SHUN YAMAI PORTFOLIO/ARCHITECTURE FOR HUMANITY

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ARCHITECTURE FOR HUMANITY

SHUN YAMAI

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場所と人間性に訴える建築をつくる

建築は、人間らしい生のためにある。

豊かになるにつれ、DESIGNとLIVINGは、距離を置きすぎてしまってはいないか?

現代の都市は、本当にHUMANITYー人間的だろうか?

“We Cannot Change, But Can Make Differnces”

建築はもっと場所に、その日常に影響できる。

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住み手が変わるごとに一度更地になって、その暮らしに応じてラディカルな 場の変容が起こる住宅更新。

それは魅力的である一方、それまでの暮らしを無かったことにしてしまう寂 しさと、文化の蓄積(場所性 / HUMANITY)が生まれない危うさを孕む。

築20年の新興住宅街で、場の変容を許容しながら継承がなされるためのプ ロセスを考える。

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60代・大学教授。

オーディオと庭仕事が趣味。

ひとが集まるのを、

やや離れて眺める ような性格。

山井家と田中家、実際に2組の家族に協力してもらい、全く関係の無い家族間の住み継ぎを考える。田中家の自由な「建て

替え」のために、山井家は一部を残して解体される。

しかし、たかだか築20年の新興住宅では、古民家のような部材そのものの価値は認められづらい。そこで、住人自らの大 切にしていた〈日常〉を価値基準に残しかたを検討してみる。

60代・もとピアニスト。

家でちいさなピアノ教室を

開いていたが、

ことしで終わりにするそう。

根っからの京都人。

息子さん

20代・大学生。

体育会卓球部で、

部活にいそしむ。

趣味でピアノを弾くのが好き。

最近ランニングをさぼりがち。

60代・もと大学教授。

映画を爆音で聴くのが趣味。

人好きで、よく家に招待する。

寒がり。

60代・もと小学校教師。

最近は着付けを教えているそう。

しっかり者で、人といるのも

一人でいるのも好き。

10歳・ゴールデンレトリバー。 人なつっこい性格。 寂しがり屋なのか、 ご夫婦が出かける時

もの言いたげに見つめている。

ご主人 奥さん ご主人 奥さん 愛犬・エリー
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和室の居間から紅葉を眺める

ここでの建築家の仕事は、山井家が大切にしてきた日常=「くうき」を探ることである。

住人自らに言葉やスケッチで印象的な場所を描いてもらい、それをもとに山井家を詳細に分析する。

ヒアリングの中で、それぞれで家の見え方が違うことに気づく。

また、部材に還元されない感覚的な空間が大事にされている箇所もあった。

台所がゴチャゴチャしている

ご主人がダイニングから、こたつに座る家族を眺める

奥さんが出窓を眺める玄関袖壁の絵を毎月変える

息子さんがピアノを弾く

ご主人がオーディオを聴く

既存山井家1階 1/100

家に帰ると、梅の木がある

真壁にとりつけたボードに、息子さんが絵を貼る

瓦屋根は、和風が好きなご主人のこだわり

既存山井家2階 1/100

書斎の光が壁に反射して、ご主人の居ることを知る

狭く暗く高い階段で気分が切り替わる

ご主人・奥さんの絵。同じ場所でも描き方が違う。 オーディオの音や視線、ものに依存しない記憶も多い。

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聞き取り・描き取りをもとに、「くうき」を測量していく。
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インタビュー・スケッチと並行しながら、山井家皆さんとの対話の中で壊し方のスタディを進める。

スタディの途中、残すものが多すぎると次の家も山井家に戻ってしまい、自由に「建て替え」できないことに気づく。

山井家の皆さんに「くうき」が残っていると感じてもらえるだけの部材を残し、あるいは付加することと、その最小化のバ ランスを探るため、スタディとフィードバックを繰り返す。

居間の天井高操作 息子さんの部屋のすみっこ

居間の天井高、より複雑化

曲面壁を維持

曲面壁ちいさく

曲線梁を二本の直線梁に 床タイルを狭める

オーディオ楕円を付加

楕円手すりに変更

梁で方向性を表現してみる

居間の光イメージを曲面天井に

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台所出窓のこす ピアノ曲面壁
スタディ組織図
玄関の単純化 曲面壁を自由曲面化
最小化
ピアノ室曲線梁を付加 床要素を付加
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1 5 4 息子さん モミジの見える居間の陰影 ご主人 息子さんの部屋隅、絵や写真が集積 奥さん ピアノ室出窓の観葉植物 1階壊し方 2階壊し方 10 7 6 9 息子さん ピアノ室掃き出し窓 ご主人 オーディオの音場空間 ご主人 庭から見える瓦屋根 息子さん 細く高い階段 ご主人・奥さん 階段の袖壁 2 奥さん 台所のゴチャゴチャ 8 息子さん ピアノを弾くときの集中 3 ご主人 こたつを眺める
もの」を置いて、山井家は去る。 13
赤が既存を取捨選択した部分、 青が付加した部分をあらわす。 建築以前の、「なにかよくわからない

山井家の残した部材の上に、田中家の「新築」が始まる。田中家皆さんにも思い出の家を聞き取り・ 描き取り、残ったモノを生かすかたちで田中さんのための家を設計する。

そこに記憶の継承はなく、「ただよく分からないもの」を使いこなす暮らし。その反復と蓄積はや

がて、更地にはない、変容の中の「古さ」・「場所性」という価値を生むのではないだろうか。

田中さんご夫妻の絵。要望の奥にあるものを住経験から探る。

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「リビング、ダイニングはつながってほしいけど、 見えたくはないんよね。」

エリーが散歩に行きやすいよう、勝手口寄りに犬小屋

洗濯物は1階に干したい 台所はカーテンでリビングから隠れる

リビングとつながりつつ仕切られたダイニング

外にテラスがあったらいいな

映画用に、tレビとステレオがほしいな

広いリビングテーブル

「寒い日はエリーが可哀想だから、広い土間があれば入れてあげたいね。」

角度を振ったので、裏庭から採光できる

角度を振ったので、裏庭から採光できる

直射日光は嫌だから、暗い場所に書斎がほしい

なぜか高く暗くほそい廊下は、じつは階段の痕跡

痕跡の梁に、お客さんのコートが掛かる

寒がりなご主人は、暖炉の前が定位置

オープンな庭、シンボルツリーがあれば

「花とかを飾る隅っこがほしいんですよね。」

テラスがあればいいな

吹き抜けと、ファンと天窓

階段を上がると、吹き抜けが見える

隅っこのちょっとしたスペースがほしい

和室があればいいな

大開口、明るい家がいいな

「新築」田中家 1階平面図 S=1/100 「新築」田中家 2階平面図 S=1/100
「なんせ本が多いのでね。」
「今にも息子の足音が聞こえるような気がしました。」

完成した模型・図面を田中家ご夫婦に見せ、そこでの暮らしを想像してもらう。

「自分では想像できなかった形が、痕跡があるからこそ生まれてる。そしてそれがちゃんと田中家のためのものに なってる。」奥さんがこう言ってくれた。

「新築」田中家 断面図 S=1/50
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ある一軒の住宅で、過去の住人が他者として介入することで、「人間らしい」暮らし=「古さ」を育むことを目指したこのプロジェ クト。日常の些細でプライベートな大切なものを大事にしていく姿勢は、パブリックな場所でこそ重要な気がしている。

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街道沿いの茶屋にその名が由来する大阪梅田の中心部・茶屋町。

ここに、図書館やギャラリー・劇場などが集まる文化コンプレックスを計画する。

交通インフラのダイナミックな流れと、人びとのふいの居場所となる路地など小さな流れ。その関係性を 模倣して建築を構成し、人びとが文化と、あるいは文化同士が出会い、混淆する場所をつくる。

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1 A 2 2 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 13 13 14 151415 1 studio 2 library 3 shop 4 reference desk 5 online desk 6 laboratory 7 Office 8 lecture hall 9 theater 10 open gallery 11 cafe 12 garage 13 dressing room 14 storage 15 shower room
大きな道の上にも展示・本棚が広がる
1F Plan 1/1200
Hankyu Osaka-Umeda Sta.
阪急梅田駅に繋がるような道の断面
Umeda Art Theater / Applause Tower
街路と広場に面する屋外シアター
event square open gallery open gallery studio gallery gallery gallery gallery gallery gallery gallery library library Umeda Sta. Hankyu Line
NU Chayamachi Loft Umeda library library cinema cafe open gallery gallery storage gallery storage book storage service laboratoryonline desklibarary libarary A Section 1/500
Hep Five
1 2 2 2 2 2 2 8 8 9 7 2 3 3 4 45 4 4 4 3 4 4 4 5 6 6 6 4 1 terrace 2 library 3 event spuare 4 gallery 5 studio 6 open gallery 7 cinema 8 meeting room 9 foyer 2F (+3,000) Plan 1/1000 3F (+6,000) Plan 5F (+12,000) Plan 6F (+15,000) Plan 7F (+18,000) Plan 4F (+9,000) Plan

“We Cannot Change, But We Can Make Differences.” スイスひとり旅の途中、フラッと入ったロックバーのおばちゃんに、こんなことを言われた。

彼女は売り上げをミャンマーに寄付したり、味気なかった向かいの壁一面にウォールペインティングを施したりしていた。 建築は街それ自体を変えることはできない。街を変えるのは、あくまでそこに関わる人びと、HUMANITY。

しかし建築はそのために、“Make Differevces” する存在でなければいけない。

京大建築系教室の年刊誌・traverse23。毎年学生の自主運営で企画 から出版まで行う雑誌の編集長を務めた。 安東陽子さんへのインタビュー、座談会企画の新設など、雑誌の意義 やそれをいかにクリエイティブに発信していくかを考えてきた。 今号のテーマは、「今、境界をつくるということ」。

現在webで公開中。

https://www.traverse-architecture.com/

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研究室の調査で、カンポンと呼ばれる稠密都市集落を訪れた。 立退きを強いられるも、NGOと連携して、その場所での暮らし が新しいかたちで模索される。

プロジェクトの途轍もないスピード感。住人自治のエネルギー。 くらしが溢れ出す生活空間。

制度と都市と建築、そしてHUMANITYとがDIRECTに、かつ 生き生きとリンクする様子を目の当たりにした。

経済的に貧しくても、きわめて人間的で、その意味で豊かな生 がそこにあった。

何度となく訪れた東京。 再開発でキレイな人が集まるキレイな場所が増えていく。

その蔭に、人間の弱い、だらしない、だからこそ愛おしい部分 が溢れる街が在る。

前者のような場所も在って良いと思う。

けれど僕たち建築に携わる者が本当に考えないといけないのは、 後者の、人間の弱さをも抱擁する、本当の意味でのPUBLICな んだと考えている。デザインは常に何かを制限するけれど、何 者をも排除してはならない。

生まれ育った大津。湖や商店街、町家など、色んな魅力があるけれど、

どこか閑散としており、観光政策もヒットしていない。

将来、そんな大津を建築を通して活気づける仕事がしたいと考えている。

大津に必要なデザインは何か。大津に根付くデザインとは何か。

実践的なまちづくり活動によるリサーチを行い、HUMANITYな都市像を考える。

修士研究ではそのヒントを探る。
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大津を描く 33
大津を知る

大津に住む/ 訪れるひとに“往復ハガキ”を書いてもらい、大津の魅力的な場所 or 必要な場所をさぐるプロジェクト。

1. for Visitors 大津を訪れた方へ

大津駅前観光案内所でハガキを配布し、設置したポストに投函してもらいます。

ハガキには、「大津で好きな場所」「大津にほしい場所」、加えて任意で出身も 書いてもらいます。

ハガキ半分を切り離し、大津の紹介、あるいは割引券付きのポストカードとし

て持ち帰ってもらうのも良いでしょう。

2.for Inhabitants 大津に住む方へ

自治体やマンション、小学校等にご協力いただき、できるだけ多くの人にハガ キを配布します。

内容は1と同じですが、絵はがきのデザインを変えて区別。さらに地域ごとに デザインを変えて、より詳細な分析に役立てます。

3.Postポスト

大津駅・商店街・湖岸に、ハガキ投函用のポストを設置。お気に入りの場所に 投函してもらいます。その集計数が「大津らしさ」のヒントになるし、何より

その場所を訪れてもらうきっかけになります。

ポストづくり自体もワークショップ化し、プロジェクトを一緒につくっていく

ことも計画しています。

おもて うら うら おもて
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まちの人びとと共につくる・議論を交わす

1.Model/Map

ヒアリングやレタープロジェクトをもとに、つくったデザインを模型などで検討。

また、まちの皆さんの印象的な場所、あるいはほしい場所を地図上に書き込み、 一覧できるようにします。

2.Workshop

できた模型や地図をもとに、住人さんや行政さんたちと議論します。このデザイ

ンは必要か?もっとこうすればいいのでは?などなど...

商店街などで公開することも計画中で、ハガキやポストづくり含め、ものを通し て街を巻き込みます。

例年京大ではほぼいない、修士制作と修士論文両面からのアプローチ

1.DESIGN

制作の過程を街の皆さんと共有しながら、大津に必要な場所、HUMANITYをはぐ くむ場所をデザインします。

手掛かりと考えているのが、「街と湖の魅力の不連続」そして「琵琶湖文化館移転 計画」。

湖岸の素晴らしい位置に移転予定の琵琶湖文化館は、計画上は単なる歴史資料館 のようなもの。ここに立つものは、もっとPUBLICなものであるべきではないか。

そもそも文化とは、現在の街の様子そのものではないか。

そんな思いから、点在しながら街と湖をつなぎ、街の現在に加担する「文化」館 を構想しています。

2.Paper

古代、都周縁の港町から始まり、百町と呼ばれ中心として繫栄した時代を経て、 現代は再び「郊外」としての性格を持つ大津。Dear Otsuのリサーチや歴史の研 究から、大津において「郊外とは何か」を考えています。

大津の写真をアップしてもらい、お気に入りの場所を調査、大津の魅力を発信

#dearotsu

大津に住むor訪れる皆さんに、#dearotsuをつけ

てInstagramに大津の写真を投稿してもらいます。

同時に、Dear Otsu専用アカウントを作成して、

その写真を定期的に紹介したり、活動発信したり

します。

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インドネシアで見た、SPEEDYでLIVELYな都市と人間のかかわりを、 それをデザインする側として体感してみたいこと、

タイ出身の先輩の研究を見て、タイのコミュニティデザインやその研究に深く興味を持っ たことから、来年1月からのバンコク留学を考えています。

デザインスクールで都市・建築デザインを学びながら、コミュニティデザインの実践に かかわるために、現在調整を進めています。 大津とバンコク。

全く異なる環境ですが、僕のテーマであるCONTEXTとHUMANITYを考えるうえで、 それらは互いに刺激しあうように思います。

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