Resolution

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ーぼんやりとした都市ー  「変化に気付かない」 「情報が膨大」 「景観に審美的でない」 photo 新宿

ー低解像度認識ー  「情報の低解像度化」 「認識できる量は一定」   「低解像度認識」 「ステレオタイプ」 「縮尺の解像度」 「明度分布による都市領域」 photo 新宿

ー解像度による記述ー 「多重解像度画像」 「電柱=木」 「裏=表」 「混沌=秩序」 「雑多=簡素」 「街路シークエンス景観」

resolution 私たちは、東京の大半をぼんやりとしか見てい ない。街の表層は日々変化しているにも関わら ず、私たちはそのことに気付かない事が多い。 ゆえにカオスと形容される東京であっても、私 たちは平気で過ごせているのではないか。 もはや都市景観の善し悪しが一概に決められな い東京において、 審美眼に訴えるのではなく「情 報量」のみを扱う「解像度」という指標で景観 を見ていくことは、私たちの感覚に近いことな のではないだろうか。

resolution

「情報の抽象化」


ぼんやりとした都市 都市は、文字やモノで埋め尽くされ、それらも日々変化している。私たちがその全てを把 握することは困難であるため、状況に合わせて必要な情報を選び取ることで都市を使いこ なしている。それは、都市の多くの部分を、ぼんやりと認識している状態なのではないだ ろうか。


2006

変化に気付かない 私たちは、都市が変化しても、その変化に気付かないこと が多い。ビルも道も看板や人によって目まぐるしく様相を 変える東京では、その全てを記憶することはできない。

2008


情報が膨大 私たちは都市の情報すべてを鮮明に見ようとせず、鮮明に 見た一部の情報だけを断片的に記憶のなかに積層し、都市 の印象をつくりあげているのではないか。


景観に審美的でない 私たちが東京の混沌とした景観に対して審美的な側面でな く、その善し悪しを一概に判断しなくなっているのは、景観を ぼんやりと認識しているからではないか。 これは、景観に対す る東京らしい、独自の認識であり、カオスに対する一つの理 解、技術であるといえる。



低解像度認識とは 私たちが一度に処理することのできる情報量は限界があるため、情報が増えるほど個々の 情報に対する認識は、ぼんやりとしてくる。それは、解像度を低くした写真を見た時の印 象と似ている。都市は高解像度につくられているが、私たちは、認識する解像度をコント ロールすることで、景観全てを直視せずに済んでいるのではないか。


情報の抽象化 情報量が増えていけばいくほど、その一つ一つの認識は曖 昧なものになってくる。東京では一人一人を精細に認識し ながら街を歩くことは困難で「人が多い」といった漠然と したイメージだけを受け取っているのではないか。


HIGH

LOW?

情報の低解像度化 情報が多く、個々の認識が曖昧になる状態は、低解像度 にした画像を見たときに受ける「曖昧なイメージ」と似 ている。私たちの認識上で、都市は低解像度化している のではないだろうか。


LOW?

HIGH?

認識できる量は一定 情報量が多いからといって、私たちはその全てを認識で きない。私たちが一度に認識することのできる情報量は その多少に関わらず、一定なのではないだろうか。


低解像度認識 私たちは、混沌とした景観に向き合っても、自分の興味 があるものだけにフォーカスを当てているために、平気 で過ごせている。 時間をかけて景観を眺めれば個別の差異を確認すること ができるが、実際はその差異を一度に捉えるのではなく、 大部分を低解像度に認識している。それは、低解像度認 識している状態なのではないだろうか。


ステレオタイプ 駅のホームや団地など、一見同じように見えるものがある。 し かし、 よく見るとそれぞれ細部は異なっている。 このように、私 たちは建物の形の細かな差異まで読み取らず、曖昧なイメー ジのみを認識しているのではないか。


縮尺の解像度 情報量が多いからといって、私たちはその全てを精確に 認識しているわけではなく、街路や区画単位で認識して いる時もあれば、建物単位で認識しているときもある。 それは、存在する全ての情報を受け入れているのではな く、状況に応じて必要ない情報を曖昧に捉えているから ではないか。


明度分布による 都市領域 航空写真をもとに、 その明度分布を8段階に階調化した。 私たちは、東京を低解像度認識することによって、既存の建築 や道路によってつくられたネットワークや境界とは異なった、 都市の境界を見ているのではないか。 図:都市領域図 参考:階調による都市領域の抽出 : 首藤愛(2002)



解像度による記述 低解像度認識な都市から受ける、そのエネルギッシュな魅力は否定できない。もはや、都 市景観の善し悪しが決められない東京において、すべてを等価に扱い「情報量」のみで決 まる「解像度」という指標で見ていくことは東京的であり、私たちの感覚に近いといえる のではないか。

図:多重解像度画像  「情報に適した異なる解像度が一つの画像の中に複数含まれる画像」 参考:解像度を指標とした空間記述に関する研究 その1. 多重解像度を用いた景観分析手法:番場俊宏 , 篠塚正博 , 吉松秀樹 , 山家京子 , 日本建築学会情報システム利用技術シンポジウム(2001)


HIGH

HIGH

LOW

LOW

LOW

HIGH

HIGH

LOW HIGH HIGH

LOW HIGH

HIGH

HIGH

多重解像度画像 写真の解像度を画像処理ソフトで操作する。その均質で広

LOW

い面は解像度を下げても変化しないが、細かく分節された 箇所では情報が破棄され平滑化される。これは、画像の総

LOW

ピクセル数が減少し、本来の密度で情報を構成できなく LOW

HIGH

HIGH

なったためである。したがって、一枚の画像には、異なる 密度で情報が分布しており、高い解像度を要する部分は情 報密度が高く、低い解像度でも対応できる部分は情報密度 が低いと考えられる。そこで各部分ごとに元の画像からお おむね変化しない解像度の中で、最も低いものを、その部

LOW

分に適した解像度として採用し、一枚の画像に再結合する。

HIGH LOW HIGH

HIGH



64dpi = 04%

64dpi = 05%

32dpi = 34%

32dpi = 32%

16dpi = 22%

16dpi = 22%

08dpi = 21%

08dpi = 22%

04dpi = 16%

04dpi = 13%

02dpi = 03%

02dpi = 06%

電柱=木 電柱は街路景観を悪化させるもの。街路樹は街路景観に 潤いを与えるものとして扱われているが、どちらも同じ 情報構造を持っており、低解像度認識されるとどちらも 同じである。



64dpi = 03%

64dpi = 02%

32dpi = 27%

32dpi = 28%

16dpi = 22%

16dpi = 22%

08dpi = 21%

08dpi = 21%

04dpi = 19%

04dpi = 22%

02dpi = 08%

02dpi = 05%

裏=表 看板で彩られた活気のある建物の「表」と、配管やシミ であふれた無機質な「裏」も低解像度認識するとどちら も同じ魅力がある。



64dpi = 03%

64dpi = 02%

32dpi = 27%

32dpi = 28%

16dpi = 22%

16dpi = 22%

08dpi = 21%

08dpi = 21%

04dpi = 19%

04dpi = 22%

02dpi = 08%

02dpi = 05%

裏=表 看板で彩られた活気のある建物の「表」と、配管やシミ であふれた無機質な「裏」も低解像度認識するとどちら も同じ魅力がある。



多重解像度画像を用いると、樹木も看板も情報量として は同じになる。高解像度でつくりこまれているという点 で都市景観と自然景観は近似しているため、森林と都市 は、同じように認識されているのではないか。 繁華街や森林において、散策する楽しさがあり、そのエ ネルギッシュなイメージだけが印象に残るのは、私たち がそれらを低解像度認識しているからではないか。


街路シークエンス景観 連続的に撮影した街路景観を一枚の画像へと収束すること で、全ての景観要素を同列に扱い、連続的視点から街路景観 を把握する事を目的とし、記述を行なった。 左図:街路シークエンス景観収束画像 参考:多重解像度画像を用いた街路シークエンス景観記述:遠藤啓介(2006)


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