緑のものさし、日常の場面

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緑のものさし、日常の場面 −人間・動植物の観察を通した都市のコモンズ・ラインの再考− 0. はじめに 境界と人間・動植物の往来  私たちはいつのまにか大地の変化を無意識の中に閉じ込 めてしまっている。大地は時として私たちの生活を脅かす こともあるが、一方で、大地の日常的な変化に意識的に目 を向けことで多くの発見や知恵を得ることができると考え ている。  私は、その大地の微細な変化に伴う「動植物のふるまい」 に興味がある。1年間のフィンランドでの生活を通して、 自然の厳しさと豊かさの両面を体感することが出来た。 自然の変化はあらゆる境界を横断する。  冬には、海や湖が凍る。大地は広がり、魚たちとの距離 が近くなる。春には氷の一部が解け始め、季節の変化を感 じ取った鳥たちが活動を始める。暖かくなるにつれ、虫た ちの活動は活発になり、それを狙った鳥たちの、草むらの 中で土を貪る姿を見かけるようになった。 我々は日常の物事に慣れすぎてしまっているので、それら が投げかけてくる問いを意識できずにいるが、そうした問 いかけに気づき、応答するにはどうすればよいのか。 ­ジョルジュペレック  日常の普段なら取るに足らない、人間と動植物の場面を 記述し、そんなまなざしが日常に隠れた問いを私たちに与 えることに期待した。  私の修士制作では、都市で生活する人間をはじめとした 動植物の観察を通して、「自然を介してラインを侵略してい くこともしくは侵略をゆるすこと」を作法とし、都市が生 み出した境界 = ラインを再考し、ラインに新たな役割を与 えていく。


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