17箇条の相違 中国による60年間のチベット政策の失敗

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17箇条の相違 中国による60年間のチベット政策の失敗

中国軍がチベットに侵攻して以来、60年以上経過しました。2011年5月、中国は事実を 醜悪に彎曲した「チベット百万農奴解放記念日60周年記念」と名づけられた式典を予定 しています。チベット人とその支援者にとって、この60年は‘17箇条協定’への調印を皮切 りに中国がチベットを強引に武力制圧し実行支配を始めた60年でした。 ‘17箇条協定’とは1951年5月23日に中国政府とチベット政府との間に強制的に交わされ た協定で、のち1959年チベット人の蜂起とダライ・ラマの亡命により崩壊しました。 (a). 60年の間、中国はチベットを支配してきました;60年もの時間をかけて、チベット人の 民意を獲得するために、亡命中のダライ・ラマの影響力を弱め、チベットを中国本土に同 化させようとしてきました。 にもかかわらずチベット人は一貫して、中国の支配に対し、抗議行動や平和的な直接行動 によって拒否し続け、なかには自由になるために亡命する道を選んでいる者もいます。 ちょうど10年前、チベットの公式報道の中の声明チベットの共産党機関紙は以下の文章 を載せています:「50年間の輝ける歴史のなかで、全ての民族グループの党員と民衆は 中国共産党の指導により、祖国の大家族の一員として、社会主義の道を邁進することによ ってのみ、チベットの輝ける今日と幸せな明日があることを確信する。よって、この地区 のすべての民族グループは、この輝ける機会において 共産党、社会主義、解放、そして 人民の団結への感謝を、高原全土で声高らかに祝うものなり。」(b). この一方的な声明の発表された数年後に、これまで以上に広範囲な、毅然とした抗議行動 がチベット高原全域で起こりました。チベット人達は再び、中国の支配に対する拒否を明 確に示し立ち上がったのです。 2008年に起きた平和的抗議行動 (c) の特色として、若者の参加が多く見られたことが あげられます。彼等はダライ・ラマの写真を手に、彼の帰還を訴えました。中国政府の抗 議者に対する非道な弾圧にも関わらず、様々な抵抗運動は今日も続いています。 チベット人の民族としての誇りは以前より強くなっており、チベット人歌手や作家が中心 となり、チベット文化再興のために、カム、アムド、ウ・ツァンの、チベット3地域の団 結を呼びかけています。歌詞は一様にダライ・ラマの帰還を訴え、亡命チベット人と内地 のチベット人の連帯を謳います。おのずから、チベット民族全体の団結は以前にも増して 強くなっていると言えます。60年間、被占領下にある人々は、あらゆる苦しみに屈する ことなく、民族としての決意を貫いています。 この「17箇条の相違」と題された報告書では、国際チベットネットワークと中国のプロ パガンダとの間に存在する意見の相違を17箇条にまとめました。 国際チベットネットワークは 世界各国から180団体のメンバーを持つ連携ネットワーク であり、チベットの人々の権利を取り戻すために活動しています。

(a) Tsering Shakya, ‘Dragon in the Land of Snows’, 1999. (b) Lhasa Xizang Ribao, 21 May 2001. (c) 230以上の平和的な抗議行動を、中国はまとめて“暴動”と間違った総称で呼んでいますが、実際には極めて少数が暴行を働いたのみでした。 省略語:TAR = チベット自治区Tibet Autonomous Region, PRC = People’s Republic of China,中共=中国共産党(<中華人民共和国) CCP = Communist Party of China,(中国共産党, PLA = People’s Liberation Army(人民解放軍


中国:「中国の近代史のなかでチベット の平和解放は重要な出来事であり、チベ ットの発展にとっても画期的な転機とな った」胡 錦濤国家主席 (1a). 事実:中国によるチベットの平和解放と は、1949年に始まった武力による侵略 です。1950年10月7日、人民解放軍総勢 4万 が ディチュ河 (長江)を越え チベッ ト中心部に侵攻しました。 勢力で完全に 上回った中国軍に対しチベット軍は降伏 し(1b)、1911年以来、独立国であった チベットは、被占領国家となりました。 (1d).中国による弾圧が徐々に勢いを高め るとともに、それに対するチベットの抵 抗も強くなっていきました。1959年3月 ラサに大規模な抗議行動が起こり、人民 解放軍が砲撃を開始し、ダライ・ラマは チベットからの脱出を余儀なくされまし た。中国側の発表によれば8万7千人のチ ベット人がこの蜂起で死亡または逮捕さ れました。(1e).1989年,戒厳令が布かれ (1989年には一時戒厳令が布かれまし た)、現在もチベット高原一帯には、推 定で15万から50万の人民解放軍ととも に、大規模な中国軍が駐留しています。

2.‘少数民族’ではなく‘国家’ 中国:「中国国家大家族の一員として、 チベットの人々は長い歴史のなかで、絶 えず近隣の他民族との接触と交流をはか り、彼等独自の素晴らしい文化を創りあ げてきた。」劉延東( Liu Yandong)・ 中国共産党中央統一戦線部部長(当時) (2a). 事実:中国はチベット人が運命共同体と して繋がっている、56民族の中の一民族 である(2b) と主張していますが、(2c). このねつ造された主張は中国の深い歴史 的な民族優越主義に由来しており、この 思想はチベットと他近隣地帯(2d)の植民 地化政策の基礎となりました。チベット 政府は中国共産党が結成される30年も前 に、すでに主権国家として認知されるべ き項目を満たしており、チベットが一国 家と定義されるべきなのは明白です。 中国の侵攻前には、両国の接触、政治的 関係は無かったに等しく、中国はチベッ トを正式に支配していませんでした。 (2e).中国の指導者たちは、チベット人 を“野蛮で未開”であるとし、中国人とし て“同化するか排除されるべき”であると しました。(2f).

1a. Hu Jintao, Lhasa 19 July 2001. 1b. Tsering Shakya, ‘Dragon in the Land of Snows’, 1999. 1c. “The Tibetans have every moral right to their independence for which they have fought successfully in the past, and we are committed to support them in maintaining it.” (UK Foreign & Commonwealth Office to

Chongqing, June 1942) 1d. On 30 March 2011, Court No. 2 of Spain’s National High Court, the Audiencia Nacional, acknowledged Tibet is an occupied state under international law. 1e. Radio Lhasa broadcast, 1 October 1960. 1f. Tibet Justice Centre.

誇り高く、独立心の高いチベット人 は“同化”する気配を見せなかったの で、中国はチベット人をさらに根絶す る政策へと進んでいきます。

3. 同意に基づいた統治ではな く武力による支配 中国:「祖国の団結を守り抜くために 万里の長城を築くごとく徹底的に分裂 主義と戦い、チベットの基本的な安定 を長期的安定へと導かなければならな い。」 胡錦濤(3a). 事実:60年たった今も、中国はチベッ トの統治を軍と準軍事的組織に頼って います。チベットの記念日などの敏感 な時期ごとに武装警備は強化されてい ます。2011年3月のンガバの例を上げ るまでもなく、2008年以来、チベッ トでは大規模な抗議行動が後を断ちま せん。 現在、チベットでは少なくとも824人 の政治囚が服役しています。 (3b). 中国では保安予算が国防予算を上回っ ています。 (3c).2008年の抗議行動の 際に拘束された推定何千人と、過剰警 備による死亡者に対して、中国政府は 責任を問われていません。(3d) 例:2006年に中国軍、国境警備隊の発 砲による死亡した17歳の尼僧、ケルサ ン・ナムツォ

4.繁栄ではなく貧困 中国:「チベット地区のGDPは2010年 度に500.8億元(約600.8億円)に達 し,年間成長率が12.4%.農民と牧民の 納税後の年間収入が2005年度の2倍に あたる4,319元となった」 ペマ・ティ ンレー(Padma Trinley)チベット自治 区人民政府主席 (4a). 事実:中国がチベット自治区に2001年 以降に投資した総額は3100億元という 巨額にも関わらず (4b)、投資は主に中 国からの移民の為に使われ、チベット 人に対して経済的疎外状態を作りだし ています。 経済学者で経済開発の専門 家であるAndrew Fischerは中国政府の 発表した数値の統計を分析した結果、 チベットの経済成長を“民族除外的”で ある(4c)と呼んでいます。 漢民族によるチベット高原への移住の 規模とその速度、その結果引き起こさ れる、チベット人に対するビジネスや 雇用の不公平は、2008年にラサで起き た抗議行動の要因の一つです。

2a. Liu Yandong, China Tibetan Culture Forum, October 2006. 2b. See http://en.wikipedia.org/wiki/ List_of_ethnic_groups_in_China 2c. China White Paper 28 September 2009. 2d. Delaney, Cusack and van Walt van Praag, ‘The Case Concerning Tibet’, 1998.

2e. Ibid 2f. International Campaign for Tibet, ‘Jampa, the Story of Racism in Tibet’, 2001, page 24. 3a. Hu Jintao, 9 March 2009. 3b. US State Department Report on Human Rights 2010. 3c. In 2010 public security spending was RMB 549bn ($84bn) and

5. ダライ・ラマ:狼ではなく平 和のシンボル 中国:「我々はダライ一派との、血と火を 見る勢いの生と死をかけた戦いの最中であ る」張慶黎(Zhang Qingli)中国共産党チ ベット自治区書記 さらにジャンパ・プンツォク(Jampa Phuntsog)チベット自治区人民政府主席 (当時)は中国日報 でこう述べています。 「大多数のチベット人はダライ・ラマの帰 還を望んでいない。」(5a) 事実:ダライ・ラマは紛れもなくチベット 人の、絶対的な精神的かつ政治的指導者で す。北京政府はダライ・ラマを最大の敵と 見なし“袈裟を着た狼”や“人間の顔をした怪 物”などの表現を用いて冒涜しています。 2008年に起きた抗議行動では、 ダライ・ ラマの帰還を望む声が世代を超えたチベッ ト人から起こりました。中国はダライ・ラ マとその支援者を‘分裂主義者’と呼び、抗 議行動の首謀者であるとして非難していま す。 (5c).またダライ・ラマの写真を持つ ことは禁止されており(5d)、チベット人 政治囚はダライ・ラマの写真を踏みつけた り、破棄することを強要された自身の苦し い経験を証言しています。亡命を余儀なく されて50年たった今でも、中国政府はチベ ット人とダライ・ラマの強い絆を壊すこと はできません。

6. 言語:保護ではなく強制同化 中国:“全ての国民は独自の言語(話し言 葉と文字言語)を自由に使用し、発展させ る権利がある。“中華人民共和国憲法 第 4章 (6a). Tibetan students protest for language rights. Radio Free Asia.

1.‘平和解放’ではなく‘軍事支配’

His Holiness the 14th Dalai Lama. www.dalailama.com

17箇条の相違

defence spending RMB 533.4bn, Reuters, 5 March 2011. 3d. Human Rights Watch, ‘I Saw it With My Own Eyes’, 2010. 3e. The Guardian, 30 October 2006. 4a. Padma Choling, 28 March 2011. 4b. Xinhua 25 January 2010. 4c. A M Fischer, ‘Perversities of Extreme Dependence and Unequal

Growth in the TAR’, 2007. 5a. Zhang Qingli, 19 March 2008; Jampa Phuntsog, 20 June 2007. 5b. Zhang Qingli, 19 March 2008. 5c. The Independent, 20 May 1996. 5d. Wen Jiabao, quoted by the BBC, 18 March 2008 6a. See http://english.people.com. cn/constitution/constitution.html


8.解放ではなく弾圧

事実:「中国語で教育を受けていないチベ ット人に高収入の職業を得ることは難し く、チベット語で教育を受けた生徒がカレ ッジや大学で専門的な資格を取得すること も同じ様に困難です。資格を取得できる学 科をチベット語で教える教育施設はありま せん」 Tsering Dorje(ツェリン・ドルジ ェ), 教師 (6b). 2008年以降、中国はチベット語の使用を 阻害してきました。(6c).2010年10月、1 万人のチベット人学生と教師が、教育言語 を中国語に統一する青海省の教育改革案に 反対して抗議行動を行いました。(6d).街 頭標識は中国語で書かれ、政府の公文書は ほとんどが中国語のみで配布されます。ま たチベット語で、宛て先を書かれた手紙は 配達されません。中国政府によるチベット 語廃絶の努力にも関わらず、チベットでは チベット語文化を守る運動が起こっていま す。(6e).

Chinese propoganda at Dzong Monastery, Gyantse, Tibet.

中国:「チベットの平和的解放なくし て、中国共産党と人民解放軍への入党な くして、被支配層の農奴であるチベット 人はCPCの政策を深く理解することは不 可能である。」朱維群(Zhu Weiqun) 中国共産党中央統一戦線部常務副部長 (8a). 事実:中国共産党は”チベットの各民族人 民を指導して、ダライ・ラマ集団(8b)の 武装反乱を平定し、民主改革を行い、何 千年にも及んだ極めて暗黒で、残酷で、 野蛮で、立ち後れた封建農奴制を徹底的 に打破し、代々搾取にあえいできた百万 の農奴を完全に解放した”と語りました。 これに対し2009年3月、ダライ・ラマは 中国政府のチベット政策について、“チ ベットの人々を深い苦しみと困難の淵に 落としいれ、まさに生き地獄を味会わせ ている”と形容しています。”(8c). つま り、北京政府のチベットに対する批判で ある“農奴”の歴史は、典型的な植民地支 配者の弁といえます。 侵略を肯定するた めに“野蛮”であったとしているのです。 (8d). 侵略を受ける前のチベットにおいて、既 に多くのチベット人は彼等の制度の中の 封建制に気付き、ダライ・ラマは改善を 始めていました。 現在、チベット亡命政府が民主化された のに対し、2009年に制定された「チベッ ト百万農奴解放記念日」は現在も続く中 国による封建的なチベットの植民地支配 の象徴です。

9. 自由ではなく宗教弾圧 中国:「全てのチベット人は信教の自由 を完璧に保証する政策に守られ、その自 由を謳歌している」秦宜智(Qin Yizhi) 中国共産党ラサ市委員会書記 (9a). 事実:中国の侵略後、チベット仏教はそ の中心的存在であるダライ・ラマへの忠 誠を否定するよう強要されています。約 6千もの僧院が破壊され、今日では僧侶、 尼僧の数が大幅に減少し、仏教の教育施 設では厳しい“愛国再教育”が行われてい ます。(9b)2011年4月東チベットの キルティ僧院では、抗議行動をきっかけ

中国:「チベットの観光収入は226.2億元 に達し、およそ年間30%の上昇…地域の観 光事業局は2015年には1500万人の観光客 が訪れると予測」(7a). 事実:北京はチベットの経済開発を進める ために、観光をメイン産業として何百万単 位の国内と国外からの観光客を予想してい ます。観光収入を最大にする傍ら、訪問者 が何を見て何を理解するか、までを当局が 管理します(理解するかさえ当局は管理し ようとしています)。ツアーガイドやホテ ルは当局が認可したチベットの歴史のみ を、伝えるよう圧力をかけられています。 それに背き、共産党の公式見解以外を観光 客に伝えたガイドは、それが、たとえ日常 会話的な気軽なものでも、営業停止処分ま たは懲役を受ける危険があります。1959年 と2008年の蜂起記念である今年3月には、 最近オープンした高級ホテルグループ「セ ント レジス ラサ」を含め、数館の高級ホテ ルが存在するにも関わらず、当局がチベッ ト自治区全体に対して“宿泊施設の不足”を 理由に観光を禁止しています(。(7b),

6b. Free Tibet, ‘Forked Tongue: Tibetan language under attack’, 21 February 2008 6c. Woeser’s Blog, ‘When Tibetan Students fight for the Tibetan language’, 4 November 2010, translated by Hugh Peaks Pure Earth. 6d. BBC report, 20 October 2010.

6e. Tsering Shakya, ‘The Politics of Language’, December 2007. 7a. Padma Choling, 16 January 2011. 7b. Zhang Qingli, 7 March 2011.

Monks protesting at Labrang Monastery 2008

7. 支配と観光化

7c. The Independent, 3 November 2010. 8a. Interview for “China’s Tibet”, 7 May 2011. 8b. Blog post, James Reynolds BBC, 19 January 2009. 8c. The Times, 10 March 2009. 8d. Lhadon Tethong, ‘China’s favorite propaganda on Tibet...and

Why it’s Wrong’. 8e. Tsering Shakya, ‘Tibet and China: the past in the present’, 2009. 9a. Qin Yizhi, Lhasa Party Secretary, 28 March 2011. 9b. Tibetan Government in Exile. 9c. International Campaign for Tibet, 22 April 2011.

に300人の僧侶が強制連行されました。 (9c).1995年、当時6歳だったダライ・ラ マが任命(承認)したパンチェン・ラマ 11世が強制失踪させられたまま、現在も 消息不明です。1999年、カルマパ17世も チベットを脱出せざるを得ないと感じ亡命 しました。中国政府は今ではトゥルク(化 身ラマ)さえ政府の認可が必要だとしてい ます。最近のダライ・ラマの発言(「転生 制度自体を廃止してもよい」)を受けこの 無宗教政権は「ダライ・ラマは転生すべき だ」とさえ主張しているのです。(9d).

10. 第3極の危機 中国:チベット高原の環境保護を強化す ることは“国境地方の安定と民族団結、 そして豊かな社会を築くために”重要で ある。国務院常務会議(State Council statement) (10a). 事実:地球上で、第3番目に多い氷河と淡 水を貯蔵することから、地球の第3極と呼 ばれるチベットは、温暖化が世界の他の場 所よりも2倍の速度で進んでいます。高原 から溶けだした氷河は水資源を危うくし、 継続的な生業を危険にさらし、河川下流に 暮らす10億人の生活を脅かしています。 (10b).中国がチベットを占領して以来、 その環境政策は地域一帯の飢饉を引き起こ し、チベットで過度の森林伐採が行われた 結果、下流域で洪水を起こし、高原の砂漠 化や、無秩序な資源の採掘は環境破壊を進 めています。(10c).こうした批判にも関わ らず、中国は、さらに多くのダムを造り続 けています。それにより下流域の住民の生 活に必要な安定した水の供給を脅かしてい ます。この水問題に関して中国は、自身の 政策を省みず、遊牧民がその原因だとし ています。

11. 中国による植民地化 中国:「『西部大開発』(西部大開発 http://ja.wikipedia.org/wiki/西部大開 発)を実行し、開発を促進することで、人 材もそれに伴って西に流入する。」 李德洙(Li Dezhu)国家民族事務委員会 主任(当時) 11a). 事実:1980年代の「改革開放」政策によ り、中国からの労働者がチベットに押し掛 けました。2000年に行われた、150のチ ベット自治県を含むチベット高原全体の人 口統計では、約1000万人の中から軍人と 出稼ぎ労働者を除いた540万人がチベット 人で、残りは漢民族とそのほかの中国人で す。 (11b). 2002年には当局がインタビューで、中国 からの移民を奨励していることを認め、ラ サのチベット人は近く、少数派となるであ ろうと語り、中国からの移民の増加は安定 と発展を導くための経済開発を遂行するた めと述べています。(11c). 植民地下のチベット人の生活は絶えず差別 と排除にさらされています。

9d. Padma Choling, quoted by Reuters, 7 March 2011. 10a. State Council Meeting chaired by Wen Jiabao, 30 March 2011. 10b. International Campaign for Tibet, ‘Tracking the Steel Dragon’, 2008 pg 231. 10c. Tibetan government-in-exile Environment Report 2008.

11a. Li Dezhu State Ethnic Affairs Commission, in Qiu Shi, 1 June 2000. 11b. See http://chinadataonline. org. The 2010 census, available soon, is intended to count the floating migrant population. 11c. New York Times, 8 August 2002.


12. 遊牧民の強制移住

14. 水源の独占

中国:「全ての遊牧民が今世紀末まで に遊牧生活を終えること」斉景発(Qi Jingfa)中国農業部副部長1998 (12a). 事実は:チベットでは少なくとも225万人 がチベット社会独特の遊牧または半遊牧生 活を送っています(いました)。(12b).中 国は支配下にあるチベットの遊牧民を’野 蛮’であるとし、彼等の生活様式は中国政府 の農業集団化政策による存続の危機に面し ています。(12c). 2000年までに遊牧生活を終わらせるには 至りませんでしたが、「西部大開発」が始 まって以来、バラック建てのンクリートで 作られたキャンプへチベット人を強制移 住させる計画は、さらに勢いを増してい ます。 2011年1月には、当局は143万人の農民と 牧民が新しい家に移住したと発表していま す。 (12d) 気候変動の世にあって、‘環境保護’を理由 に遊牧民から奪った土地はダム開発や採掘 作業のために使用されています。 何千年もの間、チベットの遊牧民達は高原 で継続的に生きてきました。現在は、中国 の‘牧草地を農地へ改造’する政策の施行に より柵で囲まれた牧草地は過放牧となり、 砂漠化がすすんでいます。(12e). 強制定住は経済的、社会的な問題を生み (12f), さらなる混乱を招く可能性があり ます。

中国:「チベットは豊かな水資源と水力発 電資源に恵まれているが、水資源こそがチ ベットの開発を妨げている要因である」 Zhang [Qingli] (張慶黎)”はチベットに おける水資源インフラの開発の緊急性を強 調しました。(14a). 事実:チベットにおける、その他の開発事 業と同様にダム開発に関する事業決定権は チベット人に与えられていません。 近年までチベットは、世界最大のダムの 無い河川、ヤルンツァンポ川(Yarlung Tsangpo)を保有していました。 2010年に中国は 蔵木(ザンム) 水力発 電所を含む5箇所以上のダムをこの川の中 流に建設する計画を発表しました。これは 世界最大規模の水力発電計画事業といえま す。(14b). 下流域諸国の安全で安定した水資源の提供 への影響と、(14c) 地震活動のある地域へ ダムを建設する危険(14d) 、そして、生態 系が世界でもっとも豊かなこの地域への自 然破壊が、心配されています。(14e).

15. 長寿化?反体制派はその逆 中国:「チベット人の寿命は解放前の 35.5歳のほぼ2倍の67歳になった。 2006年から2010年の間に17億元がチベッ ト人農民と遊牧民のための無料の医療を提 供するために使われた」 (15a).

13. チベットの鉄道化

12a. Qin Jingfa, Vice Minister or Agriculture, quoted in Xinhua 18 March 1998. 12b. International Campaign for Tibet, ‘Tracking the Steel Dragon’, 2008. 12c. Gabriel Lafitte, ‘Eight Chinese Myths about Tibetan Nomads’, 2011.

16.第2の文化大革命 中国:「政府はチベットの伝統的文化を守 るために、多くの労動力を動員し、資源と 資金を投入している…それにより、チベッ トの文化を育て、これまでにない文化への 保護を行う」2008年白書 “非合法の音楽やビデオを保持することは 厳重に処罰される” シガツェ学校ウェブサ イト(16a). 事実:北京政府は音楽や歌を使ってプロ パガンダを広めてきました。党局は’認 可’チベット人シンガーの名簿を管理して います。 何十ものチベット語の曲が禁止処分とさ れ、公安の検問所では定期的にチベット人 の携帯電話を非合法曲や着メロのチェック を行っています。(16b). 約30人ものチベット人作家や Tashi Dhondup (タシ・ドゥンドゥプ)を含む 演奏者が逮捕され受刑しています。(16c) それにも関わらず、チベット人としての誇 りを詠い、連帯を呼びかける、彼等の文化 とアイデンティティーをあえて主張するチ ベット人アーティストは増えています。

17. 銃口を向けられる幸せ? 中国:CCTV(中国中央テレビ局/中国中 央電視台)では‘2010年度、一番幸せな 人々の街’に与えられる賞をラサに送りま した。 事実は:著名チベット人作家ウーセルは、 述べています。“昼夜、狙撃兵に銃口を向 けられ、お寺にお参りに行くときでも、あ とをつけられて生活することの、どこに幸 せを見いだせるでしょうか?ラサの人々 は、2008年に起きた血みどろの恐怖を、 こんな短期間で忘れ去り、幸せな笑顔を顔 一杯に浮かべることができるのでしょう か?中国の他の、どの街の人々より幸せな 人々が、なぜ街頭に繰り出して抗議をする しかなかったのでしょうか?” (17b).

Nomad on the grasslands of Tibet.

中国:「2010年度のチベットにおける投 資予算は160億元を計上し、その後46%ご との年間上昇とする。この地域の空港、高 速道路や鉄道等のインフラを促進する。」 ペマ・ティンレー Padma Choling(ペマ ・チュリン/ペマ・ティンレー). 「経済発展の段階を一気に引き上げるこ とが、我々の目的ではあるが、社会安定 を維持することも、非常に重要である」 Zhang Qingli(張慶黎)(13a). 現実:中国のチベットへの金融投資額は膨 大です。しかし、その多くが巨大なインフ ラ整備におかれ、コミュニティーが必要と するプロジェクトはないがしろにされてお り、貧しいチベット人のためには使われま せん。顕著な例では2006年7月に開通した ゴルムド・ラサ鉄道があります。これによ り、中国からの移民が増大した結果、地域 のチベット人が地元経済からさらに排除さ れることとなり、中国の当初の目標であっ たこの地の‘安定’ではなく、チベット人住 民の反感を募らせることとなりました。同 鉄道はさらに迅速な軍事派遣を可能にし、 遊牧民の生活様式とチベットの自然資源の 両方を破壊しています。(13b).

事実:乳児と幼児の死亡率は世界でも最高 レベルです。強制定住を余儀なくされた遊 牧民は、約束されたはずの医療提供は、 ほとんど与えられておらず、ほとんどの チベット人にとって医療は手が届かない 存在です。(15b). ラサに増えた売春率が エイズの感染を懸念させます。政府に対し て反対意見を持てば、必ず寿命への影響は 大である。抗議行動に参加して怪我をした 者は当局の監視を怖れ医療処置を受けるこ とを拒み、拘束中の死坊は珍しくありませ ん。2011年初め、2008年の抗議行動に参 加したとして逮捕されたラブラン僧院の僧 侶が拘束中に拷問死するといった事件があ りました。 (15c).

12d. Padma Choling, 16 January 2011. 12e. Oliver W Frauenfeld and Tingjun Zhang, ‘Is Climate Change on the Tibetan Plateau Driven by Land Use/Cover Change?’ 2005. 12f. Feng Yongfeng, ‘The Tibetan Plateau: the plight of ecological

migrants’, 2008. 13a. Padma Choling, 28 March 2011 and Zhang Qingli, 6 March 2011. 13b. International Campaign for Tibet, ‘Tracking the Steel Dragon’, 2008. 14a. Zhang Qingli, 28 March 2011. 14b. The Guardian, 24 May 2010.

14c. Ibid. 14d. Geologist Yang Yong quoted by South China Morning Post, 1 May 2010. 14e. Conservation International. 15a. Padma Choling, 16 January 2011 and 28 March 2011. 15b. International Campaign for Tibet,

‘Health and Health Care in Tibet’, 2010. 15c. International Campaign for Tibet, 4 April 2011. 16a. China White Paper, 25 September 2008 & Notice on Shigatse High School Website, April 2010. 16b. Bhuchung D Sonam, ‘Banned

Lyrics, Reactionary Songs’, 2010. 16c. International Campaign for Tibet, ‘A Raging Storm‘, 2010. 17a. Woeser’s blog ‘Happiness under Gunpoint’ translated by High Peaks Pure Earth, 14 February 2011. 17b. Ibid.

www.chinasfailedtibetpolicies.org


Notes and Sources 1a. Hu Jintao, Lhasa 19 July 2001. http://news.xinhuanet.com/english/2008-10/16/content_10205324.htm 1b. Tsering Shakya, ‘Dragon in the Land of Snows’, 1999. 1c. “The Tibetans have every moral right to their independence for which they have fought successfully in the past, and we are committed to support them in maintaining it.” UK Foreign & Commonwealth Office to Chongqing, June 1942. http://www. tibetjustice.org/reports/sovereignty/independent/a/index.html 1d. On 30 March 2011, Court No. 2 of Spain’s National High Court, the Audiencia Nacional, acknowledged Tibet is an occupied state under international law. http://www.europapress.es/epsocial/noticia-comite-apoyo-tibet-recurrira-cuanto-antes-tsarchivo-causa-represion-china-jjoo-20110311131513.html. 1e. Radio Lhasa broadcast, 1 October 1960. 1f. Tibet Justice Center. http://www.tibetjustice.org/reports/sovereignty/entitled/c/index.html 2a. 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