在日米国商工会議所
ACCJ-EBC医療政策白書2013年版 健康寿命の延長による日本経済活性化
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ご挨拶
在日米国商工会議所(ACCJ) は、米国企業40社の代表により1948年に設立さた日本で最大の外国経済団体で す。米国企業の日本における経営者を中心に、現在は約1,000社を代表する会員で構成され、東京、名古屋、大阪に 事務所を置いています。 欧州ビジネス協会 (EBC) は、17カ国からなる欧州商工会議所および駐日経済団体の貿易政策を司る機関です。 ま た、在日欧州(連合)商工会議所として経済産業省に登録されています。EBCは1972年に設立され、在日欧州企業の 貿易、投資環境の改善のために活動しています。EBCは現在、欧州商工会議所に所属する2,500を超える企業、個 人会員を代表しています。 このうち約400社の企業は、EBCの30の産業別委員会に直接参加しています。 ACCJとEBCは、 日本政府や経済団体等との協力関係のもと、 日米欧の経済関係のさらなる進展、会員企業の利益 促進、 日本における国際的なビジネス環境の強化というミッションの実現に向けた活動を展開しています。 この白書をまとめるにあたって、ACCJおよびEBC会員企業から多くの担当者が集まり、情報の提供と分析のために 協力し、多くの時間と資源を投じました。私たちは出来る限り多くの意見を取り入れ、 バランスの取れた白書となるよ う努力しました。 これらの人々を共通して結ぶ絆は、 日本人の健康を増進し、 ヘルスケアの環境を改善しようとする熱 意です。 在日米国商工会議所 会頭 ローレンス W. ベイツ
欧州ビジネス協会 会長 デューコ B. デルゴージュ
発行: 在日米国商工会議所 〒106-0041 東京都港区 麻布台2-4-5 メソニック39MTビル 10階 電話: 03 3433 5381 Fax: 03 3433 8454 info@accj.or.jp www.accj.or.jp
欧州ビジネス協会 〒102-0075 東京都千代田区 三番町6-7三番町 POULAビル2F 電話: 03 3263 6224 Fax: 03 3263-6223 ebc@gol.com www.ebc-jp.com
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背景説明:ヘルスケアと経済競争力
日本の高い労働生産性は製造業およびサービス業の国際競争力を支える第一の根源であり、多くの外国企業が日 本を投資市場に選ぶ際の重要な要因となっています。人口の高齢化に直面している今日、競争力の源である国民の 健康や労働生産性をとりまく課題により、人々の関心が集まっています。ACCJおよびEBCは、 日本政府、医療従事 者および民間企業にとって国民の健康増進、感染症および非感染症の予防、 または慢性疾患の早期発見がこれまで 以上に重要であると考えています。 ACCJヘルスケア委員会およびEBC医療機器委員会委員長は日本国民の健康に投資をすることがより高い生活水 準のみならず、病気による欠勤および労働不能の低下や、労働生産性の向上につながる形で、経済競争力の強化に も結びつくという信念に基づいて本白書をまとめました。 さらに、 この白書の中の提言は、必ずや健康への支出の効 率性を高め、医療コストの過度な上昇を抑えることに役立つものと信じます。健康管理をする事は国の最も重要な資 源である国民がより長く、健康的で、生産性の高い人生を送るための戦略的な投資です。 世界中の医療従事者と政府は、健康維持と予防が患者の生活の質の向上をもたらし、労働生産性を高め、費用効率 向上をもたらすという潜在的なメリットを認識しつつあります。本白書で取り上げる以下の36の課題領域と政策提 言は、必ずしも全体を網羅するものではなく、重要でかつ肯定的な潜在的影響を及ぼす様々な例を示したものです。 本白書の作成に尽力したすべての関係者に、感謝の意を表します。 ACCJヘルスケア委員会委員長 ウィリアム・ビショップ
EBC医療機器委員会委員長 ダニー・リスバーグ
ACCJヘルスケア委員会理事連絡役 ブルース・エルズワース
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謝辞
この政策提言書は多くの方々の協力と努力なしには完成しなかったでしょう。ACCJのヘルスケア委員会とEBC医 療機器委員会には、会員会社数十社を代表する200人以上の委員が所属しています。 それぞれの専門分野において 政策提言のとりまとめに尽力して下さった皆様に感謝いたします。特に本書をまとめるにあたり、翻訳と印刷の費用 を負担して下さった各社、 また編集、製本等に惜しみない協力をして下さった各社に深く感謝の意を表します。
プラチナ
ゴールド
シルバー
ブロンズ
サービス提供による協賛
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目次
広範囲の医療テーマ 1. 増加する疾病による経済的負担に重点........................................................................................................................ 6 2. NCDの負担軽減........................................................................................................................................................... 14 3. 予防接種政策への国家的取組みと改革による予防強化........................................................................................ 19 4. 臨床検査・体外診断用医薬品の価値と評価............................................................................................................. 24 5. ヘルスケアITの活用による地域医療連携の実現...................................................................................................... 28 6. 高齢化に向けた在宅医療の改善................................................................................................................................ 32 7. 食品因子の利用による健康増進................................................................................................................................. 34 8. インフルエンザ・パンデミックと生物災害時における公衆衛生対策の改善.......................................................... 37 非感染症の疾患 9. 喫煙や受動喫煙の抑制による慢性疾患の予防........................................................................................................ 40 10. 眼科医による包括的検査で異常の早期発見............................................................................................................ 44 11. 口腔ケアによる虫歯および歯周病予防の推進.......................................................................................................... 48 12. 睡眠時無呼吸症候群の検診の普及........................................................................................................................... 52 13. 糖尿病リスクの予防と管理.......................................................................................................................................... 55 14. 脳卒中の予防と包括ケア............................................................................................................................................. 59 15. 末梢動脈疾患の早期発見を促進するために............................................................................................................ 62 16. 筋骨格系障害への早期治療介入による健康増進と労働生産性の維持............................................................... 67 17. 慢性疼痛治療による健康増進.................................................................................................................................... 71 18. 精神疾患の予防と早期発見........................................................................................................................................ 77 19. 高齢者の歩行障害や認知症改善のための特発性正常圧水頭症の診断と治療の普及...................................... 82 20. 腹部大動脈瘤の早期発見........................................................................................................................................... 86 21. 頸動脈プラークの早期発見による脳梗塞のリスク低減.......................................................................................... 90 女性関連の疾患 22. 骨粗鬆症による骨折の予防......................................................................................................................................... 93 23. 乳がん検診の精度向上................................................................................................................................................ 97 24. 子宮頸がん検診受診率の改善..................................................................................................................................100 感染症 25. B型肝炎ウイルス検査受診率の向上およびワクチン接種.....................................................................................103 26. C型肝炎ウイルス検査受診率の向上と治療の推進...............................................................................................107 27. 結核蔓延の阻止..........................................................................................................................................................113 28. 一般医療機関におけるHIV検査体制の構築...........................................................................................................117 29. 性感染症の蔓延阻止..................................................................................................................................................121 高度な安全性と感染管理の重要性 高度な安全性と感染管理の重要性...................................................................................................................................124 30. 医療関連感染防止の推進.........................................................................................................................................129 31. 感染管理の向上: 開放式 vs 閉鎖式システム........................................................................................................134 32. 皮膚消毒......................................................................................................................................................................138 33. 感染防止機能付き機器:血流感染...........................................................................................................................143 34. 単回使用医療器材の不適切な再利用の防止.........................................................................................................147 医療従事者の安全性について求められる特別な配慮 医療従事者の安全性について求められる特別な配慮....................................................................................................149 35. 針刺し損傷および鋭利な器材による損傷事故の防止...........................................................................................152 36. 医療従事者を保護するためのハザーダス・ドラッグ安全取扱い..........................................................................157
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1.
増加する疾病による経済的負担に重点
現状 ライフスタイルの変化は、予防し得る慢性疾患の増加、 その結果としての医療費の増加と経済生産の低下に至る状 況を、 日本を含めた世界各国で招いてきた。1、2、3 公的医療保険制度に参加する政府、雇用主、医療関係者、従業 員、医療保険関係者および患者は、増大する医療費を効果的に管理する一方で、健康を維持するための新しい解決 法を模索している。 世界中の健康保険事業者および政府と産業界の指導者が、生活の質を向上させ、労働者の生産性向上を図り、 ヘル スケアシステムの中でコストの効率化を実現するために健康維持と予防がもたらす恩恵を、 これまで以上に認識しつ つあることは朗報である。 有望な方法のひとつは、 ヘルスケアにあてる資源の大部分を、人々がよい健康状態を保ち、病気にかからないことに 力点をおくことである。世界保健機関(WHO) の推計では人々が3つのこと (健康的な食事、運動、禁煙) を守れば、 心臓病と脳卒中の80%、 2型糖尿病の80%、 がんの40%を予防できるとしている。4 さらに、病気の予防のためのワ クチン使用と発病を防ぐ早期予防、病状悪化を緩和する措置で追加的な恩恵も得られる。早期発見の可能性を高め るためにはハイリスクな人々の検診への早期介入が必要である。 技術的な進歩によって医療従事者は問題を検知し、多くの場合、病気が命を奪う前に、 より早く予防的な処置を講じ ることができる。過度な検診はコストの増大や検診結果の誤りを招くことがあるが、 ハイリスクグループへの適正な 検診は生命を救い、人々により長く、健康で生産的な余命をもたらす。 いったん病気が見つかれば、早期の処置によ って、深刻で費用のかかる重篤化を防ぎ、手当を施し、改善し、少なくとも悪化を防ぐことができる。例えば運動量と 食生活の改善と、医薬品を組み合わせることにより高血圧を管理すれば、脳卒中や心臓発作による入院を減らし、人 的、財政的な全体の負担を減らすことができる。 もう一つの事例として、65歳以上の女性の骨密度検査は、早期に骨 粗鬆症を見つけることができる。骨密度検査は、痛みのみならず運動と自立を甚だしく妨げることになる骨折の恐れ を減らすことができ、患者がよりよい食事療法や、運動の必要性を認識することができる。 健康が経済生産性に与える効果 国民が健康になることで、経済産出や生産性など多くの局面において、効果が期待できる。労働者が病気やケガによ り働けなくなることと、生産性や経済産出の向上は、潜在的に関係がある。 なぜならば、健康であれば労働者は長期 間にわたり職場を離れることが少なくなり、 またより多くの労働者は退職を先延ばしにする道を選ぶ。 その結果、経 済産出と生産性は上昇する。 さらに、病気により会社を休むことが少なくなり、最大限の能力を発揮して仕事をする ことができる (病気なのに無理をして働くということが少なくなる)。 また家族による看護もなくなり、ヘルスケアコス トの負担増も抑制されることで、 さらに間接的に経済産出と生産性を上げることができる。 米国の生産性・健康管理研究所(IHPM) が出したデータでは、 プレゼンティーイズム (アレルギー疾患、関節炎、喘 息、首や背中の痛み、 うつ、糖尿病、 片頭痛などの病気で体調が悪くても出勤すること) の健康障害による経済的コス トは、時に労働者のアブセンティーイズム (病気による欠勤) と医療費のコストの2倍以上になるという。5 米国企業 の社員健康増進プログラムに基づく研究結果では、企業における従業員の健康プログラムに向けた投資は、永続的 な生産性向上と生活の質の向上に寄与することを示している。6 多くの研究結果では、健康維持と予防に支出 (投 資) される1ドルあたり、3ドル相当の健康改善と医療費節約の投資効果をもたらす。7,8,9 肉体的、精神的健康推進 プログラムは、現代の知識ベース経済においては、世界的に競争的優位性の源泉になり得るのである。 日本は、世界で最も低い乳児死亡率と最も長い平均余命率を持つ国の一つとしてよく知られている。 日本の平均寿 命は伸び続けているが、晩年によく見られる生活の質の低下は、患者、家族、医療従事者、公的医療保険制度、社会 および経済に負担を強いている。 これらの負担は予防、早期発見、健康維持管理を通じて軽減できる。 しかしほかの 先進国同様、従来から日本の医療制度と政策は予防というより病気が起きてからの医学的な治療に焦点を当てて いる。
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日本の疾病による経済的負担 日本国民の健康問題は、経済の競争力を大きく鈍らせ、超高齢化社会の成長の足かせとなる。2011年11月に全国 5,000人の成人を対象に実施されたACCJのヘルスケア委員会の国民意識調査では、健康問題に伴う日本全体の 経済的負担は、年間3.3兆円と試算され、 その負担は病気欠勤や、病気による転職や退職あるいは生産性低下による 10 ことが明らかになった。 このうち、2兆円は労働者本人の健康問題に起因する経済的負担であり、1.3兆円は家族 10 の健康問題が原因の損失額である。 また同調査によれば、経済的負担の最も大きな原因は精神疾患と疼痛の2 大要因であり、感染症でない慢性疾患、感染症、 ケガまたは身体障害よりも重い経済的負担であった。10 回答者の15%以上が働いているが、 自身の健康問題によって、過去1カ月間に仕事の能力、生産性に悪影響が出た と回答している。10 10%が家族の健康問題によって仕事をする能力や生産性にマイナス影響が出たことがあると回 答した。10 毎月約1,600万人が自身の疾患により労働生産性に悪影響があり、1,000万人が家族の健康問題によ 10 って生産性に悪影響が出たとの試算になる。 一方で疾病の予防や早期発見に投資を増やすことにより、 日本の労 働者の生産性向上、健康寿命の延長、 日本経済の全体的な成長へつながる可能性があることはよいことである。 日本における疾病による経済的負担について、ACCJの試算は他機関が行った調査と一致している。例えば米国 ミリケン研究所によると、慢性疾患の経済的負担は年間1.3兆ドルに上る。6 そのうち欠勤や生産性低下は1.1兆ド ル、医療費が2,770億ドルという試算である。6 同様に、米国生産性調査のデータでは、本人や家族の健康問題が 雇用者に与える経済的負担は年間2,258億ドルという(従業員一人につき毎年1,685ドル)。11 その7割が職場に おける生産性の低下によるものであった。両調査とも精神疾患と慢性疼痛が、労働者が就業できなくなったり、生 産性を低下させる主な要因であることを示した。11 2010年に発表されたACCJの成長戦略に関する白書「成長に向けた新たな往路への舵取り」作成のために行われ た経済の分析は、日本の労働生産性の低い伸び率とそれが与える悪影響を強調している。12 同白書と経済分析 で指摘されたように、生産性の向上は日本経済の成長を維持していく上で重要になってくる。なぜならば、日本は 豊富な資本や資源を有するものの、人口減少という問題に直面しているからである。従って、残された道の一つは 生産性の向上にある。しかしこれに関して、日本はいくつかの大きな課題を抱えている: a)日本の労働生産性は依 然として米国の60%を下回る b)サービス分野での労働生産性はこれよりさらに低く、成長も鈍化している。また一 方で、サービス業は日本のGDPの8割を占めており、その割合は今もって増え続けている。従って労働生産性、特に サービス業での労働生産性は、日本経済の成長にとって極めて重要になってくる。労働者の健康を増進すること、 そしてそれにより労働生産性を高めることは日本経済の成長と国際競争力を高めるために重要である。 世界が注目する疾病の経済的負担 がん、糖尿病、 アルツハイマー病、循環器疾患などの非感染性疾患(NCD) の増加および経済的負担が、世界の関心 を集めている。2010年に発表されたWHOの 「世界のNCDに関する状況報告書」 では、NCDがそれぞれ10%上昇 すると世界経済の成長を年率0.5%低下させると予測している。13 世界人口が高齢化するとNCDの発症件数は急 増し、関連する治療費は深刻な額になる可能性が非常に高い。増え続ける医療コストと経済生産性の低下により、 高齢で不健康な国民が多い社会は財政的に維持が困難になるというリスクを負う。WHOの報告書も平均寿命が1 年延びると、GDPが4.3%上昇するとの結果をまとめている。13 2011年9月の国連総会で開催されたNCDに特化 した特別セッションにおいて、NCDの予防、早期発見、早期治療の重要性に関する決議が採択された。14 経済的に 健全な社会は、生産性を維持し老いても活動的であり続ける国民が必要であり、 また出来るだけ長く国民を健康に させることが必要である。 世界経済フォーラムはNCDを世界経済にとって脅威となるものの上位3つのうちの一つとし、NCDの有病率が上昇 15 することにより、 今後20年間で、 世界経済に合計47兆ドルの負担が見込まれると試算している。 このリスクを下げ るために世界経済フォーラムは職場の健康増進連携を開始し、 「正しい投資—労働者の健康と指標の力」 という報告
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書を2013年1月に発表した。 その報告書では25社のグローバル企業の従業員約200万人の職場における健康増進 16 プログラムの実施状況、 評価、 結果、 収集データから学べることについての最新調査結果がまとめられている。 日本はほかの先進諸国と比べ肥満レベルが低く、平均寿命が長いが、 ほかの多くの点において先進諸国と同様の傾 向が見られる。将来の日本の経済繁栄は、健康な高齢者を増やすことができるかどうかにかかっている、 ということを 日本の政策運営の責任者は強調すべきである。健康な高齢者を増やすために、就業状況、健康的な食事と運動、予 防治療の活用、肥満度、血糖値、高血圧、 コレステロール値の変化を追跡調査する事で、 その進展を毎年評価する事 ができる。 勇気づけられる進展のひとつは、 アジア太平洋経済協力 (APEC)会議の21の加盟国を代表する厚生大臣、政府高 官や民間企業の代表が、経済成長のために疾病の経済的負担の軽減と健康を、競争上の優位性に転換させるため の方策について協力することを現在話し合っていることである。17 APECは21の加盟国がそれぞれの国において 規制や行政の改革をもたらすような成功事例をつくりあげ、共有するという点で強い実績を有しており、加盟国の公 衆衛生担当者の能力強化に適した会合である。18 加盟メンバーの公衆衛生担当者は、 この会合において患者や医 療従事者の安全性、感染防止、疾病予防、早期発見と治療に関して、公共衛生上の目標を立て、主要な健康指針を 観察することにより継続的にその進展を測定し、 さらに公共衛生への投資利益を成功裏に計測するための方策を追 求している。 日本は国民皆保険制度のもとで健康増進の実績があり、 このAPECのイニシアティブに関してリーダー になりうる国であり、APEC加盟国から多くの実践的な教訓を学べる可能性を有している。 現行政策 日本政府は、 日本人の健康面における予防医学の重要性について認識している。政府の 「健康日本21」 の目標は、生 活習慣病の予防に重点を置いている。 日本で2008年4月に発足した特定健康審査・特定保健指導(特定健診・保健 指導)制度では、40歳以上のすべての人々と、 メタボリック症候群の危険性をもつ人々が毎年健康診断を受診しな ければならない。 また医療保険者が健康診断の結果を基に予防効果が期待できる人々に対して、保健指導を行なう 制度である。全国規模で取組みが実施されている特定健診・保健指導制度は世界に先駆けた指折りの制度である。 さらにがん対策推進基本計画はがんの予防と早期発見の重要な規則が盛り込まれている。 そして2008年4月には 日本の全都道府県は一連の予防医療政策を作成し、適用する義務を負った。 さらに2012年6月に改定された 「健康日本21」(第2期)の重点目標の中には、 これまでの1次、2次予防推進をさ らに拡充する形で、糖尿病等の慢性疾患の重症化予防にも注力することが組み込まれた。 この国の方針に沿っ て、2013年4月から各都道府県単位で、健康寿命の延長を目指した具体的計画の実施が計画されている。 日本政府は数種類の予防、早期発見、健康政策を実施しているものの、生活の質の向上、労働生産性、費用対効果 の面では、 さらに大きなプラス効果が生まれる余地を残している。健康増進法1条2項では 「健康管理」 は予防とリハ ビリを超えた処置をうたっているが、 この大きな予防の概念は、公共の保健や医療政策面に十分に生かされている とは言えない。現在、 日本の保険制度ではハイリスクグループに対してですら、患者が病気にかかったとき、 あるいは 罹病した明確な兆候が見られるときの健診にのみ、費用が支払われる仕組みである。 日本のいくつかの企業の健康 保険組合では、年次健康診断で政府が定めた必須項目以外の検診項目も負担しているところもあるが、 ごく少数で ある。 日本政府は公的医療保険制度において、 より多くの人々が健康危害査定を受け、病気にかかる前に健康なライフス タイルと生活行動を適用して罹病のリスクを軽減するよう、明確なインセンティブを組み込む必要がある。 また、診療 報酬モデルを、患者が慢性疾患を発症したあとに治療する成果に基づくものにするのではなく、患者が、健康で診療 所や医療施設に通院しないですむ度合いに応じて報われる方式に転換する必要がある。特に、救急医療のために大 病院へ運ばれ、高価な経費を払わなくてもいいように、患者の疾病予防や早期発見に寄与した一般開業医には、金 銭的なインセンティブが与えられるべきである。
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予防、早期発見だけではなく、疾病重症化の予防を加え、 すべての国民の健康に重点を置いた新たな総合的国家戦 略の実施により、治療の成果が現れ、患者の生活の質の向上を可能にすることができる。結果的に、長期的な医療の 費用効率と労働生産性の向上をも推進できる。 政策提言 OO 医療政策においては、死亡率や医療費の高い分野だけでなく、労働力の生産性の向上(病気による欠勤およ び労働不能の低下等)につながる分野に重点を置くべきである。 OO 最も重要な資源である国民の健康寿命を、延伸させるための戦略的な投資に重点を置くべきである。 OO より多くの人々が健康危害査定を受け、病気にかかる前に健康なライフスタイルと生活行動を適用して、罹病 のリスクを軽減するよう、明確なインセンティブを組み込む必要がある。 OO 医療報酬モデルを、患者が慢性疾患を発症したあとに治療する成果に基づくものにするのではなく、患者が 健康で診療所や医療施設に通院しないですむ度合いに応じて報われる方式に転換する必要がある。 OO APECの生命科学イノベーション・フォーラムで、2011年に採択された非感染性疾患(NCD)アクションプラ ンや2012年に採択された医療関連感染(HAI) アクションプラン等に基づいて、国際的な官民学連携による傷 病への経済的負担軽減の取組みを促進すべきである。 参考文献
1. 経済協力開発機構(OECD) のヘルスデータ2012によれば、保健医療関連支出のGDP比のOECD諸国平均が、2000 年の7.8%から2010年の9.5%に上がった。 また肥満の割合は12のOECD加盟国で20%以上になり、OECD加盟国の 平均喫煙率が2010年で21.1%だった。http://www.oecd.org/health/health-systems/oecdhealthdata2012frequentlyrequesteddata.htm 2. 2008年のCalifornia Health Care Foundationによる調査によれば、米国の雇用者負担の健康保険料は1996〜2005 年の間に97%伸び、 その間の給与賃金の伸びはわずか39%だった。調査では、雇用主負担健康保険料は従業員一人当り 2,000ドルに達し、従業員に対する全報酬の4.5%となり、過去10年で40%の増加となったことを示した 3. 日本の慢性疾患は医療費の半分以上を占め、 このうち生活習慣病は医療費のおよそ1/3を占めている。厚生労働省平成22 年度国民医療費の概況による 4. WHO “Preventing Chronic Disease: A Vital Investment” (2005). And WHO “2008-2013 Action Plan for the Global Strategy for the Prevention and Control of Noncommunicable Diseases. 5. 2009年11月ACCJでのSean Sullivan氏(President and CEO, Institute for Health and Productivity Management)講演 6. Milken Institute analysis based on MEPS, NHIS, etc. presented in its October 2007 report “An Unhealthy America: The Economic Burden of Chronic Disease” by Ross DeVol and Armen Dedroussian (www.milikeninstitute.org or www.chronicdiseaseimpact.com). 7. American Institute for Preventive Medicine website section on corporate wellness programs. (www.healthylife.com). Documented cases of ROI of as high as 15 times investment have been seen. 8. 例えば、米国ジョンソン・エンド・ジョンソンの健康増進プログラム評価では、 同業他社と比較し医療費と薬剤費の平均増加 率が3.7%低い。 また、1ドルあたりのROI(投資収益率) が3.71ドルである (Thomson Reuters ROI Modeling tool を 用いて計算)。Leonard L. Berry, Ann M. Mirabito, William B. Baun. “The Pillars of an Effective Workplace Wellness Program.” Harvard Business Review. December 1, 2010. 9. “Workplace Wellness Programs Can Generate Savings,” Katherine Baicker, David Cutler, & Zirui Song, Health Affairs, February 2010, volume 29, no. 2, pp 304-311. http://content.healthaffairs.org/content/29/2/304.abstract. 10. ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査:報告書」2011年11月 http://www.accj.or.jp/ja/about/committees/committee-materials/cat_view/13-materials/56-healthcare 11. “Lost Productive Work Time Costs From Health Conditions in the United States: Results from the American Productivity Audit,” Walter F. Stewart, PhD, MPH, Judith A. Ricci, ScD, MS, Elsbeth Chee, ScD,
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David Morganstein, MS, Journal of Occupational and Environmental Medicine, Volume 45, Number 12, December 2003. 12. 成長に向けた新たな航路への舵取り、ACCJ、2010年11月、www.accj.or.jp 13. WHO, “Global Status Report on Noncommunicable Disease” (2010). www.who.int/nmh/publications/ncd_report2010/en/ WHO report cites “Population Causes and Consequences of Leading Chronic Diseases: A Comparative Analysis of Prevailing Explanations,” by Stuckler D. from Milbank Quarterly, 2008, 86: 273-326. 14. Resolution A/66/L1 titled “Political Declaration of the High-level Meeting of the General Assembly on the Prevention and Control of Noncommunicable Diseases” adopted by the United National General Assembly in New York, September 19-20, 2011. http://www.un.org/en/ga/ncdmeeting2011/. 15. “The Global Economic Burden of Noncommunicable Diseases,” A report by the World Economic Forum and the Harvard School of Public Health, September 2011. http://www3.weforum.org/docs/WEF_Harvard_HE_GlobalEconomicBurdenNonCommunicableDiseas es_2011.pdf. For supporting background data, also see “Working Towards Wellness: The Business Rationale. Geneva, World Economic Forum, 2008. 16. “Making the Right Investment: Employee Health and the Power of Metrics,” Workplace Wellness Alliance, World Economic Forum, Davos, January 2013. 17. Statement by the APEC High-Level Meeting on Health & the Economy, St. Petersburg, June 28, 2012. http://aimp.apec.org/Documents/2012/HWG/HWG-LSIF/12_hwg-lsif_019.pdf. 18. APEC Business Advisory Council letter to APEC health ministers, May 12, 2012 included in annex of the ABAC Report to APEC Economic Leaders. https://www.abaconline.org/v4/download.php?ContentID=2609958.
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2. NCDの負担軽減
現状 W H O に よ る と 、2 0 0 8 年 の 世 界 の 死 亡 数 5 , 7 0 0 万 人 の う ち 、6 3 % に あ た る 3 , 6 0 0 万 人 が NCD(Noncommunicable Diseases)によるものと推計している。1 具体的な疾患として、WHOは糖尿病、慢 性閉塞性肺疾患などの慢性呼吸器疾患、脳血管疾患、慢性心疾患、がんを挙げている。1 しかし、NCDの意味す る疾患の特徴を考慮すると、アルツハイマー型認知症、緑内障、骨粗しょう症、関節リウマチ、パーキンソン症や高 血圧症、高脂血症などのほかにも、この概念に該当する疾患があると考えられる。 NCDは“非感染性疾患”と直訳される場合もあるが、新しい概念を内包したこの言葉が2011年9月の国連健康サミ ットで世界各国での重要な政策的課題として位置づけられたのには様々な理由がある。NCDは人から人に感染す る病気ではないというだけではなく、罹患原因が簡単には取り除けないため治癒が難しく、適切な医療行為を継続 しないと、病態の進展に伴い、壮年期・中高年期において予期せぬ生命に関わる事象を引き起こす可能性が高い疾 患の総称である。NCDは感染症とは根本的に異なり、従来の公衆衛生の普及だけでは疾病状態をコントロールでき ない。患者本人の自覚と積極的な治療への取組みがないと、病態の重症化を止められない疾患群、 と言い換えること もできる。 NCDの現状と将来予測 世界的にNCDは中・高齢者で急増している。 さらに、WHOでは、2030年までにNCDによる死亡数は5,500万に増 加すると予測しているデータも公表されている。NCDによる死亡で比率が高いのは、 「心疾患」 (48%) で、次いで 「が ん」 (21%)、 「慢性呼吸器病」 (12%) と続く。将来推計では、心疾患による年間死亡数は1,700万人(2008年) か ら2,500万人(2030年)、 がんによる死亡数は760万人(同) から1,300万人(同) に増加すると予測されている。 NCDは重要な健康政策課題の一つであり、公衆衛生上の問題としてだけではなく、年間数十億ドルの政府の財政 支出と1,000万人の米国民の日常生活が制限される疾患群として、米国において医療消費の増加と生産性の低下 の大きな要因として問題視されている。米国疾病管理センター(CDC)が中心となり20年前からNCD対策を実施 しているが、その成果もむなしくWHOの報告では米国における87%の死亡がNCDに基づく疾患であるとされて いる。2 日本の現状と課題 厚生労働省発表の疾患別死亡数のうち、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、糖尿病、高血圧性疾患による死亡者数 3 を合わせると全死亡数の約60%を占める。 医療先進国の日本においても、NCDによる死亡率は世界の平均レベル とそれほど変わらない。 日本では今後より一層の高齢化の進展に伴い、平均寿命と健康寿命のギャップが拡大する可能性が顕在化している と指摘されている。4 平均寿命と健康寿命との差は男性では9.22年、女性では12.77年である。 この2つの数字の差 は、 男女とも人生の最晩年の10年近くを、健康とは言えない状態で過ごしていることを意味する。 この期間は人生の 終焉を楽しむためではなく、適切に対処すれば予防できたかもしれないNCDの治療のために、多くの医療費や介護 給付を消費しているに過ぎない、 と極論することも可能である。 平均寿命と健康寿命とのギャップの短縮が、 日本国民の健康に関する政策課題といわれているのは、単なる財政的 な課題であるだけでなく、人が人生の終焉をどう生きるかという根源的な課題である、 と言い換えることもできるの ではないだろうか。 世界の医療・健康政策分野では、NCDに対する取組みの重要性が認識されて、 それなりの年月がたっているが、残 念ながら日本でのNCDに対する認知度はまだまだ低いといわざるを得ない。米国研究製薬工業協会(PhRMA) が 実施した 「NCDに関する調査(回答数1,791)」 によると 「NCD」 の認知率は8.9%と低く、NCDとはどのような疾患 かについてだけではなく、NCDの社会的な意義や将来に対する影響の深刻さに対して、理解の低さがうかがえる。5
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NCDについて、 その問題点の本質を正しく理解できていれば、積極的な予防、早期からの検診による疾病の早期発 見、 その後の積極的な医療機関受診、 さらに、積極的な治療の開始と継続の重要性に対する理解を示す回答率が高 くなっている。同時に、 この調査結果はNCDの実態をより正しく知るようになれば、積極的な健康診断・検診の受診 を促し、万が一、疾患が見つかった場合でも、 自主的で、 かつ積極的な治療への取組みが期待できるなど、認知前に 比べて望ましい行動変化を起こす可能性が高いことも示唆している。 NCDは、多くの場合治癒することのない進行性の慢性疾患であり、適切な治療を継続しない限り、生活の質の低下 や死亡の原因となる可能性の高い疾患群であるが、 その反面、 当該疾患に罹患後も、継続的かつ積極的な疾病管 理により、生涯にわたって一定レベル以上の生活の質の維持が可能である場合が多い。医学の発展により、多くの NCDが積極的な早期からの治療により、効果的な疾病管理も可能になってきている。国民に対しての正しいNCDの 理解、啓発、普及活動が今後ますます重要になる。 現行政策 2011年9月、国連サミットにおいて、NCDに対して 「世界規模で取り組むベき21世紀最優先の課題の一つである」 6 と宣言された。 このように、世界の医療・健康政策分野でNCDに対する取組みの重要性が認識され、世界各国の 政府の責任で、NCDに対処するための政策展開について活発に議論されるようになってきた。 日本においては、2012年に第二次「健康日本21」 の健康政策目標値が発表された。 メタボ検診に代表される生活習 慣病の一次予防への重点的取組みに加えて、喫煙、過食、 アルコールの過剰摂取、運動習慣の減少など、NCD発病 の4大危険因子に対する世界での取組みも鑑みて、 これまでの予防医療の促進に加えて、特に糖尿病に代表される NCDの重症化、合併症発症予防が数値目標を掲げて取り入れられた。 この計画が着実に実行され、 日本の健康ビジョンを達成するためには、“財源”の確保も含めた国による計画実現の ための実効性のある計画の作成と、 それを具体的に都道府県・市町村レベルで実施していく自治体との効果的な仕 組みづくりが不可欠である。 政策提言 OO NCD対策の啓発、普及 NCDは、国民・患者自らがその重要性を認識しない限り、予防や疾患の重症化抑制は不可能である。 日本国民 がNCDを知り、患者そして家族などの周辺者がNCDによる病状の進行を阻止するために、正しい知識を持っ て積極的に取り組むことが重要である。 そのため、NCDの啓発と、 その対応策の普及がきわめて重要となってく る。行政がこの中心的な役割を担い、官民が協力してNCDに対する取組みを盛り上げ、 パブリックやメディアを 巻き込んでNCDの取組みの重要性を積極的に伝えることで、国民の間でのNCDの認知度を向上させるべきで ある。国民・患者の行動変化を起こし、 自らの積極的な予防、早期発見、治療への取組みによって健康寿命を伸 展させ、 ひいては医療費支出を効率的にコントロールすることが重要である。 OO プライマリケア・スペシャリストである家庭医の育成 NCDに対する適切な指導・効率的な医療を提供するためのゲートキーパーとして、地域に根付いた包括的な 活動を行える家庭医の質的・量的充実が急務である。NCDを有する患者は複数の疾患を有していることが想 定されるため、単一の疾患についての専門的医療ではなく、多面的な診療や指導が実施できる家庭医を育成す る環境を構築するとともに、海外のように家庭医の地位の向上、診療報酬等のインセンティブの整備を通して、 家庭医としての就業意欲の一層の向上を図り、地域医療への貢献と浸透を促す施策が必要である。 OO 多面的な教育システムの導入 医療提供者に対しては、大学に家庭医養成のための教育コースを導入し、拡充を急ぐ。 また、教育カリキュラム にNCD対策の重要性や卒後教育プログラムを導入する。 さらに実地医療提供体制を、家庭を中心としたコミュ ニティー・在宅レベルの包括的な体制に可及的速やかに移行させる。 それを支える医療スタッフのNCDの予防 と治療に関する教育の充実を図る。 そうすれば小学生の子どもたちでさえ健康な生活を送ることができる。
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OO
産官学民の連携と責任・責務の明確化 大学での家庭医養成や学校での健康教育カリキュラムは文部科学省、診療報酬、インセンティブも含めた 医療環境整備は厚生労働省、ヘルスITを利用したネットワークの整備は総務省や経済産業省が管轄するな ど、NCDの予防・治療には様々な省庁が関わると考えられる。家庭医の普及、地域医療の充実、医療提供体制 の地方間格差を解消するためには、各省庁の連携が重要かつ不可欠である。 OO また、計画実行にあたっては産官学そして国民が連携し、 コミュニティレベルからの認知度向上計画を実施し、 日本全国に展開することが必要である。 そのためには中央省庁だけではなく、都道府県、市町村レベルがそれぞ れに責任を持った政策の実行と展開も、 同時並行的に実施しなければならない。 一方で、医療計画の実施責任、成果責任の所在を明確にする必要がある。 それぞれの行政レベルで適切な連携 を保ちながら、重複することのない機能的な役割分担を行い、 その結果得られた活動指針等を用いて、 それぞ れのレベルでの責務範囲と分担を明文化するとともに、活動の実効性を評価するための目標指標の設定と、 そ の成果を判定するための必要な情報収集、 ならびに、指標と情報を基にした継続的な評価分析を実施し、 いわ ゆるPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを適切に回すことによる活動の適正化を図るべきである。
参考文献 1. 2.
Global Status Report on Noncommunicable Diseases 2010, WHO; www.who.int. Global Health - Noncommunicable Diseases, Centers for Disease Control and Prevention (CDC); http://www.cdc.gov/globalhealth/ncd/. 3. 国民医療費(平成21年度)、厚生労働省 4. 健康日本21(第2次)、厚生労働省 5. PhRMAシンポジウム 「高齢国・日本におけるNCD(Noncommunicable Disease) 対策の重要性」、2012年11月26日 6. Political Declaration of the High-level Meeting of the General Assembly on the Prevention and Control of Noncommunicable Diseases, United Nations, September 19, 2011.
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18 | 健康寿命の延長による日本経済活性化
2013年5月
3.
予防接種政策への国家的取組みと改革による予防強化
現状 ワクチンは疾病を大幅に減らし、生活の質を高め、多くのケースで経済的な利益をもたらす。政府の 「ワクチン産業ビ ジョン」 にも記述されているように、 ワクチンは世界中でコスト効率が高いことが認識されている。 しかし、多くの最新のワクチンが日本でも使用され始めているものの、 そのほとんどが国の予防接種プログラムの対 象になっておらず、公費負担がない、 あるいはあっても時限的で地域によって負担内容に差があり、国民やその家族 に財政的な負担を強いている。 これが、 日本で憂慮すべきワクチンへのアクセス・ギャップをつくりだしている大きな要因である。財政的に健全な個 人やその家族が、 ワクチンで予防できる疾患から身を守ることができる一方、財政的に余裕のない人とその家族は、 国内での居住地域によっては、世界で広く使用されている重要なワクチンの恩恵を受けることができない、 という状 況が固定化されつつある。 また、集団としてワクチンで十分に守られていない国民はアウトブレイク等により当該疾病の有病率と感染率が劇的 に上がるため、 ワクチン接種費用をはるかに上回る財政的な負担を伴う、公共衛生上の対応を取らなければならな い確率がきわめて高いと言わざるを得ない。 現行政策 日本では国としての公式な予防接種計画はないが、予防接種法に基づく定期接種プログラムは存在する。定期接種 一類疾患のワクチンはほぼ無料で、二類疾患のワクチンは、接種費用の一部が公費で助成されている。 しかし、 いわ ゆる任意接種ワクチンは公費負担の対象にはならない。憂慮すべき傾向として、最近承認されたワクチンは任意接種 のカテゴリーに入れられ、公費助成をうけるための明確なスケジュールも方法もない。 過去1年間の政策の進捗状況:改善の兆し 2009年から厚生労働省の 「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会」 において、予防接種のあり方を全般的 に議論してきた。2012年5月に7種の任意接種ワクチンの定期接種化を含めた 「予防接種制度の見直しについて (第二次提言)」 という提言が予防接種部会によってまとめられた。 この提言の一部を反映した改正予防接種法 が、2013年4月1日から施行された。 「予防接種制度の見直しについて (第二次提言)」 は、以下の項目を含む: 1. 予防接種制度の見直しの目的 2. 予防接種の総合的な推進を図るための計画(仮称) 3. 予防接種法の対象となる疾病・ワクチンの追加 4. 予防接種法上の疾病区分 疾病区分の要件および7疾病を予防接種法の対象に位置づけることとした場合の分類案は、以下のと おりとする。 ・1類疾病 要件①:集団予防を図る目的で予防接種を行う疾病 Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、 おたふくかぜ 要件②:致命率が高いこと、 または感染し、長期間経過後に重篤になる可能性が高い疾病になるこ とによる、重大な社会的損失の防止を図る目的で予防接種を行う疾病 ヒトパピローマ・ウイルス感染症、 B型肝炎 ・2類疾病:個人予防目的に比重を置いて、 個人の発病・重症化防止およびその積重ねとしての集団 予防を図る目的で予防接種を行う疾病 成人の肺炎球菌感染症 5. 接種費用の負担のあり方 6. ワクチン価格等の接種費用
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7. 8. 9. 10. 11. 12.
予防接種に関する評価・検討組織 関係者の役割分担 副作用報告制度、健康被害救済制度 接種方法、接種記録、情報提供 感染症サーベイランス ワクチンの研究開発の促進と生産基盤の確保
予防接種法改正の主要な内容は以下のとおり: 1. 予防接種の総合的な推進を図るための計画の策定 2. 定期接種の対象疾病の追加(Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、 ヒトパピローマ・ウイルス感染症) 3. 副作用報告制度の法定化 4. 評価・検討組織への付議 こうしたワクチンへのアクセス改善の努力をACCJとEBCは評価する。 しかしながら、我々は以下のことについて憂慮 している。 OO
予防接種部会で提言された7種のワクチンのうち、今回の法改正対象にない4種のワクチン (水痘・おたふく・成 人の肺炎球菌・B型肝炎) について、財源確保の見通しが立っていないため、定期接種化の時期が明確になって いない。 OO 上記のほか、予防接種部会で提言された多くの事項が、今後どのように、制度に反映され、実行後評価されるの かという仕組みが確立しておらず、 その実効性に懸念が残る。 OO 現行制度では定期接種の費用は、原則として実施主体である地方自治体の負担であり、恒久的な財政確保の 方策は明確になっていない。 そのため、今後国民の公衆衛生のための、定期接種ワクチンが増えていく際に、地 方自治体が対応できるだけの、継続的な財源確保への懸念は残る。 政策提言 OO WHOが推奨するワクチンを含め、 ワクチンで予防可能な疾患(VPD) はすべて予防接種で予防するという理念 に基づき、 ターゲットにしたワクチンへのアクセスを大きく改善し、利用しやすくするための中長期的な国の総 合的な予防接種計画を作り、結果評価までの仕組みを確立する。 OO すべてのワクチンに、政府の全面的な財政支援を提供する。 また、 そのための恒久的な財源確保の仕組みを構 築する。 OO 新しいワクチンが薬事法上の承認後、速やかに国の予防接種プログラムに入るための評価の明確な道筋とスケ ジュールを作る。 OO 世界で接種されているワクチンが、 日本で早期に承認されるように、関連規制、基準の世界的なハーモナイゼー ションを推進する。 OO 疾病感染による経済的・社会的負担をよりよく理解し、 ワクチン接種による当該疾病の予防効果を測定し、 また ワクチンの副作用の発生頻度や影響を評価するために、疫学研究を強化し、改善する。 ケーススタディ:米国の国家ワクチン計画 米国ではワクチンおよび予防接種事業の10年計画である国家ワクチン計画(National Vaccination Plan) が策定 されている。最初の計画は1994年に策定され、 ワクチンの研究開発、安全性、情報提供、接種率と供給、 そして世界 的な予防の推進に関する戦略に基づき,様々な成果が得られている。 2010年には、 次の10年に向けての計画が策定 されており、以下の5大目標と10の優先実施事項が設定されている。 米国の国家ワクチン計画の5大目標: 1. 新規ワクチンおよび改良型ワクチンの開発 2. ワクチン安全性システムを強化
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3. 十分な情報を得た上でのワクチンに関する意思決定(informed vaccine decision-making) を強化 するためのコミュニケーション支援 4. 米国において推奨ワクチンの安定供給、 アクセスおよびより良い使用法を確保 5. 安全かつ有効な予防接種を通して、死亡および疾患の世界的な予防の促進 米国の国家ワクチン計画の優先実施事項: 1. 国内外の公衆衛生上、優先順位が高いワクチンのターゲットを示した目録を作成(目標1) 2. 新規ワクチンの開発および認可取得のための科学的基盤を強化(目標1および2) 3. ワクチンの安全性に関するシグナルのタイムリーな検出および検証を促進し、 ワクチンの安全性に関す る科学的課題への取組み (目標2) 4. 一般国民、提供者およびその他の利害関係者におけるワクチン、 ワクチンで予防可能な疾患および予防 接種のベネフィット/リスクへの認識の促進(目標3) 5. 科学的根拠に基づき、 ワクチンで予防可能な疾患のサーベイランス、 ワクチン接種率の測定およびワク チンの有効性の測定を強化(目標4) 6. 提供者および消費者にとっての金銭的障壁を排除して、 ルーチンで推奨されているワクチンへのアクセ スを促進(目標4) 7. ルーチンで推奨されているワクチンおよび公衆衛生上の備えとしてのワクチンの適正かつ安定供給(目 標4) 8. 相互運用可能な保健情報技術および電子カルテ利用の促進と改善(目標4) 9. ワクチンで予防可能な疾患に関する地球規模のサーベイランスを改善し、 ワクチン接種率、有効性およ び安全性をモニタリングする地球規模のヘルスケア情報システムを強化(目標5) 10. 公衆衛生上重要な疾患を予防するための、新ワクチンおよび利用が不十分なワクチンの地球規模での 導入および入手可能性を支援(目標5)
参考文献
1. 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会における予防接種制度の見直しについて (第二次提言)、2012年5月23日 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002b6r0.html. 2. U.S. Department of Health & Human Services website page on the National Vaccine Plan, accessed May 1, 2013. http://www.hhs.gov/nvpo/vacc_plan/.
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4.
臨床検査・体外診断用医薬品の価値と評価
現状 1960年代以降、研究と医療技術が進歩し、診断機器や測定技術が新たに開発された。 これにより迅速で、 より精度 の高い診断結果を得ることができるようになり、医療関係者へ有効な情報を提供できるようになった。新しい機器や 技術のいくつかは旧式の機器・技術と比較してコスト高になるものもあるが、現代医療にとって極めて重要であると 世界中で認識されるようになった。新しい機器や技術は、 より高度な医療を提供し、患者を疾病から早く回復させ、 安心感を与えている。 さらに、治療が成功し、 回復が早くなり、入院日数を減少させることは全体の医療費を下げるこ とになる。 過去20年間にわたり、体外診断用医薬品(IVD) の真の価値は、 日本の医療システムの中で、必ずしも十分に認識さ れていなかった。 その結果、 日本の患者は、世界で最も進んでいる診断検査を必ずしもタイムリーに利用することが 1 できなかった。 患者は、新しく、 より技術的に優れた測定法に比べ、安価ではあるが精度とスピードに欠け、情報量 の少ない旧式の診断検査を受けてきていた。 朗報は、高精度な検査と予防医学のために、遺伝子検査を含む臨床試験の優位性が医療関係者により、強く認識さ れてきたことにある。2008年と2010年の診療報酬の改正では、臨床検査の価値が認められ、 いくつかは診療報酬 引上げが認められた。 しかしながら、改善の余地は今も残る。 現行政策 最近、国民の健康への意識が高まったこと、経済的に成長したこと、高齢化社会、 そして医療技術の進歩により国民 医療費は上昇した。1990年以来、 より迅速で精度を上げた一方で、 自動化により人件費を下げるなど、医療技術が 大きく進歩したにもかかわらず、診断検査の報酬は着実に引き下げられてきた。 また、高感度と高精度でより多くの情報を提供する、全く新しい診断法も開発された。例えば、 より価値の高い情報 を提供する高度測定機器が導入されたが、 これにもかかわらず、HIV検査の報酬は着実に引き下げられている。新し い検査薬を開発し、承認を受け、上市し、 さらに安定供給と高度な品質を確保し、維持するには、 コストが極めて高額 になる可能性がある。 その結果、 日本の低い診療報酬は、高い効果が望める検査技術の研究開発意欲を損なう結果 を招きかねない。 また、低い報酬は 「検査のラグ」 を生むかもしれない。 これは、 ほかの先進国で利用できる新しい検 査を、時には数年間、 日本の患者は受けることができないことを意味している。1 日本の現在のIVDシステムのなかには、試薬の感度や精度など、基本的な製品性能に違いが見られる。 しかし、精度 やスピードで高い性能を持つ製品が、低い性能の製品と同じ報酬を受けているケースもある。国の健康保険の診療 報酬額は診断検査と試薬の真の価値を反映する方法で決められるべきである。 それにより効果のある (感度、精度、 スピード) 製品はより高い報酬を与えられてしかるべきである。 HIV/AIDSのケースで日本の現状を見ることができる。先進諸国のなかで、HIV/AIDS患者数は唯一日本だけが増え ている。現在使われている検査システムの不備が、 この増加に加担している。血液や組織、DNA検体の検査をより適 切な時期、適切な場所で行うことができるように検査システムを改善する必要がある。 このことは、院内検査で迅速 に行わなければならない検査がある一方、外部の臨床検査機関に送られ、 より高度な検査を行わなければならない 場合もあることを意味している。 こうした検査システムの改善は、地方自治体ごとの異なった方法で行われるのでは なく、国家政策として一貫して行われなければならない。 政策提言 OO IVD製品の審査を早めることにより 「検査ラグ」 を減少させる。革新的IVD技術の申請から承認までの期間が、 日本はいたずらに長い。 これにより開発コストが高くなり、 また、世界で最も高度な (感度、速度、精度)IVD技術 の恩恵を日本の患者は受けることが出来ない。医薬品医療機器総合機構(PMDA) は、医療機器にすでにある ような 「5年アクションプログラム」 のようなアクションを掲げ、IVD製品の審査の迅速化に取り組まなければな らない。
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OO
臨床上の価値、 そしてIVD検査の品質をより反映させる診療報酬システムを確立させる。迅速な検査が、治療や 入院日数の減少に効果をもたらすならば、院内検査が行われるべきである。医薬品や機器の評価を行う現存の 専門委員会と同様に、IVD製品の評価を行う専門委員会を中医協(中央社会保険医療協議会)のなかに確立す べきである。 OO 現在利用できるIVD検査の全般的な品質、 そして日本で一般的に使用されているIVD検査の品質を改善する。 様々なIVD検査の臨床上の価値の違いを反映するように、診療報酬システムを見直す必要がある。 これにより 製薬会社は、新しい検査技術の研究開発に投資する上で、 インセンティブを受けることができる。 OO 第三者機関のIVD専門組織による診療報酬の評価システムを導入し、 こうした違いを評価させるべきである。早 期発見と早期治療を可能にする方法で、HIV/AIDS、子宮頚がん、B型肝炎、C型肝炎ウィルスなどの主な疾患 を検査し、 フォローアップさせる全国的に一貫した検査システムを確立する。同システムは、各自治体に独自に 任せるのではなく、国が一貫して実施すべきである。 同じ検査でも、 旧世代の検査より高精度で迅速なIVD検 査 の方が、 コスト高になるが、治療の成功率を高め、入院日数を減少させることでコスト効率の改善に結びつく可 能性が大きいことを認識すべきである。
参考文献
1. 社団法人日本臨床検査薬協会と米国医療機器・IVD工業会の体外診断薬委員会の依頼を受けてL.E.K.コンサルティング 会社が2010年と2011年に行ったIVD審査とタイムクロックサーベイ。入手は(www.jacr.or.jp) and (www.amdd.jp)の サイトで可能
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5.
ヘルスケアITの活用による地域医療連携の実現
現状 日本では、超高齢化に加え、医師不足や医療格差の問題が深刻化しており、国民に対する医療サービスの提供体制 に抜本的な見直しが必要とされている。特に、ヘルスケアIT分野の進歩は著しく、効率性の向上、 より良い医療の提 供、生活の質の改善等、医療のあり方に大きな変革をもたらすと期待されている。世界各国の政府は、ヘルスケアIT 分野に重点的に投資を続けており、 すでに多くの具体的成果を上げている。 日本でも、東日本大震災の経験を契機と して、電子カルテの整備や地域医療情報連携の重要性が再認識されている。 日本の高度な医療技術とITを融合すれ ば、 ヘルスケアIT分野を成長産業として発展させていくことが可能である。 日本政府は、2000年のIT基本法制定以来、医療のIT化を重点施策としてきた。 その結果、大型病院の97%では、 す でにレセプト・オンラインの導入が完了している。 しかしながら、現行のシステムでは、組織間の連携が十分とはいえ ず、途中に手作業による処理が介在するために、電子化のメリットを完全に享受するに至っていない。電子カルテに ついても、導入率が12.5%に留まっており、相互運用性の課題も多い。 また、遠隔医療については、政府による様々な 実証試験が行われているものの、十分なインセンティブが導入されていないために、普及が本格的に進んでいない。 今後は、 クラウド時代のビッグ・データの活用による診療・診断の質の向上、効率化、 および地域医療における地域間 の医療格差の軽減も視野に入れるべきである。 その際、個別の病院のITシステムを整備するという視点だけではなく、 より広範なネットワーク (例えば二次医療圏) の中で、社会的なインフラとして機能するように整備していくという視点が重要である。 また、同時にシステムの初期 導入費用のみを補助金等によりサポートしても、運用にかかるランニングコストを、 それに見合う効率化の実現や診 療報酬の増加によって賄うことができなければ、 インフラは永続的に機能することができない。 システムの整備と運 用の永続性の担保は両輪で行う必要がある。 加えて、諸外国での先進的な成功事例を日本に導入する際の容易さや、地域連携等多くのプレイヤーが協力して、大 規模なシステムを随時構築していく際の効率性を勘案すると、ヘルスケアITに関連した世界標準規格・標準仕様の 採用について、政府が積極的に推進していくべきである。 上記のように運用面も勘案した持続可能なITインフラ基盤を、世界標準に準拠した方法で積極的に推奨しながら、 多くのプレイヤーの長所を取り込み、 自律的、 かつ迅速に整備していくために、政府が総合的、 また横断的に政策を 導入すべきである。 5,000人の全国意識調査によると、 日本人の71.5%が病院や診療所での電子カルテの導入を支持している。1 支 持する人の75.6%は、電子カルテ導入によって、医療サービスの効率が上がり、医療サービスにかかる費用が減るこ とを最大の支持理由としている。1 支持する人の60.6%は、電子カルテ導入によって、患者のアレルギー情報や服 用中の薬について医師が把握できるため、健康への安全性が高まることを、支持理由としている。1 また、 同意識調 査によると61%が、医療サービスの効率向上と医療サービスへのアクセス向上の一手段として政府は遠隔医療(テ レメディシン) を推進すべきだと答えている。1 一方で、遠隔医療の精度や安全性に対して懸念を抱いている利用者は わずか8.3%だった。 現行政策 2009年日本政府は、235億円におよぶ 「地域医療再生基金」 を導入した。今後5年間を通じて地域医療を改善する 目的で94の地域に平均2.5億円の資金が導入される予定となっている。2011年3月11日の東日本大震災後、政府 は計画を一部変更し、宮城、岩手、福島の被災3県に対する金額を各120億円に増やし、基本計画の提出を2011年 11月まで延長した。 遠隔医療に関しては、厚生労働省から3月31日に通知が発行され、糖尿病・がん、脳血管障害を含む9疾病に拡大す る規制緩和が行なわれた。電子カルテや地域医療連携が重要なインフラとなる一方で、 これらから集積されたビッ グ・データやクラウド技術等を活用することにより、緊急医療、早期診断、慢性疾患のコントロール、在宅医療、診断
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決定サポート、調査研究、科学的根拠に基づく医療の改善が見込まれる。厚生労働省は、2012年9月に 「医療等分 野における情報の活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」 をまとめ、法整備に向けた検討を行って いる。 また、経済産業省では、2012年10月から 「医療用ソフトウェアの規制に関する研究会」 を設置し、産業振興に 向けて適切なルールづくりについて議論をしている。 政策提言 OO 政府によるヘルスケアIT計画の策定 OO 電子カルテおよび地域医療連携に対する戦略的投資 OO IT投資を促進するため、診療報酬および補助金等のインセンティブの導入 OO 地域医療連携を推進するため、世界標準に準拠した相互運用性の実現 OO 遠隔医療の推進 OO 東北地方におけるヘルスケアIT特別プロジェクトの実施 OO プライバシーとセキュリティに配慮しつつ、クラウド・コンピューティングを活用した医療情報の蓄積の推進 OO 国家データベースを構築し、科学的根拠に基づいた医療に利用 OO データマイニングやデータの二次利用の奨励 OO ヘルスケアITの利点について、医療従事者や国民に対する積極的な啓発活動の実施 OO ヘルスケア産業の発展と国民の健康増進に資する医療用ソフトに関するルールづくり OO 医療情報の保護と活用のバランスを考慮した、国際整合性のある医療等ID(仮称) と医療等情報個別法の制定
参考文献
1. ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査:報告書」2011年11月
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健康寿命の延長による日本経済活性化 | 31
6.
高齢化に向けた在宅医療の改善
現状 急速な高齢化社会の到来を考えると、在宅医療の推進は今後10年から15年の間、主要なヘルスケア政策の一つに なる。2012年、 日本政府が行った人口統計の予測では、65歳以上の人口の割合は、2010年の23%から2025年に は30%、2060年には40%に増加するとされている。高齢者への医療サービスをより必要としていくことを考えると、 高齢者が増えることで、医療センターや病院のベッドが足りなくなり、 この状態が改善されなければ、 ヘルスケアシス テムを維持するための財政にかなりのひずみが生じることになる。 この危機に対応する必要がせまってきており、厚 生労働省は早急に適切な政策を打ち出し始めなければならない。 厚生労働省が2008年に行ったターミナルケアに関する調査では、1998年の58%から増加して、63%以上の回答 者が自宅での療養を望んでいることがわかった。 さらに、2007年の内閣府による高齢者への調査では、41%以上の 人は自宅での介護を望んでいることがわかった。 日本政府の主要な課題は、 日本の健康保険システムである 1)国民 皆保険 2)現物給付 3)低所得者もあらゆる医療機関へのアクセスが可能である、 という現在の体制のなかで、上 記のニーズに対応するために効果的な政策を考案することである。 上記の点を踏まえて、 厚生労働省は 「在宅医療・介護あんしん2012計画」 を発表した。 これに対応して、 社団法人日本 看護協会、 日本製薬工業協会、 そしてその他のヘルスケア関連の団体は日本での在宅医療を推進するために必要な 各々の行動と政策について議論を開始した。 こうした協議の結果、 次の3つのハイレベルな問題が浮き彫りになった。 1)在宅医療・治療を日本の健康保険制度でカバーすること 2)在宅医療をターゲットにした認可された医学的介入 を増やすこと、 そして患者データへのアクセスを自宅からできるようにするための必要なインフラを作ること 3)患 者の病状をタイムリーに追跡できるシステムを開発することである。 新しい計画では、 日本政府は日本のヘルスケアシステムを変革させることを目標にしている。 すなわち、医療センター や病院を通して、医療や看護ケアを集中して提供するという方法から、急速に高齢化する人口に対して、在宅医療を より多く提供するというシステムである。 この政策転換を擁護するために、厚生労働省は、 1)補完的活動をテコにす るため省内で部門を超えて予算編成を行う 2)在宅医療を薬事法に明確に位置づける 3)計画の達成を推進す るために償還システムを変えていくこと、 を発表した。 5 厚生労働省は2012年度予算に 「在宅医療・介護あんしん2012」計画のために35億円を予算化した。 具体的に は、 「在宅医療・介護あんしん2012」計画は以下を含む: 1) 在宅チーム医療を担う人材育成に1億900万円 2) 実施拠点となる基盤の整備に23億円 3) 個別の疾患等に対応したサービスの充実・支援に11億円
ACCJとEBCは在宅医療を推進する厚生労働省のこうした取組みを賞賛する。 現行政策 在宅医療の改善に日本がますます注力することをACCJとEBCは歓迎する一方、 これまでの議論では、 ほとんどの場 合、在宅医療は単に末期疾患のみを対象に集中して行われてきたが、議論の幅を大きく広げるべきだと考える。末期 疾患を在宅で治療させるために、 日本の医療システムを改革することは重要だが、ACCJとEBCは日本に対して、 こ の機会をとらえて、政策議論のなかに今や自宅で安全に行える幅広い治療も加えるように促したい。 つまり、厚生労働省は主に末期疾患のための在宅医療に焦点を当てることから、就労者のための在宅医療を加え るよう、その定義づけを変えるべきである。特に、日本における在宅医療の定義を広げるべきで、末期疾患を抱え ない患者が病院やクリニックで治療を受けるのではなく、自宅で治療を受けることで、生産力のある労働者であり 続けるべきである。
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幅広い医療ニーズを有する在宅医療を、 より多く利用することを推進することによって、税収をより効率的に配分す ることができ、 日本の医療制度を支える財政が安定する一方、 日本は患者予後と生活の質を向上させることができる と思われる。 革新的で生命を救う医薬品や医療器具を開発し、提供しているACCJとEBCの会員企業は在宅で使用する製品を つくることは、解決しなければならないことであると理解している。特に、病院で使われるように開発され、 デザインさ れた薬品や器具は、患者や介護人が容易にかつ安全に使用できるように改良を加えたり、試験を行ったりしなけれ ばならない。在宅医療で使用する医療器具の改良は日本の健康保険制度の価格基準のもとでは、評価もされず、 ま た償還もされていない。 このため健康保険の償還制度では、在宅に特化した機能を持つ製品を開発するのに、 その 開発会社にインセンティブを与えていない。 さらに、製造会社は時に、患者、医師、看護師、薬剤師、 そして介護士の間で、 データの共有を可能にするインフラを 構築しなければならない。 インフラを構築するコストは全く償還されないことが多く、 あるいは、償還額が開発コスト を下回ることが頻繁である。 これとは別に、医師不足、特に地方の医師不足、 そして、 自宅で使用する医療器具が迅速に、 そして安全に提供され る必要性を考えると、厚生労働省は看護婦や臨床工学技士が家庭の場で、 サービスを提供することができるように、 システムを実行する必要がある。 政策提言 日本の高齢化する人口のニーズをより効率的そして効果的に満たすために、ACCJとEBCは厚生労働省に対して、 日 本で在宅医療のアクセスを改善し、拡大させるために以下の提言を導入することを求めていく。 OO 末期疾患から慢性疾患へと在宅医療の範疇と焦点を広げることで、患者が引続き働けることができるように支 援する。 OO 薬価基準、そして、診療報酬制度内で、投資への償還を行ない、在宅医療に使用される医療器具の改良にメ ーカーが投資することへのインセンティブを与える。 OO 看護師や臨床工学技士が家庭で行える医療介入の幅を広げる。 OO 診療報酬システムに在宅医療関連の医療器具の管理費を加える。
参考文献 1. 2. 3. 4. 5.
厚生労働省. Vital Statistics Data. National Institute of Population and Social Security Research January 2012 Future Population in Japan. 厚生労働省、Survey of Terminal Care. 内閣府 Attitude Survey for Elderly Persons、2007年 在宅医療・介護あんしん2012計画、厚生労働省医政局指導課、在宅医療推進室 www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/anshin2012.pdf および www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/index.html.
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健康寿命の延長による日本経済活性化 | 33
7.
食品因子の利用による健康増進
現状 社会の高齢化に伴い、健康の維持増進に対する人々の関心が高まっている。過去10年間、多くの食品成分の健康に 対する機能が明らかにされてきた。 それらの食品は様々あり、 一般食品や栄養補給食品などがある。 特定保健用食品 (トクホ) は、消費者庁によって保健の用途に係る表示を許可された食品区分である。 2007年から2011までを見ると、各年に新たに上市されたトクホはその間60%までに落ちこんでいる (図1)。 トク ホの多くは、 日本国内企業の製品であり、海外の企業はかなり限られる。 トクホは日本独自のもので、 その取得には 2億円ほど必要であろうともいわれている。 この経費が、海外の企業や中小企業にとっての参入障壁となっている。 ト クホの許可を受けた食品を有している企業の3/4以上が、資本金10億円以上の企業であることは認識すべき事実 である (図3)。 保健の用途に関わる表示を適正に実施することを目的とした栄養機能食品では、 ビタミンとミネラルに定められた基 準を満たす食品には、 それぞれに対応した健康の機能にかかわる表示を持つことができる。 トクホと違い、栄養機能 食品は原材料に基づいた機能表示のシステムである。 また、 それら製品の栄養機能表示は消費者にとって、分かり易 いものとなっている。 また、 トクホ以外にいわゆる”健康食品”と呼ばれる大規模な市場が存在し、 これらの製品はトクホの許可を受けてお らず、保健機能食品でもない。 しかしこれらの製品は、保健の用途をほのめかすキャッチコピーがなされている。 この いわゆる”健康食品”の市場は1兆1,500億円に達しており (図2)、 トクホの2倍以上の市場である。 この一群の食品 は保健の用途に類似した表示がなされていることもあるために、監督官庁の取締りの対象になることも多く消費者 の混乱を招くことがある。 この 「いわゆる健康食品」 の分野こそ成長の一途であり、消費者への啓発、 そして透明性が求められる。原材料に基 づいて機能表示より、消費者はより賢い選択ができよう。 政策提言 OO 科学的根拠に基づき食品素材の安全性を確保することで健康的なライフスタイルに寄与することができ、そ の手法には透明性、柔軟性、調和性、包含性が求められる。 OO 食品への機能表示を拡大する。こちらのプロセスにも透明性、柔軟性、調和性、包含性が求められる。 OO 消費者のために、安全性と適切な製造を確保する。こちらのプロセスにも透明性、柔軟性、調和性、包含性が 求められる。 • 透明性 -消費者の選択決定にかかる情報提供。 • 柔軟性 -消費者のニーズに合った形で製造側がコストに見合った方法を見出せる。 • 調和性 -海外企業にとって関税にかかる障害を避ける。 • 包含性 -企業規模にかかわらず公平なビジネスへの参加をもたらす。
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2013年5月
8.
インフルエンザ・パンデミックと生物災害時における公衆衛生対策の改善
現状 WHOが警告したように、疾病の発生は必然であり、予測不可能な場合が多い 「公衆衛生分野の中でも比類のない 特殊な」課題を伴う事象とされている。1 生物災害は、 まさにその本質により、地震や津波の場合とは異なった対応 が必要とされる。 生物災害には自然に発生するもの (新型インフルエンザ) と、人為的なもの(炭疽菌やサリン等の生物製剤を使用し たテロ攻撃等) がある。多くの国が前述の事態における政策やコミュニケーション管理のための広範な対策、 ガイド ラインを設けているにもかかわらず、 どれほど念入りに考え抜かれた対策であっても、過去何回にもわたり、突発的発 生、 もしくはその発生が危ぶまれる時点において、必ずしもそれが十分な対応策であるとは限らないことが判明して いる。 また、書面において有効に思えた対策が、実施段階において、著しく不十分なものであることを、多くの国が経 験している。 米国では、過去10年間にわたり“Top Officials”(TOPOFF)演習として知られている一連の 「市単位対応策」演習が 実施されている。例えば、2000年、疫病を引き起こすペスト菌が発生した場合のシミュレーションが、 デンバーで実 施された。2002年にはオクラホマ・シティーにおいて天然痘発生時のシミュレーション、 また最近では、 シカゴやニュ ーヨーク等の地域において、様々な疾患または生物製剤が伴う災害発生時のシミュレーションが行われている。 これ らの演習は大部分において、成果を挙げたと考えられているものの、公衆衛生対応能力に関する数多くの疑問も提 起された。 その中でも特に懸念されているのは、製造業者もしくは国の備蓄から使用可能な医薬品の十分かつ迅速 な供給、 および主要関係者間での効果的なコミュニケーションの欠如である。2 効果的なコミュニケーションは、公衆衛生を守り、 インフルエンザ・パンデミックおよびほかの生物災害の影響を抑制 する上で、極めて重要であることが証明されている。発生時におけるパブリック・コミュニケーションは本質そのもの が複雑であり、 また社会心理的および公衆衛生的影響を伴うものである。WHOによるコミュニケーション・ガイドラ インは早期発表と透明性、信頼の構築に焦点を当てている。3 しかしながら、実際の危機的状況においては、 これらのガイドラインを守っている国ですら、 すぐに混乱状態が発生 し、公衆衛生対策の有効性が損なわれてしまう場合がある。 これは、異なる政府階層、医療従事者、 メディア、 自治体 職員、 ならびに住民自身の間で異なった内容のメッセージが発信・受信される場合、 特にその傾向が強い。4 このよう な混乱状態により、世界的に流行する疾病の罹患者またはほかの生物災害の被害者が十分な医療を受けられなく なったり、 その時点において、 感染が認められていない人達を十分に感染から保護できなくなってしまう場合がある。 現行政策 日本が災害対策のあらゆる側面において世界的リーダーであることは周知のことであるが、 日本における、政府や民 間団体によるそれら災害対策の大部分は、地震、津波、台風、洪水、火山噴火等の自然災害に重点を置いた取組みに なっている。5 2011年3月11日に発生し、壊滅的な打撃をもたらした東日本大震災でも明らかなように、 このような 自然災害に焦点を合わせた対策は適切かつ必要である。 しかし、 日本では生物災害における、公衆衛生を守るため の政策およびガイドラインが設けられている一方で、 それらの政策の実施に関しては、相当な改善の余地があること が、2011年の東日本大震災により判明した。 日本は、過去数十年の間に自然災害(2005年および2009年の鳥インフルエンザの流行、2009年の豚インフルエ ンザの流行等) そして人為的生物災害(1994年の地下鉄サリン事件) の両者を経験している。 また、 日本では将来起 6 こり得るインフルエンザ・パンデミックに備えた対策が設けられており、 感染症法において隔離の必要性や医療従 事者への通知等の様々な公衆衛生上の事態に関する規定がなされている。 しかし、2009年のインフルエンザの流行 を受け、厚生労働省は国による対応を再検討するため、40人の専門家から成る対策委員会を招集した。 その対策委 員会による報告書(2010年6月発表) において、現行公衆衛生政策およびその実施方法において多数の欠陥が指摘 されている。7 本報告書は全文一読に値する内容であるが、数多くの問題も指摘されている。 中でも特に、専門家達 が挙げている懸念の多くは、 ごく少数の主要な欠陥に起因するものである。 これらには、 ワクチンや抗ウィルス薬を迅
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速かつ効果的に供給する上での不備、病人や健康な国民の医療、 および公衆衛生上のニーズに対応するための医療 従事者や地域保健師の育成不足、災害発生時に重要な役割を担う政府関係者と民間関係者間のコミュニケーショ ンの効率の悪さ等が挙げられる。 政策提言 OO パンデミックまたは生物災害の早期特徴を認識できるよう、地域や医療従事者、一般開業医に対して、より包 括的な研修を行なう。 OO 患者と政府機関双方とのコミュニケーションに関する明確なガイドラインを構築。 OO 政府と県・市医療従事者間における連携およびコミュニケーションの改善。 OO 患者が大幅に増加した場合の各地域の医療機関(病院、医師、看護師、薬剤師等)による患者受入れ体制と 治療提供能力を慎重に分析し、受入れ体制を拡大する必要がある地域に関しては適切な改善策を策定。 OO 必要に応じた戦略的地域備蓄品を増やし、必要とされるワクチン、抗ウィルス薬、その他の医薬品、薬剤、機 器および供給品確保を改善。さらに、海外のワクチンや抗ウィルス薬の迅速な許可手続の策定。 OO ウィルス株の危険性が低減した場合、それに適応できるよう国際機関との連携を改善。 OO WHOのOutbreak Communications GuidelinesおよびCDCのCrisis and Emergency Risk Communications Guidelinesにおける追加項目を政府パンデミック対策行動計画に反映し、 内容を更新。8
参考文献
1. “Outbreak Communication Guidelines, World Health Organization, 2005, accessed at http://www.who.int/infectious-disease-news/IDdocs/whocds200528/whocds200528en.pdf. 2. Gage, Larry, “Public Health and Bioterrorism”, Book chapter in Homeland Security Law Handbook”, Government Institutes, 2003; see also Clarke, David, “Amid Terror Attack Warnings, Hospitals Say They Are Ready”, Congressional Quarterly Homeland Security – Local Response, 13 March 2003. 3. WHO Outbreak Communication Guidelines, supra. 4. Abraham, Thomas, “Risk and Outbreak Communication: Lessons from Alternative Paradigms”, Bulletin of the World Health Organization, 2009; 87:604-607; see also Fidler, David P., “Negotiating Equitable Access to Influenza Vaccines: Global Health Diplomacy and the Controversies Surrounding Avian Influenza H5N1 and Pandemic Influenza H1N1,” Public Library of Science Medicine Global Health Diplomacy Series, 4 May, 2010. 5. Rauhala, Emily, “How Japan Became a Leader in Disaster Preparation”, Time Magazine, 11 March, 2011-08-09. 6. “Pandemic Influenza Preparedness Action Plan of the Japanese Government”, Japanese Ministry of Health, Labour and Welfare, 2005, updated 2009, accessed at http://mhlw.go.jp/english/topics/influenza/pandemic01.html. 7. “Report of the Review Meeting on Measures Against Pandemic Influenza (A/H1N1),” 10 June, 2010, accessed at http://www.mhlw.go.jp/english/topics/influenza/dl/influenza.pdf. See also Fukuda, K, “2009 Influenza (H1N1) Pandemic: Lessons For Going Forward.” Presentation at the Forum of National Threats Workshop…, Global Challenges, Global Solutions”, 15 September, 2009. 8. WHO Outbreak Communication Guidelines, supra; “Crisis and Emergency Risk Communication”, U.S. Centers for Disease Control and Prevention, accessed at http://www.bt.cdc.gov/cerc/overview.asp.
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9. 喫煙や受動喫煙の抑制による慢性疾患の予防
現状 喫煙が肺がんをはじめとする多くのがん、心筋梗塞や脳卒中、慢性閉塞性肺疾患など、多くの疾患の原因となるこ と、 また、禁煙によってリスクが減少し、健康改善ができることは、科学的に証明されている。WHOは 「喫煙は病気の 原因の中で予防できる最大のもの」 と述べている。1 そして喫煙はWHOの国際傷害疾病分類第10版(ICD-10) に おいて 「精神作用物質による精神および行動の障害」 に分類され、 ほとんどの喫煙者は自分で禁煙することが難しく、 依存症を克服するにはサポートが必要である。2 日本でも喫煙は依存症の一つとして認識され、2006年から 「ニコ チン依存症管理料」 として禁煙治療が診療報酬で評価されるようになった。3 日本における3つの大規模なコホート研究を統合した結果では、2005年の日本人死亡者108万4,000人のうち喫 煙と関係がある疾患で死亡した男性は11万2,000人、女性は1万9,000人で、合計13万1,000人と推計されてい る。4 さらに現在では、受動喫煙が疾病や障害、重篤な疾患による死亡を引き起こすことが科学的に確認されてい る。受動喫煙の被害を防ぐためには、屋内を完全に禁煙にすること以外に有効な方法はなく、WHOはすべての屋内 の職場・公共の場の禁煙を義務付けることを勧告している。 また、屋内の禁煙環境は禁煙を希望する喫煙者にも有 用であり、職場の禁煙化により、絶対的な喫煙率を低下することができると報告されている。5 わが国の成人喫煙率は2011年国民健康・栄養調査で平均19.5%、男性は2003年の46.8%から2011年の 32.2%と減少傾向にあり、女性では2011年8.4%でほぼ横ばいに推移している。 しかし、特に30代から50代男性の 喫煙率は40%を超えている。女性の20代~40代では13%~14%と喫煙率が高い。6 1年間に発生する喫煙による経済的損失の推計の一例を挙げると、喫煙者の超過医療費1兆6,200億円、受動喫煙 者の超過医療費1,400億円、超過介護費4,800億円、労働力損失3兆9,300億円、火災や清掃による損失1,900億 円で合計6兆3,600億円と試算されている。7 全国屋内労働者8,000人を対象にした職場の喫煙環境や受動喫煙による健康被害、 ビジネスへの影響等の調査 によると、屋内労働者の64%が法律や条例での全面禁煙が義務付けられることに賛成している。 また法律や条例 で全面禁煙が義務付けられた場合、 ビジネスへの悪影響があると思う屋内労働者は16%と少なかった。屋内労働 者の58%は受動喫煙の健康への影響を心配しており、81%が全面禁煙、 または完全分煙(煙が漏れない) を望ん でいる。8 現行政策 日本政府は2003年5月、健康増進法第25条で公共の場において受動喫煙を防止する法律を施行した。本法は罰 則がなく努力義務を規定したものだが、 この法律によって自主的な禁煙化が徐々に広がってきた。 また日本は2004 年6月、WHOの 「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」 を批准した。 同条約は2005年2月に発効され、諸 外国において規制強化が進む中、 日本では、未成年のタバコの購入を防止するタスポの導入を含む条約への取組み が実施された。 禁煙支援については、2006年からニコチン依存症の治療に公的医療保険の適用が認められているが、一日喫煙本 数x喫煙年数=200以上の者、 という認定要件が設定されており、若年喫煙者が事実上除外されている。 また2009年12月税制大綱において、国民の健康の観点から、 たばこの消費を抑制するため、将来に向けて、 たばこ 税を引き上げていく必要があることが示され、2010年10月1日たばこ税率が引き上げられた。 これにより2011年1 9 ~12月の紙巻きたばこ販売数量は前年比11%減少したが、販売額は4兆632億円で前年比16%増加した。 過去1年間の政策の進捗状況:部分的に改善 2012年6月に閣議決定された 「がん対策推進基本計画」 では、2022年度までに喫煙率を12%に引き下げる数値目 標が初めて盛り込まれた。受動喫煙の防止に関して、2012年に発表された次期「健康日本21」 では以下の目標値が 設定された。10
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行政機関における受動喫煙の機会を2008年の16.9%から2022年度までに0%へ引き下げる。 医療機関における受動喫煙の機会を2008年の13.3%から2022年度までに0%へ引き下げる。 職場における受動喫煙の機会を2011の64%から2020年度までに0%へ引き下げる。 飲食店における受動喫煙の機会を2010年の50.1%から2022年度までに15%へ引き下げる。
2011年12月労働者を受動喫煙から守る対策として、事業主に全面禁煙、空間分煙を義務付ける労働安全衛生法 の改正案が閣議決定された。事業者に職場での全面禁煙か煙の漏れない喫煙室設置による 「空間分煙」 を義務付け るとした労働安全衛生法の改正案について、2012年8月に義務化を見送り、努力義務にとどめることで国会での成 立を目指したが、2012年11月16日衆議院解散に伴い、廃案となった。 政策提言 OO 労働安全衛生法の一部を改正する法律案を国会で成立させ、受動喫煙を防止するための装置として、職場の 全面禁煙、 または煙の漏れない喫煙室設置による 「空間分煙」 への努力を事業者に義務付けるべきである。 OO 2014年および2015年に予定されている消費税増税の影響を配慮しつつ、健康増進のため、 さらなるたばこ税 増税を検討すべきである。
参考文献
1. WHO report on the global tobacco epidemic, 2011. 2. WHO International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, 10th edition (ICD-10). 3. 厚生労働省最新たばこ情報 http://www.health-net.or.jp/tobacco/front.html 4. Katanoda K. et al. Population attributable fraction of mortality associated with tobacco smoking in Japan: a pooled analysis of three large-scale cohort studies. J Epidemiol.188:251-264, 2008. 5. Fichtenberg CM, Glantz SA. Effect of smoke-free workplaces on smoking behavior: Systematic review. BMJ 325:188-191, 2002. 6. 厚生労働省 平成21年国民健康・栄養調査 7. (財) 医療経済研究機構:禁煙政策のありかたに関する研究~喫煙によるコスト推計~報告書 2010年7月 8. 「受動喫煙に関する屋内労働者8,000 人の意識調査、 ~労働安全衛生法改正で注目が集まる職場の受動喫煙対策~」 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 コンシューマー カンパニー、2012年7月19日発表 http://www.jnj.co.jp/group/press/2012/0719/index.html および http://www.jnj.co.jp/group/press/2012/0719/pdf/20120719.pdf 9. 社団法人日本たばこ協会 2012年1月27日発表資料 10. 平成24年7月 厚生科学審議会地域保険健康増進栄養部会「健康日本21」 (第2次) の推進に関する参考資料
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10. 眼科医による包括的検査で異常の早期発見
現状 日本の医療標準によると、 日本では164万人が何らかの視力障害を抱えており、 そのうちの18万8,000人が失明と 認定されている。全体の72%は60歳以上の高齢者である。2009年9月の日本眼科医会の発表では、視力障害の社 会的コストと労働生産性の損失は、推計で年間8.8兆円と算出されている。1 また、 日本眼科医会では、2030年ま でに視力障害とそれがもたらす社会的コストは、2009年の水準からおよそ25%上昇するだろうと推測している。1 眼科医による眼科的検査は、視力補正のために近視などの程度を測定することよりも、はるかに重要であり、緑内 障、糖尿病網膜症、加齢性黄斑変性症などの眼疾患はもとより、視力低下から失明につながる可能性のある斜視や、 弱視などの視機能障害の早期発見のためにもその重要性は高い。 視力障害や失明への進行を防ぐには、早期発見と適切な時期での医学的な処置が必要であり、6歳以下の幼児と 40歳以上の成人に対しては特に重要である。眼科医による眼科的検査では、眼底(眼球内部の網膜など)の血管 や視神経が検査されるが、ここには高血圧、糖尿病、高脂血症、脳卒中、心臓病などの全身疾患の初期兆候が現 れる。 最近の全国調査では、眼の検査を受けるのは、主に眼鏡やコンタクトを購入する際、健康診断の際、 あるいは免許更 新時に受ける場合が多い。過去1年間で眼の検査を受けてない人は33%であった。40歳以上の成人で眼科医によ る散瞳薬を用いた眼底検査を受けていた人はわずか6.5%(40歳代)~17.7%(70歳代) であった。同調査で、4歳 以上の子どもがいる対象者に、子どもが小学校入学前に眼の検査を受けたかどうかの質問に対し、眼の検査を受け ていないと答えたのが全体の16.6%であった。2 就学時健診は、学校保健安全法で自治体の教育委員会に義務付けられており、 同法の施行規則で、国際標準に準拠 した視力表を用いて左右別の裸眼視力を検査することや、眼の異常に注意するなどの基準が定められている。 しかし ながら、 日本眼科医会が2008年11月に、幼稚園や市町村教育委員会に対し実施した調査によれば、回答があった 190市町村のうち172(90.5%) は就学時検診において義務付けられている目の検査を実施していたものの、大阪 府、神奈川県、福岡県等の17市町村は行っていなかった。眼科医による健診が実施されていた市町村は46.8%であ 3 った。 多くの諸外国においてコンタクトレンズの販売の際、眼科の受診(処方箋) の確認が法律や規制で義務付けられてい るのに対して、 日本では義務付けられていない。 日本では角膜潰瘍、 角膜炎等の重篤な眼障害が報告されており、 そ の原因としては手入れの不良、長時間の装用、 などの不適切な使用によるもののほか、 その危険性が購入時に使用 者に対して十分説明されていないこと等、 が指摘されている。4 現行政策 「健康日本21」 で示されている国レベルでの国民の健康増進・生活習慣病予防のための数値目標には眼や視覚に 関する目標値は設定されていない。5 それに対し、米国保健社会福祉省(HHS) の 「Healthy People 2020」 の 健康増進と疾病予防の10年間の目標値には眼および視覚に関し、8項目の目標値を掲げている。6 日本の成人の 60%が毎年健康診断を受け、 そこで何らかの眼の検査を受けているものの、眼科医による散瞳下眼底検査を含む眼 科的検査は、現状では特定健診における法令上の必須項目とはされていない。 日本ではコンタクトレンズの販売の 際、眼科の受診(処方箋) の確認が法律や規制で義務付けられていない。 政策提言 人々の健康増進を図るために、国の健康政策の中に、下記のような 「眼の健康」に関する目標を設定する。 OO 5歳以下の未就学児に対する視力検査の受診率を、100%まで向上させる。 OO 眼科医による指導に基づく、 コンタクトレンズ販売を徹底させる。 コンタクトレンズ装用者に対する不適切な使 用による眼障害に関する情報提供や、定期的な眼科受診が徹底されることにより、 コンタクトレンズ装用による 眼障害の軽減を図る。
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成人の目に対する公的な健診プログラムの創設。疾病ごと (糖尿病網膜症、緑内障、 白内障、加齢性黄斑変性 症) の視力障害の減少を目指して、成人における散瞳下眼底検査を含む眼科医による眼科的検査の受診率向 上。特に、40歳以上の年齢層に対して眼底の血液細管と視神経に現れる糖尿病に起因する眼病の予兆を早期 に見つけるため、総合的な眼検診を義務化する必要がある。
参考文献
1. 社団法人日本眼科医会 2009年9月17日発表「視覚障害がもたらす社会損失額8.8兆円」 2. ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査:報告書」2011年11月 http://www.accj.or.jp/ja/about/committees/committee-materials/cat_view/13-materials/56-healthcare 3. 「平成20年幼稚園ならびに就学時の健康診断の実態に関するアンケート調査」、 日本の眼科 80:9号(2009)、社団法 人日本眼科医会学校保健部 4. 「コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供などの徹底について」、 (薬食発0718第15号)、厚生労働省医薬食品局、 平成24年7月18日 5. 健康日本21の公式ホームページ、http://www.kenkounippon21.gr.jp/. 6. Healthy People 2020の公式ホームページ、http://healthypeople.gov/2020/topicsobjectives2020/.
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11. 口腔ケアによる虫歯および歯周病予防の推進
現状 歯の健康は食物を咀嚼するだけでなく、食事や会話を楽しむなど高い生活の質を維持するためにも重要である。近 年、 口腔の異常が全身の健康状況にも影響することを示唆する科学的な証拠が増えてきた。1 一般の人々の口腔への意識も徐々に高まり、厚生労働省が実施する6年に1回の歯科疾患実態調査の結果では1 日に2~3回歯磨きをする人の割合が、年々上昇する結果となっている。2 一方、 日本人のオーラルケア意識が向上 し、歯磨き習慣は改善されているにもかかわらず、2011年の調査では20歳以上の約70%以上が歯周病に罹患し、 若年層・高年齢層においては、2005年の調査よりもその割合が増えている。2 米国ではアメリカ歯科医師会 (ADA) が歯磨きに加え歯間部清掃とマウスウォッシングを推奨した結果、 歯間清掃具 やマウスウォッシュの使用率は日本に比べて高く、 日米間で高齢者の残存歯数に明らかな違いが生じているのは、 日 常のセルフケアの違いが一つの要因として考えられる。3, 4 現行政策 21世紀に向けた厚生労働省の健康づくりキャンペーンの 「健康日本21」 では、歯の喪失防止と喪失の原因となる虫 歯と歯周病の予防について、歯科に関する政策目標が設定され、2011年10月に厚生労働省が最終評価をまとめ た。 その結果、13指標のうち、 目標値に達した項目は80歳で20歯以上、60歳で24歯以上の自分の歯を有する人の 増加、過去一年間に定期歯科検診を受けた割合など、 目標値に達した5項目、改善傾向にある7項目、変化なし1項 目であった。5, 6 これは健康づくりキャンペーンによる、行動変容(歯間清掃具やマウスウォッシュの使用率等)と歯磨 き剤のフッ化物の効果がもたらしたものと考えられる。 その結果を受け、厚生労働省は、2012年7月に国民の健康増進の総合的な推進を図るために 「健康日本21」 (第2 次) の基本的方針を見直して全面改定を行い、歯・口腔の健康に関して、2022年度に向けた新たなる目標値を設定 した。 また、2011年8月に 「歯科口腔保健の推進に関する法律」 が公布され、我が国の歯科関係の法律として56年 ぶりに新法が制定され、定期的な歯科検診などが勧奨されている。 一方、歯科医の多くが、 虫歯や歯周病で悪くなった部分を治療するだけではなく、健康な状態を維持する事の重要性 から、 口腔内のチェックや虫歯、歯周病の検査と定期清掃に取り組むようになった。 しかし、現在の健康保険診療報 酬制度では、患者への早期の治療や教育に対する報酬が、治療時の報酬と比べて低いのが現状である。 2010年、 「生きがいを支える国民歯科会議」 から出された提言を基盤としてマスメディアを積極的に活用し、国民に 広く、深く伝わる情報提供を推進するとともに 「80/20健康長寿社会」 の意義についても周知を図るなど、積極的な 予防歯科での展開がなされている。 過去1年間の政策の進捗状況:若干進展あり 2012年7月に厚生労働省が発表した健康日本21(第2次) の健康増進政策目標には、2022年に向けた歯科に関 する数値目標が10項目盛り込まれた。7 政策提言 OO 歯周病の予防を一層強化するために歯科医師、歯科衛生士による従来の歯磨き指導に加え、さらに個々人の 口腔状態に基づいた歯間部清掃(歯間ブラシやデンタルフロス)の指導や化学的プラークコントロール(マウ スウォッシュ)の使用を推進する必要がある。 OO 若年層に多い歯肉炎の予防促進のために、児童の歯磨き教育の中に歯間部清掃(歯間ブラシやデンタルフロ ス)の指導を、追加して取り入れる必要がある。 OO 健康保険診療報酬制度は、患者に虫歯と歯周病の予防について指導をする歯科医に、より多い報酬で報いる べきである。
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フッ化物応用をさらに進め、歯磨き剤以外の一般向けオーラルケア製品(医薬部外品のマウスウォッシュなど) にも活用できるように検討すべきである。
参考文献 1.
2. 3. 4. 5. 6. 7.
からだの健康は歯周病予防から、歯周病と全身の健康に関する最新ガイド、14~27ページ、2009年、 日本歯科衛生士会 発行 2011年歯科疾患実態調査、厚生労働省調査 ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査:報告書」2011年11月 http://www.accj.or.jp/ja/about/committees/committee-materials/cat_view/13-materials/56-healthcare 「国際口腔保健データバンク (日本と海外の歯科疾患実態調査の国際比較)、8020 推進財団」 8020推進財団ホームページ(www.8020zaidan.or.jp) 健康日本21ホームページ(www.kenkounippon21.gr.jp) 平成23年10月13日厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室「健康日本21」最終評価 平成24年7月 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会「健康日本21(第2次) の推進に関する参考資料
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50 | 健康寿命の延長による日本経済活性化
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2013年5月
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健康寿命の延長による日本経済活性化 | 51
12. 睡眠時無呼吸症候群の検診の普及
現状 睡眠時無呼吸症候群患者の健康維持管理にとって、早期発見は最重要課題である。日本には300万人を超える 睡眠時無呼吸症候群患者(成人人口の有病率は2~4%)がいるにもかかわらず、2012年度時点ではわずか25万 人(有病者の約8%)しか治療を受けていない。1 これは自らの健康状態に気づかず、病状も認識せず、適正な治 療を受けていない「潜在患者」が、多数存在しているということである。睡眠時無呼吸症候群は睡眠を分断し、慢 性的な眠気を引き起こすばかりか、高血圧、心臓麻痺、脳卒中、心臓不整脈のような深刻な循環器疾患を引き起 こす要因となる。 いくつかの研究では、適正な治療を受けていない場合、睡眠時無呼吸症候群患者の累積生存率は、治療を受けてい る患者と比べると大幅に低くなるということが立証されている。2 日本で提供される治療は先進国と同等であるにも かかわらず、潜在患者に睡眠ラボで検査を受けさせるための努力は、不十分である。未診断・未治療の睡眠時無呼吸 症候群は社会に大きな損失をもたらす。未治療睡眠時無呼吸症候群患者は、睡眠時無呼吸症候群に罹患していな い人に比べ、 自動車事故率が7倍も高いと推定されている。3 日本では、2003年に起きた新幹線運転士の居眠り 事故が、 よく知られている事例である。 現在米国で持続陽圧呼吸療法(CPAP)を受けている睡眠時無呼吸症候群患者数は300~500万人おり、 日本の 20~30倍に相当する。4 この数字は米国で睡眠検査が幅広く普及していることによる。人口1万人につき、 日本では 睡眠ラボ1床であるのに対し、米国では5〜10床であると推定されている。 また米国では睡眠時無呼吸症候群の発 見に対し、医師に診療報酬として平均1,000~1,500ドルという大きなインセンティブがある。睡眠時無呼吸症候群 が引き起こす合併症の深刻さを考えれば、 その予防と治療は公衆衛生に必要な投資といえる。 現行政策 現在、厚生労働省は終夜睡眠ポリグラフィー、 および簡易式の携帯終夜睡眠ポリグラフィー(脳波計測機能なし) に よる睡眠検査の診療報酬を認めているが、PSG検査の診療報酬金額は1検査当り、 わずか33,000円(一泊入院) で、 これには部屋代や睡眠ラボ技術者の人件費は含まれていない。報酬レベルの低さは医師にとって診療の十分な 動機付けになっておらず、 もう一方で、患者にとっては自己負担額の多さが、睡眠時無呼吸症候群検査を受ける機会 の減少につながっている。 健康保検制度によるCPAPの導入基準に関しては、欧米の多くの国では1時間あたりの無呼吸・低呼吸指数が5以 上で導入が可能なのに対して、 日本では20以上と基準が非常に高く、他国では治療を受けられる患者でも、 日本で は適切なCPAP治療が出来ない。 定期的に行われる健康診断は、 様々な生活習慣病の早期発見の重要な機会となっている。 睡眠時無呼吸症候群を治 療しない場合、 多くの生活習慣病に結びつくことが懸念される。 健康診断における睡眠時無呼吸症候群の検査につい ては、 国土交通省より2003年3月に出された事業用自動車の運転者に対する通達のみで、 一般従業員に対する指針 5 はない。 睡眠時無呼吸症候群罹患率が20%程度といわれている成人男性に対しては、 何の指針も示されていない。 さらに女性においては、閉経後に女性ホルモンの分泌が低下する事により、閉経前に比べ睡眠時無呼吸症候群の発 症率が2~4倍程度高くなるという報告がある。6 また、女性の睡眠時無呼吸症候群は男性の睡眠時無呼吸症候群 と異なり、 日中の眠気やいびきを伴わない場合が多く、 自身や第三者に指摘されない事も多い。放置すると様々な生 活習慣病の引金となり、危険度が高くなるため睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査に対する取込みが必要で ある。 政策提言 OO 政府は、睡眠時無呼吸症候群検査の公的医療保険制度の診療報酬レベルを引き上げる。 OO 睡眠検査がより充実しているほかの先進国に肩を並べるには、CPAP治療の導入基準の見直しが必要である。 OO 定期健康診断時の取組みとして、成人男性と閉経後の女性への検査実施を提案する。
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参考文献 1.
2. 3. 4.
5.
6.
Japanese Association of Medical Doctors in Drug Industries (JAMDI) SAS Committee industry survey JAMDI (日本製薬医学会)は2002年に、名称をthe Japanese Association of Pharmaceutical Medicineに変えた。 (www.japhmed.org). The American Sleep Apnea Association (www.sleepapnea.org) および the American Academy of Sleep Medicine (www.aasmnet.org). Findley L: American Review of Respiratory Diseases 138: 337 (1988). Young T, Palta M, Dempsey J, Skatrud J, Weber S, Badr S (April 1993): “The occurrence of sleepdisordered breathing among middle-aged adults.” The New England Journal of Medicine. 328(17): 1230-5 (Wisconsin Sleep Cohort Study). Nakayama-Ashida Y, Takegami M, Chin K, et al: Sleep-disordered breathing in the usual lifestyle setting as detected with home monitoring in a population of working men in Japan. Sleep 2008:31:419-425. Yukawa K, Inoue Y, Yagyu H, et al: Gender difference in the clinical characteristics among Japanese patients with obstructive sleep apnea syndrome. Chest 2009; 135:337-343.
2013年5月
健康寿命の延長による日本経済活性化 | 53
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13. 糖尿病リスクの予防と管理
現状 予防医学が重要である代表的な疾患は 「糖尿病」 である。 日本の糖尿病はインスリンの分泌不足や作用不足により、 慢性の高血糖状態となる2型糖尿病が90%以上を占めている。現在、 日本では890万人が「糖尿病と強く疑われる 人」、1,320万人が 「糖尿病予備軍」 であり、合計すると2,210万人が糖尿病患者となる、 と推定される。1 近年のラ 1 イフスタイルの急激な変化が、糖尿病を患う人の劇的な増加の背景にあると見られる。 慢性的に高血糖状態が続 くと、冠動脈疾患、糖尿病性網膜症、腎症などの深刻な合併症が起き、生活の質の低下は甚大となる。重篤なケース では、糖尿病で失明や四肢の切除を招くことがある。 しかし、 「糖尿病と強く疑われる人」 の約4割がほとんど治療を 2 受けたことがないという現状がある。1 また、年間約1万4,000人もの人が、糖尿病が原因で死亡している。 これら 3 の現状により、2007年の日本の糖尿病関連の医療費は約1兆1,500億円にも膨らんでいる。 米国では糖尿病の直接医療経費は1,160億ドルで、 身体障害、欠勤時間、若年者の死去を含めた間接的な経済費 4 用は580億ドルである。 日本には同様の経済費用のデータはないが、経済的な負担は、大きく増加しているとみら れている。 糖尿病は食事や運動の生活習慣の改善よって予防が可能で、合併症の発症を遅らせることができるが、 自覚症状が 乏しいために早期発見が難しい。 このため、血糖値測定や眼底に現れる血管のチェックを含めた定期健診が、糖尿 病の早期発見には重要である。 また、在宅で血糖の自己測定が一般的にできることによって、糖尿病発症の予防とよ り健康的なライフスタイルを維持することができる。5 現行政策 日本は、糖尿病患者数を2015年までに25%減らし、2015年には特定健診受診率を80%に引き上げる等の政策目 標を掲げた。2008年の特定健診受診率は38.9%であった。6 早期発見の方法の一つとして、特定健診・保健指導 制度が2008年に導入された。 これにより、 日本は国際的に糖尿病と闘う先導的地位にあるとみられている。血糖自 己測定についての診療報酬は、2008年まで糖尿病が進行したインスリン注射を必要とする糖尿病患者にのみ限定 されていた。 その後、2008年4月に、200床未満の病院において、 インスリン注射を必要としない糖尿病患者の血糖 値自己検査について、年1回に限り5,000円の診療報酬が開始された。 過去1年間の政策の進捗状況:やや改善 2013年4月から開始する予定の健康日本21(第2次) では、糖尿病に関する目標が4つ設定される方針が決定:7 1) 合併症(糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数) の減少。 目標:2010年の1万6,247人から2022年 度までに1万5,000人に減少。 2) 治療継続者の割合の増加。 目標:2010年の63.7%から2022年度までに75%に増加。 3) 血糖コントロール指標におけるコントロール不良者(HbA1cがJDS値8.0%以上)の割合の減少。目 標:2010年の1.2%から2022年度までに1%に減少。 4) 糖尿病有病者の増加の抑制。 目標:2007年の890万人から2022年度までに、予想される1,410万人を 1,000万人に抑制。 政策提言 OO インスリン投与を必要としない患者の糖尿病進行を遅らせるため、日本政府は在宅での血糖自己測定の診療 報酬適用を拡大する必要がある。 OO 糖尿病予備軍は空腹時血糖値は正常であるが、食後血糖値が高値となる傾向がある。糖尿病発症予防のた め、在宅での血糖自己測定においては、一般的に実施されている空腹時血糖値だけでなく、食後の血糖値の 測定も実施する必要がある。 OO 血糖自己測定への日本特有の制度としての薬事規制を緩和し、ほかの多くの国で認められている自己検査製 品の店頭売り(OTC)を日本でも認める必要がある。 OO 40歳以上の年齢層に対して、眼底の血液細管と視神経に現れる糖尿病に起因する眼病の予兆を早期に見つ けるため、総合的な眼検診を義務化する必要がある。8
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OO
肥満手術は、非重度肥満(BMI35未満)の2型糖尿病患者にとって、効果的で安全な治療選択肢として検討す べきである。近年の研究では、手術により得られる代謝改善効果が、長期的に持続することが示されている。9
参考文献
1. 2. 3. 4. 5. 6. 7.
厚生労働省 平成19年度 国民健康・栄養調査 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1225-5d.pdf 厚生労働省 平成18年 人口動態統計の概況 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei06/hyo7.html 厚生労働省 平成19年度 国民医療費の概況 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/07/dl/data.pdf American Diabetes Association 2007 National Diabetes Fact Sheet (www.diabetes.org/diabetes-statistics.jsp). WHO Fact Sheet 312, November 2009. (http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs312/en/) 厚生労働省 第9回健康日本21推進国民会議資料(平成21年3月2日開催) http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0302-8j.pdf 平成24年7月、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会、次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会の 「健康日 本21(第2次) の推進に関する参考資料」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/index.html 8. 国際糖尿病連合(International Diabetes Federation:IDF)FACT SHEET: Diabetes and eye disease. (http://www.idf.org/fact-sheets/diabetes-eye-disease). 9. 2011 Blackwell Publishing Ltd, Diabetes, Obesity and Metabolism 14: 262–270, 2012. Metabolic effects of bariatric surgery in type 2 diabetic patients with body mass index < 35 kg/m.
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14. 脳卒中の予防と包括ケア
現状 日本における主な死因には、 がん、脳卒中、心臓疾患が含まれる。 中でも脳卒中は総医療費の10%を占めており、患 者数は2020年までに現在の150万人から、300万人に増加すると見込まれている。 日本における脳卒中患者の平 均的な入院日数は119日となっている。 日本政府が強力なリーダーシップを発揮し、適切な投資を行えば、 日本は、 世界に誇る脳卒中の早期診断にかかる仕組みを、構築できる可能性がある。 脳卒中の中でも、脳虚血性疾患の患者は、薬が有効とされる、発症後3時間以内に血栓溶解剤の投与を必要とする が、 日本における適用率は2%以下に留まっている。医師不足と医療格差に加え、適切なITの活用がなされていると は言い難く、緊急医療の連携が不十分な状況である。適切な医療処置を受けなかった場合、脳卒中患者は障害が残 り、 身体の麻痺や、会話も困難な状況になるケースも多い。 これらの後遺障害は、寝たきりの原因の40%を占めてい る。 また、 リハビリに関する医師と介護スタッフの情報連携にも課題がある。 これは、患者の生活の質に大きな影響を 与えることとなる。加えて、介護をする家族や、地域に対する経済的負担や生産性の損失も著しい。 現行政策 2006年の診療報酬改定により、脳卒中ケアユニットを導入する医療機関に対して、570点の加点が新設された。脳 卒中ケアユニットを導入するにあたっては、24時間365日の緊急対応体制が義務付けられ、脳卒中発症から3時間 以内に血液溶解剤を投与するとともに、 リハビリに関連する追加的条件が要求されている。 こうした地域医療連携に 向けた取組みはあるものの、脳卒中のより効果的な予防や早期診断、 回復後のリハビリを支援するために、積極的な ITの活用が求められている。予防戦略に投資をし、脳血管の健康を維持することで、発症を未然に防ぎ、患者に対し ても長期的かつ持続的な改善を実現することができる。特に、東日本大震災の被災地では、 引続き厳しい生活を強 いられている高齢者が少なくなく、健康状態も悪化している。 これらの人々は、脳卒中を発症する危険度も高く、 いざ という時には早急な対応が求められる。 政策提言 OO 国による脳卒中の早期診断と包括ケアの計画策定。 OO 脳卒中基本法の制定。 OO 社会全体で、脳卒中に関するモニタリングの実施、早期診断、早期介入の重要性を認識するような啓発活動 の実施。 OO 脳卒中の高リスク患者に対して、定期的な診断や介入を施すことの奨励。 OO 地域における脳卒中ネットワークの推進。 OO 長期ケアに関する病院と在宅ケアサービスの連携強化。 OO 高リスク患者、プライマリーケアに携わる医師、救急、タクシー運営会社等に対して、脳卒中ケアユニットの設 置場所についての周知徹底。 ケーススタディ:カナダ、オンタリオ州の脳卒中ネットワーク オンタリオ州は、 カナダで2番目に大きな州である。 人口は1,300万人を有し、 カナダの総人口の1/3を占めている。 年 間の脳卒中患者数は2万5,000人で、 そのうち1万5,300人が長期入院を余儀なくされている。 オンタリオ州全体で は、 9万人以上が身体的な障害に苦しんでいる。 その結果、 脳卒中にかかる医療費は、 カナダの全医療費の3%以上を 占めている。 オンタリオ脳卒中ネットワークは、革新的で協調性のある組織として、 オンタリオ住民の脳卒中予防に注 力している。 オンタリオ脳卒中ネットワークは、 オンタリオ脳卒中システムの信頼されるアドバイザーとして、地域の取 組みや事業をリードし、患者の回復、 システムの効率性、 ケアへのアクセスを実現する総合的な戦略を、患者とともに 推進している。 オンタリオ脳卒中ネットワークは、9カ所の地域脳卒中センターから構成されており、 それぞれが16カ 所の地区脳卒中センターと連携し、 さらに地域のプライマリーケアセンターとも連携をとりあっている。脳卒中による 院内年間死亡率に関して、 2003年4月~2007年8月の間に年間で6%の削減 (年齢・性別調整後) を達成している。 参考文献 1.
Ontario Stroke Network, http://www.ontariostrokenetwork.ca/index.php.
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60 | 健康寿命の延長による日本経済活性化
2013年5月
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健康寿命の延長による日本経済活性化 | 61 2008~9
15. 末梢動脈疾患の早期発見を促進するために
現状 末梢動脈疾患は動脈硬化症(動脈が硬くなる疾患) の1種である。動脈硬化症は脂肪、 コレステロール、 その他の物 質が動脈壁に蓄積されてプラークと呼ばれる硬い組織を形成するために起きる。 このプラークは、時間が経つと動脈 を閉塞させて全身に問題を引き起こす。1 下肢末梢動脈疾患の特徴は、脚の動脈にプラークが蓄積されて血流が 遮断され、 その結果脚のしびれ感、疼痛、歩行困難が起きることである。末梢動脈疾患が悪化すると下肢潰瘍や壊死 を発症することもあり、下肢切断を招くこともある。末梢動脈疾患において重要な点は、心筋梗塞や、脳梗塞といった 合併症が多いことである。 2012年に発表された日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、末梢動脈疾患、非心原性脳梗塞、糖尿病、慢性腎 疾患(CKD) は動脈硬化性疾患のリスクが高い疾患に分類されている。2 末梢動脈疾患患者の大部分は症状が現 れない、 または非典型症状を呈するために、末梢動脈疾患が検出できない。末梢動脈疾患患者の場合、生命予後が 不良であることと、症状の有無とは無関係である。3 日本人の末梢動脈疾患有病率は1.7%~4.3%である。4 日本国内には300万人の末梢動脈疾患患者がいると推 定されるが、 その4分の3、 すなわち230万人は無症候性であると考えられる。末梢動脈疾患の5年生存率は約70% で、 これは結腸直腸がんとほぼ同じであるが乳がんよりも低い。5,6 末梢動脈疾患が診断できれば、動脈硬化の危険因子を特定して最適な管理を行うことができるため、重大な結果に 至るリスクが低下する。薬物療法を行えば疾患の進行を予防して死亡率を最大65%低下させることができる。7 残念ながら末梢動脈疾患の診断率は、脳卒中や心筋梗塞よりも低い。末梢動脈疾患の危険因子、症状、 そして 「末梢 動脈疾患そのものが、脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントの重要な危険因子である」 という事実についてはほ とんど知られていないが、末梢動脈疾患は命にかかわることも多い。 末梢動脈疾患を原因とする心血管疾患をもつ高齢者にかかる医療費と介護費は高く、 またさらに膨らんでいくと予 8 想される。65歳以上の日本人にかかる医療費は約15兆円である。 医療費支出額の第1位は心血管疾患(4.2兆 円) で、第2位のがん (1.9兆円) を大きく引き離している。8 脳卒中と心筋梗塞だけで1.9兆円にのぼり、 がんの医療 9 費に匹敵する。 また脳卒中は介護が必要になる理由の第1位(21.5%) であり、 脳卒中を発症した患者の約100万 人が長期介護を必要としている。 この介護費は1.9兆円に達すると推定され、9 これは透析の年間費用 (1.4兆円) を 上回る。 さらに2012会計年度には長期介護費の総額が8.9兆円に達した。現在のペースで高齢化が進めば長期介 護費は2025年までに約19~24兆円に達すると予想される。10 日本では、特に高齢者の場合、足関節上腕血圧比によるスクリーニングを日常的に行うことによって末梢動脈疾患 が診断できれば、末梢動脈疾患による罹患や死亡に関係した医療費に大きい影響を与える可能性がある。特に高リ スク集団(65歳以上;50歳以上で喫煙歴または糖尿病あり) の場合は心血管疾患の罹患率と有病率に大きく影響 する。 足関節上腕血圧比は、末梢動脈疾患の診断を確定するための簡単で正確かつ実用的な測定値である。足関節上腕 血圧比とは腕の血圧に対する下肢の血圧の比である。11 末梢動脈疾患のスクリーニングに足関節上腕血圧比を用 いた場合、症状のみに基づいてスクリーニングする場合と比べて、最大3倍の末梢動脈疾患患者が検出できる。足関 節上腕血圧比は心血管疾患の罹患率と死亡率の予測因子であることもはっきりわかっている。12 また足関節上腕 血圧比値は、機能的な能力の低下(歩行速度の低下、歩行量の減少、膝伸展筋力の低下など) と相関関係にある。11 足関節上腕血圧比は、安価な装置を使用して5分以内で測定できる。足関節上腕血圧比測定は痛みを伴わない処 置で、 ベッドに横になった被験者の足首と腕の血圧を同時に測定する。医療専門家に対する足関節上腕血圧比測定 のトレーニングにかかる時間は、15分以内である。 こうした理由から専門家は、高リスク患者を特定するために足関 節上腕血圧比を一般開業医院で用いるスクリーニング手段としてすぐに取り入れ、普及させることを推奨している。
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米国心臓病学会/米国心臓協会が発表した末梢動脈疾患の管理に関するガイドライン13 には、下肢末梢動脈疾 患が疑われる (65歳以上の、 または50歳以上で喫煙歴または糖尿病がある)患者の場合、安静時足関節上腕血圧 比を用いて、末梢動脈疾患の診断を確定すべきであると記載されている。 末梢動脈疾患患者の40%以上が心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントに起因する合併症をもち、14 これらのイ ベントは死亡リスクを上昇させるため、15 末梢動脈疾患の早期検出は、 その治療ばかりではなく、患者の予後にも 多大な影響を与えると考えられる。 また、薬物療法により、死亡率が65%低下したことも報告されている。7 現行政策 現在、 日本国内で行われている健康増進プログラムに沿って、2008年4月から始まった特定健診・保健指導は、40 ~74 歳の医療保険加入者を対象としているが、足関節上腕血圧比検査は健診項目には含まれていない。 したがっ て、足関節上腕血圧比測定の特定健診への導入は、最優先事項の一つとするべきである。 「健康日本21」 では、生活 習慣を改善し、予防を通じた心血管疾患の早期発見を促すために、具体的な目標が設定されている。心血管疾患の 後遺症は患者の生活の質を低下させる大きな要因であるため、 その罹患率と死亡率を下げることは、 「健康日本21」 16 の重要な課題の一つであると考えられている。 過去1年間の政策の進捗状況:変更なし 足関節上腕血圧比検査を 「特別健康診断制度」 に取り入れることは、最優先事項の一つである。足関節上腕血圧比 を用いれば、末梢動脈疾患を検出して心血管イベントのリスクが高い患者を早期に特定することができる。高リスク 群(例えば65歳以上の人;50歳以上で糖尿病歴または喫煙歴がある人) を測定することにより、末梢動脈疾患の悪 化ばかりではなく、脳卒中や心筋梗塞の発症を予防することができる。 日本の場合、地域の定期健康診断や通常の健康診断において、ACCF/AHAガイドライン13 およびTASC IIガイド ライン18 に定義された高リスク集団に対して足関節上腕血圧比スクリーニングを行えば、今よりはるかに多くの潜 在的末梢動脈疾患患者を発見することができる。 この方法により、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患の罹患率と 有病率を低下させ、 また医療費と介護費を削減することができる。 政策提言 心血管疾患の罹患率と有病率を低下させるために次の政策を実施して、国内の高リスク集団に対するスクリーニン グの水準を高めるべきである。 OO 足関節上腕血圧比によるスクリーニングを、標準項目として特別健康診断制度に組み込む。 OO 足関節上腕血圧比によるスクリーニングについて、国および都道府県の数値目標を設定する。 OO 高リスク患者を特定するためのスクリーニング手段として、足関節上腕血圧比を一般開業医院に定着させる。
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参考文献 1. 2.
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16. 筋骨格系障害への早期治療介入による健康増進と労働生産性の維持
現状 日本は、 すでに労働年齢人口の高齢化 (そして不健康化) の問題に直面している。 高齢や障害による失業者の増加が、 労働者の身体的および精神的負担を増大させている。 推定では、 2035年までに約30%の人口が総医療費の70%を 消費するであろうとされている。 このため日本では、労働を継続し、社会に貢献するという労働者個々の能力を引き延 ばすことが優先される必要がある。 心血管疾患および、 がんがもたらす影響への対応、 さらに、 精神衛生問題の有病率 の急激な上昇への対処のために、 多くの取組みがなされているのに対して、 死亡率が低い慢性疾患による莫大な負担 への対応は依然として明瞭ではない。 特に、 筋骨格系障害 (MSD) は、 日本ではほとんど注目されていない。 筋骨格障害は、個人レベルだけではなく、集団レベルでも人々の労働能力に重大な影響を与える。 つまり、筋骨格障 害は何千人もの日本の労働者の生産性、 および労働市場への参加に影響を及ぼす。 エビデンスから以下のことが示 唆される。 OO 2005年現在で30歳以上であった合計8,790万人の日本人のうち、推定で2,140万人(24.3%)が腰痛、320 万人(3.7%) が股関節痛、 および910万人(10.4%) が膝痛を有しているとされている。腰痛、股関節痛および 膝痛の有病率はその後徐々に上昇し、2055年までにそれぞれ26.5%、4.4%および12.9%に達するとみられて いる。1 OO 筋骨格障害が日本の経済および社会に及ぼす負担は、直接医療費だけで年間最高2兆円(国民医療費の 7.5%) にのぼる。2 OO 疼痛による就労困難に起因する喪失額は毎年約2,312億円である。3 上記をはじめとする筋骨格障害による就労不能状態と疼痛への影響は、体力、認知能力または集中力、合理的行 動/気分、可動性および敏捷性、 などといった仕事中の患者の能力の複数の側面に影響を及ぼす可能性がある。 ま た、筋骨格障害患者は、 それぞれの状況に基づくうつ病あるいは不安の問題も抱えている可能性が高いことが明ら かになりつつある。 これは症状の辛さ、患者が仕事を継続する能力、休職期間の長さ、 およびリハビリテーションの容 易さに影響を及ぼす可能性がある。 筋骨格障害は、診断および治療が遅れると、回復、仕事の維持、 あるいはリハビリテーションがはるかに困難になる 可能性がある。臨床医と産業医が緊密に協力して、臨床的治療や適切な職場介入、 および会社復帰のためのリハビ リテーションを行うケースはあまり多くない。 労働者の高齢化、肥満の増加、一般国民の運動および身体活動の減少と健康状態の悪化が見込まれる将来に目を 向ければ、筋骨格障害の発生率上昇と影響が、多くの日本の労働者の労働生活の質に影響を及ぼし、 日本の労働者 の生産能力が、最高の状態でなければならないという時に悪影響を受ける可能性が高い。 現行政策 筋骨格障害患者の治療選択肢は幅広く、慢性疼痛(大部分は筋骨格障害によるもの)患者の45%は整形外科 医、21.3%は一般臨床医、15.1%はマッサージ療法士やカイロプラクター、12.4%は整骨医にかかり、疼痛専門ク リニックにかかっているのはわずか0.8%となっている。2010年の患者調査では、慢性筋骨格系疼痛の症状のある 患者のうち、治療を受けているのは半分以下(42%) であった。 このうち、病院やクリニックに通っているのはわずか 19%であり、20%はマッサージなどの補完療法または民間療法を受けていた。4 このように患者が治療を受けたが らない傾向が見られるが、 これは早期筋骨格障害の治療選択肢に関する意識が不十分であることや、MSDが日常 生活と職場生産性に重大な影響を及ぼすことが、認識されていない可能性を示している。 厚生労働省の慢性の痛みに関する検討会では、現行の医療制度では医師間のコミュニケーションがほとんどなく、 筋骨格障害に対し、専門医、看護士、心理学者などを含む多角的チーム医療を構築する必要性が指摘された。筋骨 格障害の代表的な疾患の一つ、関節リウマチの患者会の調査によれば、患者が治療の中で最も改善を望んでいる点 は、病院と診療所との医療連携であった。5
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政策提言 OO 一時的・恒久的な就労不能に関連したコストを抑制するには、早期診断と介入が不可欠である。健全な労働 衛生環境を構築し、転職や職場復帰への効果的な道筋を整備することで、広く経済や社会に対する慢性疾患 の負担を軽減する。筋骨格障害の早期症状を発見できるように産業医を育成そして配置することが理想的で ある。 OO 日本における筋骨格障害の罹患率や労働生産性に与える影響について、標準化された信頼できるデータを収 集し、データ収集手法を標準化する。その際には、筋骨格障害の直接費用と間接費用の両方を認識する必要 がある。 OO 個人、雇用主、産業医、臨床医、政策立案者間で活動の連携を図る。良好な職場慣行の設計・維持に個人を 参加させる
参考文献
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17. 慢性疼痛治療による健康増進
現状 痛み (疼痛) は、急性疼痛と慢性疼痛の二種類に分類され、国際疼痛学会(IASP)は、慢性疼痛を 「治癒に要すると期 待される時間の枠組みを超えて持続する疼痛」 と定義している。慢性疼痛の原因として多い疾患としては、腰痛症、 変形性関節症、関節リウマチ、脊椎圧迫骨折、 がんなどがある。過去20~30年間、世界的に慢性疼痛の疫学や原因 の究明および診断・評価・効果的な治療法に関する様々な研究が行われ、医学的治療は大きく進歩した。 しかし、 日 本を含む多くの国々では、慢性疼痛治療と患者の満足度に大きなギャップが生じている。 各国で実施されている慢性疼痛の疫学調査、IASP、米国科学アカデミー等の調査によれば、各国において慢性疼 痛、 および慢性疼痛に対する医学的アプローチが、患者に様々な影響を与えていることが指摘されている。 OO 慢性疼痛を持つ人の約1/3(全人口の約6.7%)は、失業または仕事の能力が下がった経験がある。1 OO 未治療の慢性疼痛患者は、育児が困難になったり、睡眠不足になったり、通常の就労が困難となる場合もあ る。さらに、うつ、引きこもり、自殺願望などの問題にもつながることがある。2 OO 極端な場合、寝たきりなど、家族や社会一般にとっての負担増となる。特に原因不明の慢性疼痛は、患者にケ アやサポートを提供する医療従事者にとっても、大きなストレスになる。不十分な治療は患者、家族および社 会にとっても生理的、心理的、経済的、社会的な悪影響をもたらす。 OO 効果的な疼痛軽減が得られたのは、がん性疼痛患者において50%以下、急性の疼痛も50%以下、非がん性 慢性疼痛患者においては10%以下である。2 OO 経済的には多くの国で行われた大規模調査で、非がん性慢性疼痛は、がん、循環器疾患に次いで、3番目に費 用のかかる健康障害であると報告されている。3 米国では疼痛の経済負担が5,600億~6,350億ドルで、心 疾患・がん・糖尿病より高いと報告されている。4 国際的には社会的・経済的影響の大きさを受け、世界各国で疼痛対策が重視される動きがあり、疼痛の緩和および 治療の可能性が広がっている。IASPでは2010年に世界大会で初めての疼痛政策サミットを実施、 「国家疼痛戦略」 の政策モデルを提案し、18カ国の政策実施状況の評価を発表。 モントリオール宣言を発表し、 「疼痛のマネジメント を受けるのは基本的人権である」 と宣言した。 例えば、2010年に米国議会とオバマ大統領は患者の保護と疼痛管理に関する研究や治療を全国的に推進するた めの法律を成立させ、2011年は米国議会の指示に基づいて、米国科学アカデミーが「米国における疼痛の緩和-予 防、治療、教育、研究変革の青写真」 という政策白書を発表している。4 またWHOは、2011年に 「規制薬物の入手可 能性と入手アクセスについてのガイドライン」 において、疼痛薬剤を含む医療用規制薬物のアクセスに関する国家指 針の均衡是正を提言している。5 IASPの各国における疼痛戦略の取組みに関する研究によると、 1)疼痛の研究(疫学・基礎) 2)疼痛教育(大学医 学部、家庭医卒後研修、専門医卒後研修、医師継続研修、 その他医療従事者、一般市民) 3)患者アクセスと治療 のコーディネーション (治療、薬剤、情報、専門医への紹介、診療科を超えた多面的アプローチ、 自己管理) 4) モニ タリングと質の向上(治療までの時間、 サービスの質、生活の質、経済負担、特殊なニーズ(障害者など) の観点から 各国の評価がなされている。様々な国が疼痛対策に力を入れてきているが、 まだ課題も残っている。1 一方、 日本においては、他国と類似した社会的影響がでている。 しかし、実際には低コストによる問題解決が存在す るにもかかわらず、痛みは我慢すべきものと考える国民性や社会的背景や、疼痛の問題の大きさが社会的に認知さ れていないため、慢性疼痛に対する注目度は低い。 全国国民意識調査によると、20歳以上の日本人の11.3%が、痛みのレベルが5以上の疼痛を3カ月以上継続した 6 り、再発する、 いわゆる 「慢性疼痛」 を経験しているという。 疼痛による日本の経済的損失額は、年間約3,700億円 6 と試算される。 経済的負担の詳細については、勤務している慢性疼痛の人のうち、42.5%が過去一カ月の間に慢 性の痛みのため仕事に何らかの影響がでている。 その内訳として、職場で全力が出せなかった (生産性が下がった) のが25.2%のため、痛みのせいで勤務時間を減らさざるを得なかったのが13.7%、 などであった。6 また、社会的影
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響については、慢性疼痛を経験している46.7%が過去一カ月間で 「気分が落ち込んだ」、40.3%が過去一カ月間で 「 階段の昇り降りや歩行が困難だった」、28.4%が 「買い物や用事に出かけることが困難だった」 という。6 日本でも学際的研究や新規薬剤の承認により、以前に比べ疼痛をコントロールする選択肢が広がり、 その結果、苦 痛を軽減することが可能になり、通常の日常生活を取り戻すことができるようになった。 また、国際的にも慢性疼痛 の新しい治療ガイドラインや治療法が導入され、以前に比べ効果的治療が施されるようになっている。 現行政策 現在、 がん性疼痛については、 がん対策基本法によって、疼痛の緩和の取組みが医療の一環として進んでいる。一方 で、 がん性疼痛を除く慢性疼痛の政策面での取組みについて、厚生労働省は2009年12月に 「慢性の痛みに関する 検討会」 を組織し、疼痛患者の痛みからの解放が進むことが期待される。2010年9月にはこの組織から、1)医療体 制の構築 2)教育、普及・啓発 3)情報提供・相談体制 4)調査・研究の取組みを開始することが急務と提言された。厚 生労働省は2011年度予算において、提言の実現に向けた一定の研究費を盛り込んでおり、 その実現が引続き期待 される。 日本政府の対策として、厚生労働省は2009年から新たな対策を検討、 その中に、慢性疼痛に関す委員会を 設置した。 このような政府の努力によって、慢性疼痛の患者の悩みは解放される方向へ向かうだろう。 過去1年間の政策の進捗状況:改善なし 2012年度、厚生労働省は 「慢性の痛み対策研究事業」慢性痛の診断と治療に関する7つの研究プロジェクトに1.2 7 億円の予算を確保した。 政策提言 OO 厚生労働省は「慢性の痛みに関する検討会」の2010年の提言を早急に実施することが望ましい。 OO 日本における疼痛による社会的、経済的影響の検討を含む研究、評価を実施。 OO 疼痛とそれが及ぼす問題に関する社会的認知を高める。 OO 最新の診断・治療法に基づき、急性および慢性疼痛の医師・看護師の教育(学部、卒後、専門)や患者の教 育・啓発(疼痛の治療・自己管理)を推進することが重要である。特に、安心して治療できる医療用規制薬物 などの適正使用の教育をはかることが望ましい。 OO 疼痛治療の医療システムの構築と、その促進のための診療報酬の加算、変更も含めて検討することが重要で ある。案として、一次治療(開業医・一般病院)、二次治療(基幹病院などで診療科を超えた看護師も含めた 痛みの専門チーム)、三次治療(専門の痛みセンターなど) のように医療システムを再構築することを提言。
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参考文献 1. International Pain Summit, September 3, 2010, Montreal Canada organized by the IASP. 2. 厚生労働省は2010年9月に2009年の一年間に自殺者がでたことで失われた所得やうつ病をきっかけとした休業や失業 で生じた国の負担を合わせた経済的損失が2.7兆円になると推計した。 3. From Huijer Abu-Saad H. Chronic Pain: a review. J Med Liban 2010; 58: 21-7; and from TsangA, Von Korff M, Lee S, Alonso J, Karam E, Angermeyer MC, Borges GL, Bromet EJ, Demytteneare K, de Girolamo G, de Graaf R, Gureje O, Lepine JP, Haro JM, Levinson D, Oakley Browne MA, Posada-Villa J, Seedat S, Watanabe M. Common chronic pain conditions in developed and developing countries: gender and age differences and comorbidity with depression-anxiety disorders. J Pain 2008; 9: 88391; both cited in “Desirable Characteristics of National Pain Strategies: Recommendations by the International Association for the Study of Pain” from the IASP International Pain Summit, September 3, 2010, Montreal, Canada. 4. Institute of Medicine of the National Academies “Relieving Pain in America-A Blueprint for Transforming Prevention, Care, Education and Research.” 5. WHO Policy Guidelines Ensuring Balance in National Policies on Controlled Substances, Guidance for Availability and Accessibility for Controlled Medicines (2011). World Health Organization Press, WHO, Geneva, Switzerland. 6. ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査:報告書」2011年11月 http://www.accj.or.jp/ja/about/committees/committee-materials/cat_view/13-materials/56-healthcare 7. 厚生労働省 慢性の痛み対策研究経費資料。http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/ kenkyujigyou/hojokin-koubo-h24/gaiyo/15.html.
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18. 精神疾患の予防と早期発見
現状 近年、 うつ病、統合失調症、認知症、不安障害等、精神疾患により治療を受けている患者数が大幅に増加している。1 医療機関を受診している患者数については、1996年の218万人から2008年には323万人と、約1.5倍に急増し、 今後も増加する傾向にある。統合失調症のほか、高齢者の認知症や勤労者世代のうつ病、発達障害等は、国民に広 く関わる身近な疾病になりつつあり、患者自身だけでなく、患者家族や患者周辺環境における対策が求められる。 ま た、患者数の疾病別推移をみると、 すでに 「精神および行動の障害」 が、糖尿病、悪性新生物、脳血管疾患、虚血性心 疾患等を大幅に超えている。 さらに、1998年以降12年連続で3万人超えとなっている自殺についても、 うつ病等の 精神疾患が背景要因の一つであると示唆されている。 2011年7月6日、厚生労働省は、医療法に基づく医療計画に地域医療連携等の対策を記載しなければならない4大 疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病) に精神疾患を加え、5大疾病とすることとした。各都道府県が策定する 医療計画に精神疾患に対する記載が義務付けられたことは意義がある。加えて、労働安全衛生法の改正に関する議 論をはじめ、精神疾患に対する国民の理解を喚起し、医療および関連保健福祉サービスの充実、医療の質そのもの の向上に関わる対策の検討は、今後ますます重要視されるべきである。 2011年9月28日、社団法人日本精神神経学会理事会は、精神疾患を取り巻く環境における重要な課題として、次 の見解を述べている。2 OO 精神科医療従事者、関連保健福祉サービス等の関係者、住民・患者等が共同で精神疾患の医療計画策定に向 けて協議する場を設定すること。 OO 計画作成には、現状の把握・分析が不可欠であり、関係者が行政機関とともに地域全体の精神科医療の現状 を調査し、把握・分析するとともに、 その情報を公開すること。 OO 計画に定めるさまざまな医療機能の達成状況を検証するために、数値目標を設定すること (その数値目標に関 するデータは継続的に把握・分析され、 目標達成状況の検証が可能なものでなければならない)。 また、労働安全衛生法の改正案により、医師または保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査 を行うことを事業者に義務付け、 メンタルヘルス対策の充実・強化のための対策が講じられている。3 OO 検査結果は、検査を行った医師または保健師から労働者に直接通知されるが、労働者の同意を得なければ検 査結果を事業者に提供することができなくなる。 • 検査結果を通知された労働者が面接指導を申し出たときは、事業者は医師による面接指導を実施しな ければならない。ただし、面接指導の申出をしたことを理由に労働者に不利益な取扱をすることが禁じ られる。 • 事業者は面接指導の結果、医師の意見を聞き必要な場合には作業の転換、労働時間の短縮等、就業にお いて適切な措置を実施する。 ACCJが2011年に実施した、全国で無作為に抽出した5,000人を対象に行われた 「健康維持に関する意識調査」 によると、 日本における疾病による経済的な損失額が年間3兆3600億円と試算された。 このうち、本人の疾病による 経済的損失は約2兆円で、家族の疾病による経済的損失は1.3兆円と試算されている。精神疾患、疼痛、非感染の慢 性疾患、感染症、 ケガまたは身体障害などの疾病のうち、精神疾患の損失が1兆円で最多だった。 また、 メンタルケア に関して次のような結果も得られている。4 OO 成人の16.3%がメンタルケアに関し、医療機関で受診、 または相談窓口を利用したことがある。4 OO 医療機関で受診、 または相談窓口を利用した最も大きな理由は 「気分の落ち込み」 (55.0%)、 「不安を感じる」 4 (45.9%)、 および 「ストレスを感じる」 (43.0%) である。 OO 精神疾患の経済的負担の内訳は、50.0%が「病気が原因で転職した」、20.6%が「病気が原因で退職 した」、19.7%が 「病気が原因で欠勤した」、9.9%が 「病気のまま就業し、生産性が低下した」 となっている。4
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WHOによれば、精神疾患の中で統合失調症については、全世界的に2,400万人の罹病者がいるとされ、薬物療法、 心理療法およびリハビリテーション等によって治療できる疾病として位置づけられている。5 特に発症初期の段階で の治療が効果的であるとされているが、実際には約半数以上の患者は適切な治療を受けていない。社会復帰の実現 にあたっては、患者家族や周辺の人々の積極的な治療への参画が、地域集団レベルで求められている。 国内では、 「精神分裂病」 という呼称から想像されるイメージによって生じた差別や誤解により、患者や患者家族が 受けていたマイナスのイメージを取り除くため、2002年に、 より患者の症状を表す用語として 「統合失調症」 という呼 称への変更が実現された。 そして、2012年が呼称変更10年を経た節目の年であることもあり、全国の20~69歳の 男女500名を対象に、統合失調症に関する意識調査が実施された。 この意識調査の結果、 旧呼称である 「精神分裂 6 病」 の認知度64.6%が 「統合失調症」 の認知度55.6%に対し、高いという結果が示された。 その一方で、統合失調 症と診断された際、以前は 「隠す」 という意識だったが、今回の意識調査では 「積極的に治療する」 という変化もみら れ、呼称変更による一定の意義が示唆された。6 男女500名の統合失調症に関する意識調査で確認できた事項 OO 呼称の認知度: 「統合失調症」 という呼称の認知度は55.6%で、 「精神分裂病」 という名称の認知度は64.6%で あった。年代を追うごとに認知度が上昇し60歳以上では88.0%となった。 OO 呼称のイメージ: 「統合失調症」 という呼称の方が「自分や身近な人がなった場合でも抵抗なく使える」が 93.0%であった。 OO 治療に対する意識: 「自分が診断されたら、 すぐに治療をしたい」 が45.4%、 「家族が診断されたら、治療をすす める」 が83.6%で、恥ずかしい、受け入れられない、隠す、 という意見はごく少数に留まった。 OO 原因に対する意識: 「人間関係のつまずき」 が原因と考える人が最も多く57.6%で、 「脳・神経の障害」 と理解し ている人は43.6%と半数以下であった。 OO 患者に対する意識(あなたの知人や近所に統合失調症の人がいたら) : 「ほかの人と同じような近所づきあいを する」 「手を貸す」 という意見を合わせると76.0%であった。 統合失調症は、親から生活が独立していく年代の若者に発症することが多く、平均的な発症年齢は男性18歳、女性 25歳である。症状になじみがないため、確定診断に至るまで期間が長く、実際の治療を受けるのが何年も遅れること がある。加えて薬物療法を適切に受けないと70〜80%が診断時から1年以内に症状を再発する。長期的な経過の 見通しは様々で、一般的には1/3に顕著で持続的な改善がみられ、1/3には断続的な再発や残存する能力障害はあ るものの、 ある程度の改善がみられ、残りの1/3が重度で永久的な無能力の状態になると言われている。仮に改善が みられたとしても、復学や就労することが十分できず、差別、貧困、路上生活等、 日常生活における課題が山積してい る。 およそ10%の患者が自殺する。患者自身の人生に及ぼす影響や経済的損失からみても、長期的視点に立った保 健、医療、福祉、生活支援、就労支援等の総合的な支援体制が必要である。特に雇用機会の得られる地域支援が、患 者の精神的、金銭的安定を促し、本当の意味での社会復帰にとって重要である。7, 8, 9, 10 政策提言 OO 早期診断の推進、早期介入による生活の質の向上および経済的負担の軽減に向けた治療環境・医療システム の構築を政策で推進する必要がある。 OO 在宅医療の促進や雇用機会の確保を含めた、早期の社会復帰の実現を視野にいれたリハビリテーションの実 施を政策で推進する必要がある。 OO 労働安全衛生法の改正に伴い、医師または保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査を 行うことを事業者に義務付ける必要がある。 ケーススタディ:英国における精神保健・医療制度改革と精神病早期介入 英国保健省が3年毎に公表するNHSプラン2000年版において、精神保健・医療が冠動脈性心疾患、 がんとともに 最優先課題とされた。11, 12 具体的には、精神疾患を有する若者とその家族に対する治療・ケアの積極的支援を地域 で行うため、3年以内に50の早期介入チーム (人口100万人に1チーム) を立ち上げている。 これにより、統合失調症
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等の精神疾患の初回エピソードを体験する、 すべての若者に対して必要な支援が集中的にかつ早い段階で受けられ るようになった。毎年約7,500人の若者が対象となり、未治療期間(Duration of Untreated Psychosis) を平均 3カ月間まで短縮するため、最初の3年間については継続的支援を行っている。 このために毎年追加的な資金投入を 行い、精神保健・医療サービスの充実化を図っている (以後、10年間に20億ポンド以上となった)。 ケーススタディ:北海道浦河町「べてるの家」 「べてるの家」 とは、1984年に北海道浦河町に設立された、統合失調症等の精神疾患を患った方々の地域活動拠 点である。13 社会福祉法人「浦河べてるの家」、有限会社「福祉ショップべてる」等からなり、浦河赤十字病院との連 携を経て、医療、生活支援、就労支援、 リハビリテーションが一体化した生活共同体、働く場としての共同体、 ケアの 共同体という3つの特徴を有している。現在、100名以上の患者がこの地域で暮らし、 日常生活を過ごしている。 ま た、 当事者研究として、精神疾患を抱えた方、回復者と支援者との実践の積み重ねを通じ、誰もが持っている生きに くさを仲間と共有し、様々な生き方、疾病との向き合い方、対処法等を議論・研究している。最近では、専門家も 『支 援者としての当事者』 という視点からの研究、患者自身が起業した事例の共有、町民の方々による取組み (仕事や商 売等) に関する事例の共有も行われ、 これらの活動が国内外からも注目をあつめ、毎年延べ2,000人以上の見学者 を受け入れている。
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19. 高齢者の歩行障害や認知症改善のための特発性正常圧水頭症の診断と治 療の普及
現状 急速な少子化とともに平均寿命が劇的に延び、2005年に各国を抜いて高齢化先進国となった日本は、2010年に は65歳以上が人口の23%を越え、先進諸国に先んじてWHOが定義する超高齢社会に入った。1 これに伴い介護 保険費用の問題や、医療費といった社会保障費のさらなる上昇など、解決の難しい問題に直面している。 一方、医学の発展によってもたらされた大きなメリットが、期待できる疾患がある。 その疾患は、認知症や歩行障害と いった転倒原因の一つである特発性正常圧水頭症(iNPH) である。超高齢社会を背景に専門医(脳神経外科医、神 経内科医) の医学学会を中心にその診療の重要性が叫ばれている。 しかしながら専門医以外の医療関係者の認知 度が低く、認知症・歩行障害・尿失禁といった一般的に高齢者が持つ症状と重なるために、見過ごされたり、 ほかの 疾患と混同されてしまったりしているのが現状である。現在、診断については2004年にiNPH診療ガイドラインが制 定されたことによって、専門医レベルではほぼ普及しており、治療においても脳神経外科であれば、 どこの施設でも実 施されている基本的な髄液シャント手術が施される。近年、厚生労働省難治性疾患克服研究事業における研究班や 研究グループにより、 その有病率と診療による改善度が判明し、 同疾患の診療価値が明らかにされている。iNPHとし て適切に診断されれば、治療後の改善率は80%、全体で13%が自立可能となる。2 iNPHの有病率については、近年の研究のメタアナリシスによって高齢者の1.1%にiNPHの疑いがあることが分かっ ている。3 高齢者人口を勘案すると、 日本のiNPH患者は31万人以上となる。 よく知られた高齢者疾患であるパー キンソン病の2倍、 アルツハイマー病の1/4程度の比率になる。 また、認知症全体の10%にあたるともいわれ、 これは 早期に発見できればシャント手術によって重介護状態を防ぐことのできる実数でもある。4 患者100名の臨床研究 の結果から、 これら症状の改善に伴って47.3%の介護保険費用の削減が可能とされ、治療費を含めても2年後には 5,300万円の黒字となることが試算されている。5 推定患者数31万人で換算すると介護保険費用と治療費などの 総額が5年間で約300億円削減できる試算となる。 iNPH診療がもたらす効果として、患者自身と介護者双方の生活の質の向上をもたらすことは、言うまでもない。 中で も高齢者転倒骨折の危険因子とされる歩行障害は、最も改善する症状であり、 その改善は、 すなわち高齢者の転倒 骨折を予防し、 ひいては寝たきり予防につながる重要な意味をもたらす。高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折は、生 存率に影響する重大な疾患とされるが、骨折と骨粗鬆症の治療のみで、転倒危険因子としての原因疾患の認識が薄 いのが現状である。6 院内転倒や介護施設内事故の大多数が、高齢者の転倒に起因するもので、骨折治療の経済的 損失も大きい。医事関係民事訴訟に至るケースも多く、毎年1,000件を越える医事関係民事訴訟が起こっている。7, 8, 9 このようにiNPHの診療は認知症や歩行障害、尿失禁の改善効果と併せて、介護保険費用や医療費の抑制・適正 化につながり認知症改善、転倒骨折・寝たきりの予防に直結するものと考えられる。 iNPHの診療は、 直接効果をもたらすものから副次的なものまで、 大変メリットが多い診療でありながら、 31万人の罹 患者数に対して、 現在は約3,000症例の治療に留まっている。 これは疾患の認知度が低いことに起因すると考えられ る。 実際の認知度調査では、 ケアマネジャーのiNPH認知度は58%、 一般の認知度は11.9%となっており、 「歳のせい」 10,11 とされて受診していないケースが、 非常に多いことが推測される。 また、 専門医である脳神経外科と神経内科での 12 診断率はそれぞれ58%と48%、 その他精神科7%、 かかりつけ医7%となっている。 60歳以上を対象にしたiNPHに 関する意識調査によれば、 認知症の兆候があった場合、 57%が専門医ではなく、 かかりつけ医を受診すると回答して いることからみても、 見逃されることが多い状況と推察する。 老健施設や特別養護老人施設などの入所者もこの疾患 が見逃されているケースが多く、 ケアマネージャーやへルパー、 クリニック等のプライマリーケアにおいても、 疾患認知 度の向上を促す必要がある。 そして一刻も早く治療対象を発掘し、 早期に治療をすることで、 患者の自立度や生活の質 が向上し、 介護の負担の軽減も見込まれ、 社会的・経済的コストを下げることに大きく貢献すると考えられる。 現行政策 iNPH疾患の病態と診療に関する研究は、厚生労働省難治性疾患克服研究事業や日本正常圧水頭症研究会による 多施設共同研究で続けられており、手術適応の検査と手術法が確立している。認知症全般に対する制度も発展をみ せ、全国に150カ所の認知症疾患診療センターの設置が進められている。民間でのサポートシステムを構築する 「認
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知症サポーター育成事業」 が地方自治体で進められている。歩行障害や尿失禁に関する現行政策には特筆するもの はなく、介護保険をはじめとする諸サービスを利用することで対応している。 過去1年間の政策の進捗状況:進展なし iNPH疾患の取扱いについて、東京都議会本会議一般質問の答弁として、都としての積極的な疾患啓発および改善 する認知症としての医療機関への指導について言及されたが、 それ以外には行政の取組みにほとんど反映されてい ない。iNPH診療を通した転倒骨折予防と寝たきり予防におけるセイフティーネットの構築は無策な状況である。 政策提言 OO 「髄液シャント術」という大くくりな収載項目でなくiNPHの別立ての保健収載を施すことによって症例数の実 態を明らかにして適切な治療の普及のための対応策を講じる必要がある。具体的には、同別立てに保健収載 されたiNPHの髄液シャント術には診療報酬を増点することによって診療の普及を効果的に促しつつ、患者や ご家族の生活の質の向上および介護保険費の削減の社会的メリットを享受することができると考えられる。 OO iNPH診療に対する医学的取組みは進んでいるものの、罹患者の1%足らずの診療率であることは「歳だから 仕方がない」といった一般市民の認知度の低さからくるあきらめや、医療サイドの見逃しや誤診によると考え られる。一般市民への啓発に先行して高齢者疾患に関わる医学・社会科学に携わる人々への疾患認知度向 上・啓発が必要な現状である。 OO iNPHの診断、治療は多くの社会的なメリットを生み出すだけに、そのメリットを十分に享受すべく、iNPH診 療の活性化に行政が関わっていくことを提言する。そのためには地域連携、院内連携で診療していくシステム の構築が必要である。 OO 要介護認定時の認定調査・医師意見書に追加して別途、 頭部CT/MRIによる画像診断を実施する必要がある。 OO iNPHの画像診断ポイントを周知させる取組みも必要であり、医師会への指導を考慮する必要がある。 OO 要介護認定の連動性を考慮して、包括支援センターや認知症疾患診療センターへも、iNPH診療を再認識す るべく明確に指示する必要がある。 OO 要介護認定時の頭部CT/MRIは、そのコストを助成金の対象とする必要がある。 OO 高齢者の転倒骨折患者に対する、頭部CT/MRI冠状断の画像検査と治療により歩行障害の改善による再転 倒の防止と寝たきり防止、生存率の伸展を図る必要がある。 OO 高齢者の転倒骨折時の頭部CT/MRIは、そのコストをDPCに加算として費用の償還を受けられるようにする 必要がある。 OO 政府は一般市民へのiNPH疾患に関する広報活動を積極的に実施する必要がある。 参考文献
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20. 腹部大動脈瘤の早期発見
現状 日本は高齢化社会を迎える中、早期発見を促進することで、死亡率を減らすことが可能な疾患の一つが、腹部大動 脈瘤である。腹部大動脈瘤とは、腹部大動脈内の一部が病的に膨らむ (膨隆する)病気である。多くの場合、徐々に拡 大する。 リスクファクターは、65歳以上・男性・喫煙歴・高血圧症である。1,2 腹部大動脈瘤を予防するためには、禁 煙、高血圧症の管理、高コレステロールの管理が一番有効的である。3 腹部や腰の痛み以外、腹部大動脈瘤患者は自覚症状が乏しい。破裂のしやすさは腹部大動脈瘤の大きさによる。正 常な腹部大動脈の径は1.5〜2.0cmほどで、 その1.5倍である3cmを超えると瘤として定義され、破裂の危険性があ る。一般的に腹部大動脈瘤の場合は、 こぶの径が5cmになれば手術適用となる。腹部大動脈が突然破裂すると、約 3 90%の場合は死に至る。 腹部の超音波検査や、 CT検査で偶然発見されることがまれではない。英国で実施された大型調査の結果による と、4年間の観察において、腹部大動脈瘤スクリーニングの費用対効果は国民保健サービスによる現行の基準値に 基づき許容可能と判断される境界線上にあった。4 日本では大動脈瘤の潜在患者数は、国内に121万人いると考えられているが、破裂して病院に搬送されるケースが 多く、発見されたとしても腹部超音波検査により偶然発見されているに過ぎないため、大動脈瘤の頻度は明らかでは ない。現在、60歳以上の高血圧患者で大動脈瘤の頻度を調査しているところである。5 政策提言 OO 高齢がリスク因子の一つである大動脈瘤疾患の潜在患者を早期に発見し、適切な疾病管理をしていくことの 重要性を国民および医療従事者に、正しく理解してもらう様に啓発すべきである。 OO 大動脈瘤受診のためのインセンティブを設けるべきである。 OO 大動脈瘤の明確な疾病管理ガイドラインの作成を支援すべきである。 ケーススタディ:米国の 「効率的大動脈瘤検査推進法」 米国における予防サービスタスクフォースでは、 自覚症状が無くても、喫煙歴のある65歳から75歳の男性に腹部 の超音波検査を推奨している。6 また、2007年1月以来、米国の議会で可決された 「効率的大動脈瘤検査推進法」 (SAAAVE Act) のもとで、連邦政府が管轄している高齢者または障害者向け公的医療保険制度である 「メディケ 7 ア」 に新しく加入した喫煙歴のある男性全員に大動脈瘤の超音波検査を無料提供している。
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21. 頸動脈プラークの早期発見による脳梗塞のリスク低減
現状 脳血管系疾患は第二次世界大戦後から約30年もの間、 日本国内における死因別死亡率で1位を占め続けていた。 しかし高血圧予防に向けた政府や自治体の啓発活動、画像診断や低侵襲治療方法に代表される医療技術や医薬 品の進歩などにより、1970年代初めから死亡率は減少傾向に転じている。厚生労働省による脳血管系疾患による 死亡数、患者数の統計においても、 その効果が確認できる。 (1996年からそれぞれの統計最新年度までの減少率: 死亡数12%減、患者数23%減)。 一方で脳梗塞については、 その脳血管系疾患による死亡数の内訳において、年々上昇傾向にある。1960年では1割 強だったその割合は、現在では6割強を占めている。食生活の欧米化や、好景気に伴う飽食などによる糖尿病や高脂 血症の著しい増加が、一般的な背景と考えられている。 また、脳血管系疾患の患者数においても脳梗塞の患者数は 76% (1999年時点) と大きな割合を占めている。脳梗塞を患った患者は入院治療を必要とする割合が比較的高い 事実とも合わせて、上昇し続ける医療費の抑制に向けた医療政策上の課題の一つとしても認識されている。 介護分野においても、厚生労働省による 「国民生活基礎調査」 では介護が必要となる一番の要因として 「脳血管疾患 (脳卒中)」が挙げられた事もあり (2010年度は全体の24%)、現在政府や自治体として抱える入院医療から在宅 医療・介護への連携に向けた課題とも無関係ではないと考えられる。 脳梗塞に至る原因としては、動脈硬化性プラークによる血管内腔の狭窄や閉塞、 さらにはプラークの脆弱性から生 じる動脈塞栓が挙げられる。頸部頸動脈は動脈硬化が起こり得る代表的な部位であるが、MRIや超音波検査はこの 頸動脈におけるプラークの確認をはじめ、 その性状や脆弱性の正確な評価が可能と広く認識されている。 また、病変 発見後の外科的治療方針を決定する上でこれらの評価は有効と考えられている。従って、 身体的負担の少ない非侵 襲検査といった利点も加え、MRIや超音波診断装置を用いた画像診断は、脳梗塞に至る原因の早期発見に向けた 有効な手段の一つと考えられ、評価の精度検証および検査の普及が進められている。 現行政策 自治体によっては脳ドックの検査費用に対し、助成金による一部負担を行っている。 また多くの企業、保険団体にお いても助成制度によって検査を奨励している。 しかし、全国民に均等な検査の機会が与えられているとは、 まだまだ 言い難い状況である。 また超音波診断装置による頸部頸動脈検査についても、 同じく超音波診断装置を用いた乳が ん検査と比較した場合、行政や自治体による早期発見に向けた積極的な検診への取組みは、進められていない。 政策提言 OO 脳梗塞に至る代表的な原因とされる頸動脈プラークの早期発見を促すために、MRIもしくは超音波診断装置 を用いた頸部頸動脈検査の重要性を啓発する。 OO 全国民が均等に検査の機会が得られるよう、検査への助成制度を整備する必要がある。
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22. 骨粗鬆症による骨折の予防
現状 骨粗鬆症は、骨の密度が低下し、脊椎や大腿骨頸部などの骨折が起こりやすくなる病気である。 日本骨粗鬆症学会/ 財団法人骨粗鬆症財団によると、 日本の骨粗鬆症の推定患者数は約1,100万人、 そのうち女性の患者が約800万 人と推定されている。 また、骨粗鬆症の発症は、女性の場合は50歳代前半(閉経後) から、 男性の場合は60歳代後半 から急増する。 骨は、丈夫さを保つために、古い骨を壊し (骨吸収)、新しい骨に作り替える (骨形成)新陳代謝を繰り返し、常に生ま れ変わっている。 しかし、加齢・老化、閉経、偏った食生活、運動不足などの要因により、骨リモデリングのバランスが 崩れ、骨形成よりも骨吸収の働きの方が強くなり、骨量が減少する。 骨粗鬆症は、 自覚症状がない状態で進行することが多い病気である。骨量の低下とともに微小骨折が進行し、 身長 低下や腰背部痛などの症状が現れ、転倒などわずかな外力によって骨折を生じるリスクが高まる。骨粗鬆症が原因 で生じる骨折は、主に脊椎、大腿骨頸部、橈骨(とうこつ) である。寝たきりになりやすく、著しく生活の質を低下させ る 「大腿骨頸部骨折」 の発生数は、近年増加傾向にある。 また、高齢者の骨折や転倒が、寝たきりや要介護の主要な 原因の一つであることも明らかになっており、高齢社会が抱える問題のひとつとなっている。 骨粗鬆症は欧米諸国に多い疾患と考えられてきたが、高齢化が進むアジア諸国では骨粗鬆症と骨粗鬆症による骨 折が急増している。2009年に発表された国際骨粗鬆症財団(IOF) のThe Asian Auditによれば、主要なアジアの 国において、大腿骨頸部骨折の発生数は、 この30年間で2〜3倍に増加しているという。 日本でも大腿骨頸部骨折は 1986〜1998年の12年間に、 男性で1.6倍、女性で1.5倍に増加している。1 骨粗鬆症による骨折が社会的に与える負担を考えると、骨粗鬆症の診断は十分ではなく、 また疾患としてその深刻 さが認識されていないことから、政府が医療従事者や市民に対して教育、啓発活動を主導すべきと、IOFは警鐘を鳴 らしている。The Asian Auditに参加した国々のうち、政府が骨粗鬆症を重要な健康問題と認識しているのは4カ国 (シンガポール、 インドネシア、台湾、 ベトナム) で、 日本は含まれていない。 股関節骨折の高齢患者は極めて高い割合で余命が短縮され、 また生涯寝たきりになる。2、3 研究結果では一度骨 粗鬆症による脊椎骨折を経験すると、 二度、 ないし複数の骨折が起きる率が高いことが判明した。 したがって、 最初の 4,5,6,7 骨折を防ぐ事が最も重要であるとともに、 患者と医療の専門家への早期診断・早期治療の教育が大切である。 2011年11月に実施された 「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査」 の結果によると、 日本人の 64.7%が骨粗鬆症に関心を持っているが、 そのうち60%しか予防のための行動を取っていない。8 現行政策 厚生労働省は、40歳以上の人を対象とした骨粗鬆症検診を健康増進事業の一つの柱として位置づけている。現在、 我が国の骨粗鬆症検診は40歳から70歳までの女性を対象に5歳刻みの節目検診として広く行われている。 しかし ながら、受診率は決して良いとはいえないのが現状である。 政策提言 OO 公衆衛生の専門家、 そして医療専門家に早期検査と早期の治療を開始することへの重要性について教育する。 骨粗鬆症が原因で脊推骨折が発症したのであれば、 また次に骨折する可能性が高くなる。従って、初めの骨折 を防ぐことが非常に重要である。 OO 骨粗鬆症が、骨折という深刻な状態引き起こすという情報を提供するなど、教育活動を行っておくことで、 より 多くの人々が骨粗鬆症の検診に参加するよう努める。 OO 骨粗鬆症について人々の認識を高めることを主眼にした、骨粗鬆症予防キャンペーンを実施する。 そして、全国、 地方自治体レベルでの検診率を高める。
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骨粗鬆症の検診施設と治療を施す大規模な医療施設の間で、検診で問題ありとされた人々の紹介制度を確立 する。 これにより、早期検査と治療が可能になり、長期にわたり人々の生活の質をより高く維持することができ るようになる。
参考文献
1. The Asian Audit: Epidemiology, costs and burden of osteoporosis in Asia 2009, International Osteoporosis Foundation.2. Cooper C, et al. 1993; American Journal of Epidemiology 137(3):1001. 3. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15086646. 4. Ettinger B, et al : Journal of the American Medical Association 282(7), 637-645, 1999. 5. Black DM, et al : Journal Bone Miner Res. 14(5), 821-828, 1999. 6. Ross PD, et al : Osteoporosis Int. 3(3), 120-126, 1993. 7. Lindsay R.: Journal of the American Medical Association, 285, 2001. 8. ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査:報告書」2011年11月 http://www.accj.or.jp/ja/about/committees/committee-materials/cat_view/13-materials/56-healthcare
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23. 乳がん検診の精度向上
現状 日本の国立がんセンターによれば、30~64歳の日本人女性の死亡原因のトップは乳がんとなっている。1 マンモグ ラフィーによる乳がん検診率の向上が、早期介入を促進し、患者の生活の質を改善し、費用の節約をもたらす。初期 のうちに早期診断される乳がんは、術後5年で96%を超える生存率が実証されており、患者一人あたりの治療費が 約76万円かかる。後半ステージまで発見が遅れた乳がん (転移した状態) では、術後5年でわずか28%の生存率と なり、手術、化学療法、放射線治療などで患者一人あたり400万円を超える費用を要する。 日本での発症率と死亡率 はともに上昇しており、乳がん検診受診率はOECDのの平均62.2%に対し、 日本は24.3%と低い。2, 3, 4, 5 2011年の全国意識調査によると、過去2年間に乳がん検診(マンモグラフィーX線) を受診していない921人の 31.4%が 「しこりを感じるなどの問題があったら」、27.9%が 「年1回の健康診断の中に無料で含まれていたら」受診 すると答えている。6 また、過去2年間に乳がん検診(マンモグラフィーX線) を受診した374人の78.3%が自分の意 志で乳がん検診を受けたと答えている。 同じ374人の中、11%が 「地方自治体の勧め」、8.6%が 「地方自治体から無 料クーポンを配布されたから」、8.3%が 「勤務先で必要だったから、 あるいは勧めらたから」 を受診の理由とした。6 現行政策 日本政府は、40歳以上の女性で過去2年に乳がん検診を受けた女性の比率を、50%にまで高めるという目覚ましい 国家目標を立てた。2009年に政府は、40、45、50、55、60歳の女性に無料検診のためのクーポンを配布する新し い5カ年計画を発表して進展を見せた。 しかしながら、現在まで低い認知度と、 クーポンが利用できる医療機関が居 住自治体の医療機関に限定されている点、 また期限が限定されている点、 などが受診率の低い理由となっている。 政策提言 OO 国民健康保険法を改正し、40歳以上の女性に対し乳がん検診を特定健診において2年間毎に必須項目として 提供する必要がある。 OO 国民健康保険制度で乳がん検診を必須化する必要がある。
参考文献
1. Center for Cancer Control and Information Services, National Cancer Center, Japan. Population Trend Statistics (MHLW Statistical Information Department). WHO Mortality Database. 2. 厚生労働省平成22年国民生活基礎調査におけるがん検診の受診状況について http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001igt0.html 3. OECD http://www.oecdtokyo.org/pub/statistics_japan.html. 4. U.S. National Cancer Institute: Surveillance Epidemiology and End Results, Breast Cancer Fact Sheet (http://seer.cancer.gov/statfacts/html/breast.html/). 5. 2007 MHLW Regional Area and Aged Persons Health Report. Key Findings for Japan (www.oecd.org). 6. ACCJ「疾病の予防、早期発見および経済的負担に関する意識調査:報告書」2011年11月
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24. 子宮頸がん検診受診率の改善
現状 子宮頸がんの予防には早期発見と早期治療が重要である。毎年子宮頸がんと診断される8,000症例のうち、約 2,500人が亡くなっている。 日本では、20代、30代で子宮頸がんが急速に増加しており、死亡率も高まっている。子 宮頸がんは、 ワクチンで発症を減少できる唯一のがんで、 ワクチンはすでに100カ国以上で使用されており、 日本でも 近年使用可能になった。 ヒトパピローマ・ウィルス(HPV)が子宮頸がんの主な原因であるため、通常のパップテスト、 早期のHPV検査、 および早期のワクチン接種が子宮頸がんの予防には有効である。米国では、一般にパップテストが 採用されており、 がんのスクリーニングとして最も効果的なものとして認識されている。 日本における子宮頸がんのス 1 クリーニング率は24.3%で、OECD諸国平均64%の半分以下である。 現行政策 2009年、 日本政府は、20・25・30・35・40歳の女性に、無料の子宮頸がんスクリーニングを受けられるクーポンを 送るという、新たな5カ年計画を明らかにした。 これは子宮頸がんスクリーニングの現状を改善するための大きな進 歩である。 これまでのところ、実際に無料スクリーニングを受けたのは対象者のうちごく一部のみである。 その原因 は、社会での認知度が低いこと、 および健康保険組合による定期健康診断では無料のスクリーニングが提供されて いないことにある。 日本政府は、受診勧奨事業策の一つとして、乳がん、大腸がんおよび子宮頸がん検診を対象とし たがん検診推進事業を2011年4月より実施している。 さらに、子宮頸がんの予防を目的に、10~14歳の女性のた めの子宮頸がん等ワクチン接種基金を設置した。 しかし、子宮頸がんを予防するには、 なぜワクチンと子宮頸がん検 査の組合わせが必要であるのか、 ということが混乱を招いている。 政策提言 OO 国民健康保険法を改正し、20〜40歳までのすべての女性に定期健康診断の一部として子宮頸がん検診を2 年毎に、必須項目として提供すべきである。 OO 2017年までに子宮頸がんの受診率50%の目標を達成するために、子宮頸がん検診に対する広報・教育予算 を増額すべきである。 OO 現在日本で活用できる3つの最新技術、HPVワクチン、HPV遺伝子検査、液状検体細胞診(LBC)を適切に組み 合わせることで 「子宮頸がん予防のための検査精度の向上と再検査の減少が達成できることを女性へ伝えるた めの広報・教育予算を増額すべきである。 OO 子宮頸がんと戦うために、検査精度の向上と再検査の減少を目指して3つの最新技術、HPVワクチン、HPV遺 伝子検査、LBCを適切に組み合わせ、積極的に推進すべきである。特に最近ではHPVと細胞診の併用検診が 大きな流れになってきつつあり、 さらなる普及の手始めとしてまずはLBC化を早急に推進すべきである。 OO 受診率の増加に伴い、検査担当人員の増加の必要性が予想されるが、 すでに欧米では一般化している自動細 胞診スクリーニングシステムの普及も積極的に行い、精度管理の徹底と業務の効率化を積極的に推進すべき である。
参考文献
1. 厚生労働省平成23年国民生活基礎調査におけるがん検診の受診状況について http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001igt0.html
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25. B型肝炎ウイルス検査受診率の向上およびワクチン接種
現状 ウイルス性肝炎は、国内最大の感染症とも言われている。日本には、B型およびC型肝炎ウイルスの患者・感染 者は300万人いると推定され、そのうち120万~150万人(人口の約1%)がB型肝炎ウイルスに感染していると 考えられる。1,2 また日本で、がんの中でも3番目に多い肝がんの原因の約90%は、B型・C型のウイルス性肝炎 である。3 発症原因がはっきりしているため、肝がんは予防が可能ながんの一つと言われているが、 自覚症状がないため、感染 に気づきにくく、病気が進行してしまう。感染者のうち、70~80%にあたる約100万人が自分の感染に気づいていな いと言われている。4 自分の感染に気づき、適切な治療や定期検査を受けることが、肝がんの発症リスクを大きく下 げることにつながる。 B型肝炎ウイルスは、血液や体液を介して感染する。母子感染や過去の集団予防接種、性感染など、感染経路はさま ざまで、知らないうちに誰でも感染している可能性がある。 あまり知られていない主な理由として、 リスクと感染経路、 あるいは診断と治療を提供する病院に関する包括的な情報が普及していないことが挙げられる。 B型肝炎の感染予防対策として1986年から 「母子感染防止事業」 を実施し、 B型肝炎キャリアの妊婦から生まれる 新生児に対するワクチン接種を開始した。 この事業の開始後B型肝炎のキャリア率は0.04%にまで低下した。 しか し、母子垂直感染以外の父子感染や保育園などでの水平感染は、依然として日本の課題として残されている。 また、 近年日本では海外から持ち込まれた遺伝子型AによるB型急性肝炎が、 STDとして急速に広がりつつある。 遺伝子型 Aによる急性肝炎は遷延化、持続感染化する確率がほかの遺伝子より高く、新たな課題となっている。 さらにB型肝 5 炎既往歴者へ化学療法や免疫抑制療法を行うことにより、 B型肝炎ウイルスが再活性化することも報告されている。 WHOは世界のすべての地域に向けてB型肝炎ワクチンの定期接種を推奨している。実際にほとんどの国や地域です べての子ども (新生児、学童) にワクチンを接種するユニバーサルワクチネーションが導入されているが、 日本ではB 型肝炎キャリアの母から生まれる子どもを対象とした感染防止プログラムのみ導入されている。6 現行政策 1986年、 日本政府は、B型肝炎ウイルスの母子垂直感染を防止するため、予防接種プログラムを開始した。 このプロ グラムでは、母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合、乳児にB型肝炎ウイルスワクチンを接種する。予防接種プ ログラムは、B型肝炎ウイルスの母子垂直感染の防止に効果的である。 しかし、 それ以外の人に対する予防接種は、 国の予防接種プログラムとしては行われていない。 そのため、水平的なB型肝炎ウイルス感染が依然として問題とな っている。検査を受けない限り、 自分がB型肝炎ウイルスに感染していることに気づくのは非常に困難である。 肝炎は、国内最大の感染症であると考えられ、国を挙げた肝炎に対する具体的な対策が必要とされていることか ら、2009年11月19日、肝炎対策基本法が施行された。基本法では、感染者の人権を尊重するため、肝炎対策を国 家の重要事項と位置づけている。 また同法は、肝炎対策の基本理念を定めており、肝炎の予防および早期発見のた めの措置と治療に対して、経済的支援を提供するための措置を総合的に推進するため、国および地方公共団体の役 割を明示している。 しかしながら、両者ともに肝炎対策の責務を有するとしているものの、 それぞれの責務の範囲が 具体的に示されていないため、連携のとれた実効性のある仕組みが必要である。 2002〜2007年までの5年間に、厚生労働省は、定期的に (40、45、50、55、60、65、70歳に)B型肝炎ウイルスと C型肝炎ウイルスの検査を受けることを奨励している。 しかし、2005年のデータで見ると、実際にB型肝炎ウイルス 検査を受けた人はわずか24.9%にすぎない (対象年齢層の4,848,053人のうち、1,205,423人しか検査を受けて いない)。2007年の厚生労働省のデータによると、 同じ5年間に肝炎の検査を受けた8,704,587のうち100,983人 (1.16%) が陽性と判定された。 しかし、陽性と判定された場合、二次精密検査を受ける必要があるにもかかわらず、 実際に受診した人は、 わずか30%と推定されている。
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現在日本の肝炎患者は、保健所および指定医療機関で、無料で検査を受けることができる。7 血液検査では、患 者が肝炎ウイルスに感染しているかどうかを確認する。試験は短時間で済み、結果は数週間以内に明らかになる。 さらに、2011年5月、厚生労働省は、肝炎検査に関する基本指針を改定し、従業員定期健康診断に、肝炎の検査 を組み入れられるようにした。 厚生労働省は2011年5月、肝炎ウイルス検査の基本的なガイドラインを発表した。 すべての国民は、少なくとも1回 は検査を受けるべきであり、検査体制とサービスを国民が広く利用できるように用意する。多くの民間企業の健康保 険では、肝炎ウイルス検査が無料になっておらず、 また、肝炎ウイルス感染が明らかになった場合の差別や偏見に対 する懸念から、受診率の伸びには限界があるとみられる。 政策提言 今まで一度も肝炎ウイルス検査を受けたことがない人はもちろん、以下に該当する人もB型肝炎ウイルス検査を受け ることを強く勧奨する: OO 健康診断の肝機能検査でAST、ALT値6 の異常を指摘されたが、 その後、診察や肝炎の検査を受けていな い人。8 OO 1985年以前に生まれた人(母子感染予防策が実施されていなかったため)。 OO 家族にB型肝炎ウイルス持続感染者(B型肝炎ウイルスキャリア)がいる、もしくはB型肝炎ウイルス由来 の肝臓がんにより亡くなられた方がいる。 日本において、一般大衆の検査レベルを改善し、B型肝炎ウイルス由来の肝硬変・肝臓がんを下げるため: OO 成人だけでなく、学生も対象とした効果的な肝炎啓発プログラムを、官民が協力して日本全国規模で展 開、実施する。 OO 企業においては、従業員定期健康診断において肝炎検査を標準実施する。現在、従業員定期健康診断 における肝炎検査は推奨のみにとどまっているが、これを原則実施とし、受検者の費用負担を不要とす るための財政措置も講じる。 OO 肝炎検査の受診率について、国および地方公共団体の目標値を設定する。 OO ウイルス検査結果が陽性の場合、学校や職場等で偏見を受けることなく適切に治療に臨めるための保 健指導体制を行政、保険者および企業が協力して確立する。 OO 水平感染のリスクが依然として高い日本において、ワクチン接種による感染予防は重要な対策の一つで ある。B型肝炎ウイルスの感染予防対策として、すべての子どもを対象としたユニバーサルワクチネーシ ョンを定期接種として導入すべき。 参考文献 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8.
厚生労働省ウェブサイトhttp://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/03/03.html 肝臓病診療ゴールデンハンドブック 2007 泉並木 南江堂 国立がん研究センター、 がん情報サービス、2009年 http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html 日本医事新報 No.4440 2009年5月30日 43-55ページ B型肝炎ワクチン作業チーム報告書 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000014wdd-att/2r98520000016rr1.pdf B型肝炎ワクチンに関するファクトシート (平成22年7月7日版)国立感染症研究所 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bxqf.pdf または、http://www.kanen.ncgm.go.jp/forpatient_hbv.html 2011年5月現在、過去に検査を受けたことがある方など、一部負担が必要な場合がある。 AST・ALT値:基準値は施設によって異なるが、肝臓に全く異常のない人は30 IU/L以下である。
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26. C型肝炎ウイルス検査受診率の向上と治療の推進
現状 1975年以降、 日本での肝がん死亡者は急速に増加し、現在では年間3万人を超えている。 その約80%はC型肝炎 ウイルス感染に起因している。1 推定感染者数は40歳以上に多く、約190~230万人と推測され、 その多くが使い 捨ての医療器材が普及する1980年代以前の医療行為や、1989年にC型肝炎ウイルス検査が導入される以前の輸 血が原因で感染したと考えられる。 C型肝炎ウイルス感染者は自覚症状に乏しく、気づかないうちに慢性肝炎、肝硬 変、肝がんへと進行してしまっている。2 治療においては、効果的な様々な新薬が開発され、 インタ-フェロンと抗ウイルス薬を組み合せ、一定期間投与する ことで、全体の70~80%の割合でウイルスを体内から排除し、肝硬変、肝がんへの進展を防止することが可能にな ってきた。3 C型肝炎ウイルス感染は、採血検査を行うことで簡便に見つけ出すことができる。 このことからC型肝炎ウイルスに 感染後、肝炎を発症し、肝細胞が障害を受け、肝硬変、肝がんと進行する前に、適切な検査を受け、 自身の感染に早 期に気づき、速やかに治療を受けることが重要である。 日本政府は、2002年に5カ年計画で全国の地方自治体が実施する、老人保健法の住民健診の中で肝炎ウイルス検 査を提供し、約900万人以上の国民が検査を受け、10万人の感染者が発見された。4 その後も、住民健診の継続や 保健所や医療機関での無料検診の機会を提供し、受診の利便性を向上させているが、5カ年計画の住民健診での 一定の成果以降、 その受診率の目覚ましい向上はない。 2012年に厚生労働省が公表した国民意識調査結果では、国民の約半数は 「肝炎ウイルス検査を受けていない」 と いう回答だった。検査を受けない理由として 「受検のきっかけがなかったから」 が最も多く 「定期的に受けている健康 診断のメニューに肝炎検査がないから受検しない」、 「自分は感染していないと思っているから受検しない」 と続いて いる。5 肝炎ウイルス検査の無料検査施設を増やし、利便性を向上させても、 自発的に、 わざわざC型肝炎の検査だ けを受けるためだけに医療機関に足を運ぶことをこれ以上期待することはできない。80万人以上の感染者が未受診 で自分の感染に気づくことなく、深刻な肝疾患へ進行するリスクを背負い続けている。 より効果的なC型肝炎治療新薬が開発中であり、今後もこれらの上市によって治療率の向上、治療期間の短縮、 お よび副作用の軽減等の可能性が期待されている。 しかしながら、 このような医療技術の進歩と、 それによる肝がん撲 滅の機会も、検査により感染者を拾い上げることなしには達成することができない。 過去の住民健診で一定の成果を得たように、 ほとんどの国民がさまざまな形式で毎年定期的に、無償で受ける健康 診断や、特定健診受診の際に、 C型肝炎検査を“ついでに”受けることができる体制を提供するべきである。 ところが 主に大企業従業員が加入する健康保険組合では、定期健康診断と同時に肝炎ウイルス検査を実施している健康保 険組合は約50%に留まっている。 また、提供されていても健康保険組合や受診者の負担になり、現在、国から提供さ れる無料検査の施策外である。 そのため、職域検診での受診率が、特に低い。 現行政策 日本政府は、検診機会の提供に関しては、住民健診での肝炎ウイルス検査を継続し、2008年にはそれまで保健所の みで行われていた無料検診を、地域の開業医などでも受けられるように検査施設の拡大に力を入れてきた。治療に 関しても、政府は、2009年以降、治療のためにインタ-フェロンと抗ウイルス剤を1〜2年継続的に投与する費用の 助成を開始し、2011年4月以降は原則月1万円の自己負担で治療が受けられるようになった。2011年5月に、厚生 労働省から肝炎対策の推進に関する基本的な指針が出され、 その中で 「すべての国民が少なくとも1回は肝炎ウイ ルス検査を受けることが必要であり、 そのための体制整備と受検の勧奨を行うこと」 が提言された。6 過去1年間の政策の進捗状況:部分的に改善 2011年に追加された出張型検診、 および肝炎ウイルス検査の個別勧奨の両方が、2012年にも継続された。2012
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年、肝炎検査と治療促進のため、 3年間の啓発キャンペーンが開始された。 しかしながら、2013年2月の第9回肝炎 対策推進協議会における全国自治体の着手状況の報告で、 出張型検診の実施は、都道府県・保健所設置市・特別区 合計139のうち12自治体が実施しているにすぎない。 また、健康増進事業の個別勧奨においても全国1,648自治体 のうち独自実施を合わせても実施しているのは1,014自治体であった。7 さらに、依然として肝炎対策を策定してい ない都道府県が13ある。 政策提言 OO 個人情報を保護した形で、一定期間(例えば5年間)、40歳以上の人を対象に企業健保や自治体等を通じ て、提供される定期的な健康診断と同時に肝炎ウイルス検査を受けられる機会を提供するべきである。 OO 国民健康保険法の改正等によって、40歳以上の人の特定健診の標準項目に入れるのが一番効果的な方 法と思われる。 あるいは各企業の健康保険組合や市町村が実施する定期健康診断の標準検査項目に入 れるよう、 より強く推奨する必要がある。 OO 肝炎対策を策定していない13の都道府県において、速やかに対策が策定されるべきである。 OO 肝炎対策基本法に基づき、県市レベルで継続的な肝炎対策が打たれるべきである。感染者に適切な助言 が与えられる公衆衛生従事者に対し、優先的に肝炎についての教育が施されるべきである。 ケーススタディ:米国のC型肝炎新戦略 米国では2010年以降、肝炎政策の議論が活発化し、大きく展開している。米国国民の約2%、最大530万人がB型 肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスに感染しているにもかかわらず、 ほとんどの肝炎ウイルス感染者は、 自覚症状 がなく、慢性肝炎や肝がんといった肝疾患に進行するまで感染に気づかない。米国の肝炎ウイルス感染者は、HIV感 染者よりも多く、 エイズによる死亡者よりも肝炎による死亡者の方が多い。8 2010年に、米国医学研究所(IOM) が 「肝炎と肝がん:B型肝炎・C型肝炎の予防と管理に関する米国家戦略」 を発行後、議会の下院監視・政府改革委 員会による 「症状のない流行性ウイルス性肝炎」 に関する議会聴聞会を開催し、政策や制度を評価するためのウイル ス性肝炎専門審査予算を決定した。9 2011年に、米国連邦保健福祉省によって 「ウイルス性肝炎予防および治療 に関するアクションプラン」 が発表され、医療提供者およびコミュニティの教育、 ウイルス性肝炎の監視および肝がん 10 への進行を防ぐための検査、 ケア、治療政策が強化された。 2012年に、 「肝炎をもっと知ろう」全米啓発キャンペ ーンがホワイト・ハウスで公式発表されたほか、1945年~1965年生まれの人に対し、CDCによるC型肝炎ウイル ス検査受検勧奨の発表があった。11
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参考文献 1.
「独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス」 ホームページ http://ganjoho.jp/public/cancer/liver/index.htm 2. 2010年第1回肝炎対策推進協議会 資料8田中委員提出資料から抜粋 3. 2010年第2回肝炎対策推進協議会 資料4林委員提出資料から抜粋 4. 厚生労働省毎年報告資料集計、2010年第一回肝炎対策推進協議会 資料8田中委員提出資料から抜粋 5. 厚生労働省平成23年度肝炎検査受検状況実態把握事業 事業成果報告書平成23年12月~24年1月調査,平成24年8 月公表http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002gd4j.html 6. 肝炎対策基本指針(平成23年5月16日策定) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/hourei-17.pdf 7. 厚生労働省第9回肝炎対策推進協議会 資料1 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002uhts-att/2r9852000002uhz4.pdf 8. The ABCs of Hepatitis fact sheet, August 2012, Centers for Disease Control. (http://www.cdc.gov/hepatitis/Resources/Professionals/PDFs/ABCTable.pdf). 9. Hepatitis and Liver Cancer: A National Strategy for Prevention and Control of Hepatitis B and C, Institute of Medicine Consensus Report, January 2010 (http://www.iom.edu/Reports/2010/Hepatitisand-Liver-Cancer-A-National-Strategy-for-Prevention-and-Control-of-Hepatitis-B-and-C.aspx). 10. Combating the Silent Epidemic of Viral Hepatitis: Action Plan for the Prevention, Care & Treatment of Viral Hepatitis, U.S. Department of Health & Human Services report issued May 12, 2011. (http://www.hhs.gov/ash/initiatives/hepatitis/actionplan_viralhepatitis2011.pdf). 11. CDC Know More Hepatitis campaign web site (http://www.cdc.gov/knowmorehepatitis/index.htm) and CDC Fact Sheet: Hepatitis C: Expansion of Testing Recommendations, August 2012. (http://www.cdc.gov/nchhstp/newsroom/docs/2012/HCV-TestingRecsFactSheet_508.pdf).
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27. 結核蔓延の阻止
現状 現在、全世界の人口の3分の1が結核に感染していると考えられており、新規患者は毎秒1人の割合で増えている。1,2 世界的にみると、毎年結核に感染する患者の比率は減少しつつあるが、世界人口が増加しているため、患者数自体 は増加し続けている。1 2007年には結核患者が1,370万人、新規患者は930万人、死亡者数は180万人と報告さ れており、 そのほとんどは発展途上国で発生している。3 先進国においても、免疫抑制薬や薬物乱用、 あるいはエイ ズなどによって、結核感染の危険にさらされている人口は増えている。 また、結核患者の分布は世界中で一定ではな く、 アジアやアフリカの多くの国々では、人口の約80%がツベルクリン検査で陽性と判定される。 その一方で米国で は、人口の5~10%だけが陽性と判定されるに過ぎない。4 2007年、世界で最も結核患者発生数の多い国はスワジランドで、 その数は人口10万人あたり1,200人というもの であった。2,3 またインドは最大の結核患者数を抱えており、新規患者数だけでも200万人と推定されている。一 方、先進国では、結核はそれほど一般的な病気ではなくなっており、主に都市部における病気となっている。2007年 において、 イギリスでは人口10万人あたりの患者数が15人。 また、西ヨーロッパ諸国で最も患者数の多かった国は ポルトガルとスペインで、 その数は人口10万人あたり30人というものであった。 中国では人口10万人あたり98人、 ブラジルは48人。 さらにアメリカでは2007年の人口10万人あたりの結核患者数はわずか4人だった。5,6 しかしカ ナダでは、一部の農村地域において結核が風土病として残っている。7 日本ではかつては猛威をふるっていたが、 第2次世界大戦後に結核予防法などの国を挙げての結核対策を行ったこと で、 患者が急速に減少した。 結核患者数の順調な減少は一般の人々だけでなく、 医療従事者の意識の低下を招いてい る。 1980年頃までは順調に結核の患者数が減少してきたが、 それ以降は新規患者数の減少傾向が鈍化している。 日 本ではいまだに年間約2.3万人の新規患者が発生しており、 中程度の蔓延状態で罹患率・死亡率はほかの先進国よ りも依然として高い状況になっている。 例えば、 日本の感染率はカナダの4.5倍、 アメリカの4.4倍、 スウェーデンの3.7 倍である。 現在でも集団感染の報告が多数続いており、 結核撲滅のためには迅速な診断・治療が求められている。 現行政策 結核予防法は、2006年に感染症法に統合され、2007年に施行された。結核は新しい感染症法で二類感染症と指 定されており、 すべての症例は迅速に報告されなければならない。 また結核の治療では検査結果の迅速な報告が必 要とされている。CDCの勧告に基づいて、2007年に日本結核病学会によって、新しい結核病検査指針が策定され た。指針ではより検出率・迅速性に優れた液体培地を用いた検査が推奨されているが、 日本の医療制度によって液 体培地の使用が義務化されているわけではない。迅速かつ正確な結核菌検査が行われなければ診断や治療の遅れ につながり、貴重なヘルスケア資源の浪費にもつながってしまう。 そのため迅速かつ正確な結核菌検査こそが、世界 的な結核の拡大を防ぐために行うべき重要な取組みなのである。 政策提言 OO 結核検査の迅速性と正確性を高めるため、 日本結核病学会の策定した指針による液体培地使用の推奨。 • 液体培地による初回分離培養は、 ほかの培地に比較しても検出率や迅速性に優れている。 • 診断や治療の遅れを減少させ、病院の入院日数短縮などにも貢献する。 • 結核の拡散を防止するため迅速な診断を行う。
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参考文献
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28. 一般医療機関におけるHIV検査体制の構築
現状 国内におけるHIV感染者数は、増加の一途を辿っている。新規HIV感染者は2004年以降年間1,000人を超 え、2010年の新規HIV感染者数は1,503人である。 またエイズを発症してから発見される”いきなりエイズ”の割合 は依然として新規HIV感染者数の約30%であり、減少傾向を示していない。 これは早期発見のための検査機会を逸 していることによるものと考えられている。”いきなりエイズ”の割合は、医療従事者・検査対象者ともにHIV感染症に 対して知識が乏しく、警戒心の低い地方がより高くなっている。 自らの感染の危険性を認識し、 自主的にHIV検査を受けようとする人の受け皿は保健所などの“無料・匿名検査”の 実施によって全国的に構築されているが、近年、検査数が低下しており、 その検査体制、検査普及体制に疑問が呈さ れている。 新規HIV感染者は、保健所などの無料・匿名検査でも発見されているが、一般医療機関における疾患精査中・院 内感染対策のための検査でより多く発見されている。しかし、社会医療診療行為別調査によればHIV抗体検査数 は、HBs抗原や梅毒脂質抗原使用検査(定性)の10%程度にすぎない。HIV感染者の70%は感染を知らずに生 活していると推定されており、自らの感染の危険性を認識していない人々をいかに発見できるかが、HIV感染の拡 大を阻止する大きな要因となる。またHIV感染症は、適切な治療を受けることで”慢性疾患”として制御が可能な 疾患となったが、“いきなりエイズ“では依然として予後不良であり、HIV感染者の早期発見は、HIV拡大防止およ び感染者の生活の質の向上に大きく寄与する。自ら感染の危険性を認識していない人の受け皿を、広く用意する ことが必要である。 現行政策 これまで、保健所や一部の医療機関の検査室において無料・匿名のHIV検査を行うとともに、利用者の利便性に配 慮した検査・相談体制の構築が進められてきたが、保健所などで発見される患者数は新規患者数の30%にすぎな い。2006年度から2010年度まで厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策事業) の研究課題として 「エイズ予防の ための戦略研究」 が2010年末までの5年間で 1)HIV検査受検者を2倍にする 2)エイズ発症者を25%減少させ ること、 を目標に活動してきたが達成できていない。 自らの感染の危険性を認識し、検査を自主的に受けに来る、 すな わち対象者の自主性に依存する政策が限界であることを示している。医療機関の専門家やほかの人たちは、感染の 危険性のある人達が認識を深め、彼らがHIV検査を受けるように説得することを手伝う必要がある。 政策提言 OO HIV検査を啓発し、検査体制を強化する事によって、自らリスクを知り、HIV検査を受け、一般医療者への啓発 を含めた早期診断のための体制整備を行うべきである。 OO 一般の医療機関におけるHIV検査の敷居を低くし、受けやすくすれば、自らの感染を考えたこともない人々の 早期発見のためになる。 OO きわめてHIVに近い性感染症(STI)やHIVと思われる不明熱などの患者へ、HIV検査のための組織的なアプ ローチを説明することが必要。 OO “いきなりエイズ”とエイズの早期診断の必要性について、一般の医療機関の専門家たちへの教育。 OO HIV感染症の診断と同時に、患者の保険適用の症例についても、既往も含めた広範囲でかつ具体的な確認が 必要である。STIの経験がある人は、HIVに感染しやすいので社会保険でHIV検査を受けるべきである。 OO 自らの感染を考えたこともない人々の早期発見のために、米国で実施されているような、患者が拒否しない限 りは年齢を区切ってHIV検査を行うことができるopt-out方式のHIV検査を、保険診療として実施できる体制 を整えるべきである。感染率の高い地域(都市圏)、増加率の著しい地域において、この体制は整備されるべ きである。 OO 同意、結果の扱い、 カウンセリングなどHIV感染症を特別視せず、他の院内感染対策項目 (HBsAg、HCV抗体、 梅毒検査) と同列に扱うよう医療従事者に周知徹底するべきである。 そのためには健医感発第78号通知(厚生 労働省エイズ結核感染症課長通知) の見直しが必要である。 そうすれば、HIV検査は他の検査と同じように同 意、結果の扱い、 カウンセリングなどが行える。
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参考文献 1.
厚生労働省、平成5年7月13日健医感発第78号、 エイズ結核感染症課長通知
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29. 性感染症の蔓延阻止
現状 性感染症(STI) は、 その診断法や治療法の進歩により、多くの感染患者が短期間に非感染性になり、大部分が治癒 しているにもかかわらず、世界の多くの地域で未だに高い感染率を示している。多くの文化圏において、性モラルの 変化や経口避妊薬の普及によって伝統的な性的抑制、特に女性側の性的抑制は取り除かれているが、医師と患者 がオープンかつ率直に性的な問題を話すまでには至っていない。 また、薬剤耐性菌が出現し、蔓延しているSTIもある (例:ペニシリン耐性淋菌)。 1996年のWHOの推定によると、世界中で1日に100万人以上がSTIに感染している。 この感染患者のうち、約60% は25歳未満の若年層であり、30%が20歳未満である。14歳から19歳までの患者では、感染率は少女の方が少年 よりも高く、 およそ2:1の割合であるが、 この比率が20歳までにほぼ同じになる。1999年だけでも、世界で3億4千 万人が、新たに梅毒、淋病、 クラミジア、 トリコモナス症に感染していると推定されている。1 性的に活発な思春期の少女の間で、一般的に流行していると報告されているSTIは、下部生殖器管に症状があるな しに関わらず、 クラミジア (10~25%)、淋病(3~18%)、梅毒(0~3%)、 トリコモナス膣炎(8~16%)、単純ヘルペ スウイルス (2~12%) である。尿道炎の症状のない思春期の少年の細菌検出率は、 クラミジアで9~11%、淋病で2 ~3%である。米国では、十代の少女の少なくとも4人に1人がSTIに感染していることが、CDCの研究で明らかにな った。2,3 性交渉の経験があるとする少女の間では、 その率は40%に昇る。4 日本では、STIの中でもクラミジア感染症の報告数が非常に高く、特に若い男女の間で高い。5 クラミジアは症状がで ない場合が多いため、性産業従事者だけではなく、一般の人々の間にも蔓延する結果となっている。性交渉を経験し た高校生の13%が無症状性クラミジアに感染しているとの報告もある。6女性がクラミジア感染を放置していると、 感染患者の20~40%が骨盤腹膜炎になることがあり、子宮外妊娠や不妊につながる。 そのような患者の中には、望 んだ時に妊娠することが困難になる女性もいる。7, 8, 9, 10 クラミジアに感染すると、HIVへの感染リスクは5倍になり、 子宮頸がんの原因となるHPV感染リスクも高まる。11 さらには、妊娠中のクラミジア感染は、繊毛羊膜炎、早産、 お よび流産の原因となる可能性があり、母子感染によって新生児がクラミジア性肺炎やクラミジア性結膜炎の原因と もなる。12, 13, 14, 15 クラミジアの感染を初期段階で発見すれば、通常の抗生物質で治療できるが、発見が遅れた場合は、長期の治療と 余分な医療費がかかることになる。感染した患者が妊娠を望んだ場合、患者自身が高額な医療費を負担するか、 ま たは患者の医療費を助成する地方自治体の負担を生むことになる。子を育てている年代の女性は定期的にクラミジ ア検査を受けることが重要である。治療しないでいるとクラミジアは感染する、 ということを知ることが大切である。 クラミジア感染による総合的な医療費は、15〜29歳の女性に対して、毎年スクリーニング検査を実施することによ って、削減できるという報告もある。15 検査のさらなる成果は日本の出生率の低さを改善するだろう。 CDCは25歳未満の女性や、25歳以上でもパートナーを変えた女性には、毎年クラミジア検査を受けることを推奨し ている。CDC以外にも、米国家庭医学会(AAFP)、米国産科婦人科学会(ACOG)、米国予防医学会(ACPM)、 カナ ダ予防医療タスクフォース、欧州疾病管理予防センター(ECDC)、英国の医療技術評価プログラムもスクリーニン グ検査を推奨している。 このような推奨に基づいて、米国、 イギリスやスウェーデン、 オーストラリアなど多くの国々で 無料検査が実施されている。 現行政策 日本では、多くの地方自治体で無料のクラミジア検査が実施されているが、検査実施率は非常に低いレベルにとどま っている。 さらに、検査は血液検体で行われているため、過去の感染なのか、現在感染しているのかを、検査結果から 判断することは困難である。 また、感度の低さによる偽陰性の問題もある。
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政策提言 OO 妊娠に適した20歳~35歳の女性のクラミジア検査に対し、補助金を出すことを推奨する。 また、高い実施率を 実現させることと受診者の負担を下げるため、20代と30代の女性の子宮頸がん検診と同時に行うことを推奨 する。 OO 検査は感度に問題がある抗体のための血液検査ではなく、核酸増幅検査で行うことを推奨する。 OO 女性の生活の質の向上、健康保険のコストの削減と不妊治療費のコストの削減を実現させるため、早期に感染 を発見し、治療を開始する必要がある。 これは、非常に低い日本の出生率の改善にも好影響を与える。
参考文献 1. 2.
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高度な安全性と感染管理の重要性
医療関連感染(HAI)とは患者が医療施設で感染する、 しばしば抗菌剤に対して耐性である細菌、 ウイルス、 ならびに その他病原体を原因とする感染症である。 こうした感染症は、入院期間の延長、長期におよぶ就業不能状態、不可避 な死亡、抗菌剤耐性の増加、医療システムに対する過剰な経済コスト、 ならびに患者とその家族に対する大きな経済 的負担等、臨床上、公衆衛生上、 そして経済的に大きなコストをもたらしている。HAIは毎年何億人もの患者に被害 を及ぼしている。1,2 幸いにも多くのHAIは、公共政策が医療機関に総合的な感染予防および管理業務の実施を求 めることで防ぐ事が可能である。 世界保険機関(WHO) は、HAIが毎年世界中で何億人もの患者に被害を及ぼし、病院における有病率は先進国で 5~12%、開発途上国で5~19%と推測している。3 さらにHAIは、回避可能な大きな医療コストをもたらしてもい る。米国では、HAIの治療に関係する直接医療コストは全体で年間284~338億ドルにのぼる。4 同様にOECDが 3カ国について行った研究からは、調査した国では、HAIが年間7~80億ドルも医療コストを押し上げていることを 明らかにしている。5 こうした状況が医療従事者の生産性の消失、 あるいは他医療業務から資源が離れることによる 機会コストにつながらないことを記しておくことは重要である。HAIは、 しばしば患者の入院期間を大きく延長させる が、 いくつかの研究によれば3~5倍長くなる。6,7 そのことは患者およびその家族にさらなる経済的および心理的コ ストをもたらす結果になるだろう。 HAIは、有効な政策および適切な活動によって管理することができる。例えば、 ハイリスク患者を対象にした積極的 なサーベイランスやスクリーニングを含む西オーストラリア州の総合的なアプローチは、地域のメチシリン耐性黄 8 色ブドウ球菌(MRSA)によるHAIの感染率を大きく低下させたと考えられている。 同様に、米国では”Michigan Keystone Project”(主要な病院の協会と大学との共同プロジェクト) は、開始から18カ月間で、集中治療室(ICU) でのカテーテル関連の血液感染症を66%減らし、推定で1,500名の生命を救い、2億ドルの経費を節減した。 この Michigan Keystone Projectでは、手洗いが一つの構成要素となっており、 これが成功にとって不可欠な要素で あることは確かだが、総合プログラムは、手洗いだけでは成立しない。世界的には手洗いの規則の遵守率は低く、20 ~50%に留まることが研究から示されている。9,10 重要なことは、 このプロジェクトが、 プロジェクトへの協力にイン センティブを設け、施設の文化と実務作業を変えることに焦点をあてて活動したことである。11 HAIは、感染予防および管理、医療施設の監督、技術を含むインフラへの投資、 ならびに変化を促進するためのイン センティブといった不可欠な要素の実施を含む総合的な方針を立てて取り組まなければならない、全世界の医療シ ステムにとって重大な問題である。WHOはその報告書の中で、 「我々は、方針決定者に、HAIがシステムと患者両方 にとって隠れた大きな負担となっていること。 そして、 それに対する行動が今求められていることを警告しなければな らない」 と結論している。12
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参考文献 1.
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KD: ACCJ˙ơƢ̀ ɠ˖ĭĹƨȎˣ̏̃ǕŵƪȨĆ˿ɟ˯̒óȤȠņͬ ij˚2011Ñ11Ķ
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KD: ACCJ˙ơƢ̀ ɠ˖ĭĹƨȎˣ̏̃ǕŵƪȨĆ˿ɟ˯̒óȤȠņͬ ij˚2011Ñ11Ķ
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30. 医療関連感染防止の推進
現状 医療関連感染(HAI)、別名「院内感染」 は医療施設において患者が医療行為を受けるときに感染症にかかることを 意味する。1 入院患者、特にICUにいる患者はこのHAIのリスクにたえず曝されている。HAIにかかると、入院期間は 長くなり、感染症治療のための医療費がかさむことになる。2,3 近年行われた36施設における脳卒中患者に関しての 研究では、HAIの発生率は16.4%だった。HAIにかかった患者は、平均23万3,000円余計に医療費を払い、16.3日 余計に入院していた。4 HAIは予防できる。HAIに関連する30のレポートをもとに検討した研究では、最低10%から最大70%までHAIを減 少させる可能性があったと結論づけている。5 防止にかかわるガイドライン、 プログラムに沿うことで、病院内のHAI 発生率が減少し、 その結果、患者の入院期間および医療費が減少することが述べられている文献もある。6 米国の保健社会福祉省の研究機関である医療研究・品質調査機構 (AHRQ) によると、 入院期間を延長し、 医療費お よび死亡率を上げるような重篤な医療関連感染症には、血流感染(BSIs)、 カテーテル関連尿路感染(CAUTIs)、手 術部位感染 (SSIs) 、 人工呼吸器関連感染 (VAP) 等が含まれると論じている。 これらの4感染症でHAIの80%以上に なる。7 また、これらの感染症の多くは抗生剤に対して耐性を示し、病態の重篤化、予後の悪化、ひいては死につながるこ とがある。HAIの起因菌のいくつかは医療施設内の環境、例えば医療器材、手術用具、衛生をおろそかにした手 指、医療従事者および患者の服等で生存し、医療従事者が十分な感染対策を施さないと、患者から患者へ簡単に 伝播する。 保菌状況の積極的な監視(アクティブ・サーベイランス) と各種感染対策の“バンドル”はHAI予防の解決策である。患 者が感染性病原体の保菌者であることを事前に把握していれば、医療従事者および医療施設は、感染伝播管理を 含むHAI予防のための適切な措置をとることができる。手術前の除菌などの特別な感染予防プログラムが、患者の 保護に役立つ。 アクティブ・サーベイランスでは、入院患者全員を対象にした入院時のスクリーニングが最大の効果 をもたらす。 アクティブ・サーベイランスはICUや救急治療室の患者と、免疫不全状態の患者や長期入院患者などの ハイリスク患者の場合、特に重要である。 アクティブ・サーベイランスは 「感染症診断」 の代替ではなく、病院にとって メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、 エイズ・ウイルス(HIV)、肝炎ウィルス などの感染性病原体の発見と管理に利用できる有効な手段となる。 現行政策 2007年4月、改正医療法が施行され、 すべての医療機関は医療安全のために手段を講じなければならなくなった。 改正医療法の下、HAI予防に関して、医療法施行規則には、次の4つの中核的な項目が含まれている。 1) 院内感染対策のための指針の策定と実行 2) 院内感染対策委員会会議の開催 3) 医療従事者に対する院内感染対策のための研修の実施 4) 感染症の発生状況の報告 これらの予防措置を実行に移していない医療機関は、監査の対象となる。 また、2011年6月17日に厚生労働省医政 局指導課長より通知が出され、医療機関等における院内感染対策の留意事項が示された。 この中では、 1) 感染制御の組織化として、感染制御チーム(ICT)の設置およびその役割 2) 多剤耐性菌によるアウトブレイク等施設内では対応が困難な事例に備え、医療機関間の連携 3) アウトブレイクを疑う基準ならびに保健所への報告の目安等 が示されている。 しかし、 これらを遵守していない医療機関で感染症の発生が見られても、社会的責任を果たしてい ないとして批判を浴びるほかは、罰則はないため感染対策に関する強制的なものが望まれる。
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2012年の診療報酬改定では、感染防止対策加算が大幅に引き上げられた。 その施設基準には定期的なカンファレ ンスを行う等の活動が義務付けられたが、HAIの実態を確認すること、 どのような感染予防策を講じるか、等の具体 的な活動内容が盛り込まれていない。 最近発表された政府声明では、より強い感染管理を支持していくとある。ACCJとEBCは2010年6月21日に厚生 労働省を代表して、麦谷眞里大臣官房審議官(がん、国際保健担当)が発表したHAIに対処するとした約束を歓迎 する。7 この発表の目的のひとつは、 「HAIのリスクを減少させるために、最も高い実務基準と行動基準を推進する こと」にある。ACCJとEBCは、厚生労働省がこの目的に対処するための措置を取ったこと、特に、感染症に関して 全国的なサーベイランスシステムを確立させ、病院施設に感染管理に関する報告制度の指示を出したことを称賛 する。 政策提言 OO HAI対策は立証された感染管理実務、教育および文化的な変化を一括して含む包括的な対策でなければな らない。さらに、迅速分子診断検査法や新規の医療機器や技術には、患者の安全性向上およびHAI低減の 効果があることも考慮すべきである。情報技術もまた、HAIのサーベイランスおよび予防の強化のために利用 すべきである。 OO 医療機関において合理的なHAI対策の目標を設定し、適切な期間でその目標を達成する。可能であれば、標 準的な評価システムを用いて、基準となるHAI発生率を定め、目標達成までの病院ごとの進捗度を評価すべ きである。 OO HAI予防目標の遵守推進のため、インセンティブを用意する必要がある。予防目標達成に向けた進捗度に直 接関連付けられたインセンティブ(褒賞と処罰の両方を含む)を実施しなければならない。すべての医療施設 は、現行の医療標準とベスト・プラクティスに合わせた包括的なHAI管理・予防計画を策定、実施、継続すべ きである。HAI管理・予防計画の策定、実施および継続を怠っている施設に対しては、遵守まで、何らかの制 裁措置を取るべきである。 OO 政府レベルと施設レベルの協力、そして関係組織による支援が必要である。HAI対策には、各レベルの政府 機関の関与およびリーダーシップ、すべての医療施設の協力体制、さらに医療におけるベスト・プラクティスや HAI対策を行う関連組織による支援が必要である。こうした支援は、予防目標を達成するための、対策の策定 および実施に必要である。 OO 国家的、国際的、地方/施設の取組みに対し、各国のインフラ全体にとって十分な資金を当てるべきである。 これには、HAIに関する研究において、認識された優先的な未解明分野の研究も含まれる。 OO MRSA、VRE、クロストリジウム-ディフィシル感染症、エイズ・ウィルス、肝炎ウィルスのような感染性病原体 に対する医療現場におけるアクティブ・サーベイランス、早期スクリーニング、早期発見、感染モニタリングの 実施は欠かせない。 OO MRSAのような微生物汚染に対するアクティブ・サーベイランスと、定期的環境モニタリングを活発化させる 診療報酬上のインセンティブを設定する必要がある。 OO 日本政府はWHO等の患者の安全にかかわる世界的協調について、理解し、促進すべきである。7 また日本 政府は国際的協調を最適化し、ベスト・プラクティスを共有し、日本およびAPEC加盟21カ国がAPECライフ サイエンス・イノベーションフォーラムによる感染予防への取組みを通じて、HAIとの戦いへの支援をするべき である。
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参考文献
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健康寿命の延長による日本経済活性化 | 133
31. 感染管理の向上: 開放式 vs 閉鎖式システム
現状 多くの院内感染は、薬剤/輸液が輸液器材により投与された際に発生している。1 輸液システムを介し、外気に曝さ れることや、汚染により起こる一般的な感染例が血流感染(BSI) である。BSIは致死の主原因となるだけでなく、全身 状態を悪化させ、死に至る結果になることから、患者の治療結果に多大な影響を及ぼす。国際的な院内感染制御に 関するコンソーシアム(INICC)はラテンアメリカ、 アジア、 アフリカ、 ヨーロッパのICUにおいてBSIのサーベイランスを 2 実施した結果、BSIによる死亡率は29.6%であった。 ほとんどのBSIおよび発生リスクは、予防可能である。刷新的な医療製品の導入は、BSI予防において効果的な役割 を果たす。例えば閉鎖式輸液システムはBSIを低減した実績があることから、患者の安全性向上と入院期間延長や 治療費関連のコスト削減の可能性がある。閉鎖式輸液システムでは、輸液は外部の空気に晒されないため、汚染・感 染のリスクが大きく減少する。開放系システムから閉鎖系システムに切り替えた場合、BSIが低下することが研究によ って示されている。 メキシコでは80%以上、3 アルゼンチンでは64%、4 イタリアでは61%、5 ブラジルでは55%、6 BSIが低下した。 アルゼンチンで実施された臨床研究によると、閉鎖式輸液システムを使用し、患者へ輸液を投与し た場合、BSI関連の死亡率は91%減少されることを示した。7 BSI率の減少により、ICU滞在期間の短縮化による医療費や、BSI治療に必要となる抗生剤や、 その他薬剤の使用 を削減できる。 メキシコとブラジルで実施された研究では、BSI率減少が有意なコスト削減につながる事を示してい る。8,9 より高い診療報酬の設定によって、閉鎖式輸液システムの安全性が認識されるということは、既存の古い開放 式システムから閉鎖式への変換を勇気づけるものである。 現行政策 日本では数多くの症例に医療費が設定されているが、閉鎖式輸液システムの使用は想定されていない。診療報酬制 度では開放式と閉鎖式輸液システムは区別されていないのが現状である。結果として、医療施設では、追加の支払い 関連のコストや進歩した閉鎖式医療器材の使用を負担しなければならない。開放式と閉鎖式システムの区別は現在 の診療報酬カテゴリーでは設定されていないことから、特殊治療器材においても閉鎖式システムの報酬価格は設定 されていない。安全性向上と感染管理のために設計された閉鎖式システム器材は、斬新さや安全性に劣る旧式の開 放式システムと同等レベルでの価格設定になっている。 政策提言 OO 日本政府は、病院感染管理の方針に欠かせない閉鎖式輸液システムのような斬新な医療製品を、病院が使 用するよう推進する。 OO 医療費は入院、外来患者における閉鎖式医療器材使用の費用へ反映されるよう改善すべき。 OO さらなる安全性と感染管理向上のため、新たな機能的部門の設定を通じて開放式と閉鎖式システムの明確な 区別を確立する。
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参考文献
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32. 皮膚消毒
現状 2011年5月にWHOが出した全世界の地域性医療関連感染による被害に関する報告書(Report on the Burden of Endemic Health Care-Associated Infection Worldwide)は、世界的に今もHAIが医療において最も多発 する有害事象であることを示している。1 同報告書はまた、世界中で入院患者100名あたり約7~10名が少なくとも 1つのHAIに罹ると報告している。1 このWHO報告書の内容は、医療を受けることが必ずしも安全なケアを意味しな いことを気づかせるものである。1 HAIは、患者の安全性に関する世界的な大きな問題である。HAIは医療提供時に 最も多発する有害事象であり、長期入院、長期の障害、抗菌剤耐性菌の増加、医療システムへの高い追加コスト、患 1 者およびその家族への経済的・人的負担、 および本来起こりえない死亡例をもたらす可能性がある。 このWHO報 1 告書は、開発途上国におけるHAIの発生率は、患者100名あたり7.6と推定している。 低所得および中所得国として定義した場合の開発途上国のHAI予測値は、幅広く、147の途上国のうち2/3につい ては公表データがなく、全国レベルでHAIのサーベイランスを実施していたのは147カ国中23カ国(15.6%) のみで あった。2 2010年の時点では、開発途上国に関して、発表されているデータから得られる地域のHAI被害像は断片 的なものに過ぎない。2 感染予防と対策は、医療機関にとって最も優先度の高い安全関連業務の一つである。感染は、 あらゆる医療環境で 起こり得るものであり、医療機関の間で伝播し、 または地域社会の間で伝播する可能性がある。感染は患者および 医療従事者の安全性にとって重大なリスクであることから、感染予防および対策はあらゆる組織の優先度リストに おいて高くなければならない。厳密な手指衛生、 および環境の消毒と併せて皮膚消毒もHAI予防の基礎であり、 同時 に有効な感染予防および対策プログラムにとっての重要要素でもある。多くの種類の消毒薬が過去使用されてきた が、 クロルヘキシジングルコネート (CHG) が世界的にHAI予防の皮膚消毒薬の標準になりつつある。 CHGは適切な濃度で使用した時に、迅速かつ長期にわたって抗菌作用を示す、広域抗菌化合物である。CHGがグ ラム陽性菌だけでなくグラム陰性菌の減少にも効果があることが、大規模かつ増加しつつある科学的根拠によって 裏付けられている。結果としてCHGは感染対策の策定を行った国々での皮膚消毒では 「標準」 となりつつある。CHG が安全で効果的であることを裏付ける圧倒的な一連の臨床エビデンスによって、CHGは世界的に注目を集め、採用 されることになった。一連の患者ケアにおける必須の要素、 あるいはHAIに関連して最もコストがかかる致死的原因 菌カテ-テル関連血流感染(CRBSI)、手術部位感染(SSI)、 および人工呼吸器関連肺炎(VAP) を予防するための 手段として、CHGをHAIガイドラインに推奨する国が増えている。CHGは、WHO、CDC、 およびその他の関係機関 によればアレルギー反応が起こることがあるが、安全で有効と見なされている。多くの日本の有識者専門家がCHG を、VAPの経口ケアを含めてあらゆる機器関連の感染防止に好んで使用している。 現行政策 日本では、10%ポビドンヨードまたは70%アルコールと同等に0.5%CHGを皮膚用消毒薬として推奨しているガイ ドラインがいくつかあるが、0.5%を超えるCHGの使用を明確に推奨している国の専門ガイドラインはない。 日本の感染予防の方向性を示す有識者達は、CDCのガイドラインを認識しており、米国医療保健改善協会(IHI) の バンドル (複数の感染対策の組合せ) も熟知している。 またいくつかの医療機関はこれらが推奨する方法を実行して いる。 しかしながら実際の業務は、 アレルギーや単回使用消毒剤のコストが比較的高いことへの懸念から、 こうした 推奨実行に一致していないことが多い。 日本における感染予防をより確かなものにするためには、科学的根拠に基づ いた皮膚消毒プロトコールに、少なくともHAIの軽減および防止に世界中で使用され、認められている最善の方法を 加える必要がある。
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政策提言 世界的なベスト・プラクティスに合わせて、基本の皮膚消毒ガイドラインには少なくとも以下のプロトコールを含める べきである: OO 中心静脈カテーテル (CVC)、末梢穿刺中心静脈カテーテル(PICC)、および末梢カテーテル(動脈また は静脈)の挿入および維持(ドレッシングの交換)に関する皮膚消毒 OO CVCおよび末梢動脈カテーテル挿入前およびドレッシング交換中、>0.5%のCHGのアルコール製剤 を使って皮膚を消毒する。CHGが禁忌である場合は、その代わりにヨードチンキ、ヨードフォア、または 70%アルコールを使うことができる。3,4,5 OO 末梢静脈カテーテル挿入前に消毒剤(70%アルコール、ヨードチンキ、ヨードフォア、またはCHG)を使っ て皮膚を消毒する。3,4 血管カテーテル挿入部位の消毒および保持には、CHGがより効果的である(留 置期間を延長し、血液検体の汚染を減らし、完全性を維持する)と考えられている。 OO 患者の術前浴および術前皮膚清拭の皮膚消毒。 OO 通常の皮膚消毒用2%CHGを使用してSSIを減らす。3,6,7,8 OO 手術時の皮膚消毒(手術前およびトンネル型透析カテーテルのようなCVC設置、および皮下ポートの埋 め込みのための切開処置を含む)。 OO 2~4%CHGが手術時の皮膚消毒に推奨されている(目、耳、粘膜への使用には向かない)。9 OO 単回使用皮膚消毒剤の使用単回使用消毒剤は 1)大きな消毒薬ボトルを複数回使用する際の汚染がなくなり 2)皮膚消毒ガイドラインのコンプライアンスを高め 3)皮膚消毒薬、耐久素材の使用量を減らし、再滅菌処理の回数を減らし 4)作業時間を短縮して 5)皮膚消毒の直接費と間接費(労働および時間)の両方を下げる CDCガイドラインには単回使用消毒剤の使用は特に求められていないが、前述した単回使用消毒剤が もつその他利点から、大きなボトルの消毒薬は汚染のリスクがあり皮膚消毒には使用しない。
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参考文献
1. WHO, Report on the Burden of Endemic Health Care-Associated Infection Worldwide. 2011. Accessed 26 May 2011. http://whqlibdoc.who.int/publications/2011/9789241501507_eng.pdf. 2. Allegranzi B, et al. Burden of endemic health-care associated infection in developing countries: Systematic review and meta-analysis. Lancet. 2011 Jan 15;377(9761):228 241. 3. 血管内留置カテーテル関連感染予防のためのガイドライン、CDC(2011年4月改訂) http://www.cdc.gov/hicpac/BSI/BSI-guidelines-2011.html 4. Maki DG, Ringer M, Alvarado CJ. Prospective randomised trial of povidone-iodine, alcohol, and chlorhexidine for prevention of infection associated with central venous and arterial catheters. Lancet 1991; 338:339−43. 5. Mimoz O, Pieroni L, Lawrence C, et al. Prospective, randomized trial of two antiseptic solutions for prevention of central venous or arterial catheter colonization and infection in intensive care unit patients. Crit Care Med 1996; 24:1818−23. 6. Bleasdale SC, Trick WE, Gonzalez IM, Lyles RD, Hayden MK, Weinstein RA. Effectiveness of chlorhexidine bathing to reduce catheter associated bloodstream infections in medical intensive care unit patients. Arch Intern Med 2007; 167:2073−9. 7. Munoz-Price LS, Hota B, Stemer A, Weinstein RA. Prevention of bloodstream infections by use of daily chlorhexidine baths for patients at a long-term acute care hospital. Infect Control Hosp Epidemiol 2009; 30:1031−5. 8. Popovich KJ, Hota B, Hayes R, Weinstein RA, Hayden MK. Effectiveness of routine patient cleansing with chlorhexidine gluconate for infection prevention in the medical intensive care unit. Infect Control Hosp Epidemiol 2009; 30:959−63. 9. WHO Guidelines for Safe Surgery 2009: Safe Surgery Saves Lives (ISBN 978 92 4 159855 2).
追加の参考文献
a. Resar R, Griffin FA, Haraden C, Nolan TW. Using Care Bundles to Improve Health Care Quality. IHI Innovation Series white paper. Cambridge, Massachusetts: Institute for Healthcare Improvement; 2012. (Available onwww.IHI.org). b. Anderson, D. J., K. S. Kaye, et al. (2008). “Strategies to prevent surgical site infections in acute care hospitals.” Infect Control Hosp Epidemiol 29 Suppl 1: S51-61. c. Al-Tawfiq, J. A. and M. S. Abed (2010). “Decreasing ventilator-associated pneumonia in adult intensive care units using the Institute for Healthcare Improvement bundle.” Am J Infect Control. d. Flanders SA, Collard HR, Saint S. Nosocomial pneumonia: state of the science. Am J Infect Control 2006; 34:84-93. e. Rosenthal VD, Guzman S, Crnich C. Impact of an infection control program on rates of ventilatorassociated pneumonia in intensive care units in 2 Argentinean hospitals. Am J Infect Control 2006; 34:58-63. f. Siempos, II, Vardakas, K. Z., & Falagas, M. E. (2008). Closed tracheal suction systems for prevention of ventilator-associated pneumonia. Br J Anaesth, 100(3), 299-306. g. Guidelines for the management of adults with hospital-acquired, ventilator-associated, and healthcareassociated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 2005; 171:388-416. h. Institute for Healthcare Improvement. Sepsis Resuscitation Bundle. Available at http://www.ihi.org/knowledge/Pages/Changes/ImplementtheSepsisResuscitationBundle.aspx.
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33. 感染防止機能付き機器:血流感染
現状 カテーテル感染リスクに関連する潜在的要因例 カテーテル関連感染(CRBSI)には、出口感染、トンネル感染、ポケット感染や血流感染がある。米国ではCRBSI によって、患者1人あたり平均12日間の入院期間の延長と18,432ドルの追加コストがかかり、1 CDCの報告で は米国で年間25万件のCVC関連血流感染が発生し、死亡率は12~25%(3万~6万2,500人)と推測されてい る。2 CRBSIの予防は患者にとっても、医療システムにとっても優先課題であることは言うまでもない。ガイドラ インや感染予防効果をうたう製品が出回る中、本当に必要なケアを考える必要がある。 カテーテル感染リスクに関連する潜在的要因例として 1) カテーテル留置期間 2) 頻回のカテーテル操作 3) 複数ルーメンカテーテルの使用 4) 免疫抑制、 などがある。3 局所感染はカテーテルの挿入部位やトンネル、埋め込みポートのポケットなどに限定して起こることが多く、血流感 染と同時に、 また単独でも起こりえる。局所感染の観察ポイント4 は、局所の圧痛、熱感、発赤、硬化、排膿などがあ る。視診とドレッシング材の上からの軽い触診で、刺入部、 トンネル通過部位、 ポートのポケット部などを観察する。 異常があれば、 ドレッシング材を剥がし、 さらに詳しく観察する。4 CRBSIの評価のポイント OO カテーテル挿入部位の継続的観察を行う。4 4 OO 全身状態の観察(発熱, 悪寒, 発汗, 倦怠感, 筋肉痛, 衰弱, 頻脈, 意識状態の変化, 疼痛等)。 4 OO 免疫抑制のある患者では、感染兆候が現れないことがあるので注意する。 OO 感染が疑われる場合、膿・血液培養、抗生剤投与など直ちに医師の指示に従って治療を開始する。24時間以内 に治療が開始されない場合、患者の死亡率は50%を超えると報告されている。4 CRBSI対策としてのニードルレスシステム 血管内留置カテーテル関連感染予防のためのCDCガイドライン2011では、 ニードルレスシステムに関して 「メカニ カルバルブは感染リスクの増加と関連性があるため、数種のメカニカルバルブよりもスプリットセプタムを使用するほ うが望ましい可能性がある」 との勧告が追加された。5 この勧告が追加されたのは、 ニードルレスシステムの構造が CRBSIの危険性に影響を与えるエビデンスをCDCが認めたからである。特筆すべきは、一律のCRBSI定義、 サーベ イランス方法、感染予防策を用いた条件下で、陽圧・陰圧いずれのメカニカルバルブにおいてもCRBSI増加との関連 7 性における強固なエビデンスを示した研究6 が認められている点である。 スプリットセプタム (インターリンク) か ら陽圧または陰圧のメカニカルバルブへ切り替えた際に全ICUと病棟においてCRBSIが増加した。 さらに、ICU14 室にてスプリットセプタム (インターリンクまたはQサイト)へ戻した結果、CRBSIが有意に減少した。病院の担当者 は、CRBSIを注視し、閉鎖式IVニードルレスシステム導入を検討する際には、 メカニカルバルブがCRBSIに及ぼし得 7 る影響を検証すべきである。 CLABSI予防に対するPICCの有用性について PICCとは、肘、前腕あるいは上腕の静脈を穿刺して中心静脈内に先端を留置する中心静脈カテーテル(CVC) の ことを指す。森兼ら (2009) によると、PICCを使用することで鎖骨下静脈あるいは内頚静脈から挿入したCVCより CLABSIを約45%低下させ、CLABSI発症時にかかる抗菌薬費用(1発症あたり約41万円)、CLABSI発症に伴う 追加入院日数(1発症あたり約22日) を考慮すると1入院あたりの総治療費を削減させることが報告されている。
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またPICCは、留置時の感染症発生率が低いだけでなく、末梢静脈を穿刺して挿入することから挿入時に高い安全 性を有している。逆流防止機能付きPICCは、逆流防止機構により、 カテーテル非使用時には血液がカテーテル内に 逆流してこない構造になっており、 カテーテルの閉塞リスクを低減することが報告されている。 現行政策 日本では、診療報酬の設定は多くの場合、CRBSIの発生を予防するための機器・材料の使用を前提としてなされて いない。 また、特定保険医療材料の算定ルールはそのような機器の開発へのインセンティブを欠いている。 また、PICCは特定保険医療材料として 「CVC」 に分類されている。中心静脈用カテーテルは、標準型や抗血栓型な ど、 さらにいくつかの区分に分割されているが、2010年4月に 「逆流防止機能付きPICC」 の区分が新設され、 それ まで標準型(シングルルーメン: 償還価格1,740円、 マルチルーメン: 償還価格2,870円) に分類されていたものが 13,800円の償還価格となり、 その後2012年の診療報酬改定を経て、現在は12,900円の償還価格となっている。 一連の改定により、逆流防止機能付きPICCのシングルルーメン(ベーシックキット:定価16,000円、 マイクロイント ロデューサキット:定価24,000円) については施設における購入価格と償還価格の差が縮まり、施設がPICCを購入 する際の障壁は低くなった。 しかし、包括支払による医療保険制度を導入している施設では、抗感染性の医療材料で あっても、高額な材料費が導入に抑制的に働いている場合があると考えられる。8-18 また、逆流防止機能付きPICCのダブルルーメン (ベーシックキット:定価32,000円、 マイクロイントロデューサキッ ト:定価40,000円) については、依然、施設の購入価格と償還価格の差は大きく、 いわゆる逆ザヤとなっており、臨床 上の有用性・必要性が高いにも関わらず、医療施設の財政上の理由で使用が回避される状況がある。PICCの使用に より材料費は増額となるが、患者の安全を担保しつつ合併症の対策・治療に係る費用を含めて考慮すると、保険医 療の総医療費の抑制につながると考えられる。 政策提言 OO 日本政府は、病院感染管理の方針に欠かせない斬新な医療製品を病院が使用するよう推進する。 OO 医療費は入院、外来患者における医療器材使用の費用へ反映されるよう改善すべき。 OO 適切な使用を促進するには、医療経済学的なアプローチよる臨床的有効性と経済性を加味した点数加算な どにより、導入を促進させる必要がある。 参考文献
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12. Guidance on the use of ultrasound locating devices for placing central venous catheters. Technology Appraisal No.49, National Institute for Clinical Excellence, 2002. 13. 医療の質・安全学会 医療安全全国共同行動企画委員会、医療安全全国共同行動 危険手技の安全な実施「中心静脈カテ ーテル穿刺挿入手技に関する安全指針の策定と順守 How to guide, ver.2」、2008 14. Edith Kathryn Hinson, Lauren D Blough, Journal of Intravenous Nursing, 1996, Vol.19, No.4. 15. PICCの低い感染率(海外) 【エビデンスレベルI】 ;「血管内留置カテーテルに関連する感染予防のCDCガイドライン』 (2002) A」 の中で、PICCは従来のCVCと比較してCRBSIの発生率が低いとされており、Crnichら (2002) のメタ・アナリ シス (エビデンスレベルI)B」 で、 カテーテル1,000日留置あたりのCR-BSI発生件数は、非トンネル型CVC(コーティングな し) が2.3であったのに対して、PICCは0.4であり統計学的に有意に低いことが報告されている。 16. 逆流防止機能付きPICCの低い感染率(国内) 【エビデンスレベルⅢ】 ; 森兼東北大学大学院教授ら (2009)C) によると、 カ テーテル1,000日留置あたりのCRBSI発生件数は、逆流防止機能付きPICCで5.6、非トンネル型CVCで7.0であり逆流防 止機能付きPICCの方が低い傾向が見られ、CRBSIの因子についてロジスティック回帰分析を行ったところ、 カテーテルが 逆流防止機能付きPICCであることはCR-BSI発生リスクを有意に低下させる (オッズ比0.55、p=0.019)因子であること が報告されている (100本あたりの感染率に換算すると、CVC17.8%、PICC9.8%である)。 17. PICCの挿入時の安全性: 【エビデンスレベルI~Ⅲ】 ; McGeeら (2003) によると、鎖骨下、 内頚、大腿静脈からCVCを挿入 する際、1回の手技につきおよそ10%程度の挿入時合併症(動脈穿刺、血腫、気胸、血胸など) が発生しているとされる (エビ デンスレベルI)D)。 また英国NHS(2002) によると、気胸が放置されることによってCVC挿入3,000件に1件の死亡が発生 するという概算があるE)。 これを受けて医療安全全国共同行動企画委員会は 「中心静脈カテーテルの穿刺挿入手技に伴う 有害事象とこれに起因する死亡を防ぐ」 ためのHow to guide (ver.2)(2008)F) の中で、10%もの合併症が解消される のであれば、安全性の向上だけでなく、合併症に対する医療費の削減、医師-患者信頼関係悪化の回避などの点も含め、 総合的な医療の質の向上が期待されるとし、鎖骨下静脈や内頚静脈からの穿刺を極力避け、安全性の高い上腕静脈等か らの穿刺を推奨している。PICCでは理論の上では勿論のこと臨床の現場においても挿入時に重篤な合併症はほとんど発 生せず極めて安全なカテーテルである。実際、森兼教授らの多施設共同研究3) においても逆流防止機能付きPICCの挿入 時に重篤な合併症は報告されていない。 18. 逆流防止機能付きPICCの低い閉塞率と簡便な管理【エビデンスレベルⅢ】 ; Hinson(1996) らのCost Savings Clinical Report(エビデンスレベルⅢ)G) によると、逆流防止機能付きPICCは、一般型PICCと比較してカテーテルの閉塞率が低 く、閉塞に伴う薬剤の使用やカテーテルの入れ替えの頻度が少ないことからカテーテルの維持・管理に係る費用を削減す ることが示されている。 また、 カテーテル未使用時であってもヘパリンロック不要であることから、逆流防止機能付きPICCは 間欠的な薬剤投与が必要ながん化学療法等に適したカテーテルであり、院内だけでなく在宅でも安全に安心して輸液治療 が行えるものである。
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34. 単回使用医療器材の不適切な再利用の防止
現状 単回使用医療器材(SUD)は、一般的に1回の使用後に廃棄するよう製造されており、 いかなる状況においても再使 用すべきではない。SUDは1回の使用における機能性および殺菌性が確保されており、二次汚染や感染を予防でき る。適切な再加工(洗浄、機能検査、 リパッケージ、 ラベルの張替、消毒、殺菌を含む) を施したSUDのみが再使用さ れるべきである。 しかし、医療従事者の間には、残念ながらSUD製品の適切な使用方法のガイドラインについての無 知、誤解、不遵守が見受けられる。1-10 SUDを不適切に再使用することで、患者には重大な健康リスクが生じる。 また、SUDの再使用および再加工につい ては、法的、 また倫理的な論点がある。再加工したSUD使用の臨床結果を検討した研究は少なく、品質にはばらつき があり、 その安全性および有効性を確立する資料は不十分である。有害事象がないと想定すれば複数種類の再加 工SUDの使用は費用削減につながり得るが、SUD再使用に関するデータは不足しており、費用対効果は証明され ていない。SUD使用への資金提供者や使用者は、法的、倫理的ならびに社会心理的な問題を検討する必要がある。 日本の医療現場では、 サーベイランス、業務の監視ならびに適切な感染管理法についての教育・研修を担当する感 染管理担当者が雇用されている。 しかしながら、外来診療施設では従来から感染管理担当者が不足している。11-16 現行政策 2007年12月、厚生労働省の通知「診療行為に伴う院内感染事例の発生および安全管理体制の徹底について」 が出 された。17 この通知は2004年に出された通知の周知徹底を図るものであり、SUDの再使用の問題を取り上げたも ので、医療安全と感染防止の観点から、医療機関での予防措置を徹底させるためのものである。18 すべてのSUDの 単回のみの使用を明記する必要については、2001年以来、 すでに国による指導が行われている。 政策提言 OO 感染防止ガイドラインによるベスト・プラクティスの遵守義務化:外来診療施設が、標準的な感染予防措置と医 療施設での感染症伝播に関しての無菌操作技術を遵守するよう、 規制が作られるべきである。 OO 医療施設によるベスト・プラクティスの実施管理の強化:医療施設の査察および規制の強化を管理するための 国家標準を策定し、実施する必要がある。 OO 医療従事者を対象とした感染防止技術に関する教育・研修プログラムの強化:感染管理ガイドラインの不遵守 に対応するため、外来診療現場の医療従事者を対象として、SUD製品の適切な使用、 ならびに取扱い方法を含 めた感染防止教育・研修プログラムを展開する必要がある。 OO SUD再使用防止のための技術導入を推奨:SUDの再使用を防止するための既存技術の導入を促す取組みや、 こうした問題に対処する新技術開発を支援する必要がある。 OO SUDの適切な使用に関する患者の意識を強化するための広報活動の実施:針、 シリンジ、 その他のSUDの適切 な使用について質問する権利を患者に与える活動を展開する必要がある。
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参考文献 1.
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医療従事者の安全性について求められる特別な配慮
患者や医療従事者の安全性および感染防御については、予見可能な事故や傷害、防止可能な感染、 ならびに防止可 能な危険化学物質への曝露のリスクを下げることによって改善できる余地がまだある。 職場での傷害や疾患による損害は、国策を必要とする大きな問題でもある。 あらゆる産業ならびに経済分野の労働 者にとって避けること、 および予見可能な事故、傷害、 ならびに危険な生物学的および化学的リスクを防ぐことは、適 用法の下、労働衛生安全問題として保障されている。 患者と医療従事者の安全性を高めるために、包括的ガイドラインおよび命令を実行に移すことによって、次の3つの 成果を上げることができるだろう。1)医療の質の向上 2)回避可能な事故および傷害の減少 3)医療コストの効果 的管理、等の活動。 職場でのB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、 およびHIVを含む血液感染性病原体のような危険な生物学的因子へ の曝露は、世界中の医療従事者にとって重大な健康・安全性に対するリスクとなっている。針あるいはその他鋭利な 機器を原因とする極めて小さな皮膚への穿刺でも、医療関係者あるいは医療施設従業員の生命を脅かす可能性が ある感染症の原因となる30種を超える血液感染性病原体に曝す結果となる。1 これに加え、B型肝炎ウィルス感染 に必要な血漿の量は極わずかに過ぎない。2 看護師は最も血液曝露に曝されやすい職業であるが、 それは血液曝露が病室および手術室で最も多く起こるからで ある。 しかしながら医師および医療補助スタッフ-検査技師、清掃人等-もまた汚染された製品を不適切に取り扱 ったり廃棄した場合、使用中および使用後に血液曝露を被りやすい。 しかしながら安全対策を施された機器を使用 し、感染防御対策を取っていれば、 こうした曝露の多くは防ぐことができる。3 WHOはHAIを最も防止可能な死亡および罹病の原因としている。4 回避可能なHAIの治療コストは甚大であるが、 安全・感染管理を促進することによって大きく減らすことができる。医療従事者の安全性は本人だけでなく、 その家 族、職場、地域社会、産業分野、 そして国にとってもかけがえのないものである。予見可能な事故を防ぐには政府、雇 用者、労働者、 そしてその他関係者が一体となって防止対策を総合的・体系的に実施する必要がある。 危険薬の搬送、調剤、投与、 および廃棄に係わる医療労働者は、 こうした空気中あるいは作業表面、衣服、医療機器、 およびその他表面にある有毒な化学物質に曝露する恐れがある。結果として臨床に係わる労働者も係わらない労働 者も、安全な取扱いに関する注意を守らずにエアロゾルおよび混合液を作る時、 または粉塵を発生させた時、汚染表 面に触れた時には、曝露する危険性がある。 がんの化学療法、抗ウイルス剤治療、 ホルモン療法およびその他治療法に用いられる強力な薬剤に頻繁に曝露する と、例えその濃度が極めて低くとも、 そうしたものに触れるようになる労働者の健康に重大な結果をもたらす。5 米国 政府が定めたガイドラインは、危険薬の取扱い方法を定めているが、 ガイドラインの遵守は求められておらず、 こうし たガイドラインの遵守は散見されるにとどまっている。6,7,8,9 2004年、米国労働安全衛生研究所(NIOSH) は、医療環境において危険薬を扱う作業、 またはその近くでの作業 は、 がん、生殖および発生問題、 アレルギー反応、 ならびにその他有害作用の原因となる可能性があり、 これらは低レ ベルの曝露でも不可逆的である可能性があるとする警告を国民に出した。10 現行の自発的ガイドラインへの遵守に欠けることは、医療関係者にとって安全上のリスクであり、包括的な基準を策 定し、危険薬の安全な取扱いを担保する努力をしなければならない。 雇用主は予見可能な職場リスクを排除または管理する責任がある。医療従事者に関しては、鋭利物による傷害は 予見可能な職場リスクであり、国際的に重大な問題とされ、特に針刺し損傷と危険化学薬物への曝露は重大とさ れている。針刺し損傷の最も大きなリスクは、B型肝炎、C型肝炎、ならびにHIVのような血液感染性ウイルスの伝
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播である。 危険化学物質の取扱いが増える場合について、WHOは今後20年間に、人数としてがん症例が50%増えると予想し ている。 がん症例数の増加は、 より強力な化学療法薬を必要とすることになり、医療従事者の曝露リスクを上昇させることに なるだろう。 多くの状況において、研究薬や実験薬は、 そうでないことが証明されるまでは危険物と見なされる。 さらに化学療法 薬や、 その他危険薬は関節炎や多発性硬化症といった非悪性の疾患の治療にも用いられていると報告されている。 こうした使用は獣医学の分野にも広がっている。 まとめると、予防志向型のパラダイムへシフトする中で、特に患者および医療従事者の安全性を高め、生物学的およ び化学的な危険リスクへの曝露の防止へ向けた政策が不十分である。
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参考文献:
1. Tarantola A, Abiteboul D, Rachline A. Infection risks following accidental exposure to blood or body fluids in health care workers: A review of pathogens transmitted in published cases(健康医療従事者 における血液または体液曝露事故後の感染リスク:公表された症例に見られる伝染病原菌のレビュー). Am J Infect Control, 2006; 34:367-75. 2. Strauss K, Onia R, Van Zundert A A J, ACTA Anesthesiologica Scandinavica (2008) 52, 798-804, Peripheral intravenous catheter use in Europe: towards the use of safety devices(欧州における末梢中心 静脈カテーテルの使用:安全器具の使用に向けて). 3. Jagger J, et al., “The Impact of U.S. Policies to Protect Healthcare Workers from Bloodborne Pathogens: the Critical Role of Safety-Engineered Devices(医療従事者を血液感染性病原体から守る米国政策 のインパクト:安全設計機器のもつ重要な役割),” Journal of Infection and Public Health, Vol. 1, Issue 2, pp. 6271, 2008. 4. World Health Organization, “Global Status Report on Noncommunicable Disease(生活習慣病の世界的状況 に関する報告書)” (2010). 5. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings(医療環境における抗腫瘍薬およびその他 危険薬への職場での曝露の防止). 2004; 1‐4. 6. Valinis B, McNeil V, Driscoll K. Staff members’ compliance with their facility’s antineoplastic drug handling policy(職員の施設が定めた抗腫瘍薬取り扱い指針の遵守). Onc Nurs Forum. 1991 ; 18 (3): 571‐576. Nieweg et al. 1994. 7. Valinis B, Vollmer WM, Labuhn K, Glass A, Corelle C. Antineoplstic drug handling protection after OSHA guidelines (comparison by profession, handling activity, and work site NIOSHガイドライン後の抗腫瘍薬取り 扱い保護(職種、取り扱い作業、 および職場毎の比較)J Occup Med. 1992; 34: 149‐155. 8. Mahon SM, Casperson DS, Yackzan S, Goodner S, Hasses B, Hawkins J, Parham J, Rimkus C, Schlomer M, Witcher V. Safe handling practices of cytotoxic drugs: the results of a chapter survey (細胞毒性薬の 安全な取り扱い:支部調査の結果). Oncol Nurs Forum, 1994; 21 (7): 1157‐1165. 9. Newberg RMB, de Boer M, Dubbleman RC, Gall HE, Hesselman GM, Lenssen PCHP, Van Maanen LWGM, Majoor PWFM, Ouwerkerk J, Slegt JH. Safe Handling of Antineoplastic drugs (抗腫瘍薬の安全な 取り扱い). Cancer Nurs, 1994; 17:501‐511. 10. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings (医療環境における抗腫瘍薬およびその 他危険薬への職場曝露の防止). 2004; 1
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35. 針刺し損傷および鋭利な器材による損傷事故の防止
現状 針刺し損傷および鋭利な器材による損傷は、医療従事者にとって重大な職業上のリスクとなっている。職場環境 の安全衛生対策は日本のすべての労働者の基本的権利である。労働安全衛生法の一般的義務条項は、事業活動 により発生するあらゆる危険およびリスクから、個人を守ることを目的としている。したがって、日本の医療従事者 はB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなど危険な血液媒介ウィルスへの曝露から当然守られるべきである。 皮膚へのわずかな穿刺でも30種類以上の血液を媒介する病原体、細菌、寄生虫への曝露の原因となり、重大かつ 生命を脅かす感染症を引き起こす可能性がある。1 針刺し損傷が多い職種は看護師や医師で、病室や手術室で 起こることが多い。しかし、その他の医療スタッフ、守衛、清掃業者、クリーニング業者などの病院関連スタッフも 針刺し損傷の被害にあうことがある。 日本では、年間45~60万件の鋭利な器材による損傷が起きていると推定されている。 これは、毎年医師または看護 師の2人に1人が損傷を経験していることになる。2012年に職業感染制御研究会から公表された、 日本の針刺し損 傷サーベイランスの最新の報告によると、鋭利な器材による損傷を経験した医療従事者の52%を看護師、35%を医 師が占め、医師の割合が増加している。 また、職種別の発生率(特定職種Aの年間針刺し件数/特定職種Aの常勤換 算職員数×100) でみると、研修医が最も高く9.7件、次に医師4.1件、看護師3.5件、臨床検査技師3.0件の順となっ ており、医師の危険度が高くなっている。2 報告件数としては、2010年度の100稼動病床数あたりの針刺し報告件数は6.4件であったが、大学病院では7.9件 と多く、大学病院以外の5.3件と有意差がみられた (P<0.01) ことが報告されている。3 縫合針と薬剤充填済針(ペン型インスリン注入器注射針) による針刺し損傷の増加が顕著であり、針刺し損傷に対 する安全機構付き器材の一般利用が進んでいない点が、 日本における根強い問題であると報告されている。3 現行政策 2011年6月、医療機関等における院内感染対策について厚生労働省の通知が出され、鋭利器材による損傷防止に 関する職業感染防止の具体的な推奨について、 『注射針を使用する際、針刺しによる医療従事者等への感染を防止 するため、使用済みの注射針に再びキャップする、 いわゆる 「リキャップ」 を原則として禁止し、注射針専用の廃棄容 器等を適切に配置するとともに、診療の状況等必要に応じて、針刺しの防止に配慮した安全器材の活用を検討する など、医療従事者等を対象とした適切な感染予防対策を講じること』 とされた。4 これは2005年2月に安全器材の使 用推奨に関して出された厚生労働省の最初の公式な通知と同じ内容である。 過去1年間の政策の進捗状況 安全性と感染管理を確立するために、繰り返し様々な努力がなされてきたが、 日本では未だ安全装置付きの医療器 4 材の使用を義務付ける法律はない。 また、鋭利器材損傷を防止する厚生労働省の通知を実効あるものにする政策 あるいは立法もない。 政策提言 OO 医療従事者に対する感染対策技術についての教育・研修。 すなわち感染対策ガイドラインの遵守を促すため、 医療従事者を対象として針刺し損傷防止や適切な廃棄方法を含めた感染予防のための教育および研修プロ グラムを設置する必要がある。 OO 安全作業の義務化。感染性病原体または細菌の取扱い、利用、産出が必要な職場、 もしくは曝露の可能性があ る職場の雇用主は、血液媒介病原体への曝露を軽減または除去するための曝露管理計画を策定し、実行しな ければならない。 OO 適切な針刺し損傷防止機構付き医療器材使用の義務化。針刺し損傷防止機構のついた安全な器材を使用す ることで、針刺し損傷および血液媒介病原体への曝露の発生率を大幅に軽減できる。医療施設は経皮損傷を 防ぐために、開発された安全器材の導入と定期的な評価を行う必要がある。 OO 手術室で発生する針刺し損傷を防止するために、先の尖っていない縫合針の使用を推進する。
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糖尿病入院患者ケアの際の針刺し損傷を防止するために、針刺し防止機構付きペン型インスリン注入器用注 射針の使用を推進する。安全性を担保するための費用をカバーする診療報酬を提供する。 OO 針に代わる安全かつ効果的な器材が利用できる場合は、針の使用をやめる。汚染された鋭利器材からの経皮 損傷による血液媒介病原体への職業的曝露の可能性を軽減するために、針に代わる器材の使用が可能な場合 は、 そちらを使用することが推奨されるべきである。 OO 米国、 欧州連合加盟の26カ国、 カナダ、 台湾および世界中のその他の多くの地域では、 死に至らしめる血液媒介 感染症の伝播のリスクを減らすことによって、 医療従事者により安全な職場を提供するための法律を施行してい る。 日本は導入可能な安全器材の使用を義務付ける実効性のある職業安全衛生の法制化を急ぐ必要がある。
参考文献
1. Tarantola A, Abiteboul D, Rachline A. “Infection risks following accidental exposure to blood or body fluids in healthcare workers: A review of pathogens transmitted in published cases.” American Journal of Infection Control. 2006; 34: 367-75. 2. Kimura S. “Research of the status of Needlestick Injuries and prevention among Healthcare Workers.” Japan Ministry of Health, Labour, and Welfare science research grant project; March 2003: 3-7. 3. Summary of the 2011 Survey conducted by the Japan-EPINet Survey Working Group (JESWG2011) published by JRGOIP (The Research Group of Occupational Infection Control and Prevention in Japan) (http://jrgoicp.umin.ac.jp/). 4. 厚生労働省医政指発第0617第1号
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36. 医療従事者を保護するためのハザーダス・ドラッグ安全取扱い
現状 ハザーダス・ドラッグを搬送、調剤、投薬、 および廃棄する医療関係者は、空気中または作業表面、衣服、医療機器、 およびその他表面に付着しているこれらハザーダス・ドラッグに曝露する恐れがある。結果として職員は臨床あるい は非臨床であるかに係わらず、安全取扱いの予防措置に従わなければ、彼らがエアロゾルを発生させた時、液体を 混合する時、粉塵を発生させた時、 あるいは汚染表面に触れた時に曝露する危険性がある。 がん治療、抗ウイルス治 療、 ホルモン治療、 およびその他治療法に使用する強力な薬へ頻繁に曝露すれば、 たとえ非常に低濃度であっても、 それに接触する職員については健康に重大な結果をもたらすことになる。1 ハザーダス・ドラッグと定義される薬は、以下の特徴を1つ以上備えている:低用量での発がん性、催奇性、生殖 毒性、器官毒性、および遺伝毒性。2 これらの抗腫瘍薬を含むハザーダス・ドラッグは、主にがんの治療に用いら れる。抗腫瘍薬は当初、第一次世界大戦中にナイトロジェン・マスタードとして紹介される化学薬品から開発され た。がん細胞を殺すのと同じメカニズムは健康な細胞にもダメージを与えるはずである。ハザーダス・ドラッグは 抗腫瘍剤に限定されるものではなく、抗ウイルス薬、ホルモン、一部のバイオ工学で作られた薬、そして、その他の 薬もこれに含まれる。3 NIOSHはハザーダス・ドラッグのASHP定義を改訂し約150の薬をハザーダス・ドラッグ と認定したが、これには国際がん研究機関(IARC)が発がん性を認めた30種類の薬も含まれている。4,5,6 米国だけで、約800万人の医療従事者が看護、薬局、搬送、 ならびに化学療法廃棄物の清掃に従事している。7 こう した医療従事者の多くがハザーダス・ドラッグへの曝露に対する対応について適切なトレーニングを受けていない。 また一部の医療従事者の個人的な経験が、適切な技術的管理および保護具の使用の障害になっている。 ハザーダ ス・ドラッグの使用量は今後増加するだろう。実際、WHOは高齢化に伴って、今後20年間にがん症例は50%増加す ると予想している。8 がん症例数の増加は、 より強力な化学療法薬を必要とすることでもあり、 また医療従事者への 曝露リスクも高めるだろう。化学療法での使用に加えて、研究薬や実験薬も危険性がないことが証明されるまでは、 ハザーダス・ドラッグと見なされる。 さらに、化学療法薬およびその他ハザーダス・ドラッグは関節炎や多発性硬化症 といった非悪性疾患の治療にも用いられ、獣医学での使用も拡大している。 ミシガン大学が腫瘍外来の看護師を対象に行った研究からは、1,339名の看護師のうち、1年間に皮膚または目に 9 曝露を受けた者の割合は15.9%であることが示された。 これに加えてNIOSHが行った研究では、医療施設の表面 は、広く抗腫瘍剤で汚染されており、 この汚染が職員の曝露をもたらしていることが証明された。10 この結果は、米 国やその他の世界中の国々で発表されている研究と一致している。 これを受けて米国労働安全衛生局(OSHA) と NIOSHの合同委員会は米国内の医療施設に対し共同声明を発表し、 ハザーダス・ドラッグに関する施設の安全取 扱い規則を再評価するように求め、 同時に改訂されたNIOSHハザーダス・ドラッグリストに注意するよう警告を発し た(2010)。 しかしながらこうしたガイドラインの遵守は一部に留まっており、 ハザーダス・ドラッグから医療従事者を 適切に保護するための総合的基準づくりが求められている。 ハザーダス・ドラッグへの曝露の影響 ハザーダス・ドラッグと接触すると様々な問題が起こる可能性があることが示されている。曝露を受けた職員の自然 流産率や胎児が先天異常である可能性が高くなることが分かっている。最近Lawsonらは妊娠第1期に抗腫瘍薬に 曝露した看護婦では自然流産するリスクが、統計学的に有意、 ほぼ2倍上昇すると報告している。11 職員からは、化 学療法を受けている患者に見られるものと同様の副作用を、経験したことがあるとの報告がある (脱毛、嘔吐、 口渇、 12,13 皮膚発疹)。 これに加えてこうした職員でのがん発生率も高く、特に白血病と膀胱がんの発生率が高い。14,15 Kaiser Permanente Center for Health Researchは妊娠中に抗腫瘍薬を扱った妊娠女性の曝露が、 自然流産 および死産のリスク上昇と関係していることを示した研究を発表している。2005年、Oncology Nursing Society の7,500名の会員を対象にしたサーベイは、化学療法に係わっている25歳以下の看護師では、不妊および流産のリ スクが有意に高いことを明らかにしている。16
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現行政策 2012年の医療費改定では、無菌状態の抗がん剤の混合技術料が引き上げられたが、 その適用対象は3薬剤のみで あった。 このような事情から、 日本の多くの施設では、 すべてのハザーダス・ドラッグにCSTDが使用されている米国 の状況とは対照的に、 これら3薬剤についてのみCSTDを使用し、 ほかの薬剤は今もCSTDなしで調剤している。 また日本では 「ハザーダス・ドラッグ」 の概念の認識が広まっていない。 ハザーダス・ドラッグを取り扱っている医療従 事者は、 彼らの健康がリスクに曝されていることを認識し、 こうした薬を扱う際には特に注意を払うようすべきである。 ハザーダス・ドラッグの安全取扱いを完璧に実施するために、医療報酬を上げると同時に、 その医療費がカバーする 対象薬の範囲を拡大しなければならない。 政策提言 OO 職場を調べ、危険を特定して評価する。 • あらゆる医療環境、獣医薬、研究所、一般薬局ならびに在宅医療施設は、施設で取り扱っている薬のタイ プ、量、発送頻度、形状の目録を作らなければならない。 さらに施設は、 ハザーダス・ドラッグへの曝露を減 らすようにデザインされた機材の目録、 ならびに作業エリアの物理的レイアウトを含む作業環境一覧を作 成すべきである。 OO ハザーダス・ドラッグ取扱いの管理方針ならびにトレーニングプログラムの確立 • ハザーダス・ドラッグを取り扱う施設はこうした薬の調剤、投薬、 および廃棄についての運営管理を確立 しなければならない。 OO 方針およびトレーニングプログラムは以下の諸点を明らかにして策定されなければならない:ハザーダス・ドラ ッグの存在、 ラベリング、保管、流出対策、従業員問題(妊婦の曝露) およびハザーダス・ドラッグの調剤、投薬、 表面汚染の試験法ならびに廃棄に関する詳細な手順。 OO ハザーダス・ドラッグへの曝露を軽減するよう、 デザインされた機材の包括的使用の要求 • 職場でのハザーダス・ドラッグ曝露防止に役立てるため、NIOSH、国際抗がん剤専門薬剤師学会 (ISOPP)s、米国病院薬剤師学会(ASHP)、がん看護学会(ONS)および米国薬局方(USP797) 17,18,19,20,21 は、個人用防護具(PPE)、換気キャビネット (Class IIまたはIIIの生物学的安全キャビネット (BSC) またはUSP797の要件を満たす無菌製剤用汚染物質アイソレーター(CACI))の使用および 臨床的に実証されている、閉鎖系搬送装置(CSTD) のような技術的な対応を推奨しており、 こうした対 応が求められるだろう。 OO ハザーダス・ドラッグ曝露の調査および報告作業の増加および標準化 • 医療環境で起こったすべてのハザーダス・ドラッグ曝露、流出および飛散に関係する事象は管理部門に報 告されなければならない。調査および報告データは、従業員の過去の曝露、病歴および曝露との関連性を 判定するために、実施されている血液および尿検査のモニタリングについて把握し、長期の疫学的検討を 促すものでなければならない。国のがん登録は、 がん患者の職業を把握して、 がんの原因の特定作業を国 レベルで支援しなければならない。
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参考文献
1. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings. 2004; 1‐4.7. 2. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings. 2004; 32. 3. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings. 2004; 31. 4. Center for Disease Control. NIOSH List of antineoplastics and other hazardous drugs in healthcare settings 2010. http://www.cdc.gov/niosh/docs/2010‐167/pdfs/2010‐167.pdf (assessed 2012 May 3). 5. American Society of Health‐System Pharmacists. ASHP guidelines on handling hazardous drugs. Am J Health‐Syst Pharm. 2006; 63:1172‐93. 6. International Agency for Cancer Research. IARC Mongraphs on the evaluation of carcinogenic risks to humans http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/index.php (assessed 10 May 2012). 7. Center for Disease Control. Hazardous Drug Exposures in Health Care. http://www.cdc.gov/niosh/topics/hazdrug/#a (accessed 2012 October 5). 8. World Health Organization, Genetics in Prevention Treatment of Cancer. www.who.int/genomics/about/Cancer.pdf (assessed 2012 April 28). 9. Friese, CR, Himes‐Ferris L, Frasier Mn, et al. BMJ Qual Saf (2011). Doi:10.1136/bmjqs‐2011‐000178. 10. Connor TH, DeBord DG, Pretty JR, Oliver MS, Roth TS, Lees PSJ, Krieg EF Jr., Rogers B, Escalante CP, Toennis CA, Clark JC, Johnson BC, McDiarmid MA .2010. Evaluation of antineoplastic drug exposure of health care workers at three university‐based US cancer centers. J Occup Environ Med 52(10):1019 1027. 11. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings. 2004: 14‐15. 12. Lawson, C.C., Rocheleau, C.M., Whelan, E.A., Hilbert, E.N.L., Grajewski, B., Spiegelman, D. and Rich‐Edwards, J.W., Occupational exposures among nurses and risk of spontaneous abortion. American Journal of Obstetrics and Gynecology; 2012:206: E‐pub ahead of print. doi.org/10.1016/j. ajog.2011.12.030. 13. Valanis BG, Herzberg V, Shortridge L. Antineoplastic drugs: handle with care. AAOHN J. 1987; 35:487‐92. 14. Valanis BG, Vollmer WM, Labuhn KT et al. Association of antineoplastic drug handling with acute adverse effects in Pharmacy personnel. Am J Hosp Pharm. 1993; 39: 141‐7. 15. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings. 2004; 6. 16. Washburn, DJ. Intravesical Antineoplastic Therapy Following Transurethral Resection of Bladder Tumors: Nursing Implications from Operating Room to Discharge. Clinical Journal of Oncology Nursing 11 (4). 2007. 17. National Institute for Occupational Safety and Health. NIOSH alert: preventing occupational exposures to antineoplastic and other hazardous drugs in health care settings. 2004: 14‐15. 18. International Society of Oncology Pharmacy Practitioners. ISOPP Standards of Practice. Journal of Oncology Pharmacy Practice. 2007; 13 Suppl: 1‐81. 19. American Society of Health‐System Pharmacists. ASHP guidelines on handling hazardous drugs. Am J Health‐Syst Pharm. 2006; 63:1172‐93. 20. Polovich M. Safe Handling of Hazardous Drugs, Second Edition. Oncology Nursing Society; 2011. 21. USP <797> Guidebook to Pharmaceutical Compounding Sterile Preparations. United States Pharmacopeial Convention; 2008: 37‐38. 38. BSI.
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