1 minute read
フライト前のトラブル
from 885:フライト前のトラブル
フライト前のトラブル
My Flight Foible
Advertisement
カーティス・ピーター・バン・ゴーダー
暗闇の中であがいている時には話したくなかったけれど、光が戻ってきた今だから話せることがあります。
一言で言えば、「無連絡キャンセルにご注意」ということです。
では、詳しく説明させてください。
第1幕:遅れた時計の謎
私たち夫婦は、早朝のフライトでベルリンを発つことになっていました。空港までは、私の実家のあるドレスデンからバスで2時間ほどです。あらゆる点につき、細心の注意を払って計画を立て、すべては私たちの思いどおりに進んでいると確信して眠りにつきました。たしかに、万事順調のはずだったのですが・・。
旅の最初の行程である早朝4:50のバスに乗るため、バス停に着いたのですが、どういうわけかバスが見当たりません。時刻を調べてみると、そのバスがすでに出発していたことがわかりました。それはつまり、電車に乗り遅れ、飛行機にも乗り遅れてしまうということです。どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。
よく思い出してみれば、前の晩、時計の電池が外れそうになっていたのでちゃんとはめたのですが、その際すでに30分遅れていたようです。大丈夫だと思いこんでいたので、他の時計を見てチェックしようとも考えませんでした。
第2幕:打開への道
残念ながら、その時、私はやけになって拳を天に振り上げ、こう叫びたい気分でした。「わが神、わが神、どうして私たちをお見捨てになったのですか。すべて順調に行くよう何度も何度も祈ったというのに、たった1つの馬鹿げたミスのせいで、私たちの計画がすべて台無しになるなんて!」
こういったことが起こると、おかしなことに、自分の間違いを取り繕って、神や自分以外の誰かのせいだと責め立ててしまうことがあります。
絶望状態がおさまり、冷静に考えられるようになったので、なんとか状況を打開しようと努めることにしました。そしてすぐに判明したのは、そう簡単には行かないということです。
こんな失敗をしてしまうと、あきらめたくもなるものですが、その結果どうなるかを考えてみれば、そういう選択肢はありません。いつまでも泥の中にうつ伏せに倒れたままではいられないのです。ドクター・スースが、こんなうまい表現でまとめているように:
実に言いにくいけれど
残念ながら、ほんとです。
傷ついたり
悩んだりといったことが
君にも起こるかもしれない。
とがった枝の先に
ひっかかってしまい
みんなは飛んで行ったのに
君だけ宙ぶらりんのまま
置き去りになることもある。
そこから逃れたかと思えば
どすんと地面にぶちあたる。
そうなるとおそらく
君は沈み込んでしまう。
沈み込んでしまうと
楽しいことなどありはしない。
そこから抜け出すのも
たやすくない。*1
第3幕:ついに解決
パンデミックの混乱のさなかに巨大航空会社と連絡を取ろうとするのは、ムンバイ(インド)のラッシュアワーに交通渋滞のただ中で演説をしようとするようなものです。そうこうしている内に、フライトの出発予定時刻は過ぎてしまい、あらゆる手段を試してみてもダメだったので、最後にもう一度だけ、航空会社の相談窓口に電話してみることにしました。するとやはり音声メッセージで待たされ、今回もこのままずっと無駄に待って終わるのではないかと心配しました。でも、30分を超えたところで、誰かが電話口に出たのです。やったー!
状況を説明したところ、さらなる一撃をくらいました。会社の方針によれば、行きのフライトに乗り遅れた場合、帰りのフライトも取り消されると言うのです。それはつまり、私たちの往復航空券が完全に無効となり、2千ユーロもかけて、繁忙期のさなかに新しい航空券を買わなければいけないということです。「ただ・・お客様がフライトの出発前にキャンセルしようとされたことの証明があれば別ですが、何かございますか。」
偶然にも、航空会社に連絡をしようとさまざまな手を試みていた時、出発の数時間前に、WhatsApp(メッセンジャーアプリ)でメッセージを送っていました。そのスクリーンショットを送信してみると、それで証明になると言われました。それからまた30分ほど、相談窓口の担当者とやり取りをして、ついに、追加料金なしで、少しあとの便の航空券が手に入ったのです。
すべての会話を終え、携帯を見てみると、プリペイドの残高がわずか69セントでした。あの長い通話のさなかに残り時間が切れていたら、また初めからやり直さなければならず、大変なことになっていました。神は細部まで手を抜かれません。私は、小さなことや小さな人によってなされたことに関する物語が、聖書には数多くあることを思い出しました。たとえば、わずかなパンと魚で群衆が満腹になったこと、羊飼いの少年が王になったこと、たった1個のなめらかな小石で巨人が倒されたこと、杖を持ち上げることで紅海が分けられたこと、世界の救い主が家畜小屋で生まれたことなどです。
今回の経験から気づいたことがあります。それは、たとえ私たちがしくじり、大失敗を犯した時でも、私たちの驚くべき神は常に私たちと共におられること、そして、神は人間的なミスでさえ上書きして、万事を私たちの人生の益と成せるということです。
―――――
1. ドクター・スースの遺作絵本『Oh, the Places You’ll Go』(1990年)より。日本語版は、河出書房新社から、『きみの行く道』(訳:伊藤比呂美)というタイトルで出版されています。