PEOPLE
DEMYSTIFYING PLANET BIRTHS FROM DEEP EARTH Credit: Johan Swanepoel | 123rf
地球の底から、惑星誕生の謎に迫る 地球の中心部の物質を研究しながら、共に研究をしている仲間が働きやすい環境を作 るのが五味斎特任助教の日常だ。所属先の東京工業大学・地球生命研究所(ELSI)で地 球科学者として行う研究活動と、 ラボマネージャーの役目について、お話しを伺った。
Q:地球科学とはどんな学問ですか?そ の中で、先生はどんな研究を行ってい ますか? 地球科学というのは、文字通り 「地球」 を 研究対象にする学問ですが、実際には地 球以外の惑星や恒星である太陽、衛星で ある月なども研究対象に入ります。私の 所属する地球生命研究所では、 「地球と 生命の起源に迫る」 という大きなテーマ を掲げて研究を行っているため、 その研 究対象は生物にも及んでいます。
の密度、音波の伝わる速さ、電気や熱の 伝わりやすさなど、いわゆる物理的性質 が我々の住んでいる地球表層のものと大 きく変わります。 高温高圧状態での物理的性質を知るた めに、実験室で高圧実験を行って実際に その状態を再現したり、計算機内で数値 的に再現する数値シミュレーションなど を行っています。 私たちの研究は、 マントルと呼ばれる地 球核の外側層の物質の対流がどのように 起こっているのか、地球の磁場がどのよう に作られているのか、 などを明らかにする ための基礎知識となります。最終的には 「 地球がどのようにしてできたのか?」 「地 球という惑星がどの程度特別な存在な のか?」 「似たような惑星はたくさんあるの か?「 」生命はどのように誕生したのか?」 な どといった問題を解き明かしていきます。
Q:これまでに、 どんな発見がありまし たか? 私は、地球の中心部にある金属核の熱伝 導度を求める研究をやってきました。熱 伝導度というのは、熱の伝わりやすさを 示します。重要な結論として、金属核の 熱伝導度は、私の研究以前の見積もりよ り、 はるかに高いであろうことが分かりま した。熱伝導度が思っていたよりも高いと いう事は、 中心核が思っていたよりも速い ペースで冷えていたことを意味します。地 球ができたのは46億年前であることが 分かっているので、冷えているペースから 逆算していけば、地球ができたばかりの 中心核がどの程度の温度だったのか知る ことができます。 高温・高圧条件にある物質の熱や電気の 伝わりやすさ、いわゆる輸送特性を精密 に求めることはとても難しいのですが、今 Credit: Hitoshi Gomi
Credit: Hitoshi Gomi
ASIA RE SEA RC H N EWS
広大な専門領域の中で私が着手してい るのは、地球や地球に似ている水星や火 星、金星などの太陽系の惑星と、太陽系 外のスーパーアースと呼ばれる地球型惑 星の深部の物質の研究です。惑星の深 部は、非常に高い圧力と高い温度の状態 にあり、例えば地球の中心部分は約360 万気圧・6000℃に達していると考えられ ています。 こうした過酷な条件では、物質
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手のひらサイズにも関わらず、地球の中心部で発生する365万気圧を超え る高圧力を発生させることが可能なダイヤモンドアンビルセル装置。 ダイ ヤモンド製の堅い物質が内部に入っている。
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Further 五味斎 | hitoshi.gomi@elsi.jp information 東京工業大学 地球生命研究所(ELSI) 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)