人や貨物の積卸ができる。 水深 4.5m 以下のものは物揚場と呼ぶ。
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参考文献 ・『港湾都市・東京における水際空間の構造と空間特性 −東京港湾岸部における設 計−』高原駿介、芝浦工業大学大学院修士論文、2014 年 ・『日本の港の歴史 ―その現実と課題―』小林照夫著、成山堂書店、1999 年 ・ 『都市の原理 SD 選書 257』ジェイン・ジェイコブズ著、中江利忠・加賀谷洋一訳、 鹿島出版会、2011 年
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1.0.0 港湾都市の定量的分析 1.1.0 対象港湾都市の選定 1.2.0 各港湾都市における形態的特性 1.2.1 親水空間の定義 1.2.2 港湾領域の規定方法 1.2.3 形態的特性分析における指標 1.2.4 各港湾都市の形態比較 1.3.0 東京港の形態的特性 1.3.1 東京港の世界的位置づけ 1.3.2 ケーススタディ 1.4.0 各港湾都市における親水空間分析 1.4.1 対象再開発地区の選定 1.4.2 親水空間の分析手法 1.4.3 各港湾都市の親水空間比較
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1.1.0 対象港湾都市の選定 ここでは、東京のベイエリアは世界的にみても特殊な手法によっ て形成されていることを実証するために、海外港湾都市と東京港 の形態的な比較考察を行う。 対象とする港湾都市を選定するにあたって、港湾は都市形成の 上で最も重要な物流拠点の一つである、ということを前提とする。 従って、選定する港湾都市は、「世界史的にみて、かつて帝国・国 家形成において重要な役割を担った港湾都市」あるいは「世界史 的にみて重要な物流拠点として機能していた港湾都市」とした。 それらの条件により選定した港湾都市は、以下の 12 都市である。 ・ヴェネツィア / イタリア ・ジェノヴァ / イタリア ・マルセイユ / フランス ・バルセロナ / スペイン ・リスボン / ポルトガル ・ロンドン / イギリス ・アントウェルペン / ベルギー ・アムステルダム / オランダ ・ロッテルダム / オランダ ・ハンブルク / ドイツ ・コペンハーゲン / デンマーク ・ニューヨーク / アメリカ合衆国
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1.2.0 各港湾都市における形態的特性 前記の 12 港湾都市の形態的分析を行う。形態的特性を分析する 上で重要になるのが水際線である。「水際線」とは、陸域と水域の 境界上に発生する線のことを指す。つまり、水際線は水が存在す るところであれば必ず生じるものである。しかしながら、これま でこの水際線自体の質や前後の陸域 / 水域の質について定量的に 分析した研究は殆ど無く、親水空間においては感覚的な指標 ( リ [1]
ラックスできる、開放感がある等 ) を用いたアンケート調査が主 であった。勿論これにも有用性はあるものの、より客観的に港湾 都市の本質的性質を解明するためには数学的見解による定量的分 析が有効である、という視座のもと、分析を行っていく。 また、もう一つ重要な視点として地理的性質がある。港湾都市 はそれを支える物流機能を舟運あるいは船舶等の水上輸送手段に 依存していることから、須らく河川あるいは海に面している。そ して、それが形態的特性を大きく分ける要因となっている。この 詳細については後述する。
[1]『都市の水辺と人間行動―都市生態学的視点による親水行動論―』畔柳昭雄・渡邊秀俊著、共立出版株式会社、 1999 年、p.114~137
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1.2.1 親水空間の定義 海外比較から東京ベイエリアの分析に至るまで、キーワードと なるのが「親水」という言葉であり、これまでの東京ベイエリア の開発から失われており、かつ近年のウォーターフロント開発に おいて再考されている概念であると言える。 まず「親水」の定義を、「五感を通じた水との接触により、人間 [2]
の心理・生理にとってよい効果が得られる」とする。 その定義をもとに、人間が水際や水辺への身体的・感覚的な近 接可能性を有することを「親水性」と定義する。 そして、その親水性を有する空間を「親水空間」とし、 「親水空間」 とオープン・スペースの関係性を分析するかぎりにおいて、海外 比較の有用性が認められる。従って、親水空間とは、第一に人間 がそこに存在し、彼らが水を経験することでもって初めて成立す るものである。ただし、水を体感可能なことと良好な親水空間で あることは必ずしも同義ではなく、それについては別途考察する 必要がある。
[2] 『都市の水辺と人間行動―都市生態学的視点による親水行動論―』畔柳昭雄・渡邊秀俊著、共立出版株式 会社、1999 年、p.28
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1.2.2 港湾領域の規定方法 中央区
中央区
江東区
江東区
東京都港湾局が策定する東京港の港湾区域の規定方法を参照し、 港区
港区
それを応用することで、世界の港湾においても通用する港湾領域 の規定方法を考案する (fig.1)。 現在の東京港における港湾局が規定した港湾領域の規定方法を
品川区
以下の2点に集約する。
品川区
□行政区分による領域の規定 太田区
東京港の港湾区域は行政区分によってその終端を規定している
太田区
□水域範囲の規定 陸地側の端点と海上の目印となるもの、あるいは河口の中点か ら垂線を延長させたものとの交点によって規定される これを世界各港湾都市で利用可能な規定方法に改良したのが以 下の2点である (fig.2)。
fig.1 東京都港湾局が規定する港湾領域
fig.2 新規定方法による東京港の港湾領域
□行政区分による領域の規定 主要港湾地域を包括する最小行政区分により、その終端を規定 する ( 使用するのは日本の区に類する行政範囲とする ) □水域範囲の規定 行政区分の端点あるいは河口の中点から 4.4km の垂線を水域方
( 日本人の平均アイレベルH ) = 1500 [mm]
向に延長し、その垂線の端点同士を結ぶことでできる領域を水
H
d
( 地球の半径r ) = 6378.137 [km] とすると、日本人からみた水平線までの距離は、 ( 水平線までの距離d ) = H + 2Hr 2
域範囲とする (fig.3)
r r
≒ 4.4 [km]
fig.3 水域面積の算出に 4.4 ㎞を使用する理由
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①「各港湾都市が属する州・県などの行政区分の中に水域の境界 が存在しない」場合 (fig.4) ex) ジェノヴァ、バルセロナ、東京など ・主要港湾地域を包括する行政区分の最小範囲を規定する ・その行政区分の端点あるいは河口の中点から水域方向へ 4.4km の垂線を延長し、垂線の端点同士を結ぶことで囲まれた領域 を水域とする
fig.4 港湾領域規定パターン①
②「各港湾都市が属する州・県などの行政区分の中に水域の境界 が存在する」場合 (fig.5) ex) アムステルダム、ハンブルク、ロンドンなど ・州・県・市などの行政区分を水域の終端とし、港湾領域は水 域に接している区・教区などの行政区分の最小範囲をその領 域として採用する
③「各港湾都市が属する州・県などの行政区分の中に水域の境界 グレーター・ロンドンの境界線 により、水域の終端を規定
水域に接する最小範囲の区を 陸域範囲として規定
が存在する」が、「範囲が大きすぎる」場合 ex) ヴェネツィア (fig.6) ・州・県・市などの行政区分を最大港湾領域とし、主要港湾地 域を包括する行政区分の最小範囲を規定する
fig.5 港湾領域規定パターン②
・行政区分の端点あるいは河口の中点から垂線を延長し、最大 港湾領域と囲まれた領域を港湾領域とする
ヴェネツィア県の領域 を最大港湾領域とする
水域に接する最小範囲の 区を陸域範囲として規定
陸域の端点から伸ばした垂線 と最大港湾領域によって囲ま れた領域を港湾領域とする
fig.6 港湾領域規定パターン③
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④「各港湾都市が属する州・県などの行政区分の中に水域の境界 が存在せず」、かつ「行政区域と水域の範囲が重なる」場合 (fig.7) ex) マルセイユ ・主要港湾領域を包括する行政区分の最小範囲を規定する ・その行政区分の端点あるいは河口の中点から水域方向へ 4.4km の垂線を延長し、垂線の端点同士を結ぶことで囲まれた領域 と行政区域範囲の合計領域を水域とする
⑤「各港湾都市が属する州・県などの行政区分の中に水域の境界 が存在せず」、かつ「水域を規定する際に、陸域内に範囲が侵入 してしまう」場合 (fig.8) fig.7 港湾領域規定パターン④
ex) リスボン ・主要港湾領域を包括する行政区分の最小範囲を規定する ・その行政区分の端点あるいは河口の中点から水域方向へ 4.4km の垂線を延長し、垂線の端点同士を結ぶ ・結んだ線分の垂直二等分線と水際線の交点から 4.4km の点を 水域上にとり、すべての垂線の端点を結ぶ
fig.8 港湾領域規定パターン⑤
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1.2.3 形態的特性分析における指標
k [m^-1] =
LW × SL
exp.1 親水強度式
SW SL
本論の土台となる既往研究 ( 高原、2014) では、「親水強度」と いう指標をもとに親水性を定量的に分析した。これは単位面積あ たりの水際線長に対し、陸域における保有水域の比率を掛け合わ せたものである (exp.1)。この指標の問題点は以下の3点である。 ①親水強度の単位が [m^-1] となり、値の意味が一目で判断しづら い ②東京港湾のみを対象にした式であり、海外比較に際し使用でき ない ③陸域をすべて等価に扱っているため、親水空間を考慮できてい ない ここで用いた記号を以下に記載する。 k LW :親水強度 [m^-1] SL :水際線長 [m]
SW :陸域面積 [ ㎢ ] :水域面積 [ ㎢ ]
以上の問題点を改善するために、以下の概念を導入する (fig.9陸域
1)。 ①水際線を基準とする ②その水際線が接する親水陸域と水域の双方によってつくられる 親水空間の質を考慮する
水域
fig.9-1 水際線とその両側にある陸域 / 水域
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そのために、新たに親水陸域係数α、保有水域係数βの二つの指
α =
S Lw
SLw + SLI
標を導入する (fig.9-2,9-3)(exp.2,3)。 「親水陸域係数α」は陸域面積における親水陸域面積の比を表す 指標で、この値が大きいほど陸域に対して親水性の高い領域を保 有していることを意味する。 「保有水域係数β」は親水領域における水域面積の比を表す指標 で、この値が大きいほど広大な水域を保有していることを意味す
fig.9-2 親水陸域係数αの対象とする領域
exp.2 親水陸域係数式
る。ここで、親水領域は親水陸域と水域の二つを合わせた領域を 指す。 さらにそれらを掛け合わせたものを「親水係数αβ」とする。 これは、規模を問わずに、各港湾の形態による親水性を測るため の指標である (exp.4)。
β =
Sw
Sw + SLw
そして親水係数αβを水際線長に掛け合わせることによって、 水際線長のうち、親水空間を形成しているものとして質の高い水 際線をどれほど保有しているかを示す「有効水際線長」が求めら れる (exp.5)。これを元に、各港湾都市の形態を比較分析する。
exp.3 保有水域係数式
fig.9-3 保有水域係数βの対象とする領域
ここで用いた記号を以下に記載する。 LW’ :有効水際線長 [m] LW :水際線長 [m]
αβ =
SL w
SLw + SLI
・
Sw
Sw + SLw
exp.4 親水係数式
SLW :親水陸域面積 [ ㎢ ] SLI SW α β
:内陸域面積 [ ㎢ ] :水域面積 [ ㎢ ] :親水陸域係数 :保有水域係数
αβ :親水係数
S LW SW Lwʼ [m] =Lw×αβ= Lw × × SLW +S LI SW+S LW
exp.5 有効水際線長式
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1.2.4 各港湾都市の形態比較 前述の指標とそれに基づく計算式から、各港湾都市の形態を定 量的に分析する。 分析に使用する領域を図示したものを次頁以降にまとめた。見 方を以下に記載する。 ①太い実線で囲まれた領域を港湾領域とする ②黒塗りの領域を保有水域とする ③灰塗りの領域を保有水域以外の水域とする ④港湾領域内の細い実線と保有水域に囲まれた領域を親水陸域と する ( これは Google Map 2015 および Google Earth 2015 によっ て、親水陸域と内陸域を明確に区切る幹線道路、中央分離帯が ある 5 車線以上の道路、線路によって境界線を規定している。 ただし、干潟や浅瀬などの未開発地は親水陸域から除く ) 図はすべて S=1:100,000 とし、北上とした。また、港湾領域内 の状況理解を促進するため、図の右上に Google Map 2015 より参 照した航空写真を図示した。加えて、港湾領域内の主要水域 ( 海、湾、 河川など ) には、図中に名称を付記した。 対象範囲である港湾領域の値を示すため、記号を以下のものと する。 S:港湾領域 [ ㎢ ]
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ヴェネツィア /Venezia
S
:246.748[ ㎢ ]
Lwʼ :47090.907[m] Lw :208939.489[m] SLW :52.192[ ㎢ ] SLI :150.274[ ㎢ ] Sw :96.474[ ㎢ ] α :0.347 β :0.649 Laguna Veneta
Mare Mediterraneum
αβ:0.225 19
ジェノヴァ /Genova
S
:227.428[ ㎢ ]
Lwʼ :7053.867[m] Lw :102641.123[m] SLW :9.155[ ㎢ ] SLI :122.524[ ㎢ ] Sw :104.904[ ㎢ ] α :0.075 β :0.920 Mare Mediterraneum
αβ:0.069 20
マルセイユ /Marseille
S
:96.563[ ㎢ ]
Lwʼ :12371.001[m] Lw :105534.815[m] SLW :5.641[ ㎢ ] SLI :43.495[ ㎢ ] Sw :53.068[ ㎢ ] α :0.130 β :0.904 Mare Mediterraneum
αβ:0.117 21
バルセロナ /Barcelona
S
:91.858[ ㎢ ]
Lwʼ :8879.991[m] Lw :52925.964[m] SLW :7.319[ ㎢ ] SLI :38.372[ ㎢ ] Sw :53.486[ ㎢ ] α :0.191 β :0.880 Mare Mediterraneum
αβ:0.168 22
リスボン /Lisboa o Tejo
S
:99.840[ ㎢ ]
Lwʼ :4237.839[m] Lw :32919.988[m] SLW :4.638[ ㎢ ] SLI :33.667[ ㎢ ] Sw :66.173[ ㎢ ] α :0.138 β :0.935 αβ:0.129 23
ロンドン /London
River Thames
S
:156.407[ ㎢ ]
Lwʼ :5669.954[m] Lw :93217.905[m] SLW :25.671[ ㎢ ] SLI :143.221[ ㎢ ] Sw :13.186[ ㎢ ] α :0.179 β :0.339 αβ:0.061 24
アムステルダム /Amsterdam
IJ
IJmeer
S
:141.552[ ㎢ ]
Lwʼ :40973.456[m] Lw :219599.119[m] SLW :31.228[ ㎢ ] SLI :97.729[ ㎢ ] Sw :43.824[ ㎢ ] α :0.320 β :0.584 αβ:0.187 25
ロッテルダム /Rotterdam
Nieuwe Maas
S
:72.708[ ㎢ ]
Lwʼ :12403.135[m] Lw :107918.250[m] SLW :14.314[ ㎢ ] SLI :59.580[ ㎢ ] Sw :13.127[ ㎢ ] α :0.240 β :0.478 αβ:0.115 26
アントウェルペン /Antwerpen Schelde
S
:254.104[ ㎢ ]
Lwʼ :26230.999[m] Lw :194488.682[m] SLW :69.287[ ㎢ ] SLI :207.249[ ㎢ ] Sw :46.854[ ㎢ ] α :0.334 β :0.403 αβ:0.135 27
ハンブルク /Hamburg
Die Elbe
S
:185.546[ ㎢ ]
Lwʼ :51843.002[m] Lw :238091.431[m] SLW :36.633[ ㎢ ] SLI :112.200[ ㎢ ] Sw :73.345[ ㎢ ] α :0.326 β :0.667 αβ:0.218 28
コペンハーゲン /Copenhagen Nordsøen
S
:57.969[ ㎢ ]
Lwʼ :18874.751[m] Lw :90017.923[m] SLW :13.306[ ㎢ ] SLI :38.047[ ㎢ ] Sw :19.922[ ㎢ ] α :0.350 β :0.600 Østersøen
αβ:0.210 29
ニューヨーク /New York Hudson River
East River
S
:87.373[ ㎢ ]
Lwʼ :10129.094[m] Lw :90112.826[m] SLW :8.607[ ㎢ ] SLI :58.831[ ㎢ ] Sw :28.542[ ㎢ ] α :0.146 β :0.768 Upper Bay
αβ:0.112 30
東京 /Tokyo
S
:222.835[ ㎢ ]
Lwʼ :43725.921[m] Lw :223849.392[m] SLW :55.497[ ㎢ ] SLI :155.620[ ㎢ ] Sw :67.215[ ㎢ ] α :0.357 β :0.548 Tokyo Bay
αβ:0.195 31
以上の海外 12 港湾都市と東京港の計 13 港湾都市を対象に、比 較分析を行う。前提として、各港湾都市が海 / 河のどちらに面し ているかによって海型 / 河型に分類する。分類の内訳を以下に記 載する。 □海型 ・ヴェネツィア / イタリア ・ジェノヴァ / イタリア ・マルセイユ / フランス ・バルセロナ / スペイン ・リスボン / ポルトガル ・東京 / 日本 海型の特徴として、地中海という水深が極めて深い海に面して いる港湾都市が多い。一方で、ヴェネツィアや東京といった遠浅 の海に面している港湾都市も存在しており、前者と後者では地理 的特性による開発の差異が顕著である。 □河型 ・ロンドン / イギリス ・アントウェルペン / ベルギー ・アムステルダム / オランダ ・ロッテルダム / オランダ ・ハンブルク / ドイツ ・コペンハーゲン / デンマーク ・ニューヨーク / アメリカ 河型の特徴として、内陸部に引きこまれた、水深の浅い河沿い の港湾都市が多い。一方でコペンハーゲンのように河口に位置す る港湾も存在しており、そうした港湾は他の河型港湾都市とは多 少異なる性質を保有している。
32
まず水際線長を比較する (fig.10)。グラフより、上位の港湾都市
[m] 250000 200000
は河型で水際線を掘削する、あるいは海型でも島を形成すること によって水際線を拡張しているものがある。基本的に、海型の港 湾都市における水際線は、河型と比較して一辺しか持ち得ないと
150000
いう点で半分以下の値になっている。それは河型と比較して水深
100000
が深く容易に掘削 / 埋立ができないことと、それによる襞の少な
50000 0
さが相俟っているからである。また、河型でも襞を拡張していな いロンドンは低い値となっている。 加えて、水際線長は港湾領域とある程度相関しているため、こ の値単独ではなく、他の指標と併せて検討しなければならない。
fig.10 水際線長 LW グラフ
次に、親水陸域係数αと保有水域係数βを比較する (fig.11,12)。
0.400
これは水際線を二辺保有しているため、親水陸域も同様に両側に
0.350
発生するからである。一方で、保有水域係数βでは海型に優位な
0.300
結果となっている。これは河型より海型の方が明らかに広大で遠
0.250 0.200 0.150 0.100 0.050 0.000
fig.11 親水陸域係数αグラフ
グラフより、親水陸域係数αでは河型に優位な結果となっている。
くまで見渡せる水域を保有しているからに他ならない。また、こ れら2つの指標は、河型・海型双方にとって同等に扱えるように するための指標であるという前提に留意しなければならない。 従って、この2つの係数の値がバランスよく高い水準になって いる、つまり親水係数αβの値が高い港湾都市が、より優れた港 湾形態を成しているということになる。
1.000 0.900 0.800
0.700 0.600 0.500 0.400
0.300 0.200 0.100 0.000
fig.12 保有水域係数βグラフ 33
そこで、親水係数αβを比較する (fig.13)。この値は前述の通り、
0.250
規模に依らず、その港湾の形態がいかに親水性の高い形状を成し ているか、ということを測る指標である。
0.200
この中で最も高い値を示しているのがヴェネツィアで、続いて
0.150
ハンブルク、コペンハーゲン、東京、アムステルダム、バルセロナ、 …となっている。そこでこれら上位6港湾都市の形態を並列的に
0.100
比較考察していく (fig.14)。 すると、ヴェネツィアと東京は海型でありながらその地理的特
0.050
性である遠浅を活かした島を形成することによって、親水陸域係 数αが高く且つ保有水域係数βも中盤の順位であることから、親
0.000
水係数αβが高順位を示していることが分かる。一方でハンブル クやコペンハーゲン、アムステルダムは河型で、掘削することに よって襞を形成しているのが共通点である。また、他の河型と比
fig.13 親水係数αβグラフ
較すると襞の解像度が高く ( 襞の解像度とは、襞が何度派生し拡張している かを指し、その程度によって高い~低いという判断をしている )、水際線をよ
り長く拡張しているほか、掘削の延長で疑似的な島を形成してい Venezia
Hamburg
Copenhagen
る箇所が見受けられる。それによって、保有水域係数βの値はそ れほど高くないものの、親水陸域係数αの値は軒並み高い値を示 している。その点で、7 位のアントウェルペンは襞の解像度が低い ため、水際線を拡張できていないのがこの差を生んでいると考え られる。また、6位のバルセロナは海型の中でも陸域面積が小さく、 親水陸域係数αが海型の中でも高い 8 位であること、保有水域係 数βの値が海型のため高いことから、総合的に純粋な海型の中で 最も親水係数αβが高い結果となった。
Tokyo
Amsterdam
Barcelona
fig.14 親水係数αβ上位6港湾都市
34
次に、親水係数αβを水際線長 Lw に掛けた値である有効水際
[m]
線長 Lw’ について比較する (fig.15)。これは前述の通り、水際線
60000
長のうち親水空間を形成している質の高い水際線をどれほど保有
50000
しているかを示している。 この順位をみると、河型且つ襞を形成している港湾都市ではそ
40000
の襞の解像度が高いほど上位になる傾向にある。また海型では島
30000
を形成しているものがより上位に、島が無い場合は襞を拡張して
20000
いる港湾都市の方がより上位になる傾向にある。
10000
ここで、水際線長と有効水際線長による順位の変化を比較する
0
(fig.16)。順位を維持したものは黒矢印、下降したものは青矢印、 上昇したものは赤矢印で表記してある。この変動から、アントウェ ルペンを境に大きく2つのグループに分けられる。
fig.15 有効水際線長 Lw' グラフ
□アントウェルペンより上位のグループ ヴェネツィアが4位→2位になることで東京とアムステルダム
有効水際線長[m]
水際線長[m]
が一つずつ順位を下げるかたちになっている。それはヴェネツィ
Hamburg
Hamburg
アの親水係数αβが 0.225 と高く、かつ両者に比べ 0.03~0.04 高
Tokyo
Venice
いためである。さらに言えば、その差異は保有水域係数βに大き
Amsterdam
Tokyo
く依っていることがわかる。ここから、海型でかつ島を形成して
Venice
Amsterdam
いるヴェネツィアの特異性がわかる。一方で、同じタイプである
Antwerpen
Antwerpen
東京は順位が伸びないことは別途検討する必要がある。
Rotterdam
Copenhagen
Marseille
Rotterdam
Genova
Marseille
London
New York
New York
Barcelona
Copenhagen
Genova
Barcelona
London
Lisbon
Lisbon 0
50000
100000
150000
200000
250000
0
10000
20000
30000
40000
50000
60000
fig.16 水際線長グラフと有効水際線長グラフにおける順位変動
35
□アントウェルペンより下位のグループ コペンハーゲンが 11 位→ 6 位と大幅に順位を上げている。これ はコペンハーゲンの親水係数αβが全体で3位の 0.210 であるこ とが大きい。特に親水陸域係数αの値が 2 位であることから、港 湾領域自体は最も小さく水際線長において不利な状況下にありつ つも、親水陸域を多く保有していることが強みである。また保有 水域係数βについてもアムステルダムより高い値であり、河型の 中でも河口という立地を活かした港湾都市であると言え、それも 親水係数αβが高い要因である。このコペンハーゲンの動向によっ て、ロッテルダムとマルセイユは順位を一つずつ下げている。 もう一つ大きな変化を呈しているのがバルセロナである。これ は親水係数αβで 6 位だったことがその要因であると言える。有 効水際線長において、海型の中ではマルセイユが水域内に襞を拡 張した島を保有していることから、ヴェネツィアと東京を除けば 最も順位が高いが、親水陸域の形成の仕方ではバルセロナが海型 の中で最も優れていると言える。 一方で、ジェノヴァとロンドンが両者とも3位ずつ順位を下降 させている。これはどちらとも親水係数αβが他の港湾都市と比 較して圧倒的に低いことが挙げられる (12 位と 13 位で、尚且つ 11 位の半分程度の値 )。ジェノヴァは陸域面積に対して親水陸域 面積が小さいことによって親水陸域係数αが圧倒的に低いこと、 ロンドンはジェノヴァと同様の理由で親水陸域係数αが低く、か つ河型のため保有水域係数βも低いことにある。それ故、有効水 際線長では大きく順位を下げることとなり、他の港湾都市が相対 的に順位を上げた。
36
1.3.0 東京港の形態的特性 ここまでの分析で、ハンブルクを筆頭とする、水際線を襞状に 拡張している港湾都市の親水性が高いことがわかった。一方で、 ヴェネツィアや東京のように島を形成している港湾都市も高い親 水性を示している。 そこで、東京港の固有性について論述するにあたって最も重要 な要素が「島」であると仮定し、より詳細な分析を行う。
37
1.3.1 群島を形成する東京港
Tokyo
東京港の固有性を担う重要な要素だと考えられる「島」の特性 を顕在化させるため、「島の占有比率」を比較する (fig.17)。式は、 ( 島の占有比率 ) = ( 島部面積 )/( 港湾領域 )*100 で求める。ここで、島とは「全方位を水域に囲まれた陸域」と 定義し、防潮堤なども島に含むこととする (fig.18)。 これによると、ニューヨークが抜きん出て占有比率が高いが、 それは陸域面積の殆どが島となってしまっているためであり、比 較する上で特殊なケースであるため、除外する。 そこで、ニューヨークを除いたグラフ (fig.19) を再度作成し、こ れを参照すると、東京やヴェネツィア、マルセイユといった海型 における明らかな島だけでなく、ハンブルクやアントウェルペン
fig.17 東京港における港湾領域に対する島部
などの河型においても、掘削によって襞を拡張していく際に発生 する疑似的島を保有していることが確認できる。
[%]
[%]
80.0
30.0
70.0 60.0
25.0
ここでさらに、島部のみの面積を比較する (fig.20)。これによる と、如何に東京が島を多く保有しているかがわかる。一方でヴェ ネツィアは東京の半分に満たない島部面積しか保有していないこ
20.0
とから、両者の差異の一端はここにあると言える。また、ハンブ
40.0
15.0
30.0
ルクやアントウェルペンも広大な島部面積を保有しており、東京
10.0
やヴェネツィアとの差異を明確にする必要がある。
50.0
20.0 10.0 0.0
fig.18 島の占有比率グラフ
5.0 0.0
fig.19 島の占有比率グラフ (New York を除く )
[ha] 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0
fig.20 島部面積グラフ 38
[ha]
そこで各港湾都市における島部の平均面積と個数を比較する
450
(fig.21,22)。これらのグラフと前記のグラフを元に、東京の特異性
400 350 300 250 200 150 100 50 0
を明らかにしていく。 これによると、東京は巨大な島を多数保有しているのに対し、 ヴェネツィアやコペンハーゲンは小さな島を多数保有しているこ とがわかる。また、アントウェルペンやハンブルクは東京と比較 すると巨大な島を保有している点で同様だが、その個数は半分以 下となっている。ここから、海型と河型で島の個数に差異がある 可能性があると言える。
fig.21 平均島面積グラフ
ヴェネツィアと東京は、海型でありながら遠浅の海という埋立 可能な地理的特性を活かしている。一方でハンブルクとアントウェ ルペンについては、島の形成要因が掘削による襞拡張の延長であ ることから、それ自体が目的ではなく副次的なものであるという
70 60 50 40
意味合いが強い。 以上のことから、河型は水深が浅いことを活用して襞拡張によ る水際線の延長をその形態的特徴としている。一方、海型かつ島
30
を形成している港湾都市は、その地理的特性を活かして島形成に
20
よる水際線拡張をその形態的特徴としている。また、ヴェネツィ
10 0
アと東京を比較すると、東京の方が遥かに大きな島をヴェネツィ アの半数程度所有しており、それが親水性に影響を与えてると考 えられる。以上の分析を踏まえて、東京港の固有性を以下の二つ
fig.22 島個数グラフ
の項目に集約する。
・海型かつ島型である
・陸域面積の大きな島を多数保有している
39
海型
順位
これまでの考察をもとに港湾都市別に形態的特性をマトリクス
Tokyo
3
どれだけ色濃く反映しているかを表す。また、順位の列は有効水
Venice
2
順位の上位6港湾都市をみていくと、1位のハンブルクは、河
Genova
11
と言える。2、3位のヴェネツィアと東京は、海型でありながら、
Marseille
8
Barcelona
10
Lisboa London
河型
島型
襞型
13 12
Antwerpen
5
Amsterdam
4
Rotterdam
7
Hamburg
1
Copenhagen
6
New York
9
化すると左図のようになる (fig.23)。○の大小はその形態的特性を 際線長による。 型・島型・襞型の形態的特性を併せ持つ優れた形態を成している 島型の形態的特性を強く持っていることから高い親水性を保有し ている。4,5位のアムステルダム、アントウェルペンは河型・島 型・襞型の形態的特性をほどよく併せ持っており、かつアムステ ルダムの方が襞の解像度が高いことが順位に影響していると言え る。6位のコペンハーゲンは、海型・河型両方の形態的特性を併 せ持ち、かつ島型・襞型の特性も保有している特殊な形態を成し ていることがこの順位に位置している要因だと考えられる。 また、それ以外の港湾都市をみていくと、それぞれの形態的特 性を色濃く保有しているほど、あるいは複合的に保有しているほ どより上位になる傾向にある。 有効水際線長式によって、定量的に各港湾都市の形態的特性を 把握することが可能になったとともに、それを元により詳細に、 形態的特性を顕在化させる式を併用することで、港湾都市におけ る親水空間のポテンシャルを評価するための有用な指標を提示で きたのではないだろうか。
fig.23 港湾都市別形態的特性マトリクス
40
1.3.2 ケーススタディ ここまでの考察をもとに、東京港湾において有効水際線長を増加 させることによる親水空間拡大の可能性をスタディした。 現状の東京港湾 (fig.24) の各種数値を基準に、様々なパターン とそれによる数値の変動を考察する。 ①中央防波堤を消去した場合 (fig.25) 水際線長[LW]:201,839 m(-22,010)
水際線長[LW]:223,849 m 水域面積[SW]: 67 ㎢ 陸地面積[SL]:156 ㎢
水域面積[SW]: 73 ㎢
(+6)
陸地面積[SL]:150 ㎢
(-6)
親水陸域面積[SLW]: 55 ㎢
親水陸域面積[SLW]: 49 ㎢ (-6)
親水陸域係数[α]: 0.36
親水陸域係数[α]: 0.34
(-0.02)
保有水域係数[β]: 0.60
(+0.05)
保有水域係数[β]: 0.55 親水係数[αβ]: 0.195
親水係数[αβ] : 0.197
(+0.002)
有効水際線長[LW’]: 43,726m
有効水際線長[LW’]: 39,840 m(-3,886 )
fig.24 現状の東京港と各種数値
fig.25 中央防波堤を消去した場合
大規模な島面積のものを消去すると、水域面積が拡大し保有水 域係数βの値も上昇するが、そのかわり水際線が減少する。かつ 中央防波堤はすべて親水陸域のため親水陸域係数αの値も減少す る結果となった。よって有効水際線長も大幅に減少してしまった。 ②有明を消去した場合 (fig.26) ①を参考に、内陸域面積の大きな島を選定して消去する。そう すると、①より親水係数αβの値が微増する結果となった。しか しながら、水際線長が減少してしまったために、有効水際線長も 減少してしまった。 ③大井を消去した場合 (fig.27) ②よりもさらに大きな内陸域面積を持つ大井を対象にした。① よりも保有水域係数βが大きくかつ親水陸域係数αの減少も抑え られているため、これまでで最も親水係数αβの値は高いが、や はり、水際線長が減少していることから有効水際線長も減少して しまう結果となった。
水際線長[LW] :212,686 m(-11,163 ) 水域面積[SW]: 71 ㎢
(+4)
陸地面積[SL] :152 ㎢
(-4)
水際線長[LW]:204,817 m(-19,032 ) 水域面積[SW]: 75 ㎢
(+8)
陸地面積[SL]:148 ㎢
(-8)
親水陸域面積[SLW]: 52 ㎢ (-3)
親水陸域面積[SLW]: 49 ㎢ (-6)
親水陸域係数[α]: 0.35
(-0.01)
親水陸域係数[α]: 0.34
保有水域係数[β]: 0.58
(+0.03)
親水係数[αβ] : 0.199
(+0.004)
保有水域係数[β]: 0.60 親水係数[αβ] : 0.204
(-0.02 ) (+0.05) (+0.009)
有効水際線長[LW’]: 42,457 m(-1,269 )
有効水際線長[LW’]: 41,757 m(-1,969 )
fig.26 有明を消去した場合
fig.27 大井を消去した場合
41
①~③までのスタディより、水際線長が減少してしまう手段を 用いること ( 島を消去すること ) は有効でないことがわかった。 そこで、島の一部分を消去する手段をスタディする。 ④大井の操車場を消去した場合 (fig.28) 島の一部を消去する際に、内陸域面積を消去することが最も有 効な手段だと言える。そこで、大井の内陸域部分である操車場を 消去し、尚且つ水域を引きこむことによって水際線を拡張した。 これは河型の港湾都市が用いる掘削による襞拡張と同様の手法で あり、島面積を縮小するという点においてはヴェネツィアに近づ くとも言える。 水際線長[LW]:234,069 m(+10,220 )
この手法によって、水域面積・親水陸域面積ともに増加するため、
水域面積[SW]: 69 ㎢
(+2)
親水陸域係数α・保有水域係数β・親水係数αβすべてが増加す
陸地面積[SL]:154 ㎢
(-2)
ることとなった。そして水際線長も増加していることから、有効
親水陸域面積[SLW]: 56 ㎢ (+1) 親水陸域係数[α]: 0.37
(+0.01)
保有水域係数[β]: 0.60
(+0.05)
親水係数[αβ]: 0.201
(+0.006)
有効水際線長[LW’]: 47,207 m(+3,481)
fig.28 大井の操車場を消去した場合
水際線長も現状より拡大する結果となった。 以上より、既存の島を掘削 / 細分化することで、水際線長を増 やしながら水域面積を拡大し、かつ親水陸域を増やすことが出来 る場所に手を加えることで、有効水際線長を拡大することが可能 になる、という結論に至った。しかしながら、この手法の場合、 廃土砂をどのように処理するか、経済的・社会的合理性とどれほ ど合致するかについては検討が必須である。加えて、この手法は 河型港湾都市の形態的特徴である襞型を参照していること、また、 この操作を行うことによって形態的特徴がヴェネツィアに若干な りとも近づくこととなり、東京固有の形態的特性を損なう可能性 があることは念頭に置いておかなければならない。 従って、他の港湾都市の形態的手法を参照しつつも、それを東 京港の固有性を維持し得る限りにおいて利用するのが一つの可能 性ではないだろうか。
42
1.4.0 各港湾都市における親水空間分析 これまで、港湾都市における形態的分析を行うことで、マクロ な地理的特性や形態的特徴を顕在化し、それによって各港湾都市 における性質の一側面を解明した。しかしながら、形態的特性の 分析において用いた視点は極めて俯瞰的でありかつ平面的に単純 化しているため、あくまで形態的なポテンシャルを把握するとい う点に注力した際に有用であると言える。 そこで、人間が親水空間を経験する、という視点を導入するた めにはより解像度の高い分析が必要であることから、近代以降に 再開発が行われた各港湾都市の一エリアを対象とした空間分析を 行う。そして、その再開発地区の親水空間が形態的特性を反映し ているのか否か、あるいは形態的特性に対して如何なる対応を採っ ているのか、について考察する。
43
1.4.1 対象再開発地区の選定 対象とする再開発地区を選定するにあたって、形態的特性分析 で用いた港湾領域内にあることを前提に、各港湾都市の中で何ら かの形で親水空間を最もよく計画していると考えられる再開発地 区を対象とした分析を行う ( ただし、ヴェネツィアは主要港湾都 市領域内で近代的な再開発を行っているケースが見受けられない ため、対象外とした )。 対象とする再開発地区を以下に記載する。 ・ジェノヴァ / ジェノヴァ歴史地区 ・マルセイユ / マルセイユ旧港地区 ・バルセロナ / バルセロネータ ・リスボン / リスボン万博エリア ・ロンドン / カナリーワーフ ・ハンブルク / ハーフェンシティ ・アントウェルペン / アントウェルペン旧港地区 ・アムステルダム / イースタンドックランズ ・ロッテルダム / コップファンズイド ・コペンハーゲン / シューハウネン地区 ・ニューヨーク / バッテリーパークシティ 次頁以降に再開発地区の概要をまとめた。
44
Genova
計画 france Italy
期間
La riqualificazione del Porto Antico di Genova
1985~1992
規模 23ha(0.23 ㎢ )
a
港湾タイプ
国立欧州・地中海文明博物館
海型
MUCEM
計画内容 契機
主体
a
0 0
Date : 2015/05/18
Date : 2015/05/18 500m 500m
250m 250m
万博の開催
● ジェノバ市(51%) ●商工会議所(39%) ●PA(10%)
建物
新築
リノベーション
●文化施設
機能
●ホテル ●住居
●オフィスビル
計画概要 1992 年のコロンブス北米大陸到達 500 周年を記念とした万博は、 都市の歴史地区を活性化させると同時に新たな恒久施設を建設する機
会となった。レンゾ・ピアノによって計画されたプロジェクトは、既 存の城壁、倉庫、鉄道軌線、港の税関施設の門、さらに高速道路によっ て分断されていた、歴史地区と海の間のつながりをつくることであっ た。
具体的内容としては、海沿いの高架道路の下にあった壁や倉庫の撤
去、港沿いの古い建物の改修、水族館・ビーゴなど新しい建物の建設、 デル・マーレ通り(歴史ある主要路の一つ)を水族館沿いの防波堤ま で拡張、などが主である。また、2004 年にはジェノバがヨーロッパ 文化都市に選定され、港湾設備の拡張と再編成が計画された。この計
画の主要なものは埋め立てを行うことで港の表面積を増やし、ジェノ バ空港を人工島へ移動させることであった。
開発資本:420 億¥(£6,000 億 ) ※1£=0.07¥ 1888年旧港地区 1896年地図
1992年度マスタープラ 2008年度マスタープラン
現在の港の写真 2008年度マスタープラ 現在の港の写真 ン抜粋
出典:a+u 2010 年 5 月号 『ジェノバ市のまちづくりと港湾整備』民岡順朗 FONDAZION RENZO PIANO HP
Marseille
計画 france
Euroméditerranée
期間
1995~now
規模 311 ha(3.11 ㎢ )
a
港湾タイプ
国立欧州・地中海文明博物館
海型
MUCEM
計画内容 契機
主体
a
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
港湾機能の衰退
ユーロメディテラネ 再開発公社
国 , マルセイユ市 15% 民間コミューン 85%
建物
機能
新築
リノベーション
●商業施設 ●文化施設 ●住居
計画概要 トラム等のインフラ整備およびオフィス需要への対応や、マルセイ
ユ中心市街地の再生などの計画とともにウォーターフロントの整備が
新しい建物
ある。1995 年からの 10 年間に、クルーズ観光客は年間 5000 人だっ
コンバージョン
たものが 36 万人に上昇した。観光中心の港湾部に住居、オフィス・
既存の建物
商店・レジャー・クルーズ施設を集約し、自動車交通路の地下化、植
大広場、メジャーな空間
樹により快適な歩行空間の創出を行っている。また、マルセイユはプ
ブールバード、大通り
ロヴァンス地方の他の市とともに「2013 年欧州文化都市」に選定さ
庭園、広場
れた(選定年は 2008 年)。年間 650 もの展覧会・公演・イベントなど、
メトロ 計画範囲
大小さまざまなプログラムを行うことで、観光集客を図っている。こ
遺産
の欧州文化都市への選定により 2012 年までであったユーロメディテ ラネ計画が延長され、その規模を拡大しながら開発が今なお進んでい る。
開発資本:4,760 億¥(35 億€) ※1€=136¥ 1888年旧港地区
2008年度マスタープラン
2008年度マスタープラン抜粋
出典:『マルセイユ港湾の整備における公共空間に関する研究』日本建築学会 吉田詩織 『フランス地方圏の都市整備と新しい交通・環境政策』 西田敬 Euroméditerranée 公式サイト Marseille 市 HP
Barcelona
計画
期間
Plan Especial de Reforma Interior(Barceloneta)
Spain
1967~2002
規模 146 ha(1.46 ㎢ )
港湾タイプ
海型
計画内容 契機
主体
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
住民運動をきっかけと する市街地改善特別プ ラン(PERI)の策定
●バルセロナ市
建物
機能
新築
リノベーション
●公園 ●住居
●文化施設
計画概要 計画の主な目的として、①工場跡地の有効利用とインフラ交差部近
傍の住宅用途への転換、②隣接する他地区との空間的なつながりの改
善、③伝統的な生活空間の活性化、④海岸の空間の再生が挙げられる。 このプランでは,将来のオープン・スペースのために土地の三分の二
が確保された(カタラーナ公園の敷地を基本としており規模はおよそ
5ha)。イカリア通りに面した4つの未完成の街区に公営住宅を挿入す ● ⑧
ることで街区の完成を実現を目指しており、こうしてできあがる街区
⑤ ●
● ②
のファサードは,バルセロネータの新たな表情となることが期待され
● ⑥
● ① ● ⑦ ● ⑩ ● ③
● ⑨
⑩ ●
る。前提とされたのは地区の特質,つまりバルセロネータの持つ独特
● ⑩
のスケール感を生かすことだった。新たに建設される建物がバルセロ ネータ地区のスケール,とくに既存の住宅街区のスケールを尊重しつ
● ⑩
つも広幅員の沿岸環状道路の整備という異なる2つの現実に対応する
④ ●
旧市街全体における事業
設計が施された。 計画前
計画後
出典:『持続可能な都市ー欧米の試みから何を学ぶか』福川裕一 他 『バルセロナにおける都市計画の展開と歴史都心の再生に関する研究』阿部大輔 『バルセロナ旧市街の再生戦略』阿部大輔
Lisboa
計画 Portugal
Expo.98
期間
1990~1998
規模
330 ha(3.30 ㎢ )
Portugal Pavilion at the Expo ʼ 98 / Álvaro Siza
港湾タイプ
海型
Portugal Pavilion at the Expo ʼ 98 / Álvaro Siza
計画内容 契機
主体
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
Expo 1998 の開催
●Parque
Expo 98
(政府 95% 市 5%)
建物
新築
●文化施設
機能
●娯楽施設 ●住居 ●公園
計画概要 リスボン市東部テージョ川に面する約 330ha の土地は、老朽化し
た製油基地、屠殺場、兵器倉庫、ゴミ処理場、汚水処理場の立地によ り環境の悪化が表面化していた。EU 通貨統合を控え、国の競争力を
上げるためにも、早急な再開発が望まれていた。ポルトガル政府とリ スボン市は、ここに職住一体の副都心を計画し、博覧会はこのうちの 中央部 60ha を使って展開され、副都心の主要エリアと重ねられた。 ここには、20 万人 / 日の往来が想定されており、不十分だった交
通インフラの整備計画が、博覧会開催に合わせてまとめられた。地下
鉄では既存線から開発地までを結ぶ 7 駅区間と鉄道駅同士を結ぶ 2 駅
区間、鉄道ではスペインから列車が乗り入れる総合駅が、道路ではテー ジョ川の対岸から横断できる自動車道がそれぞれ計画され、いずれの 交通インフラも副都心に限らずリスボン市全体に大きな恩恵をもたら した。 マスタープラン
出典:『博覧会と地域開発 - 再開発計画に組み込まれた リスボン国際博覧会 - 』谷田 真 PORTAL DAS NAÇÕES (expo. の HP:http://www.portaldasnacoes.pt/)
London
france UK
計画 期間 Canary Wharf Master Plan
1993~now
規模 港湾タイプ 28.80 ha(0.28 ㎢ )
a
国立欧州・地中海文明博物館
河型
MUCEM
計画内容 契機
主体
a
0 0
Date : 2015/05/18
Date : 2015/05/18 500m 500m
250m 250m
建物
港湾機能の衰退
●ロンドン市
●カナリーワーフ ●民間開発会社
新築
●オフィス
(株)
機能
●商業施設 ●住居
●文化施設
計画概要 SOM は 25 年もの間、ロンドン市と地域社会のリーダーとが協力 しカナリーワーフの建物を計画した。計画では、4 地区に広がる 20
新しい建物
あまりの建物の計画地を特定し、堅牢な公共交通ネットワークを作成
コンバージョン
した。SOM は、いくつかの重要な建物を設計し、エリア全体のユニー
既存の建物
クな手すり、ゲート、備品、そして噴水を建築するために、アーティ
大広場、メジャーな空間
ストとのコラボレーションを行うなどして、プロジェクトは大成功を
ブールバード、大通り
収めてきた。高層ビルの高さや大きさ、つまり縦・横・高さと 3 次元
庭園、広場
的なボリューム規制をかけることで、成層型の綺麗なスカイラインを
メトロ 計画範囲
実現しているカナリーワーフは現在、ロンドン東部のための繁栄・雇
遺産
用のハブとその広い再生のための触媒となっている。それが拡大し続
けると同時に、SOM は、その成長を導くのに重要な役割を果たして いる。
マスタープラン 1888年旧港地区
1747年地図 2008年度マスタープラ ン
出典:SOM HP designbuild network.com
現在地図 2008年度マスタープラ ン抜粋
Hamburg
Germany
計画 期間 Hafencity revival project
155 ha(1.55 ㎢ )
1997~2025
港湾タイプ
河型
規模
エルベフィルハーモニー
計画内容 契機
コンテナ化による衰退
建物
新築
リノベーション
●住居
主体
●ハンブルク市
機能
●オフィス ●文化施設 ●商業施設
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
計画概要 マスタープランでは、この土地を 12 のエリアに分割し、それぞれが
経済的、環境的、社会的、文化的発展に貢献することを目的とした様々 なプロジェクトが進行している。12,000 人の居住者のための集合住
宅 5,500 戸と 40,000 人の雇用を創出するための事業用開発が予定さ れている。この計画における最大の特徴は、開発自体が市民と関係を
構築することを意図した開発スタイルにあり、開発順序が非常にユ ニークである。建物や施設に先立って、広場などのオープンスペース
が整備されることで、市民は開発の様子を目撃し続ける。また、20 年以上にわたる開発の拠点となるインフォセンターは、様々な情報の 引き出しとなっている。
開発資本:3,264 億¥(24 億€) ※1€=136¥
出典:『Civic Pride 都市のコミュニケーションをデザインする』 Copyright HafenCity Hamburg GmbH HP
1910年ハンブルク港
マスタープラン
Antwerpen
計画 Belgium
HET EILANDJE
期間
urban renewal towards a dynamic
2000~2013
規模 172 ha(1.72 ㎢ )
港湾タイプ
河型
neighbourhood by the water
MAS(Museum aan de Stroom)
計画内容 契機
主体
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
コンテナ化
船舶の大型化
●アントワープ市
●アントワープ港湾局
建物
新築
●オフィス
機能
●商業施設 ●文化施設 ●教育施設
計画概要 マスタープランは 2 つのフェーズで計画が行われた。1 つ目は
Oude Dokken、Montevideo、Cadix を含むエリアの再開発であり、 そ れ ぞ れ の 特 徴 を 持 っ た エ リ ア に な っ て い る。2 つ 目 は Droogdokkeneiland、Mexico-Eiland、Kempeneiland を含む東の港湾 エリアの計画である。
その後マスタープランは、外部空間のビジュアルの計画(2002)、建
築の計画(2004)、植栽計画(2005)、水辺計画(2004)の 4 つの詳 細計画に発展した。
マスタープランでは、開放感を維持し人々の生活を反映させながら、 この土地のもつ個性を生かすことに重点を置かれた。建築が主張しす ぎることがなく、土地と水のバランスに気を付けながら計画された。
20世紀初頭
マスタープラン
出典:Het Eilandje Stadsvernieuwing op weg naar een bruisende stadswijk ann het water (5.2011) croonenburo5 HP
Amsterdam
計画
Oostelijk Havengebied
期間
1962~now
(Eastern Docklands)
Netherlands
規模
313 ha(3.13 ㎢ )
港湾タイプ
河型
west8 による連続中層住宅
計画内容 契機
主体
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
コンテナ化による衰退
●アムステルダム市 ●民間企業
建物
新築
●住居
機能
●オフィス ●娯楽施設 ●商業施設
計画概要 慢性的な住宅不足の解消を目的に住宅地として再開発することが計
画の趣旨である。各島において違う人物が計画することで異なったコ ンセプトの住宅地となった。住戸形態も島ごとに特色があり、戸建や 長屋、集合住宅など様々である。それぞれの島において最適で暮らし やすい住戸密度を追求しながら計画が行われた。建てられた家々は今 まで高い人口密度の中で暮らしていた約17,000人の新しい住処となっ た。8,000戸の一軒家の内の約50%は公共住宅である。
オフィス(専門職が多い)やショッピング施設からレストラン、カフ
ェ、クラブ、シアター、美術館等の娯楽施設も充実している。それぞ れの建物は芸術的・創造的な雰囲気を持ち、街を賑わしている。それ らの理由から住民には芸術家や専門職が多い。
5つの島の配置
計画全体図
出典:『水都アムステルダム 受け継がれるブルーゴールドの精神』 岩井桃子 『オランダの持続可能な国土・都市づくり 空間計画の歴史と現在』 角橋徹也 http://www.easterndocklands.com/
Rotterdam
計画
Kop van Zuid
期間
1993~now
規模
125 ha(1.25㎢ )
港湾タイプ
河型
Netherlands
De Rotterdam / OMA
計画内容 契機
主体
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
コンテナ化による衰退
●国
●民間企業
建物
新築
●住居
機能
●オフィス ●娯楽施設 ●商業施設
計画概要 港湾機能の衰退による、南北各都市との連絡機能の消失および都市 人口減少から来るスラム化を回避する目的から再開発が計画された。
プロジェクトは 1990 年初頭に始まり、マース河南岸の旧港湾地区を
対象に高層集合住宅やオフィスビルを中心として再開発を行うもので ある。この中でも中心となっているのがウィルヘルミナピアー地区で
ある。ノーマン・フォスターやレム・コールハース等、著名な建築家の 設計によるオフィスビルや高層マンション、リバーサイドの遊歩道な どがマスタープランに組み込まれている。近代的な装いにすることで 人びとの求心力を高めようとした。
住居:5,100戸 賃貸面積:58,000 ㎡ オフィス:380,000 ㎡
レクリエーション/文化施設:50,000 ㎡ 商業施設:3,500 ㎡
マスタープランマスタープラン : 再開発エリア
計画全体図
出典:ロッテルダム市の HP デルフト工科大学のデータベース
Denmark
期間
Sydhaven development in CPH2025
2012~2025
規模
105 ha(1.05㎢ )
港湾タイプ
河型
計画内容 契機
主体
CO2 削減政策の一環
●コペンハーゲン市 ●港湾局
建物
機能
新築
( 新しく埋め立て )
●住居
●商業施設 ●オフィス
●エネルギー施設
Date : 2015/05/18 250m 500m
0
計画概要 Sydhaven 地区の再開発は、CO2 削減を最大目標に掲げたスカンジ
ナビア半島で最大規模の都市改革プロジェクト「CPH2025」の一部で
HAVNEHOLMEN TØMME RGRAVEN
あり、デンマークが掲げた CO2 削減計画を代表するものでもある。 この計画は建物だけでなく、新しいメトロ、化石燃料を使用しないバ
BELVEDERE KANALEN
ス、自転車利用率の高い町など交通機関やインフラまでをも含めた壮
ENGH AVE BRYGGE
KULTURP LADSEN
大な計画だ。
GRØNNINGEN
KANALTORVET
FREDERIKSHOLMS LØBET SYDH AVNEN
DEN G RØNNE KILE
.
2012 年 Sydhaven 地区の人口は 5,394 人だが完成予定の 2025 年の
推定人口は 15,776 人、推定新規雇用は 7,175 人。(2013 年見込み) Sydhaven 地 区 の 3 つ の エ リ ア(Enghave Brygge, Teglholmen,
TEGLHOLMEN TEGLVÆRKSH AVNEN
NOKKEN
Sluseholmen)が重点的に計画され、2012 年に発表された現行に近
いマスタープラン(住宅:商業=7 : 3)の一部が実現し、実施地は 企業が買い取り未完の計画地にも買い取り手がついている。
SLUSEHOLMEN 2
12
Copenhagen
計画
出典:Københavns Kommune Technical and Environmental Administration City of e-Archetect DK The Official Web Site
New York
計画 france USA
期間
battery park city
1962~now
規模
37ha(0.37 ㎢)
港湾タイプ
河型
計画内容 契機
コンテナ化による衰退
建物
バッテリー・
主体
パークシティ・ オーソリティ
●住居
機能
(BPCA)
0
Date : 2015/05/18 250m 500m
新築
(42%) (9%) ●公園 (30%) ●道路 (19%) ●商業地域
計画概要 マンハッタン島の南端部に位置するこの地区は、19 世紀以来ドッ ク地帯として機能してきたゾーンであるが、その後の輸送・交通手段 の変化とともに、港湾機能が遊休化したため 1966 年港湾ゾーンに埋 立地を加えた 24 時間活動都市をつくるアイデアを提唱した。1968 年
に 市 と 州 か ら な る「バ ッ テ リ ー・パ ー ク シ テ ィ・オ ー ソ リ テ ィ
(BPCA)」という公的機関を設置し、1969 年第一次マスタープランを 発表した。埋立工事自体は 1976 年に完成したが、1973 年に起きた
第一次オイルショックの影響と、既存市街地から独立している計画に
より、道路整備以降の計画が頓挫する。その後、BPCA に土地の権利 が移る。計画地の傍にある当時完成間近であったワールド・トレード・ センターから離れた位置に業務・商業地が計画されていたが、1979
年の第二次マスタープランでは隣り合うように配する等、既存市街地 との繋がりを意識した計画となっている。 1910年地図
1974年埋立時写真
計画敷地
1979年 マスタープラン
出典:EE&K Community HP 『アメリカの都市再開発』日端康雄 他 Architectural Record HP https://www.flickr.com/photos/wavz13/4084659026
計画
期間
規模
港湾タイプ
La riqualificazione del Porto Antico di Genova
1985~1992
Marseille
ユーロ メディテラネ
1995~now
311ha(3.11 ㎢ )
海型
Barcelona
Plan Especial de Reforma Interior (Barceloneta)
1967~2002
146 ha(1.46 ㎢ )
海型
Genova
Lisboa
Expo.98
23ha(0.23 ㎢ )
1990~1998
330 ha(3.30 ㎢ )
契機
海型
市 (51%) 商工会議所 (39%) PA(10%)
万博の開催
ユーロメディテラネ 再開発公社 港湾機能の衰退 民間 85% 国・市 15% 住民運動をきっかけ とする市街地改善 特別プラン(PERI) の策定
市
Expo 1998 の開催
Parque Expo 98 政府 95% 市 5%
海型
河型
港湾機能の衰退
市 カナリーワーフ 株式会社 民間開発会社
155 ha(1.55 ㎢ )
河型
コンテナ化 による衰退
市
2000~2013
172 ha(1.72 ㎢ )
河型
コンテナ化 船舶の大型化
1962 ~ now
313 ha(3.13 ㎢ )
河型
コンテナ化 による衰退
London
Canary Wharf Master Plan
Hamburg
Hafencity revival project
1997~2025
Antwerpen
HET EILANDJE
Amsterdam
Oostelijk Havengebied
1993~now
28.8ha(0.28 ㎢ )
コンテナ化 による衰退
民間企業
København
Sydhavnen development in CPH2025
2012~2025
105 ha(1.05 ㎢ )
河型
CO2 削減政策 の一環
港湾局
河型
コンテナ化 による衰退
公園 住居 文化施設 商業施設
新
新
新・リノベ
新 新 (新しく埋立)
新
Amsterdam
313 ha(3.13 ㎢ )
Marseille
311 ha(3.11 ㎢ )
Lisboa
Antwerpen
172 ha(1.72 ㎢ )
文化施設
London
Hamburg
155 ha(1.55 ㎢ )
文化施設
Barcelona
146 ha(1.46 ㎢ )
Rotterdam
125 ha(1.25 ㎢ )
Amsterdam
København
105 ha(1.05 ㎢ )
Rotterdam
NewYork
København NewYork
MIDDLE SMALL
Antwerpen
LARGE
330 ha(3.30 ㎢ )
Hamburg
住居 オフィス 娯楽施設 商業施設 住居 商業施設 オフィス エネルギー施設 住居 商業施設 公園 道路
比較項目
Lisboa
Barcelona
住居 オフィス 娯楽施設 商業施設
step2
計画規模ごとにグルーピング
Marseille
オフィス 商業施設 住居 文化施設 住居 オフィス 文化施設 商業施設
オフィス 商業施設 文化施設 教育施設
新
バッテリー・ パークシティ・ オーソリティ (BPCA)
step1
文化施設 娯楽施設 住居 公園
新
市
fig.29 各港湾都市の再開発内容マトリクス
Genova
新・リノベ
国
河型
37 ha(0.37 ㎢ )
商業施設 文化施設 住居
民間企業
125 ha(1.25 ㎢ )
1962~now
新・リノベ
市
1993 ~ now
Battery Park City
新・リノベ
市
Kop van Zuid
機能
( 序列順 )
文化施設 ホテル 住居 オフィスビル
アントワープ 港湾局
Rotterdam
NewYork
建物
主体
( 序列順 )
海型
文化施設
28.8 ha(0.28 ㎢ )
Genova
23 ha(0.23 ㎢ )
fig.30 各港湾都市における再開発のグルーピング
クス化した (fig.29)。このマトリクスを参照すれば分かるように、 ひとえに港湾都市の再開発と言えども規模から契機、開発主体、 機能などが全く異なることが分かる。 そこで、再開発内容を計画規模ごとに大まかにグルーピングし、 かつ東京ベイエリアの再開発事例と類似性を持つか否か検討する (fig.30)。参考として、お台場・有明の再開発を企図した臨海副都 心開発計画の計画面積は 442ha であることを念頭に入れておきた い。ここでいう東京ベイエリアの再開発は豊洲やお台場、芝浦地 区にみられる新築のオフィスや商業施設、タワーマンションに特 化した、一般的にみてイメージアビリティの高いと思われる再開 発とする。また、遠浅の海である東京港湾は埋立掘削が比較的容 易という点で、こと再開発の形式に限って言えば、河型の港湾都 市とより親和性があると言える。また、東京港湾地域には計画の 主要素として美術館や音楽ホールなどの文化施設を保有していな いことが挙げられる。以上より、東京港湾と比較する項目として、 海型 / 河型、文化施設あり / なし、リノヴェーション / 新築の3 点を選択肢とした。各項目において前者を東京ベイエリアに無い 要素としている。 これによると、最も該当数が少ないアムステルダムやロッテル ダム、ロンドン、コペンハーゲン、ニューヨークの再開発は東京 と類似性があると言える。一方で、マルセイユやジェノヴァは正 反対の再開発を行っている。また、リスボンやハンブルク、バル セロナも比較的、東京とは相対する再開発を行っていることが分
海型
文化施設
リノベーション
置くマルセイユのような港湾都市もあり、再開発の方針として参 リノベーション
リノベーション
海型
かる。従って、規模の大小と計画内容は必ずしも一致するとは言 えず、計画面積が大きくともより歴史的、文化的な側面に重点を 考にする意味があるのではないだろうか。 一方で、この比較項目の視点は用途に偏重しており、確かに人 間の行動に対して流動性をもたらす一要因ではあるものの、今一 つ空間的側面が欠けていると言わざるを得ない。そこで、これら の再開発地区がどのような親水空間を保有しているのか、詳細に 分析していく。
37 ha(0.37 ㎢ )
London
これらの再開発地区から比較対象になる事象を抽出し、マトリ
海型
文化施設
リノベーション
※日本=遠浅、オフィス、新築
56
1.4.2 親水空間の分析手法 まず、各港湾都市における親水空間を分析するための手段を明 示する。 親水空間を視覚的かつ定量的に分析する手法として、スペース・ シンタックス ( 以下、SS) 理論を応用する。これは 1970 年代、建 築学・都市計画学の名門であるロンドン大学 (UCL) バートレット 校において研究がはじまった理論で、その中心人物が Bill Hillier である (fig.31)。彼は住宅の間取りや都市の街路などを対象に、個々 の場所の特性を「繋がり方、関係性」という要素に着目して、数 fig.31 Bill Hillier 氏と主著『THE SOCIAL LOGIC OF SPACE』
学的に ( グラフ理論を用いて ) 分析する、という従来とは異なる 空間分析手法を提案した。 これによって、「場所」の機能や性質が 「周囲との関係」で決まることを明らかにし、場所のデザインが人 の空間認知やそこでの行動などを通じて、周囲に社会的な影響を 与えることを、様々な調査や分析によって示した、と言われてい [1]
る。 それをオープンスペースに限定して換言すると、「人間が行動可 能なオープンスペースの空間的・視覚的な連続性における定量的 分析である」と言える。
[1] スペース・シンタックス・ジャパン HP(http://www.spacesyntax-japan.com/)
57
次に、この SS 理論の中でも特に重要な2つの項目である、コ ンベックス・スペース ( 以下、CS) とアクシャル・ライン ( 以下、 AL) という概念について説明する (fig.32)。 CS とは、オープンスペースを細分化し、定量的に分析する手法 である。最大面積を持つ多角形を基準として、多角形を最小単位 に分割するもので、全ての内角が 180°未満となる凸型の多角形 に分割する。これによって細分化されたオープンスペースのマッ プを、コンベックス・マップという。 AL とは、なるべく少ない本数でコンベックス・マップ上のすべ
fig.32 コンベックス・スペースとアクシャル・ライン
てのコンベックス・スペースを貫くように、最も多くのコンベッ クス・スペースを貫くものから順に引いた線分である。これによっ て、コンベックス・マップ上に線分が引かれたマップを、アクシャ ル・マップという。 これらの概念を港湾都市における親水空間分析として使用する ためには、再定義する必要がある。 CS については、水際線を基準として、空間の性質が変化するご とに ( 具体的には人間がその空間を体験する際に何らかの質的変化を感じる箇所 に)
線を引く (fig33)。あくまで人間がその空間を経験する際に変
化を感じるか否か、ということを前提としているため、巨大な建 物間であまりに距離が空いている場所に小さな建物がある場合は 何もない開けた空間
fig.33 平面的な空間の変化
一方に建物がある
二方に建物がある
三方に建物がある
視界が開ける / 狭まる
何も無い空間とみなす、人間が入れない極細長い空間は除外する、 といった立体的な視点も考慮した上での恣意性を多少含んでいる。 しかし、「人間が体感する」ことを前提とする立場を取り続けな がら線引きするので、以上のことは許容できると考えられる。
58
以上の前提をもとに CS の線の引き方の例を示す (fig.34)。ここ で、時として、CS のもともとの定義である「内角がすべて 180° 未満となる凸型の多角形にする」ということを優先した場合、出 来上がる多角形の形状が歪になったり、空間認識と齟齬が生じて しまうことがある。それが、人間の体感する空間の質的変化とい う前提を損ねる場合においてはその前提を優先し、内角の一部が 180°以上の多角形が発生しても認めることとする。 water
water 次に AL の概念をもとに、CS のマップに色付けをする (fig.35)。
fig.34 CS の線の引き方
これは水際線側から見た時に視線が抜ける CS のみを色付けする こととし、水際線側から最も近い CS を Rank:1、そこから順に Rank:2,3,4 としている。これによってオープンスペースに親水空 間 ( 親水陸域 ) の概念を導入することが可能になるとともに、そ の親水空間の中でも序列化を行うことができる。ここで、Rank:4 までで終えている理由として、それ以上の空間の移り変りがある と水際線から遠すぎるケースが多いこと、Rank:4 までに親水空間 が途切れる場所が多いことが挙げられ、そのため Rank:5 以上を取 り扱わないことが妥当であると判断したことによる。
water Rank:1
Rank:3
water Rank:2
water
Rank:4
water
fig.35 親水空間の色付けの仕方
59
1.4.3 各港湾都市の親水空間比較 前述の CS と AL の概念を用いて作図、色付けした各港湾都市再 開発地区における親水空間図を、次頁以降にまとめた。見方を以 下に記載する。 留意点として、⑤で除外した領域についてであるが、これは親 水空間を考慮する上で第一に人間が立ち入ることが出来るオープ ンスペースであること、あるいはそのポテンシャルがある領域で あることを優先しており、必ずしも AL の概念である視線が抜け ることだけでは成立しない、ということを意味している。 図はすべて S=1:12,000 とし、北上とした。 現在進行中の再開発でかつマスタープランが公開されているも のに関しては、それをもとに建物や水際線を作図している。 それぞれの数値に使用されている記号は、断りの無いもの、途 中で補足されていないものは、形態的特性分析において使用した 意味と同義とする。新しく追加したもの、意味を変更したものを 以下に記載する。 S :対象とする計画面積 Sb:計画面積内における総建物面積 また、Sb の項目は左から総建物面積|建物数|平均建物面積、 CS の各 Rank の項目は左から総 CS 面積| CS 個数| CS の面積割 合|平均 CS 面積、とする。 また、最後に S=1:30,000、北上で各港湾都市の再開発地区にお ける親水空間図をまとめた。背面に 100m グリッドを併記してい るため、スケール感を参考にしていただきたい。
60
ジェノヴァ /Genova
S
:32.658[ha]
Lw
:6714.801[m]
Sb
: 8.843[ha]| 60 個|1473.9[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:12.277[ha]|118 個|68.4[%]|1040.5[ ㎡ ] Rank2: 2.624[ha]| 35 個|14.6[%]| 749.8[ ㎡ ] Rank3: 1.839[ha]| 33 個|10.2[%]| 557.3[ ㎡ ] Rank4: 1.209[ha]| 30 個| 6.7[%]| 403.1[ ㎡ ] SLW
:17.950[ha]
SLI
:14.707[ha]
Sw
:100.454[ha]
α
:0.550
β
:0.848
αβ :0.466 Lwʼ :3131.251[m]
61
マルセイユ /Marseille
S
:43.208[ha]
Lw
:4852.792[m]
Sb
:10.694[ha]| 19 個|5628.3[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:24.593[ha]|81 個|78.0[%]|3036.2[ ㎡ ] Rank2: 4.875[ha]|21 個|15.5[%]|2321.6[ ㎡ ] Rank3: 1.048[ha]|11 個| 3.3[%]| 953.0[ ㎡ ] Rank4: 1.010[ha]| 9 個| 3.2[%]|1122.6[ ㎡ ] SLW
:31.527[ha]
SLI
:11.681[ha]
Sw
:83.667[ha]
α
:0.730
β
:0.726
αβ :0.530 Lwʼ :2571.773[m] 62
バルセロナ /Barcelona
S
:111.955[ha]
Lw
:9948.905[m]
Sb
:24.750[ha]|219 個|1130.2[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:45.607[ha]|197 個|79.4[%]|2315.1[ ㎡ ] Rank2: 5.294[ha]| 73 個| 9.2[%]| 725.2[ ㎡ ] Rank3: 3.840[ha]| 66 個| 6.7[%]| 581.9[ ㎡ ] Rank4: 2.701[ha]| 39 個| 4.7[%]| 692.5[ ㎡ ] SLW
:57.442[ha]
SLI
:54.513[ha]
Sw
:347.871[ha]
α
:0.513
β
:0.858
αβ :0.440 Lwʼ :4381.149[m] 63
リスボン /Lisboa
S
:76.811[ha]
Lw
:6605.013[m]
Sb
:22.646[ha]|53 個|4272.8[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:16.347[ha]|71 個|47.6[%]|2302.5[ ㎡ ] Rank2: 4.900[ha]|25 個|14.3[%]|1959.8[ ㎡ ] Rank3: 4.942[ha]|25 個|14.4[%]|1976.9[ ㎡ ] Rank4: 8.166[ha]|36 個|23.8[%]|2268.4[ ㎡ ] SLW
:34.355[ha]
SLI
:42.455[ha]
Sw
:215.758[ha]
α
:0.447
β
:0.863
αβ :0.386 Lwʼ :2548.458[m] 64
ロンドン /London
S
:60.124[ha]
Lw
:6975.125[m]
Sb
:20.924[ha]|57 個|3670.9[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:12.823[ha]|234 個|44.4[%]| 548.0[ ㎡ ] Rank2: 6.274[ha]| 70 個|21.7[%]| 896.3[ ㎡ ] Rank3: 5.406[ha]| 53 個|18.7[%]|1020.0[ ㎡ ] Rank4: 4.408[ha]| 32 個|15.2[%]|1377.6[ ㎡ ] SLW
:28.912[ha]
SLI
:31.212[ha]
Sw
:57.967[ha]
α
:0.481
β
:0.667
αβ :0.321 Lwʼ :2237.929[m] 65
アムステルダム /Amsterdam
S
:158.508[ha]
Lw
:19211.829[m]
Sb
:46.833[ha]|251 個|1865.9[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:32.015[ha]|437 個|47.3[%]|732.6[ ㎡ ] Rank2:13.866[ha]|177 個|20.5[%]|783.4[ ㎡ ] Rank3:10.607[ha]|149 個|15.7[%]|711.9[ ㎡ ] Rank4:11.212[ha]|169 個|16.6[%]|663.4[ ㎡ ] SLW
:67.701[ha]
SLI
:90.808[ha]
Sw
:275.232[ha]
α
:0.427
β
:0.803
αβ :0.343 Lwʼ :6585.659[m] 66
ロッテルダム /Rotterdam
S
:74.895[ha]
Lw
:5826.511[m]
Sb
:25.719[ha]|126 個|2041.2[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:13.901[ha]|120 個|40.1[%]|1158.4[ ㎡ ] Rank2: 6.914[ha]| 55 個|19.9[%]|1257.1[ ㎡ ] Rank3: 6.459[ha]| 44 個|18.6[%]|1468.0[ ㎡ ] Rank4: 7.416[ha]| 68 個|21.4[%]|1090.5[ ㎡ ] SLW
:34.690[ha]
SLI
:40.205[ha]
Sw
:119.448[ha]
α
:0.463
β
:0.775
αβ :0.359 Lwʼ :2091.361[m] 67
アントウェルペン /Antwerpen
S
:154.101[ha]
Lw
:16669.381[m]
Sb
:51.056[ha]|141 個|3621.0[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:51.148[ha]|396 個|64.1[%]|1291.6[ ㎡ ] Rank2:11.429[ha]|127 個|14.3[%]| 899.9[ ㎡ ] Rank3: 7.813[ha]| 95 個| 9.8[%]| 822.4[ ㎡ ] Rank4: 9.455[ha]| 82 個|11.8[%]|1153.1[ ㎡ ] SLW
:79.845[ha]
SLI
:74.256[ha]
Sw
:195.584[ha]
α
:0.518
β
:0.710
αβ :0.368 Lwʼ :6133.178[m] 68
ハンブルク /Hamburg
S
:149.091[ha]
Lw
:20205.400[m]
Sb
:43.303[ha]|231 個|1874.6[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:33.959[ha]|445 個|56.1[%]|763.1[ ㎡ ] Rank2:11.358[ha]|177 個|18.8[%]|641.7[ ㎡ ] Rank3: 7.540[ha]|161 個|12.5[%]|468.3[ ㎡ ] Rank4: 7.684[ha]|127 個|12.7[%]|605.1[ ㎡ ] SLW
:60.541[ha]
SLI
:88.549[ha]
Sw
:237.613[ha]
α
:0.406
β
:0.797
αβ :0.324 Lwʼ :6538.818[m] 69
コペンハーゲン /Copenhagen
S
:114.644[ha]
Lw
:24363.586[m]
Sb
:30.161[ha]|562 個|536.7[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:31.964[ha]|657 個|62.8[%]|486.5[ ㎡ ] Rank2: 9.637[ha]|162 個|15.5[%]|594.9[ ㎡ ] Rank3: 8.813[ha]|114 個|10.9[%]|773.0[ ㎡ ] Rank4: 7.414[ha]|113 個|10.8[%]|656.1[ ㎡ ] SLW
:57.829[ha]
SLI
:56.815[ha]
Sw
:74.406[ha]
α
:0.504
β
:0.563
αβ :0.284 Lwʼ :6915.068[m] 70
ニューヨーク /New York
S
:66.312[ha]
Lw
:6232.472[m]
Sb
:13.438[ha]|58 個|2316.9[ ㎡ ]
【CS】 Rank1:22.801[ha]|79 個|54.0[%]|2886.3[ ㎡ ] Rank2: 7.248[ha]|34 個|17.2[%]|2131.9[ ㎡ ] Rank3: 6.818[ha]|31 個|16.1[%]|2199.3[ ㎡ ] Rank4: 5.372[ha]|33 個|12.7[%]|1628.0[ ㎡ ] SLW
: 42.240[ha]
SLI
: 24.072[ha]
Sw
:296.780[ha]
α
:0.637
β
:0.875
αβ :0.558 Lwʼ :3475.390[m] 71
Genova Amsterdam
Marseille
Lisboa Barcelona London
Rotterdam
Antwerpen
Copenhagen
Hamburg
New York
S=1:30,000 72
親水陸域係数α
以上の親水空間図と数値を用いて海外港湾都市における再開発
0.800
地区の親水空間を分析していく。
0.700
0.600
まず、親水陸域係数αを比較する (fig.36)。これによると、マル
0.500
セイユが抜きん出ており、次いでニューヨーク、ジェノヴァとなっ
0.400
ている。そこで、これらの再開発地区を見比べると、形態的な類
0.300
似性を見出すことが出来る。これらはどれも水際線に対して奥行
0.200
を持ち、かつ面積のある Rank:1 の CS を多数形成していること、
0.100
また計画面積に対する建物面積、建物個数が少ないことが挙げら
0.000
れる。同様の傾向はリスボンやロンドンにもみられるが、これら の再開発地区の親水陸域係数αの値は全体からすると平均以下で
fig.36 親水陸域係数αグラフ
ある ( 平均をとると 0.515)。この違いは建物の配置計画に大きく 依っていると言える。マルセイユは建物数が特に少なく、計画範 囲のほぼすべてが Rank:1 の親水空間となっている。ニューヨー クやジェノヴァは水際線から引いた位置に建物を配置することで、 Rank:1 の親水空間を確保しているとともに、建物の隣接距離も離 れているため、Rank:2 以降も面積を確保しつつ奥行ある親水空間 を形成している。一方、ロンドンは水際線間際に建物を配置して いるため、場所によっては陸域面積が形成されてしまっているこ と、計画面積に対して建物面積が大きいことが考えられる。また、 リスボンは水際線間際に建物を配置しているとともに、建物同士 の間隔が近く、奥行の浅い親水空間となってしまっている。 この Rank:1 の親水空間が確保された再開発地区であるマルセ イユやニューヨーク、ジェノヴァの特徴として、かつて港湾機能 を有しており且つその空間性を維持している、あるいは現在も港 湾機能を有している点がある。一方、ロンドンはかつて港湾機能 を有していたものの現在はそれを塗り替えるように再開発を行っ ているため、ポテンシャルを活かし切れていないと言える。また、 リスボンは対象地に港湾機能としてはマリーナ機能しか無く、歴 史的にみても新しいため、充分な親水空間を形成できていない。 従って、かつて港湾機能を有しており、かつそれを現在まで踏襲 した再開発計画を行っている地区ほど、親水陸域係数αが高いと 言える。 ただし、マルセイユは対象地の殆どが現在でもコンテナヤード としての港湾機能を有しており、不可侵領域となっていることは 留意されたい。
73
保有水域係数β 1.000
次に、保有水域係数βについて比較する (fig.37)。これによると、 ニューヨーク、リスボン、バルセロナ、ジェノヴァがほぼ同程度
0.900
で高い値を示している。これらのうち、ニューヨーク以外はすべ
0.800
て海型の港湾都市であり、そのため広大な水域を保有しているこ
0.700
とから当然の結果であると言えるが、ニューヨークのみは河型に
0.600
も関わらず、最も高い値を示している。これは、河型でありながら、
0.500 0.400
対岸までの距離が非常に遠く疑似的な海型の特徴を呈しているこ
0.300
と、防潮堤や地形など水域を阻害する要素が無いことが挙げられ
0.200
る。一方、海型にも関わらず保有水域係数βの値が低いのがマル
0.100
セイユである。それは水際線から防潮堤までの距離が近く、眺望
0.000
が阻害されているためである。 fig.37 保有水域係数βグラフ
また、河型の港湾都市は、河沿いに対して掘削することによっ て水際線を拡張しているアムステルダムやハンブルク、ロッテル ダムは比較的高い値を示しているが、アントウェルペンやロンド ン、コペンハーゲンのように河沿いに対して接する面積が狭く、 対象地の内部に水域を引き込んでいる形態の再開発地区は値が低 くなっている。従って、河型の特性である掘削や埋立のしやすさ に対してどのような開発手法を用いてきたかによって、保有水域 の値に影響を及ぼしていると言える。
親水係数αβ 0.600 0.500 0.400 0.300 0.200 0.100 0.000
最後に、親水係数αβについて比較する (fig.38)。これによると、 上からニューヨーク、マルセイユ、ジェノヴァと親水陸域係数α の値が高い再開発地区が上位を占めている。さらにその下にはバ ルセロナ、リスボンと、上位 5 港湾都市の再開発地区のうちニュー ヨークを除いた 4 地区が海型の港湾都市であることが分かる。ま た、前述のようにニューヨークが疑似的な海型港湾都市のごとき 水域を保有していることを考慮すると、海型の港湾都市の方が、 再開発地区における親水空間形成において優勢である、という仮 説が立てられる。そこで、次に親水空間の具体的な分析を行って いく。
fig.38 親水係数αβグラフ
74
まず各 Rank における CS の割合を検討する (fig.39)。これによっ
各RankにおけるCSの割合[%]
て、各再開発地区がどの程度奥行ある親水空間を形成しているか
90.0
を判断する指標となる。換言すれば、Rank:1 の割合が大きいほど
80.0
奥行が無く一様な親水空間である傾向にあると言える。 このグラフをみると、特にバルセロナ、マルセイユが Rank:1 の
70.0
割合が多く、80% 近い。次点のジェノヴァも含め、上位 3 港湾都 市の再開発地区が海型であるのは、前述の親水係数αβの値と相
60.0
関性があると考えられる。それらの再開発地区の親水空間の構成
50.0
を見てみると、親水陸域面積を拡大している要因であり海型の特 徴である、水際線から懐の深い親水空間は、須らく Rank:1 であ
40.0
る。一方、その背後には殆ど奥行が残されておらず、Rank:2 以降
30.0
20.0
10.0
0.0
Rank:1
Rank:2
Rank:3
Rank:4
Genova
Marseille
Barcelona
Lisboa
London
Rotterdam
Antwerpen
Hamburg
Copenhagen
New York
Amsterdam
CS割合
Rank:1
Rank:2
Rank:3
Rank:4
Genova
68.4
14.6
10.2
6.7
Marseille
78.0
15.5
3.3
3.2
Barcelona
79.4
9.2
6.7
4.7
Lisboa
47.6
14.3
14.4
23.8
London
44.4
21.7
18.7
15.2
Amsterdam
47.3
20.5
15.7
16.6
Rotterdam
40.1
19.9
18.6
21.4
Antwerpen
64.1
14.3
9.8
11.8
Hamburg
56.4
18.7
12.5
12.4
Copenhagen
62.8
15.5
10.9
10.8
New York
54.0
17.2
16.1
12.7
親水空間としてはより一様である、と言える。その要因として、ジェ ノヴァとマルセイユは幹線道路が水際線に対し目前まで迫ってい ること、バルセロナは後背地に住宅密集地が広がっており、それ が親水空間に対する境界となっていることが挙げられる。しかし ながら、海型の港湾都市でもリスボンの再開発地区は奥行のある 親水空間を形成していることが分かる。これは後述する河型の再 開発地区とより類似性があると言える。
fig.39 各 Rank における CS の割合グラフ
次に、河型の港湾都市における再開発地区の CS 割合をみてみる と、アントウェルペンやコペンハーゲンのような掘削によって水
各RankにおけるCSの平均面積[㎡] 3500
域を引き込んでいるタイプの再開発地区は、比較的海型と類似性 が強く、Rank:1 が高く、奥行が浅い傾向にある。これは掘削によっ
3000
て生じた陸域面積が小さいために奥行が無いことのほか、前者は 建物面積が大きく Rank:2 以降を遮ってしまっていること、後者は
2500
建物数が極めて多く高密で小さいため、Rank:2 以降が入り込む余 地が限られていることが挙げられる。
2000
また、ハンブルクとニューヨークは値こそ類似性があるものの、 その CS の質は大きくことなる。それは平均面積をみれば明らかで
1500
ある (fig.40)。ハンブルクの CS の平均面積はニューヨークのそれ CS平均面積[㎡]
1000
500
0
が極めて少ない割合となっている。従って、これらの再開発地区は、
Rank:1
Rank:2
Rank:3
Genova
Marseille
Barcelona
Lisboa
London
Rotterdam
Antwerpen
Hamburg
Copenhagen
New York
Rank:1
Rank:2
Rank:3
Rank:4
Genova
1040
750
557
403
Marseille
3036
2322
953
1123
Barcelona
2315
725
582
692
Lisboa
2302
1960
1977
2268
London
548
896
1020
1378
Amsterdam
733
783
712
663
Rotterdam
1158
1257
1468
1091
Antwerpen
1292
900
822
1153
Rank:4
Hamburg
762
634
480
611
Amsterdam
Copenhagen
487
595
773
656
2886
2132
2199
1628
New York
の 1/3 ~ 1/4 程度であり、大きさだけで言えばニューヨークは海 型の再開発地区の CS とより類似性がある。この海型の再開発地区 の CS の大きさはヒューマンスケールを大きく逸脱しており、多少 なりとも人びとに不安感を与えかねない。しかし、後背地の幹線 道路まで距離があり、建物も低密であるために、海型港湾都市の 再開発地区にみられる奥行の浅さが解消されており、海型よりも 多様な親水空間となっている。同様のことがリスボンにも言える。
fig.40 各 Rank における CS の平均面積グラフ 75
以上より、河型の再開発地区は水際線沿いに対してあまり奥行は取れ ておらず Rank:1 の数、大きさ共に海型と比較して低い値を示している ものの、一方で海型より親水空間を引き込んでいる傾向にあり、多様な 親水空間を形成していることが分かる。 従って、親水係数αβの値が高い海型港湾都市の再開発地区は、多く の親水空間を有しているものの、それらの大半が Rank:1 のヒューマン スケールを超えた巨大な CS となっていることが分かる。その点で、リ スボンの親水空間は多様性の点で海型の他の港湾都市より優れていると 言える。一方で、河型の再開発地区はニューヨークを除いて、海型と比 較してよりヒューマンスケールな親水空間を形成しており、かつ奥行が あるため多様性がある。それゆえ、親水係数αβの値が高いことが直接、 有効な親水空間を形成していることには直結しないことが分かる。それ を判断するためには CS の割合や面積、建物との関係性が重要である。 そこで、河型港湾都市の再開発地区の方が CS の構成において多様性 を有しているという結論であるが、親水係数αβにおいて海型港湾都市 の再開発地区の方が親水空間形成において優勢であるという仮説を踏ま え、この双方を同時に検討する必要がある。海型港湾都市の中で親水係 数αβの値が高く、かつ CS の割合、大きさといった観点でバランスが 良いのがジェノヴァである。その他の海型の再開発地区は須らく巨大な CS を形成しており且つリスボンを除けば一様な親水空間を形成してし まっている。一方、河型の再開発地区はもともと親水係数αβの値が海 型に比して劣っているため、そのぶん CS の質が問われる。中でもアン トウェルペンが、親水係数αβの値が河型港湾都市の中でも比較的上位 であり、かつ CS の割合や大きさ共にジェノヴァと類似性がある。ただ し建物面積が大きいため、ジェノヴァと比してヒューマンスケールを逸 脱している印象を受けるだろう。その点、ロッテルダムやアムステルダ ムの方が、CS の割合、大きさ、建物面積においてバランスが良いと考 えられる。 しかしながら、どれ一つとして、親水係数αβと CS の関係性におい て優れていると明言できる港湾都市は無く、その点でどれもまだ改善の 余地があるとも言える。親水空間の計画において、これらの分析を批評 的に計画に取り入れることが肝要である。
76
参考文献 ・ 『海洋帝国興隆史 ヨーロッパ・海・近代世界システム』玉木俊明著、講談社選書 メチエ、2014 年 ・『港湾都市(港湾研究シリーズ)』北見俊郎著、成山堂書店、1993 年 ・ 『都市の水辺と人間行動―都市生態学的視点による親水行動論―』畔柳昭雄・渡邊 秀俊著、共立出版株式会社、1999 年 ・『都市形態解析手法の適用~佐賀市兵庫地区における区画整理事業を対象として ~』2008 年度、猪八重拓郎、外尾一則、鶴崎達也、佐賀大学 ・『港湾都市と居住:水辺空間の拡張化』平岡なつき、2013 年度東京大学大学院修 士論文
77
2.0.0 東京ベイエリアにおける島別特性分析 2.1.0 日本における港湾都市の位置づけ 2.1.1 対象港湾都市の選定
2.1.2 再開発および都市博覧会の歴史 2.1.3 1995 年以後のベイエリア
2.2.0 東京ベイエリアにおける時系列的島分析 2.2.1 埋立の変遷
2.2.2 用途転換性について 2.3.0 島別特性分析
2.3.1 島別データシート 2.3.2 用途分布 2.3.3 親水空間 2.3.4 不可侵領域 2.3.5 高層建築物 2.3.6 交通インフラ 2.3.7 歴史的変遷 2.3.8 東京ベイエリアの固有性
78
2.1.0 日本における港湾都市の位置づけ 前章では海外港湾都市の形態的特性分析および再開発地区の親 水空間分析を行った。それらの多くは、中世より歴史を築き上げ たうえで時代の流れとともに着実に開発 / 再開発を実施してきて いる。一方で、東京港は 1941 年の開港から未だ 70 年余りしか経 過しておらず、世界の諸港湾都市と比して圧倒的に歴史的蓄積が 浅いと言わざるを得ない。尚且つ、その短期間のうちに幾度とな く社会情勢の変化や産業転換に見舞われたことによる用途転換性 の高さが特徴的である。 そこで、そのような現象が発生するに至った、日本における港 湾都市の位置づけを明らかにすることが、日本における港湾都市 の形態的 / 空間的特性を相対化する以上に有用であると考える。 このような観点から、本章では特に、高度経済成長期から実施さ れ始める港湾都市の再開発に焦点を当てて論じていく。 もちろん、海外の諸港湾都市と比しても、日本の港湾都市の中 には、堺や博多のような中世の自治都市に代表されるように、そ れ自体では長い歴史を有しているものもある。しかしながら、こ と再開発という点においては、近年では東京の運河ルネサンス計 画や大阪の道頓堀、北九州の紫川といった河川沿いのウォーター フロント開発が日本各地で実施されてはいるものの、都市計画レ ベルで大々的に計画を行っている事例が少なく、尚且つ必ずしも 親水空間の形成において有効な手法を採っていない、あるいは消 費活動を促進するための付加価値として「水」が利用されている ものが目立つ現状にあり、改善を要する。 以降の節では、近代以降、日本の港湾都市がどのような位置づ けにおいて開発されてきたのか、そして今後、東京ベイエリアを どのように捉えることが可能か明らかにしていく。
79
2.1.1 対象港湾都市の選定 近代以降の日本における港湾都市の位置づけを明確にするため に、対象として以下の4港湾都市を選定した。 ・神戸ポートアイランド / 兵庫県 ・シーサイドももち / 福岡県 ・みなとみらい 21/ 神奈川県 ・臨海副都心 / 東京都 日本における埋立によって形成された近代港湾都市の起源は神 戸ポートアイランドであると言っても過言ではない。神戸ポート アイランドとシーサイドももちについては都市計画家である水谷 穎介が直接介入、指揮している点が特徴的であるが、みなとみら い 21 については都市計画家・浅田孝が構想した横浜 6 大事業を 根底に、後々の知事らが再開発を主導している点で異なる。また、 臨海副都心については明確な都市計画家の姿が見えないことから、 これら4つの港湾都市再開発と都市計画家の存在あるいはその関 わり方が、後世の盛衰に影響する可能性があることが示唆される。 また、これらの港湾都市の共通点として、都市博覧会の開催地あ るいは対象地となったことが挙げられる。 以上のことから、ここでは再開発地区の親水空間を分析すると ともに、日本における港湾都市再開発の変遷と歴史的意義 / 位置 づけを明らかにすることが重要である。 次に、選定した4港湾都市についての概要を記載する。
80
ポートアイランド
計画
神戸港港湾計画
期間
1966~1981
規模 436 ha(4.36 ㎢ )
1987~2005
390 ha(3.90 ㎢ )
( 第一期 )
港湾タイプ
( 第一期 )
( 第二期 )
海型
( 第二期 )
計画内容 ●港湾施設
神戸経済の空洞化と人口
●住居
契機 増大、およびコンテナ化
●文化施設 ●商業施設
への都市機能的対応
機能 主体
0
Date : 2015/07/03 500m 1000m
自治体 国 神戸市 神戸港埠頭株式会社
●研究・教育施設
( 第一期 )
●港湾施設
●商業施設 ●工業施設 ●医療施設
●研究・教育施設
( 第二期 )
計画概要 高度成長期の都市化の圧力への対応の 1 つが本計画であった。市街 地の拡張と産業用地の確保を目標に丘陵地を切り崩し、並びに発生し た土砂を臨海部に埋め立てた。この臨海部に埋め立てた土地が神戸
ポートアイランド第一期地区で、神戸市初の人工島であり当時世界最 大の人工島でもあった。第一期地区完成時に地方博ブームの先駆けと なる神戸ポートアイランド博覧会を開催し成功を収める。
90 年代に入ると更なるコンテナ船の大型化に対応するため、神戸
ポートアイランド第二期地区を計画。現在は、「神戸医療産業都市」 の中核地として、研究機関や大学、医療関連企業、高度専門病院群の 集積や、民間企業の集積も進み、国内・海外を含め現在は 292 の医 療関連企業・団体が進出しており、今後もさらに増加する見込みであ る。
開発資本:5300 億円 ( 埋立造成費 2300 億円 + 上物建設費 3000 億円 ) 第一期地区
1923年
1923年
出典:神戸市 HP 『神戸市の目指した 海上都市のアイデンティティ』 神戸市開発局 大塚映二
シーサイドももち
計画
土地利用計画
期間
1978~1994 ( 着工
規模
138 ha(1.38 ㎢ )
港湾タイプ
海型
計画内容
契機
住宅不足による無秩序 な市街地開発
●住居
機能
●オフィス ●教育施設 ●商業施設
主体
a
0
Date : 2015/07/03 250m 500m
福岡市
計画概要 1970 年代、福岡市は住宅不足が深刻化し、それに端を発した無秩 序な市街地開発が進行した。福岡市は首都圏の拡大を抑制すべく、大 規模な土地の造成が可能なウォーターフロントの開発を開始した。
しかし、1975 年頃から民間住宅業者との競争が激化し始め、公共 機関による住宅が不人気となった。団地型の住宅を建設しても入居者 が見込めないことが明白になり、使い道のない広大な土地が残されて しまった。
1990 年代になると世界の各都市でウォーターフロントの開発が活
性化する動きが見られ、更に 1990 年にアジア太平洋博覧会が開催さ れ、広大な土地は博覧会場に利用された。当初の計画には無かったも
のが次々と建設されることとなった。開発方針は大きく変化していき、 当初計画されていた住宅地に特化した空間としての性格は失ったもの の、住宅地に新たな付加価値を与える効果をもたらした。
出典:『福岡市シーサイドももち地区のウォーターフロント開発とその変質』 『住宅地が都市を作る ~ケーススタディ シーサイドももち~』水谷頴介 『住宅特集 1989.6』 UR 都市機構シーサイドももち http://www.ur-net.go.jp/kyusyu/vidanchi/momochi/
みなとみらい21
計画
みなとみらい 21
期間
1979~ ( 着工 1981)
規模
186 ha(1.86 ㎢ )
港湾タイプ
海型
計画内容 震災や空襲、米軍の占領と
契機 接収、人口急増による
●商業施設
スプロール現象への対応
機能 主体
0
Date : 2015/07/03 250m 500m
横浜市 国 独立行政法人 UR 機構
●オフィスビル ●文化施設
●レジャー施設 ●緑地・公園
計画概要 みなとみらい 21 事業は横浜市が 1965 年に発表した六大事業の一 つであり、かつ中核プロジェクトとして 1983 年に着手された。三菱 重工業㈱横浜造船所の移転計画に伴い、当時、横浜駅周辺と関内・伊
勢佐木町周辺で二分されていた横浜都心部の一体化を目指し、就業人
口 19 万人・居住人口 1 万人を目標とした開発である。これにより昼 間人口や就業人口を増やし市内経済を活性化させることで、地域社会 の成長と東京都心の負荷を軽減することを目指した。
コンベンション機能を備えた国際交流拠点として機能すること、高
度情報産業分野の企業の中枢管理部門や研究開発部門などを集積し、 経済・文化など様々な情報を創造・発信する都市として機能すること などを目的としている。
現在の就業人口は 98000 人、居住人口は 8000 人であり、どちらも 増加傾向にある。
出典:『YOKOHAMA MINATOMIRAI 21 Information vol.85 2014』 横浜市都市整備局 『港都横浜の 150 年』 小林 照夫
臨海副都心
計画
臨海副都心開発計画
期間
1982~( 着工 1989)
規模
442ha(4.42 ㎢ )
港湾タイプ
海型
計画内容
契機
都市機能の一極集中の回避 多極分散の都市構造の構築
●文化施設
機能 主体
0
Date : 2015/07/03 500m 1000m
東京都 国 独立行政法人 UR 機構
●オフィスビル ●商業施設
●教育・研究施設 ●緑地・公園
計画概要 臨海副都心は東京港の中心部に位置し、台場・青海・有明北・有明
南地区の 4 つのエリアから成る約 442ha の地域である。この地域は
有明北地区
台場地区
東京の第 7 番目の副都心として 1989 年に開発が始まる。商業・業務、 居住、文化機能などの複合市街地として都市環境を形成することを目
的とした。建設期間は 3 期に分かれており、第 1 期 (1989~1995) は レインボーブリッジ、ゆりかもめ等のインフラ整備、テレコムセンター 等の文化施設、第 2 期 (1996~2005) は小中学校や幼稚園、オフィスビ
ル、商 業 施 設、緑 地・公 園、東 京 国 際 展 示 場 等 の 文 化 施 設、第 3 期 (2006~2014) は小・中・高等学校や大学、研究施設が建設された。2015 年より新しく第 4 期に突入する。
オリンピックの開催に向けて 2020 年を目標に、大型クルーズ船が停 青海地区
泊できる新客船ターミナルの整備計画やカジノ施設誘致の動向があ
有明南地区
る。
出典:東京都港湾局 UR 都市機構 「有明北地区」
全体用途図
2.1.2 再開発および都市博覧会の歴史 1981 神戸ポートアイランド博覧会 ( ポートピアʼ 81)
1989 アジア太平洋博覧会 ( よかトピア )
1989 横浜博覧会 (YESʼ 89)
1996 世界都市博覧会 ( 都市博 )
以上の4つの再開発計画が実施された時期について、大別する と 1970 年~ 1995 年を日本における「港湾都市再開発期」である と言えよう。さらに、1981 年~ 1995 年にかけては港湾都市にお ける「都市博覧会期」とも言える (fig.1)。これらの期間において、 港湾都市は新たな都市の可能性であり、都心で不足する都市機能 を拡大するための適地であり、行政が自身の管轄する地域を宣伝 する手段として有効な方法とされていた。しかしながら、その潮 流は 1996 年に予定されていた臨海副都心における世界都市博覧会 構想を、前年に東京都知事に就任した青島幸男が中止したことに よって途絶えることとなった。それは財政難やバブル崩壊以後の
【神戸ポートアイランド】
【シーサイドももち】
【みなとみらい 21】
【臨海副都心】
兵庫県神戸市中央区港島中町
福岡県福岡市早良区百道浜
神奈川県横浜市西区みなとみらい
東京都江東区有明
第一期:1966 ~ 1981
期間:1978 ~ 1994
第一期:1989 ~ 1995
第一期:1989 ~ 1995
オフィス機能拡大が危ぶまれていたこと、地価・賃料上昇による 移転ハードルの高さなど、港湾都市再開発で用いてきた近代的手 法が招いた複合的要因の当然の帰結であった。 これによって、1995 年を境に、港湾都市における行政の終焉を 迎えることとなる。
fig.1 日本港湾都市における再開発と都市博覧会の歴史
85
2.1.3 1995 年以後のベイエリア その後、港湾都市に対して、行政に代わって流入してきたのが 民間の巨大資本である。その最たる例が芝浦アイランドや佃の大 川端リバーシティ 21 といった再開発地域に顕著なタワーマンショ ン (fig.2,3) と、ダイバーシティ東京やららぽーと豊洲を筆頭とす る大規模商業施設である (fig.4,5)。東京ベイエリアを想起した際 に最もイメージアビリティが高いのはこれらの再開発地域である と言っても過言ではないだろう。 これらの民間資本による再開発が行われる土地には共通点があ る。それらは当初、宅地造成を目的として埋立された土地である。 それが戦前~戦中にかけて軍事拠点や物流拠点として開発あるい fig.3 大川端リバーシティ 21
fig.2 芝浦アイランド
は倉庫街となるか、あるいは高度経済成長期にエネルギー用地と して再開発された。それらが 1970 年代後半に生じる産業転換とコ ンテナリゼーションの二重のあおりを受けて遊休化し、現状の姿 へ変化を始めたのである。そして、今後これらの地域はアジアヘッ ドクォーター特区に指定されていること、東京オリンピック 2020 のための重要な土地となっていることから、資本投下の勢いは止 まらないであろう。 1970 年まで、日本において、港湾都市は内陸部で続く開発によっ て不足した都市機能の拡張を主目的として開発 / 再開発が行われ ていた。それが 1970 年~ 1995 年の間では、もちろん不足してい る都市機能の拡張という目的はあったものの、主に行政主導によ る投資の対象として、あるいは都市博覧会という都市 / 国を宣伝 するための好適地として開発されることとなった。しかしながら、 その潮流は 1995 年の臨海副都心で切断され、もはや都市機能の拡 張という目的も失われ、巨大資本が流入する内陸部の焼き増しと
fig.5 ららぽーと豊洲
fig.4 ダイバーシティ東京
しての再開発ばかりが行われることとなった。 以上の流れを 25 年単位で図式化する (fig.6)。日本における港湾
1970 都市
1995 国家
都市の最たる特徴の一つが、このドラスティックに変化する開発
2020 資本
都市
目的であり、それに伴う用途転換であろう。では、港湾都市は次 に何を目的に開発されるべきだろうか。その問いが成立するので あれば、それは都市機能である、と提言したい。しかし、それは もはや都市機能の拡張ではない。その意義は 1995 年の時点で失効
fig.6 港湾都市における開発目的の変遷
している。都市機能の拡張ではなく、行政 ( 国 ) のためでも資本 のためでもない、都市のための開発。それは都市活動を行う人々 を第一義に考えたものである。そのための適地として港湾都市を 考えるべきである。 86
2.2.0 東京ベイエリアにおける時系列的島分析 これまでの分析を踏まえて、それを東京にフィードバックする ためには、それぞれの分析と同等かそれ以上に東京ベイエリアの 開発について詳細に分析する必要がある。そこで重要となるのが 時系列的な視点である。本論においては、近代的な開発が行われ るようになる分水嶺として明治時代を設定し、明治以降に埋め立 てられた東京ベイエリアにおける水域に囲まれた埋立地 ( 以降、 これを島と呼ぶ ) を対象として、時系列的に分析することとする。
87
2.2.1 埋立の変遷 1 東京ベイエリアにおける時系列的変遷を追うために埋立が竣工
18
2
9
3
10
11
した順に対象とする島をナンバリングしたのが左図である (fig.7)。
24
さらにこれを開発期間とともに図示する (fig.8)。複数回開発し ている島については、最後の開発以前のものを黒線で図示してお
17 20
4
16
り、線分の両端の○が開発の着工年と竣工年を表している。この
27
25
6 5 15 7 8
表を見て分かる通り、明治初期の埋立計画によって形成された島
19
と、昭和中期に計画された島との間では、竣工までの期間が大き
28
く異なることがわかる。それを大きさと照合すればわかるように (fig.9,10)、年代を追うごとに島の大きさが拡大していっている。
34 13
これは技術的な発展に起因するが、埋立目的となる用途が変化し
21
ていることも大きい。また、勝島と平和島は、現在埋立によって
36
12
内陸部と接続しているが、埋立当初は島を形成していたため、島
26 32
として取り扱うこととする。 まず、各島の埋立造成が行われる契機となった事業について整 理しておく。
30
□明治・大正期の埋立 みおさらい
22
31
23
「東京湾 澪 浚 工事」(1883~1896)
37
33
14
29
35
東京湾の澪筋が隅田川から流出する泥土によって埋まって浅く 1. 佃
21. 品川埠頭
2. 月島
22. 平和島
3. 勝どき
23. 昭和島
4. 日の出
24. 潮見
5. 芝浦2
25. 辰巳
6. 芝浦3
26. フェリー埠頭
7. 芝浦4
27. 新木場1
8. 芝浦アイランド
28. 新木場2
9. 塩浜1
29. 京浜島
10. 枝川1
30. 中央防波堤1
11. 枝川2
31. 城南島
12. 天王洲
32. お台場
13. 港南
33. 大井
14. 勝島
34. 有明
15. 芝浦埠頭
35. 羽田空港
16. 豊洲
36. 若洲
17. 豊海
37. 中央防波堤2
18. 塩浜2 19. 東雲 20. 晴海
なってしまい、都市発展の上で阻害要因となっていたことから、 澪浚によってこれを深くし、船舶の入港を可能にすることを目的 とした。この工事によって生じた浚渫土によって佃島や隣接する 月島、勝どきが埋め立てられた。 「隅田川口改良第1期工事」(1906~1913) 東京湾澪浚工事に引き続いて行われた工事で、隅田川下流に架 設されている永代橋より下流を浚渫し、台場外まで総延長 9,550m、 幅員 91~127m を掘削して航路を確保した。この工事によって生じ た浚渫土によって豊海の一部、日の出が埋め立てられる。 「隅田川改良第2期工事」(1911~1920) 第1期工事に引き続き、船舶の停泊荷役に利便を図るとともに、 明石町地先から第2台場までの総延長 4,500m、幅員 182~218m、 水深 3.6m に拡張した。この工事によって生じた浚渫土によって、 芝浦 2~4、芝浦アイランド、芝浦埠頭の一部が埋め立てられる。
fig.7 東京ベイエリアにおける島
88
「隅田川口改良第3期工事」(1922~1935)
月島 勝どき
第2台場と第5台場の間の航路を沖合水深 6.7m の等深線まで
日の出 芝浦 2 芝浦 3
5,260m、幅員 145m、水深 6.7m を保持し、航路入口に灯標を設置、
芝浦 4 芝浦アイランド
船舶の安全を図った。当初は工期5か年の事業だったが、1923 年
塩浜 1 枝川 1
9 月 1 日の関東大震災により、事業を一時中止した。震災後、港
枝川 2 天王洲
内に出入りする船舶が増加したため、工期を延長することとなっ
港南 勝島
た。この工事によって、芝浦埠頭・晴海・豊洲・東雲・辰巳のそ
芝浦埠頭 豊洲 豊海
れぞれ一部分が埋め立てられる。
塩浜 2 東雲
「枝川改良工事」(1910~1924)
晴海 品川埠頭
東京市の市内河川改良工事を目的とした事業で、浚渫土によっ
平和島 昭和島
て塩浜1、塩浜2の一部、枝川1、枝川2、豊洲の一部が埋め立
潮見 辰巳
てられる。潮見は当時、廃棄物処分場として利用されたため未竣
フェリー埠頭 新木場 1 新木場 2
工に終ったが、後の「東京港改訂港湾計画」に引き継がれて 1967
京浜島 中央防波堤 1
年に竣工した。
城南島 お台場
「目黒川改良工事」(1925~1931)
大井 有明 羽田空港 若洲
1895
1900
1905
1910
1915
1920
1925
1930
1935
1940
1945
1950
1955
1960
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
fig.8 島別開発期間表
東京府は武蔵野台地東部を流れる目黒川の改良工事を行った。 その浚渫土砂処分場として天王洲や東品川3・4・5丁目が埋め 立てられる。 □昭和初期の埋立 「東京港修築事業計画」(1931~1945) 隅 田 川 口 改 良 第 3 期 工 事 に よ る 航 路 泊 地 の 拡 張 に 伴 い、
1. 佃
2. 月島
3. 勝どき
4. 日の出
5. 芝浦2
6. 芝浦3
7. 芝浦4
8. 芝浦アイランド
9. 塩浜1
2,000~3,000 トン級船舶の入港も可能となったが、依然として港 湾設備が不充分であったとして、本事業が計画される。6,000 トン
10. 枝川1
11. 枝川2
12. 天王洲
13. 港南
14. 勝島
級以下の船舶 80 隻の同時停泊を可能とし、年間 750 万トンの貨物
15. 芝浦埠頭 16. 豊洲
取扱いを目標とするもので、竹芝・晴海・豊洲などの大型船埠頭 および芝浦・月島・豊洲などの小型船埠頭の整備を主目的とした。
17. 豊海
18. 塩浜2
19. 東雲
20. 晴海
21. 品川埠頭
22. 平和島
23. 昭和島
それによって、芝浦艀溜背面、豊洲物揚場背面、月島物揚場背面、 芝浦埠頭・東雲・有明の一部が用地造成、埋立された。 しかしながら、第二次世界大戦の影響を受けて事業が打ち切ら
24. 潮見
25. 辰巳
26. フェリー埠頭
27. 新木場1
28. 新木場2
29. 京浜島
30. 中央防波堤1
れ、未竣工埋立地は戦後の計画に引き継がれることとなった。 「越中島駅敷地造成事業計画」(1938~1945) 豊洲・晴海方面と小名木川駅間を結ぶ臨港鉄道を敷設するため に、その中間に越中島駅を設ける目的で、同駅の敷地及び鉄道用 地を造成するもので、鉄道院と東京市との契約により着手された。
31. 城南島
32. お台場
fig.9 竣工順に並べた島
33. 大井
34. 有明
35. 羽田空港
36. 若洲
37. 中央防波堤2
しかしながら、戦時体制のため 1945 年に工事が打ち切られたが、 戦後、港湾計画事業に組み入れられて 1965 年に竣工する。
89
「京浜運河開削工事及び埋立地造成事業計画」(1939~1949) 多摩川を挟み、東京府・神奈川県の臨海部に一大臨海工業地帯 を創出する目的で、広大な埋立地を造成し、これに臨港鉄道及び 25m の幹線道路を敷設し、更に埋立地の外側に 1 万トン級船舶の 航行する幅員 700m、水深 9m の航路を設け、内側に幅員 200m、 水深 3.5m の艀航路を設けようとするものだった。 東京府側では、府が直接実施することとし、1938 年に漁業権を 買収補償したうえで、1939 年 1 月、京浜第1区から同第9区埋立 地まで総面積 776 万 429 ㎡の埋立免許を得て、ポンプ式浚渫船な どを使用して工事を進めた。しかし、戦時体制による資材不足な どにより勝島の一部を完成、昭和島の護岸工事に着手したのみで 打ち切りとなった。 □戦後の埋立 「東京港応急整備工事」(1946~1948) 「東京港修築5ヶ年計画」(1949~1953) 「東京港修築2次5ヶ年計画」(1954~1959) 東京港は 1941 年 5 月に開港が実現したが、半年後には戦時体制 に組み入れられ、軍需物資の輸送基地と化し、各埋立地に陸海軍 の防空陣地が設けられ、更に資材統制により、港湾の維持工事す ら殆ど実現不能となった。戦後、東京港は、戦災、航路泊地の埋 没、沈船などにより港湾機能が低下したのみでなく、芝浦・日の出・ 晴海地区などを GHQ に接収され、食糧、石炭、鉄鋼などの都民 生活の維持、戦災復旧、経済再建のための物資も、すべて沖がか りの本船から艀荷役によって搬入される状況であった。 このため、上記の3つの計画が策定され、埋立造成、拡張工事 が行われた。それによって、晴海、品川埠頭、豊洲の一部、東雲 が埋め立て、計画される。 「東京港港湾計画」(1956~1961) 1950 年に「港湾法」が制定され、東京港でも初めての港湾計画 を策定することとなった。港湾整備にあたり、埋立地の造成が必 要となり、この計画では品川埠頭、大井埠頭などの埋立が予定さ れていたが、この期間に着手したのは品川埠頭のみで、後は後述 する東京港改訂港湾計画に引き継いで造成した。 「東京港改訂港湾計画」(1961~1970) 1950 年代中頃からの高度経済成長期とそれに伴う都市問題の深 刻化に対応するため、以下の2点を目指した。
90
①都市計画的観点からみた巨大都市東京と東京港との有機的結合 の確立 ②東京都における物資供給態勢の近代化及び合理化 第二次世界大戦による戦時体制によって中断していた計画を引 き継ぎつつ、新たな埋立計画を行ったが、漁業権問題によって殆 ど工事に着手できず、実際の埋立工事は東京港第2次改訂港湾計 画以降になった。この計画によって、塩浜2、潮見、辰巳、晴海 小型船埠頭が埋立造成される。 「東京港第2次改訂港湾計画」(1966~1975) この計画では、以下の3点を目指した。 ①東京港を中心とする地域経済における物流の中心的機能として、 総合的性格を有する現代的都市港湾の建設 ②東京港において国際貿易機能の一翼を担う外国貿易定期船港と しての整備 ③港湾機能の整備拡充を図るほか、都市交通の緩和、背後地への 輸送強化及び既成市街地の再開発に寄与するための港湾区域に おける埋立地の造成並びに有効な開発 こんにちの埋立地形の原形は、この計画によって決定されたも のである。この計画によって、平和島、昭和島、京浜島、大井、 城南島、お台場、有明、新木場1・2、若洲、羽田空港、中央防 波堤が埋め立てられる。 「東京港第3次改訂港湾計画」(1976~1980) 1973 年の第1次オイルショックを契機に急速に鈍化した経済成 長及び社会情勢の変化に対応するため、以下の6点が計画された。 ①商港的性格を通じて、背後地域における物資流動軸としての役 割を果たすと共に、都民生活に密着した都市港湾の形成を図る ②港湾の物流に関連する諸施設は、新埋立地で重点的に整備拡充 を図る ③既成市街地に近接する旧港地区を再開発し、都民の親しめる水 際線の形成を図る ④海洋レクリエーション需要の要請にこたえ、そのための水際線 を確保する ⑤港湾の安全確保、良好な環境の整備及び保全に十分配慮する
91
⑥東京港をとりまく将来の経済的、社会的情勢の変動に対処する ため、埋立地及び水際線の利用については、有効かつ弾力的に 対応していく 特色として、高度経済成長期の環境悪化に対する反省から、自 然の保護・回復や埋立地を都市問題解決の場として多目的に利用 することなどが挙げられる。この計画によって、竹芝・日の出埠 頭を再開発することとし、埠頭前面を埋め立てて、脱貨物化を図り、 新たなウォーターフロントの創出と港湾機能の拡充を図った。 「東京港第4次改訂港湾計画」(1981~1990) この計画では、以下の7点を目指した。 ①東京を中心とした広い背後圏をもつ国際貿易港湾として、外貿 機能を充実する ②活力ある大都市東京の生産・消費活動を支える港湾として、内 貿機能を充実する ③港湾機能を再生するとともに、都民が親しめる水際線の形成を 図るため、既設の埠頭の一部を再開発する ④背後地への輸送力の強化及び埋立地の交通利便性の向上を図る ため、道路網を充実する ⑤廃棄物の埋立処分の要請に対処するため、廃棄物処理場を確保 するとともに、将来の空港利用にも資するよう用地を造成する ⑥都民の多様なレクリエーション需要に対応するため、緑地等の 環境施設の整備を促進する ⑦港湾の安全の確保及び隣接地域の保全に十分配慮する この計画は第3次改訂港湾計画の延長として、総合的な港湾機 能の向上と都民に親しまれるみなとづくりを目的として埋立を行 うことにした、と位置づけられる。これにより、竹芝・日の出に 加えて、芝浦埠頭も埋立造成される。また、羽田空港の拡張も実 施された。 「東京港第5次改訂港湾計画」(1988~1995) この計画では、物流機能に加え、産業基盤としての機能、生活 基盤としての機能及びレクリエーション機能等の諸機能が調和よ く導入された総合的な港湾空間づくりを目的とし、東京の都市構 造の再編や都民の生活改善などに寄与することを目指し、以下を 実施した。
92
①外貿コンテナ埠頭の整備
面積 [ha] 1,200
②物資別専用埠頭の整備
35
~ ~
700
この計画において、臨海副都心の整備によって、東京の都市構
33
造を一極集中型から多心型へ転換することが図られた。それによ
600
り、有明、お台場、辰巳、中央防波堤が埋め立てられた。 戦後~高度経済成長期
明治初期~終戦
500
高度経済成長期~ 37
400
こ こ で、 島 ご と の 埋 立 目 的 別 に 色 分 け し た も の を 図 示 す る
32
(fig.11)。島の中で色が分かれているものは、埋立が複数回行われ
300
34
27 200
ており、且つ埋立目的が異なっているものである。一部に宅地造
36
30
16
成目的を含んでいる島は、初期にその部分を埋立て、後にそれ以
25 100
20
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
31
29 21
18
15
外の部分を埋立ている。
22
19
23
17
26 24
これによると、明治初期の佃や月島、勝どきの航路確保という
28
0
目的を除けば、戦前は殆ど宅地造成を目的として埋立を行ってい
t
fig.10 島ごとの竣工順と面積の相関性グラフ
るのが分かる。一方で、戦後から高度経済成長期にかけては、物 流・倉庫用地や埠頭用地、インフラ用地として埋め立てられている。 これは物流拠点として、つまり都市機能拡張のための港湾として 開発された時期であるとも言える。それが高度経済成長期以後に なると、再開発用地や複合的な機能を目的とした用地、廃棄物処 分場へ移行する。ここで、都市機能拡張から行政・資本主導の開 発のための土壌が築かれることとなる。
面積 [ha] 1,200
35
航路確保
~ ~
宅地 埠頭用地
700
物流・倉庫用地
33
インフラ用地 再開発用地
600
複合機能用地(埠頭用地+再開発・物流・インフラなど) 廃棄物処分場 その他
500
37 400
32 300
34
27 200
36
30
16 25 20
1 0
22
19
100
2
3
4
5
6
7
8
9
fig.11 島ごとの埋立目的別色分けグラフ
10
11
12
13
14
18
15 17
29 21 23
31
26 24
28 t
93
2.2.2 用途転換性について
航路確保 宅地 埠頭用地 物流・倉庫用地
次に、埋立目的別に色分けした島を、現在の島の位置に再配置
インフラ用地 再開発用地
したものを図示する (fig.12)。これによると、宅地造成目的の島が
複合機能用地 廃棄物処分場
より内陸に、東京湾に面している島を埠頭用地に、その中間に物流・
その他
倉庫用地や複合機能用地が位置しているのが分かる。 一方で、当初の埋立目的と現況の用途を比較した際に、明らか に変化が生じている島を塗り分けた (fig.13)。この変化は、後の章 でまとめた島別データシートに記載している航空写真を元に判断 している。これによると、明治初期から戦後間もない期間に埋め 立てられた島の用途は殆ど変化していることが分かる。 前記の島ごとの埋立目的と現状の間で用途転換があった島を現 状の位置に再配置したものを図示する (fig.14)。 芝浦・塩浜地域など内陸部寄りの島は早期埋立地で宅地造成目 的が多いが、計画から開発が完了するまでの間に第二次世界大戦 を挟んでいるため、軍事用地として使用されたこと、当時は想定 されていなかった業務機能や商業機能が近年台頭してきたことに 起因する。豊洲は、高度経済成長期の埋立から現在に至るまでに 産業転換が生じているため変化している。木場・京浜島は、再開
fig.12 島ごとの埋立目的別色分け図
発用地として埋立されるも、倉庫機能に特化している現状にある。
fig.14 島ごとの埋立目的と現状の間で用途転換があった島色分け図
このように、埋立目的から竣工まで、あるいは現状までに想定 外の事象や構造転換が発生すると、島の用途はドラスティックに
面積 [ha] 1,200
変化することが分かる。
35
~ ~
東京港湾における島は、何らかの用途目的をもって埋立が為さ
700
33
れているという点で、極めて機能的である。それらが群島を形成
600
しているということは、ベイエリアにおける機能的ゾーニングが 為されているとも言える。また、埋立計画時から現況に至るまで
500
に多様なプロセスを経ており、島ごとに多種多様な用途や構成を
37 400
成していることから、これまで人工物ゆえにノーコンテクストだ
32
と切り捨てられていたベイエリアのメタな地理的特性を考察する
300
200
ことで、現代的な意義を見出ことが可能ではないだろうか。
34
27
36
30
16 25 20
1 0
22
19
100
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
fig.13 島ごとの埋立目的と現状の間で用途転換があった島
18
15 17
29 21 23
31
26 24
28 t
94
2.3.0 島別特性分析 ここまで時系列的に東京ベイエリアにおける島の埋立変遷を追 1. 佃
2. 月島
3. 勝どき
4. 豊海
5. 晴海
6. 日の出
7. 芝浦2
うことで、総体的な埋立のプロセスとそれに伴う用途転換性につ いて明らかにした。 次に、その変遷の過程で、個々の島において如何なる現象が発 生し、現状に至っているのかを解明する。そのために、東京ベイ エリアの島 ( 計 34) を選定した (fig.15)。概ね前記の時系列的島分
8. 芝浦3
9. 芝浦4
10. 芝浦アイランド
11. 芝浦埠頭
12. 港南
13. 天王洲
14. 品川埠頭
析の際に取り扱った島を対象としているが、一般的な利用が殆ど 不可能である羽田空港と、まだ整備が済んでいない中央防波堤は 対象外とした。島名の後ろに数字が付いているものは原則として 町丁目を参考にしている。また、現状では1つの島を形成してい
15. 塩浜1
16. 塩浜2
22. 昭和島
23. 京浜島
17. 枝川1
18. 枝川2
19. 潮見
20. 勝島
21. 平和島
25. 城南島
26. 豊洲
27. 東雲
28. 有明
32. 新木場1
33. 新木場2
34. 若洲
る佃・月島と東雲・有明だが、時系列的にみると埋立に時差があり、 性質が異なることから別々に扱うこととした。
24. 大井
29. お台場
30. フェリー埠頭
31. 辰巳
fig.15 対象とする島
95
分析する手段として、以下の 6 項目を用いる。 ①用途分布 ②親水空間 ③不可侵領域 ④高層建築物 ⑤交通インフラ ⑥歴史的変遷 これらの指標の説明を以下に記載する。 ①用途分布 各島における現状の用途を把握することで、島ごとの機能的な 位置づけを理解するとともに、なぜ現状の用途分布が生じている のか、用途分布にはどのような種類があるのか考察する。
【凡例】
官公庁施設 教育文化施設 厚生医療施設 供給処理施設 事務所建築物 専用商業施設 住商併用建物 宿泊・遊興施設 スポーツ・興行施設 独立住宅 集合住宅 専用工場 住居併用工場 倉庫・運輸関係施設
fig.16 東京都土地利用現況図
fig.17 建物用途凡例
作図にあたって、東京都都市整備局都市づくり政策部が作成し た『東京都土地利用現況図 ( 建物用途別 )』平成 24 年度版を参照 した (fig.16)。その中で、対象とする島に存在する建物用途を抽出 し、使用したものが建物用途凡例である (fig.17)。原則として、対 象とする建物の主要用途に対して色を塗っている。作図に際して は国土地理院が公開している基盤地図情報を元に、Google Map や Google Earth を用いて建物が現存するか、建て替えが行われてい るかを確認しながら行った。 凡例のうち、補足すべきものを以下に追記する。「官公庁施設」 は庁舎や交番、港湾局施設などである。「教育文化施設」は学校や 公民館、科学館などを含む。「住商併用施設」は低層階が商店、そ の上が住居機能であり、かつ住商の割合が同等の場合のみを指す。 従って、高層マンションの1階にコンビニエンスストアが入って いる場合は、その建物の用途は集合住宅となる。 ②親水空間 各島の親水空間の形成状況を把握することを目的としている。 それによって、東京ベイエリアの親水空間特性を明らかにする。 これはすでに海外港湾都市の再開発地区で用いた親水空間図と同 様の作図によって行う。
96
建築敷地および建築開発予定地
不可侵領域 都市の土地
不可侵
③不可侵領域 東京ベイエリアに存在する土地のうち、非建築敷地であるオー
港湾用地および荷揚倉庫用地
プンスペースを対象とした分類を行った (fig.18)。これは原則とし て、屋外空間を対象としている。この分類を大きく「公共」、「準
道路用地 ( 駐車場 )
公共」、「私有」、「不可侵」の4パターンに括り、特に「不可侵」
鉄軌道用地 供給処理施設用地
公園
公共
公共オープンスペース
で誰でも入れるオープンスペース、「準公共」は無料だが入れる人 間に制限があるオープンスペース、「私有」は有料で且つ入れる人 間に制限があるオープンスペース、「不可侵」は一部の関係者を除
緑地 非建築敷地
について取り扱う。それぞれの意味合いとしては、「公共」は無料
き、一般の人間が侵入することが出来ないオープンスペースのこ とを指す。
公営運動場
これによって、親水空間と不可侵領域の相関性について考察を 行う。併せて、港湾都市における不可侵領域と相関性がある要素 として、「水門」「防潮堤」「内部護岸」も取り扱う。
広場
④高層建築物
公園道路
現在、東京ベイエリアは高層建築物が進出するために適当な用 地であるとして多くの再開発が行われているが、その立地と種類
オープンスペース
準公共オープンスペース
学校運動場
準公共
公開園地 ( 公共公営施設の園地 )
について分析し、将来的な展望を考察する。 具体的には、用途分布で色分けした建物のうち、6階以上ある ものを高層建築物とし、その中で主用途がオフィスであるものを 「賃貸ビル」「自社ビル」の2パターンに、主用途が集合住宅であ るものを「賃貸マンション」 「分譲マンション」 「分譲賃貸マンショ ン」「UR 都市再生機構」「都営・公営」の5パターンに分類した。
私有オープンスペース
民営運動場 競馬・競輪場
fig.18 オープンスペースの分類
私有
⑤交通インフラ 東京ベイエリアはこれまでの歴史的変遷において、貨物鉄道や 首都高速道路、ゆりかもめ等の多種多様な交通インフラが整備、 淘汰されてきた。それを各島ごとに比較考察する。 道路構成については、国土地理院が公開している基盤地図情報 をもとに、街区が形成されている部分を白、道路部分を黒に塗り 分けることによって可視化した。また、公園や団地などの中にあ る歩道も対象に含まれている。
97
⑥歴史的変遷 すでに東京ベイエリアにおける総体的な歴史的変遷を追ってき たが、より詳細に各島における変化を解明する必要がある。それ によって、島ごとのコンテクストを明らかにする。 まず、国土地理院によって開示されている航空写真 (1936 年以 後 ) をもとに約 10 年スパンで島の形成過程を分析する。その中 で用途や交通インフラ等において大きな変化がある島については、 前述の項目と併せて詳細に言及する。
98
2.3.1 島別データシート 次頁以降に島別のデータシートをまとめる。見方を左に図示し
①
ており (fig.19)、各番号ごとに必要があれば説明を付ける。
② ④
①島名 / 読み方 ②埋立目的・埋立期間
佃 /Tsukuda
埋立目的 : 航路確保
③航空写真
埋立期間 :1887~1896.4
Google Map 2015 年度現在のものを使用 ④親水空間図 青色部分の領域は親水陸域を、灰色部分は保有水域を表す ⑤用途分布図
③
⑤
用途分布図とともに道路率算定の際に使用した線を記載 ⑥島概要 島の形成から現在に至るまでの歴史的変遷 ⑦親水空間分析 上から、 ・CS 個数 ( 各 Rank ごと )
⑥
□島概要
□親水空間分析
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
CS 個数
|Rank1:123
Rank2: 97
Rank3: 93
Rank4: 74
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:689
Rank2:117
Rank3:171
Rank4:225
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
建物数=850 建物平均面積=112.6[ ㎡ ]
□用途構成
5.9%
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
6.2%
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
陸域面積 SL =32.6[ha] 親水陸域面積 SLW=12.9[ha]
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
水域面積 Sw=82.5[ha]
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
親水陸域係数α=0.397
保有水域係数β =0.718
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
親水係数αβ =0.285
有効水際線長 Lwʼ=742.9[m]
水際線長 Lw=2608.3[m]
・CS 平均面積 ( 各 Rank ごと )
□道路率
・建物数 / 建物平均面積 32.1%
44.5%
7.9%
⑧
・陸域面積 / 親水陸域面積 / 水域面積 / 水際線長 ・親水陸域係数α / 保有水域係数β / 親水陸域αβ / 有効水際 線長
22.2%
⑧用途構成 / 道路率 円グラフ 用途構成…総建築面積における各用途の建築面積の割合 道路率 …計画面積における道路の割合 ⑨時系列航空写真変遷 国土地理院の HP より入手可能な航空写真より、最も早期の記
1936
1947
1956
1975
1966
⑦ ⑨
fig.19 データシートの見方
1984
1997
録である 1936 年からおよそ 10 年間隔で掲載 その時点で島が存在していない場合は空欄とする 各項目のうち、④・⑤・⑦・⑧は特性分析を行うに当たって極 めて重要な項目であるため、データシートに記載してある。 また、水域については、最も距離のある運河 ( 晴海―豊洲 ) 間 の距離が約 500m であることから、水際線を 500m セットバック することによって囲まれた水域を、保有水域として利用している。
99
佃 /Tsukuda
埋立目的 : 航路確保
□島概要
□親水空間分析
佃は、江戸時代初期より屋敷、人足寄場、監獄、造船場と用途を変化させていっ
CS 個数
|Rank1:123
Rank2: 97
Rank3: 93
Rank4: 74
た「石川島」に、現在では超高層マンションを中心とする「大川端リバーシティ
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:689
Rank2:117
Rank3:171
Rank4:225
21」の再開発が為されている。それによって、かつて漁師町だった「佃島」や商
建物数=850 建物平均面積=112.6[ ㎡ ]
□用途構成
6.2%
れが反映されている。また、それによって比較的、親水陸域係数αの値が高くなっ
陸域面積 SL =32.6[ha] 親水陸域面積 SLW=12.9[ha]
ていると言える。用途は集合住宅が最も多く、次いで独立住宅であることから、
水域面積 Sw=82.5[ha]
かつての石川島造船所時代とは一変して、居住機能が主な島となっている。
島南部は小規模の建築物が密集しているため、建物数は島全体でも極めて多い
親水陸域係数α=0.397
保有水域係数β =0.718
分類となっており、平均面積もごく小さい。
親水係数αβ =0.285
有効水際線長 Lwʼ=742.9[m]
1947
1956
1966
□道路率
5.9%
人地であった「新佃島」の部分とは異なるスケールとなっており、親水空間にそ
1936
埋立期間 :1887~1896.4
水際線長 Lw=2608.3[m]
1975
32.1%
44.5%
7.9% 22.2%
1984
1997
月島 /Tsukishima
埋立目的 : 航路確保
□島概要
□親水空間分析
月島は、区画整理された路地に長屋が密集しているのが特徴的である。現在の
CS 個数
|Rank1:171
Rank2:102
Rank3: 88
Rank4: 71
古い町並みは、太平洋戦争の戦災を免れたために、当時の町並みを色濃く残して
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:140
Rank2: 63
Rank3: 91
Rank4:164
いる。今となっては、所々再開発され、大きな街区を形成している場所があるも
建物数=1670 建物平均面積=92.7[ ㎡ ]
□用途構成
ら建物の合間を縫うように、細分化された親水空間が入り込んでいるが、その奥
陸域面積 SL =38.7[ha] 親水陸域面積 SLW=5.0[ha]
行は極めて浅い。そのため、親水陸域係数αの値は低くなっている。
水域面積 Sw=79.1[ha]
用途は主に集合住宅と独立住宅で、住商併用建物が多いのも特色である。従っ
て、島の大半が居住機能であり、長い期間が経過しているにも関わらず、埋立当
親水陸域係数α=0.129
保有水域係数β =0.672
初から殆ど機能転換が生じていない数少ない島である。
親水係数αβ =0.087
有効水際線長 Lwʼ=171.5[m]
1936
1947
1956
□道路率
11.8%
のの、それでもその建物数は島全体で群を抜いて高い。それによって、水際線か 水際線長 Lw=1972.2[m]
埋立期間 :1887~1896.4
30.2%
42.8%
13.1% 19.9%
1966
1975
1984
1997
勝どき/Kachidoki
埋立目的 : 航路確保
□島概要
□親水空間分析
勝どきは、小規模の独立住宅や住商併用建物などの街区と集合住宅やオフィス
CS 個数
|Rank1:158
Rank2: 74
Rank3: 64
Rank4: 68
等の街区が混在する島で、埋立造成当時から、機能は異なるものの、街区計画と
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:144
Rank2:106
Rank3:123
Rank4:208
しては同様である。一方で、水際線沿いは殆ど親水空間が存在しておらず、月島
建物数=614 建物平均面積=170.1[ ㎡ ]
□用途構成
30.5%
8.5%
用途は集合住宅がおよそ半数を占めているが、次いでオフィス、倉庫・物流関
陸域面積 SL =28.9[ha] 親水陸域面積 SLW=5.3[ha]
係施設となっているため、島面積の小さい島の中では比較的街区や建築面積が大
水域面積 Sw=53.4[ha]
きい。現在進行形で再開発が盛んに行なわれており、今後、用途や建築面積が劇
的に転換する可能性がある。
親水陸域係数α=0.182
保有水域係数β =0.649
親水係数αβ =0.118
有効水際線長 Lwʼ=268.3[m]
1947
□道路率
6.7%
のように建物によって細分化され、奥行の無いものとなっている。
1936
埋立期間 :1887~1896.4
1956
1966
水際線長 Lw=2265.6[m]
1975
46.5%
12.9% 17.4%
1984
1997
豊海 /Toyomi
埋立目的 : 宅地造成 埋立目的 : 漁業基地造成用地
□島概要
□親水空間分析
豊海は、明治初期に埋立造成された北側を集合住宅が、1960 年代に埋立造成
CS 個数
|Rank1:113
Rank2: 50
Rank3: 40
Rank4: 37
された南側を漁業関連の倉庫・物流関係施設が占める島である。よって、南北に
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:710
Rank2:413
Rank3:605
Rank4:599
よって機能が明確にゾーニングされており、構成している用途もそれに準じて少
建物数=243 建物平均面積=520.4[ ㎡ ]
□用途構成
区が大きいため、それに伴って、他の島面積の小さい島と比較して、内陸まで大
陸域面積 SL =36.0[ha] 親水陸域面積 SLW=14.7[ha]
きな親水陸域を引き込んでいる。水域についても、東京湾に面しているため比較
水域面積 Sw=110.2[ha]
的範囲が大きくなっており、その結果、親水係数αβが高くなっている。
従って、豊海は親水性の高い島であるが、一方でその親水空間は単調になって
親水陸域係数α=0.410
保有水域係数β =0.754
しまっているとも言える。
親水係数αβ =0.309
有効水際線長 Lwʼ=981.5[m]
1936
1947
1956
1965
□道路率
13.3%
なくなっている。また、集合住宅も倉庫・物流関係施設も建築面積が大きく、街 水際線長 Lw=3178.5[m]
1975
埋立期間 :1907.5~1913.2 埋立期間 :1959.1~1962.9
22.8%
39.3%
38.5%
1984
1992
晴海 /Harumi
埋立目的 : 埠頭用地・宅地造成 埋立目的 : 埠頭用地・見本市用地・宅地等造成
□島概要
□親水空間分析
晴海は、現在東京オリンピック 2020 に向けた再開発予定地となっており、そ
CS 個数
|Rank1: 141
Rank2: 51
Rank3: 42
Rank4: 51
のため広大な親水空間を保有しているものの、今後一変することが予想される極
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:3136
Rank2:804
Rank3:823
Rank4:717
めて過渡的な状況下の島である。これまでにも団地や見本市会場、旅客ターミナ
建物数=209 建物平均面積=876.2[ ㎡ ]
□用途構成
陸域面積 SL =108.5[ha]
親水陸域面積 SLW=55.4[ha]
とに異なる機能が配置されているため、島自体の主要用途数は島全体の中で最も
水域面積 Sw=228.6[ha]
水際線長 Lw=5428.6[m]
多い6種類となっている。もともとコンテナ埠頭として機能していた島南部がド
ラスティックな用途転換地として位置づけられるが、残りの島中央以北部分も比
親水陸域係数α=0.511
保有水域係数β =0.678
較的早い用途転換が生じている。
親水係数αβ =0.347
有効水際線長 Lwʼ=1881.8[m]
1944
1956
24.4%
25.7%
10.2%
ペースが大きい傾向にある。用途は明確にゾーニングされているものの、街区ご
1936
□道路率
10.0%
ル等の大規模な再開発を行ってきたため、街区や建築面積、建物間のオープンス
埋立期間 :1926.2~1929.4 埋立期間 :1959.7~1966.9
11.7%
22.7% 12.2%
1965
1975
1984
1992
日の出 /Hinode
埋立目的 : 埠頭用地・宅地造成
□島概要
□親水空間分析
日の出は、埋立当初から埠頭用地や貨物線基地として東京湾の中で重要な位置
CS 個数
|Rank1:109
Rank2: 44
Rank3: 41
Rank4: 45
を占めていたが、他の埠頭用地の増加・拡大に伴って機能を縮小し、現在では過
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:161
Rank2:132
Rank3:210
Rank4:319
半数がオフィスや集合住宅となっている島である。従って、東京湾側の埠頭用地
建物数=91
□用途構成
建物平均面積=327.0[ ㎡ ]
は比較的大きな親水空間を保有しているものの、内陸側はその用途によって細分 陸域面積 SL =13.6[ha] 親水陸域面積 SLW=4.6[ha]
値が高くなっている。
水域面積 Sw=80.5[ha]
島面積に対して道路面積が極めて多く、島全体で最も高い道路率となっている。
1936
1947
1956
□道路率
7.3% 12.0%
化されている傾向にある。また、東京湾側は開けているため、保有水域係数βの
水際線長 Lw=1855.4[m]
親水陸域係数α=0.343
保有水域係数β =0.856
親水係数αβ =0.293
有効水際線長 Lwʼ=544.0[m]
1965
1975
埋立期間 :1906.11~1913.1
43.7%
43.8%
31.0%
1984
1992
芝浦2 /Shibaura-2
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
芝浦2は、当初は宅地造成のために埋立てられ、その後は軍事用地や倉庫・物
CS 個数
|Rank1:119
Rank2: 51
Rank3: 46
Rank4: 58
流拠点として機能していたものの、高度経済成長期以降にそれらの機能が遊休化
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1: 88
Rank2: 99
Rank3:131
Rank4:169
したことで現在の用途へ転換した島である。そのため、島の殆どがオフィスと集
建物数=171
□用途構成
建物平均面積=270.1[ ㎡ ]
はそれほど大きくないため、水際線沿いから細分化され、奥行の浅い親水空間が
陸域面積 SL =11.6[ha] 親水陸域面積 SLW=3.1[ha]
形成されている。
水域面積 Sw=27.7[ha]
かつて舟運や漁業が盛んだったことから、隣接する島とは幅員のあまり広くな
い運河によって領域を異にしている。
親水陸域係数α=0.270
保有水域係数β =0.705
親水係数αβ =0.190
有効水際線長 Lwʼ=299.8[m]
1936
1947
1956
1965
□道路率
16.9%
合住宅になっており、比較的明確にゾーニングされている。また、建築面積自体 水際線長 Lw=1573.8[m]
1975
埋立期間 :1912.8~1919.2
29.2%
42.9%
34.2%
1984
1992
芝浦3 /Shibaura-3
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
芝浦3は、当初は宅地造成のために埋立てられ、その後は軍事用地や倉庫・物
CS 個数
|Rank1:125
Rank2: 57
Rank3: 49
Rank4: 48
流拠点として機能していたものの、高度経済成長期以降にそれらの機能が遊休化
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:112
Rank2: 78
Rank3:105
Rank4:193
したことで現在の用途へ転換した島である。そのため、島の殆どがオフィスと集
建物数=151
□用途構成
建物平均面積=204.0[ ㎡ ]
ていたためか、比較的用途が入り交じっている。また、建築面積自体はそれほど
陸域面積 SL = 9.3[ha] 親水陸域面積 SLW=3.3[ha]
大きくないため、水際線沿いから細分化され、奥行の浅い親水空間が帯状に形成
水域面積 Sw=18.0[ha]
されている。
かつて舟運や漁業が盛んだったことから、隣接する島とは幅員のあまり広くな
親水陸域係数α=0.352
保有水域係数β =0.659
い運河によって領域を異にしている。
親水係数αβ =0.232
有効水際線長 Lwʼ=313.2[m]
1947
1956
1966
□道路率
7.8%
合住宅になっているが、かつて存在していた建物の建築面積が小さく細分化され
1936
埋立期間 :1913.5~1919.2
水際線長 Lw=1351.1[m]
1975
32.8%
16.2%
1984
62.6%
1997
芝浦4 /Shibaura-4
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
芝浦4は、当初は宅地造成のために埋立てられ、その後は軍事用地や倉庫・物
CS 個数
|Rank1:141
Rank2: 58
Rank3: 59
Rank4: 51
流拠点として機能していたものの、高度経済成長期以降にそれらの機能が遊休化
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:116
Rank2:124
Rank3:267
Rank4:381
したことで現在の用途へ転換した島である。そのため、島の殆どがオフィスと集
建物数=161
□用途構成
19.2%
26.2%
群の街区割や建築面積を踏襲しているためか平均建築面積が周囲の島より大きく
陸域面積 SL =20.6[ha] 親水陸域面積 SLW=5.9[ha]
道路も少ないものの、水際線沿いの建物は舟運や漁業関係の用途だったことで、
水域面積 Sw=31.6[ha]
小さく細分化され、それに伴い奥行の浅い親水空間が形成されている。
かつて舟運や漁業が盛んだったことから、隣接する島とは幅員のあまり広くな
親水陸域係数α=0.285
保有水域係数β =0.606
い運河によって領域を異にしている。
親水係数αβ =0.173
有効水際線長 Lwʼ=327.3[m]
1944
1956
□道路率
建物平均面積=449.9[ ㎡ ]
合住宅になっており、比較的明確にゾーニングされている。また、かつての倉庫
1936
埋立期間 :1913.5~1919.2
1965
62.3%
水際線長 Lw=1892.7[m]
1979
1984
1992
芝浦アイランド/Shibaura island
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
芝浦アイランドは、当初は宅地造成のために埋立てられ、その後は軍事用地や
CS 個数
|Rank1: 57
Rank2: 27
Rank3: 21
Rank4: 14
倉庫・物流拠点として機能していたものの、高度経済成長期には都電の車両基地
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:487
Rank2:240
Rank3:188
Rank4:688
となり、以降はそれらの機能が遊休化したことで現在の用途へ転換した島である。
建物数=48
□用途構成
建物平均面積=754.9[ ㎡ ]
陸域面積 SL =10.3[ha] 親水陸域面積 SLW=4.8[ha]
途は過半数が集合住宅となっているが、その他のオフィスや都下水道局ポンプ場、
水域面積 Sw=44.6[ha]
福祉施設など複数の用途が混合している。
かつて舟運や漁業が盛んだったことから、隣接する島とは幅員のあまり広くな
親水陸域係数α=0.463
保有水域係数β =0.812
い運河によって領域を異にしている。
親水係数αβ =0.375
有効水際線長 Lwʼ=559.6[m]
1956
1965
5.8%
14.2%
いるとともに大きなオープンスペースとそれに伴う親水空間を形成している。用
1944
□道路率
9.2%
平均建築面積が島面積に対して極めて大きく、そのため明確にゾーニングされて
1936
埋立期間 :1914.9~1920.10
水際線長 Lw=1490.6[m]
1979
22.5%
52.1%
15.7%
1984
1992
芝浦埠頭 /Shibaura terminal
埋立目的 : 埠頭用地・宅地造成 埋立目的 : 埠頭用地・宅地造成 埋立目的 : 埠頭用地
□島概要
□親水空間分析
芝浦埠頭は、埋立当初より埠頭用地として整備され、現在に至るまで埋立を繰
CS 個数
|Rank1:159
Rank2: 86
Rank3: 65
Rank4: 66
り返しながらコンテナリゼーションにも対応した島である。従って島の東側は埠
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:618
Rank2:618
Rank3:645
Rank4:406
頭用地となっているが、残りの部分はオフィスや集合住宅等へと用途転換が生じ
建物数=298
□用途構成
建物平均面積=476.4[ ㎡ ]
スケールが共存している。しかしながら、それらの間にはレインボーブリッジの
陸域面積 SL =54.6[ha] 親水陸域面積 SLW=22.0[ha]
高架と防潮堤という二つの境界が存在しており、両者を分断してしまっている。
水域面積 Sw=166.0[ha]
内陸側は、かつて舟運や漁業が盛んだったことから、幅員のあまり広くない運
河によって隣接する島と領域を異にしている。その他、島の東南端にある埠頭公
親水陸域係数α=0.403
保有水域係数β =0.752
園や港湾局が所有する桟橋といった特徴的な要素を保有している。
親水係数αβ =0.303
有効水際線長 Lwʼ=1529.2[m]
1944
1956
1965
□道路率
10.8%
ている。それによって親水空間・建築面積といった要素において、島内に二つの
1936
埋立期間 :1912.8~1919.2 埋立期間 :1923.3~1931.12 埋立期間 :1934.5~1959.3
水際線長 Lw=5043.0[m]
1979
26.3%
1984
31.9%
54.7%
1992
港南 /Kounan
埋立目的 : 倉庫用地・宅地造成
□島概要
□親水空間分析
港南は、埋立当初からあり、現在でも島面積の 1/3 程度を占める東京海洋大学
CS 個数
|Rank1:104
Rank2: 56
Rank3: 56
Rank4: 63
が特徴的な島である。用途自体は集合住宅が最も多いが、これだけの割合を教育
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:911
Rank2:482
Rank3:399
Rank4:570
施設が占めている島は、島全体では港南をおいて他に無い。一方で、平均建築面
建物数=361
□用途構成
建物平均面積=373.8[ ㎡ ]
陸域面積 SL =58.6[ha] 親水陸域面積 SLW=18.0[ha]
の狭い運河によって囲まれているため、保有水域係数βがあまり高くない値と
水域面積 Sw=80.0[ha]
なっている。
今後、品川新駅の再開発計画に伴って、この島も再開発の手が伸びることが予
親水陸域係数α=0.307
保有水域係数β =0.577
想され、現状の用途構成や親水空間に大きな変動が生じるだろう。
親水係数αβ =0.177
有効水際線長 Lwʼ=662.0[m]
1956
1966
5.3%
9.6%
奥行の浅い親水空間が帯状に形成されている。また、島面積に対して周囲を幅員
1947
□道路率
6.8%
積自体はあまり大きくないため、島北西端にある再開発地を除いて、細分化され
1936
埋立期間 :1936.3~1943.10
水際線長 Lw=3732.8[m]
1979
26.1%
40.3%
32.1%
1984
1997
天王洲 /Tennouzu
埋立目的 : 倉庫用地・宅地造成
□島概要
□親水空間分析
天王洲は、当初より倉庫用地として埋立造成され、高度経済成長期には北東部
CS 個数
|Rank1: 54
Rank2: 25
Rank3: 26
Rank4: 28
に燃料倉庫が増設、その後も大規模物流施設へ転換が生じるなど、倉庫・物流関
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:868
Rank2:526
Rank3:643
Rank4:477
係施設用地として機能していたが、近年ではオフィス用地として劇的に転換を遂
建物数=114
□用途構成
建物平均面積=573.6[ ㎡ ]
陸域面積 SL =21.4[ha] 親水陸域面積 SLW=9.0[ha]
られる。
水域面積 Sw=51.5[ha]
島面積に対する平均建築面積が大きいものの、一部を除いてあまりオープンス
ペースを確保出来ていないため、奥行の浅い親水空間となっている。
親水陸域係数α=0.420
保有水域係数β =0.706
親水係数αβ =0.297
有効水際線長 Lwʼ=633.2[m]
1956
1966
6.5%
9.0%
充分であり、かつ他の島が新しく埋め立てられたことによって淘汰されたと考え
1947
□道路率
8.5%
げている。原因としては、島面積が小さいため、それらの機能の用地としては不
1936
埋立期間 :1925.4~1939.6
水際線長 Lw=2133.2[m]
1975
10.9%
1984
20.6%
60.9%
1997
品川埠頭/Shinagawa terminal
埋立目的 : 埠頭用地・鉄道用地・宅地等造成
□島概要
□親水空間分析
品川埠頭は、かつて存在していた品川台場を吸収しつつ、主に埠頭用地として
CS 個数
Rank2: 77
Rank3: 78
Rank4: 87
埋立造成された島である。現在でも東京港の主要港湾の一つとして機能しており、
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:1118 Rank2:791
Rank3:622
Rank4:496
島の半分は埠頭機能が占めている。また、島の北側には清掃工場、南側には火力
建物数=269
□用途構成 |Rank1:216
建物平均面積=505.2[ ㎡ ]
埋立期間 :1955.6~1967.5
□道路率
5.1% 5.5%
発電所という、東京圏の生存のために重要な供給処理施設を有している。 島の内陸側は、かつて舟運及び漁業が盛んだった頃の名残か、建築面積の小さ
陸域面積 SL =84.4[ha] 親水陸域面積 SLW=39.4[ha]
い建物が建ち並んでおり、細分化された親水空間となっている。一方で埠頭側は
水域面積 Sw=209.2[ha]
巨大な親水空間になっており、これらが物流機能の街区や幅員の大きい道路に
よって分断され、共存している構成になっている。
親水陸域係数α=0.467
保有水域係数β =0.712
親水係数αβ =0.333
有効水際線長 Lwʼ=1737.5[m]
1947
1956
1966
水際線長 Lw=5224.1[m]
1979
31.1%
1984
34.2%
52.9%
1997
塩浜1/Shiohama-1
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
塩浜1は、かつて宅地造成を目的として埋立られたが、第二次大戦以後は倉庫
CS 個数
|Rank1:113
Rank2: 47
Rank3: 39
Rank4: 44
用地として利用、高度経済成長期以降はそれらが遊休化したことで集合住宅に用
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:241
Rank2:172
Rank3:162
Rank4:197
途転換していった島である。そのため、 現在では島の半分が集合住宅の用地になっ
建物数=178
□用途構成
建物平均面積=434.5[ ㎡ ]
□道路率
5.9% 17.5%
ているが、巨大な物流施設も残されている ( ただし、西側の一つは解体作業が進 行中である )。
陸域面積 SL =20.5[ha] 親水陸域面積 SLW=5.0[ha]
かつての道路割を踏襲しているため、島面積に対する街区が大きく、それによっ
水域面積 Sw=28.3[ha]
て道路率が低くなっている。また、建築面積が大きいもののオープンスペースが
小さいことで、親水空間は奥行が浅く帯状に形成されてしまっている。
親水陸域係数α=0.245
保有水域係数β =0.580
親水係数αβ =0.142
有効水際線長 Lwʼ=273.2[m]
1936
1947
1956
1966
埋立期間 :1910.12~1921.8
38.7%
52.9%
水際線長 Lw=1923.8[m]
1975
1984
1992
塩浜2/Shiohama-2
埋立目的 : 宅地造成 埋立目的 : 鉄道用地・再開発用地
□島概要
□親水空間分析
塩浜2は、島面積の 1/4 程度を深川車両基地が占めているほか、独立住宅群の
CS 個数
|Rank1:177
Rank2: 76
Rank3: 74
Rank4: 72
ある区画や福祉施設が集中している場所があるなど、特徴的な要素が共存してい
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:303
Rank2:239
Rank3:370
Rank4:534
る島である。主な用途は集合住宅であるが、前記の要因によって、主要用途が6
建物数=819
□用途構成
建物平均面積=231.3[ ㎡ ]
陸域面積 SL =66.9[ha] 親水陸域面積 SLW=13.8[ha]
ることや操車場の敷地が水際に面していること、かつて舟運や漁業が盛んだった
水域面積 Sw=39.5[ha]
ことから幅員の狭い運河によって囲まれていることから、島全体の中で親水係数
αβが極めて低い値となっている。
親水陸域係数α=0.206
保有水域係数β =0.371
親水係数αβ =0.076
有効水際線長 Lwʼ=315.5[m]
1947
1956
1966
5.2%
水際線長 Lw=4130.8[m]
1979
21.8%
34.7%
7.5%
一方で、島面積に対して、水際線沿いに建築面積の小さい建物が建ち並んでい
1936
□道路率
6.5%
種類存在している。
埋立期間 :1910.12~1923.8 埋立期間 :1938.11~1965.3
11.9% 27.5%
1989
1997
枝川1/Edagawa-1
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
枝川1は、かつてコリアンタウンとして盛隆した島で、現在も朝鮮学校がある
CS 個数
|Rank1:109
Rank2: 50
Rank3: 46
Rank4: 59
ほか、海運業の用地だったこともあって今なお倉庫が残っている。用途は集合住
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:243
Rank2:118
Rank3: 96
Rank4:157
宅が最も多く、次いでオフィス、独立住宅となっている。島の外周部には建築面
建物数=348
□用途構成
建物平均面積=179.3[ ㎡ ]
の無い親水空間が帯状に形成されている。
陸域面積 SL =18.7[ha] 親水陸域面積 SLW=4.6[ha]
島の南側に比較的幅員のある運河が合流していることで、水域が解放されてい
水域面積 Sw=37.8[ha]
る。それによって、隣接する他の島よりも保有水域係数βの値が高くなっている。
1936
1947
1956
水際線長 Lw=1883.1[m]
親水陸域係数α=0.246
保有水域係数β =0.669
親水係数αβ =0.165
有効水際線長 Lwʼ=310.6[m]
1966
□道路率
23.3%
9.9%
積の大きな建物が周囲の運河に背を向けるようにして建っているため、殆ど奥行
1975
埋立期間 :1915.9~1928.4
39.5%
14.6% 24.6%
1984
1992
枝川2/Edagawa-2
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
枝川2は、宅地造を目的として埋立造成され、その当時の街区割や建築面積を
CS 個数
|Rank1:134
Rank2: 59
Rank3: 58
Rank4: 66
維持しつつ、様々な用途が混合するように建っている島である。島の外周部には
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:208
Rank2:146
Rank3:141
Rank4:151
かつて舟運、漁業関係の建物が建ち並んでいたため、建築面積が小さくなってい
建物数=358
□用途構成
11.3%
用途は集合住宅とオフィスが同程度、次いで工場や倉庫・物流関係施設となって
陸域面積 SL =28.4[ha] 親水陸域面積 SLW=5.5[ha]
いるが、東側に福祉施設が集中していることが特徴的である。
水域面積 Sw=43.1[ha]
島の北東部はかつて漁船を大量に停留させるためなのか、水域が設けられてお
り、枝川1の南部の水域と併せて保有水域が大きくなっている。
親水陸域係数α=0.192
保有水域係数β =0.603
親水係数αβ =0.116
有効水際線長 Lwʼ=285.0[m]
1947
1956
□道路率
建物平均面積=243.9[ ㎡ ]
る。それによって、細分化された奥行の浅い親水空間が帯状に形成されている。
1936
埋立期間 :1915.9~1928.4
1966
水際線長 Lw=2464.6[m]
1975
14.6%
1984
28.8%
32.8%
28.3%
1997
潮見 /Shiomi
埋立目的 : 宅地造成・再開発用地
□島概要
□親水空間分析
潮見は、島形成が高度経済成長期後半と比較的遅く、現在まで再開発が継続的
CS 個数
|Rank1: 120 Rank2: 64
Rank3: 71
Rank4: 69
に行われている島である。そのため未利用地が多く、南西部の運動公園と併せて
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:1175 Rank2:404
Rank3:355
Rank4:259
大規模の親水空間を保有している。用途は集合住宅と倉庫・物流関係施設が多い
建物数=433
□用途構成
建物平均面積=281.6[ ㎡ ]
陸域面積 SL =51.4[ha] 親水陸域面積 SLW=21.0[ha]
20 世紀後半~現在までの再開発との間で建築面積や街区のスケール、用途が異
水域面積 Sw=73.0[ha]
なることで、多様な親水空間や用途構成を実現している。
今後、さらに再開発が為されることが予想され、それに伴って現在の特殊性が
親水陸域係数α=0.408
保有水域係数β =0.587
どのように変化するか、させるべきか熟慮する必要がある。
親水係数αβ =0.240
有効水際線長 Lwʼ=810.3[m]
1947
1956
1966
27.2%
7.1%
るため、主要用途が島全体で最も多い6種類となっている。また、初期の開発と
1936
□道路率
5.7%
ものの、オフィスや工場、独立住宅といった埋立当初から存在している用途があ 水際線長 Lw=3381.2[m]
1979
埋立期間 :1924.6~1967.8
24.6%
10.4% 13.0%
1984
23.6%
1992
勝島 /Katsu-shima
埋立目的 : 宅地造成
□島概要
□親水空間分析
勝島は、島の半分を競馬場用地が、残りの半分を倉庫・物流関係施設が占めて
CS 個数
|Rank1:133
Rank2: 78
Rank3: 66
Rank4: 59
いる、極めて用途が限定された島である。かつては島として独立していたが、高
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:585
Rank2:195
Rank3:226
Rank4:204
度経済成長期以降の埋立によって内陸部と接続し、そこは区民公園となっている。
建物数=430
□用途構成
埋立期間 :1939.1~1949.11
□道路率
建物平均面積=459.4[ ㎡ ]
15.0%
島の西側一面に首都高速一号羽田線が通過しているものの、島内の道路が極め 29.0%
て少ないため、道路率が低くなっている。それは島を構成している用途が必要と
陸域面積 SL =75.0[ha] 親水陸域面積 SLW=12.0[ha]
する街区の大きさとその用途に影響を受けて、およそ一般の人間が歩行すること
水域面積 Sw=60.0[ha]
を想定していないことを示す。
外周部の建築物は内向きに建てられているため、親水空間は奥行が無く、かつ
親水陸域係数α=0.160
保有水域係数β =0.444
一部が内陸と接続していることで、面積が小さくなっている。
親水係数αβ =0.071
有効水際線長 Lwʼ=291.2[m]
1944
1956
1965
58.0%
水際線長 Lw=4100.2[m]
1979
1989
1997
平和島 /Heiwa-jima
埋立目的 : 流通業務用地・再開発用地
□島概要
□親水空間分析
平和島は、当初より流通業務用地として埋立造成され、現在まで殆ど用途転換
CS 個数
|Rank1:107
Rank2: 42
Rank3: 39
Rank4: 43
を生じずに維持されている島である。そのため、用途の大半が倉庫・物流関係施
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:853
Rank2:683
Rank3:420
Rank4:495
設となっている。かつては島として独立していたが、高度経済成長期以降の埋立
建物数=391
□用途構成
29.8%
10.5%
場があり、勝島と併せて賭博施設が集中している。
陸域面積 SL =128.2[ha] 親水陸域面積 SLW=15.8[ha]
建築面積が大きく、かつ充分なオープンスペースが設けられていないため、奥
水域面積 Sw=90.0[ha]
行の浅い親水空間が形成されている。また、島面積に対して、隣接する島とあま
り距離がとれていないため、保有水域係数βの値も低くなっている。それによっ
親水陸域係数α=0.123
保有水域係数β =0.412
て、島全体でも親水係数αβの値が極めて低い。
親水係数αβ =0.051
有効水際線長 Lwʼ=237.1[m]
1956
□道路率
10.5%
建物平均面積=1132.3[ ㎡ ]
によって内陸部と接続し、そこは区民公園となっている。また、北西部には競艇
1944
埋立期間 :1939.1~1967.7
1966
70.5%
水際線長 Lw=4677.2[m]
1975
1984
1992
昭和島/Syouwa-jima
埋立目的 : 交通用地・供給処理施設用地
□島概要
□親水空間分析
昭和島は、当初より交通用地と供給処理施設用地として埋立造成され、埋立時
CS 個数
|Rank1: 108 Rank2: 66
Rank3: 55
Rank4: 50
期が高度経済成長期後半と比較的遅いこともあって、現在まで殆ど用途転換が生
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:1880 Rank2:356
Rank3:324
Rank4:281
じずに維持されている島である。島の半分を浄水場が占めており、残りは工場や
建物数=292
□用途構成
建物平均面積=625.3[ ㎡ ]
埋立期間 :1939.1~1967.7
□道路率
15.1%
20.2%
倉庫・物流関係施設となっている。 大規模な親水空間は浄水場の用地と運動公園によるもので、浄水場の方は不可
陸域面積 SL = 62.3[ha]
親水陸域面積 SLW=25.8[ha]
侵領域となっているため、実際の親水空間はより限定されている。また、島の中
水域面積 Sw=106.4[ha]
水際線長 Lw=3061.0[m]
央には首都高速一号羽田線と東京モノレールの車両基地があり、島を3つに分割
する強力な境界となっている。
親水陸域係数α=0.415
保有水域係数β =0.631
親水係数αβ =0.262
有効水際線長 Lwʼ=800.6[m]
1947
1956
1966
1975
30.3%
1984
53.9%
1992
京浜島/Keihin-jima
埋立目的 : 再開発用地
□島概要
□親水空間分析
京浜島は、当初は再開発用地として埋立造成されたものの、現在はその半分を
CS 個数
|Rank1:201
Rank2: 98
Rank3: 91
Rank4: 92
工場が、その他を倉庫・物流関係施設や供給処理施設が占めており、それが維持
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:856
Rank2:362
Rank3:502
Rank4:369
されている島である。中でも島の北側には、東京ベイエリアでも数少ない造船所
建物数=752
□用途構成
建物平均面積=390.0[ ㎡ ]
埋立期間 :1939.1~1986.1
□道路率
17.0%
があり、それに隣接して大規模物流施設や清掃工場用地がある。
26.9%
50.7%
一方で、外周部には建築面積が大きい建物が建ち並んでいるため、奥行の浅い
陸域面積 SL =104.8[ha]
親水陸域面積 SLW=28.7[ha]
親水空間が帯状に形成されている。また、島の西側には首都高速湾岸線が通って
水域面積 Sw=187.8[ha]
水際線長 Lw=4917.6[m]
おり、途中で地下に潜って羽田空港の埋立地へ接続するようになっている。主要
な幹線道路という境界線が途中で途切れるのは島全体でも特殊な構成である。
親水陸域係数α=0.274
保有水域係数β =0.642
親水係数αβ =0.176
有効水際線長 Lwʼ=865.3[m]
1975
26.9%
1984
1992
大井 /Ooi
埋立目的 : 交通用地・流通業務用地・住宅用地
□島概要
□親水空間分析
大井は、島の東側を埠頭用地、中央を操車場、北側に火力発電所、南側に大田
CS 個数
|Rank1: 348
Rank2:163
Rank3:134
Rank4:127
市場、西側に八潮団地と、極めて明確にゾーニングされ且つ都市機能を凝縮した
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:4333
Rank2:896
Rank3:908
Rank4:511
用途構成になっている島である。
建物数=1394
□用途構成
建物平均面積=817.8[ ㎡ ]
□道路率
6.5%
島面積は大きいものの、幹線道路が多く通っているため、西側は親水空間の奥 行が無くなっている。一方で、東側は巨大な親水空間を保有しているものの、す
陸域面積 SL =697.5[ha]
親水陸域面積 SLW=184.1[ha]
べて埠頭用地のため不可侵領域となってしまっている。また、島面積があまりに
水域面積 Sw=423.9[ha]
水際線長 Lw=12692.0[m]
も大きいために、親水陸域面積に対して水域面積が小さくなってしまい、保有水
域係数βの値が低くなっている。そのため、結果的に島全体の中でも親水係数α
親水陸域係数α=0.264
保有水域係数β =0.378
βの値が低い。
親水係数αβ =0.100
有効水際線長 Lwʼ=1266.0[m]
1965
埋立期間 :1939.1~1992.9
1975
23.6%
1984
23.7%
57.9%
1997
城南島/Jounan-jima
埋立目的 : 埠頭用地・再開発用地
□島概要
□親水空間分析
城南島は、主に埠頭用地として埋立造成され、その竣工は島全体でも極めて新
CS 個数
|Rank1: 133
Rank2: 77
Rank3: 65
Rank4: 60
しい部類に入る島である。そのため、島の西側、南側に埠頭用地があり、大きな
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:4150
Rank2:530
Rank3:622
Rank4:798
親水空間を保有している。また、東側には親水公園が存在しており、島全体で数
建物数=375
□用途構成
建物平均面積=456.6[ ㎡ ]
埋立期間 :1939.1~1991.10
□道路率
22.2%
24.0%
少ない特徴となっている。用途はおよそ半分が工場、次いで倉庫・物流関係施設
44.0%
と供給処理施設となっており、後者はスラッジプラントである。
陸域面積 SL =118.2[ha]
親水陸域面積 SLW=68.1[ha]
不可侵領域が多いものの親水空間が大きく、かつ周囲の島との距離があるため
水域面積 Sw=286.8[ha]
水際線長 Lw=6289.6[m]
保有水域も大きい。そのため親水係数αβの値が高くなっている。
埋立時期によって大井と接続している陸域の面積が変動しており、現在では殆
親水陸域係数α=0.576
保有水域係数β =0.708
ど道路のみによって繋がっているだけに留まる。
親水係数αβ =0.408
有効水際線長 Lwʼ=2567.0[m]
1975
28.2%
1984
1997
豊洲 /Toyosu
埋立目的 : 宅地造成 埋立目的 : 埠頭用地・宅地造成 埋立目的 : 埠頭用地造成
□島概要
□親水空間分析
豊洲は、当初は島の北側のみを宅地造成されたが、高度経済成長期に工場やエ
CS 個数
|Rank1: 202
Rank2: 86
Rank3: 82
Rank4: 68
ネルギー施設用地として現在の新豊洲部分の埋立が為された島である。しかしな
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:5026
Rank2:837
Rank3:627
Rank4:605
がら、新豊洲は高度経済成長期以後の産業転換によって遊休化、更地となり、新
建物数=556
□用途構成
建物平均面積=621.2[ ㎡ ]
ため、極めて広大な親水空間を保有しているものの、今後大きく変動することが
陸域面積 SL =214.6[ha]
親水陸域面積 SLW=118.0[ha]
予想される。一方で、北側は内向きに建築面積の大きい建物が建ち並んでいるた
水域面積 Sw=271.8[ha]
水際線長 Lw=9037.6[m]
め、異なるスケールの親水空間が共存している。
用途は主に集合住宅で、次いでオフィスや商業施設、学校と生活する上で必要
親水陸域係数α=0.550
保有水域係数β =0.559
な用途をバランスよく保有している。
親水係数αβ =0.307
有効水際線長 Lwʼ=2776.7[m]
1936
1946
1956
1965
□道路率
20.6%
7.2%
たに新築地市場用地や東京オリンピック 2020 の重要な敷地となっている。その
1975
埋立期間 :1921.12~1930.7 埋立期間 :1926.2~1932.5 埋立期間 :1945.7~1961.1
38.0%
17.9% 22.9%
1984
1997
東雲 /shinonome
埋立目的 : 宅地造成 埋立目的 : 倉庫用地・宅地造成
□島概要
□親水空間分析
東雲は、初期に北側半分を高度経済成長期に南側半分を埋立造成し、それに伴っ
CS 個数
|Rank1:173
Rank2: 76
Rank3: 73
Rank4: 76
て異なる用途やスケールになっている島である。北側には集合住宅やオフィス、
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:560
Rank2:567
Rank3:313
Rank4:439
商業施設が、南側には倉庫・物流関係施設や倉庫が集まっており、それによって
建物数=725
□用途構成
□道路率
5.4%
建物平均面積=488.6[ ㎡ ]
7.5%
用途構成が多くなっている。 外周部の建築物は建築面積が大きいが、内向きでオープンスペースをあまり確
陸域面積 SL =114.2[ha]
親水陸域面積 SLW=19.6[ha]
保していないため、奥行の浅い親水空間が帯状に形成されている。また有明と接
水域面積 Sw=136.2[ha]
水際線長 Lw=3845.4[m]
続していることで、より親水空間の面積が小さくなっている。水域も北側に面し
ている運河の幅員が狭いことであまり大きくないことから、親水係数αβの値が
親水陸域係数α=0.172
保有水域係数β =0.544
島全体でも低くなっている。
親水係数αβ =0.093
有効水際線長 Lwʼ=359.1[m]
1936
1946
1956
1965
埋立期間 :1926.2~1933.2 埋立期間 :1935.10~1965.3
1975
25.8%
37.4%
12.6% 27.7%
1984
1997
有明 /Ariake
埋立目的 : 埠頭用地・交通用地・商業用地 埋立期間 :1936.11~1992.9
□島概要
□親水空間分析
有明は、当初埋め立てられた北側が木場のための用地となっていたが、現在で
CS 個数
は再開発用地として用途転換が生じている島である。一方で、南側は埠頭用地や
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:4857 Rank2:1098
国際展示場のための用地になっており、また中央部にはオフィスやスポーツ施設
建物数=402
□用途構成 |Rank1: 148 Rank2:
75
Rank3:
67 Rank4:
67
Rank3:1003 Rank4:1061
建物平均面積=1267.4[ ㎡ ]
5.0%
用地があるなど、臨海副都心として重要な用途を構成している。 陸域面積 SL =275.2[ha]
親水陸域面積 SLW=93.9[ha]
変化する可能性が高く、それに伴って面積が縮小することが予想される。また、
水域面積 Sw=270.7[ha]
水際線長 Lw=7321.9[m]
島面積に対して周囲の隣接する島と距離が近いことから水域面積が小さくなって
おり、結果として親水係数αβの値が比較的低いものとなっている。
親水陸域係数α=0.341
保有水域係数β =0.496
親水係数αβ =0.169
有効水際線長 Lwʼ=1239.6[m]
1956
1965
1975
26.9%
34.8%
7.0%
島の北側に広大な親水空間があるものの、ここは再開発用地として今後大きく
1946
□道路率
12.3% 27.0%
1984
1997
お台場 /Odaiba
埋立目的 : 埠頭用地・港湾関連用地・商業用地 埋立目的 : 埠頭用地・港湾関連用地
□島概要
□親水空間分析
お台場は、江戸時代に設けられた品川台場を北端に残しつつ、埠頭用地や港湾
CS 個数
関連用地、商業用地として埋立造成された島である。島の南側は用途の半分を占
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:3393 Rank2:866
める倉庫・物流関係施設となっており、北側には商業施設やオフィス、文化施設、
建物数=477
□用途構成 |Rank1: 270 Rank2:124
Rank3:
87 Rank4:
□道路率
79
Rank3:1803 Rank4:1240
建物平均面積=1367.3[ ㎡ ]
5.0% 5.9% 7.3%
集合住宅が集中しているため、島内で明確なゾーニングが為されている。それに 伴って主要用途の構成が島全体で最も多く、6種類となっている。
陸域面積 SL =339.6[ha]
親水陸域面積 SLW=127.8[ha]
また、北側には島全体でも数少ない親水公園があるものの、外周部には建築面
水域面積 Sw=553.2[ha]
水際線長 Lw=13179.6[m]
積の大きい建物が建ち並んでいるため、親水空間の奥行は殆ど無い。一方で、南
側の埠頭用地には広大な親水空間が広がっているが、すべて不可侵領域となって
親水陸域係数α=0.376
保有水域係数β =0.620
しまっている。
親水係数αβ =0.233
有効水際線長 Lwʼ=3074.6[m]
1963
埋立期間 :1963.9~1973.1 埋立期間 :1967.3~1992.7
1979
25.4%
10.7%
52.0%
16.4%
1989
1997
フェリー埠頭 /Ferry terminal
埋立目的 : 埠頭用地・交通用地
□島概要
□親水空間分析
フェリー埠頭は、高度経済成長期に埠頭用地として埋立造成された島である。
CS 個数
そのため、用途は殆どすべて倉庫・物流関係施設となっているが、埠頭用地のた
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:3701 Rank2:2677
め大規模なオープンスペースが設けられていることと相俟って、島全体で最も大
建物数=92
□用途構成 |Rank1:
82 Rank2:
35
Rank3:
27 Rank4:
埋立期間 :1963.9~1978.1
□道路率
24
Rank3:1668 Rank4:2281
建物平均面積=1241.8[ ㎡ ] 28.3%
きな親水空間を形成している。また、隣接する島とは距離があるため、保有水域 も大きくなっている。それによって、島全体で最も高い親水係数αβの値となっ
陸域面積 SL =70.1[ha]
親水陸域面積 SLW=49.7[ha]
ている。しかしながら、この島は用途の関係で一般の人間が殆ど立ち入ることが
水域面積 Sw=197.9[ha]
水際線長 Lw=3989.0[m]
無いこと、埠頭用地のため不可侵領域となっていることから、そのポテンシャル
を全く発揮できていない。
親水陸域係数α=0.709
保有水域係数β =0.738
親水係数αβ =0.523
有効水際線長 Lwʼ=2087.4[m]
1965
1975
98.6%
1984
1997
辰巳 /Tatsumi
埋立目的 : 宅地造成 埋立目的 : 埠頭用地・再開発用地
□島概要
□親水空間分析
辰巳は、当初は宅地造成を目的として北側が、その後埠頭用地や再開発用地と
CS 個数
82 Rank2:123
Rank3:113
Rank4:112
して南側が埋立造成された島である。現在でも北側には巨大な団地群が広がって
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:3701 Rank2:426
Rank3:517
Rank4:403
いるほか、海浜公園があるのが特徴的である。また、南側には埠頭用地があるた
建物数=881
□用途構成 |Rank1:
建物平均面積=284.4[ ㎡ ]
9.8%
首都高速9号深川線が通っていることも相俟って、極めて明確なゾーニングが為
陸域面積 SL =153.4[ha]
親水陸域面積 SLW=46.0[ha]
されいる。一方で、埠頭用地や公園部分と、その他の集合住宅や倉庫・物流関係
水域面積 Sw=166.5[ha]
水際線長 Lw=5919.2[m]
施設等の用途の間で親水空間の規模が大きく異なるため、二つのスケールが共存
している。今後は東京オリンピック 2020 の主要な敷地として用途転換が生じる
親水陸域係数α=0.300
保有水域係数β =0.521
ことが予想される。
親水係数αβ =0.156
有効水際線長 Lwʼ=923.0[m]
1944
1956
□道路率
5.3%
め、それに伴って倉庫・物流関係施設が建ち並んでいる。さらに首都高速湾岸線、
1936
1965
埋立期間 :1926.2~1966.11 埋立期間 :1963.9~1975.12
1975
33.4%
46.8% 27.7%
1989
1997
新木場1/Shinkiba-1
埋立目的 : 再開発用地・交通用地
□島概要
□親水空間分析
新木場1は、首都高速湾岸線に対して北側の「夢の島」 、南側の「新木場」と
CS 個数
Rank2:190
Rank3:182
Rank4:149
いう二つの埋立地から為っている島である。夢の島は運動公園や文化施設、清掃
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:2146 Rank2:484
Rank3:541
Rank4:734
工場のための用地として、新木場はその名の通り木場の用地として使われていた
建物数=1244
□用途構成 |Rank1:334
建物平均面積=359.8[ ㎡ ]
庫・物流関係施設と、夢の島や新木場の東側にある車両基地・ヘリポート用地の
陸域面積 SL =250.8[ha]
親水陸域面積 SLW=101.6[ha]
間で建築面積やオープンスペースの規模に大きな違いがあり、島としては内側と
水域面積 Sw=416.7[ha]
水際線長 Lw=11186.3[m]
外側で二つのスケールの親水空間が共存している。
島の北側は島全体でもここにしかないマリーナ地区となっており、小型船舶が
親水陸域係数α=0.405
保有水域係数β =0.624
大量に停留している。
親水係数αβ =0.253
有効水際線長 Lwʼ=2829.7[m]
1956
1965
□道路率
8.0%
が、現在では産業転換に伴って、関連企業の数は激減している。また、木場の倉
1944
埋立期間 :1939.7~1982.7
1975
27.3%
8.8% 64.8%
9.3%
1989
1997
新木場2/Shinkiba-2
埋立目的 : 再開発用地・交通用地
□島概要
□親水空間分析
新木場2は、当初は再開発用地として埋立造成されたものの、木場として活用
CS 個数
|Rank1:197
Rank2: 93
Rank3: 92
Rank4: 81
され、産業転換以後も殆どその様相を変化させることなく維持されている島であ
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:385
Rank2:353
Rank3:349
Rank4:268
る。そのため、用途は倉庫・物流関係施設と工場がその殆どを占めており、水際
建物数=444
□用途構成
建物平均面積=428.0[ ㎡ ]
□道路率
6.4% 17.4%
線沿いに奥行の深い建物が所狭しと建ち並んでいる。島の西側以外は細分化され た櫛状の親水空間が形成されている。
陸域面積 SL =50.0[ha]
親水陸域面積 SLW=16.3[ha]
また、かつて木場として盛隆していたことから、必然的に島の外周部が占拠さ
水域面積 Sw=166.4[ha]
水際線長 Lw=4121.2[m]
れ、結果として余剰の空間に道路が敷設されている形となっている。そのため、
島全体でも道路率の値が低くなっている。
親水陸域係数α=0.325
保有水域係数β =0.769
親水係数αβ =0.250
有効水際線長 Lwʼ=1030.5[m]
1965
埋立期間 :1939.7~1982.7
1975
40.0%
1989
50.4%
1997
若洲 /Wakasu
埋立目的 : 埠頭用地・交通用地・再開発用地
□島概要
□親水空間分析
若洲は、島の西側は埠頭用地とそれに関連する倉庫・物流関係施設、東側は大
CS 個数
規模なゴルフ場によって構成されている島である。その東西の用途を分断する位
CS 平均面積 [ ㎡ ]|Rank1:8674 Rank2:1202 Rank3:1193 Rank4:1200
置に、現在では東京港の顔の一つとなっている東京ゲートブリッジへ繋がる道路
建物数=267
□用途構成 |Rank1: 120 Rank2:
81 Rank3:
69 Rank4:
埋立期間 :1967.3~1993.3
□道路率
60
建物平均面積=623.4[ ㎡ ]
8.7%
18.4%
が敷設されている。用途としてはその殆どが倉庫・物流関係施設となっているが、 敷地としてはゴルフ場が最も大きく、それに伴って巨大な親水空間が形成されて
陸域面積 SL =190.8[ha]
親水陸域面積 SLW=129.3[ha]
いる。しかしながら、それは私有のオープンスペースであること、西側の親水空
水域面積 Sw=367.0[ha]
水際線長 Lw=6806.5[m]
間も埠頭用地のため不可侵領域であることから、広大な親水空間を保有している
にも関わらず、その殆どが一般には開放されていない。
親水陸域係数α=0.677
保有水域係数β =0.660
親水係数αβ =0.447
有効水際線長 Lwʼ=3041.4[m]
1975
83.8%
1989
1997
2.3.2 用途分布 前記の凡例を元に東京ベイエリアの 34 島を塗り分けたのが用途 分布図である (fig.20)。 この図を見ると、まず集合住宅については、より内陸部に近い 芝浦地区や佃・月島、枝川・塩浜、豊洲、東雲、辰巳といった島 に多く存在していることが分かる。また、お台場の北側や有明、 大井の中央西側 ( 八潮地区 ) にも存在している。事務所建築物は 芝浦地区や天王洲、豊洲に集中しており、専用商業施設は豊洲や お台場、有明に巨大な面積を有するものが目立つ。 一方、港湾都市を支える物流機能である倉庫・運輸関係施設は やはり埠頭用地を有する芝浦埠頭や品川埠頭、大井、お台場等に 数多く存在するほか、新木場や若洲といった東側の島にも集中し ている。これらの島には供給処理施設も同時に存在しているもの が多い。また、新木場や南側に位置する昭和島、京浜島、城南島 といったおおよそ世間一般からは極めて認知度の低いであろう島 では工場、倉庫・運輸関係施設、供給処理施設が集積し、東京圏 を下支えしていることが分かる。 それ以外にも、勝島や平和島のように、競馬場、競艇場といっ た賭博施設が今尚、島の性格付けをする上で重要な機能となって いる島もある。 このように、東京ベイエリアはイメージアビリティの高い豊洲 やお台場のような島だけでなく、その他多くの異なる機能を有し た島々によって総体的に構成されていることを念頭に置いておき たい。
官公庁施設 教育文化施設 厚生医療施設 供給処理施設 事務所建築物 専用商業施設 住商併用建物 宿泊・遊興施設 スポーツ・興行施設 独立住宅 集合住宅 専用工場
fig.20 用途分布図
住居併用工場 倉庫・運輸関係施設
133
さらに、この用途分布図をもとに、島ごとの総建物面積に対 6.7%
13.3%
7.3% 12.0%
5.9%
39.3%
46.5%
12.9%
43.7%
38.5%
31.0%
豊海
42.8%
6.2%
52.9%
38.7%
月島
する用途別建築面積を算出し、円グラフ化したものを図示する
34.7%
7.5%
(fig.21)。これによって、島ごとの用途構成がより明確に理解で
11.9%
きる。色が付いているものは用途分布図における凡例を参照して
27.5%
22.2%
19.9%
勝どき
44.5%
7.9%
13.1%
17.4%
6.5%
5.9%
11.8%
8.5%
5.2%
塩浜2
塩浜1
佃
おり、かつ 5%以上の割合を占めている用途のみ色を付けている。
日の出 10.0% 16.9%
7.8% 16.2%
42.9%
62.6%
11.7%
54.7%
26.3%
34.2%
24.4%
10.2%
10.8%
22.7%
芝浦2
38.0%
39.5%
14.6%
17.9%
28.8%
11.3%
28.3%
枝川1
豊洲
27.2%
7.1% 10.4%
14.6%
24.6%
22.9%
12.2%
晴海 芝浦3
9.9%
7.2%
5.7%
13.0%
枝川2
23.6%
潮見
9.2%
62.3%
5.3%
14.2%
52.1%
46.8%
64.8%
新木場1
辰巳
5.5%
6.8% 40.3%
40.0%
52.9%
31.1%
新木場2
品川埠頭
6.5%
10.9%
若洲
関係で、倉庫・物流施設や専用工場が主用途となっており、極め て明確なゾーニングが為されていることが見て取れる。 また、島をある程度性質の似たもの同士でグルーピングすると、
8.5% 9.0%
この用途分布の円グラフをみてみると、内陸部寄りの島では最 る。一方、その外側には埠頭用地や物流のための幹線道路がある
50.4%
32.1%
港南
ど ) は反映されていない。そちらは不可侵領域図で図示する。
も主な用途が集合住宅や事務所建築物であることがより顕著であ
6.4%
5.1%
5.3%
8.8% 9.3%
27.7%
芝浦アイランド
9.6%
ということから設定している。 積が広大でも建築面積が小さいもの ( ゴルフ場やスポーツ施設な
8.0%
9.8%
15.7%
芝浦4
であろうという認識と、実際の数値の境界がおおよそ 5% である ただし、算出に用いた数値はあくまで建築面積であり、敷地面
芝浦埠頭
5.8%
26.2%
5% 以上としたのは、島ごとの用途を視覚的に把握する際に主用途
60.9%
場所によって用途分布の仕方に特徴があることが分かる。これは 37.4%
開発年代や目的によるところが大きいと考えられる。
34.8%
5.4%
天王洲
7.5% 12.6% 27.7%
東雲 5.0% 5.9%
5.0%
7.3%
16.4%
お台場
6.5%
7.0%
52.0%
10.7%
98.6%
フェリー埠頭
12.3% 27.0%
有明
57.9%
23.6%
大井
官公庁施設 教育文化施設
勝島
厚生医療施設 供給処理施設 事務所建築物
10.5%
15.1%
10.5% 70.5%
平和島
30.3%
専用商業施設
17.0%
住商併用建物
24.0% 44.0%
50.7%
53.9%
宿泊・遊興施設 スポーツ・興行施設 独立住宅
26.9%
28.2%
集合住宅 専用工場 住居併用工場
昭和島
京浜島
城南島
倉庫・運輸関係施設
fig.21 島別主要用途割合図 134
用途分布における特性を把握するために、まず島ごとにどれだ 5.9% 6.2%
44.5%
7.9%
11.8%
42.8%
13.1% 22.2%
勝どき
1670[ 個 ] 92.7[ ㎡ ]
晴海
243[ 個 ]
26.2%
62.6%
14.2%
62.3%
52.1%
26.3%
15.7%
芝浦3
芝浦4
151[ 個 ] 204.0[ ㎡ ]
5.9%
449.9[ ㎡ ]
芝浦アイランド 48[ 個 ]
34.7%
7.5%
52.9%
754.9[ ㎡ ]
9.9%
27.5%
塩浜1
塩浜2
178[ 個 ] 434.5[ ㎡ ]
15.1%
476.4[ ㎡ ]
60.9%
天王洲
361[ 個 ] 373.8[ ㎡ ]
231.3[ ㎡ ]
50.7%
625.3[ ㎡ ]
179.3[ ㎡ ]
573.6[ ㎡ ]
大井
752[ 個 ]
44.0%
390.0[ ㎡ ]
817.8[ ㎡ ]
58.0%
潮見
7.2%
勝島
433[ 個 ] 281.6[ ㎡ ]
38.0%
505.2[ ㎡ ]
□4種混合用途 場1
459.4[ ㎡ ]
37.4%
621.2[ ㎡ ]
725[ 個 ] 488.6[ ㎡ ]
れているかを検討していく。
1132.3[ ㎡ ]
34.8%
7.0%
5% 以上に着色
27.0%
東雲
次に、これらの島のそれぞれの用途がどのようにゾーニングさ
391[ 個 ]
12.3% 27.7%
556[ 個 ]
平和島
430[ 個 ]
12.6%
豊洲
456.6[ ㎡ ]
を抽出したものを以下にまとめた。
月島・日の出・品川埠頭・枝川1・枝川2・豊洲・辰巳・新木
5.0%
7.5%
22.9% 375[ 個 ]
島が6種混合であることが分かる。そこで、4種~6種混合の島
70.5%
23.6%
17.9%
城南島
1394[ 個 ]
29.0%
243.9[ ㎡ ]
28.2%
京浜島
7.1%
358[ 個 ]
で、用途が複数混合している島をピックアップすると、最も多い
佃・勝どき・芝浦アイランド・港南・天王洲・東雲・ 有明
269[ 個 ]
10.5%
5.4%
57.9%
品川埠頭
114[ 個 ]
27.2%
13.0%
24.0%
23.6%
26.9%
28.3%
さきほどの用途分布を円グラフ化したものを一覧にし、その中
晴海・潮見・塩浜2・お台場
10.5%
5.7%
10.4%
枝川2
348[ 個 ]
6.5%
53.9%
292[ 個 ]
枝川1
819[ 個 ]
11.3%
横に併記してある数値は平均建築面積と総建物数である。
□6種混合用途
52.9%
31.1%
けの用途が混合しているのかを詳細にみていく (fig.22)。島名の右
□5種混合用途
港南
298[ 個 ]
28.8%
14.6%
24.6%
17.0%
昭和島
39.5%
14.6%
11.9%
30.3%
芝浦埠頭
9.0%
5.2% 6.5%
38.7%
161[ 個 ]
5.5%
10.9%
32.1%
171[ 個 ] 270.1[ ㎡ ]
5.1%
6.5%
40.3%
芝浦2
91[ 個 ] 327.0[ ㎡ ]
8.5%
9.6%
54.7%
42.9%
34.2%
日の出
209[ 個 ] 876.2[ ㎡ ]
6.8%
10.8%
16.9%
43.7%
31.0%
5.3%
9.2%
16.2%
22.7%
520.4[ ㎡ ]
5.8% 7.8%
12.0%
12.2%
豊海
614[ 個 ] 170.1[ ㎡ ]
24.4%
10.2% 11.7%
38.5%
17.4%
月島
850[ 個 ] 112.6[ ㎡ ]
39.3%
46.5%
12.9%
19.9%
佃
13.3%
8.5%
7.3%
10.0%
島別用途割合
6.7%
有明
402[ 個 ] 1267.4[ ㎡ ]
官公庁施設 教育文化施設 厚生医療施設 供給処理施設
5.0% 5.9%
5.3%
7.3% 52.0%
10.7%
8.0%
9.8% 98.6%
16.4%
46.8%
8.8% 9.3%
27.7%
事務所建築物
6.4%
64.8%
40.0%
専用商業施設
8.7%
住商併用建物 宿泊・遊興施設
50.4%
スポーツ・興行施設
83.8%
独立住宅 集合住宅 専用工場
お台場
477[ 個 ] 1367.3[ ㎡ ]
フェリー埠頭 92[ 個 ] 1241.8[ ㎡ ]
辰巳
881[ 個 ] 284.4[ ㎡ ]
新木場1
1244[ 個 ] 359.8[ ㎡ ]
新木場2
444[ 個 ] 428.0[ ㎡ ]
若洲
267[ 個 ] 623.4[ ㎡ ]
住居併用工場 倉庫・運輸関係施設
fig.22 島別主要用途割合図一覧
135
東京ベイエリアの用途分布の仕方を分類すると以下の3タイプにな ・ゾーニングタイプ
東京ベイエリアの用途分布の仕方を分類すると以下の3タイプ
・部分的混合タイプ
になる (fig.23)。
・混合タイプ
・ゾーニングタイプ ・部分的混合タイプ
「ゾーニングタイプ」は用途がゾーニングされているように明確に
・混合タイプ
れている分布のタイプを指す。これは陸域面積が大きく交通用地 ( 埠
地や鉄道用地など ) を保有している島や、陸域面積が小さくかつ平均 「ゾーニングタイプ」は用途がゾーニングされているように明確 に分かれている分布のタイプを指す。これは陸域面積が大きく交 面積が大きい島に多い。
通用地 ( 埠頭用地や鉄道用地など ) を保有している島や、陸域面
「混合タイプ」は様々な用途が入り混じっているタイプを指す。こ
積が小さくかつ平均建築面積が大きい島に多い。
陸域面積が小さく、かつ平均建築面積が小さい島に見られる。
「混合タイプ」は様々な用途が入り混じっているタイプを指す。
「部分的混合タイプ」はゾーニングタイプと混合タイプの要素を併 これは陸域面積が小さく、かつ平均建築面積が小さい島に見られ
る。 たタイプである。島の一部に交通用地や再開発用地を保有している島 「部分的混合タイプ」はゾーニングタイプと混合タイプの要素を られる。
併せ持ったタイプである。島の一部に交通用地や再開発用地を保 有している島に見られる。
これをタイプごとに分類すると以下のようになる。
□ゾーニングタイプ 先ほど選出した島を、このタイプごとに分類すると以下のよう
になる。 晴海・お台場・芝浦アイランド・港南・天王洲・有明・日の出・品 □ゾーニングタイプ
頭・枝川1・辰巳・新木場1
晴海・お台場・芝浦アイランド・港南・天王洲・有明・日の出・
□部分的混合タイプ
品川埠頭・枝川1・辰巳・新木場1
潮見・塩浜2・佃・勝どき・東雲・豊洲 □部分的混合タイプ ゾーニングタイプ
fig.23 島別用途分布類型化
fig.9 島ごとの用途分布類型化
部分的混合タイプ
混合タイプ
潮見・塩浜2・佃・勝どき・東雲・豊洲 □混合タイプ □混合タイプ
月島・枝川2
月島・枝川2
136
6.2%
44.5%
7.9%
11.8%
42.8%
13.1% 22.2%
佃
月島
850[ 個 ] 112.6[ ㎡ ]
勝どき
1670[ 個 ] 92.7[ ㎡ ]
10.2%
晴海
243[ 個 ]
16.2%
62.6%
62.3%
52.1%
26.3%
15.7%
芝浦3
芝浦4
151[ 個 ] 204.0[ ㎡ ]
5.9%
449.9[ ㎡ ]
芝浦アイランド 48[ 個 ]
34.7%
7.5%
52.9%
754.9[ ㎡ ]
9.9%
27.5%
塩浜1
塩浜2
178[ 個 ] 434.5[ ㎡ ]
15.1%
港南
298[ 個 ] 476.4[ ㎡ ]
天王洲
361[ 個 ] 373.8[ ㎡ ]
31.1%
17.0% 50.7%
625.3[ ㎡ ]
枝川2
348[ 個 ] 179.3[ ㎡ ]
573.6[ ㎡ ]
24.0%
大井
752[ 個 ]
44.0%
390.0[ ㎡ ]
817.8[ ㎡ ]
勝島
433[ 個 ] 281.6[ ㎡ ]
7.2%
38.0%
豊洲
456.6[ ㎡ ]
37.4%
621.2[ ㎡ ]
725[ 個 ] 488.6[ ㎡ ]
の島と同様に物流施設を有していたが、それらが遊休化したこと
391[ 個 ] 1132.3[ ㎡ ]
によって、代替機能として集合住宅や事務所建築物が進出してき たためと考えられる。
34.8%
7.0%
50% 以上を占有
27.0%
東雲
556[ 個 ]
る。この現象が発生する要因としては、かつて芝浦地区もその他
12.3% 27.7%
22.9% 375[ 個 ]
対して建築面積が大きいため、機能が偏る傾向にあると考えられ
5.0%
7.5%
有明
402[ 個 ] 1267.4[ ㎡ ]
官公庁施設 教育文化施設 厚生医療施設 供給処理施設
5.0% 5.9%
5.3%
7.3% 52.0%
10.7%
98.6%
16.4%
46.8%
8.8% 9.3%
27.7%
事務所建築物
6.4%
8.0%
9.8%
64.8%
40.0%
専用商業施設
8.7%
住商併用建物 宿泊・遊興施設
50.4%
スポーツ・興行施設
83.8%
独立住宅 集合住宅 専用工場
お台場
477[ 個 ] 1367.3[ ㎡ ]
フェリー埠頭 92[ 個 ] 1241.8[ ㎡ ]
辰巳
881[ 個 ] 284.4[ ㎡ ]
新木場1
1244[ 個 ] 359.8[ ㎡ ]
fig.24 島別用途分布図一覧 ( 第一用途が 50% 以上を占める島 )
新木場2
444[ 個 ] 428.0[ ㎡ ]
若洲
267[ 個 ] 623.4[ ㎡ ]
きいゾーニングタイプの島や、お台場のように陸域面積が大きく
天王洲、塩浜1である。これらの島は陸域面積が小さく、それに
平和島
430[ 個 ] 459.4[ ㎡ ]
芝浦アイランドや天王洲のように陸域面積が小さく建築面積が大
いる島であるが、その中で例外なのが芝浦3・4、芝浦アイランド、
505.2[ ㎡ ]
70.5%
12.6%
17.9%
城南島
1394[ 個 ]
潮見
358[ 個 ] 243.9[ ㎡ ]
58.0%
23.6%
とは反対に、主要用途の数が少ない島が目立つ。しかし、中には
この中の大半の島は埠頭用地や物流施設、専用工場を保有して
269[ 個 ]
10.5% 29.0%
13.0%
28.2%
京浜島
27.2%
5.4%
57.9%
23.6%
26.9%
292[ 個 ]
枝川1
819[ 個 ]
28.3%
品川埠頭
114[ 個 ]
を抽出する (fig.24)。これらの島の多くは前述した混合用途タイプ
存在し、これらは主要用途の数が多い。
52.9%
10.5%
5.7% 7.1% 10.4%
14.6%
24.6%
231.3[ ㎡ ]
28.8%
11.3%
6.5%
53.9%
昭和島
39.5%
14.6%
11.9%
30.3%
芝浦埠頭
60.9%
のうち、第一用途 ( 最も割合の高い用途 ) が 50% 以上を占める島
建築面積も大きいうえ、交通用地を保有するゾーニングタイプも
5.5%
9.0%
5.2% 6.5%
38.7%
161[ 個 ]
171[ 個 ] 270.1[ ㎡ ]
5.1%
10.9%
32.1%
芝浦2
91[ 個 ] 327.0[ ㎡ ]
8.5% 40.3%
42.9%
34.2%
6.5%
9.6%
54.7%
43.7%
日の出
209[ 個 ] 876.2[ ㎡ ]
6.8%
10.8%
14.2%
16.9%
31.0%
5.3%
9.2% 26.2%
22.7%
520.4[ ㎡ ]
5.8% 7.8%
12.0%
12.2%
豊海
614[ 個 ] 170.1[ ㎡ ]
24.4%
11.7%
38.5%
17.4%
19.9%
39.3%
46.5%
12.9%
7.3%
10.0%
13.3%
8.5%
島別用途割合
6.7%
5.9%
一方で、島別の用途分布図から円グラフを作図したものの一覧
住居併用工場 倉庫・運輸関係施設
しかしながら、こうした島でも島と島の間にネットワークを形 成することによって、周辺の島々と一体的に用途多様性を創出す ることが可能ではないだろうか。つまり、島単体ではなく、相互 関係によって島面積の小ささによる用途多様性の欠陥を補完でき るのではないか、という仮説である。 そこで芝浦地域と枝川・塩浜地域を見比べてみる (fig.25)。 この両地域は他の島と比較すると陸域面積が小さいものの、周辺 にある複数の島々とネットワークを形成することで用途多様性を 創出し得る場所である。 しかしながら、芝浦地域は島ごとでも集合住宅と事務所建築物 の機能という類似性が見受けられる。反対に、枝川・塩浜地域は 集合住宅が目立つものの、部分的混合タイプや混合タイプを含ん でいることもあり、隣接する島ごとに異なる機能を保有している ことが分かる。これは用途多様性の観点から言えば、芝浦地域よ り明らかに優れていると言えるだろう。
fig.25 芝浦地域と枝川・塩浜地域の用途分布図 137
以上より、用途分布という観点において、部分的混合タイプが 特殊な島であると言える。それは、ゾーニングタイプと混合タイ プの要素を併せ持ち、ベイエリアにおけるノードの役割を担って いる可能性があるためである。部分的混合タイプが発生する条件 として、島の一部に交通用地や再開発用地を含んでいる傾向があ り、それは島内に東京ベイエリアで発生している居住機能やオフィ ス機能といった都市生活を行う上で一般的なもの以外の異なる機 能を同時に保有していることを意味する。従って、ある境界線を 境にして、異なる二つのスケール ( ヒューマン / ソーシャルスケー ル ) が共存あるいは衝突しているということになる。ここで、ヒュー マンスケールとは文字通り、ある人間個人の身体に基づくスケー ルであるが、もう一方のソーシャルスケールを、ある群集を想定 して用いられたスケールと規定する。つまり、ヒューマンスケー ルとは個人的な身体感覚に基づくスケール、ソーシャルスケール は不特定多数の人間が存在することを想定したスケールである。 この二つのスケールの間には形成時期にタイムラグがあり、こ のような現象が発生するのは東京ベイエリアにおける島の規模ゆ えであろう。用途分布は島におけるスケールの衝突とその境界線、 あるいは時系列的ズレによる多様性を示唆している。 そのことから、部分的混合タイプが島単体としても多様性をもっ た用途配置をしていると言える。つまり、用途分布の特性を把握 するためには、用途混合数も重要だが、それ以上に東京ベイエリ アにおける歴史的蓄積を示唆するものとして、部分的混合タイプ が重要である。 用途分布という観点で導き出された「部分的混合タイプ」の島 に該当するのは以下である。 ・佃
・勝どき
・芝浦埠頭 ・塩浜2 ・枝川1 ・潮見 ・東雲
138
2.3.3 親水空間 前述の通り、海外港湾都市における親水空間図と同様の手法で 東京ベイエリアの島 34 を塗り分けた (fig.26)。 この図を見てわかるように、東京湾に面して Rank1 の大きな親 水陸域が広がっているのが分かる。しかしながら、後々不可侵領 域の項目でも触れるが、これらの親水陸域は実際には殆どが埠頭 用地で、一般の人間に開かれたオープンスペースではない。ある いは再開発用地であるために、今後の発展の仕方に左右される豊 洲・晴海・有明、私有オープンスペースとなっている若洲、供給 処理施設の敷地となっている昭和島など、様々な用途によって親 水空間が阻害されている。一方で、辰巳や新木場1の北側にある 広大な親水空間は公園になっており、それ以外の島にも公園が存 在している箇所が散見される。
fig.26 親水空間図 139
それぞれの島において形成されている親水空間を比較すると、 ある共通点があることが分かる。 一つは、異なる用途や大きさの島でも形成されている親水空間 に類似性がみられる点である (fig.27)。これは月島・勝どき周辺の 親水空間図と新木場1.2の親水空間図をピックアップしたもので ある ( どちらも同スケール ) が、前者は水際線沿いに独立住宅や 集合住宅などが建っている一方、後者は殆どが専用工場や倉庫・ 物流施設となっている。それにも関わらず、親水空間自体は外周 部に線状の Rank:1 が、そして建物の隙間に Rank:2,3,4 が入り込で くる、という構成が同様である。つまり、用途が異なったとしても、 オープンスペースの作られ方は大差無いということを意味し、極 めて一様な親水空間であることが指摘できる。 もう一つが、殆どの島に該当するのだが、島の中に白い部分つ まり非親水陸域が多分に含まれているということである (fig.28)。 これこそが東京ベイエリアにおける最大の欠陥であると言える。 というのも、それは島における殆どの場所が内陸部と同じ都市環 境によって形成されていることを意味するためである。 fig.27 月島・勝どきの親水空間図と新木場1、2の親水空間図
東京ベイエリアにおいては、島の外周部は内向きに建物が林立 しているため、親水空間を内側まで引き込むことが出来ず、かつ 親水空間自体も一様なものとなってしまっている。それによって、 たとえ島に居たとしても、内陸部と大差ない感覚しか抱くことが 出来ず、辛うじて島の外周部にその片鱗が散見するのみである。 従って、この現状をいかに改善し得る提案をするかが鍵となる。
fig.28 豊洲の親水空間図
140
そこで、東京ベイエリアの親水空間を海外港湾都市の再開発地 芝浦 2,3,4, アイランド
Canary Wharf (London)
区における親水空間と比較する。 ここでは仮に芝浦地区をモデルとして選定する。芝浦地区を運 河によって縁取られた群島とみなすと、河型の港湾都市と形態的 な類似性をある程度持っていると捉えられる。そのため、比較的 計画面積や総建物面積が近いロンドンと比較してみる (fig.29)。 すると、明らかに総建物個数が異なることがわかる。芝浦地域 はロンドンのおおよそ 10 倍の建物が建っているのである。それに よって親水空間は細分化され、島の大きさが小さいにも関わらず、 外周部に線状に形成せざるを得ない環境がつくられている。しか しながら、中でも芝浦アイランドのように建築面積が大きくゾー ニングされている島であれば、ロンドンの親水空間との類似性が 高まっている。
総陸域面積 総建物面積 総建物個数
51.831 ha 18.566 ha 531 個
fig.29 芝浦地区とロンドン再開発地区の親水空間比較
総陸域面積 60.124 ha 総建物面積 20.924 ha 総建物個数 57 個
ロンドンだけでなく、他の河型港湾都市の多くは、もともとドッ クだった場所が再開発によって用途転換したため、大きなオープ ンスペースと親水空間を保有しているケースが目立つ。一方で、 それらはヒューマンスケールを逸脱したソーシャルスケールをも とにつくられているため、対岸までの距離が遠い、必要以上に巨 大な親水空間を創出しているといった問題点がある。 それに対し、東京ベイエリアの中には芝浦地域を筆頭に、漁業 や舟運が盛んだった背景もあり、ヒューマンスケールを維持した 島が形成されているとも言える。それが総建物個数にまで反映さ れていると考えると、それは東京ベイエリア固有の親水空間特性 の一側面と言えるのではないだろうか。
141
海外港湾都市と比較すると、日本港湾都市、特に東京ベイエリ アは未熟な港湾都市と言わざるを得ず、無闇な計画によってこれ らの親水空間が創出されてしまっている現状にある。また、水際 線沿いの建物は、単体では親水性を保有しているかもしれないが、 都市のオープンスペースに親水空間を形成するという認識が欠如 していることが指摘できる。 しかしながら、これらの東京ベイエリアにおける親水空間の特 性は東京固有のものであり、海外港湾都市にはつくることができ ない親水空間を創出できる可能性を秘めている。その中でヒント になるのが、非親水陸域の存在とヒューマンスケールの親水陸域 である。 東京ベイエリアと比較して、海外港湾都市は殆どが親水陸域に よって埋め尽くされているとも言える。つまり建物を除いて親水 空間から逃れられない環境が創り出されているのだ。それはか えって多様性に欠ける空間構成なのではないだろうか。一方、東 京ベイエリアは大量の非親水陸域が存在している代わりに、島の 外周部の親水陸域と、その内側の非親水陸域という構図を壊す逃 走線をあらゆる場所に引き得る。このように捉えれば、これまで にない親水空間の創出可能性が広がるだろう。非親水陸域に突発 的に介入する親水陸域、という空間構成は海外港湾都市には創出 し得ない。また、海外港湾都市の多くは船舶による海運が主なた め、ヒューマンスケールを逸脱したソーシャルスケールに基づく 対岸距離、親水空間の大きさなどが見受けられる。それは東京ベ イエリアのコンテナ埠頭にも該当することだが、その裏側にある 内部護岸化された島々の間は、もともと舟運が盛んだったことを 活かして極めてヒューマンスケールな空間が創り出され、あるい は残されている。親水空間が細分化され水際線に対して奥行が浅 いのは、換言すればヒューマンスケールな空間が多分に広がって いるということを意味し、これは東京ベイエリアにおける固有性 の一つであると言える。つまり、島の中にヒューマンスケールと ソーシャルスケールを共存させている島は親水空間として多様性 を持っている。
142
ここまでの論述を総括して、次の2点を東京ベイエリアの特性 として提示することができる。すなわち、非親水陸域が陸域面積 の多くを占めていること、ヒューマンスケールとソーシャルスケー ルの親水陸域が併存していることが考えられる。 これらのパターンを全て満たす島において、ある地点の親水陸 域を操作することで、用途の多様性を包含した親水空間を提案し 得る。 その可能性をもった島を以下にまとめる。 ・佃
・芝浦埠頭 ・品川埠頭 ・潮見 ・大井 ・豊洲 ・辰巳
・新木場1
143
2.3.4 不可侵領域 前述の分類をもとに色分けしたものを図示する (fig.30)。この図 をみてみると、既に親水空間の項目で述べたように、不可侵領域 と大規模な Rank:1 の親水空間 (fig.26) が殆ど一致していることが 分かる。 芝浦埠頭・品川埠頭・大井・城南島・有明・お台場・フェリー埠頭・ 辰巳・若洲は東京湾側に対して埠頭用地を保有しており、それら は親水性が高い領域でありながら同時に不可侵領域でもある。ま た、それらはすべて防潮堤の外側にあり、元来一般の人間が入る ことを想定していないオープンスペースであることが分かる。同 様のことが新木場1の操車場・ヘリポートにも言える (fig.31)。ま た、防潮堤の内側にある不可侵領域も存在する。それは潮見・豊洲・ 有明のような再開発用地や、お台場の臨時駐車場、勝島・昭和島 の供給処理施設などである。しかし、中にはまだ開発が行われて いないか、あるいは予定されていない未利用地も存在する。それ は潮見・城南島・若洲に存在し、再開発の余地が残されている。 防潮堤による明確な機能的ゾーニングが為されていることは明 らかで、おおよそ防潮堤の内側をヒトの領域、つまり一般の人間 が生活し行動する領域とすれば、その外側をモノの領域、つまり 物流拠点としての領域と定義するのも可能であろう。ただ、中に は特殊なケースも存在しており、昭和島は統計上、居住者がいな いにも関わらず防潮堤に囲まれている。これは物流拠点・供給処 理施設の存在が大きいことが想定される。また、防潮堤は内陸側 から線状・帯状に配されており、それを島の埋立やヒトの領域の 拡大に応じて、東京湾側へ拡張していくのをセオリーとしている。
防潮堤 防潮堤予定地 内部護岸
公園、広場 運動場
内部護岸予定地
学校運動場
水門
駐車場
公共
操車場
準公共
ターミナル
私有
する可能性について考察する。その可能性の一つが埠頭用地にお ける港湾機能の衰退である。
ヘリポート 工事中・未利用地
不可侵領域
fig.30 不可侵領域図
これらの親水性を有した不可侵領域が、今後、可侵領域に変貌
fig.31 領域別色分け図
144
[1]
近年の東京ベイエリアにおける海上出入貨物の係留施設別推移
30,000,000
をみてみると (fig.32)、大井コンテナ埠頭が圧倒的な物流量を占め ており、外貿であれば全体の 50%、内外貿合わせても全体の 30%
25,000,000
の流通量を誇る。続いてフェリー埠頭やお台場の青海コンテナ埠 頭、品川埠頭が上位を占めている。従って、これらの埠頭は今後 も東京圏の生命活動を支える重要な物流拠点であり続けるだろう。
20,000,000
そこから相対的に考えると、日の出や芝浦埠頭、辰巳のような規 模の小さい埠頭は縮小あるいは淘汰される可能性がある。その場 15,000,000
合、それまで埠頭用地だったために不可侵領域であった場所が解 放されることで、一般の人間の活動領域が拡大することが考えら れる。その際に、防潮堤を改めて計画し直すことで、ヒトとモノ
10,000,000
の境界が変化し得るのではないだろうか。また、それらの埠頭が 衰退するからといって、一概に無くしてしまえばいいかというと、 それも否定しなければならない。というのも、物流機能を廃して
5,000,000
しまうと、その島は以前よりも閉鎖的になってしまい、モノの交 0
換可能性を低減させるという点で、より一様な都市環境に陥って 2002
2003
芝浦ふ頭 品川コンテナ
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
芝浦物揚場
日の出ふ頭
竹芝ふ頭
品川岸壁
品川外貿
品川内貿
晴海ふ頭
月島ふ頭
2012
10号西岸壁
10号東岸壁
東京港フェリーふ頭
辰巳ふ頭
青海コンテナふ頭(公共)
大井水産物ふ頭
大井食品ふ頭(OL)
大井食品ふ頭(OM)
大井食品ふ頭(ON)
若洲内貿ふ頭
15号地木材ふ頭
若洲建材ふ頭
大井建材ふ頭
城南島HI
官公庁(月島)
その他
青海コンテナふ頭(埠頭㈱)
お台場ライナーふ頭
大井コンテナふ頭
fig.32 海上出入貨物係留施設別推移 (2002 ~ 2013 年 ) ( 筆者作成 )
2013
しまう可能性がある。従って、機能が衰退したとしても、すべて 更新してしまうのではなく、部分的には保存、更新することが重 要である。 また、現在ではまだ再開発が行われておらず、今後再開発が行 われる可能性がある場所として、①潮見や城南島、若洲のように 未利用地を有している島、②塩浜2や新木場1のように操車場跡 地を有している島、③お台場のように大規模な駐車場を有してい る島、の3パターンが想定される。これらの土地は、再開発の内 容によっては、将来的に人びとに開放されることになるであろう。 しかしながら、これらの敷地の性質としては東京ベイエリア固有 のものとは言えず、内陸部でも同様の敷地条件が発生し得るとい う点で、埠頭用地に関連する不可侵領域の可侵領域化には見劣り すると言わざるを得ない。 以上のことから、不可侵領域が何らかのかたちで可侵領域に変 化する可能性を有している領域を保有する島として、特に東京ベ イエリアの固有性である埠頭用地の不要化に着目すると、以下の 島に絞られる。 ・日の出 ・芝浦埠頭 ・辰巳 [1] 東京港港勢 ( 概報 ) 港湾統計
145
2.3.5 高層建築物 前述の分類により色分けしたものを図示する (fig.33)。これに よると、芝浦地域や佃・月島のような陸域面積の小さい内陸側の 島に多くの高層建築物が密集していることが分かる。また、豊洲 や臨海副都心には建築面積の大きな高層建築物が建設されており、 晴海と併せて今後ますます増えることが予想される。辰巳には都 営・公営の団地群が、大井には UR 都市再生機構と都営・公営の 団地が混在しているのが特徴的である。 なお、分譲賃貸マンションは、もともと分譲マンションとして 売り出していたものを、一部あるいはすべて賃貸マンション化さ せたものを指す。しかし、すべてを賃貸マンション化させた分譲 マンションを特定するのは不動産情報に明記されていない場合を 除いて困難なため、原則として分譲賃貸マンションは分譲部分が 残されているものとして考える。 ここで、高層建築物における権利者の多少によって、その建築 物が一括して更新可能か、あるいはそれが難しく部分的な改修を せざるを得ないのか、等といった可能性を考察する。 そのために、今回プロットした高層建築物を「権利者:多」と「権 利者:少」の2パターンに分類した。内訳を以下にまとめる。 □権利者:多 賃貸ビル・分譲賃貸マンション・分譲マンション □権利者:少 自社ビル・賃貸マンション・UR 都市再生機構・都営公営
賃貸ビル 自社ビル 分譲賃貸マンション
権利者の多少は各用途ごとに相対的に規定している。
賃貸マンション 分譲マンション
fig.33 高層建築物図
UR 都市再生機構
権利者:多
都営・公営
権利者:少
fig.34 高層建築物の権利者割合別色分け図
オフィスビルにおいては、「自社ビル」はある一人のプレイヤー が更新を意思決定できる点で権利者:少に該当し、反対に「賃貸 ビル」は賃貸している他社の存在があるため権利者:多に該当する。 集合住宅においては、 「賃貸マンション」「UR 都市再生機構」「都 営公営」は行政あるいは民間企業という単一のプレイヤーが保有 しているため権利者:少に該当している一方、「分譲賃貸マンショ ン」や「分譲マンション」はマンション内に地権者とも言える多 数の世帯を抱え込んでいるという点で権利者:多となる。 以上の分類を元に再度色分けしたものを作図した (fig.34)。権利 者:多を赤、権利者:少を青としている。 146
11%
19%
18% 24%
16%
佃
月島
850[ 個 ] 112.6[ ㎡ ]
22%
勝どき
92.7[ ㎡ ]
33%
43%
60%
66%
74%
1670[ 個 ]
32%
16%
22%
60%
65%
65%
8%
18%
24%
豊海
614[ 個 ] 170.1[ ㎡ ]
晴海
243[ 個 ] 520.4[ ㎡ ]
日の出
209[ 個 ] 876.2[ ㎡ ]
芝浦2
91[ 個 ] 327.0[ ㎡ ]
171[ 個 ] 270.1[ ㎡ ]
1% 12%
21%
34%
50%
204.0[ ㎡ ]
27%
21%
62%
63%
30%
芝浦4
151[ 個 ]
15%
63%
29%
54%
芝浦3
42%
11%
16%
22%
28%
161[ 個 ] 449.9[ ㎡ ]
98%
芝浦アイランド
48[ 個 ]
754.9[ ㎡ ]
芝浦埠頭
港南
298[ 個 ] 476.4[ ㎡ ]
天王洲
361[ 個 ] 373.8[ ㎡ ]
7% 6%
19%
70%
塩浜1 0%
178[ 個 ] 434.5[ ㎡ ]
1%
231.3[ ㎡ ] 4%
0%
76%
79%
枝川1
819[ 個 ]
昭和島
9%
292[ 個 ] 625.3[ ㎡ ] 5%
京浜島
348[ 個 ] 179.3[ ㎡ ]
大井
752[ 個 ]
1%
枝川2
潮見
358[ 個 ] 243.9[ ㎡ ]
勝島
433[ 個 ] 281.6[ ㎡ ]
430[ 個 ] 459.4[ ㎡ ]
平和島
8%
77%
100% 1394[ 個 ]
城南島 0%
0%
1132.3[ ㎡ ]
375[ 個 ] 456.6[ ㎡ ] 1%
7%
15%
31%
817.8[ ㎡ ]
391[ 個 ]
0%
0%
1%
95%
390.0[ ㎡ ]
505.2[ ㎡ ]
95%
49%
100%
4% 2%
91%
20%
99%
573.6[ ㎡ ]
269[ 個 ]
2%
75%
塩浜2
品川埠頭
114[ 個 ]
22%
15%
14%
11% 72%
6%
11%
22%
1%
豊洲
556[ 個 ] 621.2[ ㎡ ]
0%
93%
東雲
725[ 個 ] 488.6[ ㎡ ]
0%
24%
有明
402[ 個 ] 1267.4[ ㎡ ]
島別総建築面積に対する高層建築物の権利者別割合
4%
73%
100%
めているのかを円グラフを用いて図示する (fig.35)。 これらの島のうち、高層建築物を大量に保有している島には共 通性がある。それはすでに他の章でも触れたが、そのプロセスを 再度まとめる。 ①殆どが宅地造成を目的として初期に埋め立てられた島 ②第二次世界大戦期、軍事拠点や倉庫用地として使用 ③ 1970 年代後半に生じた産業転換によるニーズの変化やコンテナ リゼーションによって遊休化 ④現在の姿へ変化し始める このプロセスを経た島を以下にまとめる。 ・佃 ・豊海 ・芝浦2,3,4、アイランド ・芝浦埠頭 ・塩浜1 ・豊洲 ・東雲 これらの島の多くは陸域面積が小さく、かつ建築面積が大きかっ たために、島全体を一体的に再開発可能だった。しかし、その再 開発によって建てられた高層建築物は、権利者が多いものが混在 してしまい、一体的開発が非常に難しいのが現状である。それは 結果として、プレイヤーの数が多く将来的なヴィジョンを提示す ることが困難な、短期的な再開発に陥っていることを示す。
3% 86%
さらにそれが島ごとの総建築面積に対してどの程度の割合を占
99%
100%
100%
その他の建築
お台場
477[ 個 ] 1367.3[ ㎡ ]
フェリー埠頭 92[ 個 ] 1241.8[ ㎡ ]
辰巳
881[ 個 ] 284.4[ ㎡ ]
新木場1
1244[ 個 ] 359.8[ ㎡ ]
新木場2
444[ 個 ] 428.0[ ㎡ ]
若洲
267[ 個 ] 623.4[ ㎡ ]
権利者:多 権利者:少
fig.35 島別総建築面積に対する高層建築物の権利者別割合一覧
147
しかしながら、これらの島の中でも、部分的に権利者の少ない 高層建築物が密集しているスポットが存在する (fig.36)。それを以 下にまとめる。 ①佃 ②芝浦4 ③潮見 ④豊洲 ⑤東雲 ⑥お台場 ⑦辰巳 ⑧大井 さらにこれを高層建築物の分類別にタイプ分けすると、以下の fig.36 高層建築物のうち権利者:少が密集しているスポット
ようになる。 ①佃 賃貸マンション・UR・都営公営 →タワーマンション型 ②芝浦4 自社ビル →自社ビル型 ③潮見 自社ビル・賃貸マンション・UR →混合型 ④豊洲 UR・都営公営 →団地型 ⑤東雲 UR →団地型 ⑥お台場 UR・都営公営 →タワーマンション型 ⑦辰巳 賃貸マンション・都営公営 →団地型 ⑧大井 UR・都営公営 →団地型 これらの島は部分的な再開発ができる可能性がある。特に、団 地型は単一のプレイヤーが所有していることから、今後大規模再 開発が行われる可能性を有している。
148
さらに、権利者:少の高層建築物を別の用途に更新することで、 島の第一用途が塗り替えられる、つまり島の性質が一変する可能 性のある島を抽出する。 まず、それぞれの島の第一用途によって塗り分けたものを図示 する (fig.37)。これが別の色に変化する可能性を有している島を検 討する。これと島別主要用途割合図一覧 (fig.8) と島別総建築面積 に対する高層建築物の権利者別割合図一覧 (fig.18) を比較する。こ の際、権利者:少の高層建築物の用途と主要用途の相関性を把握 しなければならない。第一用途と権利者:少が一致している場合 は変化させやすい傾向にあるが、一致していない場合はそれが難 しいためである。 その中で、大規模資本型の再開発が行なわれている島と、現時 点では非資本型の開発までしか行われていない島の2つに分類し、 それぞれ比較考察する。 □大規模資本型再開発 佃・勝どき・晴海・芝浦2,4、アイランド・豊洲・東雲 □非資本型開発
港南・塩浜2・枝川1,2・潮見 fig.37 第一用途による島別色分け図
前者は部分的に再開発することで島の色すなわち用途が変わり 得る。その内容の如何によって、長期的 / 短期的な再開発かどう かを左右することも可能であると言える。だが、豊洲・晴海は今 後、東京オリンピック 2020 以後に集合住宅が建設される可能性が 高く、色が塗り替わる可能性も長期的な再開発になる可能性も低 いだろう。 後者は大規模資本型の再開発用地として開発される可能性があ るが、一方でそうでない再開発を行い得る島であるとも言える。 その再開発の手法を具体的に明示することは現時点では難しいが、 念頭に置いておく必要がある。 これらはあくまで高層建築物の将来的な再開発に対するポテン シャルの段階での議論であるが、すでに高層建造物が数多く進出 してきている東京ベイエリアの中で、それらにも種類があること、 それによって今後の将来像に影響を及ぼし得ることが検討できる。 また、高層建築物自体の良し悪しについては別途議論を要する。
149
2.3.6 交通インフラ 首都高速 9 号深川線
前述の方法によって、東京ベイエリアにおける島に対して、道
首都高速 10 号晴海線
路がどのように構成されているかを図示した (fig.38)。作図に用い た道路は GL と同一平面上に存在するものであり、首都高速道路 やレインボーブリッジ等のような高架状に形成されている道路は
首都高速 1 号羽田線 東京モノレール
首都高速湾岸線 ゆりかもめ
対象外としているため、それらについては後述する。また、これ らの高架道路は基本的にその下に同一幅員以上の道路を有してい るため、おおよその外形は図から読み取れることとする。 この図を見れば明らかなように、城南島―大井―お台場―有明
首都高速 11 号台場線
―辰巳―新木場1にかけて抜けている「首都高速湾岸線」が最も 主要な交通経路であり、ヒトの領域とモノの領域を分け隔てる強 力な境界線となっていることが分かる。また、不可侵領域図 (fig.30) と照合すると、特にお台場と有明では顕著だが、防潮堤によって 二分された島を更に二分するようにこの首都高速湾岸線が貫入し ていることが分かる。そして辰巳と新木場1では、その防潮堤と 首都高速湾岸線の間の領域に公園が配置されている (fig.31)。 他の主要な道路として、日の出―芝浦埠頭―港南―天王洲―勝 島―平和島―昭和島を通る「首都高速1号羽田線」下と、塩浜2 ―枝川2―潮見―辰巳を通る「首都高速9号深川線」下である。 他にも、有明―豊洲―晴海―勝どきを通る「首都高速 10 号晴海線」 下やそれに平行して現在建設中の「環状二号線 ( 通称:新虎通り )」 がある。また、海上に跨っているためここには表記されないが、 「首 都高速 11 号台場線 ( 通称:レインボーブリッジ )」や「東京ゲー トブリッジ」も東京ベイエリアを繋ぐ主要な交通網であり顔とし て、重要な要素である。
fig.38 道路構成図
150
佃
月島
850[ 個 ] 112.6[ ㎡ ]
92.7[ ㎡ ]
19.2%
32.8%
芝浦3
1670[ 個 ]
芝浦4
151[ 個 ] 204.0[ ㎡ ]
17.5%
161[ 個 ] 449.9[ ㎡ ]
21.8%
30.5%
勝どき
614[ 個 ] 170.1[ ㎡ ]
22.5%
芝浦アイランド 48[ 個 ]
754.9[ ㎡ ]
23.3%
22.8%
豊海
243[ 個 ] 520.4[ ㎡ ]
31.9%
芝浦埠頭
298[ 個 ] 476.4[ ㎡ ]
32.8%
25.7%
晴海
209[ 個 ] 876.2[ ㎡ ]
26.1%
港南
361[ 個 ] 373.8[ ㎡ ]
24.6%
43.8%
日の出
91[ 個 ] 327.0[ ㎡ ]
20.6%
天王洲
114[ 個 ] 573.6[ ㎡ ]
29.2%
芝浦2
171[ 個 ] 270.1[ ㎡ ]
島別道路率
30.2%
32.1%
比較する (fig.39)。道路率とは、島面積に対する道路の割合を指す。 道 路 率 の う ち、 全 体 を 大 き く 20% 未 満、20% ~ 30% 未 満、 30% 以上の 3 タイプに分けると以下のようになる。前提として、 道路率が高い方が島内における分岐数が多く、移動の多様性が多 い可能性があると仮定する。3 タイプへの分類の仕方については、 東京ベイエリアにおいて、大型でありかつゾーニングタイプの島 (= 街区面積が大きく移動に制約が生じている島 ) を振り分ける基準
34.2%
品川埠頭
ここで、各島の陸域面積に対する道路面積の割合を表す道路率を
が 30% 前後であることに起因する。 □ 20% 未満
269[ 個 ]
芝浦4・塩浜1・勝島・新木場2・若洲
505.2[ ㎡ ]
□ 20% ~ 30% 未満
15.0%
豊海・晴海・芝浦2・芝浦アイランド・港南・天王洲・塩浜2・
29.8%
枝川1・潮見・平和島・昭和島・京浜島・大井・城南島・豊洲・ 東雲・有明・お台場・フェリー埠頭・新木場1
塩浜1
塩浜2
178[ 個 ] 434.5[ ㎡ ]
20.2%
819[ 個 ] 231.3[ ㎡ ]
26.9%
枝川1
348[ 個 ] 179.3[ ㎡ ]
23.7%
枝川2
358[ 個 ] 243.9[ ㎡ ]
22.2%
潮見
433[ 個 ] 281.6[ ㎡ ]
20.6%
勝島
430[ 個 ] 459.4[ ㎡ ]
25.8%
平和島
□ 30% 以上
391[ 個 ] 1132.3[ ㎡ ]
佃・月島・勝どき・日の出・芝浦3・芝浦埠頭・品川埠頭・枝川2・ 辰巳
26.9%
以上の3タイプのうち、特徴的な道路構成として考えられる 20% 未満と 30% 以上の島について詳細にみていく。 昭和島
京浜島
292[ 個 ] 625.3[ ㎡ ]
25.4%
お台場
477[ 個 ] 1367.3[ ㎡ ]
752[ 個 ] 390.0[ ㎡ ]
28.3%
フェリー埠頭 92[ 個 ] 1241.8[ ㎡ ]
大井
1394[ 個 ] 817.8[ ㎡ ]
33.4%
辰巳
881[ 個 ] 284.4[ ㎡ ]
城南島
375[ 個 ] 456.6[ ㎡ ]
27.3%
新木場1
1244[ 個 ] 359.8[ ㎡ ]
豊洲
556[ 個 ] 621.2[ ㎡ ]
17.4%
新木場2
444[ 個 ] 428.0[ ㎡ ]
東雲
725[ 個 ] 488.6[ ㎡ ]
有明
402[ 個 ] 1267.4[ ㎡ ]
18.4%
若洲
267[ 個 ] 623.4[ ㎡ ]
道路率 街区率
fig.39 道路率割合グラフ
151
□道路率 20% 未満の島 該当する島を図示する (fig.40)。これらをみると、他の島と比較 して明らかに主要な多車線道路以外が無いことがわかる。その理 由として、次の3パターンが考えられる。 ①陸域面積に対する平均建築面積が大きい島 7. 芝浦4
該当する島:芝浦4・塩浜1
9. 塩浜1
これらの島の平均建築面積は、周囲の同程度の大きさの島にお ける平均建築面積の約 2 倍近くの大きさになっており、そのため 街区も大きくなっていると考えられる。同様の傾向は天王洲にも 見られる。用途分布においては、芝浦4が主に事務所建築物なの に対し、塩浜1は集合住宅あるいは倉庫・運搬関係施設という相 違がある。これらの道路構成は島の竣工当時から殆ど変化してお らず、用途に起因するというよりも、戦時下の工場や倉庫群によ る街区の大きさがそのまま現在の道路率に反映されている。 36. 若洲
28. 新木場2
14. 勝島
②巨大な敷地面積を有する用途がある島 該当する島:勝島・若洲 前者は競馬場、後者はゴルフ場が島全体の半分近くを占めてお り、それ以外の陸域も比較的建築面積の大きな用途によって利用 されているため、街区が大きくなっていると考えられる。また、 これらの島はその主要用途である倉庫・運搬関係施設から、人間
fig.40 道路率 20% 未満の島
が歩行することを殆ど想定していない可能性が高く ( 勝島は競馬 場近くに駅がある )、必然的に道路が少なくなる結果を生じさせて いる。 ③主要用途が水際線を独占する島 該当する島:新木場2 これは形成の仕方としては②と類似性があるが、こちらは小さ い単位の建築物が水際線に沿って連続しており、その余剰のスペー スに道路が配されている、という点で異なる。これは元来、新木 場が木場であり、水際線に沿ってその倉庫が建てられたことに由 来すると考えられる。 以上より3パターンに分類したが、それは時系列を異にするも のであったり、主要用途が異なることによって生じたものである。 従って、それらに通底する要素として次のことが言える。 道路率の低い島は、その島が竣工された当初の主要用途の建築 面積あるいは敷地面積に道路計画が依存しており、そのゾーニン グに対する余剰として道路が扱われている。 152
□道路率 30% 以上の島 該当する島を図示する (fig.41)。これをみると、島によって道路 率が高い要因が異なることが予想されるが、大別すると以下の2 パターンに分けられる。 1. 佃
11. 枝川2
①主要道路と副次的道路が組み合わさっている島 該当する島:佃・月島・勝どき・芝浦3・芝浦埠頭・枝川2・ 辰巳
2. 月島
これらの島は主要道路が島の中央や外周部に配されており、そ 15. 芝浦埠頭
3. 勝どき
6. 芝浦3
4. 日の出
25. 辰巳 21. 品川埠頭
こから副次的な道路が数段階にかけて広がっていることが見て取 れる。つまり、道路におけるヒエラルキーが存在し、それが入れ 子状になっていると言えよう。 この現象が発生する要因として、島内部に建築面積の小さな建 物およびそれらによって形成された小さな街区が存在しているこ とが挙げられる。月島や枝川2のように用途分布が混合タイプの
fig.41 道路率 30% 以上の島
島は、平均建築面積が小さくそれに伴って街区も小さいため、道 路が整然とヒエラルキーをもって配されている。また、佃や芝浦3、 芝浦埠頭のように建築面積の小さい建物が密集している街区が部 分的に存在している場合 ( 道路における部分的混合タイプ ) もそ の傾向にある。辰巳はその他の島とは少し毛色が異なるが、団地 内や公園内に歩道が多く配されていることが陸域面積の大きさを 補っていると考えられる。 ②主要道路のみによって構成され且つ街区の小さい島 該当する島:日の出・品川埠頭 まず、これらの島は他の埠頭用地を持つ島と比較して陸域面積 が小さいことが挙げられる。それに対して構成している道路幅員 は変わらないことから、必然的に陸域面積が小さく且つ埠頭用地 を持つ島は道路率が高くなる傾向にある。加えて、これは埠頭の 規模に比例するだろうが、陸域面積が小さい島の方が街区が小さ い傾向にある。以上の3要素 ( 陸域面積が小さい、埠頭用地、街 区が小さい ) を兼ね備えているこれら2つの島の道路率が高くなっ ていると考えられる。 以上より、前者は多様な道路構成によって道路率を上げている のに対し、後者は一様な道路を張り巡らすことで道路率を上げて いるという違いがある。
153
従って、道路率が高いこと=多様な道路構成になっているとは 一概には言えないことが判明した。しかしながら、道路率が高い 方が道路の種類が多く、移動の選択肢も多い傾向にある、という ことは指摘できるだろう。 続いて、GL 上の道路以外の交通インフラについてもみていく。 ここで対象とするのは以下のつの交通インフラである。 ①臨港鉄道 ②首都高速道路 ③東京モノレール ④東京港連絡橋 ( レインボーブリッジ ) ⑤東京臨海新交通臨海線 ( ゆりかもめ ) これらの交通インフラは、東京ベイエリアがかつて物流拠点と して東京圏の生存に極めて重要な役割を担っていたこと ( ① )、高 度経済成長期における経済発展のシンボル ( ②③ )、高度情報化社 会以後の再開発のシンボル ( ④⑤ ) といった、東京ベイエリアの これまでの歴史的変遷を物語る重要な産業的資産である。この中 で唯一臨港鉄道が全面廃止、撤去されてしまっているが、それ以 外の交通インフラはいまだ現役で、東京ベイエリアの景観を形成 する上で欠かすことの出来ないものとなっている。 従って、これらの交通インフラが存在している島は、東京ベイ エリアのこれまでの社会的位置づけを示唆する島である。
154
①臨港鉄道 昭和 5 年 (1930) に汐留駅から芝浦駅までを敷設したことに始ま る東京港の臨港鉄道は、背後圏との貨物の大量輸送手段として期 待され、その後も埠頭の整備と相俟って、芝浦・日の出線、豊洲・ 晴海線と増設されていった (fig.42)。また、昭和 40 年 (1965) ごろ の高度経済成長期には、臨港鉄道の総延長は 24 ㎞まで伸び、取扱 貨物量もピークを迎えていた。 しかしながら、昭和 50 年代に入ると、輸送革新が一段と進み、 海運貨物の陸上輸送手段は、鉄道からドアツードアの効率的な輸 送が可能な自動車輸送へと転換し、臨港鉄道の取扱貨物量も減少 し始めた。昭和 51 年の「東京港第3次改訂港湾計画」では、臨港 鉄道に占める港湾貨物の比率が低いことから、様々な鉄道計画を 廃止することになった。更に昭和 56 年の「東京港第4次改訂港 湾計画」では、竹芝・日の出・芝浦埠頭の再開発による脱貨物化、 東京港連絡橋や新交通システムの整備などが計画され、昭和 59 年 度は芝浦駅の取扱貨物量がピーク時の 2% にまで低落したことも あって、昭和 60 年 3 月には芝浦臨港鉄道は供用を廃止した。 また、豊洲・晴海専用線も芝浦臨港鉄道と同様に、昭和 40 年 (1965) 前後をピークに減少していった。昭和 60 年 1 月には深川線、 平成元年 (1989)2 月には晴海線がそれぞれ供用を廃止した。 それによって、この 50 年の間で臨港鉄道は生成から淘汰の一連 fig.42 臨港鉄道図
のプロセスを歩むこととなった。 以上の歴史的変遷において、臨港鉄道が存在していた島を以下 にまとめる。 ・日の出 ・芝浦埠頭 ・晴海 ・豊洲 ・塩浜1 ・塩浜2
155
②首都高速道路 首都高速道路は、高度経済成長期がはじまる 1950 年代後半より
首都高速 9 号深川線
計画が開始されたもので、モータリゼーションによって陸上輸送
首都高速 10 号晴海線
手段が鉄道から自動車へシフトし始めたことによるところが大き い。また、1964 年の東京オリンピック事業に併せて関連道路の整 備も行われ、高速道路時代の幕開けとなったと言える。しかしな がら、この首都高速道路は日本橋周辺のような既存の河川の上空
首都高速 1 号羽田線 東京モノレール
首都高速湾岸線 ゆりかもめ
に建設されたため、それによって人びとをウォーターフロントか ら遠ざけることとなった元凶である、という位置づけも為されて いる。 首都高速湾岸線は、都心部の渋滞緩和、港湾機能の一体化、京
首都高速 11 号台場線
浜工業地帯と京葉工業地帯を一貫して結合することを目的として 計画された。 首都高速 11 号台場線は東京港連絡橋 ( レインボーブリッジ ) を 構成する道路の一つで、都心と羽田・成田空港のアクセスとして、 また都心環状線の渋滞緩和を目的としている。 首都高速 9 号深川線・10 号晴海線は、臨海部と都心部との連絡 強化、広域ネットワークの強化、地域内交通の円滑化を目的とし ている。 これらの道路が一部でも開通され始めた年代を順に並べると以 下のようになる。 1962「首都高速 1 号羽田線」 1976「首都高速湾岸線」 1980「首都高速 9 号深川線」 1993「首都高速 11 号台場線」 2007「首都高速 10 号晴海線」 以上のように、首都高速道路は計画された年代や位置によって 異なる目的を有していることが分かる。
S = 1:12000 fig.43 交通インフラ図 156
③東京モノレール 東京モノレールは、東京オリンピック開催に合わせて、都心と 東京国際空港間を結ぶ中量輸送手段として 1964 年 9 月から営業 を開始した。当初は羽田駅と浜松町駅の2点間輸送だったものの、 オリンピック以後は利用客確保対策として中間駅の設置、JR 浜松 町駅との接続等を実施した。 近年では、羽田空港の拡張による延伸事業が行われるとともに、 沿線の大規模再開発に伴う天王洲への駅設置などを実施した。 ④東京港連絡橋 ( レインボーブリッジ ) 前述の首都高速 11 号羽田線および臨港道路、後述する東京臨海 新交通臨海線 ( ゆりかもめ ) を併設した、芝浦地区と台場地区を 繋ぐ吊橋構造の連絡橋である。 東京港連絡橋の整備によって、埋立地と都心間の交通渋滞の緩 和を目的としており、1993 年 8 月に開通された。 ⑤東京臨海新交通臨海線 ( ゆりかもめ ) この新交通システムは、都心と臨海副都心を結ぶ中量輸送系の 公共交通機関で、1995 年 11 月に新橋―有明間が開通、2006 年 3 月には有明―豊洲間が開通し現状に至っている。当初は 1996 年に 行われる予定だった臨海副都心の世界都市博覧会のための主要交 通手段として計画された。現在では 2020 年の東京オリンピックの ためのアクセス鉄道として期待されており、沿線の日の出・芝浦 の各埠頭における再開発を促進する効果も見込まれている。 以上の5つの交通インフラを 1920 年から 25 年おきに年代に応 じて整理すると、以下のようになる。 1920~1945:臨港鉄道 1945~1970:東京モノレール、首都高速 1 号羽田線 1970~1995:首都高速湾岸線、首都高速 9 号深川線 東京港連絡橋 ( レインボーブリッジ ) 1995~2020:首都高速 11 号台場線、首都高速 10 号晴海線 東京臨海新交通臨海線 ( ゆりかもめ )
157
鉄道 臨港鉄道
東京モノレール
首都高速道路 ゆりかもめ
1 号羽田線
湾岸線
9 号深川線
これらの交通インフラが島内に存在する、あるいは接している
連絡橋 10 号晴海線
11 号台場線
レインボーブリッジ
合計
佃
0
月島
0
勝どき
1
〇
豊海
0
晴海
〇
日の出
〇
2
〇 〇
〇
〇
〇
5
芝浦2
〇
1
芝浦3
〇
1
芝浦4
0
芝浦アイランド
1
〇
島を左図にまとめる (fig.44)。 この図を見れば明らかなように、日の出と芝浦埠頭が該当数 5 つと最も多種類の交通インフラを保有していることが分かる。ま た、有明も4つが該当するが、双方を分かつ決定的な差異として、 交通インフラの歴史的重層性が挙げられる。日の出、芝浦埠頭は 戦前から存在していた臨港鉄道、1964 年の東京オリンピックを契 機とする首都高速 1 号羽田線、臨海副都心の都市博覧会に向けた レインボーブリッジおよび首都高速 11 号台場線、さらにそこから 来る 2020 年の東京オリンピックへと繋がるゆりかもめと、ほぼ一
5
世紀に渡るスパンの交通インフラにおける歴史的重層性を有して
港南
〇
〇
2
天王洲
〇
〇
2
いる。一方で、有明はそれに比して歴史性に欠けると言わざるを
芝浦埠頭
〇
〇
〇
〇
〇
品川埠頭
0
塩浜1
〇
塩浜2
〇
1 2
〇
枝川1
0
枝川2
〇
1
潮見
〇
1
勝島
〇
〇
2
平和島
〇
〇
2
昭和島
〇
〇
2
京浜島
これは島の形成年代が異なることに依るところが大きく、東京 港の開港以前から物流拠点として機能していた日の出、芝浦埠頭 はその歴史的蓄積を重ねてきた。 尚且つ、前述の道路構成において多用性を有していると考えら れる、「道路率 30% 以上で、かつ主要道路と副次的道路が組み合 わさっている島」と統合すると、以下の島が抽出される。
0
大井
〇
1
城南島
〇
1
豊洲
得ない。
〇
〇
東雲
3
〇
1
〇
有明
〇
〇
お台場
〇
〇
・芝浦埠頭
〇
4
〇 〇
フェリー埠頭
3 0
辰巳
〇
新木場1
〇
〇
2 1
新木場2
0
若洲
0
fig.44 交通インフラ種類別保有表
158
2.3.7 歴史的変遷 ここまで分析対象としてきた埋立変遷や前述の5項目において、 たびたび歴史的変遷から分析するアプローチを導入したが、今い ちど包括的に東京ベイエリアの歴史的過程とその間に発生した事 象について考察する。 □埋立変遷 「2.2.1 埋立の変遷」では総体的な埋立変遷について言及したが、 ここでは島ごとに特徴的な埋立過程を経ているものを抽出して論 じていく。 埋立過程において、現在の島の外形が決定されるまでの経歴は 大きく以下の2つに分類できる。 ①埋立が一度に行われた島 ②埋立が複数回に分けて行われた島 大半の島は①に該当するが、中でも②に該当する島を選定する と以下のとおりである。複数回にわたって埋立が行われたか否か は、国土地理院が公開している航空写真 ( データシートに記載 ) をもとに判断している。複数回行われたと判断する基準として、 埋立造成が計画された事業 (「隅田川口改良工事」「東京港改訂港 湾計画」など ) ごとに埋立範囲および面積が規定されているため、 それが複数の事業において実施されているか否かによって判定し ている。ただし、事業を不断に継続して行っていた島については 対象外としている。 ・佃 ・豊海 ・晴海 ・芝浦埠頭 ・塩浜2 ・枝川1 ・勝島 ・豊洲 ・東雲 ・有明 ・辰巳
159
1895~1920
1920~1945
1945~1970
佃
〇
〇
豊海
〇
〇
晴海 芝浦埠頭
〇
塩浜2
〇
枝川1
〇
勝島 豊洲
〇
〇
〇〇
〇
1970~1995
類すると左図 (fig.45) のようになる。 計画が行われた、あるいは言及はされていないものの明らかに埋
〇
め立てが行われた箇所があるタイミングで〇を付けている。 これによると、4 つの区間、つまり 100 年スパンで埋め立てが行 われているのが芝浦埠頭と有明の2ヶ所であることが判明する。
〇
尚且つ、芝浦埠頭が明治・大正期から平成まで跨っているのは極
〇
めて特殊である。これは、竹芝・日の出・芝浦埠頭一帯が、東京
〇
港が開港する以前から港湾用地として機能していたことに依ると 〇
ころが大きいと考えられる。当時の技術では大規模の埋立造成が 行えなかったこと、それが近年になるにつれて技術革新とともに
〇〇
〇
東雲
〇〇
〇
有明
〇
〇
〇
辰巳
〇
〇
〇
fig.45 時系列による埋立事業計画実施表
これらの島をさらに埋め立てが行われた回数や時期によって分 1945 年の終戦を境に前後を 25 年スパンで区分し、前述の事業
〇 〇
1995~2020
物流機能の拡大が要請されたことと相俟って、芝浦埠頭は幾度と なく埋立を繰り返してきた。一方、有明はかつて貯木場として活 〇
用されていたが、産業転換が生じるたびに埋立造成を繰り返した こと、拡大余地を残す立地条件であることから、複数年代にわたっ ていると考えられる。
160
~1945 佃
1945~1970
月島
独立住宅、住商併用建物
勝どき
独立住宅、住商併用建物
現在の用途分布については既に「2.3.2 用途分布」で言及したが、
豊海
倉庫・運輸関連施設
晴海
倉庫・運輸関連施設
日の出
ここでは、複数の年代に跨って存在している建築物を保有する島 について考察する。基準を第二次世界大戦前後とし、1945 年以前、 1945~1970 年の間に竣工した建物のうち、現存する建物があるか
倉庫・運輸関連施設
芝浦2
集合住宅、事務所建築物等へ更新
芝浦3
集合住宅、事務所建築物等へ更新
芝浦4
集合住宅、事務所建築物等へ更新
芝浦アイランド
集合住宅、事務所建築物等へ更新
芝浦埠頭
□用途蓄積
該当無しの要因
独立住宅
独立住宅、住商併用建物
港南
外形に変更が無い箇所が存在すれば対象とする。また、建物の形
供給処理施設 倉庫・運輸関連施設 独立住宅
枝川1
独立住宅
枝川2
独立住宅
潮見
状自体に変化は無いが、改修が行われたことが分かる建物 ( 倉庫・ 運輸関連施設など ) の場合でも、用途に変更が無ければ対象とする。 計画が新しい
以上の前提をもとに分類したのが左図である (fig.46)。これを見
倉庫・運輸関連施設、スポーツ・興行施設
平和島
計画が新しい
昭和島
計画が新しい
京浜島
ると戦前では、明治・大正期には既に埋め立てられていた佃・月島・勝 どきには独立住宅や住商併用建物といった小規模の建物群が今尚現存して
計画が新しい
いる。また、日の出は埠頭用地として機能していたため倉庫・運輸関連施
供給処理施設
城南島
設が残されている。芝浦埠頭が特殊で、埠頭用地であったものの西側は独
計画が新しい
豊洲
専用工場
東雲
独立住宅、住商併用建物
有明
立住宅や住商併用建物が存在し、その一帯は第二次世界大戦による空襲も
GHQ による接収も免れたため、現存している (fig.47)。一方、接収さ
集合住宅、事務所建築物等へ更新
お台場
計画が新しい
フェリー埠頭
計画が新しい
辰巳
物については建て替えが行われた可能性が高いため、街区や建物
集合住宅、事務所建築物等へ更新
塩浜2
大井
ることとする。この時、独立住宅や住商併用建物等の小規模の建
倉庫・運輸関連施設
塩浜1
勝島
分析に際し、国土地理院が公開している航空写真を元に判別す
倉庫・運輸関連施設、専用工場
天王洲 品川埠頭
否か判断する。
れた埠頭用地についてだが、『東京港史』の接収港湾施設の概要を 見ると、埠頭用地として接収されたことを意味する「岸壁と桟橋」
集合住宅
新木場1
計画が新しい
新木場2
計画が新しい
若洲
計画が新しい
fig.46 島別用途蓄積表
「物揚場」「上屋」の欄には竹芝・日の出・芝浦埠頭しか記載され fig.47 GHQ による接収地
ていないが、港湾用地としては晴海や豊洲も接収されているとい う記述がある。この接収によって、東京港へ入港する一般入港船は、 沖合に停泊して艀を利用した貨物輸送を余儀なくされ、艀荷役港 の状態に陥ってしまった。その状況を打開するべく、晴海や豊洲 といった大型船埠頭の整備が進められた。 東京港の歴史的文脈を考察する上で、接収地である日の出・芝 浦埠頭は押さえるべき島である。 戦後では高度経済成長期に建てられた倉庫・運輸関連施設や人 口流入に対する宅地が現存しているパターンが多い。その中で例 外なのが、品川埠頭、大井の供給処理施設であるが、これは火力 発電所である。また、芝浦埠頭と豊洲にはセメント工場、コンクリー ト工場がそれぞれ現存している。勝島は競馬場施設である。 一方、埋立時期自体は早期だったものの、芝浦地区や天王洲、
fig.48 『新修港区史 付図』太平洋戦争中の空襲による消失及び建物疎開区域図
有明の倉庫・運輸関連施設は産業転換とモータリゼーションによ
161
る社会情勢の変化によって、集合住宅や事務所建築物等へ姿を変 えてしまった。また、高度経済成長期の時点では殆ど埋め立てが 竣工していない島も数多い。 用途転換が激しく、産業構造や社会情勢に合わせてその都度更 新されていくのが東京ベイエリアの基本的な性質であるが、その 中でも戦前の建物や街区割りが残る島は希少価値が高いと言える。
以上の3項目 ( 埋立変遷・接収地・用途蓄積 ) と「2.3.6 交通 インフラ」において言及した交通インフラの歴史的蓄積の計4項 目により、各島の歴史的変遷による重層性を明らかにする。 ①埋立変遷 最も埋立事業を長期間に渡って連続的に行っているのは、【芝浦 埠頭・有明】の二つの島である。 ②接収地 埠頭用地としてその大部分を接収された島は【日の出・芝浦埠頭】 の二つの島である。 ③用途蓄積 戦前からの用途蓄積が生じているのは、 【佃・月島・勝どき・日 の出・芝浦埠頭】の5つの島である。 ④交通インフラ 最も複数の年代にわたる交通インフラを保有しているのは【日 の出・芝浦埠頭】の2つの島である。 以上より、34ある島の中で、最も歴史的重層性が高いのは、 ・芝浦埠頭
であるという結論に至る。次点の日の出は芝浦埠頭と同様の歴史 的背景を有しているため、高い重層性を保有しているが、埋立造 成が殆ど行われていないことがこの差を生じさせている理由であ る。
162
佃
用途分布
親水空間
○
○
不可侵領域
高層建築物
交通インフラ
歴史的変遷
●
3
月島 勝どき
合計 0
●
○
2
豊海
0
晴海
●
1
日の出
0
芝浦2
〇
●
芝浦3
東京ベイエリアにおける固有性を有している、ということを意味
芝浦アイランド
●
1
〇
港南
〇 ○
天王洲 品川埠頭
○
〇
5 0
浦埠頭に選定することが最も妥当であると言える。
0 〇
○
2
枝川1
○
○
2
○
1
○
3
枝川2 〇
○
勝島
0
平和島
0
昭和島
0
京浜島
0
大井
○
1
城南島
0
豊洲 東雲
いる【芝浦埠頭】こそが、東京ベイエリアの固有性を凝縮した島 である、という結論に至る。そこで、本研究の計画対象敷地を芝
塩浜2
潮見
する。従って、高層建築物の項目以外のすべての項目に該当して
1 1
塩浜1
(fig.49)。
0 1
○
の解明を試みてきた。その結果を左図のマトリクスにまとめる 今回取り扱った6つの項目のうち、該当する項目が多いほど、
● 〇
ここまで、6項目によって東京ベイエリアの島における固有性
2
芝浦4 芝浦埠頭
2.3.8 東京ベイエリアの固有性
○ ○
●
2
●
2
有明
0
お台場
0
フェリー埠頭
0
辰巳
○
新木場1
○
新木場2 若洲
fig.49 東京ベイエリアにおける固有性マトリクス
〇
2 1 0 0 高層建築物の項目において、●=大規模資本型再開発地、〇=非資本型開発地を指す
163
第1章からここまでの分析を統合し、最終的に東京ベイエリア の固有性を総括すると、まず大きく形態的特性 / 空間的特性 / 歴 史的蓄積の3つに大別できよう。 形態的特性とは、海型かつ島型で、陸域面積の大きな島による 群島を形成していることを指す。次に、空間的特性は、相反する 二つの空間的性質が併存していることを指す。そして歴史的蓄積 は、島ごと或いは島内において、開発の時差が生じていることを 示す。 そして、これら3つの枠組みによって顕在化する東京ベイエリ アの固有性は、これまでの分析を踏まえると以下の9つに集約さ れよう。 □形態的特性 ①岸壁 / 防潮堤による2種類の水際線 ②交通用地や再開発用地とその他の用途が併存 □空間的特性 ③親水陸域 / 非親水陸域 ④ヒューマンスケール / ソーシャルスケールの親水空間 ⑤可侵領域 / 不可侵領域 □歴史的蓄積 ⑥埋立変遷 ⑦用途転換性 / 用途蓄積 ⑧接収地 ⑨交通インフラ これらが東京ベイエリアにおける9つの固有性であり、これら を凝縮した島として芝浦埠頭を対象に、それを活用あるいは更に 性質を強化する設計・提案を行う。
164
参考文献 ・『無縁・公界・楽 日本中世の自由と平和』網野善彦著、平凡社、1996 年 ・『地域・環境・計画』水谷頴介著、鹿島出版会、1972 年 ・『浅田孝 つくらない建築家、日本初の都市プランナー』笹原克著、オーム社、 2014 年 ・『批判的工学主義の建築 ソーシャル・アーキテクチャをめざして』藤村龍至著、 NTT 出版、2014 年 ・『東京港史 第 1 巻 - [1] 通史 総論』東京都港湾局 編集、1994 年 ・『東京港史 第 1 巻 - [2] 通史 各論』東京都港湾局 編集、1994 年 ・『東京港史 第 3 巻 回顧』東京都港湾局 編集、1994 年 ・ 『都市の水辺と人間行動―都市生態学的視点による親水行動論―』畔柳昭雄・渡邊 秀俊著、共立出版株式会社、1999 年 ・『社会学入門―人間と社会の未来』見田宗介著、岩波新書、2006 年
165
3.0.0 本設計 3.1.0 全体構想 3.1.1 2020 年以後の将来像 3.1.2 超群島構想:Hyper Archipelago 3.1.3 新交通システム 3.1.4 親水都市:Hydorophili-City 3.2.0 対象敷地 3.2.1 芝浦埠頭の歴史的背景 3.2.2 対象敷地 3.3.0 用途 3.4.0 設計手法 3.4.1 三次元化する親水空間:島 / 襞 / 桟橋 3.4.2 モデュール 3.4.3 構造および素材 3.5.0 デザイン
166
3.1.0 全体構想 本設計を行うにあたり、その根底を為す立場や設計思想を明示 してかなければならない。 芝浦埠頭を対象敷地として選定した。この島を対象とする上で 欠かせないのが品川~田町間に計画されている山手線新駅、そし て来たる 2020 年に開催予定の東京オリンピックの2点である。こ の2つの事象は、今後の東京圏、あるいは東京ベイエリアの位置 づけを考察するにあたって極めて重要な要素であり、特に 2020 年 に迎える東京オリンピック以後の動向が、将来的な東京圏におけ る都市問題を左右するといっても過言ではない。 そこで、2020 年を一つの転換点として設定し、それ以後の東京 ベイエリアにおける将来像、そしてそれを成立されるシステムに ついて提言する。そのために掲げるのが、「超群島構想」と「親水 都市」という概念である。
167
アジアヘッドクォーター特区の境界図
【東京都心・臨海地域】
特別区道千第101号線
JR山 手線
アジアヘッドクォーター特区の境界図 【品川駅・田町駅周辺地域】
日本 橋川
一般国道15号
特別区道 第220号線
都道白山祝田田町線 千代田区・中央区界
号線
線
区立亀塚公園
桜田 通
外 堀
特別区道中京402号線
状 環 線
特別区道 第908号線
都道日比谷芝浦線
六本木六丁目と 麻布十番一丁目の境界線
環状
都道日本橋芝浦大森線
都計道路幹線街路環 号線支線5の南側端 状第3 線
勝鬨橋
15
号
都道
一般 国道
新橋駅 都道白山祝田田町線
都道霞ヶ関渋谷線
浜離宮庭園
都計道路幹線街路環 状第 3号線 3号線の南側端線
駅
都道環状3号線
JR東海道新幹線
有楽町駅
特別 都道 外堀 148 区道 号 線 千第 環状 線
特別
第 区道
0号 103
線
特別区道 第830号線
[1]
拠点を整備 ) の一つとして平成 23 年に国の指定を受けた特区制度で、 目
港 南 の境 一丁目 界線 と港 南三 丁目
都道日比谷芝浦線
田町駅
特別区道第196号線
新豊洲駅
都計道路幹線街路環状第3 号線支線5の南側端線
特別区道第748号線
東京都市計画 道路 幹線街路環状 第4号線
市場前駅
芝浦一丁目と海岸二丁目の境界線 特別区道第1114号線
東京臨海高速鉄道
都道品川埠頭線
有明テニスの森駅 東雲駅
東京
特別区道 第1024号線
有明駅
都道日本橋 芝浦大森線
国際展示場正門駅
[2]
クトを進めるものである。現在「アジアヘッドクォーター特区」 に指定されているのは東京都心・臨海地域 (fig.1)、新宿駅周辺地域、
お台場海浜公園駅
特別区道 第1051号線
品川駅 JR 線 手 山
台場駅
青海駅
特別区道 第1052号線
北品川駅
特別区道 第243号 線
品川駅
特別区道第844号線
テレコムセンター駅
線 京浜急行本
新馬場駅
一般国道15号
特別区道 準幹線30号 特別区道 Ⅲ-1号
総合特別区域 この地図は、国土地理院長の承認(平19国地関公第377号)を得て作成した東京都地形図 (S=1:2,500)を複製(23都市基交第257号)して作成したものである。無断複製を禁ずる。
fig.1 アジアヘッドクォーター特区:東京都心・臨海地域
0
区道 特別 号 2 Ⅲ -1
特別区道 Ⅲ-12-1号
特別区道 第1134号線
ヘッドクォーター特区と変わらないものの、こちらは東京圏は東
特別区道 Ⅲ-90号
京都・神奈川県・千葉県の全域あるいは一部と広域に及んでいる ( 計 総合特別区域
特別区道 Ⅲ-19号
500m
fig.2 アジアヘッドクォーター特区:品川駅・田町駅周辺地域 1000m
である。 に入れた「国家戦略特区」も策定しており、内容はさほどアジア
特別区道 第1135号線
船の科学館駅
大崎駅
渋谷駅周辺地域、品川駅・田町駅周辺地域 (fig.2)、羽田空港跡地 また、平成 25 年には東京オリンピック・パラリンピックを視野
特別区道 第1136号線
特別区道 第328号線
アジア地域の業務統括拠点や研究開発拠点のより一層の集積を目 指し、東京の中心部に設けた5つのエリアで外国企業誘致プロジェ
海岸通
臨海 新交 通臨 (ゆ 海線 りか もめ )
が、それは東京都政策企画局が主導するアジアヘッドクォーター 「アジアヘッドクォーター特区」とは、国際戦略特別総合区域 ( 国
豊洲駅
東海旅客鉄道東海道新幹線
近年、再開発用地として注目されている東京ベイエリアである
際競争力強化のために法人税を軽減することで、国際競争力のある産業・機能集積
浜松町駅 六本木六丁目と 元麻布三丁目の境界線 六本木六丁目と 西麻布三丁目の境界線
3.1.1 2020 年以後の将来像
特区構想によるところが大きい。
都道日比谷芝浦線
芝浦 の境 四丁目 界線 と港 南一 丁
泉岳 寺
道
首都 高速 1
東京駅
国道1号
都
24 国道
国道1号線 都道霞ヶ関渋谷線
一京 浜
特別区道千第146号線
区道 特別29号線 第8
駅 田町
第
丸の内一丁目と皇居外苑との境界線
線 6号
区立本芝 公園
特別区道 第1024号線
神田駅
この地図は、国土地理院長の承認(平19国地関公第377号)を得て作成した東京都地形図 (S=1:2,500)を複製(23都市基交第257号)して作成したものである。無断複製を禁ずる。
画内容は国、関係自治体、民間事業者で構成される東京圏国家戦 [3]
略特別区域会議で検討 )。これらの特区に指定されていることが、 再開発の大きな後ろ盾になっていることは間違いない。 この背景の上に計画が進行しているのが品川~田町駅間に新設 される山手線新駅である (fig.3)。計画用地は約 13ha とこれまでの 駅前開発の中でも最大規模で、駅舎は田町駅から 1.3 ㎞、品川駅 から 0.9 ㎞の位置にある。そして、東京オリンピック・パラリンピッ クの開催に向けた開業を目指しており、これによって、外国企業 の誘致やそれに伴うオフィスビルや集合住宅、商業施設等の再開 発がより一層進められることだろう。 加えて、2027 年に開通予定の品川駅始発となる中央リニア新幹 線の計画が、これに拍車を掛けることが予想される (fig.4)。
fig.4 中央リニア新幹線区間図 ( 国土交通省 HP より引用 ) [1] 内閣府地方創生推進室 HP(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/index.html) [2] 東京都政策企画局 HP(http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/invest_tokyo/japanese/invest-tokyo/ index.html) [3] 内閣府地方創生推進室 HP(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/index.html)
fig.3 山手線新駅計画図 (JR 東日本 HP より引用 ) 168
このような動向の中で、芝浦地区は近い将来、これらの経済特 区に取り込まれることが予想される。ここでは、経済発展を志し た明るい未来への投資を問題視するのではなく、それに伴う地勢・ 文脈を無視した再開発に警鐘を鳴らしたい。 既に芝浦2~4、芝浦アイランドの島々にはこの経済動向の余 波が及んでいるが、まだ辛うじて芝浦埠頭には浸透していない。 しかしながら、芝浦埠頭以外の島々では前述のように均質化が進 行し、島ごとの性質が類似性を帯びている。そして、それは芝浦 地区がこれまで築き上げてきた歴史的文脈を全く無視したもので あると言わざるを得ない。そこで、芝浦埠頭の今後の再開発の仕 方が、これらの再開発に同調するのか、それとも先見性を持つも のにするかが、2020 年以後の再開発における将来的なビジョンを 提示することに直結すると言えよう。 このまま進行すれば、芝浦埠頭は周辺の芝浦地域と同様に、高 層マンションや高層オフィスビルが立ち並ぶ画一化された都市像 に塗り替えられてしまう可能性が極めて高い。そして、芝浦地域 は再開発を更に加速させていくだろう。 そこでまず危惧されるのが、一様化する都市の様相である。こ れまでも港湾都市における再開発が内陸部の焼き増しと化してい る現状について言及してきたが、前述の特区構想はそれに拍車を かける形となる。そして、もう一つ危惧されるのが、侵攻するジェ ントリフィケーションである。芝浦埠頭はかねてより貿易の要衝 として港湾労働者が集積する土地柄で、彼らのための簡易宿泊施 設や福祉機能が数多く存在していた。しかしながら、1970 年代後 半の産業転換による重化学工業の衰退以後、芝浦埠頭における港 湾関連施設の減少が目立つようになり、それに伴って港湾労働者 の需要も低下していった。そして、現在では港湾労働者のための 施設は統合、集約する傾向が強まっている。今後、芝浦地域の再 開発に伴って高層マンションやオフィスビルの建設が進展すれば、 彼らの居住地や生活領域はますます隅に追いやられることになる。 その潮流は果たして正しいことなのだろうか。
169
3.1.2 超群島構想:Hyper Archipelago これらの動向に対して、何を構想すべきか、という問いに対して、 私が掲げるのが「超群島構想」である。 東京ベイエリアは度重なる埋立造成によって多数の島が集合し てその形態を為していることから、リテラルな意味での群島であ る。ただし、それぞれの島が何らかの連関やアイデンティティを 顕示するために行動を起こしているわけではなく、時勢に伴って 生じた文脈に受動的に回収されているのみである。そこで、島々 が存立する構造を再考し、相互関係性を再構築することによって、 島単体としての存在意義、島間のネットワークの重要性を規定す る必要がある。それは群島であることの意義を付与することであ り、東京ベイエリアでしか成立しないシステムを付与することで ある。従って、この構想を、これまでの純粋な群島を超えるもの として、超群島構想:Hyper Archipelago を提示する。 この構想には以下の2つの枠組みが肝要であると言えよう。そ れは【歴史的文脈の保存・再編】と【2020 年以後の長期的な生存 を見据えた再開発】である。 前者は、これまでの島における再開発が没個性化を伴うものだっ たことへのカウンターとして、島における歴史的文脈を精読し、 何を保存し何を再編するかを考慮した上で、それに則った再開発 を行うことである。それによって、島の性質を明確化することが 可能となり、島単体としての存在意義を明らかにする。 後者は、港湾都市における将来的な再開発戦略として何が有効 なのかを検討するものである。現在の港湾都市における再開発は 特に資本に偏重したものが多く、消費の対象となってしまってい ることに対し、都市として如何に生存していくことが可能か、と いうことを考える必要がある。都市とは外部と生存物資を交換す ることで成立する物流拠点であるから、それを維持するためには、 島間のネットワーク、あるいは島単体としての自立性が重要であ る。
170
超群島構想における2つの枠組みを構築するために、幾つかの フェイズを設け、多段的にアプローチ可能にする必要がある。そ のために、以下の5つのフェイズを設定する (fig.5)。 フェイズ1:島単体の部分的開発 フェイズ2:島単体の全体的整備 フェイズ3:島間の物流ネットワーク構築 フェイズ4:東京ベイエリアのエネルギーインフラ構築 フェイズ5:東京圏あるいは日本における物流ネットワーク構築 これらの各フェイズはどこから着手しても成立する程度の独立 性を有しているが、各フェイズに対して接続可能なように計画す ることが要求される。従って、各島においては、どのフェイズに 対してどのような提案が可能かについて熟慮した後に着手する必 要がある。 フェイズ1は、島単体における再開発需要に対し、歴史的蓄積 を考慮した都市スケールの建築的提案を行うことを前提とした開 発を指す。また、マンハッタンの一街区を道路によって区切られ た島として捉え、「都市群島」というアイデアを考案した O.M. ウ ンガースや臨海副都心を街区という島が集積した群島と表現した 若林幹夫らに倣えば、既成の敷地境界線によって生じている街区 のうち、街区内の主用途が周囲に対して自己完結している場合に PHASE:1
fig.5 超群島構想概念図
PHASE:2
PHASE:3
PHASE:4
PHASE:5
それを島と捉えることが出来よう。それは近代都市計画がもたら した産物といっても過言ではない。それに対し、既存の群島を超 えるように建築を計画することで、独立した島同士を結び、関係 性を再構築する。 フェイズ2は、島内における物流網や用途等を考慮して、それ らを再調整する整備を指す。ここにおいて特に重要なのが、島ご とのアイデンティティを明確化することである。既存の用途構成 や歴史的背景を考慮し、何がその島を特徴づけているのかを把握 し顕在化させていくことで、島間の差別化を図り、ネットワーク を形成する上での足掛かりとする。また、島内において物流網だ けでなく、人の流れも肝要である。そのため、自転車交通や徒歩 に配慮した整備をすること、交通インフラの選択肢として海上交 通手段を増設すること等が挙げられる。 フェイズ3は、島ごとに存在する施設や交通拠点同士を接続する ことでネットワークを成立させることを指す。島ごとにアイデン
171
ティティが異なることから、もちろん用途分布や交通インフラの 整備状況等も異なるが、相互関係性を強化することによって、島 間で不足する用途や機能等を補完し合うことが可能になる。 フェイズ4は、港湾都市固有の再生可能エネルギーである海洋 エネルギーを活用したエネルギー網を新設することで、既存のエ ネルギーネットワークから自立した環境を整備することを指す。 フェイズ5は、更に広域的に港湾機能を用いた物流ネットワー クの可能性について検討し、地方産業の関連施設と接続すること で、日本という群島においても一体的な構造を構築することを指 す。これにより、東京圏と地方の関係性を強化する。 以上が、超群島構想を成立させるにあたって重要な背景となる。 これを一言で表せば、「関係性の構築」に集約できよう。これまで の近代都市計画があらゆる関係性を切断し、一様化を促進してき たことに対して、現在における島単体 / 島間の関係性だけでなく、 過去 / 歴史との関係性、未来との関係性まで包含して計画するこ とが、これからの建築と都市において重要である。
172
3.1.3 新交通システム 超群島構想におけるフェイズ2およびフェイズ3で提示した内 容の実現策として、ここでは新交通システムについて言及したい。 現在、中央区では東京オリンピック 2020 に向けて、基幹的交 明石町・聖路加ガーデン前
通システムとして BRT(Bus Rapid Transit) および LRT(Light Rail
越中島
Transit) の導入を検討している (fig.6,7)。路線の計画位置としては
浜離宮
幾つか候補があるようだが、既存の交通網との兼ね合いから「み
豊洲
竹芝桟橋
ゆき通り・環状2号線活用案」が最も優れていると考えられてい
日の出桟橋
fig.6 BRT:車両長さ約 18m ( 中央区 HP より引用 )
る (fig.8)。計画背景としては、公共交通不便地域の解消・人口増 加に伴う交通需要への対応、自動車に伴う環境負荷の軽減等が挙
芝浦アイランド 葛西臨海公園
[1]
げられている。基幹的交通システム整備の流れは、BRT の導入を 先行させ、将来的には LRT へと転換を図る、としている。また、
東京ビックサイト
天王洲アイル
お台場海浜公園 パレットタウン
天王洲ヤマツピア
青海
両者のルートは同一を基本としており、停留所等の施設計画、周 辺まちづくりとの共存を念頭に入れている。最終的には、公共交 通の利便性をさらに高め、自動車依存の低減を企図しており、公 共交通手段の多様化とそれに伴う徒歩および自転車移動の拡大を 進展させるものである。この基本理念に賛同し、本設計の対象敷 地である芝浦埠頭が存在する港区とも、一体的に開発することを 期待して提案を行う。 従って、対象敷地内には LRT の交通網を導入すること、自転車
fig.7 LRT:車両長さ約 30m ( 中央区 HP より引用 )
交通を考慮した道路計画をすること、を検討する。 併せて、既存の水上交通ネットワークの強化および拡大を計画 する (fig.9)。陸上交通手段のみならず、水上交通手段という選択 肢も導入することで、現時点から遥かに多様な交通手段のネット ワークを形成し、それに伴って多様な時間感覚、体験をもたらす。
[1] 「 中 央 区 基 幹 的 交 通 シ ス テ ム 部 会 」(https://www.city.chuo.lg.jp/kankyo/kaigi/kmyunithibasu/ kikantekikotubukai/index.html)
fig.8 路線計画図
fig.9 水上交通手段ネットワーク図 173
3.1.4 親水都市:Hydorophili-City 前節まで、全体構想における超群島構想の概念および新交通シ ステムについて言及した。しかしながら、それらはあくまで冗長 性をもった長期的な基本構想であり、「関係性の構築」という極め てソフトな面に特化したものである。従って、関係性を構築する ために必要な結節点を如何にして創出するかが次の課題となる。 そこで提示するのが親水都市 :Hydorophili-City である。
これは字義通り親水性を有した都市を指す造語であるが、これ が内包する意味とシステムについて順を追って説明していきたい。 □水を介した都市活動を行う 既存の港湾都市で行われている都市活動は内陸部でも実行可 能なものであり、水辺である必然性が欠如している。或いは集 落における自給自足的な活動が想定されがちである。それらに 対して、水を介した都市活動を行うことを可能にする必要があ る。そこで、既存の東京ベイエリアにおける水上交通手段のネッ トワーク (fig.9) を基盤とし、都市活動において最も重要である 交換性=物流ネットワークを強化していくことで、島間の関係 性が強まり、人びとにより多くの選択肢を与えることが可能に なる。具体的には、 ・島内に寄港・船舶を係留できる岸壁や桟橋等を設置する ・島ごとに居住地域にはマーケットを設け、島々に存在する各 種生産施設・食料品取扱施設・加工品取扱施設等と連絡する ・既存のトラック輸送に加えて、艀を用いた水運を採用 ・水上バスやフェリー、小型船舶等の水上移動手段を整備する といったこと等が挙げられる。超群島構想のフェイズ3とオー バーラップするが、これはそれを実現するための空間的対応を 行うことを規定するものである。また、これによって強化され たネットワークはフェイズ5への活用が期待される。 □親水空間を日常生活における活力を再生産する場とする 港湾都市の再開発地区は押し並べて観光客のための計画に溢 れ、水は中流層以上の都市居住者に対する付加価値としての意 味合い以上を持たない。従って、親水空間は消費されていくば かりである。しかしながら、本来的に水辺は居住において必要 不可欠な要素であり、日常生活と密接に関わっているべきであ る。そこで、親水空間を日常生活における活力を再生産する場 174
として位置づけることが重要である。 親水都市を検討する上で、最優先すべきなのは居住者である。 よって、用途は居住者にとって有益な住宅、職場、商業施設、 文化施設等を計画し、それらと水際線間に生じる親水空間は第 一に居住者のために計画する。それを実現した上で、観光客の ような外部からの流入者に対してどのような対応をするか検討 する。 □親水性が高いほど価値が高い 港湾都市においても内陸部同様に高層建築物が頻繁に建設さ れるが、これは眺望という一側面においては有効なものの、あ くまで水を付加価値的な位置づけとしていることは免れない。 本来、水辺に居住、生活するのであれば水に近ければ近いほど、 都市活動が行いやすいように計画されるのが必然である。そこ で、親水都市では、親水性が高いほど価値が高いという、近代 都市の論理から転倒させた価値基準を設定する。 特に住宅において、水面に近いほど床面積の大きな住戸を配 置し、高所得者向けとする。かつ最も水面に近い住戸において は船舶の係留場所と直結する。また、水面から離れるほど賃料 の低減や契約期間の緩和 ( 月・週・日単位 ) を行っていくことで、 自由度を向上させる。従って、価値に反比例して選択肢の多様 性が増加するようにする。 □歴史的文脈を空間化する 港湾都市は歴史的にみて、極めて多くの文脈が重層的に存在 している場である。近代都市計画において、東京ベイエリアは タブラ・ラサの土地として活用され、更新を繰り返してきたが、 将来的に長期的な戦略を打ち立てるのであれば、歴史的文脈を 保存・再編し、未来へ引き継ぐ必要がある。そのための建築的 応答は、歴史的文脈の空間化である。 敷地境界線、ヴォリュームの配置計画、用途選定、空間構成、 素材選定などの様々なスケールにおいて、歴史的文脈を如何に して空間に反映させるかを検討する。理想的にはすべての線が 歴史から導き出されることであるが、歴史をどのように解釈し てその裏付けとするかが肝要である。
175
丸ノ
内線
いちがや
ノ内
四番町
左門町
番号
六番町
四ツ谷
凡 例
浸水深 5.8m
る頻度: 「東京湾の大規模高潮浸水想定」 (国
広 域 避 難 場 所 地 区 内 残 留 地 区
1
回)と津波(元禄型関東地震の発生頻度:2300
浸水深 3.3m
福
難
所
若葉 三丁目
信濃町
東京体育館
避
難
所
外苑出入口
千駄ヶ谷 三丁目
区役所・地区総合支所 警
0.00 - 0.15m未満
察
信濃町
消防署・消防出張所
霞ヶ丘町
四ツ谷
中央線
JR
迎賓館一帯 弁 慶 濠
郵
便
1
東宮御所
明治神宮外苑
7
局
応 急 給 水 施 設
0.50 - 0.80m未満
赤坂御用地
北青山一丁目児童遊園
高潮と津波の同時生起の発生確率は非常に
1.50 - 3.00m未満
11
渋谷区 メ
ト
代
線
8
12
10 蔵 半 11 ロ ト メ 京
座線
ロ銀
メト
東京
南青山三丁目
13
3
南青山五丁目
13
2
16
14
17
15 18
青山学院高等部
4
5
南青山六丁目
15
3 8
9
10
16
20
西麻布四丁目 20
18
21
14
11
10
2
4
3
38
神応小学校
白金六丁目 15
8
8
JR山手線
19
白金台四丁目
16
15
18
白金台一丁目
1
瑞聖寺
14
6
5
36
上大崎一丁目
8
3
9
4
12
頌栄女子学院 中・高
8
14
7
18
16
44 18
20
高輪公園
高輪三丁目
21
22
芝浦中央公園 2
23
13
芝浦JCT
芝 浦 運1 河
3
芝浦運河沿緑地
豊海町
6
日の出
日の出ふ頭
海岸二丁目
新日の出橋
18
晴海埠頭公園
15
27
28
海岸三丁目 16
3
埠頭公園 埠頭少年野球場 19
22
芝浦ふ頭 29
30
14
汐彩橋
4 10
20
11
9
21
32
31
18
5
16
芝浦入口
東
6
3
4
2
6
10
12
18
19
首
レ
都
イ
高
ン
ボ
速
11
ー
号
線
ブ
リ
21
展望室
2
3
第六台場 11
15
13号地埠頭
台場入口
55
10
港陽小学校 港陽中学校 }
6
11
2
お台場レインボー公園
5
5
25
12
6
3
1
鳥の島
2
10
芝浦港南地区 総合支所 台場分室
4
台場コミュニティーぷらざ 芝浦港南支所台場分室 台場区民センター
11
お台場海浜公園
6
3
アクアシティお台場
国道 号 京浜( 第一
台場一丁目 9
台場
品川区
ゆり
8
18 56
お台場海浜公園前局
5
お台場 海浜公園
線
かい
りん
東京テレポート
線
湾岸
高速
1
2
3
台場二丁目
4
フジテレビ本社 5
臨海副都心出口
首都 東八潮
め
かも
7
のぞみ橋
9
ネル トン 台場
貨物 線 新幹 線引 込線
12
8
1
都立台場公園
7
7
17
品川区
台場一丁目
10
23
16
台場出口
台場一丁目
7
4
22
以上の5つの事柄が、親水都市を定義するための要素である。
8
4
13
24
港
ジ
9
1
3
6
5
京
ッ
8
11
20
一方、港区では地区ごとに避難場所や避難手段を規定してお
9
7
東京 モノ レー ル
東急 池 上 線
17
ライフラインが長時間切断される危険性があり、そのため日常
7
五色橋
芝浦清掃作業所
2
14
13
15
ら持ち上げた場所に配置する。また、浸水しなかった場合でも、
芝浦出口
5
4
14
失うことがないように人びとのための動線および空間を地上か
港栄橋
6
8
れている (fig.10)。そこで、島全体が浸水したとしても交通網を
8
1
7
9
ると、防潮堤が決壊した場合、3m 近く水没することが想定さ
5
5
8
東京ベイエリアにおいては、史実上の最悪のケースを考慮す
留を余儀なくされるため、その対策が急務である。
芝浦ふ頭
13
芝消防署 芝浦出張所
機能するような空間、インフラ等を両立することが必要である。
肉の策であると言える。特に、高層マンション居住者は自宅残
23
芝浦PA
17
そこで、日常では親水空間として、非常時では生存拠点として
口過多なためであり、避難所の許容量を超えないようにする苦
晴海五丁目
日の出水門
25
らすことはあまりに日常を疎かにしていると言わざるを得ない。
されている (fig.11)。これは、地区内における避難所に対して人
日の出桟橋
7
として巨大な構築物を設けることを掲げ、居住性の喪失をもた
33
汚泥処理場
9
7
6
豊海小
20
高浜水門
1
16
それらが発生するのは数 10 年~ 100 年スパンであり、その対策
り、芝浦埠頭を含む港区の島はすべて、地区内残留地区に指定
勝どき六丁目
2
3
港竹芝局
海岸一丁目
古川水門
1
4
24
浦島橋
高輪病院 元赤坂1,2 迎賓館一帯 高浜運河 港南一丁目 みなと 西五反田 高浜運河 沿緑地 清掃事務所 沿緑地 三丁目 北青山1,2,3 明治神宮外苑地区 高輪三丁目・四丁目 ・ 港南三丁目 品川駅前局 4 15 元麻布3 東五反田 港南図書館 御殿山地区 三丁目 東京港建設事務所 西麻布1,2,3,4 品川税務署 高輪消防署 新港南橋 都立港特別支援学校 青山墓地一帯 六本木7 西五反田二丁目 港南出張所 こうなん 五反田 星の公園 麻布十番1の一部 49 53 高浜運河沿緑地 南青山1,2,3,4,5,6,7 高輪四丁目 港南中学校 品川 港清掃工場 港南健康 麻布十番1の一部,2,3,4 五反田 福祉館 54 港南小学校 西五反田 南麻布1,2,3,4,5 有栖川宮記念公園一帯 御楯橋 港港南局 一丁目 西五反田 汐の公園 都立品川 48 港南公園 七丁目 北ふ頭公園 元麻布1,2 高 港南二丁目 浜 虎ノ門5 品川インターシティ局 北品川六丁目 京 高浜運河沿緑地 大崎広小路 東京都中央卸売市場 芝3,5 港南公園 東京海洋大学 運 高輪南町児童遊園 食肉市場 水産資料館 浜 大崎五丁目 西五反田 芝公園3,4 河 東京入国管理局 八丁目 芝公園・慶応大学一帯 品川インターシティ 運 高輪三丁目・四丁目・ 麻布台1 杜の公園 東京海洋大学 港南五丁目 御殿山小 御殿山地区 八ツ山橋 立正大学 河 東麻布1,2,3 港南四丁目 東八ツ山公園 港南公園 立正中・高 楽水橋 三田1,2,3,4,5 港南公園内 北品川一丁目 白金1,2,3,4,5,6 自然教育園 ・ 飲料用受水槽 北品川五丁目 大崎四丁目 新八ツ山橋 港南公園 聖心女子学院一帯 大崎三丁目 白金台1,3,4,5 運 河 北品川 王 洲 芳水小 高輪1,2,3,4 高輪三丁目・四丁目 ・ 北品川四丁目 天 天王洲 ふれあい橋 御殿山地区 白金台2 品川女子学院 中・高 天王洲 新橋1,2,3,4,5,6 台場小 アイル 芝 東品川二丁目 東新橋1,2 大崎二丁目 大崎一丁目 浦 東品川一丁目 新東海橋 芝1,2,4 北品川三丁目 浜松町1,2 大崎中 JR てんのうずアイル 山手 15 河 北品川二丁目 芝大門1,2 城南中 線 天王洲公園 品川小 西品川三丁目 芝公園1,2 戸越二丁目 新馬場 海岸1,2,3 広町一丁目 芝浦1,2,3,4 (いざというときに備えて記入しておきましょう) 豊町一丁目 港南1,2,3,4,5 広町一丁目 地区内残留地区 西品川二丁目 台場1,2 六本木1,2,3,4,5,6 地域集合場所 南品川一丁目 赤坂1,2,3,4,5,6,7,8,9 西品川一丁目 南品川四丁目 麻布台2,3 麻布永坂町 広域避難場所 豊町二丁目 麻布狸穴町 東品川三丁目 愛宕1,2 区 民 避 難 所南品川二丁目 広町二丁目 虎ノ門1,2,3,4 しもしんめい 豊町三丁目 (地域防災拠点) 西新橋1,2,3 12
14 15
東芝浦橋
等、大規模災害の影響を受けやすい土地である。しかしながら、
3
芝浦中央公園 運動場 浜路橋 4
芝浦中央公園
5 6
2
12
19
下水道局芝浦水再生センター
勝どき 四丁目
8
潮路橋
芝浦港南区民センター
15 夕凪橋 芝浦西運河沿緑地
勝どき五丁目
竹芝桟橋 旅客ターミナル 竹芝ふ頭
竹芝
浜崎橋JCT
墨田工高月島
隅
都立竹芝ふ頭公園
3
9
10
トリニティ芝浦緑地
新 芝 西 運 河
田
川
11
12
26
7
芝浦二丁目
芝浦海岸通局 14
芝浦小学校
4 6
15 14 12
船路橋 児童遊園
18
2
南浜橋
17
JR 東海 道新 幹線
10
せんぽ東京
50
新 芝13 北 運
芝潟橋 河
17
16
八千代橋 19
13
9
芝浦四丁目緑地
47
芝浦橋
11
12
15
8
1
8
10
13
芝浦三丁目
14
10
芝浦四丁目
13
19
7
9
高輪台局
高輪台 11
新芝運河沿緑地 新 5
芝 3
運 新芝運河沿緑地 河 6
15
12
16
17
11
26
泉岳寺 泉岳寺前局
車町児童遊園
高輪二丁目
シティハイツ桂坂内 東禅寺 応急給水槽 14
25
27
10
7
3
6
24
白金児童遊園
21
41
高輪台小学校
6
2
16
11
9
6
新 芝 南 運
15
5
10
17
1
泉岳寺
9
8
百代橋
新芝南運河 河20 沿緑地 11
旧海 岸通 り
畠山記念館 NTT 関東病院
1
高輪警察署
14
23
該当する町丁名
郵政宿舎
7 8
白金台二丁目 13
2
東海大学
3
高輪二局
京浜 急行 本線
JR
15 16 22
4
1
芝浦運河沿緑地
沿緑地
2 竹芝橋 1 芝浦運河 沿緑地
5
16
7
5
新芝運河沿緑地
三田警察署 11
都 営 浅 草 線
18 17 20
6
5
4 9
19
広域避難場所一覧
4
5
札の辻橋
2
高輪大木戸 10
東海大高輪台高 高輪中・高
26
27
12
8
19
香取橋17
東京都公文書館
5
13
水辺、特に海岸沿いは、大地震による津波や台風による高潮
き、有事には各施設に移送・供給可能にする。
浜離宮排水機場 汐留川水門
8
7
新芝浦橋 シーバンスN館内局
5
12
13
2
都立 芝商高
勝どき 三丁目
築地川水門
10
商工会館 6
浜崎公園
新浜公園
2
11
南浜町
新芝運河 沿緑地
芝浦公園
川
3
新浜公園 東芝 ビル内局
末広橋 末広橋児童遊園
7
10
14
16
51
12
留
2
都立旧芝離宮 恩賜庭園 4
新浜橋
7
3
ル レー15
モノ
東京
1
汐
4 8
9
児童遊園 芝浦港南地区総合支所 新芝運河 港区スポーツセンター
52
川
中央区
1
芝浦一丁目
13
15
イタリア公園
東京中央卸売市場
地
都立浜離宮恩賜庭園
□大規模災害時でも生存可能
的にエネルギーや食料、水等を備蓄した艀を水上に配備してお
築 浜離宮庭園
9
2
1
速
高
都
首
15
1
8
18
17
3 6
14
29
9
10
11
16
4
5
芝一丁目
金杉濱町 緑地
7
5
港芝四局
4
5
芝一局 11
27
7 9
歌舞伎座
13 16
23 24 30
9 10
金杉橋児童遊園 13 金杉橋 1
3
芝新堀町 児童遊園
本芝公園
33
田町
港芝浦局
4
9
18
高輪消防署 泉岳寺前児童遊園 二本榎出張所 承教寺
明治学院高
10 11
上大崎三丁目
25
3
1 2
13
高輪郵便局
9
14
21
二本榎児童遊園
明治学院大学
4
3 4
7
10
高輪一丁目
15
三田 34
6
3
12
子ども家庭支援センター 男女平等参画センター 消費者センター } 3
東京工大附属 科学技術高
御田八幡神社
芝四丁目
1
4
14 15
6
8 11
10
5
31
13
15 (ヒューマンぷらざ) 8 9 14
26
18
14
6
浜松町四丁目児童遊園
障害保健福祉センター
24 25
西応寺30
31
9
15 汐留西公園 8
7
12
2
7
電通
7
浜松町二丁目
12
4
10
9
芝二丁目 16
東京女子学園中・高
11
三田
3
港都税事務所 37
14 7
18
24
2
白金小学校
5
12
亀塚公園
11
2
22
23 2
17
23
三田労働基準監督署
5 6
三田三丁目
12
高松児童遊園 20
22
16
24
31
2
芝小学校
32
7
都営芝五丁目アパート 22
15 16
常林寺
17
30
29
39
三田中学校
三田四丁目
三田台公園
松ヶ丘 児童遊園
高松宮邸 19
5
仙翁寺
11
御田 小学校
10
11
18
源昌寺 23
白金台三丁目
13
17
1
八芳園
34 魚藍寺
14
25
芝園児童遊園
20 19 18
33
芝五丁目
4
10
9
1
5
8
3
5世界貿易センタービル
6
カレッタ汐留
8
2
5
13
26
29
汐留 シティセンター
5
2
3 日本テレビ アド・ミュージアム東京
1
13
10
世界貿易センター内局
7
芝大門 二丁目
10
11
8
戸板女子短期大学 17
23
芝三丁目 緑地
34 6
18 三田図書館 26 芝五丁目児童遊園 21 港郷土資料館 28 20 19 港勤労 27 港芝五局 32 福祉会館
3
9
8
8
4
将藍橋13 芝大門二丁目児童遊園
6 7
22
24
32
39
8
9
7
12
芝園橋
4 5
6
20
31 40
41 4
15
14
1
2
14
13
忍願寺 長松寺
8
3
芝三局 7 21
25
30 42 2
芝公園
10
10芝公園入口
20
渚橋
17 19
東京
5
7
白金台 港白金台局 2
目黒出口
22
白台 児童遊園
8 16
高松中学校 12
7 北線 ロ南 メト 線 三田 覚林寺 都営
1
2
14
46
12 8
6
白金台四丁目 児童遊園
15
11
9 10
17
高輪消防署
5
9
大松寺 港三田 四局
1
4
6
7
4
高輪コミュニティーぷらざ みなと保育園 7
29
43
1
慶応義塾前局5 13 12 11 10
16
2普連土学園中・高
3
19
芝公園二丁目
26
24
21
12
6
1
21
23 22
19
11
11
12
17
25
新橋局 7
18 19
4
19
8
20
17 20
16
14 15
18 13 16 17 20
16
2
27
9
19
4
11
5
10
18
17
6
浜松町一丁目
1
大門
4
4
12 11
16
24
8
9
大門28 3
12
25
9
港年金事務所 3 10
18
6
13 14 15 16
2
3
8
芝三丁目 26
芝消防署 三田出張所 芝税務署(国税)
5
6
12
18
21
3
高輪一丁目 児童遊園
42
11
豊岡町 児童遊園
JR 横須 賀線 J R 京 J 浜 R 東 山 北 手 線 線
目黒入口
目黒
16
18
19
35 40
白金二丁目緑地
15
2
27
29 3
3
43 7
10
10
11
慶応義塾大学 春日神社
16
芝大神宮
1
9
26
1
3
4
港浜松町局
首 都 高 速 1 号 線
JR埼京線
13
20
16
17
15
3 14
14
26
28
2
総合支所 4
8
9
13
9
12
13
慶応義塾中等部 17
三田五丁目
14
三田松坂 児童遊園 19
20
8
5
15
18
慶応義塾 女子高
4
12
18
28
3 5
芝プール
2
5
9
12
大門
2
6
芝公園出口
9
芝公園出口
13
17
27
三田二丁目
三田綱町 児童遊園
2
古川橋
魚藍坂下緑地
16
7
三田二丁目児童遊園
19
22
21
三之橋
1
16 1
6
港区議会
7
15 赤羽小学校 東京都済生会 中央病院 都立 2 14 三田高 三田国際 ビル内局 松本町児童遊園
4
10
芝公園局
妙定院
3
豊岡第二児童遊園
15
12
13
三田台局
1
8
1
芝公園 丸山古墳
芝大門局
一丁目
6
10 11
8
30 15
7
10
23
1
天光院
芝共立キャンパス 芝地区総合支所 港区役所 日本労働研究機構
芝公園一丁目 労働図書館
東照宮
8
芝公園 四丁目
6
20 22
21
2
3
6
赤羽橋
赤羽橋
5
芝病院 19
慶應義塾大
5
24 25
飯倉公園
28
13
11
4
11
23
21 22
4
2
20
古川橋 児童遊園 白金志田町 3 児童遊園
17
4
三田 一丁目
5 6
4
7
12
19 20
芝公園・慶応大学一帯
11
13
18
29
4
12
桜田公園
7
10 26 19 33 塩釜公園 18 32 28 17 31 29
34
2 3
14
15
18
二天門
3
7
3
芝公園入口
南麻布一丁目 児童遊園
南麻布 二局
古川橋病院 10
白金高輪
氷川神社 立行寺 1
5
3
18
14
東京都庭園美術館
23
4
14
白金二丁目 高輪地区
13
付属病院
白金台五丁目
11 16
8
11
14
白金一丁目 白金一丁目 児童遊園
25
4 5 8
9 10
絶江児童遊園 曹渓寺
5
6
15
22
23
6 7
白金四丁目
6
東京大学医科科学研究所
10
21
四の橋通 児童遊園 20
南麻布二丁目 児童遊園
9
10 21
2
新古川橋 田島町 7 9 児童遊園 4 2 9 8 西原病院 10
45
11
19
18
三光小学校
11 20
12
上大崎二丁目
12
朝日中学校
17
3
5 6
12
松岡美術館
13
古川沿緑地 四之橋 1
1
8
白金三丁目
13
37
15
16
2
1
自然教育園・聖心女子学院一帯 21
14
7
8
聖心女子学院 初・中・高
14
7
11
国立科学博物館 附属自然教育園
6
白金五丁目
7
9
11 12
13
7
17
29
16
17
2
1
4
27
7
8
35
1
23
御成門 24 緑地
増上寺
5
3
28
5
13
15
7
4
2
29
6
14
15
6
8
9
烏森神社
11 10 12 9 13 14 15 5
新橋四局 6
4
3
ゆ り か も め
4
6
5
20
白金公園 港白金 3 三局
4
4 5
北里大学
5
雷神山児童遊園 6
10
3
9
14
19
9
北里 研究所病院
高輪消防署 三光出張所
21
奥三光 児童遊園
16 2 10
11
麻布消防署 飯倉出張所
30
附属病院 御成門中学校
御成門
東京タワー
心光院
10
12
1
31
1
2
22
22
5
芝公園・慶応大学一帯
東麻布児童遊園 3 4 都立芝 公園
9
8
14
国際医療福祉大学 付属三田病院
5 12
7
2 3
7
6
東麻布 13 一丁目 15
16
中之橋 中ノ橋児童遊園 6
7
13
6
9 10
東町小学校 8
12 11 1
12
15
18
五之橋
天現寺出口
12
21 17 15
15
13 23 19 18
南麻布二丁目
31
3
4
20
24
39
8
9
16
5
10
14
5
3
23
36
2
瑠璃光院
3
4 5
17
21
28
施設名
2
4
3
11
13
浜崎橋
22
19 18
三田一丁目
目黒区
山 手 名称 線
16
17
天現寺入口 14
港白金局 13
24
27
薬園坂緑地
13
1
15
飯倉福祉会館
27
2
8
二之橋
14
22 20 17
26
11
三光児童遊園
14
15
1
25
9
本村 小学校
南麻布三丁目
35
川
9
三田小山町児童遊園
11
5
21 16
3
本村公園
14
6 7 8
恵比寿四丁目
上大崎 四丁目
7
12
10
3
21
新広尾公園
12 13 14
11
4
南麻布一丁目
4
8 9
10
3
13
都立広尾病院
恵比寿二丁目
南麻布四丁目
4
天現寺
1
17
3 4
10
1古
1
麻布十番四丁目
12 16 7
6
麻布十番三丁目
9 3
2
16
22
38
7
10
みなと図書館
4
37
6
11
19
御成門 小学校
金地院
5
12
1
2
12
1 2
浜松 町
2
通り
天現寺橋
恵比寿三丁目
22
5
11 8 7
氷川神社
2
6
明治
恵比寿一丁目
9 13 10
5
6
善福寺
4
元麻布一丁目 5
1
首都高速 2号 線
fig.10 高潮と津波の同時発生時におけるハザードマップ ( 港区 HP より引用 )
14
9
天真寺
14
熊野神社
6
23
13
22
25
18
15
16
海岸通 り JR 東海 道本 線・ JR 山手 東海 線・ 道新 京浜 幹線 東北 線
1
広尾五丁目
3
8
麻布野球場 麻布庭球場
13
東麻布二丁目1819
26 一ノ橋JCT 32
6
正則高 1
機械振興会館内局
1
4
14
18
26
東京慈恵会医科大学 東京慈恵会 附属病院 21 医科大学
芝中・高
5
7
東京法務局 港出張所
23 24 25
一の橋公園 33 10
網代公園20
10
10
6
都立中央 図書館 7
16
8
12
11
3
6 7
9
22
手まり坂緑地
15
17
21
27
36
25
芝給水所公園
4
麻布台二丁目 2
3
青松寺
7
16
7
2
1
4
8 21
6
11
9 10
3 9
20
23
14
17
7
8
南桜公園
35
1
18
9
10
19
28
5
有栖川宮記念公園
有栖川宮記念公園一帯
15
東麻布 三丁目
8
1
7
8
飯倉雁木坂 児童遊園
1
62 10
2 1
4 5
10
11
麻布十番
2
13
麻布十番二丁目
7
愛育養護学校
13
広尾児童遊園
広尾 稲荷神社
500m
広尾一丁目
9
2
6
57
麻布 44 狸穴町 61 41
狸穴公園
60
14
16
19
24
11
6
天徳寺
西久保巴町 15 児童遊園
12
25
10
2
3
都営 三田 線
広尾 14
聖心女子大学
南麻布五局
1: 17,900
0
8
3
8
麻布十番局
12 13
1
4
7
1
大法寺
3
6
麻布十番一丁目 2 9 7 麻布十番
5
11 6
宮村児童遊園
5
4
3
麻布 永坂町 1
8
八幡神社
1
18
3
9
17
13
2
7
2
3
麻布郵便局
13
21
4
12 13
元麻布 二丁目
麻布中・高
愛育病院
13
12
麻布図書館 十番稲荷神社
4
13
虎ノ門 五丁目
6
麻布台一丁目 外務省飯倉公館 外交資料館
愛宕神社
12
29
3
6
11
18
34
5
12
13
17
30
33
19
3
15
16
31
32
西新橋局
11 12 13
20
2
14
26
2
5
10
9
22 21
1
25
2
5
23
西新橋一局
19
24
23
1
港虎ノ門三局
1
4
1
麻布小学校
5 1 2
麻布台 三丁目
飯倉出口 14
六本木 五丁目
5
11
6
5
3 2
9
4
1 4
5
8
南麻布五丁目
12
広尾二丁目
元麻布三丁目緑地 8 3
9
11 10
10
18
18
神谷町局
2
5
飯倉入口
12
17 17
麻布区民センター みなと保健所 生活衛生センター
20
15
19
6
5
2
広尾学園中・高
6
16
5
3
テレビ東京
9
8
横川省三記念公園
15
麻布地区 総合支所
南山小学校
7
6
16
り
8
虎ノ門三丁目 3 児童遊園
10
11
4
8
24
1
広尾四丁目
7 6
11 東洋英和 女学院中・高
16
六本木六丁目緑地 都立 11 六本木高17
8
元麻布三丁目
3
4
7
9
4
3
8
東洋英和 女学院小 鳥居坂教会
10
さくら坂公園
1
麻布消防署
笄小学校
10
8
9
テレビ朝日
通
4
7
6
7
9
10
18
20
22
3
5
1
10
日比谷公会堂
1
5
8
11
17
21
6
6
3
5
日比谷図書館
泰明小
12
14
16
5
7
2
六本木坂上児童遊園
6
全特六本木 ビル内局
3
野外音楽堂
4
虎ノ門局
15
4
9
8
4
7
六本木三丁目 児童遊園
東
12
麻布税務署 4 (国税) 2
5
16
11
12
N
伊勢湾台風級の高潮と元禄型関東地震(M8.2)が同時生起し、防潮施設が損傷 により機能不全となり、更に液状化により地盤が 50cm※沈下した場合を想定
笄公園
5
6
1
日赤看護大
東三丁目
14
9
7
17
六本木 中学校
苑
2
9
14
外
東京
東京国際 フォーラム
日比谷
3
6 7
2
3
10
ホテルオークラ 1 内局
六本木一丁目 六本木一丁目
2
6
13
15
3
15
13
4
8
7
日赤医療センター
渋谷区
7
6
4
5
8
六本木三丁目
12
東 京メ トロ 南北線
広尾三丁目
六本木駅前局
六本木ヒルズ
心臓血管研究所 附属病院
16
7
9 10 1
5
1
8
9
11
10
17
10
1
2
六本木六丁目
2
19
23 22
櫻田神社
3
10
高陵中学校
東京女学館 小・中・高
東二丁目
21
24
2
11
13
西麻布四丁目緑地
高 首都
三河台公園
7
6
六本木
麻布警察署
1
西麻布三丁目
1
繁成寺
12
牛坂緑地
19 22
14
東四丁目
浸水深 5.1m
15
18
12
13
高樹町出口
17
11
7
南青山七丁目 6
12
13
13
11
14
六本木
15 1
都営 大江 戸線
4
5
東一丁目
14
25
13
深廣寺
16
18
線 ロ日比谷 4 東京メト 六本木緑地 り 3 六本木通 麻布トンネル 2
6 7
9
11 西麻布局 8
番号 有楽町
濠
1
金刀比羅宮
虎の門病院
2
11
2
谷
日比谷セントラル ビル内局
厚生労働省
経済産業省
1
陽泉寺
1
六本木坂下 児童遊園
財務省
霞が関ビル
2
新橋
2
1
12
17
19
3 5
西麻布一丁目
10 14
福祉避難所一覧
丸の内三丁目
比
り
日比谷公園
日本郵政
4
日 比 谷 通 り
青山学院初等部
4
12
26
高樹町入口
10
六本木西公園
20 15 11
24
6 7
号線 速3
特許庁
3
9
アメリカ合衆国 大使館
澄泉寺
3 4
1
1
5
8
10
12
アークヒルズ
2
六本木四丁目
5
12
2
谷町JCT
3
4
9 11
10
9
15
23
8 9
21
トンネル
16
西麻布二丁目
10 14
20
21
長谷寺 22
3
12
13
南青山六丁目 11 児童遊園
青山学院中等部
1
六本木二丁目
東京ミッドタウン 8
7
6
23
久国神社
7
4
天祖神社
六本木七丁目
政策研究 大学院大学
通
日比谷
農林水産省
老人保健 高齢者在宅サービスセンター 施設
渋谷出口
19
22
23
3
6
7
19
日
海
丸ノ内出口 1 障害保健福祉センター 京橋 霞ケ関 2 有楽町一丁目 新橋はつらつ太陽 霞が関三丁目 日比谷 西銀座入口 京橋三丁目 3 白金の森 東京 メト 銀座一丁目 有楽町二丁目 新京橋出口 赤坂一丁目 ロ銀 4 銀座 港南の郷 座線 一丁目 銀座 5 サン・サン赤坂 東銀座出口 内幸町二丁目 銀座二丁目 虎ノ門 6 麻布慶福苑 虎ノ門 虎ノ門一丁目 内幸町一丁目 銀座 二丁目 銀座三丁目 7 ベル 内幸町 銀座 西新橋一丁目 8 10 新橋さくらの園 り 銀座 通 21 堀 9 銀座 四丁目 ありすの杜きのこ南麻布 新橋 外 虎ノ門 一丁目 五丁目 三丁目 西新橋二丁目 10 洛和ヴィラ南麻布 土橋入口 虎ノ門 東銀座 新富町 新橋二丁目 銀座八丁目 四丁目 銀座入口 11 ルネサンス麻布 新橋 築地一丁目 銀座七丁目 12 新橋ばらの園 新橋三丁目 銀座出口 築地二丁目 新橋出口 13 愛宕 洛和ヴィラサラサ 築地 一丁目 6 三丁目 新橋 築地 14 新橋入口 白金の森 神谷町 西新橋三丁目 新橋 愛宕二丁目 15 港南の郷 銀座入口 新橋 16 築地四丁目 サン ・サン赤坂 五丁目 芝郵便局 新橋 り 四丁目 東新橋一丁目 通 17 南麻布 橋 5 新大 汐留 18 新橋六丁目 台場 芝消防署 1 芝給水所 汐留 汐留出入口 8 2 19 御成門 北青山 築地 築地七丁目 東新橋 築地五丁目 8 12 六丁目 二丁目 芝公園三丁目 線 20 芝 愛宕警察署 状 環 心 21 芝大門 虎ノ門 都 金融庁 新霞が関ビル
10
20 18 21
晴
合同庁舎6号館
霞ヶ関
霞ケ関
合同庁舎4号館
2
小松ビル内局 11
7
22 10
檜町公園 3
国立新美術館 5
34
都立青山公園内 応急給水槽都立青山公園 六本木
7
9
外務省
霞ヶ関出口 内閣府
溜池山王 12
メディカル スクエア赤坂
6
8
霞が関一丁目
霞が関二丁目
裁判所合同庁舎
首相官邸
4
8
氷川 武道場
9
18
桜田門
警視庁
国会議事堂前
1
7
17
5 30 16
赤坂消防署 新町出張所 氷川神社
代田線
東京メトロ千
5
6
18
5
14
17
2
6
赤坂二丁目
6
青山墓地一帯
35
4
27
西麻布二丁目 児童遊園 17 8
赤坂通局
15 16
氷川公園
赤坂署新町 赤坂六丁目 11 出張所 12
16
1
5
2
4
永田町一丁目
法務省
1
3
31
13
首都 高速 都心 環状 線
青山学院女子短大
り組んでいきます。
青山橋
28
26
5 児童遊園
赤坂九丁目
26
15
赤坂中学校
桑田記念
24
2
2 24
3
4
19
20
乃木坂
9
二重橋
桜田門
千代田区
5
13
4
一ツ木公園
8
11 10
乃木坂駅前局
笄児童遊園
25
23
1
24 27
乃木公園
16
南一児童遊園
18 21
22 23
青山 葬儀所
14 4
18 22
17
33
青山霊園 2
3
13
国会議事堂
永田町二丁目
6
13
5
赤坂七局 12
赤坂小学校
山王 日枝神社 4
12
14
東京放送 (TBS)
7
8
9
11
参議院
7 3
11
赤坂
3
報土寺
6
7
赤坂八丁目
山王病院 15
16 15
赤坂サカス
赤坂五丁目
赤坂七丁目 10
12
14
15
17
青山 生涯学習館
4
12
11
都立日比谷高
17
浄土寺
1
一ツ木児童遊園 14
2
10
9
7
6
南青山一丁目
10
18
赤坂三丁目
3
11
12
4
8
32
6
5
13
26
21
7 8
11
都立青山公園
5
9
32
南青山 二丁目
7 12
青南小学校
5
9
10
青山学院大学
渋谷四丁目
16
2
5
4
赤坂四丁目
6
8
13
8
11
南青山四丁目 19
15
18
17
南青山四丁目 児童遊園
10
16
20
16
赤坂消防署
1
15
17
2
青葉公園
10
山脇学園中・高
13
5
4
3
赤坂警察署
15
14
2
5
赤坂コミュニティーぷらざ 6
17
16
3
3
3
31
33
6
9
10 14
18
1
6
21
30
9
赤坂郵便局
赤坂図書館
29
4 5
4
2 2
東 京 桜 メト 田 通 ロ日 り ( 比谷 国 道 線 1 号 線 )
東
青山公園 青山野球場 青山庭球場
28 2
3
7
7 14
19
) 1 (国道224 6 号 記念公園 青山通り 高橋是清翁
1 1
4
宮内庁
新宮殿
特別養護老人ホーム
7
14 13
浸水深(砂浜内) 4.0m
27
南青山 三丁目緑地
南青山三丁目 11 児童遊園
12
表参道
6
9 15
浸水深 3.6m
3
8
北青山三丁目 表参道 5
青山一丁目 3
10
13
29 赤坂地区総合支所
1
2
5
線 4 ロ半蔵門 東京メト 座線 メトロ銀 5 6 東京 12 11
20
青山小学校
外苑前局
青山五丁目児童遊園
田
25
25
2
1
千
22
2
37 三光小学校 38 神応小学校 39一ツ橋入口三田中学校 40 高松中学校神田橋出口 41 高輪台小学校 42 高輪子ども中高生プラザ 43 豊岡いきいきプラザ 44 高輪いきいきプラザ 45 白金いきいきプラザ 46 白金台いきいきプラザ 47 芝浦小学校 48 港南小学校 49 港南中学校 大手町二丁目 大手町 50 芝浦港南区民センター 51 港区スポーツセンター 52 男女平等参画センター 東京 53 港南子ども中高生プラザ 54 二重橋前港南いきいきプラザ 55 お台場学園港陽小・中学校 56 丸の内二丁目 台場区民センター
一ツ橋一丁目
代官町入口
障害者 施設
波対策については長期的な課題として、取り
4
3
6
5
外苑前23
26
20 19
施設名
J R 東
ロ
神宮前五丁目
組んで行きます。その中でも特に、高層建築
北青山三丁目 児童遊園
神宮前四丁目
京
4
東京女子医科大 附属青山病院
7
13
14
7
18
り 通 堀 外
東
低いため、区はこの予測区域図に対応した津
9
12
1
赤坂見附
赤坂一ツ木通局
9
青山一丁目
番号
代官町出口
31 32 33 34 35 36
国会図書館
9
21 1 8
1
2
明治神宮前
3.00m以上
2 3
青山中学校
8
り 通 西 苑 外
浸水深 3.8m
19 28 北青山二丁目 明治神宮外苑地区 秩父宮ラグビー場 1
小川町
施設名
30 宮中三殿
最高裁判所
1
5
豊川稲荷 4
6
都立 青山高
10
神宮前三丁目
国立劇場
麹町中
弁慶橋
赤坂見附前田病院
元赤坂一丁目
北青山一丁目
神宮球場 国学院高
0.80 - 1.50m未満
した。
紀尾井町
6
7
元赤坂二丁目
1
一ツ橋二丁目
竹橋JCT
南山小学校 麻布区民センター 北の丸出口 南麻布いきいきプラザ 竹橋 本村いきいきプラザ 飯倉いきいきプラザ 赤坂小学校 青山小学校 千代田 青南小学校 赤坂中学校 青山中学校 赤坂区民センター サン・サン赤坂 (赤坂子ども中高生プラザ) 赤坂いきいきプラザ 青山いきいきプラザ 青南いきいきプラザ 御田小学校 高輪区民センター 白金小学校
19 20 21 22 23 24 25 26 皇居 27 28 29
半蔵門
迎賓館
明治記念館 2
神宮第二球場
0.15 - 0.50m未満
1 2 3 4 5 6 町二丁目 7 8
麹町学園 女子中・高
上智大学
若葉一丁目
外苑出口
絵画館
新宿区
署
千駄ヶ谷小
二番町
学習院初等科
南元町
神宮前一丁目
の方の関心が非常に高いため予測を行いま
物の4階以上への避難等の対策の検討に取
避
祉
明治通り
浸水深
民
( 地 域 防 災 拠 点 ) 千駄ヶ谷一丁目
JR山手 線
凡例
土交通省港湾局)によると 100~200 年に 1
千駄ヶ谷 四丁目
区
1
年程度に 1 回)の同時生起については、区民
四谷一丁目
せんだがや
番号
施設名
御成門小学校 芝小学校 港勤労福祉会館 赤羽小学校 一番町 御成門中学校 麹町 生涯学習センター 半蔵門 町一丁目 エコプラザ 町 福祉プラザさくら川 三丁目 神明子ども中高生プラザ・ 平河町一丁目 9 神明いきいきプラザ 10 虎ノ門いきいきプラザ 平河町 二丁目 11 三田いきいきプラザ 隼町 12 麻布小学校 13 旧飯倉小学校 三宅坂JCT 14 本村小学校 桜 永田町 15 東町小学校 田 濠 永田町 16 笄小学校 営団 有 17 六本木中学校 楽 町 線 18 高陵中学校
若葉二丁目
※高潮(伊勢湾台風級の台風が東京湾を直撃す
九段南一丁目
三番町
線 四谷 二丁目
新御茶ノ水 神保町
区民避難所 (地域防災拠点) 一覧
五番町
) 線 号
千駄ヶ谷六丁目
丸
九段南三丁目
市ヶ谷
九段南四丁目
本塩町
団
大京町
内藤町
千駄ヶ谷五丁目
営
線 草 道 浅 国 営 ( 都 浜 京 一 第
■高潮(伊勢湾台風級の高潮)と津波の同時生起について
三栄町
荒木町
港区防災地図
代々木 一丁目
町 楽 有
舟町 四谷三丁目
代々木
線 幹 新 道 海
営団
よよぎ
臨海副都心入口
6
青梅一丁目
江東区
潮風公園
わが家の防災メモ
JR 東海 道本 線 JR 京浜 東北 線
fig.11 平成 25 年港区防災地図 ( 港区 HP より引用 )
平成25年6月1日現在
発行番号 25040-6211
176
3.2.0 対象敷地 前章の終わりで、東京ベイエリアの9つの固有性を導き出し、 それらを最も凝縮した島として【芝浦埠頭】を選定した。 そこで、本節ではより具体的な対象敷地を規定するため、芝浦 埠頭の歴史的背景を概観し、それをもとに敷地境界線に落とし込 んでいく。
177
3.2.1 芝浦埠頭の歴史的背景 芝浦埠頭は、「2.3.7 歴史的変遷」を参照すれば分かるように、 埋立当初から現在に至るまで、幾度となく埋立を繰り返してい ることが分かる。その変遷をヴィジュアル化したものを図示する (fig.12)。これらの埋立の背景には社会情勢を反映した埋立事業計 画があるが、ここでは埋立変遷によって生じた空間的変化に焦点 を当てていく。 「国際日本文化研究センター」の所蔵地図及び「国土地理院」が 公開している航空写真、東北大学付属図書館が公開している「外 1920
1930
1940
1950
1990
2000
邦図デジタルアーカイブ」の海図、史実を照合しつつ、芝浦埠頭 が如何にして現在の形状に辿り着いたのかを解明する (fig.13)。
fig.12 芝浦埠頭の埋立変遷
埋立当初、『日本海軍 海図 1065 号 東京湾 1:13,237 1924』によ れば、隅田川口への航路確保・拡幅のための浚渫工事によって、
【隅田川口改良第3工事】
【東京港修築工事】
【東京港港湾計画】
【東京港第4次改訂港湾計画~】
岸壁側の外形線が規定されていることが分かる。 その後、『大東京全圖改正新町名入 1932』を見ると、芝浦町1 丁目 ( 現、海岸3丁目 ) と月見町 ( 現、芝浦アイランド ) の外形を 利用した艀溜のための防波堤が存在している。また、岸壁側の掘 削して水域を引き込んでいる場所は、企業名が特定出来ないもの の地図記号によれば工場が存在しており、当時の水域と用途の関 係性が伺える。 『国土地理院航空写真 1944』では島の南部である海岸4丁目が 埋め立てられているが、この埋立地の幅員は『大東京全圖改正新
『大東京全圖改正新町名入』1932
『国土地理院航空写真』1944
波除堤の形態を活用した海岸4丁目の埋立および船溜 の、「東京市土木局河港課修理工場」前水面への転用 新たな艀溜 (4,400 坪、水深 2.7m) の工事
芝浦町1丁目 ( 現、海岸3丁目 ) と月見町 ( 現、芝浦 アイランド ) の外形を利用した艀溜 or 船溜のための波 除堤の存在
『国土地理院航空写真』1956
西側船溜の埋立 GHQ 接収による機能停止
『国土地理院航空写真』1989
レインボーブリッジ及びゆりかもめの建設 モータリゼーションに起因する芝浦臨港鉄道廃止 波除堤の撤去
町名入 1932』で存在していた防波堤の幅を引き継いでいる。また、 防波堤に面して工場 (『模範新大東京全圖 1934 』から東京市土木 局河港課修理工場と推測される ) が存在していたことから、その 部分だけ埋立せずに水面を残していたと考えられる。また、この 埋立によって芝浦埠頭は湾に対してL字型を形成し、新たな艀溜 (4,400 坪、水深 2.7m) 及び防波堤を整備した。 戦後、GHQ に接収されている期間に、『国土地理院航空写真 1956』を見れば分かるように、西側の船溜が埋め立てられる。こ れは接収に伴う東京市土木局河港課修理工場の機能不全によって 水面が不要化したこと、今後の開発に向けた土地拡大等が考えら れる。接収解除後、海運は艀から大型船舶やトラック等の陸上輸 送へシフトしていくことになるが、その変化が『国土地理院航空
『日本海軍 海図 1065 号 東京湾 1:13,237』1924
『模範新大東京全圖 』1934
隅田川河口への航路確保・拡幅するための工事による、 岸壁側外形線の決定
fig.13 芝浦埠頭の主要な歴史的背景
『国土地理院航空写真』1965
首都高速道路の開通 波除堤の撤去
『国土地理院航空写真』2001
かつての芝浦艀溜の桟橋への変化
写真 1965』に如実に表れており、ここでは首都高速道路の整備及 び艀溜のための防波堤撤去が写されている。 178
その後、転換期が訪れるのはバブル期後半の 1980 年代後期であ る。『国土地理院航空写真 1989』ではレインボーブリッジ及びゆ りかもめの整備が進展しているとともに、モータリゼーションに よる芝浦臨港鉄道の廃止が伺える。そして現在では、かつて芝浦 艀溜として存在していた水面に桟橋が伸展し、当時の面影は殆ど 残されていない。 以上が、現在の芝浦埠頭の外形に至る過程であるが、内部にお いても特殊な街区形成が生じている場所がある。それは島南東部 の道路が曲線状に敷かれている位置である (fig.14)。『ゼンリン 住宅地図 1967』を参照すると、その鍵が記載されているのだが (fig.15)、これは芝浦臨港鉄道の引込線が計画されていた可能性を 示唆している。 かつて、島南西部に現在も敷地を保有している「三信倉庫株式 会社」の敷地内に旧陸軍の鉄道敷設計画があり、実際には実施さ れなかったものの、その後路線計画を国鉄 ( 現、JR) が引き継いで 権利を留保していた 。そのため、路線計画のあった敷地だけが変 [1]
fig.14 『国土地理院航空写真 2015 年』
形敷地として取り残され、周辺街区はそれに合わせて切り取られ ている。現在、「三信倉庫株式会社」は JR から 1985 年に敷地を払 い下げてもらい、ループX ( オフィスビル ) とループM ( 集合住宅 ) を建てている。 fig.16 防潮堤及び内部護岸線
また、芝浦埠頭においてもう一つ重要な要素として「防潮堤」 及び「内部護岸」がある (fig.16)。図中で赤線が防潮堤、赤丸が陸 こう、赤点線が計画中の防潮堤、青線が内部護岸を指す。これを 見れば明らかなように、防潮堤の内外で港湾機能とその他の用途 が分断されていることが分かる。芝浦埠頭においては、防潮堤の 外側は基本的に東京都港湾局が保有している敷地で、一般の人間 は不可侵の領域となっている。一方、一部では老朽化が進行して おり、改修を要する防潮堤および護岸が存在している (fig.17)。
fig.15 『ゼンリン住宅地図 1967 年』海岸3丁目
fig.17 防潮堤及び内部護岸等の計画対象地域 (H24 東京都港湾局資料より引用 )
[1] 三信倉庫株式会社 HP(http://www.loop-mx.co.jp/)
179
3.2.2 対象敷地 前述の歴史的背景を東京ベイエリアの固有性に落とし込むと、 ⑤可侵領域 / 不可侵領域⑥埋立変遷⑨交通インフラの3つに集約 できよう。特に、⑥「埋立変遷のうち、現在では更新されてしまっ た領域および防波堤の線」と⑨「かつて陸軍が貨物引込線を計画 していた線及びその周囲の変形敷地」を主敷地とし、⑤「不可侵 領域を規定する防潮堤のうち、今後可侵領域として計画し得る線 分とその前後の領域」について、副次的敷地として敷地境界線に 採用した。前者は都市スケールで芝浦埠頭の歴史的背景を概観し ない限り導き出せない、既成の敷地境界線を無視した領域である が、後者は既存の敷地境界線からでも導くことが可能であるため だ。 以上のことから、敷地境界線を規定する (fig.18)。 この対象敷地の概要は以下のとおりである。 □敷地面積:37,100 ㎡ 陸域:24,290 ㎡ 水域:12,810 ㎡ □建築面積:18,922 ㎡ 複合文化施設:6,222 ㎡ 集合住宅 :10,950 ㎡ ( うち、新規住戸:8,419 ㎡ ) マーケット :1,659 ㎡ □延床面積:136,610 ㎡ 複合文化施設:30,590 ㎡ 集合住宅 :102,700 ㎡ ( うち、新規住戸:44,290 ㎡ ) マーケット :3,320 ㎡
fig.18 対象敷地
Scale=1:6000
180
本設計:対象敷地
fig.19 対象敷地の周辺状況 181
3.3.0 用途 主用途として、第一に「中層集合住宅」を計画する。これは親
集合住宅:高層棟・タワー棟 (既存住民用の住戸)
水都市において、水辺に居住すること及び親水空間の存在意義を 最優先するためであるとともに、将来的な再開発への対案となる。 第二に、教育文化施設でありベイエリア固有のものとして海事博 物館を中心とした「複合文化施設」を計画する。また、それらに
オフィス (東京都労働局受給調整部含む)
付随してオフィス・マーケット・レストラン等の複合的に計画する。 マーケット
これらは複数料金設定や契約形態 / 賃料設定にする等の手段に よって、より多くの人間に対して多様な選択肢を与えることで自
海事博物館
由度を上げることを目的とする。 集合住宅では、水辺に近いほど住戸面積を拡大し、賃料の高い 定住型の住戸を多く配置する一方、上層階では住戸面積を縮小し、 賃料の安い短期型の住戸に比重を置く。また、一部では高層棟を 計画するが、こちらは撤去したトミンハイム海岸3丁目およびルー プ・ エ ム の 総 住 戸 数 262 戸 ( う ち、1LDK:146 戸、2LDK:52 戸、 3LDK:64 戸 ) をまかなう。 オフィスでは、フロア単位でのレンタルオフィスだけでなく、 室単位、コワーキングスペース等を用意する。 マーケットでは、様々な店舗規模に応じた床面積のタイプを用 意するとともに、蚤の市を許容するスペースを用意する。 レストラン及びカフェでは、異なる料金設定の店舗を複数配置 することで、様々な選択肢を与える。
集合住宅:中低層棟 (新規居住者)
複合文化施設では、海事博物館以外に、ホール・会議室・図書 館等を共存させる。また、海事博物館は現在本館が閉館している「船 の科学館」の展示物を移転するとともに、芝浦埠頭が GHQ によっ て接収されていたことを踏まえて、米軍の船舶や海運関連品、歴 史等を扱う海事博物館と両立させる。
fig.20 用途構成ダイアグラム
182
3.4.0 設計手法 これまでの研究を踏まえて、設計手法を検討していく。 親水都市において、建築的応答として最も重要なのは「親水空 間の設計」であると言える。親水空間は、特に日本においては平 面的に把握されている。あるいは良くても水面に対して2つのレ ベルが用意される程度で、親水空間を規定するもう一つの要素で ある建築側の対応が欠如している。そこで、水面から親水空間、 建築に至るまでの3つの構成要素の中で、三次元的に親水空間を 展開、連続させることで、相互関係性を強めることを目的とする。 親水空間を中心として、水辺 / 親水空間 / 建築、と平面的・断面 的に多様な水との関係性を構築することによって、異なる親水性 を体感可能にする。
183
3.4.1 三次元化する親水空間:島 / 襞 / 桟橋
「島」
「襞」
「桟橋」
そのための設計手法として、1章の形態的特性分析で用いた語 彙である島 / 襞 / 桟橋の活用を検討する。 これらは本来、水域と親水空間の間に生じる水際線の操作を大 別したものである。この意味を拡張すると、異なる2要素間に生 じる線分の操作手法と言うことが出来よう。従って、水域 / 親水 空間を対象とする水際線に対して、親水空間 / 建築を対象とする 平面・断面線の操作へ拡張することで、水辺 / 親水空間 / 建築を 一体的に形成することが可能になる (fig.20)。これによって、親水 空間内における断面的変化は勿論のこと、建築まで親水空間を拡 張することで三次元的に展開させていく。 併せて、東京ベイエリアの固有性のうち、空間的特性である③ 親水陸域 / 非親水陸域④ヒューマンスケール / ソーシャルスケー ルの親水空間⑤可侵領域 / 不可侵領域の3つを空間的に落とし込 んでいくことで、東京ベイエリア固有の建築を提案する。
fig.21 島 / 襞 / 桟橋の断面・平面ダイアグラム
fig.22 概念モデル
184
3.4.2 モデュール 設計にあたり使用するモデュールについて、「歴史的文脈を空間 化する」ことを第一義に据えて検討する。 芝浦埠頭は埋立当初、艀による海運を中心としていた。特に関 東大震災時における救援物資の運搬、第二次世界大戦後の GHQ 接収期における船舶からの移送で活躍した。しかしながら、1960 年代後半のコンテナリゼーションによる船舶の大型化に伴って 徐々に海面から姿を消していった。そこで、その歴史的背景を記 憶することを目的として、艀の寸法をモデュールとして活用する。 使用にあたって、過去の再現ではなく現在に即して再編する ことを念頭に入れておく必要がある。ここでは、一般社団法人 BOAT PEOPLE Association が「横浜トリエンナーレ 2005」で実 施された廃棄処分予定の中古艀を水上ラウンジとして転用した事 例を参考にする。 この際に使用された艀は「創造都市横浜 HP」の上記関連記事に 添付されている図面から、積載容量 300 ㎥のものであると考えら れる (fig.21)。そこで、この船型の寸法を長さ 30m ×幅 9m とし、 そこから基本モデュールを【10m × 3m × 3m】に設定する。
fig.23 艀イメージ及び図面 1:200 ( 三協産業株式会社 HP より引用 )
185
3.4.3 構造および素材 ここでも「歴史的文脈の空間化」を念頭に検討する。構造およ び素材において重要なのが、如何にして東京ベイエリアの文脈に 即した素材を選定するか、あるいは歴史的蓄積をもたらすことが 出来るか、の二点である。 一般的に、ベイエリアにおける倉庫や土木構築物の多くは RC 造によって建設されており、かつセメント工場や生コンクリート 工場が近接していることから条件としては優れている。一方で、 ベイエリアは塩害が生じる地域であり、特に RC 構造物は内部の 鉄筋や PC 鋼材が腐食することで膨張し、ひび割れが生じること fig.24 耐候性鋼材の経年変化イメージ
で耐力や安全性が低下するという問題がある。その対策として、 かぶり厚を増す、塗装を行う、防腐性素材で被覆する等が一般的 である。しかしながら、経年による変化が著しいベイエリアにお いて、RC 造では経年劣化しか伴わない ( あるいは維持 ) のは、本 当に共生出来ているのだろうか。 一方で、船舶や艀には鉄鋼材が使用されており、ベイエリアに おける人間に密接した素材として S 造がより適切であると言える。 また、鉄鋼材も塩害による経変劣化を伴うが、耐候性鋼材のよう に使用する材を検討すれば経年 " 変化 " に価値転換し得る (fig.22)。 一方で、本提案では集合住宅の割合が多く、S 造では居住性にお いて耐震性や防音性に難があることから、主構造としてコンクリー ト充填鋼管構造 (CFT 造 ) を採用し、耐候性・居住性・コンクリー トとの共存といった課題の解決を図る。 また、経年変化という点で言えば木の使用が考え得る (fig.23)。 もともと東京ベイエリアは木場として盛んだったこと、物流拠点 として各地から木材を輸送しやすいこと等から、副次的素材とし ての活用を検討する。
fig.25 木材の経年変化イメージ
186
3.5.0 デザイン
ヴォリュームスタディ
芝浦埠頭の全体像
1
2
既成の街区を超えるように引いた敷地境界線
3
旧陸軍の貨物引込線計画地および防波堤の線をLRTの線路へ転換
4
引込線と水域という歴史的文脈を顕在化させるためのヴォリュームを配置
かつての水域を取り戻す 浚渫土を海沿いの造成へ活用
5
既存の防潮堤と一体化するようにヴォリュームを配置 メインのヴォリュームへ貫入し、繋ぎ合わせる
敷地ダイアグラム
全体俯瞰パース
保管庫 図書室
印刷室 準備室 コインロッカー
WC
受付 クローク カフェ
展示室
ミュージアムショップ 展示室
展示室
レストラン 倉庫
事務室
ピアノ倉庫 調理室
防災センター 空調室 WC
展示室
駐車場
WC
受付 クローク 機械室
コインロッカー
事務室
倉庫
駐車場 防災センター
荷解室
GL 平面図 1:1200
保管庫 図書室
印刷室 準備室 コインロッカー
WC
受付 クローク カフェ
展示室
ミュージアムショップ 展示室
展示室
倉庫
事務室
ピアノ倉庫
防災センター 空調室 WC
駐車場
0 1
5
10
20
50
GL 平面図 1:400
保管庫
駐車場 荷解室 +1,000 受付
給湯室
応接室 館長室 +1,000
前室
事務室
学芸員室
倉庫 倉庫
資料室 機械室
0 1
5
10
20
50
BFL 平面図 1:400
レストラン
調理室
展示室
WC
受付 クローク 機械室
コインロッカー
事務室
倉庫
駐車場 荷解室
防災センター
0 1
5
10
20
50
GL 平面図 1:400
保管室
事務室
準備室
アトリエ
展示室
展示室
展示室
商店
商店
商店
商店
商店
WC 商店
収蔵室 商店
商店
展示室
準備室
倉庫 展示室
展示室
2FL 平面図 1:1200
保管室
事務室
準備室
展示室
展示室
展示室
WC
0 1
5
10
20
50
2FL 平面図 1:400
アトリエ
商店
商店 商店 商店 商店 商店
収蔵室 商店
商店 展示室
準備室
倉庫 展示室
展示室
0 1
5
10
20
50
2FL 平面図 1:400
オフィス
オフィス
オフィス 収蔵室
展示室
準備室
WC
事務室
WC
展示室 展示室 工作室 図書室
更衣室
学芸員室
給湯室
倉庫
0 1
5
10
20
50
2.5FL 平面図 1:400
展示室
展示室
ホワイエ 展示室
講演ホール
コワーキングスペース
倉庫 テラス 準備室
スタジオ1
楽屋1
楽屋3
WC
楽屋2 テラス
会議室
スタジオ2
展示室
展示室
3FL 平面図 1:1200
展示室
展示室
展示室
コワーキングスペース
倉庫
スタジオ1
楽屋1
楽屋3
WC
楽屋2 スタジオ2
0 1
5
10
20
50
3FL 平面図 1:400
ホワイエ
講演ホール
テラス 準備室
会議室
テラス 展示室
展示室
0 1
5
10
20
50
3FL 平面図 1:400
郵便局
ワークショップスペース アトリエ1
オフィス
アトリエ2
給湯室
WC
ワークショップスペース オフィス
アトリエ3
オフィス 図書室 オフィス
図書室
オフィス
準備室 講演ホール
倉庫 ホワイエ
WC
4FL 平面図 1:1200
ワークショップスペース アトリエ1
アトリエ2
給湯室
WC
ワークショップスペース
アトリエ3
オフィス
オフィス
0 1
5
10
20
50
4FL 平面図 1:400
郵便局
オフィス
オフィス
図書室 オフィス
図書室
準備室 講演ホール
倉庫 ホワイエ
WC
0 1
5
10
20
50
4FL 平面図 1:400
事務室
展示室
展示室
調理室
レストラン
準備室
展示室
倉庫
レストラン
調理室
5FL 平面図 1:1200
事務室
展示室
展示室
調理室
レストラン
0 1
5
10
20
50
5FL 平面図 1:400
レスト
準備室
展示室
倉庫
レストラン
調理室
0 1
5
10
20
50
5FL 平面図 1:400
博物館機能 米軍館
日本館
公共機能
親水空間動線 米軍館
日本館
博物館動線
1000 6000
展示室
1000
展示室に間接光とし 光が降り注ぐ
ワークショップスペース
5000
て、親 水 空 間 か ら の アトリエ2
人びとの憩いの場を
5000
1000
5000
つくる
31000
1000
前 面 に 公 園 を 設 け、
機械室
倉庫
3000 1000
展示室
展示室
5000
1000
展示室
駐車場
日本館短手断面図 1:200
1000
展示室
5000
1000
展示室
31000
5000
展示室
5000
展示室
1500 1500
1000
5000
1000
図書室
展示室から親水空間
を通して水面を見下
ろす
米軍館短手断面図 1:200
6000
1000
海事博物館長手断面図 1:800
模型パノラマ:海側立面
米軍館
日本館
親水空間から広場を見下ろす
展示室と親水空間が断面的に繋がる
親水空間から展示室へ光が降り注ぐ
1
2
防潮堤に沿ってヴォリュームを配置
3
周辺の建物に合わせてヴォリュームを島に切り分ける
4
防潮堤を造成し、地形と一体化させる 島をGLから持ち上げることで、浮遊する群島となる
群島を繋ぎ合わせる屋根をかける
集合住宅中低層棟ダイアグラム
集合住宅 低層部 2FL 平面図 1:400
集合住宅 低層部 GL 平面図 1:400
0 1
5
10
20
50
集合住宅 低層部 4FL 平面図 1:400
集合住宅 低層部 3FL 平面図 1:400
0 1
5
10
20
50
159000 3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
集合住宅 低層部 長手断面図 1:400
159000 3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
3000
集合住宅 低層部 海側立面図 1:400 0 1
5
10
20
50
集合住宅 低層部 短手断面図 1:200 1500
2000
3000
380 920
2700
2700
380 920
2700
380
1920
1920
400
400
200 6800 10000 20000 3000 3000 2800 200
集合住宅 低層部 短手立面図 1:200
19700
380
3000
380 920
2700
1000
3000
380 600320
3000 3000
1000 500
2700
200
19700
380 600320
3000 2800
2700
3000
250 730 320
20000
3000
10000
2000
6800
1500
200
3000
3000
1000 500
1000 3000 3000
集合住宅 中層部 3FL 平面図 1:500
集合住宅 中層部 2FL 平面図 1:500
集合住宅 中層部 GL 平面図 1:500 0 1
5
10
20
50
集合住宅 中層部 5FL 平面図 1:500
集合住宅 中層部 4FL 平面図 1:500
0 1
5
10
20
50
集合住宅 中層部 7FL 平面図 1:500
集合住宅 中層部 6FL 平面図 1:500
0 1
5
10
20
50
倉庫
荷解室
集合住宅中層部 長手断面図 1:500
集合住宅中層部 海側立面図 1:500
0 1
5
10
20
50
学芸員室
2LDK
3LDK
3LDK
1LDK
2LDK
1LDK
オフィス
オフィス
オフィス
オフィス
ホワイエ
展示室
倉庫
荷解室
学芸員室
テラス
テラス
図書室
事務室
講演ホール
マーケット
オフィス
オフィス
駐車場
集合住宅中層部 長手断面図 1:500
0 1
5
10
20
50
1500
2000
3000
2700
集合住宅中層部 短手断面図 1:200 2700
2700
300
3000
3000
730
320
2700
2700
320 600
380 920
380
2700
2700
380
380
1920
1920
400
400
3000 2800
380 920
250
3000 200
31000
300
20000
2700
31000
10000
320 600
320 600
6800
380
380
200
320 600
2700
3000
380
320 600
1000
380 920
380
3000 3000
3000
2700
200
1000 500
320
3000 2800
730
3000
250
20000
3000
10000
2000
6800
1500
200
3000
3000
1000 500
1000 3000 3000
集合住宅中層部 短手立面図 1:200
海側から集合住宅を眺める
道路側から集合住宅を臨む
荒天時には小型船の陸揚げが可能
プライベートコートに住戸ご との個性が溢れ出す
海に対して開かれた幅 3,000mm のウッドデッキを通じて住民は 移動する
居室を前面に設け、キッチン からでも海の眺望が取れる
二方向避難経路が確保出来ない
1LDK
住戸にはハッチを取り付けたバ ルコニーを設け、道路側ファサー ドにさらに表情をつける
各住戸へはプライベートコート を介してアクセスする
1K
住戸間が立体的に繋がり合う
海へ指向するように内装材の 方向を決定する
集合住宅 平面詳細図 1:50
居室を前面に設け、キッチン からでも海の眺望が取れる
メ ゾ ネ ッ ト タ イ プ の 住 戸 で は、 より多くの光を取り込める ウッドデッキと住戸間は 1,000mm のレベル差を設け、室 内への目線を区切る
プライベートコートに高さ 850mm の杉板材を回すことで、 座っていても海だけを眺むこと が出来る
GL から 2,000mm 持ち上げるこ とで、防潮堤の役割を為す
T.P.+1,500 ま で レ ベ ル を 下 げ、 親水性を高める
集合住宅 断面詳細図 1:75
キッチンからの眺望
ウッドデッキからの眺望
1
2
タワー棟
高層棟 強固な構造体となるコアを背後に立てる
水面沿いにヴォリュームを配置
コアは共有部であるとともに内陸部とのバッファーとなる
3
4
親水空間を活かすように群島を形成する
タワー棟と高層棟の親水空間が交じり合う
集合住宅高層棟・タワー棟ダイアグラム
集合住宅高層部 GL 平面図 1:400
集合住宅高層部 2FL 平面図 1:400 0 1
5
10
20
50
ロッカールーム ロビー
管理人室
集合住宅高層部 3FL 平面図 1:400
集合住宅高層部 4FL 平面図 1:400 0 1
5
10
20
50
集合住宅高層部 5FL 平面図 1:400
集合住宅高層部 6FL 平面図 1:400 0 1
5
10
20
50
集合住宅高層部 7FL 平面図 1:400
集合住宅高層部 8FL 平面図 1:400 0 1
5
10
20
50
集合住宅高層部 9FL 平面図 1:400
集合住宅高層部 10FL 平面図 1:400 0 1
5
10
20
50
集合住宅高層部 11FL 平面図 1:400
集合住宅高層部 12FL 平面図 1:400 0 1
5
10
20
50
集合住宅高層部 13FL 平面図 1:400
集合住宅高層部 14FL 平面図 1:400
集合住宅高層部 15FL 平面図 1:400 0 1
5
10
20
50
オフィス
郵便局
オフィス
講演ホール
ホワイエ
オフィス アトリエ
集合住宅高層部 長手断面図 1:500 0 1
5
10
20
50
タワー棟のロビーと中空層が高層棟へ貫入する
島が前後することで動線も複雑に絡まり合う
島の隙間に共有部が生まれる
島の隙間を縫うように開口が空いた屋上テラス
商店
商店
倉庫 商店
商店
倉庫
マーケット 2FL 平面図 1:300 0
1
5
10
20
100
0 2 000
200
0
300
37 09
20
00
10 00
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
30 00
0
300
0
300
30 00
0
300
0
300
30 00
0
300
0
300
10 00
20 00
30 00
30 00
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
300
0
287
1
マーケット 3FL 平面図 1:300 0
1
5
10
20
V 字の構造体がマーケットという島を浮遊させる
2F デッキからマーケットの様子を見下ろす
桟橋のようにホールが海へ突き出す
20000 12000
4000
ブリッジにあるレス
600 2400
24000 18000
2400
6000
1000
5000 7000
トランから海を臨む
1000
4000
600
囲われた親水空間が
5000 2000 3000 1000 3000
18000
10000 5000
1000
31000
広場として機能する
階段状になった地形 が水面へ引き寄せる
マーケットの下を抜けて 道路と広場が繋がる
マーケット - 博物館ブリッジ 短手断面図 1:300 0
1
5
10
20
屋上テラスが博物館 と集合住宅を結ぶ
オフィス
オフィス
オフィス
オフィス
商店
オフィス棟のヴォリューム 商店
が親水空間の背景となる
T.P.+1,500 の 位 置 に レ ス ト ラ ン を 設 け、 親水性を高める
内陸側水域 - オフィス棟 断面図 1:300 0
1
5
10
20
道路から海へ連続的に人々を引き込む
海側にも囲われた親水空間が生まれる
博物館・集合住宅・オフィス棟に囲まれた 親水空間に人びとが溢れ出す
参考文献 ・『新版 港湾工学』港湾学術交流会編、朝倉書店、2009 年 ・『港湾荷役のQ&A 改訂増補版』港湾荷役機械システム協会編、2014 年 ・『都市空間の地理学』加藤政洋・大城直樹著、ミネルヴァ書房、2006 年 ・『ジェントリフィケーションと報復都市 新たなる都市のフロンティア』ニール・ スミス著、原口剛訳、ミネルヴァ書房、2014 年 ・ 『都市の原理 SD 選書 257』ジェイン・ジェイコブズ著、中江利忠・加賀谷洋一訳、 鹿島出版会、2011 年 ・「建築論壇 現代都市のための9か条:近代都市の9つの欠陥」西沢大良著、a+u 2011 年 10 月号、a+u 2012 年 5 月号 ・「[ 特集 ] ダニエル・リベスキンド 希望としての建築」、ユリイカ 2003 年 3 月 ・ 『レム・コールハース|OMA 驚異の構築』ロベルト・ガルジャーニ著、難波和 彦監訳、岩本真明訳、鹿島出版会、2015 年 ・『東京スタディーズ』吉見俊哉・若林幹夫著、紀伊国屋書店、2005 年
259
4.0.0 総括 4.1.0 親水都市とは
260
4.1.0 親水都市とは 本設計を踏まえて、改めて親水都市の価値について提言する。 今日では、水辺は都市生活における付加価値的な存在として扱 われてしまっている。しかし、中世より高度経済成長期に至るま で、時代ごとに人びとの中での位置づけは異なっていたものの、 社会的なレベルでも個人のレベルでも、水辺は生活の一部として 欠かせない存在であった。それを現代において再考した時、これ までの親水空間と称されるものとは異なる場、空間の提案が可能 になる。そしてそれは、現代社会において欠如した都市空間の一 部を為すことが出来る。一様化する都市の様相の中で、居住、職業、 文化等の様々な視点から、親水都市は多様性を許容する内陸部の 補完的な位置づけとなる。親水都市は、人びとが都市で生活する ことを第一義に据えた際に、今後の都市の在り方を示す一つの手 かがりになるのではないだろうか。 今、東京ベイエリアはそれを実現する絶好の機会を得ている。 舵を切るのは他でもない、我々の役目である。
261
謝辞 大学生活の最終成果として本論を書き上げるにあたり、数多く の方々のお世話になりましたことに、文末になりましたがこの場 で謝辞を述べさせていただきたいと思います。 主査である西沢さんには、私の思考の基礎となる物事の見方や 価値観を与えていただき、本論は西沢研究室に入ることなくして は実現できなかったことと思います。本当にお世話になりました、 ありがとうございます。 副査を引き受けていただいた赤堀先生からは、都市的なヴィジョ ンから本論のカギになる設計手法や作品事例等の紹介、私とは異 なる視点からの率直なご意見といった、広い視野を持つことがで きる助言をいくつも与えていただきました。 同じく副査の清水先生からは、親水性とは何か、水辺における 都市活動とは何か等について数多くの議論を交わすことができ、 本論をより洗練するための大きな励みとなりました。 また、本論の基礎となる修士 2 年の前期ゼミで港湾班として活 動してくれた M1 秦達也・湯浅亮、B4 小澤拓夢・小野直輝・荘司 慎哉・杉山花梨の 6 人には、様々な調査から図の作成、連日の議 論に至るまで、本当にお世話になりました。皆のおかげで本論を これほど高密度に書き上げることが出来ました。 スタディ模型制作や撮影等に協力してくれた M1 池端翔・小野 真徳・山本明輝・柳川荘子や B2 篠原廉、最後の最後まで徹夜しな がら模型制作を協力してくれた M1 今城里菜・高田正太郎・秦達也、 B4 荘司慎哉・滝澤正啓、B3 永島明典・小室周起、B2 小泉亮輔に は感謝してもし切れません。最後の最後まで粘った私に文句も言 わずついてきてくれたこと、本当にありがとう。特に今城と正太 郎には設計において様々な意見、助言をもらえたことが最終成果 物をよりクオリティの高いものに出来たことへ繋がりました。そ して、どんな時でも自分の時間を割いてまで手伝ってくれた2人 には心から感謝しています。 ここにお名前を挙げることが出来なかった方々もまだまだ沢山 おりますが、西沢研究室のメンバーをはじめ、これまでの大学生 活で関わっていただいた全ての方に感謝を意を表すを共に、ここ に筆を置きたいと思います。 2016 年 2 月 8 日 2016 年 2 月 16 日 5F アトリエ 262