Technology with Design

Page 1

テクノロジーと人を結ぶデザイン

テクノロジーとユーザー体験をベースとしたアイデア発想法の研究

木村友昭 千葉工業大学大学院

山崎和彦 千葉工業大学


技術主導の製品開発 これまで技術先行型の商品づくりが広まってきたが、必ずしもユーザー のニーズに答える形ではなく「技術的に可能だから実装する」というス タンスで作られた製品や機能は多く、「物で出来ること」と「ユーザーが 行うこと」に違いが多い現状があります。

01|研究背景 テクノロジーによる表現 一方でテクノロジーアートなどのインスタレーションは、多くの人に対 して仕掛けを通じた楽しさ、面白さ、不思議さという視点で強いメッセー ジ性を持っており、これらのインスタレーションは受け入れられる傾向 にある。


人が興味・関心を持つ技術の使い方を発想 人とテクノロジーの親和性を高める 01|研究目的

The Fun Theory はまだパブリックなインスタレーションの取り組みの領 域を出ておらず、デザインとしてはよりユーザーに焦点を当てる必要が ある。また「Fun:楽しい」という要素以外にも人とテクノロジーの親和 性を高める視点があるはず。


背景

目的

02|研究のアプローチ

テクノロジーアート

技術主導の開発

人が興味・関心を持つ技術の使い方を発想

調査

発想法調査

仮説

テクノロジーからの発想

実践

技術アプローチ調査

仮説の実践と検証

人アプローチ調査

人からの発想


発散技法 キーワードから等の連想

収束技法 03|発想法について

創造技法

情報の整理

自由連想法 強制連想法 類比連想法 空間型 系列型

統合技法 発散と収束の繰り返し

態度技法 創造態度の育成

瞑想型 交流型 演劇型

演繹法 帰納法 因果法 時系列法


発散技法 キーワードから等の連想

収束技法 創造技法

情報の整理

自由連想法 強制連想法 類比連想法 空間型 系列型

演繹法 帰納法 因果法 時系列法

統合技法 発散と収束の繰り返し

03|発想法について

態度技法 創造態度の育成

瞑想型 交流型 演劇型

・多くの発想法は思考するルールを定めた汎用的なものである ・アイデアをより多く出し、整理する中で新しい視点を得るために利用される

・目的を達成するためには複数の視点(技術、ユーザー)が必要 ・適切な発想キーワードの設定や技法の組み合わせから発想のプロセスを作る


03|技術からのアプローチ

LIGHT-LIGHT TOKYO WANDER

BEAST

The Forty-Part Motet

Galvanic Frame

RUBE GOLDBERG MACHINE

MOBILE

失われた弦のためのパヴァーヌ

Morpho Tower


テクノロジーアートの特徴 ・動的な表現が中心に存在する。 ・作品と人・自然のインタラクションがあること。 ・技術特徴を違うものに見立てるメタファの活用。 ・見えないものを視覚化する。

03|技術からのアプローチ

・自然に逆らう不自然さ・不思議さ・違和感。 ・作用の変換。

技術からのアプローチ 人や自然に呼応する動的な反応や、不思議さが人に興味を与える。 技術の持つ特徴をこれに結びつけることで、テクノロジーに対して嫌悪 感を持たせないアプローチが出来るのではないか。


HCD のアプローチ ・ユーザー調査  [ユーザーの特性、行動、その背景にある考え方を明らかにする] ・ペルソナ手法  [調査を元に詳細なユーザー像を仮想する]

03|人からのアプローチ

・シナリオ手法  [ペルソナが製品やサービスを利用する行動、目的、周辺環境などを時間軸で記述する]

本研究では技術を活用する事を前提とするため、ユーザー調査・ペルソナ手法から導か れるユーザー特性との整合性が取りづらくなってしまう。


シナリオ手法の特徴 ・人、場所、時間、人と物のインタラクションが含まれる。 ・描写性とストーリー性が優れているため、相手が興味を持ち、理解し易い。

03|人からのアプローチ 人、場所、時間、インタラクションなど「人と物を関連付ける」情報が取り込まれるた め、一連の物語の中に技術要素を加えることでテクノロジーと人の関わり方を示す事が できる。


技術からのアプローチ 人や自然に呼応する動的な反応や、不思議さが人に興味を与える。 技術の持つ特徴をこれに結びつけることで、テクノロジーに対して嫌悪 感を持たせないアプローチが出来るのではないか。

シナリオ手法のアプローチ 04|発想方法の仮説

人、場所、時間、インタラクションなど「人と物を関連付ける」情報が 取り込まれるため、一連の物語の中に技術要素を加えることでテクノロ ジーと人の関わり方を示す事ができる。

2 つのアプローチを組み合わせる発想プロセス


デザイン背景

技術背景

デザインテーマ

技術ロードマップ

デザイン目的

利用可能な技術

04|発想方法の仮説 テクノロジーの内包要素 技術が達成する事柄

ユーザーの設定

シーンの設定

シナリオライティング

デザインコンセプト

技術に関わる制約


人からのアプローチ

シーン から発想する

場所・人・時間軸を含めた状況 技術を導入する場所を定め、その場に居る人がどの様 な目的・用途で技術を利用するのかを発想する。

技術からのアプローチ

04|発想方法の仮説

イメージ

技術が達成する事柄

から発想する

技術を活用することで社会をどの様に変えるのかを考え それをどの様に表現するのか。

技術的要求事項 から発想する

技術を利用するのに必要な条件をクリアする 発熱・強度・安全性など利用しようとする技術がもつ 課題を解決するためのアイデア。 必要な関連技術の導入を検討。


シーン

3つの方向性で展開 イメージ

技術的要求事項

シーン

04|発想方法の仮説

各アイデアを組み合わせて展開

組み合わせ

アイデアの実現性を高める イメージ

技術的要求事項

シナリオ化

アイデアのシナリオ化 ユーザー像、デザインのポイント、使い方な どの情報を整理


05|実践検証

01 : エコデザインワークショップ

02 : 1000cc Creative Competition

03 : pdweb デザインコンペ

04 : iida AWARD 2010

05 : Case Study 1

06 : Case Study 2


雨 × SWEET 1000cc Creative Competition / 千趣会・JDN 主催

05|実践事例

テーマ     [憂鬱な雨を楽しく、待ち遠しい物に変えるデザイン] デザインカテゴリ[雑貨・テキスタイル] 対象ユーザー層  [20 40 の女性 ]


雨が奏でる楽器 ヤジロベエの仕組みを利用して 雨粒を音に変えるガーデンアクセサリ


Steel Φ2

(400)

(Φ70)


・「雨の日」を観察 ・窓辺、庭、リビング、寝室、玄関、街中 ・20 代女性、30 代会社員、子供(園児

児童)

雨の日に存在する課題に対して改善するアイデア 提案するものにどの様な役割を与えるのか

シーン

05|実践事例 技術的要求事項

イメージ

・雑貨、テキスタイルのデザインカテゴリ

・「雨の日」を観察

・応用できそうな技術、仕掛け

・雨音、リズム、揺れる葉、波紋、香り ・音楽へ変換、動きを増大、雨の香りを再現

「イメージ」を実現するための具体的な方法について検討。 技術的な課題を解決する。

雨そのものが持っている要素を取り出す。 雨の良さを演出する方法を考える。


シーン

組み合わせ 技術的要求事項

イメージ

05|実践事例 波紋を投影する

雨粒でベルを鳴らす

雨が降った時間を記録する 雨粒をランダムな動きに変える


雨の楽しさに気づくシナリオ 今日はショッピングに出かける予定でいた。しかし、あいにくの 雨模様で楽しみにしていたが気持ちよく出かけられる気分ではな

05|実践事例

くなってしまった。少し外を眺めていると草木の間からかわいい 音が聞こえてくることに気づいた。音と一緒にコロンと揺れる姿 に見入っているうちに「雨もなんだか楽しいな」と思える様になっ た。今日はそのまま雨の景色を楽しんでいた。

対象ユーザー [ 20 代女性 ] シーン    [ リビングの窓辺、庭 ] 提供価値   [ 降雨を知らせる雨の音楽 ]


検証・ヒアリング ・コンペにおいて最優秀賞受賞 ・直接的なアイデアに限定されず発想の広がりが見られた ・外観、技術、実現できるかどうかの裏付けや可能性を全てバランス良く兼ね備える ・アイデアから窓の外の情景を連想できる ・詩的/ポエティックなプロダクト・ユーザー体験を印象づけられる ・実際に音を聴いてみたい

05|実践事例


05|実践事例2


05|実践事例2

水が灯す明かり:Aqua Torch 小型水力発電器を利用した無電源照明 水の音とゆらぎで優しく空間を照らす


眠る前の一刻を照らす 今日も忙しい一日だった。風呂からもあがって眠るまで

05|実践事例2

の一時を Aqua Torch を灯らせて楽しむ。めまぐるしい 一日の終わりに、Aqua Torch は時間をとても穏やかに してくれる。水に揺れる灯りを見ながら眠りにつく。

対象ユーザー [ 20 代女性 ] シーン    [ 寝室 ] 提供価値   [ 優しい水の音と光 ]


morning

noon

05|実践事例3

太陽と月の空:Wall Clock フルカラー LED を利用して空の移り変わりを 再現して時間を示す時計 対象ユーザー[20∼30 代男性] シーン   [書斎、リビング] 提供価値  [束縛しない時間表現]

evening

night


05|実践事例4


05|実践事例4


05|実践事例4

ケータイが夢を観るベッド:memorium データを記憶と考えてケータイを擬人化 高速無線通信で情報をビジュアライズする 対象ユーザー[10∼20 代女性] シーン   [寝室] 提供価値  [携帯のモノからヒト化]


事例 2 作品がコンペにおいて受賞 rainy.tone  ・直接的なアイデアに限定されず発想の広がりが見られた  ・外観、技術、実現できるかどうかの裏付けや可能性を全てバランス良く兼ね備える wall clock  ・時間を感覚的に表すことに共感  ・光の色と影を使うことに小さいながらも盲点を突いている

ヒアリング・コメントのまとめ 06|まとめ

・面白い、綺麗、知的など事例全般で感性的な印象を受けるという評価  →ロジカルなテクノロジーの印象を感性的にすることでユーザーが嫌悪感を抱かない。  ・実際に見てみたい、聴いてみたい、やってみたい、欲しいという意見  →アイデアに対してポジティブな声でユーザーの興味・関心を得られている。

アプローチの有効性を示していると考えられる


Turn static files into dynamic content formats.

Create a flipbook
Issuu converts static files into: digital portfolios, online yearbooks, online catalogs, digital photo albums and more. Sign up and create your flipbook.