私は安藤という者です。1935年に台南の幸町で生まれ、9歳までずっと台南で暮ら
していました。たまたま見た最近の新聞記事で、台南にある林デパートがリニュ
ーアルオープンするということを知り、幼少の頃のさまざまな思い出が脳裏によ
みがえってきました。私にとって子供の頃の思い出は、ずっと心の奥底でキラキ
ラと輝く大切な宝物のようでした。この募る台南への思いが、私を台南へと駆り
立てたのです。台南を離れてから一度も忘れたことのない、記憶の中の「台南府
城」。私はさっそく孫娘を連れ立って、古都台南の地で思い出探しの旅を始める
ことにしました。
台南の昔と今――かつて、台南と日本には深いつながりがありました。今なお残
る、昔ながらの建築物の数々からも、日本とのつながりの深さを垣間見ることが
できます。また、今の台南を代表するおいしいB級グルメとクリエイティブあふれ
るアートにおいても、この都市を知れば知るほど、至る所に歴史の息吹を感じ取
ることができます。新旧が融合し、交錯した独特の美しさをもっているのが「台
南」なのです。長い間心の奥底にしまいこんでいた郷里.台南府城への思いを胸
に、私と台南の空白の時間を取り戻すための旅へ出かけます。そして、また私だ
けの新たな宝物を見つけてきたいと思います。