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STATES 1991 年 東京に生まれる 2009 年 桐朋高校卒業 2010 年 武蔵野美術大学入学 ( 4 年次 高橋晶子研究室所属 ) 2015 年 同大学卒業

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ABOUT THIS PORTFOLIO

本書には五つの作品を収めている .

他にも様々な作品を設計してきた中で、今回抜粋した作品は互いに似通いがない様に掲載しているつもりであるが、 設計者はわたし一人なので、その全ては「わたし」というフィルターを濾過して読み手に伝搬されるというわけである . したがって、そこには少なからずの共通点が伏流している事が一つの事実として発生している事を挙げておく .

本書は三年次までに設計した作品のうちより選抜した四作品を第一部に、最終設計作品を第二部にと振り分けた . 第一、二部の冒頭には、建築に対する考え方を掲載する . それは自身のとっての「記録」としてでもあり、本書に収めた作 品それ自体が見事に私の建築観を語っていてくれているかどうか、その事に一抹の不安を覚えたためである .

二部構成という形をとったのは、最後に載せた作品がおよそ一年を掛けて設計したものであり、そうであるからして最も如 実に自分自身の建築に対する思考が出ていたことに起因する . また設計に並行して卒業研究として建築に関する研究を行っている . 作品に入る前には、前述の「記録」に加えて研究内容もともに掲載するものとしている .

右項には目次を示す .


TABLE OF CONTENTS

First pool

第一部

000-126

Far from the heart of city

渋谷から遠く離れて

010-032

Nobody just be in the forest

森に居ず

034-064

Window will whisper us

There are small space & contraposition

語 ル窓

猫の額と対偶

066-096

098-126


φ


第 一 部

第一部 | 000


■ 建築について (ⅰ)

私にとって建築とは、今の処「雲」の様な存在である . 実際に立ち上げることのできない、文字通り「絵に描いた

」の様なものを大学在学中に量産してきて、

そう思った . その中でとりあえず、「建築とは何か」を考えてみるとまさしく「雲」といって過言ではないのだ .

例えば設計の折、程よく空間のイメージがついて図面として清書すると、実は不都合なものだったと気付く . 掴んだつもりでいて、実は手中には何もおさまってなかったという次第で、建築というものの輪郭は不定形で 少し目を離すと、その

に何処かへ行ってしまう .

バウハウス※01 では建築は芸術の一環であるとされている .「芸術」には、数学や物理と違って正解が無い . 絶対的な解は誰にも出せないので、建築の良し悪しとは誰にも決められるものではないのだ .

バウハウス : ( ドイツ語 : Bauhaus ) 1919 年、ドイツ・ヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合的な教育を行った学校 . 現代美術に大きな影響を与えた . 建築は全ての芸術領域の中心に位置すると定義した . 建築 = 総合芸術と称す .

第一部 | 001


【 バウハウス 】

第一部 | 002


■ 建築について (ⅱ)

手強いものを相手にしてしまったなと思った . 正解が出ない問いとどうやって向き合えばいいのか、全くわからなかった . 何を指標にしていいのか見当がつかない . 最初のうちは、直感に訴えかける建築の実作品を模倣したりして、 作品を仕上げていたけれど、それがあまりいい事ではないのは当初から分かっていた . 後ろめたさが残るからだ . なるべく自分の頭の中から出た独自のイメージで設計をしなければ、と思う様になる . そのためには深く意識を集中させなければならない . 自分独自の設計という事は「今までに得てきた経験を空間として立ち上げる事」である . 出来上がるものがどうであれ、最終的に「後ろめたさ」を生まないために設計をする手段では、 自分にはこれしか無かった . それは今でもそうだと思う .

わたしがこのやり方で設計をするとき、意識の内の半分以上をその設計に持っていかなければならない . 感情を最も深いところまで沈めて、生活圏内における視野を最も狭くして目の前の設計に焦点をあてる . 丁度その時のわたしの状態は、ミレーの描いたオフィーリアの様な、蓮の池に浮かんだ様な感じである . あるいは既に水の中に沈んでいるのかもしれない…. 静寂だけが自分をつつむ .

綺麗な線が紙に載るまで、その様な状態で「筆載せ」を続く .

第一部 | 003


【 Ophelia by John Everett Millais (1852) 】

第一部 | 004


■ 建築について (ⅲ)

建築に正解はないと思っているけれど、主観に基づいた「特殊解」というのは存在すると思う . これは誰にでも備わっているはずだ . 在学中に設計してきた諸作の目的地は、( わたしにとっての ) 特殊解に他ならない . 何を以って ( 特殊 ) 解といえるのかは、主観に基づくからこそ「何となく」という前置きがあるのだが、 詰まる処「これ以外に考えが及ばない、最も納得のいく設計」というものである . その信憑性の薄くて、客観性をまとわない「何となく、これ以外に考えが及ばない、最も納得のいく設計」 のために、時間を削って机に向かう . おまけにいつも成果物というのは「紙に載ったインク」と、その設計物の「模型」に留まる . 模型というのは所

、「型を模したもの」であって実物ではない .1/100 や 1/50 くらいの縮尺で抑え込まれた

ミニチュアなのだから、完成したところで設計の良し悪しについて、その真相は闇に葬られる . 卑屈に捉えすぎてるかもしれないけれど、拭え様の無い事実であり、だからこそ儚いと思った .

第一部 | 005


【雲】

第一部 | 006


■ 建築について (ⅳ)

とはいえ、手を止める事はできなかった . 納得のいく線が引けたときの喜びは何にも勝っていたからだ . 睡魔に襲われながら意識朦朧の中、いい線が紙に落ちると一瞬にして目が覚める . それは急に空間のイメージが湧き出たときも同様である . 平面図が出来上がった時、前よりももっと喜びに充ち 心の中では「絵に描いた

れる . 模型が出来上がった時はまた更に感情が沸き立つ .

」と認識しておきながらも、完成系 ( 解 ) が良さそうなものだと分かった時に実感する感覚は

何にも代え難い . 実際に立ち上がって見なければ本当の良さはわからない事を知りながら、それでもあの 根拠なく全身の細胞が震え立つ瞬間を期待して、毎回、何枚もの紙に線を載せ続けた .

この目で見た、或いは掴んだ ( はず ) の雲は、必ず記録し続けなければならない . すぐに消えてしまい物的証拠は何も残らないが、解を出すために「筆載せ」だけは続けた . いつか、実物で建築を設計できたとしたら、竣工した時には一体どれだけの気持ちが押し寄せてくるのか、いつからか 気になりだした . その時のためにいろんな「雲」をみて、紙に線を載せ準備をしてきた . 私はすでに逃れられない一種の「呪い」にかけられているか、 あるいは主体的に建築に陶酔してしまっているのかもしれない .

本書に掲載した五つの習作は、建築の呪縛にかけられながら絵に描いた「

第一部 | 007

」である .


φ

第一部 | 008


φ

作品集成 | 009


渋谷から遠くはなれて Far from the heart of city

彼らは何かから逃げるようにして、雑木林に別の暮らしを求めた。

作品集成 | 010


■ 週末住宅

都心に住む三人家族の別荘の計画である . 敷地南西には太平洋が望め、敷地内に大きな桜の木があり、クヌギやコナラが植わる広い敷地となっている .

所謂「別荘」というのは、週末や長期休暇を使ってここへ訪れ、ゲストを招き、余暇を過ごす場である .

渋谷から遠く離れて | 011


自然の中 ... ここは小さなものの集積であふれかえる . 語彙に富んだ辞書のような所 .「彼ら」は自由だが、互いを尊重しあい調和している . 自然の摂理というのだろうか そして色彩は自由にここを散り舞う .

渋谷から遠く離れて | 012


■ 脱走

都心の中で日常を過ごす家族は逃げる様にして別荘を求めた . 窮屈な場所であり、喧噪で絶えない街の中が日常と化していた .

渋谷から遠くはなれて、房総半島に一時の拠り所をみつける . それは一種の脱走行為であった .

渋谷から遠く離れて | 013


都市の中 ... 鳴り止まない喧騒の海、孤独で不自由な世界だと感じる . 息が詰まる熱い空気に、色褪せた風景が心の中に記憶される .

渋谷から遠く離れて | 014


■ 匿う箱

渋谷から逃れ、そのことをより深く実感し、都心の住まいから取って代わる場を「舞台装置」として立ち上 げるのは「別荘」のあり方にとってこの上無い .

従来の建築 ( 日常の住まい ) というのは最小限に抑えられて、事無きを得ている様に思う . それは不器用に周 囲と同調し、意思を持たずにただ地の上で佇むことに言い換えられるが、建築としてその状況を見る時、そ のあり方には一抹の忍びなさを感じ得る . 敷地となる雑木林の中で、いつもと違うすこし異形を伴った建築は、潜在する非日常性を開花させる起爆剤 になり得る . 加えて、一つの対称性を伴って存在すること . 「舞台装置」としての建築がここへ逃れる家族を匿う .

渋谷から遠く離れて | 015


混色 ... 白の中に黒を混ぜたり、あるいは逆に黒の中に白を落とし込むと中間色が形成される . それはどちらにとっても異色である .

渋谷から遠く離れて | 016


■ 一対の主帆と両者をとり持つ遊路

哀れな家族のための「逃れ宿」は一対の匣とそれらの関係を調和させる遊路で構成される . 一対のうち、一つは無機質なイメージを想起させる直線的な volume. 縛られた直線的な形状によって立ち上げられる . 片割れは、木造で構成される有機的な volume. ふられる角度は自由に限りない . 両者は真逆の関係にあり、それでもなお背中合わせして無口に佇む .

また、この両者に対してひとつの中和剤が割って入る . 駐車場からはなれた場所に位置する一対までの間を遊路が立ち上がる . これは敷地の余白を「生きた余白」として機能させるための建築でもある . 広大な敷地は建築以外が大きい余白となる .「たてもの」を駒を差す様に置いただけでは造作がない . 宙に浮くプロムナードを支える壁は一続きである . エッジに差し掛かるところで屈折する . 景観に向かう視線を東西交互に分け、景色を捨象する

渋谷から遠く離れて | 017


coppies

city

organic

unorganic

naturally modeling

cubic

Jogress

Abstruct diagram

Wood model

RC model

Promenade model

渋谷から遠く離れて | 018


SITE PLAN S=1/500

所在 : 千葉 _ 南房総 _ 某雑木林 敷地面積 : 1440 ㎡ 建築用途 : 週末住宅 構造 : 一部 RC / 木造 延床面積 : 130,8 ㎡ 建築面積 : 201.1 ㎡

渋谷から遠く離れて | 019


PLAN S=1/100

A

: 玄関

B

: 浴室 / 脱衣所

C

: 居間 / 食堂

D

: バルコニー

E

: 渡り廊下と階段

F

: 居室 1 ( 寝室 )

G

: 居室 2 ( 談話室 )

H

: 居室 3 ( ピアノ室 )

I

: たたみ一畳分のバルコニー

I

01

F

Up

断面切

断線 0

2 Up

G

E

Dn

H D

C

B

A

Dn

Dn

渋谷から遠く離れて | 020


■ 断面

コンクリート部 : 必要以上に高く設けられた天井高は 3,000-4,300mm. 最下層にはピアノを演奏する空間を与える . 変哲も無い今の様な 階層を挟み、最上層には寝室を設けた間仕切り壁のあっておか しくない諸空間を一つの箱に閉じ込め、密室的なものとする . 都市を摸した、コンクリートという素材の屈強で冷徹な印象を さらに空間操作で助長させた .

木造部 : きまりきったものに囚われない自由な感覚が自然には宿る . そばに植わる木々に寄せる感情、あるいはそれらが魅せる変化 に対して、応答する様にこの棟の形は決まった . 屋根も片流れに広がりを見せ、立体的に変化を与える . なにものにも支配されない自由な感覚と、周囲の環境が包む空 気的感覚を室内に入れ込むための空間試行 .

渋谷から遠く離れて | 021


SECTION S=1/150

F

: 居室 1 ( 寝室 )

G

: 居室 2 ( 談話室 )

H

: 居室 3 ( ピアノ室 )

H

G

F

PERSPECTIVE SECTION S=1/150

A

: 玄関

B

: 浴室 / 脱衣所

C

: 居間 / 食堂

D

: バルコニー

A

B

C

D

渋谷から遠く離れて | 022


■ 主帆は混色する一対、遊路は中和する装置

駐車場から玄関までの距離を伸ばす . 車を降りてから、玄関の扉を開けるまでの間に最後の路を設ける . 二箇所で屈折した一枚壁によって支えられた道は、地面から人の背より少し高い位置にある . いま自分が、都心から逃げてきて、別荘へ駆け込もうとしていることを認識させるための逃走経路 . プロムナードを支える壁は左右に屈折している . 玄関へ着くまでに少なくとも 3 回、視線を交互に代えさ せらる .

あらゆるものを見なければならない . そうして、別荘の役割は全うされる .

渋谷から遠く離れて | 023


渋谷から遠く離れて | 024


り着いた先に迎えられて

逃れて、

りついた .

この建物へ避難しに道中を急いだ . 車を降りて、持っていた

を出して、

穴へ刺すまでにほんの少しの時間を奪う .

およそ 30m の遊歩道がそうさせるのだ .

日常から離れているという実感を伴わせる . 感覚が変化していることを認識させるかのように、最後の長い道は、辺りの木々と共に、家主 を歩かせた .

渋谷から遠く離れて | 025


渋谷から遠く離れて | 026


■ 木造

一面を開放した壁からの採光は穏やかな温もりをあたえ、素材の価値を高めようとする . 雑木林に包み込まれた空間 .

■ RC

無機質なコンクリートでできた箱 . 都市を象徴した空間は、天井高にゆとりをもち、そのありあまる高さは摩天楼を模す .

渋谷から遠く離れて | 027


渋谷から遠く離れて | 028


■ 廊下

一方には勝手口と屋外居室を結び、もう一方には木造平屋と RC の棟をつなぐ長い鉄砲廊下 . 二つの動線が相交る空間を、中和するようにハイサイドライトから中和するように光がおちる .

渋谷から遠く離れて | 029


渋谷から遠く離れて | 030


■ 風景を捨象した空間

ここには、たたみ一畳ほどの広さしか与えられない . 窮屈な様でそうでない . 切り取られた風景は、建築物と一体となって、目の前に現れる . 座り心地のよい椅子を置いて、その「空閑」で想いに耽る .

渋谷から遠く離れて | 031


渋谷から遠く離れて | 032


φ

作品集成 | 033


森に居ず Nobody just be in the forest

JR 青梅線 日向和田駅 - 無人駅の新築計画 広い敷地の小さな駅舎には 31 分に 1 本しか電車が来ない . 駅に同情した設計 .

作品集成 | 034


■ JR 青梅線 日向和田駅

日向和田は、都心から遠く離れた郊外に位置し、自然に恵まれた緑豊かな環境である . そこには人間だけではなく、多くの動植物が生息している . ダイヤは 31 分に一本の割合で動いている .

人知れず、駅は電車を待つ .

森に居ず | 035


車掌の一人としていない . この駅は絶えず 31 分間の沈黙を刻む .

多摩川を越える橋は川の音しか聴こえないくらい「静か」だ .

橋の先に「吉野梅郷」という絶景の場所がある . 年に一度、自然の壮大さがこの場所に美しい景色を約束をする .

森に居ず | 036


■ その駅は隣接する森に擬態する .

質素な現在 ( いま ) からの脱却を図るべく、森となって生まれ変わることを望む . だがそれは可能性という前提を欠いてる .

詰まる処、この事態は「なり得ない / なし得ない事案」を擬似化する行為であり、 また、その儚くも理想に限りなく近い状況を作り出す行為は、確実に現状を打破する . 今回に於ける「( 人工的な ) 森」を設計するというのは漸近的創造行為でる .

森に居ず | 037


【 The tower of babel by Pieter Bruegel ( 1563 ) 】 神に近づくため、実現不可能な天に届く塔を建設しようとして、崩壊の結末を遂げる .

森に居ず | 038


■ 森に非ず、しかれども「森」に在り

「人々が住む場所」と「植物で茂った森」に挟まれた敷地に人工的な森を設計する .

電車が走り始める前の姿を取り戻そうとして、設計は進む . 隣地の森が駅に浸食し、いま一度かつての面影を取り戻す . だがそこは駅という機能を果たしている . 最後まで森になり得ず、電車を乗り降りする人を迎える場として存在する .

森に居ず | 039


FOREST

STATION

TAMA RIVER

UME-ROMANCE

森に居ず | 040


■ 森の中

木の幹に見立てた柱を林立させる、その空間は曖昧性を以て存在する . その中は一人一人に因って空間が定義される . 空間は、まるでシャボン玉みたく泡立つ様に、生まれては音も無く消えてゆく . 森の中には常にはっきりとした空間が存在しない . 曖昧性を帯びた森の様な駅は、機能性、隔たり、空間数等が常に極度の柔軟性をま とって在り続ける .

森に居ず | 041


森に中心はない . 空間の定義は無に等しい。見方を変えれば限りのないものである . 空間の「間合い」を定義付けられないというのは、「待つ」という行為にふさわしく、なくてはならない存在かもしれない .

森に居ず | 042


■ MASTER PLAN

この場所の特性である自然

れた環境。そこに馴染ませるため、人工的な森を発生させる .

木材の柱で無作為に林立した空間 .

表面積を限りなく抑えた駅舎 . 風が躊躇なく吹き通る .

それは森の組成 ( 蘇生 ) 行為である .

森に居ず | 043


ROOF

PILLER / FOREST

STATION YARD PROMENADE

POWDER ROOM HINADAN / STEP

SLOOP

HIGH WAY

森に居ず | 044


■ 末路

駅はプラットフォームの形状上、縦長という絶対的条件がある . ゆるく屈折した門型のプロムナードを設け、改札から駐輪場の方に向かって新しい動線をひく .

駅という個性が生んだ造形である .

真の森には、この様な直線的な道はない . 戦闘機がひいた雲は揺るぐことがなく、尖って細い . 結局、戦闘機がひいた雲は戦闘機がひいた雲に過ぎず、駅舎は駅舎でしかなかった .

決して勘違いしてはならない、そこに居る者は皆、森に居ず .

森に居ず | 045


SITE PLAN S=1/250

A

: 大屋根下の休憩所

B

: ひな壇の広場

C

: 開けた広場

D

: 暗い広場

E

: 男 / 女 / 多目的トイレ

F

: 門の歩道

G

: 改札

H

: 発券機 / 精算口

I

: 屋内待合室

J

: 事務所

K

: 屋外待合室

L

: プラットフォーム

N

: 駐輪場

M

: 青梅街道

▼ 別添

図面詳細化 02

G.L+1400

L L ▼ 別添

図面詳細化 01

I

K

K

E

H

J

K

G N

F

F

G

D G.L+2560

C

A

C up

B E E

up

up

up

G.L±0 M

立面投影 箇所

10

20

50 SCALE BAR (m)

森に居ず | 046


PLAN 01 S=FREE

1

2

5

PLAN 02 S=FREE

SCALE BAR (m)

1

2

5 SCALE BAR (m)

RAIL LOAD

NATURAL

PLATFORM

POORLY FOREST

RAIL LOAD

CH=3700 GATE PLATFORM

PROMENADE OF THE GATE

CH=3700

WAITING GATE

POWDER ROOM

POORLY FOREST

OFFICE

TICKET

POORLY FOREST

PLAZA

CH=2700

PROMENADE OF THE GATE

PLAZA of “HINADAN” ( 320mm/step ) G.L±2560

G.L+2560

Dn Dn

Dn

OME HIGH WAY

G.L±0

Dn POWDER ROOM

ELEVATION S=1/250

▼ PF.L

森に居ず | 047

▼ G.L


SYSTEM SECTION S=1/50

杉板 ( 防水塗装 ) t=100mm

50

100

垂木 t=50mm

杉材 t=100mm t=60mm

3200

モルタル金ごて仕上げ t=20mm コンクリートスラブ t=200mm 100

捨てコンクリート t=50mm

60

2500

スタイロフォーム t=25mm 砕石 t=100mm 防湿シート

2000

G.L+2560

1

2

5 SCALE BAR (m)

森に居ず | 048


徒らに広い敷地の門状の道 - 導かれるようにして進む . 行く先に何か特別なものを設けたつもりはない、ここが森であるが所以 .

森に居ず | 049


森に居ず | 050


俯瞰すれば全体はよくわかる . それはまた、しつこくも森を象徴する .

森に居ず | 051


森に居ず | 052


皮を剥がれて骨格の残った様 ( さま ) は不思議と重量感を与える .

森に居ず | 053


森に居ず | 054


単純な構成の中に、複雑さはつきものである . 立ち尽くす柱の上に大屋根がそっと置かれている状況 . 斜陽は時とともに進み、プラットフォーム全体に写る線影はとめどない .

森に居ず | 055


森に居ず | 056


風が吹き抜ける . ひな壇の広場はそれをやさしく受け止める .

森に居ず | 057


森に居ず | 058


整然と並んでいた門が秩序を乱したのは、駅としての機能を欲してしまったからに過ぎない . 結局、人を電車に乗せる事を考えてしまった彼 ( 彼女 ) は森になることはできなかった .

森に居ず | 059


-no coment-

森に居ず | 060


31 分の沈黙を飲み込むのに十分な柱の数 .

森に居ず | 061


【 ひな壇の広場 】 320mm おきに一段ずつ上がっていく .

森に居ず | 062


人影の代わりに木々 ( 柱 ) がそれを補う .

森に居ず | 063


森の中にある箱 . 駅としての機能を果たすべく、事務室などが凝縮している . ここでの立ち位置はいうなれば森小屋の様なものである . 簡素であらなければならない . また、意思を主張してはならない . この小屋は副次的な存在であらねばならないのだ .

森に居ず | 064


φ

作品集成 | 065


語窓 “Window” will whisper us

住宅に刻まれた「場の記憶」を残す計画である . 開口部から射し込む「光の痕跡」を引用した建築の設計 .

作品集成 | 066


■ 老熟の建築

この建築には三つの時間がある . 各々に直接の関わりはない . - 住宅として使われた時間 - 建築を志した人で集い、互いの意思を通わせた時間 - 子ども達が無垢な心を藝術という媒体で表現してきた時間 そうした三者をつなぎ、いまとなっては老いぼれた建築である . 約半世紀という時間の中で、住宅、建築事務所、絵画教室という様々な用途を そこに住まう人を守ってきた . 実際のところ、いま見れるのは唯々経年変化に伴い老朽化した姿である . 草木に覆われ路地の一角でか細く息をしているに留まっている .

語 ル窓 ハ |

067

り、


【 既存家屋 】

語 ル窓 ハ |

068


■ 窓は行動を示し、定義づける .

Johannes Vermeer ( 1632 - 1675 ) 光の巨匠との異名をとった画家である . 右にある絵は【 窓辺で手紙を読む女 】

この絵は、開かれた窓のそばに立って手紙を読む横向きの金髪のオランダ人女性が描かれている . 内向きに開かれた窓には赤いカーテンが垂れかかり、窓ガラスの右下には女性の姿が映し出されている .

窓からさす光を頼りに手紙の文字に目を通す . 「窓辺」が「手紙を読む」という所作を従わせているのに他ならない .

語 ル窓 ハ |

069


【 窓辺で手紙を読む女 】

語 ル窓 ハ |

070


■ Corbusier + Vermeer

renovation ( rènəvé ʃən )    ; 刷新 / 修復

建築的な意味に於ける renovation とは一般に、構造体を残し非構造体を除外した上で新しく面を与える ことで、その建築を一新する事を意味する . これはコルビジェの提唱した Domino System に深く依拠している .

この概念にフェルメールの絵画にみられる特徴を代入する .

その背景には、以下二つの思考が伏流している . (ⅰ) 経年変化に伴った、見過ごすことのできない老朽化した既存家屋の現状 . (ⅱ) 空間性 ( 質 ) を大幅に変えた上でも場の記憶というものは残り得るという期待 .

永い年月を経て様々に転用され、また一方で周囲の環境も刻々と変わり続けていた . その中で、窓から落ちる光は唯一変わることがなかった「生存者」である . そのことは普遍的である . 気候や敷地、構造、その他あらゆる条件が変わろうと、建築に窓があるならば、そこから入射する光は、窓によっ て永久的に生存を許される .

語 ル窓 ハ |

071


Domino System : 構造体 + 非構造体

Vermeer System : 開口部 + 非開口部

【 Skelton + Infill 】

語 ル窓 ハ |

072


■ 仮装座標

開口の位置座標を実測、記録する . 敷地境界線の左下端点を xyz の 0 とし、グラフを仮装してプロトする . ( 単位 : mm / x1 / x2 , y , z , h )

語 ル窓 ハ |

073


a

b

c

d

e

f

g

h

i

j

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

a

b

c

d

e

f

g

h

i

j

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

y

c

a

e

g

i

:

n

:

position

a

:

b

:

9263 ,

9748 /

7905 , 2200 ,

243

c

:

7570 ,

8056 /

7905 , 2200 ,

243

d

:

8470 ,

9230 /

5557 , 2400 , 1680

e

:

6650 ,

7370 /

4807 , 2400 , 2560

f

:

6577 ,

5025 /

6845 , 2600 ,

g

:

6670 ,

9810 /

3287 , 2400 , 1120

h

:

5667 ,

1890 /

3610 , 4100 ,

i

:

2027 ,

1890 /

3610 , 3100 , 1900

j

:

2987 ,

4707 /

930 , 3100 , 1400

x

/ y

,

/

window status Depth , Wide , Hight , Angle

b

d f

spot

h j x

10422 , 10959 /

551 , 2200 ,

760 , -44

(°rad)

600

700

【 window glaf / 2F plan 】

【 angle A 】

【 angle B 】

a

b

c

d

e

f

g

h

i

j

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

a

b

c

d

e

f

g

h

i

j

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

y

D

C

:

n

:

position

A

:

9869 ,

8155 / 11108 , 6919 , 1400 , -44

B

:

6577 ,

7350 /

8058 ,

100 , 2100

C

:

4807 ,

5617 /

7300 ,

100 , 2100

D

:

3987 ,

4307 /

7300 , 1400 ,

600

E

:

5300 ,

7150 /

2027 , 1400 ,

600

F

:

3750 ,

5430 /

2027 , 1400 ,

600

G

:

980 ,

2700 /

2027 , 1400 ,

900

H

:

2987 ,

930

/

4807 ,

600 , 1900

I

:

9146 ,

9866 /

3205 ,

100 , 2100

J

:

9916 ,

9869 /

3235 , 1300 ,

x

,

/ y

/

window status Depth , Wide , Hight , Angle

B A

E

F J I

G

spot

H x

(°rad)

800

【 window glaf / 1F plan 】

【 angle C 】

【 angle D 】

語 ル窓 ハ |

074


■ 神保町の隠居

さて、骨組みとなり、鋲で止められた様にして「開口部」は遺った . この開口部 ( スケルトン ) に右記の噺を吹き込み、建築 ( インフィル ) を肉付けする .

語 ル窓 ハ |

075


神 保 町 で 本 屋 を 営 ん で い た あ る 夫 婦 が 、こ の 地 に 越 し て く る と い う 彼 ら は 長 年 営 ん で い た 本 屋 を た た み 、静 か な 世 田 谷 の 住 宅 地 の こ の 場 所 を 選 び 、慎 ま し や か な 生 活 を 贈 ろ う と し て い た け れ ど も 些 か の 未 練 が あ る よ う で 、新 居 で も 本 を 売 り つ つ 、余 生 を 過 ご す こ と と し た

か つ て の 木 造 か ら 強 固 な R C 造 へ と 変 わ っ た 新 築 の 家 の 中 に は 、階 下 か ら 屋 根 裏 へ 突 き 上 げ る よ う に し て 、た く さ ん の 本 棚 が 巡 る それは構造体のようで構造体になる必要のなかった本棚 そ の 中 に は 本 だ け で な く 、花 の 盆 、靴 、時 計 、食 器 な ど が お か れ る 、 間 を 埋 め る よ う に 、空 間 を 自 分 た ち で 賑 わ せ て い く 生 活 を 保 つ 上 で の 構 造 体 や 書 物 を 初 め 、様 々 な 装 飾 物 は 非 構 造 体 そ の も の で あ る

数 に し て 2 0 の 開 口 が 光 を 伴 い 、彼 ら に 無 言 に 語 り か け る 彼 ら も ま た 、行 為 を 伴 っ て 、無 意 識 に そ れ に 返 答 を す る そ し て 永 く は な い 余 生 、老 夫 婦 は 何 も わ か ら ず 過 ご す   開 口 が 残 し た 場 の 記 憶 が 自 分 た ち の 行 動 と 、そ の 前 生 活 者 を 繋 げ る 媒 体 を だ っ た こ と を

076

語 ル窓 ハ |


SITE PLAN S=FREE

所在 : 東京 _ 世田谷区 敷地面積 : 98.2 ㎡ 建築用途 : 住宅兼商業施設 ( 用途 _ 書店 ) 構造 : RC 延床面積 : 95.6 ㎡ 建築面積 : 63.2 ㎡

谷通

世田

大学

農業

東京 至_

語 ル窓 ハ |

077


至_

環状

7号

語 ル窓 ハ |

078


BASEMENT PLAN S=1/50

1F PLAN S=1/50

: 居室

G

: 玄関

B

: 食堂

H

: 居間

C

: 脱衣所 / 化粧室

I

: 一人分の居室

D

: 浴室

J

: 一段上がった居間

E

: 書店へ向かう廊下と階段

K

: 屋根裏の居室に向かう階段

F

: 居間へ向かう廊下と階段

L

: 物置

2055

1455

N

: 書店

M

: 食堂へ向かう階段

O

: 一人分の読書空間

敷地境界線▼

300

200

断面切断線 ( 変則 )

3630

200

A

断面切断線 ( 変則 )

7140

Up

G

200

A

E

400

F.L-2100

F.L-2100

100

950

断面切断線

1785

断面切断線

300

1840

G.L+100 F.L±0

400

F.L+200

Up

断面切断線

I

6465

F.L+900

H 600

F.L+400

7200

2680

300

Up

B

Dn

800

F.L-2300 Up

800

5415

300

200

K 200

100

C

F

1750

D

J

F.L+1000

F.L-1900

F.L+500

L F.L+200

Up

Up

1645

1800

2240

1455

200

F.L+200

800

敷地境界線▼

300

920

敷地境界線▲ 4780

語 ル窓 ハ |

079


P

: 屋根裏の居室

200

10520

断面切断線 ( 変則 )

2F PLAN S=1/50

敷地境界線▼

敷 地 境

100

280

界 200

720

O

断面切断線

5280

4840

断面切断線

F.L+600

200

P F.L+2400

440

7200

Up

6110

N G.L+100 F.L±0 715

Dn

M Dn

断面切断線

100

735

1535

1805

1090

敷地境界線▼

敷地境界線▼

Dn

200

4785 1665

750 5535

語 ル窓 ハ |

080


DETAIL SECTION S=1/40

水勾配 1 : 80

屋根 : モルタル t=30mm 断熱材:ポリエチレンフォームt=35mm 水性プライマー 塗膜系防水 330

roof level +4600

屋根裏部屋

居間

G.L. level

床: フローリング t=15mm 床暖パネル t=12mm 下地合板 t=12mm グラスウール 敷き込み 根太 45 45mm デッキプレート t=50mm

水勾配 1 : 80

220

1F level +300

1800

玄関

2080

1900

220

loft level +2400

4730

2000

天井: モルタル補修の上 セラミック粉混入水性塗料仕上げ

0

2500

天井: PB t=9.5mm AEP しっくいペイント Ag+

Basement level -2300

01 a

4730

食堂

床: フローリング =15mm コンクリート =55mm パーティクルボード t=20mm 剛製束 コンクリートスラブ直押さえt=300mm

360

個室

G.L.下: ポリエチレンフィルム t=0.2mm 捨てコンクリート t=60mm 砕石 t=60mm

語 ル窓 ハ |

081


SECTION S=1/50

: 書店

B

: 住居へつながる階段

C

: 屋根裏の居室

D

: 物置

E

: 廊下

F

: 居間

G

: 窓型の個室

H

: 食堂

200

A

200

2000

C

200

800

4700

200

220

3400

200

3900

100

2350

1320

B

D

F

G

1120

1900

6300

350 300

100

100

600

5150

100

100

490

1885

950

620

2950

A

E

2800

H 100

D

2560

2100

2200

220

220

▼ G.L 0

490

語窓 | 013

3450

1550

5500

733

語 ル窓 ハ |

082


語 ル窓 ハ |

083


語 ル窓 ハ |

084


語 ル窓 ハ |

085


語 ル窓 ハ |

086


語 ル窓 ハ |

087


語 ル窓 ハ |

088


語 ル窓 ハ |

089


語 ル窓 ハ |

090


語 ル窓 ハ |

091


語 ル窓 ハ |

092


語 ル窓 ハ |

093


語 ル窓 ハ |

094


語 ル窓 ハ |

095


語 ル窓 ハ |

096


φ

作品集成 | 097


猫の額と対偶 There are a small space and contraposition

グラフィックと建築の可能性について考察、建築の設計 .

作品集成 | 098


■ 設計の諸事 (ⅰ)

設計に要した日数は 10 日と無かった . 敷地や、プログラムを決定する 0 の段階から、完成までの間いろいろなことを考えた . 反芻すれば、この設計については言葉遊びにすぎなかった . どこか曲解の様なものになった様な気がする . よもや、大きな期待を抱いて建築したわけではない . けれどもほんの淡い期待があることをここに白状する .

右項には、課題の概要から、結果的な設計の過程、及び概要の導入部分を記す .

猫の額と対偶 | 099


課題内容

建築とグラフィックについて考える その際成果物は建築設計に依拠せず、何物でも構わないもの と す る .

TIME TABLE 構想

模型

設計

図面

調整

1 日目 / 課題内容発表

2 日目

3 日目

4 日目

5 日目

6 日目

7 日目

8 日目

9 日目

最終日 / プレゼン前日

設 計 概 要 の 初 期 状況  建築に辟易する時がある . 気分転換に街を歩くと、ここ 東 京 に 至 っ て は 視 界 に は 必 ず 建 築 物 が 入 る . その時、「成る 程、逃れられない一種の呪縛があるのだな 」 と 気 づ か さ れ た . けれども、目を閉じるわけにはいかないので、自分の目に 映 る 「 建 築 の 表 層 」 を と り あ え ず 受 け 入 れ る と 、 実際のところ素直な建築は数が少ない . 本来、建築物がそれ 自 体 で 存 在 す る の に 必 要 の な い 物 が 表 を 覆 っ て いるのだ . なんて

怠な風景なのか . まるでそこには実態 が 無 い . あ る い は 意 思 を 持 た な い 建 築 が あ り 、

同様に、個性もない . グラフィックという課題の解答になり、且つ ( 上述の違和感 ) 矛 を

に収めるための設計に指針を定める .

猫の額と対偶 | 100


■ 設計の諸事 (ⅱ)

もう一つ、違和感を持っていた . 男性が女性の買い荷を背負い街を歩いてる姿はもう過去の遺物となってしまったのかということ . 私たちは表から出ず、部屋に篭ってほとんどのことを済ませられるようになった . この状況は大いにうらぶれるべき自体である . 「目的の為に ( 何処かへ ) 足を運ぶ」=「手間が掛かる」=「無意味」というレッテルを貼ることは できない . 何故ならば、そこに何か一つの発見や出会いがあったからである . この事 ( 不満 ) を、香辛料の様な素材として、今回の設計に充てる . 二本の矛で切り込みをいれる .

猫の額と対偶 | 101


設計計画

計画地 : 東京都 武蔵野市吉祥寺本町三丁目 . 建築用途 : 複合 施設 ( 教会 / 花屋 ) .

T I M E T A B L E ( 結果的進 構想

模型

状況を示す ) 設計

図面

調整

吉祥寺の街をあるく

夜分、再び街に出る

用途と敷地の決定

デザインの創作

同上 / 作図

作図

同上

最終調整ののち、模型制作の準備

模型制作 / 図面修正

最終調整

設計概要のその後

左記に述べたもう一つの違和感 ( 矛 ) 相まって、建築の用 途 は き ま っ た .  教会と花屋である . 次項にて論ずる .

猫の額と対偶 | 102


■ 対偶

「装飾性がある建築」というのを、それ自体で全てを語れる ( 自律した ) ものをいうのだとすれば、「装飾性 がない建築」というのを、それ自体では存在できず、何か他のものによってあり方を補われた ( あるいは他 律した ) ものと云い表わせる .

- 教会というものは、それ自体に力がある . 教会として生まれた瞬間から、そこには特殊な力が備わる . 目 には見えない感覚的な部分に訴えかける . 静寂さがそうするのかもしれない . - 花屋は、店に並んだ花々が建築をお膳立てする . 視覚、もしくは嗅覚に訴えかけ、そこに一度として同じファ サードはない .

命題として「装飾性がある建築が、自律した建築である」を作り上げれば、それは教会を示し、 その対偶にあるものを花屋とそれぞれ置き換えられる . 二つプログラムが対偶の関係にあり、それらが一つの敷地に収まるというのは周辺の環境にとって爆発的な 影響を与える . 何事においても同じである . この設計は街にとって起爆剤としてあり続け、煙が部屋を充満 する様にして最初は界隈に、やがて全体に変化を与える .

結論として、この複合建築が人々に与えるのは、足を運び街へ出、買い物をすることの最大の魅力である . かつての様な予期せぬ出会いに、懐古する .

猫の額と対偶 | 103


p : 装飾性があること

q : 自律した建築

p : 装飾性がないこと

q : 他律した建築

教会

花屋

: 教会 : 花屋

【 対 偶の 関 係 図 】

猫の額と対偶 | 104


■ 猫の額

私はたった一つの複合施設で、街に大きな変化を与えようというのだから、よほど建築の力を信じているの だろうか . ただの盲信だとわかっていればその様な暴挙にでることはない . 実際この街は風呂敷を広げすぎたくらいに、多くの意味で広域である . それに比べ所定の敷地は猫の額ほどにも満たない . 敷地は東京都武蔵野市 - 吉祥寺本町の商店街、中道通り . 昼夜賑わいをみせる駅中心部からおよそ1km 離れた閑静な場所 . ここは商店街の「終わりかけ」である . 商業施設は姿を消し始め、住宅が顔を出そうとする中間地点 . 現在、その縦横約 35,000mm のスクエアには、緑が生い茂り、人々の憩いの場となっている .

猫の額と対偶 | 105


東京女子大学

吉祥

寺通

り▼

成蹊大学

井の

頭通

蓮乗寺

り▼

敷地

JR 中央 / 総武線

吉祥寺駅

井の頭動物園

京王井

井の頭公園

の頭 線

【 広域図 】

▼ 商店街の公式収束地点

敷地 吉祥

高島屋

道通

り▲

【 住居と商業施設の関係 】

住居

井の

寺中

頭通

り▼

商業施設 住居

【 狭域図 】

【 中道商店街通り 】

猫の額と対偶 | 106


■ 所作の記録

所作 00 : 敷地は商店街の末端 . その輪郭は正方形に近い 所作 01 : 敷地を覆う様に高さ 2950mm の壁を4枚、立ち上げる . 所作 02 :

間 800mm 程度、手前の壁を開く .

所作 03 : 側道に教会の信者のためのもの、前面にすべての人のための扉をそれぞれ設ける . 所作 04 : 教会は密室性を保たなければならない . 教会の基準階を地上から 1800mm 下げて奥に      潜ませる .4 枚の壁に囲まれた世界は庭園となる . 所作 05 : 手前には花屋を . 奥の沈んだ場所に教会を添える .

猫の額と対偶 | 107


SITE

enclosing

wall open

only believer for anynody

Lowering

Slope

End point of The market

G.L-1800

Flower shop Church

猫の額と対偶 | 108


■ 荘園

四方を取り囲まれたこの建築は、つまるところ荘園※01 を彷彿とさせる . それは他者界隈との関係を絶った独立した世界に等しい . けれども、壁面に開けられた 4 つの開口は - 光を通し、信者を保護し、人を誘い、また人を招き入れる - そ れぞれの役割を果たしている . 周長約 127m の 4 辺壁に開けられたそれらの

間は、十分に周囲の環境と対峙していることを示す .

【荘園】- しょうえん 公的支配を受けない一定規模の私的所有土地 . 中世期の欧州にみられた旧社会構造 . 独立した自治体の様なものが形成され、他に干渉されたり、また同様に干渉されることのない世界 .

猫の額と対偶 | 109


SITE PLAN S=1/300

猫の額と対偶 | 110


■ 直接的に触れ合う事を許されない二つの匣

手前と奥にそれぞれのプログラムが挿入される . 両者は同じ敷地に合って、同じレベルにあってはならない . 1.8m という高低差は、萎んでは開かれた斜面に寄って二分される . 低地には教会 . 基準地に花屋 . 斜面には花が植わっていて、それを間にしてこの両者は立体的に対峙する . また、彼らは自身を囲う壁のわずかな

猫の額と対偶 | 111

間から、外部と関係を結ぶ .


PLAN S=1/150 敷地境界線▼

G.L-1800

H

F

G Up

E

G.L+1000

D C

Up Dn

Up

B

G.L±0

10

A

: 礼拝堂

敷地境界線▼

断面切断線 03

: スロープ

H

02

: 庭園

G

: 花屋の裏手

F

断 面切

: 花屋

E

断面切断線 01

: 回廊

D

敷地境界線▼

: 教会の入り口

C

立面投影箇所 01

: 花屋の入り口

B

敷地境界線▼

A

立面投影箇所 02

20 SCALE BAR (m)

猫の額と対偶 | 112


ELEVATION S=1/75_01

ELEVATION S=1/75_02

猫の額と対偶 | 113


猫の額と対偶 | 114


SECTION S=1/75_01

SECTION S=1/75_02

SECTION S=1/75_03

猫の額と対偶 | 115


猫の額と対偶 | 116


猫の額と対偶 | 117


猫の額と対偶 | 118


猫の額と対偶 | 119


猫の額と対偶 | 120


猫の額と対偶 | 121


猫の額と対偶 | 122


猫の額と対偶 | 123


猫の額と対偶 | 124


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