Architectonic Materialism | Yuta Nihei

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2022.04.06加藤スタジオ設計製図第七-2022.05.31二瓶雄太

"Architectonic Materialism: A House of Luxury 2" 19 世紀までの建築理論が創り上げた社会上層のための Luxury な建築に対して、20 しかし、成長のフェーズから成熟のフェーズに移った環境を改善し、新たな建築理論と建築美学を生み出した。は歴史上初めて社会の下層半分に光を当てた。最小限の空間のなかに光と風邪と機能性を導入することで世紀のモダニズム理論 21 き詰めても建築家のパイを小さくするばかりではないだろうか。必要なのは改めて世紀の社会では、ローコストと最小限の理論を突 Luxury の理論を構築す ることである。「素材」と「構築」の観点から、物質的に表層に留まらない構築的な Luxury を考える。

マテリアルリサーチ5 3932 9312478 523 3447 441 276 305 305 887 840 393 ボイド+コンクリート 平面図 1/20 コンクリートとボイド I コンクリートとボイドコンクリートと幹 II壁は「空間を囲うもの」から「空間を内包するもの」へと変容し、人ではない「何か」のための空間が住宅の内側に存在する。溶ける型枠を用いた厚い壁。壁の厚みを2mにすることで、溶ける型枠によって生まれたボイド自体がひとつの空間になる。まれる。このような「開口部よりも広いボイド」は、合板などの捨て型枠では打設後に取り出せないため作れない。スタイロフォームで八面体のブロックを作り、型枠の間に挿入したまま打設する。脱型後にスタイロを溶かすことでボイドが生としても機能する。素材間で異なる時間の速度により、外側から朽ちていく。木の幹の中心を貫通する穴を開け、幹を型枠としてコンクリートを打設する。脱型せずに柱として用いることで、無垢の化粧材

テクトニクスリサーチ8 竹灰 窯内で竹型枠を焼却する(脱型) さらに、燃焼後の竹は窯の中で竹灰となる。竹灰は灰釉の一種で、天然釉薬として陶芸分野で重宝されている。に適している。煉瓦造以前の穴窯の施工時には竹型枠を用い、竣工後に内部で焼却して取り出す手間を省いた。竹は施工が容易なため仮設足場や型枠として古代から現代まで広く利用されている。曲げると折れずに撓うため、特に曲面型枠竹型枠に沿って補強レンガ造ヴォールトを積み上げる消える型枠と消えない痕跡陶芸や土木の分野を参照し、モノの作り方から建築の構成を検討した。例えば、建築において塑性素材を固める方法として以下の5種類が思いつく。   水和反応(CaO)・水和反応(CaSO4)・状態変化(液体→固体)・焼成・乾燥一般的には欲しい形状に最適な手段をひとつ選んで造形するが、これらの反応を組み合わせて空間をつくるとき、その空間は作られ方やその順序に強く影響され、定義される。あえて手段を目的化することで、目的ありきでは生まれないような空間ができてしまうのではないだろうか。テクトニクスリサーチ < 竹型枠 > 竹灰

テクトニクスリサーチ9 古代ローマの壁の構法 (a: opus incertum、b: opus reticulatum、c: opus testaceum) 引用出典=Robert Mark, Architectural Technology up to the Scientific Revolution, MIT Press, ����. 孫引き出典= 加藤耕一「 第�回:歴史のなかで、コンクリートの尻尾を掴む」, ��+� website 3Dプリント型枠の一体成形 < 型枠一体成形 > RC瓦菅は打設後には小さな光穴として機能する。桟瓦葺と同様にパネル同士は側面の突起で引っ掛かかり、セパレーターの代わりに瓦菅を用いて両側のパネル幅を固定する。外向きの面には凹凸あるいは着彩による模様を描き、内向きの面には脱落防止のための蟻足をつけた、大型の瓦パネルを焼成する。た新たな構法を検討する。筋補強の発明以後、モニエシステムの普及により現代的な捨て型枠工法が定常化したが、ここでは型枠一体成形の長所を活かし古代ローマではコンクリートは石やレンガの型枠の内側に流し込まれ、打設後に脱型することなく一体の壁として機能した。鉄瓦パネル

テクトニクスリサーチ11古窯の床の一部と釉塊古窯の柱の一部と釉塊

施工順序  本焼き 施釉 素焼き(900℃)焼成(1300℃) る素材と構法の論理であるはずだ。空間の合理性や目的性の論理から離れたとき、設計の拠り所となるのはその空間を物理的に形作マテリアル・テクトニクスそれぞれのリサーチを踏まえて、構法から生まれる住宅を設計した。と質感が道に面したファサードとしての役割をも担う。をつくる。高い防水性から外壁として用いられるだけでなく、独特のスケール感窯が現場にあるので、通常は製造・運搬できない大型瓦パネルを用いて化粧型枠施工順序  煙突→階段室 基礎→寝室合板型枠再利用基礎と煙突のRC打設のための合板型枠母屋の目地なしタイル壁 ヴォールトの足元だけ基礎補強RC-瓦一体成形壁のエントランス/ギャラリー空間 大型瓦パネル

施工順序 木架構は基礎のはみ出し部分に直接アンカーされ、雨除けの屋根と寝室を支える RC-瓦一体成形壁のエントランス/ギャラリー空間 竹のヴォールト型枠 登り窯(母屋)の完成 竹炭 細長いエントランス空間のシークエンスを唯一無二にするセパレーターの穴からは小さな光がいくつも差し込み、 煙突の隣の室だけはそのまま窯として陶芸家の施主が使用する。登り窯の焼成室はそれぞれ便所、台所、居間、工房として利用される。

図面14 リビング 倉庫 工房B キッチン エントランス -���+��� +� 平面図 �階 (�:��) ���� ���� ���� ���� ���� ���� �������������� ���� 工房A+���� +����窯 平面図 �F (�:��) テラス+���� リビング上部 ���� ���� ���� ���� ���� ���� �������������� ���� 平面図 1F 1:100 平面図 2F 1:100

図面15寝室 (父) +���� 寝室 (子) 平面図 �F (�:��) ���� �������� ���� ���� ���� ���� ���� ���� ���� ���� ���� ���� ���������������������������� 断面図 東西 (�:��) 工房A 窯 キッチン トイレ 寝室 工房B 倉庫 平面図 3F 1:100 断面図 A-A' 1:100

立面図 南面 1:50

模型 南面 1:100

模型 北面 1:100

模型 西面 1:100

模型協力: 「モニュメンタルな建て方を、人の住まいのすべての部分に応用しなければサンプル提供:藤城礼撮影:伊藤大翔VR・レンダリング:山路湧四方璃玖人、今田木葉実、木島凪沙ならない。数人の特権的な人だけでなく、すべての人間をパレ ( 居殿 ) に住 まわせるようにすべきである。」ーD・ラヴェルダン『芸術の使命と芸術家の役割ー1845年の官展』

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