0038
「 こ の 町 に 良 い と こ ろ な ん か な い よ 。」 瀬 戸 の 町 に 暮 ら す 人 が そ う 言 っ た 。 こ の 町 に は 1 0 0 0 年 以 上 も 続 く 窯 業 文 化 が あ り 、
長い間人々の生活の中心として暮らしを支えてきたが、郊外化によって出来た新興住宅に住む人の中にはその事を知らない人も存在する。
郊外集落における生業集約型賃貸住宅
地域性が失われていく現代において「瀬戸に暮らす=やきもの文化と共生する」この言葉の意味を再び考えて欲しい。 これは、やきもの文化の衰退した瀬戸市において、地域に暮らす人々が「ツクリテのための賃貸住宅」を通して
やきもの文化を支え、そして、やきもの文化に支えられる瀬戸での暮らし方について今一度考えるきっかけを作る提案である。
01b 社会背景 / 生業縮小社会
02 計画地域 / 愛知県瀬戸市
生業を中心とした地域社会 産業の斜陽化 / 郊外都市化 生業を媒介とした地域集約
a やきもの文化の衰退
∼20c 前半
提案
20c 後半∼21c( 現在 )
b 瀬戸市で注目される「ツクリテ」 c ツクリテを介した地域集約
窯業関連事業所数と従事者数の推移 従事者数も 3 割以下に減少
1666
相互扶助の必要性 生業の存続
16000
12000 10000
189 S53
S58
S63
H5
H10
H15
H20
H25
2000
登録者数 200 人超
0
老朽空き家 解体補助金
ツクリテ の介入
画一的な町
空き工房制度
やきもの文化の
へと変化
継承・存続へ
ツクリテとは瀬戸焼の技術・風土を生かし、も
ツクリテが地域内に定着し、関わりを持つこと
ある。しかし、近代化の中で安い海外製品
のづくりを行う人々である。瀬戸市ではを中心
は、やきもの文化を継承していくことにつなが
一つの生業を軸に成り立ってきた地域では、生業を中心に関係性が築かれ、相互扶助を
の流通によるニーズの減少が起こったため
にツクリテ支援の様々な政策を打ち出している。
ると同時に、瀬戸の集落に暮らす人々の生活の
育んだ。しかし、近代化における生業の規模縮小、地域経済の分散化は、地域内での地
に、やきもの文化は縮退した。それに伴い、
せとまちツクリテセンター開設以降、順調に増
中にやきもの文化を再び取り戻し、瀬戸らしさ
縁的コミュニティの消失を招いた。縮減社会の流れの中で、孤独死等の諸問題が顕在化
瀬戸に暮らす人々の生活も、やきもの中心
加 し て い る が、地 域 住 民 か ら の 認 知 度 は 低 く、
を内包した地域再生を行うきっかけになりうる
する今こそ、再び生業を軸とした地縁的コミュニティを再考すべきではないだろうか。
の暮らしから個の暮らしへと変容している。
地域内への活動の広がりは小さく止まっている。
のではないだろうか。
01b
集落単位の集合が持続的な地域社会基盤を形成する
03
計画 / Apartment コウボウ
コウボウ
繋がりの面的拡大
していたがコウボウ化
管理
施設利用費
居住
施設利用費
レクチャー料
若手ツクリテ 作品紹介 訓練校生
施設利用費
場の提供 イベント利用
ていた社会への現代的な回帰を提案する。暮らし方が多様化している現代社会において、 かつてのように町全体がやきものを生活の中心とする関わり方ではなく、集落単位で「一
A 北東外観
元々は手入れが行き届いておらず、姿が見えな いほどの雑草に覆われていた北東の外観。雑草 を撤去し、別棟と本棟を繋げるように、構造体・ 屋根形状・床を連続させていくことで、棟間で の 人 の 動 き を 棟 間 で の 活 発 化 さ せ る と 同 時 に、 周辺地域に対しての新しいファサードを構築す る。既存部分の屋根材には既存のスレートから、 一 部 を 透 過 性 の あ る ポ リ カ に 変 更 す る こ と で、 大屋根に囲われ、光を遮断していた内部空間へ の採光を獲得する。
元窯業従事高齢者
ていた陶作家も3年前にい 技術の継承
他機能の挿入 内部で培われた工夫の再活用
やきもの文化を介した循環
2020∼
窯業の衰退に伴い貯蔵量は減少し、多くの貯蔵庫は解体された。住宅地の中に点在し、広 い敷地と簡易な構造の建築により構成されるこの土地は、解体後、新興住宅地へと姿を変 える。しかし、そこで培われた窯業文化を地域に還元することは、住宅地の建設以上に有
04b
工業住宅地化 貯蔵庫が解体され、新興住 宅地として生まれ変わる未
他ツクリテ
行政・NPO
※共有工房空間は基本無料 ガス窯等の機材利用 専用工房のレンタルは有料
土作り
以内の方が対象。工房部分が面積の過半を占めるものに
¥ : 全体の 25% 減額
工房
屋外雑用
Walk Car
Ceramic Flow
作業台
ろくろ
広めの天板
周辺の住民動線の分析 / 窯業工程の分析から、窯業空間の配置、全体構成の決定を行う。
箱を置ける 余白部分
屋外乾燥
作釉 絵付け・施釉
Residence 残りの空間を埋めるようにボリュームを配置し機能を与えることで 「即物的な土着性を帯びた建ち方」を再解釈した空間構成とする。
SITE
工房
新規住民 窯業従事者 コウボウ居住者 外部来訪者
絵付け・施釉
施釉
成型
素焼き前の 乾燥
集約を行う拠点施設「コウボウ」を提案する。コウ
案する。住宅地と近接しているこの土地が高密な住宅地となら
ボウでは、若手のツクリテ、近隣の訓練校に通う学
ずに、地域の行動が集積される「コウボウ」として活用される
瀬戸の町の中に数多く点在する貯蔵庫という建築を「コウボウ」として町に還元する、
生 の 賃 貸 住 宅 を 中 心 に、様 々 な 活 動 が 展 開 さ れ る。
ことは、周辺地域に暮らす人々の生活にやきもの文化という共
そのプロトタイプとしての提案を行う。商店街近郊、住宅地等それぞれの貯蔵庫周辺
それら活動は地域へと還元される事で、閉鎖的な個々
通点を与え、相互扶助を育むことで、結果として地域価値を向
の環境を取り込み形質を変容する。それぞれの「コウボウ」の繋がりは瀬戸独自のネッ
それぞれの空間が絡み合うことで生じる関係性を検討し、
での暮らしを対外に開き、様々な関係性を育む。
上させることにも繋がる。
トワークを構築し、街全体へと広がっていく。
絡まりの強い部分をコアに建築内外との関係性を調整する。
北東側は周辺地域に最も近いため、空地・抜けを活用して周辺住民を迎え入れる。
B 本棟内観
商店街
仕上げへの利用 16 大きめの窓
屋根の延長
植栽
08
屋根の連続性 上下の分節
大きめの開口
屋内乾燥
素焼き
一次乾燥
ガス窯
物置としても 活用
天日干し
仮設テント
仮設の展示
防水布の仮設屋根
09
内向きの屋根勾配
半屋外空間
仕上げの連続
半屋外空間
道ギリギリまで拡張
接道
開けたアプローチ
13
大きめの開口
17
単管組みの仮設屋根
仮設テント
ベニヤの仮設開口
クリア波板
上下の分節
梁上の利用
貯蔵
還元焼成が 多いため 別途ガスボン ベが必要
本焼き
仮設の展示 大きめの開口 半屋外空間 開けたアプローチ
芝生
コの字型の建築配置
貯蔵
中間領域でのアクティビティ
中間領域 コンクリートによる分節
バルコニーの張り出し 中間領域 接道
開けたアプローチ
開けたアプローチ
抽出された 12 の建築的工夫 09 10 11 14
01 02 04 05
17
08 12 13
07
08 12 14 16
貯蔵庫内における偶発的工夫の分析
柱・梁・屋根の簡易な構成の貯蔵庫建築。この空間性を最大限活かすための工夫が多くみられた。 これらを分析・再解釈することで貯蔵庫建築を最大限使いこなせるのではないか。 内向きの屋根勾配
気積を活用した工夫 05 12
梁の活用
柱・横材による支え
上げ棚
梁からの吊るし
空間を仕切る工夫
提案範囲集落 陶生町・前田町
陶磁器貯蔵庫を「コウボウ」へとコンバージョンすることを提
05
奥まった玄関
住民の通り抜け
Flow line
瀬戸の生業であるやきもの文化を介し、集落単位の
03
生活の混在
b. 分棟形式
文化性
新興住宅地
空間を連続する庇
大きめの開口
03 機能間 / 建築内外の相互関係による調整
¥ : 全体の 50% 減額
c. 積層形式
01
裏の作業空間
本焼き
b
a. 隣棟形式
絵付け
素焼き
町全体を連関させる建築
窯業空間と住空間、或いは周辺との関係性分析
電動作業台
乾燥
02 住空間・工房空間の挿入
椅子に座って 作業を行う
成型 土作り
Atelier
一 体 型 と す る こ と で「住 空 間+工房空間」が補助対象。
c
成形
示する。
敷地から周辺集落へ
土練り
バケツに み 替えて利用
土練り
の宅地化以外の選択肢を提
提案
住空間
水場
作釉
Outsider
来。本提案では、貯蔵庫跡
建築提案 / 貯蔵庫のコンバージョン
地域への還元・地域価値の向上
プ ロ ト タ イ プ の 提 案 に お け る 建 築 の 普 遍 性 を 得 る た め に 、 市 内 に 現 存 す る 建 築 か ら 構 成 要 素 を 抽 出・活 用 し 細 部 を 構 成 し て い く 。
窯業工程の分析から抽出される空間の連関 窯業工程
Private
なくなった。 子供の成長に伴う 高齢化の急進
訪客
イベント誘致
子育て世帯
市内特定の訓練校に通っている研修生又は卒業から5年
住空間
×6 人
やきもの文化を中心に成り立ってきた愛知県瀬戸市において、やきものを中心に循環し
人一人が生活の中でやきもの文化に少しずつ関わる。」そんな関わり方を提案する。
使われなくなり、間借りし
子供の地元回帰
梁上の活用
定期市
レクチャー / 労働 に応じた家賃の減額
レクチャー料
自らの作品を売り込み、 広めるきっかけを作る バイヤー
a
はなくなり、貯蔵庫自体も
長期的な視点での衰退
リ サ ー チ か ら 提 案 へ 「 瀬 戸 の 要 素 が コ ウ ボ ウ を 形 作 る 」
04 建築細部の構成要素
Public
工房家賃補助制度
現状 工房家賃のみが補助対象。
仲介 作品紹介
支払 還元
パトロン 地元企業
Local
未利用地化 / 解体 貯蔵庫に隣接していた住宅
対し、1か月あたりの家賃のうち半分を補助する制度。
施設利用費
施設利用費での 運営・管理 ・無料開放 / ものづくり空間 ・生業体験 / 生業学習 ・工房機材の貸し出し ・専有の工房空間 …etc
援助
家賃
したことで継続的な収
オーナー 益を受けられる。
各集落内の特性の活用
窯住一致 / 既存制度活用に伴う家賃の減額
計画地の宅地化を検討
持続する生活風景
2019
益な価値へと繋がるのではないだろうか。
ツクリテの賃貸住宅を中心に様々な活動が展開されていく メリット
十数年後
十数年後 提案 既存の活用
瀬戸市はせともので有名なやきものの町で
提案 / 集落単位の集合による地域形成
01 全体構成の検討
間借りして活動する陶作家
文化の消失 2017 2019 年夏
周辺との密接な関係性
5年前までは敷地に隣接し
建築提案 /「陶磁器貯蔵庫からコウボウヘ」プロトタイプ形成のプロセス
係性が成り立っていた。
8000
4000
2004
05
もいたため、職住近接の関
6000
2654
現状:工業住宅地化
て住宅が建ち、余剰空間を
空き家 抑制 せとで住もまい プロジェクト 事業
14000
集落単位での小規模な 持続的生活圏社会の創出
役目を終えた陶磁器貯蔵庫
空き店舗対策 空き家バンク 事業費補助金
(人) 18000
14693
計画敷地 / 陶磁器貯蔵庫跡
提案
現状
ツクリテ
窯業関連の事業所数は約1割
経済成長に伴う産業化
04a
大きな開口
05 07 08 09
01 03 07 11
10 11 13 15
13 15 17
屋根の延長 04 06 10 15 18
バルコニーの張り出し
開放的な空間 07 14
屋根をかける
03 08 11
庇 / 空間の拡張 02 05 09 16
簡易的な空間分節
03 05 09 11 12 13 15 17
共有工房空間では、集落に暮らす様々な人達がやきもの文化を通して接点を持つ。
スキップフロア
他機能の挿入
C 南西外観
簡易的な鉄骨の柱、梁、屋根のみで構成された貯
商店街側であり、市街地側であり、車の導入部分
蔵庫内部では、空間の間借り・梁を活用した貯蔵
であるために、外部からの人の流れが最も多くな
などの様々な工夫が施されてきた。本提案では、
ることが予想される南西部分。切り妻形状により、
それら工夫を生かしつつも、瀬戸市のやきもの再
外部と縁を切られたように感じる西面には、既存
利用による新たな可能性としてのレンガ壁等を取
屋根からの連続した庇を取り付けることで、外部
り込み設計を行なっていく。基本躯体構造には、
からの流れを引き込み、内と外を緩やかに連続さ
工夫の中の一つである上げ棚の構造を用い、階段
せていく。さらに南面の空地を囲うように建築を
には、工事用の簡易的な部材を用いることで、や
増築していくことで、敷地全体を最大限に活用し
きもの文化の中で培われた土着的な懐かしさを感
つつ、周辺との関係性を構築しやすい環境を整え
じる建築形態を目指している。
ていく。
壁で仕切る
棚による仕切り
素材の転換
中間の水事場
意匠的連続
半屋外空間
南面の空地は普段は屋外作業場として使われ、ハレの日には露店が並び、 周辺集落の拠点として機能 する。