Yuya Nishigaki Portfolio
目次
既存の椅子の変形における「かわいい」椅子の生成 椅子の部分を変形させる手順
2 4
Model : Thonet Chair No.14 実寸模型製作
かわいらしさへ向かう往復書簡―家にある花瓶を始まりとして―
12
18
1
既存の椅子の変形における 「かわいい」椅子の生成 2
「かわいい」 の意味は 「グロかわいい」 「ゆめかわいい」 など多様化している。 かわいいの意味は個人ごとに違
3DCAD で変形させる。 その椅子のパーツの形と大きさ
を変えたものを 500 脚生成した。 その中から 27 脚を
う。 また発している本人は何がかわいいか分からないま
1/8 模型に、最もかわいいであろう椅子を実寸大で 1
ま、反射的に「かわいい」 と発している傾向がある。 そこ
つ制作した。 この生成プロセスから、自分なりの 「かわい
で 「かわいい」 とは何かをテーマに、椅子における 「かわ
い」を導き出していくと同時に普遍的な椅子を微細な
いい」形を研究した。手順として、変形することでかわい
調整で 「かわいい」形を見つけ出すことができるのか、と
らしさに影響が見られるパーツを選択し、既存の椅子を
いった鑑賞者にも問いかけた制作である。
3
椅子の部分を変形させる手順 (Model : Thonet Chair No.14/Michael Thonet) Thonet Chair は「足の長さ」 「足の太さ(背もたれの
それぞれ 1 番かわいい椅子を選択する。 その 27 脚
直径含む)」 「座面の大きさ」 「座面の厚み」の 4 つを軸
の椅子を更に「座枠のエッジ」 「座枠の幅」の 2 か所
として変形させた。 その条件の中から 2 〜 4 つを組み
を変形させ、再度検討を行う。 そこから最もかわいい
合わせて表 1 のように 16 脚生成する。 その条件を変え
椅子を選択する。
ながら 27 回検討し、 それぞれの組み合わせから
座面の厚みと大きさを変えた Thonet Chair No.14(表 1) Thonet Chair No.14 の変形箇所(表 2-23 番) 前提条件:足の長さ 1/2
足の太さ オフセット +30mm
座面の厚さ
座面の大きさ
▲16 脚の中で一番カワイイ
4
表2
Thonet Chair No.14 の変形させる箇所
変形させる箇所 椅子の足 の長さ
座面の 厚さ
椅子の足 の太さ
座面の 大きさ
既に変形させた箇所 椅子の足の長さ 3/4
1/2
1/4
座面の厚さ ×2
×3
×4
16 脚のなかで
椅子の足の太さ ( オフセット (mm))
座面の大きさ ( オフセット (mm))
+10
+75
+30
+50
+150
かわいい椅子
+225
1
足の長さ 1/2
座面の厚さ ×3
2
足の長さ 3/4
足の太さ +10
3
足の長さ 1/2
座面の大きさ +75
4
座面の厚さ ×3
座面の大きさ +75
5
座面の厚さ ×3
足の太さ +30
6
座面の大きさ +75
7
足の長さ 3/4 座面の厚さ ×4 座面の大きさ +150
8
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×3 座面の大きさ +75
9
足の長さ 1/4 座面の厚さ ×4 座面の大きさ +75
10
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×2 足の太さ +10
11
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×3 足の太さ +10
12
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×3 足の太さ +10
13
足の太さ +10 座面の厚さ ×2 座面の大きさ +75
14
足の太さ +30 座面の厚さ ×3 座面の大きさ +75
15
足の太さ +50 座面の厚さ ×4 座面の大きさ +75
16
足の長さ 3/4 足の太さ +50 座面の大きさ +75
17
足の長さ 1/2 足の太さ +50 座面の大きさ +150
18
足の長さ 3/4 足の太さ +10 座面の大きさ +225
19
足の長さ 3/4 座面の厚さ ×2 足の太さ +10 座面の大きさ +75
20
足の長さ 3/4 座面の厚さ ×2 足の太さ +30 座面の大きさ +150
21
足の長さ 3/4 座面の厚さ ×3 足の太さ +50 座面の大きさ +75
22
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×3 足の太さ +10
23
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×4 足の太さ +30 座面の大きさ +150
24
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×3 足の太さ +50 座面の大きさ +150
25
足の長さ 1/4 座面の厚さ ×2 足の太さ +50 座面の大きさ +75
26
足の長さ 1/4 座面の厚さ ×3 足の太さ +30 座面の大きさ +75
27
足の長さ 1/4 座面の厚さ ×2 足の太さ +50 座面の大きさ +75
足の太さ +30
5
椅子の微細な部分の変形(表3) (Model : Thonet Chair No.14/Michael Thonet) 座枠の丸み R(mm) 座枠の幅 b(mm)
1
足の長さ 1/2
座面の厚さ ×3
2
足の長さ 3/4
足の太さ +10
3
足の長さ 1/2
座面の大きさ +75
4
座面の厚さ ×3
座面の大きさ +75
5
座面の厚さ ×3
足の太さ +30
6
座面の大きさ +75
7
足の長さ 3/4 座面の厚さ ×4 座面の大きさ +150
8
足の長さ 1/2 座面の厚さ ×3 座面の大きさ +75
9
足の長さ 1/4 座面の厚さ ×4 座面の大きさ +75
足の太さ +30
10 足の太さ +10
足の長さ 1/2
座面の厚さ ×2
11 足の太さ +10
足の長さ 1/2
座面の厚さ ×3
12 足の太さ +10
足の長さ 1/2
座面の厚さ ×3
足の太さ +10
座面の厚さ ×2
足の太さ +30
座面の厚さ ×3
13 座面の大きさ +75
14 座面の大きさ +75
6
R=20 b=+75
R=40 b=+75
R=40 b=+150
R=60 b=+150
R=60 b=+225
R=80 b=+225
座枠の丸み R(mm) 座枠の幅 b(mm)
R=20 b=+75
R=40 b=+75
R=40 b=+150
R=60 b=+150
R=60 b=+225
R=80 b=+225
15 足の太さ +50 座面の厚さ ×4 座面の大きさ +75
3/4 足の太さ +50 16 足の長さ 座面の大きさ +75
1/2 足の太さ +50 17 足の長さ 座面の大きさ +150
3/4 足の太さ +10 18 足の長さ 座面の大きさ +225
3/4 座面の厚さ ×2 19 足の長さ 足の太さ +10 座面の大きさ +75
3/4 座面の厚さ ×2 20 足の長さ 足の太さ +30 座面の大きさ +150
3/4 座面の厚さ ×3 21 足の長さ 足の太さ +50 座面の大きさ +75
1/2 座面の厚さ ×3 22 足の長さ 足の太さ +10
足の長さ 1/2
座面の厚さ ×4
足の長さ 1/2
座面の厚さ ×3
足の長さ 1/4
座面の厚さ ×2
23 足の太さ +30 座面の大きさ +150
24 足の太さ +50 座面の大きさ +150
25 足の太さ +50 座面の大きさ +75 ▲全部の中で一番カワイイ 足の長さ 1/4 座面の厚さ ×3 26 足の太さ +30 座面の大きさ +75
足の長さ 1/4
座面の厚さ ×2
27 足の太さ +50 座面の大きさ +75
7
Thonet Chair No.14/Michael Thonet
8
かわいい変形後 足の長さ 1/4
座面の厚さ ×2
足の太さ +50(mm) 座面の大きさ +75(mm) 座枠の丸み 60(mm) 座枠の幅 +150(mm)
9
Standard Chair/Jean Prouve
10
かわいい変形後 足の長さ 1/4
座面の厚さ ×4
足の太さ +30(mm)
座面の大きさ +150(mm)
エッジの丸み 10mm
背もたれの厚さ ×3
11
かわいい Thonet Chair 実寸模型制作 かわいい Thonet Chair の実寸模型は経済的理由か
合わせて切断し、さらに制作時にカットしやすい形
ら断熱材のスタイロフォームと 3D プリンターで出力し
に分解した。スタイロフォームで再現性が難しい薄
た ABS 樹脂で制作した。制作方法は 3DCAD でモデ
いパーツは ABS で補い、CG と実作との誤差が小
リングした椅子を厚みが 20mm のスタイロフォームに
さくなるように作られた。
20mm スパンで切断した 3DCAD 上の椅子(表) (白:スタイロフォーム 赤:ABS)
12
20mm スパンで切断した 3DCAD 上の椅子(裏) (白:スタイロフォーム 赤:ABS)
13
背もたれの部分断面図 (1/2) 兼スタイロカット用台紙
研磨前の背もたれ部分(青:スタイロフォーム 白:ABS)
14
ジェスモナイト塗装前のかわいい Thonet Chair
15
当時の展示風景
2020 年度京都市立芸術大学作品展 ̲ 京セラ美術館にて
16
かわいい Thonet Chair (1/8 模型 ̲27 脚)
かわいい Thonet Chair (原寸模型)
17
かわいらしさへ向かう往復書簡 ―家にある花瓶を始まりとして― 企画:西垣佑哉 18
制作:西垣佑哉&伊藤健太
大学院在学中から始めたかわいい研究の第二弾であ
お互いの制作物に対して上書きし続けながら、かわい
る当作品は、作家自身の「かわいい」感性とは何かを模
いとは何か、その価値や魅力は何なのかを考え続け、 自
索する実験的作品である。普遍的な形をしている無印
分自身の「かわいい」のイメージを更新する実験的試行
良品の花瓶をスタートとし、制作者の 1 人が 「かわいい」
である。 それと同時にかわいらしさとは何か、お互いに問
という言葉を頼りにイラストで可愛くする。 もう 1 人がそ
い続けた思索的な作品でもある。
のイラストをもとに 3D モデリングでさらに可愛くする。 そ の行為を往復書簡のように繰り返す。
19
西垣と伊藤の往復やり取りログ(220420 〜 230716)
Original
START
220420̲ny1
20
(ik= 伊藤健太作
ny= 西垣佑哉作 )
220420̲ik1
(ik= 伊藤健太作
ny= 西垣佑哉作 )
220503̲ik2-1
220506̲ik2-2
▶ページ 22 へ
▶ページ 28 へ
21
220503̲ik2-1
220520̲ik3-1
22
220520̲ik3-2
220508̲ny2-1
220508̲ny2-2
220605̲ny3-1
220506̲ny3-2
23
220506̲ny3-2
220812̲ny4-1
24
220812̲ny4-2
220702̲ik4-1
220702̲ik4-2
230225̲ik5-1
230225̲ik5-2
25
230225̲ik5-1
230612̲ik6-1
26
230612̲ik6-2
230430̲ny5-1
230430̲ny5-2
230711̲ny6-1
230711̲ny6-2
STOP
27
220506̲ik2-2
220528̲ik3-3
28
220528̲ik3-4
230513̲ny2-3
230513̲ny2-4
230620̲ny3-3
230620̲ny3-4
29
230620̲ny3-3
220828̲ny4-3
30
220828̲ny4-4
230803̲ik4-3
230803̲ik4-4
230919̲ik5-3
230919̲ik5-4
31
230919̲ik5-3
230716̲ik6-3
32
STOP
230716̲ik6-4
221003̲ny5-3
221003̲ny5-4
33
34
35