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モスクワの地下鉄
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最新の地下鉄駅
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モスクワの地下鉄は、 「街の下に街」がある地下の傑作で、最初の 路線は1935年5月15日に開業しました。毎日約700万人の人間が 出入りするこの拠点を、首都の「循環系」 と呼ぶことができます。放 射状線や環状線構造の12路線は、毎年新たな駅を加えながら、モ スクワの地下の往復をくり返します。
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半世紀以上にわたり、世界でもっ とも美しい地下鉄と呼ばれ、186 駅のうち44駅は文化遺産に数え られています。 この美しさは、地
り、モスクワ・バロック、 スターリン の擬古典主義、ペレストロイカ後 のミニマリズム、現代的なアーバ ン・インテリアなどの最高のお手 本を集めています。 また、特別な神話のような空間 で、 さまざまな街の伝説、前兆、小 話、待ち合わせや別れの場所など をつくりだした、強い印象を残す 場所です。 この街を訪れる人々や 住人は、車両のドア、 自動改札口 の門扉、エスカレーターの音など
下鉄建設者や、モスクワ市政府の デザインのみで達成されたもの ではなく、一説によれば、1934年 に「ソコリニキ」駅から 「パルク・ク リトゥルイ (文化公園)」駅までの 区間に、白石造りのセルプホフ・ クレムリンが移築、使用されたそ うです。 モスクワの地下鉄は、社会主義リ アリズム時代の生きた歴史的建 造物、国の歴史の視覚教材であ
で街の大きな心臓を脈打つモス クワの地下鉄のリズムに、 自分の 生活の時間や移動コースを合わ せています。
地下鉄の旅は休日や平日の 夜9時以降がおもしろいで す。 3
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コースの駅「マヤコフスキー」駅、 「テアトル(劇場) 」駅、 「プロ シャジ・レヴォリュツィイ (革命広場) 」駅、 「アルバート」駅、 「レ ーニン図書館」駅、 「クロポトキン」駅。
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このコースの駅は、地下の歴史的 建造物とともに、モスクワの歴史 的中心地の主な名所に数えても 良いでしょう。1935年から1938年 に開設され、地下鉄の芸術的傑 作と呼ぶことができます。例えば、
「マヤコフスキー」駅は、モスク ワのもっとも価値の高い建築物 のひとつとして、地元の歴史と文 化の記念物に含まれています。
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「マヤコフスキー」駅 ザモスクヴォレーツカヤ (モス クワ河畔)線
「マヤコフスキー」駅は1938年9月に開設されました。大理石の丸 い天井は、幅の広い金属帯板でしっかりと装飾されている。 この効 果的なアバンギャルドなソリューションは、建築的混乱によって生 みだされた、 ケガの光明と言えます。1935年、建築主任S.クラヴェツ は、世界初の縦のアーケード付き深部地下鉄柱状駅の建設を望み ました。 それは、標準的な大きな塔門ではなく、正確な建築用支柱 の建設を意味しました。
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建設された丸い天井は、地質学 的条件により、すぐにヒビだらけ になってしまい、金属構造で固定 することを提案した、建築家アレ クセイ・ドゥシュキンに問題解決 が委ねられました。以来、 ステン レスの刻み付き帯板は、女人像 柱のごとく、大理石「サダフロ」や ウラルのバラ輝石の板で装飾さ れた、美しい円柱を大切に支えて いるのです。照明が円柱が彩る丸 い天井を縁取り、それぞれの丸い 天井には、 アレクサンドル・デイ ネキのモザイクガラスのパネル 絵がはめこまれています。絵は全 部で34枚あり、 それらはまとめて 「 ソ連の空の一日」 と呼ばれていま す。独特なこの駅の建築は、1938 年にニューヨークで開催された 国際見本市で、見事に最優秀賞 を受賞しました。 2005年、 この駅には二つ目の出 入り口が開設されました。芸術家 のI.ルベンニコフが、空の風景を 描き、マヤコフスキーの詩の一部 を引用した、モザイク・パネル絵 で、ロビーを装飾しました。駅の 別の場所にあったA.キバリニコ フ作のマヤコフスキーの胸像も、 ここに移築されました。
戦争時代、駅は防空壕として使 用され、中央ホールは党の集会 場所になっていました。
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「テアトル(劇場)」駅 ザモスクヴォレーツカヤ (モス クワ河畔)線
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大きな塔門の明るい色の大理石 でできた美しい縦溝の半円柱は、 まるで舞台の袖で、その間には重 いカーテンがあるようです。銅板 は円柱の上部を飾り、柱頭の機能 を果たし、ギリシャの円形劇場の 特徴に近くなっています。 中心ホールの丸い天井の下の 段には、民族衣装を着て踊り、楽 器をかなでるソ連の住人を描い た、1メートルほどの白と金箔の マジョリカ焼きの浅浮き彫りがあ ります。 「テアトル(劇場)」駅には独自 のロビーがなく、エントランス ホールを「オホトヌイ・リャド」 駅、 「プロシャジ・レヴォリュツ ィイ (革命広場)」駅と共用して います。
1938年に開業しましたが、現在の名前がつけられたのは1990年で す。当初はV.レーニンをたたえる、ボリシェヴィキ党の指導者の名前 を用いた「スヴェルドロフ広場」駅と呼ばれていました。建築家L.ポ リャコフにとって、 この駅の地上部分にあるボリショイ劇場やマー ルイ劇場がとても重要だったため、名前が劇場駅に変更されること となりました。
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「アルバート」駅 アルバート・ポクロフ線
この駅の地上のロビーは、国防省参謀本部の建物のアトリウムにあ ります (ヴォズドヴィジェンカ通りからの入口) 。 モスクワ・バロックと 呼ばれる驚くべき芸術様式になっており、 ロシアの教会建築の特徴 である、豪華な白い石造りの装飾が、西ヨーロッパのバロックの要 素とひとつになっています。 エスカレーター・ホールの丸い天井は4 つの放射状アーチで支えられ、中心部には、彫刻された金属輪と半 球の笠28個からなる優雅なシャンデリアがあります。
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駅のホールには遮蔽物がないた め、果てしなく続くように見えま す。ロビーと同様に、横の放射状 アーチが並んでいるため、中央 ホールは待合場所というよりも ロストフ・クレムリンの白い宮殿 に似ています。 線路の壁には黒と白の2種類の ほうろう板がはられ、床にはさま ざまな色の花崗岩が敷き詰めら れ、 また、白い塔門には、赤い大 理石、陶製のモノグラム枠や、中 央ホールの丸い天井と同じくら いボリュームのある花束の装飾 が施されています。塔門の暗い 色調の土台と、バロック調に近 い色の銅のシャンデリアと房飾 りがひとつになり、優美さを醸し 出している空間を通って、地下鉄 の乗客はプラットフォームに到 達します。
「アルバート」駅は、 ドミトリ ー・グルホフスキーの世の終 末後についての長編小説「地 下鉄2033」や、2012年の「バイ オハザードV リトリビューショ ン」に登場します。
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「レーニン図書館」駅 ソコリニキ線
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内装は控えめで、丸い天井は格 間で、等間隔に照明器具の装飾 があり、追加的な照明は細い足 のついた丸いランプで補われて います。 壁には黄色い陶板がはられ、大 理石の付け柱は低い丸天井の アーチの支柱を隠し、床には灰 色の花崗岩が敷かれています。 数少ない装飾のひとつとし て、G.I.オプルィシュコ作のレー ニンのモザイク・パネル絵が、 東側のエントランスホールに向 う階段を上ったところの壁にあ ります。 「ボロヴィチ」駅方向の通路 の階段付近の大理石には、3
この駅は、 レーニンの大規模な記念建築物とする予定でしたが、土 壌の条件、道路の往来の多さ、 この地域の建築物の密度などによ り、 そのプロジェクトは実現しませんでした。建築家A.ゴンツケヴィッ チとS.スリンは、深さわずか12メートル、天井上土壌4メートル弱の 浅部地下鉄一丸天井駅を建設する決定を行いました。 とても小さ な駅ですが、重要な拠点となり、 「アルバート」駅、 「アレクサンドル庭 園」駅、 「ボロヴィチ」駅とともに、 モスクワの地下鉄最大のハブとな っています。当初はそのような計画はなかったため、 ホールの中心 とわきの階段が後に建設されました。
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億年前の腹足類の軟体動物 の化石があります。
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「クロポトキン」駅 ソコリニキ線
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建築家A.ドゥシュキンは、エジプト のカルナック神殿の大列柱室の ような駅にしようと考え、その地 下版とも言える作品を設計した ため、1935年から1941年の間に、 ブリュッセルやパリで開催された 国際見本市で優秀賞、 またスター リン建築賞を受賞しました。 壁や2列の10面円柱は、 ウラルの 大理石「コエルガ」 でできていま す。床は当初、 アスファルトでした が、その後に灰色と桃色の花崗岩 が敷かれました。照明器具は円柱 の上部に隠され、花ほころぶハス の形をした柱頭の透明さと軽さ を醸し出しています。 ゴーゴリ並木通りを入ったところ に、建築家S.クラヴェツが設計し たアーチ形の駅の地上ロビーが あり、2つ目のロビーは、改築され た救世主ハリストス大聖堂ととも に1997年に開設されました。大 聖堂とヴォルホンカ通りに向う出 口もあります。
この駅は、当初から大量の利用者に対応できるように設計されて いたため、 ラッシュアワーでも、 この駅の明るいホールには空間 的な余裕があります。 この駅は、大きなソビエト宮殿と一緒に建設 される予定だったため、運動選手や観客が余裕でプラットフォー ムに立てるようになっていたのです。1935年5月までに駅の建設 は完了しましたが、宮殿はその時まだ建設の初期段階にあったた め、結局、建物の金属製の骨組みは、戦時中の鉄条網の材料に使 われてしまいました。
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2010年5月16日の夜中、 「ナイ ト・ミュージアム」 プロジェク トの枠内で、 この駅でクレム リン室内管弦楽団のコンサ ートが行われました。平時に 行われた公式行事としては3 番目、 コンサートとしては2番 目、一般の乗客に解放された ものとしては1番目のイベント となりました。 15
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コースの駅「パルク・クリトゥルイ (文化公園) 」駅、 「オクチャブ リ (10月) 」駅、 「ドブルィニン」駅、 「パヴェレツ」駅、 「タガン」駅、 「クルスク」駅、 「コムソモル」駅、 「プロスペクト・ミーラ (和平 大通り) 」駅、 「ノヴォスロボツカヤ」駅、 「ベラルーシ」駅、 「クラ スナヤ・プレスニャ」駅、 「キエフ」駅 16
環状線は地下鉄5号線です。放射 線状線から乗客を受け入れ、 また モスクワの9駅のうち7駅をつな げ、地図では茶色い線で描かれ ています。 環状線は1954年につながり、そ の後の地下鉄の発展で重要な役 割を果たしました。新しい放射線 状線のいくつかは環状線から伸
び、中心部につながりました。 環状線上のすべての駅は、 スター リンの擬古典主義の歴史的建造 物で、1940年代から1950年代の ソ連の国民の生活、 また大祖国 戦争の勝利がモチーフになって います。
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「パルク・クリトゥルイ (文化公園)」駅 「歴史」 コース
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構内は暗灰色と暗赤色でまとめ られていますが、四隅の柱に大き な塔門が支えられているように見 えるアーチとなっているため、重 苦しさを感じさせません。丸い天 井にはクラシックなアンピール様 式の照明があります。駅の装飾で 重要な役割を果たしているのは、 天井から塔門のコーニスにつな がっている石膏製の編みリボン で、中心部には、同じく石膏製の バラがあります。地上ロビーの天 井には、建築家G.I.モトヴィロフ作 の、 スポーツマンの休息を描いた 石膏製の浅浮き彫り4個が飾りた てています。 2011年2月、大規模な修理のた めに駅は閉鎖され、エスカレータ
モスクワを訪れた人や住人が、伝説的なゴーリキー中央文化・休 息公園に行くための駅です。 ソ連国民の休息というテーマが駅の 装飾の主要なモチーフで、 この公園でできるサッカー、 スケート、 芸術活動、テニス、舞踊、模型飛行機の飛行など、 ソ連の若者の 休息を描いた、S.M.ラビノヴィッチ作の白い大理石の浅浮き彫り
ー、 自動改札口、切符販売窓口の 改築や、1950年当時の姿にプラ ットフォームを戻す改築などが行 われ、2012年4月28日に完了し、 再開しました。
が、26個あります。 毎日約10万人の乗客が、 この 駅を利用しています。
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「オクチャブリ (10月) 」駅 「歴史」 コース
1961年まで、 この駅は「カルーガ」駅と呼ばれていましたが、10月 広場に近いことから、 この名前に変えられました。L.M.ポリャコフ が設計したこの駅は、 ソ連の地下鉄が用いた戦後の勝利のテーマ をもとにして、戦死者へのレクイエムの荘厳な雰囲気を醸し出し ています。
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中央ホールは、 ソ連の戦争の浅 浮き彫りで装飾された、印象的な 凱旋門になっています。 この建築 ソリューションには、初期キリス ト教の教会建築の様式が採用さ れ、ホールわきの祭壇壁がんへ つづく松明が、内装の神聖さを 強調し、壁がんは、戦後の明るい 世界を描いた青い空で覆われ、 内装に軽さを与えています。祭壇 のアプスの前にはアンピール様 式の鍛造格子が設置されている ため、モスクワっ子は昔から 「明 るい未来は格子の後ろ (刑務所 の部屋)に」 と冗談のネタにして います。 窓口とエスカレーターのホール は、武装した兵士、 ソ連の戦旗、 戦争の栄光を擬人化した美しい 女性などの浅浮き彫りで装飾さ れています。 また、地上のロビー は、1990年からモスクワ鋼合金研 究所の新しい建物に組み込まれ、 円柱照明に照らされた2人のラッ パ手の浅浮き彫りで装飾されて います。 1956年、L.ポリャコフの設計に もとづいて、 この駅と同じつくり の「プーシキン」駅が、 レニング ラードの地下鉄に建設されまし た。異なる点は、空と格子の代 わりに、 プーシキン像があるこ とです。 21
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「パヴェレツ」駅
3つの丸い天井のある中央ホー
「歴史」 コース
的円柱と、そのコントラストとなる
ルは、明るい色の大理石の装飾 黒灰色の床でまとめられ、以前レ ーニンとスターリンの円形浮き彫 りがあった側面には、 ソ連の労働 者と農民の統一をテーマにした モザイク・パネル絵が設置され、 装飾の視覚的アクセントになって います。 また、4方向に大きな塔門がのび るコリント式オーダーの半円柱、 灰色と黒色の花崗岩板でつくら れた床の厳密な幾何学模様、ポ ルタイユや大理石のバラのフィレ ンツェ・ルネッサンスのモザイク 装飾など、 クラシック建築の要素 が多くとりいれられています。 大きな手すりつきの花崗岩階段 がある、中央ホールから続くザモ
これは鉄道「パヴェレツ」駅に隣接しながら、その鉄道駅への直接
スクヴォレーツカヤ(モスクワ河
的な出入り口がない唯一の環状線駅です。設計者のN.コッリとI.カ
畔)線「パヴェレツ」駅へ向う通路
ステリは、モザイク様式の駅をつくりました。明るい色の大理石で
は、モスクワの地下鉄の中でもっ
つくられたエスカレーター・ホールは、モザイク・パネル絵「赤の広
とも長い駅間通路です。
場」 と装飾フリーズで飾られています(I.ラビノヴィッチ作)。 このパ ネル絵には、赤の広場、 レーニン廟、旗が描かれ、その帯にはヴォ
これは鉄道「パヴェレツ」駅に
ルガ沿岸地域の街の名前が刻まれています。鉄道「パヴェレツ」駅
隣接しながら、その鉄道駅への
に、ヴォルガ沿岸地域からの列車が到着するためです。
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直接的な出入り口がない唯一 の環状線駅です。
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「タガン」駅 「歴史」 コース
伝説的な16世紀の職人集落村である、 タガン村(またはタガンカ 村)にもっとも近い地下鉄環状線駅として、その名がつけられ、 ま た建築も中世をほうふつとさせるものになっています(K.ルィジュ コフ、A.メドベジェフ設計)。
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中央ホールのアーチの交差部分 は、十字の丸い天井になってい て、薄いプロホロ・バラディンスク 産大理石の塔門に支えられてい ます。 また、ホールはマジョリカ焼 きが圧倒しています。丸い天井に は、パルチザン、鉄道員、騎兵、船 員、パイロット、戦車兵、歩兵など のソ連軍兵士の円形模様のパネ ル絵があり、その下の勝利旗のま わりには、そのような兵士の功績 が具現化されたマジョリカ焼き のレリーフがあり、その水色の色 調と装飾の明るい色の大理石は、 駅の大きな塔門構造を視覚的に ひきたてています。中央ホールに は水色のマジョルカ焼きで飾ら れたシャンデリアがいくつも連な り、そのひとつひとつにA.ダムス キーのランプが10個ずつついて います。 地上ロビーには、中間の丸いロビ ーで2つにわけられたエスカレー ターが続き、その丸い天井にはフ レスコ画「勝利の祝砲」 (作者A.シ リャエフ)があります。 ロシアの建築記念物、ボルヴァ ノフカの奇蹟者聖ニコライ教会 (1712)の隣にある地上ロビー は、大きな掘削穴で教会が崩れて しまうことを恐れ、大きな円柱の 形になっています。 1972年、 この駅にモスクワの 地下鉄初となる、試験表示灯 が設置されました。
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「コムソモル」駅 「歴史」 コース
この駅は、3箇所の鉄道駅の広場から大量の利用者を迎えるモス クワの門として設計されているため、華麗で、荘厳で、大きなスタ ーリンの擬古典主義の極みとなっています。
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モスクワ・バロックをもとに、ロシ ア革命以前に建設された鉄道「 カザン」駅の様式と一致するよう につくられました。中央ホールに は、68本の桃色と青灰色の大理 石の8面円柱に支えられる、34個 のアーケードがあり、独立を求め て戦うロシアの民をテーマにして います。天井の装飾は、 アンティー ク技術で仕上げられたコバルト ガラスと宝石のモザイク8点から なり、 うち6点には、ロシアの司令 官や勇士であるアレクサンドル・ ネフスキー、 ドミトリー・ドンスコ イ、 クジマ・ミニン、 ドミトリー・ポ ジャルスキー、 アレクサンドル・ス ヴォロフ、 ミハイル・クツゾフ、 また ドイツ帝国議会わきのソ連兵士 や将校が描かれています。2つの パネル絵「勝利凱旋」、 「赤の広場 でのV.I.レーニンの演説」は、1963 年に、 スターリンが描かれた「勝 利パレード」、 「親衛部隊旗の授 与」 と交換されたものです。丸い 天井の中間エントランスホール は、黄金の光を放つ赤い星の大 きなモザイク・パネル絵で飾られ ています。 1958年、 この駅の設計はブリ ュッセルの国際見本市で最 優秀賞を受賞しました。 1990年代に、 「カランチャ」 と 「トゥ リー・ヴォグザーラ (3駅)」 という 名称に変えようという計画が、2回 ほど持ち上がりました。
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「プロスペクト・ミーラ (和平大通り)」駅 「歴史」 コース
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色調は、線路の壁の暗赤色の大 理石と、床の黒灰色系の花崗岩 が調和しています。 地上ロビーは、和平大通りに位置 する、モスクワ地下鉄建設管理局 の多層階の住居用建築物につな がっています。 ロビーの内装は、A. クズネツォフ作のモザイクガラス のパネル絵「世界の母」 と、緑色の マジョルカ焼きのきのこ形柱頭 のついた円柱で飾られ、正面は 銅像や時計で飾られています。 占星術者は、モスクワの地下鉄 環状線に12駅あるのは偶然で はないと考えています。それぞ れの駅が街を12星座占星術の 地域にわけていて、 この駅はみ ずがめ座になるそうです。
1966年に駅が位置する通りの名前から、 このように命名されまし たが、駅の色調やテーマは当初の名称「植物園」にもとづいていま す。人間と自然のハーモニーが、 ソ連のさまざまな共和国の農作 業風景を描いた円柱の柱頭の浅浮き彫りや、葉や蔓のオーナメン トで装飾されたフリーズに反映され、ひし形の凹形装飾で区分さ れたなだらかな丸い天井のある厳格な建築は、穂束の形をした美 しい銅製の照明器具で照らされています。
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「ノヴォスロボツカ ヤ」駅 「歴史」 コース
蛍光灯で照らされているステンドグラスが印象的で、駅の中央ホ ールをに軽さと透明感を与えています。 ラトビアでリガの大聖堂 用のガラスを使用してつくられたステンドグラス32個は、 プラット フォームにつながる大アーチに挟まれた、壁がんのある小アーチ
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ステンドグラスと通路には、金色 の打ち出し模様のある装飾帯が はられていて、それぞれのステン ドグラスの上部には円形模様が あり、 うち6個には建築家、地理学 者、芸術家、動力技師、音楽家、農 学者が描かれ、残りには幾何学模 様や5角星が描かれています。 中央ホールの側壁は、乳児を抱く 女性が描かれた、P.コリン作のモ ザイク・パネル画「全世界の平和」 が飾っています。その上にはスタ ーリンの肖像画の円形模様があ りましたが、 スターリンを崇める ことを止めたため、空を舞う白ハ トに変わりました。 照明器具の修理が2003年に行わ れ、 シャンデリアの明るさが増し たため、当初の設計者が考えてい た、抑えられたやわらかな光のあ る、地下の帝国の魔法の世界のよ うな洞窟と、根本的に異なる駅に なりました。
サンクトペテルブルクの地下鉄 「蜂起広場」駅のプラットフォー ムには、 この駅と同じシャンデリ アが設置されています。
のあるにはめられ、鮮やかな色のまだら模様が、黒灰色のチェス 盤のような床に引きたてられます。
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「ベラルーシ」駅 「歴史」 コース
鉄道「ベラルーシ」駅に隣接する駅で、白ロシア・ソビエト社会主 義共和国の文化と経済をテーマにしています。ホールの天井の中 心部には、 フローレンス・モザイクの技術を用いてつくられた、白 ロシア共和国市民の明るく喜びに満ちた生活をテーマとしたパネ
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塔門の3分の1は明るい色の大理 石で装飾され、かつて細かく色の 異なるタイルがはられていた線 路の壁は、現在白い陶板になっ ています。白ロシアの民族刺繍模 様になっている床は、かつては陶 板でしたが、今は花崗岩になって います。 地上の西ロビーは1952年に、地 下の東ロビーは1997年に開設さ れましたが、東ロビーは駅の東端 が改装されたため、 ここを飾って いた「ソ連の白ロシア」の銅像群 は移築されました。ザモスクヴォ レーツカヤ(モスクワ河畔)線に 向う通路には、現在でも記念建造 物「白ロシアのパルチザン」があ ります。
1951年、建築家I.G.タラノ フ、N.A.ブィコフ、G.I.オプルィシ ュコは、駅の設計に対するスタ ーリン賞を受賞しました。
ル絵が12枚あります。もうひとつの天井の装飾には、四角形や多 角形の幾何学的レリーフと、月桂樹と穂のレルーフのある帯があ ります。
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「クラスナヤ・プレス ニャ」駅 「歴史」 コース
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駅の赤い石には、3億年前の古生 代に属する化石を見ることがで きます。 1905年のプレスニャ地区の 革命のできごとにちなんで生 まれた、 クラスナヤ・プレスニ ャ通りから、 この駅の名前が つけられました。
スターリン時代の伝統様式のこの駅は、1954年に開設されまし た。白い大理石のコーニス、 コントラストのある赤い花崗岩でつく られた、おごそかで明るい塔門、鎌と槌の描かれた8角形のメダリ オン、モスクワのバリケードの革命戦士が描かれた天井の幅広の レリーフ帯(N.シツエルバコフ、Y.ポンメル、V.フョードロフ、Y.ウシ ュコフ、G.コレスニコフ作)があります。14個の浅浮き彫りのうち、6 個は1917年のロシア革命、8個は1905年のロシア第一革命がテー マになっていて、わきのホールの塔門の上には、その当時の革命 のできごとを描いた浅浮き彫りがあります。床には銀色、赤色、黒 色の花崗岩の板が正確にしかれています。 34
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「キエフ」駅 「歴史」 コース
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パネル絵は塔門の中央部分すべ てにあり、ザポロージャのコサッ クがロシアの皇帝に宣言書を渡 した1654年のペラヤースラウ会 議から、1917年の革命とソ連とし ての友好的な生活まで、ロシアと ウクライナの人民友誼について 語っています(建築家A.ミジンの 素描にもとづく)。中央ホールの 側壁にある、 ソ連の国家の一節か ら描かれた、 レーニンのモザイク 肖像画を囲むレリーフ装飾の旗 が、 これらのパネル絵を飾りたて ています。 駅の出入り口のひとつは、2006 年にフランスの建築家が、パリの 地下鉄にもとづいて、1900年から 1910年のエクトール・ギマール風 に設計しました。モスクワの地下 鉄は、そのお礼として、パリのマド レーヌ駅に「金の卵」のステンド グラスを贈りました。
1954年に開業し、地下鉄環状線をつなぐ最後の駅となったこの 駅は、1953年にソ連共産党の書記長になったN.S.フルシチョフに とって、最初の駅となりました。 この駅のテーマは、ロシアとのウク ライナの再統合300年記念で、豪華な植物の装飾と、 ウクライナの 優美なレリーフ装飾の枠に収められた18枚のモザイク・パネル絵 は、おごそかでやや派手な内観をつくりだしています。
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現代の地下鉄の乗客が「ウク ライナのソ連政府支持」パネ ル絵を見ると、パルチザンの 一人が片手に携帯電話を持 ち、膝にはノートパソコンを 置いていると考えてしまいま すが、実際にこの人物が両手 で握っているのは野外電話 機で、膝にあるのは電話機の 箱のフタなのです。 37
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最新の地下鉄駅
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コースの駅「スレテンスキー・ブリヴァル(迎接並木道) 」駅、 「トル バ」駅、 「新コシノ」駅
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このコースには、駅の基礎部に 現場打ちコンクリートスラブがあ る、新しい設計にもとづいて建て られた駅があります。内装はシン プルで、厳格な立体感があり、大
抵は最小主義的な装飾になって います。 コースの駅は黄緑色のリ ュブリノ・ドミトロフ線上と、黄色 のカリーニン線上にあります。 39
モスクワの地下鉄
「スレテンスキー・ブリヴ ァル(迎接並木道)」駅 リュブリノ・ドミトロフ線
この駅はスレテンスキー・ブリヴァル(迎接並木道)へのアクセス を考えただけでなく、名称もそのまま使われました。地下鉄建築家 (N.シュマコフ、G.ムン、N.シュルィギン) と有名な芸術家N.ルベン
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塔門は明るい色の大理石でつく られ、その間の通路には暗い色 を用いて明確なコントラストがう みだされました。床は明灰色の花 崗岩で、黒色の細い帯が横に入 り、赤い大理石で装飾された線路 の壁は、ひときわ目立っています。 プラットフォームの塔門は、 まる で乗客にのしかかるかのような 形になっていて、 この駅につなが っている 「ツルゲーネフ」駅のエ ントランスホールでもこの形を見 ることができます。 中央ホールの塔門の壁がんに は、I.ルベンニコフ作のパネル絵 が24枚あり、それぞれに環状並木 道で見ることのできる人、雲、記 念建築物のシルエットが描かれ ています。例えば、環状並木道の ゴーゴリ並木通りではゴーゴリ像 のシルエット、チストプルドヌイ 並木道ではグリボエドフ像のシ ルエットを、 このパネル絵に見る ことができるのです。 スチールの 表面にエッチングを施す技術は、 世界で初めて採用されました。
ニコフが、大胆な発想でコンクリートと大理石のモチーフを環状 並木道全体とし、その結果、装飾用の色調の選定には非常に保守 的だったものの、でき上がった作品は調和し、統一感があり、生き 生きとしたものになりました。
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2011年5月までは、街に出る直 接的な出口がなかったため、 「 ツルゲーネフ」駅と 「チースト ゥイエ・プルドゥイ」駅の出口 を使用するしかありませんで した。 41
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「トルバ」駅 リュブリノ・ドミトロフ線
この駅は2007年8月30日に開業しましたが、建設計画が最初に持 ち上がったのは1931年のことです。中央ホールはとてもシンプル なつくりで、線路の壁と円柱の伝統的な明るい色の大理石が、暗
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照明はやわらかな固体照明の白 とオレンジの光でまとめられ、部 分的な照明には、モダン様式の 並木道の街灯18個が設置されて います。 プラットフォームにあるダ イオードの光の帯は、安全な境界 線を示しています。 1380年に建てられた、モスクワで もっとも古い女子修道院のひと つ、降誕女子修道院に隣接する 道路とほぼ並んでいる、 「スレテ ンスキー・ブリヴァル(迎接並木 道)」駅と 「トルバ」駅の間の区間 は、 もっとも短い放射線(標準の 600メートルに対してこれは500 メートル) となっています。
この駅は、2010年6月19日に「 ドストエフスキー」駅ー「マリ イナ・ロシャ」駅区間が開通す るまでの3年間、 リュブリノ・ド ミトロフ線の終着駅となって いました。
緑色の部分や、明るい色のズラブ・ツェレテリ作のパネル絵とス テンドグラスでひきたてられています。すべてのステンドグラス に、CIS諸国の教会や大聖堂が描かれていますが、当初はどの丸 屋根にも十字架がありませんでした。 しばらく時間が経過した後、 誰かが小さな付属品の十字架をステンドグラスにはりつけ、地下 鉄の責任者はステンドグラスの絵の不足した部分を補っていると して、そのままにしています。 42
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モスクワの地下鉄
「ローマ」駅 リュブリノ・ドミトロフ線
旅行ガイド
駅の主要な設計は、建築家N.ロス テグニャエフとL.ポポフが行い、 堂々たる荘厳なつくりに仕上げま した。 この駅は一般的な3つの丸 い天井の構造になっていますが、 明るい色の大理石がはられた円 柱、塔門、壁は、一枚のコンクリー ト基礎をもとにしているのが特徴 で、初の試みになっています。床 は灰色、黒色、赤色の花崗岩でで きていて、幾何学的な線模様が横 切るようになっており、長く続く中 央ホールの丸い天井部分には、 壁がんに設置された照明器具の 列があります。美しい内観を台無 しにしないために、ホールには一 切表示を設置せず、円柱の間で目 立たないようにしています。
イタリアの芸術家Dj.P.インブリーギとA.クアトロッチが、 この駅を 設計しました。創作課題は、ローマの主要なシンボルのミニチュア をつくることで、例えばエスカレーターに向う通路にある楕円形浮 き彫りには、聖母とキリストが描かれています。ロームルスとレム スの像は、カリーニン線に向う通路にあり、凱旋アーチを見つめて
これはモスクワの地下鉄でも 珍しい、立地に無関係な名称 のついている駅です。
います。その足下には倒れた円柱が、 また後ろにはモスクワ地下 鉄唯一の本物の噴水があります。
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モスクワの地下鉄
「新コシノ」駅 カリーニン線
この駅の開業記念式典は、2012年8月30日に開催され、 プーチン 大統領も列席しました。モスクワの地下鉄で186番目の駅、 また 3.42キロにのびたカリーニン線の終着駅です。
旅行ガイド
超現代様式でつくられ、複雑な照 明のソリューションや内装の一部 は、 「スラヴ並木道」駅のつくりに 似ています。 鉄筋の丸い天井は凹形の装飾が 施され、灰色と白のモルタルが塗 られ、凹形装飾は、 より色調の暗 い対角線のリブで区切られ、吊り 下げ式照明器具で照らされてい ます。 さらに、照明器具のステン レスやガラスが建築要素としてこ の装飾を引きたてています。 プラットフォームには灰色と黒色 の天然石が使用され、線路の壁 は丸い天井の基礎部になってい て、防音層、暗い色のフタ、穴のあ いた暗灰色のパネルで仕上げら れています。地下鉄入口の階段 は、流線型のガラス製パビリオン で覆われています。 地下には西ロビーと東ロビーの2 カ所があり、西は黄緑色、東は黄 土色でまとめられています。 体の不自由な方向けのエレベー ター、 またモスクワの地下鉄では 初めてとなる、目の不自由な方に 電車の到着と発車を知らせる試 験的音響信号が導入されている のが特徴です。
この駅は地理的にはモスクワ 市に位置しているものの、入 口の半数はモスクワ州レウト フ市にあります。 46
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モスクワの地下鉄
モスクワ地下鉄歴史博物館 地下鉄が開通するや否や、地下に地下鉄 博物館を建設するという構想が生まれま したが、実際に開館したのは1967年で す。地下鉄の功労者らが、書類や写真から 地下施設のサンプルまで、 自力で展示品 を集めて実現させました。 この博物館は、 「スポーツ」駅の南ロビー の目立たないドアの奥にあります。現在 は多くの展示品、 ミニ図書館、映像情報室 などがあり、 さらにソ連のポイント切替機 や、本物の運転室などを見ることができま す。 さまざまな時代や国の切符やコイン が展示されているコーナーもあります。映 像は見ごたえがあり、地下鉄史、建築、現 在の技術システム、稼働、 またサンクトペ テルブルク、 ミンスク、キエフの地下鉄に ついて、知ることができます。 所在地 地下鉄「スポーツ」駅、南ロビー 119048モスクワ市ホモヴニチェスキー・ ヴァル36 +7(495) 622-73-09 営業時間 月曜日10:00~16:30 火曜日~木曜日9:00~16:30 金曜日9:00~15:00 休館日 土曜日、 日曜日 地下鉄ツアー サテライト・トラベル 地下鉄「1905年通り」駅 +7 (495) 798 22 74 info@satellit-travel.com satellit-travel.com モスクワ・グループ 地下鉄「クラスヌィエ・ヴォロタ」駅 サドヴァヤ・スパッスカヤ通り20、403オ フィス (エレバン迎賓館の建物) +7(495) 788-96-77 info@moskva-group.ru www.moskva-group.ru ツアービューロー「ビジネス・サービス」 地下鉄「トレチャコフ」駅 大トルマチョフスキー小路5 +7(495) 228-79-78 office@excursia.ru www.excursia.ru
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ストラナー・トゥリズマ 地下鉄「スモレンスク」駅 第1スモレンスク小路4/3、323オフィス +7(499) 272-47-47 travel@stranatur.ru stranatur.ru 旅行・ツアービューロー「ABM」 地下鉄「ツヴェトノイ・ブリヴァル」駅 小スハレフスキー小路9、1号館 +7 (495) 608-0827 zakaz@abm-travel.ru http://abm-travel.ru/ ツアー・劇場センター 「オグニ・ストリツィ」 地下鉄「スハレフスカヤ」駅 小スハレフスカヤ広場6、2階7オフィス +7(495) 643-73-50 zakaz@ognistolitsy.ru moscowturizm.ru マガジン・プテシェストヴィイ 地下鉄「クズネツク橋」駅 クズネツキー・モスト通り22 +7(495) 668-03-64 bron-magput@mail.ru www.magput.ru ムリチトゥル 地下鉄「アフトザヴォツカヤ」駅 レーニンスカヤ・スロヴォダ通り26、3階 320オフィス +7(495) 411-90-57 sale@multitour.ru www.multitour.ru 旅行会社「ペルヴィム・クラッソム」 地下鉄「革命広場」駅、 「テアトル」駅、 「オ ホトヌイ・リャド」駅 赤の広場、 ヴェトシュヌイ小路9、 「ニコーリ スキー・パッサジュ」 +7(495) 745-54-70 irina @ 1classom.ru www.1classom.ru リヴァジュ・トゥル 地下鉄「1905年通り」駅 大チシンスキー小路38、642オフィス +7(495) 605-37-30 dir@rivage.ru www.rivage.ru