Art Project Management Workshop - Japan

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アートプロジェクト・マネジメントの方法 ワークショップ・ハンドブック


アートプロジェクト・マネジメントの方法 ワークショップ・ハンドブック

近年、地域で生み出されるアートプロジェクトが脚光を浴びています。 各地で展開されているさまざまなアートプロジェクトを通じて、 人々の創造性が喚起され、多様な価値が育まれ、地域の気づかれざる魅力に 光があたりはじめました。 美術館や劇場といった既存のアートの場を飛び出し、社会にアートを開こうとする アートプロジェクトが、地域の課題を市民自らが解決するという住民自治の 理念とつながるのは、時代の要請とも言えるのではないでしょうか。 アートプロジェクトへの期待が高まる一方、現代社会の中で アートの可能性をいかにとらえ、その可能性を社会のいかなる領域に、 いかに拓いていこうとしているのか、 「何をするか」とともに 「なぜアートでなければならないのか?」という疑問に応える能力がいま アートプロデューサーに求められています。 アートプロジェクトを実施するにあたって、住民のみならず自治体や地元企業等に対して 説得力をもって「伝え」、理解者を得るために、どのような取組みが必要でしょうか。 当ハンドブックは、2009年9月11日∼13日に淡路島中部の兵庫県洲本市で開催した AAF学校・淡路島校「英国に学ぶ、アートプロジェクト・マネジメントの方法」と 2010年2月15日に東京墨田区アサヒ・アートスクエアで開催した AAF特別企画「アートプロジェクト・マネジメント」ワークショップをもとに アートプロジェクトを実施するうえで必要となる マネジメント手法の一例を紹介するものです。 両ワークショップでは、英国で30年来培われたきた経験を通して、 地域社会で市民主体のアートプロジェクトを成立させるための手法を学びました。 このハンドブックがみなさまのアートプロジェクト・マネジメントの一助となり、 新しい地域独自の手法が開発されることを願っています。


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アートプロジェクト

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アートプロジェクトってなに?

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地域やコミュニティの活性化を目的とした アートプロジェクトの成功要因

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アートプロジェクトをプランするには?

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アートプロジェクトの評価手法

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エバリュエーションってなに?

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Report : AAF学校2009 淡路島校

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ロジック・モデル

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ロジック・モデルをつくってみよう!

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エバリュエーションは、計画段階から埋め込もう!

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アートバスのロジック・モデルをつくってみよう!

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エバリュエーションのポイント

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Report : AAF特別企画ワークショップ

アサヒ・アート・フェスティバル 「市民の主体的な参加によるアート・フェスティバル」との趣旨のもと、アサヒビールと全国のアー トNPOや市民グループとが協働して、 2002年にスタート。 毎夏、 ジャンルを越えた多彩なアート・ プロジェクトが展開されている。 「フェスティバル」、つまりお祭りは、究極の市民参加、究極のコ ミュニティ・アート。 みんなでつくり、 みんなで楽しむことで、 コミュニティ創造に寄与している。 「AAF学校」 は、 アサヒ・アート・フェスティバル2009の一環で開催するアートマネジメント講座。 http://asahi-artfes.net BOPコンサルティング[英国] 1997年に設立された、文化に関連したリサーチと戦略を手がけるコンサルティング会社。 政府の政策立案者や、地方自治体、企業、大学などをクライアントに持ち、世界の経済状況や、 再生、雇用、マネージメントや技術、政策など幅広く視野に入れながら、文化や創造性の可能性 を最大限に引き出すための施策を提案している。 主なクライアントは、英国文化・メディア・スポーツ省、アーツカウンシル・イングランド、ロンドン 開発局、ユネスコ、ブリティッシュ・カウンシルなど。 http://www.bop.co.uk ブリティッシュ・カウンシル 英国の公的な国際文化交流機関。1934年に英国政府により設立され、世界100カ国以上で活動 を展開している。日本では、英語コースの開講や英国留学情報を提供するとともに、芸術、科学、 環境、教育、社会起業家などの分野で、日本と英国を結ぶ架け橋となることを目指している。 http://www.britishcouncil.or.jp


アートプロジェクト

アートプロジェクトってなに? アートプロジェクトの数だけその定義があるといっても過言ではありません。 では、 〈プロジェクト/project〉は、一般的にどんなニュアンスで使われているでしょうか。 プロジェクトとは、 「ある事柄や事象を転化させ、それによってある成果を達成するもの。そこには 期間があり、はじまりと終わりがある。達成したい目的があり、実行する予算と関わる人々がいるこ と。」と、ある程度共通した理解を持っていると思います。 つまり、❶達成したい目的、❷期間、❸予算、❹場所、❺関係する人々(ステークホルダー)がいるこ と、これがプロジェクトの要素といえるでしょう。そして、ある達成したい目的のために、なにかしら の事象に❻変化をもたらし、効果(成果)を得るものといえます。 さらに、通常〈プロジェクト〉と呼ぶときには、その目的達成に向けた❼過程(プロセス)が非常に大 切な意味をもっていると考えられます。なにかに変化を与えて成果を得て、目的を達成しようとす る大きな一連の流れを含めて〈プロジェクト〉と呼ぶことが多いのは、そのプロセスになにか重要 な意味を見いだしているからではないでしょうか。

プロジェクトの7つの要素

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成功したアートプロジェクトの共通点

地域やコミュニティの活性化を目的とした アートプロジェクトの成功要因 ―革新的でありながら実現可能なものを想定 ーあらかじめ達成したい目的がなにかを

明確にしておく ―十分な意見交換と情報収集をしておく ―プロジェクトを簡潔に説明できるように  しておく ―協働者、参加対象者などにプロジェクト  について意見を聞く

―似たようなプロジェクトについて調べ、  資金獲得方法や評価が高い理由などを

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把握しておく ―資金提供者や協働者に交渉・依頼・打  診するタイミングを把握しておく

―詳細な事業計画と現実的な資金調達の  戦略を用意する ―協力者を募る際には、先方が理解でき  る「言語」で話す ―立地を綿密に検討する

―空き店舗や空家、魅力的であるが使わ  れていない施設などを利用する ―建築家や技術者等専門家と連携する

―どのような人に参加してもらいたいかを

あらかじめ想定しておく ―地域の商店やレストラン、施設等とパー  トナーとなる可能性を検討する


プランニング(事業計画)の流れ

アートプロジェクトをプランするには? プロジェクト・プランニングの流れ

プロジェクトをプランする際には、 左図のような流れをとることが一

① 情報・意見収集(Scoping study) どのようなプロジェクトで、協働者は誰か?

般的です。 実施したいプロジェクトは、どのよ うな内容で、協働者(パートナー) はどのような人・組織か、どのよう

② 実現可能生の検討(Feasibility study) 初期計画・予算案 目的や目標の共有 どうすれば目的やビジョンを実現できるか? どの選択肢であれば実現できるか? どのような結果・成果がもたらされるか?

なコミュニティに向けたプロジェク トで、そのコミュニティや地域はど のような背景や特徴があり、ニー ズはなにか。さらに、プロジェクト に対するメンバーや近しい人の反 応や意見はどのようなものか。 このような、さまざまな【①情報・ 意見収集】が肝心です。

③ 詳細な事業計画

④ 資金調達の戦略

つぎに、そのプロジェクトが実現す

事業・収益予算計画

予算の目標額設定

るためになにが必要か【②実現可

リスク分析 など

助成金・協賛金の獲得

能性】を検討しましょう。 予算規模はどれくらいで、実現ま でにどのようなプロセスを経る

⑤ エバリュエーション・フレームワーク

か、どのようなスキルをもった人 材が必要かといったビジョンを把

握します。プロジェクトを実施した場合の成果はなにか。想定される障害はどのようなことで、その 対処策はあるか。また、ほかの選択肢はあるか。メンバー内でプロジェクトの目的やビジョン、時 間、達成目標などに関して合意しておくことが大切です。 実現可能性が高まったら、 【③詳細な事業計画】と同時に【④資金調達の戦略】を検討し、プロジェ クトを設計(デザイン)します。最終的な設計には、協働者、コミュニティや地域の関係者も参加す る場合があります。ときには、プロジェクトを実施している段階でも計画の見直しが必要になるこ とがあります。プロジェクトは、状況に応じて対応するフレキシビリティも必要です。 プロジェクト・プランニングのプロセス全体に、 【⑤エバリュエーション】が密接に関わってきます。 プロジェクト・プランニングとエバリュエーションの関わりは、次ページで詳しく説明します。

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アートプロジェクトの評価手法 プロジェクト・サイクル|企画の計画・設計∼評価・検証∼フィードバック

E

v a

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a

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n

>>STEP 2

エバリュエーションってなに?

変化をどう把握する? (効果を図る方法) 地域のニーズを把握し、 コンセプトを形成する

needs >>STEP 1

さまざまな社会的課題 地域やコミュニティのニーズ

いま、どんな変化が 必要なの? (目的とする効果)

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feedback

Project plannin and Evaluat cycle

>>STEP 5 どのくらい効果があり なにが達成できた?

Summative evaluations

プロジェクトが達成された後に、 その《インパクト》を調査し フィードバックを提供する プロジェクトの7つの要素

(エバリュエーション)


出展:BOPコンサルティング

>>STEP 3 どうやって実行する? (プランニング) 《インプット》 どの資源を活用する? 《アウトプット》

t ng

なにを実施する? 《プロセス》 どんな手法を用いる? Process evaluations

プロジェクトを改善し

tion

process

>>STEP 4

より良いものにするとともに メンバーや協働者と プロジェクトの目的や ビジョンを共有する

プロジェクト実行

エバリュエーションとは、プロジェクトについての【有効なフィードバックを提供する】ための情報 を集め検証する手法です。 プロジェクトは、アートプロデューサーだけで実施できません。エバリュエーションを通してすべ ての関係者が、プロジェクトの全体像や進捗状況を把握することができるうえ、プロジェクト実 施にむけて今後どのように進めていくか判断するのに必要な方向性を示すことができます。 一般的には、つぎの点に焦点をあてます。 ❶ プロジェクト達成までのプロセス / ❷ プロジェクトのインパクト(目的を達成したか?) そのためにも、 『 どうなればプロジェクトは成功したと言えるのか?』をあらかじめ検討し、メン バーや協働者と共有しておく必要があります。 そして、当初想定していた初年度の目標や目的の達成度と比較して、それらを達成するためにさ らにどのようなインプットやアウトプットが必要かを検討することにより、プロジェクトの成長と 発展を目指します。 エバリュエーションには、プランニング(事業計画)の段階でプロジェクトを改善する【形成的エ バリュエーション】と、次回のプロジェクトにフィードバックするため、プロジェクト終了後に達成 された効果やインパクトなどを検証する【総括的エバリュエーション】があります。

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2009. 9.11(金)- 13(日) 〈 全3日〉 淡路島校・夏期合宿

「英国に学ぶ、 アートプロジェクト・マネジメントの方法」 講師

アレックス・ホンフレー〔BOPコンサルティング〕 湯浅真奈美〔ブリティッシュ・カウンシル〕

主催

アサヒ・アート・フェスティバル実行委員会

共催

NPO法人 アートNPOリンク NPO法人 淡路島アートセンター

ブリティッシュ・カウンシル 助成

財団法人アサヒビール芸術文化財団 兵庫県淡路県民局 平成21年度 「観光立島淡路」 推進活動応援事業 洲本市 都市・農山漁村交流促進事業

特別協賛

アサヒビール株式会社


アートプロデューサーは、施設の運営、団体の継続、企画の実現どれをとっても、 「 何をする か」とともに、社会からの「なぜ、アートでなければならないのか?」という疑問に応える能力 が求められています。既存のアートの場を飛び出し、社会にアートを開こうとする活動が集う アサヒ・アート・フェスティバルだからこそ、 「何を」とともに「なぜ」について応えられるアート プロデューサーの必要性を感じています。 この学校は、そうした思いから生まれました。 AAF学校・淡路島校は、NPO法人淡路島アートセンターとアサヒ・アート・フェスティバル実 行委員会によるアートマネジメント講座です。淡路島校では、地域で繰り広げられるアートプ ロジェクトを実践する際に必要となる、プランニングやリサーチ、検証の方法など、プロジェク ト・マネジメントの手法を学び、自治体や企業、市民に説得力をもって<伝える>ためのスキル を磨くことを目指しました。 英国では、30年前から地域やコミュニティの活性化を目的としたアートプロジェクトが試みら れています。そして、その成果は蓄積され、文化政策に反映されるようになっています。 AAF学校・淡路島校では、 ブリティッシュ・カウンシル共催のもと、 英国からBOPコンサルティ ングのアレックス・ホンフレー氏を講師にお招きし、各地でアートプロジェクトを実践する方々 を対象にワークショップを開催しました。


ロジック・モデル

ロジック・モデルをつくってみよう! エバリュエーションには、 さまざまな手法があります。 プロジェクトの達成度とその効果を理解するロジック・モデルを使ってみましょう。 最もシンプルなロジック・モデルは、つぎの5段階です。 ❷プロセス

❸アウトプット ❹アウトカム

❺インパクト

Inputs

Process

Outputs

Outcomes

Impacts

投 入

過 程

実内 施容

成 果

波効 及果

プロジェクト実施前

プロジェクト実施後

>>STEP 1, 2, 3

>>STEP 4, 5

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Feedback

needs

❶インプット

❶インプットと❷プロセスは、プロジェクト実施前のプランニング段階で必要な工程を明らかにし、 ❹アウトカムと❺インパクトは、プロジェクト実施後の目標達成や目的共有の指標になります。 ❶インプット

プロジェクト実施に必要な要素

Inputs

例|〈資金・予算規模〉 〈人材・必要なスキルや専門技能〉 〈費やす時間〉など

❷プロセス

プロジェクトの実施過程

Process

例|〈市バスの製造業者とアーティストがコラボレーションする〉など

❸アウトプット

実施するプロジェクトのアクティビティとその結果生み出されるもの

Outputs

例|〈アーティストにペインティングされた路線バス5台〉など

❹アウトカム

プロジェクトを実施したことで想定される成果 例|〈路線バスの利用客が増えた〉 〈路線バスに乗るのが楽しくなった〉

Outcomes

〈売上高に変化が見られた〉など

❺インパクト

プロジェクトが地域社会にもたらす波及効果 例|〈環境問題や交通弱者の問題への理解が促進された〉    〈高齢者と子どものコミュニケーションが生まれた〉

Impacts

〈バス会社への関心が高まり、廃線が回避された〉など


エバリュエーションは、計画段階から埋め込もう! 実際にエバリュエーションのための指標/有効なフィードバックを提供する情報を考えてみましょう。 5段階のロジック・モデルを引き続き使い、どのような指標が考えられるかを検討します。 アートプロジェクトを実施する前の計画段階で、このロジック・モデルに従ってそれぞれの目標点 を想定しておきます。プロジェクトを実施するにあたってとくに大切なのが、いまやろうとしている アートプロジェクトの最終的な目的を設定し、その目的とその目的に向かうプロセスをメンバーや 協働者と共有・合意しておくことです。地域やコミュニティを対象とするアートプロジェクトの多く は、ひとりのアートプロデューサーの力だけでは実施できません。プロジェクトを実施するメンバー や協働者(パートナー)と、プロジェクトの過程や目的を一緒に協議・検討することで、 「いまなにを しようとしているか」について合意を形成していくことができます。 この5段階のロジック・モデルにあるように、プロジェクトを実施するにあたって、どのような資源 が必要で〈❶インプット〉、どのような過程を経てプロジェクトを構成するか〈❷プロセス〉、プロジェ クトはどのような内容で実施され〈❸アウトプット〉、そのプロジェクトは地域やコミュニティにどの ような変化や効果を与えるか〈❹アウトカム〉。そして、最終的にプロジェクトを実施したことによっ て、地域社会にどのような影響を及ぼすことになるか〈❺インパクト〉を綿密に検討することにより、 そのプロジェクトの目的をメンバーや協働者と諮り、合意することができるのです。さらに、そのな かで得た有効な情報をフィードバックし、ブラッシュアップすることで、プロジェクトの精度を高め ることができます。 【プロセス・エバリュエーション】 さらに、このロジック・モデルを通して協議・検討してきたことをもとにすれば、他の協働者や資金 提供者、賛同者を得るための効果的なプレゼンテーションツールを作成することもできるでしょう。 複数年継続するプロジェクトの場合は、何年間で地域やコミュニティにどのような効果や変化〈❹ アウトカム〉を期待するか、そして、いつどのような影響〈❺インパクト〉を地域社会にもたらしたい かについても協議・検討しておきます。 これは、毎年度プロジェクト終了時の目標達成度の指標ともなります。 「今年度のプロジェクトではここまで達成したいと考えていたが、実際はここまでしかできなかった /ここまで達成できた」ということが把握できるようになり、5段階のうちどの段階で、どのような 違いが生じたかをひとつひとつ検証することで、次年度以降のプロジェクトのプランに有効な フィードバックを提供する情報を得ることができるでしょう。 【総括的エバリュエーション】 つまり、エバリュエーションを有効なフィードバックを提供する情報にするためには、プランニング の初期段階からプロジェクトに埋め込んでおくことが大切なのです。

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Project アートバスのロジック・モデルをつくってみよう!

Q|ある地域で、 アーティストが路線バスやバス停をつかって 「アートバス・プロジェクト」 をやること になりました。路線バスは、自動車をもっていない人や子ども、高齢者、障害のある方など交通弱者 が普段利用する大切な公共交通機関です。 赤字路線も増えており、 廃線になる路線も出ています。 さて、このプロジェクトでは、どのようなロジック・モデルを組み立てることができるでしょうか?

Inputs

Process

Outputs

Outcomes

Impact

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実際のエバリュエーションの指標づくりは、上図のロジック・モデルよりももっと複雑で詳細になり ますが、このように一つ一つの項目を洗い出し、必要な事柄を追加していきます。 このロジック・モデルを通してプロジェクトを精査し、プロジェクトを設計します。 予算やスタッフ人数、集客数やプロジェクトの内容など、目標を数値化できるものについては、でき る限り具体的な数字や目標値を設定することが大切です。 また、計画後実際に進めていく中で、当初の計画よりも予算が変化したり、スケジュールが変更した り、アーティストが増えたりするなどの事態が生じます。その都度どこを修正したかを把握してお き、大きな変更についてはメンバーや協働者と協議のうえ、より目的が達成できるだろう方向にプ ロジェクトを修正していきましょう。 そしてプロジェクト後の変化が当初の予定通りであるかどうか検証を重ね、次回に反映します。


エバリュエーションのポイント エバリュエーションのおさらい このエバリュエーションの指標づくりを通して ①スタッフ間でプロジェクトの目標や目的を共有することができます。 ②協働者とプロジェクトの内容や方針の合意形成を図ることができます。 ③計画段階から実施後に至るどの時点でも、当初設定した目標や目的の達成度と実際の進捗状  況との相違点や変更点を把握することができます。 ④《有効なフィードバックを提供する情報》を得ることで、プロジェクトの進行途中にあっても適宜  事業の修正や変更に役立てることができます。 ⑤目標の達成度を把握することができるため、次年度以降のプロジェクトにフィードバックするこ  とができ、プロジェクトの連続性がうまれるとともに、さらに発展したプロジェクトへと進化させ  ることができます。 13

エバリュエーションをより効果的にするポイント 左記のロジック・モデルをより充実させるには、つぎのようなポイントがあります。 ●モニタリングや実態調査には、定量的、定性的調査の両方のデータを必要とする場合が多いた  め、社会調査士や調査会社など専門家をパートナーに加える必要があります。  今回の場合は、次のような調査が考えられます。  定量的調査=運賃収入の月額平均値、バスの利用者数の変化や割合等の調査  定性的調査=パートナーやバス利用者らの声や心理変化などに関する調査 ●エバリュエーションには、バス利用客と同様にプロジェクトのパートナー(アーティストやバス会  社、地方自治体など)も対象に考え、それぞれの指標を作成し目標が達成できているかどうかを  検証します。 ●エバリュエーションを実施するには、時間と経費、人手がかかります。そのため、プロジェクトの  予算の中に、エバリュエーションの費用を予め組み込んでおく必要があります。 ●費用対効果の分析を通して、当プロジェクトは目的達成に効果的な方法であるかどうかを協働  者と討議することも大切です。とくにアートプロジェクトは、短期的な結果をもたらさないことも  多く、一律の評価・検証にそぐわない性質のものでもあることを理解してもらう必要もあるかも  しれません。 ●当プロジェクトを実施した場合と実施しなかった場合とで、影響にどのような違いがあるかを検  討してみることも効果的です。 ●エバリュエーションの手法や調査方法もまたプロジェクトに対して適当かを検証してみましょう。


2010. 2.15(月) AAF特別企画

「アートプロジェクト・マネジメント」 ワークショップ 講師

アレックス・ホンフレー〔BOPコンサルティング〕

主催

アサヒ・アート・フェスティバル実行委員会、 ブリティッシュ・カウンシル

助成

財団法人アサヒビール芸術文化財団

特別協賛

アサヒビール株式会社

アサヒ・アート・フェスティバル2009年度ネットワーク会議翌日に、地域での アートプロジェクトの立案から実施、事業後の検証まで、一連のプロジェク トのプロセスを学ぶ、ワークショップをブリティッシュ・カウンシルとの共催 で開催しました。 講師には、文化に関連したリサーチと戦略を手がける英国のコンサルティン グ会社、BOPコンサルティングより、文化を通じた地域再生や場作りの専門 家、アレックス・ホンフレー氏をお招きしました。英国では、アートプロジェク トを行う際に、そのプロジェクトが与えるインパクトを社会的、経済的、その 他幅広い視点から測り、その成果を政策決定者や社会全体に訴求していく ということが戦略的に行われています。英国の様々な事例を参考にしなが ら、地域でアートプロジェクトを展開するために必要な企画の立案、実施、目 的設定、 検証などの一連のプロセスについて共に考える機会となりました。



アートプロジェクト・マネジメントの方法 ワークショップ・ハンドブック 2010年9月発行 ©

発行

ブリティッシュ・カウンシル

出典

BOPコンサルティング「プロジェクト・マネジメント・ワークショップ」教材より

企画・編集

NPO法人アートNPOリンク

デザイン

ANL*Design

協力

アサヒ・アート・フェスティバル実行委員会 NPO法人淡路島アートセンター アサヒビール株式会社

ブリティッシュ・カウンシル 〒162-0825 東京都新宿区神楽坂1-2 TEL 03-3235-8031   FAX 03-3235-8040 http://www.britishcouncil.or.jp



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