grdution work

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湯浴み場 -ambience-


ambience  雰囲気 僕は空間をピンぼけした風景のように感じる。 形態、素材、光等の空間を作り出す様々な要素がある が僕はそれをはっきりとした物として捉えられない。 その曖昧なものとは雰囲気ではないかと思った。 この空間の緊張感、それを包み込む神秘的な光。 それらは空間としてはっきりとした形はなく、ぼやけ たイメージが雰囲気として存在し、感情と混ざり合い 人と建築を仲介する。私は雰囲気を生み出すことで、 人と感情を共有できるような空間を作れなかと考えた。



湯浴み場 雰囲気を捉えるのは五感だ。 雰囲気を作り出す物、空気、感情を五感が感じ取り、 その人もまた雰囲気の一部となる。 そこで、人が裸になり五感の機能を最大限に広げられる 場所として、湯浴み場を設計した。 禁欲的でストイックな空間が温泉により、身を清め、 感覚を呼び起こして心までも浄化し、新たな感情が 生まれるような情感的な体験が可能となる。



情感的体験 ∼のような空間  感情が生まれる空間とは気分を生み出す空間である。 その気分にあった共通の心象風景のような空間を作り 出すことによって、誰にも同じ様な気分を体験できる。 例えば、修道院の回廊。そこはとても禁欲的な場所で あるが、中庭により心が休まりそうな安心感のある 心地よさをイメージできる。そのことは、大抵の人間 が共有できる感情だろう。 そのように、人の感情とセットで空間を作ることで、 雰囲気を生み出していった。



裸の建築 非現実の中のリアリティ 湯浴み場とは非現実な場所で、その場では「∼のような 空間」(雰囲気)が作られることで、非現実性が増している。 しかし、空間を作り出す物質は言い逃れようのないリアルな 物である。コンクリートにテクスチャの表層だけの空間では 雰囲気はとてもチープなものになってしまう。そのため、 150mm のプレキャストコンクリートによる、組積造とした。 人工石であるコンクリートはその薄さになると自然の石のよ うになり、人に親しみのあるスケールとなると同時に、スト イックな空間を作り出している。 屋根は木材によりあたたかみのある光を木材の井桁の間を 通って優しく取り込んでいる。コンクリートとは対極した やさしさが含まれている。どれも無垢な素材でできた空間は 裸の人間に対し、裸の建築が包み込み、やさしさと刺激に溢 れた空間になっている。



場所 俗世と離れた山の麓、近くには相模川が流れて いる。たくさんの木が茂る森の中に、隠れたよう に静かにただずんでいる。そこはまるで、人々に 忘れられた古代の遺跡ようだ。







光は人との境界を生み出し、人を導く。 湯浴み場では光のシャワーとなり、 人の心と身体を洗い流す。 様々な現象は神秘的な空間を作り出し、人の感情を揺さぶる。



湯気は空気と物との中間のようなものだ。 空間をぼかし、光を映し出す。 小さな粒子は裸の人間を優しく包み込む。


音は見えない空間を生み出し、人の意識を 遠くに飛ばす。静寂は意識を戻し、心を戻 し、時には不安にさせる。


光、湯、湯気は聖を生み、少しづつ人を浄化する。 厚い壁はそれらを閉じ込め、俗との関わりを遮断する。



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