What Fuels Fashion Report Japanese Translation

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WHAT FUELS FASHION?

ファッション透明性インデックス脱炭素編

世界最大のファッションブランド250社を対象 に、脱炭素と関連する情報開示についてラン キングした「ファッション透明性インデックス」 の特別版

「ファッション透明性インデックス 脱炭素特別編」は、ファッシ ョン透明性インデックスの特別単発レポートです。本レポートで は、世界最大のファッションブランド250社を対象に、自社の事 業やサプライチェーンにおける気候・エネルギー関連の方針、慣 行、影響の開示についてランク付けしました。

5つの主要調査テーマ:

説明責任

脱炭素化

エネルギー調達

脱炭素化のための資金調達

公正な移行と政策提言

雨に生活がかかっているということ

MALISH GODFREY マリッシュ・ゴッドフリー

私の名前はマリッシュ・ゴッドフリーです。中央エクアトリアの 南スーダンのヤムバラ族の出身です。1992 年に内戦により 家族がウガンダへの避難を余儀なくされて以来、私の人生 は強制退去に見舞われてきました。私たちはインヴェピ難民 キャンプで難民として暮らしていました。2005年に和平協定 が締結され、2008年に南スーダンへの故郷に戻ることがで きたとき、母、妹、そして私は新たなスタートを望んでいたの ですが、この地域では内戦や干ばつとの戦いが続いており、 困難な現実を目の当たりにしました。

母は正式な教育を受けていませんが、ウガンダの難民キャン プでは刺繍をしていました。彼女は私の祖母からその技術を 学びましたが、難民として刺繍以外に働く手段はほとんどな く、刺繍から得られる収入で私たちは生活していました。母 は私たちのために作物を育てたり、食料、服や学校の教材を 買ってくれました。

2016 年、私はルーツプロジェクトという組織で働き始めまし た。この組織はジュバに本拠を置く社会的企業です。そして、 難民でもある職人がつくった製品を販売する国連難民機関 の世界的ブランドMADE51 のパートナーでもあります。ルーツ で働く女性たちは、ジュエリー、アクセサリー、室内装飾とし て使用される美しいビーズ細工を製作しています。また、南ス ーダン出身の22の異なる部族の女性150人以上と、エチオピ アやスーダンからの難民女性たちと共に活動しています。彼 女たちは長年にわたり一緒に働きながら、愛と心理的な支 援を分かち合う姉妹グループを築いてきました。

子供の頃過ごした難民キャンプにて © UNHCR/SAMUEL OTIENO

ルーツの女性たちが避難する主な理由は、暴力と治安の悪 さです。しかし、気候危機の影響により、彼女たちの状況はさ らに悪化しています。食糧不安と食糧援助不足は、気候変動 による洪水によってさらに悪化し、生きていくことをさらに困 難にしています。

86 ページでは、ルーツの職人から直接話を 聞きます。

私の生活は雨にかかっています。そしてこれは、この地域の 多くの人たちに当てはまります。ここでの生計のほとんどは、 予測可能な季節のパターンに結びついています。私たちは雨 がいつ降り、いつ止むかを知る必要があります。残念なこと に、洪水を引き起こす干ばつ、暑さ、大雨のサイクルはますま す予測不可能かつ深刻になり、飢餓や病気のせいで移動を 余儀なくされる人たちがいます。毎年自分たちで作物を栽培 することができれば、食べ物を安定して手にいれることがで きます。しかし私たちの主食であるトウモロコシは、地元の農 家が収穫できなくなったため希少になり、高コストで輸入せ ざるを得なくなります。さらに状況を悪化させるのが、飢餓の 危機状態においては動物が農家の換金作物を荒らすことが 多く、私たちに残されるものはさらに少なくなります。

気候危機は農家に影響を与えるだけではありません。昨年、 ルーツの職人たちはあるグローバルブランドからの大量注文 に取り組んでいましたが、雨の状況が変わるにつれて、非常 にストレスフルな仕事になりました。降雨の遅れにより予定 されていた栽培期間に変更が生じ、さらに豪雨により洪水が 発生しました。職人たちは、予定通りに注文を処理し、生産期

限に間に合うよう、ビーズ細工の仕事と、家族を養うために 育てた作物を収穫する必要性とのバランスをとらなければ なりませんでした。注文された品を時間通りに納品できない のではないかという恐怖が私たち全員に重くのしかかり、大 変な時期となりました。

だからこそ私は、洪水など気候災害の影響を受けた、サプラ イチェーンで働く労働者に金銭的補償を提供するようブラン ドに要求している、本報告書とFASHIONREVOLUTIONを支 持します。本報告書では、気候危機によって影響を受けた労 働者に金銭的補償を行う取り組みを開示している主要ファ ッションブランドは、わずか3%にすぎないことが明らかにな りました。気候危機の影響を最も受けるサプライチェーンの 労働者を保護するためには、この割合を増やす必要があり ます。この序文を通じて、気候危機の最前線にいる私たちが 直面している課題を伝えたいと思っています。私の体験談を 共有することで、この報告書に登場する主要ファッションブラ ンドを含む他の人々が、より安定した公正な世界のために行 動を起こすよう、私たちとともにインスパイアされることを願 っています。 『洪水を引き起こす干ばつ、暑さ、大雨 のサイクルはますます予測不可能かつ 深刻になり、飢餓や病気のせいで移動 を余儀なくされる人たちがいます。』

FASHION REVOLUTIONについて 日本の読者のみなさまへ FASHION REVOLUTION JAPANから

FASHION REVOLUTIONは、利益と成長よりも人を尊重し、環境を守 り修復するグローバルファッション産業を実現するというビジョンを掲 げ活動する団体です。ラナプラザ崩壊事故をきっかけに設立され、ファ ッション産業の透明性と説明責任の向上のために何百万人もの市民 を巻き込んできました。FASHION REVOLUTIONは世界最大級のムー ブメントとなり、リサーチ、教育及びアドボカシーを通じて市民、産業や 政策決定者を動かしています。

ファッション産業の課題は、どれも一人や一社で解決できるものでは ありません。ですから私たちは、システムそのものを変革することにフォ ーカスすることにしました。システミックそして構造的な変化によって、 ファッション業界は何百万人もの人々を貧困から救い出し、人間らし い尊厳を持った生活ができるようにすることができます。自然環境を守 り、修復することができます。そして、人々を結びつけ、喜びやクリエイテ ィビティ、自己やコミュニティの表現を作り出すことができるのです。

なお、本出版物の内容はFASHION REVOLUTIONへの出資者の意見

を反映するものではありません。© Fashion Revolution CIC 2024. 無 断転載禁止。この文書は、ファッション・レボリューション CIC からの書 面による許可なしにコピーまたは改変することはできません。

このレポートは FASHION REVOLUTION CIC によって調査および執 筆されました。

www.fashionrevolution.org

主な著者&リサーチャー

Liv Simpliciano リヴ・シンプリシアーノ

Maeve Galvin メーヴ・ガルヴィン

Ciara Barry キアラ・バリー

Delphine Williot デルフィン・ウィリオット

Isabella Luglio イザベラ・ルグリオ

Ysabl Marie Dobles イザベル・マリー・ドブルス

のメッセージ

2017年からファッション大手企業の環境や人権への取り組みの透明性をランクづけ してきた「ファッション透明性インデックス」ですが、今年は評価項目を脱炭素関連に 絞った「ファッション透明性インデックス脱炭素編 ーWHAT FUELS FASHION?ー」 を発表いたします。

継続してきた調査の内容を変更するのは、気候危機対策としての産業の脱炭素化が 緊急案件となっているからです。今回のレポートには、ファッション産業における脱炭 素化の課題と解決策について、また改善に向けてどのような点が論点になりうるの か、FASHION REVOLUTIONグローバルチームが多くの専門機関の助けを借りて収 集した情報と示唆が掲載されています。

なお、本レポートはイギリスのチームが主体となって執筆されていますが、このような アクティヴィズムの効果的なあり方として、力強い言葉遣いや、対象企業にメールを 送ることで生活者の関心を可視化する策などがあります(2024年12月末まで、英語 版ではレポートの最後に調査対象250社に一斉に脱炭素化への投資を求めるメール を送ることができる機能がついています。この一斉メール期間が終了した後も、アクシ ョンとして対象企業に個別にメールを送ることが推奨されています)。邦訳の際には 原文のニュアンスをそのまま再現することに努めましたが、そのようなやり方のいくつ かは日本にはまだ馴染みがない、またはアグレッシブすぎる姿勢ととられるかもしれ ません。ここには、本件の緊急性だけでなく、異なる社会の成り立ちに起因する文化 の違いという背景があると認識しています。

しかし気候危機は地球規模で進行しており、ここに文化の違いはありません。本レポ ートが、1.5度整合したよりよいファッション産業という、共通の目標に向かってそれぞ れの役割を果たしていくきっかけになれば幸いです。

排出の可視化

はじめに

調査範囲

主な調査結果

Average scores across the sections

最終スコア

調査結果概要

説明責任

ガバナンス

トレーサビリティ

素材と過剰生産

脱炭素

脱炭素

エネルギー消費

温室効果ガス・フットプリント

エネルギー調達

VIEWPOINT: ルース・マクギルプ, Action Speaks Louder

脱炭素化のための資金調達

公正な移行と権利保護

公正な移行

VIEWPOINT:ジュゼッペ・チオフォ & ポール・ローランド, CleanClothesCampaign

再生可能エネルギー推進

権利尊重のテクノロジー

引用: クロエ・クランストン, Anti-Slavery International

調査方法と調査範囲

クレジット

参照

免責事項

24/7マッチング

24時間365日のマッチングにより、毎時の電力使用量が地域 内で調達されたカーボンフリーの発電量とマッチングされ、 消費量と再生可能エネルギーの生産量が正確に一致し、排 出量が削減されます。

適応

適応とは、気候危機による悪影響を軽減するために、慣行、 プロセス、システムを調整することです。例えば、工場に洪水 防御施設を設置するなど、気候変動による災害に強いサプラ イチェーンを構築するなどを指します。

年間マッチング

年間マッチングでは、企業の年間電力使用量を再生可能エネ ルギーに合わせるものの、再生可能エネルギーの利用可能 量と実際の消費量のタイミングのミスマッチにより、送電網の 脱炭素化が十分に進まず、時間単位のマッチングに比べて排 出削減量が少なくなる可能性があります。

カーボンフットプリント

個人や組織の活動によって排出される二酸化炭素(CO2)の 総量を測定するもので、通常は化石燃料の燃焼によって排 出されます。活動が気候変動に与える影響を測るのに役立 ちます。

気候ハザード

気象サイクルにおける自然現象。ハリケーン、干ばつ、山火 事、洪水、強風はいつの時代にもありましたが、現在、私たち は今までにない大きな規模の気候ハザードを目の当たりに しています。

脱成長

脱成長は、社会的に公正で生態学的に持続可能な社会を提 唱することで、無制限の経済成長というパラダイムに挑戦し ます。世界的な消費と生産の削減を推進し、物質的蓄積より も豊かさを重視し、資源の公平な分配を提唱するものです。

エネルギー調達

組織のニーズを満たすために供給業者からエネルギーを購 入/調達するプロセスを指します。

公正な移行

労働者や影響を受ける地域社会の人権を損なうことなく、気 候変動による脆弱性に確実に対処するための枠組み。ファッ ションのサプライチェーンにおける労働者とサプライヤーの ための公正な移行を可能にするための具体的な提言につ いては、報告書の「公正な移行」のセクションを参照してくだ さい。

カーボン・オフセット

企業が森林再生や再生可能エネルギーなど、温室効果ガス を削減・吸収する外部プロジェクトに投資することで、自社 の炭素排出量を補填すること。「カーボンニュートラル」を謳 うことができる一方で、自社の事業活動で直接排出される排 出量には対応しないことが多く、二重計上やプロジェクトの 有効性などの問題から議論を呼ぶことがあります。

電力購入契約(PPA)

電力購入契約(PPA・Power Purchase Agreement)は、企 業が再生可能エネルギー生産者から直接電力を購入する 契約であり、多くの場合、新たな再生可能エネルギープロジ ェクトの開発や再生可能エネルギー容量の拡大を促進しま す。PPAは質の高い調達手段であり、特定のプロジェクトや 場所を結びつけることで、さらなる再生可能エネルギー発電 を確保します。

再生可能電力

再生可能な電力とは、風力、太陽光、水力などの持続可能な エネルギー源から発電された電力のことで、自然から供給さ れ、環境への影響が最小限に抑えられます。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは、太陽光や風力のように、消費される よりも早く自然資源から供給され、生み出されます。化石燃 料に比べて排出量が大幅に少ないため、気候変動対策に不 可欠です。しかし、何らかの排出や環境への害をもたらす場 合、すべての再生可能エネルギー源が完全にグリーンまたは クリーンであるとは限りません。

再生可能エネルギー証書

再生可能な電力を使用していると主張するためにブラ ンドが購入できる証書。原産地保証(GO・Guarantee of Origin)やエネルギー属性証明書(EAC・Energy Attribute Certificates)と呼ばれることもあります。

分離型エネルギー属性証書(EAC)/再生可能エ ネルギー証書(REC)

分離型REC(再生可能エネルギー証書)は、再生可能エネ ルギー源から生産された実際の電力とともに販売されま す。つまり、電気を買うと同時に、その電気が再生可能であ ることを証明する証書も手に入れることができます。1REC は、1MWhの再生可能電力を意味します。分離型RECは、実 際の電力とは別に販売されます。使用している電気が再生可 能でないものであっても、証明書を購入することができます。 証明書は一定量の再生可能エネルギーがどこかで発電され たことを主張しますが、あなたが消費している電気が直接再 生可能エネルギー源からのものであることを意味するもの ではありません。

緩和

緩和とは、温室効果ガスの排出を削減または防止するための 行動を指します。これには、再生可能エネルギーへの切り替 えやエネルギー効率の改善などの対策が含まれます。

スコープ1排出量

企業が所有または管理する温室効果ガス排出源から直接排 出される温室効果ガス排出量のことで、例えば、企業が所有 する車両や施設における燃料の燃焼による排出などが含ま れます。

スコープ2排出量

組織が消費する購入電力、蒸気、熱、冷却の生成に伴う間接 的な温室効果ガス排出量です。

スコープ3排出量

組織のバリューチェーンで発生するその他の間接的な温室 効果ガス排出量のことで、上流(購入した商品やサービスに 関連する)排出量と下流(販売した商品やサービスに関連す る)排出量の両方を含みます。

自家発電

再生可能エネルギーを外部供給者から購入するのではなく、 現地で発電すること。ソーラーパネルや風力タービンなどの 形態があります。

排出の可視化

販売した商品 の加工

自社使用のため

販売した商品 の使用

販売した製品 の廃棄時 の取り扱い

輸送・流通

スコープ 1 排出量 (会社からの直接排出量) スコープ 2 排出量 (購入したエネルギーからの間接排出量) スコープ 3 排出量 (製品排出量) CO2e 二酸化炭素換算値 CO2 二酸化炭素 CH4 メタン N20 亜酸化窒素

代替フロン

排出量の可視化

サプライチェーン排出量の割合

完成品の組み立て SCOPE 1-2

3

TIER 4

4次サプライヤー

原料の採掘・栽培

アパレルブランドの場合、スコープ 1 の排出量 (Science Based Target目標を含む) は通常、総排出量の 1% にとど まり、スコープ 3 が約 96% を占めます。

TIER 3

3次サプライヤー

原料加工

TIER 1 1次サプライヤー

TIER 2 2次サプライヤー

素材の生産

注: 平均値は Apparel Impact Institutes の Annual Impact Report 2023 から取得

はじめに

気候危機は、地球と地球上に住む私たちすべてにとって、現 実的な脅威です。私たちの時代を象徴する危機と言っても過 言ではありません。

ハリケーンや山火事、熱波、洪水、干ばつに至るまで、異常気 象はますます頻度や激しさを増しています。気候危機は、食糧 と水の安全保障を脅かし、生態系全体を破壊し、生物を絶滅 へと追い詰めていることは科学的にも明確に証明されてい ます。産業革命以前の水準から気温上昇を1.5℃未満に抑え るためには、2030年までに、あらゆる産業分野で排出量を半 減させなければなりません。気温上昇は、単に大気が数度上 昇するということではなく、セーターの糸が緩むようなもので す。私たちが失う可能性があるのは、「私たちが愛するものす べて、そして私たちの存在すべて」に他なりません。2.0℃以上 の気温上昇は、私たちの地球を「温室状態」へと追いやり、最 も脆弱な人々に不当な影響を与える一連の危機を引き起こ すでしょう。気候崩壊は、大気圏の植民地化のプロセスです。

主にグローバルサウスに位置するこれらのコミュニティは、気 候変動の原因となる排出ガスを最も少なく排出しているにも かかわらず、グローバルノースが自らの利益のために汚染を 続ける一方で、気候危機の壊滅的な影響を最も受けている のです。

このままではファッション業界だけでも、1.5°Cの限界を50% も超えてしまう見込みです。科学が求めているのは排出量の 半減ですが、実際には倍増しています。

気候危機に対処するには、その主な原因である化石燃料に 目を向ける必要があります。ファッション業界は、地球上で最 も環境を汚染する産業のひとつです。私たちの衣服が気候危 機を加速させ、その製造に携わる人々がその代償を払ってい ます。この業界は、合成繊維から染色に使われるエネルギー、

さらには製品を作る工場の電力に至るまで、あらゆる段階で 化石燃料に依存しています。

しかし、解決策はあります。ファッションブランドが太陽光や風 力などの再生可能エネルギー源に移行することで、カーボン・ フットプリントを大幅に削減し、よりサステナブルな業界への 道を切り開くことができます。この移行は、環境保護のためだ けでなく、すべての人々、特に気候変動の影響を最も受けや すい人々のために、より安全で公平な未来を確保するための ものです。ファッション業界における温室効果ガス排出量の 削減は、以下の主要分野に焦点を当てることで、大幅な進展 が期待できます。

1. サプライチェーンを石炭や化石燃料から再生可能エネル ギーへ移行する

2. 生産する衣類の数を減らす

3. 航空貨物の使用を最小限に抑える

4. 化石燃料由来の合成素材の使用を段階的に廃止する 本レポートでは、まずはサプライチェーンにおけるエネルギー 転換、特に生産施設レベルでの石炭の段階的廃止に焦点を 当てています。このレポートは、ファッション業界を何十年に もわたって悩ませてきたトップダウン型の植民地的なダイナ ミクスの終焉を求めています。影響を受けるコミュニティへの 公正さと敬意を、クリーンで再生可能な生産への移行の最前 面に置かなければなりません。ブランドは、自社製品を製造 する人々に対する責任を認識し、移行が公正なものとなるよ うにしなければなりません。これは、人々や地球を搾取して巨 額の富を築いてきた主流ファッションブランドや小売業者が 最低限行うべきことです。

このレポートの発表により、曖昧で不十分な目標や、サプライ チェーンの大部分に利益をもたらさないパイロットプロジェ

クトによる脱炭素化の進展の欠如を隠すことは、もはやでき なくなりました。絶対的なシステム変更の必要性は否定しよ うがありません。

だからこそ、私たちは大手ファッション企業に対して、排出量 に見合った投資を行うよう求めているのです。本レポートで は、大手ファッションブランドに対し、ファッションのサプライチ ェーンをクリーンな方法で動かすために、石炭などの化石燃 料から、風力や太陽光などの再生可能エネルギー源への公 正な移行に、少なくとも年間収益の2%を投資するよう呼びか けています。 これは実現可能性の問題ではなく、 意志の問題である

ファッションのサプライチェーンにおける再生可能エネルギー へのクリーンで公正な移行は実現可能です。業界と政治の意 志を伴った、緊急の共同アクションが必要なだけなのです。 このレポートは、主流ファッション ブランドに対して、化石燃料からの 公正な移行に年間収益の少なくと も2%を投資するよう求めている

主な調査結果

より多くの主流ファッションブランドや 小売業者が排出削減目標を開示する 一方で、スコープ3排出量は依然として 増加しています。

主要ファッションブランドおよび小売業者のほぼ半数(47%) が、現在、Science Based Targets Initiative(SBTi)によって検 証された排出削減目標を開示しています。これは、昨年の 34%から13ポイント増加しています。脱炭素化目標を掲げて いるほぼ半数(250ブランド中117ブランド)のうち、進捗状況 を開示しているのは105ブランドのみです。そのうち、排出削 減を達成しているのは56ブランドです。しかし、7つのブラン ドは、スコープ1および2の排出量増加、および、42のブランド は、基準年に対して、最も脱炭素化に重要な領域であるスコ ープ3の排出量が増加したと報告しているため、全体では進 展しているとは言えません。

世界の主流ファッションブランドのほ ぼ4分の1(24%)は、脱炭素化に関する

情報を何も開示しておらず、気候危機 が彼らにとって優先事項ではないこと を示している

わずか4ブランドという事実です。しかし、最も憂慮すべきな のは、調査対象となったブランドの58%が、気候変動目標に ついて明確な進展を示していないことです。つまり、調査対象 となったブランドの半数以上が、SBTiが承認した目標を持た ないか、進捗状況を開示していないか、あるいは脱炭素化に 向けた取り組みをまったく開示していないのです。この調査 結果は明確なメッセージを送っています。主流ファッションブ ランドは排出量に対する説明責任を回避しており、気候危機 を優先課題としていないということです。

している可能性があります。言い換えれば、100%の再生可 能電力があっても、100%化石燃料フリーであるとは限りま せん。

明確な目標を設定することは、責任を果たし、業界の環境 影響を減少させるための進展を確保するために不可欠です が、主流ファッション企業の大多数にとって、これらの目標は 公に開示されていないか、まったく存在しません。信頼できる 目標が欠如していることは、羅針盤なしで嵐の中を航行する ようなものです。

脱炭素化の項目で0%の評価を得たブランドは60社に上りま す。記録的な猛暑が続く中、業界全体の排出量が増加してい る一方で、調査対象ブランドの4分の1が脱炭素化への取り 組みに関する情報を一切開示していないことは憂慮すべき 事態です。この透明性の欠如は、気候変動目標の達成に向け た共同アクションを妨げるため、非常に有害です。

このことを裏付けるのが、250の大手ブランドの中で、国連が 求める2030年までに2018年の水準から55%の絶対的な排 出削減という野心的な目標を満たす排出削減目標を開示し ているのが、ASICS、H&M、Marks & Spencer、Patagoniaの

気候科学者は石炭の緊急な段階的廃 止を呼びかけているが、主流ファッショ ン業界は応えていない。実に86%のブ ランドが、期限付きで測定可能な石炭 の段階的廃止目標を公開していない

ファッションブランドが気候目標を達成するためには、公開 されていて明確かつ信頼性のある戦略が不可欠です。これに は、化石燃料の段階的廃止や、サプライチェーン全体での再 生可能エネルギーと電力の導入が含まれます。工場では、染 色や印刷に使う水を温めるために石炭が燃焼されており、こ れがCO2やその他の温室効果ガス(GHG)排出に大きく寄与 しています。石炭の段階的廃止への広範な公約がなければ、 気候変動目標に向けた全体的な進展は実現できません。業 界は後れを取っており、公開された期限付きで測定可能な目 標を示しているブランドは、わずか14%にとどまっています。

大半の主流ファッションブランドおよ び小売業者の95%が、サプライチェー ンで使用されている燃料について明ら かにしていないため、ファッションの燃 料が何であるのかがわからない

さらに、業界の大多数は、サプライチェーンにおける再生可 能エネルギー目標や再生可能電力目標を公表していません (それぞれ94%と92%のブランドが公表していません)。再生 可能電力目標があっても再生可能エネルギー目標がない場 合、企業が使用する電力のみが再生可能資源から調達され ていることを意味します。その一方で、暖房や冷房、輸送用燃 料などの他のエネルギー形態は依然として化石燃料に依存

ほとんどのファッションブランド(95%)は、サプライチェーン におけるエネルギーミックスの国別内訳を公表していませ ん。また、大多数(77%)の主流ファッションブランドが、再生 可能エネルギーの定義について透明性を欠いていることも 重大です。「サステナブルな素材」の定義を理解することが重 要であるように、再生可能エネルギーが何を意味するのかに ついても透明性が求められます。これにより、ブランドの再生 可能エネルギー導入への取り組みと進展の信頼性を理解で きます。再生可能エネルギーの定義に関する透明性の欠如 は、彼らの移行計画の信頼性に疑問を投げかけるものです。

ファッション業界の炭素排出量を世界 規模で正確に把握するためには、サプ ライチェーンの完全なトレーサビリテ ィが必要だが、1次サプライヤーの工場 リストを開示しているブランドはわず か52%にすぎず、加工施設を公表して いるブランドはさらに少ない。

衣料品の生産が過剰であることを示す 証拠があるにもかかわらず、ファッショ ン業界はどれだけの衣料品を生産し、

その過程で発生した排出量を公表し ないことで、説明責任を回避していま す。

気候に関する説明責任は、トレーサビリティから始まる。私 たちの調査によると、スコープ1から3をカバーするSBTiによ って検証された脱炭素化目標を開示している主要ブランド や小売企業の47%のうち、13%はサプライヤーリストを開示 していません。この矛盾は、ファッションブランドは自社の衣 服がどこで生産されているのかさえ開示していないのに、気 候変動目標に対してどのように説明責任を果たせるのだろ うか?という重大な問題を提起しています。

この情報を開示しないことは、脱炭素に向けた集団的行動を 直接的に妨げています。ほとんどの衣料品生産国は脱炭素化 に苦労しており、化石燃料に依存しています。そのため、これ らの国の排出量に貢献しているブランドは、調達先を開示し 責任を果たす必要があります。もし透明性がなければ、そのブ ランドが脱炭素化、気候危機の緩和、適応に関するサプライヤ ーのニーズに対応しているかどうか、またどのように対応して いるかについて、信頼できる可視性は得られません。気候危機 のタイムリミットは刻一刻と迫っており、責任の連鎖を決める のに時間を浪費する余裕はありません。

この業界の生産量は驚異的で、世界の消費量は2030年まで に63%増加し、衣料品の販売量は2050年までに現在の3 倍 を超える1億6000万トンに達する可能性があると予測されて います。ほとんどのブランド(89%)は、年間生産数を公表し ていません。また、半数近くのブランド(45%)が、生産量も原 材料のカーボンフットプリントも開示していません。これは、 大手ファッションブランドの半数近くが、(1)どれだけ生産し ているのか、(2)私たちの服(多くの場合、数回着ただけで廃 棄されてしまう)が作られる過程でどれだけの排出物が発生 しているのかを明らかにしていないことを意味します。これら の排出は、特に原料レベルで問題となります。繊維の抽出と 加工は、生産工程の様々な段階で化石燃料を使用している のです。これには、農業活動、輸送、繊維の洗浄、染色、仕上 げなどの加工活動が含まれ、業界全体のフットプリントに大 きく貢献しています。これは、繊維部門が2020 年に水質劣化 と土地利用の第 3 位の原因であったという事実によって強調 されています。衣料用繊維の抽出と加工中に発生する排出 量を開示しないことで、ファッション業界は実質的に、説明責 任を回避しながら、生産に関連する環境被害に大きく貢献し 続けています。

いわゆる “サステナブルな” 衣服でも、

化石燃料を使用して生産されているか もしれない

ファッション業界の気候変動への影響は、その製造工程より もむしろ、私たちの衣服に使用されている素材のレンズを通 して精査されてきました。58%のブランドが持続可能な素材 の使用の目標を公表している一方で、サプライチェーンのエ ネルギー源を明らかにしているのはわずか11%であり、つま り“サステナブルな”服は、化石燃料を動力源とする工場で作 られている可能性があります。

公正でクリーンなエネルギーへの移行 を支援する法案を推進するために、大き な影響力を行使しているブランドはほ とんどない

大手ファッションブランドは大きな購買力を有しており、それが 調達先のサプライチェーン諸国の政策立案者や政府の政策に 影響を与える可能性があります。特に、衣料品生産がGDPの大 きな割合を占めるバングラデシュなどの国ではその傾向が顕 著です。これは衣料品生産国におけるクリーンエネルギーへの 移行を推進する機会となりますが、大多数のブランドはこの影 響力を活用した証拠を開示していません。

自社のサプライチェーンにおける過去および現在の再生可能 エネルギー推進の証拠を開示したブランドはわずか13%で、こ うした推進活動の成果を開示したブランドはわずか2%でした。

衣料品生産国における再生可能エネルギーへの移行の緊急 性、製品の輸出に罰則を科す可能性のある法律の急増、そして 多くの政府が労働組合や衣料品労働者を取り締まっているこ とを考えると、ブランドには世界中の政策立案者に対して公正 でクリーンなエネルギーへの移行を提唱する責任があります。

労働者は気候変動によってますます生 計を失いつつあるが、補償はされてい ない わずか3%、つまり7ブランドのみが、気候危機の影響を受け た労働者に金銭的補償を行う取り組みを開示しています。

ほとんどの衣料品生産国で社会補償制度が脆弱であり、衣 料品労働者(そのほとんどが貧困賃金を支払わされている) の債務水準がすでに高いことを考えると、これは特に顕著で す。ファッション業界を襲い、労働者の生活に影響を及ぼす 気候災害が定期的に発生していることを考えると、サプライ チェーンで最も利益を得ているステークホルダーであるブラ ンドが、慈善ではなく正義のために補償メカニズムを提供す る必要があることは明らかです。

気候危機の緊急性にもかかわらず、この世界的な課題を緩 和するための目下の最重要課題である絶対的な炭素削減の 達成と明確に結びついている役員賞与はごく少数であるこ とは明らかです。これは重大な問題を提起しています。ファッ ション企業の経営幹部が、株主の利益の最大化よりも脱炭 素化への公約を優先させることについて、真に責任を問われ るのはいつになるのでしょうか?

汚染者が負担する:大手ファッシ

ョンブランドは、排出量に見合った 対価を支払わなければならない

ファッション企業の経営幹部は、依然と

して脱炭素化を含め、何よりも株主価 値を提供することを奨励されている

炭素排出量削減のための経営幹部に対する有意義なインセ ンティブは、脱炭素化に対するブランドの真の公約を示すも のです。しかし、今回の調査結果では、この情報を開示してい る大手ブランドや小売企業はわずか18%にとどまっており、 説明責任、経営陣のインセンティブ、脱炭素化目標達成の間 の整合性を高める必要性を浮き彫りにしています。

役員賞与や給与のうち、これらの目標に連動する割合を開示 しているのはさらに少なくなっています(11%)。2023 年、最 高報酬を得たCEOの報酬は、主に株式とオプションによるも のでした。これは、彼らの収入が自社株の業績と密接に結び ついていることを意味します。言い換えれば、株価が上がれ ば報酬も上がり、彼らの経済的利益は会社の成功や株主の 利益と密接に結びついているということです。

ファッションによる気候変動への排出に最も貢献している大 手ファッションブランドは、業界の再生可能エネルギーへの 移行に対して最大の財政的責任を負うべきです。主要ファッ ションブランドの94%が自社のサプライチェーン内の再生可 能エネルギーへの投資に関する情報を一切開示していない という事実は、ファッション業界における企業の責任逃れに 対する恐るべき危険な告発です。

大手ファッションブランドのうち、サプライチェーンにおける 再生可能エネルギーへの投資額を開示しているのはわずか 6%。また、支援の規模を開示しているブランドはさらに少な く、わずか4%です。この6%のブランドは、Apparel Impact Institute(Aii)のFashion Climate FundやFashion Pactの Future Supplier Initiativeのような共同気候基金への貢献を 含む取り組みを開示しています。一般的に、これらの資金は、 ソーラーパネルのような高価なインフラに投資するために、 サプライヤーに有利な金利での融資を提供します。しかし、す でに薄利多売の経営をしているサプライヤーが必要としてい るのは、借金ではなくブランド資金です。ブランドの気候変動 目標を達成するためにサプライヤーに負債を負わせること は、公正な解決策ではありません。

負債による資金調達は、ファッションブランドと、その衣服を製 造するサプライヤーや労働者との間の長年にわたる力の不均 衡を悪化させます。こうした不均衡は、貧困賃金のようなファ ッション・サプライチェーンにおける根強い労働者の権利問題 の基盤となってきました。

ファッションの脱炭素化には、安定し た長期的な購買活動が不可欠である ブランドの短期的な利益だけに焦点を当てることは、ファッ ションのサプライチェーンの脱炭素化と相容れませんが、こ れが依然としてファッション業界の標準となっています。サプ ライヤーとの長期的な関係を構築し、財政的な投資を行うこ とは、ファッションブランドがサプライヤーによる再生可能エ ネルギーへの移行を推し進めるために不可欠です。サプライ チェーンの一部またはすべてを自社で所有している大手ファ ッションブランドは、そうでないブランドよりもこの調査で高 いスコアを獲得しています。同様に、スポーツウェアや高級品 などの市場セグメントは、長期間にわたって専門サプライヤ ーと取引する必要があるため、この調査でも他の小売業者よ りも優れた成績を収めています。ファッションにおける再生 可能エネルギーへの移行は、影響力、集団的なブランドの行 動、責任ある購買慣行、長期的で安定したサプライチェーン を重視するシステムの変化にかかっています。このシステム の変化は、気候変動対策だけでなく、ファッションのサプライ チェーンにおけるその他の根深い問題に対処するためにも 不可欠なのです。

はじめに

What Fuels Fashion? の目的:

• 気候危機の最悪の影響を緩和する緊急の必要性に応 える。

• 世界最大かつ最も影響力のあるファッションブランドに スポットライトを当て、その傾向を分析し、脱炭素化への 取り組みにおけるトレーサビリティのレベルを比較する。

• 大手ファッションブランドや小売業者に、脱炭素化の目 標や戦略について、より詳細で比較可能なデータを開示 するよう促す。

• 利害関係者が開示されたデータを理解するための重要 なツールを提供し、気候変動という緊急事態に対して十 分な情報に基づいた行動を可能にする。

• 世界のファッション業界における差し迫った社会的・環 境的課題について、一般の認識を高め、教育する。

• 世界最大のファッションブランドの脱炭素化に関する精 査、説明責任、前向きな変化を促進する。

FASHION REVOLUTIONは7年前に透明性調査を始めまし

たが、気候に関する持続的で憂慮すべき透明性の欠如は、脱 炭素化に向けた私たちの揺るぎない焦点の重要性を浮き彫 りにしています。また、気候危機の最前線にいるファッション

のサプライチェーンに関わる労働者とコミュニティの両方を 保護する必要性も高まっています。

気候危機の緊急性にもかかわらず、世界のファッション業界 の多くは依然として秘密主義であり、不正行為を隠蔽し、前 進を妨げています。透明性は、個人、活動家、専門家、労働者 代表、環境保護団体、政策立案者、投資家、そしてブランドで さえも、業界を精査し、説明責任を果たし、前向きな変化を 促す力を与えます。透明性は最初の一歩であり、急進的なも のではありませんが、必要なものです。透明性は持続可能性 と混同してはなりません。しかし、透明性なくして、持続可能 で説明責任を果たし、公正なファッション業界を実現するこ とは不可能です。

データの見方

これは特別版のレポートです。データの多くは対前年比では 比較できませんが、比較できる場合はその旨を明記していま す。調査結果に関連するすべてのパーセンテージは、特に明 記のない限り、調査対象となった250ブランド中におけるパ ーセンテージです。

一例として、2023年において、審査対象となったブランドの34% が、脱炭素化に対する期限付きかつ測定可能な公約を開示して いるのに対し、脱炭素化目標に対する進捗状況を開示しているブ ランドは32%と少なかった。これは、そのような目標を掲げてい るブランドよりも、進捗状況を報告しているブランドの方が少ない ことを示しています。これは、脱炭素化目標を掲げている34%の ブランドのうち、32%が目標に対する進捗状況を開示していると いう意味ではありません。

調査範囲

What Fuels Fashion?は、世界最大で最も影響力のある

250のファッション・ブランドと小売業者を以下の基準に基づ いて評価し、ランク付けしています

• 年間売上高: 4億米ドル*以上

• 市場セグメント: ハイストリート、ラグジュアリー、スポー ツウェア、アクセサリー、フットウェア、デニムを含む

• 地理的な広がり: ヨーロッパ、北米、南米、アジア、アフリ カのブランド

私たちは意図的に、情報公開による透明性に焦点を当てる ことにしました。ブランドによって開示された情報やデータが 十分に公開され、詳細かつ具体的であれば、労働者代表、環 境保護団体、投資家、消費者、ブランド自身を含む複数のス テークホルダーによって利用され、人権や環境問題に対して 前向きな変化を促すことができます。これこそが、私たちが求 めていることであり、大手ブランドを動機づけようとしている ものなのです。

限定的で内向きな情報開示は、変革のためのインパクトの 範囲を制限します。情報公開は社会への説明責任を促しま す。そのため、What Fuels Fashion?では、意図的に公開さ れていない情報は除外しています。

What Fuels Fashion?は、各ブランドが事業やサプラ イチェーンにおける脱炭素への取り組みについて、どの ような自己開示を行っているかを評価するものです。

主張の検証

バリューチェーン全体における主要ブランドの方 針、手順、実績、脱炭素化への取り組みの進捗状況 に関する情報・データが公表されている場合のみ、 ポイントが付与されます。

最新の情報

私たちの調査指標のほとんどは時系列を重視して おり、2022年1月以降に公表された開示情報のみを 対象としています。

What Fuels Fashion?は、ブランドの脱炭素化へ の影響を測定するのではなく、公的な情報開示を測 定するものです。

主張の検証

ブランドや小売業者による主張の検証は、本調査の範 囲外です。しかし、ステークホルダーは、ブランドの主 張に対する責任を追及するために、本調査を利用する ことが推奨されます。

最新の情報

2022年1月以前の情報だとしても、時系列的に当ては まる情報開示には適用されません(例:この日付より前 に公表された関連する方針および公約が、現在も適用 され、公に開示されている場合は採用します)。

透明性≠倫理と持続可能性

What Fuels Fashion ?は、倫理性や持続可能性を測定 するものではありません。あるブランドが脱炭素化への取 り組みの透明性において高いスコアを獲得することはあ っても、それが倫理的で持続可能であることを意味する ものではありません。

私たちは、この調査でどのブランドも推奨していません し、消費者にランキングに基づいて特定のブランドで買い 物をするよう勧めてもいません。これはショッピングガイ ドではありません。

*注:非上場ブランドについては、売上高の推定は公開情報に基づいています。

公表された情報源

ブランドまたは親会社のウェブサイト(または直接リンクされているもの)で公開され ている情報/データに対してのみ、ポイントを付与します。

私達は、以下のいずれかの場所から公開されている情報を評価し ています:

• ブランドまたは親会社のウェブサイト

• サステナビリティ マイクロサイト (メインブランドまたは親会 社のウェブサイトから直接ウェブリンクがある場合)

• ブランドまたは親会社のウェブサイトで公開されている年次 報告書または年次サステナビリティレポート

• ブランドまたは親会社のウェブサイトから無料でダウンロード できる、公開されているその他の文書

• 外部のサードパーティ ウェブサイト経由 (ただし、ブランドま たは親会社のウェブサイトから、特定の開示情報が掲載され ているサードパーティのウェブサイトへの直接ウェブリンクが ある場合のみ)

以下の情報源は対象外です:

• プレス記事を含む、ブランド自身のウェブサ イトからのウェブリンクがないサードパーテ ィのウェブサイトまたは文書

• 製品の衣服ラベルおよび下げ札

• 店舗またはその他の物理的な場所

• スマートフォンアプリ

• ソーシャルメディアチャネル

• ファッションブランドから提供されたが、ブ ランドのウェブサイトには掲載されていな い情報

自己開示
自己開示

最終スコア

低得点ブランド

この小項目では、ブランドの気候変動パフォーマンスとその 影響について、企業の誰が責任を持っているかを検証しま す。バリューチェーン全体における絶対的な炭素削減の達成 と、CEOや役員クラスの給与やインセンティブを関連付ける情 報を公表しているかどうか を確認します。また、役員賞与や給 与のうち、削減目標と連動している割合も調べています。

さらに、長期契約、発注量の増加、価格のプレミアム化、監査 の削減など、サプライヤーのインセンティブが脱炭素改善に 結びついているかどうかも評価します。

この小項目では、ブランドがサプライヤーリストを公表してい るかどうかに注目し、3つの異なるレベルで提供される詳細度 のレベルに焦点を当てています:

1. 衣服が作られる工場は、しばしば第1層またはtier1メー カーと呼ばれる。言い換えれば、ブランドが直接関係を持 ち、通常製品の裁断、縫製、最終トリミングを行う施設で ある

2. サプライチェーンのさらに下の加工施設 ーニット、織物、 紡績工場、ウェット加工、刺繍、プリント、仕上げ、染工場、 なめし工場、洗濯

3. 原材料のサプライヤー:繊維、皮革、ゴム、化学薬品、金属 などの一次材料

ブランドが以下の情報を共有しているかどうかをチェックして います:

• 親会社名

• 施設の住所

• 供給される製品/サービスの種類

• リストが機械可読形式(CSV、JSON、XLSX)であるか

• リストがOpen Supply Hub(OS Hub)上に投稿されてい るか

本調査では、脱炭素化に焦点を当てるため、より簡潔な手法 を採用しています。ファッション透明性インデックスのトレーサ ビリティ・セクションで通常検討されるいくつかの指標は削除 されています。

過剰生産と素材

ここでは、持続可能な素材の使用を増やし、過剰生産に対処 するために、各ブランドがどのような取り組みを行っているか を評価しています。

具体的には以下の項目を調査しました:

• より持続可能な素材を使用するためのブランドの戦略と 進捗状況に関する情報公開

• ブランドの繊維の割合全体に関する情報公開

• 報告期間中に生産されたアイテム数に関する情報公開

• 脱成長に対するブランドの公約

ガバナンス

調査結果

役員報酬と賞与が明らか に脱炭素化に結びついて いるかどうか開示している

これらの目標に連動する 役員の賞与または給与 の割合を開示している

脱炭素化に関するサプ ライヤーへのインセン ティブを開示している

ガバナンス

ファッション業界の幹部は、脱炭素化 を含め、何よりも株主価値を実現する よう依然として奨励されている

ファッション業界の幹部は、彼らが率いるブランドの人権と 環境への影響について、間違いなく責任を負うべきです。しか し、説明責任を果たすためには、適切に動機付けされる必要 があります。私たちは初めて、幹部の報酬、ボーナス、業績評 価がバリューチェーン全体での絶対的な炭素削減の達成に どのように明確に結びついているかをブランドが開示してい るかどうかを調べています。幹部に炭素排出量を削減するた めの意味のあるインセンティブがあるということは、ブランド が脱炭素化に真剣に取り組んでいることの表れです。

調査結果によると、大手ブランドと小売業者のうち、この情報 を公開しているのはわずか18%であり、説明責任、役員のイ ンセンティブ、脱炭素化目標の達成の間の連携を改善する必 要があることが浮き彫りになっています。役員のボーナスや 報酬のうち、これらの目標に結びついている割合を公開して いるのはさらに少なく (11%)、VersaceやJoe Freshの例に見 られるように、多くの場合、役員のボーナスのうち、炭素削減 を含むがこれに限定されない環境、社会、ガバナンス (ESG) 目標に関連するのはわずか10%です。

2023 年に最高額の報酬を得たCEO は、主に株式やオプション の報酬を通じて報酬を得ていました。つまり、彼らの収入は 会社の株式の業績と密接に結びついています。つまり、株価 が上昇すれば報酬も増加し、彼らの経済的利益は会社の成 功と株主の利益と密接に結びついているということです。 気候危機の緊急性にもかかわらず、炭素削減(この地球規模 の課題を緩和するための最も差し迫った課題)に明確に結び 付けられている役員賞与はごくわずかであることは明らかで す。これは重要な疑問を提起しています。ファッション業界の 役員は、株主の利益の最大化よりも脱炭素化への取り組み

を優先することについて、いつ本当に責任を問われるのでし ょうか?

役員のボーナスのうち、炭素削減 に明確に結びついているのはほん の少数であることは明らかである

やや多い数のブランド (20%) が、脱炭素化に関連したサプラ イヤーインセンティブを開示しています。長期の公約や契約、 注文の増加、価格プレミアム、監査の減少などのサプライヤ ーインセンティブは、サプライチェーンで切望されている脱炭 素化活動を促進するために重要です。ただし、必要な規模と 速度で変化を加速するには、ブランドとサプライヤーの両方 のレベルでインセンティブと説明責任システムを構築する必 要があります。これは、サプライヤーとそのブランド顧客の間 の力関係の不均衡が十分に文書化されていること、およびブ ランドと小売業者が脱炭素化の負担をサプライヤーに押し 付けているというサプライヤーの認識を考慮すると、特に重 要です。

ここでの調査結果は、野心的で強力な気候目標を企業ガバ ナンスとリーダーシップの優先事項に統合するには、大きな 進歩が必要であることを強調しています。投資家は、利益と 株価だけに焦点を当てるのではなく、ブランドがバリューチ ェーン全体で脱炭素化の約束を果たすよう圧力をかけなけ ればなりません。投資家は、ブランドに絶対的な炭素削減に 焦点を当てた持続可能性に連動した役員報酬を確立するよ う要求する必要があります。これには、パリ協定の目標を満 たすか上回る目標の設定と伝達、科学的に有効な指標の使 用、独立した検証の確保、および進捗の年次報告が含まれ ます。役員報酬はこれらの炭素削減目標に結び付けられ、 不遵守には罰則が課され、他の財務パフォーマンス指標と は切り離されている必要があります。さらに、大手ブランドと 小売業者が脱炭素化目標を達成するには、直接的な資金提 供や注文保証を通じてサプライヤーと協力し、サプライヤー と協力しながらバリューチェーン全体で意味のある行動を推 進する必要があります。

トレーサビリティ

調査結果

トレーサビリティ

TIER1製造業者の公表について

1次サプライヤーの リストを公開している

施設の所在地が 含まれている

親会社名が 含まれている

トレーサビリティ

加工施設について

1次サプライヤーの 先の加工施設の 情報を公開している

提供している商品/ サービスの種類 が含まれている

アパレル業界のための オープン・データ・スタンダード(ODSAS) に添ったリストを公開している

親会社名が 含まれている

施設の所在地 が含まれている

提供している商品/ サービスの種類 が含まれている

Open Supply Hub(OS Hub)に サプライヤーリストを公開している

トレーサビリティ 原料

アパレル業界のための オープン・データ・ スタンダード(ODSAS) に沿ったリストを 公開している

厳選された 原料サプライヤーの 情報を公開している

特定の原料繊維、 商品/サービスを 公開している

特定の施設名や 農場名を公開している

Open Supply Hub(OS Hub)に サプライヤーリスト を公開している

施設の所在地が 含まれている

アパレル業界のための オープン・データ・ スタンダード(ODSAS)

に沿ったリストを 公開している

Open Supply Hub (OS Hub)に サプライヤーリストを 公開している

トレーサビリティ

サプライチェーンの透明性

は、FASHION REVOLUTIONが10年

以上前に提唱して以来高まってはいる ものの、サプライチェーンの中で最も エネルギーを消費する領域は依然とし て透明性が低いままである。

今年は、大手ファッションブランドと小 売業者の52%が直接サプライヤーの リストを公開しており、2023年と同じ 水準を維持している。

公開されたサプライヤーリストは、大手ブランドや小売業者 のサプライチェーン内で労働や環境の侵害が発覚した場合 に責任の所在を示す証拠となるため、環境活動家や人権活 動家、労働組合、労働者代表にとって貴重なものです。

サプライチェーンのトレーサビリティはホ ットスポットを特定し、ブランドの製品がど のような現場を経由して私たちの手元に 届いているのかを把握するのに役立つ。

気候危機の観点では、サプライチェーンのトレーサビリティは ホットスポットを特定し、ブランドの製品がどのような生産・ 加工現場を経由して私たちの手元に届いているのかを把握 するために役立ちます。トレーサビリティの向上は、サプライ チェーンのどの領域が炭素排出の大きな原因となっている か、干ばつ、洪水、熱波などの異常気象に対して特に脆弱で あるかを評価するためにも重要です。

これは、2017年に初めて行われたファッション透明性イン デックス(FTI)では100ブランド中32ブランドしかこの情報 を共有していなかったことと比較すると、大きな進歩です。 昨年のFTIでレビューされた250ブランドのうち、ブルーミ ングデールズ、カーターズ、エクスプレス、キアビ、メイシー ズ、マイケル・コース、プリズマ、ザ・ウェアハウス、ヴェルサー チ(Bloomingdale’s, Carter’s, Express, Kiabi, Macy’s, Michael Kors, Prisma, The Warehouse and Versace)の 9ブランドが一次メーカーを公開しましたが、アルマーニ、カ ルフール、エル・コルテ・イングレス、LLビーン、ピムキー、サ ックス・フィフス・アベニュー(Armani, Carrefour, El Corte Inglés, LL Bean, Pimkie, Saks Fifth Avenue)の6ブランド は、本調査の方法論に沿った一次サプライヤーリストを公開 していません。

製造工程では、ブランドの34%が施設名を開示してお り、2023年からわずかに減少しています。材料生産と原材料 加工がスコープ3 排出量の約 68 %を占めていると推測され ています。紡績、織りと編み、染色などの工業プロセスでは、 大量の熱と電気が消費されており、業界の緊急の脱炭素化 の必要性を考えると、サプライチェーンの中で最もエネルギ ーの消費を伴う工程の不透明性は、排出量削減の取り組み を妨げるだけでなく、問題に対処する責任の所在の曖昧さ に繋がります。大手ファッションブランドの66%が加工施設を 明らかにしていないことは大きな懸念であり、これはファッシ ョン業界が最も緊急に気候変動対策が必要な業界であるに もかかわらず、最も透明性の低い業界であるという、より広 範な傾向と合致しています。

トレーサビリティはサプライチェーンの下流に行くほど低くな る傾向があり、一般的にブランドは原材料レベルのトレーサ ビリティが最も低くなります。原材料サプライヤーのごく一部 を公開しているブランドはわずか 8% で、特定の施設の名前 を挙げているブランドは 5%、原材料の種類を指定している ブランドは 6% と、いずれもわずかです。排出量と森林破壊 に大きな影響を与えるため、原材料の採取に関する透明性 の欠如は大きな懸念となります。原材料の採取は、スコープ 3 排出量のほぼ4分の1(23%)を占めており、いくつかの調査 によると、森林破壊は、レザー、ビスコース、コットンなど、私 たちの衣料品や靴に使用される主要原材料の生産と関連し ているとも言われています。実際、毎年 3 億本の木がビスコー スを生産するために伐採されており、インドネシア、カナダ、 ブラジルの古代林がその大部分の需要の犠牲となっていま す。古代林は重要な炭素吸収源であり、大気中の二酸化炭 素を大量に吸収しています。これらの森林が破壊されると、 この炭素貯蔵能力が失われるだけでなく、樹木に蓄えられ た炭素が再び大気中に放出され、気候変動を悪化させます。 さらに、森林破壊は生態系を破壊し、生物多様性を減少さ せ、地域の気候を不安定にし、地球環境問題をさらに激化さ せることにつながります。

今回の調査では、データの共有による協業を促進し、労働組 合やNGOが簡単に効率的にデータにアクセスできるように、 ブランドのサプライヤーリストがOpen Supply Hub(OSH) に提供されたか、という分析も行われました。今年分析さ れたブランドのうち、30%がOSHプラットフォームで直接サ プライヤーリストを公開しており、この指標が初めて含まれ た2022年から13パーセントポイント増加しています。さら

に、41%が機械可読形式(CSV、JSON、またはXLSX)でサプ ライヤーリストを提供しており、2019年の10%から大幅に改 善しています。

2017 年以降、サプライチェーンを開示する大手ファッション ブランドの数が大幅に増加し、現在では半数以上 (52%) が 開示していることは喜ばしい進歩です。しかし、この進歩は鈍 化し、頭打ちになり始めています。この頭打ちの状況は、サプ ライチェーンの詳細を公に開示することを大手ファッション ブランドに求める拘束力のある規制によって、自主的にはサ プライチェーンの情報を開示しない非開示企業を動かすこ とが、人権と環境リスクに効果的に対処するために必要であ ることを浮き彫りにしているといえます。透明性と説明責任 の向上は、気候危機と向き合う上で不可欠です。

EUにおいて、FASHION REVOLUTIONは企業サステナビリテ ィ報告指令 ( Corporate Sustainability Reporting Directive : CSRD ) の一環として今後義務付けられるであろうセクター 別基準に対し、ファッションブランドに対する野心的な報告 要件を提唱している団体の一つです。

透明性の問題だけでなく、その義務が純粋に自発的なもの である限りは提言を受け入れず、変化に抵抗し続けることは 多くのブランドにとって非常に簡単です。非開示企業を動か し、公平な競争条件を可能にする意義ある規制の緊急の必 要性は、かつてないほど重要になっています。

Image: Fair Wear Foundation

原材料と過剰生産

調査結果

過剰供給 サステナブルな素材使用

年間生産量を開示

年間調達する繊維の 種類の内訳(%またはトン) を開示。

脱成長への コミットメントの開示

期限を定め、測定可能で サステナブルな素材戦略、 ロードマップまたは目標を開示

サステナブルな素材目標の 達成状況を毎年公表

年間調達繊維の内訳を公表しているブ ランドは33%にすぎず、懸念される合 成繊維への高い依存度を隠している いわゆる「サステナブルな」素材であるというブランドのアピ ールの多くは虚偽を孕んでいる可能性があるという状況を 踏まえると、衣料品に実際に使用されている素材の透明性 は極めて重要です。多くのブランドは、確たる証拠に欠ける まま製品に使用されている素材がサステナブルであるとア ピールしており、多くの場合、部分的な環境面のみに焦点を 当てています。このような状況下、英国とオーストラリアで行 われたいくつかのブランドの環境保護に貢献しているとす る主張に対する調査や、ノルウェーの消費者庁によるHigg Materials Sustainability Index(HiggMSI)を用いて小売業者 が製品が持続可能であると説明することを違法とする判定 など、政府は現在、グリーンウォッシングを取り締まりを強化 つつあります。説明責任の向上につながるこれらのアクショ ンは、変革に向けて透明性がなぜ必要なのかを端的に示し ています。とはいえ、確固たるエビデンスに裏打ちされた環 境訴求が必要であることは、依然として根強い事実であると いえます。

ファッション産業が化石燃料に依存していることは、私たち の衣服に使われている合成繊維が世界の石油消費量の1.35 %を占めているという事実からも明らかです。ファッション業 界がこのまま石油依存の道を歩めば、2030年までに繊維製 品のほぼ4分の3(73%)が化石燃料から生産されることに なります。中でもファッションブランドが好んで使用するポリ 私たちの衣服に使われている合成 繊維は、世界の石油消費量の1.35 %を占めている。- これはスペイン の年間石油消費量を上回っている

エステル繊維は、その85%を占めることになります。しかし、 私たちの調査結果によれば、年間繊維構成比を開示してい るブランドはわずか33%にすぎず、ファッション業界の素材 使用量とその環境負荷の全体像を把握することができてい ません。

2030年までには、繊維製品の4分 の3近くが化石燃料から生産される ようになり、ファッションブランドが 好んで使用するポリエステル繊維 は、その85%を占めるようになる

チェンジング・マーケット財団 (Changing Markets Foundation ) の調査によると、多くのブランドがポリエステル やその他の合成繊維のサプライヤーについて不透明である にもかかわらず、それらの素材がコレクションの大部分を占 め、気候や廃棄物に大きな影響を与えていることが判明しま した。プラスチック包装によるプラスチック汚染は認識され つつある一方、ポリエステル衣料がプラスチックであるとい う認識は低いままのため、化石燃料を原料とする繊維で作 られた衣料品がもたらす環境への脅威については、依然とし て認識のずれが残っています。これらの衣服はほとんどリサ イクルできず、ファッション廃棄物の危機的な状況に大きく影 響し、マイクロプラスチックによって私たちの身体と自然環境 は汚染されています。化石燃料とファッションは、悲惨なまで に有害な組み合わせを形成しているのです。

化石燃料由来の素材に特化したより詳細な議論は、「Fossil Fashion Campaign」を参照してください。

58%のブランドがサステナブルな素 材目標を公表している一方で、わず か11%のみがサプライチェーンのエ ネルギー源を明らかにしている。つま り、”サステナブル “な服は化石燃料を 使用して作られている可能性があると いうことを意味している

グリーンウォッシングが新たな盛り上がりを見せるなか、ブ ランドによる誤解を生む環境によいとする主張に対処する ための新たな規制の枠組みづくりが進行中です。EUでは、 グリーン・クレーム指令 (環境訴求に関する共通基準を設定 する指令案、Green Claims Directive)により、ファッション ブランドに対し、標準化された方法で製品やサービスの環境 フットプリントに関する環境訴求を立証することが義務付け られる見込みです。また、グリーン移行のために消費者に権 限を与える指令(Empowering consumers for the green transition)により、根拠のない環境訴求が禁止され、実証で きない場合、企業は「グリーン」や「環境に優しい」と謳えなく なります。つまり、ブランドは持続可能な素材の使用比率を 開示し、生産から廃棄までの詳細なライフサイクル情報や、 その過程における化石燃料使用量への影響など、環境面で のメリットを示す証拠を提供しなければならなくなることを 意味します。これらの規制は、透明性を強化することでグリー ンウォッシュを抑制し、持続可能性であるとするブランドの主 張が信頼でき、比較可能で、検証可能であることを保証する ことを目的としています。

このような新しい要件にもかかわらず、わずか58%のブラン ドだけがサステナブルな素材目標を1つ以上の素材につい て開示しているにすぎず、化石燃料を使用したテキスタイル を使用している衣料品は増加し続けています。工場を動か すための電力も化石燃料が必要になりますが、サプライチェ ーンのエネルギー源を開示している大手ブランドや小売業 者はわずか11%にすぎません。つまり、”サステナブル “な服 は、いまだに化石燃料を使用して作られている可能性がある といえます。

ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成素材が石油由 来であることは知られていますが、綿花のような天然素材で さえ、栽培、加工、輸送に化石燃料由来のエネルギーに頼っ ていることが多いことはあまり知られていません。たとえば 綿花栽培は、植え付け、灌漑、収穫のためにディーゼルなど の化石燃料を動力源とする機械に大きく依存しています。ま た綿花を織物に加工するには、紡績、織布、染色といったエ ネルギー集約的な工程が必要です。これらの工程では通常、 大量の電力と熱を必要とし、それらは化石燃料から生成さ れることが多く、特に染色工程は、大量の温水と蒸気を必要 とするため、ファッション業界のカーボンフットプリントに大 きな影響を与えています。

綿花のような天然素材でさえ、 栽培、加工、輸送のために化石 燃料由来のエネルギーに依存 していることが多いのです。

これらのプロセスはエネルギーを大量に消費するため、天然 繊維の二酸化炭素排出量が増加するだけでなく、これらの「 サステナブルな」素材が本来提供できる環境への潜在的な メリットの多くが打ち消されてしまいます。サプライチェーン 全体で化石燃料に依存しているということは、「サステナブル な」衣類であっても、生産時に化石燃料ベースのエネルギー が使用されるため、環境に大きな影響を与える可能性があ ることを意味します。

ほとんどのブランド(89%)が生産量を 公表していません

今日のファッション業界は、過剰生産、過剰消費、廃棄物で肥 大化しています。世界の消費量は2030年までに63%増加す ると予測されており、衣料品の総売上は2050年までに現在 の3 倍以上の1億6,000万トンに達する可能性があります。こ れだけ大量に生産されているにもかかわらず、新しい衣料品 にリサイクルされる衣料品は、毎年わずか1%のみです。イギ リスだけでも、年間 30 万トンの衣類がチャリティに寄付され ているものの、その80%は焼却処分されていると推定され ています。ファッション業界の直線的な「採取・製造・廃棄」モ デルは、排出量の急速な削減が緊急に求められている状況 とはまったく対照的です。衣服の製造に投入される限りある 資源と人的労力を考えると、この廃棄物の循環は大きな損 失となります。

何トンもの衣料廃棄物が世界中に散乱しています。この廃棄 物の危機をさらに深刻にしているのが、洗濯や着用時に衣 服から脱落したマイクロプラスチック粒子で、大気や水路、さ らには人間の胎盤にまで浸透しています。

衣料品の総販売量は、2050年まで に現在の3倍以上の1億6,000万ト ンに達する可能性があります。

衣料品の廃棄が生活のあらゆる側面に及んでいることは疑 いようのない事実であるにもかかわらず、ブランドの 89% が 依然として年間生産量を公表していません。ブランドは自社 の生産量を知り得ないはずはありません。生産量の情報な しに生き残れるビジネスがあるでしょうか。透明性の欠如が 続くと、その裏には何が隠されているのか?という疑問を発 せずにはいられません。 過剰生産

過剰生産という言葉は、余剰、売れ残った商品を意味する言 葉として、大手ファッションブランドによって使われてきまし た。しかし、FASHION REVOLUTIONの立場は明確です。

過剰生産とは、衣類やその他の繊維製品の全体的な量の増 加を意味し、これらの衣類が廃棄されるか、消費者のワード ローブやクローゼットに保管されるかに関係なく、余剰であ ることと捉えています。この定義によれば、単に「需要に応じ て生産する」ことは、私たちの定義による過剰生産に対する 実行可能な解決策にはなりません。私たちは、生産量を減ら すことを求めています。

イギリスだけでも、年間30万トン

の衣類がチャリティに寄付され ているが、その80%は焼却処分 されていると推定されている

生産量を減らす必要性は否定できません。これは、過剰生 産を助長する大量販売に依存したビジネスモデルを見直す 必要があることを意味しています。エレン・マッカーサー財団 (Ellen MacArthur Foundation)が提唱し、いくつかのビッ グブランドが署名している「ファッション・リモデル(Fashion ReModel)」は、レンタル、再販、修理、リメイクといった循環 型ビジネスモデルを通じて「生産から収益を切り離す」ことで この問題に取り組むことを約束しています。しかし、こうした 取り組みの普及は、歴史的にみても遅々として劇的な変化 は生んでいません。昨年のファッション透明性インデックス によると、主要ブランドのうち、消費を減速させる新しいビジ ネスモデルを提供しているのはわずか30%でした。ブランド

は、生産を減速させるという課題に対応するために、イノベ ーションを起こす必要があるのです。

例えば、スカートやショートジャケットに変身するコートな ど、分解して再構築できる衣服のモジュラーデザインは良い 例です。一方で、衣料品の生産量を減らすというシンプルな 必要性から逸脱した誤った解決策は避けなければなりませ ん。

すでに、衣服の耐久性の重要性を過大評価し、過剰生産によ る環境への影響を過小評価することが、政策の方向性を形 作っている状況がわかっています。オスロメット大学の研究 は、「部屋の中のプラスチックの象」として、EUの特に耐久性 に焦点を当てたサステナブルなテキスタイル戦略への批判 を明らかにしました。この研究では、ファッション業界の環境 負荷を減らす最も効果的な方法は、単に製品寿命を延ばす ことではなく、生産量を削減することであると論じています( また、耐久性に焦点を当てることは、意図せず化石燃料由来 の合成繊維を支援することになる点も指摘しています)。

拡大生産者責任(EPR)と対象生産者責任(TPR)

Extended Producer Responsibility (EPR)

拡大生産者責任

定義と原則

EPRは、製造業者(ファッションブランド)に対し、廃棄を 含む製品のライフサイクル全体に対する金銭的責任を 求めるものである。

EPRの背景にある原則は「廃棄物管理の内部化された コスト」であり、これは生産者が自社製品の廃棄物管理 コストを負担することを意味する。

OR 財団(The OR Foundation)は、「Speak Volumes」 キャンペーンと調査を通じて、拡大生産者責任を活用 し、公正な循環型繊維経済を促進することを提唱して いる。

Targeted Producer Responsibility (TPR)

対象生産者責任

TPRは、EPRの概念を拡張し、特にファッション産業に おける過剰生産を削減するために開発された提案で ある。

衣服に製造日または市場導入日を表示し、製品の寿命 に応じた料金を適用することに焦点を当てている。

オスロメットの研究では、製品の寿命が尽き、衣服が廃 棄物の流れに乗った時点で、その製品が使用された期 間に見合った料金をファッションブランドに課すことを 提唱している。政策手段として、TPRはブランドによる

衣服の過剰生産を抑止することが期待される。

実装と料金体系

目的とインパクト

OR財団は、新しく生産された衣料品が作られた時点 で、小売業者にUSD 0.50〜2.50(アイテムによって異な る)のエコ・モジュレーション料を課すことを提案して いる。

この手数料は、衣服の使用済み段階を管理する、ガー ナなどグローバル・サウスのコミュニティや「使用済み 管理者」に向けられる。

目的は、生産者が廃棄物管理に必要なインフラに貢献 することで、公正な循環型繊維経済を創出することで ある。

出典

EPRは生産者に対し、生産量に応じてより多くの支払い をさせることで、過剰生産を抑制し、持続可能な慣行を 促進することを目指している。

stopwastecolonialism.org/ stopwastecolonialism.pdf

手数料は、衣料品が廃棄物の流れに乗った時点で課さ れ、製品の使用期間に基づいて計算される。

この料金体系は、すぐに廃棄される衣料品を生産する ことに対する直接的な経済的阻害要因を作り出すこと を目的としている。

主な目的は、ファッションブランドが寿命の短いアイテ ムを生産するコストを高くすることで、過剰生産を抑止 することである。

TPRは衣服の長寿命化を促進し、ブランドがより高品質 で長持ちする衣服を生産することを促す。

clothingresearch.oslomet.no/wp-content/uploads/ sites/1026/2023/03/Briefing-paper-TPR-QA.pdf

ファッション業界は、大量に生 産される衣服とその過程で発 生する排出量を公表しないこと で、説明責任を回避している

調査対象となったブランドの半数近く(45%)が、年間何着の 服を作っているかも、原材料の二酸化炭素排出量も公表して いません。これは、大手ファッションブランドの半数近くが、(1 )どれだけの量を生産しているのか、(2)私たちの服(それら は多くの場合、数回着ただけで廃棄されてしまう)を作る過 程でどれだけの二酸化炭素が発生しているのか、を私たち に伝えていないことを意味している重要な数値です。二酸化 炭素の排出量は、綿、ポリエステル、ウールといった業界全体 のカーボンフットプリントに大きく寄与している原材料レベ ルでの抽出と加工において、特に懸念されます。このことは、 繊維産業が2020 年に水質劣化と土地利用の3番目に大きな 発生源であったという事実によって浮き彫りにされています。

衣料用繊維の抽出と加工時に発生する排出量を開示しない ことで、説明責任を回避しながら、生産に関連する環境破壊 に大きく寄与し続けています。

ビッグファッションは一体いくら生産しているのでしょうか? ファッション透明性インデックスは、2020年からブランドの年 間生産量に関する透明性を調査しています。以前は、年間生 産アイテム数とトン数の両方の開示を受け入れていました。 しかし、OR 財団の「Speak Volumes」キャンペーンとの整合 性を高めるため、現在では生産アイテム数を明示した開示 のみを受け付けています。さらに、オスロメットの調査による と、プラスチックは天然繊維よりも軽いことから、合成繊維の 年間生産量を容積重量で測定することに対するインセンティ ブになっています。

例えば、インディテックス社(Zara、Bershka、Pull & Bear、Massimo Dutti、Stradivariusのオーナー)は、以前は 2020年に16億着を生産したと開示していましたが、それ以降 の年は市場に投入された衣服の重量(565,027トン)での報 告に変更しています。ブランドが生産量をアイテム単位では なくトン数での開示を好む理由は不明のままですが、トン数 の方が、生産量のイメージを捉えにくいからかもしれません。

参考までに、平均的なサイズの小型車の重量は1トン強です。

このような報告の変化は、ステークホルダーが実際の生産規 模を把握することを困難にしています。各ブランドが生産量 についてどのような報告をしているかは、次ページの表を参 照してください。

衣服の過剰生産は「ファストファッション」の問題であると、私 たちは何度も耳にしてきていますが、高級ブランドもまた過 剰生産を行っており、最終的には他のブランドがインスピレ ーションを受け、同様のスタイルを大量生産するためのトレ ンドを牽引していることは明らかです。あまりにも長い間、フ ァッション業界は過剰生産の真の規模を隠してきました。川 下への影響に責任を負うどころか、輸入国がそのツケを払わ され、人権と環境に深刻な影響をもたらす中、彼らは行動を 起こしてきませんでした。OR財団の報告によると、ガーナの カンタマント市場には1週間に推定 1,500 万着の中古衣料品 がおしよせているといわれています。年間生産量に関する基 本的な透明性は、グローバルなファッション業界の廃棄に対 処するための重要な一歩であり、私たちがブランドに期待で きる最低限のことなのです。

脱成長へのコミットメントを公表し ている大手ファッションブランドはわ ずか2社にすぎず、業界の大半が持 続不可能なビジネスモデルの変革に 取り組む気がないことを示している

大手ブランドがグローバル・サプライチェーンの脱炭素化に 取り組んでいる一方で、気候変動への影響を削減するため には、過剰生産・過剰消費への対応とともに、炭素削減に有 意義な影響を与えなければなりません。残された時間は少 なく、ファッション業界はスピードを落として規模を縮小する 切実な必要があります。

ほぼすべてのブランド(99%)が、 新品の衣服の生産を削減するとい うコミットメントを開示していない

今年も、私たちは「脱成長」、すなわち計画的な生産と消費の 削減を通じて、経済活動と地球の境界線とのバランスをとる ことを目指す概念に対するコミットメントの状況を確認しま した。「脱成長」では、容赦ない資源採掘から最も恩恵を受け てきた人々こそ、気候変動への影響に対処し、消費削減に向 けてリードしなければならないことを強調しています。

この緊急の必要性にもかかわらず、ほぼすべてのブランド (99%)が、新しい衣服の生産を削減するというコミットメン トを開示していません。成長の背後にある支配的なグロー バル・イデオロギーは、エネルギーと資源の消費と本質的に 結びついています。生産が増加すればするほど、経済はより 多くのエネルギーと資源を要求し、より多くの廃棄物を発生 させ、プラネタリー・バウンダリーを超えた消費をさらに加速 させています。

プラネタリー・バウンダリーの概念は、人類が将来の世代に わたって発展し繁栄し続けるために、私たちが守らなければ ならない 9 つの境界を提示しています。例えば、2030 年の夏

までに北極の氷はなくなる可能性があることに見られるよう に、気候変動、生物多様性、窒素循環などの重要な限界はす でに近づいているか、超えてしまっています。現実問題として、 これらの限界を押し広げ続けると、海面上昇や気温上昇とい った不可逆的な環境変化を引き起こすリスクが高まります。 私たちはすでにオーバーシュートしており、生態系に深刻な 結果をもたらしているのです。

「ブランドは、多すぎる服を製造する

のと同じように、需要を製造している」

Co-founder and Executive Director of OR 財団共同設立者兼事務局長

このことは、ブランドが生産量を減らすだけでなく、ソーシャ ル・メディアでの絶え間ないマーケティング、ターゲットを絞 ったデジタル広告、Eメール・キャンペーン、割引やプロモー ションの絶え間ないサイクルを通じて需要を喚起する方法を 見直す必要性を浮き彫りにしています。

気候変動の危機を考慮せずに買い物をすることは不可能で あることは明らかであるにもかかわらず、科学的根拠を無視 し、金銭を優先するファッション産業は驚異的な成長を続け ています。WRAPの最近の調査によると、英国の平均的な成 人のワードローブには118着の衣類があり、そのうち4分の1 (26%-31着)が少なくとも1年間は着用されていないとさ れています。つまり、英国だけでも未使用の衣類が16億点あ り、いくつかの調査では、世界的にはすでに次の6 世代の人 々が着用するのに十分な量の衣類が流通していると示唆さ れています。

生産量に関するブランド開示

報告期間の年間生産量

当社のフットウェア製造パートナーは、約3億1,100万足の シューズを製造した。

Ballyが製造したアイテムは、靴が約45万足、既製服およびア クセサリーが約65万点にのぼる。

Calzedonia Group (Calzedonia, Intimissimi, Tezenis)

Calzedoniaグループは、3億5千百万着の衣料品を自社 およびサービス・プロバイダーで生産した。

生産数 11,609,806 点

フェンディは約3百万点の製品を製造・販売した

総調達品目(単位:千):141,088 = 141,088,000アイテム

製造数 155,159,011 点

OVSは、196,740,204点の衣料品およびアクセサリー、4,463,314 点の家庭用品、30,708,085点の香水を製造した。

1億7500万着のアパレルとアクセサリーを生産・調達

SuperdryとUnited Colours of Benettonは、全250ブラン ドのうち脱成長へのコミットメントを公表している唯一の2ブ ランドであり、Superdry は「購入量を確実に減らし、製品の 無駄を削減するために『脱成長』戦略を実施している」とし、「 総購入量を12%削減する一方で、過去の過剰分を23%削減 している」と公表しています。

昨年、United Colours of Benetton は、”会社の経済的業績と 衣料品量の増加を切り離す “計画を公表し、”2023年にベネ トン・グループの総生産量を昨年比で10 %、2019年比で20 %削減し、この傾向を次年度も維持することを約束した “と 公表しました。

OR 財団によると、これを大規模に実施すると、5年間で新品 の衣料品を少なくとも40%削減し、既存の素材の再利用と 再製造を増やすことでバランスをとることになるとされてい ます。

脱成長というコンセプトは、絶え間ない拡大を続ける業界と は対照的です。これまで、急成長もあれば、崩壊もありまし た。突然の崩壊は、予告なしに起こり、企業が経営破綻する こともあります。実際にこのようなことが起こると、多くの場 合、最初に保障されるのは株主であり、サプライヤーや衣服 を製造する労働者よりはるかに先に保障され、サプライヤー や労働者はそもそも保障されない可能性も多いにあります。

しかし、脱成長は異なるアプローチを提供しています。それ は、大手ファッションブランドが依存している縫製労働者の 声や懸念に確実に耳を傾け、優先されるように、業界の力の 不均衡に対処することを意味します。脱成長とは、不況や、 労働者に変化のコストを負担させる戦略と同義ではありま せん。

脱成長アプローチには、特にサプライチェーンにおけるすべ ての労働者の生活賃金とより良い労働条件を保証する政策 の実施など、大幅な体系的変化が伴います。これにより、富 をより公平に再分配し、労働者の声を政策決定プロセスの 中心に据えることを促します。労働者に生活賃金を支払う ことは、金銭的貧困と時間的貧困を緩和するという2つの効 果があります。衣料品労働者は、生計を立てるためだけに、 週 60 時間を超えるような過度な労働時間に耐えているこ とが多いのです。

「ファッション業界は気候危機の解決に 大きな役割を担っており、透明性はその 目標に向けた重要な一歩です。有意義な 気候変動対策には、ビスコースのような テキスタイルの原料調達や生産における エネルギー調達など、ブランドがサプラ イチェーンを通じてあらゆる段階で炭素 集約的な慣行の是正に取り組むことが必 要です。この調査は、このセクターにとっ て重要なベンチマークであり、今年の指 数では、可視性における大きなギャップ が明らかになりました。より透明性を高 め、炭素を多く含む森林からビスコース を調達するような炭素集約的な原材料か ら、低炭素の循環型代替品への転換を加 速させる必要性を補強するものです。」

Nicole Rycroft ニコール・ライクロフト Canopy創設者兼エグゼクティブ・ディレクター

脱炭素

アプローチ

本セクションの対象範囲

2019年、世界のファッション業界は 10 億トンという驚異的な 温室効果ガス排出量(GHG排出量)を担っていると推定され ました。この産業がGHG総排出量の3 〜 8 %を占めるとする 長年の推定があり、中には 10 %とするものもあります。しか し、その実態は依然として不明確のままです。排出量報告に おける透明性の欠如が、欠陥のある炭素追跡システムと相ま って、問題の真の規模を曖昧にしています。断固とした行動 をとらなければ、ファッション業界の排出量は 2030 年までに 30 %増加する可能性があり、場合によっては 40%に増加する との見方もあります。

ファッション業界は、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるため に必要な目標を達成できないでしょう。いくつかの予測では、 ファッション業界だけで1.5 ℃目標を50 %オーバーシュートす ることが示されています。これらの試算は、包括的な一次排 出量データが存在せず、ビッグファッションの排出量に関す る透明性が不明確であるという重要な文脈の中で読み取ら ねばなりません。この問題は、現在のモデルが示すよりもか なり大きいかもしれません。正確な排出量追跡、エネルギー 使用と消費に関する一次データ、そして確固たる気候変動目 標とファッションにおける排出量削減の緊急性は、かつてな いほど重要になっています。

排出量削減の緊急性に伴い、このセクションは今回のレポー トの中で最も比重が高く、ブランド全体のスコアの40%に相 当します。

脱炭素化のセクションは以下のサブセクションに分かれて います:

脱炭素

具体的な行動や戦略、再生可能エネルギーの期限付き目 標、石炭の段階的廃止、衣料品製造におけるエネルギー集 約的工程の電化に関する開示など、ブランドの排出削減目 標、実施計画、進捗状況の各ブランドの透明性を検証します。

エネルギー消費

ブランドが再生可能エネルギーをどのように定義し、自社の 事業やサプライチェーンレベルでのエネルギーや電力の消 費量を、国や生産工程ごとに分けて公表しているかの透明 性を検証します。

温室効果ガス(GHG)フットプリン ト

各ブランドが自社のスコープ1、2、3排出量をどのように公表 しているか、また、さまざまなスコープにわたるGHGフットプ リントについて何を開示しているかについて、透明性を検証 します。

ブランドごとの総合的な 脱炭素化スコア

調査結果

脱炭素

脱炭素化への期限付きで 測定可能なコミットメントを発表

Science Based Targets

Initiative(SBTi)に 沿って、短期(5〜10年) および長期(2040〜 2050年)の1.5°C整合した 目標を発表

サプライチェーンの 再生可能エネルギー 目標を開示

サプライチェーンの 再生可能電力目標を開示

進捗状況を開示 9% 8% 1% スコープ1から3をカバーする

脱炭素化に向けた測定 可能な進捗状況を公表

この目標に対する 進捗状況を開示

石炭火力発電(または その他の化石燃料)の 燃焼を段階的に廃止する

目標を開示

この目標に対する 進捗状況を開示

衣料品製造において エネルギーを多く使用する プロセスをすべて可能な限り 電化する目標を開示

この目標に対する

世界の主流ファッションブランドの約4 分の1が、脱炭素化に関する情報を一 切開示しておらず、気候危機が彼らにと って優先事項ではないことを示してい る

今年、250のブランドのうち59ブランドが、脱炭素化のセク ションでスコア0を記録しています。このセクションでスコア 0のブランドは、スコープ1からスコープ3に関するScience Based Targets Initiative(SBTi)で認証された目標を開示して おらず、進捗状況を報告したり、再生可能エネルギーや再生 可能電力、石炭の段階的廃止に関する期限付きで測定可能 な目標を公表していません。さらに、これらのブランドは、自 社の運営およびサプライチェーンレベルでのエネルギー消費 や燃料の使用構成についても一切開示していません。世界 の主要ファッションブランドの24%が、この重要な分野でスコ ア0を記録している現実は、脱炭素化へのコミットメントの大 きな欠如と、緊急性の欠如を浮き彫りにしています。

世界的には、2030 年までに排出量を半減する必要があり、そ の期限は間近に迫っていますが、これらのブランドは脱炭素 化の取り組みを隠しているかのようです。おそらく、報告する 意味のある行動を取っていない可能性があります。

世界の主要ファッションブランドの約 25%が、この重要な分野でスコア0を 記録しているという現実は、危機感 の著しい欠如を浮き彫りにしている

または、行動を起こしている一方でそれを公にしていない可 能性もあります。しかし、サステナビリティがマーケティングツ ールとしてしばしば活用されていることや、脱炭素化に関す る透明性や行動を求める規制圧力を考えると、彼らの沈黙 は多くを物語っています。最も合理的な結論は、これらのブラ ンドが気候危機を優先事項としていないということです。一 方で、スコア0を記録した一部のブランドは、脱炭素化目標を 開示していますが、SBTiによって認証されていないため、ポ イントが付与されていません。その他のブランドは、2025年 までにSBTi認証の目標を設定すると約束していますが、それ は緊急性の高いこの危機に対しては非常に不十分です。

圧倒的多数のブランド(93%)が、脱炭素化セクションで得ら れるポイントの半分以下しか獲得しておらず、39%が10%以 下のスコアを記録しています。これは、脱炭素化の取り組み に関する情報の提供が大きく不足していることを強調してい ます。

Dillards
Beanpole
BCBGMAXAZRIA
Chico’s Bosideng

分析 脱炭素化

世界の主流ファッションブランドのう ち、信頼性のある排出削減目標を開示 しているのは半数未満

ほとんどの主要ファッションブランドは、 強固な目標を欠いている。たった4社の みが、2030年までに55%削減を求める 国連の呼びかけに応じたスコープ3排 出削減目標を開示している

このレポートおよび過去のファッション透明性インデックス において、私たちはブランドが脱炭素化に対する期限付きで 測定可能な公約を公表しているかどうかを追跡してきまし た。私たちの調査によると、現在47%のブランドが、Science

Based Targets Initiative(SBTi)によって検証された、運営お よびサプライチェーンに関する脱炭素化目標を公表していま す。これは2023年の34%から大幅な増加を示しており、規制 の圧力や業界標準、消費者の期待、投資家やステークホルダ ーの圧力が大きな要因と考えられます。

SCIENCE BASED TARGETS INITIATIVE(SBTI)による検証

私たちは、自社の業務およびサプライチェーンに関するスコープ1 、2、3を対象とし、Science Based Targets Initiative(SBTi)に よって検証された目標のみを受け入れます。SBTiは、企業の気候 目標に関する最も影響力のある検証者であり、企業の気候コミッ トメントにおいて重要な役割を果たしています。SBTiによる検証 は、本レポートの手法に統合されており、SBTiを利用することで、 これらの目標の効率性と標準化が向上し、この調査の範囲に含ま れる250のブランド間での比較が容易になります。気候目標の設 定や伝達に関する標準的な枠組みがなければ、企業の報告は整 理されず、混乱を招き、説明責任の確保がさらに困難になります。 現在、SBTiの基準は改訂中であり、企業の気候目標の進展に貢 献するためにオフセットを考慮するという議論を呼んでいます が、本レポートの手法はこれらの変更が加えられる前のものです。

昨年、私たちは新たな指標を導入し、ブランドの脱炭素化計 画を評価しました。これは、1.5°Cのシナリオに沿った短期お よび長期のScience Based Targets(SBTs)をどれだけ透明 に開示しているかを調査するものです。SBTiが1.5°Cに整合 した目標を検証する場合、それは産業革命前のレベルと比 較して地球の気温上昇を1.5°Cに抑えるための最新の気候 科学に基づいていることを意味します。そのため、科学に整 合した短期および長期の目標を持つことは、短期目標が即 時の行動(例えば、現在のビジネス戦略や投資を推進する) を促し、長期目標が継続的な取り組み(例えば、新しい技術 やビジネスモデルへの投資を通じた深い脱炭素化の解決) を示し、脱炭素化目標を達成するためのコミットメントを強 固なものにします。

昨年は12%のブランドがこの指標でポイントを獲得しました が、今年は9%に減少しました。開示のわずかな減少の理由 としては、一部のブランドが、SBTi(Science Based Targets Initiative)から、目標達成に向けた進展が不十分であった ためにその公約が取り消された可能性が挙げられます。

このレポートでは、短期目標を次の5年から10年間で設定さ れたものと定義し、長期目標は2040年および2050年に設定

されたマイルストーンを指します。特に、SBTiはスコープ3の 目標を1.5°C分類と一致させていません。これは、スコープ3 排出量がさまざまな業界で標準化するのが難しい、広範な 間接排出を含んでいるためです。

私たちの調査では、各ブランドの目標の個別の野心レベルを 評価していません。私たちは、説明責任を果たすための最初 の重要なステップとして、透明性を優先しているからです。し かし、注目すべき点は、世界最大のブランド250社のうち、わ ずか4社(ASICS、H&M、Marks & Spencer、Patagonia)し か、国連のEmissions Gap 報告書で定義された水準、すなわ ち2018年比で2030年までに絶対排出量を55%削減するこ とを求められるレベルの短期的な絶対排出削減目標を開示 していないということです。

特に注目すべきは、さらに進んだ目標を設定しているブラン ドが2社存在することです。その1社がASICSで、購入した製品 およびサービスに関するスコープ3の温室効果ガス排出量を 絶対的に削減することを公約しています。(企業が購入する すべての製品やサービス)および販売された製品の廃棄処 理について、H&M は、2019年度を基準として、2030年度まで

2024年3月時点で、いくつかのファッションブランドは、2050年までにバリューチェーン全体でネットゼロ排出を達成するた めの長期的な科学に基づく目標を設定できず、2024年1月31日の重要な期限を逃しました。2019年6月から2021年10月ま での間に、1.5°Cキャンペーンに参加し、これらの目標を設定した企業は1000社以上にのぼります。

*つまり、スコープ1から3を対象とし、SBTiによって検証された目標を指します。

しかし、40のファッションブランドがそのコミットメントを取り消され、その中にはBanana Republic、Gymshark、Gap、Old Navy、Marks & Spencer、Prada、Miu Miu、Mammut、New Lookが含まれます。SBTiは企業を調査した結果、コミットメン トを取り消された企業のうち54%が、スコープ3の対応が非常に困難であると述べ、35%が目標達成に確信が持てなかっ たと報告しています。

トップダウンアプローチ、実現可能性と公平性について にスコープ3の温室効果ガス(GHG)排出量を絶対的に56% 削減することを公約しています。

この厳しい事実は、主要ブランドの包括的な気候行動にお ける重大なギャップを浮き彫りにし、より野心的なコミットメ ントが緊急に必要であることを強く示しています。野心的な スコープ3の短期目標を設定せずに、長期目標を優先するの は、トレーニングをせずにマラソンを計画するようなもので す。ゴールを見据えていても、日々の努力や短期的なマイルス トーンがなければ、完走することはできないでしょう。

ほとんどの企業は、ネットゼ ロを達成するために少なくと も90%の排出削減が必要

長期目標について言えば、ネットゼロ排出と絶対排出削減の 両方が気候変動対策において重要ですが、それぞれ異なる 意味と効果を持っています。絶対排出削減は、実際に大気中 に排出される温室効果ガス(GHG)の量を直接減らすため、 より影響力があります。SBTiのネットゼロ基準によれば、多 くの企業がネットゼロを達成するためには、少なくとも90% の排出削減が必要です。ネットゼロは絶対削減ほど野心的 ではないと言われるのは、ブランドが排出量を実際に削減す るのではなく、オフセット(相殺)に依存している可能性があ るからです。つまり、オフセットは進展しているという誤った 印象を与える可能性があります。気候問題を理解するために は、多くの技術的な用語がありますが、最終的に企業の気候 計画を評価する際に最も重要なことは次の2点です:

1. その計画は化石燃料の消費を減らしているか?

2. それにより、排出源での絶対排出量が削減されるか? 多くのブランドがSBTiで検証された長期的なネットゼロ目標 を選んでいるという事実は、彼らの脱炭素化計画が実際に 排出量を削減するのに十分強固なものかどうか、疑問を投 げかけます。

オフセットが企業の気候目標達成にカウントされる可能性が あることは非常に懸念されており、2024年7月には、80以上 の市民団体が公開書簡を通じて、SBTiに対し、企業の気候 目標を達成するためにカーボンオフセットの使用を拒否する よう求めました。この書簡では、SBTiおよび温室効果ガスプ ロトコルに対し、オフセットを引き続き排除し、企業の気候活 動を追跡するために科学的に確かな手法を維持するよう求 めています。なぜなら、オフセットは「高排出活動が継続する ための社会的許可を提供し、過去の不公正を強化する結果 となることが多い」からです。

大手ファッションブランドの気候目標が、多くの場合、サプライ ヤーとの協議なしに設定されているという事実を認識するこ とが重要です。サプライヤーは、ブランドの目標を達成するこ とが期待されるだけでなく、場合によっては自らの目標も設 定しなければなりません。2030年までの排出削減や、2050年 までにネットゼロを達成する必要があることは、サプライチェ ーンに多大な圧力をかけています。

Transformers Foundation は、デニムのサプライチェーンを 代表する組織であり、最近の調査で、ファッション業界の気候 戦略に対するサプライヤーの見解を強調しています。サプライ ヤーは、脱炭素化のための作業の大部分を行うだけでなく、 その取り組みの資金を自ら賄うことが期待されており、これ は多くの場合、非現実的であり、不公平です。脱炭素化の負担 は、主に「グローバルサウス」に位置するサプライヤーに過度 にかかっており、これらの地域は歴史的にも現在も気候変動 に最も貢献していない地域です。この点については、第5章「 公正な移行とアドボカシー」でさらに詳しく述べます。

現在のサステナビリティに対するトップダウンアプローチ、つ まりブランドがサプライヤーに条件を押し付ける手法は、効 果がないと見なされています。Transformers Foundation は、責任とリソースをバリューチェーン全体で共有する集団 的アプローチを呼びかけています。彼らの見解では、Science Based Targets(科学的根拠に基づく目標)は、特に「グロー バルサウス」のサプライヤーの実現可能性や状況を無視して いることが多いと指摘しています。すべてのサプライチェーン 関係者が、厳しい目標を達成するための同じ能力やリソース を持っているわけではなく、現行のアプローチは不公平です。 ブランドに気候目標の達成を求める際には、サプライチェー ン全体で公正かつ実現可能な方法でこれらの目標を達成す る必要があることを認識することも重要です。

大手ファッションブランドのスコープ3 排出量は、減少するどころか増加して いる

脱炭素化目標を掲げるブランドのうち、約半数(250社中117 社)が目標を設定しているものの、実際に進捗状況を開示し ているのは105社にすぎません。その中で、56社が排出量の 削減を報告しています。しかし、7社がスコープ1およびスコー プ2の排出量の増加を報告し、さらに懸念されるのは、42社 が基準年と比較してスコープ3の排出量の増加を報告してい ることです。スコープ3は脱炭素化において最も重要な領域 です。記録的な熱波とパリ協定の2030年目標が迫る中、世 界最大級のファッションブランドの排出量が増加しているの は非常に憂慮すべき状況です。特に、最も緊急に行動が求め られるスコープ3レベルでの排出量の増加が目立ちます。ス コープ3の排出量増加を開示したブランドのいくつかの例が 右に示されています。

透明性はブランドの進捗状況、またはその欠如を評価する ために不可欠です。しかし、驚くべきことに、レビュー対象と なったブランドの58%については、排出削減の進捗が不明 確なままです。これらのブランドは、SBTi(Science Based Targets initiative)に承認された目標を開示していない

か、承認された目標はあるものの進捗を開示していない、 もしくは、さらに悪いことに、脱炭素化の取り組みに関して 公に何も開示していません。この透明性の欠如は、気候危 機の最悪の影響を緩和するための重要な時期に、主流フ ァッションブランドが排出責任を回避しているという明確 なメッセージを送っています。さらに、Authentic Brands Group(Quiksilver、Billabong、Roxy、Ted Baker など)を含む 複数のファッションブランドで大量のレイオフが報告されてい る中、同社は今回の調査対象に含まれた10のブランドを所 有しており、持続可能性チームの縮小により、この重要な業 務を遂行するためのリソースが不足している可能性もありま す。これを示す顕著な例として、Nikeでは最近、サステナビリ ティに関する業務を担当するスタッフの20% が解雇されまし た。この傾向は、リーマンショックや新型コロナウイルス感染

ブランドのスコープ3排出量の増加

2019年の基準年に対して排出量が45%増 加しており、これはブランドのビジネス戦略 「CLAIM 5」導入以来のHUGO BOSSの「強 力な業績」を反映しています。

lululemon*

スコープ3排出量は2018年以降、約44%増加して います。

Primark 「今年、2018/19年度の基準となる財務年度と比較 して、バリューチェーン全体の炭素排出量が11%増加 しました。これは予想された通りで、スコープ1および スコープ2の排出量は減少しましたが、スコープ3の 排出量は、使用された素材の量が増加し、その結果、 前年と比べて販売された製品の数が増加したために 増加しました。短期的にはこの傾向が続く可能性が あります。」

以下のブランドも脱炭素化 目標を開示していますが、ス コープ3排出量が増加してい ます:

Adidas

American Eagle ASOS

Bershka

Brooks Sport Brunello Cucinelli

Champion

Chloé

COACH Converse

Diesel

Dr. Martens Ermenegildo Zegna Hanes

Hugo Boss

Jack & Jones

JD Sports

Jil Sander

Jordan

Mammut

Marks & Spencer

Marni

Massimo Dutti

Moncler

New Balance

Nike

Primark

Pull&Bear

Sandro

Stradivarius

Target

The North Face

Timberland

UGG

Vans

Vero Moda

Woolworths

South Africa

注: lululemonは、同社の「Be Planet」マーケティングキャンペーンの一環として気候対策を誇張した疑いがあり、 カナダ政府によってグリーンウォッシングの調査を受けています。

Kate Spade

lululemon

Wrangler

Zalando Zara

Hugo Boss ブランド 開示

症(COVID-19)のパンデミック時に見られたトレンドと類似 しており、売上や利益が減少する時期には、サステナビリティ チームが必須ではなく選択的なものとして見なされました。

ブランドは、実質的な排出削減を 行うのではなく、排出量の測定方法を 更新することで、書面上の目標を 達成することができる

全体として、この透明性の欠如は、真の進捗評価を複雑に し、実際の排出削減と単なる表面的な改善を区別すること を難しくしています。一部のブランドは、炭素会計手法の更新 により、排出量の減少を報告しています。例えば、カルバン・ クラインやトミー・ヒルフィガーの親会社であるPVHグループ は、データ収集の改善や炭素会計手法との整合性向上によ り、スコープ3排出量が減少したと報告している。PVHグルー プだけでなく、他のブランドも、排出量減少を会計手法の改 良に起因していると述べており、これはより広範な問題を浮 き彫りにしています。すなわち、ブランドは、実質的な排出削 減ではなく、排出量の測定方法を更新することで、書面上の 目標を達成することが可能であるという点です。

信頼性と効果に関して– オフセットと「カーボンニュートラル」

New Climate Instituteのような気候政策分野の非営利団体 は、SBTi(Science Based Targets initiative)を評価し、こ の自主的な取り組みが「現在の検証実務において相当な寛 容さを許している」と指摘し、改善のための提言を行っていま す。SBTiは現在、スコープ3目標達成のためにカーボンオフ セットを使用することを許可するかどうかを検討中であり、そ の結果は今年後半に発表される予定です。かつてSBTiの理 事会はオフセットを許可すると発表したが、その決定は技術 スタッフからの声明によってすぐに撤回されました。技術ス タッフは、その理事会の早まった決定が、SBTiの標準運用手 順およびガバナンスプロセスを損なうと指摘したためです。

まとめると、SBTiは引き続き企業の目標を検証する基準で あり、目標の設定と伝達方法を標準化するために必要な機 関であるが、ブランドがカーボンオフセットのような抜け道を 利用して目標を達成する可能性があることを念頭に置くこと が重要です。したがって、基準を設定する組織は、ブランドの 排出削減目標達成において何がカウントされるべきかを決 定する際に、高いレベルの誠実さを維持することが非常に重 要です。

誤解を招く環境に関する主張への取り締まりの 一環として、EUは、カーボンオフセットに依存し た「気候中立」や「気候ポジティブ」といった用語 を、2026年までに「グリーントランジションに向け た消費者支援指令(Empowering Consumers for the Green Transition Directive)」に基づい て禁止する予定です。この新しい指令では、認定 された認証制度を使用した持続可能性ラベル のみが許可されます。この新しい法律は、ブラン ドがカーボンオフセット制度を利用して製品に「 カーボンニュートラル」とラベル付けし、消費者を 欺いているという懸念の中で導入されました。「 グリーンクレーム指令」に基づき、カーボンオフ セット制度のみに基づくグリーンな主張は引き 続き禁止されます。これらの新しい法律は、グリ ーンウォッシングへの重要な対策となるでしょう。

脱炭素
調査結果

エネルギー消費

企業が再生可能 エネルギーをどのように 定義しているかを開示

企業が所有・運営する 施設でのエネルギー 消費プロファイルの 内訳を開示 54%

サプライチェーンでの 電力消費プロファイルを開示 23% 4% 6% サプライチェーンにおける 国別のエネルギー消費の 内訳を開示 5%

企業のサプライチェーン におけるエネルギー消費 プロファイル内訳を開示 11%

企業のサプライチェーンに おけるプロセス別エネルギー 消費の内訳を開示

分析 エネルギー消費

ほとんどのブランド(96%)は、会社の サプライチェーン内でのプロセス別エ ネルギー消費の内訳を開示していない 公正でクリーンなエネルギー転換を達成することは、主要な ファッションブランドのエネルギー消費、特にそのサプライチ ェーン内でのエネルギー消費に関する一次データの必要性 と同様に緊急の課題です。

データは、ファッション業界におけるサプライチェーン内での エネルギー消費や再生可能エネルギーの使用に関して、重 大な透明性の欠如があることを明らかにしています。ブラン ドの半数以上が店舗やオフィスなどの自社運営におけるエ ネルギー消費を開示している一方で、サプライチェーンの詳 細に関しては透明性が大幅に低下しています。国別、プロセ ス別、またはサプライチェーン内での電力消費プロファイル を開示しているブランドはごくわずかです。

ほとんどのブランド(95%)は、サプラ イチェーンにおける国別のエネルギー 消費の内訳を開示していません。

サプライチェーンにおけるエネルギー消費

エネルギー使用は、サプライチェーンの段階(tierとも 呼ばれる)で異なります。生地が製造される加工施設 は、衣料品サプライチェーンの中で最も大きなカーボン フットプリントを持つ段階であり、これは石炭に依存し ているためです。通常、染色やプリントの際に使用され る水を加熱するために、施設内で石炭が燃やされます。

衣料品工場や原材料加工段階(例:コットンを繊維に 変換する)では、電力がより一般的なエネルギー源で す。電化は石炭の燃焼に比べて望ましいものの、使用 される電力が依然として化石燃料から供給される場合 もあります。これは、石炭火力発電所に依存する国家 の電力網を通じて発生することがあり、または施設内 でのディーゼル発電機や液化天然ガスの使用によるこ ともあります。

この情報を開示しているブランドは、American Eagle、Calzedonia、Champion、G-Star Raw、Gildan、Gucci、Hanes、Intimissimi、OVS、Puma、Tezenis、Tom Tailorのみです。G-Star Rawは、エ ネルギータイプや主要な調達国ごとのエネルギー消費 量、国別の割合を公開しており、最も優れた透明性の 実践を示しています。この開示から、クリーンで再生可 能なエネルギーへの転換における最大の機会や課題 がどこにあるかを理解することができます。

繊維工場やその他の施設では、衣類を染色・ 加工するのに必要な熱を得るために、一般 的に石炭が現場で燃やされています。

石炭は高い熱量を持ち、比較的安価で入手 しやすいため、熱エネルギーに最もよく使わ れる燃料です。しかし、石炭は非常に汚染性 が高いです。石炭を燃やすと、他の燃料源よ りも多くの有害な温室効果ガスや大気汚染 物質が排出されます。石炭の使用を段階的 に廃止することで、ファッション業界のtier1 およびtier2の排出量を13%削減することが できます。しかし、さらにエネルギーを多く 消費する湿式染色プロセス自体をなくす ことで、排出量をさらに削減することが可 能です。

この情報を開示しているブランドには、Calzedonia、Champion、Gildan、Hanes、Hermès、Intimissimi、Lacoste、Puma、Sandro、Tezenis、Wranglerが含まれます。 興味深いことに、これらの小売業者には、製造を一部または すべて自社で行うブランド、ラグジュアリーブランド、スポー ツウェアブランドが混在しています。これらのブランドのプロ ファイルは、自社工場を所有していると開示しているか、製 品の専門的な性質から工場の生産シェアが多いと考えられ るブランドであるため、この情報を開示しているブランドは、 この種の情報に対してより大きな影響力と透明性を持って いると推測できます。

Gildan は最も優れた透明性の実践を示しており、ブランド のサプライチェーン内でのさまざまなプロセスによって生成 され、使用されるエネルギー量を開示しています。Gildanの 開示には、靴下製造(398,135 GJ)、繊維製造(4,377,445 GJ)、統合製造(例:繊維と縫製)(433,745 GJ)、糸紡 績(2,685,859 GJ)、縫製作業(238,827 GJ)、衣類染色 (221,599 GJ)などのプロセスが含まれています。このデー タの透明性により、ブランドはどの領域が最もエネルギーを 消費しているかを特定し、その部分を効率化のための改善 対象とすることができます。この情報は、エネルギー消費全 体の削減とカーボン排出削減に向けた戦略を策定するうえ で極めて重要であり、気候目標の達成に貢献します。

ほとんどの大手ファッションブランド (94%)は、サプライチェーンにおける 電力消費プロファイルを開示していな い

国別エネルギーミックス

すべてのデータは国際エネルギー機関(IEA)からのものです。

石炭

石油

天然ガス

バイオ燃料および廃棄物

水力

風力および太陽光

その他の燃料

この情報を開示しているブランドには、Banana Republic、 Champion、Converse、Decathlon、Gap、Gildan、 Hanes、Jordan、lululemon、Miu Miu、Nike、Old Navy、 OVS、Prada、Pumaが含まれます。

より高い透明性は、

説明責任の促進とエネルギー効率

および再生可能エネルギーの採用 に向けた改善を支援する

全体として、主要なファッションブランドのサプライチェーン 燃料における透明性の欠如は、彼らの再生可能エネルギー および電力目標や行動計画の効果を不明瞭にしています。

オペレーションおよびサプライチェーンレベルでのエネルギ ー使用に関する詳細で精緻なデータの形でより高い透明性 を確保することは、説明責任の向上とエネルギー効率および 再生可能エネルギー採用の改善を促進します。主要な衣料 品製造地域のエネルギーミックスについては、右側の図表を ご覧ください。

分析 エネルギー消費

大多数の主要なファッションブランド および小売業者(77%)は、再生可能 エネルギーが何を意味するのか、また それをどのように使用しているのかを 開示していない

説明責任の観点から、次の2点を知る必要があります:

1. ブランドが再生可能エネルギーの明確な定義を持って いるか、そしてそれを報告にどのように反映しているの かについて透明性を持っているかどうか。これは、ブラン ドが再生可能エネルギーの使用を報告する際に従う基 準や標準を理解するために重要です。

2. ブランドがエネルギー消費の内訳と調達方法を開示し ているかどうか。これは、ブランドの実際のエネルギー使 用を理解し、誤った解決策が評価されないようにするた めに重要です。

全体として、ブランドが「サステナブルな素材」とは何を意味 するかを理解することが重要であるのと同様に、再生可能エ ネルギーの定義についても透明性を持つことが重要です。こ れにより、ブランドの再生可能エネルギー採用に向けた取り 組みの確実性と進捗状況を理解することができます。

ブランドが再生可能エネルギーをどのように定義しているか についての透明性の欠如は、その移行計画の信頼性に疑問 を投げかけます。例えば、石炭の使用を早急に廃止する必要 があるにもかかわらず、一部のブランドは、持続可能性が疑 わしいバイオマスを移行燃料として利用しています。研究に よると、最も一般的なバイオマスである木質ペレットは、従来 の化石燃料よりも高い炭素排出量を発生させることがあり ます。これは、栽培、輸送、加工中に排出されるCO2や、森林 伐採による炭素ストックの減少が原因です。

インドネシアのバイオマスプロジェクトでは、グリーンクライ メートファンドから940万ドルの資金が提供され、パプアで 2,500ヘクタールの熱帯雨林が伐採され、森林伐採や炭素 排出の問題が浮上しています。

16の環境団体を含む批判者

たちは、バイオマスのために森林の木材を使用することは「 グリーンウォッシングの戦術」であり、風力や太陽光といった 本当にクリーンなエネルギー源への移行を遅らせ、森林伐採 や環境破壊を悪化させていると主張しています。

衣料品業界が石炭の燃焼をできるだけ早く廃止する必要性 は、衣料製造に必要な熱量を生産するための代替手段が不 足していることによってさらに強調されます。そのため、水を 使わない染色技術、乾式加工、電気ボイラーやヒートポンプ による電化染色の普及が非常に重要です。Rainforest Action Network、Transition Asia、Friends of the Earth Indonesia な どの団体は、バイオマスボイラーからの移行と、電化および再 生可能エネルギーの使用を優先し、熱エネルギーの需要に対 応するよう求めています。

ただし、現時点でどのような移行経路が実現可能かについ ては、製造地域によって限界があることを忘れてはなりませ ん。例えば、天然ガス、石油、石炭に大きく依存しているパキ スタンのような国では、バイオマスは化石燃料からの移行を 目指してエネルギーミックスを多様化させようとするサプラ イヤーや現地の利害関係者にとって実行可能な移行手段と 見なされています。重要なのは、サプライヤーが持つ文脈を 理解し、移行経路はサプライヤーのニーズに基づいてブラン ドの支援を受けながら進められるべきだという点です。

ファッションブランドが気候目標を達 成することは、明確で信頼性のある戦 略なしには不可能である

2021年、Apparel Impact Institute (Aii) と World Resources Institute (WRI) は、ファッション業界が2030年までに1.5°Cの 道筋に沿うために採用すべき7つの解決策を特定しました。

良いニュースは、彼らの調査によると、2050年までに必要な 排出削減の45%は、再生可能エネルギー、拡大されたサステ ナブルな素材とプロセス、エネルギー効率の向上、そして石 炭燃焼の廃止など、既存のソリューションで達成できるとい うことです。

今年、私たちは以下のような既存のソリューションに関連す るいくつかの重要な目標に対して、ブランドに透明性を求め ました:

• サプライチェーンにおける再生可能エネルギーの目標と その達成進捗を開示しているか

• サプライチェーンにおける再生可能電力の目標を開示 しているか

• 石炭などの化石燃料の燃焼を段階的に廃止する目標と その進捗を開示しているか

• テキスタイルおよび衣料品製造におけるエネルギー集 約的なプロセスを電化する目標(可能な場合)とその進 捗を開示しているか

なぜ石炭の廃止が必要か:

石炭は最も炭素集約度の高い化石燃料であり、大量のCO2 を大気中に排出し、地球温暖化を促進し、深刻な大気汚染 を引き起こします。この問題は、19世紀後半から確認されて います。

この問題は、衣料品生産に従事する労働者に大きな影響を 与えています。研究によると、繊維工場で石炭を燃やすこと で、数多くの有害な化学物質が大気中に放出されます。ある 研究では、石炭の燃焼による大気汚染が、主に私たちの衣類 が生産されている東南アジアで年間約2万人の早すぎる死 を引き起こしていると報告されています。さらに、石炭排出に 関連する死亡者数は、2030年までに3倍に増加し、年間7万 人に達すると予測されています。石炭の生産に伴う甚大な人 間的および環境的なコストは、その廃止が急務であることを 強調しています。

2023年、私たちは、ファッションブランドの生産のうちどの割 合が石炭で賄われているか、その影響を受ける地域やセクタ ーも含めて透明性を求めましたが、この情報を開示したブラ ンドはわずか6%でした。

エネルギー消費

大手ファッションブランドのわずか14 %が、石炭の廃止に向けた公約を開示 しており、これは世界の気候目標への 進捗を大きく妨げている

今年は、ブランドがサプライチェーン内での石炭燃焼を段階 的に廃止するための、期限つきで測定可能な目標を開示し ているかどうかについて、透明性を求めています。私たちの 調査によると、そのようなブランドは非常に少なく、250ブラ ンドのうちわずか35ブランドしかこの情報を公開していませ ん。これは、主要な生産国で石炭が依然として広く使われて いること(57 ページの国別エネルギーミックス図に示されて います)を考えると、特に懸念すべき問題です。石炭の廃止に 向けた広範な取り組みがなければ、世界の気候目標に向け た進捗を達成することは不可能です。石炭燃焼は CO2 排出の 主要な要因であり、その継続的な使用は気候変動の緩和に 向けた取り組みに対する重大な脅威となっています。

ファッション業界のサプライチェーン における石炭消費は、環境の破壊と 人権への影響を助長しています。

Decathlonは、2025年までにRank 1の生産拠点、2030年 までにRank 2の生産拠点で石炭消費を段階的に廃止する 計画を立てています。Decathlonは、石炭の消費量(トン単 位)に関して透明性を持つ唯一のブランドです。同社のRank 1 (Decathlonが直接契約している製品および素材のサプラ

イヤー)およびRank 2(Rank 1サプライヤーに素材を供給 し、間接的にDecathlonを支えている)サプライヤーは、年間 合計 528,524トンの石炭を消費しています。これを分かりや すく言うと、トラック1台には約40トンの石炭が積載できるた め、このエネルギー需要を満たすには約13,213台分のトラッ クが必要です。さらに注目すべきは、lululemonのサプライチ ェーンにある1つの加工施設が、年間22,000トン(約734台分 のトラック)もの石炭を消費していることが他の研究で報告 されていることです。

ファッション業界のサプライチェーンにおける石炭消費は、 環境の破壊と人権への影響を助長しています。これら2つの ブランドの例は、毎年世界中で衣類を生産するために膨大 な量の石炭が必要であることを浮き彫りにしています。特に ベトナムのような国では、石炭がエネルギーミックスの49% を占めているため、深刻な問題です。ベトナムのGDPの16 % は繊維およびアパレル生産に依存しており、そのうち40 %が アメリカ合衆国へ輸出されています。石炭への依存は非常 に大きいと言えるでしょう。ベトナムでは、主に繊維工場での 熱エネルギーのために現場で石炭が使用されており、また、 石炭火力発電所からの電力も利用されています。

UNFCCCの署名企業は、できるだけ早く、遅くとも2030年ま でに石炭を廃止することを約束しています。しかし、これら の署名ブランドの中には、自社のウェブサイトや報告書で目 標を公開していないものも見受けられました。私たちはすべ てのブランドに連絡し、これらの目標をブランドのウェブサイ トや報告書で明確に開示する必要性を強調しました。期限 付きの目標が明確に提示されていない場合には、UNFCCC の署名企業として2030年までに石炭廃止を約束していると いう公開情報と、UNFCCCへのリンクを受け入れました。

UNFCCCの署名企業であるにもかかわらず、Bonprixや Hugo Boss などのブランドは、私たちの要請に応じて初め て目標を公に開示しました。一方で、自社ブランドレベルの 目標を開示する準備が整っていないと示したブランドもあ り、全く回答しなかったブランドもありました。UNFCCCのよ うな多ステークホルダーのイニシアティブは、共同で行動す るためのプラットフォームを提供しますが、一方でブランド が責任を回避しやすくなる「無為の避難所」となる可能性 もあります。 国連気候変動枠組条約 (UNFCCC)

Ruth MacGilp ルース・マクギルプ ファッションキャンペーンマネージャー Action Speaks Louder 「私たちが目にするすべてのサス テナビリティの主張に対して、1つ の基本的な質問を投げかける必要 があります。それは、この取り組みが 本当に排出量の削減、化石燃料の 廃止、再生可能エネルギーの拡大 に影響を与えているのかどうかとい うことです。もしそうでないなら、地 球には違いがわからないのです。」

ブランドのほとんど(92%)は、サプラ イチェーンにおける期限付きで測定可 能な再生可能電力目標を開示してい ない。これは、あらゆる気候行動計画 の重要な基盤である

多くの業界固有の行動が求められている中で、再生可能電 力への移行は他のすべてのイニシアティブの基盤となりま す。Apparel Impact Instituteによると、企業のサプライチェー ン全体で再生可能電力に移行することで、ファッション業界 の排出量を最大27%削減できる可能性があります。

ブランドが再生可能エネルギー目標と再生可能電力目標の 両方を持つ必要があるのはなぜか?

再生可能電力目標のみでは、企業が使用する電力だけが再 生可能資源から供給されていることを意味し、暖房、冷房、 輸送燃料などの他のエネルギー形態は依然として化石燃料 に依存している可能性があります。

再生可能電力とは?

再生可能電力は、風力や太陽光などの自然で炭素フリーの 資源から生成され、石炭や天然ガスといった化石燃料に代 わる高品質で持続可能な選択肢です。プロジェクトは、グリ ッドに供給されるオフサイト型のものや、屋上太陽光発電の ように多くの地域で費用対効果が高く確立されているオン サイト型のものがあります。

太陽エネルギーのコストは大幅に下落しており、2010 年か ら2020 年にかけて80 %以上価格が下がり、従来の化石燃 料よりも安価になるケースも増えています。

100%再生可能電力 = 100%化石燃料ゼロではない

このアプローチは、温室効果ガス排出量削減の全体的な効 果を制限し、企業のエネルギーフットプリント全体に対応して いないため、包括的な行動を損なうことになります。両方の 目標を持つことは、信頼性と透明性を強化し、市場の需要を 促進し、長期的な気候目標に一致させるために重要です。こ の二重の焦点は、強固な企業のサステナビリティ戦略をサポ ートし、エネルギー使用のあらゆる側面で気候危機に対処す る真のコミットメントを示します。

製造において100%再生可能エネルギーを目指すということ は、再生可能エネルギーがブランドの購買意思決定において 重要な要素であることを明確に示します。これにより、製造業 者、政府、競合他社にクリーンエネルギーを優先するよう促 し、衣料品生産国に対してクリーンエネルギーの需要がある ことを伝え、その国々が再生可能エネルギーへの移行を進 める助けとなります。

サプライチェーンにおけるエネルギー 集約的な製造プロセスを電化するた めの、期限付きで測定可能な目標を開 示しているブランドは1社のみ エネルギーを特に多く使う製造プロセスは、温室効果ガス排 出の大きな要因です。これらのプロセスを再生可能エネルギ ーで電化することは、カーボンフットプリントを削減するため に重要です。目標がない場合、ブランドは化石燃料への依存 を続ける可能性があり、気候変動対策の取り組みを損なうこ とになります。加速された排出削減シナリオでは、エネルギ ー効率およびエネルギー移行の手段によって、2030年には バリューチェーン全体で約10億トンの温室効果ガス排出を 削減できる可能性があります。このうち、45 %は原材料の生 産、準備、加工における効率改善によるもので、39 %は再生 可能エネルギーへの移行によるものです。残りの16 %は、合 成素材の生産において石炭エネルギーボイラーから電気ボ イラーへの切り替えによって達成される可能性があります。

さらに、明確な目標設定は新技術への革新と投資を促進し ます。これらの目標を設定しないブランドは、業務の効率化 に貢献する技術革新の機会を逃す可能性があります。

Canada Goose は、電化に関して情報を開示している唯一の ブランドです。彼らは100%の電化目標を明示していませんが、 「2025年のカーボンゼロ目標を達成するために、年間2〜3 か所の拠点で取り組むことを期待している」と開示していま す。

温室効果ガス・ フットプリント

温室効果ガス(GHG)フットプリント

会社のスコープ1、2、3 排出量に含まれるものに ついて説明

自社が所有・運営する施設 におけるスコープ1および 2排出量、またはカーボン・ フットプリントを年次で公開

国別、排出量、排出タイプ ごとに分類されたスコープ3 排出量を開示 原材料レベルでの バリューチェーン/ カーボン・フットプリントを 年次で公開し、下流への 影響についても推定を行う

サプライチェーンにおける詳細な GHG排出量の計算に重点を置き、 スコープ3排出量やバリューチェーンの カーボン・フットプリントを年次で公開

温室効果ガス(GHG)フットプリント

ブランドは、原材料レベルまで排出量 を追跡していないため、正確に気候へ の影響を測定することができない

温室効果ガス(GHG)プロトコルは、排出量を3つのスコープ に分類するための枠組みを提供し、広く受け入れられていま すが、その実際の実施方法や解釈は企業ごとに異なります。

結果として、企業が排出源をどのように特定し、それをどのス コープに分類するかについては統一された基準がありませ ん。したがって、各ブランドがどのようにスコープを定義して いるかを理解することは、排出量削減に対する責任を追及す る上で重要です。これらのスコープは、排出源とブランドとの 直接的な関係のレベルに基づいて分類・整理されます。

我々の調査によると、世界最大のファッションブランドの71% が、どの排出源がスコープに含まれているかを公開してお り、それにより脱炭素化に対する主張を精査することが可能 です。例えば、あるブランドの目標がスコープ1またはスコー プ2にしか含まれていない、あるいはスコープ3の計算におい て購入した商品やサービスを含めていない場合、そのブラン ドは最大の環境影響を考慮していないことになります。

サプライチェーンの各スコープにわたる排出量の透明性レ ベルはどの程度か?

スコープ1&2

スコープ1および2の排出量(ブランドが直接管理している部 分)は、組織全体の温室効果ガス(GHG)排出量のわずか3% 〜 5%を占めるにすぎず、場合によっては0.3%程度にすぎな いこともあります。例えば、lululemonの場合がそうです(50 ページ参照)。データによると、世界最大のファッションブラン ドの約4分の3(71%)がこの情報を開示しています。昨年の 64%と比べてGHG排出量の開示が増加した理由として、市 民社会、投資家、政策立案者などのステークホルダーからの 環境影響を軽減するためにこのデータを開示する圧力が高 まっていることが考えられます。スコープ1および2の排出量 削減は重要ですが、大手ファッションブランド全体のフットプ リントにおける割合はごく一部です。

スコープ3

GHG排出量の全体的な開示の増加 は、市民社会、投資家、政策立案者な

どのステークホルダーからの圧力の高 まりによるものである可能性がある

スコープ3は通常、ブランドの最も重要な温室効果ガスの影 響を示しており、最も注目すべき領域です。ファッション業界 では、Science Based Targets(SBTs)に承認されたブランド のGHG 排出量の平均 96% がスコープ3に由来しています。さ らに、スコープ3排出量の80% 以上は上流排出量、すなわち 企業が購入するすべての製品やサービスに関連しています。 残りの20%は、企業の製品やサービスの使用、廃棄、廃棄後 の処理に関連する下流排出量です。

データによると、スコープ3のカーボン・フットプリントを開 示しているブランドはわずか半数強(56%)にすぎません。ス コープ3の排出削減が最も重要であるにもかかわらず、また 2030年のパリ協定の目標期限まで残り6年でありながら、世

界の大手ブランドの110社がこの情報を開示していません。 これらの企業は、スコープ3の排出量を算定しているが開示 をしない選択をしているか、あるいは算定さえしていない可 能性があります。2030 年までに排出量を55% 削減する緊急 性を考えると、地理的に最大の課題がどこにあるかを把握す ることが重要です。

データによると、ブランドのわずか4%(250社中11社)が、 スコープ3の排出量を国別、排出量、排出タイプごとに開 示しています。この情報の透明性は、排出量が最も多い 地域を特定するのに役立ちます。この情報を開示してい るブランドには、American Eagle、Balenciaga、Bottega Veneta、Champion、G-Star Raw、Gucci、Hanes、JD Sports、lululemon、OVS、SAINT LAURENTが含まれま す。OVSは、各国の排出量の割合も開示しているという点で、 透明性のベストプラクティスを示しています。例えば、同社は スコープ3 排出量の58% がバングラデシュで発生していると 公開しています。これにより、排出削減の取り組みを最も重要 な排出源に優先的に集中させることができます。また、ブラン ドの最大の責任がどこにあるかを明確に示しています。ブラン ドが内部的にこの情報を保持している可能性はありますが、 公開することでバリューチェーン全体での協力による排出削 減の取り組みが促進され、気候対策に対する共同責任を促 進します。

国別排出量の内訳

分析

温室効果ガス・フットプリント

スコープ3:購入品と素材(原材料) 最後に、サプライチェーンにおいて最も見落とされてしまう のが、購入品やサービスを含む原材料レベルの領域です。こ

の分野では、原材料の生産から、繊維の加工、私たちが着る 衣服の製造までの全ての排出を含みます。半数をわずかに 超える(52%)ブランドが原材料レベルでの排出量を開示し ている一方で、残りの半数近くは開示していません。

透明性の欠如は、イノベーションや

コラボレーション、効率化の機会を 逃す原因になる

この重要な情報がなければ、企業全体のカーボン・フットプ リントや、環境への影響の大部分が明らかにされないままと なります。こうした透明性の欠如により、イノベーションやコ ラボレーション、効率化の機会を逃すことになるのです。究極 的には、主要ブランドが原材料レベルにまで遡って炭素排出 量を算定しない限り、環境への影響を正確に測ることはでき ません。そして重要なのは、こうした情報が公に開示されな ければ、大手ファッション企業に排出量削減の責任を問うこ とが難しくなるということです。

温室効果ガス排出量の正確なデータを収集することは、ブラ ンドや小売業者が排出量を削減し、その脱炭素目標を達成 するためにきわめて重要です。しかし、これらの削減を達成す るためには、排出量算定のための明確で一貫したアプロー チが求められます。

主要ブランドや小売業者は、絶対量としての温室効果ガス削 減に焦点を当てるべきです。つまり、売上あたりの排出量で はなく、企業全体での温室効果ガス排出を削減することを意 味します。売上あたりの排出削減を行うだけでは、企業全体 としての排出量は増加していく可能性があります(毎年の排 出量の増加が売上高の増加を下回る限り)。大手ファッショ ン企業の排出量追跡は一貫性がなく、混乱しています。そし てこれはすぐには解決されないでしょう。より良いデータや潜 在的な規制が出現するたびに、ファッションブランドはカーボ ン・フットプリントの計算方法を更新しています(そしてここで は、会計処理方法の改善が確実に行われることがきわめて 重要です)。しかしその一方で、一貫性が欠如していることに より企業の進捗の有無を測ることが難しくなっています。

精査のヒント:基準年とキャンセルされた注文

ブランドが掲げる目標の堅牢性を評価する際には、基準年( 企業が温室効果ガス排出量を計測する際の起点となる年) を考慮することが重要です。最も望ましいのは、コロナ以前 の安定性を反映させるために、2018年を基準年とすること です。2019年から2020年の基準では、コロナパンデミック により引き起こされた重大な混乱の影響により、通常の経 済活動が反映されていません。

ファッションブランドが不可抗力により注文をキャンセルし た場合、とりわけコロナパンデミックの事例に見られるよう に、すでに生産された商品からの排出物は大気中に放出さ れています。慣例では、完了した取引や市場に出回った製 品のみに注目するため、これらの排出は標準的な炭素会計 では報告されないことが多くあります。その結果、環境への 影響があるにもかかわらず、キャンセルされた注文の排出 量は公式のレポートには記載されません。

GHGプロトコルは、カーボン・アカウンティング(排出量の 追跡調査)のために広く使われている基準であり、報告主体 (この場合はファッションブランドなど)が管理する直接およ び間接的活動からのスコープ1、2、3の排出量を重視してい ます。注文がキャンセルされたために市場に出回らなかった 製品からの排出は、通常、こうした伝統的な会計の枠から外 れてしまいます。

決定的なのは、コロナ禍で犯した過ちをブランドが繰り返 し、気候危機の頻度が高まったことを理由に注文を一斉に キャンセルするという、不当な事態が将来起こるかもしれな いということです。すでに製造された製品をカウントしない といった会計の抜け穴により、ブランドは悲劇が起きた際に もその状況から逃れることができます。公正な移行や気候 危機については、88 ページもご参照ください。

アプローチ

本セクションの内容

ファッションブランドは、再生可能エネルギーの購入方法や 使用方法、そしてその取り組みにどれほど効果と影響力があ るかについて、何を明らかにしているでしょうか。

このセクションでは、RE100イニシアティブ(100%再生可能 エネルギーへの世界的な企業誓約)へのコミットメントを通 じて、主要ファッションブランドの再生可能エネルギー導入の 進捗状況を把握していきます。

また、自社施設とサプライチェーンの両方について、透明性 レベルおよびエネルギー調達戦略の詳細を評価していきま す。これには、利用されている調達手法の種類や、これらの取 り組みがどれだけ強固で信頼できるものであるかの検証も 含まれます。

これと同時に、年間および時間ごとに再生可能エネルギーと マッチングされた電力消費の割合(24/7マッチングとも呼ば れる)を調べることによって、サプライチェーンにおける再生 可能エネルギーの使用と生産の範囲および規模に関する透 明性のレベルを評価しています。

最後に、ブランドが再生可能エネルギーの調達についてどの ような将来計画を立てているのか、具体的にどのようなスト ラクチャーを目指しているのかを調査するとともに、サプライ チェーンにおける再生可能エネルギーの調達を支援するた めにどのような方策をとっているのかを調査しています。

調査結果

エネルギー調達

RE100へのコミットメント を開示している

自社の所有・運営施設に おける調達戦略および/ または調達種別の詳細 な内訳を開示している

8% 自社のサプライチェーンに おける調達戦略および/ または調達種別の詳細 な内訳を開示している

サプライチェーンの電力消費 のうち、再生可能発電と 年間ベースでマッチング された消費の割合/ 比率を開示している

サプライチェーンの電力消費 のうち、1時間ベースで マッチングされた消費(24/7 マッチングとも呼ばれる)の 割合/比率を開示している

将来の再生可能電力目標の 達成のために推進する 電力構成を開示している、 またはサプライチェーンに おける再生可能電力の調達を 支援するその他の方策の 詳細を開示している

分析 エネルギー調達

エネルギー調達は、より広い脱炭素戦 略の有効性を評価するためのレンズで ある

一部の主要ファッションブランド(14

%)は、RE100イニシアティブを通じ て、自社事業において100%再生可能 電力を使用すると宣言している

大手ブランドや小売業者がエネルギーを購入する方法(すな わち調達戦略)と、報告に使用する制度(再生可能エネルギ ー・クレジット、電力購入契約、自家発電)によって、再生可能 エネルギー戦略が実際に絶対的な炭素削減につながるかど うかが決まります。ファッションブランドの再生可能電力戦略 の有効性には様々なレベルがあり、有効性を評価するため には、ブランドのコミットメントや調達戦略、将来の計画に関 する透明性がきわめて重要になります。

本レポートではブランドごとの詳細な分析は行っていません が、以下の主要な情報に焦点を当てることを目的としていま す:

• 再生可能電力/供給構成(PPA、電力会社との契約な ど)の種類

• 各構成要素の再生可能電力発電設備の所在地

• 各構成要素を通じて調達される電力量

• 構成要素が賄う電力需要の割合

• PPAについて、関連する証書のバンドル(または取り消 し)に関する合意

調査対象とした250ブランドについては、詳細な情報が乏し かったり、公開されていなかったりすることが多くありまし た。CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の 報告書ではある程度の詳細が確認できるものの、全体的な 透明性は限られていました。そのためこの最初の調査では、 幅広い情報開示を認めています。例えば、敷地内での発電、 電力購入契約(PPA)、再生可能エネルギー証書(REC)など、 ブランドが使用する構成要素について最低限の透明性があ れば、ポイントを加算しました。

昨年初めて、RE100イニシアチブへの参加を通じて、自社の 事業(スコープ1と2)で100%再生可能電力の調達に取り組 んでいるブランドを測定しました。RE100は、CDP(旧カーボ ン・ディスクロージャー・プロジェクト)とのパートナーシップ のもとにClimate Groupが主導するもので、再生可能電力 100%への取り組みを企業に促すことで、ゼロ・カーボン経 済への移行を加速させる世界的な取り組みです。このイニシ アティブでは、成功事例の共有や意欲的なエネルギー目標 の設定、企業のリーダーシップを公表することを促進してい ます。なおRE100の技術基準では、再生可能エネルギーを風 力、太陽光、地熱、「持続可能なバイオマス」(バイオガスを除 く)、「持続可能な水力発電」と定義しています。

注目すべきは、昨年は12%のブランドがコミットメントを宣言 しましたが、今年は14%に増加したことです。これは、再生可 能エネルギーへの取り組みが高まっていることや、参加企業 の再生可能エネルギーへの旺盛な需要を示すものであり、 この分野への投資を促す市場の変化につながるものです。

また、クリーンエネルギーバイヤー協会(CEBA)など、RE100 に類似したイニシアティブは他にもありますが、単一の地域 に焦点を当てるのではなく、世界的な広がりを持つRE100を 優先しています。

事業活動におけるエネルギー調達に ついて透明性を確保しているブランド はわずか43%、サプライチェーンにつ いてはわずか10%であり、脱炭素化へ の取り組みの評価を複雑にしている すべての調達構成が等しいということではなく、有効性の観 点からは明確な序列があります。再生可能エネルギー調達 戦略の透明性、またどのような会計方法を使っているかは、 ブランドがどのように事業やサプライチェーンを脱炭素化し ているかを理解する上できわめて重要です。

再生可能エネルギー証書(REC)は、 実際の再生可能エネルギー発電に 与える影響は最小限であり、多くの場合、 そのエネルギーが消費される場所との 直接的なつながりは欠けている

再生可能エネルギー調達の階層では、現地のソーラーパネ ルと、電力購入契約(PPA)による新規の地域送電網の設置 が上位にあります。なぜならこれらの方法では、再生可能エ ネルギー容量が直接増加し、地域の送電網がサポートされ るからです。反対に、再生可能エネルギー証書(RECs)は、緩 和階層の一番下にあります。実際の再生可能エネルギー発 電に与える影響は最小限であり、多くの場合、そのエネルギ ーが消費される場所との直接的なつながりが欠けているた めです。

主要ブランドや小売業者は、その調達戦略にかかわらず、排 出量の大幅な削減を達成するために、バリューチェーンのす べてのレベルにわたってエネルギー消費量の最小化に努め るべきです。加えて、再生可能エネルギーの効果的な生産や 消費につながらないRECに依存するのではなく、地域の送電 網における再生可能エネルギーの増加に真に貢献するエネ ルギー調達方法を優先すべきです。

再生可能エネルギー調達手法の定義

調達構成 説明 効果

自家発電

電力購入契約(PPA)

再生可能エネルギーを外部業者から購入するのではなく、現地で生産すること。以下の ような形態があります:

• ソーラーパネル

• 風力発電機

• 企業敷地内に設置されたその他の再生可能エネルギー発電技術 自家発電により、ブランドは再生可能エネルギーを直接制御し利用することができます。

全体的なカーボン・フットプリントの削減に貢献し、より持続可能なエネルギーサプライ チェーンを確保することが可能です。

電力購入契約(PPA)とは、企業と再生可能エネルギー生産者との間の契約であり、企 業が生産者から直接電力を購入することに同意するものと定義されます。この取り決め は、多くの場合新しい再生可能エネルギープロジェクトの開発に関与し、再生可能エネ ルギー容量の拡大に貢献します。

PPAは通常、より質の高い調達手段であると考えられています。なぜなら、PPAは再生可 能エネルギーのさらなる発電につながる可能性が高く、多くの場合特定のプロジェクト や場所に紐づいており、エネルギー生産と消費の直接的な結びつきを保証しているから です。

単独および/または個 別での分離型エネルギ ー属性証書(EAC)/再 生可能エネルギー証書 (REC)

「バンドル」REC(再生可能エネルギー証書)は、再生可能エネルギー源から生産された 実際の電力とともに販売されます。つまり、電気を買うと同時に、その電気が再生可能で あることを証明する証書も手に入れることができます。1RECは、再生可能エネルギーに よる電力1MWhに相当します。

さらに効果が低いのは、実際の電力とは別に販売される個別のRECです。使用している 電力が再生可能でないものであっても、証書を購入することができます。証明書だけで は、一定量の再生可能エネルギーがどこかで発電されたと主張するだけで、自社が消費 している電気が、直接再生可能エネルギー源から供給されたものだということにはなり ません。

エネルギー調達

主要なファッションブランドや小売業 者は、自社事業所とサプライチェーン レベルの両方において、排出量を相殺 するために単独での再生可能エネル ギー証書を購入していると報告してい るが、これは気候変動目標に対する進 捗状況を不明確にしている

購入者も送電網利用者も再生 可能電力を使用していると考え る可能性があり、二重カウントや 誤解を招くデータにつながる

ブランドは特定の電源からの発電を証明するために、さまざ まな調達方法を用いています。ブランドは、原産地保証(GO) やエネルギー属性証書(EAC)など、さまざまな名称で知られ る再生可能エネルギー証書(REC)を購入することができま す。 大手ファッションブランドは、RECを購入することで排出量を 削減していると主張するかもしれません。ところがこれらの 証書は、ブランドが実際に消費している電力が(石炭などの) 望ましくない電力源から供給されていたとしても、再生可能 な電力を使用していると主張するために購入できてしまいま す。RECは質の低い手法であると考えられていますが、それ は、RECが発行された送電網と、再生可能電力の使用が主張 される場所との物理的なつながりが非常に弱いか、まったく ないことが多いからです。例えば、ブランドはノルウェーで発 行された風力発電のRECを購入し、ベトナムの石炭発電の 電力を相殺することができるのです。ある場所でRECを購入

Corp

North Face, Timberland, Vans)

「RECは電力使用量の23%を占める」

「14,000のRECを購入し、2022年の排出量に適用。2024年は10,000 のRECを購入し、2023年の排出に適用予定」

「VFは電力会社と契約し、我々の名前で我々が処分したエネルギー属性 証書(EAC)を購入します。EACは、エネルギーミックスに代表されるように 様々な発電源からなります。証書は複数の場所で発行される可能性があ るため、発電施設の依頼年を特定することはできません。」

注記:American EagleとVF Corpのスコープ3排出量は増加;Carter’sはSBTiが承認したスコープ3の目標を開示していない。そのため、各 社の排出量が増加したか減少したかは不明。

しても、その電気が実際に使用される場所での需要を示す わけではないため、購入者と送電網利用者の両方が再生可 能電力を使用していると考える可能性があり、二重カウント や誤解を招くデータにつながります。

ファッションブランドはRECによって、実際の二酸化炭素排出 量が変わらない、あるいはファッション業界が成長し続ける につれてその排出量が増えたとしても、再生可能エネルギー を使用していると主張することができます。会計ツールとして のRECは、PPAのような再生可能電力の短期および長期調 達契約を補完するために必要なものです。しかし、ブランドに とってはRECを再生可能電力の調達方法として扱うのが一

般的となっています。結局のところ、RECは偽りの解決策であ り、ブランドによるシステムのごまかしを助長しています。REC それ自体は、化石燃料によるエネルギーの使用を削減した り、その生産を制限したりするものではありません。これで は、絨毯の下にホコリを掃き捨てるようなもので、見栄えはよ くなるかもしれませんが、実際には家はきれいになっていな いのです。

RECは偽りの解決策であり、 ブランドによるシステムのごまかしを 助長している

ブランドの電力購入契約(PPA)に関する開示内容

ブランド 開示内容

El Corte Inglés

「El Corte Inglésグループは、NoyFund社およびEranovum社との、2つの長 期再生可能エネルギー契約(電力購入契約:PPA)を締結しました。これら2つの PPAの対象となるエネルギーは、クエンカにある太陽光発電所から供給される もので、合計設備容量は約330MW、年間発電量は650GWh強です。また、当社 の環境戦略に沿って、CO2を排出せず、CoG(原産地保証)のある再生可能な資 源のみをエネルギー源とすることにも取り組んでいます。再生可能資源からの 消費を補完するため、当社はPPAでグリーン証書を購入しており、これによりス ペインにおけるゼロ・エミッション供給は100%に達しています。

H&M

「2023年、グループの総電力使用量の94%に相当する再生可能電力を調達し ました。エネルギー属性証書(EAC)を単独で調達する場合、当社では最も排出 の少ない供給源、主に風力と太陽光発電に重点を置いています。当社が購入す るEACはすべて、RE100の技術基準に適合しています。再生可能エネルギーの 比率を高めることに加え、よりインパクトのある方法で調達することにも取り組 んでいます。例えば、太陽光発電所や風力発電所の開発業者と直接PPAを締結 しています。現在までにヨーロッパでは、イギリス、スペイン、スウェーデンの太 陽光発電所で5件のPPAを締結しています。最初のものはイギリスで、2022年12 月に電力供給を開始しました。これは、合計で240メガワットの再生可能電力を 確保したことを意味し、この結果、年間発電量は370GWhとなり、当社事業にお ける年間電力使用量の4分の1以上に相当します。」

「当社は先頃、ドミニカ共和国にあるエネルギー多消費型の繊維施設向けに、 太陽光発電を調達するための電力購入契約を締結しました。現在この施設に は、100%再生可能電力が供給されています。また、ホンジュラスとタイの施設に おいて、直接投資型ソーラーシステムを導入しました。」

RECは、再生可能エネルギーを促進する上で重要な役割を 果たし、より広範な持続可能性戦略の不可欠な一部となり 得ますが、排出を回避・削減するためのあらゆる努力が尽く された後にのみ使用されるべきです。RECのような剰余排出 量を相殺する方法に目を向ける前に、影響を防止・削減する ための直接的な行動が望まれます。

再生可能電力の主張においては、時間と場所の側面がきわ めて重要です。例えば、RECを通じて100%再生可能な電力 を主張することは、あたかも昼夜を問わず太陽が照っている ように見せかけ、グリーンウォッシュとなる可能性がありま す。言い換えれば、RECの購入は、夜間の石炭消費を相殺す るために太陽光クレジットを購入するようなものです。さら に、RECはエネルギーが消費される場所から遠く離れた場所 で購入されることが多く、物理的に実現不可能な場所での 再生可能電力の使用を主張することにつながります。

実際の電力市場では、このようなミスマッチは許されません。 たとえば、ノルウェーで再生可能エネルギーを契約してポル トガルで使用することはできません。しかし、RECはこの抜け 道を可能にします。RECは、地元のクリーンな電力に対する 需要を生み出さないため、地元の再生可能エネルギー開発 の推進力を弱体化させてしまうのです。

RECは最後の手段として使用されるべきであるという科学 的合意があるにもかかわらず、ファッションブランドは、再生 可能エネルギー目標の達成や、排出量相殺のためにRECを 購入していると公表することが増えています。このような依存 は多くの場合、実際の資源を再生可能エネルギー投資に向 けるのではなく、持続可能性の主張を戦略的に強化すること につながります。別の言い方をすれば、RECは、大きな変化を 促すことなく排出量を相殺する便利なメカニズムとして機能 するのです。このことは、世界で最も影響力のある企業目標 の検証機関であるScience Based Targetsイニシアティブが、 再生可能エネルギー利用を促進する真の努力を阻むような 質の低い手段を承認し、より質の高い再生可能電力戦略へ のインセンティブをほとんど与えていないという事実からも 明らかに見てとれます。

Hanes

この点を説明するために、いくつかのブランドは、自社の電力 使用量のうちRECに相当する割合を透明性をもって開示し ています。例えば、再生可能電力100%を目標とするブランド は、電力使用量の20%がRECによるものであり、目標に20% 近づいていると主張するかもしれません。しかし、これは電力 消費量の20%が再生可能エネルギー由来であることを意味 するものではなく、実際の電力は、石炭やガスのような再生 不可能な資源から供給されている可能性もあります。結局の ところRECとは、再生可能エネルギーへの物理的な移行を 意味するものではなく、ブランドが化石燃料を使用し続ける ことができるようにするために、利用することができるシステ ムとも言えるのです。これではまるで、渋滞を緩和するために バス定期券を購入すると主張しながら、実際には自動車を 運転し続けるようなものなのです。

RECは、再生可能エネルギーへの物理 的な移行を意味するものではなく、ブラ ンドが化石燃料を使用し続け、その消費 を相殺することを可能にするシステム

そのため、ブランドがスコープ1と2で100%再生可能電力を 達成したと主張している場合には、その主張の確実性を理解 するために、どのようにこの内容を説明しているのかについ て透明性を確保することが重要です。そして主要な問題は、 平均排出量の96 %を占めるスコープ3での排出に対して未 だ対策がなされていないことであり、その対処ははるかに困 難であるといえます。

「より簡単で安い、低い階層にあるステッ プを省きたいという誘惑は、せいぜい複雑 な世界的課題に対応する一時的な応急 処置でしかなく、最悪の場合、有意義な変 革のための努力を台無しにしてしまう」

Martha Stevenson マーサ・スティーヴンソン

Senior Director Forest Strategy & Research 専務

Chris Weber クリス・ウェーバー

WWF 世界気候エネルギーリードサイエンティスト

サプライチェーンの電力使用を時間単 位で開示している主要ファッションブ ランドはなく、再生可能エネルギーに 関する主張は信頼性に欠け、真の脱炭 素化には不完全である。

今回初めて、サプライチェーンの電力消費を1時間単位でマ ッチングさせた割合(24/7マッチングとも呼ばれる)を各ブラ ンドが開示しているかどうかを測定しています。この方法は、 従来の年間または月間マッチングとは異なり、電力消費と再 生可能エネルギー生産が毎時間マッチングすることを保証 するものです。

への依存を減らし、気候変動目標の達成に貢献することが できます。

年間での炭素会計から24/7マッチングへの移行が切望され ますが、それが実現しない限り、炭素会計は信頼性に欠けて います。簡単に言えば、24/7マッチングによって、排出量を正 確に測定し、正しく報告することができるのです。

現在、デンマークはエネルギーの50%以上を太陽光と風力 で賄っている唯一の国です。きめ細かな証明書によって24/7 マッチングを実現するのはコストがかかることですが、不可 能ではありません。ファッションブランドが24/7マッチングは 実現不可能だと主張するならば、彼らは本質的にファッショ ン産業の完全な脱炭素化は不可能だと認めていることにな ります。

「24/7マッチングは究極の目標で ある。毎時間、どこでもクリーンな電 力が企業に供給されるようにするこ とで、化石燃料への依存をなくすこと ができる。これにより、再生可能エネ ルギーと、それらを電力システムに 統合するための柔軟な技術への大 きなインセンティブが生まれる。」

予算を立てるようなものだと考えてみましょう。従来の方法 は、たとえ支出が日によって大きく異なっても、その月の予算 内に収まるようにするものです。24/7マッチングを行うこと で、毎時間、収入以上に支出することはなく、継続的な経済 的安定が保証されます。同様に、年間または月ごとのマッチ ングは、時間ごとの電力需要を満たしていない場合も再生 可能エネルギーの利用を主張することができ、化石燃料によ ってそのギャップを埋めることにつながります。

このアプローチは、完全に脱炭素化された電力システムを 2040年までに達成するために不可欠で、確実な排出量追跡 を促し、再生可能電力への需要を示すものです。企業による 電力消費は世界の電力使用量の半分を占めるため、時間単 位のマッチングにより、送電網を安定させ、化石燃料発電所 ファッション業界の再生可能エネル ギーへの取り組みはまちまちで、サ プライチェーンの透明性や厳格な会 計方法には大きな隔たりがある

結論として、ファッション業界の再生可能エネルギーへの取 り組みはまちまちであり、サプライチェーンの透明性や厳格 な会計方法には大きな隔たりがあります。年間でのマッチン グやRECから24/7マッチングへ、そしてより透明性があり有 意義な調達戦略へと移行することは、深い脱炭素化と長期 的な持続可能性目標の達成に不可欠といえます。

すでに概説したように、多くのファッション生産国は化石燃料 に依存しており、極めて重要なことは、これらの地域におけ る調達の選択肢は限られており、それぞれの国が独自の課 題を抱えていることです。例えば、バングラデシュではPPAを まだ利用することができません。ブランドは、生産国における 再生可能エネルギーへのアクセスを拡大するために必要な 政策変更を提唱するという、重要な役割を担っています。こ ちらについて、詳細はセクション5「公正な移行とアドボカシ ー」をご覧ください。

Killian Daly キリアン・ダリー EnergyTag 事務局長

隠れたデータが気候変動対策の進展を 遅らせる

気候科学者たちは、記録的な気温や異常気象が急速に気候 モデルを追い越していることに、ますます危機感を募らせて います。9つあるプラネタリー・バウンダリーのうち6つを突破 し、世界の気温上昇はすでに1.5°Cを超えていることから、最 も楽観的な予測でさえも超えてしまう恐れがあります。

なぜこのようなことが起きているのでしょうか。その理由のひ とつは、ほぼ自主的で規制のない排出量計算システムのせい であり、私たちが世界のカーボン・フットプリントの本当の規 模を知らないことにあります。

ファッション業界の排出量を推計しようとした試算はいくつ か存在しますが、主に不完全な繊維生産データに基づいて おり、その範囲は経済全体の1.8 %から4.6 %あるいは 8 〜 10 %でした。しかし、本レポートが示すように、ほぼ半数のブラ ンドはスコープ3の排出量すら開示していません。また、ファ ッション業界のトップダウン的な性質により、ファッションが 気候に与える影響についての理解度には大きな差がありま す。ファッション業界では、サプライチェーンの排出量に関す るデータは、欠陥のあるライフサイクル分析(LCA)研究から 引き出された二次的な平均値に基づいていることがほとん どですし、数値は販売地まで届いた製品のもので、キャンセ ルされたオーダーについての数値は全く把握されていませ ん。

SBTi目標を開示した117ブランドのうち42ブランドは、基準 年と比較してスコープ3排出量が増加したと報告しています。

さらに、24%のブランドは脱炭素化計画についてまったく何 も公表しておらず、ほとんどのブランドは、脱石炭や熱プロセ スの電化、再生可能エネルギーへの移行について取り組み を示していません。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が勧告しているよう に、最も壊滅的な気候への影響を緩和するためには、2030 年までにすべての分野の排出量を半減させる必要がありま すが、気候への影響は、ブランドのサプライチェーンにおける 地域社会や労働者がすでに経験しています。だからこそ私た ちは、ブランドが頼っている化石燃料企業と同様、気候変動 に無関心な主要ブランドを非難しなければなりません。

ほぼ自主的で規制のない排出量計算 システムにより、私たちは世界の カーボン・フットプリントの本当の 規模を知らない

問題の大部分そしてそれに対する解決策は、ゲームのルー ル、つまり排出量開示と脱炭素化計画に拘束力がないという 点にあります。会計の抜け穴や誤解を招く報告、腐敗した資 金調達、そしてカーボン・オフセットや再生可能エネルギー証 書といった偽りの解決策が、企業の持続可能性の状況を支配 しています。認証制度や多様な利害関係者によるイニシアテ ィブは、行動を起こさないことの隠れ蓑となっています。実行 と投資の代わりに、PRのための約束がなされているのです。

気候変動緩和という困難で費用のかかる取り組みに対して、 企業体が純粋な意志を持っていると錯覚しているわけではあ りませんが、気候科学が我々に訴えかける厳しい現実に対応 するためには、誠実さと透明性が不可欠です。

今年の報告書では、すべてのスコープで排出削減目標を設定 するブランドが増えているなど、具体的な進展の兆しを見る ことができるのは好ましいことです。期限付きの測定可能な 目標は、投資を促進し、説明責任を果たし、業界全体に変化 をもたらすために不可欠です。とはいえ、すでに非常に高い基 準値を超えて排出量が増え続けている現状では、こうした段 階的な改善を喜ぶことは難しいことです。

今後、ブランドは以下の3つの行動を優先してとる必要があ ります。第一に、1.5℃目標に沿った短期および長期の目標を 設定すること。第二に、再生可能エネルギーの調達計画を含 め、これらの目標を達成するための信頼できる戦略的ロード マップを策定すること。第三に、これらの目標を投資で支える ことによって、気候変動戦略をビジネス戦略に統合すること です。ブランドは、サプライヤーが脱炭素化を実現できるよう に実質的な支援とより公正な購買慣行を提供するべきであ り、最終的には、過剰生産と廃棄物を助長する短期的な利益 主導のファストファッション・ビジネスモデルに対処しなけれ ばなりません。企業は、これらの各ステップについて公表する ことから始めるべきです。

目にするすべての持続可能性の主張に対して、ひとつの根 本的な質問を投げかける必要があります。それは、この主張 は、排出量の削減や化石燃料の使用削減、再生可能エネル ギーの拡大などに実際に影響を与えるのだろうか?というこ とです。もしそうでないならば、地球に変化が生まれることは 絶対にありません。

ための資金 調達

アプローチ

本セクションの内容

このセクションでは、化石燃料から再生可能エネルギーへ、 ファッションの脱炭素化に向けた資金調達の取り組みの透 明性を測定します。はじめに、洪水や干ばつ、熱波など、事業 に財務的な影響を及ぼす気候関連リスクを特定し、対応す るためのブランドの取り組みについて取り上げます。気候変 動リスクが事業運営に与える実質的なコストをファッション ブランドが認識すれば、それに対して行動する可能性が高ま ります。そのため私たちは、財務的な視点を通じた気候変動 リスクの開示を求めています。

本調査では、ブランドのサプライチェーンにおける再生可能 エネルギーへの年間投資額に関する情報開示を測定し、ブ ランドが提供した支援の規模について詳細を調べます。ブラ ンドが開示する年間投資額には、サプライヤーの公正な移行 に必要な費用を賄うための資金調達や、持続可能性に関連 する融資、再生可能エネルギープロジェクトへの投資など、 サプライチェーンへの還元を支援するような費用が含まれる

可能性があります。こうした資金は、石炭を燃料とするボイラ ーを電気ボイラーに取り替えたり、工場の屋根にソーラーパ ネルを設置したりする費用として活用されます。多額の財政 投資がなければ、ファッションのサプライチェーンにおける化 石燃料から再生可能エネルギーへの移行は不可能です。

このセクションでは、インターナルカーボンプライシングにつ いても取り上げます。本質として、炭素価格とは、内部会計と 戦略計画の両方において炭素排出のコストを考慮すること により、ファッションブランドがより環境的かつ財務的に健全 な意思決定を行うことを可能にするものです。本調査では、 各ブランドが炭素に対する社内価格を開示しているかどう か、またその価格はいくらかについて調べています。例えば、 あるファッションブランドがCO2e1トン当たり50ドルの社内 炭素価格を設定していると開示したとき、この数字が意思決 定に利用されると考えられます。ブランドが調達先を決定す る際には、予想される排出のコストを計算に含めれば、CO2

排出量の少なくエネルギー効率の高い工場ほど社内の炭素 コストが低くなるため、そうした工場が経済的により望まし いといえます。

最後に、各ブランドがサプライチェーン全体の施設において、 どのようにエネルギー効率の高いソリューションに投資して いるかを見ていきます。例えば、建物の断熱性を向上させる ための投資や、エネルギー消費を削減するための効率的な 製造工程への投資などが該当します。また、計測や最適化、 故障した機器の修理なども含まれます。あわせて、Apparel Impact Institute (Aii) の Clean by Design プログラムや、 Partnership for Cleaner Textiles (PaCT) など、サプライチェー ン全体のエネルギー効率を向上させるプログラムへの参加 に関するブランドの開示も評価しています。

調査結果

脱炭素のための資金

事業に実質的な財務・戦 略上の影響を与える可能 性のあるリスクの詳細を 含め、気候関連のリスクを 特定し、評価し、対応する プロセスを開示している

再生可能エネルギーへの年間投資額を 開示している(研究開発への投資、設備 の購入、サプライヤーのグリーン移行に 必要な費用を賄うための資金調達の 支援、持続可能性に関連する融資、再 生可能エネルギーへの投資をはじめと するサプライチェーンへの還元など)

事業に実質的な財務・ 戦略上の影響を与え る可能性のあるリス クの詳細について、情 報提供を行っている

提供している支援の 規模について詳細を 開示している

社内の炭素価格とその金額を開示している サプライヤーレベルで、どのようにエネルギー 効率の高いソリューションに投資しているか を開示している(建物の断熱性を向上させる ための投資や、エネルギー消費を削減する ための効率的な製造工程への投資など)

汚染者負担:ブランドは排出に見合っ た資金を投入しなければならない 企業が行動しなければならない道徳的責務についてはさて おき、我々の調査結果では、大手ファッションブランドの大半 が、気候危機が自社の収益にどれほど大きな影響を及ぼす かを詳細に理解していることが明らかになりました。58%の ブランドは、自社の事業に実質的な財務・戦略上の影響を与 える気候関連リスクについて、どのように特定し、対応してい るかを開示しています。それをわずかに下回る55%のブラン ドは、洪水や干ばつ、熱波といった気候関連リスクの具体的 内容を公開しています。こうした気候による財務のリスクを理 解することは、温室効果ガス排出量の削減(緩和)や、気候ハ ザードを乗り越えられる回復力のあるサプライチェーンの発展 (適応)に向けて、ブランドが積極的に行動する上できわめて 重要なことです。

移行にかかるコストという点では、エネルギー効率化投資に よってエネルギーや排出量、コストを節約することができ、エ ネルギー料金の削減によって最終的には元が取れるという プラス面もあります。例えば、日本、中国、台湾の繊維サプラ イチェーンにおけるヒートポンプによる電化プロジェクトで は、エネルギーコストの削減を実現しています。しかし、ファ ッションの製造現場における化石燃料から再生可能エネル ギーへの初めの移行は、多額の先行投資を必要とするため、 予算面でより大きな考慮が必要となります。また、カーボン・ オフセットのような誤った、あるいは部分的な解決策よりも はるかにコストがかかります。繊維工場の石炭焚きボイラー ファッションの気候排出を引き起こし

ている主要ファッションブランドは、

再生可能エネルギーへの移行に最 大の経済的責任を負うべきである

を電気ボイラーに取り替えたり、工場の屋根にソーラーパネ ルを設置したりと、ファッションのサプライチェーンの脱炭素 化にはコストがかかることは明らかです。最大で、1 つの施設 (工場) に太陽光または風力再生可能エネルギーを導入する には、100 万ドルから 500 万ドルのコストがかかります。中程 度のレベルでは、ボイラーの交換やスマートメータリングな どのエネルギー効率改善に、1施設あたり50 万ドルから100 万 ドルかかります。ここで重要な問題は、誰がこれを負担する のか、ということです。

2050年までにネット・ゼロを達成するためには、ファッショ ンのサプライチェーンでの電力を今後30年のうちに再生可 能エネルギーに移行する必要がありますが、それにはサプ ライヤーに対して推定 1 兆ドルの財政支援が必要とされて います。これは、年間で約330億ドルに相当します。この資金 は、ファッション業界の温室効果ガス排出量を大幅に削減 し、ファッション製造における化石燃料の段階的廃止に大き く貢献するでしょう。

主要ファッションブランドに対し、 化石燃料からの公正な移行のため、 年間収益の少なくとも2%を 投資するよう求める

ファッションの気候排出を引き起こしている主要ファッション ブランドは、再生可能エネルギーへの移行に最大の経済的 責任を負うべきです。これは汚染者負担原則に沿った考えで あり、環境汚染のコストは、環境破壊の影響を結果として被 る人々ではなく、汚染を引き起こす人々によって負担される べきだというものです。そのためFASHION REVOLUTIONで は、大手ファッション企業に対し、排出量に見合った資金を

投入するよう呼びかけています。私たちは主要なファッション ブランドに対し、石炭などの化石燃料から風力や太陽光など の再生可能エネルギーへの公正な移行のために、年間収益 の少なくとも2%を投資し、クリーンな方法でファッションの サプライチェーンに電力を供給するよう求めています。

私たちはまた、ファッションによる気候排出から利益を得て いるその他の利害関係者にも、再生可能エネルギーへの移 行に貢献するよう求めています。簡単に言えば、ファッション 業界の排出によって利益を得ている人々にも、この移行に向 けて資金を負担する責任があるということです。ブレンデッ ド・ファイナンスと呼ばれる、他の利害関係者との協力や協 調融資は、再生可能エネルギーへの移行の中心にあります。 これらのステークホルダーには、インセンティブや補助金、支 援政策を提供できる地方政府や国政府、また、資金や技術支 援を提供できる世界銀行や国連などの国際機関、そして、投 資家、金融機関、慈善基金などが含まれます。またサプライヤ ー自身も、その支払い能力にあわせて、財政的に貢献する役 割があります。しかし、最も利益を上げている主要ファッショ ンブランドこそ、この移行に資金を提供する大きな責任を負 っています。

サプライヤーに必要なのは負債で はなく、ブランドからの資金である

主要ファッションブランドの94%が、サプライチェーンにおけ る再生可能エネルギーへの投資について何の情報も開示し ていないという事実は、ファッション業界において企業が責 任を逃れていることを示す、恐ろしく危険な告発です。気候危 機の規模と緊急性、そして気候危機の主要な推進力として のファッションの役割を考えると、この透明性の欠如は特に ひどいものです。地球上で最も汚染された産業のひとつを推 進することで莫大な利益を得ているファッションブランドに は、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を促進する ための資金を提供し、その行動について透明性を確保する 重大な責任があります。これらのファッションブランドは、(仮 にあったとしても)その投資について開示せず、説明責任を 逃れることで、環境悪化と気候不公正を永続化させている のです。

主要ファッションブランドのうち、サプライチェーンにおけ る再生可能エネルギーへの投資額を開示しているのはわ ずか6%です。また、提供した支援の規模を公表しているブ ランドはさらに少なく、わずか4%です。この6%のブランド は、Apparel Impact Institute(Aii)によるファッション気候 基金(Fashion Climate Fund)や、Fashion Pactによるフュ ーチャー・サプライヤー・イニシアティブのような、共同気候 基金への貢献をはじめとした取り組みを公開しています。一 般的にこうしたファンドは、ソーラーパネルのような高価なイ ンフラに投資するために、サプライヤーに有利な金利で融資 を行います。しかし、すでに薄利多売で経営しているサプライ ヤーは、借金ではなくブランド資金を必要としているのです。 ブランドの気候変動目標を達成するためにサプライヤーに 負債を負わせることは、公正な解決策とはいえません。

負債に基づく資金調達は、ファッションブランドとサプライヤ ー、およびその服を作る労働者との間の長年にわたる力の 不均衡を永続化させ、悪化させます。こうした不均衡は、貧 困賃金といったファッションのサプライチェーンにおける労 働者の権利に関する根強い問題の根幹をなしてきました。ま た、借金ではなく現金で事業を立ち上げてきたことに誇りを 持っている一部のサプライヤーには、借金をすることに文化 的・宗教的な抵抗感があるかもしれません。最安値を追求す るために底辺で競争することが常態化しているファッション ブランドにおいて、搾取的な購買慣行が蔓延していることを 考えれば、このような消極的な姿勢は理解できます。ブランド が購入を止めたり、サプライヤーが適正な利益を上げられな いほど価格を下げたりした場合、サプライヤーがローンを返 済する余裕がどうして生まれるでしょうか。

主要ファッションブランドの94% は、再生可能エネルギーへの投資 について情報を開示していない

ファッション業界における脱炭素化への緊急の必要性に速 度と規模で対処するため、私たちはファッション気候基金に おける助成金ベースの資金の拡大を提唱します。例えば、Aii ファッション気候基金は現在、技術支援やカーボン・ロードマ ップ作成など、初期の持続可能性イニシアティブに助成金や 補助金を提供しています。こうした補助金は、ソーラーパネル などの再生可能エネルギーのインフラ導入や、断熱性の向上 などのエネルギー効率の改善にも適用されるよう、拡大する べきです。

これを可能にするためFASHION REVOLUTIONは、サプライ

チェーンにおける再生可能エネルギーへの投資について現 在情報を開示していない94 %の主要ファッションブランドに 対して直接呼びかけを行い、この重要な転換に向けて貢献 するよう促しています。気候危機の規模と緊急性に対処する ためには、すべての主要ファッションブランド、特に現在沈黙 を守っているブランドによる協働と協力が不可欠なのです。

公正な気候基金を求めるサプライヤーが提唱する、公平性と 比例性の原則に沿ったこの資金拡大は、より持続可能な事 業への移行に必要なリソースをすべてのサプライヤーが利 用できることを保証するものです。サプライヤーのニーズに 基づいて、再生可能エネルギープロジェクトやエネルギー効 率の向上に補助金を出すことで、ブランドの気候変動目標を 達成するためにサプライヤーに負債を負わせることを避け、 ファッション業界の持続可能な未来に向けたより公正な道 筋を作ることができます。セクション5「公正な移行とアドボ カシー」で説明したように、サプライヤーに影響を与え得る気 候目標の策定において、サプライヤーにどのように意見を求 めたかということについて透明性が欠如していることを考え ると、これは特にあてはまります。

試験的プロジェクトではな

く、システムの変革:

脱炭素化のためのブランド投資は、一 部の形だけのサプライヤーにとどまら ず、早急に拡大されなければならない。

サプライヤーと十分な協議をすることなく、ファッションブラ ンドによってトップダウンで進められ、多くが孤立しています。

ファッション業界では短期的な利益が重視されすぎるこ とが、必要な脱炭素化のための資金調達を妨げていま す。Fashion for GoodとApparel Impact Institute (Aii)の調査 によると、ほとんどの衣料品メーカーは、12ヶ月を超える注 文量の見通しが立ちません。購入契約は短期的なものであ るため、銀行は、融資期間中も数量が維持されるという保証 を求めることが多く、サプライヤーレベルでの脱炭素プロジ ェクトに融資することを躊躇させます。サプライヤーが再生 可能エネルギーに移行するためには、不可欠なブランド資金 調達とともに、新たなインフラへの多額の投資を回収できる という確信を与える顧客ブランドからの長期的なコミットメ ントが必要なのです。

24%のブランドがサプライヤー・

レベルでのエネルギー効率の高い ソリューションへの投資を開示

衣料品のサプライチェーンにおけるエネルギー効率を改善 するための試験的プロジェクトは、何年も前から実施され、 記録されています。今年、24%のブランドが、エネルギー消費 を削減するために、建物の断熱性の向上、計測器の設置、故 障した設備の最適化と修理、より効率的な製造工程など、サ プライヤーレベルでのエネルギー効率向上ソリューションへ の投資を公表しています。これらの投資は、排出量の削減だ けでなく、エネルギー料金の削減を通じて長期的に回収され ます。施設レベルでのエネルギー使用量削減の努力は必要 であり、歓迎すべきことではありますが、現在の取り組みは、

このような漸進的な取り組みは、ファッションにおける再生 可能エネルギーへの移行に必要な規模と緊急性に合致して いません。さらに、ブランドは、こうした取り組みが少数の厳 選されたサプライヤーで実施されているのではなく、サプラ イベース全体に広がっているかのように、自社のウェブサイト やサステナビリティ・レポートでこうした取り組みを強調する ことがよくあります。これは誤解を招きやすく、ブランドのサプ ライチェーン全体で体系的に何が起こっているかを正確に表 していません。

サプライヤーレベルでのエネルギー効率の高いソリューシ ョンへの投資について透明性を確保している24%のブラ ンドのうち、多くは、AiiのClean by Design Programmeや Partnership for Cleaner Textiles(PaCT)のような、サプラ イチェーン全体のエネルギー効率を改善するためのプログラ ムへの参加を評価されています。我々は、これらの取り組み を歓迎しますが、これらのイニシアチブの実施とその結果に 関して、また、これらのイニシアチブへの参加に関してサプラ イヤーがどの程度広く協議を受けているかに関して、より透 明性を高める必要があると考えます。サプライヤーとの有意 義な協議は、これらの取り組みがサプライヤー施設のエネル ギー使用量を削減する最も効果的な方法であるかどうかを 判断するために極めて重要です。サプライヤーはそれぞれの 状況について貴重な専門知識を有しており、ブランドは最善 の解決策を特定するためにこの知識を活用すべきです。

炭素排出が財務コストとなる

社内に炭素価格を設定することでファッションブランドは、 社内会計と戦略的計画の両方において炭素排出のコストを 考慮することになり、それによって環境的にも財務的にも健 全な意思決定を行うことができるようになります。炭素価格 は、投資を行うか否かといったビジネス上の意思決定を正当 化したり、回避したりするために用いることができます。例え ば、あるファッションブランドがCO2 1トン当たり86ユーロの 社内に炭素価格を設定していることを公表し、その工場が化 石燃料に依存している場合、その工場から排出される炭素 に価格をつけることで、再生可能エネルギーに移行してカー ボン・フットプリントを削減し、炭素排出に関連するコストを 削減するインセンティブを与えることができます。

ファッションブランドの9%が

社内炭素価格を使用し公表

ファッションブランドの9%が社内の炭素価格を公表していま すが、その価格自体もブランドによって幅があります。業界全 体で炭素価格を標準化し、整合させる必要があります。通常、 各ブランドは CDPレポートのTCFD(Task Force on Climaterelated Financial Disclosures)のセクションで炭素価格を 開示しています。興味深いことに、このセクションにおいて、 ブランドは炭素を財務リスクとして特定しています。つまり、 カーボン・プライシングは、GHG排出量に対する直接的な財 務コストをブランドに課すことになります。したがって、カー ボン・フットプリントが高い事業は、企業にとって大きな財務 リスクとなるのです。社内炭素価格を採用しているブランド は、GHG排出削減を意思決定に組み込んでおり、全社的な 炭素排出に対する説明責任を促進しています。

「2030年までに50%削減、2050年までにネット・ゼロ というUNFCCCのFashion Charter (ファッション業 界気候行動憲章)の目標を達成するためには、基礎的 なベストプラクティスにとどまらない取り組みが必要で す。私たちは、プロセスレベルの脱炭素化活動と、再生 可能エネルギーへの迅速な移行に焦点を当てなければ なりません。この種のプロジェクトは投資回収期間が長 く、サプライヤーにとって実施リスクが高いものです。

[データによると]サプライチェーンや生産国における再生 可能エネルギーへの投資を開示しているブランドは6%。一

流ブランドがこのような行動をとることは、サプライヤーと の従来通りの関係からの脱却を示すものであり、素晴らしい

ことです。再生可能エネルギー、特に低炭素熱エネルギーへ の移行が、セクター別目標達成に大きく貢献することを考え ると、ブランドによるさらなる財政的コミットメントが必要 です。私たちは、科学的根拠に基づく目標を設定し、開示し ている47%のブランドすべてに、これを期待すべきです。」

Pauline Op de Beeck ポーリーン・オ・デ・ビーク

環境ポートフォリオ・リーダー, Apparel Impact Institute (Aii)

気候危機はあなたにどのよ うな影響を与えましたか?

私の名前はアチョル、国内避難民です。南スーダンのボル・ ジョングレイ州で生まれました。私は2度、家を追われまし た。最初は2013年、私の州で内戦が勃発したためです。その 後、故郷に戻りましたが、洪水で2度目の避難を余儀なくさ れました。

今年はとても暑く、子どもたちの学校は1カ月近く休校にな りました。この暑さは私たちに眼病をもたらしました。

2022年には洪水が多発し、ソルガム、トウモロコシ、豆類な どの農作物が壊滅的な被害を受けました。私の家族は家畜 を全て失い、牛も全て死に、家は半分水に浸かって倒壊し ました。水位が高くなった結果、娘は膝の病気になりました。

洪水から逃れるため、私たちは標高の高い小さな土地に引 っ越しました。しかし、そこでは作物を育てることはできず、 牛からはほとんどミルクが出ませんでした。子どもたちを養 うのが難しくなりました。

私たちは皆、小高い土地に住んでいました。耕作はできず、 牛からのミルクは非常に不足し、子どもたちに食事を与える のも大変でした。船もなかったので、別の場所に移動するの も大変でした。食料のような基本的な資源が不足していた ため、コミュニティでの争いがさらに増え、多くの若者が命 を落としました。

私はジュバに辿り着き、今はルーツでビーズをやっています。

他の親戚はウガンダのキャンプに、他の親戚はケニアのカク マ・キャンプにいます。

生活は大変です。

私たちは故郷のエチオピアが不安定なため、ゴロム難民 キャンプに住んでいます。私たちはビーズが大好きで、それ は私たちの一部です。このキャンプに住みながら、ルーツの ビーズ職人として働けることを嬉しく思っています。

故郷のエチオピアに私たちは農場があり、作物を育てるこ とができました。でも雨が降らなくなってしまいました。長 い間、十分な雨が降らず、年に一度しか作物を収穫するこ とができませんでした。

今は3、4年連続で干ばつに見舞われています。雨が降る と、作物が全滅するほどの大雨に見舞われることもあり ます。

私はエチオピアのガンベラ出身で、母国の政情不安のため 15年前に南スーダンに難民として来ました。子どもの頃か らビーズをやっていました。現在私はゴロム難民キャンプで ルーツのために働いていて、私のビーズの技術が収入源と なっています。

私の家族がガンベラにいたころは、一年中作物を植えてい ました。しかし、ここゴロム難民キャンプでは、気候のせいで 土が一年中肥えているわけではありません。種を蒔くまで何 ヶ月も待たなければなりません。ようやく雨が降ったので、 新鮮なトウモロコシが実っているのがわかります。

今は飢えと暑さに苦しんでいます。

どうやったら今年を終えることができるのかわかりません。

Achol
Hana and Abogo ハナとアボゴ
Hana (centre) Credit: UNHCR/ N. Abdulhak
Abogo
Credit: © UNHCR

気候危機の影響はジンバブエのコミュニティ全体に顕著に表 れていますが、その原因は依然として他の地域のコミュニティ に受け継がれています。この不公正は、職人が利用する天然資 源の減少や、国内に持ち込まれる衣料廃棄物の増加など、工 芸やファッションの分野でも経験することができます。クラフト、 アート、ファッションの各コミュニティでは、クリエイティブな方 法で、リパーパス、リユース、リサイクルしていますが、私たちの ゆっくりとしたプロセスでは、急速な消費主義に追いつくこと は難しいです。

Haleema Mekani ハリーマ・メカニ Fashion Revolution Zimbabwe

インドのローカルコミュニティの多くは、医療、教育、交通、生 計、食糧安全保障に関する大きな課題に直面しています。気 候危機は、彼らの社会経済的発展にとってさらなる障害とな っています。これらのコミュニティは、移動手段、土地利用、生 計戦略、制度的取り決めの調整を通じて、気候変動の影響に 適応してきました。ネットゼロの目標を達成するための努力 でさえ、意図せずしていくつかの問題を悪化させています。例 えば、水力発電所の開発は生物多様性に悪影響を及ぼし、 雇用を失わせ、住民を避難させています。

気候危機は、インドおよび世界中の工芸品の豊かな伝統と職 人の生活に大きな脅威をもたらしています。予測不可能な気 象パターン、極端な気温、不規則な降雨、熱波により、生産サイ クルが混乱し、綿、絹、天然染料など、伝統工芸に不可欠な天 然資源の入手可能性に影響を及ぼします。気候危機の最前線 にいる職人は、生活がこれらの天然資源に大きく依存している ため、不安定にならざるをえません。適切なタイミングで介入 しなければ、多くの伝統的な慣習が消滅する危険にさらされ ています。職人と彼らの重要な文化的遺産を保護するには、緊 急性をもった気候変動対策が必要です。

Shruti Singh シュルティ・シン Fashion Revolution India

極度の暑さ、砂漠化、ハブーブ(乾燥地域における強い砂嵐)、洪 水の影響は、スーダンの18州でますます深刻になっています。気候 危機は一般の人々、特に農業やエネルギー部門で働く人々に顕著 に表れています。

Akanksha Mary アカンシャ・メアリー

Fashion Revolution India

すでに気候の影響を受けやすいスーダンのこうした激しい環境変 化に加え、1年3か月続いている代理戦争により、何百万人もの民 間人が国内避難民になったり、避難所や安全を求めて近隣諸国 に逃げたりしています。そのため、国は戦争前と同じようには機能 しておらず、気候と紛争の両方により、すべての生産、製造、農業 活動が混乱に直面しています。サプライチェーン全体で大きな損 失とインフラの損害が見られ、住宅、農場、道路、市場、灌漑システ ム、貯蔵施設はすべて完全に破壊されるか、損傷して略奪されて います。

とても絶望を感じます。私は、ライフラインがない中で、親戚やコミ ュニティの命が危険にさらされていることを知り、常に恐怖を感じ ながら暮らしています。彼らは国内のさまざまな場所に避難しな ければならないだけでなく、電気がまったく通らない、または通ら ない時期に、暑さに苦しんでいます。また、きれいな水や水がまった く手に入らず、雨期に予想される洪水の脅威にさらされています。 そして何よりも恐ろしいのは、今年 9 月までに何百万人もの命が 脅かされると予測されている飢饉です。

Hadeel Osman ハディール・オスマン

Fashion Revolution Sudan

Hadeel
Shruti
Haleema
Akanksha

公正な移行 と権利保護

アプローチ このセクションの内容

このセクションでは、主要なファッション・ブランドや小売業 者が、クリーンで公正かつ公平なエネルギー転換を支援する ための取り組みについて、どれだけ透明性を持っているかを 様々な角度から見ていきます。

まず、公正な移行に明確にコミットするために、どのような ビジネス戦略を公表しているかに注目しました。私たちの評 価は、公正な移行政策に関して、Climate Action 100+、World Benchmarking Alliance、We Mean Business Coalition が 主張する内容に基づいて形成されました。また、国際労 働機関の公正な移行ガイドライン( International Labour Organization’s Just Transition Guidelines )も活用しました。

次に、大手ファッションブランドが、気候変動目標設定に関し てサプライヤーとどのように協議し、共創しているかについ て透明性があるかどうかを調査しました。また、サプライヤー が気候変動に適応するために、それぞれの地域の事情に配 慮しながら、どのような支援を行っているかも調べました。

最後に、気候変動戦略の影響を受ける労働者や地域コミュ ニティとの関わり方について、大手ブランドがどの程度透明 性を持っているかを調べました。これは、どのように解決策を 共創しているか、どのように雇用を維持し、リスクにさらされ る可能性のある労働者のスキルアップを図っているか、また、 気候変動による危険にさらされる可能性のある労働者への

補償をどのように行っているか、などの情報公開へとつなが っています。

ブランドが結社の自由や団体交渉の自由などの権利を保障 する取り組みをどの程度公表しているかについても評価し ました。

さらに、大手ファッションブランドが再生可能エネルギーへの 政治的支持とその結果の公開を通じて、再生可能エネルギ ーへのアクセスという意味においてサプライチェーンの変化 をどのように促進できるかを理解しようとしました。最後に、 再生可能エネルギーに移行するサプライヤーが、国家が強制 する高リスクの強制労働で作られたソーラーパネルを調達 しないことを保証するという公約をブランドが公開している かどうかも調べました。

Image: Fair Wear Foundation

公正な移行

調査結果

公正な移行

労働者、地域社会、その 他の利害関係者への 悪影響を特定、停止、防 止、緩和するための公 正な移行戦略を公約

気候変動戦略の影響 を特定し、現地での解 決策や緩和策を共同 で創出するために、ブ ランドが労働者、地域 コミュニティ、その他影 響を受けるステークホ ルダーとどのように関 わっているかを開示

サプライチェーンにお ける結社の自由、団結 権、団体交渉権に関す るブランドのコミットメ ントまたは方針を開示

雇用が危ぶまれるサプ ライチェーン労働者の 維持、再教育またはス キルアップに向けたブラ ンドの取り組みを開示

権利を尊重する技術

団体交渉協定の対象と なるサプライヤー施設 の数または割合を開示

再生可能エネルギーに 移行するサプライヤー が、国家による強制労働 のリスクの高い方法で 製造されたソーラーパ ネルを調達しないこと を保証するための公的 コミットメントを開示 1%

再生可能エネルギー推進

サプライチェーンにお ける過去および現在 の再生可能エネルギ ー推進の証拠を開示

気候危機の影響(損失 と損害)を受けた労働 者への金銭的補償や ブランドの脱炭素施策 の取り組みを開示

ブランドのサプライチェ ーンに影響を与える気 候目標を共同で作成す るためにサプライヤー と協議した方法を開示 ブランドがサプライチェ ーン全体のサプライヤ ーと連携し、地域の状況 に配慮した気候適応の ための解決策を共同で 創出する方法を開示

独立した、民主的に選 出された労働組合を有 するサプライヤー施設 の数または割合を開示

サプライチェーンにお ける過去および現在の 再生可能エネルギー推 進活動の成果を公開

分析 公正な移行

気候危機は、根本的に不平等の危機です。排出に最も貢献 していない地域社会が、気候変動の壊滅的な影響を最も受 けるのは極めて不公平です。これは、報告書の3 ページ目に ある序文でMalish (マリッシュ)によって明確に強調されてお り、また、86 ページの「気候危機はあなたにどのような影響 を与えましたか?」という質問に対する職人やその他の影響 を受けた利害関係者の回答でも強調されています。これらの 証言は、気候危機の最前線にいる地域社会が直面している 壊滅的な課題を伝えています。

「私のストーリーを共有することで、この レポートに掲載されている大手ファッシ ョンブランドを含む色々な人々が、より安 定した公正な世界のために行動を起こす よう刺激を受けることを願っています。」

Malish Godfrey マリッシュ・ゴッドフリー ROOTS of South Sudan

FASHION REVOLUTIONは、Malish (マリッシュ)および気候 災害に見舞われているすべての地域社会と連帯し、排出を 主に行っている組織に再生可能エネルギーへの公正な移行 に資金を提供するよう求めています。これには大手ファッショ ンブランドや小売業者が含まれます。

気候災害により生計を失う労働者が 増えているが、補償は受けられない。

International Labour Organization(ILO)は、2030年に は世界の総労働時間の2.2 %が高温により失われると予測し ています。これはフルタイム雇用 8000 万件に相当する生産性 の損失です。ファッションサプライチェーン諸国は、多くの場 合、気候危機の影響を最も受けやすい国々です。バングラデ シュ、インド、パキスタン、エチオピア、ブラジル、トルコの主要 生産拠点は、近年すでに熱波、モンスーン、干ばつなどの壊 滅的な気候災害に見舞われています。こうした災害は頻度と 激しさを増しており、衣料品の生産を混乱させ、何百万もの 損害をもたらす企業被害をもたらしています。例えば、パキス タンの綿花作物の45 %が2022 年に洪水で流されました。( 96 ページの地図を参照。)さらに懸念されるのは、気候被害を 引き起こす責任が最も少ない労働者に危険が及ぼす影響で す。労働者レベルで最も一般的な影響は、例えば工場の浸水 や熱中症などによる収入の減少で、こういったことが起こる と日々の生産目標の達成が困難になります。労働者とその 家族は、気候災害による病気や死亡に対して最も脆弱な人 々でもあるのです。

気候危機の影響を受けた労働者に 金銭的補償を行う取り組みを開示している ブランドは、わずか3%

取り組みを公表しているブランドとして は、boohoo、Decathlon、H&M、Jack & Jones、PrettyLittleThing、Primark、Vero Modaなどが挙 げられます。具体的な取り組み事例については、次ページの 表をご覧ください。

驚くべき調査結果は、気候危機の影響を受けた労働者への 金銭的補償の取り組みや、ブランドの脱炭素化戦略につい て開示しているブランドはわずか3%(250ブランド中7ブラン ド)だったことです。例えば、パキスタンの洪水の影響を受け た綿花農家への補償に関するブランドの開示は、信用に値し ます。この調査結果は、企業の気候変動戦略に沿って、よりよ い代替施設や工場に移った労働者にも当てはまります。ほと んどの衣料品生産国で社会保障制度が脆弱であることを考 えると、これは特に素晴らしいことです。衣料品労働者のほと んどは最低生活賃金をはるかに下回る貧困賃金で働いてお り、すでに借金を抱えています。カンボジアの調査では、労働 者の5人に4人が日々の生活費を賄うために借金をしていた ことがわかりました。補償制度がなければ、気候災害で収入 を失った労働者はさらに多額の借金を負い、経済的脆弱性 が高まる可能性が高く、就労貧困のサイクルが続くことにな ります。気候災害が業界と労働者の生活に定期的に影響を 及ぼしていることを考えると、サプライチェーンで最も利益を 上げている大手ファッションブランドには、率先して公正な補 償メカニズムを提供するという明確な責任があります。これ は正義の問題であり、慈善の問題ではありません。その緊急 性は、これらのブランドが、労働者が現在戦っている気候災 害を引き起こしている温室効果ガス排出量を増加させてい るという事実によって強調されています。

気候危機の影響を受けた労働者への 金銭的補償に関するブランド開示 H&M

Jack & Jones, Vero Moda (BESTSELLER)

boohoo/ PrettyLittleThing ブランド 開示内容

「2023年にトルコで発生した地震で被災された方々を支援するため、当 社は現物と現金で合計670万クローネを寄付し、H&Mのお客様からはさ らに200万クローネを寄付していただきました。」

「BESTSELLERの今年の新年の贈り物の一部として、パキスタン、カンボ ジア、バングラデシュなどの厳選された7つのプロジェクトに同僚を代表し て500万デンマーククローネを寄付します。」

「トルコ赤新月社(キズライ)に10万ポンドを寄付し、トルコの地震の被災 者を支援する活動を支援します。」

Primark

「Primark Sustainable Cotton Programme (プライマーク・サステナブ ル・コットン・プログラム)に参加しているパキスタンの農家は、2022年6月 の洪水により、農作物、家畜、家屋、地域インフラに被害を受けました。私 たちはCottonConnect (コットンコネクト)やREEDS(リーズ)と緊密に協力 し、被害状況を把握し、農家がどのような支援を必要としているか理解し ました。Primark Flood Relieft Project (プライマーク洪水救済プロジェク ト)が設立され、20か所の移動式医療・獣医キャンプの設置を支援するた めに14万ポンドが支給されました。これらのキャンプは、2,000人の人々と 3,000頭の家畜を支援しました。また、250世帯にヤギと鶏が贈られ、洪水 で被害を受けた130基の手押しポンプとコミュニティトイレが修理・再建さ れました。」

* 2023年のトルコ・シリア地震は気候危機が直接の原因ではありませんでした。しかし、その影響が大きいため、このレポートに含まれていま す。2023年2月6日に発生したこの地震は、55,000人の死者を出し、衣料品労働者のコミュニティに深刻な影響を与えました。Open Supply Hub を通じた透明性の高いデータにより、地震の発生場所が、その地域にある数千もの主にアパレル、繊維、履物、皮革の生産施設に影響を与えた ことが明らかになり、この地域から調達している大手ファッションブランドが救援と復興を支援する責任が浮き彫りになりました。

Image: Fair Wear Foundation

大手ファッション企業は、サプ ライチェーンの労働者を保護し たり、関与したりするための十 分な措置を講じていない。

異常気象により、ファッション業界では100 万人近くの雇用が 失われると推定されています。しかし、わたしたちのデータ は、大手ファッションブランドがサプライチェーンの労働者を、 失業やその他の気候災害から守るための十分な対策を講じ ていないことを示しています。

雇用が危ぶまれるサプライチェーンの労働者の雇用維持や スキルアップに向けた取り組みについて開示しているブラン ドはわずか4%です。また、気候変動による影響を受けるサプ ライチェーンの労働者やコミュニティとの関わりを開示して いるブランドは、ごく僅かであることがわかりました。気候変 動戦略の影響を特定し、現地での解決策や緩和策を共創す るために、労働者や地域コミュニティ、その他影響を受けるス テークホルダーとどのように関わっているかを開示している ブランドは、わずか6%でした。これは極めて低く、ファッショ ン界に何十年も存続してきたトップダウン的、植民地的な力 学を反映しているといえます。労働者やその他の影響を受け るステークホルダーの見識を取り入れることは、より効果的 で強固な気候変動戦略に反映させ、生きた経験を活用する 上で不可欠です。さらに、労働者やその他の影響を受ける人 々から賛同を得ることで、戦略がよりよく実施される可能性が あります。

気候危機に立ち向かうには、化石燃料を動力源とするシステ ムの抜本的な見直しが必要であり、それは労働者や地域社 会への影響なしには起こりえません。化石燃料産業で働く労 働者を保護する労働組合の文脈から生まれた「公正な移行」 の概念は、気候危機が脆弱な地域社会全般に及ぼす影響を 含むようになりました。それを受けてこの概念は、気候変動対 策にさらなる公平性と包括性を組み込む必要性を捉えるようになりま した。

今年のレポートで調査されたブランドのうち、公正な移行戦 略への取り組みを明らかにしているブランドはわずか 4%で す。公正な移行への公的な取り組みがなければ、ブランドが 移行プロセスでコミュニティに対する正義と尊重が考慮さ れているという保証はありません。大手ファッションブランド は、社会と環境の取り組みを別々に強調することがよくあり ますが、人々と地球の両方に包括的な影響を与えるには、こ れらの隔たりを埋め、相互に関連する全体としての行動に取 り組む必要があります。「公正な移行&提言」のセクション12 の指標全体での平均ブランドスコアはわずか8%でした。こ れは、大手ブランドが気候危機の社会的影響に取り組むた めに講じた措置について、労働者の権利全般に対する措置 ( 後者については後ほど取り上げます) よりも透明性が低いこ とを示しています。今後数年間で気候災害が激化すると予想 されており、労働者はますます危険で不確実な状況に直面し ています。ファッション業界は、大手ファッションブランドが責 任を怠ったパンデミックの過ちから学ぶ必要があります。大 量の注文キャンセルと値引き要求により、サプライヤーは賃 金を支払えなくなり、労働者にとっての人道的危機を引き起 こしました。 ファッション業界における根強い不平等は、サプライチェー ンの最下層にいる人々の貧困と不公正を永続させます。不 平等の拡大を防ぎ、不公正な移行によって労働者とサプライ ヤーにさらなるコストが転嫁されることを避けるために、緊 急に行動することが必要です。

ファッション業界に影響を与える主な気候災害

トルコ&シリア

2023

「マグニチュード7.8の地震により、トルコの11の州で53,000人以上*が死亡 し、300万人以上が避難しました。隣国シリアでは、最近の推定では、死者 数は5,000人から8,500人、避難者数は数万人とされています」

「2月の非公式統計では、輸出が1.8%減少しています」

「ファッション関連の サプライヤー 4,000社が被災地域に該当する可能性 があります」 モロッコ

2021

「モロッコの違法地下繊維工場が大雨で 浸水し、24人以上が死亡」

2024

「50万人以上が高台を求めて家を捨 て、147人の死亡が確認されました。さら に127人が行方不明となっています」

パキスタン

2022

「6月にモンスーンシーズンが始まって以 来、少なくとも1,136人が死亡しています。」

「公式には、国内の綿花作物の 45%以上 が洪水によって流されたとみなされていま す。」

「全国で26億ユーロ相当の綿花が豪雨に より破壊された可能性があります。」

モンゴル

2023-24

モンゴルでは、この冬、大雪のためヤギを含む200 万頭以上の動物 が死にました。

これはカシミア産業で働くヤギ飼育者の生計に壊滅的な影響を及 ぼしました。

バングラデシュ

2024

「200万人以上が洪水の被害を受けました。5月29日以降、洪水と土砂崩 れで少なくとも31人が亡くなりました。」

「地元メディアは、経済的損失は1,140万ドル以上と報じています。」

2024

「バングラデシュでは酷暑の影響により労働生産性で年間60億米ドルの 損失を被っています。」

カンボジア

2022

「豪雨によりシンド州の綿花の80%が被害を受け、 少なくとも1700人が死亡、

約150億ドルの損害をもたらしました。」

2020

79の縫製工場が洪水の被害を 受け、うち40工場が生産停止を 余儀なくされました。

分析

公正な移行

労働者にとっての公正な移行と はどのようなものなのか?

大手ファッションブランドが労働者にとっての公正な移行を 実現し、人権を侵害することなく気候の脆弱性に対処するた めの行動を起こすことは、今や極めて緊急の課題です。影響 を受ける利害関係者を支援するための公正な移行基金は他 のセクターで導入されており、困難に直面している衣料品労 働者に切望されている救済を提供できる可能性があります。 しかし、これは部分的な解決策にすぎません。

災害の頻度と激しさが増すと予測されることを考えると、散 発的かつ不定期の慈善寄付では、本当に必要なこと、つまり 労働者の組織的な回復力には不十分です。労働者のための 社会的保護制度がほとんどない生産国の状況において、労 働者のための公正な移行を可能にするブランドにとって最良 のメカニズムは具体的には、以下の通りです:

• 生活賃金の支払いを可能に ファッション業界における(最低基準としての)生活賃金 と制度的貧困賃金の廃止の根拠は広範かつ十分に文 書にされています。気候災害が衣料品の生産を混乱さ せる状況において、生活賃金は労働者が緊急時に備え て貯蓄できるようにすることで極度の貧困に陥るのを防 ぎます。

• 真の社会的対話

気候危機は、長い間必要とされていた構造的変化を起 こし、ついに労働者の声が真に聞かれるようにするため の機会であるべきです。労働者が自分たちに影響を与 える決定に関与し、解決策を共同で作成できるようにす るために、独立した民主的に選出された労働組合と協 議することが、災害に備えて労働者に気候耐性を身に つけさせる鍵となります。労働者が十分な交渉力を持 つことは、豊富な飲料水や効果的な冷却システムなど、 労働者が必要とするインフラやシステムを要求できるよ うにする鍵となります。この結果には、移行期間中に労

働者を保護する団体交渉協定、必須の社会保障制度の 実施、新しい技術に適応するための労働者のスキルアッ プなどが含まれる可能性があります。このような保護に は、労働者と共同で創出される状況固有の緩和策も含 まれるべきです。例えば、インドの労働組合である SEWA (Self Employed Women’s Association) は、衣料品産業 の在宅勤務者を含む女性労働者を組織する労働組合 だが、最近、組合員向けに熱波保険プログラムを立ち上 げました。さらに、気候危機の影響を受けた労働者に対 する対応的な支援には、必要に応じて移転の支援や、 気候関連の影響から生じる損失や損害の補償が含まれ る場合があります。

ブランドはサプライヤーを単なる ベンダーとしてではなく、パートナ ーとして扱い始める必要がある。

ブランドと小売業者は、ファッションのサプライチェーンにお いて間違いなく最も影響力のあるプレーヤーです。ほとんど の企業は自社製品を製造する工場を所有していません。この レポートの他の箇所で概説されているように、ファッション業 界の炭素排出量の96% は製造段階で発生します。デニム業 界のサプライヤーを代表するTransformers Foundation は、 排出量が集中していることは、ブランド側の直接的な責任の 欠如と相まって、ファッションにおける気候変動対策への責 任が共有されていないことを意味し、それは主にサプライヤ ーの問題としてアプローチされていると主張しています。同 団体は、ブランドがサプライチェーンの脱炭素化に取り組む 際、特に目標設定において、指示的でトップダウン的でない ことの必要性を強調した団体の一つです。

ブランドはサプライヤーと「パートナーシップ」を組んで取り 組んでいると口先だけで言うことが多いものの、私たちの調

査結果によると、自社のサプライチェーンに影響を与える気 候目標の設定においてサプライヤーとどのように協議したか を開示しているブランドはわずか3%でした。この指標は、温 室効果ガス排出量の削減(緩和)目標に特に焦点を当てて います。脱炭素化の作業に実際に取り組むのはサプライヤー のため、ブランドが目標についてサプライヤーと協議してい ないとしたら、それでは視野が狭いと言わざるをえません。 しかし、さらに懸念されるのは、ブランドが設定する目標がサ プライチェーンの現実に根ざしていないと、本当に達成可能 かどうか自信が持てないことです。さらに、サプライヤーから の賛同を得ることで、目標の実施が改善される可能性が高く なります。

サプライチェーンに影響を与える

気候目標の設定においてサプライヤー とどのように協議したかを開示している ブランドはわずか3%です

また、ブランドの 93% が、気候適応についてサプライヤーと連 携しているかどうか、つまり気候災害を回避するために衣料品 サプライチェーン全体で必要な保護に投資しているかどうかを 開示していないこともわかりました。例えば、本調査では自然 災害の増加(例:工場内の洪水防御)に対する施設の適応につ いて、ブランドがサプライヤーとどのように関わっているかにつ いての開示を求めています。ここでの透明性の欠如は、意思決 定と目標設定が、サプライヤーが求めているバランスの取れた パートナーシップではなく、ブランドのトップダウンで行われ続 けていることを示唆しています。

サプライヤーにとって、公正な移 行とはどのようなものなのか?

ブランドは、化石燃料を原動力とする産業から最も多くの利 益を得ているため、公正な移行に必要な資金を調達し、影響 を受ける労働者やその他の人々のウェルビーイングを確保 するための最大の責任を負っています。新技術の採用や気候 危機の影響の緩和に関して、サプライヤーが直面する最大の 負担は金銭的なものです。サプライヤーは、新技術の採用や 気候危機の影響緩和の際に、大きな財務的負担に直面しま す。利益率の低い企業は、特にブランドのコミットメントが不 確実な場合は、短期的な利益をもたらさない高額な投資を することに消極的になることが多いです。以前にもお伝えし たように、借金ではなく現金で事業を立ち上げてきたことに 誇りを持っている一部のサプライヤーには、借金をすること に文化的・宗教的な抵抗感があるかもしれません。この抵抗 感は、ファッションブランドの搾取的な購買慣行によってさら に悪化しており、ブランドが価格を下げすぎたり、購入をやめ たりすると、サプライヤーがローンを返済することが困難に なります。研修やスキルアップのプログラムは一般的であり、 サプライヤーにとって役立つ可能性がありますが、サプライ ヤーの主なニーズは、公正な移行を支援するためにブランド が共有または全額の財政投資を行うことであることは疑い の余地がありません。

サプライヤーにとっての公正な移行には、次のものを含める 必要があります:

• 太陽光パネルなどの再生可能エネルギーインフラへの 共同投資または全額投資。これは、気候変動の影響に 対応して労働条件を改善するためのインフラへの投資、 つまり湿式処理施設の熱レベルを管理するための空調 設備への投資にもあてはまります。

• 力関係の不均衡に対処する、持続可能性の目標に沿っ た支援的な購買慣行。サプライヤーが再生可能エネル ギーに投資し、衣料品労働者の生活賃金を確保するに は、ブランドからの公正なコスト設定と安定した長期的 コミットメントが必要です。サプライヤーはまた、気候災 害の影響を受けた場合の補償などの対応支援や、”cut and run” (カット・アンド・ラン = 危険やトラブルを避け るために急いで立ち去る)政策の廃止も必要としていま す。環境改善を行う際にサプライヤーが経済的損失を被 らないように移行支援を含む脱炭素化に関連する価格 高騰や損失を吸収することが、サプライヤーが変化を起 こすための鍵です。つまり、ブランドは農家を経済的に支 援し、農家がオーガニックコットンへの移行で損失を出 さないようにするのです

• 特に気候目標に関して、ブランドとサプライヤーの間で 真摯な協議と共同目標設定を行う。

結社の自由と団体交渉

結社の自由は、グリーン移行期 間中に労働者が集団的権利を主 張する力を与えます。ブランドは これを妨害するのではなく、積極 的に支援する必要があります。

結社の自由と団体交渉は、国際人権、International Labour Organizations (国際労働機関 - ILO)の条約、およ び多くの国内労働法に明記されています。これらの権利の実 現は、公正な賃金と良好な労働条件の実現において議論の 余地のない役割を果たしており、先に概説したように、気候 危機との闘いにおいて労働者のニーズが見過ごされないよ うにするために不可欠です。

過去7年間、Global Fashion Transparency Index(ファッシ ョン透明性インデックス)では、大手ブランドの大多数が結社 の自由への取り組みを開示していることが一貫して判明して います。通常、これは行動規範に記載されています。今年はブ ランドの 84% が結社の自由への取り組みを開示しており、こ れは昨年 (85%) と同レベルです。ブランドはこれらの権利を 広く支持していますが、これらのポリシーが実際に実行され ていることを示す証拠が著しく不足しています。たとえば、ブ ランドのサプライ チェーン内に独立した労働組合が存在する ことは、結社の自由への取り組みが成功裏に実施されている ことを示しています。しかし、独立した民主的に選出された労 働組合を持つサプライヤー施設の数を開示しているブランド は昨年の15% からわずかに増加し、19%となっています

結社の自由に関する政策が労働者に影響力を持っているこ とを示すもう1つの兆候は、労働組合と雇用主が交渉してよ り良い労働条件と賃金を実現する団体交渉協定が存在する ことです。ただし、団体交渉協定を結んでいるサプライヤーの 数または割合を公開しているブランドは、昨年の12%からわ ずかに増加し、14%です。

ブランド情報開示のこうした漸進的な改善は歓迎すべきこ とですが、それが広範囲に及ぶわけでも、本当に意味をも つほど迅速なわけでもありません。ブランドには、自社が

ブランドはこれらの権利を広く支 持しているが、これらのポリシー が実際に実行されていることを 示す証拠は著しく不足している

支持すると主張する独立労働者の代表との交渉が自社の サプライチェーン内で行われていることを確認する責任が あります。結社の自由に関する情報開示レベルの低さは、 ブランドが表明した約束に真摯に取り組んでいるという信 頼を裏付けるものではありません。Business and Human Rights Resource Centre (ビジネスと人権リソースセンタ ー - BHRRC)による最近の調査もこれを裏付けており、一部 のファッションブランドやサプライヤーは、ブランドの結社の 自由の要件を満たしているように見せるために、労働者委員 会や「イエロー」(非独立)組合などの「弱く偽りの」代表組織 を採用していることが判明しています。これは、ファッションサ プライチェーン全体で労働者の権利を制限し、低賃金を維持 する搾取モデルを永続させるため、有害です。BHRRCの調査 が私たちに思い出させるように、「独立労働組合は、代替組 織では得られない労働者の利益を実現する」ものです。ブラ ンドは、意味のある団体交渉を可能にする上で重要な役割 を果たすべきです。

すでに困難な状況にあるなか、生産国における民主的権利 の侵害は、戦争やパンデミックなどの地政学的課題と相ま って、労働者が労働条件や賃金について団体交渉を行う能 力をさらに制限しています。さらに、大手ファッションブランド の多くが、民主主義が脆弱な国々(そもそも民主主義国家で あるかどうかは別として)で主に生産を行っていることから、 結社の自由に関する書面上の約束は、ブランドの調達戦略 によってますます損なわれつつあります。こうした国では、労 働者が団結し、団体交渉し、より良い労働条件を確保する権 利は、極度に抑圧されています。バングラデシュ、ミャンマー、 トルコなどのファッション生産国は、International Trade Union Confederation (国際労働組合総連合 - ITUC)によっ て、労働者にとって最悪の国の一つに挙げられています。この 1年、トルコでは注目を集めた組合潰し事件が相次いでいま す。2023年にはバングラデシュで賃金抗議運動が国家当局 による残忍な弾圧を受け、労働者が疑わしい容疑で大量逮捕 され、数人の労働者が警察に殺害されました。このような危 険な背景がある中、結社の自由に対するブランドの無策は極 めて憂慮すべき事態です。

ブランドが労働者の声を確実に伝え、組合潰しのような問題 を是正する上で建設的な役割を果たすことができるという 証拠は十分にあります。業界が脱炭素化し、労働者の状況が 変化する中、労働者の強固な結社の自由が不可欠です。

暑いことがクールではなくなったとき –

緊急の行動要請

気候危機は未来の話ではなく、今起こっているということが、 ますます明らかになっています。ファストファッションが作られ ている多くの場所では、労働者がすでにその影響を感じてい ます。熱波は数週間続き、気温は45℃以上と命を脅かすほど の高温に達します。雨が降ると、これまで以上に激しく長時間 降り、地域全体が浸水します。ハリケーンや海面上昇は、低地 の沿岸地域にとって直接的な脅威です。

これらはすべて、衣料品労働者に直接影響を及ぼします。工 場の現場での熱中症は、病気、収入の喪失、怪我につながる 可能性があります。洪水により、工場が一時的に閉鎖され、 労働者は家にとどまり収入を失うことになります。同時に、 労働者自身の住居も被害を受けています。

これらすべては、今では十分に調査されています。しかし、ブ ランドによる「気候緩和」について聞くと、それは通常、ほんの 少し「環境に優しい」ように見せようとする、形ばかりの試み です。例えば、”やった、もう店頭にビニール袋はありません!” や”パイナップルの繊維で作られたスニーカーの実験的な生 産も行いました!”など。多少はダメージが少ないかもしれな い衣類が航空輸送されるケースが増えていることに、憤慨し ている人もいます。

企業が炭素排出量の削減や「グリーン」工場のパイロットプ ロジェクトに着手する一方で、労働者は依然として権利侵害 に直面しています。バングラデシュの「グリーン」工場では、依 然として労働者の権利侵害が横行し、地域社会が頼りにして いる川や畑を汚染し、適切な換気や冷却のポリシーが欠如し ています。

Clean Clothes Campaign

工場は適応する必要に迫られています。ブランドが安定した 資金や投資を提供しなければ、閉鎖されるでしょう。リスクが 低いとみなされる地域に生産が移行すると、労働者の収入 減少と貧困の新たな波が引き起こされます。新型コロナウィ ルス感染症のパンデミックが示したように、補償なしで労働 者が解雇されるケースが多く、そのコストは最も余裕のない 人々が負担することになります。

労働者が尊重され、評価され、

保護される方法に根本的な 変化が必要である

このレポートは、ブランドが公正な移行を実現するために何 をすべきかに焦点を当てており、ブランドを豊かにしてくれた 何百万人もの労働者を尊重しています。私たちはこの視点を おおいに歓迎しています。しかし、結果は暗い状況を示してい ます。平均して、96%以上のブランドが公正な移行戦略を開 示していません。

これは受け入れられません。

脱炭素化と循環型経済に関する派手な言葉や派手なフォー ラムは、根本的な変化が必要であることを隠すことはできま せん。それは、材料、リサイクル、修理についてもそうです。しか し、労働者が尊重され、評価され、保護される方法の根本的 な変化も必要です。

GIUSEPPE CIOFFO & PAUL ROELAND

再生可能 エネルギー推進

公正でクリーンなエネルギー転 換を支援する法律を推進するた めに、大きな影響力を行使して いるブランドはほとんどない。

特にバングラデシュのように、衣料品生産がGDPに占める割 合が大きい国では、この影響力は、衣料品生産国におけるク リーン・エネルギーへの移行を促進する機会となりますが、 大半のブランドは、この影響力を活用している証拠を開示し ていません。大手ブランドや小売業者の大半(87%)は、サプ ライチェーン内で過去または現在再生可能エネルギーを推 進している証拠を提示していません。ブランドの温室効果ガ ス排出の大部分はサプライチェーンで発生していることを考 えると、サプライチェーンにおける再生可能エネルギー推進 への欠如は特に残念なことです。この調査では一般的に再 生可能エネルギーへのアクセスが現状限られ、排出量の大 部分を占めるサプライチェーンでの推進活動に対してのみ ポイントが与えられました。推進活動の成果を公表している ブランドは少なく、わずか2%でした。このような透明性の欠 如は、生産地域における再生可能エネルギーへのアクセス 改善の進展を妨げています。政治的な働きかけは、業界団体 やマルチステークホルダーグループを通じて行われることも あります。例えば、国連の「気候変動対策のためのファッショ ン産業憲章」のようなもので、その活動には、再生可能エネ ルギー移行に対する政治的・技術的障壁についての理解を 深め、解決策を導き出すために、ブランド署名者、サプライヤ ー、政府指導者の間で二者間協議を行うことも含まれてい ます。

他のセクションで概説したように、多くの衣料品生産国は気 候危機の影響を日常生活で経験しており、気候災害は頻度 と強度を増しています。洪水によって綿花が全滅したり、適切 な換気システムがない工場がある地域で熱波が発生したり することで、ファッションのサプライチェーンはすでに混乱状 態に陥っています。衣料品労働者は、農作物の損失に対する 補償もなく、暑さによる失神の増加により生産性目標を達成

するのに苦労し、暴力にさえ直面するなど、こうした影響の 矢面に立たされています。

その緊急性は、衣料品生産国が脱炭素化、適応、気候危機の 緩和というトップダウンの圧力に直面していることによって、 さらに高まっています。直接的な電力購入契約(PPA)や、太 陽光発電や蓄電池のようなオンサイト再生可能エネルギー など、インパクトの大きい再生可能エネルギーによる電力ソ リューションを優先することは、化石燃料の使用を実際に削 減するために極めて重要です。この転換は、大気の質を改善 するだけでなく、製造拠点周辺の地域社会にも大きな利益 をもたらします。しかし、再生可能エネルギーへの移行は、製 造業の地域全体で依然として大きな課題となっています。

次のページでは、クリーンエネルギーへの移行を阻む政治 的障壁のいくつかを国ごとに簡単に概観し、主要なファッシ ョンブランドや小売業者がこれらの課題を克服するためにと っている行動を紹介します。重要なことは、推進・支持活動は しばしば非公開で行われ、その成果はほとんど開示されな いということです。FASHION REVOLUTIONはブランドに対 し、推進・支持活動について透明性を確保することでステー クホルダーからの信頼を醸成し、ブランドがどのように望む 変化に向けて積極的に取り組んでいるかを知らせるように 推奨しています。

バングラデシュ 前述したように、バングラデシュのGDPの約 11% はファッショ ン産業によるものですが、国のエネルギー消費のうち再生可 能エネルギーによるものはわずか0.36%にすぎません。政府 は、2041年までに再生可能エネルギー源を全エネルギーの 40 %まで引き上げるという目標を掲げているにもかかわら ず、この発展を妨げている経済的、技術的、政策的、人的能力 の障壁が数多く存在します。例えば、太陽光発電技術のコス ト高、インフラ、技術革新、人材の不足が、同国における再生 可能エネルギーの成長を妨げています。さらに、政策立案者 の間では、再生可能エネルギーは断続的であるため、その実 行可能性に疑問がある一方、従来型燃料への補助金が再生 可能エネルギー・プロジェクトを実現不可能なものにしてい ます。加えて、自然災害、過度の降雨、洪水、河岸浸食は、気 候災害がインフラにダメージを与え、発電効率を低下させ、 発電の一貫性を乱すため、太陽エネルギーの生産に大きな 困難をもたらします。バングラデシュの風力エネルギーの潜 在力は、沿岸部の一部を除いて比較的限られており、風力エ ネルギーによる大規模な発電は、十分な電力を生み出すの に十分な強さや安定した風速がないため、制限されたり、妨 げられたりしています。グリッド規模での生産もまた、風速不 足によって妨げられています。

H&MとBESTSELLER は、Global Fashion Agendaと共同で、同国初の洋上風力発電プロジェ クトを建設する予定です。承認されれば、2028年に建設が開 始され、年間約72万5000トンのCO2排出量が削減されます。

ベトナム

同様に、ベトナムでは GDPの16 %が繊維製品の輸出です。ベ トナムのエネルギーミックスは、石炭が主流となっています。 しかし、一部の大手ブランドや小売業者は、野心的な電力開 発計画VIII(PDP8)の策定を提唱しています。ベトナムにお ける支援の共同声明は、再生可能エネルギーへの民間部門 の投資を奨励する政策枠組みの必要性を強調し、ベトナム のクリーンで持続可能なエネルギー部門への移行を加速さ せることを目指しています。この計画の目標は、国の電力生 産量を倍増させ、化石燃料への依存を減らすことです。さら に、USAIDはベトナム低排出エネルギー計画(V-LEEP)を主 導しており、エネルギー計画を改善し、先進的なエネルギー システムの導入を拡大し、屋上太陽光発電などの再生可能 エネルギーへの民間投資を動員することで、ベトナムの移行 を支援することを目指しています。この調査に含まれるいく つかのブランドは、この分野での活動にて推進・支持活動ポ イントを獲得しています。

中国

世界最大の繊維輸出国である中国の繊維産業は、石炭と天 然ガスの発電所に大きく依存しています。そのため、再生可 能エネルギーの導入は、繊維産業を再生可能エネルギーに 移行させる上で極めて重要な役割を担っています。しかし、 中国での電力購入契約(Power Purchase Agreement)の 利用は一様ではありません。この調査に含まれるいくつかの ブランドは、中国で企業向けPPAを提唱していることを明ら かにしています。

インドネシア

インドネシアでは、透明性のあるブランド推進は、「相互の 願望に関する声明」によって例証されています:これは、 クリーンエネルギー投資団体(Clean Energy Investment Accelerator)によって組織されたものです。この活動は、本調 査に含まれるいくつかのブランドによって支持されています。 この声明は、再生可能エネルギーの推進を支持し、インドネ シア政府、金融セクター、その他のステークホルダーと協力 して、再生可能エネルギーの利用拡大を促進する政策的枠 組みを育成し、共通のエネルギー目標を達成する意思を表 明しています。

再生可能エネルギー推進 分析

世界のネット・ゼロ法規制が衣料品生産に与える影響 ネット・ゼロを達成するための世界的な法律は、衣料品生 産国や彼らが私たちの衣服をどのように生産しているかに ますます影響を与えるでしょう。例えば、EUの一般特恵関税 制度(GSP)は、人権や環境基準を遵守する国に関税を軽減 するものである。しかし、カーボン・ボーダー調整メカニズム (CBAM)は、炭素集約的な輸入品に課税することを目的とし ており、グローバルサウスの衣料品輸出業者には、コスト上 昇と経済的課題の負担を強いる可能性があります。

ブランドが利益を追求することで、 他の国から調達することは、クリーン エネルギーへのアクセスがあまりない 衣料品生産国での需要減と雇用喪失 につながるかもしれない。

衣料品の輸入にはまだ適用されていませんが、この政策は とても厳しいものとなる可能性があります。再生可能エネル ギーにアクセスできない国からEUに繊維製品や衣料品を輸 入することは、ブランドにとって割高になります。ブランドは利 益を追求するため、他の国からの調達を優先し(おそらく再 生可能エネルギーが利用できる陸上での生産に移行する)、 クリーンエネルギーへのアクセスがそれほどない衣料品生 産国での需要減と雇用喪失につながる可能性があります。 衣料品生産国における再生可能エネルギーの緊急の必要 性、輸出に対する罰則規定、労働組合や労働者に対する政府 の取り締まりを考えると、ブランドは公正で公平な移行を世 界の政策立案者に提唱しなければなりません。

製造業地域における地域社会におけるクリーン・エネルギ ー・アクセスの強化

国際エネルギー機関(IEA)の『世界のエネルギーの展望 (World Energy Outlook)』によると、世界人口の13%に当た る10億人が、主にアフリカと南アジアで電気を利用できない 生活を送っています。このようなアクセスの欠如は、暖房、照 明、必要不可欠な電化製品の電力不足を招き、健康、教育、 経済的機会に悪影響を及ぼします。信頼できるエネルギーへ のアクセスの欠如は、しばしば低所得世帯や農村部に不相 応な影響を与え、彼らの生活水準や全体的な生活の質を向 上させる力を制限しています。

直接的な電力購入契約(PPA)は、最も変革的なソリューショ ンですが、新興市場ではあまり利用できないオプションです。

使用の可能性にギャップがある場合、大手小売業者は、公正 でクリーンなエネルギー転換に不可欠な地域ベースの再生 可能エネルギー発電への投資を検討することができます。大 手企業による分散型エネルギー・クレジットへの投資は、ネッ ト・ゼロ目標にカウントされ、専門家は、分散型エネルギー・ クレジットの方が透明性が高く追跡可能であるためRECより もインパクトが大きいと考えています。

このアプローチの積極的な例は、他の業界にも存在しま す。PPAの取得が難しい韓国では、あるインターネット企業 がソーシャル・ベンチャーの60ハーツと提携し、京畿道(キョ ンギド)の再生可能エネルギーへのアクセスを促進するため に、化石燃料を使用して操業している可能性のある電力会 社の代わりに地元市民から太陽光エネルギーを購入した。

この方法は、京畿道(キョンギド)が再生可能エネルギー証 明書を提供することを意味した。韓国の官僚的なシステムを 回避し地域社会が民主的にクリーンエネルギーを利用する ことを可能にし、国の制限的な再生可能エネルギー政策を 克服しています。

インドでは、不安定な電力供給、高い電力料金、近代的技術 へのアクセス制限などが、農村部の縫製労働者に悪影響を 及ぼしています。これを克服するため、中央政府は近年イン ドにて分散型再生可能エネルギー(DRE)を促進する国家枠

組みを発表しました。DREは、屋上ソーラーパネル、マイクロ グリッドまたはミニグリッド、充電式バッテリーを作り、インド で手頃な価格で信頼できるクリーンなエネルギーサービス へのアクセスを増やすものです。

地域社会に利益をもたらし、

住宅の脱炭素化に貢献する

移行経路がある

ブランドが優先的に取り組むべき最も変革的な政策変更は PPAの実施ですが、韓国やインドで見られるソリューション のように、地域社会に利益をもたらし、住宅の脱炭素化に貢 献する移行経路もあります。PPAは、企業が化石燃料を燃や しながら再生可能エネルギー100%を謳うことを可能にす るかもしれないという懸念もあります。しかし、韓国やインド のプロジェクトのような分散型エネルギーは、電力購入契約 (PPA)が利用できない場所でのギャップを埋める役割を果 たすことができます。

権利尊重の テクノロジー

分析

権利尊重のテクノロジー

移行鉱物と「グリーン」テクノロジーの人的・環境的コスト 世界の排出削減目標を達成するためには、風力と太陽光を中 心とした再生可能エネルギーへの大規模な投資が不可欠で す。このような背景から、すでに前例のない移行鉱物の採掘需 要が高まっています。たとえば銅と銅合金です。銅は導電性が あるため、風力タービンやソーラーパネルなどの発電によく使 われます。たとえば風力タービンは、タービンから送電網に電 気を送るために銅を使い、ソーラーパネルは太陽電池の導電 層に銅を使います(電気を取り込んで送るため)。

銅の需要は過去20年間でほぼ倍増し、2019 年には 2000 万ト ンになりました。調査によると、2018年から2028年の間に風 力タービンを建設する場合、550万トンの銅が使用されると 予測されています。銅の採掘による影響の可能性は計り知れ ません。たとえば、西パプアにあるグラスバーグ銅・金鉱山で す。採掘によって、1日あたり最大28万トンと推定される廃棄 物が地元の河川水系に流れ込んでいます。これはほぼ半世 紀にわたって続いており、地元のアムングメ族との紛争を引き 起こしたり悪化させたりして、この地域の致命的な軍事化に つながっています。

国際エネルギー機関(IEA)は、2040年までにコバルト、リチウ ム、ニッケル、レアアース、銅などの重要鉱物を6倍以上採掘す る必要があると見積もっています。このことは、持続可能な金 属研究所(The Sustainable Metals Institute)が、世界的に確 認されている移行鉱物の埋蔵量の半分以上が、最後の土地の 管理者である先住民族の領土や農民コミュニティの近く、もし くはその領土に眠っていることを明らかにしている。重要なこ とは、先住民族の協議と自由意思に基づく事前のインフォー ムド・コンセントの権利は、国連宣言に組み込まれているとい うことです。

FASHION REVOLUTIONは、コンゴ民主共和国、フィリピン、 ザンビアをはじめとする世界各地で、移行鉱物のサプライチ ェーン内で人権侵害が広がっていることも認識しており、重 要な事案として、2015年12月12日のパリ協定採択から2022 年12月31日までの間に、少なくとも1,390 人の環境保護活動 家が殺害されていることです。

2015年12月12日のパリ協定採択 から2022年12月31日までの間に、 少なくとも1,390人の環境保護 活動家が殺害されている。

今回の調査ではソーラーパネルの組み立てに関連する人権 侵害にのみ焦点を当てているが、搾取がサプライチェーンの もっと初期、つまり採掘現場から始まっていることを認識する ことは極めて重要です。この初期段階の搾取が、システム全 体の土台を築くのです。したがって、公正なエネルギー転換を 実現するためには、採掘産業も根本的に変わる必要があり ます。エネルギー転換に不可欠な鉱物の採掘による人的・環 境的影響を最小限に抑えるためには、より強力な規制が不 可欠です。世界の指導者、政策立案者、そして採掘産業は、影 響を受ける国の地域社会で最も影響を受ける人々の声に耳 を傾けることが極めて重要です。

ファッション業界は、再生可能 エネルギーへの移行が人権を 犠牲にするものでないことを 保証しなければならない。

ファッション業界は、再生可能エネルギーへのシフトが人権 を犠牲にしたり、影響を受けるコミュニティを置き去りにした りすることのないようにしなければなりません。公正な移行 の本質は、再生可能エネルギーの採用など、気候変動危機 に早急に対処する一方で、この変化によって影響を受ける地 域社会に配慮し、支援することです。

衣料品製造は日当たりの良い気候で行われることが多く、特 に裁断・縫製工程はソーラーパネル用の十分な屋根スペー スがある平屋建ての専用建物で行われることが非常に多い です。しかし、太陽光発電への不可欠なシフトは、世界のソー ラー・グレードのポリシリコンの3分の1から2分の1を生産す る中国北西部のウイグル地域に大きく依存しているため、複 雑なものとなっています。同地域では、中国政府がウイグル 族をはじめとするトルコ系およびイスラム系住民を、前例の ない国家強制労働の対象としています。収容所や刑務所で の抑留労働、大量の非自発的労働移動など、推定100万人か ら180万人が強制労働にさらされています。国が強制する虐 待の性質上、ブランドがウイグル地域のあらゆる職場に強制 労働がないことを保証することは不可能です。さらに、同地 域の「グリーン」テクノロジー産業は、石炭ベースのエネルギ ーに大きく依存しており、同地域で生産されるソーラーパネ ルはさらに汚染されています。

私たちの調査によると、調査対象となった250ブランドのう ち、この問題について情報を開示しているのはOVSとユナイ テッド・カラーズ・オブ・ベネトンの2ブランドだけでした。私た ちは、再生可能エネルギーに移行するサプライヤーが、国家 強制労働のリスクの高いソーラーパネルを調達しないことを 保証する公的なコミットメントを求めます。ファッション業界 全体において、この問題に関する透明性が広く欠如している ことは、ブランド間の意識向上が急務であることを示してい ます。これらの犯罪の深刻さを考えるとブランドは責任を負 い、加担を避けることが不可欠です。現在、一部のブランドは 気づいていないかもしれませんが、私たちの目的は、この報 告書のような場を通じて、これらのリスクを主要なファッショ

ンブランドに直接表面化させることで、何もしないことの言 い訳をなくすことです。

ファッション業界の再生可能エネルギーへの移行は、深刻な 人権侵害によって促進される必要はありません。学術界や市 民社会から、この問題に関するブランドへの教育や指針を提 供する研究が増えています。また、Supply Traceのようなツー ルは、ウイグル地域における強制労働とアパレルのサプライ チェーンとの関連性を明らかにするのに役立っています。

ファッションのステークホルダーは、ソーラーパネル調達にま つわるリスクについて理解を深め、ウイグル地域強制労働撲 滅連合や反奴隷制インターナショナルのような専門家グルー プと協力して解決策に取り組む責任があります。太陽電池技 術の買い手としてのファッション業界の購買力を考えると、フ ァッションブランドとサプライヤ ーは商業的にも政治的にも 大きな影響力を持っています。ファッション業界にとって、特 にブランドが集団で行動すれば、政府や投資家にウイグル地 域からの事業売却や調達先の多様化を求める圧力をかける ことができる絶好の機会となります。そうすることで、太陽電 池技術への倫理的で安定した供給が保証されます。

「人々と地球にとって、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行 は急務であり、ソーラー産業はこの移行に不可欠です。しかし、この 重要な移行を、人権侵害の容認や加担の上に築くことは許されま せん。現在、ソーラーパネルの世界的な供給は、ウイグルの強制労 働に大きく依存しています。世界的な電力の巨大な買い手であり 使い手であるファッション・セクターは、真に公正で公平な移行を 促進するための重要なプレーヤーです。効果的な防止策がない場 合、このセクターは太陽光発電の調達を通じてウイグルの強制労 働から利益を得ることを助長してしまう危険があります。ファッショ ン業界は、自社製品におけるウイグル人強制労働の使用を防止す るために必要な対策と並行して、ソーラーパネルの調達に関する デューデリジェンスを早急に強化・実施しなければなりません。」

Chloe Cranston クロエ・クランストン テーマ別アドボカシー・プログラム責任者 Anti-Slavery International

脱炭素化への取り組みを実行に移す

次に何をする必要があるのか?

ファッション業界は脱炭素化を急ぐ必要があります。そのた めには、大手ファッションブランドがサプライチェーンにおけ る再生可能エネルギーへの移行に資金を提供し、特に製造 レベルにおける石炭の廃止に重点を置く必要があります。こ の移行を可能にするため、本報告書は主要ファッションブラ ンドに対し、クリーンな方法でファッションのサプライチェー ンに電力を供給するための公正な移行に、少なくとも年間売 上の2%を投資するよう求めます。

この移行には、大手ファッションブランドがサプライチェーン の脱炭素化に向けた投資と、その目標達成のために技術的・ 財政的にサプライヤーを支援するために行っていることにつ いて、より透明性を高めることが必要です。透明性は、ファッ ション業界の脱炭素化を推進し、説明責任を育み、信頼を築 き、ファッションの共有施設における協力を促し、規制への備 えを確保し、ステークホルダーの監視と活動を強化するため の強力なツールです。透明性を確保することで、ファッション ブランドはより効果的な二酸化炭素排出量の削減を目指し、 より持続可能な産業へ貢献することができるのです。

私たちは、バリューチェーン全体にわたって、公正でクリーン かつフェアな移行に投資する業界であってほしいと願ってい ます。透明性は、世界のファッション業界に変化をもたらすた めの不可欠な第一歩です。ブランドにより透明性を求めるこ とで、私たちはブランドに対し、脱炭素化への取り組みについ て説明責任を果たし、より良い取り組みを行うよう働きかけ ることができるのです。

大手ブランドや小売業者にとって 意味すること:

何よりもまず、年間売上高の2%を脱炭素化と公正 な移行への取り組みに投資すること

• より少ない製品生産と脱成長へコミットすること

• スコープ3の絶対排出量を削減するための確実で短期的な 目標にコミットすること

• サプライヤーやその他の影響を受けるステークホルダーと 共同で作成した目標と行動を含む、詳細な脱炭素化計画 を開示すること

• 2030年までにサプライチェーンにおける再生可能エネル ギー(風力・太陽光)100%を約束すること

• 加工施設の100%開示

• 再生可能エネルギーの生産と利用を可能にするため、衣 料品生産国および輸入国の政策立案者への提言

• 脱炭素化の専門家、労働組合やNGOなどの市民社会と協 力し、脱炭素化を実現するための知識や技術的スキルを 高めること

• 脱炭素化の目標達成に向け、経営幹部のインセンティブを 高めること

• 他のブランド、特にサプライヤーを共有するブランドと連 携し、共同で資金を提供し、協力して脱炭素化を推進する こと

市民ができること:

• この調査結果を、あなたの買い物の選択ではなく、むし ろあなたの活動に役立てること。大手ブランドの主張を 精査し、その責任を問うこと

• 大手ブランドや小売企業に対し、年間売上の少なくとも 2%を脱炭素化と公正な移行への取り組みに投資する よう求めること

• 大手ブランドおよび小売企業に対し、サプライヤーと協 力して脱炭素化の目標および行動を共同作成するよう 求めること

• 衣料品生産国と輸入国の政策立案者に対し、再生可能 エネルギーの生産と利用を推進するよう呼びかけること

政策立案者ができること:

投資家や株主ができること:

• 特に自主的な情報開示が少ない分野を考慮し、本報告書 の方法論と調査結果を、今後予定されている関連する透 明性要件の起草に反映させること

• 世界のファッション業界において、再生可能エネルギーへ のアクセスへ公正な移行を要求する、より強力な要件を 実施することにより、規制と政策を強化すること

• 再生可能エネルギー移行への政府投資を増加させ、更な る資金調達を可能にする支援法を制定すること

• サプライチェーン全体で再生可能エネルギーへの取り組 みを支援するため、大手ブランドや小売業者、国際的な投 資家と連携すること

• グローバルファッション業界に関連する環境問題への制 裁を含む、既存法の施行と制裁の強化

• バリューチェーン全体の財務リスクをより公平に配分す るためのインセンティブを創出すること

• ファッション産業における公正な再生可能エネルギー転 換の基盤である、より公正なブランド購買慣行と長期的 な調達コミットメントへのインセンティブを創出すること

• 本調査のデータやその他の信頼できるリソースを用い て、主要ブランドや小売業者を巻き込み、公正でクリーン なエネルギー転換へと誘導し、ブランドへの要求を強化 すること

• 特に、ブランドの資本配分を、再生可能エネルギ ーへの移行に年間収益の少なくとも2%を投資す るよう促すこと

• 1.5℃の脱炭素化目標達成に向けた取締役会レ ベルの説明責任を求め、役員報酬をカーボン・ネ ットゼロ目標達成に連動させることを要求する こと

• 取締役会に対し、グローバルなサプライチェーン における脱炭素化の複雑さや微妙な差異に関す る専門知識を持つことを要求すること

• ファッション・サプライチェーンにおける再生可能エネル ギーや脱炭素化プロジェクト、公正な移行への取り組み やイニシアティブに直接資金を提供し共同出資すること

• サプライチェーンにおける脱炭素化の取り組みに必要 な資金へのアクセスを阻害する市場障壁への対応と解 体、および(負債ベースではない)既存の資金調達メカ ニズムへのアクセスを拡大すること

• 脱炭素化に関するブランドの行動に焦点を当てた、ファ ッション・サプライチェーンにおけるリスク評価の実施 と対応

市民社会、ジャーナリスト、 学者ができること:

• 本データと調査結果を用いて、大手ブランドによる公的な 主張を精査・検証し、その責任を追及すること

• 特に自主的な情報開示が少ない分野を考慮し、関連す る今後の透明性要件について本報告書の方法論と調査 結果を参照すること

• サプライチェーンで発見された問題に対処し、将来それ を防止するために、他の利害関係者やブランド自身と協 力するためにこのデータを使用すること

• 大手ブランドや小売業者に対し、収益の少なくとも2% を再生可能エネルギーに投資することを約束し、主要な 衣料品生産国を含め、再生可能エネルギーの生産と利 用を促進する義務的な法律を推進するよう、共に呼びか けること

調査方法と調査範囲

ブランドと小売業者の 選び方 ブランド参加とは何を 意味するのか?

What Fuels Fashion?は、世界最大で最も影響力のある

250のファッションブランドと小売業者を、以下の基準に基づ いて評価し、ランク付けしています:

• 年間売上高 4億米ドル*以上

• 市場セグメント:ハイストリート、ラグジュアリー、スポー ツウェア、アクセサリー、フットウェア、デニムを含む

• 地域:ヨーロッパ、北米、南米、アジア、アフリカ アパレル業界の主要ブランドであるこれらの小売企業は、人 権や環境に多大な悪影響を及ぼしており、変革の推進に大 きな責任を負っています。最も裕福なオーナーやCEOを擁す るこれらのブランドは、ビジネスモデルの核となる人権や環 境慣行の改善を含め、透明性や気候変動への影響に対して 有意義な行動をとるためのリソースと道徳的要請を有して います。

ここでは、親会社名や支配グループ名ではなくブランド名を 記載しています。大きなグループに属するブランド(H&Mグル ープ、インディテックス、PVHなど)については、情報開示が異 なる場合を除き、スコアはグループ内の全ブランドを反映し ています。

今年は、調査対象ブランドと小売業者の48%がアンケートに 回答し、参加しました。

私たちは、参加・不参加にかかわらず、すべてのブランドを調 査の対象とし平等に扱っています。しかし、参加ブランドは、 私たちのリサーチャーが見落としたかもしれない関連開示 を強調したり、追加情報を提供することができるため、一般 的に高いスコアを獲得します。

FASHION REVOLUTIONは、毎年リサーチサイクルの開始 時に250ブランド全てに連絡を取り、方法論のアップデートを し、調査への協力を依頼します。

参加することで、ブランドは事前に記入したアンケートを見直 し、私たちが見落とした情報開示を記入し、リサーチャーか らの問い合わせに答えることになります。このプロセスによ りブランドは情報開示の方法を改善し、業界のベストプラク ティスに合わせることができます。その結果、参加ブランドは 通常、毎年高いスコアを獲得しています。

無回答

*注:非上場ブランドについては、売上高の推定は公開情報に基づいている。

ブランド一覧(アルファベット順)

Abercrombie & Fitch (Ambercrombie & Fitch) 

Adidas (Adidas AG) 

Aeropostale (Authentic Brands Group LLC)

AJIO (Reliance Retail)

ALDI Nord (ALDI Einkauf GmbH & Co. oHG)

ALDI SOUTH (ALDI Einkauf GmbH & Co. oHG)

ALDO (The Aldo Group Inc.) 

Amazon (Amazon.com, Inc.)

American Eagle 

ANTA

Anthropologie (URBN) 

Aritzia 

Armani (Giorgio Armani S.p.A)

Asda (George.) (TDR Capital) 

ASICS 

ASOS 

Balenciaga (Kering) 

Bally (JAB Holding Company) 

Banana Republic (Gap Inc.)

BCBGMAXAZRIA (Marquee Brands)

Beanpole (Samsung C&T)

Belle

Bershka (Inditex) 

Big W (Woolworths Group) 

Billabong (Boardriders)

Bloomingdale's (Macy's Inc.)

Bonprix (Otto Group) 

boohoo (Boohoo group plc) 

Bosideng

Bottega Veneta (Kering) 

Brooks Sports (Berkshire Hathaway) 

Brunello Cucinelli

Buckle

Burberry 

Burlington

C&A 

Calvin Klein (PVH) 

Calzedonia (Calzedonia Group) 

Canada Goose 

Carhartt

Carolina Herrera (Puig)

CAROLL (Vivarte)

Carrefour

Carter's (Carter's Inc) 

CELINE (LVMH)

celio

Champion (HanesBrands Inc.) 

Chanel

Chico's

Chloé (Richemont)

Clarks

COACH (Tapestry, Inc.) 

Columbia Sportswear 

Converse (Nike, Inc.) 

Cortefiel (Tendam) 

Costco

Cotton On (Cotton On Group)

Decathlon (Association Familiale Mulliez) 

Deichmann

Desigual

Dick's Sporting Goods

Diesel (OTB Group) 

Dillard's

Dior (LVMH)

Disney (The Walt Disney Company)

DKNY (G-III Apparel Group)

Dolce & Gabbana 

Dr. Martens (Permira) 

Dressmann (VARNER) 

DSW (Designer Brands)

Eddie Bauer (Authentic Brands Group LLC)

El Corte Inglés

Ermenegildo Zegna

Esprit 

Express

Fabletics

Falabella

Famous Footwear (Caleres)

Fanatics (Kynetic) 

Fashion Nova

Fendi (LVMH)

Fila

Foot Locker

Forever21

Foschini (TFG) 

Fossil (Fossil Group, Inc.) 

Free People (URBN) 

Fruit of the Loom (Fruit of the Loom) 

Furla

G-Star RAW 

Gap (Gap Inc.)

Gerry Weber

Gildan 

GU (Fast Retailing) 

Gucci (Kering) 

GUESS 

Gymshark 

H&M (H&M Group) 

Hanes (HanesBrands Inc.) 

Heilan Home

Helly Hansen (Canadian Tire Corporation) 

HEMA

Hermès 

Hollister Co. (Abercrombie & Fitch) 

Hudson's Bay (Hudson's Bay Company)

Hugo Boss 

Intimissimi (Calzedonia Group) 

Ito-Yokado (Seven & i Holdings Co)

Jack & Jones (BESTSELLER) 

Jack Wolfskin (Calloway Golf Company)

JD Sports 

Jil Sander (Onward Holdings) 

Jockey

Joe Fresh (Loblaw Companies Limited) 

John Lewis

Jordan (Nike, Inc.) 

K-Way

Kate Spade (Tapestry, Inc.) 

Kathmandu 

Kaufland 

Kiabi

KiK 

Kmart (Sear Holdings)

Kmart Australia (Westfarmers)

Kohl's

KOOVS

La Redoute (Galeries Lafayette Group)

Lacoste (Maus Frères) 

Lands' End 

LC Waikiki

Levi Strauss & Co 

Li-Ning

Lidl 

Lindex (Stockmann Group)

LL Bean

Longchamp

Louis Vuitton (LVMH)

lululemon 

Macy's (Macy's Inc.)

Mammut (Telemos Capital Limited) 

Mango 

Marc Jacobs (LVMH)

Marks & Spencer

Marni (OTB Group) 

Massimo Dutti (Inditex) 

Matalan

Max (Landmark Group)

Max Mara

Merrell (Wolverine World Wide, Inc.)

Metersbonwe

Mexx

Michael Kors (Capri Holdings) 

Miu Miu (Prada Group) 

Mizuno

Moncler

Monoprix (Groupe Casino)

Morrisons (Nutmeg)

MRP

Muji (Ryohin Keikaku Co.) 

New Balance 

New Look 

New Yorker

Next

Nike (Nike, Inc.) 

Nine West (Authentic Brands Group LLC)

Nordstrom 

Old Navy (Gap Inc.)

Otto (Otto Group)

OVS 

Paris (Cencosud) 

Patagonia 

Pepe Jeans

Pimkie

Prada (Prada Group) 

PrettyLittleThing (Boohoo group plc) 

Primark (Associated British Foods plc) 

Prisma (S Group)

Pull&Bear (Inditex) 

Puma 

Quiksilver (Boardriders)

Ralph Lauren 

Reebok (Authentic Brands Group LLC)

REI

Reliance Trends (Reliance Retail)

Reserved (LPP) 

REVOLVE

River Island 

Romwe (Shenzen Globalegrow E-Commerce Co., Ltd.)

Ross Dress for Less

Roxy (Boardriders)

Russell Athletic (Fruit of the Loom) 

s.Oliver 

Sainsbury's (Tu Clothing) 

SAINT LAURENT (Kering) 

Saks Fifth Avenue (Hudson's Bay Company)

Salvatore Ferragamo 

Sandro (SMCP) 

Savage X Fenty

Semir (Semir Group)

SHEIN 

Shimamura (Shimamura Co., Ltd.)

Skechers

Smart Bazaar

Speedo (Pentland Group)

Splash (Landmark Group)

Sports Direct (Frasers Group)

Steve Madden

Stradivarius (Inditex) 

Superdry 

Takko 

Target

Target Australia (Westfarmers)

Tchibo 

Ted Baker

Tesco (F&F Clothing) 

Tezenis (Calzedonia Group) 

The Children's Place

The North Face (VF Corporation) 

The Warehouse

Timberland (VF Corporation) 

TJ Maxx (TJX)

Tod's

Tom Ford

Tom Tailor 

Tommy Bahama (Oxford Industries, Inc.)

Tommy Hilfiger (PVH) 

TOPVALU COLLECTION (AEON)

Tory Burch

Triumph 

Truworths

UGG (Deckers Brands) 

Under Armour

Uniqlo (Fast Retailing) 

United Arrows 

United Colors of Benetton 

Urban Outfitters (URBN) 

Valentino 

Van Heusen (Authentic Brands Group LLC)

Vans (VF Corporation) 

Vero Moda (BESTSELLER) 

Versace (Capri Holdings) 

Very (The Very Group) 

Victoria's Secret (L Brands) 

Walmart (Walmart Inc.)

Woolworths South Africa (Woolworths Holdings Limited) 

Wrangler (Kontoor)

Youngor

Zalando 

Zara (Inditex) 

Zeeman

調査過程について

方法論諮問委員会 調査の限界

What Fuels Fashion? の方法論は、2017年に初めて作成さ れた”Global Fashion Transparency Index “の方法をベ ースにしています。含まれる指標のいくつかは、以前の年に 形成されたものです。

この方法論は2017年、業界の専門家や学術界、労働組合運 動、市民社会組織、社会的責任投資、ビジネスコンサルティ ング、ジャーナリズムなど様々なステークホルダーとの4ヶ月 にわたる協議プロセスを通じて設計されました。今年は、専 門家との協議のもと、方法論に大幅なアップデートを加えま した:

GRI、オープンデータ・スタンダード、国連指導原 則、SDGs、OECDデューデリジェンス・ガイドライン、GHGプロ トコル、関連ILO条約などの既存の国際基準やフレームワー ク、ACT、CHRB、Know The Chain、Transparency Pledge などのベンチマークや取り組みと可能な限り整合させるよう 努めています。また、オープンリサーチプラットフォームであ るWikirateとのパートナーシップを通じて、他のベンチマー クと共同で調査を行っています。

スコアの重み付けは、詳細できめ細かな情報公開を奨励す るように設計されています。その意図は、結果、成果、影響、そ して外部のステークホルダーがブランドの責任を問うために 利用できる最も実用的なデータに最も重点を置くことです。

• データは2024年5月15日現在のものです。ブランドはこ の日以降に情報を開示または撤回した可能性があり、 またエビデンスへのリンクが移動または機能しなくなっ た可能性があります。

• 2023年の方法論変更後、前年比に影響が出る可能性が あります。その点に留意して年次比較を行って下さい。

• 机上調査は人によるものであり、人為的ミスの可能性が あります。

• ブランドの主張の検証はこの調査の範囲を超えており、 ブランドの実践や影響がその主張にそぐわない場合に 責任を追及できるのは、現場の権利保有者や専門家の みです。

Andrew Glumac アンドリュー・グルマック, CDP

Edward Collins and Faye Holder エドワード・コリンズ、フェイ・ホルダー, Influence Map

Joseph Zacune ジョセフ・ザクネ , Consultant

Killian Daly キリアン・デイリー, Energy Tag

Kim van der Weerd キム・ファン・デル・ウィールト, Transformers Foundation

Kaarina Kolle カーリナ・コレ, European Climate Foundation

Paul Roeland ポール・ローランド, Clean Clothes Campaign

Rachel Kitchin レイチェル・キッチン, Stand.Earth

Ruth MacGilp ルース・マクギルプ, Action Speaks Louder

Silke Mooldijk シルケ・ムールダイク, New Climate Institute

私たちは、主要ブランドによる情報の公開に関して、この方法 論が包括的で確固としたものであると確信しています。私た ちの調査チームは、全250ブランドについて、可能な限り徹底 し、細心の注意を払い、客観的で一貫性のあるものとなるよ う最善を尽くしてきました。しかしながら、常に改善すること が可能であることを認識しており、皆様からの懸念やご意見 をお待ちしております。

transparency@fashionrevolution.org .

What Fuels Fashion? は、250ブランド、71の個 別指標をカバーし、17,750のデータポイントから 構成されています。完全な方法論をご希望の方 は、transparency@fashionrevolution.org までご連 絡ください。

調査結果の算出方法 スコア加重の振り分け

本レポートでは、すべてのスコアを小数点以下第2位まで計 算し、小数点以下を四捨五入しています。

各ブランドの合計得点を算出するために、5つのセクションの 得点を合計しています。いくつかのセクションは他のセクショ ンよりもポイントが高いため、各セクションのウェイトは異な ります:

1 説明責任:15/150の価値

2脱炭素化:60/150の価値

3 エネルギー調達:22.5/150の価値

4 脱炭素のための資金調達:22.5/150の価値

5 正当な移行と推進・支持:30/150の価値

本レポートでの値はすべて平均値を表します。

全250ブランドの総合平均スコアは、全ブランドの個別最終 スコアの平均を取ることで算出されます。スコアの前年比 の差は、変化率ではなく変化ポイントとして表記しています。 これは、特に明記されていない限り同様です。例えば、ある 年のスコアが30%で、翌年は45%だった場合、変化率50% (45/30=1.5)ではなく、15ポイント(45-30=15)上昇したこ とになります。

また、前回までは小数点以下を四捨五入していたが、今回は 小数点以下ではなく、四捨五入した数字で前年比を計算し ます。

例えば、あるセクションの平均点が17.74%であった場合、こ れを四捨五入して18%としている。前年度のレポートでは、 そのセクションの平均点が12.41%だった場合、レポートで は12%に切り捨てた。従って、前年との差は厳密には5.33% ポイントだが、四捨五入した数字で計算すると6%ポイント となる。

脱炭素化への 資金調達 公正な移行と 推進・支持 脱炭素化

附録

クレジット

What Fuels Fashion? は、2024年1月から7月にかけて、 リヴ・シンプリシアーノ、メイヴ・ガルヴィン、シアラ・バリー、デ ルフィーヌ・ウィリオ、イザベラ・ルグリオ、イサブル・マリー・ド ブルスによって調査・執筆された。レポートのデザインはモリ ー・ポルテウスが担当しました。

このプロジェクトを通して我々のチームを導いてくれたプロ ボノ協議委員会に最大限の感謝を捧げます。

本年、本報告書のために追加的な分析と視点を提供してく ださった専門家の方々に心から感謝いたします。

貴重な貢献をしてくれたマリッシュ、アチョル、ジャヒア、アボ ゴに感謝の意を表します。このコラボレーションを可能にして くれたRootsとMADE51のチームに感謝します。さらに、ハレ マ アカンシャ、シュルティにも感謝します、ハディールの力強 い証言に感謝します。

また、FASHION REVOLUTION CICのチーム全員、特にコミ ュニケーションとデザインにおいて素晴らしいサポートをして くれたローレン・リーズとモリー・ポルテウス、そして素晴らし いサポートをしてくれたメラニー・ヒューズにも感謝します。

What Fuels Fashion? 調査に参加してくださったブランド や小売店の代表者の皆様、ありがとうございました。皆様の 参加は必要不可欠であり、感謝しています。

What Fuels Fashion? は、ローデス財団、国際エネルギー 基金 (PIE)、タラ気候基金から資金提供を受けています。継 続的な支援に感謝いたします。

参照

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本レポートはFASHION REVOLUTION CIC(会社番 号:8988812)が所有し、FASHION REVOLUTION CICの政 策・研究チームのメーヴ・ガルビン、リブ・シンプリシアーノ、キ アラ・バリー、デルフィン・ウィリオット、イザベル・マリー・ドブ ルス、イザベラ・ルグリオによって執筆されました。

この調査は、FASHION REVOLUTIONの政策・研究マ ネージャーであるリブ・シンプリシアーノと、FASHION REVOLUTION CICの政策・研究チームであるキアラ・バリ ー、デルフィン・ウィリオット、イザベル・マリー・ドブルス、イザ ベラ・ルグリオが主導し、FASHION REVOLUTIONの政策デ ィレクターであるメーヴ・ガルビンがサポートしています。デ ザインはモリー・ポーテオスが担当しました。

Laudes財団、Pooled Fund for International Energy (PIE)、Tara Climate Foundationは、FASHION REVOLUTION CICに資金を提供し、このインデックスの 調査を実現しました。Laudes財団は独立した財団であ り、COFRAグループの事業や、Porticus、Good Energies Foundation、Argidius Foundationといった同族の他の民 間慈善活動とともに、ブレンニンクマイエル・ファミリー企業 の一部です。財団はグループから独立しており、C&Aを含む COFRAグループ企業を含む衣料品業界全体に影響を与える ために活動しています。

我々は、本レポートにおける、事実の公正な取り扱いと C&Aの評価に対する公平なアプローチを強調します。つま り、C&AとLaudes財団を別個の事業体として捉え、取り扱っ ていること、また、C&Aを、分析対象とした250のブランドの 中で他のブランドと同様に取り扱うこと、そして、ブラジルABC アソシアードスのテクニカルパートナーによるC&Aの本評価 および追加評価においてC&Aを優遇しないことです。

日本語版への翻訳は、ウィルコックス瑞穂、岸本由美子、後 藤七海、田原美穂、張 毓青、羽生田律子、原澤春菜、マルテ ィンメンド有加(FASHION REVOLUTION JAPAN)が担当し ました。日本語版へのデザイン調整は竹村伊央(FASHION REVOLUTION JAPAN)が行いました。

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© Fashion Revolution CIC 2024

2024年8月公開

2024年12月日本語版公開

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