個人の建て替えから、共同体での更新へ。 これからも空掘地区で住み続ける人達への計画です。
敷地について
更新ができないエリア 大阪府に位置する空堀地区は大正時代に堀跡を無理やり宅地開発した高低差のある木造密集地です。 堀の高低差を繋ぐ為に大きな区画をとり、路地が張り巡らされたこの場所は、 「高低差」 「細い街路」によって区画の奥の 躯体を取り壊すことができず、都心に位置する為、周囲は高層ビルが建つ都市へと変化を遂げる中昔ながらの長屋が残 り続けています。 このように、地形を無視した単発的な都市計画の為に 「設計者が建築を更新することを手放した」空堀地区では、住民達 が無許可で増築を行い、生活の領域を外部へ押し広げています。 しかし、隣地を隔てる敷地境界線も塀もないこの場所では、無秩序に増築が行われているので、やがて敷地全体に光が 入らなくなり、心地良い住環境が失われようとしています。結果、空家が後を経たなくなりました。 以上の「取り壊すことのできない空家」と 「光が入らない路地」 の2つを対象に計画を行い、空堀の魅力を引き継ぎな がら、 これから先も空堀地区で住み続ける人達の為に建築を設計します。
空堀地区配置図 大道路 路地
高低差を繋ぐ大きな区画とから細い路地が伸びる。
高低差を埋めるため階段がうまれる
掘のあった地形に住宅が出来る
道と住居が高低差で離れる
掘の上からは視界が開ける
掘のよって街区が分断される
空堀地区配置図 区画 マンション
区画の表側のみ工事が進み、都市へ変わる。区画の裏側は長屋が残 り続ける。
道に物が置かれ庭に見立てる
空掘の成り立ちについて 1.
桃山時代。 空掘は、 大阪城の掘として生まれました。
2.
江戸時代。 堀跡を瓦の採掘場として掘削し、 現在の 起伏に激しい地盤が形成されました。
3.
4.
大正時代。 高低差ある地形を無視して無理やり 宅地開発を行いました。
現在。 平らな区画の奥側はマンションへと変わり 工事の手の入らない区画の奥は長屋が残 り続けています。
増築によって居住者が更新するまち 隣家と領域を隔てる為の「隣地境界線」 「塀」がない空堀では屋外の公と私の所有の定義が曖昧に認知されています。 下のスケッチは、既存住宅(黒) 、増築(青) 、所有物(赤)に色分けして空堀の生活空間の構成要素に分解したものです。
堀の上に位置する長屋。増築によって眺望をとれる庭をつくる。
外壁に設えを増築することで幅の狭い公共の通路を物置として使う。
隣家との隙間に増築して洗濯物を干す。
可動できる部材で道いっぱいに庭を広げる。
地形を庭に見立てる 地形
増築
高低差によってできる袋地に増築を行い、立体的な庭を所有する。
路地を跨ぎ増築し通り庭をつくる
物を出し合い、対面同士共有する庭。
多方面に増築し庭と道を緩やかに繋ぐ。
窪みを利用した庭をつくり一時的に物を置く。
庭
1. 掘跡、段差等身体的なスケール感からかけ離れた地形に狭小住
2. 建物の更新の為、居住者が道に
3. 増築により、道にできた小さな居場所が既存の地形と繋がります。
宅が密集する。
無許可で増築を行う。
そこに所有物が広げられ、道が庭のように見立てられます。公共の場である道 と 狭小な
高低差が家の外部空間に大きな隔たりをつくる。 人とかけ離れたスケールの、掘や段差といった地形からできる空掘では、増築を行い自分たちで小さな地形を作り、既存の地形と接続させています。 道に増築を行い、所有物を広げることで「道を自分の庭のように見立てている」 ように感じました。
室内 が地続きに繋がり、それを住人同士が許容し合いながら更新が行われています。
抜けを見つけ増築を行い生活空間を広げる 人とかけ離れたスケールの、掘や段差といった地形からできる空掘では、増築を行い自分たちで小さな地形を作り、既存の地形と接続させています。 日常の暮らしの中に、公共の場である道 と 狭小な室内 が地続きに繋がり、それを住人同士が許容し合いながら生活を送っている ことが空堀地区の魅力だと思います。
a. 堀跡の下
たくさんの増築部が
増築によって居住の場を上空に積み重ねていきます。
堀の上は地盤が ならされ増築しやすい
堀に目がけ張りだす
堀の下側は傾斜の変動が多く、生活しづらくなっています。
岬から眺望をとる 階段には物が置かれず オープンスペースができる
(1) 大通りから空掘地区を見下ろす (1) 大通りから空掘地区を見下ろす
b. 斜面地の袋小路 高低差が激しく路地を繋ぐことができず、路地の奥に行き止まりがある 箇所です。空家を改修して平な地盤をつくり路地をつなぎます。
行き止まり部分は人の 出入りが少なく増築しやすい
利用する人が限定され る広範囲に路地を利用する
更新することを放棄された空掘地区。 居住者が地形を読み解き、設計者のように更新を行います。
傾斜がきつく上階にのみ増築を行う
(4) 空家に目がけて増築が飛び出す
c. 区画の内外の境目 区画の外側はマンションへと変わり、その背後の路地に面する箇所です。居住の他災害時等、路地を大通り に繋ぐ結節点を計画します。
物で地盤面が埋め尽くされる
ビルによって 大通りと分断される
光を求め路地に張りだす
(5) 道に物をおくことで道を庭に見立てる
増築箇所が地形に反応する 一般的な建築設計
空掘での建築設計
設定された敷地に塀が設けられ、隣家と物理的な距離をつくります。 「法的制限」 「プライバシー」 「日
住居が壊せない空掘では、敷地の高低差を読み、増築によって居住者が設計を行います。
照関係」目には見えない様々なコンテクストを読み取りながら設計が行われます。
しかし、敷地境界線、塀もないので増築によって周囲の住居のコンテクストを変えてしまいます。
地盤が高い位置から低い位置 に向かって増築が伸びる。
東から西へ 日光を取り入れる 周囲の窓の 視線を考慮する。
「日光を取り入れる」という 倫理でなく、抜けのある場所 に設計する。
壊せない住居を敷地として 増築によって場のコンテク ストを読む。
隣家の軒の出を 意識する。
×
隣地境界線はなく、公と私 の場が混在する。
高さ制限が 課せられる。
高さを 隣家に揃える。
塀によって プライバシーを守る。
×
隣地境界線が引かれる。
設計敷地
公道
路地
既存住宅
空家を地形の一部に見立て更新する 増築について
減築について
取り壊せない空家の救済措置
光が入らない路地の更新
ダイアグラム1 空家を今後も住み続ける周囲の人達の居住空間へと転用します。
ダイアグラム2 外部の公と私の定義が曖昧すぎる空堀に、段階的に改修を行い緩い秩序をつくります
01
01
02 空家
03 既存躯体
増築
03
住戸Bの増築
住戸B
住戸A
02
住戸Aの増築
増築
増築
室内
増築
庭
減築
室内
室内
庭
道
庭
室内
現状 : 道に対して増築を行い道を占拠し
空家を周囲の住戸同士で買い取り、取
買い取った躯体に増築を行い、空家を生
現状 : 狭い路地に増築をし、物を置くことで
改修をする際に道に対して躯体を残したまま
躯体の残る減築部分は自分だけの外部空間と
て更新を続けます。周囲に増築するスペ
り壊すこのできない、躯体だけを残して
活の一部として取り込み、新たな共同体
路地を庭のように利用しています。公と私の
減築を行い、傾斜地であることを生かして同じ
なり周囲に光を注ぎます。無秩序に生活の領域
ースが飽和し今後住居を更新することが
新たな外部空間を密集地につくります。
をつくります。
定義が曖昧すぎて、無秩序に増築されるの
容積分だけ、上へ増築します。
が広がっていた外部空間に、公共の場としての
できなくなっています。
で路地光が入らくなっています。
道を段階的につくります。
掘下の空家の再編 堀の下側は傾斜の変動が多く、生活しづらくなっています。増築によって居住の場を上空に積み重ねていきます。 堀跡に面する空家の更新の計画です。木造軸組に鉄骨を挿入して、傾斜の激しい堀下を倉庫、光が入る堀上を生活空間へ更新します。
マスタープラン
1. 堀の下は傾斜が激しく空家が増
2. 堀の上下を超えて空家を周囲で
3. 躯体は残し鉄骨を使い新たな地
4. 堀下の躯体に周辺住人の所有
5.堀の上は光が入る新たな地盤と
えつつあります。
改修します。
盤をつくります。
物を収納し道を整理します。
して増築を行います
断面図 堀跡に面する空家の更新の計画です。木造軸組に鉄骨を挿入して、傾斜の激しい堀下を倉庫、光が入る堀上を生活空間へ更新します。
光が入る上部へ生活を押し広げます 空家を介して住戸へ光と風を送ります
密集地の中に大きな抜けをつくります 寝室から増築部へ連続します
道を占拠していた物を引き込み外部に秩序をつくります
空家内に大きな抜けをつくり上へ繋いでいきます 寝室から増築部へ連続する。
ビルの狭間の空き家 ビルの裏に面する空家を高層化します。区画の外側はマンションへと変わり、 その背後の路地 に面する箇所です。居住の他災害時等、路地を大通りに繋ぐ結節点を計画します。 傾斜の変動が多く、生活しづらくなっています。増築によって居住の場を上空に積み重ねてい きます。堀跡に面する空家の更新の計画です。木造軸組に鉄骨を挿入して、傾斜の激しい堀下 を倉庫、光が入る堀上を生活空間へ更新します。堀跡に面する空家の更新の計画です。木造 軸組に鉄骨を挿入して、傾斜の激しい堀下を倉庫、光が入る堀上を生活空間へ更新します。 設計のイメージ
1.ビルの影になり光が入りません。
2.周囲の増築の邪魔をせず眺望をとります
3.ビルの影になり光が入りません。
4.周囲の増築の邪魔をせず眺望をとります
斜面地の袋小路
外部の公と私のが曖昧すぎる空堀に、段階的に改修を行い秩序をつくります
減築部分は自分の外部となり、生活の領域が広がっていた外部に、新たな道つくる。
道に対して躯体を残したまま減築を行い、傾同じ容積分だけ、上へ増築する。
取り残された空き家を共同体の庭へ。 従来の更新のサイクルを共同体に読み替え、新たな世界をつくります。
建築が建つことで生まれる敷地内の空白部分。 この空白と建築との関係性によって、敷地を超えた広がりと奥行きをもつ暮らしを考えます。
敷地と提案
D
敷地について 敷地は大阪本町です。本町は南北軸に御堂筋、東西軸に複数の通りで構成されており、路上の駐車スペ-スや歩道が広く路上での移動販売も頻 繁で通りの中に多くの公共空間が見られます。 「ノリの地図」にあるように、道、公園、空き地、駐車場さらに建物内のロビー、EVホール、意外を黒く塗 りそれ以外の白い部分すべてを公共の場の候補地とする。 その敷地に16の公共空間を表す色を敷地全体に配置した。道路によって区切られた条理グリッドの一つ一つに、公共の色をタイリングしている 。建物の外形線から異なる公共の場を帯状にオフセットし、中之島のリサーチから得られた16種の公共空間の重なりの特性から配列しました。 こ の場所に特有の広い歩道、公開空地、道、公園、空き地、駐車場、ロビー、EVホールはグリッドの公共空間の配列とイレギュラーな変化をもたらす磁 場として働きます。
C City Grid
Black Paint
White Area
- Public Space
土佐堀通
Project area -A
本町 - 写真 1
Scale 1:400
御堂筋
塗り残された白い部分は誰にでも
堺筋
B
C
紺とマゼンダ色のイベントが繰り返されるこの場所では、中之島全域に比べ単発的なイベ ントが不規則に起こるので、何かイベント、ハプニング、非日常が起こっていそうな、予 想していない事が起こりそうだと感じれます。
ひらかれており、誰でもアクセス することが可能な場所である
A
中央大通
白と紺の場所では、定期的に行われる白色と不定期にイベントが連続しどちらも自由に場 を占めれるイベントなので、イベントから離れた場にいる人もイベントに含まれていると 認識でき、島全域にその祝祭性が浸透しているように感じる。
本町 航空写真
本町 - 写真 2
紺とマゼンダ色の単発的不定期なイベントに長期間場を占め、一部の場を連 紺とマゼンダ色の単発的不定期なイベントに長期間場を占め、一部の場を連 続的に利用する赤色のイベントが混ざり様々なイベントがどの時間でも起こ 続的に利用する赤色のイベントが混ざり様々なイベントがどの時間でも起こ るので、ここへ訪れる人は訪れる度に場の雰囲気が劇的に変化しているよう るので、ここへ訪れる人は訪れる度に場の雰囲気が劇的に変化しているよう に感じます。 に感じます。
黄色と紺と赤の場所では三色ともに、場の占める時間が長く不定期にイベントが起こるが場の占め方がそれぞれ 違うので、イベントという計画化されたものが偶然急に大勢の人が集まり突如消える現象のように捉えられる。 そのような現象の蓄積により、いつイベントが起きても不思議ではないような場所を形成する。
白と紺とシアンの場所ではイルミネーション等の限定した時間人に開き場の占め方が強い紺色のイベントに対し、 頻繁に白色、シアンのイベントが行われることで、その場所に様々な目的を持った人々が場を占めれるようになる。
Project area -D
Scale 1:500
イベントが長期に渡って行われ、様々な目的を持った人が集まるシアン色のイベントに、人の入れ替わりが激しく気軽 に参加できる白色のイベントが連続することで、この場所自体も幅広い年代、立場の人に開かれている印象を持つ。
Project area -B
Scale 1:200