ポートフォリオ-akarifujisawa

Page 1


Portfolio
Akari Fujisawa

はじめに 時空間が重なる建築を目指して

星野道夫の『旅をする木』の中に〈もうひとつの時間〉という一編があります。

東京で忙しなく生きる編集者がアラスカでザトウクジラのジャンプを目の当たりにし、帰 国後もふと思い出しほっとするという話です。

編集者が心打たれたのは、巨大なクジラが小さく見えるほどの 取り巻く世界の広がり。そ して、クジラが宙を舞う瞬間が今もどこかに存在するという時間の広がりでした。

〈もうひとつの時間が世界のどこかで流れていることを心の片隅に意識できるかは天と地の 差ほど大きい〉と話は締め括られます。

この話のように別の時間や別の空間を引き寄せられたら、建築はより豊かさを生み出せる ような気がします。

いまここ/ いつかどこか、複数の時間や空間が重なる建築を目指して設計をしたい と考え ています。

時空間への意識を形作ったできごと

1.手のひらのなかの宇宙  中学の理科の授業で、く宇宙がとてつもなく 広いように、私たちの手のひらの細胞ひとつひ とつにも広大な空間が広がっています。もしか したら、その中にも宇宙があり地球があるのか もしれません。私たちの宇宙だって巨人の手 のひらの細胞のひとつなのかもしれません。>  と先生が話しました。それ以降ふと思い出して は、巨人の中にいる私と私の中にある宇宙を想 像しスケールを往来する旅をします。建築を学 び10年を経たのちに、先生の話はイームス夫 妻によるPowers of ten だったと知るのでした。

2.油絵具の速度  高校の美術の授業で油絵を描く機会があり、 <油絵具の固まるには長い時間がかかるので、 表面が乾いて見えても中は乾いていません。 ゴッホの絵のような厚塗りの絵の具はまだ固 まっていないのかもしれません。>と扱いを教 わりました。その話を聞いたとき、昔の偉大な 画家として遠くに感じられるゴッホの時間が、 絵の具がまだ乾いていない(=ゴッホの存在し た時間が続いている)という形で、私の生きる 時間と繋がったように思えました。

3.千年前の情景

小さい頃に曽祖母に百人一首を教わったのを きっかけに、百人一首が好きになり競技かるた のサークルに入っていました。

例えば、見上げた空に雲間から月光が落ちて綺 麗だっだとき、「秋風にたなびく雲の絶え間よ りもれ出づる月の 影のさやけさ」を思い出し ます。これは、雲の切れ目から洩れてくる月の 光の澄みきった美しさを歌った和歌です。 昔の人と情緒を共有すること、今の状況を通し てかつて描いた風景が立ち現われることに面白 さを感じ、時間旅行をしている気分になります。

46億年のメメント・モリ

-千葉県犬吠埼における海洋散骨施設の計画 -

果てしない時空へ意識を向けること

宇宙について考えるとき、自分の小ささを知る感覚が好きです。意識が私の小さな世界か ら飛び出し、果てしなく大きな世界に包まれていると気づきます。 天体の運行を用いて 体験した人が世界を発見をする建築の姿を模索したい と思いました。

過去に目を向けると天体運行を利用した古代遺跡は数多くあり、冬至や秋分など共同体で 一本の軸を共有します。これは天体運行が農耕と密接に関係し、集団として団結力を高め ることが生きることに直結していたためでした。

では、 大切にするものが様々な現代 に天体運行と関わりある建築をつくるのであれば、 人それぞれの多様な軸をつくることが必要 ではないでしょうか。

それぞれの軸による時間と場所の実感により、 果てしない宇宙の中の地球という星で 46億年続く今を生きている奇跡を意識できる のではないかと思います。

敷地を探る

犬吠埼(千葉県銚子市)

天体運行、とりわけ太陽を利用した建築物を計画するために敷地の条件を定めました。

・ 太陽の昇り沈みを確認できる よう水平線が見える場所 ・ 果てなく続く海 を意識するため太平洋に面する場所 ・太陽に関係した 象徴的意味を持つ 場所

以上の条件を満たす場所として、千葉県銚子市犬吠埼を敷地としました。

選定理由

・ 水平線がみられる ことから 太陽の昇り沈みを実感 しやすい ・太平洋に面し、視界がひらけているため 果てなく続く海 を感じる

・ 日本一早い初日の出 が見られる場所として、太陽運行の象徴的意味を持つ

また、調査を進めると犬吠埼には次のような特徴がありました。

・日本一早い初日の出が見られる場所として有名のため、元旦未明は初日の出を見る人で混 雑する

関東最東端の特異な地形 として 三方を海 に囲まれている ・およそ 1億2000万年前の白亜紀の地層 が顔を出している ・水郷筑波国定公園に含まれる 景勝地 で犬吠崎と続く君ヶ浜は関東舞子と呼ばれ多くの歌人 からも親しまれていた

犬吠埼は関東最東端に位置する 日本一早い初日の出 白亜紀の地層が見られる

1.銚子駅から2両の銚子電鉄に乗る

2. 木の葉をかき分けながら電車が進む

3.犬吠埼駅

4.駅から犬吠埼へ向かう坂道

5.犬吠埼 足元には草原がひろがる

6.岬から見た君ヶ浜 穏やかな海が広がる

7.君ヶ浜から犬吠埼を見る

8.白亜の犬吠埼灯台

9.東映のオープニングに使われる荒磯 10.君ヶ浜と違い激しい波が打ち寄せる 犬吠埼駅

前述の特徴を活かせるプログラムとして 海洋散骨 を提案します。

天体運行の魅力 は、運行が半永久的であることや周期的であることです。そこから生ま れた建築物は儀式が運行と関連付けられていて、事象が持つ意味に合わせて建築も設計さ れているため、 宇宙と人間を結ぶ結節点 としての作用があります。 事象を切り取るこ とで神秘性を伴う感動を与えるような建築がふさわしい と考えました。

神秘性を非日常体験・生や死に関わるもの、超次元的なものに感じると捉えました。また、 死者に関する行いは周期性 (命日、月命日、周忌) があり 、とりわけ、 彼岸 (春分・秋分) は太陽の運行に関係 していることに着目をしました。

そして 敷地を海辺に設定 したことから、 海洋散骨 に関するプログラムとしました。

天体運行は 弔い空間に適する

海洋散骨に まつわるプログラム 海洋散骨

海辺に計画する

海洋散骨について

海洋散骨と課題 大まかな流れ

海洋散骨とは文字通り 海に遺骨を撒いて供養する葬法 です。

社会の変化に伴い葬送文化や家族のあり方・ 価値観が多様化 したこ とにより、散骨は新しい供養方法として注目されています。

特に海洋散骨においては「知っている」「聞いたことがある」と回 答した合計の認知度が93%と高くなっています。(日本海洋散骨協 会 海洋散骨に関するアンケート 調査報告書より)

抱える問題点

散骨希望者は海が好きだから・お墓がいらないからという理由で海 洋散骨を望むのに対して、 弔う人 は「お墓参りをしたい( 手を合 わせる対象が欲しい )」と意見がありました。希望者の考え方に 弔う側の価値観が追いついていないことが見受けられます。

対象があるからこそ、人は祈りを捧げている実感を得る と いうことでした。

そこで、 残された人たちが故人を偲ぶ象徴の不足を問題と し、海洋散骨のための弔い空間を設計 しました。

出航

散骨希望車者 ・海が好き ・お墓がいらない ・体験してよかった ・子供に面倒をかけたくない

弔う人 お墓参りがしたい 手を合わせる対象がほしい

お盆や回期毎の メモリアルクローズ

粉骨
帰港
散骨式

形態を決める手法

1.犬吠埼を実感する

1.地形に沿わせる

等高線に沿うように形を馴染ませる

2.地形に組み込む

形を挿入することで、 地形そのものが体験をつくる

2.みんなの軸と  わたしの軸をつくる

4. 軸に沿う

みんなの出来事(彼岸・初日の出) に関係する、光を通す筒をつくる

3.地形を切りとる

地層を見せ、時間の積み重ねを際立たせる

5.軸をつくる

自然光を通すと分光して虹をつくる三角プリズムを用い、 各月の日の出・日の入できまったフロア形状に積み重ねることで 日の動きを可視化しながら無数のわたしの軸を生み出す

計画と順路

散骨管理棟

弔う人のための施設 はじめに管理棟へ行き、 散骨の準備を行う

ビジターセンター

犬吠埼を訪れた一般の 方々のための休憩所

大階段

初日の出を見に来た観光 客が身を寄せ合って元旦 の朝日を観測する場

桟橋と鳥居

海へと向かう桟橋は故人 が散骨を希望した意味を 弔う人に考えさせてくれ る場

展望台

散骨した海を振り返るよ うに眺め、遠い故人に思 いを寄せる場

弔いの道

岬とつかず離れずの道を 歩くことで気持ちを整理 する一助となる

弔いの塔

故人の命日を軸とする弔 いの空間

駐車場

海中を通ることで、 行きは散骨への意識を高め 帰りは散骨された故人の気持ちになる

門を通った光が桟橋に差し込む

管理棟とビジター棟は灯台への道を 中心に対称に配置される

斎場は地下で繋がり、

外 観からは入り口のない白い箱のように見える

ちらりと見える入り口は 好奇心をそそる

灯台の周りを 弧を描くように歩く

門は彼岸と此岸を分ける鳥居のよう

地層と塔への視線

弔いの塔を中心に 円を描くように歩く

塔への視線

海 への視線

屋根がなく光が差す道 波の音だけに耳を澄ませ、 散骨の時を思い起こす

散骨した海を眺め、 故人に思いを馳せる

両サイドが開いた道は恐怖心を煽り、 死は身近にあることを思わせる

白亜紀の地層に重なった弔いの塔が見える 地球は死の積み重ねであることを想起させる

地中空間が風景を変える切れ目になる

海 への視線

塔へ向かう道は浮遊感があり 天国へ向かうような気持ちに

切り裂いた岩から初日の出見え、大階段に光が差す

大階段は普段は岸への道だが、 初日の出を見るための特等席にもなる

潮汐により変化する池

大階段から降りると時間により通ることができる

初日 の出の軸線

春分・秋分の日の出の軸線 船の通り道

春分・秋分の日の出の軸線

散骨管理棟とビジターセンター

「地形に沿わせる」

散骨管理棟は地上1階・地下1階建てとなっている。

地上には 海を眺められる待合室 、地下には粉骨室・

粉骨後の気持ちを落ち着けるための斎場 等を設けて いる。待合室から見える 海景 や斎場に落ちる 光 が際 立つように 明暗の緩急 をつけて設計した。

粉骨は葬儀の一部のように感じるため、 悲 しみに暮れられるように他の部屋から離して配置する

長く暗い通路が 内省する時間を作る

1 階平面図 S:1/600

普段は礼拝堂として人が集う

管理棟外観 斎場は地中に埋め、低く見せている

管理棟内観 奥の水盤が海と繋がり、 散骨への気持ちをつくる

通路から斎場を見る

管理棟A-Aʼ断面図 S:1/350

暗く長い通路の先には、のこぎり屋根により 柔らかい光が落ちる斎場が現れる 管理棟 A-A’断面図 S:1/350

「軸に沿う」

弔いの道入口

海中トンネル

海抜+2648

桟橋

海抜+750

散骨専用の船が停泊する桟橋。

海中トンネル は、海へ向かう人には 故人が散骨を希 望した理由を想像する場 として、陸へ向かう人には 海に舞っていった故人に寄り添う場 として計画し た。長い屋根の 桟橋 は水平線に意識を向け、ステン レスの仕上げによって 水面の揺らめきと煌めきに包 まれる ような設計とした。

みんなの軸であるお彼岸(=春分・秋分)に合わせ て計画し、 彼岸のお墓参りを兼ねたクルーズにて太 陽を拝む ことができる。

桟橋の行き来は海中を通り、 海洋散骨を選んだ故人の気持ちに寄り添う

桟橋は水面が屋根に写り込み波の揺らぎに包まれる

春分・秋分の軸に添うためお盆のメモリアルクルーズには陽が差し込む

桟橋から展望台へ向かう弔いの道は 空だけが見え る。

海にせり出した道では波の音がよく聞こえる。あえて 海への視界を遮 ることで、 波音のみに集中 できるようにした。 一人で悲しみの気持ちと向き合う ため、す れ違えるだけの道幅とした。緩やかな登り坂は息が若干上がり、その苦しさが 自分の内面に向きあうきっかけとなる。

コールテン鋼の道は訪れる度に経年変化で表情を変え、時間の経過を示す

海抜+17300

海抜+14490

海抜+11630

海抜+8770

海抜+5910

海抜+3000

海抜±0

展望台断面図 S:1/200

展望台

弔いの道の先には展望台がある。

波音の聞こえていた道とは対象的にガラスボックスで 宙に浮き 、音を遮った空

間は あの世に移動 してしまったよう。

開放的な展望台は

階段 を降りると浮遊感がある

海抜+16900

海抜+12900

散骨した場所を眺めながら、静かに故人のことを語り合う場所 として設計した。 展望台

散骨した方向を眺め、故人を思う

展望台内部から改めて散骨した海を見る 弔いの道とは対照的に波音は聞こえず、海の輝きにのみ目を向ける

春分・秋分の日の出軸線

「地形に組み込む」

海抜+17300

海抜+14490

海抜+11630

海抜+8770

海抜+5910

海抜+3000

海抜±0

弔いの道から塔を見る 塔のフロアが地層の続きのように重なる様子が見える

海抜+25000

海抜+22200

海抜+19800

海抜+16800

海抜+13800

海抜+10800

海抜+7800

海抜+4800

海抜+1800

海抜±0

ビジターセンター側からは 入 り口のみが見える

切 り裂かれた岩を通して 初日の出が大階段に差し込む

満ち引きで海水が流れ込む

弔いの塔

弔いの塔は 各月毎にフロアが分かれ ている。塔の天 井・床幅は南中高度、弧を描く床の中心角は日の長 さによって決まっている。各階に日が入りやすいよ うに、南中高度の低いフロアが下階・高いフロアが 上階になっている。

各フロアの形状の違い が、 季節毎の地球と太陽の関 係性の違いを可視化 する。

屋根 海抜+80800

6月の階 海抜+76400

7月の階 海抜+72000

5月の階 海抜+67600

8月の階 海抜+63200

4月の階 海抜+58800

9月の階 海抜+54400

3月の階 海抜+50000

10月の階 海抜+45600

2月の階 海抜+41200

11月の階 海抜+36800

1月の階 海抜+32400

12月 の階 海抜+28000

1階 海抜+25200

白亜紀の地層の上に弔いの塔のフロアが重なり、 地球は生命の積み重ねであることを想起させる

白亜紀

天頂 夏至

弔いの塔には モニュメント とし て 三角プリズム を用います。

プリズムに光が当たるように弔 いの塔の 天井・床幅は南中高度 、 弧を描く 床の中心角は日の長さ によって決定しました。

例:7月の場合

日が短く、 南中高度が 低くなる

月の最終日が 最も日が長く、 最も南中高度が高い

7 月1日の日の出 7月1日の日の入

1.三角プリズムについて

7月31日の日の入

三角プリズムは 高さ4000mm 正三角

形の1辺が300mm のものとします。

2.夏至と冬至

夏至

7月1日の南中高度 7月 8月 9月 10月 11月

3.中心角

7月31日の日の出

夏至

7月1日の南中高度

各月で最も日照時間が長い日 の 日の出 入り角度 を用いることで月毎の太陽が 照らす角度を全てカバーします。

夏至 春 分・秋分

7月1日の日の出 7 月1日の日の入

7月31日の日の入 7月31日の日の出

例:7月の場合 フロ ア N

4.天井・床の幅 南中高度が高いほど日は手前しか差さ ず、低いほど奥まで差し込みます。

これにより、各月の 南中高度が最高の 日=日が差し込みにくい日 にプリズム

7 月1日の日の出 7月1日の日の入

例:7月の場合 フロ ア N

例:7月の場合 フロ ア N

太陽が真南に来る時の角度を南中高度

例:7月の場合

7月1日の日の入

7 月1日の日の出 7月1日の日の入

月1日の日の出 7月1日の日の入

といいます。 南中高度 が 最高の日は夏

至 で、 最低の日は冬至 です。また 日照

7 月1日の日の出

7月31日の日の入 7月31日の日の出

時間 が 最長の日は夏至 で、 最短の日は 冬至 です。

フロ ア N

例:7月の場合 フロ ア N

太陽運行図

万人に重要な日其々の大切な日

に対して 最低1m分の太陽が当たる よ うに天井の高さを設定することで日に 当たる部分の最低高さを確保します。

5. 公的な軸と私的な軸

万人に重要な日其々の大切な日

例:7月の場合 フロ ア N

従来の軸

7月1日の南中高度

7月1日の南中高度

7月31日の日の入 7月31日の日の出 万人に重要な日其々の大切な日

7 月1日の日の出 7月1日の日の入

三角プリズム

万人に重要な日其々の大切な日

二至二分の朝日が入る公的な軸 = 筒状で大掛かりな装置

6.私的な軸を得る利点

7月31日の日の入 7月31日の日の出 万人に重要な日其々の大切な日

7月31日の日の入 7月31日の日の出 万人に重要な日其々の大切な日 天頂 夏至 春 分・秋分

7月31日の日の入 7月31日の日の出 万人に重要な日其々の大切な日

命日、散骨日、故人ゆかりの日etc...

三角プリズム

設定した日時にプリズムに光が差す 故人と再会を約束しているかのように虹が落ちる

予期せぬ虹もまた、故人からの語りかけのように感じる

にじんでまざって

大学課題:多世代交流施設の提案 敷地:東京都目黒区

用途:生涯学習センター・児童館・幼稚園を備えた複合施設

区立東山公園の敷地内にある 現複合施設の建て替え提案 。

現敷地には幼稚園・児童館・生涯学習センターやサークル活動に用いる社会福祉館などが 組み込まれた複合施設が建っている。それらの機能に併せて、南側にある老人ホーム・区 立東山公園・学校施設との 多世代交流を図る施設 を設計する。

公園内に多世代交流施設を設計しました。

敷地は公園や学校が近いため多くの人が施設を訪れます。しかし、現施設はロビーが1つ あるのみで、多数の人が長居できる場所ではありません。また、幼稚園・老人ホームは特 定の方が利用しますが、児童館・生涯学習施設は不特定多数の方が利用します。ゾーン分 けと交流の相反する 2 つを成立させなくてはいけません。そこで みんなの居場所として包 容力 があり、 ゾーン分け交流の両立 ができる施設を考えました。

包容力

廊下を再解釈 しスペースとして見直すことで 部屋間にたまり場 を設けました。たまり場は 各部屋間の配置によって大きさや形が異なり、 利用者は居心地の良い場所を選べます 。

ゾーン分けと交流の両立

平面の結節点 として、室内外をまたぐ家具「 シェア家具 」を設けました。家具利用によっ て 各用途が緩やかに関わりを持ち ながら たまり場 となります。 断面の結節点 として、 幼稚 園ゾーンに吹き抜け を設けました。 上階利用者と下階の幼稚園生の空間的な繋がり を生み ました。

こうした仕掛けにより 用途が滲み出す ことで 多世代交流を促し 、 みんなの居場所となりう る施設を提案 しました。

敷地について

池尻大橋駅

敷地

区立

東山公園

区立

東山公園

老人ホーム

区立東山小学校

目黒天空庭園

現状と問題点

公園に挟まれている児童園にも関 わらず、 閉鎖的で一体感がない

現施設のロビー

休日の午後でも 共用部には人気が ない

廊下

各部屋は使用されているものの、 閉ざされている

公園のように誰でも目的なく過ご していい 、周辺の利用者も包み込 む公共施設を作りたい

みんなの居場所をつくる

ゾーニング

駐車スペース

スポーツも できるような 活気のある公園 落ち着いた 公園

老人ホームとの 交流空間

1. 敷地の周辺状況に合わせて、 外部空間をつくる

サービス動線の 確保

カフェを設置し 公園と施設を 一体利用

老人ホームに開いた配置

活気のある体育館を 2面道路側に配置 西側公園の延長で 歩行者を引き込む

幼稚園 その他 児童館 生涯学習センター

2.外部空間の機能とリンクするよう 内部のゾーニングを行う

結節点をつくる

平面計画

1.通路としての廊下

2.スペースとして広げることで、

通路と部屋の中間になる

3.室内外を横断するシェア家具を配置すると、 部屋の延長の居場所に変わる

断面計画

幼稚園には吹き抜けを設け、 上階の児童館とセキュリティ を分けつつも交流を図る

共同住宅

天窓からの採光が 室内に陽だまりをつくる

上部天窓

内部開口が交流の きっかけとなる

上部 吹抜

情報 コーナー

児童館 遊戯室 カフェ

児童館 駐車場

隣地境界線

目黒区立東山公園

幼稚園 遊戯室 倉庫

上部天窓

幼稚園 入口

幼稚園

上部天窓

職員室

保健室

部屋間も広々とした 遊び場となる

隣地境界線

老人ホームと園庭を繋げ、 交流が生まれる

内外をつなぐベンチによって 屋外からも試合観戦できる

室内外をまたぐ家具が 利用者の居場所を増やす

目黒区立東山公園 老人ホーム

応接室

共同の畑

職員用駐車場

保育園側から児童館を見る

家具を起点に所々で営みが生まれる 井戸端会議をする人達がポツポツいる

児童館と保育園を見る

1. 児童館の遊戯室に園児が身を乗り出し、卒園生と遊ぶ

2.腰壁は子共にとっておままごとのカウンターになる

3.壁にかかった作品を見る

4.練習の掛け声をBGMに過ごす大学生 5.体育館の練習を見るカップル

共同住宅

児童館の子供たちが 遊戯室を上部から眺める

大人も子供も利用できる2階

目黒区立東山公園

幼稚園

遊戯室上部

老人ホーム

緩やかな曲線の建物外形が 体育館内部にも続き、人溜りをつくる

目黒区立東山公園

ハウスの間を駆け抜け鬼ごっこ

調理室はカウンターが内外を繋ぐ 料理の試食をしたいと外の学生から声がかかる

研修室の窓に腰掛けた二人組は こっそり講義を聞くのが趣味のおじいさん達

採光装置を兼ねた階段室

上部がネットになり 子供が遊ぶ

部屋は採光装置を兼ねる

ハウスによって 上下階がつながる

でこぼこしたテラスを 子供たちが走り回る

幼稚園の 2階は天井を低くし こどもサイズのハウスに 切妻屋根の 親しみやすい外観

1階ホール 天窓から光が注ぐ

1. 日向で読書する人

2.影遊びをする子

3.空を眺める園児

老人ホームから保育園を見る

1.児童館の子供達が2階で遊ぶ 2.園庭で遊ぶ子供たち

3.老人ホームの利用者が園庭へお散歩する

触彩の長屋

大学課題:長屋の提案

敷地:東京都世田谷区

用途:長屋

世田谷区の敷地内にある 住宅を長屋への建て替え計画 。 現敷地には古谷誠章 +NASCA設計であり 古谷氏の自邸ZIG HOUSE / ZAGHOUSE が建っ ている。この場所に5組の住民が住む長屋を設計する。住民の構成は自由であり、各自が 設定するものとする。

緑豊かな敷地に 長屋 を設計する課題です。

長屋とは集合住宅の形式で「2 以上の住戸を有する建築物で、隣接する住戸が開口部のない 壁又は床を共有し、廊下・階段等の共用部分を有しないもの」を指し、 壁や床を仕切りと して共有しながらも各住戸への動線は決して交わりません 。しかし敷地には都会には珍し いほど 緑が生茂り 、そのような 贅沢な場所を庭として共有・開放できたらいい と思いました。

そこで、住戸間で交わらない動線と住空間のプライバシーの確保 / 交流の共存のために各 住戸の1階に「 通り土間 」という内外の接点をつくり、 開かれたプライベート としました。 通り土間は各住戸専用の空間ですが、住民の意思で開放することができます。建物は既存 樹木に合わせて 緩やかに雁行 することで、各住戸の プライバシーを確保しながら緑を享受 します。

長屋の住民はクリエイターと設定しました。 住民たちは通り土間で作品や趣味を発信 し、 他の住民や 地域の人達はそれを見に通り土間を行き来しながら南北の庭を巡り ます。

住戸内に開かれた私空間を設ける ことでより 豊かな暮らしを営む長屋の形を提案 しました。

敷地について

キャロットタワー

茶沢通り

三角地帯

三軒茶屋駅

首都高速3号渋谷線

池尻大橋駅

敷地は三軒茶屋駅から徒歩20分 の場所です。住宅街の中でもとり わけ 緑の多い敷地 には、NASCA が設計した ZIG HOUSE/ZAG HOUSE が建っています。

目黒天空庭園

目黒川

敷地

区立

東山公園

老人ホーム

区立

東山公園

雑多な三軒茶屋の街に突如あらわ れる 緑の生い茂る敷地はとても印 象的 でした。

区立東山小学校

敷地の木々は3代の間で伐採せず にほとんど全部残し、その合間を 縫うように建築が計画されたそう です。この 緑を残しつつ、地域に も庭として共有・開放したい と思 いました。

ZIG HOUSE/ZAG HOUSE で 感じた計画のポイント

① 木々に合わせた建物配置 が樹木 を尊重している

② 南北の庭を繋ぐ 平面計画により 敷地全体が一体 となる これらを踏まえて設計しました。

緑を繋ぐ

平面計画

1.敷地に長屋のボリュームを置く

断面計画

1.動空間の仕上げを土間とし、 土足で行き来できるようにする

2.既存樹木に合わせてずらす

3.庭を視覚的に繋げるため、 筒状として抜けをつくる

4.生活空間と庭の行き来の両立ため、 動空間/静空間に分ける 空間を緩やかに繋げるため、 ボリュームをずらす

2. 木のボリュームに合わせ高さを設定する

3.スキップフロア上にスラブを配置する 高さの違いで部屋間の移動は木登りを するようにめくるめく景色が変わる

土間からLDKを見る 通り抜けがコミュニケーションを促す

LDK から土間を見る 生活と発信の場が共存する

B-B´断面図 S:1/150
研究室活動

杉浦研究室では、建築の立場から人と環境・場所の 関係をテーマに研究や設計活動、フィールドワーク を行っています。

「スクラップ&ビルド」の時代から既存ストックを見 直す時代への変遷の中で、 既存空間の質を再発見し、 顕在化させ、新たな場を作り出す活動 をしています。

「既存空間の意味を見出し、人を含む空間全体を関係 づけていくような環境をつくること」を < サイト・ リノベーション >と定義し、各地で交流空間を作っ てきました。

在籍中には 南京玉すだれの構造を用いた空間設計 を 行いました。

大島・サイトリノベーション

愛媛県 今治市大島 は しまなみ海道上に位置する島 で、 かつて「日本最大の海賊」と称えられた村上海賊ゆ かりの地です。

特産品の大島石 は硬く・変色しにく い青みを帯びており、墓石にするとその凛とした姿 から「石の貴婦人」とも言われています。

そのような場所に於いてサイトリノベーションとし て、展望公園内に交流空間を設計するプロジェクト を行いました。

竹のアーチ実験 /東京

南京玉すだれを観察しながら、 紙管 を用いて1/1サ イズでも成立するよう実験を重ねていきました。 竹 の長さや接合部の紐の種類や結び方の検討 を行いま した。

交流空間のイメージ模型

2017年

site:愛媛県今治市大島宮窪地区 石文化公園施設

南京玉すだれとは 棒材による伸縮構造 の一つで、小 径材を角度を少しずつずらしながら 枝垂れ状 に伸ば します。このシステムを 竹架構に応用 することで空 間を穏やかに分節し、バンブーシェルによって空間 を構成します。

竹のアーチ実験 /大島

大島の竹林で竹の選定 から行いました。

直径5~6cmの竹を必要な長さにカットし、端部か ら数10cmのところに穴を開け、紐を通します。

加工した竹を南京玉すだれと同じ形状になるように 並べて結び、捻じれないようにしながら伸ばします。

切り出された大島石

竹を紐で結ぶ

最大に伸ばした状態で一直線になった竹を立ちあげ ると、 遊びをもたせた結び目によりアーチ形状 を成 します。 大島石 を アーチの両端に留めとして使用 す ることで、 大島産の材料 で出来た 約11mのアーチ を自立させる ことに成功しました。

文化祭にて今治市大島での活動の学内展示として 1/1の< 竹の弧 >の バンブーシェル を設計・制作し ました。 真竹 による 14本の異なるサイズのアーチ (最 大9mスパン・高さ4m弱)を大島石の代用として

2017年

site:昭和女子大学 昭ルーム

コンクリートブロックに設置 し、 シェル状の空間 を 立ち上がらせました。また、大島石の端材を活用し た小物を作成、大島の形状をした什器に展示し、販 売も行いました。

弧を描き並べることで枝垂れの美しさが際立つ

大地の芸術祭 には研究室として2003年より6回目 の参加です。初参加時から引き続き南部地区振興協 会の方々と協働で制作を行いました。

山の尾根にある公園<ライオンズの森>に、 南京玉

すだれの手法 で 地域の白竹 を使い、 柳型のアーチを 円環に連続させたパビリオンを制作 しました。

2018年

site:新潟県十日町市

パビリオンは 直径7mと5mのものを計7つ設置 し、 広大な公園に大量の竹による空間を<森ノウチ>とし て建築しました。

1ヶ月を超える会期の中で、 経年劣化する竹・接合部 に使用した紐が緩まる変化 により その時々で表情を変 える景観 が立ち現れました。

白竹を使用したバンブーシェル アーチと柱に分け、柱の端部を土に埋めて自立させた

描きながら考えたこと

社会人になってから絵を習い始めました。

ある日のモチーフは鳥の剥製でした。見た 瞬間、その可愛いらしさに「この愛くるし い姿、綺麗な色が伝えられたら」と思いま した。そうして気づいたのです。いい絵を 描くのに必要なことは 目の前のモチーフに 感動して伝えようとする ことだと。

言い換えれば 何でもない目の前の世界を能 動的に美しく見ようとする姿勢 でした。

では建築に置き換えると? 建築にとってのモチーフは敷地や取り巻く 環境であったり、不自由にさえ感じられる 法規、施主の要望、潤沢とは言えない資金 だったりします。

建築にとってある種の制限 のように感じて いたものを、 設計のスパイスとして肯定的 に捉え ながら設計ができたら。

そんなことを考えながら描いています。

南瓜の奥に手がつけられなかったけれど、奥が薄いこ とで遠近感が生まれた。空間とは光があるから生まれ るのだと実感した。

紙風船の吹き口の銀の輝く様子を表現するために、ポ イントで濃い黒を入れた。光や色は相対的に認識され るものだ。

鉛筆で黒を重ねるだけでなく、消しゴムで色を抜くこ とも描くことだと発見した。消すことも含めて作業を 重ねることが密度に繋がる。

短時間で伝わる表現を目指して、各モチーフの手間の エッジを強調してみたら、鼻につく表現になった。わ かりやすさを求めすぎることは誠実さにかけるよう。

紙の曲面について<ダイナミックな光と陰のやりとり を観察して>とコーチが言った。陰影に大小があるの か。現象に対する感度をもっと鍛えなければ。

皺が描きたくてメインのアイロンをずらしてみた。< 物語が始まりそうですね>と声を掛けられた。ずれは 画面の外へ想像力を広げるのかも。

持っている水彩絵具だけで目の前の多彩な世界を表現 するように努めること。世界を色で因数分解している ようだ。

Turn static files into dynamic content formats.

Create a flipbook
Issuu converts static files into: digital portfolios, online yearbooks, online catalogs, digital photo albums and more. Sign up and create your flipbook.