鶏麗幇(keireipan) book1

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鶏麗幇表紙

BOOK 1

keireipan

keireipan

鶏麗幇

ZINE + Web share

book 1 NOT WONK 入江陽 CHAI odol


はじめに 志を高く持ちたい。その為に、この音楽 ZINE の考え方について少し仰々しく書きたいと思う。この ZINE の目的は、2015 年以降の企みと挑戦の満ちた日本のインディ・インディペンデントな音楽ムーブメント を、アーカイブ出来る様な捉え方で発信すること。そして、受け手に対象の音楽に触れるきっかけと、新 鮮さを得れる様なものでありたいということ。今回この ZINE の一号では、4 組のミュージシャンについ て掲載されている。NOT WONK、入江陽、CHAI、odol。4 組とも音楽性や活動場所は各々の異なるが、共 通しているものもある思う。それが 2015 年以降の音楽がなぜ企みと挑戦に満ちているかという考え方に も繋がっている。環境的な話では、2015 年頃に活動していたミュージシャンは Youtube 以降の世代であ り、インターネットの膨大な双方向のアクセスと触れ合ってきた世代であるという事。そして、2015 年 は Apple Music、Spotify などの、海外では主流の音楽リスニングの一つである定額制音楽ストリーミング サービスが日本で始まった年でもある事。つまり、インターネットというフォーマット上では過去、地域 を飛び越えた音楽の接し方が整ったのが 2015 年だ。また、新しい世代と捉えられるように素晴らしい若手 ミュージシャン達が台頭してきた年でもある。yogee new waves、never young beach、Suchmos、D.A.N.、 YKIKI BEATS 等、例に挙げきれない。彼らが素晴らしくて、刺激的である理由の一つは、自分達のコンテ クスト・フィルターをしっかりと持っていたことだと思う。そして、そんな世代と環境的な変化は、安易 なまとめに聞こえるが多様性という部分で合致している。2017 年は上記で上げたアーティスト達の多く は新譜を出した。その際に改めて 2015 年のあの熱狂を思い出した。2017 年はトレンドとなるようなヒッ トはなかった年といわれるが、しっかりと作品は出ていたと思う。そこに注目が足りていないという事 は、理由の一つにコミットして周知をする媒体が無かったのでは? とも思う。そこに携わる事をしたい。

Editor 今井 雄太

Writers 今井 雄太 及川 季節

Logo Design アンドサタデー coffee

Artists 『NOT WONK』Iiiustration by 源川 いく美

@Keireipan (Twitter)

『入江陽』Handmade by 小菅 くみ

keireipan (Instagram)

『CHAI』Sweets by Okasiya KISETSU 『odol』Iiiustration by 早瀬 とび

Photographer 谷口 幸陽

Special Thanks 野口 誠也

Design Advisor アンドサタデー coffee 重信 健人

News

菊地 涼太



NOT WONK “Of Reality” PV によせて 「煙突も踊っています」自身も監修に携わった “Of Reality” の MV を加藤修平(Vo&Gt)は twitter でそう紹介していた。 映像の冒頭で煙突の腹部に備え付けられた非常灯が、イントロのドラムのスネアとバスドラムに合わせて光るという演 出がある。緩急のあるリズム、甘く絞る様な歌声はメロウだ。バンドの音楽にあてられて、煙突が発熱しているかの様 に見えてくる。 「臭いんですよあの煙が、煙たくて良いことそんなに無いのかもな、と思うんですけど」 「よそから来た人があれを見 たところと、僕達が毎日あの煙を嗅いで暮らしてるのは、見えるものと見えないものが出てくるって曲です」2017 年 11 月にリリースした CD と DVD の 2 枚組である『PENFILED』に収録されている地元北海道の苫小牧市で開催された イベントで “Of Reality” の演奏前に加藤はそう文句と皮肉を持って、楽曲と煙突を紹介している。苫小牧は製紙産業が 盛んで世界最大規模の煙突があるらしく、航空写真でも、町の中心部であろう JR 苫小牧駅から 1 キロ足らずに煙突が そびえたっているのが分かる。そんな街の象徴である煙突を自分達の音楽で踊らす。そんな内容をすっと投稿する大胆 な姿勢と無邪気さに、どことなく惹かれる。 「全然好きじゃないですこの街は。でもこの街でやる価値はある、間違いなく」同じく DVD に収録されているインタ ビューで加藤はそう続ける。好きになれない街で音楽を続ける。それはもう、 闘いみたいなものなんじゃないかと思う。 皮肉だけじゃなく、そういった姿勢が「煙突も踊っています」という一文を書くのだと思う。 < I wanna lie on the ground. I wanna see her on Sunday. I wanna a certain talking. I wanna be what I wanna be. / What do you wanna do?(意訳:俺は地面に寝そべっていたい。日曜日に彼女と会いたい。信頼できる話をしたい。俺 は俺のやりたいことをやりたい/お前は何がしたい?)>意識的な問いかけにどきっとする。何がしたいか、改めて自 分に問いかけてみる。

words by 今井 雄太 , illustration by 源川いく美



入江 陽 入江陽という男がいる。歌詞の言葉遊びと駄洒落の様

て。これもそんな詳しくないで言ってるんですけど、

な韻、ファルセットボイスで独特の違和感を生み出す

アイドル映画とかで「18 歳のこの人が映っているのは

インディ R&B シンガーで、2015 年の 2nd Album『仕

この映画だけだ」みたいな。映画は映画で上映する為

事』で音楽ファンを中心に関心を集めた。次の年には、

に作っていますけれど、個人単位、ファンとして見る

怪作『SF』をリリース。その後、出版社兼レーベルの

と、その時期のその人が映っているのは残ってなかっ

MARUTENN BOOKS を立ち上げた。リリースした『FISH』

たりするので貴重だったりするじゃないですか。だか

は、メロウなメロディと、独特な入江の語感が心地良

ら、自分と周りの人達とその関係をそのまま一枚アル

い没入感を生む傑作。今回最新アルバム『FISH』につ

バムに毎年残すみたいな事を結構思っていて。それが

いて、また独立の話から彼の価値観について話して頂

きっかけかもしれないですね。

いた。ニッチな音楽をやってる人、というのが世間の

――今回はコンセプトを持たずに作成されているとい

評価かもしれないが、好奇心と俯瞰と頭の回転の速さ

う事ですけれど、個人的は『FISH』を聴いた時これは

が携わった大衆を引き付けれる魅力を持っている人だ

コンセプトアルバムだと思って。

と思う。

入江:どんな感じのコンセプトだと思いましたか? ――まず『FISH』では人が魚になるというストーリー

――まず『FISH』についてお話を伺いたいと思います。

があると思いました。歌詞で出てくる「人間」という

『FISH』のブックレットの最後に「『FISH』は今までの

言葉が「子供」という捉え方であって、「魚」という言

音素材をまとめたアルバム」という風に書かれていた

葉は「大人」であったり社会で「生活する・泳ぐ」という、

のですが、そのまとめをアルバムという単位でリリー

入江さんのシニカルな捉え方がコンセプトとしてある

スしようとしたきっかけなどはあったのでしょうか?

のかと思って聴いていました。

入江陽:本当に一番現実的なきっかけは、そろそろア

入江:確かに不思議とそういう流れになっているよう

ルバム出そうという所が一番大きいですかね。あと、

な気もします。最初は『FISH』で曲名が魚そのもの、っ

コンセプトでこういうアルバムを作ろうと思って出す

ていう気持ちで ” クラゲ ” って曲を作ったんですけど。

よりも、その時期のものをガっと集めてしまえば、ま

それ以外出来なかったんですよね ( 笑 )。あんまりいい

とまるんじゃないかっていう考え方が元々あって。だ

言葉が魚の名前で思いつかなくて。…微妙じゃないで

からきっかけはこれだけ集まっていれば、アルバムに

すか、ブリとか ( 笑 )。あんまり情景を喚起しないなと

なるかなという所で。あとは毎年一枚ぐらいの勢いで、

思って、クラゲぐらいになってしまったんですけど。

アルバムを出していきたいっていうのが常にあるとい

でも、コンセプトが本人の中に最初から無くとも、

うのがきっかけですかね。

結果としてコンセプトアルバムみたいになっていたと

――前作『SF』も同じ様な考えでリリースされたんで

したら凄く嬉しいので。

すか?

――今作はフィールドレコーディングをされています

入江:そうですね。…『SF』の時も割とそうですね。

ね。(8 曲目 ”7 月 ”、10 曲目 “ いちにんまえ ”)アルバ

結構いつも一緒かもしれないです。固まった 10 曲ぐら

ムの作り方として、その様な音を加えて生活感を出そ

いの塊として出すっていうのをコンスタントに出した

うとしているのかなと思いました。

い、という所ですかね。

入江:それは凄い思いました。生活感がなんか…。こ

同じ時期に作ったものだったら、塊として面白いん

れ言ってしまうと凄いミーハーになるんですけど。フ

じゃないか、っていうのが一つと。後はその年の自分と

ランク・オーシャン(アメリカの男性 R&B シンガー。

身の回りを記録しておきたいみたいな欲求が多分あっ

2016 年に 2nd アルバム『Blond』を音楽ストリーミン

words by 今井 雄太 , 野口誠也 , Handmade by 小菅くみ



“男の人の頭は意味とか理屈の世界の気がするんですよ。 「ちょっと柔らかいものを」とは思っていました ” グ限定で発表し、英米チャート共に一位を獲得。ゲイ

――それは入江さんの物事の見方が、男性的なものか

である事をカミングアウトしている)とかのアルバム

ら女性的なものになったのか。それとも、女性との接

を聴いていると、いつもじゃないんですけど、結構、

する中で人間関係が『SF』の頃より変化することによっ

生活の音とかが入っていたり、デモっぽいニュアンス

て変わったのか。どちらですか。

がある気がして。そのデモっぽさって結構いいな、と

入江:多分僕の中には結構、極端に男性的な部分と女

思っていて。他の人のでもそうなんですけど、作りか

性的な部分が両方あって。それで今の時期は、そう言

けのデモを聞かせて貰う事があるじゃないですか。で、

う柔らかいものに惹かれているのかもしれないですね。

完成版を聴くと、「あれ、これデモの方が良くなかった

自主制作で出そうと思ったのも…、なんというか…ど

かな?」って思う事が結構ある気がしていて。そのデ

うなんだろうな。でも両方あるような気がしますね。

モの良さを今回は出したいなと思っていたんですよね。

これ言っちゃうとなんでもそうじゃんって感じですけ

今聞くと、ちょっと綺麗過ぎる感じにしたかなって言

ど、今はそう、みたいな。今年はそういう柔らかいムー

う曲もあるんですけど。蛇口をこう、いじってみた生

ドに惹かれたというか。

活の音を適当にアイフォンで録ってみたりもしました

でもあれなのかな。周りが…。…変わったのかもし

ね。

れないですね。確かに。脳みそが中性的になったのか

――なるほど。『FISH』を聴いていると、今までの『SF』

もしれないです。色んなニュースとか、なんでもそう

の時よりもソフトになったなっていう印象があります。

ですけど。何か他の人と喋ったり、触れたりする時に、

入江:あー、それも嬉しいですね。なんか、柔らかい。

前よりも「理屈っぽいな」と感じる事が増えた気はしま

どちらかというと理屈っぽくない、性別で言うのもあ

すね。それが別に理屈っぽくて不快だって感じる訳じゃ

れかもしれないですけど、どちらかと言うと女性的な

なくて。どちらかと言うとそう、というか。個人的には、

感覚のアルバムを作ってみたかったんですよね。勿論、

ライブをしていることが関係ある気がするんですよね。

人によりますけど、どっちかって言うと、男の人の頭

――ライブですか?

は意味とか理屈の世界の気がするんですよ。「ちょっと

入江:ライブをしていると人前にさらされて、時間が

柔らかいものを」とは思っていました。

始まってしまうので、どうしても理屈というよりは、

――なぜ女性なものを作りたいと思ったんですか?

その場で起きている事を楽しくしていくしかないとい

入江:なんででしょうね…。逆にこう思っている人っ

うか。まぁ音響トラブルとかを含めて、 「おもしろー」っ

て差別なのかもしれないですけど、日頃、会話とか、

て楽しくしていくしかないので。意外とその時にそん

色んな人としていて、やっぱり歴然と感じるんですよ

なメンタルになっていっているような気がしていて。

ね。男の人は理屈とか、解決するとか。よく言うじゃ

だから凄い、論理的じゃないんですよね ( 笑 )。多分自

ないですか、男の人の相談は解決策を言って、「別に解

分が、前以上に。歌詞も論理的じゃなくなってきてい

決策を言われたかった訳じゃない」というか。で、女

るのかもしれないですね。どうなんだろう。

の人と喋っていると、もっと楽しさに重点が置かれて

――サウンドもアルバムも全体的に、説明的な部分が

いるような気がして。これ言葉にするの難しんですけ どね ( 笑 )。差別的な感じになっちゃうかもしれないん ですけど、全くそのつもりはなくて。女の人は、楽し さを男の人よりも忘れない様な気がしていて。そこに 魅力を感じるので、そういうものが作ってみたいなと 日頃思っていて。あと、旧作のものを自分で聴いた時に、 歌詞とかもっと柔らかくてもいいのかな、っていうの は思っていましたね。もっと自然体というか。

だんだん削ぎ落されて言っている気がします。 入江:それも嬉しいですね。無くなり過ぎるのも怖い 様な気もしますけど。説明的な所をちょっと無くして いきたいというか。 説明的じゃない所で、繋がりたい のかもしれないですね。そうじゃない、もっと、こう、 …感触とか、官能的な部分で、「ああ、いいな」と思っ て貰う方が嬉しいのかもしれないですね ( 笑 )。どっち も嬉しいんですけど、それはあるかもしれないですね。


“日記的なというか。「今日はアイスクリーム食べて、楽しかった」っ ていう所を見逃さずにちゃんと見て、ちゃんと記録していけば、意外 とネタ切れしてても大丈夫なのかなって気がしていて ”

思ったのが、今回のジャケを牧野桜さん(デザイナー ,

のその時関わってくれてる人が、変な話みんないつ死

入江陽と共に出版社 / レーベル MARUTENN BOOKS を

ぬか分かんないわけじゃないですか。だから記録する

主催する)にデザインしてもらったのも、コンセプト

意味は凄くあるかなと思っていて。耶麻ユウキさんっ

を伝えてって言うよりは、牧野さん本人が作っていて

ていう参加してくれた人は、最近ブラジルに引っ越し

癒される様なジャケにして欲しいって言う風に伝えて。

ちゃったんですよ。(8 曲目 “7 月 ”、10 曲目 “ いちにん

自分の今回のアルバム自体も、僕自身がまず癒される

まえ ” 参加)それもあって駆け込み参加してもらったん

所の曲を作ろうみたいな。色んな作り方があると思う

です。しばらく参加してもらえないから。そんな記録

んですけど。自分を凄い削って、みんなに楽しんでも

ですかね。

らうものを作ろうって人も全然いると思うし、それも

――なるほど。ではガクヅケ木田さんと黄倉未来さん

良いと思うんですけど。自分の場合、今回は自分が創

とは、どういった経緯でアルバムに参加されたんです

作過程で癒される事を結構重視しているというか。楽

か?(5 曲目 “ 何がしたい ” 参加)

しくないと思ったらすぐちょっと違うなと思って辞め

入江:ガクヅケの木田君って人と黄倉未来さんという

るというか。そういう所はあったかもしれないですね。

人の事が気になっていたんですよ。面白い人達なんだ

――感覚的に楽しみながら作る、という事ですね。

ろうなぁって思っていて。じゃあ参加して貰って、取

入江:そうですね。アルバムは今回で 4 枚目で。1 ア

り敢えず今年の気になっていたって気持ちとその年の

ルバム 10 曲ぐらい作詞していると、もうないんですよ

彼らを記録するというか。結構ファンなので、何でも

( 笑 )。書く事なんて(笑)。本当に人生経験を書いてい

良かったんですよね、内容は ( 笑 )。

るとしたら、もう無理だと思うんですよね。だから同

――( 笑 )

じ事を色んな角度で書くとか。ネタ切れっていう意味

入江:なんていったらいいんでしょうかね。こういう

では、とっくのとうにネタ切れで。ただ、ネタ切れし

ものを作って下さいとかじゃなくて。写真みたいなも

ているから無理やり生み出そうとすると、力んで良く

ので。「この時、この人こんな感じだったよね」みたい

ないものになりそうなので。ネタ切れ上等で目に見え

な。「この時、この人髪短かったよね」みたいなのある

たものを書いても良いわけですし、と言う感じですね。

じゃないですか。昔の写真見て面白いみたいな。お二

作詞するのも、過去の歴史の大量の曲があって、それ

人の事好きなので、好きなように何やってもいいので、

もカバーでもいいわけで。

その代わり 16 小節なんか言ったり、歌ったり、ラップ

――はい。

でもなんでもいいし、言ってくださいと伝えて。そん

入江:それで新しく書いてもそんなに変わらないじゃ

な感じで参加して貰いました。黄倉さんはツアーで一

ないですか、多分。日本語ですっごく変革って出来な

緒になったりしていたので。ガクヅケの木田さんはそ

いと思うんですよね。だから、人と比べての所じゃな

んなに会った事なくて。普段は芸人やっているんです

くて、日記的なというか。「今日はアイスクリーム食べ

よね。かなり面白そうだなと思っていて。

て、楽しかった」っていう所を見逃さずにちゃんと見て、

――ガクヅケの木田さんは言葉が面白い方ですか?

ちゃんと記録していけば、意外とネタ切れしてても大

入江:面白いですね。ガクヅケの木田君のブログがか

丈夫なのかなって気がしていて。

なり面白いですね。

――それはまさに一年であったり、一定のペースでき

――詩もお二人にお願いしてですね。

ちんとその日にあった事、感じた事をまとめて作品を

入江:はい、彼らにお願いしてですね。

出す事に興味があるという事ですね。

――MARUTENN BOOKS で MELODY KOGA(シンガー

入江:はい、特に他の人なんですけどね。声質が変っ

ソングライター)さんの『やさい』という詩集を出し

ていくと思うので、自分のその年の声みたいのが 10 曲

ていますよね。まずは MELODY KOGA さんとはどのよ

分残るっていうものなんとなく嬉しいんですけど。他

うな繋がりなんですか?


“周りの人との繋がりを含めて自分というか、そういう考え 方が強いかもしれないですね ” 入江:MELODY KOGA さんとはライブで一緒になって

の華 ” とかそういうのみんな歌うみたいなやつ。みんな

知り合って。言葉がとにかく面白くて。大量の曲を書

歌うやつを結構歌ったら面白いかなと思っていますね

いていて。全部曲は一緒なんですよ。コードが 4 つの

( 笑 )。

ピアノで弾いていて。短い曲が大量にあるという。1,000

――入江さんの感性で作られたら面白い気がします

曲とかレパートリーがあるんですけど。図鑑の様にアー

( 笑 )。

カイブしていくような書き方の詩なんですよね。なん

入江:個人的には趣味のいい選曲のカバーって、本人

ていったらいいんでしょう…、こう、標本の様にとい

とファンは面白いけど、知らない曲のカバーって結構

うか。虫だったら虫で 50 曲書いて、野菜だったら野菜

冷めませんか? 知らない曲のカバーをしているとオ

で 40 曲書く、みたいな感じで。

リジナルと一緒じゃんってなっちゃうので。知ってい

――入江さんがプロデュースした『Juliet』 (MARUTENN

るのは結構大事な気がしていて。だから有名な曲を中

BOOKS)もそうですよね?

心にやりたいなと思っているんですけど、でも権利関

入江:そうです。『Juliet』は女性の名前で 99 曲書く

係とか通るか分かんないですけどね。

みたいな。あとは、MARUTENN BOOKS では出版もし

――入江さんは、ゲストボーカル等で多数のミュージ

ていきたくて。今後どうなるか分かんないんですけど。

シャンと関わる事が多いと思いますが、音楽との姿勢

書籍バーコードという、本専用のバーコードの一応取

や発表の仕方で世代的に近いと感じる方はいらっしゃ

得しました。第一弾で MELODY KOGA さんを出したと

いますか?

いう。

入江:どうだろうな。難しい。発表の仕方か…。最近

――入江陽さんは、自分の周りの方であったり、面白

本当に難しくて、よく分からなくなってきてますね。

いと思う方をピックアップしたいと気持ちがあるんで

どうですか? 普段皆さんバンドキャンプって聞きま

すね。

す?

入江:それは強いかもしれないですね。周りの人との

――たまにしか聞かないですね。

繋がりを含めて自分というか、そういう考え方が強い

入江:僕は聞かないんですよ。バンドキャンプのアプ

かもしれないですね。

リがあるかもしれないですけど。なんで聞かないかっ

――池袋のタワレコのインストアで SPEED の “White

て言うと、聴くのに一手間かかるというか…。ダウン

Love” サビを 3 回繰り返し歌われたそうですね。

ロードするっていうのが聞かない。でも、聞かない人

入江:そうですね。イントロしか出来なかったんで。

達がいるから、聞く人は聞くような気がするんですよ

<果―てーしなーい>っていうやつなんですけど。ま

ね。ダウンロードしないと楽しめない、っていう一手

ずそのイントロしか知らなかったんですよね。その後

間あるのが楽しいような気がして。最近どうだろうな。

…聞いた事はありますけど覚えてはいない。なのでそ

変化が大きすぎてよく分かんなくなっていますね。

こを 3 回ぐらい歌いましたね。

――音楽ストリーミングが始まってからは、環境が大

――なぜのサビだけを繰り返して歌おうと思ったので

きく変わりましたよね。

すか?

入江:やっぱり同世代の作り手とかでもストリーミン

入江:カバーアルバムを作ろうと思っていて。いつに

グとかに、抵抗ある感じの人もいる気がするし。僕は

なるか分かんないんですけど、そっちは多分権利関係

同世代の人たちの感覚は少し遅いような気がしていて。

の管理とかがあるので、レーベルさんにお願いする感

僕、今 30 ですけど、もうちょっと若い感覚でいないと

じだと思うんですけど。それもあってカバーの曲を色々

まずいのかという気持ちですね。

試していて。今のところ思っているのは、自分が歌う

一つそれとリンクする話が合って。今回『FISH』の

色んな人のカバーみたいな。よくある、徳永英明とかの。

配信リリースして貰っている業者がフラックスってい

みんな、ORIGINAL LOVE の “ 接吻 ” とか、中島美嘉の “ 雪

う業者なんですけど。その代表の方が同世代ですね。


ちょっと上ですけど、所謂アグリゲーターっていう。 TUNECORE とかもう大手があるんですけど、自分で作 ろうと思って立ち上げたという。Apple に自分に掛け 合ったりして、かなり大変だったらしいんですけど。 それには同世代感を感じますね。その流通の部分を自 分で作ろうとしているっていうのは、結構感動して。 それで今回お願いしたんですよね。正直、お願いする メリットがそんなにあるかって言われたら分かんない んですけど。大手通した方が Spotify とかでも、プレイ リストとか入りそうだし、なんとなく。でも同世代の 人がやっていて。ミュージシャン出身で、そういう立 場で作ったというか。良心的な価格システムで。 ――では、今後の活動のプランについてもお話頂けま すか? 入江:音源は作る作業に少し慣れてきたので、今後は、 他の人の音源をプロデュースするのと、ライブをやっ ていこうと思っていますね。ライブもソロで行くのは 手軽に出来るので、バンド編成でやっていこうと今の ところ思っていて。それでバンドメンバーを探してい る感じなんですよね。ほかの人に自分のノウハウを生 かして、その人の作品として出すように関われたら自 分としても面白い勉強になるしというか。 ―― ラ イ ブ や カ バ ー ア ル バ ム、 プ ロ デ ュ ー ス な ど、 2018 年も色んな所で入江さんのご活躍を拝見出来そう です。 入江:本当はもっと出したいんですよ。変な話一年に 一回アルバム出して。その売上って頻度としては少な いじゃないですか。毎月出せたら一番良くて。でも毎 月出している人がいても誰も聞かないじゃないですか。 そういうのもあって他の人の出そうと思っているんで すよね。


Photo by 谷口 幸陽





CHAI



CHAI かわいい 4 人の救世主 「おまえその仕事手ぇ抜くなよ、女子が化粧しないのと一緒だぞ」 という男子たちの会話をたまたま耳にしてしまった。アイドルみたいに目が二重でぱっちりで、頬をほんのりピンク 色に染めた湯上がりメイクにグロスでつやつやにした唇、華奢な体型、そんな女子のことを世の中はかわいいというの は知っていたつもりだが、メイクをしないだけで手抜きと言われるのか、とジーザス!ショッキングなお言葉だった。 そんな時に CHAI と出会い、私は彼女たちにイチコロとなる。 CHAI の何がかわいいって、まず 4 人の声がたまらない。さすが双子の絶妙なハーモニーを奏でるマナ (Vo / Key)、 カナ(Vo / Gt)の愛らしい声も、グッズのタオルの吸収力を自慢するユナ(Dr)の花畑から聴こえてくるようなほん わかした声も、振りに参加してないお客さんを祭り上げるユウキ(Cho / Ba) のつっけんどんだけどチャーミングな声 も、ああかわいい。 さらにライブ中にちらりと覗く、シックスパックだ今は縦線だ、なんて気にしない、鍛え上げられていないお腹も愛 おしい。 歌詞もとってもキュートでユーモアたっぷり。<そのままがずっと 誰よりもかわいい>(“N.E.O.”)なんて言って くれるもんだから、私の背筋は少し伸びる。 しかも CHAI はかわいいだけじゃない。 変幻自在なベースとドラムの低音に身も心も熱く踊らされ、時に柔らかくリズミカルに、時にキレのあるギターが突 き刺さる。ライブで直に体感したらこれまたイチコロ、この愛くるしい 4 人の音とは思えないようなダイナミックな 演奏は、とんでもないエネルギーを放つのだ。粋で胸のすくような、ある意味男勝りなかっこよさが、彼女たちが提唱 する、 「NEO かわいい」にリアリティを増す。 かわいいっていうのは人が決めるもんじゃない、自分自身の気持ち次第なんだということ。人の数だけかわいいの種 類があって、自分にちょうどいいが一番だということ。それが「NEO かわいい」。凝り固まった概念をぶっ飛ばしてく れる CHAI の 4 人は、私を始め、日本の女子たちみんなの救世主だ。

words by 及川 季節 , Sweets by Okasiya KISETSU






Photo by 谷口 幸陽



“実際、視界に入っているだけでは実感は伴わないという。そこ に実感を伴わせる為には、視点をその場所に動かす事しか無くて ” そんなに近いところに、バンドでこんなかっこいい人 がいるんだっていうのが嬉しいし刺激になるので、今 だったら King Gnu ですかね。バンドとしてやっている のがかっこいいと思いますね。 ―――ミゾベさんは? ミゾベ:同世代だったら、yahyel とか。活動が始まっ たくらいの時から目にしていて。最初から「こういう のをやるぞ」っていうのがずっと一貫しているので綺 麗だなと思いますね。もちろん曲も素晴らしいです。 いい刺激を受けています。 ―――今、新たな制作を取りかかっていますね。渋谷 WWW 公演を終えて、楽曲制作の方向性に変化はあり ますか? ミゾベ:今までは作品毎にテーマが変わっていている んですけど、今の自分達の気分としては、外を向いて いると思います。 森山:キーワード的には、『視線』では視点は自分以外 には変えられないから視線で世界を決めるっている世 界観というか、全体の理念があって。視線は自分で選 び取っているもので、視界の中でどこに焦点を当てる かってことで世界が形作られるし、その視線の中にま た、別の視界を持っている視点があって、そこから世 界が連鎖的に広がっていって。そういう話だったりを 1 年ぐらいしていて、実際、視界に入っているだけでは 実感は伴わないという。そこに実感を伴わせる為には、 視点をその場所に動かす事しか無くて。例えば、東北 の事を今 7 年くらい経ってどうなっているのか知りた いって思うなら行くしかないっていう。東北に 1 日行 けば、身をもって分かるし、映像を見たり、話を聴い たりすることでは得られない実感も、1 日分は得られる。 僕たちはこれまで行かな過ぎて、頭の中だけで想像し たり世界を見ていたので、もう少し自分達の身体を視 線の先に置いていく。それには時間的だったり、物理 的な限界があるのも分かっているんですけど、それで も出来る限りやってみるってことに興味が向いてきて。 身体を動かす、視点を動かしていくことで何か生まれ てくるのかなっていうのが、興味の現在あるところで すね。完成する頃には、もう少し違った言葉になって いると思いますけれど。今はそういうところから始め ています。


“当時は歌の中でそう歌ってしまうと、本当に誰かにおいて行かれてしまう気がして、 それが怖くて歌にできなかったんですけど、今なら言えるなと思って変えました ” すね。

でも変わらない部分がもちろんあるし、それ同時に時

―――今井さんとは、一人の写真家というのは勿論な

間がたったあいだに、もっと今の自分にフィットする

んですけれども、距離は近いというか、一緒に表現を

言葉もあるはずだと思って。今の言葉に置き換えて新

作る仲間といった感覚があるんですね。

しくしようという気持ちがありました。それと、1年

ミゾベ:そうですね、ライブの時なんかだと、今井君

前この曲を作った時には、浮かんできたけれどメンバー

の他にも音響で染野という仲間が居て。メンバー含め

だったり自分の外に対して言えなかった言葉があって。

てみんな「今日はよろしくお願いします。」というかし

それが<置いていってよ>という箇所で、当時は歌の

こまった感じではなく、もっとラフに「今日もよろし

中でそう歌ってしまうと、本当に誰かにおいて行かれ

く!」といった感じですね。

てしまう気がして、それが怖くて歌にできなかったん

森山:そこの二人とか、アートワークの wip とか、普

ですけど、今なら言えるなと思って変えました。

通に友達として会話しているのってプロジェクトが大

――― “ 虹の端 ” の PV での写真やアーティスト写真を

きくなればなるほど難しいと思うんですよ。そういう

担当されている今井駿介さんが、odol の写真を撮り始

状況を作ることが。それをすごい上手く達成している

めたきっかけは何だったんですか?

大きなチームだったり、プロジェクトもありますけど、

ミゾベ:最初、僕らのライブに来てくれたんですよ。

僕としてはかなり理想的で。もっと業務的にやらない

お客さんで、「チケット一枚お願いします」ってきて。

といけない部分が多くなるんだろうし、もう顔も知ら

ライブが終わって帰ろうとしていたら、「写真撮ってい

ないみたいなことのほうが多いと思うんです、レコー

て」と話しかけてきてくれて。フジロックのルーキー

ディングエンジニアとアーティスト写真の写真家って。

で知って(Fujirock が一般公募する新人の登竜門ステー

顔も知らない、もはや名前も知らないとかもあり得る

ジ。odol は 2014 年に出演)、よかったら一緒に色んな

と思うんですけど…。

ことやりたいです、という感じで。そこ仲良くなって、

―――そこは繋がってないイメージがあります。

別の日に写真を撮ったり、遊んだりして、自然と色ん

森山:そこが今だったら努力せずとも普通に繋がって

なライブに来て、撮って。ライブ中の写真もなんです

いくし、そこで例えば写真を見たイメージとかライブ

けど、それよりライブしてない時のステージ裏だった

の音とか、それだけじゃなくてお互いの人柄を知るこ

り、なんでもないような写真だったりとかを撮ってく

とでの影響が作品にまた落とし込まれることって意外

れて。僕らもすごく今井くんの写真好きだし、今井く

と貴重なことだと思っているので、大切にしていきた

んが好きなんで、一緒にやっていますね。

いなと。今はそれがある状況だから大事にしていきた

―――今井さんが odol に惹かれた魅力っていうのは、

いなと思いますね。

聞いたことありますか?

―――メンバー外にも親しい距離で表現を共にする方

森山:違う人が言ってたんだっけなぁ…。今井くんが

がいるんですね。では、他のバンドのお話をさせて頂

言ったのか分からないけど。ちょっと違ったら申し訳

ければと思います。2月に WONK、DATS とのライブ

ないんですけど、構造の美しさと、エモーショナル的

が決まったと思います。『視線』のツアーでは King Gnu

な美しさが共存しているっていうところが、odol を写

と愛知でライブをされてますね。今出た以外のバンド

真に落とし込むときもそういう事を入れたいみたいな

でもいいんですけれど、シンパシーや魅力的だと思う

ことを。昔アーティスト写真を撮ろうという時に、展

ミュージシャンについてお聞きしたいです。

示を見に行って、良さそうなアーティストいないかみ

森山:同世代だったら King Gnu が好きでツアーにも呼

たい事を話している中で、そういう作品があって。構

んだんですけど。King Gnu はシンパシーというより、

造なんですけど、中にエモーショナルさが垣間見える、

単純に音楽がとても好きで。ギターの常田大希さんと

なんかそういうところがいいよね、みたいなことは言っ

ボーカルの井口理くんとは大学が一緒だったらしく、

てた記憶があります。改めて今井君に聞いてみたいで


“その君やどこかの誰かのことを考え始めたんですけど、そうすると、どんなに 想像力を使っても、自分以外の人のことは本当の意味では何一つわからなかった ” う方が良いし、曲にしても見せているんじゃなくて、

森山:アリの方、“GREEN” のシングルの方に関しては、

ものがあってそこを僕らもみんなも見ているってい

説明するのが難しいんですけど、“GREEN” ってそもそ

う。そこに見方の矯正をしたくないなみたいな気持

も、人間として究極に普遍的ななにかを表現してみたい

ちとかもバンドの中にもあるし、そういう会話を wip

というところから始まっていて。普遍的って、いわば

としている中で、キュビズムの考え方というか。キュ

「僕にも君にもどこかの誰かにもあてまはる」というこ

ビズムってのは色んな視点からの見え方を 1 枚の絵の

とですよね。そこで僕たちはその君やどこかの誰かの

中に入れて、表現するものなんですけど。そことちょっ

ことを考え始めたんですけど、そうすると、どんなに

とリンクしているし、絵的にも面白い。キュビズム風

想像力を使っても、自分以外の人のことは本当の意味

に単純な図形で、こう柄っぽくして、でも元は一つの

では何一つわからなかった。でもその、何もわからな

写真で。そこに数多くの視線をイメージして、『視線』

いということは「僕にも君にもどこかの誰かにもあて

という EP のイメージにしました。

まはる」ことなんじゃないかと気づいて。自分の想像力、

―――分かりました。では先日の渋谷 WWW の公演は

人間の想像力の無力さというか。何一つ分からないし、

いかがでしたか?

それならそもそも想像することに意味があるのかさえ

森山:とりあえず、3 年間ぐらい活動をしてきて、そこ

分からないじゃないですか。それでも悲しい出来事の

までにリリースした 3 つの作品とか、そこまでの活動

ニュースとかを見ると、なんとなく想像して共感して

の集大成というか、一つ到達地点みたいなものを見せ

悲しくなったということで自分を収めているみたいな。

られたのかなと思っているんですけど。例えば来年も

そういうところへの葛藤もあるし。

これを更新したところでいいものが出来るとは思って

その一連の人間的な行為を象徴的に表現するものと

いないし、今のところは新たなスタート地点に立った

してアリを撮ってみようと、アートワークをやってく

ような気持ちでいます。

れている wip と話したんです。

ミゾベ:そうですね。ライブが終わってから、メンバー

あのアリのことを想像していくこと。あのアリって

全体で気持ちを共有して。全体的にほかのメンバーも

別にどのアリでもよかったけど、odol のシングルのジャ

森山の話した感じです。あと、制作についてもどんな

ケットに撮られたことによって、あのアリじゃないと

ものをまた作っていきたいのか、考えが固まってきて

いけなくなって。それは人間でも同じだと思うんです

いて、作品も作りはじめているし、新しい気持ちでい

けど、その他大勢のアリとは一線を画す存在になって、

ますね。

僕の中で。

―――アンコールでは以前下北沢 GARAGE 公演の来場

―――はい。

者限定で配られた “ 時間と距離と僕らの旅 ” を演奏され

森山:あのアリが今まだ生きているのか、踏み潰され

ましたね。今回は以前配布されていたバージョンと比

たのか、もしくは小学生に遊ばれてしまったのかは分

べて歌詞を変えられていたと思うんですけれども、2 番

からないけど、他者を想像しても分からないという流

の B メロの最後ですかね。

れは、悲しいニュースの被害者のことや、被災地のこ

ミゾベ:そうですね。2番の A メロ、B メロが変わっ

とを想像しているのと同じ過程だし、そこの他者の分

ています。

からなさを象徴するものとして、世界中どこにでもい

―――理由があれば教えてください。

るアリで。

ミゾベ:“ 時間と距離と僕らの旅 ” は 1 年前の下北沢

“GREEN” でそこまでは考えていたんですけど、 『視線』

GARAGE のワンマンの時に出来た曲で。そこで音源を

になった時に、それをもう一個メタに見るために、そ

配布したんですけど、それからライブで演奏すること

の一連の考え、今言った想像することとか、それだけ

はなくて、今改めてそれをやろうと思った時に、当時

じゃなく “GREEN” という曲や、色々な物事に対しての

の自分がその曲を作った時に感じていたことの中で今

見方は、それぞれで違っていい。見る人それぞれで違



odol もらえると嬉しいなと思ってライナーを書きました。

去年先行配信された ”GREEN” には驚いた。イントロの

―――作品について森山さんとミゾベさんで中心に話

か細いノイズやストリングスの切迫感。全体を通した不

し合うそうですが、そのテーマについてお話しする時

穏さなど、新しい楽曲のサウンドデザインは壮大で緻

は、共通の言語、例えば音楽や映画とかを例に出して

密。その後 2017 年 9 月にリリースした EP『視線』では、

イメージを擦り合わせていくんですか?

新しいバンドの現在地点を示している。渋谷 WWW の

森山:作り始める段階で、音楽をイメージすること

ワンマンで終えた『視線』ツアーの後も、足を止める

はあまりないですね。あの曲っぽくしようみたいなの はない。 ミゾベリョウ:うん。ないのと、時間を作って話し合 いを設ける感じじゃなくて、制作の合間とかに今自分 がどんなことを感じているか、という話はするんです けど、それと同時に雑多な話の中から、お互いがどう いうモードだったり、どんな気分でいるのかを感じ取っ ています。森山以外のメンバーとも同じように話をし ます。そこでなんとなく自分たちが今どういう状況に 置かれているのか、どういうものが一番素直に表現で きるのかを探れて、それで作品が出来ていきますね。 自分たちが今どんな風に世の中や身の回りについて感 じているかを重要だと考えています。 ――それは一作目の『odol』から今作の『視線』まで、ずっ と変わらないものですか? 森山:ではないですね。活動の中で僕たちに合ったや り方を見つけてきた感じなんですけど、これだけ日々 時間を共にしていると、言葉だったり表情であったり、 生活リズムだったり服装だったりで、感じ取れる部分 は大きいので。せっかく時間を共にしてるからこそ、 お互いに想像し合って、言葉と音で色々積み上げていっ た末に、作品に出来れば良いですよね。僕たちの音楽 を聴いてくれる人には、それぞれの解釈で聴いてほし いと今は思います。作り方に対する美学みたいなのは 多分これからも少しづつ変わっていくだろうし、その 時々で一番いい音楽のしかたを続けていきたいなとは

思っています。 ―――『視線』のアートワークについてちょっとお話を。 『視線』のジャケットは、先行配信された “GREEN” のイ ラストをアレンジしたものだと思うんですけど、あれ にはどういった意図があるんでしょうか。

こと事無く、すぐに新しい音楽を作っている。きっと また新しい音楽を聞かせてくれるはずだ。今回の『視線』 の話から、今の彼らのモード、そしてメンバー以外で 音楽制作に影響を与え合っている仲間達についてミゾ ベリョウ(Vo&Gt)と、森山公稀(Piano,Synthesizer) が話してくれた。 ―――『視線』ですが、今作はブックレットにメンバー のセルフライナーノーツを付けていますね。冒頭で森 山さんは「皆さん(あなた)とコミュニケーションを 始めたい」という旨が書かれていますが、これを行お うと思ったきっかけはあるんでしょうか? 森山公稀:きっかけとして何か出来事があったという ことではないですね。odol を始めた頃、僕たちは自分 たちだけで音楽を作っていると思い込んでいたのです が、活動を重ねる中で、ふと見返してみると周りの環 境だったり、出会う人や聴いてくれる人ひとりひとり の存在があの時の音楽を作らせていたんだな、という 気持ちになってきて。逆に自分たちの気持ちにだけ純 粋に作ろうとしても、今の僕たちにとって周囲の環境 から影響を受けることを避けることは不可能だし、そ うであれば多少不粋だとしてもライナーノーツという 形で接触できる表面積を増やすことで、よりたくさん の影響を受けてみたいと思ったのが一つありますね。 もう一つは、作品というのは完成した後は僕たちの ものではなく、作品として自立していると思っていて。 そこに対して、作品に触れる全員が、僕たちも聴いてく れる皆さんも同じ立場でそれぞれに解釈を入れている んですよね。その解釈を入れるっていうことで作品が より大きなものに膨らんでいくというイメージを持っ ていて。なので解釈を入れることをぜひ皆さんにして

words by 今井雄太 , illustration by 早瀬とび


鶏麗幇表紙 BOOK 1

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