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小さな始まり
from 894:小さな始まり
小さな始まり
Small Beginnings
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アイリス・リチャード
小さな始まりが大きな終わりにつながるという物語やたとえ話は、数え切れないほどあります。これは、私自身に起こった、小さな始まりの話です。
当時、ある社会福祉活動に関わっていたのですが、見知らぬ人から言われたことがもとで、その活動の方向性を変えることについて考えさせられました。私たちが活動していた地域では、永続的な成果があまり生み出されておらず、労苦の結果は、期待していたものから程遠いものでした。努力しても虚しく思え、活動は行き詰まる一方でした。
私には、何を変えるべきなのか見当もつかなかったのですが、まったく期待していなかった時に、ある出会いがきっかけで、物事が動き出しました。人と会う約束があって、オフィスの受付で待っている間に、見知らぬ人とおしゃべりを始めたのです。相手はアフリカ出身の実業家で、自分の国について、景勝地や人々のことを愛しげに語り、そこの社会的不均衡や貧困についても話してくれました。
後になって、この出会いを振り返った時、私の心が肥沃な土地となって、そこに小さな種が植えられていたことに気づきました。最初はちょっとした導きを感じる程度だったのですが、そのことに注意を向けると、アイデアが芽生え始めたのです。そしてまもなく、アイデアは計画へと姿を変えました。その計画は、特にそれが活動場所や運営方法の大きな変化を伴うこともあり、最初の内は怖いと感じましたが、同時に興味をそそられました。この活動に関して多くの祈りや討議がなされる内に、その計画は徐々に形となり、行動に移されました。私たちは、小さく臆病な足取りで、神が指し示しておられる一見困難な方向へと進んでいったのです。こうして、未知の領域に突入する地固めの段階が始まりました。
アフリカのある国で、地域貢献活動を立ち上げる初期段階において、私たちの信仰や決意や忍耐が徹底的に試されました。克服すべき課題が数え切れないほどあり、数々の予想外の障害を乗り越えねばなりませんでした。そうやって、何年にもわたる試行錯誤の末に、ようやく持続的な支援プロジェクトの基盤が出来上がりました。
あの「導き」から始まり、これまで数多くのことが成し遂げられてきたわけですが、時間という試練に耐えてきた私たちの活動は、社会的に取り残されている地域社会での奉仕を始めてから、27年目を迎えます。最初の頃は恐る恐る足を進め、小さな形で始まりましたが、それから何千もの貧しい家庭が支援され、親に捨てられた子どもたちが教育を受けて、その後仕事に就く機会を得るなど、数え切れない人生にポジティブな変化がもたらされるまでになりました。
私はそれ以来、思いつきであれ、未熟なアイデアであれ、神が心に植え付けてくださる夢であれ、特定の方向への導きを感じさせるものがあれば、それが持つ力を過小評価してはいけないということを学びました。その導きに従ってみると、新しくより大きなことにつながるかもしれないのです。このことに関連して、最近読んだ話を思い出します。
史上初の「馬なし馬車」は、1769年、ニコラ=ジョゼフ・キュニョーというフランス人によって製作されました。それは、大砲を運搬するための巨大な蒸気駆動三輪車で、時速3.6キロという「猛スピード」で移動しました。
当時、キュニョーの馬なし馬車が大きな利益を生むと思った人が、それほど大勢いたとは思えません。それは非常に高価で、ものすごい音を出し、その上、老いぼれた馬にもかなわないほどの速度でしたから。しかし、その馬なし馬車から革命が始まったのです。私たちは、始まりは小さくてもかまわないのだと、時々自分自身に言い聞かせる必要があります。クレイジーに見えるアイデアによって始め、胎児のように形成段階にあるそのビジョンから、何か大きなことが起こるかどうかを見ていればいいのだと。
イエスは、小さなものに、後で大きくなる可能性が秘められていることについて、以下のように言われました。
「『天の国はからし種に似ている。人がこれを取って畑に蒔けば、どんな種よりも小さいのに、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て枝に巣を作るほどの木になる。』 また、別のたとえをお話しになった。『天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。』」*1
心の中に聞こえる神の「ささやき声」に耳を傾け、自分の人生における神のご計画に沿って動いているなら、不可能に思えることさえも現実となるのです。
(アイリス・リチャードはカウンセラーで、1995年以来ケニアでコミュニティー活動およびボランティア活動を活発に行っています。)
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1. マタイ13:31-33 新共同訳聖書
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信仰とは、見えないものを信じること。その信仰に対する報酬は、信じているものが見えるようになること。―ヒッポのアウグスティヌス(354-430)
何かを始めては失敗を繰り返しなさい。失敗するたびに、もう一度やり直せば、あなたは強くなり、ついに目的を達成することになる。それは、あなたが始めた時に持っていた目的と同じではないかもしれないが、あとで思い出して喜べるような目的なのだ。―アン・サリバン(1866-1936)
小さな始まりを軽んじず、自分の成果を過小評価しないこと。それらを覚えておいて、次のことに進む時のインスピレーションとしなさい。始まりがどうだろうと関係なく、自分のコンフォートゾーン(居心地の良い状態)の外に飛び出すなら、それは大きなことだ。―クリス・ギレボー(1978-)
慣れ親しんだ、一見安心できるものを捨てて、新しいものを受け入れるのは、とても勇気のいることだ。しかし、もはや意味のないものに、本当の安心はない。―アラン・コーエン(1950-)
信仰をもって最初の一歩を踏み出しなさい。階段全体が見える必要はなく、ただ最初の一段を上ればいいのだ。―マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(1929-1968)